(責任保険の契約)
第十一条 責任保険の契約は、第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生した場合において、これによる保有者の損害及び運転者もその被害者に対して損害賠償の責任を負うべきときのこれによる運転者の損害を保険会社がてん補することを約し、保険契約者が保険会社に保険料を支払うことを約することによつて、その効力を生ずる。
第十二条 責任保険の契約は、自動車一両ごとに締結しなければならない。
(免責)
第十四条 保険会社は、保険契約書又は被保険者の悪意によつて生じた損害についてのみ、てん補の責を免かれる。
(保険金の請求)
第十五条 被保険者は、被害者に対する損害賠償額について自己が支払をした限度においてのみ、保険会社に対して保険金の支払を請求することができる。
(保険会社に対する損害賠償額の請求)
第十六条 第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払をなすべきことを請求することができる。
2 被保険者が被害者に損害の賠償をした場合において、保険会社が被保険者に対してその損害をてん補したときは、保険会社は、そのてん補した金額の限度において、被害者に対する前項の支払の義務を免かれる。
3 第一項の規定により保険会社が被害者に対して損害賠償額の支払をしたときは、保険契約者又は被保険者の悪意によつて損害が生じた場合を除き、保険会社が、責任保険の契約に基き被保険者に対して損害をてん補したものとみなす。
4 保険会社は、保険契約者又は被保険者の悪意によつて損害が生じた場合において、第一項の規定により被害者に対して損害賠償額の支払をしたときは、その支払つた金額について、政府に対して補償を求めることができる。
(被害者に対する仮渡金)
第十七条 保有者が、責任保険の契約に係る自動車の運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、政令で定める金額を前条第一項の規定による損害賠償額の支払のための仮渡金として支払うべきことを請求することができる。
2 保険会社は、前項の請求があつたときは、遅滞なく、請求に係る金額を支払わなければならない。
3 保険会社は、第一項の仮渡金の金額が支払うべき損害賠償額をこえた場合には、そのこえた金額の返還を請求することができる。
4 保険会社は、保有者の損害賠償の責任が発生しなかつた場合において、第一項の仮渡金を支払つたときは、その支払つた金額について、政府に対して補償を求めることができる。
(差押の禁止)
第十八条 第十六条第一項及び前条第一項の規定による請求権は、差し押えることができない。
(時効)
第十九条 第十六条第一項及び第十七条第一項の規定による請求権は、二年を経過したときは、時効によつて消滅する。
(告知すべき重要な事実等)
第二十条 商法(明治三十二年法律第四十八号)第六百四十四条に規定する重要な事実又は事項は、責任保険の契約にあつては、次のとおりとする。
一 道路運送車両法の規定による自動車登録番号又は車両番号(これらが存しない場合にあつては、車台番号)
(告知義務違反による契約解除の効力)
第二十一条 商法第六百四十四条の規定により、保険会社が責任保険の契約を解除したときは、その解除は、保険契約者が解除の通知を受けた日から起算して七日の後に、将来に向つてその効力を生ずる。
2 前項の解除の効力が生ずる日前に危険が発生した場合には、商法第六百四十五条第二項の規定にかかわらず、保険会社は、損害をてん補する責に任ずる。この場合において、保険会社が損害をてん補したときは、保険契約者に対し、そのてん補した金額の支払を請求することができる。
(危険の増加又は減少による契約の変更)
第二十二条 保険期間中に危険が増加し、又は減少したときは、責任保険の契約は、新たな危険に対応する責任保険の契約に変更されたものとみなす。
2 保険契約者又は被保険者は、保険期間中に危険が増加したことを知つたときは、遅滞なく、これを保険会社に通知しなければならない。
3 保険期間中に危険が増加した後に危険が発生し、保険会社が損害をてん補した場合において、保険契約者又は被保険者が前項の通知を怠つていたときは、保険会社は、保険契約者に対し、そのてん補した金額の支払を請求することができる。
4 保険会社は、第一項の場合において、危険が増加したときは、保険契約者に対し、政令で定めるところにより増加する額の保険料の支払を請求することができる。
5 保険契約者は、第一項の場合において、危険が減少したときは、保険会社に対し、政令で定めるところにより減少する額の保険料の返還を請求することができる。
(商法の適用)
第二十三条 責任保険の契約については、この法律に別段の定がある場合を除くほか、商法第三編第十章第一節第一款の規定による。