廃棄物の処理及び清掃に関する法律及び災害対策基本法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第58号
公布年月日: 平成27年7月17日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

東日本大震災の廃棄物処理において、事前の備えが不十分で、初期段階での関係者の機能発揮や国の迅速な対応に課題があった。この教訓を踏まえ、国、地方公共団体、民間事業者等が平時から災害に備え、連携協力する体制の制度的担保が必要となった。また、大規模災害時に地方公共団体だけでは対処困難な場合を想定し、国が処理に当たる制度が必要との結論に至ったため、これらの制度的担保を法制度として整備すべく、本法律案を提出するものである。

参照した発言:
第189回国会 衆議院 環境委員会 第8号

審議経過

第189回国会

衆議院
(平成27年5月29日)
(平成27年6月2日)
(平成27年6月9日)
(平成27年6月11日)
参議院
(平成27年6月12日)
(平成27年6月16日)
(平成27年6月18日)
(平成27年7月7日)
(平成27年7月9日)
(平成27年7月10日)
廃棄物の処理及び清掃に関する法律及び災害対策基本法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
平成二十七年七月十七日
内閣総理大臣 安倍晋三
法律第五十八号
廃棄物の処理及び清掃に関する法律及び災害対策基本法の一部を改正する法律
(廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部改正)
第一条 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)の一部を次のように改正する。
第二条の三を第二条の四とし、第二条の二の次に次の一条を加える。
(非常災害により生じた廃棄物の処理の原則)
第二条の三 非常災害により生じた廃棄物は、人の健康又は生活環境に重大な被害を生じさせるものを含むおそれがあることを踏まえ、生活環境の保全及び公衆衛生上の支障を防止しつつ、その適正な処理を確保することを旨として、円滑かつ迅速に処理されなければならない。
2 非常災害により生じた廃棄物は、当該廃棄物の発生量が著しく多量であることを踏まえ、その円滑かつ迅速な処理を確保するとともに、将来にわたつて生ずる廃棄物の適正な処理を確保するため、分別、再生利用等によりその減量が図られるよう、適切な配慮がなされなければならない。
第四条の次に次の一条を加える。
(非常災害時における連携及び協力の確保)
第四条の二 国、地方公共団体、事業者その他の関係者は、第二条の三に定める処理の原則にのつとり、非常災害時における廃棄物の適正な処理が円滑かつ迅速に行われるよう、適切に役割を分担するとともに、相互に連携を図りながら協力するよう努めなければならない。
第五条の二第二項中第五号を第六号とし、第四号の次に次の一号を加える。
五 非常災害時における前二号に掲げる事項に関する施策の推進を図るために必要な事項
第五条の五第二項に次の一号を加える。
五 非常災害時における前三号に掲げる事項に関する施策を実施するために必要な事項
第六条第四項中「公表しなければ」を「公表するよう努めなければ」に改める。
第六条の二第一項中「第九条の三第十二項」の下に「(第九条の三の三第三項において準用する場合を含む。)」を加える。
第九条の三第九項中「「前項の」とあるのは「第八項の」と、」、「、第三項中「第一項の」とあるのは「第八項の」と」及び「「第一項」とあるのは「第八項」と、」を削り、同条第十一項中「、「当該許可」を「、「同条第二項第一号に掲げる事項その他環境省令」とあるのは「環境省令」と、「当該許可」に改める。
第九条の三の次に次の二条を加える。
(市町村による非常災害に係る一般廃棄物処理施設の届出の特例)
第九条の三の二 市町村は、非常災害が発生した場合に非常災害により生ずる廃棄物の処分を行うために設置する必要があると認める一般廃棄物処理施設について、一般廃棄物処理計画に定め、又はこれを変更しようとするときは、環境省令で定めるところにより、都道府県知事に協議し、その同意を得ることができる。
2 市町村が前項の同意に係る一般廃棄物処理施設を設置しようとする場合における前条の規定の適用については、同条第九項中「第二項及び第三項の規定は」とあるのは「第二項の規定は、」と、「、第四項の規定は前項の規定による届出をした市町村について準用する」とあるのは「準用する」と、「、第四項中「一般廃棄物処理施設を設置してはならない」とあるのは「第八条第二項第四号から第七号までに掲げる事項の変更をしてはならない」と読み替える」とあるのは「読み替える」とし、同条第三項及び第四項の規定は、適用しない。
(非常災害に係る一般廃棄物処理施設の設置の特例)
第九条の三の三 市町村から非常災害により生じた廃棄物の処分の委託を受けた者は、当該処分を行うための一般廃棄物処理施設(一般廃棄物の最終処分場であるものを除く。)を設置しようとするときは、第八条第一項の規定にかかわらず、環境省令で定めるところにより、同条第二項各号に掲げる事項を記載した書類及び当該一般廃棄物処理施設を設置することが周辺地域の生活環境に及ぼす影響についての調査の結果を記載した書類を添えて、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
2 前項の規定による届出をしようとする者は、同項に規定する第八条第二項各号に掲げる事項を記載した書類を作成するに当たつては、政令で定める事項について条例で定めるところにより、前項に規定する調査の結果を記載した書類を公衆の縦覧に供さなければならない。この場合において、当該一般廃棄物処理施設の設置に関し利害関係を有する者は、政令で定める事項について条例で定めるところにより、当該届出をしようとする者に対し、生活環境の保全上の見地から意見書を提出することができる。
3 第九条の三第三項から第十項まで及び第十二項の規定は第一項の規定による届出について、第九条第三項の規定は当該届出をした者について準用する。この場合において、第九条の三第三項、第四項、第八項及び第九項中「市町村」とあるのは「非常災害により生じた廃棄物の処分の委託を受けた者」と、同項中「第二項及び」とあるのは「第九条の三の三第二項の規定及び」と、「第二項中」とあるのは「同条第二項中「前項の」とあるのは「次項において準用する第九条の三第八項の」と、」と、第九条第三項中「第一項ただし書」とあるのは「第九条の三の三第三項において準用する第九条の三第八項」と、「同条第二項第一号」とあるのは「第八条第二項第一号」と、「当該許可」とあるのは「当該届出」と読み替えるものとする。
第九条の四中「及び前条第一項の規定による一般廃棄物処理施設の設置の届出をした市町村」を「、第九条の三第一項の規定による届出をした市町村及び前条第一項の規定による届出をした者」に改める。
第九条の五第一項中「、次条第一項及び第九条の七」を「及び次条第一項」に改める。
第九条の六第一項中「許可施設設置者である法人の」を「許可施設設置者又は第九条の三の三第一項の規定による届出をした者(以下この項及び次条において「許可施設設置者等」という。)である法人の」に、「(許可施設設置者」を「(許可施設設置者等」に、「と許可施設設置者」を「と許可施設設置者等」に、「、許可施設設置者」を「、許可施設設置者等」に改める。
第九条の七中「許可施設設置者」を「許可施設設置者等」に改める。
第十五条の二の五に次の一項を加える。
2 前項に規定する場合において、非常災害のために必要な応急措置として同項の廃棄物を処理するときは、同項の規定にかかわらず、その処理を開始した後、遅滞なく、その旨及び同項に規定する事項を届け出ることをもつて足りる。
第二十九条第一号中「第十二条第三項」を「第九条の三の三第一項、同条第三項において読み替えて準用する第九条の三第八項、第十二条第三項」に改め、同条第十三号中「第十二条の六第三項」を「第九条の三の三第三項において読み替えて準用する第九条の三第三項(第九条の三の三第三項において読み替えて準用する第九条の三第九項において準用する場合を含む。)、第九条の三の三第三項において準用する第九条の三第十項又は第十二条の六第三項」に改める。
(災害対策基本法の一部改正)
第二条 災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)の一部を次のように改正する。
第五十条第一項中「次の各号に」を「次に」に、「防ぎよし」を「防御し」に、「行なう」を「行う」に改め、同項第六号中「清掃」を「廃棄物の処理及び清掃」に、「保健衛生」を「生活環境の保全及び公衆衛生」に改め、同項第九号中「防ぎよ」を「防御」に改める。
第八十六条の五第六項中「第二項」を「第四項」に、「第三項」を「第五項」に改め、同項を同条第八項とし、同条中第五項を第七項とし、第四項を第六項とし、第三項を第五項とし、同条第二項中「前項」を「第一項」に改め、「(廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号。以下この条において「廃棄物処理法」という。)第二条第一項に規定する廃棄物をいう。以下この条において同じ。)」を削り、同項を同条第四項とし、同条第一項の次に次の二項を加える。
2 環境大臣は、前項の規定による指定があつたときは、その指定を受けた災害により生じた廃棄物(廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号。以下この条において「廃棄物処理法」という。)第二条第一項に規定する廃棄物をいう。以下この条において同じ。)(以下この条において「指定災害廃棄物」という。)の円滑かつ迅速な処理を図るため、廃棄物処理法第五条の二第一項に規定する基本方針にのつとり、指定災害廃棄物の処理に関する基本的な指針(以下この条において「処理指針」という。)を定め、これを公表するものとする。
3 処理指針には、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 指定災害廃棄物の処理の基本的な方向
二 指定災害廃棄物の処理についての国、地方公共団体、事業者その他の関係者の適切な役割分担及び相互の連携協力の確保に関する事項
三 前二号に掲げるもののほか、指定災害廃棄物の円滑かつ迅速な処理の確保に関し必要な事項
第八十六条の五に次の五項を加える。
9 環境大臣は、廃棄物処理特例地域内の市町村の長から要請があり、かつ、次に掲げる事項を勘案して指定災害廃棄物を円滑かつ迅速に処理するため必要があると認めるときは、その事務の遂行に支障のない範囲内で、処理指針に基づき、当該市町村に代わつて自ら当該市町村の指定災害廃棄物の収集、運搬及び処分を行うことができる。
一 当該市町村における指定災害廃棄物の処理の実施体制
二 当該指定災害廃棄物の処理に関する専門的な知識及び技術の必要性
三 当該指定災害廃棄物の広域的な処理の重要性
10 第六項及び第七項の規定は、前項の規定により指定災害廃棄物の収集、運搬又は処分を行う環境大臣が当該収集、運搬又は処分を他の者に委託する場合について準用する。この場合において、第六項中「若しくは第六項、第十四条第一項若しくは第六項又は第十四条の四第一項若しくは」とあるのは、「又は」と読み替えるものとする。
11 第九項の規定により指定災害廃棄物の収集、運搬又は処分を行つた環境大臣については、廃棄物処理法第十九条の四第一項の規定は、適用しない。
12 第九項の規定により環境大臣が行う指定災害廃棄物の収集、運搬及び処分に要する費用は、国の負担とする。この場合において、同項の市町村は、当該費用の額から、自ら当該指定災害廃棄物の収集、運搬及び処分を行うこととした場合に国が当該市町村に交付すべき補助金の額に相当する額を控除した額を負担する。
13 国は、前項後段の規定により市町村が負担する費用について、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
第百八条の四第一項中「第六項まで」を「第十三項まで」に改める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。
(検討)
2 政府は、この法律の施行後適当な時期において、この法律の規定による改正後の規定の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
内閣総理大臣 安倍晋三
総務大臣 山本早苗
環境大臣 望月義夫