第一條(この法律の目的) この法律は、郵便振替貯金を簡易で確実な送金及び債権債務の決済の手段としてあまねく公平に利用させることによつて、國民の円滑な経済活動に資することを目的とする。
第二條(郵便振替貯金の國営及び逓信大臣の職責) 郵便振替貯金は、國の行う事業であつて、逓信大臣が、これを管理する。
逓信大臣は、この法律の目的を達成するため、左の職責を有する。
一 郵便振替貯金に関する條約及び法律に從い、省令を発すること。
二 法律に触れない範囲において、郵便振替貯金の取扱をする郵便局を指定し、郵便局における郵便振替貯金事務の窓口取扱時間を定めること。
三 法律に触れない範囲において、口座所管廳を設置し、又は廃止すること。
四 郵便振替貯金の業務に從事する者をその職務につき指揮監督すること。
五 法律に触れない範囲において、郵便振替貯金の業務に從事する者の能率の向上を図るため必要な厚生、保健その他の施設をし、且つ、郵便振替貯金の業務に從事する者の訓練を行うこと。
六 郵便振替貯金事業を行うため、財政及び会計に関する法令の定めるところに從い、必要な契約をすること。
七 前各号に掲げるものを除いて、郵便振替貯金に関し逓信大臣の職責として法令の定める事項を掌理すること。
第三條(逓信大臣の職権の委任) 逓信大臣は、この法律に定める職権で細目の事項に関するものを、條件を定めて、逓信局長又は郵便局長に委任することができる。
第四條(郵便振替貯金の業務に從事する官吏) 郵便振替貯金の業務に從事する官吏の身分、給與及び服務に関する事項は、別に法律でこれを定める。
第五條(印紙税の免除) 郵便振替貯金に関する書類には、印紙税を課さない。
第六條(郵便振替貯金に関する條約) 郵便振替貯金に関し條約に別段の定のある場合には、その規定による。
第七條(業務の態様) 郵便振替貯金においては、加入者のために口座を設けて、左の取扱をする。
一 加入者又は加入者でない者の拂い込む金額を口座に受け入れること。
二 加入者の口座から加入者の指定する他の口座へ貯金の振替をすること。
三 加入者の口座の貯金を拂い出して、その加入者又はその他の者に拂出金を拂い渡すこと。
第八條(口座の名称) 口座は、加入者の氏名(法人の場合にはその名称。以下本條において同じ。)を以てその名称とする。
加入者の商号、屋号その他氏名以外の名称は、逓信官署の承認を受けなければ、これを口座の名称として使用することができない。
第二項の承認を受けたときは、加入者は、その料金として五円を納付しなければならない。
第九條(印章) 加入者又は代理署名人は、郵便振替貯金に関する手続をする場合には、逓信官署に届け出た印章を押さなければならない。
前項の場合において、加入者の指定した参加署名人があるときは、参加署名人も、逓信官署に届け出た印章をともに押さなければならない。
第十條(代理署名人) 加入者の指定する代理署名人は、加入者に代つて、振替及び拂出を請求することができる。
第十一條(参加署名人) 参加署名人は、一人に限る。
第十二條(法人でない團体の代表者) 法人でない團体の郵便振替貯金においては、その團体の代表者一人を定めなければならない。
前項の郵便振替貯金に関する権利義務については、その代表者を加入者とみなす。
第十三條(郵便振替貯金に関する加入者の権利の讓渡) 郵便振替貯金に関する加入者の権利は、逓信大臣の承認を受けて、これを讓り渡すことができる。
前項の規定による讓渡があつたときは、讓受人は、讓渡人が当該口座に関し逓信官署に対して負う義務を承継する。
第一項の承認があつたときは、口座所管廳において、その料金として二十円を当該口座の貯金から控除して徴收する。
第十四條(証明) 逓信官署は、加入者、代理署名人、参加署名人、拂出金若しくは貯金残額の受取人又は拂込金の還付を受けるべき者の真偽を調査するため必要な証明を求めることができる。
第十五條(正当の振替等) この法律又はこの法律に基く省令に規定する手続を経て、貯金を振り替え、貯金を拂い出し、拂出金若しくは貯金残額を拂い渡し、又は拂込金を還付したときは、正当の振替、拂出、拂渡又は還付をしたものとみなす。
第十六條(免責) 逓信官署は、左の場合において、郵便振替貯金の取扱の遅延があつたときは、これに因り生じた損害を賠償しない。
一 拂込、振替又は拂出に関する書類の送達が遅延したとき。
二 拂込、振替又は拂出に関する書類が不完全であつたとき。
三 拂出金、貯金残額又は拂込金を拂い渡し、又は還付すべき郵便局において現金に余裕のないため又は不可抗力に因つて拂い渡し、又は還付することができなかつたとき。
第十七條(利子) 郵便振替貯金には、月の初日から末日までの各日の口座の現在高(一日のうち二以上の現在高のあるときは、その最後の現在高。以下本條において同じ。)のうち最低のものの円位以上の額につき、年二分二厘八毛の利率により利子を付ける。但し、口座の現在高のない日のある月及び口座の現在高が十万円を超える場合におけるその超過額については、利子を付けない。
前項の規定により付けた利子は、毎年三月末日を以てこれを口座の現在高に組み入れる。但し、第五十五條又は第五十六條第二項の規定により口座を閉鎖する場合には、その際これを口座の現在高に組み入れる。
第十八條(拂込、振替及び拂出の料金) 拂込、振替及び拂出の料金は、左の通りとする。
一 拂込
電信拂込
同 一万円を超える場合 一万円を超える一万円又はその端数ごとに十円を五十円に加えた額
三 拂出
通常現金拂及び小切手拂
同 一万円を超える場合 一万円を超える五千円又はその端数ごとに二円を八円に加えた額
電信拂込、電信振替又は電信現金拂に関する通知を至急電報でする場合における電信拂込、電信振替又は電信現金拂の料金は、前項に規定する料金の倍額とする。
小切手拂に関する照会を電信でする場合における小切手拂の料金は、第一項に規定する料金の額(至急電報でする場合には同項に規定する料金の倍額)と電信に関する料金を基準として省令の定める金額との合計額とする。
第十九條(拂込及び拂出の料金の免除及び低減) 加入者が自己の口座に拂込をし、自己を受取人に指定して通常現金拂の請求をし、又は自己指図で振り出した小切手による小切手拂の請求をする場合には、前條の料金を免除する。但し、自己の口座に電信拂込をする場合には、十円を、自己指図で振り出した小切手による小切手拂に関する照会を電信でする場合には、前條第三項に規定する小切手拂の料金から同條第一項に規定する小切手拂の料金を控除した金額をその加入者から徴收する。
前項の場合において、当該加入者が拂出金に関する受取人の権利を讓り渡したときは、前條に規定する拂出の料金をその加入者から徴收する。
手形交換所の所在地に在る口座所官廳に属する口座を有する加入者が、銀行を受取人に指定して振り出した小切手で、当該手形交換所において交換決済されるものによる拂出の料金は、前條の規定にかかわらず、二円とする。
加入者たる銀行が逓信大臣の指定する銀行において有する当座預金の口座に拂出金を預入するため省令の定める簡易な取扱による通常現金拂を請求する場合における拂出の料金は、前條の規定にかかわらず、通常振替の料金と同額とする。
電信現金拂の料金及び小切手拂に関する照会を電信でする場合における小切手拂の料金は、口座の現在高の不足その他の事由に因り当該請求に係る貯金の拂出がされなかつた場合には、前條の規定にかかわらず、電信に関する料金を基準として省令の定める金額とする。
第二十條(料金徴收方法) 拂込の料金は、拂込の際、拂込人からこれを徴收し、振替及び拂出の料金は、口座から貯金を拂い出す際、当該口座の貯金から控除してこれを徴收する。但し、前條第五項に規定する拂出の料金は、口座所管廳において、第三十八條第二項の規定による通知又は同條第三項の規定による照会を受けた際、当該加入者の口座の貯金から控除してこれを徴收する。
拂込の料金をその拂込金を受け入れる口座の加入者が負担する旨を表示した拂込書によりする通常拂込の料金は、当該口座の貯金から控除してこれを徴收する。
拂込、振替及び拂出の料金以外の郵便振替貯金に関する料金又は代金は、加入者から徴收する場合には加入者の口座の貯金から控除してこれを徴收することができる。
代金引換の取扱において郵便物の差出人の指定に從い逓信官署において引換金を当該差出人の口座に拂い込んだ場合における拂込の料金は、当該口座の貯金から控除してこれを徴收する。
第二十一條(料金の還付) 郵便振替貯金に関する既納の料金は、左のものに限り、これを納付した者の請求に因り還付する。
二 電信拂込、電信振替又は電信現金拂の取扱において、郵便振替貯金に関する業務に從事する者の過失に因つて通常拂込、通常振替又は通常現金拂の取扱をするのと同様の結果を生じた場合における電信拂込、電信振替又は電信現金拂の料金と通常拂込、通常振替又は通常現金拂の料金との差額
三 前号に掲げるものを除いて、郵便振替貯金に関する業務に從事する者の過失に因つて請求に係る取扱をしなかつた場合におけるその取扱の料金
前項の請求は、その料金を納付した時から一年を経過したときは、これをすることができない。
第二十二條(利用の制限及び業務の停止) 逓信大臣は、天災その他やむを得ない事由がある場合において、重要な業務の遂行を確保するため必要があるときは、口座所管廳又は郵便局を指定し、且つ、期間を定めて、郵便振替貯金の利用を制限し、又は業務の一部を停止することができる。
第二十三條(非常取扱) 逓信大臣は、天災その他非常の災害があつた場合において、その災害を受けた加入者又は受取人の緊急な需要を充たすため必要があるときは、省令の定めるところにより、郵便局を指定し、且つ、期間を定めて、郵便振替貯金に関し、料金を免除し、又は便宜の取扱をすることができる。