(目的)
第七條 日本放送協会(以下單に「協会」という。)は、公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように放送を行うことを目的とする。
(法人格)
第八條 協会は、前條の目的を達成するためにこの法律の規定に基き設立される法人とする。
(業務)
第九條 協会は、第七條の目的を達成するため、左の業務を行う。
一 全国的及び地方的放送を行うため、放送局を設置し、維持し、及び運用すること。
二 国際放送を行うため、放送局を設置し、維持し、及び運用し、又は政府の施設を使用すること。
四 放送の進歩発達に必要な研究施設を設置すること。但し、協会の研究活動は、放送番組又は放送技術に密接に関連するものに限る。
2 協会は、前項の業務の外、第七條の目的を達成するため、左の業務を行うことができる。
一 放送番組編集上必要な劇団、音楽団等を維持し、養成し、又は助成すること。
二 協会が放送することを主たる目的とする公開演奏会その他の催を主催し、又は後援すること。
三 放送の普及発達に必要な周知宣伝を行い、出版をし、及び放送の受信に関し公衆の相談に応ずること。
四 放送番組編集上必要な文芸、音楽、美術及び学術の著作権を取得し、使用し、又はその使用を承認すること。
五 放送に必要な特許権及び実用新案権並びにこれらの実施権を取得すること。
六 放送番組編集のため、ニユース及び情報を收集し、並びにこれを他人と交換すること。
3 協会は、前二項の業務を行うに当つては、営利を目的としてはならない。
4 協会は、放送受信用機器若しくはその真空管又は部品を認定し、放送受信用機器の修理業者を指定し、その他いかなる名目であつても、無線用機器の製造業者、販売業者及び修理業者の行う業務を規律し、又はこれに干渉するような行為をしてはならない。
5 第二項第七号の放送受信用機器の修理業務は、電波監理委員会が、定期的に行う調査により、放送を受信する者が放送受信用機器の修理業者を利用するのに著しく不便と認め、又は放送を受信する者の利益を図るため必要と認めて指定した場所に限り行うことができる。
(事務所)
2 協会は、必要な地に従たる事務所を置くことができる。
(定款)
第十一條 協会は、定款をもつて、左の事項を規定しなければならない。
2 定款は、電波監理委員会の認可を受けて変更することができる。
(登記)
第十二條 協会は、主たる事務所の変更、従たる事務所の新設その他政令で定める事項について、政令で定める手続により登記しなければならない。
2 前項の規定により登記を必要とする事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(経営委員会の設置及び権限)
2 経営委員会は、協会の経営方針を決定し、且つ、その業務の運営を指導統制する権限と責任を有する。
第十四條 左の事項は、経営委員会の議決を経なければならない。但し、経営委員会が軽微と認めた事項については、この限りでない。
三 放送局の設置計画並びに放送局の開設、休止及び廃止
六 第三十二條の受信契約の條項及び受信料の免除の基準
九 役員の報酬、退職金及び交際費(いかなる名目によるかを問わずこれに類するものを含む。)
(経営委員会の組織)
第十五條 経営委員会は、委員八人及び会長をもつて組織する。
2 経営委員会に委員長一人を置き、委員のうちから、委員及び会長が選挙する。
4 経営委員会は、あらかじめ、委員のうちから、委員長に事故がある場合に委員長の職務を代行する者を定めて置かなければならない。
(委員の任命)
第十六條 委員は、公共の福祉に関し公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。この場合において、その選任については、教育、文化、科学、産業その他の各分野が公平に代表されることを考慮しなければならない。
2 前項の任命に当つては、別表に定める地区に住所を有する者のうちから、各一人を任命しなければならない。
3 委員の任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のため、両議院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、第一項の規定にかかわらず、両議院の同意を得ないで委員を任命することができる。この場合においては、任命後最初の国会において、両議院の同意を得なければならない。
4 左の各号の一に該当する者は、委員となることができない。
二 国家公務員として懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者
三 国家公務員(審議会、協議会等の委員その他これに準ずる地位にある者であつて非常勤のものを除く。)
四 政党の役員(任命の日以前一年間においてこれに該当した者を含む。)
五 放送用の送信機若しくは放送受信用の受信機の製造業者若しくは販売業者又はこれらの者が法人であるときはその役員(いかなる名称によるかを問わずこれと同等以上の職権若しくは支配力を有する者を含む。以下この條中同じ。)若しくはその法人の議決権の十分の一以上を有する者(任命の日以前一年間においてこれらに該当した者を含む。)
六 放送事業者若しくは新聞社、通信社その他ニユース若しくは情報の頒布を業とする事業者又はこれらの事業者が法人であるときはその役員若しくは職員若しくはその法人の議決権の十分の一以上を有する者(任命の日以前一年間においてこれらに該当した者を含む。)
七 前二号に掲げる事業者の団体の役員(任命の日以前一年間においてこれらに該当した者を含む。)
5 委員の任命については、会長を含め五人以上が同一の政党に属する者となることとなつてはならない。
(任期)
第十七條 委員の任期は、三年とする。但し、補欠の委員は、前任者の残任期間在任する。
3 委員は、任期が満了した場合においても、あらたに委員が任命されるまでは、第一項の規定にかかわらず、引き続き在任する。
(退職)
第十八條 委員は、第十六條第三項後段の規定による両議院の同意が得られなかつたときは、当然退職するものとする。
(罷免)
第十九條 内閣総理大臣は、委員が第十六條第四項各号の一に該当するに至つたときは、これを罷免しなければならない。
第二十條 内閣総理大臣は、委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認めるとき、又は委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認めるときは、両議院の同意を得て、これを罷免することができる。この場合において各議院は、その院の定めるところにより、当該委員に弁明の機会を與えなければならない。
2 内閣総理大臣は、委員及び会長のうち五人以上が同一の政党に属することとなつたときは、同一の政党に属する者が四人になるように、両議院の同意を得て、委員を罷免するものとする。
第二十一條 委員は、前二條の場合を除く外、その意に反して罷免されることがない。
(委員の報酬)
第二十二條 委員は、報酬を受けない。但し、旅費その他業務の遂行に伴う実費を受けるものとする。
(議決の方法)
第二十三條 経営委員会は、委員長並びにその他の委員及び会長のうち四人以上が出席しなければ、会議を開き、議決をすることができない。
2 経営委員会の議事は、別に規定するものの外、出席者の過半数をもつて決する。可否同数のときは、委員長が決する。
(役員)
第二十四條 協会に、役員として、経営委員会の委員の外、会長一人、副会長一人、理事三人及び監事二人を置く。
(理事会)
第二十五條 会長、副会長及び理事をもつて理事会を構成する。
2 理事会は、定款の定めるところにより、協会の重要業務の執行について審議する。
(会長等)
第二十六條 会長は、協会を代表し、経営委員会の定めるところに従い、その業務を総理する。
2 副会長は、会長の定めるところにより、協会を代表し、会長を補佐して協会の業務を掌理し、会長に事故があるときはその職務を代行し、会長が欠員のときはその職務を行う。
3 理事は、会長の定めるところにより、協会を代表し、会長及び副会長を補佐して協会の業務を掌理し、会長及び副会長に事故があるときはその職務を代行し、会長及び副会長が欠員のときはその職務を行う。
4 監事は、会長、副会長及び理事の行う業務を監査し、その監査の結果を経営委員会に報告する。
2 前項の任命に当つては、経営委員会は、委員六人以上の多数による議決によらなければならない。
3 副会長及び理事は、経営委員会の同意を得て、会長が任命する。
5 会長、副会長、理事及び監事の任命については、第十六條第四項の規定を準用する。この場合において同項第六号中「放送事業者若しくは新聞社」とあるのは「新聞社」と読み替えるものとする。
第二十八條 会長、副会長、理事及び監事の任期は、三年とする。但し、補欠の会長は、前任者の残任期間在任する。
2 会長、副会長、理事及び監事は、再任されることができる。
第二十九條 経営委員会は、会長若しくは監事が職務の執行の任にたえないと認めるとき、又は会長若しくは監事に職務上の義務違反その他会長若しくは監事たるに適しない非行があると認めるときは、これを罷免することができる。
2 会長は、副会長若しくは理事が職務執行の任にたえないと認めるとき、又は副会長若しくは理事に職務上の義務違反その他副会長若しくは理事たるに適しない非行があると認めるときは、経営委員会の同意を得て、これを罷免することができる。
(会長等の兼職禁止)
第三十條 会長、副会長及び理事は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。
2 会長、副会長及び理事は、放送事業に投資してはならない。
(民法等の準用)
第三十一條 民法第四十四條(法人の不法行為能力)、第五十條(法人の住所)、第五十四條(代表権の制限)、第五十六條(仮理事)及び第五十七條(特別代理人)並びに非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第三十五條第一項(仮理事等の選任の管轄)の規定は、協会に準用する。
(受信契約及び受信料)
第三十二條 協会の標準放送(五百三十五キロサイクルから千六百五キロサイクルまでの周波数を使用する放送をいう。)を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。但し、放送の受信を目的としない受信設備を設置した者については、この限りでない。
2 協会は、あらかじめ電波監理委員会の認可を受けた基準によるのでなければ、前項本文の規定により契約を締結した者から徴收する受信料を免除してはならない。
3 協会は、第一項の契約の條項については、あらかじめ電波監理委員会の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同様とする。
(国際放送実施の命令)
第三十三條 電波監理委員会は、放送区域、放送事項その他必要な事項を指定して、協会に国際放送を行うべきことを命ずることができる。
(放送に関する研究)
第三十四條 電波監理委員会は、放送の進歩発達を図るため必要と認めるときは、協会に対し、第九條第一項第四号の範囲内で事項を定めてその研究を命ずることができる。
2 前項の規定によつて行われた研究の成果は、放送事業の発達その他公共の利益になるように利用されなければならない。
(国際放送等の費用負担)
第三十五條 前二條の規定により協会の行う業務に要する費用は、国の負担とする。
2 前二條の命令は、前項の規定により国が負担する金額が国会の議決を経た予算の金額をこえない範囲内でしなければならない。
(事業年度)
第三十六條 協会の事業年度は、毎年四月に始まり、翌年三月に終る。
(收支予算、事業計画及び資金計画)
第三十七條 協会は、毎事業年度の收支予算、事業計画及び資金計画を作成し、電波監理委員会に提出しなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 電波監理委員会が前項の收支予算、事業計画及び資金計画を受理したときは、これを検討して意見を附し、内閣を経て国会に提出し、その承認を受けなければならない。
3 前項の收支予算、事業計画及び資金計画に同項の規定によりこれを変更すべき旨の意見が附してあるときは、国会の委員会は、協会の意見を徴するものとする。
4 第三十二條第一項本文の規定により契約を締結した者から徴收する受信料の月額は、国会が、第一項の收支予算を承認することによつて、定める。
(業務報告の提出)
第三十八條 協会は、毎事業年度の業務報告書を作成し、当該事業年度経過後二箇月以内に、電波監理委員会に提出しなければならない。
2 電波監理委員会は、前項の業務報告書を受理したときは、これに意見を附し、内閣を経て国会に報告しなければならない。
(支出の制限)
第三十九條 協会の收入は、第九條第一項及び第二項に掲げる業務の遂行以外の目的に支出してはならない。
(貸借対照表等の提出)
第四十條 協会は、毎事業年度の財産目録、貸借対照表及び損益計算書並びにこれに関する説明書を作成し、当該事業年度経過後二箇月以内に、電波監理委員会に提出しなければならない。
2 電波監理委員会は、前項の書類を受理したときは、これを内閣総理大臣を経て内閣に提出しなければならない。
3 内閣は、前項の書類を会計検査院の検査を経て国会に提出しなければならない。
(会計検査院の検査)
第四十一條 協会の会計については、会計検査院が検査する。
(放送債券)
第四十二條 協会は、放送設備の建設又は改修の資金に充てるため、大蔵大臣の認可を受けて、放送債券を発行することができる。
2 前項の放送債券の発行額は、三十億円をこえることができない。
3 協会は、第一項の規定により放送債券を発行したときは、毎事業年度末現在の発行債券未償却額の十分の一に相当する額を償却積立金として積み立てなければならない。
4 協会は、放送債券を償却する場合に限り、前項に規定する積立金を充当することができる。
5 協会の放送債権の債権者は、協会の財産について他の債権者に先だち自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
6 前項の先取特権の順位は、民法の一般の先取特権に次ぐものとする。
7 前六項に定めるものの外、放送債券に関し必要な事項については、政令の定めるところにより、商法(明治三十二年法律第四十八号)及び非訟事件手続法の社債に関する規定を準用する。
(放送の休止及び廃止)
第四十三條 協会は、電波監理委員会の認可を受けなければ、その放送局を廃止し、又はその放送を十二時間以上休止することができない。但し、不可抗力による場合は、この限りでない。
2 協会は、その放送を休止したときは、前項の認可を受けた場合を除き、遅滯なくその旨を電波監理委員会に届け出なければならない。
(放送番組の編集)
第四十四條 協会は、放送番組の編集について、公衆の要望を満たすとともに文化水準の向上に寄與するように、最大の努力を拂わなければならない。
2 協会は、公衆の要望を知るため、定期的に、科学的な世論調査を行い、且つ、その結果を公表しなければならない。
3 協会は、放送番組の編集に当つては、左の各号の定めるところによらなければならない。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
(候補者放送)
第四十五條 協会が公選による公職の候補者に政見放送その他選挙運動に関する放送をさせた場合において、その選挙における他の候補者の請求があつたときは、同等の條件で放送をさせなければならない。
(広告放送の禁止)
第四十六條 協会は、他人の営業に関する広告の放送をしてはならない。
2 前項の規定は、放送番組編集上必要であつて、且つ、他人の営業に関する広告のためにするものでないと認められる場合において、著作者又は営業者の氏名又は名称等を放送することを妨げるものではない。
(放送設備の讓渡等の制限)
第四十七條 協会は、電波監理委員会の認可を受けなければ、放送設備の全部又は一部を讓渡し、賃貸し、担保に供し、その運用を委託し、その他いかなる方法によるかを問わず、これを他人の支配に属させることができない。
2 電波監理委員会は、前項の認可をしようとするときは、両議院の同意を得なければならない。
(免税)
第四十八條 協会には、所得税及び法人税を課さない。
(土地收用)
第四十九條 協会の営む放送事業は、土地收用法(明治三十三年法律第二十九号)第二條の土地を收用し、又は使用することのできる事業とし、同法を適用する。
(解散)
第五十條 協会の解散については、別に法律で定める。
2 協会が解散した場合においては、協会の残余財産は、国に帰属する。