(災害緊急事態の布告)
第百五条 非常災害が発生し、かつ、当該災害が国の経済及び公共の福祉に重大な影響を及ぼすべき異常かつ激甚なものである場合において、当該災害に係る災害応急対策を推進するため特別の必要があると認めるときは、内閣総理大臣は、閣議にかけて、関係地域の全部又は一部について災害緊急事態の布告を発することができる。
2 前項の布告には、その区域、布告を必要とする事態の概要及び布告の効力を発する日時を明示しなければならない。
(国会の承認及び布告の廃止)
第百六条 内閣総理大臣は、前条の規定により災害緊急事態の布告を発したときは、これを発した日から二十日以内に国会に付議して、その布告を発したことについて承認を求めなければならない。ただし、国会が閉会中の場合又は衆議院が解散されている場合は、その後最初に召集される国会において、すみやかに、その承認を求めなければならない。
2 内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があつたとき、国会が災害緊急事態の布告の廃止を議決したとき、又は当該布告の必要がなくなつたときは、すみやかに、当該布告を廃止しなければならない。
(緊急災害対策本部)
第百七条 内閣総理大臣は、第百五条の規定による災害緊急事態の布告があつたときは、国家行政組織法第八条の規定にかかわらず、閣議にかけて、臨時に総理府に緊急災害対策本部を設置するものとする。この場合において、当該緊急災害対策本部の所管区域は、当該災害緊急事態の布告に係る地域とする。
2 前項の規定により緊急災害対策本部が設置された場合において、当該災害に係る非常災害対策本部が既に設置されているときは、当該非常災害対策本部は、廃止されるものとし、緊急災害対策本部が当該非常災害対策本部の所掌事務を承継するものとする。
3 第百五条の規定による災害緊急事態の布告が廃止されたときは、緊急災害対策本部は、廃止されるものとする。
第百八条 緊急災害対策本部の長は、緊急災害対策本部長とし、内閣総理大臣をもつて充てる。
2 緊急災害対策本部に、緊急災害対策副本部長、緊急災害対策本部員その他の職員を置く。
3 緊急災害対策副本部長は、国務大臣をもつて充てる。
4 前三項に定めるもののほか、第二十五条第二項、第四項及び第五項(非常災害対策副本部長に係る部分を除く。)、第二十六条、第二十七条並びに第二十八条の規定は、緊急災害対策本部の組織及び所掌事務、緊急災害対策本部員に対する指定行政機関の長の権限の委任並びに緊急災害対策本部長の権限について準用する。この場合において、第二十六条第二号中「非常災害」とあるのは「災害緊急事態」と、同条第三号中「第二十八条」とあるのは「第百八条第四項において準用する第二十八条」と読み替えるものとする。
5 緊急災害対策本部長は、前項において準用する第二十八条の規定による権限の全部又は一部を緊急災害対策副本部長に委任することができる。
6 緊急災害対策本部長は、前項の規定により委任をしたときは、直ちに、その旨を告示しなければならない。
(緊急措置)
第百九条 災害緊急事態に際し国の経済の秩序を維持し、及び公共の福祉を確保するため緊急の必要がある場合において、国会が閉会中又は衆議院が解散中であり、かつ、臨時会の召集を決定し、又は参議院の緊急集会を求めてその措置をまついとまがないときは、内閣は、次の各号に掲げる事項について必要な措置をとるため、政令を制定することができる。
一 その供給が特に不足している生活必需物資の配給又は譲渡若しくは引渡しの制限若しくは禁止
二 災害応急対策若しくは災害復旧又は国民生活の安定のため必要な物の価格又は役務その他の給付の対価の最高額の決定
三 金銭債務の支払(賃金、災害補償の給付金その他の労働関係に基づく金銭債務の支払及びその支払のためにする銀行その他の金融機関の預金等の支払を除く。)の延期及び権利の保存期間の延長
2 前項の規定により制定される政令には、その政令の規定に違反した者に対して二年以下の懲役若しくは禁錮、十万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑を科し、又はこれを併科する旨の規定、法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関してその政令の違反行為をした場合に、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金、科料又は没収の刑を科する旨の規定及び没収すべき物件の全部又は一部を没収することができない場合にその価額を追徴する旨の規定を設けることができる。
3 内閣は、第一項の規定により政令を制定した場合において、その必要がなくなつたときは、直ちに、これを廃止しなければならない。
4 内閣は、第一項の規定により政令を制定したときは、直ちに、国会の臨時会の召集を決定し、又は参議院の緊急集会を求め、かつ、そのとつた措置をなお継続すべき場合には、その政令に代わる法律が制定される措置をとり、その他の場合には、その政令を制定したことについて承認を求めなければならない。
5 第一項の規定により制定された政令は、既に廃止され、又はその有効期間が終了したものを除き、前項の国会の臨時会又は参議院の緊急集会においてその政令に代わる法律が制定されたときは、その法律の施行と同時に、その臨時会又は緊急集会においてその法律が制定されないこととなつたときは、制定されないこととなつた時に、その効力を失う。
6 前項の場合を除くほか、第一項の規定により制定された政令は、既に廃止され、又はその有効期間が終了したものを除き、第四項の国会の臨時会が開かれた日から起算して二十日を経過した時若しくはその臨時会の会期が終了した時のいずれか早い時に、又は同項の参議院の緊急集会が開かれた日から起算して十日を経過した時若しくはその緊急集会が終了した時のいずれか早い時にその効力を失う。
7 内閣は、前二項の規定により政令がその効力を失つたときは、直ちに、その旨を告示しなければならない。
8 第一項の規定により制定された政令に罰則が設けられたときは、その政令が効力を有する間に行なわれた行為に対する罰則の適用については、その政令が廃止され、若しくはその有効期間が終了し、又は第五項若しくは第六項の規定によりその効力を失つた後においても、なお従前の例による。