公使館領事館費用条例
法令番号: 勅令第百七十一號
公布年月日: 明治26年10月31日
法令の形式: 勅令
朕公使館領事館費用條例ノ改正ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十六年十月三十日
外務大臣 陸奧宗光
勅令第百七十一號
公使館領事館費用條例
第一章 俸給
第一條 外交官、領事官、公使館書記生及領事館書記生ノ俸給ハ本俸、在勤俸及加俸ノ三種トス
第二條 外交官及領事官ノ本俸ヲ定ムルコト左ノ如シ
特命全權公使 年俸
一級四千圓
二級三千五百圓
辨理公使 年俸 三千圓
代理公使
公使館一等書記官
總領事
 年俸
一級二千五百圓
二級二千二百圓
三級二千圓
公使館二等書記官
一等領事
 年俸
一級千八百圓
二級千六百圓
三級千四百圓
四級千二百圓
公使館三等書記官
二等領事
 年俸
一級千圓
二級九百圓
三級八百圓
外交官補
領事官補
 年俸 六百圓
第三條 待命外交官及待命領事官ニハ其ノ本俸三分ノ一以內ヲ給スルコトヲ得
第四條 公使館書記生及領事館書記生ノ本俸ハ判任官俸給令ニ依ル
第五條 在勤俸ハ外國在勤ノ場合ニ於テ本俸ノ外別表第一號及第二號ニ依リ任所到著ノ翌日ヨリ給ス
外國ニ於テ任官シ其ノ地ニ在勤ヲ命セラレタル者ニハ就職ノ日ヨリ其ノ在勤俸ヲ給ス
在勤俸ハ年額ヲ十二分シ每月之ヲ給ス
任所ニ於テ在勤俸ノ給額ニ異動ヲ生シタル場合ニ於テハ其ノ命令到達ノ日ヨリ起算シ之ヲ給ス
第六條 外交官及領事官ニシテ其ノ妻ヲ任所ニ同伴シ若クハ呼寄セタル者ニハ其ノ妻任所ニ到著ノ翌日ヨリ現ニ受クル在勤俸十分ノ三ヲ增給ス
第七條 外交官及公使館書記生兼任國駐在ノ場合ニ於テハ到著ノ翌日ヨリ出發ノ前日マテ其ノ日數ニ應シ一日分左ノ割合ニ依リ在勤俸ヲ增給ス
特命全權公使 十五圓
辨理公使 十三圓
代理公使 十圓
公使館一等書記官
公使館二等書記官
八圓
公使館三等書記官
外交官補
七圓
公使館書記生 五圓
第八條 歸朝ヲ命セラレタル者又ハ賜暇歸朝ヲ許サレタル者ニハ任所出發ノ前日マテ在勤俸ヲ給ス
轉勤ヲ命セラレ又ハ轉官シタル者ニハ其ノ事務引繼ノ前日マテ從前ノ在勤俸ヲ給シ其ノ當日ヨリ新任所到著ノ日マテハ第二十四條及第二十五條ノ規程ニ依リ日當ヲ給ス但轉官スルモ同一ノ地ニ在勤ヲ命セラレタル者ハ此ノ限ニアラス
第九條 轉勤又ハ歸朝ヲ命セラレタル者又ハ轉官シタル者ニ在勤俸又ハ其ノ滯留中ニ係ル日當ヲ給スルハ命令到達ノ日ヨリ三週間ヲ以テ限トス但特別ノ命令アルトキ又ハ病ニ罹リ外務大臣ノ許可ヲ得テ滯留スル者ハ此ノ限ニアラス
第十條 外交官及領事官ニシテ第六條及第十二條第四ノ支給ヲ受クヘキ者ハ特命全權公使、辨理公使、代理公使、公使館一等書記官、總領事、公使館二等書記官及一等領事ニ限ル
第十一條 任所ニ於テ非職ヲ命セラレタル者又ハ退官シタル者ニハ其ノ命令到達ノ日マテ本俸及在勤俸ヲ給ス
任所ニ於テ死亡シタルトキハ其ノ當日マテ在勤俸ヲ給ス
第十二條 加俸ハ本俸及在勤俸ノ外左ノ規程ニ依リ之ヲ給ス
一 新ニ本邦ヨリ赴任スルトキハ特命全權公使、辨理公使、代理公使ハ其ノ赴任地ノ在勤俸年額十分ノ三其ノ他ノ外交官、領事官、公使館書記生、領事館書記生ハ十分ノ二
二 轉勤又ハ轉官ノ場合ニ於テハ其ノ赴任地ノ在勤俸年額十分ノ一但轉官スルモ同一ノ地ニ在勤ヲ命セラレタル者ハ此ノ限ニアラス
三 歸朝ヲ命セラレタル者又ハ賜暇歸朝ヲ許サレタル者ハ其ノ在勤俸年額十分ノ一但歸朝ヲ命セラレタル者赴任スルトキ亦同シ
四 本條第一第二第三ノ場合ニ於テ其ノ妻ヲ同伴スルトキハ更ニ在勤俸年額十分ノ一但其ノ妻ヲ呼寄スルトキ及歸朝セシムルトキハ各一囘ヲ限リ本項ノ額ヲ給ス
第十三條 在勤又ハ歸朝ヲ命セラレタル者ニシテ出發前在勤ヲ免セラレ又ハ歸朝ノ命令ヲ取消サレタルトキハ其ノ加俸ノ半額以內ヲ給スルコトヲ得、賜暇歸朝ヲ許サレタル者ニシテ出發前其ノ許可ヲ取消サレタルトキ亦同シ
前項ノ場合ニ於テ死亡シタルトキハ其ノ全額以內ヲ給スルコトヲ得
第十四條 代理者ハ其ノ事務引繼ヲ受ケタル日ヨリ代理中別表第一號又ハ第二號ニ依リ代理ニ對スル在勤俸ヲ給ス但當該主任官到著ノ場合ニ於テハ其ノ到著ノ日ヲ以テ限トス
第二章 退官賜金及死亡賜金
第十五條 外交官、領事官、公使館書記生及領事館書記生ノ退官賜金及死亡賜金ハ其ノ本俸ニ依リ算出ス
第十六條 外交官、領事官、公使館書記生及領事館書記生外國在勤中又ハ任所往返中死亡シタルトキハ死亡賜金ノ外本官相當ノ在勤俸年額十分ノ三ヲ給ス
第三章 旅費
第十七條 旅費トハ船車料及日當ヲ合稱ス
第十八條 旅費ハ赴任、公用歸朝、賜暇歸朝其ノ他公務ヲ帶ヒ旅行スル場合ニ於テ之ヲ給ス
第十九條 旅費ハ定額アルモノハ其ノ定額ニ依リ其ノ他ノ場合ニハ總テ實費ヲ給ス但本邦ヲ經由スヘキ順路ナルトキハ本邦任所間ノ定額ニ依ルコトヲ得
第二十條 任所ニ於テ非職ヲ命セラレ又ハ諭旨ニ依リ退官シタル者其ノ命令到達ノ日ヨリ三週間以內ニ出發歸朝スルトキハ本官若クハ前官相當ノ旅費ヲ給ス但三週間ノ期限ハ交通不便ノ地ニ於テハ現ニ出發スルコトヲ得ル日ヨリ起算ス
第二十一條 外交官、領事官、公使館書記生、領事館書記生及其ノ妻ニハ別表第三號ニ規程アルモノハ其ノ規程ニ依リ其ノ他ノ場合ニハ一等船車料ヲ給ス
官船若クハ官ノ傭船ニテ旅行スル者ニシテ現ニ船賃ヲ要セサルトキハ船車料ヲ給セス
往返ノ路程十二哩ニ滿タサルトキハ船車料ヲ給セス
第二十二條 外交官、領事官、公使館書記生及領事館書記生ノ妻ニ對スル船車料ヲ給スルハ左ノ場合ニ限ル
一 赴任、公用歸朝及賜暇歸朝ノ際同伴スルトキ
二 同伴セサルモ本邦ヨリ任所ヘ往返スルトキ伹各一囘ヲ限トス
三 特命全權公使、辨理公使、代理公使兼任國ヘ旅行スル場合ニ於テ同伴スルトキ
第二十三條 特命全權公使、辨理公使、代理公使赴任、公用歸朝賜暇歸朝又ハ兼任國ヘ旅行スル場合ニ於テ現ニ從者ヲ隨伴スルトキハ從者一人ヲ限リ其ノ實費ヲ給ス
外交官及領事官ニ限リ第二十二條第二ノ場合ニ於テ現ニ從者ヲ隨伴セシムルトキ亦前項ニ同シ
從者ノ爲給スヘキ實費ハ特別ノ場合ヲ除クノ外三等船車料ニ限ル
第二十四條 本邦任所間往返中ノ日當ハ別表第四號ニ依リ給ス但其ノ他ノ場合ニ於テ又ハ別表第四號ニ規程ナキモノハ本條第三項ノ割合ニ依リ日當ヲ給ス
特別ノ命令又ハ已ムヲ得サル事故ノ爲中途ニ滯留シ別表第四號ノ豫定日數ヲ超過シタルトキハ其ノ滯留日數ニ對シ本條第三項ノ割合ニ依リ日當ヲ給ス
別表第四號ニ規程アルモノヲ除クノ外陸行中及出張地滯留中ノ日當ハ其ノ日數ニ應シ左ノ割合ニ依リ給ス但往返一日ヲ出テサルトキハ之ヲ給セス
甲額 乙額
特命全權公使
辨理公使
 十圓 八圓
代理公使 八圓 六圓
公使館一等書記官
總領事
公使館二等書記官
一等領事
 七圓 五圓
公使館三等書記官
二等領事
外交官補
領事官補
 六圓 四圓
公使館書記生
領事館書記生
 五圓 三圓
前項ノ日當ハ歐米、濠洲、布哇ニ於テハ甲額ヲ其ノ他ノ諸國ニ於テハ乙額ヲ給ス但甲額ヲ給スヘキ地ヨリ乙額ヲ給スヘキ地ニ又ハ乙額ヲ給スヘキ地ヨリ甲額ヲ給スヘキ地ニ旅行シ又ハ其ノ旅行中滯留スルトキハ甲額ヲ給ス
第二十五條 別表第四號ニ規程アルモノヲ除クノ外航行中別ニ食料ヲ要セサル場合ニ於テハ前條日當ノ半額ヲ給ス
船賃ヲ給セサル場合ニ於テハ十分ノ七ヲ給ス
第二十六條 兼任國駐在中ハ第七條ニ依リ在勤俸ヲ增給シ日當ヲ給セス
第二十七條 歸朝中轉勤ヲ命セラレ又ハ轉官シタル場合ニ於テハ本邦新任所間ノ旅費ヲ給ス
外國ニ於テ任官シタル者ニハ其ノ現住地ヨリ任所マテノ旅費ヲ給ス
第二十八條 本邦任所間往返中死亡シタル者ニハ其ノ旅費ノ全額ヲ給ス其ノ妻又ハ從者死亡ノトキ亦同シ
實費ヲ給スヘキ旅中ニ於テ死亡シタル者ニハ日當ハ死亡當日マテ船車料ハ其ノ既ニ拂ヒタル全額ヲ給ス
本條第一項第二項ノ場合及任所ニ於テ死亡シタル場合ニ於テ妻又ハ從者ヲ隨伴シタルトキハ其ノ妻又ハ從者ノ歸朝旅費ヲ給スルコトヲ得
第四章 經費
第二十九條 公使館及領事館經費ハ實費精算ヲ要スルモノト精算ヲ爲サス渡切ルモノトノ二種ニ區分ス其ノ區分ハ外務大臣大藏大臣ト協議シ之ヲ定ム
渡切經費ハ各科目定額ヲ四分シ每三箇月之ヲ各館長ニ交付ス
渡切經費ハ本邦ヲ發送シタル後館長ノ更迭歸朝等ニ依リ受領者ノ氏名ニ異動アルトキハ現ニ館長若クハ其ノ代理者ノ職ニ在ル者之ヲ受領スヘシ
第三十條 渡切經費及在勤滯留旅行中ニ係ル俸給及日當ハ歐米(墨西哥ヲ除ク)濠洲、布哇ニ於テハ金貨其ノ他ノ諸國ニ於テハ銀貨ヲ以テ給ス
金貨ヲ以テ給スル地ヨリ銀貨ヲ以テ給スル地ニ旅行スルトキハ其ノ旅中ニ係ル本俸及日當ハ銀貨ヲ以テ給ス銀貨ヲ以テ給スル地ヨリ金貨ヲ以テ給スル地ニ旅行スルトキ亦同シ
金貨ヲ以テ給スル地ヨリ銀貨ヲ以テ給スル地ニ出張スルトキハ其ノ旅中及滯留中ニ係ル本俸及在勤俸ハ前項ノ規程ニ拘ラス金貨ヲ以テ給ス但第七條ニ規程シタル增額ハ此ノ限ニアラス
附 則
第三十一條 本令ニ於テ轉官トアルハ外交官、領事官、公使館書記生、領事館書記生ノ間ニ其ノ官ヲ轉スルヲ謂ヒ轉勤トアルハ其ノ任所ヲ轉スルヲ謂フ
第三十二條 臨時代理公使旅行又ハ兼任國駐在ノ場合ニハ總テ代理公使ニ關スル規程ヲ適用ス
第三十三條 貿易事務官ニハ其ノ官等ニ應シ本令ニ揭クル一等領事又ハ二等領事ニ關スル規程ヲ適用ス
第三十四條 名譽領事ニハ事務所費トシテ年額八百圓以內ヲ給スルコトヲ得
第三十五條 名譽領事館ニ領事館書記生ヲ在勤セシムルトキハ其ノ在勤俸ハ最近地領事館ノ例ニ依ル
第三十六條 本令ノ施行ニ關スル細則ハ外務大臣之ヲ定ム
第三十七條 本令ハ明治二十六年十一月十日ヨリ施行ス
明治二十五年勅令第四號ハ本令施行ノ日ヨリ廢止ス
別表第一號
【表】
別表第二號
【表】
別表第三號
【表】
別表第四號
【表】
朕公使館領事館費用条例ノ改正ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十六年十月三十日
外務大臣 陸奥宗光
勅令第百七十一号
公使館領事館費用条例
第一章 俸給
第一条 外交官、領事官、公使館書記生及領事館書記生ノ俸給ハ本俸、在勤俸及加俸ノ三種トス
第二条 外交官及領事官ノ本俸ヲ定ムルコト左ノ如シ
特命全権公使 年俸
一級四千円
二級三千五百円
弁理公使 年俸 三千円
代理公使
公使館一等書記官
総領事
 年俸
一級二千五百円
二級二千二百円
三級二千円
公使館二等書記官
一等領事
 年俸
一級千八百円
二級千六百円
三級千四百円
四級千二百円
公使館三等書記官
二等領事
 年俸
一級千円
二級九百円
三級八百円
外交官補
領事官補
 年俸 六百円
第三条 待命外交官及待命領事官ニハ其ノ本俸三分ノ一以内ヲ給スルコトヲ得
第四条 公使館書記生及領事館書記生ノ本俸ハ判任官俸給令ニ依ル
第五条 在勤俸ハ外国在勤ノ場合ニ於テ本俸ノ外別表第一号及第二号ニ依リ任所到著ノ翌日ヨリ給ス
外国ニ於テ任官シ其ノ地ニ在勤ヲ命セラレタル者ニハ就職ノ日ヨリ其ノ在勤俸ヲ給ス
在勤俸ハ年額ヲ十二分シ毎月之ヲ給ス
任所ニ於テ在勤俸ノ給額ニ異動ヲ生シタル場合ニ於テハ其ノ命令到達ノ日ヨリ起算シ之ヲ給ス
第六条 外交官及領事官ニシテ其ノ妻ヲ任所ニ同伴シ若クハ呼寄セタル者ニハ其ノ妻任所ニ到著ノ翌日ヨリ現ニ受クル在勤俸十分ノ三ヲ増給ス
第七条 外交官及公使館書記生兼任国駐在ノ場合ニ於テハ到著ノ翌日ヨリ出発ノ前日マテ其ノ日数ニ応シ一日分左ノ割合ニ依リ在勤俸ヲ増給ス
特命全権公使 十五円
弁理公使 十三円
代理公使 十円
公使館一等書記官
公使館二等書記官
八円
公使館三等書記官
外交官補
七円
公使館書記生 五円
第八条 帰朝ヲ命セラレタル者又ハ賜暇帰朝ヲ許サレタル者ニハ任所出発ノ前日マテ在勤俸ヲ給ス
転勤ヲ命セラレ又ハ転官シタル者ニハ其ノ事務引継ノ前日マテ従前ノ在勤俸ヲ給シ其ノ当日ヨリ新任所到著ノ日マテハ第二十四条及第二十五条ノ規程ニ依リ日当ヲ給ス但転官スルモ同一ノ地ニ在勤ヲ命セラレタル者ハ此ノ限ニアラス
第九条 転勤又ハ帰朝ヲ命セラレタル者又ハ転官シタル者ニ在勤俸又ハ其ノ滞留中ニ係ル日当ヲ給スルハ命令到達ノ日ヨリ三週間ヲ以テ限トス但特別ノ命令アルトキ又ハ病ニ罹リ外務大臣ノ許可ヲ得テ滞留スル者ハ此ノ限ニアラス
第十条 外交官及領事官ニシテ第六条及第十二条第四ノ支給ヲ受クヘキ者ハ特命全権公使、弁理公使、代理公使、公使館一等書記官、総領事、公使館二等書記官及一等領事ニ限ル
第十一条 任所ニ於テ非職ヲ命セラレタル者又ハ退官シタル者ニハ其ノ命令到達ノ日マテ本俸及在勤俸ヲ給ス
任所ニ於テ死亡シタルトキハ其ノ当日マテ在勤俸ヲ給ス
第十二条 加俸ハ本俸及在勤俸ノ外左ノ規程ニ依リ之ヲ給ス
一 新ニ本邦ヨリ赴任スルトキハ特命全権公使、弁理公使、代理公使ハ其ノ赴任地ノ在勤俸年額十分ノ三其ノ他ノ外交官、領事官、公使館書記生、領事館書記生ハ十分ノ二
二 転勤又ハ転官ノ場合ニ於テハ其ノ赴任地ノ在勤俸年額十分ノ一但転官スルモ同一ノ地ニ在勤ヲ命セラレタル者ハ此ノ限ニアラス
三 帰朝ヲ命セラレタル者又ハ賜暇帰朝ヲ許サレタル者ハ其ノ在勤俸年額十分ノ一但帰朝ヲ命セラレタル者赴任スルトキ亦同シ
四 本条第一第二第三ノ場合ニ於テ其ノ妻ヲ同伴スルトキハ更ニ在勤俸年額十分ノ一但其ノ妻ヲ呼寄スルトキ及帰朝セシムルトキハ各一回ヲ限リ本項ノ額ヲ給ス
第十三条 在勤又ハ帰朝ヲ命セラレタル者ニシテ出発前在勤ヲ免セラレ又ハ帰朝ノ命令ヲ取消サレタルトキハ其ノ加俸ノ半額以内ヲ給スルコトヲ得、賜暇帰朝ヲ許サレタル者ニシテ出発前其ノ許可ヲ取消サレタルトキ亦同シ
前項ノ場合ニ於テ死亡シタルトキハ其ノ全額以内ヲ給スルコトヲ得
第十四条 代理者ハ其ノ事務引継ヲ受ケタル日ヨリ代理中別表第一号又ハ第二号ニ依リ代理ニ対スル在勤俸ヲ給ス但当該主任官到著ノ場合ニ於テハ其ノ到著ノ日ヲ以テ限トス
第二章 退官賜金及死亡賜金
第十五条 外交官、領事官、公使館書記生及領事館書記生ノ退官賜金及死亡賜金ハ其ノ本俸ニ依リ算出ス
第十六条 外交官、領事官、公使館書記生及領事館書記生外国在勤中又ハ任所往返中死亡シタルトキハ死亡賜金ノ外本官相当ノ在勤俸年額十分ノ三ヲ給ス
第三章 旅費
第十七条 旅費トハ船車料及日当ヲ合称ス
第十八条 旅費ハ赴任、公用帰朝、賜暇帰朝其ノ他公務ヲ帯ヒ旅行スル場合ニ於テ之ヲ給ス
第十九条 旅費ハ定額アルモノハ其ノ定額ニ依リ其ノ他ノ場合ニハ総テ実費ヲ給ス但本邦ヲ経由スヘキ順路ナルトキハ本邦任所間ノ定額ニ依ルコトヲ得
第二十条 任所ニ於テ非職ヲ命セラレ又ハ諭旨ニ依リ退官シタル者其ノ命令到達ノ日ヨリ三週間以内ニ出発帰朝スルトキハ本官若クハ前官相当ノ旅費ヲ給ス但三週間ノ期限ハ交通不便ノ地ニ於テハ現ニ出発スルコトヲ得ル日ヨリ起算ス
第二十一条 外交官、領事官、公使館書記生、領事館書記生及其ノ妻ニハ別表第三号ニ規程アルモノハ其ノ規程ニ依リ其ノ他ノ場合ニハ一等船車料ヲ給ス
官船若クハ官ノ傭船ニテ旅行スル者ニシテ現ニ船賃ヲ要セサルトキハ船車料ヲ給セス
往返ノ路程十二哩ニ満タサルトキハ船車料ヲ給セス
第二十二条 外交官、領事官、公使館書記生及領事館書記生ノ妻ニ対スル船車料ヲ給スルハ左ノ場合ニ限ル
一 赴任、公用帰朝及賜暇帰朝ノ際同伴スルトキ
二 同伴セサルモ本邦ヨリ任所ヘ往返スルトキ但各一回ヲ限トス
三 特命全権公使、弁理公使、代理公使兼任国ヘ旅行スル場合ニ於テ同伴スルトキ
第二十三条 特命全権公使、弁理公使、代理公使赴任、公用帰朝賜暇帰朝又ハ兼任国ヘ旅行スル場合ニ於テ現ニ従者ヲ随伴スルトキハ従者一人ヲ限リ其ノ実費ヲ給ス
外交官及領事官ニ限リ第二十二条第二ノ場合ニ於テ現ニ従者ヲ随伴セシムルトキ亦前項ニ同シ
従者ノ為給スヘキ実費ハ特別ノ場合ヲ除クノ外三等船車料ニ限ル
第二十四条 本邦任所間往返中ノ日当ハ別表第四号ニ依リ給ス但其ノ他ノ場合ニ於テ又ハ別表第四号ニ規程ナキモノハ本条第三項ノ割合ニ依リ日当ヲ給ス
特別ノ命令又ハ已ムヲ得サル事故ノ為中途ニ滞留シ別表第四号ノ予定日数ヲ超過シタルトキハ其ノ滞留日数ニ対シ本条第三項ノ割合ニ依リ日当ヲ給ス
別表第四号ニ規程アルモノヲ除クノ外陸行中及出張地滞留中ノ日当ハ其ノ日数ニ応シ左ノ割合ニ依リ給ス但往返一日ヲ出テサルトキハ之ヲ給セス
甲額 乙額
特命全権公使
弁理公使
 十円 八円
代理公使 八円 六円
公使館一等書記官
総領事
公使館二等書記官
一等領事
 七円 五円
公使館三等書記官
二等領事
外交官補
領事官補
 六円 四円
公使館書記生
領事館書記生
 五円 三円
前項ノ日当ハ欧米、濠洲、布哇ニ於テハ甲額ヲ其ノ他ノ諸国ニ於テハ乙額ヲ給ス但甲額ヲ給スヘキ地ヨリ乙額ヲ給スヘキ地ニ又ハ乙額ヲ給スヘキ地ヨリ甲額ヲ給スヘキ地ニ旅行シ又ハ其ノ旅行中滞留スルトキハ甲額ヲ給ス
第二十五条 別表第四号ニ規程アルモノヲ除クノ外航行中別ニ食料ヲ要セサル場合ニ於テハ前条日当ノ半額ヲ給ス
船賃ヲ給セサル場合ニ於テハ十分ノ七ヲ給ス
第二十六条 兼任国駐在中ハ第七条ニ依リ在勤俸ヲ増給シ日当ヲ給セス
第二十七条 帰朝中転勤ヲ命セラレ又ハ転官シタル場合ニ於テハ本邦新任所間ノ旅費ヲ給ス
外国ニ於テ任官シタル者ニハ其ノ現住地ヨリ任所マテノ旅費ヲ給ス
第二十八条 本邦任所間往返中死亡シタル者ニハ其ノ旅費ノ全額ヲ給ス其ノ妻又ハ従者死亡ノトキ亦同シ
実費ヲ給スヘキ旅中ニ於テ死亡シタル者ニハ日当ハ死亡当日マテ船車料ハ其ノ既ニ払ヒタル全額ヲ給ス
本条第一項第二項ノ場合及任所ニ於テ死亡シタル場合ニ於テ妻又ハ従者ヲ随伴シタルトキハ其ノ妻又ハ従者ノ帰朝旅費ヲ給スルコトヲ得
第四章 経費
第二十九条 公使館及領事館経費ハ実費精算ヲ要スルモノト精算ヲ為サス渡切ルモノトノ二種ニ区分ス其ノ区分ハ外務大臣大蔵大臣ト協議シ之ヲ定ム
渡切経費ハ各科目定額ヲ四分シ毎三箇月之ヲ各館長ニ交付ス
渡切経費ハ本邦ヲ発送シタル後館長ノ更迭帰朝等ニ依リ受領者ノ氏名ニ異動アルトキハ現ニ館長若クハ其ノ代理者ノ職ニ在ル者之ヲ受領スヘシ
第三十条 渡切経費及在勤滞留旅行中ニ係ル俸給及日当ハ欧米(墨西哥ヲ除ク)濠洲、布哇ニ於テハ金貨其ノ他ノ諸国ニ於テハ銀貨ヲ以テ給ス
金貨ヲ以テ給スル地ヨリ銀貨ヲ以テ給スル地ニ旅行スルトキハ其ノ旅中ニ係ル本俸及日当ハ銀貨ヲ以テ給ス銀貨ヲ以テ給スル地ヨリ金貨ヲ以テ給スル地ニ旅行スルトキ亦同シ
金貨ヲ以テ給スル地ヨリ銀貨ヲ以テ給スル地ニ出張スルトキハ其ノ旅中及滞留中ニ係ル本俸及在勤俸ハ前項ノ規程ニ拘ラス金貨ヲ以テ給ス但第七条ニ規程シタル増額ハ此ノ限ニアラス
附 則
第三十一条 本令ニ於テ転官トアルハ外交官、領事官、公使館書記生、領事館書記生ノ間ニ其ノ官ヲ転スルヲ謂ヒ転勤トアルハ其ノ任所ヲ転スルヲ謂フ
第三十二条 臨時代理公使旅行又ハ兼任国駐在ノ場合ニハ総テ代理公使ニ関スル規程ヲ適用ス
第三十三条 貿易事務官ニハ其ノ官等ニ応シ本令ニ掲クル一等領事又ハ二等領事ニ関スル規程ヲ適用ス
第三十四条 名誉領事ニハ事務所費トシテ年額八百円以内ヲ給スルコトヲ得
第三十五条 名誉領事館ニ領事館書記生ヲ在勤セシムルトキハ其ノ在勤俸ハ最近地領事館ノ例ニ依ル
第三十六条 本令ノ施行ニ関スル細則ハ外務大臣之ヲ定ム
第三十七条 本令ハ明治二十六年十一月十日ヨリ施行ス
明治二十五年勅令第四号ハ本令施行ノ日ヨリ廃止ス
別表第一号
【表】
別表第二号
【表】
別表第三号
【表】
別表第四号
【表】