金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律をここに公布する。
御名御璽
平成十年十月二十二日
内閣総理大臣 小渕恵三
法律第百四十三号
金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律
目次
第一章
総則(第一条―第三条)
第二章
金融機関等の資本の増強に関する緊急措置(第四条―第十条)
第三章
預金保険機構の業務の特例等(第十一条―第十八条)
第四章
雑則(第十九条―第二十二条)
第五章
罰則(第二十三条・第二十四条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、我が国の金融システムに対する内外の信頼を回復することが現下の喫緊の課題であることにかんがみ、金融機関等の不良債権の処理を速やかに進めるとともに、金融機関等の資本の増強に関する緊急措置の制度を設けること等により我が国の金融機能の早期健全化を図り、もって我が国の金融システムの再構築と我が国の経済の活性化に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「金融機関等」とは、次に掲げるものをいう。
一 預金保険法(昭和四十六年法律第三十四号)第二条第一項に規定する金融機関(以下「金融機関」という。)並びに信用金庫連合会、中小企業等協同組合法(昭和二十四年法律第百八十一号)第九条の九第一項第一号の事業を行う協同組合連合会及び労働金庫連合会
二 農林中央金庫
三 農業協同組合法(昭和二十二年法律第百三十二号)第十条第一項第二号の事業を行う農業協同組合連合会
四 水産業協同組合法(昭和二十三年法律第二百四十二号)第八十七条第一項第二号の事業を行う漁業協同組合連合会
五 預金保険法第二条第五項に規定する銀行持株会社等(以下「銀行持株会社等」という。)
2 この法律において「銀行」とは、銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)第二条第一項に規定する銀行及び長期信用銀行法(昭和二十七年法律第百八十七号)第二条に規定する長期信用銀行をいう。
3 この法律において「自己資本の充実の状況に係る区分」とは、銀行法第十四条の二その他これに類する他の法令の規定に規定する基準を勘案して金融再生委員会規則で定める次に掲げる区分をいう。
一 健全な自己資本の状況にある旨の区分
二 過少資本の状況にある旨の区分
三 著しい過少資本の状況にある旨の区分
四 特に著しい過少資本の状況にある旨の区分
4 この法律において「株式等」とは、株式、劣後特約付社債その他これらに準ずるものとして主務省令で定めるものをいう。
5 この法律において「劣後特約付社債」とは、元利金の支払について劣後的内容を有する特約が付された社債であって、金融機関等の自己資本の充実に資するものとして主務省令で定める社債に該当するものをいう。
6 この法律において「劣後特約付金銭消費貸借」とは、元利金の支払について劣後的内容を有する特約が付された金銭の消費貸借であって、金融機関等の自己資本の充実に資するものとして主務省令で定める金銭の消費貸借に該当するものをいう。
7 この法律において「協定銀行」とは、預金保険機構(以下「機構」という。)が第十条第一項に規定する協定を締結した銀行をいう。
8 この法律において「子会社」とは、銀行法第二条第八項に規定する子会社又は同項の規定により子会社とみなされる会社をいう。
(金融機能の早期健全化のために講ずる施策の原則等)
第三条 金融再生委員会が我が国の金融機能の早期健全化を図るためこの法律に基づいて講ずる施策は、次に掲げる原則によるものとする。
一 我が国の金融機能に著しい障害が生ずる事態を未然に防止すること。
二 金融機関等に対し、経営の状況を改善するよう自主的な努力を促すことにより、経営の合理化並びに経営責任及び株主責任の明確化を図ること。
三 金融機関等の再編を促進すること等により金融システムの効率化を図ること。
四 第一条の目的を達成するための社会経済的な費用が最小となるようにすること。
五 早期是正措置(銀行法第二十六条第一項の規定による命令(改善計画の提出を求めることを含む。)であって、銀行の自己資本の充実の状況によって必要があると認めるときにするものその他これに準ずる他の法令に基づく命令をいう。以下同じ。)と効果的な連携を確保すること。
六 情報等の適切かつ十分な開示を行うこと。
2 金融機関等は、金融再生委員会がこの法律に基づいて施策を講ずる前提として、次に掲げる措置を行うことにより財務内容等の健全性を確保するものとする。
一 金融機能の再生のための緊急措置に関する法律(平成十年法律第百三十二号。以下「金融機能再生緊急措置法」という。)第六条第二項に規定する基準に従い金融再生委員会(当該金融機関等が労働金庫又は労働金庫連合会である場合にあっては金融再生委員会及び労働大臣とし、当該金融機関等が農水産業協同組合連合会等(第二条第一項第二号から第四号までに掲げるものをいう。以下同じ。)である場合にあっては金融再生委員会及び農林水産大臣とする。以下この項において同じ。)が定めるところにより、適切に資産の査定を行うこと。
二 金融再生委員会が金融機関等の有する債権の貸倒れ等の実態を踏まえて定めるところにより、前号に規定する資産の査定の結果に基づき、適切に引当て等を行うこと。
三 金融再生委員会が定めるところにより、その保有する有価証券その他の資産を適切に評価すること。
3 金融再生委員会(当該金融機関等が信用協同組合(一の都道府県の区域を越えない区域を地区とする信用協同組合に限る。次条第四項及び第七項において同じ。)である場合にあっては当該信用協同組合の監督に係る都道府県知事とし、当該金融機関等が労働金庫又は労働金庫連合会である場合にあっては金融再生委員会及び労働大臣とし、当該金融機関等が一の都道府県の区域の一部をその地区の全部とする農水産業協同組合連合会等である場合にあっては当該農水産業協同組合連合会等の監督に係る都道府県知事とし、当該金融機関等がその他の農水産業協同組合連合会等である場合にあっては金融再生委員会及び農林水産大臣とする。第二十条において同じ。)は、銀行法その他これに類する法令の定めるところにより、特に著しい過少資本の状況にある旨の区分に該当する金融機関等に対して、当該金融機関等が自己資本の充実、大幅な業務の縮小、合併又は銀行業等の廃止等の措置のいずれかを選択した上当該選択に係る措置を実施することを命ずるものとする。
第二章 金融機関等の資本の増強に関する緊急措置
(株式等の引受け等の承認等)
第四条 機構は、金融機関等の発行する株式等の引受け又は劣後特約付金銭消費貸借による貸付け(以下「株式等の引受け等」という。)を協定銀行に委託することができる。
2 前項の規定による委託に係る株式等の発行又は劣後特約付金銭消費貸借による借入れ(以下「株式等の発行等」という。)を行おうとする金融機関等(以下「発行金融機関等」という。)は、協定銀行に対し、平成十三年三月三十一日までに株式等の発行等に係る申込みを行うとともに、協定銀行と連名で、機構に対し、協定銀行が当該申込みに係る株式等の引受け等を行うことについての金融再生委員会(当該申込みに係る発行金融機関等が労働金庫又は労働金庫連合会である場合にあっては金融再生委員会及び労働大臣とし、当該発行金融機関等が農水産業協同組合連合会等である場合にあっては金融再生委員会及び農林水産大臣とする。次項及び第六項、次条第一項、第三項及び第四項、第七条並びに第八条において同じ。)の承認を求めるよう申請しなければならない。
3 機構は、前項の規定による申請を受けたときは、直ちに、同項に規定する金融再生委員会の承認を求めなければならない。
4 金融再生委員会は、前項の承認をする場合において、当該承認に係る発行金融機関等が信用協同組合であるときは、あらかじめ、当該信用協同組合の監督に係る都道府県知事に協議しなければならない。
5 金融再生委員会及び農林水産大臣は、第三項の承認をする場合において、当該承認に係る発行金融機関等が農水産業協同組合連合会等(一の都道府県の区域の一部をその地区の全部とする農水産業協同組合連合会等に限る。)であるときは、あらかじめ、当該農水産業協同組合連合会等の監督に係る都道府県知事に協議しなければならない。
6 金融再生委員会は、第三項の承認をするため必要があると認めるときは、日本銀行又は機構に対し、意見の陳述、報告又は資料の提出を求めることができる。
7 機構は、協定銀行から、第十条第二項第二号又は第八号の規定による報告を受けたときは、直ちに、その報告の内容を金融再生委員会(当該報告に係る金融機関等が信用協同組合である場合にあっては金融再生委員会及び当該信用協同組合の監督に係る都道府県知事とし、当該金融機関等が労働金庫又は労働金庫連合会である場合にあっては金融再生委員会及び労働大臣とし、当該金融機関等が一の都道府県の区域の一部をその地区の全部とする農水産業協同組合連合会等である場合にあっては金融再生委員会、農林水産大臣及び当該農水産業協同組合連合会等の監督に係る都道府県知事とし、当該金融機関等がその他の農水産業協同組合連合会等である場合にあっては金融再生委員会及び農林水産大臣とする。)に報告しなければならない。
(経営の健全化のための計画)
第五条 前条第二項の規定による申請を行った発行金融機関等は、金融再生委員会に対し、次に掲げる方策(第八条に規定する金融機関及び銀行持株会社等については、第三号に掲げる方策を除く。)を定めた経営の健全化のための計画を、機構を通じて、提出しなければならない。
一 経営の合理化のための方策
二 責任ある経営体制の確立のための方策
三 配当等により利益の流出が行われないための方策
四 資金の貸付けその他信用供与の円滑化のための方策
五 株式等の発行等に係る株式等及び借入金につき利益をもってする消却、払戻し、償還又は返済に対応することができる財源を確保するための方策
六 財務内容の健全性及び業務の健全かつ適切な運営の確保のための方策
2 金融再生委員会は、前条第三項の承認があったときは、前項の規定により提出を受けた計画を公表するものとする。ただし、信用秩序を損なうおそれのある事項、当該計画を提出した発行金融機関等の預金者等その他の取引者の秘密を害するおそれのある事項及び当該発行金融機関等の業務の遂行に不当な不利益を与えるおそれのある事項については、この限りでない。
3 金融再生委員会は、第一項の規定により提出を受けた計画に虚偽の事実が含まれていることを発見したときは、当該計画を提出した発行金融機関等に対し、その訂正を求めるものとする。
4 金融再生委員会は、協定銀行が、前条第一項の引受けにより取得をした株式等(当該株式等が株式又は劣後特約付社債である場合の当該取得後においては、当該株式が他の種類の株式への転換が可能とされる株式である場合にその転換により発行された他の種類の株式及び当該株式又は当該他の種類の株式について商法(明治三十二年法律第四十八号)の規定により分割又は併合された株式並びに当該劣後特約付社債が株式への転換が可能とされる社債である場合にその転換により発行された株式及びこれについて同法の規定により分割又は併合された株式を含む。以下「取得株式等」という。)又は同項の貸付けにより取得をした貸付債権(以下「取得貸付債権」という。)の全部につきその処分をし、又はその返済を受けるまでの間、当該取得株式等又は取得貸付債権に係る金融機関等に対し、第一項の規定により提出を受けた計画の履行状況につき報告を求め、これを公表するものとする。この場合において、当該報告を公表するときは、第二項ただし書の規定を準用する。
(議決権のある株式の引受けの要件)
第六条 金融再生委員会は、第四条第二項の規定による発行金融機関等である銀行からの申請が発行の時において議決権のある株式の引受けに係るものであるときは、次に掲げる要件のすべてに該当する場合に限り、当該申請に係る同条第三項の承認をすることができる。
一 協定銀行による株式の引受けによりその資本の増強が図られなければ、当該銀行が内外の金融市場において十分な信認を得られず円滑な資金の調達をすることが極めて困難な状況に至ることとなる等により、当該銀行の業務又は我が国における金融機能に著しい障害が生じ、信用秩序の維持又は企業の活動若しくは雇用の状況に甚大な影響を及ぼす等経済の円滑な運営に極めて重大な支障が生ずるおそれがあること。
二 当該銀行の経営管理等を通じた適切な業務の運営の確保及び金融市場における当該銀行の信認の回復等により前号に掲げる事態を避けるために、発行の時において議決権のある株式の協定銀行による引受けが不可欠であること。
三 当該銀行がその財産をもって債務を完済することができない状況にあること等その存続が極めて困難であると認められる場合でなく、かつ、当該株式の引受けに係る取得株式等の処分をすることが著しく困難であると認められる場合でないこと。
四 当該銀行が著しい過少資本の状況にある旨の区分又は特に著しい過少資本の状況にある旨の区分のいずれかに該当すること。
五 当該銀行が特に著しい過少資本の状況にある旨の区分に該当するときは、当該銀行の存続が地域経済にとって必要不可欠である場合その他特に必要と認められる場合であること。
六 前条第一項に規定する経営の健全化のための計画の確実な履行等を通じて、金融再生委員会が定めて公表する次に掲げる方策に関する基準に従ったこれらの方策の実行が見込まれること。
イ 経営の合理化のための方策
ロ 経営責任の明確化のための方策
ハ 株主責任の明確化のための方策
ニ 資金の貸付けその他信用供与の円滑化のための方策
2 前項第六号に規定する基準は、次条第二項第三号に掲げる内容を含むものでなければならない。
(議決権のある株式の引受け以外の株式等の引受け等の要件)
第七条 金融再生委員会は、第四条第二項の規定による発行金融機関等(銀行持株会社等を除く。以下この条において同じ。)からの申請が株式等の引受け等(発行の時において議決権のある株式の引受けを除く。)に係るものであるときは、次に掲げる要件のすべてに該当する場合に限り、当該申請に係る同条第三項の承認をすることができる。
一 協定銀行による株式等の引受け等によりその資本の増強が図られなければ、当該発行金融機関等が内外の金融市場において十分な信認を得られず円滑な資金の調達をすることが極めて困難な状況に至ることとなる等により、当該発行金融機関等の業務又は我が国における金融機能に著しい障害が生じ、信用秩序の維持又は企業の活動若しくは雇用の状況に甚大な影響を及ぼす等経済の円滑な運営に極めて重大な支障が生ずるおそれがあること。
二 当該発行金融機関等がその財産をもって債務を完済することができない状況にあること等その存続が極めて困難であると認められる場合でなく、かつ、当該株式等の引受け等に係る取得株式等又は取得貸付債権の処分をすることが著しく困難であると認められる場合でないこと。
三 第五条第一項に規定する経営の健全化のための計画の確実な履行等を通じて、発行金融機関等の自己資本の充実の状況に係る区分その他の要素を勘案して金融再生委員会が定めて公表する次に掲げる方策に関する基準に従ったこれらの方策の実行が見込まれること。
イ 経営の合理化のための方策
ロ 経営責任の明確化のための方策
ハ 株主責任の明確化のための方策
ニ 資金の貸付けその他信用供与の円滑化のための方策
四 当該発行金融機関等が特に著しい過少資本の状況にある旨の区分に該当するときは、当該発行金融機関等の存続が地域経済にとって必要不可欠である場合その他特に必要と認められる場合であること。
五 当該発行金融機関等が健全な自己資本の状況にある旨の区分に該当するときは、次に掲げるいずれかの場合であること。
イ 当該発行金融機関等が、経営の状況が悪化している金融機関等との合併、経営の状況が悪化している金融機関等からの営業若しくは事業の譲受け又は経営の状況が悪化している金融機関等の株式の取得(当該金融機関等を子会社とするものに限る。)を行うものであって、当該合併、営業若しくは事業の譲受け又は株式の取得の円滑な実施のため、協定銀行による株式等の引受け等が不可欠である場合
ロ 急激かつ大幅な信用供与の収縮が相次いで生じており、又は相次いで生ずるおそれがある状況であり、かつ、これらの状況を改善し、又は回避するために協定銀行による株式等の引受け等が不可欠である場合その他特にやむを得ない事由がある場合
2 前項第三号に規定する基準は、次に掲げる内容を含むものでなければならない。
一 健全な自己資本の状況にある旨の区分に該当する発行金融機関等が行うべき事項は、次に掲げる事項とする。
イ 役職員数及び経費の抑制等により経営の合理化を行うこと。
ロ 利益の流出を抑制すること。
二 過少資本の状況にある旨の区分に該当する発行金融機関等が行うべき事項は、次に掲げる事項とする。
イ 職員数及び経費の抑制等により経営の合理化を行うこと。
ロ 役員数の削減等の経営体制の刷新を行うこと。
ハ 配当及び役員に対する賞与の支給等を抑制すること。
ニ 株式等の引受け等により既に発行されている株式に係る株主を不当に利することとなる場合においては、資本の減少等により株式の一株当たりの価値の適正化を行うこと。
ホ 早期是正措置を確実に履行すること。
三 著しい過少資本の状況にある旨の区分又は特に著しい過少資本の状況にある旨の区分のいずれかに該当する発行金融機関等が行うべき事項は、次に掲げる事項とする。
イ 代表権のある役員の退任、給与体系の見直し並びに役職員数及び支店等の削減、海外営業拠点の廃止等による組織及び業務の見直しを原則としてすべて実行すること等により経営の抜本的な改革を行うこと。
ロ 配当及び役員に対する賞与の支給等を停止すること。
ハ 発行金融機関等の役員等の職務上の責任を明確にするための措置を効果的に遂行するために必要な体制の整備を行うこと。
ニ 株式等の引受け等により既に発行されている株式に係る株主を不当に利することとなる場合においては、資本の減少等により株式の一株当たりの価値の適正化を行うこと。
ホ 早期是正措置を確実に履行すること。
(合併等を行う金融機関及び銀行持株会社等に係る株式等の引受け等の要件)
第八条 金融再生委員会は、合併等(預金保険法第五十九条第一項に規定する資金援助に係る同項の合併等又はこれに準ずるものとして金融再生委員会規則で定める金融機関との合併、金融機関からの営業若しくは事業の譲受け若しくは金融機関の株式の取得若しくは資産の譲受けをいう。第一号及び第三号において同じ。)を行う金融機関又は銀行持株会社等からの第四条第二項の規定による株式等の引受け等に係る申請(発行の時において議決権のある株式の引受けに係る申請を除く。)については、次に掲げる要件のすべてに該当する場合に限り、当該申請に係る同条第三項の承認をすることができる。
一 当該合併等により当該金融機関又は当該銀行持株会社等及びその子会社である金融機関の自己資本の充実の状況が悪化したこと。
二 協定銀行による株式等の引受け等により当該金融機関又は当該銀行持株会社等及びその子会社である金融機関の資本の増強が図られなければ、信用秩序の維持又は経済の円滑な運営に極めて重大な支障が生ずるおそれがあること。
三 協定銀行による株式等の引受け等が、当該金融機関又は当該銀行持株会社等及びその子会社である金融機関の自己資本の充実の状況等財務内容等に照らし合併等の円滑な実施のために必要な範囲を超えないものとして金融再生委員会が定めて公表する基準に適合するものであること。
四 預金保険法第五十九条第一項に規定する資金援助に係る同項の合併等に準ずるものとして金融再生委員会規則で定める金融機関との合併、金融機関からの営業若しくは事業の譲受け又は金融機関の株式の取得若しくは資産の譲受けを行う金融機関又は銀行持株会社等については、当該金融再生委員会規則で定める合併等に係る他の金融機関において前条第一項第三号イからハまでに掲げる方策が実行されていること又はその実行が見込まれること。
(資本の減少等を行う場合の特例)
第九条 第四条第二項の規定により株式の発行の申請をした銀行が、当該株式の発行に先立って資本の減少を行うこと等既に発行されている株式の一株当たりの価値の適正化を行うための措置を含む第五条第一項に規定する経営の健全化のための計画を金融再生委員会に提出したときは、金融再生委員会は、当該申請に係る第四条第三項の承認において、当該措置を実施することを条件とすることができる。
2 前項の規定により資本の減少の実施を条件とする第四条第三項の承認がなされた場合においては、当該資本の減少について、預金者その他政令で定める債権者に対する商法第三百七十六条第二項において準用する同法第百条第一項の規定による催告は、することを要しない。
3 第一項の規定により資本の減少の実施を条件とする第四条第三項の承認がなされた場合であって、次に掲げる要件のすべてに該当するときは、当該資本の減少について、商法第三百七十六条第二項の規定は、適用しない。
一 当該資本の減少に係る株主総会の決議において、当該承認に係る株式の発行価額の総額について払込みが行われたことを当該資本の減少の効力が生ずることの条件としたこと。
二 当該承認に係る株式の発行価額の総額(資本に組み入れない額を除く。)が当該承認の条件とされた資本の減少の額を上回ること。
(協定の締結等)
第十条 機構は、預金保険法附則第七条第一項の規定により同項の協定を締結した銀行と、株式等の引受け等並びに取得株式等及び取得貸付債権の処分等の業務の委託に関する協定(以下「協定」という。)を締結しなければならない。
2 機構は、協定において、協定銀行が次に掲げる事項を実施すべき旨を定めなければならない。
一 協定銀行は、第四条第三項の承認に係る株式等の引受け等を行うこと。
二 協定銀行は、前号の規定による株式等の引受け等を行ったときは、速やかに、その内容を機構に報告すること。
三 協定銀行は、第一号の規定により取得した株式に係る議決権その他の株主としての権利を行使しようとするときは、当該権利の行使の内容について機構の承認を受けること。ただし、機構を代理人として当該権利を行使するとき及び機構がその承認を要しないものとして定めた事項について当該権利を行使するときは、この限りでないこと。
四 協定銀行は、取得株式等である株式の発行に係る銀行が協定銀行の子会社となったときは、機構の指導又は助言を受けて、当該銀行が第五条第一項の規定により提出した計画を適確に履行できるようその経営管理を行うこと。
五 協定銀行は、取得株式等である株式の発行に係る銀行が協定銀行の子会社となったときは、当該銀行が子会社となった日から一年以内に、当該銀行が子会社でなくなるよう、その保有する株式の譲渡その他の処分を行うこと。ただし、やむを得ない事情によりこの期限内に当該処分を行うことができない場合には、機構の承認を受けて、一年ごとに二回までを限り、この期限を延長することができること。
六 協定銀行は、取得株式等及び取得貸付債権については、前号に定めるもののほか、できる限り早期に譲渡その他の処分を行うよう努めること。
七 協定銀行は、取得株式等又は取得貸付債権について譲渡その他の処分を行おうとするときは、機構の承認を受けること。
八 協定銀行は、前号の承認を受けて同号の取得株式等又は取得貸付債権について譲渡その他の処分を行ったときは、速やかに、その内容を機構に報告すること。
3 機構は、協定を締結したときは、直ちに、その協定の内容を金融再生委員会に報告しなければならない。
4 機構は、第二項第五号ただし書の承認を行おうとするときは、あらかじめ金融再生委員会の承認を得なければならない。
第三章 預金保険機構の業務の特例等
(資金の貸付け及び債務の保証)
第十一条 機構は、協定銀行が協定の定めによる株式等の引受け等のために必要とする資金その他の協定の定めによる業務の円滑な実施のために必要とする資金について、その資金の貸付け又は協定銀行によるその資金の借入れに係る債務の保証を行うことができる。
2 機構は、協定において、協定銀行が前項に規定する債務の保証の対象となる資金の借入れに関する契約の締結をしようとするときは、当該締結をしようとする契約の内容について機構の承認を受けるべき旨を定めなければならない。
3 機構は、協定銀行との間で第一項の貸付け又は債務の保証に係る契約を締結したときは、直ちに、その契約の内容を金融再生委員会に報告しなければならない。
(損失の補てん)
第十二条 機構は、協定銀行に対し、協定の定めによる業務の実施により協定銀行に生じた損失の額として政令で定めるところにより計算した金額の範囲内において、当該損失の補てんを行うことができる。
(利益の納付及び収納)
第十三条 機構は、協定において、協定銀行に協定の定めによる業務により生じた利益の額として政令で定めるところにより計算した額があるときは、毎事業年度、当該利益の額に相当する金額を機構に納付すべき旨を定めなければならない。
2 機構は、前項の規定に基づき協定銀行から納付される金銭を収納することができる。
(報告の徴求)
第十四条 機構は、第四条第一項及び前三条の規定による業務(以下「金融機能早期健全化業務」という。)を行うため必要があるときは、協定銀行に対し、協定の実施又は財務の状況に関し報告を求めることができる。
(区分経理)
第十五条 機構は、金融機能早期健全化業務に係る経理については、その他の経理と区分し、特別の勘定(以下「金融機能早期健全化勘定」という。)を設けて整理しなければならない。
2 機構は、協定において、協定銀行の協定の定めによる業務に係る経理については、その他の経理と区分し、特別の勘定を設けて整理すべき旨を定めなければならない。
(借入金及び預金保険機構債券)
第十六条 機構は、金融機能早期健全化業務を行うため必要があると認めるときは、政令で定める金額の範囲内において、金融再生委員会の認可を受けて、日本銀行、金融機関その他の者から資金の借入れ(借換えを含む。)をし、又は預金保険機構債券(以下「債券」という。)の発行(債券の借換えのための発行を含む。)をすることができる。
2 日本銀行は、日本銀行法(平成九年法律第八十九号)第四十三条第一項の規定にかかわらず、機構に対し、前項の資金の貸付けをすることができる。
3 農林中央金庫は、農林中央金庫法(大正十二年法律第四十二号)第十六条の規定にかかわらず、機構に対し、第一項の資金の貸付けをすることができる。
4 第一項の規定により発行される債券については、これを預金保険法第四十二条第三項の規定により発行される債券とみなして、同条第四項から第八項までの規定を適用する。
(政府保証)
第十七条 政府は、法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律(昭和二十一年法律第二十四号)第三条の規定にかかわらず、国会の議決を経た金額の範囲内において、機構の前条第一項の借入れ又は債券に係る債務の保証をすることができる。
(金融機能早期健全化勘定の廃止)
第十八条 機構は、金融機能早期健全化業務の終了の日として政令で定める日において、金融機能早期健全化勘定を廃止するものとする。
2 機構は、金融機能早期健全化勘定の廃止の際、金融機能早期健全化勘定に残余があるときは、当該残余の額を国庫に納付しなければならない。
第四章 雑則
(預金保険法の適用)
第十九条 この法律により機構の業務が行われる場合には、この法律の規定によるほか、預金保険法を適用する。この場合において、同法第二条第三項中「この法律」とあるのは「この法律又は金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律(平成十年法律第百四十三号。以下「金融機能早期健全化緊急措置法」という。)」と、「債権者」とあるのは「債権者(金融機能早期健全化緊急措置法の適用にあつては、貯金に係る債権者を含む。)」と、同法第十五条第五号中「事項」とあるのは「事項(金融機能早期健全化緊急措置法の規定による機構の業務に係るものを除く。)」と、同法第三十五条第一項中「以下同じ」とあるのは「第三十七条第一項を除き、以下同じ」と、同法第三十七条第一項中「金融機関」とあるのは「金融機関(金融機能早期健全化緊急措置法の規定による業務を行う場合にあつては、金融機能早期健全化緊急措置法第二条第一項に規定する金融機関等。次項において同じ。)」と、同法第四十四条、第四十五条第二項及び第四十六条第一項中「この法律」とあるのは「この法律又は金融機能早期健全化緊急措置法」と、同法第五十一条第二項中「業務」とあるのは「業務(金融機能早期健全化緊急措置法第十四条に規定する金融機能早期健全化業務を除く。)」と、同法第九十一条第一号中「この法律」とあるのは「この法律又は金融機能早期健全化緊急措置法」と、「及び大蔵大臣」とあるのは「、大蔵大臣、労働大臣又は農林水産大臣」と、「認可を受けなければならない」とあるのは「認可を受け、又はその承認を得なければならない」と、「認可を受けなかつた」とあるのは「認可を受けず、又はその承認を得なかつた」と、同条第三号中「第三十四条に規定する業務」とあるのは「第三十四条に規定する業務及び金融機能早期健全化緊急措置法の規定による業務」とする。
(経営健全化計画の履行を確保するための措置等)
第二十条 金融再生委員会は、金融機関等が第三条第二項各号の規定に違反して資産の査定等を行った場合には、銀行法その他これに類する法令の定めるところにより、業務の一部を停止その他の監督上必要な措置を命ずることができる。
2 金融再生委員会は、協定銀行が取得株式等又は取得貸付債権の全部につきその処分をし、又はその返済を受けるまでの間、当該取得株式等又は取得貸付債権に係る金融機関等に対し、第五条第一項の規定により提出を受けた計画の履行を確保するため、銀行法その他これに類する法令の定めるところにより、業務の一部の停止その他の監督上必要な措置を命ずることができる。
(権限の委任)
第二十一条 金融再生委員会は、第三条第二項及び第三項並びに前条の規定による権限(金融再生委員会規則で定めるものを除く。)を金融監督庁長官に委任する。
(政令への委任等)
第二十二条 この法律に規定するもののほか、この法律を実施するため必要な事項は、政令で定める。
2 第二条第四項から第六項までの規定における主務省令は、総理府令・労働省令・農林水産省令とする。
第五章 罰則
第二十三条 第四条第七項、第十条第三項又は第十一条第三項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした機構の役員又は職員は、五十万円以下の罰金に処する。
第二十四条 次の各号の一に該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
一 第五条第一項に規定する計画であって虚偽の事実を含むものを提出した者
二 第五条第四項又は第十四条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
2 法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者が、その法人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対しても、同項の刑を科する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して十日を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(経過措置)
第二条 金融再生委員会設置法(平成十年法律第百三十号)の施行の日の前日までの間におけるこの法律の規定の適用については、「金融再生委員会」とあるのは、「内閣総理大臣」とする。この場合において、金融再生委員会規則により定めるべき事項は、総理府令で定める。
2 金融再生委員会設置法の施行の日の前日までに前項の規定により内閣総理大臣がした承認その他の行為については、これを、この法律の相当規定に基づいて金融再生委員会がした承認その他の行為とみなす。
第三条 金融システム改革のための関係法律の整備等に関する法律(平成十年法律第百七号)の施行の日の前日までの間における第二条第二項及び第八項の規定の適用については、同条第二項中「及び長期信用銀行法(昭和二十七年法律第百八十七号)第二条に規定する長期信用銀行」とあるのは「、長期信用銀行法(昭和二十七年法律第百八十七号)第二条に規定する長期信用銀行及び外国為替銀行法(昭和二十九年法律第六十七号)第二条第一項に規定する外国為替銀行」と、同条第八項中「銀行法第二条第八項に規定する子会社又は同項の規定により子会社とみなされる会社」とあるのは「銀行法第五十二条の二第二項に規定する子会社又は同条第三項の規定により子会社とみなされる会社」とする。
第四条 平成十年度において政府が第十七条の規定により第十六条第一項の借入れ又は債券に係る債務の保証をする場合及び金融機能再生緊急措置法第六十六条の規定により金融機能再生緊急措置法第六十五条第一項の借入れ又は債券に係る債務の保証をする場合には、十兆円の範囲内において、これをすることができる。ただし、第十七条及び金融機能再生緊急措置法第六十六条の規定に基づく国会の議決がなされた場合には、この限りでない。
第五条 金融機能再生緊急措置法附則第四条の規定による廃止前の金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律(平成十年法律第五号。以下この条において「旧金融機能安定化法」という。)第二十七条の規定により旧金融機能安定化法第十一条第一項の借入れ又は債券に係る債務について政府がした保証は、金融機能再生緊急措置法第六十六条の規定により金融機能再生緊急措置法第六十五条第一項の借入れ又は債券に係る債務について政府がしたものとみなす。
2 機構が、金融機能再生緊急措置法附則第五条の規定による業務を行う場合には、同条の規定にかかわらず、当該業務を金融機能再生緊急措置法第六十五条第一項の金融再生業務とみなして、金融機能再生緊急措置法第六十五条及び第六十六条の規定を適用する。
(預金保険法の一部を改正する法律の一部改正)
第六条 預金保険法の一部を改正する法律(平成十年法律第百三十三号)の一部を次のように改正する。
附則第九条第二項中「特別協定及び」を「特別協定、」に改め、「特定整理回収協定」の下に「及び金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律(平成十年法律第百四十三号)第十条第一項に規定する協定」を加える。
内閣総理大臣 小渕恵三
大蔵大臣 宮澤喜一
農林水産大臣 中川昭一
労働大臣 甘利明
金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律をここに公布する。
御名御璽
平成十年十月二十二日
内閣総理大臣 小渕恵三
法律第百四十三号
金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律
目次
第一章
総則(第一条―第三条)
第二章
金融機関等の資本の増強に関する緊急措置(第四条―第十条)
第三章
預金保険機構の業務の特例等(第十一条―第十八条)
第四章
雑則(第十九条―第二十二条)
第五章
罰則(第二十三条・第二十四条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、我が国の金融システムに対する内外の信頼を回復することが現下の喫緊の課題であることにかんがみ、金融機関等の不良債権の処理を速やかに進めるとともに、金融機関等の資本の増強に関する緊急措置の制度を設けること等により我が国の金融機能の早期健全化を図り、もって我が国の金融システムの再構築と我が国の経済の活性化に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「金融機関等」とは、次に掲げるものをいう。
一 預金保険法(昭和四十六年法律第三十四号)第二条第一項に規定する金融機関(以下「金融機関」という。)並びに信用金庫連合会、中小企業等協同組合法(昭和二十四年法律第百八十一号)第九条の九第一項第一号の事業を行う協同組合連合会及び労働金庫連合会
二 農林中央金庫
三 農業協同組合法(昭和二十二年法律第百三十二号)第十条第一項第二号の事業を行う農業協同組合連合会
四 水産業協同組合法(昭和二十三年法律第二百四十二号)第八十七条第一項第二号の事業を行う漁業協同組合連合会
五 預金保険法第二条第五項に規定する銀行持株会社等(以下「銀行持株会社等」という。)
2 この法律において「銀行」とは、銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)第二条第一項に規定する銀行及び長期信用銀行法(昭和二十七年法律第百八十七号)第二条に規定する長期信用銀行をいう。
3 この法律において「自己資本の充実の状況に係る区分」とは、銀行法第十四条の二その他これに類する他の法令の規定に規定する基準を勘案して金融再生委員会規則で定める次に掲げる区分をいう。
一 健全な自己資本の状況にある旨の区分
二 過少資本の状況にある旨の区分
三 著しい過少資本の状況にある旨の区分
四 特に著しい過少資本の状況にある旨の区分
4 この法律において「株式等」とは、株式、劣後特約付社債その他これらに準ずるものとして主務省令で定めるものをいう。
5 この法律において「劣後特約付社債」とは、元利金の支払について劣後的内容を有する特約が付された社債であって、金融機関等の自己資本の充実に資するものとして主務省令で定める社債に該当するものをいう。
6 この法律において「劣後特約付金銭消費貸借」とは、元利金の支払について劣後的内容を有する特約が付された金銭の消費貸借であって、金融機関等の自己資本の充実に資するものとして主務省令で定める金銭の消費貸借に該当するものをいう。
7 この法律において「協定銀行」とは、預金保険機構(以下「機構」という。)が第十条第一項に規定する協定を締結した銀行をいう。
8 この法律において「子会社」とは、銀行法第二条第八項に規定する子会社又は同項の規定により子会社とみなされる会社をいう。
(金融機能の早期健全化のために講ずる施策の原則等)
第三条 金融再生委員会が我が国の金融機能の早期健全化を図るためこの法律に基づいて講ずる施策は、次に掲げる原則によるものとする。
一 我が国の金融機能に著しい障害が生ずる事態を未然に防止すること。
二 金融機関等に対し、経営の状況を改善するよう自主的な努力を促すことにより、経営の合理化並びに経営責任及び株主責任の明確化を図ること。
三 金融機関等の再編を促進すること等により金融システムの効率化を図ること。
四 第一条の目的を達成するための社会経済的な費用が最小となるようにすること。
五 早期是正措置(銀行法第二十六条第一項の規定による命令(改善計画の提出を求めることを含む。)であって、銀行の自己資本の充実の状況によって必要があると認めるときにするものその他これに準ずる他の法令に基づく命令をいう。以下同じ。)と効果的な連携を確保すること。
六 情報等の適切かつ十分な開示を行うこと。
2 金融機関等は、金融再生委員会がこの法律に基づいて施策を講ずる前提として、次に掲げる措置を行うことにより財務内容等の健全性を確保するものとする。
一 金融機能の再生のための緊急措置に関する法律(平成十年法律第百三十二号。以下「金融機能再生緊急措置法」という。)第六条第二項に規定する基準に従い金融再生委員会(当該金融機関等が労働金庫又は労働金庫連合会である場合にあっては金融再生委員会及び労働大臣とし、当該金融機関等が農水産業協同組合連合会等(第二条第一項第二号から第四号までに掲げるものをいう。以下同じ。)である場合にあっては金融再生委員会及び農林水産大臣とする。以下この項において同じ。)が定めるところにより、適切に資産の査定を行うこと。
二 金融再生委員会が金融機関等の有する債権の貸倒れ等の実態を踏まえて定めるところにより、前号に規定する資産の査定の結果に基づき、適切に引当て等を行うこと。
三 金融再生委員会が定めるところにより、その保有する有価証券その他の資産を適切に評価すること。
3 金融再生委員会(当該金融機関等が信用協同組合(一の都道府県の区域を越えない区域を地区とする信用協同組合に限る。次条第四項及び第七項において同じ。)である場合にあっては当該信用協同組合の監督に係る都道府県知事とし、当該金融機関等が労働金庫又は労働金庫連合会である場合にあっては金融再生委員会及び労働大臣とし、当該金融機関等が一の都道府県の区域の一部をその地区の全部とする農水産業協同組合連合会等である場合にあっては当該農水産業協同組合連合会等の監督に係る都道府県知事とし、当該金融機関等がその他の農水産業協同組合連合会等である場合にあっては金融再生委員会及び農林水産大臣とする。第二十条において同じ。)は、銀行法その他これに類する法令の定めるところにより、特に著しい過少資本の状況にある旨の区分に該当する金融機関等に対して、当該金融機関等が自己資本の充実、大幅な業務の縮小、合併又は銀行業等の廃止等の措置のいずれかを選択した上当該選択に係る措置を実施することを命ずるものとする。
第二章 金融機関等の資本の増強に関する緊急措置
(株式等の引受け等の承認等)
第四条 機構は、金融機関等の発行する株式等の引受け又は劣後特約付金銭消費貸借による貸付け(以下「株式等の引受け等」という。)を協定銀行に委託することができる。
2 前項の規定による委託に係る株式等の発行又は劣後特約付金銭消費貸借による借入れ(以下「株式等の発行等」という。)を行おうとする金融機関等(以下「発行金融機関等」という。)は、協定銀行に対し、平成十三年三月三十一日までに株式等の発行等に係る申込みを行うとともに、協定銀行と連名で、機構に対し、協定銀行が当該申込みに係る株式等の引受け等を行うことについての金融再生委員会(当該申込みに係る発行金融機関等が労働金庫又は労働金庫連合会である場合にあっては金融再生委員会及び労働大臣とし、当該発行金融機関等が農水産業協同組合連合会等である場合にあっては金融再生委員会及び農林水産大臣とする。次項及び第六項、次条第一項、第三項及び第四項、第七条並びに第八条において同じ。)の承認を求めるよう申請しなければならない。
3 機構は、前項の規定による申請を受けたときは、直ちに、同項に規定する金融再生委員会の承認を求めなければならない。
4 金融再生委員会は、前項の承認をする場合において、当該承認に係る発行金融機関等が信用協同組合であるときは、あらかじめ、当該信用協同組合の監督に係る都道府県知事に協議しなければならない。
5 金融再生委員会及び農林水産大臣は、第三項の承認をする場合において、当該承認に係る発行金融機関等が農水産業協同組合連合会等(一の都道府県の区域の一部をその地区の全部とする農水産業協同組合連合会等に限る。)であるときは、あらかじめ、当該農水産業協同組合連合会等の監督に係る都道府県知事に協議しなければならない。
6 金融再生委員会は、第三項の承認をするため必要があると認めるときは、日本銀行又は機構に対し、意見の陳述、報告又は資料の提出を求めることができる。
7 機構は、協定銀行から、第十条第二項第二号又は第八号の規定による報告を受けたときは、直ちに、その報告の内容を金融再生委員会(当該報告に係る金融機関等が信用協同組合である場合にあっては金融再生委員会及び当該信用協同組合の監督に係る都道府県知事とし、当該金融機関等が労働金庫又は労働金庫連合会である場合にあっては金融再生委員会及び労働大臣とし、当該金融機関等が一の都道府県の区域の一部をその地区の全部とする農水産業協同組合連合会等である場合にあっては金融再生委員会、農林水産大臣及び当該農水産業協同組合連合会等の監督に係る都道府県知事とし、当該金融機関等がその他の農水産業協同組合連合会等である場合にあっては金融再生委員会及び農林水産大臣とする。)に報告しなければならない。
(経営の健全化のための計画)
第五条 前条第二項の規定による申請を行った発行金融機関等は、金融再生委員会に対し、次に掲げる方策(第八条に規定する金融機関及び銀行持株会社等については、第三号に掲げる方策を除く。)を定めた経営の健全化のための計画を、機構を通じて、提出しなければならない。
一 経営の合理化のための方策
二 責任ある経営体制の確立のための方策
三 配当等により利益の流出が行われないための方策
四 資金の貸付けその他信用供与の円滑化のための方策
五 株式等の発行等に係る株式等及び借入金につき利益をもってする消却、払戻し、償還又は返済に対応することができる財源を確保するための方策
六 財務内容の健全性及び業務の健全かつ適切な運営の確保のための方策
2 金融再生委員会は、前条第三項の承認があったときは、前項の規定により提出を受けた計画を公表するものとする。ただし、信用秩序を損なうおそれのある事項、当該計画を提出した発行金融機関等の預金者等その他の取引者の秘密を害するおそれのある事項及び当該発行金融機関等の業務の遂行に不当な不利益を与えるおそれのある事項については、この限りでない。
3 金融再生委員会は、第一項の規定により提出を受けた計画に虚偽の事実が含まれていることを発見したときは、当該計画を提出した発行金融機関等に対し、その訂正を求めるものとする。
4 金融再生委員会は、協定銀行が、前条第一項の引受けにより取得をした株式等(当該株式等が株式又は劣後特約付社債である場合の当該取得後においては、当該株式が他の種類の株式への転換が可能とされる株式である場合にその転換により発行された他の種類の株式及び当該株式又は当該他の種類の株式について商法(明治三十二年法律第四十八号)の規定により分割又は併合された株式並びに当該劣後特約付社債が株式への転換が可能とされる社債である場合にその転換により発行された株式及びこれについて同法の規定により分割又は併合された株式を含む。以下「取得株式等」という。)又は同項の貸付けにより取得をした貸付債権(以下「取得貸付債権」という。)の全部につきその処分をし、又はその返済を受けるまでの間、当該取得株式等又は取得貸付債権に係る金融機関等に対し、第一項の規定により提出を受けた計画の履行状況につき報告を求め、これを公表するものとする。この場合において、当該報告を公表するときは、第二項ただし書の規定を準用する。
(議決権のある株式の引受けの要件)
第六条 金融再生委員会は、第四条第二項の規定による発行金融機関等である銀行からの申請が発行の時において議決権のある株式の引受けに係るものであるときは、次に掲げる要件のすべてに該当する場合に限り、当該申請に係る同条第三項の承認をすることができる。
一 協定銀行による株式の引受けによりその資本の増強が図られなければ、当該銀行が内外の金融市場において十分な信認を得られず円滑な資金の調達をすることが極めて困難な状況に至ることとなる等により、当該銀行の業務又は我が国における金融機能に著しい障害が生じ、信用秩序の維持又は企業の活動若しくは雇用の状況に甚大な影響を及ぼす等経済の円滑な運営に極めて重大な支障が生ずるおそれがあること。
二 当該銀行の経営管理等を通じた適切な業務の運営の確保及び金融市場における当該銀行の信認の回復等により前号に掲げる事態を避けるために、発行の時において議決権のある株式の協定銀行による引受けが不可欠であること。
三 当該銀行がその財産をもって債務を完済することができない状況にあること等その存続が極めて困難であると認められる場合でなく、かつ、当該株式の引受けに係る取得株式等の処分をすることが著しく困難であると認められる場合でないこと。
四 当該銀行が著しい過少資本の状況にある旨の区分又は特に著しい過少資本の状況にある旨の区分のいずれかに該当すること。
五 当該銀行が特に著しい過少資本の状況にある旨の区分に該当するときは、当該銀行の存続が地域経済にとって必要不可欠である場合その他特に必要と認められる場合であること。
六 前条第一項に規定する経営の健全化のための計画の確実な履行等を通じて、金融再生委員会が定めて公表する次に掲げる方策に関する基準に従ったこれらの方策の実行が見込まれること。
イ 経営の合理化のための方策
ロ 経営責任の明確化のための方策
ハ 株主責任の明確化のための方策
ニ 資金の貸付けその他信用供与の円滑化のための方策
2 前項第六号に規定する基準は、次条第二項第三号に掲げる内容を含むものでなければならない。
(議決権のある株式の引受け以外の株式等の引受け等の要件)
第七条 金融再生委員会は、第四条第二項の規定による発行金融機関等(銀行持株会社等を除く。以下この条において同じ。)からの申請が株式等の引受け等(発行の時において議決権のある株式の引受けを除く。)に係るものであるときは、次に掲げる要件のすべてに該当する場合に限り、当該申請に係る同条第三項の承認をすることができる。
一 協定銀行による株式等の引受け等によりその資本の増強が図られなければ、当該発行金融機関等が内外の金融市場において十分な信認を得られず円滑な資金の調達をすることが極めて困難な状況に至ることとなる等により、当該発行金融機関等の業務又は我が国における金融機能に著しい障害が生じ、信用秩序の維持又は企業の活動若しくは雇用の状況に甚大な影響を及ぼす等経済の円滑な運営に極めて重大な支障が生ずるおそれがあること。
二 当該発行金融機関等がその財産をもって債務を完済することができない状況にあること等その存続が極めて困難であると認められる場合でなく、かつ、当該株式等の引受け等に係る取得株式等又は取得貸付債権の処分をすることが著しく困難であると認められる場合でないこと。
三 第五条第一項に規定する経営の健全化のための計画の確実な履行等を通じて、発行金融機関等の自己資本の充実の状況に係る区分その他の要素を勘案して金融再生委員会が定めて公表する次に掲げる方策に関する基準に従ったこれらの方策の実行が見込まれること。
イ 経営の合理化のための方策
ロ 経営責任の明確化のための方策
ハ 株主責任の明確化のための方策
ニ 資金の貸付けその他信用供与の円滑化のための方策
四 当該発行金融機関等が特に著しい過少資本の状況にある旨の区分に該当するときは、当該発行金融機関等の存続が地域経済にとって必要不可欠である場合その他特に必要と認められる場合であること。
五 当該発行金融機関等が健全な自己資本の状況にある旨の区分に該当するときは、次に掲げるいずれかの場合であること。
イ 当該発行金融機関等が、経営の状況が悪化している金融機関等との合併、経営の状況が悪化している金融機関等からの営業若しくは事業の譲受け又は経営の状況が悪化している金融機関等の株式の取得(当該金融機関等を子会社とするものに限る。)を行うものであって、当該合併、営業若しくは事業の譲受け又は株式の取得の円滑な実施のため、協定銀行による株式等の引受け等が不可欠である場合
ロ 急激かつ大幅な信用供与の収縮が相次いで生じており、又は相次いで生ずるおそれがある状況であり、かつ、これらの状況を改善し、又は回避するために協定銀行による株式等の引受け等が不可欠である場合その他特にやむを得ない事由がある場合
2 前項第三号に規定する基準は、次に掲げる内容を含むものでなければならない。
一 健全な自己資本の状況にある旨の区分に該当する発行金融機関等が行うべき事項は、次に掲げる事項とする。
イ 役職員数及び経費の抑制等により経営の合理化を行うこと。
ロ 利益の流出を抑制すること。
二 過少資本の状況にある旨の区分に該当する発行金融機関等が行うべき事項は、次に掲げる事項とする。
イ 職員数及び経費の抑制等により経営の合理化を行うこと。
ロ 役員数の削減等の経営体制の刷新を行うこと。
ハ 配当及び役員に対する賞与の支給等を抑制すること。
ニ 株式等の引受け等により既に発行されている株式に係る株主を不当に利することとなる場合においては、資本の減少等により株式の一株当たりの価値の適正化を行うこと。
ホ 早期是正措置を確実に履行すること。
三 著しい過少資本の状況にある旨の区分又は特に著しい過少資本の状況にある旨の区分のいずれかに該当する発行金融機関等が行うべき事項は、次に掲げる事項とする。
イ 代表権のある役員の退任、給与体系の見直し並びに役職員数及び支店等の削減、海外営業拠点の廃止等による組織及び業務の見直しを原則としてすべて実行すること等により経営の抜本的な改革を行うこと。
ロ 配当及び役員に対する賞与の支給等を停止すること。
ハ 発行金融機関等の役員等の職務上の責任を明確にするための措置を効果的に遂行するために必要な体制の整備を行うこと。
ニ 株式等の引受け等により既に発行されている株式に係る株主を不当に利することとなる場合においては、資本の減少等により株式の一株当たりの価値の適正化を行うこと。
ホ 早期是正措置を確実に履行すること。
(合併等を行う金融機関及び銀行持株会社等に係る株式等の引受け等の要件)
第八条 金融再生委員会は、合併等(預金保険法第五十九条第一項に規定する資金援助に係る同項の合併等又はこれに準ずるものとして金融再生委員会規則で定める金融機関との合併、金融機関からの営業若しくは事業の譲受け若しくは金融機関の株式の取得若しくは資産の譲受けをいう。第一号及び第三号において同じ。)を行う金融機関又は銀行持株会社等からの第四条第二項の規定による株式等の引受け等に係る申請(発行の時において議決権のある株式の引受けに係る申請を除く。)については、次に掲げる要件のすべてに該当する場合に限り、当該申請に係る同条第三項の承認をすることができる。
一 当該合併等により当該金融機関又は当該銀行持株会社等及びその子会社である金融機関の自己資本の充実の状況が悪化したこと。
二 協定銀行による株式等の引受け等により当該金融機関又は当該銀行持株会社等及びその子会社である金融機関の資本の増強が図られなければ、信用秩序の維持又は経済の円滑な運営に極めて重大な支障が生ずるおそれがあること。
三 協定銀行による株式等の引受け等が、当該金融機関又は当該銀行持株会社等及びその子会社である金融機関の自己資本の充実の状況等財務内容等に照らし合併等の円滑な実施のために必要な範囲を超えないものとして金融再生委員会が定めて公表する基準に適合するものであること。
四 預金保険法第五十九条第一項に規定する資金援助に係る同項の合併等に準ずるものとして金融再生委員会規則で定める金融機関との合併、金融機関からの営業若しくは事業の譲受け又は金融機関の株式の取得若しくは資産の譲受けを行う金融機関又は銀行持株会社等については、当該金融再生委員会規則で定める合併等に係る他の金融機関において前条第一項第三号イからハまでに掲げる方策が実行されていること又はその実行が見込まれること。
(資本の減少等を行う場合の特例)
第九条 第四条第二項の規定により株式の発行の申請をした銀行が、当該株式の発行に先立って資本の減少を行うこと等既に発行されている株式の一株当たりの価値の適正化を行うための措置を含む第五条第一項に規定する経営の健全化のための計画を金融再生委員会に提出したときは、金融再生委員会は、当該申請に係る第四条第三項の承認において、当該措置を実施することを条件とすることができる。
2 前項の規定により資本の減少の実施を条件とする第四条第三項の承認がなされた場合においては、当該資本の減少について、預金者その他政令で定める債権者に対する商法第三百七十六条第二項において準用する同法第百条第一項の規定による催告は、することを要しない。
3 第一項の規定により資本の減少の実施を条件とする第四条第三項の承認がなされた場合であって、次に掲げる要件のすべてに該当するときは、当該資本の減少について、商法第三百七十六条第二項の規定は、適用しない。
一 当該資本の減少に係る株主総会の決議において、当該承認に係る株式の発行価額の総額について払込みが行われたことを当該資本の減少の効力が生ずることの条件としたこと。
二 当該承認に係る株式の発行価額の総額(資本に組み入れない額を除く。)が当該承認の条件とされた資本の減少の額を上回ること。
(協定の締結等)
第十条 機構は、預金保険法附則第七条第一項の規定により同項の協定を締結した銀行と、株式等の引受け等並びに取得株式等及び取得貸付債権の処分等の業務の委託に関する協定(以下「協定」という。)を締結しなければならない。
2 機構は、協定において、協定銀行が次に掲げる事項を実施すべき旨を定めなければならない。
一 協定銀行は、第四条第三項の承認に係る株式等の引受け等を行うこと。
二 協定銀行は、前号の規定による株式等の引受け等を行ったときは、速やかに、その内容を機構に報告すること。
三 協定銀行は、第一号の規定により取得した株式に係る議決権その他の株主としての権利を行使しようとするときは、当該権利の行使の内容について機構の承認を受けること。ただし、機構を代理人として当該権利を行使するとき及び機構がその承認を要しないものとして定めた事項について当該権利を行使するときは、この限りでないこと。
四 協定銀行は、取得株式等である株式の発行に係る銀行が協定銀行の子会社となったときは、機構の指導又は助言を受けて、当該銀行が第五条第一項の規定により提出した計画を適確に履行できるようその経営管理を行うこと。
五 協定銀行は、取得株式等である株式の発行に係る銀行が協定銀行の子会社となったときは、当該銀行が子会社となった日から一年以内に、当該銀行が子会社でなくなるよう、その保有する株式の譲渡その他の処分を行うこと。ただし、やむを得ない事情によりこの期限内に当該処分を行うことができない場合には、機構の承認を受けて、一年ごとに二回までを限り、この期限を延長することができること。
六 協定銀行は、取得株式等及び取得貸付債権については、前号に定めるもののほか、できる限り早期に譲渡その他の処分を行うよう努めること。
七 協定銀行は、取得株式等又は取得貸付債権について譲渡その他の処分を行おうとするときは、機構の承認を受けること。
八 協定銀行は、前号の承認を受けて同号の取得株式等又は取得貸付債権について譲渡その他の処分を行ったときは、速やかに、その内容を機構に報告すること。
3 機構は、協定を締結したときは、直ちに、その協定の内容を金融再生委員会に報告しなければならない。
4 機構は、第二項第五号ただし書の承認を行おうとするときは、あらかじめ金融再生委員会の承認を得なければならない。
第三章 預金保険機構の業務の特例等
(資金の貸付け及び債務の保証)
第十一条 機構は、協定銀行が協定の定めによる株式等の引受け等のために必要とする資金その他の協定の定めによる業務の円滑な実施のために必要とする資金について、その資金の貸付け又は協定銀行によるその資金の借入れに係る債務の保証を行うことができる。
2 機構は、協定において、協定銀行が前項に規定する債務の保証の対象となる資金の借入れに関する契約の締結をしようとするときは、当該締結をしようとする契約の内容について機構の承認を受けるべき旨を定めなければならない。
3 機構は、協定銀行との間で第一項の貸付け又は債務の保証に係る契約を締結したときは、直ちに、その契約の内容を金融再生委員会に報告しなければならない。
(損失の補てん)
第十二条 機構は、協定銀行に対し、協定の定めによる業務の実施により協定銀行に生じた損失の額として政令で定めるところにより計算した金額の範囲内において、当該損失の補てんを行うことができる。
(利益の納付及び収納)
第十三条 機構は、協定において、協定銀行に協定の定めによる業務により生じた利益の額として政令で定めるところにより計算した額があるときは、毎事業年度、当該利益の額に相当する金額を機構に納付すべき旨を定めなければならない。
2 機構は、前項の規定に基づき協定銀行から納付される金銭を収納することができる。
(報告の徴求)
第十四条 機構は、第四条第一項及び前三条の規定による業務(以下「金融機能早期健全化業務」という。)を行うため必要があるときは、協定銀行に対し、協定の実施又は財務の状況に関し報告を求めることができる。
(区分経理)
第十五条 機構は、金融機能早期健全化業務に係る経理については、その他の経理と区分し、特別の勘定(以下「金融機能早期健全化勘定」という。)を設けて整理しなければならない。
2 機構は、協定において、協定銀行の協定の定めによる業務に係る経理については、その他の経理と区分し、特別の勘定を設けて整理すべき旨を定めなければならない。
(借入金及び預金保険機構債券)
第十六条 機構は、金融機能早期健全化業務を行うため必要があると認めるときは、政令で定める金額の範囲内において、金融再生委員会の認可を受けて、日本銀行、金融機関その他の者から資金の借入れ(借換えを含む。)をし、又は預金保険機構債券(以下「債券」という。)の発行(債券の借換えのための発行を含む。)をすることができる。
2 日本銀行は、日本銀行法(平成九年法律第八十九号)第四十三条第一項の規定にかかわらず、機構に対し、前項の資金の貸付けをすることができる。
3 農林中央金庫は、農林中央金庫法(大正十二年法律第四十二号)第十六条の規定にかかわらず、機構に対し、第一項の資金の貸付けをすることができる。
4 第一項の規定により発行される債券については、これを預金保険法第四十二条第三項の規定により発行される債券とみなして、同条第四項から第八項までの規定を適用する。
(政府保証)
第十七条 政府は、法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律(昭和二十一年法律第二十四号)第三条の規定にかかわらず、国会の議決を経た金額の範囲内において、機構の前条第一項の借入れ又は債券に係る債務の保証をすることができる。
(金融機能早期健全化勘定の廃止)
第十八条 機構は、金融機能早期健全化業務の終了の日として政令で定める日において、金融機能早期健全化勘定を廃止するものとする。
2 機構は、金融機能早期健全化勘定の廃止の際、金融機能早期健全化勘定に残余があるときは、当該残余の額を国庫に納付しなければならない。
第四章 雑則
(預金保険法の適用)
第十九条 この法律により機構の業務が行われる場合には、この法律の規定によるほか、預金保険法を適用する。この場合において、同法第二条第三項中「この法律」とあるのは「この法律又は金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律(平成十年法律第百四十三号。以下「金融機能早期健全化緊急措置法」という。)」と、「債権者」とあるのは「債権者(金融機能早期健全化緊急措置法の適用にあつては、貯金に係る債権者を含む。)」と、同法第十五条第五号中「事項」とあるのは「事項(金融機能早期健全化緊急措置法の規定による機構の業務に係るものを除く。)」と、同法第三十五条第一項中「以下同じ」とあるのは「第三十七条第一項を除き、以下同じ」と、同法第三十七条第一項中「金融機関」とあるのは「金融機関(金融機能早期健全化緊急措置法の規定による業務を行う場合にあつては、金融機能早期健全化緊急措置法第二条第一項に規定する金融機関等。次項において同じ。)」と、同法第四十四条、第四十五条第二項及び第四十六条第一項中「この法律」とあるのは「この法律又は金融機能早期健全化緊急措置法」と、同法第五十一条第二項中「業務」とあるのは「業務(金融機能早期健全化緊急措置法第十四条に規定する金融機能早期健全化業務を除く。)」と、同法第九十一条第一号中「この法律」とあるのは「この法律又は金融機能早期健全化緊急措置法」と、「及び大蔵大臣」とあるのは「、大蔵大臣、労働大臣又は農林水産大臣」と、「認可を受けなければならない」とあるのは「認可を受け、又はその承認を得なければならない」と、「認可を受けなかつた」とあるのは「認可を受けず、又はその承認を得なかつた」と、同条第三号中「第三十四条に規定する業務」とあるのは「第三十四条に規定する業務及び金融機能早期健全化緊急措置法の規定による業務」とする。
(経営健全化計画の履行を確保するための措置等)
第二十条 金融再生委員会は、金融機関等が第三条第二項各号の規定に違反して資産の査定等を行った場合には、銀行法その他これに類する法令の定めるところにより、業務の一部を停止その他の監督上必要な措置を命ずることができる。
2 金融再生委員会は、協定銀行が取得株式等又は取得貸付債権の全部につきその処分をし、又はその返済を受けるまでの間、当該取得株式等又は取得貸付債権に係る金融機関等に対し、第五条第一項の規定により提出を受けた計画の履行を確保するため、銀行法その他これに類する法令の定めるところにより、業務の一部の停止その他の監督上必要な措置を命ずることができる。
(権限の委任)
第二十一条 金融再生委員会は、第三条第二項及び第三項並びに前条の規定による権限(金融再生委員会規則で定めるものを除く。)を金融監督庁長官に委任する。
(政令への委任等)
第二十二条 この法律に規定するもののほか、この法律を実施するため必要な事項は、政令で定める。
2 第二条第四項から第六項までの規定における主務省令は、総理府令・労働省令・農林水産省令とする。
第五章 罰則
第二十三条 第四条第七項、第十条第三項又は第十一条第三項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした機構の役員又は職員は、五十万円以下の罰金に処する。
第二十四条 次の各号の一に該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
一 第五条第一項に規定する計画であって虚偽の事実を含むものを提出した者
二 第五条第四項又は第十四条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
2 法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者が、その法人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対しても、同項の刑を科する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して十日を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(経過措置)
第二条 金融再生委員会設置法(平成十年法律第百三十号)の施行の日の前日までの間におけるこの法律の規定の適用については、「金融再生委員会」とあるのは、「内閣総理大臣」とする。この場合において、金融再生委員会規則により定めるべき事項は、総理府令で定める。
2 金融再生委員会設置法の施行の日の前日までに前項の規定により内閣総理大臣がした承認その他の行為については、これを、この法律の相当規定に基づいて金融再生委員会がした承認その他の行為とみなす。
第三条 金融システム改革のための関係法律の整備等に関する法律(平成十年法律第百七号)の施行の日の前日までの間における第二条第二項及び第八項の規定の適用については、同条第二項中「及び長期信用銀行法(昭和二十七年法律第百八十七号)第二条に規定する長期信用銀行」とあるのは「、長期信用銀行法(昭和二十七年法律第百八十七号)第二条に規定する長期信用銀行及び外国為替銀行法(昭和二十九年法律第六十七号)第二条第一項に規定する外国為替銀行」と、同条第八項中「銀行法第二条第八項に規定する子会社又は同項の規定により子会社とみなされる会社」とあるのは「銀行法第五十二条の二第二項に規定する子会社又は同条第三項の規定により子会社とみなされる会社」とする。
第四条 平成十年度において政府が第十七条の規定により第十六条第一項の借入れ又は債券に係る債務の保証をする場合及び金融機能再生緊急措置法第六十六条の規定により金融機能再生緊急措置法第六十五条第一項の借入れ又は債券に係る債務の保証をする場合には、十兆円の範囲内において、これをすることができる。ただし、第十七条及び金融機能再生緊急措置法第六十六条の規定に基づく国会の議決がなされた場合には、この限りでない。
第五条 金融機能再生緊急措置法附則第四条の規定による廃止前の金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律(平成十年法律第五号。以下この条において「旧金融機能安定化法」という。)第二十七条の規定により旧金融機能安定化法第十一条第一項の借入れ又は債券に係る債務について政府がした保証は、金融機能再生緊急措置法第六十六条の規定により金融機能再生緊急措置法第六十五条第一項の借入れ又は債券に係る債務について政府がしたものとみなす。
2 機構が、金融機能再生緊急措置法附則第五条の規定による業務を行う場合には、同条の規定にかかわらず、当該業務を金融機能再生緊急措置法第六十五条第一項の金融再生業務とみなして、金融機能再生緊急措置法第六十五条及び第六十六条の規定を適用する。
(預金保険法の一部を改正する法律の一部改正)
第六条 預金保険法の一部を改正する法律(平成十年法律第百三十三号)の一部を次のように改正する。
附則第九条第二項中「特別協定及び」を「特別協定、」に改め、「特定整理回収協定」の下に「及び金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律(平成十年法律第百四十三号)第十条第一項に規定する協定」を加える。
内閣総理大臣 小渕恵三
大蔵大臣 宮沢喜一
農林水産大臣 中川昭一
労働大臣 甘利明