(樺太施行法律特例)
法令番号: 勅令第百二十四號
公布年月日: 大正9年5月3日
法令の形式: 勅令
朕樺太ニ施行スル法律ノ特例ニ關スル件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正九年五月一日
內閣總理大臣 原敬
勅令第百二十四號
第一條 樺太ニ於ケル土人ノ外ニ關係者ナキ民事ニ關スル事項及土人ノミニ對スル刑事ニ關スル事項ハ從來ノ慣例ニ依ル
前項ニ規定スル事項ニ關スル訴訟手續ハ裁判所ノ便宜ニ從フ
第二條 樺太廳支廳長又ハ支廳出張所長タル官吏及稅務、林務、鑛業又ハ水產ニ關スル事務ヲ管掌スル官吏ハ刑事訴訟法第四十七條第二項ニ規定スル司法警察官ノ職權ヲ有ス
第三條 民法又ハ商法ニ規定スル登記ヲ爲スヘキ期間ハ之ヲ二倍トス
第四條 民事訴訟法第百六十七條第一項及刑事訴訟法第十六條第一項ノ場合ニ於テハ海陸路四里每ニ一日ヲ伸長ス
第五條 裁判所又ハ裁判長カ職權ヲ以テ辯護士ヲ訴訟承繼人、訴訟代理人又ハ辯護人ニ選定シ又ハ選任スヘキ場合ニ於テハ辯護士ニ非サル者ヲ以テ之ニ充ツルコトヲ得
第六條 漁業法第七條ノ規定ハ土人ノ漁業ニ關シテ之ヲ適用セス樺太廳長官ニ於テ別段ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第七條 鑛業法及砂鑛法ニ依ル農商務大臣若ハ主務大臣及鑛務署長ノ職務ハ樺太廳長官之ヲ行フ
第八條 徵發令及陸地測量標條例中府縣知事ノ職務ハ樺太廳長官、郡長ノ職務ハ樺太廳支廳長、町村長ノ職務ハ樺太廳長官ノ指定シタル者之ヲ行フ
第九條 行旅病人及行旅死亡人取扱法、水難救護法及種痘法中市町村長ノ職務ハ樺太廳支廳出張所ノ管轄區域ニ在リテハ樺太廳支廳出張所長、其ノ他ノ區域ニ在リテハ樺太廳支廳長之ヲ行フ
第十條 砂糖消費稅法及織物消費稅法ノ施行ニ關スル事務ハ樺太廳支廳之ヲ行フ但シ稅關又ハ保稅倉庫ヨリ引取ラルル砂糖及織物ニ關シテハ稅關ニ委託シテ之ヲ行ハシム
第十一條 出版法及新聞紙法中內務大臣ノ職務ハ樺太廳長官之ヲ行ヒ內務省ノ事務ハ樺太廳之ヲ取扱フ
豫約出版法中內務大臣ノ職務ハ樺太廳長官、地方官廳ノ職務ハ樺太廳支廳長之ヲ行フ
第十二條 藥品營業竝藥品取扱規則中內務大臣及地方長官ノ職務ハ樺太廳長官之ヲ行ヒ內務省及地方廳ノ事務ハ樺太廳之ヲ取扱フ
第十三條 間接國稅犯則者處分法中稅務監督局トアルハ樺太廳、稅務署トアルハ樺太廳支廳トシ稅務署長ノ職務ハ樺太廳支廳長之ヲ行フ
第十四條 產業組合法ニ規定スル登記又ハ屆出ヲ爲スヘキ期間ハ之ヲ二倍トシ同法中地方長官ノ職務ハ樺太廳長官、郡長ノ職務ハ樺太廳支廳長之ヲ行フ
第十五條 精神病者監護法第三條、第四條及第五條ニ規定スル屆出期間竝同法第三條及第八條ニ規定スル假監置ノ期間ハ之ヲ二倍トシ同法中市區町村長ノ職務ハ樺太廳支廳出張所ノ管轄區域ニ在リテハ樺太廳支廳出張所長、其ノ他ノ區域ニ在リテハ樺太廳支廳長之ヲ行フ
精神病者監護法第六條又ハ第八條第三項ノ規定ニ依リ樺太廳支廳長ニ於テ精神病者ヲ監置スヘキトキハ樺太廳長官ノ命令ニ依ル場合ヲ除クノ外同長官ノ認可ヲ受クヘシ但シ認可ヲ受クル暇ナキトキハ三十日以內之ヲ監置スルコトヲ得
樺太廳支廳長ハ其ノ監護スル精神病者ノ監置ヲ適當ナル公私ノ施設又ハ私人ニ委託スルコトヲ得
第十六條 紙幣類似證券取締法中主務大臣ノ職務ハ樺太廳長官之ヲ行フ
第十七條 土地收用法第十條、第十一條、第二十條及第二十四條ニ規定スル期間ハ之ヲ二倍トシ同法中內務大臣ノ職務ハ內閣總理大臣、地方長官及收用審查會ノ職務ハ樺太廳長官、郡市長ノ職務ハ樺太廳支廳長之ヲ行ヒ市町村長ノ職務ハ樺太廳支廳出張所ノ管轄區域ニ在リテハ樺太廳支廳出張所長、其ノ他ノ區域ニ在リテハ樺太廳支廳長之ヲ行フ
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
左ノ勅令ハ之ヲ廢止ス
明治四十年勅令第九十四號
明治四十年勅令第九十七號
明治四十年勅令第二百三十三號
明治四十年勅令第二百五十七號
明治四十年勅令第三百十八號
明治四十二年勅令第百五十二號
明治四十二年勅令第百七十八號
明治四十三年勅令第二十七號
明治四十三年勅令第二百五號
明治四十三年勅令第三百四十五號
明治四十四年勅令第百四十八號
大正元年勅令第十二號
大正四年勅令第八十八號
大正五年勅令第十六號
大正六年勅令第三十號
大正六年勅令第三十一號
大正七年勅令第二百六十號
大正八年勅令第二百三十四號
朕樺太ニ施行スル法律ノ特例ニ関スル件ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正九年五月一日
内閣総理大臣 原敬
勅令第百二十四号
第一条 樺太ニ於ケル土人ノ外ニ関係者ナキ民事ニ関スル事項及土人ノミニ対スル刑事ニ関スル事項ハ従来ノ慣例ニ依ル
前項ニ規定スル事項ニ関スル訴訟手続ハ裁判所ノ便宜ニ従フ
第二条 樺太庁支庁長又ハ支庁出張所長タル官吏及税務、林務、鉱業又ハ水産ニ関スル事務ヲ管掌スル官吏ハ刑事訴訟法第四十七条第二項ニ規定スル司法警察官ノ職権ヲ有ス
第三条 民法又ハ商法ニ規定スル登記ヲ為スヘキ期間ハ之ヲ二倍トス
第四条 民事訴訟法第百六十七条第一項及刑事訴訟法第十六条第一項ノ場合ニ於テハ海陸路四里毎ニ一日ヲ伸長ス
第五条 裁判所又ハ裁判長カ職権ヲ以テ弁護士ヲ訴訟承継人、訴訟代理人又ハ弁護人ニ選定シ又ハ選任スヘキ場合ニ於テハ弁護士ニ非サル者ヲ以テ之ニ充ツルコトヲ得
第六条 漁業法第七条ノ規定ハ土人ノ漁業ニ関シテ之ヲ適用セス樺太庁長官ニ於テ別段ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第七条 鉱業法及砂鉱法ニ依ル農商務大臣若ハ主務大臣及鉱務署長ノ職務ハ樺太庁長官之ヲ行フ
第八条 徴発令及陸地測量標条例中府県知事ノ職務ハ樺太庁長官、郡長ノ職務ハ樺太庁支庁長、町村長ノ職務ハ樺太庁長官ノ指定シタル者之ヲ行フ
第九条 行旅病人及行旅死亡人取扱法、水難救護法及種痘法中市町村長ノ職務ハ樺太庁支庁出張所ノ管轄区域ニ在リテハ樺太庁支庁出張所長、其ノ他ノ区域ニ在リテハ樺太庁支庁長之ヲ行フ
第十条 砂糖消費税法及織物消費税法ノ施行ニ関スル事務ハ樺太庁支庁之ヲ行フ但シ税関又ハ保税倉庫ヨリ引取ラルル砂糖及織物ニ関シテハ税関ニ委託シテ之ヲ行ハシム
第十一条 出版法及新聞紙法中内務大臣ノ職務ハ樺太庁長官之ヲ行ヒ内務省ノ事務ハ樺太庁之ヲ取扱フ
予約出版法中内務大臣ノ職務ハ樺太庁長官、地方官庁ノ職務ハ樺太庁支庁長之ヲ行フ
第十二条 薬品営業並薬品取扱規則中内務大臣及地方長官ノ職務ハ樺太庁長官之ヲ行ヒ内務省及地方庁ノ事務ハ樺太庁之ヲ取扱フ
第十三条 間接国税犯則者処分法中税務監督局トアルハ樺太庁、税務署トアルハ樺太庁支庁トシ税務署長ノ職務ハ樺太庁支庁長之ヲ行フ
第十四条 産業組合法ニ規定スル登記又ハ届出ヲ為スヘキ期間ハ之ヲ二倍トシ同法中地方長官ノ職務ハ樺太庁長官、郡長ノ職務ハ樺太庁支庁長之ヲ行フ
第十五条 精神病者監護法第三条、第四条及第五条ニ規定スル届出期間並同法第三条及第八条ニ規定スル仮監置ノ期間ハ之ヲ二倍トシ同法中市区町村長ノ職務ハ樺太庁支庁出張所ノ管轄区域ニ在リテハ樺太庁支庁出張所長、其ノ他ノ区域ニ在リテハ樺太庁支庁長之ヲ行フ
精神病者監護法第六条又ハ第八条第三項ノ規定ニ依リ樺太庁支庁長ニ於テ精神病者ヲ監置スヘキトキハ樺太庁長官ノ命令ニ依ル場合ヲ除クノ外同長官ノ認可ヲ受クヘシ但シ認可ヲ受クル暇ナキトキハ三十日以内之ヲ監置スルコトヲ得
樺太庁支庁長ハ其ノ監護スル精神病者ノ監置ヲ適当ナル公私ノ施設又ハ私人ニ委託スルコトヲ得
第十六条 紙幣類似証券取締法中主務大臣ノ職務ハ樺太庁長官之ヲ行フ
第十七条 土地収用法第十条、第十一条、第二十条及第二十四条ニ規定スル期間ハ之ヲ二倍トシ同法中内務大臣ノ職務ハ内閣総理大臣、地方長官及収用審査会ノ職務ハ樺太庁長官、郡市長ノ職務ハ樺太庁支庁長之ヲ行ヒ市町村長ノ職務ハ樺太庁支庁出張所ノ管轄区域ニ在リテハ樺太庁支庁出張所長、其ノ他ノ区域ニ在リテハ樺太庁支庁長之ヲ行フ
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
左ノ勅令ハ之ヲ廃止ス
明治四十年勅令第九十四号
明治四十年勅令第九十七号
明治四十年勅令第二百三十三号
明治四十年勅令第二百五十七号
明治四十年勅令第三百十八号
明治四十二年勅令第百五十二号
明治四十二年勅令第百七十八号
明治四十三年勅令第二十七号
明治四十三年勅令第二百五号
明治四十三年勅令第三百四十五号
明治四十四年勅令第百四十八号
大正元年勅令第十二号
大正四年勅令第八十八号
大正五年勅令第十六号
大正六年勅令第三十号
大正六年勅令第三十一号
大正七年勅令第二百六十号
大正八年勅令第二百三十四号