(特許の要件)
第二十九条 産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。
二 特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明
三 特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明
2 特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたときは、その発明については、同項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。
(発明の新規性の喪失の例外)
第三十条 特許を受ける権利を有する者が試験を行い、刊行物に発表し、又は特許庁長官が指定する学術団体が開催する研究集会において文書をもつて発表することにより、前条第一項各号の一に該当するに至つた発明について、その該当するに至つた日から六月以内にその者が特許出願をしたときは、その発明は、同項各号の一に該当するに至らなかつたものとみなす。
2 特許を受ける権利を有する者の意に反して前条第一項各号の一に該当するに至つた発明について、その該当するに至つた日から六月以内にその者が特許出願をしたときも、前項と同様とする。
3 特許を受ける権利を有する者が政府若しくは地方公共団体(以下「政府等」という。)が開設する博覧会に、同盟条約(千九百年十二月十四日にブラッセルで、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にへーグで、及び千九百三十四年六月二日にロンドンで改正された工業所有権保護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ同盟条約をいう。以下同じ。)の同盟国の領域内でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会に、又は同盟条約の同盟国以外の国の領域内でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会であつて特許庁長官が指定するものに出品することにより、前条第一項各号の一に該当するに至つた発明について、その該当するに至つた日から六月以内にその者が特許出願をしたときも、第一項と同様とする。
4 特許出願に係る発明について第一項又は前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を特許出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、その特許出願に係る発明が第一項又は前項に規定する発明であることを証明する書面を特許出願の日から三十日以内に特許庁長官に提出しなければならない。
(追加の特許の要件)
第三十一条 特許権者は、次に掲げる発明については、独立の特許に代え、追加の特許を受けることができる。
一 その者の特許発明の構成に欠くことができない事項の全部又は主要部をその構成に欠くことができない事項の主要部としている発明であつて、その特許発明と同一の目的を達成するもの
二 その者の特許発明が物の特許発明である場合において、その物を生産する方法の発明又はその物を生産する機械、器具、装置その他の物の発明
三 その者の特許発明が方法の特許発明である場合において、その方法の特許発明の実施に直接使用する機械、器具、装置その他の物の発明
(特許を受けることができない発明)
第三十二条 次に掲げる発明については、第二十九条の規定にかかわらず、特許を受けることができない。
二 医薬(人の病気の診断、治療、処置又は予防のため使用する物をいう。以下同じ。)又は二以上の医薬を混合して一の医薬を製造する方法の発明
四 原子核変換の方法により製造されるべき物質の発明
五 公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがある発明
(特許を受ける権利)
第三十三条 特許を受ける権利は、移転することができる。
2 特許を受ける権利は、質権の目的とすることができない。
3 特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡することができない。
第三十四条 特許出願前における特許を受ける権利の承継は、その承継人が特許出願をしなければ、第三者に対抗することができない。
2 同一の者から承継した同一の特許を受ける権利について同日に二以上の特許出願があつたときは、特許出願人の協議により定めた者以外の者の承継は、第三者に対抗することができない。
3 同一の者から承継した同一の発明及び考案についての特許を受ける権利及び実用新案登録を受ける権利について同日に特許出願及び実用新案登録出願があつたときも、前項と同様とする。
4 特許出願後における特許を受ける権利の承継は、相続その他の一般承継の場合を除き、特許庁長官に届け出なければ、その効力を生じない。
5 特許を受ける権利の相続その他の一般承継があつたときは、承継人は、遅滞なく、その旨を特許庁長官に届け出なければならない。
6 同一の者から承継した同一の特許を受ける権利の承継について同日に二以上の届出があつたときは、届出をした者の協議により定めた者以外の者の届出は、その効力を生じない。
7 第三十九条第七項及び第八項の規定は、第二項、第三項及び前項の場合に準用する。
(職務発明)
第三十五条 使用者、法人、国又は地方公共団体(以下「使用者等」という。)は、従業者、法人の役員、国家公務員又は地方公務員(以下「従業者等」という。)がその性質上当該使用者等の業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至つた行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明(以下「職務発明」という。)について特許を受けたとき、又は職務発明について特許を受ける権利を承継した者がその発明について特許を受けたときは、その特許権について通常実施権を有する。
2 従業者等がした発明については、その発明が職務発明である場合を除き、あらかじめ使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させ又は使用者等のため専用実施権を設定することを定めた契約、勤務規則その他の定の条項は、無効とする。
3 従業者等は、契約、勤務規則その他の定により、職務発明について使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させ、又は使用者等のため専用実施権を設定したときは、相当の対価の支払を受ける権利を有する。
4 前項の対価の額は、その発明により使用者等が受けるべき利益の額及びその発明がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮して定めなければならない。
(特許出願)
第三十六条 特許を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。
一 特許出願人の氏名又は名称及び住所又は居所並びに法人にあつては代表者の氏名
2 願書には、次に掲げる事項を記載した明細書及び必要な図面を添附しなければならない。
3 追加の特許を受けようとするときは、追加の特許を受けようとする発明についての追加の関係を明細書に記載しなければならない。
4 第二項第三号の発明の詳細な説明には、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果を記載しなければならない。
5 第二項第四号の特許請求の範囲には、発明の詳細な説明に記載した発明の構成に欠くことができない事項のみを記載しなければならない。
6 第三十八条ただし書の規定により二以上の発明について同一の願書で特許出願をするときは、第二項第四号の特許請求の範囲は、発明ごとに区分して記載しなければならない。
(共同出願)
第三十七条 特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者と共同でなければ、特許出願をすることができない。
(一発明一出願)
第三十八条 特許出願は、発明ごとにしなければならない。ただし、二以上の発明であつても、特許請求の範囲に記載される一の発明(以下「特定発明」という。)に対し次に掲げる関係を有する発明については、特定発明と同一の願書で特許出願をすることができる。
一 その特定発明の構成に欠くことができない事項の全部又は主要部をその構成に欠くことができない事項の主要部としている発明であつて、その特定発明と同一の目的を達成するもの
二 その特定発明が物の発明である場合において、その物を生産する方法の発明又はその物を生産する機械、器具、装置その他の物の発明
三 その特定発明が方法の発明である場合において、その方法の発明の実施に直接使用する機械、器具、装置その他の物の発明
(先願)
第三十九条 同一の発明について異なつた日に二以上の特許出願があつたときは、最先の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。
2 同一の発明について同日に二以上の特許出願があつたときは、特許出願人の協議により定めた一の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、いずれも、その発明について特許を受けることができない。
3 特許出願に係る発明と実用新案登録出願に係る考案とが同一である場合において、その特許出願及び実用新案登録出願が異なつた日にされたものであるときは、特許出願人は、実用新案登録出願人より先に出願をした場合にのみその発明について特許を受けることができる。
4 特許出願に係る発明と実用新案登録出願に係る考案とが同一である場合において、その特許出願及び実用新案登録出願が同日にされたものであるときは、出願人の協議により定めた一の出願人のみが特許又は実用新案登録を受けることができる。協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、特許出願人は、その発明について特許を受けることができない。
5 特許出願又は実用新案登録出願が取り下げられ、又は無効にされたときは、その特許出願又は実用新案登録出願は、前四項の規定の適用については、初めからなかつたものとみなす。
6 発明者又は考案者でない者であつて特許を受ける権利又は実用新案登録を受ける権利を承継しないものがした特許出願又は実用新案登録出願は、第一項から第四項までの規定の適用については、特許出願又は実用新案登録出願でないものとみなす。
7 特許庁長官は、第二項又は第四項の場合は、相当の期間を指定して、第二項又は第四項の協議をしてその結果を届け出るべき旨を出願人に命じなければならない。
8 特許庁長官は、前項の規定により指定した期間内に同項の規定による届出がないときは、第二項又は第四項の協議が成立しなかつたものとみなすことができる。
(明細書等の補正と要旨変更)
第四十条 願書に添附した明細書又は図面について出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達前にした補正がこれらの要旨を変更するものと特許権の設定の登録があつた後に認められたときは、その特許出願は、その補正について手続補正書を提出した時にしたものとみなす。
第四十一条 出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達前に、願書に最初に添附した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を増加し減少し又は変更する補正は、明細書の要旨を変更しないものとみなす。
第四十二条 願書に添附した明細書又は図面について出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達後にした補正が第六十四条(第百五十九条第二項(第百七十四条第一項において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。)の規定に違反しているものと特許権の設定の登録があつた後に認められたときは、その補正がされなかつた特許出願について特許がされたものとみなす。
(優先権主張の手続)
第四十三条 同盟条約第四条丁第一号の規定により特許出願について優先権を主張しようとする者は、その旨並びに最初に出願をし又は同条甲第二号の規定により最初に出願をしたものと認められた同盟条約の同盟国の国名及び出願の年月日を記載した書面を特許出願と同時に特許庁長官に提出しなければならない。
2 前項の規定による優先権の主張をした者は、最初に出願をし若しくは同盟条約第四条甲第二号の規定により最初に出願をしたものと認められた同盟条約の同盟国の認証がある出願の年月日を記載した書面、発明の明細書及び図面の謄本又はこれらと同様な内容を有する公報若しくは証明書であつてその同盟国の政府が発行したものを特許出願の日から三月以内に特許庁長官に提出しなければならない。
3 第一項の規定による優先権の主張をした者が前項に規定する期間内に同項に規定する書類を提出しないときは、優先権の主張は、その効力を失う。
(特許出願の分割)
第四十四条 特許出願人は、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。
2 前項の規定による特許出願の分割は、特許出願について査定又は審決が確定した後は、することができない。
3 第一項の場合は、新たな特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなす。ただし、第三十条第四項並びに前条第一項及び第二項の規定の適用については、この限りでない。
(出願の変更)
第四十五条 特許出願人は、追加の特許出願を独立の特許出願に変更することができる。この場合は、独立の特許出願は、追加の特許出願の時にしたものとみなす。
2 前項の規定による特許出願の変更は、特許出願について査定又は審決が確定した後は、することができない。
3 特許出願人は、独立の特許出願を追加の特許出願に変更することができる。この場合は、追加の特許出願は、独立の特許出願の時にしたものとみなす。
4 前項の規定による特許出願の変更は、特許出願について出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達があった後は、することができない。
5 第一項又は第三項の規定による特許出願の変更があつたときは、もとの特許出願は、取り下げたものとみなす。
第四十六条 実用新案登録出願人は、その実用新案登録出願を特許出願に変更することができる。ただし、その実用新案登録出願について拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三十日を経過した後は、この限りでない。
2 意匠登録出願人は、その意匠登録出願を特許出願に変更することができる。ただし、その意匠登録出願について拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三十日を経過した後は、この限りでない。
3 前二項の規定による出願の変更があつたときは、その特許出願は、その実用新案登録出願又は意匠登録出願の時にしたものとみなす。
4 第一項又は第二項の規定による出願の変更があつたときは、その実用新案登録出願又は意匠登録出願は、取り下げたものとみなす。
5 第一項ただし書に規定する期間は、実用新案法(昭和三十四年法律第百二十三号)第五十五条第一項において準用するこの法律第四条第一項の規定により実用新案法第三十五条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。
6 第二項ただし書に規定する期間は、意匠法(昭和三十四年法律第百二十五号)第六十八条第一項において準用するこの法律第四条第一項の規定により意匠法第四十六条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。