放送法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第30号
公布年月日: 昭和34年3月23日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

昭和25年の放送法施行から8年間で、放送技術と業務は著しく発展し、商業放送やテレビ放送の登場、放送局数・受信者数の増加により放送界の状況は大きく変化した。今後もFM放送やカラーテレビ放送の登場が予測される中、放送は政治・経済・産業・文化の各面で重要な役割を果たし、国民生活への影響も増大している。現行放送法は、このような進歩発達する放送界の実情に即応していないとの指摘が各界からなされており、政府は関係各方面の意見を聴取し、法改正案を作成するに至った。

参照した発言:
第31回国会 衆議院 逓信委員会 第1号

審議経過

第31回国会

衆議院
(昭和33年12月16日)
参議院
(昭和33年12月16日)
衆議院
(昭和33年12月18日)
参議院
(昭和33年12月18日)
衆議院
(昭和33年12月23日)
(昭和34年2月3日)
(昭和34年2月3日)
参議院
(昭和34年2月17日)
(昭和34年2月26日)
(昭和34年2月27日)
(昭和34年3月3日)
(昭和34年3月5日)
(昭和34年3月10日)
(昭和34年3月11日)
(昭和34年3月12日)
(昭和34年3月13日)
(昭和34年3月25日)
衆議院
(昭和34年5月2日)
放送法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和三十四年三月二十三日
内閣総理大臣 岸信介
法律第三十号
放送法の一部を改正する法律
放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)の一部を次のように改正する。
第二条第一号の次に次の一号を加える。
一の二 「国内放送」とは、国内において受信されることを目的とする放送をいう。
第二条に次の二号を加える。
五 「教育番組」とは、学校教育又は社会教育のための放送の放送番組をいう。
六 「教養番組」とは、教育番組以外の放送番組であつて、国民の一般的教養の向上を直接の目的とするものをいう。
第五条を次のように改める。
第五条 削除
第九条第一項各号を次のように改める。
一 次に掲げる放送による国内放送を行うこと。
イ 標準放送(五百三十五キロサイクルから千六百五キロサイクルまでの周波数を使用して音声その他の音響を送る放送をいう。以下同じ。)
ロ 超短波放送(三十メガサイクルをこえる周波数を使用して音声その他の音響を送る放送であつて、ハに掲げる放送に該当しないものをいう。以下同じ。)
ハ テレビジョン放送(静止し、又は移動する事物の瞬間的影像及びこれに伴う音声その他の音響を送る放送をいう。以下同じ。)
二 放送及びその受信の進歩発達に必要な調査研究を行うこと。
第九条第二項中第七号を第九号とし、同号の次に次の一号を加える。
十 前各号に掲げるもののほか、放送及びその受信の進歩発達に関し特に必要と認められる業務で郵政大臣の認可を受けたものを行うこと。
第九条第二項第六号の次に次の二号を加える。
七 放送番組及びその編集上必要な資料を第五十一条に規定する一般放送事業者の用に供し、又は外国の放送局に提供すること。
八 委託により、放送及びその受信の進歩発達に寄与する調査研究、放送設備の設計その他の技術援助並びに放送に従事する者の養成を行うこと。
第九条第五項中「第二項第七号」を「第二項第九号」に改め、「、定期的に行う調査により」を削り、同項を同条第七項とし、同条第四項を同条第六項とし、同条第三項の次に次の二項を加える。
4 協会は、標準放送と超短波放送とのいずれか及びテレビジョン放送がそれぞれあまねく全国において受信できるように措置をしなければならない。
5 協会は、第一項第二号の業務を行うについて、放送に関係を有する者その他学識経験を有する者から意見の申出があつた場合において、その内容が放送及びその受信の進歩発達に寄与するものであり、かつ、協会の他の業務の遂行に支障を生じないものであるときは、これを尊重するものとし、同号の業務による成果は、できる限り一般の利用に供しなければならない。
第九条の次に次の一条を加える。
第九条の二 協会は、前条第一項及び第二項に規定する業務のほか、国際放送を行うものとする。
第十三条第二項中「を決定し、且つ、その業務の運営を指導統制」を「その他その業務の運営に関する重要事項を決定」に改める。
第十四条第四号中「放送番組」を「第四十四条の二第一項に規定する国内番組基準及び第四十四条の五第二項に規定する国際番組基準並びに放送番組」に改める。
第十五条第一項中「委員八人及び会長」を「委員十二人」に改め、同条第二項中「委員のうちから、委員及び会長が選挙する。」を「委員の互選によつてこれを定める。」に改める。
第十六条第二項中「任命に当つては」の下に「、委員のうち八人については」を加え、「、各一人」を「各一人を、その他の委員については、これらの地区を通じて四人」に改め、同条第四項第六号及び第七号中「(任命の日以前一年間においてこれらに該当した者を含む。)」を削り、同条第五項中「会長を含め」を削る。
第二十条第二項中「委員及び会長」を「委員」に改める。
第二十二条中「報酬を受けない。但し、」を削り、「受けるものとする。」を「受けるほか、その勤務の日数に応じ相当の報酬を受けることができる。」に改める。
第二十三条の見出しを「(議決の方法等)」に改め、同条第一項中「並びにその他の委員及び会長のうち四人以上」を「又は第十五条第四項に規定する委員長の職務を代行する者及び六人以上の委員」に改め、同条第二項中「出席者」を「出席委員」に改め、同条に次の一項を加える。
3 会長は、第一項の会議に出席し、意見を述べることができる。
第二十四条中「理事三人」を「理事七人以上十人以内」に、「監事二人」を「監事三人以内」に改める。
第二十七条第二項中「委員六人」を「委員九人」に改め、同条第五項中「読み替える」を「、「十分の一以上を有する者」とあるのは「十分の一以上を有する者(任命の日以前一年間においてこれらに該当した者を含む。)」と、同項第七号中「役員」とあるのは「役員(任命の日以前一年間においてこれらに該当した者を含む。)」とそれぞれ読み替える」に改める。
第二十八条第一項ただし書を削り、同条に次の一項を加える。
3 会長は、任期が満了した場合においても、新たに会長が任命されるまでは、第一項の規定にかかわらず、引き続き在任する。
第二十八条の次に次の一条を加える。
第二十八条の二 経営委員会又は会長は、それぞれ第二十七条第一項から第四項までの規定により任命した役員が同条第五項において準用する第十六条第四項各号の一に該当するに至つたときは、当該役員が同項第六号の事業者又はその団体のうち協会がその構成員であるものの役員となつたことにより同項第六号又は第七号に該当するに至つた場合を除くほか、これを罷免しなければならない。
第三十四条第一項中「放送」の下に「及びその受信」を加え、「第九条第一項第四号の範囲内で」を削る。
第三十七条の次に次の一条を加える。
第三十七条の二 協会は、毎事業年度の収支予算、事業計画及び資金計画が国会の閉会その他やむを得ない理由により当該事業年度の開始の日までにその承認を受けることができない場合においては、三箇月以内に限り、事業の経常的運営及び施設の建設又は改修の工事(国会の承認を受けた前事業年度の事業計画に基いて実施したこれらの工事の継続に係るものに限る。)に必要な範囲の収支予算、事業計画及び資金計画を作成し、郵政大臣の認可を受けてこれを実施することができる。この場合において、前条第四項に規定する受信料の月額は、同項の規定にかかわらず、前事業年度終了の日の属する月の受信料の月額とする。
2 前項の規定による収支予算、事業計画及び資金計画は、当該事業年度の収支予算、事業計画及び資金計画の国会による承認があつたときは、失効するものとし、同項の規定による収支予算、事業計画及び資金計画に基いてした収入、支出、事業の実施並びに資金の調達及び返済は、当該事業年度の収支予算、事業計画及び資金計画に基いてしたものとみなす。
3 郵政大臣は、第一項の認可をしたときは、事後にこれを国会に報告しなければならない。
第三十九条中「第二項に掲げる業務」を「第二項並びに第九条の二の業務」に改める。
第四十条第二項中「内閣総理大臣を経て」を削る。
第四十二条第二項中「三十億円」を「会計検査院の検査を経た最近の事業年度の貸借対照表による協会の純財産額の三倍」に改める。
第四十四条の見出しを「(国内放送の放送番組の編集等)」に改め、同条第一項を次のように改める。
協会は、国内放送の放送番組の編集及び放送に当つては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 豊かで、かつ、よい放送番組を放送することによつて公衆の要望を満たすとともに文化水準の向上に寄与するように、最大の努力を払うこと。
二 全国向けの放送番組のほか、地方向けの放送番組を有するようにすること。
三 わが国の過去のすぐれた文化の保存並びに新たな文化の育成及び普及に役立つようにすること。
第四十四条第三項各号列記以外の部分中「放送番組」を「国内放送の放送番組」に改め、同項第一号中「公安」の下に「及び善良な風俗」を加え、同条に次の二項を加える。
4 協会は、国内放送の放送番組の編集に当つては、特別な事業計画によるものを除くほか、教養番組又は教育番組並びに報道番組及び娯楽番組を設け、放送番組の相互の間の調和を保つようにしなければならない。
5 協会は、教育番組の編集及び放送に当つては、その放送の対象とする者が明確で、内容がその者に有益適切であり、組織的かつ継続的であるようにするとともに、その放送の計画及び内容をあらかじめ公衆が知ることができるようにしなければならない。この場合において、当該番組が学校向けのものであるときは、その内容が学校教育に関する法令の定める教育課程の基準に準拠するようにしなければならない。
第四十四条の次に次の六条を加える。
(国内番組基準)
第四十四条の二 協会は、国内放送の放送番組の種別及び放送の対象とする者に応じて国内放送の放送番組の編集の基準(以下「国内番組基準」という。)を定め、これに従つて国内放送の放送番組の編集をしなければならない。
2 協会は、前項の規定により国内番組基準を定めた場合には、これを公表しなければならない。これを変更した場合も、同様とする。
(国内放送の放送番組審議会)
第四十四条の三 協会は、国内放送の放送番組の適正を図るため、中央放送番組審議会(以下「中央審議会」という。)及び地方放送番組審議会(以下「地方審議会」という。)を置くものとする。
2 地方審議会は、政令で定める地域ごとに置くものとする。
3 中央審議会又は地方審議会は、次条第一項又は第二項の規定による会長の諮問に応じて答申する。
4 中央審議会及び地方審議会は、国内放送の放送番組の適正を図るため必要があると認めるときは、会長に対して意見を述べることができる。
5 中央審議会は委員十五人以上、地方審議会は委員七人以上をもつて組織する。
6 中央審議会の委員は、学識経験を有する者のうちから、経営委員会の同意を得て、会長が委嘱する。
7 地方審議会の委員は、学識経験を有する者であつて、当該地方審議会に係る第二項に規定する地域に住所を有するもののうちから、会長が委嘱する。
第四十四条の四 協会が国内番組基準及び国内放送の放送番組の編集に関する基本計画を定め、又はこれを変更しようとするときは、会長は、中央審議会に諮問しなければならない。
2 協会が前条第二項に規定する地域向けの放送番組の編集及び放送に関する計画を定め、又はこれを変更しようとするときは、会長は、地方審議会に諮問しなければならない。
3 会長は、中央審議会又は地方審議会が前条第三項又は第四項の規定により答申し、又は意見を述べた事項があるときは、これを尊重して必要な措置をしなければならない。
(国際放送の放送番組の編集等)
第四十四条の五 協会は、国際放送の放送番組の編集及び放送又は外国の放送局に提供する放送番組の編集に当つては、わが国の文化、産業その他の事情を紹介してわが国に対する正しい認識をつちかい、及び普及すること等によつて国際親善の増進及び外国との経済交流の発展に資するとともに、海外同胞に適切な慰安を与えるようにしなければならない。
2 第四十四条の二第一項の規定は、協会の国際放送の放送番組の編集について準用する。この場合において、同項中「国内番組基準」とあるのは、「国際番組基準」と読み替えるものとする。
(国際放送番組審議会)
第四十四条の六 協会は、国際放送の放送番組の適正を図るため、国際放送番組審議会(以下「国際審議会」という。)を置くものとする。
2 第四十四条の三第三項から第六項まで並びに第四十四条の四第一項及び第三項の規定は、国際審議会について準用する。この場合において、第四十四条の三第三項中「次条第一項又は第二項」とあるのは「次条第一項」と、同条第四項中「国内放送」とあるのは「国際放送」と、同条第五項中「中央審議会は委員十五人以上、地方審議会は委員七人以上」とあるのは「国際審議会は、委員十人以上」と、第四十四条の四第一項中「国内番組基準及び国内放送」とあるのは「国際番組基準及び国際放送」とそれぞれ読み替えるものとする。
(放送内容についての事後措置)
第四十四条の七 協会は、政令の定めるところにより、当該放送番組の放送後三週間以内に限り、放送番組の内容を放送後において中央審議会、地方審議会若しくは国際審議会又は第四条の規定による訂正若しくは取消の放送の関係者が確認することができるように必要な措置をしなければならない。
第四十八条第一項第一号中「第九条第五項」を「第九条第二項第十号(任意的業務の認可)、第九条第七項」に改め、「(放送に関する研究の実施命令)」の下に「、第三十七条の二第一項(収支予算等の認可)」を加え、同項第二号中「日本放送協会」を「協会」に改め、同条第二項中「前項各号に掲げる」を「前項各号の」に改める。
第四十九条第一項中「前条に掲げる」を「前条第一項各号の」に改め、同条の次に次の一条を加える。
(資料の提出)
第四十九条の二 郵政大臣は、この法律の施行に必要な限度において、政令の定めるところにより、協会に対しその業務に関し資料の提出を求めることができる。
第五十一条中「(協会以外の放送事業者をいう。以下同じ。)」を削り、同条を第五十一条の三とし、第三章中同条の前に次の二条を加える。
(放送番組の編集等)
第五十一条 第四十四条第三項から第五項まで及び第四十四条の二の規定は、一般放送事業者(協会以外の放送事業者をいう。以下同じ。)の放送番組の編集又は放送について準用する。
(放送番組審議機関)
第五十一条の二 一般放送事業者は、放送番組の適正を図るため、放送番組審議機関(以下「審議機関」という。)を置くものとする。ただし、一の一般放送事業者の放送局の放送区域(電波法第十四条第三項第三号の放送区域をいう。以下この項において単に「放送区域」という。)と他の一般放送事業者の放送区域とが重複する場合において、その重複する部分が当該いずれかの一般放送事業者の放送区域の三分の二以上に当るとき又はその重複する部分の放送区域内の人口が当該いずれかの一般放送事業者の放送区域内の人口の三分の二以上に当るときは、これらの一般放送事業者は、共同して審議機関を置くことができる。
2 第四十四条の三第三項から第六項まで並びに第四十四条の四第一項及び第三項の規定は、審議機関について準用する。この場合において、第四十四条の三第三項中「次条第一項又は第二項」とあるのは「次条第一項」と、「会長」とあるのは「一般放送事業者」と、同条第四項中「会長」とあるのは「一般放送事業者」と、同条第五項中「中央審議会は委員十五人以上、地方審議会は」とあるのは「審議機関は、」と、同条第六項中「経営委員会の同意を得て、会長が委嘱する。」とあるのは「一般放送事業者が委嘱(第五十一条の二第一項ただし書の規定により置かれる審議機関の場合にあつては、共同して委嘱)する。この場合において、その三分の一以内は、当該放送事業者の役員又は職員をもつて充てることができる。」と、第四十四条の四第一項及び第三項中「会長」とあるのは「一般放送事業者」とそれぞれ読み替えるものとする。
第五十二条の次に次の二条を加える。
(学校向け放送における広告の制限)
第五十二条の二 一般放送事業者は、学校向けの教育番組の放送を行う場合には、その放送番組に学校教育の妨げになると認められる広告を含めてはならない。
(放送番組の供給に関する協定の制限)
第五十二条の三 一般放送事業者は、特定の者からのみ放送番組の供給を受けることとなる条項を含む放送番組の供給に関する協定を締結してはならない。
第五十三条の見出しを「(放送内容についての事後措置及び資料の提出)」に改め、同条中「第四十四条第三項」を「第四十四条の七及び第四十九条の二」に改め、同条に次の後段を加える。
この場合において、第四十四条の七中「中央審議会、地方審議会若しくは国際審議会」とあるのは、「審議機関」と読み替えるものとする。
第五十五条各号列記以外の部分中「左の場合」を「次の各号の一に該当する場合」に改め、同条第一号中「第九条に規定する業務」を「第九条第一項及び第二項並びに第九条の二の業務」に改め、同条第二号中「若しくは第三項」の下に「、第三十七条の二第一項」を加え、同条第三号中「第三十八条第一項」の下に「、第三十九条」を加える。
第五十八条中「不実な登記をした」を「第四十三条第二項の規定に違反して届出をしない」に改める。
第五十九条を次のように改める。
第五十九条 第四十九条の二(第五十三条において準用する場合を含む。)の規定による資料の提出を怠り、又は虚偽の資料を提出した者は、一万円以下の過料に処する。
附 則
1 この法律は、公布の日から起算して三十日を経過した日から施行する。ただし、第四十四条の次に六条を加える改正規定中第四十四条の三、第四十四条の四及び第四十四条の六に係る部分並びに第三章中二条を加える改正規定中第五十一条の二に係る部分は、公布の日から起算して六十日を経過した日から、第四十四条の次に六条を加える改正規定中第四十四条の七に係る部分及び第五十三条の改正規定(第四十四条の七に係る部分に限る。)は、公布の日から起算して九十日を経過した日から、第四十四条の次に六条を加える改正規定中第四十四条の二及び第四十四条の五第二項に係る部分並びに第三章中二条を加える改正規定中第五十一条(第四十四条の二に係る部分に限る。)に係る部分は、公布の日から起算して百二十日を経過した日からそれぞれ施行する。
2 放送法第十六条第三項の規定は、この法律の施行により新たに任命される日本放送協会の経営委員会の委員(以下「委員」という。)について準用する。
3 この法律の施行により新たに任命される委員の任期は、放送法第十七条第一項の規定にかかわらず、内閣総理大臣の定めるところにより、一人については昭和三十五年六月十三日まで、一人については昭和三十六年七月七日まで、二人については昭和三十四年六月四日に退任する委員の退任に伴い任命される委員(その補欠の委員を含む。)の任期の末日までとする。
内閣総理大臣 岸信介
郵政大臣 寺尾豊