(緊急性の認定)
第六十八条 大蔵大臣は、第六十五条の規定による報告を受けた場合において、当該報告に係る合併(金融機関の合併及び転換に関する法律第三条第二号から第四号までの規定によるものを除く。)又は営業譲渡等を緊急に行わなければ機構の資金援助による預金者等の保護に重大な悪影響を及ぼし、国民経済の健全な発展に支障を及ぼすおそれがあると認めるときは、当該合併又は営業譲渡等を緊急に行う必要がある旨の認定(以下「緊急性の認定」という。)を行うとともに、当該合併又は営業譲渡等を行うべき期限を定めるものとする。
2 大蔵大臣は、緊急性の認定を行つた場合には、その旨及び当該緊急性の認定に係る合併又は営業譲渡等を行うべき期限を、当該合併又は営業譲渡等の当事者となる全部の金融機関に対し、通知するものとする。
3 大蔵大臣は、信用協同組合を当事者とする合併又は営業譲渡等について緊急性の認定を行うときは、都道府県知事に協議しなければならない。
(株主等の異議の申出等)
第六十九条 大蔵大臣は、緊急性の認定を行おうとするときは、あらかじめ、当認緊急性の認定に係る合併又は営業譲渡等の当事者となる金融機関(営業の一部を譲り受ける銀行等で定款に当該営業の一部の譲受けにつき株主総会の決議を要する旨の定めがないものを除く。)の株主(信用金庫にあつては会員とし、信用協同組合にあつては組合員とし、労働金庫にあつては労働金庫法(昭和二十八年法律第二百二十七号)第十三条第一項に規定する個人会員(第六項において「個人会員」という。)を除く会員とする。)は一定の期間内に当該合併又は営業譲渡等について異議を申し出ることができる旨を公告し、当該公告をした旨を当該金融機関に通知しなければならない。
3 大蔵大臣は、銀行等の株主に対し第一項の規定による公告をするときは、法務大臣の同意を得なければならない。
4 第一項の規定による通知を受けた金融機関の取締役又は理事は、当該通知に係る合併又は営業譲渡等の当事者となる各金融機関の貸借対照表(救済金融機関にあつては、当該各金融機関の貸借対照表及び当該合併又は営業譲渡等に係る資金援助に関する契約の内容を記載した書面)及び当該合併又は営業譲渡等の契約書を本店又は主たる事務所に備えて置かなければならない。
5 商法第四百八条ノ二第二項の規定は、前項の場合について準用する。
6 大蔵大臣は、第一項の規定による公告に係る金融機関の発行済株式の総数の百分の二十以上に当たる株式の数を保有する株主又は総会員(信用協同組合にあつては総組合員とし、労働金庫にあつては個人会員を除く。)の百分の二十以上の会員(信用協同組合にあつては組合員とし、労働金庫にあつては個人会員を除く。)が、異議の申出をしたときは、緊急性の認定を行うことができない。
(合併又は営業譲渡等の実施)
第七十条 緊急性の認定に係る合併又は営業譲渡等の当事者である金融機関(以下「緊急性の認定に係る金融機関」という。)は、第六十八条第一項の規定により大蔵大臣が定める期限までに、当該合併又は営業譲渡等を行わなければならない。
2 緊急性の認定に係る金融機関が合併を行うときは、合併後存続する金融機関(以下「存続金融機関」という。)については変更の登記を、合併により消滅する金融機関(以下「消滅金融機関」という。)については解散の登記をしなければならない。
3 商法第四百十四条第二項の規定は、前項の場合について準用する。
4 第二項の登記の申請書に添付すべき書類については、政令で定める。
(合併の効力発生及び効果)
第七十一条 緊急性の認定に係る金融機関の合併は、存続金融機関が、その本店又は主たる事務所の所在地において、合併による変更の登記をすることによつてその効力を生ずる。ただし、第七十四条及び第七十六条の規定に係る手続を行うために必要な範囲内において、存続金融機関はいまだ合併を行つていないものとみなし、消滅金融機関はなお存続しているものとみなす。この場合において、当該手続に必要な費用は、存続金融機関が負担しなければならない。
2 存続金融機関は、消滅金融機関の権利義務を承継する。
(信用金庫等の特例)
第七十二条 緊急性の認定に係る信用金庫等の合併が行われた場合には、消滅金融機関の地区、会員若しくは組合員又は事務所は、当該信用金庫等の定款の定めにかかわらず、政令で定める期間に限り、当該信用金庫等の地区、会員若しくは組合員又は事務所とみなす。
2 信用金庫等は、当該信用金庫等の定款の定めにより行うことができない業務を緊急性の認定に係る事業の全部又は一部の譲受けにより承継した場合には、当該定款の定めにかかわらず、政令で定める期間に限り、当該業務を継続することができる。
3 緊急性の認定に係る信用金庫等の合併が行われた場合には、当該合併後存続する信用金庫等の会員又は組合員は、政令で定める期間に限り、その持分を譲渡することができない。
(債権者の異議)
第七十三条 存続金融機関又は緊急性の認定に係る営業の全部若しくは一部の譲受けを行つた金融機関は、合併又は営業の全部若しくは一部の譲受けを行つたときは、直ちに、合併又は営業譲渡等に異議のある債権者は一定の期間内に異議を述べるべき旨を公告し、かつ、預金者等その他政令で定める債権者以外の知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。
2 前項の期間は、一月以上四十五日以内としなければならない。
3 債権者が第一項の期間内に異議を述べなかつたときは、当該債権者は、当該合併又は営業譲渡等を承認したものとみなす。
4 債権者が第一項の期間内に異議を述べたときは、当該金融機関は、弁済し、又は相当の担保を提供し、若しくは債権者に弁済を受けさせることを目的として信託業務を営む他の金融機関若しくは信託会社に相当の財産を信託しなければならない。
5 第一項の規定により行う公告は、官報及び時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載してしなければならない。
6 第一項の金融機関は、同項及び第四項の手続を終了したときは、政令で定めるところにより、速やかに、その旨を大蔵大臣に報告しなければならない。
(株主総会等の承認)
第七十四条 緊急性の認定に係る金融機関(営業の一部を譲り受けた銀行等及び事業の全部又は一部を譲り受けた信用協同組合で定款に当該営業の譲受けにつき第六十六条第二項に規定する株主総会等(以下この項において「株主総会等」という。)の決議を要する旨の定めがないものを除く。以下この条において同じ。)は、合併又は営業譲渡等を行つた日から四十五日以内に合併又は営業譲渡等について株主総会等の承認の決議を得なければならない。
2 銀行等における前項の承認の決議については、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める決議の場合の例による。
一 合併又は営業の全部の譲渡若しくは譲受けについての承認(次号に掲げる場合を除く。)商法第三百四十三条の決議
二 存続金融機関の定款に株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定めがあり消滅金融機関の定款にその定めがない場合における当該消滅金融機関の合併についての承認 商法第三百四十八条第一項の決議
三 営業の一部の譲受けについての承認 定款の定めによる決議
3 信用金庫等における第一項の承認の決議については、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める決議の場合の例による。
一 合併又は事業の全部の譲渡についての承認 信用金庫法(昭和二十六年法律第二百三十八号)第四十八条、中小企業等協同組合法第五十三条又は労働金庫法第五十三条の決議
二 信用金庫又は労働金庫の事業の全部又は一部の譲受けについての承認(次号に掲げる場合を除く。)信用金庫法第四十七条第一項又は労働金庫法第五十二条第一項の決議
三 信用金庫若しくは労働金庫の定款に事業の全部若しくは一部の譲受けの決議につき特別の定めがある場合又は信用協同組合の定款に事業の全部若しくは一部の譲受けにつき総会若しくは総代会の決議を要する旨の定めがある場合における当該信用金庫等の事業の全部又は一部の譲受けについての承認 当該定款の定めによる決議
4 大蔵大臣は、災害その他やむを得ない理由により、金融機関が第一項に規定する期限までに同項の承認の決議を得ることができないと認めるときは、政令で定めるところにより、その理由のやんだ日から四十五日以内に限り、当該期限を延長することができる。
5 銀行等は、第一項の承認の決議を行う場合には、商法第二百三十二条の規定による通知及び公告において、合併又は営業譲渡等の契約書(存続金融機関又は営業の全部若しくは一部を譲り受けた銀行等にあつては、合併又は営業譲渡等の契約書及び資金援助に関する契約書)の要領をも示さなければならない。
6 商法第三百五十条及び第四百八条第五項の規定は、第二項第二号に掲げる場合について準用する。
7 信用金庫等が第一項の承認の決議を行う場合には、同項の総会又は総代会の招集は、合併又は営業譲渡等の契約書(存続金融機関又は事業の全部若しくは一部を譲り受けた信用金庫等にあつては、合併又は営業譲渡等の契約書及び資金援助に関する契約書)の要領をも示してしなければならない。
8 合併後存続する信用金庫等は、当該合併について第一項の承認の決議を得たときは、併せて、総会又は総代会において当該合併に必要な事項に関し定款を変更することができる。
9 緊急性の認定に係る金融機関の取締役又は理事は、第一項の株主総会等の会日の二週間前から、合併又は営業譲渡等を行つた各金融機関の貸借対照表(存続金融機関又は営業の全部若しくは一部を譲り受けた金融機関にあつては、当該各金融機関の貸借対照表及び資金援助に関する契約の内容を記載した書面)を本店又は主たる事務所に備えて置かなければならない。
10 商法第四百八条ノ二第二項の規定は、前項の場合について準用する。
11 緊急性の認定に係る金融機関は、第一項に規定する期限(当該期限が第四項の規定により延長された場合には、その延長後の期限)までに、第一項の承認の決議を得られなかつたときは、直ちに、その旨を大蔵大臣に報告し、かつ、機構に通知しなければならない。
(事業の全部の譲渡を行つた信用金庫又は労働金庫の解散)
第七十五条 緊急性の認定に係る事業の全部の譲渡を行つた信用金庫又は労働金庫は、第七十三条の手続が終了し、かつ、当該事業の全部の譲渡に係る当事者である金融機関の全部の前条第一項の承認の決議が得られることにより解散する。
(株券の提出等)
第七十六条 緊急性の認定に係る合併で当該合併により株式の併合があつたものを行つた銀行等は、当該合併の当事者である銀行等の全部の第七十四条第一項の承認の決議が得られたときは、直ちに、株式の併合があつた旨、一定の期間内に株券及び端株券を当該銀行等に提出すべき旨並びに第三項において準用する商法第二百九十三条ノ三ノ三第二項の規定による定めがあるときはその内容を公告し、かつ、株主及び株主名簿に記載のある質権者には各別にこれを通知しなければならない。
3 商法第二百九十三条ノ三ノ三第二項の規定は、第一項の手続について準用する。
(合併に反対する株主の株式買取請求権)
第七十七条 緊急性の認定に係る合併で当該合併の当事者である銀行等の全部の第七十四条第一項の承認の決議が得られたものを行つた銀行等の株主で、同項の株主総会に先だつて当該銀行等に対し書面をもつて合併に反対の意思を通知し、かつ、当該株主総会において合併の承認に反対したものは、存続金融機関に対し、その者の所有する株式を、合併がなかつたならばその株式又はその者の所有していた消滅金融機関の株式の有していたであろう公正な価格で買い取るべき旨の請求をすることができる。
2 商法第二百四十五条ノ三及び第二百四十五条ノ四後段並びに非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第百二十六条第一項及び第百三十二条ノ六の規定は、前項の請求について準用する。
3 第一項の規定による株式の買取りは、商法第二百十条第四号の買取りとみなす。
(営業譲渡等に反対する株主の株式買取請求権)
第七十八条 緊急性の認定に係る営業譲渡等で当該営業譲渡等の当事者である銀行等の全部の第七十四条第一項の承認の決議が得られたものを行つた銀行等(営業の一部を譲り受けたものを除く。)の株主で、同項の株主総会に先だつて当該銀行等に対し書面をもつて営業譲渡等に反対の意思を通知し、かつ、当該株主総会において営業譲渡等の承認に反対したものは、当該銀行等に対し、その者の所有する株式を、営業譲渡等がなかつたならばその株式の有していたであろう公正な価格で買い取るべき旨の請求をすることができる。
2 前条第二項及び第三項の規定は、前項の場合について準用する。
(承認の決議を得られなかつた場合の合併又は営業譲渡等の効力等)
第七十九条 大蔵大臣は、緊急性の認定に係る金融機関から第六十六条第一項の決議が得られなかつた旨の同項若しくは第七十四条第十一項の規定による報告があつたとき又は同項に規定する期限までに同条第一項の承認の決議が得られなかつたことを知つたときは、当該決議が得られなかつた旨を公告しなければならない。
2 合併についての前項の規定による公告がされたときは、当該合併は合併の時にさかのぼつて効力を失う。ただし、存続金融機関、その株主(信用金庫又は労働金庫にあつては会員とし、信用協同組合にあつては組合員とする。)及び第三者の間に生じた権利義務に影響を及ぼさない。
3 大蔵大臣は、合併についての第一項の規定による公告をしたときは、存続金融機関については変更の登記を、消滅金融機関については回復の登記を各金融機関の本店又は主たる事務所及び支店又は従たる事務所の所在地の登記所に嘱託するものとする。
4 営業譲渡等についての第一項の規定による公告がされたときは、当該営業譲渡等は営業譲渡等の時にさかのぼつて効力を失う。ただし、営業の全部又は一部を譲り受けた金融機関及び第三者の間に生じた権利義務に影響を及ぼさない。
5 第二項又は前項の規定により合併又は営業譲渡等が効力を失つたときは、破 綻金融機関の債務及び財産については、当該合併又は営業譲渡等が行われた時における当該破 綻金融機関の債務及び財産の状況に回復するものとする。ただし、合併又は営業譲渡等の時において破 綻金融機関が負担していた債務の額が第一項の規定による公告がされるまでの間に減少したときは、その減少した額について、救済金融機関は破 綻金融機関に対し債権を取得する。
6 機構は、第二項又は第四項の規定により合併又は営業譲渡等が効力を失つたときは、これにより救済金融機関が被つた損失を補てんするものとする。
(商法等の準用)
第八十条 緊急性の認定に係る合併については、商法第百四条(銀行等にあつては、同条第一項及び第三項に限る。)、第百五条、第百六条及び第百八条から第百十一条まで並びに非訟事件手続法第百二十六条第一項、第百三十五条ノ七、第百三十五条ノ八及び第百四十条の規定を準用する。この場合において、商法第百五条第一項中「合併ノ日」とあるのは、「預金保険法第七十四条第一項ニ規定スル期限(当該期限ガ同条第四項ノ規定ニ依リ延長セラレタル場合ニハ其ノ延長後ノ期限)」と読み替えるものとする。
2 緊急性の認定に係る合併で存続金融機関が銀行等であるものについては、商法第二百九十三条ノ三ノ四第三項及び第四項、第二百九十三条ノ三ノ五、第二百九十三条ノ三ノ六並びに第四百十二条第一項並びに非訟事件手続法第百三十二条ノ三の規定を準用する。この場合において、同項中「第百条」とあるのは「預金保険法第七十三条」と、「第二百九十三条ノ三ノ六」とあるのは「同法第八十条第二項ニ於テ準用スル商法第二百九十三条ノ三ノ六」と、「第三百五十条第一項」とあるのは「預金保険法第七十四条第六項ニ於テ準用スル商法第三百五十条第一項」と読み替えるものとする。
3 緊急性の認定に係る合併又は営業譲渡等で信用金庫又は労働金庫を当事者とするものについては、信用金庫法第五十八条第三項又は労働金庫法第六十二条第三項の規定を準用する。
(商法等の適用除外)
第八十一条 緊急性の認定に係る合併又は営業譲渡等については、緊急性の認定を受けた後は、商法第二百四十五条から第二百四十五条ノ三まで、第二百四十五条ノ四後段、第四百八条から第四百八条ノ三まで、第四百十二条、第四百十四条並びに第四百十六条第一項から第三項まで及び第五項、商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)第九十条、銀行法第三十三条(相互銀行法第十四条において準用する場合を含む。)、第三十四条(長期信用銀行法第十七条、外国為替銀行法第十一条及び相互銀行法第十四条において準用する場合を含む。)及び第三十五条(長期信用銀行法第十七条、外国為替銀行法第十一条、相互銀行法第十四条、信用金庫法第八十九条及び労働金庫法第九十四条において準用する場合を含む。)、長期信用銀行法第十四条、外国為替銀行法第九条の八、信用金庫法第五十条第六項、第五十条の二、第五十八条第一項から第三項まで及び第五項、第六十条、第六十一条、第六十三条(第五号に係る部分に限る。)、第七十一条、第七十七条第二項及び第三項並びに第八十三条、中小企業等協同組合法第五十七条の三第一項及び第四項、第六十三条第一項及び第二項、第六十五条、第六十六条、第八十九条、第九十五条第二項及び第三項並びに第百一条並びに労働金庫法第六十二条第一項から第三項まで及び第五項、第六十四条、第六十五条、第六十七条(第五号に係る部分に限る。)、第七十五条、第八十一条第二項及び第三項並びに第八十七条の規定は、適用しない。