ガス事業法
法令番号: 法律第51号
公布年月日: 昭和29年3月31日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

従来の瓦斯事業法と公益事業令による二重規制の状態を改め、ガス事業の運営調整と保安監督を一体化した恒久法を制定する必要があった。電気事業とガス事業は態様が異なるため、別個の法律とすることが適当と判断。新法では、ガス事業の運営規制、保安監督、土地立入り等の特権を規定し、ガスの使用者利益の保護と事業の健全な発達を図る。電気及びガスに関する臨時措置に関する法律に代わる恒久法として、ガス事業の実態に即した立法を行うため本法案を提出するもの。

参照した発言:
第19回国会 衆議院 通商産業委員会 第4号

審議経過

第19回国会

衆議院
(昭和29年1月26日)
参議院
(昭和29年2月2日)
(昭和29年2月18日)
衆議院
(昭和29年2月20日)
参議院
(昭和29年2月23日)
衆議院
(昭和29年3月3日)
(昭和29年3月6日)
(昭和29年3月10日)
(昭和29年3月24日)
参議院
(昭和29年3月25日)
衆議院
(昭和29年3月29日)
(昭和29年3月30日)
(昭和29年3月30日)
参議院
(昭和29年3月30日)
(昭和29年3月31日)
(昭和29年3月31日)
衆議院
(昭和29年6月15日)
参議院
(昭和29年6月15日)
ガス事業法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十九年三月三十一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第五十一号
ガス事業法
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
事業の許可(第三条―第十五条)
第三章
供給(第十六条―第二十五条)
第四章
会計(第二十六条・第二十七条)
第五章
保安(第二十八条―第三十九条)
第六章
雑則(第四十条―第五十二条)
第七章
罰則(第五十三条―第六十一条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、ガス事業の運営を調整することによつて、ガスの使用者の利益を保護し、及びガス事業の健全な発達を図るとともに、ガスの製造及び供給に伴う危険を防止することによつて、公共の安全を確保することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「ガス事業」とは、一般の需用に応じ導管によりガスを供給する事業をいう。
2 この法律において「ガス工作物」とは、ガスの供給のために施設するガス発生設備、ガスホルダー、ガス精製設備、排送機、圧送機、整圧器、導管、受電設備その他の工作物及びこれらの附属設備であつて、ガス事業の用に供するものをいう。
第二章 事業の許可
(事業の許可)
第三条 ガス事業を営もうとする者は、通商産業大臣の許可を受けなければならない。
(許可の申請)
第四条 前条の許可を受けようとする者は、左に掲げる事項を記載した申請書を通商産業大臣に提出しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつてはその代表者の氏名及び住所
二 供給区域
三 ガス発生設備及びガスホルダーの種類及び能力別の数並びにこれらの設置の場所
2 前項の申請書には、供給区域の図面その他通商産業省令で定める書類を添附しなければならない。
(許可の基準)
第五条 通商産業大臣は、第三条の許可の申請が左の各号に適合していると認めるときでなければ、同条の許可をしてはならない。
一 そのガス事業の開始が一般の需用に適合すること。
二 そのガス事業のガス工作物の能力がその供給区域におけるガスの需要に応ずることができるものであること。
三 そのガス事業の開始によつてその供給区域の全部又は一部においてガス工作物が著しく過剰とならないこと。
四 そのガス事業を適確に遂行するに足りる経理的基礎があること。
五 その他そのガス事業の開始が公益上必要であり、且つ、適切であること。
(許可証)
第六条 通商産業大臣は、ガス事業の許可をしたときは、許可証を交付する。
2 許可証には、左に掲げる事項を記載しなければならない。
一 許可の年月日及び許可の番号
二 氏名又は名称及び住所
三 供給区域
四 ガス発生設備及びガスホルダーの種類及び能力別の数並びにこれらの設置の場所
(設備の設置及び事業の開始の義務)
第七条 第三条の許可を受けた者(以下「ガス事業者」という。)は、一年以上三年以下において通商産業大臣が指定する期間内に、前条第二項第四号の設備を設置し、その事業を開始しなければならない。
2 通商産業大臣は、特に必要があると認めるときは、供給区域又は前条第二項第四号の設備を区分して前項の規定による指定をすることができる。
3 通商産業大臣は、ガス事業者から申請があつた場合において、正当な事由があると認めるときは、第一項の規定により指定した期間を延長することができる。
4 ガス事業者は、前条第二項第四号の設備を設置し、又はその事業を開始したときは、遅滞なく、その旨を通商産業大臣に届け出なければならない。
(供給区域又は設備の変更)
第八条 ガス事業者は、第六条第二項第三号又は第四号の事項を変更しようとするときは、通商産業大臣の許可を受けなければならない。
2 第五条の規定は、前項の許可に準用する。
3 前条の規定は、第一項の場合(供給区域の減少の場合を除く。)に準用する。
(氏名等の変更)
第九条 ガス事業者は、第六条第二項第二号の事項に変更があつたときは、遅滞なく、その旨を通商産業大臣に届け出なければならない。
(事業の譲渡及び譲受並びに法人の合併)
第十条 ガス事業の全部又は一部の譲渡及び譲受は、通商産業大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
2 ガス事業者たる法人の合併は、通商産業大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
3 第五条の規定は、前二項の認可に準用する。
(承継)
第十一条 ガス事業の全部の譲渡があり、又はガス事業者について相続若しくは合併があつたときは、ガス事業の全部を譲り受けた者又は相続人若しくは合併後存続する法人若しくは合併により設立した法人は、ガス事業者の地位を承継する。
2 前項の規定によりガス事業者の地位を承継した相続人は、遅滞なく、その旨を通商産業大臣に届け出なければならない。
(ガス事業以外の事業)
第十二条 ガス事業者は、通商産業大臣の許可を受けなければ、ガス事業以外の事業を営んではならない。但し、通商産業省令で定める事業については、この限りでない。
2 通商産業大臣は、ガス事業者がガス事業以外の事業を営むことによりガス事業の適確な遂行に支障を及ぼすおそれがないと認めるときでなければ、前項の許可をしてはならない。
(事業の休止及び廃止並びに法人の解散)
第十三条 ガス事業者は、通商産業大臣の許可を受けなければ、ガス事業の全部又は一部を休止し、又は廃止してはならない。
2 ガス事業者たる法人の解散の決議又は総社員の同意は、通商産業大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
3 通商産業大臣は、ガス事業の休止若しくは廃止又は法人の解散により公共の利益が阻害されるおそれがないと認めるときでなければ、第一項の許可又は前項の認可をしてはならない。
(事業の許可等の取消)
第十四条 通商産業大臣は、ガス事業者が第七条第一項の規定により指定した期間(同条第三項の規定による延長があつたときは、延長後の期間。以下同じ。)内に第六条第二項第四号の設備を設置せず、又は事業を開始しないときは、第三条の許可を取り消すことができる。
2 通商産業大臣は、前項に規定する場合を除く外、ガス事業者がこの法律若しくはこの法律に基く命令又はこれらに基く処分に違反した場合において、公共の利益を阻害すると認めるときは、第三条の許可を取り消すことができる。
3 通商産業大臣は、前二項の規定による許可の取消をしたときは、理由を記載した文書をそのガス事業者に送付しなければならない。
第十五条 通商産業大臣は、第八条第一項の規定による第六条第二項第三号又は第四号の事項の変更の許可を受けたガス事業者が第八条第三項において準用する第七条第一項の規定により指定した期間内にその増加する供給区域において事業を開始せず、又はその期間内に第六条第二項第四号の事項を変更しないときは、その許可を取り消すことができる。
2 通商産業大臣は、ガス事業者がその供給区域の一部においてガス事業を行つていない場合において、公共の利益を阻害すると認めるときは、その一部について供給区域を減少することができる。
3 前条第三項の規定は、前二項の場合に準用する。
第三章 供給
(供給義務)
第十六条 ガス事業者は、正当な事由がなければ、何人に対しても、その供給区域におけるガスの供給を拒んではならない。
2 ガス事業者は、その供給区域以外の地域において、一般の需用に応じ導管によりガスを供給してはならない。
(供給規程)
第十七条 ガス事業者は、ガスの料金その他の供給条件について供給規程を定め、通商産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 通商産業大臣は、前項の認可の申請が左の各号に適合していると認めるときは、同項の認可をしなければならない。
一 料金が能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものであること。
二 料金が定率又は定額をもつて明確に定められていること。
三 ガス事業者及びガスの使用者の責任に関する事項並びに導管、ガスメーターその他の設備に関する費用の負担の額及び方法が適正且つ明確に定められていること。
四 特定の者に対し不当な差別的取扱をするものでないこと。
(供給規程に関する命令及び処分)
第十八条 通商産業大臣は、ガスの料金その他の供給条件が社会的経済的事情の変動により著しく不適当となり、公共の利益の増進に支障があると認めるときは、ガス事業者に対し、相当の期限を定め、供給規程の変更の認可を申請すべきことを命ずることができる。
2 通商産業大臣は、前項の規定による命令をした場合において、同項の期限までに認可の申請がないときは、供給規程を変更することができる。
(供給規程の公表義務)
第十九条 ガス事業者は、第十七条第一項の規定により供給規程の認可を受け、又は前条第二項の規定により供給規程の変更があつたときは、その実施の日の十日前から、営業所、事務所その他の事業場において、公衆の見やすい箇所に掲示しておかなければならない。
(供給条件についての義務)
第二十条 ガス事業者は、第十七条第一項の認可を受けた供給規程(第十八条第二項の規定による変更があつたときは、変更後の供給規程)以外の供給条件によりガスを供給してはならない。但し、特別の事情がある場合において、通商産業大臣の認可を受けたときは、この限りでない。
(熱量等の測定義務)
第二十一条 ガス事業者は、政令で定める方法により、その供給するガスの熱量及び圧力を測定し、その結果を記録しておかなければならない。
(供給契約)
第二十二条 ガス事業者は、他のガス事業者からガスの供給を受け、又はこれにガスを供給すべきことを定める契約をしようとするときは、通商産業大臣の認可を受けなければならない。
(特定供給)
第二十三条 ガス事業者は、一般の需用に応じて供給する場合を除き、その供給区域以外の地域において導管によりガスを供給しようとするときは、通商産業大臣の許可を受けなければならない。
2 通商産業大臣は、前項の許可の申請が左の各号に適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。
一 ガス事業の適確な遂行に支障を及ぼすおそれがないこと。
二 その供給が他のガス事業者の供給区域において行われるものであるときは、当該他のガス事業者がその供給を行うことが容易且つ適切でないこと。
(卸供給事業者の供給)
第二十四条 ガス事業者以外の者であつて、ガス事業者に対して導管によりガスを供給する事業を営むもの(以下「卸供給事業者」という。)は、通商産業大臣の認可を受けたガスの料金その他の供給条件によるのでなければ、ガスを供給してはならない。但し、ガス事業者に対するガスの供給量が通商産業省令で定める数量以下である場合は、この限りでない。
2 通商産業大臣は、前項の認可の申請があつた場合において、料金その他の供給条件がガス事業者のガスの料金その他の供給条件を適正にするものであると認めるときは、同項の認可をしなければならない。
(ガス事業者以外の者の供給)
第二十五条 ガス事業者以外の者であつて、ガスを供給する事業を行うものは、前条第一項に規定する場合を除き、ガス事業者の供給区域において導管によりガスを供給しようとするときは、あらかじめ、供給の相手方及び料金その他の供給条件を通商産業大臣に届け出なければならない。
第四章 会計
(会計の整理)
第二十六条 ガス事業者は、通商産業省令で定めるところにより、その事業年度並びに勘定科目の分類及び貸借対照表、損益計算書その他の財務計算に関する諸表の様式を定め、その会計を整理しなければならない。
(減価償却)
第二十七条 通商産業大臣は、ガス事業の適確な遂行を図るため特に必要があると認めるときは、ガス事業者に対し、方法又は額を定めて、固定資産について、減価償却を行うべきことを命ずることができる。
第五章 保安
(ガス工作物の維持)
第二十八条 ガス事業者は、ガス工作物を通商産業省令で定める保安上の基準に適合するように維持しなければならない。
2 通商産業大臣は、ガス工作物が前項の保安上の基準に適合していないと認めるときは、ガス事業者に対し、その保安上の基準に適合するようにガス工作物を修理し、改造し、又は移転すべきことを命ずることができる。
(ガスの成分の検査義務)
第二十九条 ガス事業者は、政令で定める方法により、その供給するガスの成分のうち、人体に危害を及ぼし、又は物件に損傷を与えるおそれがあるものの量が政令で定める数量をこえていないかどうかを検査し、その量を記録しておかなければならない。
(導管の工事)
第三十条 ガス事業者は、導管の工事により発生する危険を防止するため、通商産業省令で定める事項につき導管の工事の方法を定め、通商産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 ガス事業者は、前項の通商産業省令で定める事項について導管の工事をするには、同項の認可を受けた方法に従わなければならない。
3 通商産業大臣は、ガス事業者が第一項の認可を受けた方法に従わないで同項の通商産業省令で定める事項について導管の工事をしていると認めるときは、同項の認可を受けた方法に従つてその導管の工事をすべき旨を命ずることができる。
第三十一条 ガス事業者は 通商産業省令で定める導管の工事をしようとするときは、その工事の開始の日の十五日前までに、その旨を通商産業大臣に届け出なければならない。
(ガス主任技術者)
第三十二条 ガス事業者は事業場(通商産業省令で定める範囲のものに限る。)ごとに、通商産業省令で定める区分に従い、ガス主任技術者免状の交付を受けている者のうちから、ガス主任技術者を選任し、ガスの製造及び供給の作業に関して保安の監督をさせなければならない。
2 ガス事業者は、前項の規定によりガス主任技術者を選任したときは、遅滞なく、その旨を通商産業大臣に届け出なければならない。これを解任したときも、同様とする。
(ガス主任技術者免状)
第三十三条 ガス主任技術者免状の種類は、甲種ガス主任技術者免状及び乙種ガス主任技術者免状とする。
2 ガス主任技術者免状の交付を受けている者がその保安について監督をすることができるガスの製造及び供給の作業の範囲は、前項に規定するガス主任技術者免状の種類に応じて通商産業省令で定める。
3 ガス主任技術者免状は、左の各号の一に該当する者でなければ、その交付を受けることができない。
一 ガス主任技術者国家試験(以下「国家試験」という。)に合格した者であつて、通商産業省令で定めるガスの製造及び供給の作業に関する経験を有するもの
二 十五年以上ガスの製造及び供給の作業に従事した者であつて、前号に規定する者と同等以上の知識及び技能を有していると通商産業大臣が認定したもの
4 通商産業大臣は、左の各号の一に該当する者に対しては、ガス主任技術者免状の交付を行わないことができる。
一 次条の規定によりガス主任技術者免状の返納を命ぜられ、その日から一年を経過しない者
二 この法律又はこの法律に基く命令の規定に違反し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなつた日から二年を経過しない者
5 ガス主任技術者免状の交付に関する手続的事項は、通商産業省令で定める。
第三十四条 通商産業大臣は、ガス主任技術者免状の交付を受けている者がこの法律又はこの法律に基く命令の規定に違反したときは、そのガス主任技術者免状の返納を命ずることができる。
(国家試験)
第三十五条 国家試験は、ガスの製造及び供給の作業の保安に関して必要な知識及び技能について行う。
2 国家試験は、毎年一回ガス主任技術者免状の種類ごとに、通商産業大臣が行う。
3 国家試験の試験科目、受験手続その他国家試験の実施細目は、通商産業省令で定める。
(ガス主任技術者の義務)
第三十六条 ガス主任技術者は、誠実にその職務を行わなければならない。
2 ガスの製造又は供給の作業に従事する者は、ガス主任技術者がその保安のためにする指示に従わなければならない。
(ガス主任技術者の解任命令)
第三十七条 通商産業大臣は、ガス主任技術者がこの法律若しくはこの法律に基く命令若しくはこれらに基く処分に違反したとき、又はその者にその職務を行わせることがガスの製造及び供給の作業の保安に支障を及ぼすと認めるときは、ガス事業者に対し、ガス主任技術者の解任を命ずることができる。
(準用規定)
第三十八条 第二十八条及び第三十条から前条までの規定は、政令で定めるところにより、ガス事業者以外の者であつて、ガスを供給する事業を行うもの又は自ら製造したガスを使用する事業を行う者に準用する。
(ガス事業者以外の者の事業の開始等の届出)
第三十九条 ガス事業者以外の者であつて、ガスを供給する事業を行うもの又は自ら製造したガスを使用する事業を行う者は、その事業を開始し、又は廃止したときは、遅滞なく、その旨を通商産業大臣に届け出なければならない。
第六章 雑則
(許可等の条件)
第四十条 許可又は認可には、条件を附し、及びこれを変更することができる。
2 前項の条件は、公共の利益を増進し、又は許可若しくは認可に係る事項の確実な実施を図るため必要な最少限度のものに限り、且つ、当該ガス事業者その他の者に不当な義務を課することとなるものであつてはならない。
(手数料)
第四十一条 左の表の上欄に掲げる者は、それぞれ同表の下欄に掲げる金額の範囲内で政令で定める額の手数料を納めなければならない。
手数料を納付すべき者
金額
一 国家試験を受けようとする者
八百円
二 ガス主任技術者免状の交付を受けようとする者
三百円
三 ガス主任技術者免状の再交付を受けようとする者
二百円
(公共用の土地の使用)
第四十二条 ガス事業者又は卸供給事業者(以下「ガス事業者等」という。)は、その事業の用に供するため、道路、橋、みぞ、河川、堤防その他公共の用に供せられる土地の地上又は地中に導管を設置する必要があるときは、その効用を妨げない限度において、その管理者の許可を受けて、これを使用することができる。
2 前項の場合においては、ガス事業者等は、管理者の定めるところにより、使用料を納めなければならない。
3 管理者が正当な事由がないのに第一項の許可を拒んだとき、又は管理者の定めた使用料の額が適正でないときは、主務大臣は、ガス事業者等の申請により使用を許可し、又は使用料の額を定めることができる。
4 前三項の規定は、道路法(昭和二十七年法律第百八十号)の規定による道路並びに同法第十八条第一項の規定により決定された道路の区域内の土地及び当該土地に設置された道路の附属物となるべきものについては、適用しない。
5 主務大臣は、左に掲げる場合は、あらかじめ、通商産業大臣に協議しなければならない。
一 第三項の規定により使用を許可し、又は使用料の額を定めようとするとき。
二 ガス事業者等が導管を設置するため前項の道路又は道路となるべき区域内の土地若しくは当該土地に設置された道路の附属物となるべきものを占用しようとする場合において、道路法第九十六条第五項の規定による訴願の裁決であつて、同条第一項第五号又は第十三号に掲げる処分に係るものをしようとするとき。
(土地の立入)
第四十三条 ガス事業者は、ガス工作物の設置に関する測量、実地調査又は工事のため必要があるときは、都道府県知事の許可を受けて、他人の土地に立ち入ることができる。
2 都道府県知事は、前項の許可の申請があつたときは、土地の所有者及び占有者にその旨を通知し、意見書を提出する機会を与えなければならない。
3 第一項の許可を受けた者は、他人の土地に立ち入るときは、あらかじめ、土地の占有者に通知しなければならない。
4 第一項の許可を受けた者は、他人の土地に立ち入るときは、都道府県知事の許可を受けたことを証する書面を携帯し、関係人に呈示しなければならない。
(植物の伐採等)
第四十四条 ガス事業者は、導管の設置又は保守を行うため必要があるときは、障害となる植物を伐採し、又は移植することができる。
2 前項の場合においては、ガス事業者は、植物の所有者と協議しなければならない。協議がととのわないとき、又は協議することができないときは、都道府県知事が裁定する。
(損失の補償)
第四十五条 ガス事業者は、前二条の規定により他人の土地に立ち入り、又は植物を伐採し、若しくは移植したことによつて土地の所有者、植物の所有者その他の関係人の現に受けた損失を補償しなければならない。
2 前項の補償について当事者間に協議がととのわないとき、又は協議することができないときは、都道府県知事が裁定する。
3 裁定のうち、補償金額について不服のある者は、その裁定を受けた日から三十日以内に訴をもつてその金額の増減を請求することができる。
4 前項の訴においては、ガス事業者又は土地の所有者、植物の所有者その他の関係人をもつて被告とする。
(報告の徴収)
第四十六条 通商産業大臣は、この法律の施行に必要な限度において、政令で定めるところにより、ガスを供給する事業又は自ら製造したガスを使用する事業を行う者に対し、その事業に関し報告をさせることができる。
(立入検査)
第四十七条 通商産業大臣は、この法律の施行に必要な限度において、その職員に、ガスを供給する事業又は自ら製造したガスを使用する事業を行う者の営業所、事務所その他の事業場に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係人に呈示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(公聴会)
第四十八条 通商産業大臣は、第十七条第一項又は第十八条第二項の規定による処分をしようとするときは、公聴会を開き、広く一般の意見をきかなければならない。
(聴聞)
第四十九条 通商産業大臣は、第十四条第一項若しくは第二項又は第十五条第一項若しくは第二項の規定による処分をしようとするときは、当該処分に係る者に対し、相当な期間をおいて予告した上、公開による聴聞を行わなければならない。
2 前項の予告においては、期日、場所及び事案の内容を示さなければならない。
3 聴聞に際しては、当該処分に係る者及び利害関係人に対し、当該事案について証拠を呈示し、意見を述べる機会を与えなければならない。
(異議の申立)
第五十条 この法律(第六章を除く。)の規定によつてした処分に対して不服のある者は、その旨を記載した書面をもつて、通商産業大臣に異議の申立をすることができる。
2 通商産業大臣は、前項の異議の申立があつたときは、前条の例により公開の聴聞をした後、文書をもつて決定をし、その正本を異議の申立をした者に送付しなければならない。
(苦情の申出)
第五十一条 ガス事業者のガスの供給に関し苦情のある者は、通商産業大臣に対し、理由を記載した文書を提出して苦情の申出をすることができる。
2 通商産業大臣は、前項の申出があつたときは、これを誠実に処理し、処理の結果を申出者に通知しなければならない。
(権限の委任)
第五十二条 この法律の規定により通商産業大臣の権限に属する事項は、政令で定めるところにより、通商産業局長又は都道府県知事に行わせることができる。
第七章 罰則
第五十三条 ガス工作物を損壊し、その他ガス工作物の機能に障害を与えてガスの供給を妨害した者は、五年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
2 みだりにガス工作物を操作してガスの供給を妨害した者は、二年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
3 ガス事業に従事する者が正当な事由がないのにガス工作物の維持又は運行の業務を取り扱わず、ガスの供給に障害を生ぜしめたときも、前項と同様とする。
4 第一項及び第二項の未遂罪は、罰する。
第五十四条 ガス事業者の承諾を得ないでみだりにガス工作物の施設を変更した者は、五万円以下の罰金に処する。
第五十五条 第三条の許可を受けないでガス事業を営んだ者は、三年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第五十六条 左の各号の一に該当する者は、二年以下の懲役若しくは二十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第十三条第一項の許可を受けないでガス事業の全部又は一部を休止し、又は廃止した者
二 第十六条第一項の規定に違反してガスの供給を拒んだ者
三 第十六条第二項の規定に違反してガスを供給した者
第五十七条 左の各号の一に該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第八条第一項の許可を受けないでガス発生設備又はガスホルダーを変更した者
二 第十二条第一項の規定に違反してガス事業以外の事業を営んだ者
三 第二十条の規定に違反してガスを供給した者
四 第二十二条の認可を受けた契約によらないでガスの供給を受け、又はガスを供給した者
五 第二十三条第一項の許可を受けないでガスを供給した者
六 第二十四条第一項の規定に違反してガスを供給した者
七 第三十二条第一項(第三十八条の規定により準用する場合を含む。)の規定によるガス主任技術者を選任しなかつた者
第五十八条 左の各号の一に該当する者は、十万円以下の罰金に処する。
一 第二十一条又は第二十九条の規定による記録をせず、又は虚偽の記録をした者
二 第二十八条第二項(第三十八条の規定により準用する場合を含む。)の規定による命令に違反した者
三 第三十条第三項(第三十八条の規定により準用する場合を含む。)の規定による命令に違反して工事をした者
第五十九条 左の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。
一 第七条第四項(第八条第三項において準用する場合を含む。)、第十一条第二項、第三十二条第二項(第三十八条の規定により準用する場合を含む。)又は第三十九条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
二 第十九条の規定に違反して掲示をしなかつた者
三 第二十五条の規定による届出をしないでガスを供給した者
四 第三十一条(第三十八条の規定により準用する場合を含む。)の規定による届出をしないで工事をした者
五 第三十七条(第三十八条の規定により準用する場合を含む。)の規定による命令に違反した者
六 第四十六条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
七 第四十七条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
第六十条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第五十五条から前条までの違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して、各本条の罰金刑を科する。
第六十一条 左の各号の一に該当する者は、一万円以下の過料に処する。
一 第九条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
二 第二十六条の規定に違反した者
三 第二十七条の規定による命令に違反した者
附 則
1 この法律は、昭和二十九年四月一日から施行する。
2 電気及びガスに関する臨時措置に関する法律(昭和二十七年法律第三百四十一号)の規定に基き旧公益事業令(昭和二十五年政令第三百四十三号)の規定の例によつてした処分、手続その他の行為は、この法律中これに相当する規定があるときは、この法律の規定によつてしたものとみなす。
3 この法律の施行の際現に電気及びガスに関する臨時措置に関する法律に基き旧公益事業令第二十六条の規定の例による許可を受けてガス事業を営んでいる者(以下「旧ガス事業者」という。)については、この法律の施行の日から三月間は、第三十条第二項の規定は、適用しない。その期間内に同条第一項の認可を申請した場合において、その申請について認可又は不認可の処分があるまでの間も、同様とする。
4 第三十一条の規定は、この法律の施行の日から二十五日を経過した日前に、同条の導管の工事を開始するガス事業者には、適用しない。
5 電気及びガスに関する臨時措置に関する法律施行規則(昭和二十七年通商産業省令第九十九号)第一条第一項の規定に基き旧瓦斯事業法施行規則(大正十四年商工省令、内務省令)第四十五条の規定の例により交付された甲種免状又は乙種免状は、それぞれこの法律の規定による甲種ガス主任技術者免状又は乙種ガス主任技術者免状とみなす。
6 この法律の施行の際現に旧ガス事業者に対しガスを供給している卸供給事業者については、この法律の施行の日から一月間は、第二十四条第一項の規定は、適用しない。その期間内に同項の認可を申請した場合において、その申請について認可又は不認可の処分があるまでの間も、同様とする。
7 この法律の施行の際現にガス事業者以外の者であつて、ガスを供給する事業を行つているもの又は現に自ら製造したガスを使用する事業を行つている者は、この法律の施行の日から三十日以内に、その旨を通商産業大臣に届け出なければならない。
8 この法律の施行の際現に存する旧ガス事業者と市町村との間のガス事業の経営に関する定に基き、旧ガス事業者又は市町村がその相手方に対し要求をし、又は承認を求めた場合において、協議がととのわないとき、又は協議することができないときは、通商産業大臣が内閣総理大臣と協議して裁定する。
9 前項の規定は、この法律の規定により通商産業大臣の許可又は認可を受けるべき事項については、適用しない。
10 附則第八項の規定による通商産業大臣の裁定は、文書をもつて行い、且つ、理由を附さなければならない。
11 通商産業大臣は、裁定書の正本を当事者に送付しなければならない。
12 附則第七項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、三万円以下の罰金に処する。
13 通商産業省設置法(昭和二十七年法律第二百七十五号)の一部を次のように改正する。
第四条第一項第四十四号中「及びガス」を削る。
第二十五条第一項の表中
電気及びガス関係法令改正審議会
電気及びガスに関する法令の改正に関する重要事項を調査審議すること。
ガス主任技術者試験委員
ガス主任技術者国家試験に関する事務をつかさどること。
電気関係法令改正審議会
電気に関する法令の改正に関する重要事項を調査審議すること。
に改める。
14 昭和二十二年法律第五十四号私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外等に関する法律(昭和二十二年法律第百三十八号)の一部を次のように改正する。
第一条第六号中「電気及びガスに関する臨時措置に関する法律」を「電気に関する臨時措置に関する法律」に改める。
15 郵便振替貯金法(昭和二十三年法律第六十号)の一部を次のように改正する。
第六十三条中「(公益事業の料金)」を「(電気事業及びガス事業の料金)」に、「公益事業者」を「電気事業者又はガス事業法(昭和二十九年法律第五十一号)によるガス事業者」に、「公益事業」を「電気事業又はガス事業」に改める。
16 土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)の一部を次のように改正する。
第三条第十七号中「又はガス工作物」を削り、同条第十七号の三の次に次の一号を加える。
十七の四 ガス事業法(昭和二十九年法律第五十一号)によるガス工作物
17 道路法の一部を次のように改正する。
第三十六条第一項中「地方鉄道法(大正八年法律第五十二号)」の下に「、ガス事業法(昭和二十九年法律第五十一号)」を加える。
18 電気及びガスに関する臨時措置に関する法律の一部を次のように改正する。
題名を次のように改める。
電気に関する臨時措置に関する法律
本則中「及びガス事業」及び「及びガス」を削り、「電気用品並びに」を「電気用品及び」に改める。
附則第九項中「電気及びガスに関する臨時措置に関する法律」を「電気に関する臨時措置に関する法律」に改める。
19 農山漁村電気導入促進法(昭和二十七年法律第三百五十八号)の一部を次のように改正する。
第四条第三号及び第十二条(見出しを含む。)中「電気及びガスに関する臨時措置に関する法律」を「電気に関する臨時措置に関する法律」に改める。
20 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
内閣総理大臣 吉田茂
農林大臣 保利茂
通商産業大臣 愛知揆一
郵政大臣 塚田十一郎
建設大臣 戸塚九一郎