(保険関係)
第四十九条 金融機関がその業務を営み又は事業を行なうときは、当該金融機関が預金等に係る債務を負うことにより、各預金者等ごとに一定の金額の範囲内において、当該預金等の払戻しにつき、機構と当該金融機関及び預金者等との間に保険関係が成立するものとする。
2 前項の保険関係においては、預金等の額を保険金額とし、次に掲げるものを保険事故とする。
一 金融機関の預金等の払戻しの停止(以下「第一種保険事故」という。)
二 金融機関の営業免許の取消し(信用金庫にあつては、事業免許の取消しとし、信用協同組合にあつては、解散の命令とする。第五十五条第二項第一号において同じ。)、破産の宣告又は解散の決議(以下「第二種保険事故」という。)
(保険料の納付)
第五十条 金融機関は、営業年度(信用金庫及び信用協同組合にあつては、事業年度。以下同じ。)ごとに、当該営業年度の開始後三月以内に、機構に対し、大蔵省令で定める書類を提出して、保険料を納付しなければならない。
2 機構は、保険事故が発生したときは、前項の規定にかかわらず、定款で定めるところにより、当該保険事故に係る金融機関の保険料を免除することができる。
(保険料の額)
第五十一条 保険料の額は、各金融機関につき、当該保険料を納付すべき日を含む営業年度の直前の営業年度の末日における預金等(外貨預金その他の政令で定める預金等を除く。)の額の合計額を十二で除し、これに当該保険料を納付すべき日を含む営業年度の月数を乗じて計算した金額に、機構が委員会の議決を経て定める率(以下この条において「保険料率」という。)を乗じて計算した金額とする。
2 保険料率は、長期的に保険料収入が保険金を償うように、かつ、特定の金融機関に対し差別的取扱いをしないように定められなければならない。
3 機構は、第四十二条第一項の資金の借入れをした場合において、その借入金をすみやかに返済することが困難であると認められるときは、委員会の議決を経て、保険料率を変更するものとする。
4 機構は、保険料率を定め、又はこれを変更しようとするときは、大蔵大臣の認可を受けなければならない。
5 機構は、前項の認可を受けたときは、遅滞なく、その認可に係る保険料率を公告しなければならない。
(延滞金)
第五十二条 金融機関は、保険料をその納期限までに納付しない場合には、機構に対し、延滞金を納付しなければならない。
2 延滞金の額は、未納の保険料の額に納期限の翌日からその納付の日までの日数に応じ年十四・五パーセントの割合を乗じて計算した金額とする。
(保険金の支払)
第五十三条 機構は、保険事故が発生したときは、当該保険事故に係る預金者等に対し、その請求に基づいて、保険金の支払をするものとする。ただし、第一種保険事故については、機構が第五十六条第一項の規定により保険金の支払をする旨の決定をすることを要件とする。
2 前項に規定する保険事故には、当該保険事故が発生した金融機関につき、その発生した後(同項ただし書の規定が適用される場合には、機構が同項ただし書の決定をした後)に当該保険事故に関連して他の保険事故が発生した場合における当該他の保険事故(第五十七条第一項第二号において「関連保険事故」という。)を含まないものとする。
3 第一項の請求は、第五十七条第一項又は第三項の規定により公告した支払期間内でなければ、することができない。ただし、その支払期間内に請求しなかつたことにつき災害その他やむを得ない事情があると機構が認めるときは、この限りでない。
(保険金の額)
第五十四条 保険金の額は、一の保険事故が発生した金融機関の各預金者等につき、その発生した日において現にその者が当該金融機関に対して有する預金等(外貨預金その他の政令で定める預金等を除く。)に係る債権のうち元本の額(その額が同一人について二以上ある場合には、その合計額)で、前条第一項の請求があつたものに相当する金額とする。
2 保険事故に係る預金者等が次の各号に該当する場合におけるその者の保険金の額は、前項の規定にかかわらず、同項の規定による金額から当該各号に掲げる額を控除した金額に相当する金額とする。
一 当該金融機関に対して債務を負つているとき。 その債務の額
二 当該金融機関に対して第三者のためにその預金等の全部又は一部を但保に提供しているとき。 その担保に提供している預金等の額
3 前二項の規定による保険金の額が政令で定める金額をこえるときは、その金額を当該保険金の額とする。
(保険事故の通知)
第五十五条 金融機関は、当該金融機関に係る保険事故が発生したときは、直ちに、その旨を機構に通知しなければならない。
2 大蔵大臣又は都道府県知事は、次に掲げる場合には、直ちに、その旨を機構に通知しなければならない。
一 その監督に係る金融機関の営業免許の取消し又は解散の決議に係る認可をしたとき。
二 当該金融機関から預金等の払戻しの停止につき届出を受けたとき。
三 裁判所から破産法(大正十一年法律第七十一号)第百二十五条第一項の規定による通知を受けたとき。
(支払の決定)
第五十六条 機構は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に掲げる日から一月以内に、委員会の議決を経て、当該各号の保険事故につき保険金の支払をするかどうかを決定しなければならない。
一 第一種保険事故に関して前条の規定による通知があつたとき。 その通知があつた日
二 前号に掲げる場合のほか、第一種保険事故が発生したことを機構が知つたとき。 その知つた日
2 機構は、前項の規定による決定をしたときは、直ちに、その決定に係る事項を大蔵大臣(当該決定が都道府県知事の監督に係る金融機関に関するものである場合には、大蔵大臣及び都道府県知事)に報告しなければならない。
(支払の公告等)
第五十七条 機構は、次に掲げる場合には、すみやかに、委員会の議決を経て保険金の支払期間、支払場所その他政令で定める事項を定め、これを公告しなければならない。
一 前条第一項の規定により第一種保険事故に係る保険金の支払をする旨の決定をしたとき。
二 第二種保険事故(関連保険事故を除く。次号において同じ。)に関して第五十五条の規定による通知があつたとき。
三 前号に掲げる場合のほか、第二種保険事故が発生したことを機構が知つたとき。
2 機構は、前項の公告をした後に当該金融機関が破産の宣告を受け、又は当該金融機関について和議開始の決定があつたときは、政令で定めるところにより、その公告した支払期間を変更することができる。
3 機構は、前項の規定により支払期間を変更したときは、遅滞なく、その変更に係る事項を公告しなければならない。
4 前条第二項の規定は、第一項に規定する事項を定めた場合及び第二項の規定により支払期間を変更した場合について準用する。
(債権の取得)
第五十八条 機構は、保険金の支払をしたときは、その支払金額に応じ、預金者等が金融機関に対して有する当該預金等に係る債権(利息、収益の分配その他これらに準ずるもので政令で定めるものを除く。)を取得する。
(政令への委任)
第五十九条 この法律に規定するもののほか、この章の規定による保険に関し必要な事項は、政令で定める。