農地法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第126号
公布年月日: 昭和37年5月11日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

農地法は農地改革の成果維持を担ってきたが、経済発展に伴う農業環境の変化に対応し、農業の生産性向上と農業従事者の生活水準向上を図るため、農地保有の合理化と農業経営の近代化が必要となっている。そこで、農地改革の成果を維持しつつ、家族農業経営の規模拡大や法人による農業経営、農業協同組合による農地信託等を容易にするため、以下の改正を行う。第一に、農地等の権利取得の最高面積制限を緩和する。第二に、法人組織による農業経営のための規定を整備する。第三に、農業協同組合による農地等の信託事業を円滑化するための措置を講じる。これらにより、農地制度を通じた農業構造の改善を図る。

参照した発言:
第39回国会 衆議院 農林水産委員会 第9号

審議経過

第39回国会

参議院
(昭和36年10月17日)
衆議院
(昭和36年10月18日)
参議院
(昭和36年10月26日)

第40回国会

衆議院
(昭和37年1月30日)
(昭和37年4月12日)
(昭和37年4月17日)
(昭和37年4月18日)
(昭和37年4月19日)
(昭和37年4月20日)
参議院
(昭和37年4月24日)
(昭和37年4月26日)
(昭和37年4月27日)
(昭和37年4月30日)
(昭和37年5月2日)
(昭和37年5月4日)
(昭和37年5月6日)
(昭和37年5月7日)
農地法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和三十七年五月十一日
内閣総理大臣 池田勇人
法律第百二十六号
農地法の一部を改正する法律
農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)の一部を次のように改正する。
第二条中第七項を第九項とし、第六項の次に次の二項を加える。
7 この法律で「農業生産法人」とは、農事組合法人、合名会社、合資会社又は有限会社で、左の各号に掲げる要件のすべてをみたしているものをいう。
一 その法人の事業が農業(これとあわせ行なう林業及び農事組合法人にあつては農業とあわせ行なう農業協同組合法(昭和二十二年法律第百三十二号)第七十二条の八第一項第一号の事業を含む。)及びこれに附帯する事業に限られること。
二 その法人の組合員又は社員(以下「構成員」という。)は、すべて、その法人に農地若しくは採草放牧地について所有権若しくは使用収益権(地上権、永小作権、使用貸借による権利又は賃借権をいう。以下同様とする。)を移転した個人(その法人の構成員となる前にこれらの権利をその法人に移転した者のうち、その移転後省令で定める一定期間内に構成員となり、引き続き構成員となつている個人以外のものを除く。)若しくはその一般承継人(省令で定めるものに限る。)であるか、その法人に農地若しくは採草放牧地について使用収益権に基づく使用及び収益をさせている個人であるか、その法人に使用及び収益をさせるため農地若しくは採草放牧地について所有権の移転若しくは使用収益権の設定若しくは移転に関し次条第一項若しくは第七十三条第一項の許可の申請をしている個人(当該申請に対する許可があり、近くその許可に係る農地又は採草放牧地についてその法人に所有権を移転し、又は使用収益権を設定し、若しくは移転することが確実と認められる個人を含む。)であるか、又はその法人の事業に常時従事する者(前項に掲げる事由により一時的にその法人の事業に常時従事することができない者で当該事由がなくなれば常時従事することとなると農業委員会が認めたもの及び省令で定める一定期間内にその法人の事業に常時従事することとなることが確実と認められる者を含む。以下「常時従事者」という。)であるかのいずれかであること。
三 その法人の構成員以外の者から使用収益権の設定又は移転を受けて耕作又は養畜の事業に供している農地又は採草放牧地の面積が、それぞれ、その法人が耕作又は養畜の事業に供している農地又は採草放牧地の面積の二分の一にみたないこと。
四 その法人の常時従事者たる構成員が、農事組合法人及び有限会社にあつては、その法人の議決権の過半数を保有し、合名会社及び合資会社にあつては、その法人の社員(業務執行権を有しないものを除く。)の過半を占めること。
五 その法人の事業を行なうのに必要な労働力のうちその構成員以外の者に依存する部分が省令で定める基準をこえないこと。
六 その法人の利益(農事組合法人にあつては、剰余金)の配当について、その定款で、構成員がその法人の事業に従事した程度に応じてする旨又は省令で定める率をこえない範囲内において払い込まれた出資の額の割合に応じてし、なお剰余があるときは、構成員がその法人の事業に従事した程度に応じてする旨が定められていること。
8 法人の構成員につき常時従事者であるかどうかを判定すべき基準は、省令で定める。
第三条第一項中第八号を第九号とし、第七号の次に次の一号を加える。
八 農業協同組合法第十条第二項の信託の引受けの事業(以下「信託事業」という。)を行なう農業協同組合が当該信託の引受けにより所有権を取得する場合及び当該信託の終了によりその委託者又はその一般承継人が所有権を取得する場合
第三条第二項ただし書中「第三号から第五号まで」を「第二号の二及び第三号から第五号まで」に改め、同項第一号中「世帯員」の下に「並びにその土地について耕作又は養畜の事業を行なつている農業生産法人」を加え、同項第二号の次に次の三号を加える。
二の二 農業生産法人以外の法人が前号に掲げる権利を取得しようとする場合
二の三 農業生産法人が所有権及び使用収益権以外の権利を取得しようとする場合
二の四 信託の引受けにより第二号に掲げる権利が取得される場合
第三条第二項第三号中「前号に掲げる権利を取得しようとする者」を「第二号に掲げる権利を取得しようとする者(農業生産法人を除く。)」に、「こえることとなる場合」を「こえることとなり、かつ、これらの者が、その取得後において、耕作又は養畜の事業に供すべき農地及び採草放牧地を主としてその労働力に依存するだけでは効率的に利用して耕作又は養畜の事業を行なうことができないと認められる場合」に改め、同項第四号中「第二号に掲げる権利を取得しようとする者」の下に「(農業生産法人を除く。)」を加え、「こえることとなる場合」を「こえることとなり、かつ、これらの者が、その取得後において、耕作又は養畜の事業に供すべき農地及び採草放牧地を主としてその労働力に依存するだけでは効率的に利用して耕作又は養畜の事業を行なうことができないと認められる場合」に改め、同項第五号中「第二号に掲げる権利を取得しようとする者」の下に「(農業生産法人を除く。)」を加え、同項第六号及び第七号中「一時貸し付けようとする場合」の下に「及び農業生産法人の常時従事者たる構成員がその土地をその法人に貸し付けようとする場合」を加える。
第六条第六項中「及び第六号」を「、第六号、第八号及び第九号」に改める。
第七条第一項中第八号を第十号とし、第七号の次に次の二号を加える。
八 農業生産法人の常時従事者たる構成員が所有し、かつ、その所有者の住所のある市町村の区域内にある小作地又は小作採草放牧地で、その法人がその者から設定を受けた使用収益権に基づいて耕作又は養畜の事業に供しているもの
九 信託事業を行なう農業協同組合が所有する小作地又は小作採草放牧地で信託事業に係る信託財産であるもの
第七条に次の三項を加える。
3 農業生産法人の常時従事者たる構成員以外の構成員又は農業生産法人の構成員以外の者で、従前その法人の常時従事者たる構成員であつたもの又はその法人の常時従事者たる構成員であつた者の一般承継人であるものが所有する小作地又は小作採草放牧地で、その法人がその所有者(所有者がその法人の常時従事者たる構成員であつた者の一般承継人である場合には、その常時従事者たる構成員であつた者)からその者がその法人の常時従事者たる構成員でなくなる以前に設定を受けた期間の定めがある使用収益権に基づいて耕作又は養畜の事業に供しているものについての第一項第八号の規定の適用については、その所有者は、その使用収益権の残存期間に限り、その法人の常時従事者たる構成員とみなす。
4 第一項第八号の規定の適用については、農業生産法人の常時従事者たる構成員が所有し、かつ、その法人がその者から設定を受けた使用収益権に基づいて耕作の事業に供している小作地でその所有者の住所のある市町村の区域の外にあるもののうちその使用収益権の設定前省令で定める一定期間その所有者又はその世帯員が耕作していたものは、その所有者がその一定期間引き続いて住所を有した市町村の区域内に住所を有する間に限り、その所有者の住所のある市町村の区域内にあるものとみなす。
5 第一項第八号及び前項の規定の適用については、小作地又は小作採草放牧地の所有者で第二条第六項に掲げる事由により、一時、その住所がその所有する小作地又は小作採草放牧地のある市町村の区域内にないもの(前項の規定の適用については、その事由の発生の直前の住所のある市町村の区域内になかつたもの又はないもの)は、その住所がその市町村の区域内にあるもの(同項の規定の適用については、その事由の発生の直前の住所のある市町村の区域内にあつたもの又はあるもの)とみなす。
第八条第一項第二号中「及び第六号」を「、第六号、第八号及び第九号」に改める。
第九条第一項中「小作地又は小作採草放牧地を」を「小作地又は小作採草放牧地につき」に、「相当するものを」を「相当するものにつき」に、「他の者に譲渡しないとき」を「、所有権の譲渡しをしないとき(第七条第一項第八号に掲げる小作地又は小作採草放牧地に該当するものでなくなつた小作地又は小作採草放牧地にあつては、省令で定めるところにより、所有権の譲渡しをし、地上権若しくは永小作権の消滅をさせ、使用貸借の解除をし、合意による解約をし、若しくは返還の請求をし、又は賃貸借の解除をし、解約の申入れをし、合意による解約をし、若しくは賃貸借の更新をしない旨の通知をしないとき)」に改め、「第三条第一項」の下に「又は第二十条第一項」を加え、「その期間経過後もこれに対する処分がないときは、これに対し不許可の処分」を「その期間経過後までこれに対する処分がないときも、その処分」に改める。
第十五条の次に次の一条を加える。
(農業生産法人が農業生産法人でなくなつた場合等における買収)
第十五条の二 農業生産法人が農業生産法人でなくなつた場合(農業生産法人が合併によつて解散した場合において当該合併によつて設立し、又は当該合併後存続する法人が農業生産法人でない場合を含む。)において、その法人若しくはその一般承継人が所有する農地若しくは採草放牧地があるとき、又はその法人及びその一般承継人以外の者が所有する農地若しくは採草放牧地でその法人若しくはその一般承継人の耕作若しくは養畜の事業に供されているものがあるときは、国がこれを買収する。ただし、これらの土地でその法人が第三条第一項本文に掲げる権利を取得した時に農地及び採草放牧地以外の土地であつたものその他政令で定めるものについては、この限りでない。
2 第三条第二項第六号に規定する農地又は採草放牧地をその所有者が農業生産法人に貸し付けた場合において、その所有者が当該貸付けに係る法人の常時従事者たる構成員でなくなつたときは、国がその農地又は採草放牧地を買収する。
3 農業委員会は、前二項の規定による買収をすべき農地又は採草放牧地があると認めたときは、次に掲げる事項を公示し、かつ、公示の日の翌日から起算して一箇月間、その事務所で、これらの事項を記載した書類を縦覧に供しなければならない。この場合には、第八条第二項の規定を準用する。
一 その農地又は採草放牧地の所有者の氏名又は名称及び住所
二 その農地又は採草放牧地の所在、地番、地目及び面積
三 その他必要な事項
4 農業委員会は、第一項の規定による買収をすべき農地又は採草放牧地につき前項の規定により公示をした場合において、その公示の日の翌日から起算して三箇月以内に省令で定めるところにより当該法人から第二条第七項各号に掲げる要件のすべてをみたすに至つた旨の届出があり、かつ、審査の結果その届出が真実であると認められるときは、遅滞なく、その公示を取り消さなければならない。
5 農業委員会は、前項の規定による届出があり、審査の結果その届出が真実であると認められないときは、遅滞なく、その旨を公示しなければならない。
6 第四項の規定により公示が取り消されたときは、その公示に係る農地又は採草放牧地については、国は、第一項の規定による買収をしない。
7 第三項の規定により公示された農地若しくは採草放牧地の所有者又はこれらの土地について使用収益権に基づく使用及び収益をさせている者が、その公示に係る農地又は採草放牧地につき、第一項の規定による買収をすべき農地又は採草放牧地にあつては第四項に規定する期間の満了の日(その日までに同項の規定による届出があり、これにつき第五項の規定による公示があつた場合のその公示に係る農地又は採草放牧地については、その公示の日)、第二項の規定による買収をすべき農地又は採草放牧地にあつては第三項の規定による公示の日の翌日から起算して三箇月以内に、省令で定めるところにより、所有権の譲渡しをし、地上権若しくは永小作権の消滅をさせ、使用貸借の解除をし、合意による解約をし、若しくは返還の請求をし、又は賃貸借の解除をし、解約の申入れをし、合意による解約をし、若しくは賃貸借の更新をしない旨の通知をしたときは、当該農地又は採草放牧地については、第一項又は第二項の規定による買収をしない。当該期間内に第三条第一項又は第二十条第一項の規定による許可の申請があり、その期間経過後までこれに対する処分がないときも、その処分があるまでは、同様とする。
8 第十条から第十四条までの規定は、第一項又は第二項の規定による買収をする場合に準用する。
第十七条中「第十五条第二項」の下に「、第十五条の二第八項」を加える。
第二十条第一項ただし書中「行われる場合」を「行なわれる場合及び解約の申入れ、合意による解約又は賃貸借の更新をしない旨の通知が信託事業に係る信託財産につき行なわれる場合(その賃貸借がその信託財産に係る信託の引受け前から既に存していたものである場合及び解約の申入れ又は合意による解約にあつてはこれらの行為によつて賃貸借の終了する日、賃貸借の更新をしない旨の通知にあつてはその賃貸借の期間の満了する日がその信託に係る信託行為によりその信託が終了することとなる日前一年以内にない場合を除く。)」に改め、同条第二項第三号中「生計」の下に「(法人にあつては、経営)」を加え、同項中第四号を第五号とし、第三号の次に次の一号を加える。
四 賃借人である農業生産法人が農業生産法人でなくなつた場合並びに賃借人である農業生産法人の構成員となつている賃貸人がその法人の構成員でなくなり、かつ、その賃貸人又はその世帯員がその許可を受けた後において耕作又は養畜の事業に供すべき農地及び採草放牧地を主としてその労働力により効率的に利用して耕作又は養畜の事業を行なうことができると認められる場合
第三十一条中「又は農業協同組合」を「、農業協同組合又は農事組合法人」に改める。
第三十六条第一項中「若しくは第十五条第一項」を「、第十五条第一項若しくは第十五条の二第一項若しくは第二項」に改め、同項第一号中「自作農として農業に精進する見込があるもの」を「、自作農として農業に精進する見込みがあるもの又は農業生産法人であるもの」に改め、同項第二号中「又は農業協同組合」を「、農業協同組合又は農事組合法人」に改め、同項第三号中「見込がある者」を「見込みがある者又は農業生産法人」に改める。
第六十四条ただし書中「農業協同組合」の下に「、農事組合法人」を加える。
第七十八条第一項中「第十五条第一項」の下に「、第十五条の二第一項若しくは第二項」を加える。
第八十条第二項中「所有者」の下に「又はその一般承継人」を加える。
第八十五条第一項第二号中「第十五条第二項」の下に「、第十五条の二第八項」を加える。
第八十七条第一項中「若しくは第十五条」を「、第十五条若しくは第十五条の二」に改める。
附 則
1 この法律は、公布の日から起算して九十日をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
2 土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)の一部を次のように改正する。
第十八条第四項中「組合員」の下に「(法人を除き、組合員たる法人の業務を執行する役員を含む。)」を加える。
第二十三条第三項中「(禁治産者、準禁治産者及び禁こ以上の刑に処せられて執行中の者を除く。)」の下に「及び法人たる組合員」を加える。
第八十二条第二項中「議員」の下に「(法人を除き、議員たる法人の業務を執行する役員を含む。)」を加える。
第百十条第二項中「及び第十五条」を「、第十五条及び第十五条の二」に改める。
第百四十条第一項中「総代」の下に「(法人を除き、総代たる法人の業務を執行する役員を含む。以下本条において同じ。)」を、「議員」の下に「(法人を除き、議員たる法人の業務を執行する役員を含む。以下本条において同じ。)」を加える。
3 農業委員会等に関する法律(昭和二十六年法律第八十八号)の一部を次のように改正する。
第八条第一項に次の一号を加える。
三 第一号に規定する面積の農地につき耕作の業務を営む農業生産法人(農地法第二条第七項に規定する農業生産法人をいう。)の組合員又は社員(その耕作に従事する日数が前号の省令で定める日数に達しないと農業委員会が認めた者を除く。)
第十条第三項を次のように改める。
3 選挙人名簿には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 第八条第一項第一号の規定による選挙人については、その氏名、住所、生年月日及び耕作の業務を営む農地の面積その他必要な事項
二 第八条第一項第二号の規定による選挙人については、その氏名及び生年月日その他必要な事項
三 第八条第一項第三号の規定による選挙人については、その氏名、住所及び生年月日、その者が組合員又は社員となつている同号に規定する法人の名称及び耕作の業務を営む農地の面積その他必要な事項
4 土地改良法の一部を改正する法律(昭和三十二年法律第六十九号)の一部を次のように改正する。
附則第十五項中「所有者」の下に「又はその一般承継人」を加える。
5 果樹農業振興特別措置法(昭和三十六年法律第十五号)の一部を次のように改正する。
第三条第一項に次の一号を加える。
三 農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)第二条第七項に規定する農業生産法人たる果樹農業者(農林省令で定めるものを除く。)
農林大臣臨時代理 国務大臣 三木武夫
内閣総理大臣 池田勇人