(決済債務の保護)
第六十九条の二 為替取引その他の金融機関が行う資金決済に係る取引として政令で定める取引に関し金融機関が負担する債務(外国通貨で支払が行われるものを除き、金融機関その他の金融業を営む者で政令で定める者以外の者の委託に起因するものその他政令で定めるものに限る。以下この章において「決済債務」という。)であつて、かつ、支払対象決済用預金の払戻しを行う場合に消滅するもの以外のもの(以下この項及び次条第一項において「特定決済債務」という。)については、これを支払対象決済用預金に係る債務と、特定決済債務に係る債権を支払対象決済用預金に係る債権と、特定決済債務に係る債権者を預金者と、特定決済債務の額を支払対象決済用預金の額と、特定決済債務の弁済を支払対象決済用預金の払戻しとそれぞれみなして、この法律の規定(第五十八条の二、この章及び第七十三条の規定並びに第百二十七条の規定及び当該規定に係る罰則を除く。)を適用する。この場合において、第五十一条の二第一項中「次に掲げる要件のすべてに該当する預金(外貨預金その他政令で定める預金を除く。以下「決済用預金」という。)に係る保険料」とあるのは「特定決済債務に係る保険料」と、第五十四条の二第一項中「決済用預金(他人の名義をもつて有するものその他の政令で定める決済用預金を除く。以下「支払対象決済用預金」という。)に係る保険金」とあるのは「特定決済債務に係る保険金」と、「のうち元本の額」とあるのは「の額」と、同条第二項中「その有する支払対象決済用預金」とあるのは「その有する特定決済債務に係る債権」と、第五十五条の二第四項中「預金等」とあるのは「特定決済債務」と、第五十八条の三第一項中「支払対象決済用預金」とあるのは「特定決済債務」とする。
2 決済債務が一般預金等の払戻しを行う場合に消滅するものであるときは、当該決済債務の額に相当する金額の当該一般預金等については、決済用預金とみなす。
(決済債務の弁済のための資金の貸付け)
第六十九条の三 機構は、次に掲げる者から決済債務の弁済(第五十四条の二第一項の規定及び同条第二項において準用する第五十四条第三項の規定により計算した保険金の額に対応する支払対象決済用預金又は特定決済債務につき行うものに限る。)のために必要とする資金の貸付けの申込みを受けた場合において、必要があると認めるときは、委員会の議決を経て、当該決済債務に係る第五十四条の二第一項の規定及び同条第二項において準用する第五十四条第三項の規定により計算した保険金の額の合計額に達するまでを限り、当該申込みに係る貸付けを行う旨の決定をすることができる。
一 第七十四条第一項又は第二項の規定により管理を命ずる処分を受けた金融機関
二 破産の宣告を受けた者(当該破産の宣告を受ける前において金融機関であつた者に限る。)
四 会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第三十条第一項又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第二十二条第一項の規定による保全管理人による管理を命ずる処分を受けた破綻金融機関
五 民事再生法第六十四条第一項の規定による管財人による管理を命ずる処分を受けた破綻金融機関
六 民事再生法第七十九条第一項の規定による保全管理人による管理を命ずる処分を受けた破綻金融機関
七 商法第三百八十六条第一項(信用金庫法第六十二条、協同組合による金融事業に関する法律第六条の二第四項及び労働金庫法第六十六条において準用する場合を含む。次条において同じ。)の規定による商法第三百八十六条第一項第十一号の管理の命令を受けた破綻金融機関
八 特別清算開始の命令を受けた者(当該命令に係る解散をする前において金融機関であつた者に限る。)
2 第六十四条第三項の規定は前項の規定による決定をしたときについて、同条第四項の規定は前項の規定により貸付けを行う旨の決定をしたときについて、それぞれ準用する。この場合において、同条第三項中「を当事者とする合併等に係る」とあるのは、「に係る」と読み替えるものとする。
3 第一項の規定により次の各号に掲げる者に対してされた貸付けは、当該金融機関に係る破産手続、更生手続、再生手続、整理手続又は特別清算手続における機構以外の債権者との関係においては、当該各号に定める決定より前にされたものとみなす。
二 第一項第三号に掲げる破綻金融機関 当該更生手続開始の決定
三 再生手続開始の決定を受けた破綻金融機関 当該再生手続開始の決定
四 整理開始の命令を受けた破綻金融機関 当該整理開始の命令
五 第一項第八号に掲げる者 当該特別清算開始の命令
4 第一項の決定に基づく資金の貸付けに要すると見込まれる費用は、第六十四条第二項の適用については、同項の資金援助に要すると見込まれる費用とみなす。
5 第一項第二号又は第八号に掲げる者は、同項の貸付けに係るこの法律の適用については、金融機関とみなす。
(決済債務に係る破産法等の特例)
第六十九条の四 決済債務を負担する金融機関及び決済債権者(当該決済債務に係る債権を有し、かつ、当該金融機関に対して他の決済債務を負担する他の金融機関(当該他の金融機関から当該決済債務に係る債権を取得し、又は当該他の決済債務を引き受けた者を含む。)をいう。以下この項において同じ。)が、相互に負担する決済債務を継続的に相殺することによりその全部又は一部を消滅させることを内容とする契約を当該金融機関に係る保険事故が発生する前に締結している場合において、当該契約の対象となる決済債務が当該金融機関に係る支払の停止等(支払の停止又は破産、更生手続開始、再生手続開始、整理開始若しくは特別清算開始の申立てをいう。以下この項において同じ。)より後に生じたときであつて当該金融機関に係る前条第一項(第百二十七条において準用する場合を含む。)の規定による貸付けを行う旨の決定があつたときは、当該決済債権者は、破産法第百四条(商法第四百三条第一項及び第四百五十六条第一項において準用する場合を含む。)、会社更生法第四十九条(金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第三十五条第一項において準用する場合を含む。)及び民事再生法第九十三条の規定にかかわらず、その有する債権に係る当該金融機関が負担する次の各号に掲げる決済債務をその負担する当該各号に定める決済債務と相殺することができる。
一 当該支払の停止等より前に生じた決済債務 当該支払の停止等から当該支払の停止等に係る破産宣告、更生手続開始の決定、再生手続開始の決定、整理開始の命令若しくは特別清算開始の命令(以下この号において「破産宣告等」という。)までの間に生じた当該金融機関に対して負担する決済債務(当該支払の停止等より前に生じた原因に基づくものを除く。)又は当該破産宣告等より後に生じた当該金融機関に対して負担する決済債務
二 当該支払の停止等より後に生じた決済債務 当該金融機関に対して負担する決済債務
2 民法第六百五十三条の規定は、決済債務に係る当該金融機関が締結している委任契約については、適用しない。
3 商法第三百八十六条第一項の規定による同項第一号の処分を受けた破綻金融機関に対し前条第一項の規定による資金の貸付けを行う旨の決定があるときは、当該処分にかかわらず、裁判所は、当該破綻金融機関の申立てにより、同項に規定する決済債務の弁済を許可することができる。
4 特別清算開始の命令を受けた破綻金融機関に対し前条第一項の規定による資金の貸付けを行う旨の決定があるときは、商法第四百二十三条第一項及び第四百三十八条第一項の規定にかかわらず、裁判所は、当該破綻金融機関の申立てにより、前条第一項に規定する決済債務の弁済を許可することができる。
5 裁判所は、前二項の許可と同時に、弁済を行う決済債務の種類、弁済の限度額及び弁済をする期間(前項の場合においては、当該期間の末日は、商法第四百四十二条第一項において準用する同法第二百三十二条第一項本文の通知を行う日より前の日でなければならないものとする。)を定めなければならない。
6 裁判所は、前項の規定により、弁済を行う決済債務の種類、弁済の限度額及び弁済をする期間を定めるときは、あらかじめ、機構の意見を聴かなければならない。