土地改良法
法令番号: 法律第百九十五号
公布年月日: 昭和24年6月6日
法令の形式: 法律
土地改良法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十四年六月六日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百九十五号
土地改良法
目次
第一章
総則(第一條―第四條)
第二章
土地改良事業
第一節
土地改良区の行う土地改良事業
第一款
土地改良区の設立(第五條―第十五條)
第二款
土地改良区の管理(第十六條―第四十五條)
第三款
土地改良区の事業
第一目
事業の施行(第四十六條―第五十七條)
第二目
権利関係の調整(第五十八條―第六十五條)
第四款
土地改良区の地区変更、解散及び合併(第六十六條―第七十六條)
第五款
土地改良区連合(第七十七條―第八十四條)
第二節
國又は都道府縣の行う土地改良事業(第八十五條―第九十四條)
第三節
農業協同組合の行う土地改良事業又は数人が共同して行う土地改良事業(第九十五條・第九十六條)
第三章
市町村農地委員会、土地改良区又は農業協同組合の行う交換分合(第九十七條―第百十一條)
第四章
補則(第百十二條―第百三十一條)
第五章
監督(第百三十二條―第百三十六條)
第六章
罰則(第百三十七條―第百四十五條)
附則
第一章 総則
(この法律の目的及び土地改良事業施行の要件)
第一條 この法律は、農業経営を合理化し、農業生産力を発展させるため、農地の改良、開発、保全及び集團化を行い、食糧その他農産物の生産の維持増進に寄與することを目的とする。
2 土地改良事業の施行に当つては、その事業は、國土資源の総合的な開発及び保全に資 するとともに國民経済の発展に適合するものであり、且つ、土地利用、森林その他資源の保全、開発に適切な考慮を拂つて政令で定める計画基準に準拠するものでなければならない。
(定義)
第二條 この法律において「農地」とは、耕作の目的に供される土地をいう。
2 この法律において「土地改良事業」とは、この法律により行う左に掲げる事業をいう。
一 かんがい排水施設、農業用道路その他農地の保全又は利用上必要な施設の新設、管理、廃止又は変更
二 区画整理
三 開田又は開畑
四 埋立又は干拓
五 農地又はその保全若しくは利用上必要な施設の災害復旧
六 農地に関する権利並びにその農地の利用上必要な土地に関する権利、農業用施設に関する権利及び水の使用に関する権利の交換分合
七 その他農地の改良又は保全のため必要な事業
(土地改良事業に参加する資格)
第三條 土地改良事業に参加する資格を有する者は、その事業の施行に係る地域内にある土地についての左の各号の一に該当する者とする。
一 所有権に基き耕作の業務の目的に供される農地については、その所有者
二 所有権以外の権原に基き耕作の業務の目的に供される農地については、省令の定めるところにより、市町村農地委員会に対しその所有者が当該土地改良事業に参加すべき旨の申出があり且つその申出が相当であつて市町村農地委員会がこれを承認した場合にあつては、その所有者、その他の場合にあつては、その権原に基き耕作の業務を営む者
三 農地以外の土地であつて所有権に基き使用及び收益の目的に供されるものについては、その所有者
四 農地以外の土地であつて所有権以外の権原に基き使用及び收益の目的に供されるものについては、その権原に基き使用及び收益をする者が、省令の定めるところにより、その所有者の同意を得て市町村農地委員会に対し当該土地改良事業に参加すべき旨を申し出た場合にあつては、その者、その他の場合にあつては、その所有者
2 前項第二号の所有者及び権原に基き耕作の業務を営む者が、省令の定めるところにより、合意によつてその資格が交替すべき旨を市町村農地委員会に申し出、且つ、その申出が相当であつて市町村農地委員会がこれを承認したときは、その承認のあつた時にその資格が交替するものとする。同項第四号の所有者並びに権原に基き使用及び收益をする者が、省令の定めるところにより、合意によつてその資格を交替すべき旨を市町村農地委員会に申し出た場合も、また同樣とする。
3 前二項の規定の適用については、賃貸人又は貸主が、疾病その他省令で定める事由によつて当該農地につき自ら耕作の業務を営むことができないため、賃貸借又は使用貸借により一時その農地を他人の耕作の業務の目的に供した場合において、市町村農地委員会が、省令の定めるところにより、その賃貸人又は貸主が近く自ら耕作の業務を営むものと認め、且つ、これを相当と認めるときは、その賃貸人又は貸主をその農地につき権原に基き耕作の業務を営む者とみなす。
4 第一項の規定の適用については、自作農創設特別措置法(昭和二十一年法律第四十三号)第四十一條の二第一項の規定により土地を使用する者は、その土地が農地である場合にあつては、その農地につき所有権に基き耕作の業務を営む者とみなし、その土地が農地以外の土地である場合にあつては、その土地の所有者とみなす。
5 第五十條第一項の規定により讓與する土地又は前項に規定する土地の所有者としての國には、第一項の規定を適用しない。
(公有水面の埋立の免許を受けた者に対する適用)
第四條 この法律の規定の適用については、公有水面埋立法(大正十年法律第五十七号)により埋立の免許を受けた者は、土地の所有者とみなす。
第二章 土地改良事業
第一節 土地改良区の行う土地改良事業
第一款 土地改良区の設立
(予備審査の申請)
第五條 第三條に規定する資格を有する十五人以上の者は、その資格に係る土地を含む一定の地域を定め、その地域について土地改良区を設立することについての予備審査を都道府縣知事に申請することができる。
2 前項の者は、同項の規定による申請をするには、あらかじめ、省令の定めるところにより、同項の一定の地域について行うべき土地改良事業(第二條第二項第六号に掲げるものを除く。以下、第十五條の場合を除いて、この章において同じ。)の計画の概要、定款作成の基本となるべき事項、第三條に規定する資格を有する者で土地改良事業計画及び定款の作成に当るべきものの選任方法その他必要な事項を公告して、その資格を有する者の三分の二以上の同意を得なければならない。
3 國有地又は國若しくは地方公共團体が公用若しくは公共の用に供している土地を含めて第一項の一定の地域を定めるには、その土地を管理する行政廳又は地方公共團体の承認がなければならない。
4 第一項の規定による申請をするには、その申請書に第二項の規定により公告した事項を記載した書面及び同意があつたことを証する書面並びに前項の承認のあつたことを証する書面を添附しなければならない。
(予備審査)
第六條 都道府縣知事は、前條の規定による申請があつた場合には、その土地改良区の設立につき予備審査を行わなければならない。
2 都道府縣知事は、前項の審査に当つては、省令の定めるところにより、農地の改良、開発及び保全に関し專門的知識を有する技術者に、当該申請に係る事項を調査して報告を提出することを求めなければならない。
3 前項の調査は、当該申請に係る事項の必要性及び可能性についての調査を含むものでなければならない。
4 都道府縣知事は、第二項の報告が提出されたときは、遅滯なくその旨を公告し、二十日以上の相当の期間を定めてその報告並びに前條第一項の規定による申請に係る土地改良事業の計画の概要及び定款作成の基本となるべき事項を記載した書面を縱覽に供しなければならない。
5 当該土地改良事業に関係のある土地又は土地に定著する物件の所有者、漁業権又は入漁権を有する者その他これらの土地物件又は権利に関し権利を有する者(以下これらの者を「利害関係人」という。)及び前條第一項の申請人は、都道府縣知事に、前項の規定による縱覽に係る事項についての意見を提出することができる。但し、前項に規定する縱覽期間満了後十日を経過したときは、この限りでない。
6 都道府縣知事は、第二項の報告に基き、前項の意見を参酌して、前條第一項の規定による申請に係る土地改良区の設立の適否を決定し、その旨を当該申請人に通知しなければならない。
(設立認可の申請)
第七條 第五條の規定により申請をした者は、前條第六項の規定により土地改良区の設立を適当とする旨の通知を受けたときは、省令の定めるところにより、土地改良事業計画、定款その他必要な事項を定め、都道府縣知事にその申請に係る土地改良区の設立の認可を申請することができる。
2 前項の土地改良事業計画及び定款は、第五條第二項の規定により同意を得た選任方法によつて選任された者によつて、同條第一項の規定による申請に係る土地改良事業の計画の概要及び定款作成の基本となるべき事項に基いて作成されたものでなければならない。
3 第一項の規定により申請をする者は、土地改良事業計画及び定款を定めるため、都道府縣に農地の改良、開発及び保全に関し專門的知識を有する技術吏員の援助を求めることができる。
4 都道府縣は、正当の事由がある場合を除いて、前項の規定による請求を拒んではならない。
(審査及び公告等)
第八條 都道府縣知事は、前條第一項の規定による申請があつたときは、当該土地改良事業計画及び定款につき詳細な審査を行つてその適否を決定し、その旨を当該申請人に通知しなければならない。
2 都道府縣知事は、前項の審査に当つては、省令の定めるところにより、農地の改良、開発及び保全に関し專門的知識を有する技術者が調査して提出する報告に基かなければならない。
3 前項の調査は、当該土地改良事業のすべての効用と費用とについての調査を含むものでなければならない。
4 都道府縣知事は、第一項の規定により当該申請を適当とする旨の決定をしたときは、遅滯なくその旨を公告し、二十日以上の相当の期間を定めてその決定に係る土地改良事業計画書及び定款の写を縱覽に供しなければならない。
(異議の申立)
第九條 当該土地改良事業の利害関係人は、前條第四項の規定による公告に係る決定に対して異議があるときは、都道府縣知事にこれを申し立てることができる。但し、同項に規定する縱覽期間満了後十日を経過したときは、この限りでない。
2 都道府縣知事は、前項の規定による異議の申立を受けたときは、前條第二項に掲げる技術者の意見をきいて、同條第四項に規定する縱覽期間満了後六十日以内にこれを決定しなければならない。
3 都道府縣知事は、前項の規定による決定が第五條第一項の規定による申請に係る土地改良事業の計画の概要又は定款作成の基本となるべき事項に矛盾するものであるときは、第七條第一項の認可の申請を却下しなければならない。
(土地改良区の成立)
第十條 都道府縣知事は、前條第一項の異議の申立がないとき、又は異議の申立があつた場合においてそのすべてについて同條第二項の規定による決定があつたときは、同條第三項の場合を除いて、土地改良区の設立の認可をしなければならない。
2 土地改良区は、前項の規定による認可により、第五條第一項の一定の地域を地区として成立する。
3 都道府縣知事は、土地改良区が成立したときは、遅滯なくその旨を公告しなければならない。
4 土地改良区の成立は、前項の規定による公告があるまでは、これをもつて組合員その他の第三者に対抗することができない。
(組合員)
第十一條 土地改良区の地区内にある土地につき第三條に規定する資格を有する者は、その土地改良区の組合員とする。
(設立費用の負担)
第十二條 土地改良区の設立に関する費用は、その土地改良区の負担とする。但し、土地改良区が成立しなかつた場合には、その費用は、その設立を申請した者の負担とする。
(土地改良区の法人格)
第十三條 土地改良区は、法人とする。
(名称独占)
第十四條 土地改良区は、その名称中に土地改良区という文字を用いなければならない。
2 土地改良区でないものは、その名称中に土地改良区という文字を用いてはならない。
(土地改良区の事業)
第十五條 土地改良区は、その地区内の土地改良事業を行うものとする。
2 土地改良区は、前項の土地改良事業に附帶する事業を行うことができる。
第二款 土地改良区の管理
(定款)
第十六條 土地改良区の定款には、左に掲げる事項を記載しなければならない。
一 名称及び認可番号
二 地区
三 事業
四 事務所の所在地
五 経費の分担に関する事項
六 役員の、定数、任期、職務の分担及び選任に関する事項
七 事業年度
八 公告の方法
2 事業年度については、省令で定める。
(規約)
第十七條 左に掲げる事項は、定款で定めなければならない事項を除いて、規約で定めることができる。
一 総会又は総代会に関する事項
二 業務の執行及び会計に関する事項
三 役員に関する事項
四 組合員に関する事項
五 その他必要な事項
(役員の選任)
第十八條 土地改良区に、役員として、理事及び監事を置く。
2 理事の定数は、五人以上とし、監事の定数は、二人以上の偶数とする。
3 理事及び半数の監事は、定款の定めるところにより、組合員のうちから総会で選挙し、他の半数の監事は、都道府縣知事が任命する。但し、土地改良区設立当時の理事及び選挙によるべき監事は、第五條第一項の申請人及び同條第二項の同意者のうちから申請人が選任する。
4 役員の選挙は、無記名投票によつて行う。
5 理事及び選挙による監事の任期は、一年とする。但し、定款で二年以内において別段の期間を定めたときは、その期間とする。
6 設立当時の理事及び選挙によるべき監事の任期は、前項の規定にかかわらず、第一回の総会までとする。
7 補欠役員は、その前任者の残任期間在任する。
8 理事又は選挙による監事は、その任期が満了しても、後任の理事又は監事が就任するまでの間は、なおその職務を行う。
9 土地改良区は、理事の氏名及び住所を都道府縣知事に届け出なければならない。
10 都道府縣知事は、前項の規定による届出があつたときは、遅滯なくこれを公告しなければならない。
11 土地改良区は、前項の規定による公告があるまでは、理事の代表権をもつて第三者(組合員を除く。)に対抗することができない。
(役員の職務)
第十九條 理事は、定款の定めるところにより、土地改良区を代表する。但し、総会の決議に從わなければならない。
2 土地改良区の事務は、理事の過半数で決する。但し、定款に別段の定がある場合には、この限りでない。
3 監理は、土地改良区の業務及び財産の状況を監査する。
(兼職禁止)
第二十條 理事、監理及び使用人は、相兼ねてはならない。
(監事の組合代表権)
第二十一條 土地改良区と理事との契約又は爭訟については、監事が土地改良区を代表する。
(総会の組織)
第二十二條 土地改良区の総会は、総組合員で組織する。
(総代会)
第二十三條 組合員の数が五百人をこえる土地改良区は、定款の定めるところにより、総会に代るべき総代会を設けることができる。
2 総代の定数は、定款で定める。但し、組合員の数が五百人以上千人未満の土地改良区にあつては、五十人以上、千人以上一万人未満の土地改良区にあつては、百人以上、一万人以上の土地改良区にあつては、二百人以上でなければならない。
3 総代は、組合員で年齢二十五年以上のもの(禁治産者、準禁治産者及び禁こ以上の刑に処せられて執行中の者を除く。)のうちから、組合員が選挙する。
4 前項の規定による選挙は、政令の定めるところにより、都道府縣又は市町村の選挙管理委員会の管理のもとに、直接、平等及び祕密の原則によつて行うものとする。
5 第三項の規定による選挙に要する費用は、当該土地改良区の負担とする。
6 総代の任期は、四年とする。但し、補欠総代は、前任者の残任期間在任する。
7 総代は、その任期が満了しても、後任の総代が就任するまでの間は、なおその職務を行う。
8 総代が被選挙権を有しない者であるときは、その職を失う。この場合において、被選挙権の有無は、総代会で決定する。
9 総代会には、総会に関する規定を準用する。
(総代の解職の請求)
第二十四條 組合員は、政令の定めるところにより、その総数の三分の一以上の連署をもつて、その代表者から理由を記載した書面を提出して、都道府縣又は市町村の選挙管理委員会に対し、総代の解職を請求することができる。
2 前項の規定による請求があつたときは、都道府縣又は市町村の選挙管理委員会は、直ちに請求の要旨を公表し、これを組合員の投票に付さなければならない。
3 総代は、前項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときは、その職を失う。
4 政令で特別の定をするものを除く外、前條第三項から第五項までの規定は、第二項の規定による解職の投票に準用する。
(総会の招集)
第二十五條 理事は、毎事業年度一回通常総会を招集しなければならない。
2 理事は、必要と認めるときは、何時でも臨時総会を招集することができる。
第二十六條 組合員が、総組合員の五分の一以上の同意を得、会議の目的たる事項及び招集の理由を記載した書面を土地改良区に提出して、総会(総代会が設けられている場合には、総代会)の招集を請求したときは、理事は、その請求があつた日から二十日以内に総会を招集しなければならない。
(監事による会議の招集)
第二十七條 理事の職務を行う者がないとき、又は前條の規定による請求があつた場合において理事が正当の事由がないのに総会招集の手続をしないときには、監事がこれを招集しなければならない。
(会議招集の通知)
第二十八條 総会を招集するには、その会日から五日前までに、会議の日時、場所及び目的を各組合員に通知しなければならない。但し、急施を要する場合には、その会日から三日前までに通知すればよい。
(関係書簿の備付)
第二十九條 理事は、定款、規約、事業に関する書類、組合員名簿、土地原簿及び議事録を主たる事務所に備え、且つ、これらを保存しなければならない。
2 前項の組合員名簿及び土地原簿には、省令で定める事項を記載しなければならない。
3 組合員その他当該土地改良区の事業に利害関係のある者から第一項に掲げる書簿の閲覽の請求があつた場合には、理事は、正当の事由がある場合を除いて、これを拒んではならない。
(総会の議決事項)
第三十條 左に掲げる事項は、総会の議決を経なければならない。
一 定款の変更
二 規約の設定、変更又は廃止
三 起債又は借入金の借入並びにそれらの方法、利率及び償還の方法
四 経費の收支予算
五 予算をもつて定めたものを除く外、土地改良区の負担となるべき契約
六 賦課金及び夫役現品の賦課徴收の方法
七 事業報告書、收支決算書及び財産目録の承認
八 第七十七條第二項又は第八十一條の規定により協議して定める事項
九 第九十三條第一項の規定による申出
十 第九十七條第四項の意見の決定
2 定款の変更は、都道府縣知事の認可を受けなければならない。
3 都道府縣知事は、前項の認可をしたときは、遅滯なくその旨を公告しなければならない。
4 定款の変更は、前項の規定による公告があるまでは、これをもつて第三者(組合員を除く。)に対抗することができない。
(議決権及び選挙権)
第三十一條 組合員は、各々一個の議決権並びに役員及び総代の選挙権を有する。
2 組合員は、第二十八條の規定による通知があつた事項について、書面又は代理人をもつて議決権又は選挙権を行うことができる。
3 前項の規定により議決権又は選挙権を行う者は、出席者とみなす。
4 代理人は、組合員でなければならない。
5 代理人は、二人以上の組合員を代理することができない。
6 代理人は、代理権を証する書面を土地改良区に提出しなければならない。
(総会の議決方法等)
第三十二條 総会の議事は、この法律、定款又は規約に特別の定がある場合を除いて、総組合員の半数以上が出席し、その議決権の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
2 議長は、総会で選任する。
3 議長は、組合員として総会の議決に加わる権利を有しない。
(重要事項の議決方法)
第三十三條 左に掲げる事項に関する総会の議事は、総組合員の三分の二以上が出席し、その議決権の三分の二以上で決する。
一 定款の変更
二 土地改良事業計画の設定又は変更
三 解散又は合併
(決議事項の制限)
第三十四條 総会においては、第二十八條の規定によつてあらかじめ通知をした事項についてのみ決議をすることができる。但し、定款に別段の定がある場合には、この限りでない。
(民法の準用)
第三十五條 土地改良区には、民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四條第一項(法人の不法行爲能力)、第五十條(法人の住所)、第五十四條(代表権の制限)、第五十五條(代表権の委任)及び第六十六條(表決権のない場合)の規定を準用する。
(経費の賦課)
第三十六條 土地改良区は、定款の定めるところにより、その事業に要する経費(第九十條第三項又は第九十一條後段の規定により徴收される金銭を含む。)に充てるため、その地区内にある土地につき、その組合員に対して金銭、夫役又は現品を賦課徴收することができる。
2 前項の規定による賦課に当つては、当該事業によつて当該土地が受ける利益を勘案しなければならない。
3 土地改良区は、その地区を変更する場合において、新たに編入される土地があるときは、第一項に規定するものの外、その土地について加入金を徴收することができる。
4 組合員は、第一項の規定により賦課された金銭、夫役若しくは現品又は前項の加入金の徴收については、相殺をもつて対抗することができない。
5 夫役又は現品は、金銭に算出して賦課しなければならない。
6 夫役又は現品は、金銭で代えることができる。
7 土地改良事業の施行に関し第一項の規定により賦課される夫役は、労働の基準又は賃金に関する法令の趣旨に沿うものでなければならない。
(過怠金)
第三十七條 土地改良区は、定款の定めるところにより、組合員に対して過怠金を課することができる。
(賦課金等の徴收の委任)
第三十八條 土地改良区は、政令の定めるところにより、市町村に対し、第三十六條第一項又は第三項の規定により徴收すべき金銭(第四十二條第二項の規定による決済により徴收すべき金銭を含む。)、前條の過怠金又は換地計画若しくは交換分合計画において定める清算金の徴收を委任することができる。
(賦課金等の徴收)
第三十九條 第三十六條第一項若しくは第三項の規定により支拂うべき金銭(第四十二條第二項の規定による決済により支拂うべき金銭を含む。)若しくはその延滯利息、第三十七條の過怠金又は換地計画若しくは交換分合計画において定める清算金を滯納する者がある場合、又は夫役現品の賦課を受けた者が定期内にその履行をせず、若しくは夫役現品に代るべき金銭を納めない場合には、市町村は、土地改良区の請求により地方税の滯納処分の例によつてこれを処分する。この場合には、土地改良区は、その徴收金額の百分の四を市町村に交付しなければならない。
2 市町村が前項の請求を受けた日から三十日以内にその処分に着手せず、又は九十日以内にこれを終了しない場合には、理事は、地方税の滯納処分の例により、都道府縣知事の認可を受けて、その処分をすることができる。
3 前二項の規定による徴收金の先取特権の順位は、市町村税に次ぐものとし、その時効については、市町村税の例による。
(区債及び借入金)
第四十條 土地改良区は、その事業を行うため必要がある場合には、区債を起し、又は借入金の借入をすることができる。
2 國又はその出資する金融機関は、前項の区債を引き受け、又は同項の借入金を貸し付けることができる。
(定款の変更等の制限)
第四十一條 土地改良区は、区債又は借入金がある場合には、その債権者の同意がなければ、その地区を縮少し、債務の分担に関する定款を変更し、その事業を廃止し、又は解散若しくは合併をしてはならない。
2 前項の債権者は、正当の事由がある場合を除いて、前項の同意を拒むことができない。
3 土地改良区が債権者の同意を得ないで第一項に規定する行爲をしたときは、その債権者は、都道府縣知事に異議を申し立てることができる。但し、その行爲の認可に係る公告があつた日から二十日を経過したときは、この限りでない。
4 都道府縣知事は、前項の規定による申立を受けたときは、同項に規定する申立期間満了後六十日以内にこれを決定しなければならない。
(権利義務の承継及び決済)
第四十二條 土地改良区の組合員が組合員たる資格に係る権利の目的たる土地の全部又は一部についてその資格を喪失した場合には、その者がその土地の全部又は一部について有するその土地改良区の事業に関する権利義務は、その土地の全部若しくは一部についての権利の承継又は第三條第二項の規定による交替によつてその土地の全部又は一部について組合員たる資格を取得した者に移轉する。
2 土地改良区の組合員が、組合員たる資格に係る権利の目的たる土地の全部又は一部についてその資格を喪失した場合において、前項の承継又は第三條第二項の規定による交替がないときは、その者及び土地改良区は、その土地の全部又は一部につきその者の有するその土地改良区の事業に関する権利義務について必要な決済をしなければならない。
(組合員の資格得喪の通知義務)
第四十三條 土地改良区の地区内の土地の全部又は一部について組合員たる資格を取得し、又は喪失した者がある場合には、その者は、その旨をその土地改良区に通知しなければならない。
2 前項の当事者は、同項の規定による通知があるまでは、当該資格の得喪をもつて第三者に対抗することができない。
(共有者等の代表)
第四十四條 土地改良区の地区内の同一の土地について、権原に基き使用し若しくは收益する者が二人以上あり、又は共有者がある場合において、これらの者が組合員であるときは、これらの者は、土地改良区の組合員としての行爲(議決権及び選挙権の行使を除く。)をさせるために、そのうちの一人を代表者とし、その旨をその土地改良区に通知しなければならない。但し、これらの者のみを組合員とする土地改良区については、この限りでない。
2 前項の代表者の権限に加えた制限は、これをもつて第三者に対抗することができない。
3 第一項に規定する委任の終了は、当該土地改良区にその旨の通知があるまでは、これをもつて善意の第三者に対抗することができない。
4 第一項に規定する者が同項の手続をしない場合には、当該土地改良区の組合員としてのこれらの者に対してする行爲は、そのうちの一人に対してすればよい。
(組合員に対する通知又は催告)
第四十五條 土地改良区が組合員に対してする通知又は催告は、組合員名簿に記載したその住所(その者が別に通知又は催告を受ける場所をその土地改良区に通知した場合には、その場所)にあてればよい。
2 前項の通知又は催告は、通常到達すべきであつた時に到達したものとみなす。
第三款 土地改良区の事業
第一目 事業の施行
(税務署長に対する申告と工事の着手及び完了の届出)
第四十六條 土地改良区は、土地改良事業の工事に着手する前に、所轄税務署長に省令で定める事項を申告しなければならない。
2 土地改良区は、土地改良事業の施行に係る地域内に一筆の土地の一部が編入されている場合には、前項の規定による申告とともに、分筆の手続をしなければならない。
3 土地改良区は、土地改良事業の工事に着手し、又はその工事を完了したときは、遅滯なくその旨を都道府縣知事及び所轄税務署長に届け出なければならない。
(工事に必要な援助請求)
第四十七條 土地改良区は、土地改良事業の工事につき第七條第三項に掲げる技術吏員の必要な援助を求めることができる。
2 前項の場合には、第七條第四項の規定を準用する。
(土地改良事業計画の変更等)
第四十八條 土地改良区は、土地改良事業計画を変更し、土地改良事業を廃止し、又は新たな土地改良事業を行おうとする場合には、省令の定めるところにより、総会の議決を経て必要な事項を定め、都道府縣知事の認可を受けなければならない。
2 新たな土地改良事業を行い、若しくはその土地改良事業を廃止し、又はその土地改良事業に係る土地改良事業計画を変更しようとする場合において前項の認可を申請するには、その土地改良事業の施行に係る土地についての組合員で組織する会議の議決を経なければならないものとし、その申請書に、その議決のあつたことを証する書面を添附しなければならない。
3 前項の会議の議事は、同項の者が三分の二以上出席し、その議決権の三分の二以上で決する。
4 第二項の会議には、第二十七條、第二十八條、第三十一條、第三十二條第二項及び第三項並びに第三十四條の規定を準用する。
5 第一項の場合には、第七條第三項及び第四項、第八條、第九條並びに第十條第一項の規定を準用する。
6 第一項の認可に係る事項が当該土地改良事業の利害関係人の権利又は利益を侵害するおそれがないことが明らかである場合において、都道府縣知事が適当と認めたときは、新たな土地改良事業を行おうとする場合を除いて、前項において準用する第八條第四項及び第九條に規定する手続を省略してよい。
7 都道府縣知事は、第一項の認可をしたときは、遅滯なくその旨を公告しなければならない。
8 土地改良事業計画の変更、土地改良事業の廃止又は新たな土地改良事業の計画の決定は、前項の規定による公告があるまでは、これをもつて第三者(組合員を除く。)に対抗することができない。
(急施の場合)
第四十九條 災害のため急速に第二條第二項第五号の土地改良事業を新たに行う必要がある場合には、土地改良区は、前條の規定にかかわらず、総会の議決を経て應急工事計画を定め、都道府縣知事の認可を受けてその事業を行うことができる。
(國有地の讓與又は國有地への編入)
第五十條 土地改良事業の施行により道路、かんがい排水路、ため池、堤等の全部又は一部を廃止した結果不用となつた國有地がある場合には、省令の定めるところにより、これを無償で土地改良区又はその地区内にある土地の所有者に讓與する。
2 土地改良事業の施行により生じた道路、かんがい排水路、ため池、堤等で前項の廃止したものに代るべきものは、無償で國有地に編入する。
(一時利用地の指定)
第五十一條 土地改良区は、土地改良事業の工事が完了する以前において、必要がある場合には、規約の定めるところにより、從前の土地に代るべき一時利用地及びその使用開始の日を指定することができる。
2 前項の一時利用地は、從前の土地の地目、地積、土性、水利、傾斜、温度等を標準として定めなければならない。
3 土地改良区は、第一項の規定による指定をしたときは、一時利用地及び從前の土地につき所有権、地上権、永小作権、質権、賃借権又は使用貸借による権利を有する者にその旨を通知しなければならない。
4 從前の土地につき権原に基き使用又は收益をすることのできる者は、第一項の使用開始の日から第五十二條第八項の規定による公告があるまで、一時利用地の全部又は一部を、その性質によつて定まる用方に從い、その権原に基いて、從前の土地についての使用又は收益と同一の條件により、使用し、又は收益することができる。
5 前項の場合には、同項の者は、從前の土地については、その土地に関しその者の有する権利の内容たる使用又は收益をすることができない。
6 一時利用地につき第三項の権利を有する者は、同項の規定による通知を受けたときは、第一項の使用開始の日から第五十二條第八項の規定による公告があるまで、その一時利用地の使用又は收益をすることができない。
7 土地改良区は、第一項の規定による指定によつて通常生ずべき損失を補償しなければならない。
8 土地改良区は、第一項の規定による指定によつて利益を受ける者から、その利益に相当する金銭を徴收することができる。
(換地計画)
第五十二條 土地改良区は、土地改良事業の工事が完了した場合において、事業の性質上必要があるときは、遅滯なく、換地計画を定め、都道府縣知事の認可を受けなければならない。
2 前項の換地計画は、耕作者の農業経営の合理化に資するように定めなければならない。
3 第一項の換地計画を定めるには、その計画に係る土地につき所有権、地上権、永小作権、質権、賃借権又は使用貸借による権利を有するすべての者で組織する会議の議決を経なければならない。
4 前項の会議の議事は、同項の者が三分の二以上出席し、その議決権の三分の二以上で決する。
5 第三項の会議には、第二十七條、第二十八條、第三十一條、第三十二條第二項及び第三項並びに第三十四條の規定を準用する。
6 第一項の認可を申請するには、その申請書に関係市町村農地委員会の同意書を添附しなければならない。但し、同意を求めた日から六十日以内にその同意を得られない場合には、その事由を記載した書面を添附すればよい。
7 前項但書の場合において第一項の認可をしようとするときは、都道府縣知事は、関係市町村農地委員会の意見をきかなければならない。
8 都道府縣知事は、第一項の認可をしたときは、遅滯なく、その旨を公告し、且つ、公告の旨を管轄登記所に通知しなければならない。
第五十三條 換地計画においては、從前の土地に照應する換地を定めなければならない。
2 前項の換地は、從前の土地の地目、地積、土性、水利、傾斜、温度等を標準として定めなければならない。
3 耕作者の農業経営を合理化するため特別の必要がある場合には、前項の規定によらないで換地を定めることができる。但し、あらかじめ、規約にその旨を定めてあり、且つ、定めるべき当該換地に照應する從前の土地について前條第三項に掲げる権利を有する者の同意を得た場合に限る。
4 前二項の場合において、地目、地積、土性、水利、傾斜、温度等を総合的に勘案して相殺することができない部分がある場合には、金銭による清算をするものとし、その額並びに支拂の方法及び時期を定めなければならない。
5 從前の土地の全部又は一部について所有権以外の権利又は処分の制限がある場合には、これに照應する換地は、その権利又は処分の制限の目的たる土地又はその部分を指定して定めなければならない。
6 換地は、一筆の土地の区域が二以上の市町村、大字又は字にわたるように定めてはならない。
(換地処分の効果及び清算金)
第五十四條 第五十二條第八項の規定による公告があつた換地計画に定める換地は、第六十三條第一項に規定する場合を除いて、その公告があつたときから從前の土地とみなす。
2 前項の規定は、行政上又は裁判上の処分で從前の土地に專属するものについては、影響を及ぼさない。
3 第五十二條第八項の規定による公告があつたときは、土地改良区は、その公告があつた換地計画の定めるところに從い清算金を支拂わなければならない。
4 前項の場合には、土地改良区は、当該換地計画の定めるところに從い清算金を徴收することができる。
(換地処分による登記)
第五十五條 第五十二條第一項の認可があつたときは、土地改良区は、遅滯なく当該換地計画に係る既登記の土地及び建物について登記を申請しなければならない。
(土地改良区の協議請求)
第五十六條 土地改良区は、かんがい排水施設の新設、管理、廃止又は変更を行う者に対して、水を農業上合理的に利用するため必要な事項につき協議を求めることができる。
2 前項の規定による協議をすることができない場合、又は協議がととのわない場合には、当該土地改良区は、都道府縣知事に裁定を申請することができる。
3 前項の裁定をする場合には、第六條第二項の規定を準用する。
4 第二項の裁定があつたときは、当事者は、その裁定の定めるところに從い協定しなければならない。
(施設の管理)
第五十七條 土地改良区は、土地改良事業の工事が完了した場合においてその事業によつて生じたかんがい排水施設、農業用道路その他農地の保全又は利用上必要な施設があるときは、その施設を管理しなければならない。この場合には、その旨を定款に記載しなければならない。
第二目 権利関係の調整
(組合員の使用收益権)
第五十八條 組合員は、その者が地上権、永小作権、質権、賃借権又は使用貸借による権利に基き使用し、又は收益している土地につき土地改良事業の成果を公正に享受するため、地上権、永小作権若しくは質権を設定する契約又は賃貸借契約若しくは使用貸借契約の変更に関し、その契約の相手方に対して協議を求めることができる。
(償還すべき有益費)
第五十九條 土地改良事業に費された有益費を民法の規定により償還する場合には、償還すべき額は、同法第百九十六條第二項本文の規定にかかわらず、増價額とする。
(組合員でない者の地代等の減額又は拂戻の請求)
第六十條 土地改良事業によつて地上権、永小作権、地役権又は賃借権の目的である土地の利用を妨げられるに至つた場合には、その土地(地役権者の場合にあつては、当該承役地)に関し組合員でない地上権者、永小作権者、地役権者又は賃借人は、地代、小作料、地役の対價若しくは賃借料の相当の減額又は前拂した地代、小作料、地役の対價若しくは賃貸料の相当の拂戻を請求することができる。
(組合員でない者の権利の放棄等)
第六十一條 土地改良事業によつて地上権、永小作権若しくは地役権を設定し、又は賃借し、若しくは使用借した目的を達することができなくなつた場合には、当該土地(地役権者の場合にあつては、当該承役地)に関し組合員でない地上権者、永小作権者、地役権者、賃借人又は借主は、その権利を放棄し、又は契約を解除することができる。
2 前項の規定により放棄又は解除をする場合において、同項に掲げる者(地役権者を除く。)が当該土地を賃貸し、又は使用貸しているときは、その者は、賃借人又は借主の同意を得なければならない。同項に掲げる地役権者が当該要役地につき地上権若しくは永小作権を設定し、又はその土地を賃貸し、若しくは使用貸しているときも、また同樣とする。
3 第一項の場合には、同項に掲げる者は、当該事業を行う土地改良区に対して、その目的を達することができなくなつたことによつて生じた損失の補償を請求することができる。但し、その土地改良区は、規約の定めるところにより、当該土地(地役権者の場合にあつては、当該承役地)に関してその組合員である者に対して、求償することができる。
(組合員の地代等の増額請求)
第六十二條 土地改良事業によつて地上権、永小作権、地役権又は賃借権の目的たる土地の利用を増した場合には、その土地に関し組合員である所有者又は賃貸人は、地代、小作料、地役の対價又は賃貸料の相当の増額を請求することができる。
2 前項の請求があつたときは、同項に掲げる権利を有する者は、その権利を放棄し、又は契約を解除して、その義務を免かれることができる。
(地役権の効力)
第六十三條 換地計画に係る土地の上に存する地役権は、第五十二條第八項の規定による公告があつた後でも、なお從前の土地の上に存する。
2 土地改良事業によつて行使する利益を受ける必要がなくなつた地役権は、消滅する。
3 土地改良事業によつて從前と同一の利益を受けることができなくなつた地役権者は、その利益を保存する範囲内において、地役権の設定を請求することができる。但し、第六十條の規定による請求に基く地役の対價の減額があつた場合には、この限りでない。
(請求の期限)
第六十四條 第五十二條第八項の規定による公告があつた日から三十日を経過したときは、第六十二條第二項の場合を除いて、前四條の規定による賃貸借の解除、地上権若しくは永小作権の放棄、地役権の放棄若しくは設定又は賃貸借料、地代、小作料若しくは地役の対價の減額、拂戻若しくは増額の請求をすることができない。
(農地調整法の適用)
第六十五條 第五十八條から前條までの規定は、農地調整法(昭和十三年法律第六十七号)の適用を妨げない。
第四款 土地改良区の地区変更、解散及び合併
(地区変更)
第六十六條 土地改良区は、地区の変更についての定款の変更の認可を申請しようとする場合において、新たに地区に編入すべき土地があるときは、定款及び土地改良事業計画を公告して、編入すべき土地につき第三條に規定する資格を有する者の三分の二以上の同意を得なければならない。
2 地区内にある土地が、その土地改良区の事業により利益を受けないことが明らかになつた場合において、その土地についての組合員の申出があるときは、その土地改良区は、その土地をその地区から除かなければならない。
(解散)
第六十七條 土地改良区は、左に掲げる事由によつて解散する。
一 総会の議決
二 第百三十五條の規定による解散を命ずる裁判
三 合併
2 総会の議決による解散は、都道府縣知事の認可を受けなければならない。
3 土地改良区が第一項第一号又は第二号に掲げる事由によつて解散したときは、都道府縣知事は、遅滯なくその旨を公告しなければならない。
4 土地改良区の解散は、前項の規定による公告があるまでは、これをもつて第三者(組合員を除く。)に対抗することができない。
(清算人)
第六十八條 土地改良区が解散したときは、合併によつて解散した場合を除いて、理事がその清算人となる。但し、総会で他の者を選任した場合には、この限りでない。
(清算人の財産調査義務)
第六十九條 清算人は、就職の後、遅滯なく、土地改良区の財産の現況を調査し、財産目録を作り、財産処分の方法を定め、これを総会に提出してその承認を求めなければならない。
(残余財産処分の制限)
第七十條 清算人は、土地改良区の債務を弁済した後でなければ、その残余財産を処分することができない。
(清算人の決算報告義務)
第七十一條 清算事務が終つたときは、清算人は、遅滯なく、決算報告書を作り、これを総会に提出してその承認を求めなければならない。
(合併の議決)
第七十二條 土地改良区は、合併をしようとする場合には、総会においてその旨を議決しなければならない。
(吸收合併)
第七十三條 合併をする土地改良区の一方が合併後存続する場合には、その土地改良区は、関係各土地改良区の合併の議決書を添附して第三十條第二項の規定による定款の変更の認可を申請しなければならない。
2 都道府縣知事は、前項の認可をしたときは、遅滯なく、合併後存続する土地改良区については、第三十條第三項の規定による公告、合併によつて消滅する土地改良区については、解散の公告をしなければならない。
3 第一項に規定する合併は、前項の公告があるまでは、これをもつて第三者(当該関係土地改良区の組合員を除く。)に対抗することができない。
(新設合併)
第七十四條 合併によつて土地改良区を設立しようとする場合には、関係各土地改良区の総会で組合員のうちから選挙した者が第五條の申請人となり、設立に必要な行爲をしなければならない。
2 前項の場合において、第五條第一項の規定による申請をするには、関係各土地改良区の合併の議決書を添附しなければならない。
3 第一項の場合において、都道府縣知事は、第十條第一項の認可をしたときは、遅滯なく、合併によつて消滅する土地改良区については、解散の公告、合併によつて設立した土地改良区については、同條第三項の規定による公告をしなければならない。
4 第一項に規定する合併は、前項の公告があるまでは、これをもつて第三者(当該関係土地改良区の組合員を除く。)に対抗することができない。
(合併による権利義務の承継)
第七十五條 合併後存続する土地改良区又は合併によつて成立した土地改良区は、合併によつて消滅した土地改良区の権利義務(その土地改良区がその行う事業に関し、行政廳の許可、認可その他の処分に基いて有する権利義務を含む。)を承継する。
(民法及び非訟事件手続法の準用)
第七十六條 土地改良区の解散及び清算には、民法第七十三條(清算法人)、第七十五條(裁判所による清算人の選任)、第七十六條(清算人の解任)、第七十八條から第八十條まで(清算人の職務権限、債権申出の公告及び催告、期間後に申し出た債権)、第八十二條(解散・清算の監督)及び第八十三條(清算結了の届出)並びに非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第三十五條第二項(法人の解散・清算の監督の管轄)、第三十六條(檢査人の選任)、第三十七條ノ二(裁判所の選任した清算人・檢査人の報酬)、第百三十五條ノ二十五第二項及び第三項(裁判所の監督上の調査等)、第百三十六條(清算事件の管轄)、第百三十七條(清算人の選任・解任の裁判)及び第百三十八條(清算人不適格者)の規定を準用する。
第五款 土地改良区連合
(設立)
第七十七條 土地改良区は、その事業の一部を共同して行うため、土地改良区連合を設立することができる。
2 土地改良区は、土地改良区連合を設立しようとする場合には、省令の定めるところにより、定款、土地改良事業計画その他必要な事項を協議して定め、都道府縣知事の認可を受けなければならない。
(名称独占)
第七十八條 土地改良区連合は、その名称中に土地改良区連合という文字を用いなければならない。
2 土地改良区連合でないものは、その名称中に土地改良区連合という文字を用いてはならない。
(定款)
第七十九條 土地改良区連合の定款には、左に掲げる事項を記載しなければならない。
一 名称及び認可番号
二 所属土地改良区
三 事業
四 事務所の所在地
五 経費の分担に関する事項
六 役員の定数、任期、職務の分担及び選任に関する事項
七 議員に関する事項
八 事業年度
九 公告の方法
2 事業年度については、省令で定める。
(総会の組織)
第八十條 土地改良区連合の総会は、定款の定めるところにより、所属土地改良区がその組合員のうちから選出する議員で組織する。
2 土地改良区連合は、総代会を設けることができない。
(所属土地改良区の増減)
第八十一條 土地改良区連合は、その所属土地改良区の数を増減しようとする場合には、関係土地改良区の協議によつて、省令の定めるところにより、定款、土地改良事業計画その他必要な事項を定め、都道府縣知事の認可を受けなければならない。
(役員)
第八十二條 理事は、定款の定めるところにより、議員のうちから総会で選挙する。
(合併の禁止)
第八十三條 土地改良区連合は、合併をすることができない。
(土地改良区に関する規定の準用)
第八十四條 土地改良区連合については、この法律に特別の定のある場合を除いて、土地改良区に関する規定を準用する。
第二節 國又は都道府縣の行う土地改良事業
(申請)
第八十五條 第三條に規定する資格を有する十五人以上の者は、政令の定めるところにより、その資格に係る土地を含む一定の地域を定め、その地域について國又は都道府縣が土地改良事業を行うべきことを、國が行うべきもの(以下「國営土地改良事業」という。)にあつては農林大臣に、都道府縣が行うべきもの(以下「都道府縣営土地改良事業」という。)にあつては、都道府縣知事に、それぞれ申請することができる。
2 前項の者は、同項の規定による申請をするには、あらかじめ、省令の定めるところにより、同項の一定の地域について行うべき土地改良事業の計画の概要その他必要な事項を公告して、その地域内にある土地について第三條に規定する資格を有する者の三分の二以上の同意を得なければならない。
3 第一項の規定による申請をするには、その申請書に前項の規定により公告した事項を記載した書面及び同意があつたことを証する書面並びに当該地域につき、土地改良区又は土地改良区連合を設立すべきことを記載した書面を添附し、これを関係都道府縣知事に提出しなければならない。
(申請の予備審査)
第八十六條 前條の規定による申請があつた場合には、都道府縣知事は(その申請に係る國営土地改良事業の地域が二以上の都府縣の区域にわたる場合にあつては、当該関係都府縣の知事がその協議により)、その申請に係る事項につき予備審査を行わなければならない。
2 前項の場合には、第六條第二項から第六項までの規定を準用する。
3 都道府縣知事又は当該関係都府縣知事は、農林大臣に対する申請に係る事項につき前項において準用する第六條第六項の規定により適当とする旨の決定をしたときは、遅滯なく、その申請に係る書類を添附して、その旨を農林大臣に進達しなければならない。
(國営土地改良事業計画及び都道府縣営土地改良事業計画)
第八十七條 農林大臣が前條第三項の規定による進達があつた場合においてその進達に係る事項を相当と認めるとき、又は都道府縣知事が同條第一項の規定により適当とする旨の決定をしたときは、農林大臣又は都道府縣知事は、それぞれ、その進達又は決定に係る國営土地改良事業又は都道府縣営土地改良事業を行うため、土地改良事業計画を定めなければならない。
2 前項の場合には、第八條第二項及び第三項の規定を準用する。
3 農林大臣又は都道府縣知事は、第一項の規定により土地改良事業計画を定めたときは、その旨を公告し、二十日以上の相当の期間を定めて当該土地改良事業計画書の写を縱覽に供しなければならない。
4 当該事業の利害関係人は、当該土地改良事業計画に対して異議があるときは、それぞれ、農林大臣又は都道府縣知事にこれを申し立てることができる。但し、前項に規定する縱覽期間満了後十日を経過したときは、この限りでない。
5 農林大臣又は都道府縣知事は、前項の規定による申立を受けたときは、第三項に規定する縱覽期間満了後六十日以内にこれを決定しなければならない。
6 國又は都道府縣は、第四項の異議の申立がないとき、又は異議の申立があつた場合においてそのすべてについて前項の規定による決定があつたときでなければ、当該土地改良事業計画による工事に着手してはならない。
7 農林大臣又は都道府縣知事は、前條の規定による進達又は決定がない場合においても、自作農創設特別措置法第四十一條第一項に掲げる土地についての第二條第二項第三号に掲げる事業又は同項第四号に掲げる事業を行うため、國営土地改良事業又は都道府縣営土地改良事業の計画を定めることができる。この場合には、第三項から前項までの規定は適用しない。
8 前項の規定は、同項に規定する土地であつて、その土地につき耕作すべき者が賣渡を受け、若しくは定住したもの又は耕作が開始されているものについては、適用しない。
(急施の場合)
第八十八條 災害のため急速に第二條第二項第五号に掲げる土地改良事業を行う必要がある場合には、國又は都道府縣は、前條の規定にかかわらず、應急工事計画を定めてその事業の工事に着手することができる。
(工事の委任)
第八十九條 農林大臣は、政令の定めるところにより、國営土地改良事業の工事の一部を都道府縣知事に行わせることができる。
(國営事業の負担金)
第九十條 國は、政令の定めるところにより、國営土地改良事業の施行に係る地域の全部又は一部をその区域内に包括する都道府縣に、その事業に要する費用の一部を負担させることができる。
2 前項の都道府縣は、政令の定めるところにより、國営土地改良事業によつて利益を受ける者でその事業の施行に係る地域内にある土地につき第三條に規定する資格を有するものその他農林大臣の指定するものから、その者の受ける利益を限度として、前項の規定による負担金の全部又は一部を徴收することができる。
3 前項に掲げる者が國営土地改良事業の施行に係る地域の全部又は一部を地区とする土地改良区の組合員である場合には、都道府縣は、その者に対する負担金に代えて、その土地改良区からこれに相当する額の金銭を徴收することができる。
4 前二項の場合において、第八十七條第七項又は第八十八條の規定による國営土地改良事業に係る負担金の徴收については、都道府縣は、その徴收を受けるべき者の同意を得なければならない。
5 第二項又は第三項の処分を受けた者は、その処分について異議があるときは、前項に規定する場合を除いて、都道府縣知事にこれを申し立てることができる。但し、その処分を受けた日から二十日を経過したときは、この限りでない。
6 第二項及び第三項の負担金は、第八十七條第七項又は第八十八條の規定による國営土地改良事業に係るものを除いて、地方税の滯納処分の例によつて、これを徴收することができる。但し、先取特権の順位は、府縣税に次ぐものとする。
(都道府縣営土地改良事業の分担金)
第九十一條 都道府縣は、政令の定めるところにより、都道府縣営土地改良事業によつて利益を受ける者でその事業の施行に係る地域内にある土地につき第三條に規定する資格を有するものその他農林大臣の指定するものから、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百十七條の分担金を徴收することができる。この場合には、前條第三項及び第四項の規定を準用する。
(権利関係の調整)
第九十二條 國営土地改良事業又は都道府縣営土地改良事業を行つた場合には、第五十九條、第六十二條及び第六十五條の規定を準用する。この場合において、第六十二條第一項中「組合員」とあるのは、「第九十條第二項の負担金又は第九十一條の分担金を負担した者(第九十條第三項又は第九十一條後段の規定により徴收される金銭に充てるため土地改良区が第三十六條第一項の規定により賦課徴收する金銭を負担した組合員を含む。)」と読み替える。
(かんがい排水施設等の國又は都道府縣への移管)
第九十三條 國は、土地改良区その他の者が、省令の定めるところにより、その所有し、又は管理するかんがい排水施設を國において管理すべきことを申し出た場合において、その申出を相当と認めるときは、その施設を管理することができる。
2 都道府縣は、土地改良区その他の者が、省令の定めるところにより、その所有し、又は管理するかんがい排水施設又は埋立地若しくは干拓地の堤を都道府縣において管理すべきことを申し出た場合において、その申出を相当と認めるときは、その施設又は堤を管理することができる。
(國有土地物件の管理及び処分)
第九十四條 左に掲げるものであつて普通財産であるものは、農林大臣が管理し、又は処分する。
一 國営土地改良事業によつて生じた工作物その他の物件又は水の使用に関する権利
二 第百二十條の規定により收用し、又は使用した土地、権利又は立木、工作物その他の物件
三 國有の土地、権利又は立木、工作物その他の物件で、政令の定めるところにより、國営土地改良事業の用に供すべきものと決定されたもの
2 農林大臣は、前項各号に掲げるものを、都道府縣、市町村又は土地改良区その他農林大臣の指定する者に管理させることができる。
3 第一項各号に掲げるものの管理又は処分及び前項の規定による管理の委託について必要な事項は、政令で定める。
第三節 農業協同組合の行う土地改良事業又は数人が共同して行う土地改良事業
(事業の開始等)
第九十五條 農業協同組合若しくは農業協同組合連合会が土地改良事業を行おうとする場合、又は第三條に規定する資格を有する者数人が共同して土地改良事業を行おうとする場合には、省令の定めるところにより、規約及び土地改良事業の計画の概要を定め、その事業についての予備審査を都道府縣知事に申請しなければならない。
2 農業協同組合又は農業協同組合連合会は、前項の規定による申請をするには、あらかじめ、規約及び土地改良事業の計画の概要につき総会の議決を経、且つ、その計画に係る土地につき所有権、地上権、永小作権、質権、賃借権又は使用貸借による権利を有するすべての者の同意を得なければならない。
3 第一項の場合には、第六條から第九條まで及び第十條第一項の規定を準用する。
4 都道府縣知事は、前項において準用する第十條第一項の認可をしたときは、遅滯なくその旨を公告しなければならない。
5 前項の認可のあつた規約若しくは土地改良事業計画を変更し、又は土地改良事業を廃止する場合には、前四項及び第四十八條第六項の規定を準用する。
6 規約若しくは土地改良事業計画の決定若しくは変更又は土地改良事業の廃止は、第四項(前項において準用する場合を含む。)の規定による公告があるまでは、これをもつて第三者(当該農業協同組合の組合員及び第二項の同意をした者を除く。)に対抗することができない。
(土地改良区に関する規定の準用)
第九十六條 前條の規定により行う土地改良事業には、第四十六條、第四十七條、第五十條、第五十一條、第五十二條第一項から第三項まで及び第六項から第八項まで、第五十三條から第五十五條まで並びに第五十七條の規定を準用する。この場合において、これらの規定中「土地改良区」とあるのは、「農業協同組合、農業協同組合連合会又は数人共同して土地改良事業を行う者」と、第五十二條第三項中「所有権、地上権、永小作権、質権、賃借権又は使用賃借による権利を有するすべての者で組織する会議の議決を経なければならない。」とあるのは、「所有権、地上権、永小作権、質権、賃借権又は使用貸借による権利を有するすべての者の同意を得なければならない。」と読み替える。
第三章 市町村農地委員会、土地改良区又は農業協同組合の行う交換分合
(市町村農地委員会の交換分合計画の決定手続)
第九十七條 権原に基き耕作の業務を営む者二人以上が、省令の定めるところにより、これらの者が耕作の目的に供している農地を含む一定の農地を定め、その農地について所有権、地上権、永小作権、質権、賃借権又は使用貸借による権利を有する者の二分の一以上の同意を得てその一定の農地に関し第二條第二項第六号に掲げる事業(以下「交換分合」という。)を行うべきことを請求した場合において、その農地が一市町村の区域内にある場合にあつては当該市町村の農地委員会が、その農地が二以上の市町村の区域にわたる場合にあつては当該関係市町村の農地委員会がその協議により、その請求を相当と認めるときは、その農地に関し交換分合を行うため交換分合計画を定める。
2 前項の規定による請求がない場合においても、特に必要があると認めるときは、交換分合すべき農地が一市町村の区域内にある場合にあつては当該市町村農地委員会が、その農地が二以上の市町村の区域にわたる場合にあつては当該関係市町村農地委員会がその協議により、省令の定めるところにより、交換分合を行うべき農地及び交換分合計画の概要を公告し、その農地について前項に掲げる権利を有する者の二分の一以上の同意を得て、その農地につき交換分合計画を定めることができる。
3 前二項の規定により市町村農地委員会又は関係市町村農地委員会が交換分合計画を定めるには、その交換分合計画により交換分合すべき農地についての第一項に掲げる権利を有する者の三分の二以上の同意がなければならない。
4 前項の場合において、当該農地の全部又は一部が土地改良区の地区内にあるときは、その土地改良区の意見をきかなければならない。
5 市町村農地委員会又は関係市町村農地委員会が、第一項の規定による申請を受けた日から六箇月以内に、その請求のあつた交換分合を行うため交換分合計画を定めない場合には、その請求をした者は、その期間経過後六十日以内に、都道府縣農地委員会に対して、その市町村農地委員会又は関係市町村農地委員会にその交換分合計画を定めるよう指示すべき旨を請求することができる。
6 都道府縣農地委員会は、前項の規定による請求を受けた場合には、その請求のあつた農地の全部又は一部に関し交換分合計画を定めることを不相当と認めるときを除いて、その請求を受けた日から三十日以内に前項の規定による指示をしなければならない。
第九十八條 市町村農地委員会又は関係市町村農地委員会は、前項の規定により交換分合計画を定めたときは、遅滯なくその旨を公告し、且つ、六十日間交換分合計画書を縱覽に供しなければならない。
2 市町村農地委員会又は関係市町村農地委員会は、前項の規定による公告をしたときは、当該交換分合計画により交換分合すべき農地についての所有権、地上権、永小作権、地役権、先取特権、質権、抵当権、賃借権又は使用貸借による権利を有する者(その農地のある市町村の区域内に住所を有する者を除く。)に対して、その旨を通知しなければならない。
3 前項に掲げる権利を有する者は、当該交換分合計画に対して異議があるときは、市町村農地委員会又は関係市町村農地委員会にこれを申し立てることができる。但し、第一項に規定する縱覽期間を経過したときは、この限りでない。
4 市町村農地委員会又は関係市町村農地委員会は、前項の規定による申立を受けたときは、第一項に規定する縱覽期間満了後六十日以内にこれを決定しなければならない。
5 前項の規定による決定に対して不服がある申立人は、都道府縣農地委員会に訴願をすることができる。但し、その決定後十日を経過したときは、この限りでない。
6 都道府縣農地委員会は、前項の訴願を受理したときは、同項但書に規定する期間満了後六十日以内にこれを裁決しなければならない。
7 第三項の異議の申立がないとき、異議の申立があつた場合においてそのすべてについて第四項の規定による決定があり、且つ、第五項の訴願の提起がなかつたとき、又は訴願の提起があつた場合においてそのすべてについて前項の規定による裁決があつたときは、市町村農地委員会又は関係市町村農地委員会は、遅滯なく当該交換分合計画について都道府縣農地委員会の認可を受けなければならない。
8 都道府縣農地委員会は、前項の認可をしたときは、遅滯なくその旨を公告しなければならない。
9 第一項、第二項又は第四項の場合において、関係市町村農地委員会が公告、縱覽又は通知をするには、そのすべてがこれを行わなければならず、異議の決定をするには、そのすべてが協議してこれをしなければならない。
(土地改良区の交換分合計画の決定手続)
第九十九條 土地改良区は、交換分合を行おうとする場合には、交換分合計画を定め、都道府縣知事の認可を受けなければならない。
2 前項の規定により交換分合計画を定める場合には、第五十二條第三項から第五項までの規定を準用する。
3 第一項の認可を申請するには、その申請書に関係市町村農地委員会の同意書を添附しなければならない。但し、同意を求めた日から六十日以内にその同意が得られない場合には、その事由を記載した書面を添附すればよい。
4 前項但書の場合において、第一項の認可をしようとするときは、都道府縣知事は、関係市町村農地委員会の意見をきかなければならない。
5 都道府縣知事は、第一項の認可の申請を相当と認める場合には、遅滯なく申請の旨を公告し、且つ、六十日間交換分合計画書の写を縱覽に供しなければならない。
6 前項の規定による公告があつたときは、当該交換分合計画により交換分合すべき農地についての前條第二項に掲げる権利を有する者(その農地のある市町村の区域内に住所を有する者を除く。)に対して、その旨を通知しなければならない。
7 前項の権利を有する者は、当該交換分合計画に対して異議があるときは、都道府縣知事にこれを申し立てることができる。但し、第五項に規定する縱覽期間を経過したときは、この限りでない。
8 都道府縣知事は、前項の規定による申立を受けたときは、第五項の縱覽期間満了後六十日以内にこれを決定しなければならない。
9 都道府縣知事は、前項の規定による決定をするには、都道府縣農地委員会の意見をきかなければならない。
10 都道府縣知事は、第七項の異議の申立がないとき、又は異議の申立があつた場合においてそのすべてについて第八項の規定による決定があつたときでなければ、第一項の認可をすることができない。
11 都道府縣知事は、第一項の認可をしたときは、遅滯なくその旨を公告しなければならない。
(農業協同組合の交換分合計画の決定手続)
第百條 農業協同組合は、交換分合を行おうとする場合には、総会の議決を経て交換分合計画を定め、その交換分合計画により交換分合すべき農地について第九十七條第一項に掲げる権利を有する者の同意を得て、都道府縣知事の認可を受けなければならない。
2 前項の場合には、前條第三項から第十一項までの規定を準用する。
(交換分合計画の定め方)
第百一條 交換分合計画は、耕作者の農業経営の合理化に資するように定めなければならない。
2 処分の制限がある農地であつて省令で定めるもの及び地上権、永小作権又は賃借権が設定された農地であつて当該権利が差押、仮差押又は仮処分の目的となつているものに関しては、交換分合計画を定めることができない。
第百二條 農地の所有権についての交換分合については、交換分合計画において、交換分合により所有者が取得すべき農地及び失うべき農地並びに所有権の移轉の時期を定めなければならない。
2 前項の場合において、所有者の取得すべきすべての農地と失うべきすべての農地とは、地目、地積、土性、水利、傾斜、温度等を、省令の定めるところにより、総合的に勘案して、おおむね同等でなければならない。但し、その者の同意を得た場合には、この限りでない。
3 第一項の場合には、所有者が取得すべきすべての農地は、その地積及び價格において、その者が失うべきすべての農地に比べて二割以上の増減があつてはならない。但し、その者の同意を得た場合には、この限りでない。
4 第二項の場合において、所有者が取得すべき農地と失うべき農地とが地目、地積、土性、水利、傾斜、温度等により相殺することができない部分がある場合には、金銭による清算をするものとし、その額並びに支拂の方法及び時期を定めなければならない。
第百三條 前條第一項の場合において、所有者が失うべき農地につき先取特権、質権又は抵当権があるときは、これらの権利に代るべき先取特権、質権又は抵当権を設定すべき農地並びにこれらの権利の設定の時期及び存続期間その他の條件を定めなければならない。
2 前項の場合には、当該権利を設定すべき農地は、所有者が所有し、又は取得すべき農地であつて、その價格がその設定すべき権利に照應する現在の権利の目的となつている農地の價格と同等以上のものでなければならない。
3 第一項の場合において、当該所有者が前條第四項の規定による清算金を取得すべきときは、前項の規定にかかわらず、当該権利を設定すべき農地は、その清算金の限度内において、その設定すべき権利に照應する現在の権利の目的となつている農地の價格より低い價格の農地でよい。この場合には、これらの價格の差額に相当する現在の権利の及ぶべき清算金の額を定めなければならない。
4 第一項の場合には、設定すべき権利の存続期間は、その権利に照應する現在の権利の残存期間とし、その他の條件は、現在の権利の條件によらなければならない。
第百四條 第百二條第一項の場合において、所有者が失うべき農地につき地上権、永小作権、賃借権又は使用貸借による権利があるときは、これらの権利に代るべき地上権、永小作権、賃借権又は使用貸借による権利を設定すべき農地並びにこれらの権利の設定の時期及び存続期間、対價その他の條件を定めなければならない。
2 前項の場合には、第百二條第二項から第四項まで及び前條の規定を準用する。
第百五條 第百二條第一項の場合において、当該交換分合により地役権を設定する必要があると認められるときは、その地役権を設定すべき土地、地役権者並びにその地役権の設定の時期及び地役権の目的その他の條件を定め、現に地役権を有する者がその権利を行使する利益を受ける必要がなくなると認められるときは、その権利及び消滅の時期を定めなければならない。
(交換分合の効果)
第百六條 第九十八條第八項又は第九十九條第十一項(第百條第二項において準用する場合を含む。以下同じ。)の規定による公告があつたときは、その公告があつた交換分合計画の定めるところにより、所有権が移轉し、先取特権、質権、抵当権、地上権、永小作権、賃借権若しくは使用貸借による権利が設定され、又は地役権が設定され、若しくは消滅する。
2 前項の規定により先取特権、質権、抵当権、地上権、永小作権、賃借権又は使用貸借による権利が設定された場合には、これに照應する從前の権利は、これらの権利の設定された時において消滅する。但し、第百三條第三項(第百四條第二項において準用する場合を含む。)の規定により先取特権、質権又は抵当権の及ぶべき額を定めた場合には、これらの権利は、この額の清算金については、なお存続するものとする。
(所有権以外の権利についての交換分合)
第百七條 農地の地上権、永小作権、賃借権又は使用貸借による権利についての交換分合には、第百二條から前條までの規定を準用する。
(清算金)
第百八條 第九十八條第八項又は第九十九條第十一項の規定による公告があつたときは、市町村農地委員会、土地改良区又は農業協同組合は、その公告があつた交換分合計画の定めるところに從い清算金を支拂わなければならない。
2 前項の場合には、同項の者は、当該交換分合計画の定めるところに從い清算金を徴收することができる。
3 市町村農地委員会は、市町村又は農業協同組合に対し、政令の定めるところにより、前二項の規定による清算金の支拂及び徴收を委任することができる。
(農地の形質変更等の禁止)
第百九條 第九十八條第八項又は第九十九條第十一項の規定による公告があつた後は、その公告があつた交換分合計画において定める農地につき所有権その他の権利を有する者は、交換分合に支障を及ぼすおそれのない場合を除いて、都道府縣知事の許可を受けなければ、その農地の形質を変更してはならない。
(自作農創設特別措置法の先買権の特例)
第百十條 自作農創設特別措置法第二十八條第一項(同條第五項及び第四十一條第四項において準用する場合を含む。)の規定は、交換分合計画の定めるところにより農地の所有権を移轉する場合には、適用しない。
2 交換分合計画の定めるところにより自作農創設特別措置法第十六條又は同法第四十一條の規定により賣渡があつた農地の所有権を取得した者は、同法第二十八條第一項に規定する「農地の所有権を承継した者」(同條第五項及び第四十一條第四項において準用する場合を含む。)でないものとみなす。
3 交換分合計画の定めるところにより農地の所有権を移轉する者が、自作農創設特別措置法第十六條又は同法第四十一條の規定によりその農地の賣渡を受けた者又はその者からその農地の所有権を承継した者である場合には、その者がその交換分合計画の定めるところにより取得すべき農地で同法第十六條又は第四十一條の規定により賣渡を受けた農地に照應するものとして市町村農地委員会が指定するものにつき、その取得の時期に同法第二十八條第三項(同條第五項及び第四十一條第四項において準用する場合を含む。)の規定による賣渡があつたものとみなす。
(農地以外の土地等の権利についての交換分合)
第百十一條 第九十七條から前條までの規定は、農地の集團化に伴つて行う農地の利用上必要な土地に関する権利、農業用施設に関する権利及び水の使用に関する権利の交換分合について準用する。
第四章 補則
(書類の送付に代る公告)
第百十二條 住所又は居所が知れない場合その他書類の送付をすることができない場合において、行政廳又は土地改良区がその送付に代えて公告をしたときは、その公告があつた日に書類を発送したものとみなし、その公告があつた日から十日を経過したときに相手方に到達したものとみなす。
(処分等の行爲の承継人に対する効力)
第百十三條 この法律又はこの法律に基く命令の規定による処分、手続その他の行爲は、土地改良事業に関係がある土地、物件又は権利につき所有権その他の権利を有する者の承継人に対しても、その効力を有する。
(分合筆手続の代行)
第百十四條 土地改良事業を行う者は、その事業を行うため土地を分筆し、又は合筆する必要がある場合には、その土地の所有者に代つて土地台帳法(昭和二十二年法律第三十号)第二十六條に規定する手続をすることができる。
(登記の特例)
第百十五條 土地改良事業の施行に係る地域内にある不動産の登記については、政令で特例を定めることができる。
(他の登記の停止)
第百十六條 第五十二條第八項(第九十六條において準用する場合を含む。以下本條及び第百三十一條において同じ。)の規定による公告があつた後は、土地改良事業の施行に係る地域内にある土地に関しては、その土地改良事業による登記をした後でなければ他の登記をすることができない。但し、登記の申請人が確定日附のある書類により同項の規定による公告前に登記原因の生じたことを証明した場合には、この限りでない。
(施行に係る地域を数区に分けた場合)
第百十七條 土地改良事業の施行に係る地域を数区に分けた場合には、その各々の区及びその区に係る土地改良事業は、第四十六條、第五十一條、第五十二條及び第五十五條(第九十六條においてこれらの規定を準用する場合を含む。)の適用については、それぞれ、土地改良事業の施行に係る地域及びその地域に係る土地改良事業とみなす。
(測量、檢査又は簿書の閲覽等の手続)
第百十八條 左に掲げる者は、土地改良事業に関し土地等の調査をするため必要がある場合には、あらかじめ土地の占有者に通知して、その必要の限度内において、他人の土地に立ち入つて測量し、又は檢査することができる。
一 國若しくは都道府縣の職員
二 土地改良区の役職員
三 都道府縣農地委員会又は市町村農地委員会の委員又はこれらの委員会の事務に從事する者
四 第五條、第七條又は第八十五條の規定による申請をしようとする者
2 前項第四号の者が同項の行爲をするには、あらかじめ当該土地の所在地の市町村長の許可を受けなければならない。
3 第一項の場合には、同項第一号から第三号までの者はその身分を示す証票を、同項第四号の者は前項の許可を受けたことを証する書面を携帶し、当該土地の占有者の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。
4 第一項の場合には、同項第一号の國若しくは都道府縣、第二号の土地改良区、第三号の都道府縣農地委員会若しくは市町村農地委員会又は第四号の者は、同項に掲げる行爲によつて通常生ずべき損失を補償しなければならない。
5 第一項第一号から第三号までの者は、当該事業の施行に係る地域を管轄する登記所、漁業免許に関する登録の所管廳、土地台帳若しくは家屋台帳の所管廳又は市町村の事務所につき、無償でその事業に関し必要な簿書の閲覽若しくは謄写又はその謄本の交付を求めることができる。
(障害物の移轉等)
第百十九條 國、都道府縣又は土地改良区は、土地改良事業の施行のため必要がある場合には、その必要の限度内において、その施行に係る地域内にある物件でその事業の障害となるものを移轉し、除去し、又は取りこわすことができる。但し、これによつて通常生ずべき損失を補償しなければならない。
(土地等の收用又は使用)
第百二十條 國、都道府縣又は土地改良区は、土地改良事業の施行に伴い用排水機又は地下水源の利用に関する設備を設置するために必要な土地を土地收用法(明治三十三年法律第二十九号)の規定により收用し、又は使用することができる。
2 前項の規定は、土地の所有権及び担保権以外の権利、土地に定着する物件又はこれに関する権利、土石砂れき又は水の使用に関する権利の收用又は使用に準用する。
(急迫の際の使用等)
第百二十一條 國、都道府縣又は土地改良区は、その管理するかんがい排水施設、農業用道路その他農地の保全又は利用上必要な施設(土地改良事業の工事中に係るものを含む。)の風雪、出水又は高潮若しくは土砂の崩かいによる急迫の災害を防ぐため必要があるときは、他人の土地を一時使用し、又はその土石竹木その他の現品を使用し、若しくは收用することができる。但し、時價によりその損失の全額を補償しなければならない。
(損失補償)
第百二十二條 土地改良事業を行う者は、その事業の利害関係人がその事業によつて通常受けるべき損失を補償しなければならない。
2 第十條第三項、第四十八條第七項、第八十七條第三項、第九十五條第四項(同條第五項において準用する場合を含む。)、第九十八條第八項又は第九十九條第十一項の規定による公告があつた後において土地の形質を変更し、工作物の新築、改築若しくは修繕をし、又は物件を附加増置した場合には、これについての損失は、補償しなくてもよい。但し、都道府縣知事の許可を受けてこれらの行爲をした場合には、この限りでない。
3 土地改良区の組合員は、第六十一條第三項及び第百十八條から前條までに規定する場合を除いては、その土地改良区の行う事業によつて受けた損失の補償を請求することができない。但し、規約に特別の定がある場合には、この限りでない。
(補償金等の供託)
第百二十三條 土地改良事業を行う者は、換地計画若しくは交換分合計画に定める清算金又は第百十九條若しくは前條の規定による補償金を支拂う場合において、当該土地、物件又は権利につき先取特権、質権又は抵当権があるときは、その補償金又は清算金を供託しなければならない。但し、先取特権、質権又は抵当権を有する者から供託をしなくてもよい旨の申出があつた場合には、この限りでない。
2 前項の先取特権、質権又は抵当権を有する者は、同項の規定により供託された補償金又は清算金に対して、その権利を行うことができる。
(数都府縣にわたる事項の処理)
第百二十四條 土地改良事業の施行に係る地域又は土地改良区の地区が二以上の都府縣にわたる場合には、この法律において都道府縣知事の権限に属させた事項は、第八十五條及び第八十六條に規定するものを除いて、農林大臣が処理する。
(特別区等に対する規定の適用)
第百二十五條 この法律中市町村又は市町村長に関する規定は、特別区のある地にあつては特別区又は特別区の区長に、地方自治法第百五十五條第二項の市にあつては区又は区長に、全部事務組合又は役場事務組合のある地にあつては組合又は組合の管理者に、市町村農地委員会に関する規定は、地区農地委員会の設けられている市町村の地区にあつては地区農地委員会に適用する。
(補助金の交付及び被補助者に対する監督)
第百二十六條 國は、その予算の範囲内において、農地の改良、開発、保全又は集團化を行う者に対して補助金を交付することができる。
2 前項の補助金の交付を受けようとする者は、省令の定めるところにより、補助金の交付申請書を事業計画書、事業予算書その他必要な書類とともに農林大臣に提出しなければならない。
3 農林大臣は、前項の提出書類を審査し、適当と認めるときは、補助金の交付を決定するものとする。
第百二十七條 農林大臣は、前條の規定による補助金の交付の目的を最もよく達成するため、補助金の交付を受ける者に対して、当該事業の施行に関し必要な指示を行い、当該事業の目的たる施設を檢査し、報告書の提出を命じ、その他必要な処分をすることができる。
2 農林大臣は、前項に規定する者が補助金の交付の目的を達成し得ないと認められる場合には、その者に対して、補助金の全部若しくは一部を交付せず、その交付を停止し、又は交付した補助金の全部若しくは一部の返還を命ずることができる。
3 返還すべき補助金は、地方公共團体が返還するものを除いて、國税滯納処分の例によつて徴收することができる。但し、先取特権の順位は、國税に次ぐものとする。
第百二十八條 農林大臣は、都道府縣に対するものを除いて、政令の定めるところにより、前二條の規定による権限の一部を都道府縣知事に行わせることができる。
第百二十九條 前三條に規定するものの外、補助金の交付に関し必要な事項は、政令で定める。
(異議の申立に関する期間の計算等)
第百三十條 この法律の規定による異議の申立の期間の計算をする場合には、郵便物の輸送に要した日数は、期間に算入しない。
2 異議の申立は、期間が経過した後においても、容認すべき事由があると認めるときは、なお受理することができる。
3 異議の申立又は裁定の申請に対する決定又は裁定は、文書をもつてし、その理由を附してこれを当事者に交付しなければならない。
(権利変動の通知)
第百三十一條 第五十二條第八項の規定による公告前において土地改良事業の施行に係る地域内にある土地につき権利の設定、移轉、変更若しくは消滅又は処分の制限があつたときは、その当事者は、遅滯なくその旨をその土地改良事業を行う者に通知しなければならない。
第五章 監督
(報告の徴取)
第百三十二條 農林大臣又は都道府縣知事は、土地改良区又は第九十五條の規定により数人共同して土地改良事業を行う者に法令、法令に基いてする行政廳の処分又は定款、規約、土地改良事業計画、換地計画若しくは交換分合計画を遵守させるために必要があると認めるときは、これらの者からその事業に関し報告を徴することができる。
(業務状況の檢査)
第百三十三條 土地改良区の組合員が、総組合員の十分の一以上の同意を得て、その土地改良区の事業又は会計が法令、法令に基いてする行政廳の処分又は定款、規約、土地改良事業計画、換地計画若しくは交換分合計画に違反する疑があることを理由として檢査を請求した場合には、都道府縣知事は、その土地改良区の事業又は会計の状況を檢査しなければならない。
2 農林大臣又は都道府縣知事は、土地改良区又は第九十五條の規定により数人共同して土地改良事業を行う者の事業又は会計が法令、法令に基いてする行政廳の処分又は定款、規約、土地改良事業計画、換地計画若しくは交換分合計画に違反すると認める場合には、何時でも、その業務又は会計の状況を檢査することができる。
(違反行爲に対する措置)
第百三十四條 農林大臣又は都道府縣知事は、前條の規定による檢査を行つた場合において、当該土地改良区又は数人共同して土地改良事業を行う者の業務又は会計が法令、法令に基いてする行政廳の処分又は定款、規約、土地改良事業計画、換地計画若しくは交換分合計画に違反すると認めるときは、これらの者に対し必要な措置を採るべき旨を命ずることができる。
(解散を命ずる裁判)
第百三十五條 土地改良区が第十五條に規定する事業以外の事業を行つたときは、裁判所は、農林大臣又は都道府縣知事の申立により、その土地改良区の解散を命ずることができる。
2 前項の規定による事件は、当該土地改良区の主たる事務所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄とする。
3 第一項の場合における手続については、最高裁判所の定めるところによる。
(決議、選挙等の取消等)
第百三十六條 土地改良区の組合員が、総組合員の十分の一以上の同意を得て、総会、総代会の招集手続若しくは議決の方法又は役員若しくは議員の選挙の方法が法令、法令に基いてする行政廳の処分又は定款若しくは規約に違反することを理由としてその議決又は選挙若しくは当選の取消を請求した場合において、都道府縣知事は、その違反の事実があると認めるときは、その決議又は選挙若しくは当選を取り消すことができる。
2 前項の規定は、第四十八條第二項及び第五十二條第三項(第九十六條、第九十九條第二項及び第百十一條において準用する場合を含む。)の会議に準用する。
第六章 罰則
第百三十七條 第百九條(第百十一條において準用する場合を含む。)の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
第百三十八條 左の各号の一に該当する者は、六月以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
一 第百十八條第一項の規定により國又は都道府縣の職員が行う測量又は檢査を拒み、妨げ、又は忌避した者
二 第百十九條の規定により國又は都道府縣の職員が行う移轉、除去又は取りこわしを拒み、妨げ、又は忌避した者
三 第百二十七條第一項又は第百三十三條の規定による檢査を拒み、妨げ、又は忌避した者
四 第百二十七條第一項又は第百三十二條の規定による報告をせず、又は虚僞の報告をした者
第百三十九條 土地改良事業の施行に関して設けた標識を移轉し、汚損し、き損し、又は除去した者は、三万円以下の罰金に処する。
第百四十條 土地改良区の役員若しくは総代又は土地改良区連合の役員若しくは議員が、その職務に関して賄ろを收受し、又は要求し、若しくは約束したときは、三年以下の懲役に処する。よつて不正の行爲をし、又は相当の行爲をしないときは、七年以下の懲役に処する。
2 前項に掲げる役員、総代又は議員であつた者がその在職中に請託をうけて職務上不正な行爲をし、又は相当の行爲をしなかつたことに関し賄ろを收受し、要求し、又は約束したときは、三年以下の懲役に処する。
3 第一項に掲げる役員、総代又は議員がその職務に関し請託を受けて第三者に賄ろを供與させ、又はその供與を約束したときは、三年以下の懲役に処する。
4 犯人又は情を知つた第三者の收受した賄ろは、没收する。その全部又は一部を没收することができないときは、その價額を追徴する。
第百四十一條 前條第一項から第三項までに掲げる者に対して賄ろを供與し、又はその申込若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は二十五万円以下の罰金に処する。
2 前條の罪を犯した者が自首したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。
第百四十二條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者がその法人又は人の業務又は財産に関して第百三十七條及び第百三十八條に規定する違反行爲をしたときは、行爲者を罰する外、その法人又は人に対して各本條の罰金を科する。
第百四十三條 左の場合においては、土地改良区又は土地改良区連合の理事若しくは監事又は清算人を三万円以下の過料に処する。
一 第十五條に規定する事業以外の事業を営んだとき。
二 第四十一條第一項の規定に違反したとき。
三 第六十九條又は第七十一條に掲げる書類に記載すべき事項を記載せず、又は不実の記載をしたとき。
四 第七十條の規定に違反して土地改良区の残余財産を分配したとき。
五 第七十六條において準用する民法第七十九條の期間内に債権者に弁済をしたとき。
六 この法律の規定による公告をせず、又は不実の公告をしたとき。
第百四十四條 左の場合においては、土地改良区又は土地改良区連合の理事若しくは監事又は清算人を一万円以下の過料に処する。
一 第二十條の規定に違反したとき。
二 第二十五條第一項、第二十六條又は第二十七條の規定に違反したとき。
三 第二十九條第一項の規定に違反して書簿を備えず、若しくは保存せず、又は同條第二項の規定による省令に違反してその書簿に記載すべき事項を記載せず、若しくは不実の記載をしたとき。
四 第二十九條第三項の規定に違反して書簿の閲覽を拒んだとき。
五 第百三十四條の規定による命令に違反したとき。
第百四十五條 第十四條第二項又は第七十八條第二項の規定に違反した者は、五千円以下の過料に処する。
附 則
この法律施行の期日は、公布の日から起算して六十日をこえない期間内において政令で定める。
大藏大臣 池田勇人
農林大臣 森幸太郎
建設大臣 益谷秀次
内閣総理大臣 吉田茂
土地改良法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十四年六月六日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百九十五号
土地改良法
目次
第一章
総則(第一条―第四条)
第二章
土地改良事業
第一節
土地改良区の行う土地改良事業
第一款
土地改良区の設立(第五条―第十五条)
第二款
土地改良区の管理(第十六条―第四十五条)
第三款
土地改良区の事業
第一目
事業の施行(第四十六条―第五十七条)
第二目
権利関係の調整(第五十八条―第六十五条)
第四款
土地改良区の地区変更、解散及び合併(第六十六条―第七十六条)
第五款
土地改良区連合(第七十七条―第八十四条)
第二節
国又は都道府県の行う土地改良事業(第八十五条―第九十四条)
第三節
農業協同組合の行う土地改良事業又は数人が共同して行う土地改良事業(第九十五条・第九十六条)
第三章
市町村農地委員会、土地改良区又は農業協同組合の行う交換分合(第九十七条―第百十一条)
第四章
補則(第百十二条―第百三十一条)
第五章
監督(第百三十二条―第百三十六条)
第六章
罰則(第百三十七条―第百四十五条)
附則
第一章 総則
(この法律の目的及び土地改良事業施行の要件)
第一条 この法律は、農業経営を合理化し、農業生産力を発展させるため、農地の改良、開発、保全及び集団化を行い、食糧その他農産物の生産の維持増進に寄与することを目的とする。
2 土地改良事業の施行に当つては、その事業は、国土資源の総合的な開発及び保全に資 するとともに国民経済の発展に適合するものであり、且つ、土地利用、森林その他資源の保全、開発に適切な考慮を払つて政令で定める計画基準に準拠するものでなければならない。
(定義)
第二条 この法律において「農地」とは、耕作の目的に供される土地をいう。
2 この法律において「土地改良事業」とは、この法律により行う左に掲げる事業をいう。
一 かんがい排水施設、農業用道路その他農地の保全又は利用上必要な施設の新設、管理、廃止又は変更
二 区画整理
三 開田又は開畑
四 埋立又は干拓
五 農地又はその保全若しくは利用上必要な施設の災害復旧
六 農地に関する権利並びにその農地の利用上必要な土地に関する権利、農業用施設に関する権利及び水の使用に関する権利の交換分合
七 その他農地の改良又は保全のため必要な事業
(土地改良事業に参加する資格)
第三条 土地改良事業に参加する資格を有する者は、その事業の施行に係る地域内にある土地についての左の各号の一に該当する者とする。
一 所有権に基き耕作の業務の目的に供される農地については、その所有者
二 所有権以外の権原に基き耕作の業務の目的に供される農地については、省令の定めるところにより、市町村農地委員会に対しその所有者が当該土地改良事業に参加すべき旨の申出があり且つその申出が相当であつて市町村農地委員会がこれを承認した場合にあつては、その所有者、その他の場合にあつては、その権原に基き耕作の業務を営む者
三 農地以外の土地であつて所有権に基き使用及び収益の目的に供されるものについては、その所有者
四 農地以外の土地であつて所有権以外の権原に基き使用及び収益の目的に供されるものについては、その権原に基き使用及び収益をする者が、省令の定めるところにより、その所有者の同意を得て市町村農地委員会に対し当該土地改良事業に参加すべき旨を申し出た場合にあつては、その者、その他の場合にあつては、その所有者
2 前項第二号の所有者及び権原に基き耕作の業務を営む者が、省令の定めるところにより、合意によつてその資格が交替すべき旨を市町村農地委員会に申し出、且つ、その申出が相当であつて市町村農地委員会がこれを承認したときは、その承認のあつた時にその資格が交替するものとする。同項第四号の所有者並びに権原に基き使用及び収益をする者が、省令の定めるところにより、合意によつてその資格を交替すべき旨を市町村農地委員会に申し出た場合も、また同様とする。
3 前二項の規定の適用については、賃貸人又は貸主が、疾病その他省令で定める事由によつて当該農地につき自ら耕作の業務を営むことができないため、賃貸借又は使用貸借により一時その農地を他人の耕作の業務の目的に供した場合において、市町村農地委員会が、省令の定めるところにより、その賃貸人又は貸主が近く自ら耕作の業務を営むものと認め、且つ、これを相当と認めるときは、その賃貸人又は貸主をその農地につき権原に基き耕作の業務を営む者とみなす。
4 第一項の規定の適用については、自作農創設特別措置法(昭和二十一年法律第四十三号)第四十一条の二第一項の規定により土地を使用する者は、その土地が農地である場合にあつては、その農地につき所有権に基き耕作の業務を営む者とみなし、その土地が農地以外の土地である場合にあつては、その土地の所有者とみなす。
5 第五十条第一項の規定により譲与する土地又は前項に規定する土地の所有者としての国には、第一項の規定を適用しない。
(公有水面の埋立の免許を受けた者に対する適用)
第四条 この法律の規定の適用については、公有水面埋立法(大正十年法律第五十七号)により埋立の免許を受けた者は、土地の所有者とみなす。
第二章 土地改良事業
第一節 土地改良区の行う土地改良事業
第一款 土地改良区の設立
(予備審査の申請)
第五条 第三条に規定する資格を有する十五人以上の者は、その資格に係る土地を含む一定の地域を定め、その地域について土地改良区を設立することについての予備審査を都道府県知事に申請することができる。
2 前項の者は、同項の規定による申請をするには、あらかじめ、省令の定めるところにより、同項の一定の地域について行うべき土地改良事業(第二条第二項第六号に掲げるものを除く。以下、第十五条の場合を除いて、この章において同じ。)の計画の概要、定款作成の基本となるべき事項、第三条に規定する資格を有する者で土地改良事業計画及び定款の作成に当るべきものの選任方法その他必要な事項を公告して、その資格を有する者の三分の二以上の同意を得なければならない。
3 国有地又は国若しくは地方公共団体が公用若しくは公共の用に供している土地を含めて第一項の一定の地域を定めるには、その土地を管理する行政庁又は地方公共団体の承認がなければならない。
4 第一項の規定による申請をするには、その申請書に第二項の規定により公告した事項を記載した書面及び同意があつたことを証する書面並びに前項の承認のあつたことを証する書面を添附しなければならない。
(予備審査)
第六条 都道府県知事は、前条の規定による申請があつた場合には、その土地改良区の設立につき予備審査を行わなければならない。
2 都道府県知事は、前項の審査に当つては、省令の定めるところにより、農地の改良、開発及び保全に関し専門的知識を有する技術者に、当該申請に係る事項を調査して報告を提出することを求めなければならない。
3 前項の調査は、当該申請に係る事項の必要性及び可能性についての調査を含むものでなければならない。
4 都道府県知事は、第二項の報告が提出されたときは、遅滞なくその旨を公告し、二十日以上の相当の期間を定めてその報告並びに前条第一項の規定による申請に係る土地改良事業の計画の概要及び定款作成の基本となるべき事項を記載した書面を縦覧に供しなければならない。
5 当該土地改良事業に関係のある土地又は土地に定著する物件の所有者、漁業権又は入漁権を有する者その他これらの土地物件又は権利に関し権利を有する者(以下これらの者を「利害関係人」という。)及び前条第一項の申請人は、都道府県知事に、前項の規定による縦覧に係る事項についての意見を提出することができる。但し、前項に規定する縦覧期間満了後十日を経過したときは、この限りでない。
6 都道府県知事は、第二項の報告に基き、前項の意見を参酌して、前条第一項の規定による申請に係る土地改良区の設立の適否を決定し、その旨を当該申請人に通知しなければならない。
(設立認可の申請)
第七条 第五条の規定により申請をした者は、前条第六項の規定により土地改良区の設立を適当とする旨の通知を受けたときは、省令の定めるところにより、土地改良事業計画、定款その他必要な事項を定め、都道府県知事にその申請に係る土地改良区の設立の認可を申請することができる。
2 前項の土地改良事業計画及び定款は、第五条第二項の規定により同意を得た選任方法によつて選任された者によつて、同条第一項の規定による申請に係る土地改良事業の計画の概要及び定款作成の基本となるべき事項に基いて作成されたものでなければならない。
3 第一項の規定により申請をする者は、土地改良事業計画及び定款を定めるため、都道府県に農地の改良、開発及び保全に関し専門的知識を有する技術吏員の援助を求めることができる。
4 都道府県は、正当の事由がある場合を除いて、前項の規定による請求を拒んではならない。
(審査及び公告等)
第八条 都道府県知事は、前条第一項の規定による申請があつたときは、当該土地改良事業計画及び定款につき詳細な審査を行つてその適否を決定し、その旨を当該申請人に通知しなければならない。
2 都道府県知事は、前項の審査に当つては、省令の定めるところにより、農地の改良、開発及び保全に関し専門的知識を有する技術者が調査して提出する報告に基かなければならない。
3 前項の調査は、当該土地改良事業のすべての効用と費用とについての調査を含むものでなければならない。
4 都道府県知事は、第一項の規定により当該申請を適当とする旨の決定をしたときは、遅滞なくその旨を公告し、二十日以上の相当の期間を定めてその決定に係る土地改良事業計画書及び定款の写を縦覧に供しなければならない。
(異議の申立)
第九条 当該土地改良事業の利害関係人は、前条第四項の規定による公告に係る決定に対して異議があるときは、都道府県知事にこれを申し立てることができる。但し、同項に規定する縦覧期間満了後十日を経過したときは、この限りでない。
2 都道府県知事は、前項の規定による異議の申立を受けたときは、前条第二項に掲げる技術者の意見をきいて、同条第四項に規定する縦覧期間満了後六十日以内にこれを決定しなければならない。
3 都道府県知事は、前項の規定による決定が第五条第一項の規定による申請に係る土地改良事業の計画の概要又は定款作成の基本となるべき事項に矛盾するものであるときは、第七条第一項の認可の申請を却下しなければならない。
(土地改良区の成立)
第十条 都道府県知事は、前条第一項の異議の申立がないとき、又は異議の申立があつた場合においてそのすべてについて同条第二項の規定による決定があつたときは、同条第三項の場合を除いて、土地改良区の設立の認可をしなければならない。
2 土地改良区は、前項の規定による認可により、第五条第一項の一定の地域を地区として成立する。
3 都道府県知事は、土地改良区が成立したときは、遅滞なくその旨を公告しなければならない。
4 土地改良区の成立は、前項の規定による公告があるまでは、これをもつて組合員その他の第三者に対抗することができない。
(組合員)
第十一条 土地改良区の地区内にある土地につき第三条に規定する資格を有する者は、その土地改良区の組合員とする。
(設立費用の負担)
第十二条 土地改良区の設立に関する費用は、その土地改良区の負担とする。但し、土地改良区が成立しなかつた場合には、その費用は、その設立を申請した者の負担とする。
(土地改良区の法人格)
第十三条 土地改良区は、法人とする。
(名称独占)
第十四条 土地改良区は、その名称中に土地改良区という文字を用いなければならない。
2 土地改良区でないものは、その名称中に土地改良区という文字を用いてはならない。
(土地改良区の事業)
第十五条 土地改良区は、その地区内の土地改良事業を行うものとする。
2 土地改良区は、前項の土地改良事業に附帯する事業を行うことができる。
第二款 土地改良区の管理
(定款)
第十六条 土地改良区の定款には、左に掲げる事項を記載しなければならない。
一 名称及び認可番号
二 地区
三 事業
四 事務所の所在地
五 経費の分担に関する事項
六 役員の、定数、任期、職務の分担及び選任に関する事項
七 事業年度
八 公告の方法
2 事業年度については、省令で定める。
(規約)
第十七条 左に掲げる事項は、定款で定めなければならない事項を除いて、規約で定めることができる。
一 総会又は総代会に関する事項
二 業務の執行及び会計に関する事項
三 役員に関する事項
四 組合員に関する事項
五 その他必要な事項
(役員の選任)
第十八条 土地改良区に、役員として、理事及び監事を置く。
2 理事の定数は、五人以上とし、監事の定数は、二人以上の偶数とする。
3 理事及び半数の監事は、定款の定めるところにより、組合員のうちから総会で選挙し、他の半数の監事は、都道府県知事が任命する。但し、土地改良区設立当時の理事及び選挙によるべき監事は、第五条第一項の申請人及び同条第二項の同意者のうちから申請人が選任する。
4 役員の選挙は、無記名投票によつて行う。
5 理事及び選挙による監事の任期は、一年とする。但し、定款で二年以内において別段の期間を定めたときは、その期間とする。
6 設立当時の理事及び選挙によるべき監事の任期は、前項の規定にかかわらず、第一回の総会までとする。
7 補欠役員は、その前任者の残任期間在任する。
8 理事又は選挙による監事は、その任期が満了しても、後任の理事又は監事が就任するまでの間は、なおその職務を行う。
9 土地改良区は、理事の氏名及び住所を都道府県知事に届け出なければならない。
10 都道府県知事は、前項の規定による届出があつたときは、遅滞なくこれを公告しなければならない。
11 土地改良区は、前項の規定による公告があるまでは、理事の代表権をもつて第三者(組合員を除く。)に対抗することができない。
(役員の職務)
第十九条 理事は、定款の定めるところにより、土地改良区を代表する。但し、総会の決議に従わなければならない。
2 土地改良区の事務は、理事の過半数で決する。但し、定款に別段の定がある場合には、この限りでない。
3 監理は、土地改良区の業務及び財産の状況を監査する。
(兼職禁止)
第二十条 理事、監理及び使用人は、相兼ねてはならない。
(監事の組合代表権)
第二十一条 土地改良区と理事との契約又は争訟については、監事が土地改良区を代表する。
(総会の組織)
第二十二条 土地改良区の総会は、総組合員で組織する。
(総代会)
第二十三条 組合員の数が五百人をこえる土地改良区は、定款の定めるところにより、総会に代るべき総代会を設けることができる。
2 総代の定数は、定款で定める。但し、組合員の数が五百人以上千人未満の土地改良区にあつては、五十人以上、千人以上一万人未満の土地改良区にあつては、百人以上、一万人以上の土地改良区にあつては、二百人以上でなければならない。
3 総代は、組合員で年齢二十五年以上のもの(禁治産者、準禁治産者及び禁こ以上の刑に処せられて執行中の者を除く。)のうちから、組合員が選挙する。
4 前項の規定による選挙は、政令の定めるところにより、都道府県又は市町村の選挙管理委員会の管理のもとに、直接、平等及び秘密の原則によつて行うものとする。
5 第三項の規定による選挙に要する費用は、当該土地改良区の負担とする。
6 総代の任期は、四年とする。但し、補欠総代は、前任者の残任期間在任する。
7 総代は、その任期が満了しても、後任の総代が就任するまでの間は、なおその職務を行う。
8 総代が被選挙権を有しない者であるときは、その職を失う。この場合において、被選挙権の有無は、総代会で決定する。
9 総代会には、総会に関する規定を準用する。
(総代の解職の請求)
第二十四条 組合員は、政令の定めるところにより、その総数の三分の一以上の連署をもつて、その代表者から理由を記載した書面を提出して、都道府県又は市町村の選挙管理委員会に対し、総代の解職を請求することができる。
2 前項の規定による請求があつたときは、都道府県又は市町村の選挙管理委員会は、直ちに請求の要旨を公表し、これを組合員の投票に付さなければならない。
3 総代は、前項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときは、その職を失う。
4 政令で特別の定をするものを除く外、前条第三項から第五項までの規定は、第二項の規定による解職の投票に準用する。
(総会の招集)
第二十五条 理事は、毎事業年度一回通常総会を招集しなければならない。
2 理事は、必要と認めるときは、何時でも臨時総会を招集することができる。
第二十六条 組合員が、総組合員の五分の一以上の同意を得、会議の目的たる事項及び招集の理由を記載した書面を土地改良区に提出して、総会(総代会が設けられている場合には、総代会)の招集を請求したときは、理事は、その請求があつた日から二十日以内に総会を招集しなければならない。
(監事による会議の招集)
第二十七条 理事の職務を行う者がないとき、又は前条の規定による請求があつた場合において理事が正当の事由がないのに総会招集の手続をしないときには、監事がこれを招集しなければならない。
(会議招集の通知)
第二十八条 総会を招集するには、その会日から五日前までに、会議の日時、場所及び目的を各組合員に通知しなければならない。但し、急施を要する場合には、その会日から三日前までに通知すればよい。
(関係書簿の備付)
第二十九条 理事は、定款、規約、事業に関する書類、組合員名簿、土地原簿及び議事録を主たる事務所に備え、且つ、これらを保存しなければならない。
2 前項の組合員名簿及び土地原簿には、省令で定める事項を記載しなければならない。
3 組合員その他当該土地改良区の事業に利害関係のある者から第一項に掲げる書簿の閲覧の請求があつた場合には、理事は、正当の事由がある場合を除いて、これを拒んではならない。
(総会の議決事項)
第三十条 左に掲げる事項は、総会の議決を経なければならない。
一 定款の変更
二 規約の設定、変更又は廃止
三 起債又は借入金の借入並びにそれらの方法、利率及び償還の方法
四 経費の収支予算
五 予算をもつて定めたものを除く外、土地改良区の負担となるべき契約
六 賦課金及び夫役現品の賦課徴収の方法
七 事業報告書、収支決算書及び財産目録の承認
八 第七十七条第二項又は第八十一条の規定により協議して定める事項
九 第九十三条第一項の規定による申出
十 第九十七条第四項の意見の決定
2 定款の変更は、都道府県知事の認可を受けなければならない。
3 都道府県知事は、前項の認可をしたときは、遅滞なくその旨を公告しなければならない。
4 定款の変更は、前項の規定による公告があるまでは、これをもつて第三者(組合員を除く。)に対抗することができない。
(議決権及び選挙権)
第三十一条 組合員は、各々一個の議決権並びに役員及び総代の選挙権を有する。
2 組合員は、第二十八条の規定による通知があつた事項について、書面又は代理人をもつて議決権又は選挙権を行うことができる。
3 前項の規定により議決権又は選挙権を行う者は、出席者とみなす。
4 代理人は、組合員でなければならない。
5 代理人は、二人以上の組合員を代理することができない。
6 代理人は、代理権を証する書面を土地改良区に提出しなければならない。
(総会の議決方法等)
第三十二条 総会の議事は、この法律、定款又は規約に特別の定がある場合を除いて、総組合員の半数以上が出席し、その議決権の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
2 議長は、総会で選任する。
3 議長は、組合員として総会の議決に加わる権利を有しない。
(重要事項の議決方法)
第三十三条 左に掲げる事項に関する総会の議事は、総組合員の三分の二以上が出席し、その議決権の三分の二以上で決する。
一 定款の変更
二 土地改良事業計画の設定又は変更
三 解散又は合併
(決議事項の制限)
第三十四条 総会においては、第二十八条の規定によつてあらかじめ通知をした事項についてのみ決議をすることができる。但し、定款に別段の定がある場合には、この限りでない。
(民法の準用)
第三十五条 土地改良区には、民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条第一項(法人の不法行為能力)、第五十条(法人の住所)、第五十四条(代表権の制限)、第五十五条(代表権の委任)及び第六十六条(表決権のない場合)の規定を準用する。
(経費の賦課)
第三十六条 土地改良区は、定款の定めるところにより、その事業に要する経費(第九十条第三項又は第九十一条後段の規定により徴収される金銭を含む。)に充てるため、その地区内にある土地につき、その組合員に対して金銭、夫役又は現品を賦課徴収することができる。
2 前項の規定による賦課に当つては、当該事業によつて当該土地が受ける利益を勘案しなければならない。
3 土地改良区は、その地区を変更する場合において、新たに編入される土地があるときは、第一項に規定するものの外、その土地について加入金を徴収することができる。
4 組合員は、第一項の規定により賦課された金銭、夫役若しくは現品又は前項の加入金の徴収については、相殺をもつて対抗することができない。
5 夫役又は現品は、金銭に算出して賦課しなければならない。
6 夫役又は現品は、金銭で代えることができる。
7 土地改良事業の施行に関し第一項の規定により賦課される夫役は、労働の基準又は賃金に関する法令の趣旨に沿うものでなければならない。
(過怠金)
第三十七条 土地改良区は、定款の定めるところにより、組合員に対して過怠金を課することができる。
(賦課金等の徴収の委任)
第三十八条 土地改良区は、政令の定めるところにより、市町村に対し、第三十六条第一項又は第三項の規定により徴収すべき金銭(第四十二条第二項の規定による決済により徴収すべき金銭を含む。)、前条の過怠金又は換地計画若しくは交換分合計画において定める清算金の徴収を委任することができる。
(賦課金等の徴収)
第三十九条 第三十六条第一項若しくは第三項の規定により支払うべき金銭(第四十二条第二項の規定による決済により支払うべき金銭を含む。)若しくはその延滞利息、第三十七条の過怠金又は換地計画若しくは交換分合計画において定める清算金を滞納する者がある場合、又は夫役現品の賦課を受けた者が定期内にその履行をせず、若しくは夫役現品に代るべき金銭を納めない場合には、市町村は、土地改良区の請求により地方税の滞納処分の例によつてこれを処分する。この場合には、土地改良区は、その徴収金額の百分の四を市町村に交付しなければならない。
2 市町村が前項の請求を受けた日から三十日以内にその処分に着手せず、又は九十日以内にこれを終了しない場合には、理事は、地方税の滞納処分の例により、都道府県知事の認可を受けて、その処分をすることができる。
3 前二項の規定による徴収金の先取特権の順位は、市町村税に次ぐものとし、その時効については、市町村税の例による。
(区債及び借入金)
第四十条 土地改良区は、その事業を行うため必要がある場合には、区債を起し、又は借入金の借入をすることができる。
2 国又はその出資する金融機関は、前項の区債を引き受け、又は同項の借入金を貸し付けることができる。
(定款の変更等の制限)
第四十一条 土地改良区は、区債又は借入金がある場合には、その債権者の同意がなければ、その地区を縮少し、債務の分担に関する定款を変更し、その事業を廃止し、又は解散若しくは合併をしてはならない。
2 前項の債権者は、正当の事由がある場合を除いて、前項の同意を拒むことができない。
3 土地改良区が債権者の同意を得ないで第一項に規定する行為をしたときは、その債権者は、都道府県知事に異議を申し立てることができる。但し、その行為の認可に係る公告があつた日から二十日を経過したときは、この限りでない。
4 都道府県知事は、前項の規定による申立を受けたときは、同項に規定する申立期間満了後六十日以内にこれを決定しなければならない。
(権利義務の承継及び決済)
第四十二条 土地改良区の組合員が組合員たる資格に係る権利の目的たる土地の全部又は一部についてその資格を喪失した場合には、その者がその土地の全部又は一部について有するその土地改良区の事業に関する権利義務は、その土地の全部若しくは一部についての権利の承継又は第三条第二項の規定による交替によつてその土地の全部又は一部について組合員たる資格を取得した者に移転する。
2 土地改良区の組合員が、組合員たる資格に係る権利の目的たる土地の全部又は一部についてその資格を喪失した場合において、前項の承継又は第三条第二項の規定による交替がないときは、その者及び土地改良区は、その土地の全部又は一部につきその者の有するその土地改良区の事業に関する権利義務について必要な決済をしなければならない。
(組合員の資格得喪の通知義務)
第四十三条 土地改良区の地区内の土地の全部又は一部について組合員たる資格を取得し、又は喪失した者がある場合には、その者は、その旨をその土地改良区に通知しなければならない。
2 前項の当事者は、同項の規定による通知があるまでは、当該資格の得喪をもつて第三者に対抗することができない。
(共有者等の代表)
第四十四条 土地改良区の地区内の同一の土地について、権原に基き使用し若しくは収益する者が二人以上あり、又は共有者がある場合において、これらの者が組合員であるときは、これらの者は、土地改良区の組合員としての行為(議決権及び選挙権の行使を除く。)をさせるために、そのうちの一人を代表者とし、その旨をその土地改良区に通知しなければならない。但し、これらの者のみを組合員とする土地改良区については、この限りでない。
2 前項の代表者の権限に加えた制限は、これをもつて第三者に対抗することができない。
3 第一項に規定する委任の終了は、当該土地改良区にその旨の通知があるまでは、これをもつて善意の第三者に対抗することができない。
4 第一項に規定する者が同項の手続をしない場合には、当該土地改良区の組合員としてのこれらの者に対してする行為は、そのうちの一人に対してすればよい。
(組合員に対する通知又は催告)
第四十五条 土地改良区が組合員に対してする通知又は催告は、組合員名簿に記載したその住所(その者が別に通知又は催告を受ける場所をその土地改良区に通知した場合には、その場所)にあてればよい。
2 前項の通知又は催告は、通常到達すべきであつた時に到達したものとみなす。
第三款 土地改良区の事業
第一目 事業の施行
(税務署長に対する申告と工事の着手及び完了の届出)
第四十六条 土地改良区は、土地改良事業の工事に着手する前に、所轄税務署長に省令で定める事項を申告しなければならない。
2 土地改良区は、土地改良事業の施行に係る地域内に一筆の土地の一部が編入されている場合には、前項の規定による申告とともに、分筆の手続をしなければならない。
3 土地改良区は、土地改良事業の工事に着手し、又はその工事を完了したときは、遅滞なくその旨を都道府県知事及び所轄税務署長に届け出なければならない。
(工事に必要な援助請求)
第四十七条 土地改良区は、土地改良事業の工事につき第七条第三項に掲げる技術吏員の必要な援助を求めることができる。
2 前項の場合には、第七条第四項の規定を準用する。
(土地改良事業計画の変更等)
第四十八条 土地改良区は、土地改良事業計画を変更し、土地改良事業を廃止し、又は新たな土地改良事業を行おうとする場合には、省令の定めるところにより、総会の議決を経て必要な事項を定め、都道府県知事の認可を受けなければならない。
2 新たな土地改良事業を行い、若しくはその土地改良事業を廃止し、又はその土地改良事業に係る土地改良事業計画を変更しようとする場合において前項の認可を申請するには、その土地改良事業の施行に係る土地についての組合員で組織する会議の議決を経なければならないものとし、その申請書に、その議決のあつたことを証する書面を添附しなければならない。
3 前項の会議の議事は、同項の者が三分の二以上出席し、その議決権の三分の二以上で決する。
4 第二項の会議には、第二十七条、第二十八条、第三十一条、第三十二条第二項及び第三項並びに第三十四条の規定を準用する。
5 第一項の場合には、第七条第三項及び第四項、第八条、第九条並びに第十条第一項の規定を準用する。
6 第一項の認可に係る事項が当該土地改良事業の利害関係人の権利又は利益を侵害するおそれがないことが明らかである場合において、都道府県知事が適当と認めたときは、新たな土地改良事業を行おうとする場合を除いて、前項において準用する第八条第四項及び第九条に規定する手続を省略してよい。
7 都道府県知事は、第一項の認可をしたときは、遅滞なくその旨を公告しなければならない。
8 土地改良事業計画の変更、土地改良事業の廃止又は新たな土地改良事業の計画の決定は、前項の規定による公告があるまでは、これをもつて第三者(組合員を除く。)に対抗することができない。
(急施の場合)
第四十九条 災害のため急速に第二条第二項第五号の土地改良事業を新たに行う必要がある場合には、土地改良区は、前条の規定にかかわらず、総会の議決を経て応急工事計画を定め、都道府県知事の認可を受けてその事業を行うことができる。
(国有地の譲与又は国有地への編入)
第五十条 土地改良事業の施行により道路、かんがい排水路、ため池、堤等の全部又は一部を廃止した結果不用となつた国有地がある場合には、省令の定めるところにより、これを無償で土地改良区又はその地区内にある土地の所有者に譲与する。
2 土地改良事業の施行により生じた道路、かんがい排水路、ため池、堤等で前項の廃止したものに代るべきものは、無償で国有地に編入する。
(一時利用地の指定)
第五十一条 土地改良区は、土地改良事業の工事が完了する以前において、必要がある場合には、規約の定めるところにより、従前の土地に代るべき一時利用地及びその使用開始の日を指定することができる。
2 前項の一時利用地は、従前の土地の地目、地積、土性、水利、傾斜、温度等を標準として定めなければならない。
3 土地改良区は、第一項の規定による指定をしたときは、一時利用地及び従前の土地につき所有権、地上権、永小作権、質権、賃借権又は使用貸借による権利を有する者にその旨を通知しなければならない。
4 従前の土地につき権原に基き使用又は収益をすることのできる者は、第一項の使用開始の日から第五十二条第八項の規定による公告があるまで、一時利用地の全部又は一部を、その性質によつて定まる用方に従い、その権原に基いて、従前の土地についての使用又は収益と同一の条件により、使用し、又は収益することができる。
5 前項の場合には、同項の者は、従前の土地については、その土地に関しその者の有する権利の内容たる使用又は収益をすることができない。
6 一時利用地につき第三項の権利を有する者は、同項の規定による通知を受けたときは、第一項の使用開始の日から第五十二条第八項の規定による公告があるまで、その一時利用地の使用又は収益をすることができない。
7 土地改良区は、第一項の規定による指定によつて通常生ずべき損失を補償しなければならない。
8 土地改良区は、第一項の規定による指定によつて利益を受ける者から、その利益に相当する金銭を徴収することができる。
(換地計画)
第五十二条 土地改良区は、土地改良事業の工事が完了した場合において、事業の性質上必要があるときは、遅滞なく、換地計画を定め、都道府県知事の認可を受けなければならない。
2 前項の換地計画は、耕作者の農業経営の合理化に資するように定めなければならない。
3 第一項の換地計画を定めるには、その計画に係る土地につき所有権、地上権、永小作権、質権、賃借権又は使用貸借による権利を有するすべての者で組織する会議の議決を経なければならない。
4 前項の会議の議事は、同項の者が三分の二以上出席し、その議決権の三分の二以上で決する。
5 第三項の会議には、第二十七条、第二十八条、第三十一条、第三十二条第二項及び第三項並びに第三十四条の規定を準用する。
6 第一項の認可を申請するには、その申請書に関係市町村農地委員会の同意書を添附しなければならない。但し、同意を求めた日から六十日以内にその同意を得られない場合には、その事由を記載した書面を添附すればよい。
7 前項但書の場合において第一項の認可をしようとするときは、都道府県知事は、関係市町村農地委員会の意見をきかなければならない。
8 都道府県知事は、第一項の認可をしたときは、遅滞なく、その旨を公告し、且つ、公告の旨を管轄登記所に通知しなければならない。
第五十三条 換地計画においては、従前の土地に照応する換地を定めなければならない。
2 前項の換地は、従前の土地の地目、地積、土性、水利、傾斜、温度等を標準として定めなければならない。
3 耕作者の農業経営を合理化するため特別の必要がある場合には、前項の規定によらないで換地を定めることができる。但し、あらかじめ、規約にその旨を定めてあり、且つ、定めるべき当該換地に照応する従前の土地について前条第三項に掲げる権利を有する者の同意を得た場合に限る。
4 前二項の場合において、地目、地積、土性、水利、傾斜、温度等を総合的に勘案して相殺することができない部分がある場合には、金銭による清算をするものとし、その額並びに支払の方法及び時期を定めなければならない。
5 従前の土地の全部又は一部について所有権以外の権利又は処分の制限がある場合には、これに照応する換地は、その権利又は処分の制限の目的たる土地又はその部分を指定して定めなければならない。
6 換地は、一筆の土地の区域が二以上の市町村、大字又は字にわたるように定めてはならない。
(換地処分の効果及び清算金)
第五十四条 第五十二条第八項の規定による公告があつた換地計画に定める換地は、第六十三条第一項に規定する場合を除いて、その公告があつたときから従前の土地とみなす。
2 前項の規定は、行政上又は裁判上の処分で従前の土地に専属するものについては、影響を及ぼさない。
3 第五十二条第八項の規定による公告があつたときは、土地改良区は、その公告があつた換地計画の定めるところに従い清算金を支払わなければならない。
4 前項の場合には、土地改良区は、当該換地計画の定めるところに従い清算金を徴収することができる。
(換地処分による登記)
第五十五条 第五十二条第一項の認可があつたときは、土地改良区は、遅滞なく当該換地計画に係る既登記の土地及び建物について登記を申請しなければならない。
(土地改良区の協議請求)
第五十六条 土地改良区は、かんがい排水施設の新設、管理、廃止又は変更を行う者に対して、水を農業上合理的に利用するため必要な事項につき協議を求めることができる。
2 前項の規定による協議をすることができない場合、又は協議がととのわない場合には、当該土地改良区は、都道府県知事に裁定を申請することができる。
3 前項の裁定をする場合には、第六条第二項の規定を準用する。
4 第二項の裁定があつたときは、当事者は、その裁定の定めるところに従い協定しなければならない。
(施設の管理)
第五十七条 土地改良区は、土地改良事業の工事が完了した場合においてその事業によつて生じたかんがい排水施設、農業用道路その他農地の保全又は利用上必要な施設があるときは、その施設を管理しなければならない。この場合には、その旨を定款に記載しなければならない。
第二目 権利関係の調整
(組合員の使用収益権)
第五十八条 組合員は、その者が地上権、永小作権、質権、賃借権又は使用貸借による権利に基き使用し、又は収益している土地につき土地改良事業の成果を公正に享受するため、地上権、永小作権若しくは質権を設定する契約又は賃貸借契約若しくは使用貸借契約の変更に関し、その契約の相手方に対して協議を求めることができる。
(償還すべき有益費)
第五十九条 土地改良事業に費された有益費を民法の規定により償還する場合には、償還すべき額は、同法第百九十六条第二項本文の規定にかかわらず、増価額とする。
(組合員でない者の地代等の減額又は払戻の請求)
第六十条 土地改良事業によつて地上権、永小作権、地役権又は賃借権の目的である土地の利用を妨げられるに至つた場合には、その土地(地役権者の場合にあつては、当該承役地)に関し組合員でない地上権者、永小作権者、地役権者又は賃借人は、地代、小作料、地役の対価若しくは賃借料の相当の減額又は前払した地代、小作料、地役の対価若しくは賃貸料の相当の払戻を請求することができる。
(組合員でない者の権利の放棄等)
第六十一条 土地改良事業によつて地上権、永小作権若しくは地役権を設定し、又は賃借し、若しくは使用借した目的を達することができなくなつた場合には、当該土地(地役権者の場合にあつては、当該承役地)に関し組合員でない地上権者、永小作権者、地役権者、賃借人又は借主は、その権利を放棄し、又は契約を解除することができる。
2 前項の規定により放棄又は解除をする場合において、同項に掲げる者(地役権者を除く。)が当該土地を賃貸し、又は使用貸しているときは、その者は、賃借人又は借主の同意を得なければならない。同項に掲げる地役権者が当該要役地につき地上権若しくは永小作権を設定し、又はその土地を賃貸し、若しくは使用貸しているときも、また同様とする。
3 第一項の場合には、同項に掲げる者は、当該事業を行う土地改良区に対して、その目的を達することができなくなつたことによつて生じた損失の補償を請求することができる。但し、その土地改良区は、規約の定めるところにより、当該土地(地役権者の場合にあつては、当該承役地)に関してその組合員である者に対して、求償することができる。
(組合員の地代等の増額請求)
第六十二条 土地改良事業によつて地上権、永小作権、地役権又は賃借権の目的たる土地の利用を増した場合には、その土地に関し組合員である所有者又は賃貸人は、地代、小作料、地役の対価又は賃貸料の相当の増額を請求することができる。
2 前項の請求があつたときは、同項に掲げる権利を有する者は、その権利を放棄し、又は契約を解除して、その義務を免かれることができる。
(地役権の効力)
第六十三条 換地計画に係る土地の上に存する地役権は、第五十二条第八項の規定による公告があつた後でも、なお従前の土地の上に存する。
2 土地改良事業によつて行使する利益を受ける必要がなくなつた地役権は、消滅する。
3 土地改良事業によつて従前と同一の利益を受けることができなくなつた地役権者は、その利益を保存する範囲内において、地役権の設定を請求することができる。但し、第六十条の規定による請求に基く地役の対価の減額があつた場合には、この限りでない。
(請求の期限)
第六十四条 第五十二条第八項の規定による公告があつた日から三十日を経過したときは、第六十二条第二項の場合を除いて、前四条の規定による賃貸借の解除、地上権若しくは永小作権の放棄、地役権の放棄若しくは設定又は賃貸借料、地代、小作料若しくは地役の対価の減額、払戻若しくは増額の請求をすることができない。
(農地調整法の適用)
第六十五条 第五十八条から前条までの規定は、農地調整法(昭和十三年法律第六十七号)の適用を妨げない。
第四款 土地改良区の地区変更、解散及び合併
(地区変更)
第六十六条 土地改良区は、地区の変更についての定款の変更の認可を申請しようとする場合において、新たに地区に編入すべき土地があるときは、定款及び土地改良事業計画を公告して、編入すべき土地につき第三条に規定する資格を有する者の三分の二以上の同意を得なければならない。
2 地区内にある土地が、その土地改良区の事業により利益を受けないことが明らかになつた場合において、その土地についての組合員の申出があるときは、その土地改良区は、その土地をその地区から除かなければならない。
(解散)
第六十七条 土地改良区は、左に掲げる事由によつて解散する。
一 総会の議決
二 第百三十五条の規定による解散を命ずる裁判
三 合併
2 総会の議決による解散は、都道府県知事の認可を受けなければならない。
3 土地改良区が第一項第一号又は第二号に掲げる事由によつて解散したときは、都道府県知事は、遅滞なくその旨を公告しなければならない。
4 土地改良区の解散は、前項の規定による公告があるまでは、これをもつて第三者(組合員を除く。)に対抗することができない。
(清算人)
第六十八条 土地改良区が解散したときは、合併によつて解散した場合を除いて、理事がその清算人となる。但し、総会で他の者を選任した場合には、この限りでない。
(清算人の財産調査義務)
第六十九条 清算人は、就職の後、遅滞なく、土地改良区の財産の現況を調査し、財産目録を作り、財産処分の方法を定め、これを総会に提出してその承認を求めなければならない。
(残余財産処分の制限)
第七十条 清算人は、土地改良区の債務を弁済した後でなければ、その残余財産を処分することができない。
(清算人の決算報告義務)
第七十一条 清算事務が終つたときは、清算人は、遅滞なく、決算報告書を作り、これを総会に提出してその承認を求めなければならない。
(合併の議決)
第七十二条 土地改良区は、合併をしようとする場合には、総会においてその旨を議決しなければならない。
(吸収合併)
第七十三条 合併をする土地改良区の一方が合併後存続する場合には、その土地改良区は、関係各土地改良区の合併の議決書を添附して第三十条第二項の規定による定款の変更の認可を申請しなければならない。
2 都道府県知事は、前項の認可をしたときは、遅滞なく、合併後存続する土地改良区については、第三十条第三項の規定による公告、合併によつて消滅する土地改良区については、解散の公告をしなければならない。
3 第一項に規定する合併は、前項の公告があるまでは、これをもつて第三者(当該関係土地改良区の組合員を除く。)に対抗することができない。
(新設合併)
第七十四条 合併によつて土地改良区を設立しようとする場合には、関係各土地改良区の総会で組合員のうちから選挙した者が第五条の申請人となり、設立に必要な行為をしなければならない。
2 前項の場合において、第五条第一項の規定による申請をするには、関係各土地改良区の合併の議決書を添附しなければならない。
3 第一項の場合において、都道府県知事は、第十条第一項の認可をしたときは、遅滞なく、合併によつて消滅する土地改良区については、解散の公告、合併によつて設立した土地改良区については、同条第三項の規定による公告をしなければならない。
4 第一項に規定する合併は、前項の公告があるまでは、これをもつて第三者(当該関係土地改良区の組合員を除く。)に対抗することができない。
(合併による権利義務の承継)
第七十五条 合併後存続する土地改良区又は合併によつて成立した土地改良区は、合併によつて消滅した土地改良区の権利義務(その土地改良区がその行う事業に関し、行政庁の許可、認可その他の処分に基いて有する権利義務を含む。)を承継する。
(民法及び非訟事件手続法の準用)
第七十六条 土地改良区の解散及び清算には、民法第七十三条(清算法人)、第七十五条(裁判所による清算人の選任)、第七十六条(清算人の解任)、第七十八条から第八十条まで(清算人の職務権限、債権申出の公告及び催告、期間後に申し出た債権)、第八十二条(解散・清算の監督)及び第八十三条(清算結了の届出)並びに非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第三十五条第二項(法人の解散・清算の監督の管轄)、第三十六条(検査人の選任)、第三十七条ノ二(裁判所の選任した清算人・検査人の報酬)、第百三十五条ノ二十五第二項及び第三項(裁判所の監督上の調査等)、第百三十六条(清算事件の管轄)、第百三十七条(清算人の選任・解任の裁判)及び第百三十八条(清算人不適格者)の規定を準用する。
第五款 土地改良区連合
(設立)
第七十七条 土地改良区は、その事業の一部を共同して行うため、土地改良区連合を設立することができる。
2 土地改良区は、土地改良区連合を設立しようとする場合には、省令の定めるところにより、定款、土地改良事業計画その他必要な事項を協議して定め、都道府県知事の認可を受けなければならない。
(名称独占)
第七十八条 土地改良区連合は、その名称中に土地改良区連合という文字を用いなければならない。
2 土地改良区連合でないものは、その名称中に土地改良区連合という文字を用いてはならない。
(定款)
第七十九条 土地改良区連合の定款には、左に掲げる事項を記載しなければならない。
一 名称及び認可番号
二 所属土地改良区
三 事業
四 事務所の所在地
五 経費の分担に関する事項
六 役員の定数、任期、職務の分担及び選任に関する事項
七 議員に関する事項
八 事業年度
九 公告の方法
2 事業年度については、省令で定める。
(総会の組織)
第八十条 土地改良区連合の総会は、定款の定めるところにより、所属土地改良区がその組合員のうちから選出する議員で組織する。
2 土地改良区連合は、総代会を設けることができない。
(所属土地改良区の増減)
第八十一条 土地改良区連合は、その所属土地改良区の数を増減しようとする場合には、関係土地改良区の協議によつて、省令の定めるところにより、定款、土地改良事業計画その他必要な事項を定め、都道府県知事の認可を受けなければならない。
(役員)
第八十二条 理事は、定款の定めるところにより、議員のうちから総会で選挙する。
(合併の禁止)
第八十三条 土地改良区連合は、合併をすることができない。
(土地改良区に関する規定の準用)
第八十四条 土地改良区連合については、この法律に特別の定のある場合を除いて、土地改良区に関する規定を準用する。
第二節 国又は都道府県の行う土地改良事業
(申請)
第八十五条 第三条に規定する資格を有する十五人以上の者は、政令の定めるところにより、その資格に係る土地を含む一定の地域を定め、その地域について国又は都道府県が土地改良事業を行うべきことを、国が行うべきもの(以下「国営土地改良事業」という。)にあつては農林大臣に、都道府県が行うべきもの(以下「都道府県営土地改良事業」という。)にあつては、都道府県知事に、それぞれ申請することができる。
2 前項の者は、同項の規定による申請をするには、あらかじめ、省令の定めるところにより、同項の一定の地域について行うべき土地改良事業の計画の概要その他必要な事項を公告して、その地域内にある土地について第三条に規定する資格を有する者の三分の二以上の同意を得なければならない。
3 第一項の規定による申請をするには、その申請書に前項の規定により公告した事項を記載した書面及び同意があつたことを証する書面並びに当該地域につき、土地改良区又は土地改良区連合を設立すべきことを記載した書面を添附し、これを関係都道府県知事に提出しなければならない。
(申請の予備審査)
第八十六条 前条の規定による申請があつた場合には、都道府県知事は(その申請に係る国営土地改良事業の地域が二以上の都府県の区域にわたる場合にあつては、当該関係都府県の知事がその協議により)、その申請に係る事項につき予備審査を行わなければならない。
2 前項の場合には、第六条第二項から第六項までの規定を準用する。
3 都道府県知事又は当該関係都府県知事は、農林大臣に対する申請に係る事項につき前項において準用する第六条第六項の規定により適当とする旨の決定をしたときは、遅滞なく、その申請に係る書類を添附して、その旨を農林大臣に進達しなければならない。
(国営土地改良事業計画及び都道府県営土地改良事業計画)
第八十七条 農林大臣が前条第三項の規定による進達があつた場合においてその進達に係る事項を相当と認めるとき、又は都道府県知事が同条第一項の規定により適当とする旨の決定をしたときは、農林大臣又は都道府県知事は、それぞれ、その進達又は決定に係る国営土地改良事業又は都道府県営土地改良事業を行うため、土地改良事業計画を定めなければならない。
2 前項の場合には、第八条第二項及び第三項の規定を準用する。
3 農林大臣又は都道府県知事は、第一項の規定により土地改良事業計画を定めたときは、その旨を公告し、二十日以上の相当の期間を定めて当該土地改良事業計画書の写を縦覧に供しなければならない。
4 当該事業の利害関係人は、当該土地改良事業計画に対して異議があるときは、それぞれ、農林大臣又は都道府県知事にこれを申し立てることができる。但し、前項に規定する縦覧期間満了後十日を経過したときは、この限りでない。
5 農林大臣又は都道府県知事は、前項の規定による申立を受けたときは、第三項に規定する縦覧期間満了後六十日以内にこれを決定しなければならない。
6 国又は都道府県は、第四項の異議の申立がないとき、又は異議の申立があつた場合においてそのすべてについて前項の規定による決定があつたときでなければ、当該土地改良事業計画による工事に着手してはならない。
7 農林大臣又は都道府県知事は、前条の規定による進達又は決定がない場合においても、自作農創設特別措置法第四十一条第一項に掲げる土地についての第二条第二項第三号に掲げる事業又は同項第四号に掲げる事業を行うため、国営土地改良事業又は都道府県営土地改良事業の計画を定めることができる。この場合には、第三項から前項までの規定は適用しない。
8 前項の規定は、同項に規定する土地であつて、その土地につき耕作すべき者が売渡を受け、若しくは定住したもの又は耕作が開始されているものについては、適用しない。
(急施の場合)
第八十八条 災害のため急速に第二条第二項第五号に掲げる土地改良事業を行う必要がある場合には、国又は都道府県は、前条の規定にかかわらず、応急工事計画を定めてその事業の工事に着手することができる。
(工事の委任)
第八十九条 農林大臣は、政令の定めるところにより、国営土地改良事業の工事の一部を都道府県知事に行わせることができる。
(国営事業の負担金)
第九十条 国は、政令の定めるところにより、国営土地改良事業の施行に係る地域の全部又は一部をその区域内に包括する都道府県に、その事業に要する費用の一部を負担させることができる。
2 前項の都道府県は、政令の定めるところにより、国営土地改良事業によつて利益を受ける者でその事業の施行に係る地域内にある土地につき第三条に規定する資格を有するものその他農林大臣の指定するものから、その者の受ける利益を限度として、前項の規定による負担金の全部又は一部を徴収することができる。
3 前項に掲げる者が国営土地改良事業の施行に係る地域の全部又は一部を地区とする土地改良区の組合員である場合には、都道府県は、その者に対する負担金に代えて、その土地改良区からこれに相当する額の金銭を徴収することができる。
4 前二項の場合において、第八十七条第七項又は第八十八条の規定による国営土地改良事業に係る負担金の徴収については、都道府県は、その徴収を受けるべき者の同意を得なければならない。
5 第二項又は第三項の処分を受けた者は、その処分について異議があるときは、前項に規定する場合を除いて、都道府県知事にこれを申し立てることができる。但し、その処分を受けた日から二十日を経過したときは、この限りでない。
6 第二項及び第三項の負担金は、第八十七条第七項又は第八十八条の規定による国営土地改良事業に係るものを除いて、地方税の滞納処分の例によつて、これを徴収することができる。但し、先取特権の順位は、府県税に次ぐものとする。
(都道府県営土地改良事業の分担金)
第九十一条 都道府県は、政令の定めるところにより、都道府県営土地改良事業によつて利益を受ける者でその事業の施行に係る地域内にある土地につき第三条に規定する資格を有するものその他農林大臣の指定するものから、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百十七条の分担金を徴収することができる。この場合には、前条第三項及び第四項の規定を準用する。
(権利関係の調整)
第九十二条 国営土地改良事業又は都道府県営土地改良事業を行つた場合には、第五十九条、第六十二条及び第六十五条の規定を準用する。この場合において、第六十二条第一項中「組合員」とあるのは、「第九十条第二項の負担金又は第九十一条の分担金を負担した者(第九十条第三項又は第九十一条後段の規定により徴収される金銭に充てるため土地改良区が第三十六条第一項の規定により賦課徴収する金銭を負担した組合員を含む。)」と読み替える。
(かんがい排水施設等の国又は都道府県への移管)
第九十三条 国は、土地改良区その他の者が、省令の定めるところにより、その所有し、又は管理するかんがい排水施設を国において管理すべきことを申し出た場合において、その申出を相当と認めるときは、その施設を管理することができる。
2 都道府県は、土地改良区その他の者が、省令の定めるところにより、その所有し、又は管理するかんがい排水施設又は埋立地若しくは干拓地の堤を都道府県において管理すべきことを申し出た場合において、その申出を相当と認めるときは、その施設又は堤を管理することができる。
(国有土地物件の管理及び処分)
第九十四条 左に掲げるものであつて普通財産であるものは、農林大臣が管理し、又は処分する。
一 国営土地改良事業によつて生じた工作物その他の物件又は水の使用に関する権利
二 第百二十条の規定により収用し、又は使用した土地、権利又は立木、工作物その他の物件
三 国有の土地、権利又は立木、工作物その他の物件で、政令の定めるところにより、国営土地改良事業の用に供すべきものと決定されたもの
2 農林大臣は、前項各号に掲げるものを、都道府県、市町村又は土地改良区その他農林大臣の指定する者に管理させることができる。
3 第一項各号に掲げるものの管理又は処分及び前項の規定による管理の委託について必要な事項は、政令で定める。
第三節 農業協同組合の行う土地改良事業又は数人が共同して行う土地改良事業
(事業の開始等)
第九十五条 農業協同組合若しくは農業協同組合連合会が土地改良事業を行おうとする場合、又は第三条に規定する資格を有する者数人が共同して土地改良事業を行おうとする場合には、省令の定めるところにより、規約及び土地改良事業の計画の概要を定め、その事業についての予備審査を都道府県知事に申請しなければならない。
2 農業協同組合又は農業協同組合連合会は、前項の規定による申請をするには、あらかじめ、規約及び土地改良事業の計画の概要につき総会の議決を経、且つ、その計画に係る土地につき所有権、地上権、永小作権、質権、賃借権又は使用貸借による権利を有するすべての者の同意を得なければならない。
3 第一項の場合には、第六条から第九条まで及び第十条第一項の規定を準用する。
4 都道府県知事は、前項において準用する第十条第一項の認可をしたときは、遅滞なくその旨を公告しなければならない。
5 前項の認可のあつた規約若しくは土地改良事業計画を変更し、又は土地改良事業を廃止する場合には、前四項及び第四十八条第六項の規定を準用する。
6 規約若しくは土地改良事業計画の決定若しくは変更又は土地改良事業の廃止は、第四項(前項において準用する場合を含む。)の規定による公告があるまでは、これをもつて第三者(当該農業協同組合の組合員及び第二項の同意をした者を除く。)に対抗することができない。
(土地改良区に関する規定の準用)
第九十六条 前条の規定により行う土地改良事業には、第四十六条、第四十七条、第五十条、第五十一条、第五十二条第一項から第三項まで及び第六項から第八項まで、第五十三条から第五十五条まで並びに第五十七条の規定を準用する。この場合において、これらの規定中「土地改良区」とあるのは、「農業協同組合、農業協同組合連合会又は数人共同して土地改良事業を行う者」と、第五十二条第三項中「所有権、地上権、永小作権、質権、賃借権又は使用賃借による権利を有するすべての者で組織する会議の議決を経なければならない。」とあるのは、「所有権、地上権、永小作権、質権、賃借権又は使用貸借による権利を有するすべての者の同意を得なければならない。」と読み替える。
第三章 市町村農地委員会、土地改良区又は農業協同組合の行う交換分合
(市町村農地委員会の交換分合計画の決定手続)
第九十七条 権原に基き耕作の業務を営む者二人以上が、省令の定めるところにより、これらの者が耕作の目的に供している農地を含む一定の農地を定め、その農地について所有権、地上権、永小作権、質権、賃借権又は使用貸借による権利を有する者の二分の一以上の同意を得てその一定の農地に関し第二条第二項第六号に掲げる事業(以下「交換分合」という。)を行うべきことを請求した場合において、その農地が一市町村の区域内にある場合にあつては当該市町村の農地委員会が、その農地が二以上の市町村の区域にわたる場合にあつては当該関係市町村の農地委員会がその協議により、その請求を相当と認めるときは、その農地に関し交換分合を行うため交換分合計画を定める。
2 前項の規定による請求がない場合においても、特に必要があると認めるときは、交換分合すべき農地が一市町村の区域内にある場合にあつては当該市町村農地委員会が、その農地が二以上の市町村の区域にわたる場合にあつては当該関係市町村農地委員会がその協議により、省令の定めるところにより、交換分合を行うべき農地及び交換分合計画の概要を公告し、その農地について前項に掲げる権利を有する者の二分の一以上の同意を得て、その農地につき交換分合計画を定めることができる。
3 前二項の規定により市町村農地委員会又は関係市町村農地委員会が交換分合計画を定めるには、その交換分合計画により交換分合すべき農地についての第一項に掲げる権利を有する者の三分の二以上の同意がなければならない。
4 前項の場合において、当該農地の全部又は一部が土地改良区の地区内にあるときは、その土地改良区の意見をきかなければならない。
5 市町村農地委員会又は関係市町村農地委員会が、第一項の規定による申請を受けた日から六箇月以内に、その請求のあつた交換分合を行うため交換分合計画を定めない場合には、その請求をした者は、その期間経過後六十日以内に、都道府県農地委員会に対して、その市町村農地委員会又は関係市町村農地委員会にその交換分合計画を定めるよう指示すべき旨を請求することができる。
6 都道府県農地委員会は、前項の規定による請求を受けた場合には、その請求のあつた農地の全部又は一部に関し交換分合計画を定めることを不相当と認めるときを除いて、その請求を受けた日から三十日以内に前項の規定による指示をしなければならない。
第九十八条 市町村農地委員会又は関係市町村農地委員会は、前項の規定により交換分合計画を定めたときは、遅滞なくその旨を公告し、且つ、六十日間交換分合計画書を縦覧に供しなければならない。
2 市町村農地委員会又は関係市町村農地委員会は、前項の規定による公告をしたときは、当該交換分合計画により交換分合すべき農地についての所有権、地上権、永小作権、地役権、先取特権、質権、抵当権、賃借権又は使用貸借による権利を有する者(その農地のある市町村の区域内に住所を有する者を除く。)に対して、その旨を通知しなければならない。
3 前項に掲げる権利を有する者は、当該交換分合計画に対して異議があるときは、市町村農地委員会又は関係市町村農地委員会にこれを申し立てることができる。但し、第一項に規定する縦覧期間を経過したときは、この限りでない。
4 市町村農地委員会又は関係市町村農地委員会は、前項の規定による申立を受けたときは、第一項に規定する縦覧期間満了後六十日以内にこれを決定しなければならない。
5 前項の規定による決定に対して不服がある申立人は、都道府県農地委員会に訴願をすることができる。但し、その決定後十日を経過したときは、この限りでない。
6 都道府県農地委員会は、前項の訴願を受理したときは、同項但書に規定する期間満了後六十日以内にこれを裁決しなければならない。
7 第三項の異議の申立がないとき、異議の申立があつた場合においてそのすべてについて第四項の規定による決定があり、且つ、第五項の訴願の提起がなかつたとき、又は訴願の提起があつた場合においてそのすべてについて前項の規定による裁決があつたときは、市町村農地委員会又は関係市町村農地委員会は、遅滞なく当該交換分合計画について都道府県農地委員会の認可を受けなければならない。
8 都道府県農地委員会は、前項の認可をしたときは、遅滞なくその旨を公告しなければならない。
9 第一項、第二項又は第四項の場合において、関係市町村農地委員会が公告、縦覧又は通知をするには、そのすべてがこれを行わなければならず、異議の決定をするには、そのすべてが協議してこれをしなければならない。
(土地改良区の交換分合計画の決定手続)
第九十九条 土地改良区は、交換分合を行おうとする場合には、交換分合計画を定め、都道府県知事の認可を受けなければならない。
2 前項の規定により交換分合計画を定める場合には、第五十二条第三項から第五項までの規定を準用する。
3 第一項の認可を申請するには、その申請書に関係市町村農地委員会の同意書を添附しなければならない。但し、同意を求めた日から六十日以内にその同意が得られない場合には、その事由を記載した書面を添附すればよい。
4 前項但書の場合において、第一項の認可をしようとするときは、都道府県知事は、関係市町村農地委員会の意見をきかなければならない。
5 都道府県知事は、第一項の認可の申請を相当と認める場合には、遅滞なく申請の旨を公告し、且つ、六十日間交換分合計画書の写を縦覧に供しなければならない。
6 前項の規定による公告があつたときは、当該交換分合計画により交換分合すべき農地についての前条第二項に掲げる権利を有する者(その農地のある市町村の区域内に住所を有する者を除く。)に対して、その旨を通知しなければならない。
7 前項の権利を有する者は、当該交換分合計画に対して異議があるときは、都道府県知事にこれを申し立てることができる。但し、第五項に規定する縦覧期間を経過したときは、この限りでない。
8 都道府県知事は、前項の規定による申立を受けたときは、第五項の縦覧期間満了後六十日以内にこれを決定しなければならない。
9 都道府県知事は、前項の規定による決定をするには、都道府県農地委員会の意見をきかなければならない。
10 都道府県知事は、第七項の異議の申立がないとき、又は異議の申立があつた場合においてそのすべてについて第八項の規定による決定があつたときでなければ、第一項の認可をすることができない。
11 都道府県知事は、第一項の認可をしたときは、遅滞なくその旨を公告しなければならない。
(農業協同組合の交換分合計画の決定手続)
第百条 農業協同組合は、交換分合を行おうとする場合には、総会の議決を経て交換分合計画を定め、その交換分合計画により交換分合すべき農地について第九十七条第一項に掲げる権利を有する者の同意を得て、都道府県知事の認可を受けなければならない。
2 前項の場合には、前条第三項から第十一項までの規定を準用する。
(交換分合計画の定め方)
第百一条 交換分合計画は、耕作者の農業経営の合理化に資するように定めなければならない。
2 処分の制限がある農地であつて省令で定めるもの及び地上権、永小作権又は賃借権が設定された農地であつて当該権利が差押、仮差押又は仮処分の目的となつているものに関しては、交換分合計画を定めることができない。
第百二条 農地の所有権についての交換分合については、交換分合計画において、交換分合により所有者が取得すべき農地及び失うべき農地並びに所有権の移転の時期を定めなければならない。
2 前項の場合において、所有者の取得すべきすべての農地と失うべきすべての農地とは、地目、地積、土性、水利、傾斜、温度等を、省令の定めるところにより、総合的に勘案して、おおむね同等でなければならない。但し、その者の同意を得た場合には、この限りでない。
3 第一項の場合には、所有者が取得すべきすべての農地は、その地積及び価格において、その者が失うべきすべての農地に比べて二割以上の増減があつてはならない。但し、その者の同意を得た場合には、この限りでない。
4 第二項の場合において、所有者が取得すべき農地と失うべき農地とが地目、地積、土性、水利、傾斜、温度等により相殺することができない部分がある場合には、金銭による清算をするものとし、その額並びに支払の方法及び時期を定めなければならない。
第百三条 前条第一項の場合において、所有者が失うべき農地につき先取特権、質権又は抵当権があるときは、これらの権利に代るべき先取特権、質権又は抵当権を設定すべき農地並びにこれらの権利の設定の時期及び存続期間その他の条件を定めなければならない。
2 前項の場合には、当該権利を設定すべき農地は、所有者が所有し、又は取得すべき農地であつて、その価格がその設定すべき権利に照応する現在の権利の目的となつている農地の価格と同等以上のものでなければならない。
3 第一項の場合において、当該所有者が前条第四項の規定による清算金を取得すべきときは、前項の規定にかかわらず、当該権利を設定すべき農地は、その清算金の限度内において、その設定すべき権利に照応する現在の権利の目的となつている農地の価格より低い価格の農地でよい。この場合には、これらの価格の差額に相当する現在の権利の及ぶべき清算金の額を定めなければならない。
4 第一項の場合には、設定すべき権利の存続期間は、その権利に照応する現在の権利の残存期間とし、その他の条件は、現在の権利の条件によらなければならない。
第百四条 第百二条第一項の場合において、所有者が失うべき農地につき地上権、永小作権、賃借権又は使用貸借による権利があるときは、これらの権利に代るべき地上権、永小作権、賃借権又は使用貸借による権利を設定すべき農地並びにこれらの権利の設定の時期及び存続期間、対価その他の条件を定めなければならない。
2 前項の場合には、第百二条第二項から第四項まで及び前条の規定を準用する。
第百五条 第百二条第一項の場合において、当該交換分合により地役権を設定する必要があると認められるときは、その地役権を設定すべき土地、地役権者並びにその地役権の設定の時期及び地役権の目的その他の条件を定め、現に地役権を有する者がその権利を行使する利益を受ける必要がなくなると認められるときは、その権利及び消滅の時期を定めなければならない。
(交換分合の効果)
第百六条 第九十八条第八項又は第九十九条第十一項(第百条第二項において準用する場合を含む。以下同じ。)の規定による公告があつたときは、その公告があつた交換分合計画の定めるところにより、所有権が移転し、先取特権、質権、抵当権、地上権、永小作権、賃借権若しくは使用貸借による権利が設定され、又は地役権が設定され、若しくは消滅する。
2 前項の規定により先取特権、質権、抵当権、地上権、永小作権、賃借権又は使用貸借による権利が設定された場合には、これに照応する従前の権利は、これらの権利の設定された時において消滅する。但し、第百三条第三項(第百四条第二項において準用する場合を含む。)の規定により先取特権、質権又は抵当権の及ぶべき額を定めた場合には、これらの権利は、この額の清算金については、なお存続するものとする。
(所有権以外の権利についての交換分合)
第百七条 農地の地上権、永小作権、賃借権又は使用貸借による権利についての交換分合には、第百二条から前条までの規定を準用する。
(清算金)
第百八条 第九十八条第八項又は第九十九条第十一項の規定による公告があつたときは、市町村農地委員会、土地改良区又は農業協同組合は、その公告があつた交換分合計画の定めるところに従い清算金を支払わなければならない。
2 前項の場合には、同項の者は、当該交換分合計画の定めるところに従い清算金を徴収することができる。
3 市町村農地委員会は、市町村又は農業協同組合に対し、政令の定めるところにより、前二項の規定による清算金の支払及び徴収を委任することができる。
(農地の形質変更等の禁止)
第百九条 第九十八条第八項又は第九十九条第十一項の規定による公告があつた後は、その公告があつた交換分合計画において定める農地につき所有権その他の権利を有する者は、交換分合に支障を及ぼすおそれのない場合を除いて、都道府県知事の許可を受けなければ、その農地の形質を変更してはならない。
(自作農創設特別措置法の先買権の特例)
第百十条 自作農創設特別措置法第二十八条第一項(同条第五項及び第四十一条第四項において準用する場合を含む。)の規定は、交換分合計画の定めるところにより農地の所有権を移転する場合には、適用しない。
2 交換分合計画の定めるところにより自作農創設特別措置法第十六条又は同法第四十一条の規定により売渡があつた農地の所有権を取得した者は、同法第二十八条第一項に規定する「農地の所有権を承継した者」(同条第五項及び第四十一条第四項において準用する場合を含む。)でないものとみなす。
3 交換分合計画の定めるところにより農地の所有権を移転する者が、自作農創設特別措置法第十六条又は同法第四十一条の規定によりその農地の売渡を受けた者又はその者からその農地の所有権を承継した者である場合には、その者がその交換分合計画の定めるところにより取得すべき農地で同法第十六条又は第四十一条の規定により売渡を受けた農地に照応するものとして市町村農地委員会が指定するものにつき、その取得の時期に同法第二十八条第三項(同条第五項及び第四十一条第四項において準用する場合を含む。)の規定による売渡があつたものとみなす。
(農地以外の土地等の権利についての交換分合)
第百十一条 第九十七条から前条までの規定は、農地の集団化に伴つて行う農地の利用上必要な土地に関する権利、農業用施設に関する権利及び水の使用に関する権利の交換分合について準用する。
第四章 補則
(書類の送付に代る公告)
第百十二条 住所又は居所が知れない場合その他書類の送付をすることができない場合において、行政庁又は土地改良区がその送付に代えて公告をしたときは、その公告があつた日に書類を発送したものとみなし、その公告があつた日から十日を経過したときに相手方に到達したものとみなす。
(処分等の行為の承継人に対する効力)
第百十三条 この法律又はこの法律に基く命令の規定による処分、手続その他の行為は、土地改良事業に関係がある土地、物件又は権利につき所有権その他の権利を有する者の承継人に対しても、その効力を有する。
(分合筆手続の代行)
第百十四条 土地改良事業を行う者は、その事業を行うため土地を分筆し、又は合筆する必要がある場合には、その土地の所有者に代つて土地台帳法(昭和二十二年法律第三十号)第二十六条に規定する手続をすることができる。
(登記の特例)
第百十五条 土地改良事業の施行に係る地域内にある不動産の登記については、政令で特例を定めることができる。
(他の登記の停止)
第百十六条 第五十二条第八項(第九十六条において準用する場合を含む。以下本条及び第百三十一条において同じ。)の規定による公告があつた後は、土地改良事業の施行に係る地域内にある土地に関しては、その土地改良事業による登記をした後でなければ他の登記をすることができない。但し、登記の申請人が確定日附のある書類により同項の規定による公告前に登記原因の生じたことを証明した場合には、この限りでない。
(施行に係る地域を数区に分けた場合)
第百十七条 土地改良事業の施行に係る地域を数区に分けた場合には、その各々の区及びその区に係る土地改良事業は、第四十六条、第五十一条、第五十二条及び第五十五条(第九十六条においてこれらの規定を準用する場合を含む。)の適用については、それぞれ、土地改良事業の施行に係る地域及びその地域に係る土地改良事業とみなす。
(測量、検査又は簿書の閲覧等の手続)
第百十八条 左に掲げる者は、土地改良事業に関し土地等の調査をするため必要がある場合には、あらかじめ土地の占有者に通知して、その必要の限度内において、他人の土地に立ち入つて測量し、又は検査することができる。
一 国若しくは都道府県の職員
二 土地改良区の役職員
三 都道府県農地委員会又は市町村農地委員会の委員又はこれらの委員会の事務に従事する者
四 第五条、第七条又は第八十五条の規定による申請をしようとする者
2 前項第四号の者が同項の行為をするには、あらかじめ当該土地の所在地の市町村長の許可を受けなければならない。
3 第一項の場合には、同項第一号から第三号までの者はその身分を示す証票を、同項第四号の者は前項の許可を受けたことを証する書面を携帯し、当該土地の占有者の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。
4 第一項の場合には、同項第一号の国若しくは都道府県、第二号の土地改良区、第三号の都道府県農地委員会若しくは市町村農地委員会又は第四号の者は、同項に掲げる行為によつて通常生ずべき損失を補償しなければならない。
5 第一項第一号から第三号までの者は、当該事業の施行に係る地域を管轄する登記所、漁業免許に関する登録の所管庁、土地台帳若しくは家屋台帳の所管庁又は市町村の事務所につき、無償でその事業に関し必要な簿書の閲覧若しくは謄写又はその謄本の交付を求めることができる。
(障害物の移転等)
第百十九条 国、都道府県又は土地改良区は、土地改良事業の施行のため必要がある場合には、その必要の限度内において、その施行に係る地域内にある物件でその事業の障害となるものを移転し、除去し、又は取りこわすことができる。但し、これによつて通常生ずべき損失を補償しなければならない。
(土地等の収用又は使用)
第百二十条 国、都道府県又は土地改良区は、土地改良事業の施行に伴い用排水機又は地下水源の利用に関する設備を設置するために必要な土地を土地収用法(明治三十三年法律第二十九号)の規定により収用し、又は使用することができる。
2 前項の規定は、土地の所有権及び担保権以外の権利、土地に定着する物件又はこれに関する権利、土石砂れき又は水の使用に関する権利の収用又は使用に準用する。
(急迫の際の使用等)
第百二十一条 国、都道府県又は土地改良区は、その管理するかんがい排水施設、農業用道路その他農地の保全又は利用上必要な施設(土地改良事業の工事中に係るものを含む。)の風雪、出水又は高潮若しくは土砂の崩かいによる急迫の災害を防ぐため必要があるときは、他人の土地を一時使用し、又はその土石竹木その他の現品を使用し、若しくは収用することができる。但し、時価によりその損失の全額を補償しなければならない。
(損失補償)
第百二十二条 土地改良事業を行う者は、その事業の利害関係人がその事業によつて通常受けるべき損失を補償しなければならない。
2 第十条第三項、第四十八条第七項、第八十七条第三項、第九十五条第四項(同条第五項において準用する場合を含む。)、第九十八条第八項又は第九十九条第十一項の規定による公告があつた後において土地の形質を変更し、工作物の新築、改築若しくは修繕をし、又は物件を附加増置した場合には、これについての損失は、補償しなくてもよい。但し、都道府県知事の許可を受けてこれらの行為をした場合には、この限りでない。
3 土地改良区の組合員は、第六十一条第三項及び第百十八条から前条までに規定する場合を除いては、その土地改良区の行う事業によつて受けた損失の補償を請求することができない。但し、規約に特別の定がある場合には、この限りでない。
(補償金等の供託)
第百二十三条 土地改良事業を行う者は、換地計画若しくは交換分合計画に定める清算金又は第百十九条若しくは前条の規定による補償金を支払う場合において、当該土地、物件又は権利につき先取特権、質権又は抵当権があるときは、その補償金又は清算金を供託しなければならない。但し、先取特権、質権又は抵当権を有する者から供託をしなくてもよい旨の申出があつた場合には、この限りでない。
2 前項の先取特権、質権又は抵当権を有する者は、同項の規定により供託された補償金又は清算金に対して、その権利を行うことができる。
(数都府県にわたる事項の処理)
第百二十四条 土地改良事業の施行に係る地域又は土地改良区の地区が二以上の都府県にわたる場合には、この法律において都道府県知事の権限に属させた事項は、第八十五条及び第八十六条に規定するものを除いて、農林大臣が処理する。
(特別区等に対する規定の適用)
第百二十五条 この法律中市町村又は市町村長に関する規定は、特別区のある地にあつては特別区又は特別区の区長に、地方自治法第百五十五条第二項の市にあつては区又は区長に、全部事務組合又は役場事務組合のある地にあつては組合又は組合の管理者に、市町村農地委員会に関する規定は、地区農地委員会の設けられている市町村の地区にあつては地区農地委員会に適用する。
(補助金の交付及び被補助者に対する監督)
第百二十六条 国は、その予算の範囲内において、農地の改良、開発、保全又は集団化を行う者に対して補助金を交付することができる。
2 前項の補助金の交付を受けようとする者は、省令の定めるところにより、補助金の交付申請書を事業計画書、事業予算書その他必要な書類とともに農林大臣に提出しなければならない。
3 農林大臣は、前項の提出書類を審査し、適当と認めるときは、補助金の交付を決定するものとする。
第百二十七条 農林大臣は、前条の規定による補助金の交付の目的を最もよく達成するため、補助金の交付を受ける者に対して、当該事業の施行に関し必要な指示を行い、当該事業の目的たる施設を検査し、報告書の提出を命じ、その他必要な処分をすることができる。
2 農林大臣は、前項に規定する者が補助金の交付の目的を達成し得ないと認められる場合には、その者に対して、補助金の全部若しくは一部を交付せず、その交付を停止し、又は交付した補助金の全部若しくは一部の返還を命ずることができる。
3 返還すべき補助金は、地方公共団体が返還するものを除いて、国税滞納処分の例によつて徴収することができる。但し、先取特権の順位は、国税に次ぐものとする。
第百二十八条 農林大臣は、都道府県に対するものを除いて、政令の定めるところにより、前二条の規定による権限の一部を都道府県知事に行わせることができる。
第百二十九条 前三条に規定するものの外、補助金の交付に関し必要な事項は、政令で定める。
(異議の申立に関する期間の計算等)
第百三十条 この法律の規定による異議の申立の期間の計算をする場合には、郵便物の輸送に要した日数は、期間に算入しない。
2 異議の申立は、期間が経過した後においても、容認すべき事由があると認めるときは、なお受理することができる。
3 異議の申立又は裁定の申請に対する決定又は裁定は、文書をもつてし、その理由を附してこれを当事者に交付しなければならない。
(権利変動の通知)
第百三十一条 第五十二条第八項の規定による公告前において土地改良事業の施行に係る地域内にある土地につき権利の設定、移転、変更若しくは消滅又は処分の制限があつたときは、その当事者は、遅滞なくその旨をその土地改良事業を行う者に通知しなければならない。
第五章 監督
(報告の徴取)
第百三十二条 農林大臣又は都道府県知事は、土地改良区又は第九十五条の規定により数人共同して土地改良事業を行う者に法令、法令に基いてする行政庁の処分又は定款、規約、土地改良事業計画、換地計画若しくは交換分合計画を遵守させるために必要があると認めるときは、これらの者からその事業に関し報告を徴することができる。
(業務状況の検査)
第百三十三条 土地改良区の組合員が、総組合員の十分の一以上の同意を得て、その土地改良区の事業又は会計が法令、法令に基いてする行政庁の処分又は定款、規約、土地改良事業計画、換地計画若しくは交換分合計画に違反する疑があることを理由として検査を請求した場合には、都道府県知事は、その土地改良区の事業又は会計の状況を検査しなければならない。
2 農林大臣又は都道府県知事は、土地改良区又は第九十五条の規定により数人共同して土地改良事業を行う者の事業又は会計が法令、法令に基いてする行政庁の処分又は定款、規約、土地改良事業計画、換地計画若しくは交換分合計画に違反すると認める場合には、何時でも、その業務又は会計の状況を検査することができる。
(違反行為に対する措置)
第百三十四条 農林大臣又は都道府県知事は、前条の規定による検査を行つた場合において、当該土地改良区又は数人共同して土地改良事業を行う者の業務又は会計が法令、法令に基いてする行政庁の処分又は定款、規約、土地改良事業計画、換地計画若しくは交換分合計画に違反すると認めるときは、これらの者に対し必要な措置を採るべき旨を命ずることができる。
(解散を命ずる裁判)
第百三十五条 土地改良区が第十五条に規定する事業以外の事業を行つたときは、裁判所は、農林大臣又は都道府県知事の申立により、その土地改良区の解散を命ずることができる。
2 前項の規定による事件は、当該土地改良区の主たる事務所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄とする。
3 第一項の場合における手続については、最高裁判所の定めるところによる。
(決議、選挙等の取消等)
第百三十六条 土地改良区の組合員が、総組合員の十分の一以上の同意を得て、総会、総代会の招集手続若しくは議決の方法又は役員若しくは議員の選挙の方法が法令、法令に基いてする行政庁の処分又は定款若しくは規約に違反することを理由としてその議決又は選挙若しくは当選の取消を請求した場合において、都道府県知事は、その違反の事実があると認めるときは、その決議又は選挙若しくは当選を取り消すことができる。
2 前項の規定は、第四十八条第二項及び第五十二条第三項(第九十六条、第九十九条第二項及び第百十一条において準用する場合を含む。)の会議に準用する。
第六章 罰則
第百三十七条 第百九条(第百十一条において準用する場合を含む。)の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
第百三十八条 左の各号の一に該当する者は、六月以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
一 第百十八条第一項の規定により国又は都道府県の職員が行う測量又は検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
二 第百十九条の規定により国又は都道府県の職員が行う移転、除去又は取りこわしを拒み、妨げ、又は忌避した者
三 第百二十七条第一項又は第百三十三条の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
四 第百二十七条第一項又は第百三十二条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
第百三十九条 土地改良事業の施行に関して設けた標識を移転し、汚損し、き損し、又は除去した者は、三万円以下の罰金に処する。
第百四十条 土地改良区の役員若しくは総代又は土地改良区連合の役員若しくは議員が、その職務に関して賄ろを収受し、又は要求し、若しくは約束したときは、三年以下の懲役に処する。よつて不正の行為をし、又は相当の行為をしないときは、七年以下の懲役に処する。
2 前項に掲げる役員、総代又は議員であつた者がその在職中に請託をうけて職務上不正な行為をし、又は相当の行為をしなかつたことに関し賄ろを収受し、要求し、又は約束したときは、三年以下の懲役に処する。
3 第一項に掲げる役員、総代又は議員がその職務に関し請託を受けて第三者に賄ろを供与させ、又はその供与を約束したときは、三年以下の懲役に処する。
4 犯人又は情を知つた第三者の収受した賄ろは、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
第百四十一条 前条第一項から第三項までに掲げる者に対して賄ろを供与し、又はその申込若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は二十五万円以下の罰金に処する。
2 前条の罪を犯した者が自首したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。
第百四十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務又は財産に関して第百三十七条及び第百三十八条に規定する違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して各本条の罰金を科する。
第百四十三条 左の場合においては、土地改良区又は土地改良区連合の理事若しくは監事又は清算人を三万円以下の過料に処する。
一 第十五条に規定する事業以外の事業を営んだとき。
二 第四十一条第一項の規定に違反したとき。
三 第六十九条又は第七十一条に掲げる書類に記載すべき事項を記載せず、又は不実の記載をしたとき。
四 第七十条の規定に違反して土地改良区の残余財産を分配したとき。
五 第七十六条において準用する民法第七十九条の期間内に債権者に弁済をしたとき。
六 この法律の規定による公告をせず、又は不実の公告をしたとき。
第百四十四条 左の場合においては、土地改良区又は土地改良区連合の理事若しくは監事又は清算人を一万円以下の過料に処する。
一 第二十条の規定に違反したとき。
二 第二十五条第一項、第二十六条又は第二十七条の規定に違反したとき。
三 第二十九条第一項の規定に違反して書簿を備えず、若しくは保存せず、又は同条第二項の規定による省令に違反してその書簿に記載すべき事項を記載せず、若しくは不実の記載をしたとき。
四 第二十九条第三項の規定に違反して書簿の閲覧を拒んだとき。
五 第百三十四条の規定による命令に違反したとき。
第百四十五条 第十四条第二項又は第七十八条第二項の規定に違反した者は、五千円以下の過料に処する。
附 則
この法律施行の期日は、公布の日から起算して六十日をこえない期間内において政令で定める。
大蔵大臣 池田勇人
農林大臣 森幸太郎
建設大臣 益谷秀次
内閣総理大臣 吉田茂