銀行等の債券発行等に関する法律
法令番号: 法律第四十号
公布年月日: 昭和25年3月31日
法令の形式: 法律
銀行等の債券発行等に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和二十五年三月三十一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第四十号
銀行等の債券発行等に関する法律
(目的)
第一條 この法律は、銀行等に対し、債券の発行とあわせて米国対日援助見返資金の引受による優先株式の発行とをさせることにより、経済復興のため最も緊要とされる長期資金の円滑な供給を図ることを目的とする。
(定義)
第二條 この法律において「銀行」とは、日本勧業銀行、北海道拓殖銀行及び日本興業銀行並びに銀行法(昭和二年法律第二十一号)に基き営業の免許を受けている銀行をいう。
2 この法律において「自己資本」とは、資本金及び準備金(準備金、積立金、基金その他名称の如何を問わず利益のうちから積み立てられたものであつて、且つ、株主勘定に属するものをいう。)をいう。
(債券の発行)
第三條 銀行は、自己資本の金額の二十倍に相当する金額から預金の総額とその発行している債券(通常「金融債」と称されるものをいう。)の総額との合計金額を控除した残額に相当する金額を限り、債券を発行することができる。
2 前項の預金の総額は、銀行が同項の規定により債券を発行する月の前月末日以前一年間の毎日平均残高による。
3 第一項の債券の総額は、銀行が同項の規定により債券を発行する月の前月末日の債券の発行現在高による。
4 日本勧業銀行法(明治二十九年法律第八十二号)第三十四條第一項、北海道拓殖銀行法(明治三十二年法律第七十六号)第十二條第一項、日本興業銀行法(明治三十三年法律第七十号)第十二條及び第十二條ノ二並びに臨時資金調整法の廃止に伴う措置に関する法律(昭和二十三年法律第二十一号)第一項の規定は、日本勧業銀行、北海道拓殖銀行及び日本興業銀行が発行する債券の発行限度については適用しない。
(債券の借換発行の場合の特例)
第四條 銀行は、その発行した債券の借換のため一時前條第一項の規定によらないで債券を発行することができる。
2 前項の規定により債券を発行したときは、発行後一月以内に抽せんをもつてその発行券面額に相当する旧債券を償還しなければならない。
3 前條第一項の預金の総額とその発行している債券の総額との合計金額が自己資本の金額の二十倍に相当する金額をこえている場合においては、銀行が借換のため発行する債券の償還期限は、借り換えられる債券の償還期限をこえることができない。
(債券発行の届出)
第五條 銀行は、第三條第一項又は前條第一項の規定により債券を発行しようとするときは、その都度、その金額及び條件をあらかじめ主務大臣に届け出なければならない。
2 商法(明治三十二年法律第四十八号)第二百九十六條(社債発行についての特別決議)及び第二百九十八條(既存の社債に未拂込のある場合の社債発行の制限)の規定は、銀行が第三條第一項又は前條第一項の規定により債券を発行する場合については適用しない。
(預金者と債券の権利者との平等の取扱)
第六條 銀行は、その発行する債券に担保を附することができない。
2 銀行の清算又は破産の場合において、債務の弁済については、預金者と債券の権利者とは、平等に取り扱わなければならない。
(債券の発行方法、登記等)
第七條 銀行が債券を発行する場合において、応募総額が社債申込証に記載した債券の総額に達しないときでも債券を成立させる旨を社債申込証に記載したときは、その応募総額をもつて債券の総額とする。
2 銀行の発行する債券は、無記名とする。但し、応募者又は所有者の請求により記名式とすることができる。
3 銀行は、債券を発行する場合においては、売出の方法によることができる。この場合においては、売出期間を定めなければならない。
4 前項の場合においては、社債申込証を作ることを要しない。
5 第三項の規定により発行する債券には、左の事項を記載しなければならない。
一 銀行の商号
二 各債券の券面金額
三 債券の利率
四 債券償還の方法及び期限
五 債券の番号
6 商法第三百五條第一項(社債の登記)の期間は、債券の売出期間満了の日から起算する。
7 銀行は、売出の方法により債券を発行しようとするときは、左の事項を公告しなければならない。
一 売出期間
二 債券の総額
三 数回に分けて債券の拂込をさせるときは、その拂込の金額及び時期
四 債券発行の価額又はその最低価額
五 第五項第一号から第四号までに掲げる事項
8 銀行は、債券を発行する場合においては、割引の方法によることができる。
9 銀行は、その発行した債券を償還する場合においては、その償還金額に割増金を附けることができる。この場合においては、その方法及び金額について、あらかじめ大蔵大臣の認可を受けなければならない。
10 銀行が発行する債券の登記については、その総額(総額を数回に分けて発行する場合においては、各回の発行金額とする。以下同じ。)を登記すれば足りる。
11 銀行が発行する債券については、変更の登記をすることを要しない。但し、その総額の償還があつたときはその登記をし、且つ、毎年三月末におけるその償還を終らない金額の合計金額を本店の所在地においては四週間以内、支店の所在地においては五週間以内に登記しなければならない。
12 第十項の登記の申請書には、左の各号に掲げる書類を添附すれば足りる。
一 債券の発行につき取締役の決議のあつたことを証する書面
二 債券の引受を証する書面又は売出期間内における売上総額を証する書面
三 社債申込証
四 各債券につき拂込のあつたことを証する書面
(債券の消滅時効)
第八條 銀行が発行する債券の消滅時効は、元本については十五年、利子については五年で完成する。
(通貨及証券模造取締法の準用)
第九條 通貨及証券模造取締法(明治二十八年法律第二十八号)は、銀行が発行する債券の模造について準用する。
(銀行の利益の積立及び配当)
第十條 銀行は、毎営業年度末において、預金の総額とその発行している債券の総額との合計金額が自己資本の金額の二十倍に相当する金額をこえているときは、毎営業年度における利益から当該営業年度分として納付すべき法人税に相当する額を控除した残額のうち、資本金の額に当該営業年度の月数を乘じたものを十二分した額の百分の十に相当する金額と利益の百分の二十五に相当する金額とのいずれか低い方の金額に達するまでの金額を、準備金として積み立てなければならない。
2 前項の場合においてなお利益があるときは、銀行は、株式に対し配当をすることができる。
3 第三條第二項及び第三項の規定は、第一項の預金の総額及び債券の総額の計算について準用する。この場合において、「銀行が同項の規定により債券を発行する月」とあるのは「毎営業年度末」と読み替えるものとする。
(優先株式の発行)
第十一條 銀行は、この法律による債券の発行に資するため、国が米国対日援助見返資金(以下「援助資金」という。)をもつて引き受ける場合に限り、この法律の定めるところにより、優先株式を発行することができる。
2 前項の優先株式は、利益の配当及び残余財産の分配について優先的内容を有し、且つ、議決権のない株式であつて銀行が利益又は資本の増加によつて得た資金をもつて消却することができるものでなければならない。
3 商法第二百四十二條第二項(無議決権株式の株金総額の制限)の規定は、第一項の優先株式(以下「優先株式」という。)の発行については適用しない。
4 優先株式を発行する銀行は、他の法令の規定にかかわらず、この法律により優先株式を発行する旨及び優先株式の数を定款に記載しなければならない。
5 銀行は、第一項の規定により優先株式を発行しようとするときは、優先株式の消却及び優先株式に対する配当に関する事項を記載した優先株式消却計画書を主務大臣に提出しなければならない。
6 銀行は、前項の優先株式消却計画書に記載した金額の優先株式の消却をしなければならない。この場合において、その金額は、毎営業年度につき、利益の百分の十に相当する金額を下ることができないものとする。
7 銀行が優先株式消却計画書に記載した事項を変更しようとするときは、主務大臣の認可を受けなければならない。
(優先株式の引受)
第十二條 国は、援助資金をもつて優先株式を引き受けることができる。
2 前項の場合を除いては、何人も優先株式を引き受け、又は讓り受けることができない。
3 法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律(昭和二十一年法律第二十四号)第一條(政府の所有する株式又は出資の取扱)の規定は、国の所有する優先株式については適用しない。
(優先株式の消却及び優先株式に対する配当)
第十三條 優先株式を発行している銀行は、毎営業年度における利益のうちから、左の各号に定めるところにより優先株式の消却及び優先株式に対する配当をしなければならない。
一 利益から当該営業年度分として納付すべき法人税に相当する額を控除した残額のうち、優先株式消却計画書に定める金額の優先株式の消却への充当
二 前号の金額を控除してなお利益があるときは、優先株式に対して優先株式消却計画書に定める割合(以下「優先配当割合」という。)に達するまでの金額の配当への充当
2 優先株式を発行している銀行は、前項各号の金額を控除してなお利益があるときは、これを優先株式以外の株式(以下「普通株式」という。)に対する配当及び優先株式の消却に充てることができる。
3 優先株式の消却は、額面金額により行う。
4 銀行は、利益をもつて優先株式を消却した場合においては、消却した優先株式の額面金額に相当する金額を準備金として積み立て、且つ、同額の資本を減少しなければならない。
5 銀行は、優先株式を資本の増加によつて得た資金をもつて消却し、資本を減少することができる。この場合においては、あらかじめ主務大臣の認可を受けなければならない。
6 商法第三百七十六條から第三百八十條まで(資本減少)の規定は、前二項の場合については適用しない。
7 第一項第二号の場合において、優先株式に対する配当金額が優先配当割合によつて計算した金額に達しなかつたときは、当該銀行は、その不足額に相当する金額を、政令で定めるところにより、優先株式の総数の消却を終つた営業年度以後の各営業年度における利益のうちから、優先株式の株主であつた者に対して支拂わなければならない。
8 銀行が前項の不足額の全部を支拂う前に解散した場合において残余財産があるときは、まだ支拂われない不足額は、残余財産の分配に先き立つて支拂わなければならない。
9 優先株式の株主に対する残余財産の分配については、普通株式に優先してその額面金額を支拂うものとする。
第十四條 優先株式を発行している銀行は、毎営業年度末において預金の総額とその発行している債券の総額との合計金額が自己資本の金額の二十倍に相当する金額をこえているときは、前條第一項及び第二項の規定にかかわらず、毎営業年度における利益のうちから、左の各号に定めるところにより、優先株式の消却及び優先株式に対する配当をしなければならない。
一 利益から当該営業年度分として納付すべき法人税に相当する額を控除した残額のうち、優先株式消却計画書に定める金額に達するまでの金額の優先株式の消却への充当。この場合において、銀行は、資本金の額に当該営業年度の月数を乘じたものを十二分した額の百分の十に相当する金額と利益の百分の二十五に相当する金額とのいずれか低い方の金額を下らない金額を準備金として積み立てなければならないものとし、当該優先株式の消却への充当金額に相当する金額で準備金として積み立てられる金額は、この積立金額に含まれるものとする。
二 前号の消却への充当金額と積立金額とのいずれか多い方の金額を控除してなお利益があるときは、優先株式に対して優先配当割合に達するまでの金額の配当への充当。
2 前條第二項の規定は、前項各号の金額を控除してなお利益がある場合について準用する。
3 第三條第二項及び第三項の規定は、第一項の預金の総額及び債券の総額の計算について準用する。この場合において、「銀行が同項の規定により債券を発行する月」とあるのは「毎営業年度末」と読み替えるものとする。
4 前條第七項及び第八項の規定は、第一項第二号の場合において優先株式に対する配当金額が優先配当割合によつて計算した金額に達しなかつた場合について準用する。
(他の法律による準備金の積立の免除等)
第十五條 銀行が、第十條第一項、第十三條第四項又は前條第一項第一号後段の規定による準備金を積み立てたときは、その営業年度においては、他の法律により利益処分として積み立てるべき準備金の積立は、することを要しない。但し、その額が他の法律により利益処分として積み立てるべき準備金の額に達しない場合におけるその不足額については、この限りでない。
2 第十條第一項、第十三條第四項又は前條第一項第一号後段の規定により積み立てられた準備金は、他の準備金をもつて資本の欠損のてん補に充ててもなお不足する場合に、その不足額に相当する額を資本の欠損のてん補に充てる場合の外、使用することができない。
3 第十條の規定は、優先株式を発行している銀行には適用しない。
(農林中央金庫及び商工組合中央金庫についての準用)
第十六條 農林中央金庫及び商工組合中央金庫は、自己資本(この場合において、第二條第二項中「株主勘定」とあるのは「出資者勘定」と読み替えるものとする。)の金額の二十倍に相当する金額から預金の総額とその発行している債券の総額との合計金額を控除した残額に相当する金額を限り、債券を発行することができる。
2 前項の場合において、農林中央金庫及び商工組合中央金庫が発行する債券の発行限度については、農林中央金庫法(大正十二年法律第四十二号)第十七條第一項、商工組合中央金庫法(昭和十一年法律第十四号)第三十一條及び臨時資金調整法の廃止に伴う措置に関する法律第三項の規定は、適用しない。
3 第三條第二項及び第三項、第四條、第五條第一項、第六條、第七條(第六項、第十項及び第十二項を除く。)、第八條及び第九條の規定は、農林中央金庫及び商工組合中央金庫の発行する債券について、第十條の規定は、農林中央金庫及び商工組合中央金庫について、第七條第十項及び第十二項の規定は、商工組合中央金庫の発行する債券についてそれぞれ準用する。この場合において、第十條中「利益」とあるのは「剩余金」と、「株式」とあるのは「出資」と読み替えるものとする。
第十七條 農林中央金庫及び商工組合中央金庫は、この法律による債券の発行に資するため、国が援助資金をもつて引き受ける場合に限り、優先出資をさせることができる。
2 第十一條第二項、第四項から第七項まで、第十二條、第十三條第一項から第五項まで及び第七項から第九項まで、第十四條並びに第十五條の規定は、前項の場合について準用する。この場合において、「株式」とあるのは「出資」と、「優先株式」とあるのは「優先出資」と、「普通株式」とあるのは「普通出資」と、「利益」とあるのは「剩余金」と読み替えるものとする。
3 前二項の場合において、農林中央金庫及び商工組合中央金庫は、農林中央金庫法及び商工組合中央金庫法の規定にかかわらず、この法律に定めるところにより、出資の消却又は出資の減少をすることができる。この場合において、農林中央金庫については、農林中央金庫法第七條において準用する産業組合法(明治三十三年法律第三十四号)第四十條及び第四十一條(出資の減少の手続)の規定は、適用しない。
(他の法律との関係)
第十八條 この法律の規定が、日本勧業銀行、北海道拓殖銀行、日本興業銀行、農林中央金庫又は商工組合中央金庫が発行する債券についての日本勧業銀行法、北海道拓殖銀行法、日本興業銀行法、農林中央金庫法及び商工組合中央金庫法並びにこれらの法律に基く命令の規定と矛盾し、又はてい触する場合においては、この法律の規定が優先する。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 この法律施行の際現に債券を発行している銀行の債券の発行に関しては、昭和二十五年三月三十一日までは、なお従前の例による。
大蔵大臣 池田勇人
農林大臣 森幸太郎
通商産業大臣 池田勇人
内閣総理大臣 吉田茂
銀行等の債券発行等に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和二十五年三月三十一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第四十号
銀行等の債券発行等に関する法律
(目的)
第一条 この法律は、銀行等に対し、債券の発行とあわせて米国対日援助見返資金の引受による優先株式の発行とをさせることにより、経済復興のため最も緊要とされる長期資金の円滑な供給を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「銀行」とは、日本勧業銀行、北海道拓殖銀行及び日本興業銀行並びに銀行法(昭和二年法律第二十一号)に基き営業の免許を受けている銀行をいう。
2 この法律において「自己資本」とは、資本金及び準備金(準備金、積立金、基金その他名称の如何を問わず利益のうちから積み立てられたものであつて、且つ、株主勘定に属するものをいう。)をいう。
(債券の発行)
第三条 銀行は、自己資本の金額の二十倍に相当する金額から預金の総額とその発行している債券(通常「金融債」と称されるものをいう。)の総額との合計金額を控除した残額に相当する金額を限り、債券を発行することができる。
2 前項の預金の総額は、銀行が同項の規定により債券を発行する月の前月末日以前一年間の毎日平均残高による。
3 第一項の債券の総額は、銀行が同項の規定により債券を発行する月の前月末日の債券の発行現在高による。
4 日本勧業銀行法(明治二十九年法律第八十二号)第三十四条第一項、北海道拓殖銀行法(明治三十二年法律第七十六号)第十二条第一項、日本興業銀行法(明治三十三年法律第七十号)第十二条及び第十二条ノ二並びに臨時資金調整法の廃止に伴う措置に関する法律(昭和二十三年法律第二十一号)第一項の規定は、日本勧業銀行、北海道拓殖銀行及び日本興業銀行が発行する債券の発行限度については適用しない。
(債券の借換発行の場合の特例)
第四条 銀行は、その発行した債券の借換のため一時前条第一項の規定によらないで債券を発行することができる。
2 前項の規定により債券を発行したときは、発行後一月以内に抽せんをもつてその発行券面額に相当する旧債券を償還しなければならない。
3 前条第一項の預金の総額とその発行している債券の総額との合計金額が自己資本の金額の二十倍に相当する金額をこえている場合においては、銀行が借換のため発行する債券の償還期限は、借り換えられる債券の償還期限をこえることができない。
(債券発行の届出)
第五条 銀行は、第三条第一項又は前条第一項の規定により債券を発行しようとするときは、その都度、その金額及び条件をあらかじめ主務大臣に届け出なければならない。
2 商法(明治三十二年法律第四十八号)第二百九十六条(社債発行についての特別決議)及び第二百九十八条(既存の社債に未払込のある場合の社債発行の制限)の規定は、銀行が第三条第一項又は前条第一項の規定により債券を発行する場合については適用しない。
(預金者と債券の権利者との平等の取扱)
第六条 銀行は、その発行する債券に担保を附することができない。
2 銀行の清算又は破産の場合において、債務の弁済については、預金者と債券の権利者とは、平等に取り扱わなければならない。
(債券の発行方法、登記等)
第七条 銀行が債券を発行する場合において、応募総額が社債申込証に記載した債券の総額に達しないときでも債券を成立させる旨を社債申込証に記載したときは、その応募総額をもつて債券の総額とする。
2 銀行の発行する債券は、無記名とする。但し、応募者又は所有者の請求により記名式とすることができる。
3 銀行は、債券を発行する場合においては、売出の方法によることができる。この場合においては、売出期間を定めなければならない。
4 前項の場合においては、社債申込証を作ることを要しない。
5 第三項の規定により発行する債券には、左の事項を記載しなければならない。
一 銀行の商号
二 各債券の券面金額
三 債券の利率
四 債券償還の方法及び期限
五 債券の番号
6 商法第三百五条第一項(社債の登記)の期間は、債券の売出期間満了の日から起算する。
7 銀行は、売出の方法により債券を発行しようとするときは、左の事項を公告しなければならない。
一 売出期間
二 債券の総額
三 数回に分けて債券の払込をさせるときは、その払込の金額及び時期
四 債券発行の価額又はその最低価額
五 第五項第一号から第四号までに掲げる事項
8 銀行は、債券を発行する場合においては、割引の方法によることができる。
9 銀行は、その発行した債券を償還する場合においては、その償還金額に割増金を附けることができる。この場合においては、その方法及び金額について、あらかじめ大蔵大臣の認可を受けなければならない。
10 銀行が発行する債券の登記については、その総額(総額を数回に分けて発行する場合においては、各回の発行金額とする。以下同じ。)を登記すれば足りる。
11 銀行が発行する債券については、変更の登記をすることを要しない。但し、その総額の償還があつたときはその登記をし、且つ、毎年三月末におけるその償還を終らない金額の合計金額を本店の所在地においては四週間以内、支店の所在地においては五週間以内に登記しなければならない。
12 第十項の登記の申請書には、左の各号に掲げる書類を添附すれば足りる。
一 債券の発行につき取締役の決議のあつたことを証する書面
二 債券の引受を証する書面又は売出期間内における売上総額を証する書面
三 社債申込証
四 各債券につき払込のあつたことを証する書面
(債券の消滅時効)
第八条 銀行が発行する債券の消滅時効は、元本については十五年、利子については五年で完成する。
(通貨及証券模造取締法の準用)
第九条 通貨及証券模造取締法(明治二十八年法律第二十八号)は、銀行が発行する債券の模造について準用する。
(銀行の利益の積立及び配当)
第十条 銀行は、毎営業年度末において、預金の総額とその発行している債券の総額との合計金額が自己資本の金額の二十倍に相当する金額をこえているときは、毎営業年度における利益から当該営業年度分として納付すべき法人税に相当する額を控除した残額のうち、資本金の額に当該営業年度の月数を乗じたものを十二分した額の百分の十に相当する金額と利益の百分の二十五に相当する金額とのいずれか低い方の金額に達するまでの金額を、準備金として積み立てなければならない。
2 前項の場合においてなお利益があるときは、銀行は、株式に対し配当をすることができる。
3 第三条第二項及び第三項の規定は、第一項の預金の総額及び債券の総額の計算について準用する。この場合において、「銀行が同項の規定により債券を発行する月」とあるのは「毎営業年度末」と読み替えるものとする。
(優先株式の発行)
第十一条 銀行は、この法律による債券の発行に資するため、国が米国対日援助見返資金(以下「援助資金」という。)をもつて引き受ける場合に限り、この法律の定めるところにより、優先株式を発行することができる。
2 前項の優先株式は、利益の配当及び残余財産の分配について優先的内容を有し、且つ、議決権のない株式であつて銀行が利益又は資本の増加によつて得た資金をもつて消却することができるものでなければならない。
3 商法第二百四十二条第二項(無議決権株式の株金総額の制限)の規定は、第一項の優先株式(以下「優先株式」という。)の発行については適用しない。
4 優先株式を発行する銀行は、他の法令の規定にかかわらず、この法律により優先株式を発行する旨及び優先株式の数を定款に記載しなければならない。
5 銀行は、第一項の規定により優先株式を発行しようとするときは、優先株式の消却及び優先株式に対する配当に関する事項を記載した優先株式消却計画書を主務大臣に提出しなければならない。
6 銀行は、前項の優先株式消却計画書に記載した金額の優先株式の消却をしなければならない。この場合において、その金額は、毎営業年度につき、利益の百分の十に相当する金額を下ることができないものとする。
7 銀行が優先株式消却計画書に記載した事項を変更しようとするときは、主務大臣の認可を受けなければならない。
(優先株式の引受)
第十二条 国は、援助資金をもつて優先株式を引き受けることができる。
2 前項の場合を除いては、何人も優先株式を引き受け、又は譲り受けることができない。
3 法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律(昭和二十一年法律第二十四号)第一条(政府の所有する株式又は出資の取扱)の規定は、国の所有する優先株式については適用しない。
(優先株式の消却及び優先株式に対する配当)
第十三条 優先株式を発行している銀行は、毎営業年度における利益のうちから、左の各号に定めるところにより優先株式の消却及び優先株式に対する配当をしなければならない。
一 利益から当該営業年度分として納付すべき法人税に相当する額を控除した残額のうち、優先株式消却計画書に定める金額の優先株式の消却への充当
二 前号の金額を控除してなお利益があるときは、優先株式に対して優先株式消却計画書に定める割合(以下「優先配当割合」という。)に達するまでの金額の配当への充当
2 優先株式を発行している銀行は、前項各号の金額を控除してなお利益があるときは、これを優先株式以外の株式(以下「普通株式」という。)に対する配当及び優先株式の消却に充てることができる。
3 優先株式の消却は、額面金額により行う。
4 銀行は、利益をもつて優先株式を消却した場合においては、消却した優先株式の額面金額に相当する金額を準備金として積み立て、且つ、同額の資本を減少しなければならない。
5 銀行は、優先株式を資本の増加によつて得た資金をもつて消却し、資本を減少することができる。この場合においては、あらかじめ主務大臣の認可を受けなければならない。
6 商法第三百七十六条から第三百八十条まで(資本減少)の規定は、前二項の場合については適用しない。
7 第一項第二号の場合において、優先株式に対する配当金額が優先配当割合によつて計算した金額に達しなかつたときは、当該銀行は、その不足額に相当する金額を、政令で定めるところにより、優先株式の総数の消却を終つた営業年度以後の各営業年度における利益のうちから、優先株式の株主であつた者に対して支払わなければならない。
8 銀行が前項の不足額の全部を支払う前に解散した場合において残余財産があるときは、まだ支払われない不足額は、残余財産の分配に先き立つて支払わなければならない。
9 優先株式の株主に対する残余財産の分配については、普通株式に優先してその額面金額を支払うものとする。
第十四条 優先株式を発行している銀行は、毎営業年度末において預金の総額とその発行している債券の総額との合計金額が自己資本の金額の二十倍に相当する金額をこえているときは、前条第一項及び第二項の規定にかかわらず、毎営業年度における利益のうちから、左の各号に定めるところにより、優先株式の消却及び優先株式に対する配当をしなければならない。
一 利益から当該営業年度分として納付すべき法人税に相当する額を控除した残額のうち、優先株式消却計画書に定める金額に達するまでの金額の優先株式の消却への充当。この場合において、銀行は、資本金の額に当該営業年度の月数を乗じたものを十二分した額の百分の十に相当する金額と利益の百分の二十五に相当する金額とのいずれか低い方の金額を下らない金額を準備金として積み立てなければならないものとし、当該優先株式の消却への充当金額に相当する金額で準備金として積み立てられる金額は、この積立金額に含まれるものとする。
二 前号の消却への充当金額と積立金額とのいずれか多い方の金額を控除してなお利益があるときは、優先株式に対して優先配当割合に達するまでの金額の配当への充当。
2 前条第二項の規定は、前項各号の金額を控除してなお利益がある場合について準用する。
3 第三条第二項及び第三項の規定は、第一項の預金の総額及び債券の総額の計算について準用する。この場合において、「銀行が同項の規定により債券を発行する月」とあるのは「毎営業年度末」と読み替えるものとする。
4 前条第七項及び第八項の規定は、第一項第二号の場合において優先株式に対する配当金額が優先配当割合によつて計算した金額に達しなかつた場合について準用する。
(他の法律による準備金の積立の免除等)
第十五条 銀行が、第十条第一項、第十三条第四項又は前条第一項第一号後段の規定による準備金を積み立てたときは、その営業年度においては、他の法律により利益処分として積み立てるべき準備金の積立は、することを要しない。但し、その額が他の法律により利益処分として積み立てるべき準備金の額に達しない場合におけるその不足額については、この限りでない。
2 第十条第一項、第十三条第四項又は前条第一項第一号後段の規定により積み立てられた準備金は、他の準備金をもつて資本の欠損のてん補に充ててもなお不足する場合に、その不足額に相当する額を資本の欠損のてん補に充てる場合の外、使用することができない。
3 第十条の規定は、優先株式を発行している銀行には適用しない。
(農林中央金庫及び商工組合中央金庫についての準用)
第十六条 農林中央金庫及び商工組合中央金庫は、自己資本(この場合において、第二条第二項中「株主勘定」とあるのは「出資者勘定」と読み替えるものとする。)の金額の二十倍に相当する金額から預金の総額とその発行している債券の総額との合計金額を控除した残額に相当する金額を限り、債券を発行することができる。
2 前項の場合において、農林中央金庫及び商工組合中央金庫が発行する債券の発行限度については、農林中央金庫法(大正十二年法律第四十二号)第十七条第一項、商工組合中央金庫法(昭和十一年法律第十四号)第三十一条及び臨時資金調整法の廃止に伴う措置に関する法律第三項の規定は、適用しない。
3 第三条第二項及び第三項、第四条、第五条第一項、第六条、第七条(第六項、第十項及び第十二項を除く。)、第八条及び第九条の規定は、農林中央金庫及び商工組合中央金庫の発行する債券について、第十条の規定は、農林中央金庫及び商工組合中央金庫について、第七条第十項及び第十二項の規定は、商工組合中央金庫の発行する債券についてそれぞれ準用する。この場合において、第十条中「利益」とあるのは「剰余金」と、「株式」とあるのは「出資」と読み替えるものとする。
第十七条 農林中央金庫及び商工組合中央金庫は、この法律による債券の発行に資するため、国が援助資金をもつて引き受ける場合に限り、優先出資をさせることができる。
2 第十一条第二項、第四項から第七項まで、第十二条、第十三条第一項から第五項まで及び第七項から第九項まで、第十四条並びに第十五条の規定は、前項の場合について準用する。この場合において、「株式」とあるのは「出資」と、「優先株式」とあるのは「優先出資」と、「普通株式」とあるのは「普通出資」と、「利益」とあるのは「剰余金」と読み替えるものとする。
3 前二項の場合において、農林中央金庫及び商工組合中央金庫は、農林中央金庫法及び商工組合中央金庫法の規定にかかわらず、この法律に定めるところにより、出資の消却又は出資の減少をすることができる。この場合において、農林中央金庫については、農林中央金庫法第七条において準用する産業組合法(明治三十三年法律第三十四号)第四十条及び第四十一条(出資の減少の手続)の規定は、適用しない。
(他の法律との関係)
第十八条 この法律の規定が、日本勧業銀行、北海道拓殖銀行、日本興業銀行、農林中央金庫又は商工組合中央金庫が発行する債券についての日本勧業銀行法、北海道拓殖銀行法、日本興業銀行法、農林中央金庫法及び商工組合中央金庫法並びにこれらの法律に基く命令の規定と矛盾し、又はてい触する場合においては、この法律の規定が優先する。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 この法律施行の際現に債券を発行している銀行の債券の発行に関しては、昭和二十五年三月三十一日までは、なお従前の例による。
大蔵大臣 池田勇人
農林大臣 森幸太郎
通商産業大臣 池田勇人
内閣総理大臣 吉田茂