災害対策基本法
法令番号: 法律第二百二十三号
公布年月日: 昭和36年11月15日
法令の形式: 法律
災害対策基本法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十六年十一月十五日
内閣総理大臣 池田勇人
法律第二百二十三号
災害対策基本法
目次
第一章
総則(第一条―第十条)
第二章
防災に関する組織
第一節
中央防災会議(第十一条―第十三条)
第二節
地方防災会議(第十四条―第二十三条)
第三節
非常災害対策本部(第二十四条―第二十八条)
第四節
災害時における職員の派遣(第二十九条―第三十三条)
第三章
防災計画(第三十四条―第四十五条)
第四章
災害予防(第四十六条―第四十九条)
第五章
災害応急対策
第一節
通則(第五十条―第五十三条)
第二節
警報の伝達等(第五十四条―第五十七条)
第三節
事前措置及び避難(第五十八条―第六十一条)
第四節
応急措置(第六十二条―第八十六条)
第六章
災害復旧(第八十七条―第九十条)
第七章
財政金融措置(第九十一条―第百四条)
第八章
災害緊急事態(第百五条―第百十二条)
第九章
雑則(第百十三条―第百十五条)
第十章
罰則(第百十六条―第百二十条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、国土並びに国民の生命、身体及び財産を災害から保護するため、防災に関し、国、地方公共団体及びその他の公共機関を通じて必要な体制を確立し、責任の所在を明確にするとともに、防災計画の作成、災害予防、災害応急対策、災害復旧及び防災に関する財政金融措置その他必要な災害対策の基本を定めることにより、総合的かつ計画的な防災行政の整備及び推進を図り、もつて社会の秩序の維持と公共の福祉の確保に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 災害 暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波その他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害をいう。
二 防災 災害を未然に防止し、災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ、及び災害の復旧を図ることをいう。
三 指定行政機開 国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項に規定する国の行政機関及び同法第八条第一項に規定する機関で、内閣総理大臣が指定するものをいう。
四 指定地方行政機関 指定行政機関の地方支分部局(国家行政組織法第九条の地方支分部局をいう。)その他の国の地方行政機関で、内閣総理大臣が指定するものをいう。
五 指定公共機関 日本専売公社、日本国有鉄道、日本電信電話公社、日本銀行、日本赤十字社、日本放送協会その他の公共的機関及び電気、ガス、輸送、通信その他の公益的事業を営む法人で、内閣総理大臣が指定するものをいう。
六 指定地方公共機関 港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)第四条第一項の港務局、土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)第五条第一項の土地改良区その他の公共的施設の管理者及び都道府県の地域において電気、ガス、輸送、通信その他の公益的事業を営む法人で、当該都道府県の知事が指定するものをいう。
七 防災計画 防災基本計画及び防災業務計画並びに地域防災計画をいう。
八 防災基本計画 中央防災会議が作成する防災に関する基本的な計画をいう。
九 防災業務計画 指定行政機関の長(当該指定行政機関が国家行政組織法第三条第二項の委員会である場合にあつては、当該指定行政機関。第十二条第五項を除き、以下同じ。)又は指定公共機関(指定行政機関の長又は指定公共機関から委任された事務又は業務については、当該委任を受けた指定地方行政機関の長又は指定地方公共機関)が防災基本計画に基づきその所掌事務又は業務について作成する防災に関する計画をいう。
十 地域防災計画 一定地域に係る防災に関する計画で、次に掲げるものをいう。
イ 都道府県地域防災計画 都道府県の地域につき、当該都道府県の都道府県防災会議が作成するもの
ロ 市町村地域防災計画 市町村の地域につき、当該市町村の市町村防災会議又は市町村長が作成するもの
ハ 指定地域都道府県防災計画 二以上の都道府県の区域の全部又は一部にわたる地域につき、都道府県防災会議の協議会が作成するもの
ニ 指定地域市町村防災計画 二以上の市町村の区域の全部又は一部にわたる地域につき、市町村防災会義の協議会が作成するもの
(国の責務)
第三条 国は、国土並びに国民の生命、身体及び財産を災害から保護する使命を有することにかんがみ、組織及び機能のすべてをあげて防災に関し万全の措置を講ずる責務を有する。
2 国は、前項の責務を遂行するため、災害予防、災害応急対策及び災害復旧の基本となるべき計画を作成し、及び法令に基づきこれを実施するとともに、地方公共団体、指定公共機関、指定地方公共機関等が処理する防災に関する事務又は業務の実施の推進とその総合調整を行ない、及び災害に係る経費負担の適正化を図らなければならない。
3 指定行政機関及び指定地方行政機関は、その所掌事務を遂行するにあたつては、第一項に規定する国の責務が十分に果たされることとなるように、相互に協力しなければならない。
4 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長は、この法律の規定による都道府県及び市町村の地域防災計画の作成及び実施が円滑に行なわれるように、その所掌事務について、当該都道府県又は市町村に対し、勧告し、指導し、助言し、その他適切な措置をとらなければならない。
(都道府県の責務)
第四条 都道府県は、当該都道府県の地域並びに当該都道府県の住民の生命、身体及び財産を災害から保護するため、関係機関及び他の地方公共団体の協力を得て、当該都道府県の地域に係る防災に関する計画を作成し、及び法令に基づきこれを実施するとともに、その区域内の市町村及び指定地方公共機関が処理する防災に関する事務又は業務の実施を助け、かつ、その総合調整を行なう責務を有する。
2 都道府県の機関は、その所掌事務を遂行するにあたつては、前項に規定する都道府県の責務が十分に果たされることとなるように、相互に協力しなければならない。
(市町村の責務)
第五条 市町村は、基礎的な地方公共団体として、当該市町村の地域並びに当該市町村の住民の生命、身体及び財産を災害から保護するため、関係機関及び他の地方公共団体の協力を得て、当該市町村の地域に係る防災に関する計画を作成し、及び法令に基づきこれを実施する責務を有する。
2 市町村長は、前項の責務を遂行するため、消防機関、水防団等の組織の整備並びに当該市町村の区域内の公共的団体等の防災に関する組織及び住民の隣保協同の精神に基づく自発的な防災組織の充実を図り、市町村の有するすべての機能を十分に発揮するように努めなければならない。
3 消防機関、水防団その他市町村の機関は、その所掌事務を遂行するにあたつては、第一項に規定する市町村の責務が十分に果たされることとなるように、相互に協力しなければならない。
(指定公共機関及び指定地方公共機関の責務)
第六条 指定公共機関及び指定地方公共機関は、その業務に係る防災に関する計画を作成し、及び法令に基づきこれを実施するとともに、この法律の規定による国、都道府県及び市町村の防災計画の作成及び実施が円滑に行なわれるように、その業務について、当該都道府県又は市町村に対し、協力する責務を有する。
2 指定公共機関及び指定地方公共機関は、その業務の公共性又は公益性にかんがみ、それぞれその業務を通じて防災に寄与しなければならない。
(住民等の責務)
第七条 地方公共団体の区域内の公共的団体、防災上重要な施設の管理者その他法令の規定による防災に関する責務を有する者は、法令又は地域防災計画の定めるところにより、誠実にその責務を果たさなければならない。
2 前項に規定するもののほか、地方公共団体の住民は、防災に寄与するように努めなければならない。
(施策における防災上の配慮等)
第八条 国及び地方公共団体は、その施策が、直接的なものであると間接的なものであるとを問わず、一体として国土並びに国民の生命、身体及び財産の災害をなくすることに寄与することとなるように意を用いなければならない。
2 国及び地方公共団体は、災害の発生を予防し、又は災害の拡大を防止するため、特に次の各号に掲げる事項の実施に努めなければならない。
一 災害及び災害の防止に関する科学的研究とその成果の実現に関する事項
二 治山、治水その他の国土の保全に関する事項
三 建物の不燃堅牢化、防災建築街区の整備その他都市の防災構造の改善に関する事項
四 防災上必要な気象、地象及び水象の観測、予報、情報その他の業務に関する施設及び組織並びに防災上必要な通信に関する施設及び組織の整備に関する事項
五 災害の予報及び警報の改善に関する事項
六 気象観測網の充実についての国際的協力に関する事項
七 台風に対する人為的調節その他防災上必要な研究、観測及び情報交換についての国際的協力に関する事項
八 水防、消防、救助その他災害応急措置に関する施設及び組織の整備に関する事項
九 防災上必要な教育及び訓練に関する事項
十 防災思想の普及に関する事項
3 国及び地方公共団体は、災害が発生したときは、すみやかに、施設の復旧と被災者の援護を図り、災害からの復興に努めなければならない。
(政府の措置及び国会に対する報告)
第九条 政府は、この法律の目的を達成するため必要な法制上、財政上及び金融上の措置を講じなければならない。
2 政府は、毎年、政令で定めるところにより、防災に関する計画及び防災に関してとつた措置の概況を国会に報告しなければならない。
(他の法律との関係)
第十条 防災に関する事務の処理については、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。
第二章 防災に関する組織
第一節 中央防災会議
(中央防災会議の設置及び所掌事務)
第十一条 総理府に、中央防災会議を置く。
2 中央防災会議は、次の各号に掲げる事務をつかさどる。
一 防災基本計画を作成し、及びその実施を推進すること。
二 非常災害に際し、緊急措置に関する計画を作成し、及びその実施を推進すること。
三 内閣総理大臣の諮問に応じて防災に関する重要事項を審議すること。
四 前各号に掲げるもののほか、法令の規定によりその権限に属する事務
3 内閣総理大臣は、次の各号に掲げる事項については、中央防災会議に諮問しなければならない。
一 防災の基本方針
二 防災に関する施策の総合調整で重要なもの
三 非常災害に際し一時的に必要とする緊急措置の大綱
四 非常災害対策本部の設置
五 その他内閣総理大臣が必要と認める防災に関する重要事項
(中央防災会議の組織)
第十二条 中央防災会議は、会長及び委員をもつて組織する。
2 会長は、内閣総理大臣をもつて充てる。
3 会長は、会務を総理する。
4 会長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員がその職務を代理する。
5 委員は、指定行政機関の長をもつて充てる。
6 中央防災会議に、専門の事項を調査させるため、専門委員を置くことができる。
7 専門委員は、関係行政機関及び指定公共機関の職員並びに学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命する。
8 中央防災会議の事務を処理させるため、中央防災会議に事務局を置く。
9 事務局に、事務局長その他の職員を置く。
事務局長は、会長の命を受け、局務を掌理する。
11 前各号に定めるもののほか、中央防災会議の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
(関係行政機関等に対する協力要求等)
第十三条 中央防災会議は、その所掌事務に関し、関係行政機関の長及び関係地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関及び指定地方公共機関並びにその他の関係者に対し、資料の提出、意見の開陳その他必要な協力を求めることができる。
2 中央防災会議は、その所掌事務の遂行について、地方防災会議(都道府県防災会議又は市町村防災会議をいう。以下同じ。)又は地方防災会議の協議会(都道府県防災会議の協議会又は市町村防災会議の協議会をいう。以下同じ。)に対し、必要な勧告又は指示をすることができる。
第二節 地方防災会議
(都道府県防災会議の設置及び所掌事務)
第十四条 都道府県に、都道府県防災会議を置く。
2 都道府県防災会議は、次の各号に掲げる事務をつかさどる。
一 都道府県地域防災計画を作成し、及びその実施を推進すること。
二 当該都道府県の地域に係る災害が発生した場合において、当該災害に関する情報を収集すること。
三 当該都道府県の地域に係る災害が発生した場合において、当該災害に係る災害応急対策及び災害復旧に関し、当該都道府県並びに関係指定地方行政機関、関係市町村、関係指定公共機関及び関係指定地方公共機関相互間の連絡調整を図ること。
四 非常災害に際し、緊急措置に関する計画を作成し、かつ、その実施を推進すること。
五 前各号に掲げるもののほか、法律又はこれに基づく政令によりその権限に属する事務
(都道府県防災会議の組織)
第十五条 都道府県防災会議は、会長及び委員をもつて組織する。
2 会長は、当該都道府県の知事をもつて充てる。
3 会長は、会務を総理する。
4 会長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員がその職務を代理する。
5 委員は、次の各号に掲げる者をもつて充てる。
一 当該都道府県の区域の全部又は一部を管轄する指定地方行政機関の長又はその指名する職員
二 当該都道府県を警備区域とする陸上自衛隊の方面総監又はその指名する部隊若しくは機関の長
三 当該都道府県の教育委員会の教育長
四 警視総監又は当該道府県の道府県警察本部長
五 当該都道府県の知事がその部内の職員のうちから指名する者
六 当該都道府県の区域内の市町村の市町村長及び消防機関の長のうちから当該都道府県の知事が任命する者
七 当該都道府県の地域において業務を行なう指定公共機関又は指定地方公共機関の役員又は職員のうちから当該都道府県の知事が任命する者
6 都道府県防災会議に、専門の事項を調査させるため、専門委員を置くことができる。
7 専門委員は、関係地方行政機関の職員、当該都道府県の職員、当該都道府県の区域内の市町村の職員、関係指定公共機関の職員、関係指定地方公共機関の職員及び学識経験のある者のうちから、当該都道府県の知事が任命する。
8 前各項に定めるもののほか、都道府県防災会議の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める基準に従い、当該都道府県の条例で定める。
(市町村防災会議)
第十六条 市町村に、当該市町村の地域に係る地域防災計画の作成及びその実施の推進のため、市町村防災会議を置く。
2 前項に規定するもののほか、市町村は、協議により規約を定め、共同して市町村防災会議を設置することができる。
3 市町村は、前項の規定により市町村防災会議を共同して設置したとき、又は政令で定めるところにより、都道府県知事の承認を受けたときは、第一項の規定にかかわらず、市町村防災会議を設置しないことができる。
4 都道府県知事は、前項の規定による承認をしようとするときは、当該都道府県の都道府県防災会議の意見をきかなければならない。
5 市町村防災会議の組織及び所掌事務は、都道府県防災会議の組織及び所掌事務の例に準じて、当該市町村の条例(第二項の規定により設置された市町村防災会議にあつては、規約)で定める。
(地方防災会議の協議会)
第十七条 都道府県相互の間又は市町村相互の間において、当該都道府県又は市町村の区域の全部又は一部にわたり指定地域都道府県防災計画又は指定地域市町村防災計画を作成することが必要かつ効果的であると認めるときは、当該都道府県又は市町村は、協議により規約を定め、都道府県防災会議の協議会又は市町村防災会議の協議会を設置することができる。
2 前項の規定により協議会を設置したときは、都道府県防災会議の協議会にあつては内閣総理大臣に、市町村防災会議の協議会にあつては都道府県知事にそれぞれ届け出なければならない。
(都道府県防災会議の協議会の設置)
第十八条 内閣総理大臣は、二以上の都道府県の区域の全部又は一部にわたり指定地域都道府県防災計画を作成することが必要かつ効果的であると認めるときは、中央防災会議の意見をきいて、当該計画に係る地域を指定し、かつ、関係都道府県に都道府県防災会議の協議会を設置すべきことを指示することができる。
2 内閣総理大臣は、前項の規定により地域を指定したときは、その旨を告示しなければならない。
3 第一項の指示があつたときは、当該指示を受けた都道府県は、都道府県防災会議の協議会を設置しなければならない。
(市町村防災会議の協議会の設置)
第十九条 都道府県知事は、二以上の市町村の区域の全部又は一部にわたり指定地域市町村防災計画を作成することが必要かつ効果的であると認めるときは、都道府県防災会議の意見をきいて、当該計画に係る地域を指定し、かつ、関係市町村に市町村防災会議の協議会を設置すべきことを指示することができる。
2 都道府県知事は、前項の規定により地域を指定したときは、その旨を公示しなければならない。
3 第一項の指示があつたときは、当該指示を受けた市町村は、市町村防災会議の協議会を設置しなければならない。
(政令への委任)
第二十条 前三条に規定するもののほか、地方防災会議の協議会に関し必要な事項は、政令で定める。
(関係行政機関等に対する協力要求)
第二十一条 都道府県防災会議及び市町村防災会議(地方防災会議の協議会を含む。以下次条において「地方防災会議等」という。)は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長及び関係地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関及び指定地方公共機関並びにその他の関係者に対し、資料又は情報の提供、意見の開陳その他必要な協力を求めることができる。
(地方防災会議等相互の関係)
第二十二条 地方防災会議等は、それぞれその所掌事務の遂行について相互に協力しなければならない。
2 都道府県防災会議は、その所掌事務の遂行について、市町村防災会議に対し、必要な勧告又は指示をすることができる。
(災害対策本部)
第二十三条 都道府県又は市町村の地域について災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合において、防災の推進を図るため必要があると認めるときは、都道府県知事又は市町村長は、都道府県地域防災計画又は市町村地域防災計画の定めるところにより、地方防災会議の意見をきいて、災害対策本部を設置することができる。
2 災害対策本部の長は、災害対策本部長とし、都道府県知事又は市町村長をもつて充てる。
3 災害対策本部に、災害対策副本部長、災害対策本部員その他の職員を置き、当該都道府県又は市町村の職員のうちから、当該都道府県の知事又は当該市町村の市町村長が任命する。
4 災害対策本部は、地方防災会議と緊密な連絡のもとに、当該都道府県地域防災計画又は市町村地域防災計画の定めるところにより、当該都道府県又は市町村の地域に係る災害予防及び災害応急対策を実施するものとする。
5 都道府県の災害対策本部長は当該都道府県警察又は当該都道府県の教育委員会に対し、市町村の災害対策本部長は当該市町村の教育委員会に対し、それぞれ当該都道府県又は市町村の地域に係る災害予防又は災害応急対策を実施するため必要な限度において、必要な指示をすることができる。
6 前各項に規定するもののほか、災害対策本部に関し必要な事項は、都道府県又は市町村の条例で定める。
第三節 非常災害対策本部
(非常災害対策本部の設置)
第二十四条 非常災害が発生した場合において、当該災害の規模その他の状況により当該災害に係る災害応急対策を推進するため特別の必要があると認めるときは、内閣総理大臣は、国家行政組織法第八条の規定にかかわらず、臨時に総理府に非常災害対策本部を設置することができる。
2 非常災害対策本部の名称、所管区域並びに設置の場所及び期間は、内閣総理大臣が閣議にかけて決定する。
3 内閣総理大臣は、非常災害対策本部を置いたときは当該本部の名称、所管区域並びに設置の場所及び期間を、当該本部を廃止したときはその旨を、直ちに、告示しなければならない。
(非常災害対策本部の組織)
第二十五条 非常災害対策本部の長は、非常災害対策本部長とし、国務大臣をもつて充てる。
2 非常災害対策本部長は、非常災害対策本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。
3 非常災害対策本部に、非常災害対策副本部長、非常災害対策本部員その他の職員を置く。
4 非常災害対策副本部長は、非常災害対策本部長を助け、非常災害対策本部長に事故があるときは、その職務を代理する。
5 非常災害対策副本部長、非常災害対策本部員その他の職員は、指定行政機関の職員又は指定地方行政機関の長若しくはその職員のうちから、内閣総理大臣が任命する。
(非常災害対策本部の所掌事務)
第二十六条 非常災害対策本部は、次の各号に掲げる事務をつかさどる。
一 所管区域において指定行政機関の長、指定地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関及び指定地方公共機関が防災計画に基づいて実施する災害応急対策の総合調整に関すること。
二 非常災害に際し作成される緊急措置に関する計画の実施に関すること。
三 第二十八条の規定により非常災害対策本部長の権限に属する事務
四 前各号に掲げるもののほか、法令の規定によりその権限に属する事務
(指定行政機関の長の権限の委任)
第二十七条 指定行政機関の長は、非常災害対策本部が設置されたときは、災害応急対策に必要な権限の全部又は一部を当該非常災害対策本部員である当該指定行政機関の職員又は当該指定地方行政機関の長若しくはその職員に委任することができる。
2 指定行政機関の長は、前項の規定による委任をしたときは、直ちに、その旨を告示しなければならない。
(非常災害対策本部長の権限)
第二十八条 非常災害対策本部長は、前条の規定により権限を委任された職員の当該本部の所管区域における権限の行使について総合調整をすることができる。
2 非常災害対策本部長は、当該本部の所管区域における災害応急対策を的確かつ迅速に実施するため特に必要があると認めるときは、その必要な限度において、関係指定地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関並びに指定公共機関及び指定地方公共機関に対し、必要な指示をすることができる。
第四節 災害時における職員の派遣
(職員の派遣の要請)
第二十九条 都道府県知事又は都道府県の委員会若しくは委員(以下「都道府県知事等」という。)は、災害応急対策又は災害復旧のため必要があるときは、政令で定めるところにより、指定行政機関の長又は指定地方行政機関の長に対し、当該指定行政機関又は指定地方行政機関の職員の派遣を要請することができる。
2 市町村長又は市町村の委員会若しくは委員(以下「市町村長等」という。)は、災害応急対策又は災害復旧のため必要があるときは、政令で定めるところにより、指定地方行政機関の長に対し、当該指定地方行政機関の職員の派遣を要請することができる。
3 都道府県又は市町村の委員会又は委員は、前二項の規定により職員の派遣を要請しようとするときは、あらかじめ、当該都道府県の知事又は当該市町村の市町村長に協議しなければならない。
(職員の派遣のあつせん)
第三十条 都道府県知事等又は市町村長等は、災害応急対策又は災害復旧のため必要があるときは、政令で定めるところにより、内閣総理大臣又は都道府県知事に対し、指定行政機関又は指定地方行政機関の職員の派遣についてあつせんを求めることができる。
2 都道府県知事等又は市町村長等は、災害応急対策又は災害復旧のため必要があるときは、政令で定めるところにより、内閣総理大臣又は都道府県知事に対し、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十七の規定による職員の派遣についてあつせんを求めることができる。
3 前条第三項の規定は、前二項の規定によりあつせんを求めようとする場合について準用する。
(職員の派遣義務)
第三十一条 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長並びに都道府県知事等及び市町村長等は、前二条の規定による要請又はあつせんがあつたときは、その所掌事務の遂行に著しい支障のない限り、適任と認める職員を派遣しなければならない。
(派遣職員の身分取扱い)
第三十二条 都道府県又は市町村は、前条又は他の法律の規定により災害応急対策又は災害復旧のため派遣された職員に対し、政令で定めるところにより、災害派遣手当を支給することができる。
2 前項に規定するもののほか、前条の規定により指定行政機関又は指定地方行政機関から派遣された職員の身分取扱いに関し必要な事項は、政令で定める。
(派遣職員に関する資料の提出等)
第三十三条 指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は都道府県知事は、内閣総理大臣に対し、第三十一条の規定による職員の派遣が円滑に行なわれるよう、定期的に、災害応急対策又は災害復旧に必要な技術、知識又は経験を有する職員の職種別現員数及びこれらの者の技術、知識又は経験の程度を記載した資料を提出するとともに、当該資料を相互に交換しなければならない。
第三章 防災計画
(防災基本計画の作成及び公表等)
第三十四条 中央防災会議は、防災基本計画を作成するとともに、災害及び災害の防止に関する科学的研究の成果並びに発生した災害の状況及びこれに対して行なわれた災害応急対策の効果を勘案して毎年防災基本計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならない。
2 中央防災会議は、前項の規定により防災基本計画を作成し、又は修正したときは、すみやかにこれを内閣総理大臣に報告し、並びに指定行政機関の長、都道府県知事及び指定公共機関に通知するとともに、その要旨を公表しなければならない。
第三十五条 防災基本計画は、次の各号に掲げる事項について定めるものとする。
一 防災に関する総合的かつ長期的な計画
二 防災業務計画及び地域防災計画において重点をおくべき事項
三 前各号に掲げるもののほか、防災業務計画及び地域防災計画の作成の基準となるべき事項で、中央防災会議が必要と認めるもの
2 前項に規定する防災業務計画及び地域防災計画において重点をおくべき事項は、おおむね次の各号に掲げるとおりとする。
一 災害予防に関する事項
イ 防災上必要な教育に関する事項
ロ 防災上必要な訓練(図上演習、指導者演習等を含む。)に関する事項
ハ 災害安全運動に自然災害時対策を採用することに関する事項
ニ 災害備蓄制度の運用に関する事項
ホ 地方公共団体の災害対策基金等の管理に関する事項
ヘ 気象業務に関する施設の整備に関する事項
ト 水防、消防及び救助に関する施設及び設備の整備に関する事項
チ 都市の不燃化促進と防災建築街区の整備に関する事項
リ 災害危険区域の指定に関する事項
ヌ 学校、病院、工場、事業場、作業場、百貨店等の災害予防措置に関する事項
ル 文化財の災害予防措置に関する事項
ヲ 漏電による大火の防止に関する事項
ワ 防災営農体制の確立に関する事項
二 災害応急対策に関する事項
イ 災害に関する予報及び警報の伝達並びに警告の方法に関する事項
ロ 災害時における災害に関する情報の収集に関する事項
ハ 災害時における広報宣伝に関する事項
ニ 避難(小学校の児童の集団避難を含む。)に関する事項
ホ 水防活動、消防の活動又は救助に関する事項
ヘ 建設機材の現況の把握及びその緊急使用に関する事項
ト 技術者の現況の把握及びその従事命令に関する事項
チ 災害時における食糧その他の生活必需品及び復旧資材の需給計画に関する事項
リ 災害時における家畜の管理(衛生を含む。)及び飼料の需給計画に関する事項
ヌ 災害時における児童及び生徒の応急の教育に関する事項
ル 災害時における清掃、防疫その他の保健衛生に関する事項
ヲ 災害時における病害虫防除に関する事項
ワ 災害時における通信計画に関する事項
カ 災害時における電力の融通計画に関する事項
ヨ 災害時における交通輸送計画に関する事項
タ 災害時における危険物の保安に関する事項
レ 災害時における犯罪の予防、交通の規制その他の社会秩序の維持に関する事項
ソ 災害時における自衛隊の災害派遣の効率化に関する事項
三 災害復旧に関する事項
イ 災害復旧の実施の基本方針に関する事項
ロ 災害復旧上必要な金融その他の資金計画に関する事項
ハ 借地借家制度の特例の適用に関する事項
ニ 被災中小企業の振興に関する事項
ホ 被災者の生活確保に関する事項
3 防災基本計画には、次の各号に掲げる事項に関する資料を添付しなければならない。
一 国土の現況及び気象の概況
二 防災上必要な施設及び設備の整備の概況
三 防災業務に従事する人員の状況
四 防災上必要な物資の需給の状況
五 防災上必要な運輸又は通信の状況
六 前各号に掲げるもののほか、防災に関し中央防災会議が必要と認める事項
(指定行政機関の防災業務計画)
第三十六条 指定行政機関の長は、防災基本計画に基づき、その所掌事務に関し、防災業務計画を作成し、及び毎年防災業務計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならない。
2 指定行政機関の長は、前項の規定により防災業務計画を作成し、又は修正したときは、すみやかにこれを内閣総理大臣に報告し、並びに都道府県知事及び関係指定公共機関に通知するとともに、その要旨を公表しなければならない。
3 第二十一条の規定は、指定行政機関の長が第一項の規定により防災業務計画を作成し、又は修正する場合について準用する。
第三十七条 防災業務計画は、次の各号に掲げる事項について定めるものとする。
一 所掌事務について、防災に関しとるべき措置
二 前項に掲げるもののほか、所掌事務に関し地域防災計画の作成の基準となるべき事項
2 指定行政機関の長は、防災業務計画の作成及び実施にあたつては、他の指定行政機関の長が作成する防災業務計画との間に調整を図り、防災業務計画が一体的かつ有機的に作成され、及び実施されるように努めなければならない。
(他の法令に基づく計画との関係)
第三十八条 指定行政機関の長が他の法令の規定に基づいて作成する次の各号に掲げる防災に関連する計画の防災に関する部分は、防災基本計画及び防災業務計画と矛盾し、又は抵触するものであつてはならない。
一 国土総合開発法(昭和二十五年法律第二百五号)第二条第三項に規定する全国総合開発計画
二 積雪寒冷単作地帯振興臨時措置法(昭和二十六年法律第六十六号)第五条第一項に規定する農業振興計画
三 森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)第四条第一項に規定する森林基本計画
四 特殊土じよう地帯災害防除及び振興臨時措置法(昭和二十七年法律第九十六号)第三条第一項に規定する災害防除に関する事業計画
五 急傾斜地帯農業振興臨時措置法(昭和二十七年法律第百三十五号)第六条第一項に規定する農業振興計画
六 電源開発促進法(昭和二十七年法律第二百八十三号)第三条第一項に規定する電源開発基本計画
七 湿田単作地域農業改良促進法(昭和二十七年法律第三百五十四号)第五条第一項に規定する農業改良計画
八 海岸砂地地帯農業振興臨時措置法(昭和二十八年法律第十二号)第四条第一項に規定する農業振興計画
九 保安林整備臨時措置法(昭和二十九年法律第八十四号)第二条第一項に規定する保安林整備計画
十 首都圏整備法(昭和三十一年法律第八十三号)第二条第二項に規定する首都圏整備計画
十一 特定多目的ダム法(昭和三十二年法律第三十五号)第四条第一項に規定する多目的ダムの建設に関する基本計画
十二 台風常襲地帯における災害の防除に関する特別措置法(昭和三十三年法律第七十二号)第二条第二項に規定する災害防除事業五箇年計画
十三 治山治水緊急措置法(昭和三十五年法律第二十一号)第三条第一項に規定する治山事業に関する計画及び治水事業に関する計画
十四 前各号に掲げるもののほか、政令で定める計画
(指定公共機関の防災業務計画)
第三十九条 指定公共機関は、防災基本計画に基づき、その業務に関し、防災業務計画を作成し、及び毎年防災業務計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならない。
2 指定公共機関は、前項の規定により防災業務計画を作成し、又は修正したときは、すみやかに主務大臣を経由して内閣総理大臣に報告し、及び関係都道府県知事に通知するとともに、その要旨を公表しなければならない。
3 第二十一条の規定は、指定公共機関が第一項の規定により防災業務計画を作成し、又は修正する場合について準用する。
(都道府県地域防災計画)
第四十条 都道府県防災会議は、防災基本計画に基づき、当該都道府県の地域に係る都道府県地域防災計画を作成し、及び毎年都道府県地域防災計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならない。この場合において、当該都道府県地域防災計画は、防災業務計画に抵触するものであつてはならない。
2 都道府県地域防災計画は、次の各号に掲げる事項について定めるものとする。
一 当該都道府県の地域に係る防災に関し、当該都道府県の区域の全部又は一部を管轄する指定地方行政機関、当該都道府県、当該都道府県の区域内の市町村、指定公共機関、指定地方公共機関及び当該都道府県の区域内の公共的団体その他防災上重要な施設の管理者の処理すべき事務又は業務の大綱
二 当該都道府県の地域に係る防災施設の新設又は改良、防災のための調査研究、教育及び訓練その他の災害予防、情報の収集及び伝達、災害に関する予報又は警報の発令及び伝達、避難、消火、水防、救難、救助、衛生その他の災害応急対策並びに災害復旧に関する事項別の計画
三 当該都道府県の地域に係る災害に関する前号に掲げる措置に要する労務、施設、設備、物資、資金等の整備、備蓄、調達、配分、輸送、通信等に関する計画
四 前各号に掲げるもののほか、当該都道府県の地域に係る防災に関し都道府県防災会議が必要と認める事項
3 都道府県防災会議は、第一項の規定により都道府県地域防災計画を作成し、又は修正しようとするときは、あらかじめ、内閣総理大臣に協議しなければならない。この場合において、内閣総理大臣は、中央防災会議の意見をきかなければならない。
4 都道府県防災会議は、第一項の規定により都道府県地域防災計画を作成し、又は修正したときは、その要旨を公表しなければならない。
第四十一条 都道府県又は都道府県知事が他の法令の規定に基づいて作成し、又は承認する次の各号に掲げる防災に関する計画又は防災に関連する計画の防災に関する部分は、防災基本計画、防災業務計画又は都道府県地域防災計画と矛盾し、又は抵触するものであつてはならない。
一 水防法(昭和二十四年法律第百九十三号)第七条第一項及び第二項に規定する都道府県の水防計画並びに同法第二十五条に規定する指定管理団体の水防計画
二 国土総合開発法第二条第四項に規定する都府県総合開発計画、同条第五項に規定する地方総合開発計画及び同条第六項に規定する特定地域総合開発計画
三 積雪寒冷単作地帯農業改良促進法第四条第一項に規定する農業振興計画
四 急傾斜地帯農業振興臨時措置法第五条第一項に規定する農業振興計画
五 臨時石炭鉱害復旧法(昭和二十七年法律第二百九十五号)第四十八条第一項に規定する鉱害復旧基本計画
六 湿田単作地域農業改良促進法第四条に規定する農業改良計画
七 海岸砂地地帯農業振興臨時措置法第三条第一項に規定する農業振興計画
八 離島振興法(昭和二十八年法律第七十二号)第三条第一項に規定する離島振興計画
九 海岸法(昭和三十一年法律第百一号)第二十三条第一項に規定する海岸保全施設の整備に関する基本計画
十 地すべり等防止法(昭和三十三年法律第三十号)第九条に規定する地すべり防止工事に関する基本計画
十一 前各号に掲げるもののほか、政令で定める計画
(市町村地域防災計画)
第四十二条 市町村防災会議(市町村防災会議を設置しない市町村にあつては、当該市町村の市町村長。以下この条において同じ。)は、防災基本計画に基づき、当該市町村の地域に係る市町村地域防災計画を作成し、及び毎年市町村地域防災計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならない。この場合において、当該市町村地域防災計画は、防災業務計画又は当該市町村を包括する都道府県の都道府県地域防災計画に抵触するものであつてはならない。
2 市町村地域防災計画は、次の各号に掲げる事項について定めるものとする。
一 当該市町村の地域に係る防災に関し、当該市町村及び当該市町村の区域内の公共的団体その他防災上重要な施設の管理者の処理すべき事務又は業務の大綱
二 当該市町村の地域に係る防災施設の新設又は改良、防災のための調査研究、教育及び訓練その他の災害予防、情報の収集及び伝達、災害に関する予報又は警報の発令及び伝達、避難、消火、水防、救難、救助、衛生その他の災害応急対策並びに災害復旧に関する事項別の計画
三 当該市町村の地域に係る災害に関する前号に掲げる措置に要する労務、施設、設備、物資、資金等の整備、備蓄、調達、配分、輸送、通信等に関する計画
四 前各号に掲げるもののほか、当該市町村の地域に係る防災に関し市町村防災会議が必要と認める事項
3 市町村防災会議は、第一項の規定により市町村地域防災計画を作成し、又は修正しようとするときは、あらかじめ、都道府県知事に協議しなければならない。この場合において、都道府県知事は、都道府県防災会議の意見をきかなければならない。
4 市町村防災会議は、第一項の規定により市町村地域防災計画を作成し、又は修正したときは、その要旨を公表しなければならない。
5 第二十一条の規定は、市町村長が第一項の規定により市町村地域防災計画を作成し、又は修正する場合について準用する。
(指定地域都道府県防災計画)
第四十三条 都道府県防災会議の協議会は、防災基本計画に基づき、当該地域に係る指定地域都道府県防災計画を作成し、及び毎年指定地域都道府県防災計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならない。この場合において、当該指定地域都道府県防災計画は、防災業務計画に抵触するものであつてはならない。
2 指定地域都道府県防災計画において定めるべき事項は、第四十条第二項各号に掲げる事項のうち、中央防災会議が指定するものとする。
3 第四十条第三項の規定は、第一項の規定により都道府県防災会議の協議会が、指定地域都道府県防災計画を作成し、又は修正しようとする場合について準用する。
4 都道府県防災会議の協議会は、第一項の規定により指定地域都道府県防災計画を作成し、又は修正したときは、その要旨を公表しなければならない。
(指定地域市町村防災計画)
第四十四条 市町村防災会議の協議会は、防災基本計画に基づき、当該地域に係る指定地域市町村防災計画を作成し、及び毎年指定地域市町村防災計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならない。この場合において、当該指定地域市町村防災計画は、防災業務計画又は当該市町村を包括する都道府県の都道府県地域防災計画に抵触するものであつてはならない。
2 指定地域市町村防災計画において定める事項は、第四十二条第二項各号に掲げる事項のうち、都道府県防災会議が指定するものとする。
3 第四十二条第三項の規定は、第一項の規定により市町村防災会義の協議会が、指定地域市町村防災計画を作成し、又は修正しようとする場合について準用する。
4 市町村防災会議の協議会は、第一項の規定により指定地域市町村防災計画を作成し、又は修正したときは、その要旨を公表しなければならない。
(地域防災計画の実施の推進のための要請等)
第四十五条 地方防災会議の会長又は地方防災会議の協議会の代表者は、地域防災計画の的確かつ円滑な実施を推進するため必要があると認めるときは、都道府県防災会議又はその協議会にあつては当該都道府県の区域の全部又は一部を管轄する指定地方行政機関の長、当該都道府県及びその区域内の市町村の長その他の執行機関、指定地方公共機関、公共的団体並びに防災上重要な施設の管理者その他の関係者に対し、市町村防災会議又はその協議会にあつては当該市町村の長その他の執行機関及び当該市町村の区域内の公共的団体並びに防災上重要な施設の管理者その他の関係者に対し、これらの者が当該防災計画に基づき処理すべき事務又は業務について、それぞれ、必要な要請、勧告又は指示をすることができる。
2 地方防災会議の会長又は地方防災会議の協議会の代表者は、都道府県防災会議又はその協議会にあつては当該都道府県の区域の全部又は一部を管轄する指定地方行政機関の長、当該都道府県及びその区域内の市町村の長その他の執行機関、指定地方公共機関、公共的団体並びに防災上重要な施設の管理者その他の関係者に対し、市町村防災会議又はその協議会にあつては当該市町村の長その他の執行機関及び当該市町村の区域内の公共的団体並びに防災上重要な施設の管理者その他の関係者に対し、それぞれ、地域防災計画の実施状況について、報告又は資料の提出を求めることができる。
第四章 災害予防
(災害予防及びその実施責任)
第四十六条 災害予防は、次の各号に掲げる事項について、災害の発生を未然に防止する等のために行なうものとする。
一 防災に関する組織の整備に関する事項
二 防災に関する訓練に関する事項
三 防災に関する物資及び資材の備蓄、整備及び点検に関する事項
四 防災に関する施設及び設備の整備及び点検に関する事項
五 前各号に掲げるもののほか、災害が発生した場合における災害応急対策の実施の支障となるべき状態等の改善に関する事項
2 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関及び指定地方公共機関その他法令の規定により災害予防の実施について責任を有する者は、法令又は防災計画の定めるところにより、災害予防を実施しなければならない。
(防災に関する組織の整備義務)
第四十七条 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関及び指定地方公共機関、公共的団体並びに防災上重要な施設の管理者(以下この章において「災害予防責任者」という。)は、法令又は防災計画の定めるところにより、それぞれ、その所掌事務又は業務について、災害を予測し、予報し、又は災害に関する情報を迅速に伝達するため必要な組織を整備するとともに、絶えずその改善に努めなければならない。
2 前項に規定するもののほか、災害予防責任者は、法令又は防災計画の定めるところにより、それぞれ、防災業務計画又は地域防災計画を的確かつ円滑に実施するため、防災に関する組織を整備するとともに、防災に関する事務又は業務に従事する職員の配置及び服務の基準を定めなければならない。
(防災訓練義務)
第四十八条 災害予防責任者は、法令又は防災計画の定めるところにより、それぞれ又は他の災害予防責任者と共同して、防災訓練を行なわなければならない。
2 災害予防責任者の属する機関の職員その他の従業員又は災害予防責任者の使用人その他の従業者は、防災計画及び災害予防責任者の定めるところにより、前項の防災訓練に参加しなければならない。
3 災害予防責任者は、第一項の防災訓練を行なおうとするときは、住民その他関係のある公私の団体に協力を求めることができる。
(防災に必要な物資及び資材の備蓄等の義務)
第四十九条 災害予防責任者は、法令又は防災計画の定めるところにより、その所掌事務又は業務に係る災害応急対策又は災害復旧に必要な物資及び資材を備蓄し、整備し、若しくは点検し、又はその管理に属する防災に関する施設及び設備を整備し、若しくは点検しなければならない。
第五章 災害応急対策
第一節 通則
(災害応急対策及びその実施責任)
第五十条 災害応急対策は、次の各号に掲げる事項について、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合に災害の発生を防禦し、又は応急的救助を行なう等災害の拡大を防止するために行なうものとする。
一 警報の発令及び伝達並びに避難の勧告又は指示に関する事項
二 消防、水防その他の応急措置に関する事項
三 被災者の救難、救助その他保護に関する事項
四 災害を受けた児童及び生徒の応急の教育に関する事項
五 施設及び設備の応急の復旧に関する事項
六 清掃り防疫その他の保健衛生に関する事項
七 犯罪の予防、交通の規制その他災害地における社会秩序の維持に関する事項
八 緊急輸送の確保に関する事項
九 前各号に掲げるもののほか、災害の発生の防禦又は拡大の防止のための措置に関する事項
2 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関及び指定地方公共機関その他法令の規定により災害応急対策の実施の責任を有する者は、法令又は防災計画の定めるところにより、災害応急対策を実施しなければならない。
(情報の収集及び伝達)
第五十一条 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関及び指定地方公共機関、公共的団体並びに防災上重要な施設の管理者(以下第五十八条において「災害応急対策責任者」という。)は、法令又は防災計画の定めるところにより、災害に関する情報の収集及び伝達に努めなければならない。
(防災信号)
第五十二条 市町村長が災害に関する警報の発令及び伝達、警告並びに避難の勧告及び指示のため使用する防災に関する信号の種類、内容及び様式又は方法については、他の法令に特別の定めがある場合を除くほか、総理府令で定める。
2 何人も、みだりに前項の信号又はこれに類似する信号を使用してはならない。
(被害状況等の報告)
第五十三条 市町村長は、当該市町村の区域内に災害が発生したときは、政令で定めるところにより、すみやかに、当該災害の状況及びこれに対してとられた措置の概要を都道府県知事に報告しなければならない。
2 都道府県知事は、当該都道府県の区域内に災害が発生したときは、政令で定めるところにより、すみやかに、当該災害の状況及びこれに対してとられた措置の概要を内閣総理大臣に報告しなければならない。
3 指定公共機関の代表者は、その業務に係る災害が発生したときは、政令で定めるところにより、すみやかに、当該災害の状況及びこれに対してとられた措置の概要を内閣総理大臣に報告しなければならない。
4 指定行政機関の長は、その所掌事務に係る災害が発生したときは、政令で定めるところにより、すみやかに、当該災害の状況及びこれに対してとられた措置の概要を内閣総理大臣に報告しなければならない。
5 都道府県知事、指定公共機関の代表者又は指定行政機関の長は、第二項、第三項又は前項の規定により内閣総理大臣に報告するときは、あわせて当該報告に係る事項を中央防災会議に通報するものとする。
第二節 警報の伝達等
(発見者の通報義務等)
第五十四条 災害が発生するおそれがある異常な現象を発見した者は、遅滞なく、その旨を市町村長又は警察官若しくは海上保安官に通報しなければならない。
2 何人も、前項の通報が最も迅速に到達するように協力しなければならない。
3 第一項の通報を受けた警察官又は海上保安官は、その旨をすみやかに市町村長に通報しなければならない。
4 第一項又は前項の通報を受けた市町村長は、地域防災計画の定めるところにより、その旨を気象庁その他の関係機関に通報しなければならない。
(都道府県知事の通知等)
第五十五条 都道府県知事は、法令の規定により、気象庁その他の国の機関から災害に関する予報若しくは警報の通知を受けたとき、又は自ら災害に関する警報をしたときは、法令又は地域防災計画の定めるところにより、予想される災害の事態及びこれに対してとるべき措置について、関係指定地方行政機関の長、指定地方公共機関、市町村長その他の関係者に対し、必要な通知又は要請をするものとする。
(市町村長の警報の伝達及び警告)
第五十六条 市町村長は、法令の規定により災害に関する予報若しくは警報の通知を受けたとき、自ら災害に関する予報若しくは警報を知つたとき、法令の規定により自ら災害に関する警報をしたとき、又は前条の通知を受けたときは、地域防災計画の定めるところにより、当該予報若しくは警報又は通知に係る事項を関係機関及び住民その他関係のある公私の団体に伝達しなければならない。この場合において、必要があると認めるときは、市町村長は、住民その他関係のある公私の団体に対し、予想される災害の事態及びこれに対してとるべき措置について、必要な通知又は警告をすることができる。
(通信設備の優先利用等)
第五十七条 前二条の規定による通知、要請、伝達又は警告が緊急を要するものである場合において、その通信のため特別の必要があるときは、都道府県知事又は市町村長は、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、政令で定めるところにより、公衆電気通信設備を優先的に利用し、若しくは有線電気通信法(昭和二十八年法律第九十六号)第三条第三項第三号に掲げる者が設置する有線電気通信設備若しくは無線設備を使用し、又は放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)第二条第三号に規定する放送局に同条第一号に規定する放送を行なうことを求めることができる。
第三節 事前措置及び避難
(市町村長の出動命令等)
第五十八条 市町村長は、災害が発生するおそれがあるときは、法令又は市町村地域防災計画の定めるところにより、消防機関若しくは水防団に出動の準備をさせ、若しくは出動を命じ、又は警察官若しくは海上保安官の出動を求める等災害応急対策責任者に対し、応急措置の実施に必要な準備をすることを要請し、若しくは求めなければならない。
(市町村長の事前措置等)
第五十九条 市町村長は、災害が発生するおそれがあるときは、災害が発生した場合においてその災害を拡大させるおそれがあると認められる設備又は物件の占有者、所有者又は管理者に対し、災害の拡大を防止するため必要な限度において、当該設備又は物件の除去、保安その他必要な措置をとることを指示することができる。
2 警察署長又は政令で定める管区海上保安本部の事務所の長(以下この項、第六十四条及び第六十六条において「警察署長等」という。)は、市町村長から要求があつたときは、前項に規定する指示を行なうことができる。この場合において、同項に規定する指示を行なつたときは、警察署長等は、直ちに、その旨を市町村長に通知しなければならない。
(市町村長の避難の指示等)
第六十条 災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、人の生命又は身体を災害から保護し、その他災害の拡大を防止するため特に必要があると認めるときは、市町村長は、必要と認める地域の居住者、滞在者その他の者に対し、避難のための立退きを勧告し、及び急を要すると認めるときは、これらの者に対し、避難のための立退きを指示することができる。
2 前項の規定により避難のための立退きを勧告し、又は指示する場合において、必要があると認めるときは、市町村長は、その立退き先を指示することができる。
3 市町村長は、第一項の規定により避難のための立退きを勧告し、若しくは指示し、又は立退き先を指示したときは、すみやかに、その旨を都道府県知事に報告しなければならない。
4 市町村長は、避難の必要がなくなつたときは、直ちに、その旨を公示しなければならない。前項の規定は、この場合について準用する。
(警察官等の避難の指示)
第六十一条 前条第一項の場合において、市町村長が同項に規定する避難のための立退きを指示することができないと認めるとき、又は市町村長から要求があつたときは、警察官又は海上保安官は、必要と認める地域の居住者、滞在者その他の者に対し、避難のための立退きを指示することができる。前条第二項の規定は、この場合について準用する。
2 警察官又は海上保安官は、前項の規定により避難のための立退きを指示したときは、直ちに、その旨を市町村長に通知しなければならない。
3 前条第三項及び第四項の規定は、前項の通知を受けた市町村長について準用する。
第四節 応急措置
(市町村の応急措置)
第六十二条 市町村長は、当該市町村の地域に係る災害が発生し、又はまさに発生しようとしているときは、法令又は地域防災計画の定めるところにより、消防、水防、救助その他災害の発生を防禦し、又は災害の拡大を防止するために必要な応急措置(以下「応急措置」という。)をすみやかに実施しなければならない。
2 市町村の委員会又は委員、市町村の区域内の公共的団体及び防災上重要な施設の管理者その他法令の規定により応急措置の実施の責任を有する者は、当該市町村の地域に係る災害が発生し、又はまさに発生しようとしているときは、地域防災計画の定めるところにより、市町村長の所轄の下にその所掌事務若しくは所掌業務に係る応急措置を実施し、又は市町村長の実施する応急措置に協力しなければならない。
(市町村長の警戒区域設定権等)
第六十三条 災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、人の生命又は身体に対する危険を防止するため特に必要があると認めるときは、市町村長は、警戒区域を設定し、災害応急対策に従事する者以外の者に対して当該区域への立入りを制限し、若しくは禁止し、又は当該区域からの退去を命ずることができる。
2 前項の場合において、市町村長若しくはその委任を受けて同項に規定する市町村長の職権を行なう市町村の吏員が現場にいないとき、又はこれらの者から要求があつたときは、警察官又は海上保安官は、同項に規定する市町村長の職権を行なうことができる。この場合において、同項に規定する市町村長の職権を行なつたときは、警察官又は海上保安官は、直ちに、その旨を市町村長に通知しなければならない。
(応急公用負担等)
第六十四条 市町村長は、当該市町村の地域に係る災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、応急措置を実施するため緊急の必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、当該市町村の区域内の他人の土地、建物その他の工作物を一時使用し、又は土石、竹木その他の物件を使用し、若しくは収用することができる。
2 市町村長は、当該市町村の地域に係る災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、応急措置を実施するため緊急の必要があると認めるときは、現場の災害を受けた工作物又は物件で当該応急措置の実施の支障となるもの(以下この条において「工作物等」という。)の除去その他必要な措置をとることができる。この場合において、工作物等を除去したときは、市町村長は、当該工作物等を保管しなければならない。
3 市町村長は、前項後段の規定により工作物等を保管したときは、当該工作物等の占有者、所有者その他当該工作物等について権原を有する者(以下この条において「占有者等」という。)に対し当該工作物等を返還するため、政令で定めるところにより、政令で定める事項を公示しなければならない。
4 市町村長は、第二項後段の規定により保管した工作物等が滅失し、若しくは破損するおそれがあるとき、又はその保管に不相当な費用若しくは手数を要するときは、政令で定めるところにより、当該工作物等を売却し、その売却した代金を保管することができる。
5 前三項に規定する工作物等の保管、売却、公示等に要した費用は、当該工件物等の返還を受けるべき占有者等の負担とし、その費用の徴収については、行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)第五条及び第六条の規定を準用する。
6 第三項に規定する公示の日から起算して六月を経過してもなお第二項後段の規定により保管した工作物等(第四項の規定により売却した代金を含む。以下この項において同じ。)を返還することができないときは、当該工作物等の所有権は、当該市町村長の統轄する市町村に帰属する。
7 前条第二項の規定は、第一項及び第二項前段の場合について準用する。
8 警察官又は海上保安官は、前項において準用する前条第二項の規定により工作物等を除去したときは、当該工作物等を当該工作物等が設置されていた場所を管轄する警察署長等に差し出さなければならない。この場合において、警察署長等は、当該工作物等を保管しなければならない。
9 前項の規定により警察署長等が行なう工作物等の保管については、第三項から第六項までの規定の例によるものする。ただし、第三項の規定の例により公示した日から起算して六月を経過してもなお返還することができない工作物等の所有権は、警察署長が保管する工作物等にあつては当該警察署の属する都道府県に、政令で定める管区海上保安本部の事務所の長が保管する工作物等にあつては国に、それぞれ帰属するものとする。
第六十五条 市町村長は、当該市町村の地域に係る災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、応急措置を実施するため緊急の必要があると認めるときは、当該市町村の区域内の住民又は当該応急措置を実施すべき現場にある者を当該応急措置の業務に従事させることができる。
2 第六十三条第二項の規定は、前項の場合について準用する。
(災害時における漂流物等の処理の特例)
第六十六条 災害が発生した場合において、水難救護法(明治三十二年法律第九十五号)第二十九条第一項に規定する漂流物又は沈没品を取り除いたときは、警察署長等は、同項の規定にかかわらず、当該物件を保管することができる。
2 水難救護法第二章の規定は、警察署長等が前項の規定により漂流物又は沈没品を保管した場合について準用する。
(他の市町村長等に対する応援の要求)
第六十七条 市町村長等は、当該市町村の地域に係る災害が発生した場合において、応急措置を実施するため必要があると認めるときは、他の市町村の市町村長等に対し、応援を求めることができる。この場合において、応援を求められた市町村長等は、正当な理由がない限り、応援を拒んではならない。
2 前項の応援に従事する者は、応急措置の実施については、当該応援を求めた市町村長等の指揮の下に行動するものとする。
(都道府県知事等に対する応援の要求等)
第六十八条 市町村長等は、当該市町村の地域に係る災害が発生した場合において、応急措置を実施するため必要があると認めるときは、都道府県知事等に対し、応援を求め、又は応急措置の実施を要請することができる。
2 前条第一項後段の規定は、前項の場合について準用する。
(災害時における事務の委託の手続の特例)
第六十九条 市町村は、当該市町村の地域に係る災害が発生した場合において、応急措置を実施するため必要があると認めるときは、地方自治法第二百五十二条の十四及び第二百五十二条の十五の規定にかかわらず、政令で定めるところにより、その事務又は市町村長等の権限に属する事務の一部を他の地方公共団体に委託して、当該地方公共団体の長その他の執行機関にこれを管理し、及び執行させることができる。
(都道府県の応急措置)
第七十条 都道府県知事は、当該都道府県の地域に係る災害が発生し、又はまさに発生しようとしているときは、法令又は地域防災計画の定めるところにより、その所掌事務に係る応急措置をすみやかに実施しなければならない。この場合において、都道府県知事は、その区域内の市町村の実施する応急措置が的確かつ円滑に行なわれることとなるように努めなければならない。
2 都道府県の委員会又は委員は、当該都道府県の地域に係る災害が発生し、又はまさに発生しようとしているときは、法令又は地域防災計画の定めるところにより、都道府県知事の所轄の下にその所掌事務に係る応急措置を実施しなければならない。
3 第一項の場合において、応急措置を実施するため、又はその区域内の市町村の実施する応急措置が的確かつ円滑に行なわれるようにするため必要があると認めるときは、都道府県知事は、指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は当該都道府県の他の執行機関、指定公共機関若しくは指定地方公共機関に対し、応急措置の実施を要請し、又は求めることができる。
(都道府県知事の従事命令等)
第七十一条 都道府県知事は、当該都道府県の地域に係る災害が発生した場合において、第五十条第一項第四号から第九号までに掲げる事項について応急措置を実施するため特に必要があると認めるときは、災害救助法(昭和二十二年法律第百十八号)第二十四条から第二十七条までの規定の例により、従事命令、協力命令若しくは保管命令を発し、施設、土地、家屋若しくは物資を管理し、使用し、若しくは収用し、又はその職員に施設、土地、家屋若しくは物資の所在する場所若しくは物資を保管させる場所に立ち入り検査をさせ、若しくは物資を保管させた者から必要な報告を取ることができる。
2 前項の規定による都道府県知事の権限は、政令で定めるところにより、その一部を市町村長に委任することができる。
(都道府県知事の指示)
第七十二条 都道府県知事は、当該都道府県の区域内の市町村の実施する応急措置が的確かつ円滑に行なわれるようにするため特に必要があると認めるときは、市町村長に対し、応急措置の実施について必要な指示をし、又は他の市町村長を応援すべきことを指示することができる。
2 前項の規定による都道府県知事の指示に係る応援に従事する者は、応急措置の実施については、当該応援を受ける市町村長の指揮の下に行動するものとする。
(都道府県知事による応急措置の代行)
第七十三条 都道府県知事は、当該都道府県の地域に係る災害が発生した場合において、当該災害の発生により市町村がその全部又は大部分の事務を行なうことができなくなつたときは、当該市町村の市町村長が第六十三条第一項、第六十四条第一項及び第二項並びに第六十五条第一項の規定により実施すべき応急措置の全部又は一部を当該市町村長に代わつて実施しなければならない。
2 都道府県知事は、前項の規定により市町村長の事務の代行を開始し、又は終了したときは、その旨を公示しなければならない。
3 第一項の規定による都道府県知事の代行に関し必要な事項は、政令で定める。
(都道府県知事等に対する応援の要求)
第七十四条 都道府県知事等は、当該都道府県の地域に係る災害が発生した場合において、応急措置を実施するため必要があると認めるときは、他の都道府県の都道府県知事等に対し、応援を求めることができる。この場合において、応援を求められた都道府県知事等は、正当な理由がない限り、応援を拒んではならない。
2 前項の応援に従事する者は、応急措置の実施については、当該応援を求めた都道府県知事等の指揮の下に行動するものとする。この場合において、警察官にあつては、当該応援を求めた都道府県の公安委員会の管理の下にその職権を行なうものとする。
(災害時における事務の委託の手続の特例)
第七十五条 都道府県は、当該都道府県の地域に係る災害が発生した場合において、応急措置を実施するため必要があると認めるときは、地方自治法第二百五十二条の十四及び第二百五十二条の十五の規定にかかわらず、政令で定めるところにより、その事務又は都道府県知事等の権限に属する事務の一部を他の都道府県に委託して、当該都道府県の都道府県知事等にこれを管理し、及び執行させることができる。
(災害時における交通の禁止及び制限)
第七十六条 都道府県公安委員会は、当該都道府県又はこれに隣接する都道府県の地域に係る災害が発生した場合において、災害応急対策に従事する者又は災害応急対策に必要な物資の緊急輸送その他応急措置を実施するための緊急輸送を確保するため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、道路の区間を指定して、当該緊急輸送を行なう車両以外の車両の通行を禁止し、又は制限することができる。
(指定行政機関の長等の応急措置)
第七十七条 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長は、災害が発生し、又はまさに発生しようとしているときは、法令又は防災計画の定めるところにより、その所掌事務に係る応急措置をすみやかに実施するとともに、都道府県及び市町村の実施する応急措置が的確かつ円滑に行なわれるようにするため、必要な施策を講じなければならない。
2 前項の場合において、応急措置を実施するため必要があると認めるときは、指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長は、都道府県知事、市町村長又は指定公共機関若しくは指定地方公共機関に対し、応急措置の実施を要請し、又は指示することができる。
(指定行政機関の長等の収用等)
第七十八条 災害が発生した場合において、第五十条第一項第四号から第九号までに掲げる事項について応急措置を実施するため特に必要があると認めるときは、指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長は、防災業務計画の定めるところにより、当該応急措置の実施に必要な物資の生産、集荷、販売、配給、保管若しくは輸送を業とする者に対し、その取り扱う物資の保管を命じ、又は当該応急措置の実施に必要な物資を収用することができる。
2 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長は、前項の規定により物資の保管を命じ、又は物資を収用するため必要があると認めるときは、その職員に物資を保管させる場所又は物資の所在する場所に立ち入り検査をさせることができる。
3 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長は、第一項の規定により物資を保管させた者から、必要な報告を取り、又はその職員に当該物資を保管させてある場所に立ち入り検査をさせることができる。
(通信設備の優先使用権)
第七十九条 災害が発生した場合において、その応急措置の実施に必要な通信のため緊急かつ特別の必要があるときは、指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は都道府県知事若しくは市町村長は、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、公衆電気通信設備を優先的に利用し、又は有線電気通信法第三条第三項第三号に掲げる者が設置する有線電気通信設備若しくは無線設備を使用することができる。
(指定公共機関等の応急措置)
第八十条 指定公共機関及び指定地方公共機関は、災害が発生し、又はまさに発生しようとしているときは、法令又は防災計画の定めるところにより、その所掌業務に係る応急措置をすみやかに実施するとともに、指定地方行政機関の長、都道府県知事等及び市町村長等の実施する応急措置が的確かつ円滑に行なわれるようにするため、必要な措置を講じなければならない。
2 指定公共機関及び指定地方公共機関は、その所掌業務に係る応急措置を実施するため特に必要があると認めるときは、法令又は防災計画の定めるところにより、指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は都道府県知事若しくは市町村長に対し、労務、施設、設備又は物資の確保について応援を求めることができる。この場合において、応援を求められた指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は都道府県知事若しくは市町村長は、正当な理由がない限り応援を拒んではならない。
(公用令書の交付)
第八十一条 第七十一条又は第七十八条第一項の規定による処分については、都道府県知事若しくは市町村長又は指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長は、それぞれ公用令書を交付して行なわなければならない。
2 前項の公用令書には、次の各号に掲げる事項を記載しなければならない。
一 公用令書の交付を受ける者の氏名及び住所(法人にあつては、その名称及び主たる事務所の所在地)
二 当該処分の根拠となつた法律の規定
三 従事命令にあつては従事すべき業務、場所及び期間、保管命令にあつては保管すべき物資の種類、数量、保管場所及び期間、施設等の管理、使用又は収用にあつては管理、使用又は収用する施設等の所在する場所及び当該処分に係る期間又は期日
3 前二項に規定するもののほか、公用令書の様式その他公用令書について必要な事項は、政令で定める。
(損失補償等)
第八十二条 国又は地方公共団体は、第六十四条第一項、同条第七項において同条第一項の場合について準用する第六十三条第二項、第七十一条又は第七十八条第一項の規定による処分が行なわれたときは、それぞれ、当該処分により通常生ずべき損失を補償しなければならない。
2 都道府県は、第七十一条の規定による従事命令により応急措置の業務に従事した者に対して、政令で定める基準に従い、その実費を弁償しなければならない。
(立入りの要件)
第八十三条 第七十一条の規定により都道府県若しくは市町村の職員が立ち入る場合又は第七十八条第二項若しくは第三項の規定により指定行政機関若しくは指定地方行政機関の職員が立ち入る場合においては、当該職員は、あらかじめ、その旨をその場所の管理者に通知しなければならない。
2 前項の場合においては、その職員は、その身分を示す証票を携帯し、かつ、関係人の請求があるときは、これを提示しなければならない。
(応急措置の業務に従事した者に対する損害補償)
第八十四条 市町村長又は警察官若しくは海上保安官が、第六十五条第一項の規定又は同条第二項において準用する第六十三条第二項の規定により、当該市町村の区域内の住民又は応急措置を実施すべき現場にある者を応急措置の業務に従事させた場合において、当該業務に従事した者がそのため死亡し、負傷し、若しくは疾病にかかり、又は廃疾となつたときは、当該市町村は、政令で定める基準に従い、条例で定めるところにより、その者又はその者の遺族若しくは被扶養者がこれらの原因によつて受ける損害を補償しなければならない。
2 都道府県は、第七十一条の規定による従事命令により応急措置の業務に従事した者がそのため死亡し、負傷し、若しくは疾病にかかり、又は廃疾となったときは、、政令で定める基準に従い、条例で定めるところにより、その者又はその者の遺族若しくは被扶養者がこれらの原因によつて受ける損害を補償しなければならない。
(被災者の公的徴収金の減免等)
第八十五条 国は、別に法律で定めるところにより、被災者の国税その他国の徴収金について、軽減若しくは免除又は徴収猶予その他必要な措置をとることができる。
2 地方公共団体は、別に法律で定めるところにより、又は当該地方公共団体の条例で定めるところにより、被災者の地方税その他地方公共団体の徴収金について、軽減若しくは免除又は徴収猶予その他必要な措置をとることができる。
(国有財産等の貸付け等の特例)
第八十六条 国は、災害が発生した場合における応急措置を実施するため必要があると認める場合において、国有財産又は国有の物品を貸し付け、又は使用させるときは、別に法律で定めるところにより、その貸付け又は使用の対価を無償とし、若しくは時価より低く定めることができる。
2 地方公共団体は、災害が発生した場合における応急措置を実施するため必要があると認める場合において、その所有に属する財産又は物品を貸し付け、又は使用させるときは、別に法律で定めるところにより、その貸付け又は使用の対価を無償とし、若しくは時価より低く定めることができる。
第六章 災害復旧
(災害復旧の実施責任)
第八十七条 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関及び指定地方公共機関その他法令の規定により災害復旧の実施について責任を有する者は、法令又は防災計画の定めるところにより、災害復旧を実施しなければならない。
(災害復旧事業費の決定)
第八十八条 国がその費用の全部又は一部を負担し、又は補助する災害復旧事業について主務大臣が行なう災害復旧事業費の決定は、都道府県知事の報告その他地方公共団体が提出する資料及び実地調査の結果等に基づき、適正かつすみやかにしなければならない。
2 前項の規定による災害復旧事業費を決定するにあたつては、主務大臣は、再度災害の防止のため災害復旧事業とあわせて施行することを必要とする施設の新設又は改良に関する事業が円滑に実施されるように十分の配慮をしなければならない。
(防災会議への報告)
第八十九条 主務大臣は、災害復旧事業費の決定を行なつたとき、又は災害復旧事業の実施に関する基準を定めたときは、政令で定めるところにより、それらの概要を中央防災会議に報告しなければならない。
(国の負担金又は補助金の早期交付等)
第九十条 国は、地方公共団体又はその機関が実施する災害復旧事業の円滑な施行を図るため必要があると認めるときは、地方交付税の早期交付を行なうほか、政令で定めるところにより、当該災害復旧事業に係る国の負担金若しくは補助金を早期に交付し、又は所要の資金を融通し、若しくは融通のあつせんをするものとする。
第七章 財政金融措置
(災害予防等に要する費用の負担)
第九十一条 法令に特別の定めがある場合又は予算の範囲内において特別の措置を講じている場合を除くほか、災害予防及び災害応急対策に要する費用その他この法律の施行に要する費用は、その実施の責めに任ずる者が負担するものとする。
(他の地方公共団体の長等の応援を受けた場合の応急措置に要する費用の負担)
第九十二条 第六十七条第一項、第六十八条第一項又は第七十四条第一項の規定により他の地方公共団体の長又は委員会若しくは委員(以下この条において「地方公共団体の長等」という。)の応援を受けた地方公共団体の長等の属する地方公共団体は、当該応援に要した費用を負担しなければならない。
2 前項の場合において、当該応援を受けた地方公共団体の長等の属する地方公共団体が当該費用を支弁するいとまがないときは、当該地方公共団体は、当該応援をする他の地方公共団体の長等の属する地方公共団体に対し、当該費用の一時繰替え支弁を求めることができる。
(市町村が実施する応急措置に要する経費の都道府県の負担)
第九十三条 第七十二条第一項の規定による都道府県知事の指示に基づいて市町村長が実施した応急措置のために要した費用及び応援のために要した費用のうち、当該指示又は応援を受けた市町村長の統轄する市町村に負担させることが困難又は不適当なもので政令で定めるものについては、次条の規定により国がその一部を負担する費用を除き、政令で定めるところにより、当該都道府県知事の統轄する都道府県がその全部又は一部を負担する。
2 前項の場合においては、都道府県は、当該市町村に対し、前項の費用を一時繰替え支弁させることができる。
(災害応急対策に要する費用に対する国の負担又は補助)
第九十四条 災害応急対策に要する費用は、別に法令で定めるところにより、又は予算の範囲内において、国がその全部又は一部を負担し、又は補助することができる。
第九十五条 前条に定めるもののほか、第二十八条第二項に規定する非常災害対策本部長の指示に基づいて、地方公共団体の長が実施した応急措置のために要した費用うち、当該地方公共団体に負担させることが困難又は不適当なもので政令で定めるものについては、政令で定めるところにより、国は、その全部又は一部を補助することができる。
(災害復旧事業費等に対する国の負担及び補助)
第九十六条 災害復旧事業その他災害に関連して行なわれる事業に要する費用は、別に法令で定めるところにより、又は予算の範囲内において、国がその全部又は一部を負担し、又は補助することができる。
(激甚災害の応急措置及び災害復旧に関する経費の負担区分等)
第九十七条 政府は、著しく激甚である災害(以下「激甚災害」という。)が発生したときは、別に法律で定めるところにより、応急措置及び災害復旧が迅速かつ適切に行なわれるよう措置するとともに、激甚災害を受けた地方公共団体等の経費の負担の適正を図るため、又は被災者の災害復興の意欲を振作するため、必要な施策を講ずるものとする。
第九十八条 前条に規定する法律は、できる限り激甚災害の発生のつどこれを制定することを避け、また、災害に伴う国の負担に係る制度の合理化を図り、激甚災害に対する前条の施策が円滑に講ぜられるようなものでなければならない。
第九十九条 第九十七条に規定する法律は、次の各号に掲げる事項について規定するものとする。
一 激甚災害のための施策として、特別の財政援助及び助成措置を必要とする場合の基準
二 激甚災害の復旧事業その他当該災害に関連して行なわれる事業が適切に実施されるための地方公共団体に対する特別の財政援助
三 激甚災害の発生に伴う被災者に対する特別の助成
(災害に対処するための国の財政上の措置)
第百条 政府は、災害が発生した場合において、国の円滑な財政運営をそこなうことなく災害に対処するため、必要な財政上の措置を講ずるように努めなければならない。
2 政府は、前項の目的を達成するため、予備費又は国庫債務負担行為(財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第十五条第二項に規定する国庫債務負担行為をいう。)の計上等の措置について、十分な配慮をするものとする。
(地方公共団体の災害対策基金)
第百一条 地方公共団体は、別に法令で定めるところにより、災害対策に要する臨時的経費に充てるため、災害対策基金を積み立てなければならない。
(起債の特例)
第百二条 次の各号に掲げる場合においては、政令で定める地方公共団体は、政令で定める災害の発生した日の属する年度に限り、地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)第五条の規定にかかわらず、地方債をもつてその財源とすることができる。
一 地方税、使用料、手数料その他の徴収金で自治省令で定めるものの当該災害のための減免で、その程度及び範囲が被害の状況に照らし相当と認められるものによつて生ずる財政収入の不足を補う場合
二 災害予防、災害応急対策又は災害復旧で自治省令で定めるものに通常要する費用で、当該地方公共団体の負担に属するものの財源とする場合
2 前項の地方債は、資金事情の許す限り、国が資金運用部資金又は簡易生命保険及郵便年金特別会計の積立金(以下この条において「政府資金」という。)をもつて引き受けるものとする。
3 第一項の規定による地方債を政府資金で引き受けた場合における当該地方債の利息の定率、償還の方法その他地方債に関し必要な事項は、政令で定める。
(国の補助を伴わない災害復旧事業に対する措置)
第百三条 国及び地方公共団体は、激甚災害の復旧事業費のうち、国の補助を伴わないものについての当該地方公共団体等の負担が著しく過重であると認めるときは、別に法律で定めるところにより、当該復旧事業費の財源に充てるため特別の措置を講ずることができる。
(災害融資)
第百四条 政府関係金融機関その他これに準ずる政令で定める金融機関は、政令で定める災害が発生したときは、災害に関する特別な金融を行ない、償還期限又はすえ置き期間の延長、旧債の借換え、必要がある場合における利率の低減等実情に応じ適切な措置をとるように努めるものとする。
第八章 災害緊急事態
第百五条から第百十二条まで 削除
第九章 雑則
(特別区についてのこの法律の適用)
第百十三条 この法律の適用については、特別区は、市とみなす。ただし、特別区の存する区域に係る防災に関する事務で政令で定めるものは、都が処理するものとする。
(防災功労者表彰)
第百十四条 主務大臣は、防災に従事した者で、防災に関し著しい功労があると認められるものに対し、それぞれ主務省令で定めるところにより、表彰を行なうことができる。
(政令への委任)
第百十五条 この法律に持別の定めがあるものを除くほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。
第十章 罰則
(罰則)
第百十六条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
一 第七十一条第一項の規定による都道府県知事(同条第二項の規定により権限の委任を受けた市町村長を含む。)の従事命令、協力命令又は保管命令に従わなかつた者
二 第七十八条第一項の規定による指定行政機関の長又は指定地方行政機関の長(第二十七条第一項の規定により権限の委任を受けた職員を含む。)の保管命令に従わなかつた者
第百十七条 第七十六条の規定による都道府県公安委員会の禁止又は制限に従わなかつた車両の運転者は、三月以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
第百十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、三万円以下の罰金に処する。
一 第七十一条第一項(同条第二項の規定により権限の委任があつた場合を含む。以下この条において同じ。)、第七十八条第二項(第二十七条第一項の規定により権限の委任があつた場合を含む。)又は第七十八条第三項(第二十七条第一項の規定により権限の委任があつた場合を含む。以下この条において同じ。)の規定による立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
二 第七十一条第一項又は第七十八条第三項の規定による報告をせず、又はいつわりの報告をした者
第百十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、一万円以下の罰金又は拘留に処する。
一 第五十二条第一項の規定に基づく総理府令によって定められた防災に関する信号をみだりに使用し、又はこれと類似する信号を使用した者
二 第六十三条第一項の規定による市町村長(第七十三条第一項の規定により市町村長の事務を代行する都道府県知事を含む。)又は第六十三条第二項の規定による警察官若しくは海上保安官の禁止若しくは制限又は退去命令に従わなかつた者
第百二十条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第百十六条又は第百十八条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
附 則
この法律は、公布の日から起算して一年をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
内閣総理大臣 池田勇人
法務大臣 植木庚子郎
大蔵大臣 水田三喜男
文部大臣 荒木萬壽夫
厚生大臣 灘尾弘吉
農林大臣 河野一郎
通商産業大臣 佐藤榮作
運輸大臣 齋藤昇
郵政大臣 迫水久常
労働大臣 福永健司
建設大臣 中村梅吉
自治大臣 安井謙
災害対策基本法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十六年十一月十五日
内閣総理大臣 池田勇人
法律第二百二十三号
災害対策基本法
目次
第一章
総則(第一条―第十条)
第二章
防災に関する組織
第一節
中央防災会議(第十一条―第十三条)
第二節
地方防災会議(第十四条―第二十三条)
第三節
非常災害対策本部(第二十四条―第二十八条)
第四節
災害時における職員の派遣(第二十九条―第三十三条)
第三章
防災計画(第三十四条―第四十五条)
第四章
災害予防(第四十六条―第四十九条)
第五章
災害応急対策
第一節
通則(第五十条―第五十三条)
第二節
警報の伝達等(第五十四条―第五十七条)
第三節
事前措置及び避難(第五十八条―第六十一条)
第四節
応急措置(第六十二条―第八十六条)
第六章
災害復旧(第八十七条―第九十条)
第七章
財政金融措置(第九十一条―第百四条)
第八章
災害緊急事態(第百五条―第百十二条)
第九章
雑則(第百十三条―第百十五条)
第十章
罰則(第百十六条―第百二十条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、国土並びに国民の生命、身体及び財産を災害から保護するため、防災に関し、国、地方公共団体及びその他の公共機関を通じて必要な体制を確立し、責任の所在を明確にするとともに、防災計画の作成、災害予防、災害応急対策、災害復旧及び防災に関する財政金融措置その他必要な災害対策の基本を定めることにより、総合的かつ計画的な防災行政の整備及び推進を図り、もつて社会の秩序の維持と公共の福祉の確保に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 災害 暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波その他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害をいう。
二 防災 災害を未然に防止し、災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ、及び災害の復旧を図ることをいう。
三 指定行政機開 国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項に規定する国の行政機関及び同法第八条第一項に規定する機関で、内閣総理大臣が指定するものをいう。
四 指定地方行政機関 指定行政機関の地方支分部局(国家行政組織法第九条の地方支分部局をいう。)その他の国の地方行政機関で、内閣総理大臣が指定するものをいう。
五 指定公共機関 日本専売公社、日本国有鉄道、日本電信電話公社、日本銀行、日本赤十字社、日本放送協会その他の公共的機関及び電気、ガス、輸送、通信その他の公益的事業を営む法人で、内閣総理大臣が指定するものをいう。
六 指定地方公共機関 港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)第四条第一項の港務局、土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)第五条第一項の土地改良区その他の公共的施設の管理者及び都道府県の地域において電気、ガス、輸送、通信その他の公益的事業を営む法人で、当該都道府県の知事が指定するものをいう。
七 防災計画 防災基本計画及び防災業務計画並びに地域防災計画をいう。
八 防災基本計画 中央防災会議が作成する防災に関する基本的な計画をいう。
九 防災業務計画 指定行政機関の長(当該指定行政機関が国家行政組織法第三条第二項の委員会である場合にあつては、当該指定行政機関。第十二条第五項を除き、以下同じ。)又は指定公共機関(指定行政機関の長又は指定公共機関から委任された事務又は業務については、当該委任を受けた指定地方行政機関の長又は指定地方公共機関)が防災基本計画に基づきその所掌事務又は業務について作成する防災に関する計画をいう。
十 地域防災計画 一定地域に係る防災に関する計画で、次に掲げるものをいう。
イ 都道府県地域防災計画 都道府県の地域につき、当該都道府県の都道府県防災会議が作成するもの
ロ 市町村地域防災計画 市町村の地域につき、当該市町村の市町村防災会議又は市町村長が作成するもの
ハ 指定地域都道府県防災計画 二以上の都道府県の区域の全部又は一部にわたる地域につき、都道府県防災会議の協議会が作成するもの
ニ 指定地域市町村防災計画 二以上の市町村の区域の全部又は一部にわたる地域につき、市町村防災会義の協議会が作成するもの
(国の責務)
第三条 国は、国土並びに国民の生命、身体及び財産を災害から保護する使命を有することにかんがみ、組織及び機能のすべてをあげて防災に関し万全の措置を講ずる責務を有する。
2 国は、前項の責務を遂行するため、災害予防、災害応急対策及び災害復旧の基本となるべき計画を作成し、及び法令に基づきこれを実施するとともに、地方公共団体、指定公共機関、指定地方公共機関等が処理する防災に関する事務又は業務の実施の推進とその総合調整を行ない、及び災害に係る経費負担の適正化を図らなければならない。
3 指定行政機関及び指定地方行政機関は、その所掌事務を遂行するにあたつては、第一項に規定する国の責務が十分に果たされることとなるように、相互に協力しなければならない。
4 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長は、この法律の規定による都道府県及び市町村の地域防災計画の作成及び実施が円滑に行なわれるように、その所掌事務について、当該都道府県又は市町村に対し、勧告し、指導し、助言し、その他適切な措置をとらなければならない。
(都道府県の責務)
第四条 都道府県は、当該都道府県の地域並びに当該都道府県の住民の生命、身体及び財産を災害から保護するため、関係機関及び他の地方公共団体の協力を得て、当該都道府県の地域に係る防災に関する計画を作成し、及び法令に基づきこれを実施するとともに、その区域内の市町村及び指定地方公共機関が処理する防災に関する事務又は業務の実施を助け、かつ、その総合調整を行なう責務を有する。
2 都道府県の機関は、その所掌事務を遂行するにあたつては、前項に規定する都道府県の責務が十分に果たされることとなるように、相互に協力しなければならない。
(市町村の責務)
第五条 市町村は、基礎的な地方公共団体として、当該市町村の地域並びに当該市町村の住民の生命、身体及び財産を災害から保護するため、関係機関及び他の地方公共団体の協力を得て、当該市町村の地域に係る防災に関する計画を作成し、及び法令に基づきこれを実施する責務を有する。
2 市町村長は、前項の責務を遂行するため、消防機関、水防団等の組織の整備並びに当該市町村の区域内の公共的団体等の防災に関する組織及び住民の隣保協同の精神に基づく自発的な防災組織の充実を図り、市町村の有するすべての機能を十分に発揮するように努めなければならない。
3 消防機関、水防団その他市町村の機関は、その所掌事務を遂行するにあたつては、第一項に規定する市町村の責務が十分に果たされることとなるように、相互に協力しなければならない。
(指定公共機関及び指定地方公共機関の責務)
第六条 指定公共機関及び指定地方公共機関は、その業務に係る防災に関する計画を作成し、及び法令に基づきこれを実施するとともに、この法律の規定による国、都道府県及び市町村の防災計画の作成及び実施が円滑に行なわれるように、その業務について、当該都道府県又は市町村に対し、協力する責務を有する。
2 指定公共機関及び指定地方公共機関は、その業務の公共性又は公益性にかんがみ、それぞれその業務を通じて防災に寄与しなければならない。
(住民等の責務)
第七条 地方公共団体の区域内の公共的団体、防災上重要な施設の管理者その他法令の規定による防災に関する責務を有する者は、法令又は地域防災計画の定めるところにより、誠実にその責務を果たさなければならない。
2 前項に規定するもののほか、地方公共団体の住民は、防災に寄与するように努めなければならない。
(施策における防災上の配慮等)
第八条 国及び地方公共団体は、その施策が、直接的なものであると間接的なものであるとを問わず、一体として国土並びに国民の生命、身体及び財産の災害をなくすることに寄与することとなるように意を用いなければならない。
2 国及び地方公共団体は、災害の発生を予防し、又は災害の拡大を防止するため、特に次の各号に掲げる事項の実施に努めなければならない。
一 災害及び災害の防止に関する科学的研究とその成果の実現に関する事項
二 治山、治水その他の国土の保全に関する事項
三 建物の不燃堅牢化、防災建築街区の整備その他都市の防災構造の改善に関する事項
四 防災上必要な気象、地象及び水象の観測、予報、情報その他の業務に関する施設及び組織並びに防災上必要な通信に関する施設及び組織の整備に関する事項
五 災害の予報及び警報の改善に関する事項
六 気象観測網の充実についての国際的協力に関する事項
七 台風に対する人為的調節その他防災上必要な研究、観測及び情報交換についての国際的協力に関する事項
八 水防、消防、救助その他災害応急措置に関する施設及び組織の整備に関する事項
九 防災上必要な教育及び訓練に関する事項
十 防災思想の普及に関する事項
3 国及び地方公共団体は、災害が発生したときは、すみやかに、施設の復旧と被災者の援護を図り、災害からの復興に努めなければならない。
(政府の措置及び国会に対する報告)
第九条 政府は、この法律の目的を達成するため必要な法制上、財政上及び金融上の措置を講じなければならない。
2 政府は、毎年、政令で定めるところにより、防災に関する計画及び防災に関してとつた措置の概況を国会に報告しなければならない。
(他の法律との関係)
第十条 防災に関する事務の処理については、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。
第二章 防災に関する組織
第一節 中央防災会議
(中央防災会議の設置及び所掌事務)
第十一条 総理府に、中央防災会議を置く。
2 中央防災会議は、次の各号に掲げる事務をつかさどる。
一 防災基本計画を作成し、及びその実施を推進すること。
二 非常災害に際し、緊急措置に関する計画を作成し、及びその実施を推進すること。
三 内閣総理大臣の諮問に応じて防災に関する重要事項を審議すること。
四 前各号に掲げるもののほか、法令の規定によりその権限に属する事務
3 内閣総理大臣は、次の各号に掲げる事項については、中央防災会議に諮問しなければならない。
一 防災の基本方針
二 防災に関する施策の総合調整で重要なもの
三 非常災害に際し一時的に必要とする緊急措置の大綱
四 非常災害対策本部の設置
五 その他内閣総理大臣が必要と認める防災に関する重要事項
(中央防災会議の組織)
第十二条 中央防災会議は、会長及び委員をもつて組織する。
2 会長は、内閣総理大臣をもつて充てる。
3 会長は、会務を総理する。
4 会長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員がその職務を代理する。
5 委員は、指定行政機関の長をもつて充てる。
6 中央防災会議に、専門の事項を調査させるため、専門委員を置くことができる。
7 専門委員は、関係行政機関及び指定公共機関の職員並びに学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命する。
8 中央防災会議の事務を処理させるため、中央防災会議に事務局を置く。
9 事務局に、事務局長その他の職員を置く。
事務局長は、会長の命を受け、局務を掌理する。
11 前各号に定めるもののほか、中央防災会議の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
(関係行政機関等に対する協力要求等)
第十三条 中央防災会議は、その所掌事務に関し、関係行政機関の長及び関係地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関及び指定地方公共機関並びにその他の関係者に対し、資料の提出、意見の開陳その他必要な協力を求めることができる。
2 中央防災会議は、その所掌事務の遂行について、地方防災会議(都道府県防災会議又は市町村防災会議をいう。以下同じ。)又は地方防災会議の協議会(都道府県防災会議の協議会又は市町村防災会議の協議会をいう。以下同じ。)に対し、必要な勧告又は指示をすることができる。
第二節 地方防災会議
(都道府県防災会議の設置及び所掌事務)
第十四条 都道府県に、都道府県防災会議を置く。
2 都道府県防災会議は、次の各号に掲げる事務をつかさどる。
一 都道府県地域防災計画を作成し、及びその実施を推進すること。
二 当該都道府県の地域に係る災害が発生した場合において、当該災害に関する情報を収集すること。
三 当該都道府県の地域に係る災害が発生した場合において、当該災害に係る災害応急対策及び災害復旧に関し、当該都道府県並びに関係指定地方行政機関、関係市町村、関係指定公共機関及び関係指定地方公共機関相互間の連絡調整を図ること。
四 非常災害に際し、緊急措置に関する計画を作成し、かつ、その実施を推進すること。
五 前各号に掲げるもののほか、法律又はこれに基づく政令によりその権限に属する事務
(都道府県防災会議の組織)
第十五条 都道府県防災会議は、会長及び委員をもつて組織する。
2 会長は、当該都道府県の知事をもつて充てる。
3 会長は、会務を総理する。
4 会長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員がその職務を代理する。
5 委員は、次の各号に掲げる者をもつて充てる。
一 当該都道府県の区域の全部又は一部を管轄する指定地方行政機関の長又はその指名する職員
二 当該都道府県を警備区域とする陸上自衛隊の方面総監又はその指名する部隊若しくは機関の長
三 当該都道府県の教育委員会の教育長
四 警視総監又は当該道府県の道府県警察本部長
五 当該都道府県の知事がその部内の職員のうちから指名する者
六 当該都道府県の区域内の市町村の市町村長及び消防機関の長のうちから当該都道府県の知事が任命する者
七 当該都道府県の地域において業務を行なう指定公共機関又は指定地方公共機関の役員又は職員のうちから当該都道府県の知事が任命する者
6 都道府県防災会議に、専門の事項を調査させるため、専門委員を置くことができる。
7 専門委員は、関係地方行政機関の職員、当該都道府県の職員、当該都道府県の区域内の市町村の職員、関係指定公共機関の職員、関係指定地方公共機関の職員及び学識経験のある者のうちから、当該都道府県の知事が任命する。
8 前各項に定めるもののほか、都道府県防災会議の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める基準に従い、当該都道府県の条例で定める。
(市町村防災会議)
第十六条 市町村に、当該市町村の地域に係る地域防災計画の作成及びその実施の推進のため、市町村防災会議を置く。
2 前項に規定するもののほか、市町村は、協議により規約を定め、共同して市町村防災会議を設置することができる。
3 市町村は、前項の規定により市町村防災会議を共同して設置したとき、又は政令で定めるところにより、都道府県知事の承認を受けたときは、第一項の規定にかかわらず、市町村防災会議を設置しないことができる。
4 都道府県知事は、前項の規定による承認をしようとするときは、当該都道府県の都道府県防災会議の意見をきかなければならない。
5 市町村防災会議の組織及び所掌事務は、都道府県防災会議の組織及び所掌事務の例に準じて、当該市町村の条例(第二項の規定により設置された市町村防災会議にあつては、規約)で定める。
(地方防災会議の協議会)
第十七条 都道府県相互の間又は市町村相互の間において、当該都道府県又は市町村の区域の全部又は一部にわたり指定地域都道府県防災計画又は指定地域市町村防災計画を作成することが必要かつ効果的であると認めるときは、当該都道府県又は市町村は、協議により規約を定め、都道府県防災会議の協議会又は市町村防災会議の協議会を設置することができる。
2 前項の規定により協議会を設置したときは、都道府県防災会議の協議会にあつては内閣総理大臣に、市町村防災会議の協議会にあつては都道府県知事にそれぞれ届け出なければならない。
(都道府県防災会議の協議会の設置)
第十八条 内閣総理大臣は、二以上の都道府県の区域の全部又は一部にわたり指定地域都道府県防災計画を作成することが必要かつ効果的であると認めるときは、中央防災会議の意見をきいて、当該計画に係る地域を指定し、かつ、関係都道府県に都道府県防災会議の協議会を設置すべきことを指示することができる。
2 内閣総理大臣は、前項の規定により地域を指定したときは、その旨を告示しなければならない。
3 第一項の指示があつたときは、当該指示を受けた都道府県は、都道府県防災会議の協議会を設置しなければならない。
(市町村防災会議の協議会の設置)
第十九条 都道府県知事は、二以上の市町村の区域の全部又は一部にわたり指定地域市町村防災計画を作成することが必要かつ効果的であると認めるときは、都道府県防災会議の意見をきいて、当該計画に係る地域を指定し、かつ、関係市町村に市町村防災会議の協議会を設置すべきことを指示することができる。
2 都道府県知事は、前項の規定により地域を指定したときは、その旨を公示しなければならない。
3 第一項の指示があつたときは、当該指示を受けた市町村は、市町村防災会議の協議会を設置しなければならない。
(政令への委任)
第二十条 前三条に規定するもののほか、地方防災会議の協議会に関し必要な事項は、政令で定める。
(関係行政機関等に対する協力要求)
第二十一条 都道府県防災会議及び市町村防災会議(地方防災会議の協議会を含む。以下次条において「地方防災会議等」という。)は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長及び関係地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関及び指定地方公共機関並びにその他の関係者に対し、資料又は情報の提供、意見の開陳その他必要な協力を求めることができる。
(地方防災会議等相互の関係)
第二十二条 地方防災会議等は、それぞれその所掌事務の遂行について相互に協力しなければならない。
2 都道府県防災会議は、その所掌事務の遂行について、市町村防災会議に対し、必要な勧告又は指示をすることができる。
(災害対策本部)
第二十三条 都道府県又は市町村の地域について災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合において、防災の推進を図るため必要があると認めるときは、都道府県知事又は市町村長は、都道府県地域防災計画又は市町村地域防災計画の定めるところにより、地方防災会議の意見をきいて、災害対策本部を設置することができる。
2 災害対策本部の長は、災害対策本部長とし、都道府県知事又は市町村長をもつて充てる。
3 災害対策本部に、災害対策副本部長、災害対策本部員その他の職員を置き、当該都道府県又は市町村の職員のうちから、当該都道府県の知事又は当該市町村の市町村長が任命する。
4 災害対策本部は、地方防災会議と緊密な連絡のもとに、当該都道府県地域防災計画又は市町村地域防災計画の定めるところにより、当該都道府県又は市町村の地域に係る災害予防及び災害応急対策を実施するものとする。
5 都道府県の災害対策本部長は当該都道府県警察又は当該都道府県の教育委員会に対し、市町村の災害対策本部長は当該市町村の教育委員会に対し、それぞれ当該都道府県又は市町村の地域に係る災害予防又は災害応急対策を実施するため必要な限度において、必要な指示をすることができる。
6 前各項に規定するもののほか、災害対策本部に関し必要な事項は、都道府県又は市町村の条例で定める。
第三節 非常災害対策本部
(非常災害対策本部の設置)
第二十四条 非常災害が発生した場合において、当該災害の規模その他の状況により当該災害に係る災害応急対策を推進するため特別の必要があると認めるときは、内閣総理大臣は、国家行政組織法第八条の規定にかかわらず、臨時に総理府に非常災害対策本部を設置することができる。
2 非常災害対策本部の名称、所管区域並びに設置の場所及び期間は、内閣総理大臣が閣議にかけて決定する。
3 内閣総理大臣は、非常災害対策本部を置いたときは当該本部の名称、所管区域並びに設置の場所及び期間を、当該本部を廃止したときはその旨を、直ちに、告示しなければならない。
(非常災害対策本部の組織)
第二十五条 非常災害対策本部の長は、非常災害対策本部長とし、国務大臣をもつて充てる。
2 非常災害対策本部長は、非常災害対策本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。
3 非常災害対策本部に、非常災害対策副本部長、非常災害対策本部員その他の職員を置く。
4 非常災害対策副本部長は、非常災害対策本部長を助け、非常災害対策本部長に事故があるときは、その職務を代理する。
5 非常災害対策副本部長、非常災害対策本部員その他の職員は、指定行政機関の職員又は指定地方行政機関の長若しくはその職員のうちから、内閣総理大臣が任命する。
(非常災害対策本部の所掌事務)
第二十六条 非常災害対策本部は、次の各号に掲げる事務をつかさどる。
一 所管区域において指定行政機関の長、指定地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関及び指定地方公共機関が防災計画に基づいて実施する災害応急対策の総合調整に関すること。
二 非常災害に際し作成される緊急措置に関する計画の実施に関すること。
三 第二十八条の規定により非常災害対策本部長の権限に属する事務
四 前各号に掲げるもののほか、法令の規定によりその権限に属する事務
(指定行政機関の長の権限の委任)
第二十七条 指定行政機関の長は、非常災害対策本部が設置されたときは、災害応急対策に必要な権限の全部又は一部を当該非常災害対策本部員である当該指定行政機関の職員又は当該指定地方行政機関の長若しくはその職員に委任することができる。
2 指定行政機関の長は、前項の規定による委任をしたときは、直ちに、その旨を告示しなければならない。
(非常災害対策本部長の権限)
第二十八条 非常災害対策本部長は、前条の規定により権限を委任された職員の当該本部の所管区域における権限の行使について総合調整をすることができる。
2 非常災害対策本部長は、当該本部の所管区域における災害応急対策を的確かつ迅速に実施するため特に必要があると認めるときは、その必要な限度において、関係指定地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関並びに指定公共機関及び指定地方公共機関に対し、必要な指示をすることができる。
第四節 災害時における職員の派遣
(職員の派遣の要請)
第二十九条 都道府県知事又は都道府県の委員会若しくは委員(以下「都道府県知事等」という。)は、災害応急対策又は災害復旧のため必要があるときは、政令で定めるところにより、指定行政機関の長又は指定地方行政機関の長に対し、当該指定行政機関又は指定地方行政機関の職員の派遣を要請することができる。
2 市町村長又は市町村の委員会若しくは委員(以下「市町村長等」という。)は、災害応急対策又は災害復旧のため必要があるときは、政令で定めるところにより、指定地方行政機関の長に対し、当該指定地方行政機関の職員の派遣を要請することができる。
3 都道府県又は市町村の委員会又は委員は、前二項の規定により職員の派遣を要請しようとするときは、あらかじめ、当該都道府県の知事又は当該市町村の市町村長に協議しなければならない。
(職員の派遣のあつせん)
第三十条 都道府県知事等又は市町村長等は、災害応急対策又は災害復旧のため必要があるときは、政令で定めるところにより、内閣総理大臣又は都道府県知事に対し、指定行政機関又は指定地方行政機関の職員の派遣についてあつせんを求めることができる。
2 都道府県知事等又は市町村長等は、災害応急対策又は災害復旧のため必要があるときは、政令で定めるところにより、内閣総理大臣又は都道府県知事に対し、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十七の規定による職員の派遣についてあつせんを求めることができる。
3 前条第三項の規定は、前二項の規定によりあつせんを求めようとする場合について準用する。
(職員の派遣義務)
第三十一条 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長並びに都道府県知事等及び市町村長等は、前二条の規定による要請又はあつせんがあつたときは、その所掌事務の遂行に著しい支障のない限り、適任と認める職員を派遣しなければならない。
(派遣職員の身分取扱い)
第三十二条 都道府県又は市町村は、前条又は他の法律の規定により災害応急対策又は災害復旧のため派遣された職員に対し、政令で定めるところにより、災害派遣手当を支給することができる。
2 前項に規定するもののほか、前条の規定により指定行政機関又は指定地方行政機関から派遣された職員の身分取扱いに関し必要な事項は、政令で定める。
(派遣職員に関する資料の提出等)
第三十三条 指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は都道府県知事は、内閣総理大臣に対し、第三十一条の規定による職員の派遣が円滑に行なわれるよう、定期的に、災害応急対策又は災害復旧に必要な技術、知識又は経験を有する職員の職種別現員数及びこれらの者の技術、知識又は経験の程度を記載した資料を提出するとともに、当該資料を相互に交換しなければならない。
第三章 防災計画
(防災基本計画の作成及び公表等)
第三十四条 中央防災会議は、防災基本計画を作成するとともに、災害及び災害の防止に関する科学的研究の成果並びに発生した災害の状況及びこれに対して行なわれた災害応急対策の効果を勘案して毎年防災基本計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならない。
2 中央防災会議は、前項の規定により防災基本計画を作成し、又は修正したときは、すみやかにこれを内閣総理大臣に報告し、並びに指定行政機関の長、都道府県知事及び指定公共機関に通知するとともに、その要旨を公表しなければならない。
第三十五条 防災基本計画は、次の各号に掲げる事項について定めるものとする。
一 防災に関する総合的かつ長期的な計画
二 防災業務計画及び地域防災計画において重点をおくべき事項
三 前各号に掲げるもののほか、防災業務計画及び地域防災計画の作成の基準となるべき事項で、中央防災会議が必要と認めるもの
2 前項に規定する防災業務計画及び地域防災計画において重点をおくべき事項は、おおむね次の各号に掲げるとおりとする。
一 災害予防に関する事項
イ 防災上必要な教育に関する事項
ロ 防災上必要な訓練(図上演習、指導者演習等を含む。)に関する事項
ハ 災害安全運動に自然災害時対策を採用することに関する事項
ニ 災害備蓄制度の運用に関する事項
ホ 地方公共団体の災害対策基金等の管理に関する事項
ヘ 気象業務に関する施設の整備に関する事項
ト 水防、消防及び救助に関する施設及び設備の整備に関する事項
チ 都市の不燃化促進と防災建築街区の整備に関する事項
リ 災害危険区域の指定に関する事項
ヌ 学校、病院、工場、事業場、作業場、百貨店等の災害予防措置に関する事項
ル 文化財の災害予防措置に関する事項
ヲ 漏電による大火の防止に関する事項
ワ 防災営農体制の確立に関する事項
二 災害応急対策に関する事項
イ 災害に関する予報及び警報の伝達並びに警告の方法に関する事項
ロ 災害時における災害に関する情報の収集に関する事項
ハ 災害時における広報宣伝に関する事項
ニ 避難(小学校の児童の集団避難を含む。)に関する事項
ホ 水防活動、消防の活動又は救助に関する事項
ヘ 建設機材の現況の把握及びその緊急使用に関する事項
ト 技術者の現況の把握及びその従事命令に関する事項
チ 災害時における食糧その他の生活必需品及び復旧資材の需給計画に関する事項
リ 災害時における家畜の管理(衛生を含む。)及び飼料の需給計画に関する事項
ヌ 災害時における児童及び生徒の応急の教育に関する事項
ル 災害時における清掃、防疫その他の保健衛生に関する事項
ヲ 災害時における病害虫防除に関する事項
ワ 災害時における通信計画に関する事項
カ 災害時における電力の融通計画に関する事項
ヨ 災害時における交通輸送計画に関する事項
タ 災害時における危険物の保安に関する事項
レ 災害時における犯罪の予防、交通の規制その他の社会秩序の維持に関する事項
ソ 災害時における自衛隊の災害派遣の効率化に関する事項
三 災害復旧に関する事項
イ 災害復旧の実施の基本方針に関する事項
ロ 災害復旧上必要な金融その他の資金計画に関する事項
ハ 借地借家制度の特例の適用に関する事項
ニ 被災中小企業の振興に関する事項
ホ 被災者の生活確保に関する事項
3 防災基本計画には、次の各号に掲げる事項に関する資料を添付しなければならない。
一 国土の現況及び気象の概況
二 防災上必要な施設及び設備の整備の概況
三 防災業務に従事する人員の状況
四 防災上必要な物資の需給の状況
五 防災上必要な運輸又は通信の状況
六 前各号に掲げるもののほか、防災に関し中央防災会議が必要と認める事項
(指定行政機関の防災業務計画)
第三十六条 指定行政機関の長は、防災基本計画に基づき、その所掌事務に関し、防災業務計画を作成し、及び毎年防災業務計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならない。
2 指定行政機関の長は、前項の規定により防災業務計画を作成し、又は修正したときは、すみやかにこれを内閣総理大臣に報告し、並びに都道府県知事及び関係指定公共機関に通知するとともに、その要旨を公表しなければならない。
3 第二十一条の規定は、指定行政機関の長が第一項の規定により防災業務計画を作成し、又は修正する場合について準用する。
第三十七条 防災業務計画は、次の各号に掲げる事項について定めるものとする。
一 所掌事務について、防災に関しとるべき措置
二 前項に掲げるもののほか、所掌事務に関し地域防災計画の作成の基準となるべき事項
2 指定行政機関の長は、防災業務計画の作成及び実施にあたつては、他の指定行政機関の長が作成する防災業務計画との間に調整を図り、防災業務計画が一体的かつ有機的に作成され、及び実施されるように努めなければならない。
(他の法令に基づく計画との関係)
第三十八条 指定行政機関の長が他の法令の規定に基づいて作成する次の各号に掲げる防災に関連する計画の防災に関する部分は、防災基本計画及び防災業務計画と矛盾し、又は抵触するものであつてはならない。
一 国土総合開発法(昭和二十五年法律第二百五号)第二条第三項に規定する全国総合開発計画
二 積雪寒冷単作地帯振興臨時措置法(昭和二十六年法律第六十六号)第五条第一項に規定する農業振興計画
三 森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)第四条第一項に規定する森林基本計画
四 特殊土じよう地帯災害防除及び振興臨時措置法(昭和二十七年法律第九十六号)第三条第一項に規定する災害防除に関する事業計画
五 急傾斜地帯農業振興臨時措置法(昭和二十七年法律第百三十五号)第六条第一項に規定する農業振興計画
六 電源開発促進法(昭和二十七年法律第二百八十三号)第三条第一項に規定する電源開発基本計画
七 湿田単作地域農業改良促進法(昭和二十七年法律第三百五十四号)第五条第一項に規定する農業改良計画
八 海岸砂地地帯農業振興臨時措置法(昭和二十八年法律第十二号)第四条第一項に規定する農業振興計画
九 保安林整備臨時措置法(昭和二十九年法律第八十四号)第二条第一項に規定する保安林整備計画
十 首都圏整備法(昭和三十一年法律第八十三号)第二条第二項に規定する首都圏整備計画
十一 特定多目的ダム法(昭和三十二年法律第三十五号)第四条第一項に規定する多目的ダムの建設に関する基本計画
十二 台風常襲地帯における災害の防除に関する特別措置法(昭和三十三年法律第七十二号)第二条第二項に規定する災害防除事業五箇年計画
十三 治山治水緊急措置法(昭和三十五年法律第二十一号)第三条第一項に規定する治山事業に関する計画及び治水事業に関する計画
十四 前各号に掲げるもののほか、政令で定める計画
(指定公共機関の防災業務計画)
第三十九条 指定公共機関は、防災基本計画に基づき、その業務に関し、防災業務計画を作成し、及び毎年防災業務計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならない。
2 指定公共機関は、前項の規定により防災業務計画を作成し、又は修正したときは、すみやかに主務大臣を経由して内閣総理大臣に報告し、及び関係都道府県知事に通知するとともに、その要旨を公表しなければならない。
3 第二十一条の規定は、指定公共機関が第一項の規定により防災業務計画を作成し、又は修正する場合について準用する。
(都道府県地域防災計画)
第四十条 都道府県防災会議は、防災基本計画に基づき、当該都道府県の地域に係る都道府県地域防災計画を作成し、及び毎年都道府県地域防災計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならない。この場合において、当該都道府県地域防災計画は、防災業務計画に抵触するものであつてはならない。
2 都道府県地域防災計画は、次の各号に掲げる事項について定めるものとする。
一 当該都道府県の地域に係る防災に関し、当該都道府県の区域の全部又は一部を管轄する指定地方行政機関、当該都道府県、当該都道府県の区域内の市町村、指定公共機関、指定地方公共機関及び当該都道府県の区域内の公共的団体その他防災上重要な施設の管理者の処理すべき事務又は業務の大綱
二 当該都道府県の地域に係る防災施設の新設又は改良、防災のための調査研究、教育及び訓練その他の災害予防、情報の収集及び伝達、災害に関する予報又は警報の発令及び伝達、避難、消火、水防、救難、救助、衛生その他の災害応急対策並びに災害復旧に関する事項別の計画
三 当該都道府県の地域に係る災害に関する前号に掲げる措置に要する労務、施設、設備、物資、資金等の整備、備蓄、調達、配分、輸送、通信等に関する計画
四 前各号に掲げるもののほか、当該都道府県の地域に係る防災に関し都道府県防災会議が必要と認める事項
3 都道府県防災会議は、第一項の規定により都道府県地域防災計画を作成し、又は修正しようとするときは、あらかじめ、内閣総理大臣に協議しなければならない。この場合において、内閣総理大臣は、中央防災会議の意見をきかなければならない。
4 都道府県防災会議は、第一項の規定により都道府県地域防災計画を作成し、又は修正したときは、その要旨を公表しなければならない。
第四十一条 都道府県又は都道府県知事が他の法令の規定に基づいて作成し、又は承認する次の各号に掲げる防災に関する計画又は防災に関連する計画の防災に関する部分は、防災基本計画、防災業務計画又は都道府県地域防災計画と矛盾し、又は抵触するものであつてはならない。
一 水防法(昭和二十四年法律第百九十三号)第七条第一項及び第二項に規定する都道府県の水防計画並びに同法第二十五条に規定する指定管理団体の水防計画
二 国土総合開発法第二条第四項に規定する都府県総合開発計画、同条第五項に規定する地方総合開発計画及び同条第六項に規定する特定地域総合開発計画
三 積雪寒冷単作地帯農業改良促進法第四条第一項に規定する農業振興計画
四 急傾斜地帯農業振興臨時措置法第五条第一項に規定する農業振興計画
五 臨時石炭鉱害復旧法(昭和二十七年法律第二百九十五号)第四十八条第一項に規定する鉱害復旧基本計画
六 湿田単作地域農業改良促進法第四条に規定する農業改良計画
七 海岸砂地地帯農業振興臨時措置法第三条第一項に規定する農業振興計画
八 離島振興法(昭和二十八年法律第七十二号)第三条第一項に規定する離島振興計画
九 海岸法(昭和三十一年法律第百一号)第二十三条第一項に規定する海岸保全施設の整備に関する基本計画
十 地すべり等防止法(昭和三十三年法律第三十号)第九条に規定する地すべり防止工事に関する基本計画
十一 前各号に掲げるもののほか、政令で定める計画
(市町村地域防災計画)
第四十二条 市町村防災会議(市町村防災会議を設置しない市町村にあつては、当該市町村の市町村長。以下この条において同じ。)は、防災基本計画に基づき、当該市町村の地域に係る市町村地域防災計画を作成し、及び毎年市町村地域防災計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならない。この場合において、当該市町村地域防災計画は、防災業務計画又は当該市町村を包括する都道府県の都道府県地域防災計画に抵触するものであつてはならない。
2 市町村地域防災計画は、次の各号に掲げる事項について定めるものとする。
一 当該市町村の地域に係る防災に関し、当該市町村及び当該市町村の区域内の公共的団体その他防災上重要な施設の管理者の処理すべき事務又は業務の大綱
二 当該市町村の地域に係る防災施設の新設又は改良、防災のための調査研究、教育及び訓練その他の災害予防、情報の収集及び伝達、災害に関する予報又は警報の発令及び伝達、避難、消火、水防、救難、救助、衛生その他の災害応急対策並びに災害復旧に関する事項別の計画
三 当該市町村の地域に係る災害に関する前号に掲げる措置に要する労務、施設、設備、物資、資金等の整備、備蓄、調達、配分、輸送、通信等に関する計画
四 前各号に掲げるもののほか、当該市町村の地域に係る防災に関し市町村防災会議が必要と認める事項
3 市町村防災会議は、第一項の規定により市町村地域防災計画を作成し、又は修正しようとするときは、あらかじめ、都道府県知事に協議しなければならない。この場合において、都道府県知事は、都道府県防災会議の意見をきかなければならない。
4 市町村防災会議は、第一項の規定により市町村地域防災計画を作成し、又は修正したときは、その要旨を公表しなければならない。
5 第二十一条の規定は、市町村長が第一項の規定により市町村地域防災計画を作成し、又は修正する場合について準用する。
(指定地域都道府県防災計画)
第四十三条 都道府県防災会議の協議会は、防災基本計画に基づき、当該地域に係る指定地域都道府県防災計画を作成し、及び毎年指定地域都道府県防災計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならない。この場合において、当該指定地域都道府県防災計画は、防災業務計画に抵触するものであつてはならない。
2 指定地域都道府県防災計画において定めるべき事項は、第四十条第二項各号に掲げる事項のうち、中央防災会議が指定するものとする。
3 第四十条第三項の規定は、第一項の規定により都道府県防災会議の協議会が、指定地域都道府県防災計画を作成し、又は修正しようとする場合について準用する。
4 都道府県防災会議の協議会は、第一項の規定により指定地域都道府県防災計画を作成し、又は修正したときは、その要旨を公表しなければならない。
(指定地域市町村防災計画)
第四十四条 市町村防災会議の協議会は、防災基本計画に基づき、当該地域に係る指定地域市町村防災計画を作成し、及び毎年指定地域市町村防災計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならない。この場合において、当該指定地域市町村防災計画は、防災業務計画又は当該市町村を包括する都道府県の都道府県地域防災計画に抵触するものであつてはならない。
2 指定地域市町村防災計画において定める事項は、第四十二条第二項各号に掲げる事項のうち、都道府県防災会議が指定するものとする。
3 第四十二条第三項の規定は、第一項の規定により市町村防災会義の協議会が、指定地域市町村防災計画を作成し、又は修正しようとする場合について準用する。
4 市町村防災会議の協議会は、第一項の規定により指定地域市町村防災計画を作成し、又は修正したときは、その要旨を公表しなければならない。
(地域防災計画の実施の推進のための要請等)
第四十五条 地方防災会議の会長又は地方防災会議の協議会の代表者は、地域防災計画の的確かつ円滑な実施を推進するため必要があると認めるときは、都道府県防災会議又はその協議会にあつては当該都道府県の区域の全部又は一部を管轄する指定地方行政機関の長、当該都道府県及びその区域内の市町村の長その他の執行機関、指定地方公共機関、公共的団体並びに防災上重要な施設の管理者その他の関係者に対し、市町村防災会議又はその協議会にあつては当該市町村の長その他の執行機関及び当該市町村の区域内の公共的団体並びに防災上重要な施設の管理者その他の関係者に対し、これらの者が当該防災計画に基づき処理すべき事務又は業務について、それぞれ、必要な要請、勧告又は指示をすることができる。
2 地方防災会議の会長又は地方防災会議の協議会の代表者は、都道府県防災会議又はその協議会にあつては当該都道府県の区域の全部又は一部を管轄する指定地方行政機関の長、当該都道府県及びその区域内の市町村の長その他の執行機関、指定地方公共機関、公共的団体並びに防災上重要な施設の管理者その他の関係者に対し、市町村防災会議又はその協議会にあつては当該市町村の長その他の執行機関及び当該市町村の区域内の公共的団体並びに防災上重要な施設の管理者その他の関係者に対し、それぞれ、地域防災計画の実施状況について、報告又は資料の提出を求めることができる。
第四章 災害予防
(災害予防及びその実施責任)
第四十六条 災害予防は、次の各号に掲げる事項について、災害の発生を未然に防止する等のために行なうものとする。
一 防災に関する組織の整備に関する事項
二 防災に関する訓練に関する事項
三 防災に関する物資及び資材の備蓄、整備及び点検に関する事項
四 防災に関する施設及び設備の整備及び点検に関する事項
五 前各号に掲げるもののほか、災害が発生した場合における災害応急対策の実施の支障となるべき状態等の改善に関する事項
2 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関及び指定地方公共機関その他法令の規定により災害予防の実施について責任を有する者は、法令又は防災計画の定めるところにより、災害予防を実施しなければならない。
(防災に関する組織の整備義務)
第四十七条 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関及び指定地方公共機関、公共的団体並びに防災上重要な施設の管理者(以下この章において「災害予防責任者」という。)は、法令又は防災計画の定めるところにより、それぞれ、その所掌事務又は業務について、災害を予測し、予報し、又は災害に関する情報を迅速に伝達するため必要な組織を整備するとともに、絶えずその改善に努めなければならない。
2 前項に規定するもののほか、災害予防責任者は、法令又は防災計画の定めるところにより、それぞれ、防災業務計画又は地域防災計画を的確かつ円滑に実施するため、防災に関する組織を整備するとともに、防災に関する事務又は業務に従事する職員の配置及び服務の基準を定めなければならない。
(防災訓練義務)
第四十八条 災害予防責任者は、法令又は防災計画の定めるところにより、それぞれ又は他の災害予防責任者と共同して、防災訓練を行なわなければならない。
2 災害予防責任者の属する機関の職員その他の従業員又は災害予防責任者の使用人その他の従業者は、防災計画及び災害予防責任者の定めるところにより、前項の防災訓練に参加しなければならない。
3 災害予防責任者は、第一項の防災訓練を行なおうとするときは、住民その他関係のある公私の団体に協力を求めることができる。
(防災に必要な物資及び資材の備蓄等の義務)
第四十九条 災害予防責任者は、法令又は防災計画の定めるところにより、その所掌事務又は業務に係る災害応急対策又は災害復旧に必要な物資及び資材を備蓄し、整備し、若しくは点検し、又はその管理に属する防災に関する施設及び設備を整備し、若しくは点検しなければならない。
第五章 災害応急対策
第一節 通則
(災害応急対策及びその実施責任)
第五十条 災害応急対策は、次の各号に掲げる事項について、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合に災害の発生を防禦し、又は応急的救助を行なう等災害の拡大を防止するために行なうものとする。
一 警報の発令及び伝達並びに避難の勧告又は指示に関する事項
二 消防、水防その他の応急措置に関する事項
三 被災者の救難、救助その他保護に関する事項
四 災害を受けた児童及び生徒の応急の教育に関する事項
五 施設及び設備の応急の復旧に関する事項
六 清掃り防疫その他の保健衛生に関する事項
七 犯罪の予防、交通の規制その他災害地における社会秩序の維持に関する事項
八 緊急輸送の確保に関する事項
九 前各号に掲げるもののほか、災害の発生の防禦又は拡大の防止のための措置に関する事項
2 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関及び指定地方公共機関その他法令の規定により災害応急対策の実施の責任を有する者は、法令又は防災計画の定めるところにより、災害応急対策を実施しなければならない。
(情報の収集及び伝達)
第五十一条 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関及び指定地方公共機関、公共的団体並びに防災上重要な施設の管理者(以下第五十八条において「災害応急対策責任者」という。)は、法令又は防災計画の定めるところにより、災害に関する情報の収集及び伝達に努めなければならない。
(防災信号)
第五十二条 市町村長が災害に関する警報の発令及び伝達、警告並びに避難の勧告及び指示のため使用する防災に関する信号の種類、内容及び様式又は方法については、他の法令に特別の定めがある場合を除くほか、総理府令で定める。
2 何人も、みだりに前項の信号又はこれに類似する信号を使用してはならない。
(被害状況等の報告)
第五十三条 市町村長は、当該市町村の区域内に災害が発生したときは、政令で定めるところにより、すみやかに、当該災害の状況及びこれに対してとられた措置の概要を都道府県知事に報告しなければならない。
2 都道府県知事は、当該都道府県の区域内に災害が発生したときは、政令で定めるところにより、すみやかに、当該災害の状況及びこれに対してとられた措置の概要を内閣総理大臣に報告しなければならない。
3 指定公共機関の代表者は、その業務に係る災害が発生したときは、政令で定めるところにより、すみやかに、当該災害の状況及びこれに対してとられた措置の概要を内閣総理大臣に報告しなければならない。
4 指定行政機関の長は、その所掌事務に係る災害が発生したときは、政令で定めるところにより、すみやかに、当該災害の状況及びこれに対してとられた措置の概要を内閣総理大臣に報告しなければならない。
5 都道府県知事、指定公共機関の代表者又は指定行政機関の長は、第二項、第三項又は前項の規定により内閣総理大臣に報告するときは、あわせて当該報告に係る事項を中央防災会議に通報するものとする。
第二節 警報の伝達等
(発見者の通報義務等)
第五十四条 災害が発生するおそれがある異常な現象を発見した者は、遅滞なく、その旨を市町村長又は警察官若しくは海上保安官に通報しなければならない。
2 何人も、前項の通報が最も迅速に到達するように協力しなければならない。
3 第一項の通報を受けた警察官又は海上保安官は、その旨をすみやかに市町村長に通報しなければならない。
4 第一項又は前項の通報を受けた市町村長は、地域防災計画の定めるところにより、その旨を気象庁その他の関係機関に通報しなければならない。
(都道府県知事の通知等)
第五十五条 都道府県知事は、法令の規定により、気象庁その他の国の機関から災害に関する予報若しくは警報の通知を受けたとき、又は自ら災害に関する警報をしたときは、法令又は地域防災計画の定めるところにより、予想される災害の事態及びこれに対してとるべき措置について、関係指定地方行政機関の長、指定地方公共機関、市町村長その他の関係者に対し、必要な通知又は要請をするものとする。
(市町村長の警報の伝達及び警告)
第五十六条 市町村長は、法令の規定により災害に関する予報若しくは警報の通知を受けたとき、自ら災害に関する予報若しくは警報を知つたとき、法令の規定により自ら災害に関する警報をしたとき、又は前条の通知を受けたときは、地域防災計画の定めるところにより、当該予報若しくは警報又は通知に係る事項を関係機関及び住民その他関係のある公私の団体に伝達しなければならない。この場合において、必要があると認めるときは、市町村長は、住民その他関係のある公私の団体に対し、予想される災害の事態及びこれに対してとるべき措置について、必要な通知又は警告をすることができる。
(通信設備の優先利用等)
第五十七条 前二条の規定による通知、要請、伝達又は警告が緊急を要するものである場合において、その通信のため特別の必要があるときは、都道府県知事又は市町村長は、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、政令で定めるところにより、公衆電気通信設備を優先的に利用し、若しくは有線電気通信法(昭和二十八年法律第九十六号)第三条第三項第三号に掲げる者が設置する有線電気通信設備若しくは無線設備を使用し、又は放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)第二条第三号に規定する放送局に同条第一号に規定する放送を行なうことを求めることができる。
第三節 事前措置及び避難
(市町村長の出動命令等)
第五十八条 市町村長は、災害が発生するおそれがあるときは、法令又は市町村地域防災計画の定めるところにより、消防機関若しくは水防団に出動の準備をさせ、若しくは出動を命じ、又は警察官若しくは海上保安官の出動を求める等災害応急対策責任者に対し、応急措置の実施に必要な準備をすることを要請し、若しくは求めなければならない。
(市町村長の事前措置等)
第五十九条 市町村長は、災害が発生するおそれがあるときは、災害が発生した場合においてその災害を拡大させるおそれがあると認められる設備又は物件の占有者、所有者又は管理者に対し、災害の拡大を防止するため必要な限度において、当該設備又は物件の除去、保安その他必要な措置をとることを指示することができる。
2 警察署長又は政令で定める管区海上保安本部の事務所の長(以下この項、第六十四条及び第六十六条において「警察署長等」という。)は、市町村長から要求があつたときは、前項に規定する指示を行なうことができる。この場合において、同項に規定する指示を行なつたときは、警察署長等は、直ちに、その旨を市町村長に通知しなければならない。
(市町村長の避難の指示等)
第六十条 災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、人の生命又は身体を災害から保護し、その他災害の拡大を防止するため特に必要があると認めるときは、市町村長は、必要と認める地域の居住者、滞在者その他の者に対し、避難のための立退きを勧告し、及び急を要すると認めるときは、これらの者に対し、避難のための立退きを指示することができる。
2 前項の規定により避難のための立退きを勧告し、又は指示する場合において、必要があると認めるときは、市町村長は、その立退き先を指示することができる。
3 市町村長は、第一項の規定により避難のための立退きを勧告し、若しくは指示し、又は立退き先を指示したときは、すみやかに、その旨を都道府県知事に報告しなければならない。
4 市町村長は、避難の必要がなくなつたときは、直ちに、その旨を公示しなければならない。前項の規定は、この場合について準用する。
(警察官等の避難の指示)
第六十一条 前条第一項の場合において、市町村長が同項に規定する避難のための立退きを指示することができないと認めるとき、又は市町村長から要求があつたときは、警察官又は海上保安官は、必要と認める地域の居住者、滞在者その他の者に対し、避難のための立退きを指示することができる。前条第二項の規定は、この場合について準用する。
2 警察官又は海上保安官は、前項の規定により避難のための立退きを指示したときは、直ちに、その旨を市町村長に通知しなければならない。
3 前条第三項及び第四項の規定は、前項の通知を受けた市町村長について準用する。
第四節 応急措置
(市町村の応急措置)
第六十二条 市町村長は、当該市町村の地域に係る災害が発生し、又はまさに発生しようとしているときは、法令又は地域防災計画の定めるところにより、消防、水防、救助その他災害の発生を防禦し、又は災害の拡大を防止するために必要な応急措置(以下「応急措置」という。)をすみやかに実施しなければならない。
2 市町村の委員会又は委員、市町村の区域内の公共的団体及び防災上重要な施設の管理者その他法令の規定により応急措置の実施の責任を有する者は、当該市町村の地域に係る災害が発生し、又はまさに発生しようとしているときは、地域防災計画の定めるところにより、市町村長の所轄の下にその所掌事務若しくは所掌業務に係る応急措置を実施し、又は市町村長の実施する応急措置に協力しなければならない。
(市町村長の警戒区域設定権等)
第六十三条 災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、人の生命又は身体に対する危険を防止するため特に必要があると認めるときは、市町村長は、警戒区域を設定し、災害応急対策に従事する者以外の者に対して当該区域への立入りを制限し、若しくは禁止し、又は当該区域からの退去を命ずることができる。
2 前項の場合において、市町村長若しくはその委任を受けて同項に規定する市町村長の職権を行なう市町村の吏員が現場にいないとき、又はこれらの者から要求があつたときは、警察官又は海上保安官は、同項に規定する市町村長の職権を行なうことができる。この場合において、同項に規定する市町村長の職権を行なつたときは、警察官又は海上保安官は、直ちに、その旨を市町村長に通知しなければならない。
(応急公用負担等)
第六十四条 市町村長は、当該市町村の地域に係る災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、応急措置を実施するため緊急の必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、当該市町村の区域内の他人の土地、建物その他の工作物を一時使用し、又は土石、竹木その他の物件を使用し、若しくは収用することができる。
2 市町村長は、当該市町村の地域に係る災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、応急措置を実施するため緊急の必要があると認めるときは、現場の災害を受けた工作物又は物件で当該応急措置の実施の支障となるもの(以下この条において「工作物等」という。)の除去その他必要な措置をとることができる。この場合において、工作物等を除去したときは、市町村長は、当該工作物等を保管しなければならない。
3 市町村長は、前項後段の規定により工作物等を保管したときは、当該工作物等の占有者、所有者その他当該工作物等について権原を有する者(以下この条において「占有者等」という。)に対し当該工作物等を返還するため、政令で定めるところにより、政令で定める事項を公示しなければならない。
4 市町村長は、第二項後段の規定により保管した工作物等が滅失し、若しくは破損するおそれがあるとき、又はその保管に不相当な費用若しくは手数を要するときは、政令で定めるところにより、当該工作物等を売却し、その売却した代金を保管することができる。
5 前三項に規定する工作物等の保管、売却、公示等に要した費用は、当該工件物等の返還を受けるべき占有者等の負担とし、その費用の徴収については、行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)第五条及び第六条の規定を準用する。
6 第三項に規定する公示の日から起算して六月を経過してもなお第二項後段の規定により保管した工作物等(第四項の規定により売却した代金を含む。以下この項において同じ。)を返還することができないときは、当該工作物等の所有権は、当該市町村長の統轄する市町村に帰属する。
7 前条第二項の規定は、第一項及び第二項前段の場合について準用する。
8 警察官又は海上保安官は、前項において準用する前条第二項の規定により工作物等を除去したときは、当該工作物等を当該工作物等が設置されていた場所を管轄する警察署長等に差し出さなければならない。この場合において、警察署長等は、当該工作物等を保管しなければならない。
9 前項の規定により警察署長等が行なう工作物等の保管については、第三項から第六項までの規定の例によるものする。ただし、第三項の規定の例により公示した日から起算して六月を経過してもなお返還することができない工作物等の所有権は、警察署長が保管する工作物等にあつては当該警察署の属する都道府県に、政令で定める管区海上保安本部の事務所の長が保管する工作物等にあつては国に、それぞれ帰属するものとする。
第六十五条 市町村長は、当該市町村の地域に係る災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、応急措置を実施するため緊急の必要があると認めるときは、当該市町村の区域内の住民又は当該応急措置を実施すべき現場にある者を当該応急措置の業務に従事させることができる。
2 第六十三条第二項の規定は、前項の場合について準用する。
(災害時における漂流物等の処理の特例)
第六十六条 災害が発生した場合において、水難救護法(明治三十二年法律第九十五号)第二十九条第一項に規定する漂流物又は沈没品を取り除いたときは、警察署長等は、同項の規定にかかわらず、当該物件を保管することができる。
2 水難救護法第二章の規定は、警察署長等が前項の規定により漂流物又は沈没品を保管した場合について準用する。
(他の市町村長等に対する応援の要求)
第六十七条 市町村長等は、当該市町村の地域に係る災害が発生した場合において、応急措置を実施するため必要があると認めるときは、他の市町村の市町村長等に対し、応援を求めることができる。この場合において、応援を求められた市町村長等は、正当な理由がない限り、応援を拒んではならない。
2 前項の応援に従事する者は、応急措置の実施については、当該応援を求めた市町村長等の指揮の下に行動するものとする。
(都道府県知事等に対する応援の要求等)
第六十八条 市町村長等は、当該市町村の地域に係る災害が発生した場合において、応急措置を実施するため必要があると認めるときは、都道府県知事等に対し、応援を求め、又は応急措置の実施を要請することができる。
2 前条第一項後段の規定は、前項の場合について準用する。
(災害時における事務の委託の手続の特例)
第六十九条 市町村は、当該市町村の地域に係る災害が発生した場合において、応急措置を実施するため必要があると認めるときは、地方自治法第二百五十二条の十四及び第二百五十二条の十五の規定にかかわらず、政令で定めるところにより、その事務又は市町村長等の権限に属する事務の一部を他の地方公共団体に委託して、当該地方公共団体の長その他の執行機関にこれを管理し、及び執行させることができる。
(都道府県の応急措置)
第七十条 都道府県知事は、当該都道府県の地域に係る災害が発生し、又はまさに発生しようとしているときは、法令又は地域防災計画の定めるところにより、その所掌事務に係る応急措置をすみやかに実施しなければならない。この場合において、都道府県知事は、その区域内の市町村の実施する応急措置が的確かつ円滑に行なわれることとなるように努めなければならない。
2 都道府県の委員会又は委員は、当該都道府県の地域に係る災害が発生し、又はまさに発生しようとしているときは、法令又は地域防災計画の定めるところにより、都道府県知事の所轄の下にその所掌事務に係る応急措置を実施しなければならない。
3 第一項の場合において、応急措置を実施するため、又はその区域内の市町村の実施する応急措置が的確かつ円滑に行なわれるようにするため必要があると認めるときは、都道府県知事は、指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は当該都道府県の他の執行機関、指定公共機関若しくは指定地方公共機関に対し、応急措置の実施を要請し、又は求めることができる。
(都道府県知事の従事命令等)
第七十一条 都道府県知事は、当該都道府県の地域に係る災害が発生した場合において、第五十条第一項第四号から第九号までに掲げる事項について応急措置を実施するため特に必要があると認めるときは、災害救助法(昭和二十二年法律第百十八号)第二十四条から第二十七条までの規定の例により、従事命令、協力命令若しくは保管命令を発し、施設、土地、家屋若しくは物資を管理し、使用し、若しくは収用し、又はその職員に施設、土地、家屋若しくは物資の所在する場所若しくは物資を保管させる場所に立ち入り検査をさせ、若しくは物資を保管させた者から必要な報告を取ることができる。
2 前項の規定による都道府県知事の権限は、政令で定めるところにより、その一部を市町村長に委任することができる。
(都道府県知事の指示)
第七十二条 都道府県知事は、当該都道府県の区域内の市町村の実施する応急措置が的確かつ円滑に行なわれるようにするため特に必要があると認めるときは、市町村長に対し、応急措置の実施について必要な指示をし、又は他の市町村長を応援すべきことを指示することができる。
2 前項の規定による都道府県知事の指示に係る応援に従事する者は、応急措置の実施については、当該応援を受ける市町村長の指揮の下に行動するものとする。
(都道府県知事による応急措置の代行)
第七十三条 都道府県知事は、当該都道府県の地域に係る災害が発生した場合において、当該災害の発生により市町村がその全部又は大部分の事務を行なうことができなくなつたときは、当該市町村の市町村長が第六十三条第一項、第六十四条第一項及び第二項並びに第六十五条第一項の規定により実施すべき応急措置の全部又は一部を当該市町村長に代わつて実施しなければならない。
2 都道府県知事は、前項の規定により市町村長の事務の代行を開始し、又は終了したときは、その旨を公示しなければならない。
3 第一項の規定による都道府県知事の代行に関し必要な事項は、政令で定める。
(都道府県知事等に対する応援の要求)
第七十四条 都道府県知事等は、当該都道府県の地域に係る災害が発生した場合において、応急措置を実施するため必要があると認めるときは、他の都道府県の都道府県知事等に対し、応援を求めることができる。この場合において、応援を求められた都道府県知事等は、正当な理由がない限り、応援を拒んではならない。
2 前項の応援に従事する者は、応急措置の実施については、当該応援を求めた都道府県知事等の指揮の下に行動するものとする。この場合において、警察官にあつては、当該応援を求めた都道府県の公安委員会の管理の下にその職権を行なうものとする。
(災害時における事務の委託の手続の特例)
第七十五条 都道府県は、当該都道府県の地域に係る災害が発生した場合において、応急措置を実施するため必要があると認めるときは、地方自治法第二百五十二条の十四及び第二百五十二条の十五の規定にかかわらず、政令で定めるところにより、その事務又は都道府県知事等の権限に属する事務の一部を他の都道府県に委託して、当該都道府県の都道府県知事等にこれを管理し、及び執行させることができる。
(災害時における交通の禁止及び制限)
第七十六条 都道府県公安委員会は、当該都道府県又はこれに隣接する都道府県の地域に係る災害が発生した場合において、災害応急対策に従事する者又は災害応急対策に必要な物資の緊急輸送その他応急措置を実施するための緊急輸送を確保するため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、道路の区間を指定して、当該緊急輸送を行なう車両以外の車両の通行を禁止し、又は制限することができる。
(指定行政機関の長等の応急措置)
第七十七条 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長は、災害が発生し、又はまさに発生しようとしているときは、法令又は防災計画の定めるところにより、その所掌事務に係る応急措置をすみやかに実施するとともに、都道府県及び市町村の実施する応急措置が的確かつ円滑に行なわれるようにするため、必要な施策を講じなければならない。
2 前項の場合において、応急措置を実施するため必要があると認めるときは、指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長は、都道府県知事、市町村長又は指定公共機関若しくは指定地方公共機関に対し、応急措置の実施を要請し、又は指示することができる。
(指定行政機関の長等の収用等)
第七十八条 災害が発生した場合において、第五十条第一項第四号から第九号までに掲げる事項について応急措置を実施するため特に必要があると認めるときは、指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長は、防災業務計画の定めるところにより、当該応急措置の実施に必要な物資の生産、集荷、販売、配給、保管若しくは輸送を業とする者に対し、その取り扱う物資の保管を命じ、又は当該応急措置の実施に必要な物資を収用することができる。
2 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長は、前項の規定により物資の保管を命じ、又は物資を収用するため必要があると認めるときは、その職員に物資を保管させる場所又は物資の所在する場所に立ち入り検査をさせることができる。
3 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長は、第一項の規定により物資を保管させた者から、必要な報告を取り、又はその職員に当該物資を保管させてある場所に立ち入り検査をさせることができる。
(通信設備の優先使用権)
第七十九条 災害が発生した場合において、その応急措置の実施に必要な通信のため緊急かつ特別の必要があるときは、指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は都道府県知事若しくは市町村長は、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、公衆電気通信設備を優先的に利用し、又は有線電気通信法第三条第三項第三号に掲げる者が設置する有線電気通信設備若しくは無線設備を使用することができる。
(指定公共機関等の応急措置)
第八十条 指定公共機関及び指定地方公共機関は、災害が発生し、又はまさに発生しようとしているときは、法令又は防災計画の定めるところにより、その所掌業務に係る応急措置をすみやかに実施するとともに、指定地方行政機関の長、都道府県知事等及び市町村長等の実施する応急措置が的確かつ円滑に行なわれるようにするため、必要な措置を講じなければならない。
2 指定公共機関及び指定地方公共機関は、その所掌業務に係る応急措置を実施するため特に必要があると認めるときは、法令又は防災計画の定めるところにより、指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は都道府県知事若しくは市町村長に対し、労務、施設、設備又は物資の確保について応援を求めることができる。この場合において、応援を求められた指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は都道府県知事若しくは市町村長は、正当な理由がない限り応援を拒んではならない。
(公用令書の交付)
第八十一条 第七十一条又は第七十八条第一項の規定による処分については、都道府県知事若しくは市町村長又は指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長は、それぞれ公用令書を交付して行なわなければならない。
2 前項の公用令書には、次の各号に掲げる事項を記載しなければならない。
一 公用令書の交付を受ける者の氏名及び住所(法人にあつては、その名称及び主たる事務所の所在地)
二 当該処分の根拠となつた法律の規定
三 従事命令にあつては従事すべき業務、場所及び期間、保管命令にあつては保管すべき物資の種類、数量、保管場所及び期間、施設等の管理、使用又は収用にあつては管理、使用又は収用する施設等の所在する場所及び当該処分に係る期間又は期日
3 前二項に規定するもののほか、公用令書の様式その他公用令書について必要な事項は、政令で定める。
(損失補償等)
第八十二条 国又は地方公共団体は、第六十四条第一項、同条第七項において同条第一項の場合について準用する第六十三条第二項、第七十一条又は第七十八条第一項の規定による処分が行なわれたときは、それぞれ、当該処分により通常生ずべき損失を補償しなければならない。
2 都道府県は、第七十一条の規定による従事命令により応急措置の業務に従事した者に対して、政令で定める基準に従い、その実費を弁償しなければならない。
(立入りの要件)
第八十三条 第七十一条の規定により都道府県若しくは市町村の職員が立ち入る場合又は第七十八条第二項若しくは第三項の規定により指定行政機関若しくは指定地方行政機関の職員が立ち入る場合においては、当該職員は、あらかじめ、その旨をその場所の管理者に通知しなければならない。
2 前項の場合においては、その職員は、その身分を示す証票を携帯し、かつ、関係人の請求があるときは、これを提示しなければならない。
(応急措置の業務に従事した者に対する損害補償)
第八十四条 市町村長又は警察官若しくは海上保安官が、第六十五条第一項の規定又は同条第二項において準用する第六十三条第二項の規定により、当該市町村の区域内の住民又は応急措置を実施すべき現場にある者を応急措置の業務に従事させた場合において、当該業務に従事した者がそのため死亡し、負傷し、若しくは疾病にかかり、又は廃疾となつたときは、当該市町村は、政令で定める基準に従い、条例で定めるところにより、その者又はその者の遺族若しくは被扶養者がこれらの原因によつて受ける損害を補償しなければならない。
2 都道府県は、第七十一条の規定による従事命令により応急措置の業務に従事した者がそのため死亡し、負傷し、若しくは疾病にかかり、又は廃疾となったときは、、政令で定める基準に従い、条例で定めるところにより、その者又はその者の遺族若しくは被扶養者がこれらの原因によつて受ける損害を補償しなければならない。
(被災者の公的徴収金の減免等)
第八十五条 国は、別に法律で定めるところにより、被災者の国税その他国の徴収金について、軽減若しくは免除又は徴収猶予その他必要な措置をとることができる。
2 地方公共団体は、別に法律で定めるところにより、又は当該地方公共団体の条例で定めるところにより、被災者の地方税その他地方公共団体の徴収金について、軽減若しくは免除又は徴収猶予その他必要な措置をとることができる。
(国有財産等の貸付け等の特例)
第八十六条 国は、災害が発生した場合における応急措置を実施するため必要があると認める場合において、国有財産又は国有の物品を貸し付け、又は使用させるときは、別に法律で定めるところにより、その貸付け又は使用の対価を無償とし、若しくは時価より低く定めることができる。
2 地方公共団体は、災害が発生した場合における応急措置を実施するため必要があると認める場合において、その所有に属する財産又は物品を貸し付け、又は使用させるときは、別に法律で定めるところにより、その貸付け又は使用の対価を無償とし、若しくは時価より低く定めることができる。
第六章 災害復旧
(災害復旧の実施責任)
第八十七条 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関及び指定地方公共機関その他法令の規定により災害復旧の実施について責任を有する者は、法令又は防災計画の定めるところにより、災害復旧を実施しなければならない。
(災害復旧事業費の決定)
第八十八条 国がその費用の全部又は一部を負担し、又は補助する災害復旧事業について主務大臣が行なう災害復旧事業費の決定は、都道府県知事の報告その他地方公共団体が提出する資料及び実地調査の結果等に基づき、適正かつすみやかにしなければならない。
2 前項の規定による災害復旧事業費を決定するにあたつては、主務大臣は、再度災害の防止のため災害復旧事業とあわせて施行することを必要とする施設の新設又は改良に関する事業が円滑に実施されるように十分の配慮をしなければならない。
(防災会議への報告)
第八十九条 主務大臣は、災害復旧事業費の決定を行なつたとき、又は災害復旧事業の実施に関する基準を定めたときは、政令で定めるところにより、それらの概要を中央防災会議に報告しなければならない。
(国の負担金又は補助金の早期交付等)
第九十条 国は、地方公共団体又はその機関が実施する災害復旧事業の円滑な施行を図るため必要があると認めるときは、地方交付税の早期交付を行なうほか、政令で定めるところにより、当該災害復旧事業に係る国の負担金若しくは補助金を早期に交付し、又は所要の資金を融通し、若しくは融通のあつせんをするものとする。
第七章 財政金融措置
(災害予防等に要する費用の負担)
第九十一条 法令に特別の定めがある場合又は予算の範囲内において特別の措置を講じている場合を除くほか、災害予防及び災害応急対策に要する費用その他この法律の施行に要する費用は、その実施の責めに任ずる者が負担するものとする。
(他の地方公共団体の長等の応援を受けた場合の応急措置に要する費用の負担)
第九十二条 第六十七条第一項、第六十八条第一項又は第七十四条第一項の規定により他の地方公共団体の長又は委員会若しくは委員(以下この条において「地方公共団体の長等」という。)の応援を受けた地方公共団体の長等の属する地方公共団体は、当該応援に要した費用を負担しなければならない。
2 前項の場合において、当該応援を受けた地方公共団体の長等の属する地方公共団体が当該費用を支弁するいとまがないときは、当該地方公共団体は、当該応援をする他の地方公共団体の長等の属する地方公共団体に対し、当該費用の一時繰替え支弁を求めることができる。
(市町村が実施する応急措置に要する経費の都道府県の負担)
第九十三条 第七十二条第一項の規定による都道府県知事の指示に基づいて市町村長が実施した応急措置のために要した費用及び応援のために要した費用のうち、当該指示又は応援を受けた市町村長の統轄する市町村に負担させることが困難又は不適当なもので政令で定めるものについては、次条の規定により国がその一部を負担する費用を除き、政令で定めるところにより、当該都道府県知事の統轄する都道府県がその全部又は一部を負担する。
2 前項の場合においては、都道府県は、当該市町村に対し、前項の費用を一時繰替え支弁させることができる。
(災害応急対策に要する費用に対する国の負担又は補助)
第九十四条 災害応急対策に要する費用は、別に法令で定めるところにより、又は予算の範囲内において、国がその全部又は一部を負担し、又は補助することができる。
第九十五条 前条に定めるもののほか、第二十八条第二項に規定する非常災害対策本部長の指示に基づいて、地方公共団体の長が実施した応急措置のために要した費用うち、当該地方公共団体に負担させることが困難又は不適当なもので政令で定めるものについては、政令で定めるところにより、国は、その全部又は一部を補助することができる。
(災害復旧事業費等に対する国の負担及び補助)
第九十六条 災害復旧事業その他災害に関連して行なわれる事業に要する費用は、別に法令で定めるところにより、又は予算の範囲内において、国がその全部又は一部を負担し、又は補助することができる。
(激甚災害の応急措置及び災害復旧に関する経費の負担区分等)
第九十七条 政府は、著しく激甚である災害(以下「激甚災害」という。)が発生したときは、別に法律で定めるところにより、応急措置及び災害復旧が迅速かつ適切に行なわれるよう措置するとともに、激甚災害を受けた地方公共団体等の経費の負担の適正を図るため、又は被災者の災害復興の意欲を振作するため、必要な施策を講ずるものとする。
第九十八条 前条に規定する法律は、できる限り激甚災害の発生のつどこれを制定することを避け、また、災害に伴う国の負担に係る制度の合理化を図り、激甚災害に対する前条の施策が円滑に講ぜられるようなものでなければならない。
第九十九条 第九十七条に規定する法律は、次の各号に掲げる事項について規定するものとする。
一 激甚災害のための施策として、特別の財政援助及び助成措置を必要とする場合の基準
二 激甚災害の復旧事業その他当該災害に関連して行なわれる事業が適切に実施されるための地方公共団体に対する特別の財政援助
三 激甚災害の発生に伴う被災者に対する特別の助成
(災害に対処するための国の財政上の措置)
第百条 政府は、災害が発生した場合において、国の円滑な財政運営をそこなうことなく災害に対処するため、必要な財政上の措置を講ずるように努めなければならない。
2 政府は、前項の目的を達成するため、予備費又は国庫債務負担行為(財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第十五条第二項に規定する国庫債務負担行為をいう。)の計上等の措置について、十分な配慮をするものとする。
(地方公共団体の災害対策基金)
第百一条 地方公共団体は、別に法令で定めるところにより、災害対策に要する臨時的経費に充てるため、災害対策基金を積み立てなければならない。
(起債の特例)
第百二条 次の各号に掲げる場合においては、政令で定める地方公共団体は、政令で定める災害の発生した日の属する年度に限り、地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)第五条の規定にかかわらず、地方債をもつてその財源とすることができる。
一 地方税、使用料、手数料その他の徴収金で自治省令で定めるものの当該災害のための減免で、その程度及び範囲が被害の状況に照らし相当と認められるものによつて生ずる財政収入の不足を補う場合
二 災害予防、災害応急対策又は災害復旧で自治省令で定めるものに通常要する費用で、当該地方公共団体の負担に属するものの財源とする場合
2 前項の地方債は、資金事情の許す限り、国が資金運用部資金又は簡易生命保険及郵便年金特別会計の積立金(以下この条において「政府資金」という。)をもつて引き受けるものとする。
3 第一項の規定による地方債を政府資金で引き受けた場合における当該地方債の利息の定率、償還の方法その他地方債に関し必要な事項は、政令で定める。
(国の補助を伴わない災害復旧事業に対する措置)
第百三条 国及び地方公共団体は、激甚災害の復旧事業費のうち、国の補助を伴わないものについての当該地方公共団体等の負担が著しく過重であると認めるときは、別に法律で定めるところにより、当該復旧事業費の財源に充てるため特別の措置を講ずることができる。
(災害融資)
第百四条 政府関係金融機関その他これに準ずる政令で定める金融機関は、政令で定める災害が発生したときは、災害に関する特別な金融を行ない、償還期限又はすえ置き期間の延長、旧債の借換え、必要がある場合における利率の低減等実情に応じ適切な措置をとるように努めるものとする。
第八章 災害緊急事態
第百五条から第百十二条まで 削除
第九章 雑則
(特別区についてのこの法律の適用)
第百十三条 この法律の適用については、特別区は、市とみなす。ただし、特別区の存する区域に係る防災に関する事務で政令で定めるものは、都が処理するものとする。
(防災功労者表彰)
第百十四条 主務大臣は、防災に従事した者で、防災に関し著しい功労があると認められるものに対し、それぞれ主務省令で定めるところにより、表彰を行なうことができる。
(政令への委任)
第百十五条 この法律に持別の定めがあるものを除くほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。
第十章 罰則
(罰則)
第百十六条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
一 第七十一条第一項の規定による都道府県知事(同条第二項の規定により権限の委任を受けた市町村長を含む。)の従事命令、協力命令又は保管命令に従わなかつた者
二 第七十八条第一項の規定による指定行政機関の長又は指定地方行政機関の長(第二十七条第一項の規定により権限の委任を受けた職員を含む。)の保管命令に従わなかつた者
第百十七条 第七十六条の規定による都道府県公安委員会の禁止又は制限に従わなかつた車両の運転者は、三月以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
第百十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、三万円以下の罰金に処する。
一 第七十一条第一項(同条第二項の規定により権限の委任があつた場合を含む。以下この条において同じ。)、第七十八条第二項(第二十七条第一項の規定により権限の委任があつた場合を含む。)又は第七十八条第三項(第二十七条第一項の規定により権限の委任があつた場合を含む。以下この条において同じ。)の規定による立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
二 第七十一条第一項又は第七十八条第三項の規定による報告をせず、又はいつわりの報告をした者
第百十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、一万円以下の罰金又は拘留に処する。
一 第五十二条第一項の規定に基づく総理府令によって定められた防災に関する信号をみだりに使用し、又はこれと類似する信号を使用した者
二 第六十三条第一項の規定による市町村長(第七十三条第一項の規定により市町村長の事務を代行する都道府県知事を含む。)又は第六十三条第二項の規定による警察官若しくは海上保安官の禁止若しくは制限又は退去命令に従わなかつた者
第百二十条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第百十六条又は第百十八条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
附 則
この法律は、公布の日から起算して一年をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
内閣総理大臣 池田勇人
法務大臣 植木庚子郎
大蔵大臣 水田三喜男
文部大臣 荒木万寿夫
厚生大臣 灘尾弘吉
農林大臣 河野一郎
通商産業大臣 佐藤栄作
運輸大臣 斎藤昇
郵政大臣 迫水久常
労働大臣 福永健司
建設大臣 中村梅吉
自治大臣 安井謙