文化財保護法
法令番号: 法律第二百十四号
公布年月日: 昭和25年5月30日
法令の形式: 法律
文化財保護法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十五年五月三十日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第二百十四号
文化財保護法
目次
第一章
総則(第一條―第四條)
第二章
文化財保護委員会
第一節
総則(第五條―第十五條)
第二節
事務局(第十六條―第十九條)
第三節
附属機関及び事務局出張所(第二十條―第二十四條)
第四節
職員(第二十五條・第二十六條)
第三章
有形文化財
第一節
重要文化財(第二十七條―第五十六條)
第一款
指定(第二十七條―第二十九條)
第二款
管理(第三十條―第三十四條)
第三款
保護(第三十五條―第四十七條)
第四款
公開(第四十八條―第五十三條)
第五款
調査(第五十四條・第五十五條)
第六款
雑則(第五十六條)
第二節
重要文化財以外の有形文化財(第五十七條―第六十六條)
第一款
埋蔵文化財(第五十七條―第六十五條)
第二款
有形文化財に関する技術的指導(第六十六條)
第四章
無形文化財(第六十七條・第六十八條)
第五章
史跡名勝天然記念物(第六十九條―第八十四條)
第六章
補則(第八十五條―第百五條)
第七章
罰則(第百六條―第百十二條)
附則
(第百十三條―第百三十條)
第一章 総則
(この法律の目的)
第一條 この法律は、文化財を保存し、且つ、その活用を図り、もつて国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献することを目的とする。
(文化財の定義)
第二條 この法律で「文化財」とは、左に掲げるものをいう。
一 建造物、絵画、彫刻、工芸品、書跡、筆跡、典籍、古文書、民俗資料その他の有形の文化的所産でわが国にとつて歴史上又は芸術上価値の高いもの及び考古資料(以下「有形文化財」という。)
二 演劇、音楽、工芸技術その他の無形の文化的所産でわが国にとつて歴史上又は芸術上価値の高いもの(以下「無形文化財」という。)
三 史跡、名勝及び天然記念物(以下「史跡名勝天然記念物」という。)
2 この法律の規定(第十八條第一号、第二十一條第二項第一号、第二十七條第一項、第二項、第二十八條第一項、第三項、第二十九條第一項、第四項、第三十七條第二項、第五十五條第一項第四号、第八十八條第一項、第二項、第九十四條及び第百十五條の規定を除く。)中「重要文化財」には、国宝を含むものとする。
3 この法律の規定(第十八條第八号、第二十一條第二項第九号、第六十九條第一項、第二項、第七十條第一項、第七十一條第一項、第二項、第七十七條第二項、第八十三條第一項第四号、第八十八條第三項及び第九十四條の規定を除く。)中「史跡名勝天然記念物」には、特別史跡名勝天然記念物を含むものとする。
(政府及び地方公共団体の任務)
第三條 政府及び地方公共団体は、文化財がわが国の歴史、文化等の正しい理解のため欠くことのできないものであり、且つ、将来の文化の向上発展の基礎をなすものであることを認識し、その保存が適切に行われるように、周到の注意をもつてこの法律の趣旨の徹底に努めなければならない。
(国民、所有者等の心構)
第四條 一般国民は、政府及び地方公共団体がこの法律の目的を達成するために行う措置に誠実に協力しなければならない。
2 文化財の所有者その他の関係者は、文化財が貴重な国民的財産であることを自覚し、これを公共のために大切に保存するとともに、できるだけこれを公開する等その文化的活用に努めなければならない。
3 政府及び地方公共団体は、この法律の執行に当つて関係者の所有権その他の財産権を尊重しなければならない。
第二章 文化財保護委員会
第一節 総則
(設置)
第五條 国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三條第二項の規定に基いて、文部省の外局として、文化財保護委員会(以下「委員会」という。)を設置する。
2 委員会の委員は、独立してその職権を行う。
(任務)
第六條 委員会は、文化財の保存及び活用、文化財に関する調査研究その他第一條の目的を達成するため必要な事務を行うことを任務とする。
(権限)
第七條 委員会は、その所掌事務を遂行するため、左に掲げる権限を有する。但し、その権限の行使は、法律(これに基く命令を含む。)に従つてなされなければならない。
一 予算の範囲内で、所掌事務の遂行に必要な支出負担行為をすること。
二 收入金を徴收し、所掌事務の遂行に必要な支拂をすること。
三 所掌事務の遂行に直接必要な事務所等の施設を設置し、及び管理すること。
四 所掌事務の遂行に直接必要な業務用資材、図書その他研究用資材、事務用品等を調達すること。
五 職員の任免及び賞罰を行い、その他職員の人事を管理すること。
六 職員の厚生及び保健のため必要な施設をなし、及び管理すること。
七 所掌事務の監察を行い、法令の定めるところに従い、必要な措置をとること。
八 所掌事務の周知宣伝を行うこと。
九 委員会の公印を制定すること。
十 広く利用に供する適当な記録を整備すること。
十一 所掌事務に関する法人の設立を認可すること。
十二 所掌事務に関する国庫支出金を割り当て、配分すること。
十三 所掌事務に関する物資の確保について援助すること。
十四 所掌事務に関する統計調査の資料及び結果を收集し、解釈し、及び刊行頒布すること。
十五 所掌事務に関する国家的又は国際的関心のある題目について会議、研究会、討論会等を主催すること。
十六 文化財の保護に関する法令案を作成すること。
十七 前各号に掲げるものの外、法律(これに基く命令を含む。)に基き委員会に属せしめられた権限
2 委員会は、その権限の行使に当つて、法律(法律に基く命令を含む。)に別段の定がある場合を除いては、行政上及び運営上の監督を行わないものとする。
(構成)
第八條 委員会は、五人の委員をもつて組織する。
(委員の任命及び欠格事由)
第九條 委員は、文化に関し高い識見を有する者のうちから両議院の同意を経て、文部大臣が任命する。
2 左の各号の一に該当する者は、委員となることができない。
一 禁治産者若しくは準禁治産者又は破産者で復権を得ない者
二 禁こ以上の刑に処せられた者
3 委員は、そのうち三人以上が同一政党に属する者となることとなつてはならない。
(委員の任期)
第十條 委員の任期は、三年とする。但し、補欠の委員は、前任者の残任期間在任する。
2 委員は、再任されることができる。
3 第一項の規定にかかわらず委員は、国会の閉会又は衆議院の解散の場合に任期が満了したときは、その後最初に召集された国会において両議院の同意を経て文部大臣が委員を任命するまでの間、なお在任するものとする。
(委員の失職及び罷免)
第十一條 委員は、第九條第二項各号の一に該当するに至つた場合及び既に委員中二人が所属している政党にあらたに所属するに至つた場合においては、その職を失う。
2 文部大臣は、委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認める場合又は委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない行為があると認める場合においては、両議院の同意を経て、これを罷免することができる。
3 文部大臣は、両議院の同意を経て、左に掲げる委員を罷免する。
一 委員中何人も所属していなかつた一の政党にあらたに三人以上の委員が所属するに至つた場合、これらの者のうち二人をこえる員数の委員
二 委員中一人が既に所属している政党にあらたに二人以上の委員が所属するに至つた場合、これらの者のうち一人をこえる員数の委員
4 両議院は、前項各号に規定する事実があると認めるときは、同項各号の規定により罷免すべき員数の委員の罷免の同意を與えるべきものとする。
5 国会の閉会又は衆議院の解散のため、第二項又は第三項の規定による罷免につき両議院の同意を経ることができないときは、その後最初に召集された国会において両議院の承認を得れば足りる。
(委員長)
第十二條 委員会に委員長を置く。委員長は、委員の互選により定める。
2 委員長は、会務を総理し、委員会を代表する。
3 委員会は、委員長に事故があるとき、又は委員長が欠けたときにその職務を代理する委員を、あらかじめ、定めて置かなければならない。
(委員の給與)
第十三條 委員長及び委員は、別に法律の定めるところにより相当額の給與を受ける。
(会議)
第十四條 委員会は、委員長が招集する。二人以上の委員から請求があるときは、委員長は、委員会を招集しなければならない。
2 委員会は、委員の半数以上の出席がなければ会議を開くことができない。
3 委員会の議事は、出席委員の過半数で決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。
(委員会規則)
第十五條 委員長は、この法律の執行に関し必要な事項について、委員会の議決を経て、委員会規則を定めることができる。
2 委員会規則は、官報で公布する。
第二節 事務局
(事務局の内部組織)
第十六條 委員会に、その所掌事務を遂行するため、国家行政組織法第七條第四項の規定に従い、事務局を置き、事務局に、その内部組織として総務部及び保存部を置く。
(総務部の所掌事務)
第十七條 総務部においては、委員会を補助するため、その所掌事務に関し左の事務をつかさどる。
一 機密に関すること。
二 職員の職階、任免、分限、懲戒、服務その他の人事並びに厚生教養及び訓練に関すること。
三 委員長の官印及び委員会印を管守すること。
四 公文書類を接受し、発送し、編集し、及び保存すること。
五 会計及び会計の監査に関すること。
六 行政財産及び物品を管理すること。
七 行政の考査に関すること。
八 法令案の審査に関すること。
九 委員会及び文化財專門審議会の会議に関すること。
十 重要文化財の出品又は公開の命令、勧告及び承認に関すること。
十一 出品され、又は管理の委託を受けた重要文化財の管理(滅失又はき損の防止の措置を除く。)に関すること。
十二 重要文化財の買取に関すること。
十三 出品に関する給與金、埋蔵文化財の発見に対する報償金及び埋蔵文化財の譲與及び譲渡に関すること。
十四 無形文化財についての資材のあつ旋その他の助成に関すること。
十五 無形文化財の公開の命令及び承認に関すること。
十六 文化財についての補助、費用負担及び損害補償に関すること。
十七 前各号に掲げるものの外、委員会の所掌事務で保存部の所掌に属さない事務に関すること。
(保存部の所掌事務)
第十八條 保存部においては、委員会を補助するため、左の事務をつかさどる。
一 国宝又は重要文化財の指定及びその解除に関すること。
二 重要文化財の管理又は修理に関する命令、勧告、指示及び指揮監督に関すること。
三 国宝の修理及び滅失又はき損の防止の措置の施行に関すること。
四 重要文化財の現状変更、輸出及び所有者以外の者による公開の許可並びに環境保全のためにする行為の制限、禁止及び必要な施設の命令に関すること。
五 埋蔵文化財の発掘の禁止、停止及び中止の命令に関すること。
六 埋蔵文化財の発掘の施行に関すること。
七 助成の措置を講ずべき無形文化財の選定に関すること。
八 特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物の指定及びその解除に関すること。
九 史跡名勝天然記念物の管理又は復旧に関する命令、勧告、指示及び指揮監督に関すること。
十 特別史跡名勝天然記念物の復旧及び滅失、き損又は衰亡の防止の措置の施行に関すること。
十一 史跡名勝天然記念物の現状変更等の許可並びに環境保全のためにする行為の制限、禁止及び必要な施設の命令に関すること。
十二 文化財に関する調査及び調査のため必要な措置の施行に関すること。
十三 文化財に関する專門的、技術的な指導及び助言に関すること。
十四 文化財の管理に関する届出に関すること。
十五 文化財に関する台帳の整備に関すること。
十六 文化財の管理、修理及び復旧に必要な資料を刊行し、頒布すること。
十七 文化財に関する記録、写真、複写及び複製に関すること。
(事務局長)
第十九條 委員会の事務局に事務局長を置く。事務局長は、委員長の指揮監督を受けて事務局の事務を掌理し、所属職員を指揮監督する。
第三節 附属機関及び事務局出張所
(附属機関)
第二十條 委員会の附属機関として、文化財專門審議会、国立博物館及び研究所を置く。
(文化財專門審議会)
第二十一條 文化財專門審議会は、委員会の諮問に応じて文化財の保存及び活用に関する專門的及び技術的事項を調査審議し、且つ、これらの事項に関し必要と認める事項を委員会に建議する。
2 委員会は、左に掲げる事項については、あらかじめ、文化財專門審議会に諮問しなければならない。
一 国宝又は重要文化財の指定及びその解除
二 重要文化財の管理及び修理に関する命令
三 国宝の修理及び滅失又はき損の防止の措置の施行
四 重要文化財の現状変更及び輸出の許可及び許可の権限の都道府県の教育委員会への委任
五 重要文化財の環境保全のためにする行為の制限、禁止及び必要な施設の命令
六 重要文化財の買取
七 埋蔵文化財の発掘の施行
八 助成の措置を講ずべき無形文化財の選定
九 特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物の指定及びその解除
十 史跡名勝天然記念物の管理又は復旧に関する命令
十一 特別史跡名勝天然記念物の復旧及び滅失、き損又は衰亡の防止の措置の施行
十二 史跡名勝天然記念物の現状変更等の許可及び許可の権限の都道府県の教育委員会への委任
十三 史跡名勝天然記念物の環境保全のためにする行為の制限、禁止及び必要な施設の命令
十四 前各号に掲げるものの外、文化財の保存及び活用に関する重要事項
3 前二項の規定により所掌する事項を分掌させるため、文化財專門審議会に分科会を置く。
4 文化財專門審議会及びその分科会の組織及び所掌事務並びに專門委員、臨時專門委員その他の職員については、他の法律(これに基く命令を含む。)に特別の定がある場合を除く外、政令で定める。
(国立博物館)
第二十二條 国立博物館は、有形文化財を收集し、保管して公衆の観覽に供し、あわせてこれに関連する事業を行う。
2 国立博物館は、東京都に置く。
3 国立博物館に、奈良分館を置く。
4 国立博物館の内部組織は、委員会規則で定める。
(研究所)
第二十三條 研究所は、有形文化財及び無形文化財に関する調査研究、資料の作成及びその公表を行う。
2 研究所は、東京都に置く。
3 研究所には、支所を置くことができる。
4 研究所の内部組織は、委員会規則で定める。
(事務局出張所)
第二十四條 委員会は、その所掌事務の一部を分掌させるため、所要の地に事務局出張所を設置することができる。その名称、位置、所掌事務の範囲は、委員会規則で定める。
第四節 職員
(職員)
第二十五條 委員会に置かれる職員の任免、昇任、懲戒その他人事管理に関する事務については、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)の定めるところによる。
(定員)
第二十六條 委員会に置かれる職員の定員は、別に法律で定める。
第三章 有形文化財
第一節 重要文化財
第一款 指定
(指定)
第二十七條 委員会は、有形文化財のうち重要なものを重要文化財に指定することができる。
2 委員会は、重要文化財のうち世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるものを国宝に指定することができる。
(告示及び指定書の交付)
第二十八條 前條の規定による指定をしたときは、委員会は、その旨を官報で告示し、且つ、国宝又は重要文化財の所有者に指定書を交付しなければならない。
2 指定書に記載すべき事項その他指定書に関し必要な事項は、委員会規則で定める。
3 第一項の規定により国宝の指定書を受けたときは、所有者は、二十日以内に国宝に指定された重要文化財の指定書を委員会に返付しなければならない。
(解除)
第二十九條 国宝又は重要文化財が国宝又は重要文化財としての価値を失つた場合その他特殊の事由があるときは、委員会は、国宝又は重要文化財の指定を解除することができる。
2 前項の規定により指定を解除したときは、委員会は、その旨を官報で告示し、且つ、所有者に通知しなければならない。
3 前項の通知を受けたときは、所有者は、二十日以内に指定書を委員会に返付しなければならない。
4 第一項の規定により国宝の指定を解除した場合において当該有形文化財につき重要文化財の指定を解除しないときは、委員会は、直ちに重要文化財の指定書を所有者に交付しなければならない。
第二款 管理
(管理方法の指示)
第三十條 委員会は、重要文化財の所有者に対し、重要文化財の管理に関し必要な指示をすることができる。
(所有者の管理義務及び管理責任者)
第三十一條 重要文化財の所有者は、この法律並びにこれに基いて発する委員会規則及び委員会の指示に従い、重要文化財を管理しなければならない。
2 重要文化財の所有者は、特別の事情があるときは、適当な者をもつぱら自己に代り当該重要文化財の管理の責に任ずべき者(以下「管理責任者」という。)に選任することができる。
3 前項の規定により管理責任者を選任したときは、重要文化財の所有者は、委員会規則の定める事項を記載した書面をもつて、当該管理責任者と連署の上二十日以内に委員会に届け出なければならない。管理責任者を解任した場合も同様とする。
4 前二項の規定による管理責任者には、第一項の規定を準用する。
(所有者又は管理責任者の変更)
第三十二條 重要文化財の所有者が変更したときは、新所有者は、委員会規則の定める事項を記載した書面をもつて、且つ、旧所有者に対し交付された指定書を添えて、二十日以内に委員会に届け出なければならない。
2 重要文化財の所有者は、前條の規定による管理責任者を変更したときは、委員会規則の定める事項を記載した書面をもつて、新管理責任者と連署の上二十日以内に委員会に届け出なければならない。
3 重要文化財の所有者又は前條の規定による管理責任者は、その氏名若しくは名称又は住所を変更したときは、委員会規則の定める事項を記載した書面をもつて、二十日以内に委員会に届け出なければならない。氏名若しくは名称又は住所の変更が重要文化財の所有者に係るときは、届出の際指定書を添えなければならない。
(滅失又はき損)
第三十三條 重要文化財が滅失し、又はき損したときは、所有者(第三十一條の規定により管理責任者を定めてある場合は、その者)は、委員会規則の定める事項を記載した書面をもつて、その事実を知つた日から十日以内に委員会に届け出なければならない。
(所在の変更)
第三十四條 重要文化財の所在の場所を変更したときは、重要文化財の所有者(第三十一條の規定により管理責任者を定めてある場合は、その者)は、委員会規則の定める事項を記載した書面をもつて、且つ、指定書を添えて、二十日以内に委員会に届け出なければならない。但し、一時的な所在の場所の変更その他委員会規則の定める場合は、この限りでない。
第三款 保護
(管理又は修理の補助)
第三十五條 重要文化財の管理又は修理につき多額の経費を要し、重要文化財の所有者がその負担に堪えない場合その他特別の事情がある場合には、政府は、その経費の一部に充てさせるため、重要文化財の所有者に対し補助金を交付することができる。
2 前項の補助金を交付する場合には、委員会は、その補助の條件として管理又は修理に関し必要な事項を指示することができる。
3 委員会は、必要があると認めるときは、第一項の補助金を交付する重要文化財の管理又は修理について指揮監督することができる。
(管理に関する命令又は勧告)
第三十六條 重要文化財を管理する者が不適任なため又は管理が適当でないため重要文化財が滅失し、又はき損する虞があると認めるときは、委員会は、所有者又は第三十一條の規定による管理責任者に対し、重要文化財の管理をする者の選任又は変更、管理方法の改善、防火施設その他の保存施設の設置その他管理に関し必要な措置を命じ、又は勧告することができる。
2 前項の規定による命令又は勧告に基いてする措置のために要する費用は、委員会規則の定めるところにより、その全部又は一部を国庫の負担とすることができる。
3 前項の規定により国庫が費用の全部又は一部を負担する場合には、前條第三項の規定を準用する。
(修理に関する命令又は勧告)
第三十七條 委員会は、国宝がき損している場合において、その保存のため必要があると認めるときは、所有者又は第三十一條の規定による管理責任者に対し、その修理について必要な命令又は勧告をすることができる。
2 委員会は、国宝以外の重要文化財がき損している場合において、その保存のため必要があると認めるときは、所有者又は第三十一條の規定による管理責任者に対し、その修理について必要な勧告をすることができる。
3 前二項の規定による命令又は勧告に基いてする修理のために要する費用は、委員会規則の定めるところにより、その全部又は一部を国庫の負担とすることができる。
4 前項の規定により国庫が費用の全部又は一部を負担する場合には、第三十五條第三項の規定を準用する。
(政府による修理等の施行)
第三十八條 委員会は、左の各号の一に該当する場合においては、国宝につき自ら修理を行い、又は滅失若しくはき損の防止の措置をすることができる。
一 所有者又は第三十一條の規定による管理責任者が前二條の規定による命令に従わないとき。
二 国宝がき損している場合又は滅失し、若しくはき損する虞がある場合において、所有者又は第三十一條の規定による管理責任者に修理又は滅失若しくはき損の防止の措置をさせることが適当でないと認められるとき。
2 前項の規定による修理又は措置をしようとするときは、委員会は、あらかじめ、所有者又は第三十一條の規定による管理責任者に対し、当該国宝の名称、修理又は措置の内容、着手の時期その他必要と認める事項を記載した令書を交付しなければならない。
第三十九條 委員会は、前條第一項の規定による修理又は措置をするときは、その職員のうちから、当該修理又は措置の施行及び当該国宝の管理の責に任ずべき者を定めなければならない。
2 前項の規定により責に任ずべき者と定められた者は、当該修理又は措置の施行に当るときは、その身分を証明する証票を携帶し、関係者の請求があつたときは、これを示し、且つ、その正当な意見を十分に尊重しなければならない。
第四十條 第三十八條第一項の規定による修理又は措置のために要する費用は、国庫の負担とする。
2 委員会は、委員会規則の定めるところにより、第三十八條第一項の規定による修理又は措置のために要した費用の一部を所有者から徴收することができる。
3 前項の規定による徴收については、行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)第五條から第七條までの規定を準用する。
第四十一條 第三十八條第一項の規定による修理又は措置によつて損害を受けた者に対しては、政府は、その通常生ずべき損害を補償する。
2 前項の規定による補償額に不服のある者は、訴をもつてその増額を請求することができる。但し、前項の補償の決定の通知を受けた日から六箇月を経過したときは、この限りでない。
(補助等に係る重要文化財譲渡の場合の納付金)
第四十二條 国が修理又は滅失若しくはき損の防止の措置(以下この條において、「修理等」という。)につき第三十五條第一項の規定により補助金を交付し、又は第三十六條第二項、第三十七條第三項若しくは第四十條第一項の規定により費用を負担した重要文化財のその当時における所有者又はその相続人、受遺者若しくは受贈者(第二次以下の相続人、受遺者又は受贈者を含む。以下この條において同じ。)(以下この條において、「所有者等」という。)は、補助又は費用負担に係る修理等が行われた後当該重要文化財を有償で譲り渡した場合においては、当該補助金又は負担金の額(第四十條第二項の規定により徴收された部分を除く。)の合計額から当該修理等が行われた後重要文化財の修理等のため自己の費した金額を控除して得た金額(以下この條において、「納付金額」という。)を、委員会規則の定めるところにより国庫に納付しなければならない。
2 前項に規定する「補助金又は負担金の額」とは、補助金又は負担金の額を、補助又は費用負担に係る修理等を施した重要文化財又はその部分につき委員会が個別的に定める耐用年数で除して得た金額に、更に当該耐用年数から修理等を行つた時以後重要文化財の譲渡の時までの年数を控除した残余の年数(一年に満たない部分があるときは、これを切り捨てる。)を乘じて得た金額に相当する金額とする。
3 補助又は費用負担に係る修理等が行われた後、当該重要文化財が所有者等の責に帰することのできない事由により著しくその価値を減じた場合又は当該重要文化財を国に譲り渡した場合には、委員会は、納付金額の全部又は一部の納付を免除することができる。
4 委員会の指定する期限までに納付金額を完納しないときは、国税滯納処分の例により、これを徴收することができる。
5 納付金額を納付する者が相続人、受遺者又は受贈者であるときは、政令の定めるところにより納付金額からその者が納付した相続税額のうち当該重要文化財の相続、遺贈又は贈與に係る部分に相当する金額を控除するものとする。
6 第一項の規定により納付金額を納付する者の同項に規定する譲渡に係る所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)第九條第一項第八号に規定する譲渡所得の計算については、第一項の規定により納付する金額は、同号に規定する譲渡に関する経費とする。
(現状変更の制限)
第四十三條 重要文化財の現状を変更しようとするときは、委員会の許可を受けなければならない。但し、その維持の措置をする場合は、この限りでない。
2 委員会は、前項の許可を與える場合において、その許可の條件として同項の現状の変更に関し必要な指示をすることができる。
3 第一項の許可を受けた者が前項の許可の條件に従わなかつたときは、委員会は、許可に係る現状の変更を停止し、又は許可を取り消すことができる。
(輸出の禁止)
第四十四條 重要文化財は、輸出してはならない。但し、委員会が文化の国際的交流その他の事由により特に必要と認めて許可した場合は、この限りでない。
(環境保全)
第四十五條 委員会は、重要文化財の保存のため必要があると認めるときは、地域を定めて一定の行為を制限し、若しくは禁止し、又は必要な施設をすることを命ずることができる。
2 前項の規定による処分によつて損害を受けた者に対しては、政府は、その通常生ずべき損害を補償する。
3 前項の場合には、第四十一條第二項の規定を準用する。
(国に対する売渡の申出)
第四十六條 重要文化財を有償で譲り渡そうとする者は、譲渡の相手方、予定対価の額(予定対価が金銭以外のものであるときは、これを時価を基準として金銭に見積つた額。以下同じ。)その他委員会規則で定める事項を記載した書面をもつて、まず委員会に国に対する売渡の申出をしなければならない。但し、当該譲受人に対して特に譲り渡したい特別の事情がある場合において委員会の承認を受けたときは、この限りでない。
2 前項の規定による売渡の申出のあつた後二十日以内に委員会が当該重要文化財を国において買い取るべき旨の通知をしたときは、前項の規定による申出書に記載された予定対価の額に相当する代金で、売買が成立したものとみなす。
3 第一項に規定する者は、前項の期間(その期間内に委員会が当該重要文化財を買い取らない旨の通知をしたときは、その時までの期間)内は、当該重要文化財を譲り渡してはならない。
4 委員会が第一項但書の規定による承認をしない旨の処分をした場合において、その処分に不服のある者は、委員会に対し、異議の申立をすることができる。
(管理又は修理の受託又は技術的指導)
第四十七條 重要文化財の所有者は、委員会の定める條件により、委員会に重要文化財の管理又は修理を委託することができる。
2 委員会は、重要文化財の保存上必要があると認めるときは、所有者に対し、條件を示して、委員会にその管理又は修理を委託するように勧告することができる。
3 前二項の規定により委員会が管理又は修理の委託を受けた場合には、第三十九條の規定を準用する。
4 重要文化財の所有者又は第三十一條の規定による管理責任者は、委員会規則の定めるところにより、委員会に重要文化財の管理又は修理に関し技術的指導を求めることができる。
第四款 公開
(出品)
第四十八條 委員会は、重要文化財の所有者に対し、一年以内の期間を限つて、国立博物館その他の施設において国の行う公開の用に供するため重要文化財を出品することを勧告することができる。
2 委員会は、国庫が管理又は修理につき、その費用の全部若しくは一部を負担し、又は補助金を交付した重要文化財の所有者に対し、一年以内の期間を限つて、国立博物館その他の施設において国の行う公開の用に供するため当該重要文化財を出品することを命ずることができる。
3 委員会は、前項の場合において必要があると認めるときは、一年以内の期間を限つて、出品の期間を更新することができる。但し、引き続き五年をこえてはならない。
4 第二項の命令又は前項の更新があつたときは、重要文化財の所有者は、その重要文化財を出品しなければならない。但し、委員会が所有者の申請によりやむを得ない事由があるものと認める場合は、この限りでない。
5 前四項に規定する場合の外、委員会は、重要文化財の所有者から国立博物館その他の施設において国の行う公開の用に供するため重要文化財を出品したい旨の申出があつた場合において適当と認めるときは、その出品を承認することができる。
第四十九條 委員会は、前條の規定により重要文化財が出品されたときは、第百條に規定する場合を除いて、国立博物館所属の職員その他委員会の職員のうちから、その重要文化財の管理の責に任ずべき者を定めなければならない。
第五十條 第四十八條の規定による出品のために要する費用は、委員会規則の定める基準により、国庫の負担とする。
2 政府は、第四十八條の規定により出品した所有者に対し、委員会規則の定める基準により、給與金を支給する。
(所有者による公開)
第五十一條 委員会は、重要文化財の所有者に対し、三箇月以内の期間を限つて、重要文化財の公開を勧告することができる。
2 委員会は、国庫が管理又は修理につき、その費用の全部若しくは一部を負担し、又は補助金を交付した重要文化財の所有者に対し、三箇月以内の期間を限つて、その公開を命ずることができる。
3 前項の場合には、第四十八條第四項の規定を準用する。
4 委員会は、重要文化財の所有者に対し、公開及び公開に係る重要文化財の管理に関し必要な指示をすることができる。
5 重要文化財の所有者又は第三十一條の規定による管理責任者が前項の指示に従わない場合には、委員会は、公開の停止又は中止を命ずることができる。
6 第一項から第四項までの規定による公開のために要する費用は、委員会規則の定めるところにより、その全部又は一部を国庫の負担とすることができる。
7 第一項から第三項までに規定する場合の外、重要文化財の所有者から、その所有に係る重要文化財を国庫の費用負担において公開したい旨の申出があつた場合において、委員会が適当と認めてこれを承認したときは、委員会規則の定めるところにより、その公開のために要する費用の全部又は一部を国庫の負担とすることができる。この場合には、第四項及び第五項の規定を準用する。
(損害の補償)
第五十二條 第四十八條又は前條の規定により出品し、又は公開したことに起因して当該重要文化財が滅失し、又はき損したときは、政府は、その重要文化財の所有者に対し、通常生ずべき損害を補償する。但し、重要文化財が所有者又は第三十一條の規定による管理責任者の責に帰すべき事由によつて滅失し、又はき損した場合は、この限りでない。
2 前項の場合には、第四十一條第二項の規定を準用する。
(所有者以外の者による公開)
第五十三條 重要文化財の所有者以外の者がその主催する展覽会その他の催しにおいて重要文化財を公衆の観覽に供しようとするときは、委員会の許可を受けなければならない。但し、あらかじめ、委員会の承認を受けた博物館その他の施設において、委員会以外の国の機関又は地方公共団体が主催する場合は、委員会に届け出ることをもつて足りる。
2 委員会は、前項の許可を與える場合において、その許可の條件として、公衆の観覽に供する場合における重要文化財の管理に関し必要な指示をすることができる。
3 第一項の許可を受けた者が前項の許可の條件に従わなかつたときは、委員会は、許可に係る公開を停止し、又は許可を取り消すことができる。
第五款 調査
(保存のための調査)
第五十四條 委員会は、必要があると認めるときは、重要文化財の所有者又は第三十一條の規定による管理責任者に対し、重要文化財の現状又は管理、修理若しくは環境保全の状況につき報告を求めることができる。
第五十五條 委員会は、左の各号の一に該当する場合において、前條の報告によつてもなお重要文化財に関する状況を確認することができず、且つ、その確認のため他に方法がないと認めるときは、調査に当る者を定め、その所在する場所に立ち入つてその現状又は管理、修理若しくは環境保全の状況につき実地調査をさせることができる。
一 重要文化財の現状変更の許可の申請があつたとき。
二 重要文化財がき損しているとき又はその現状若しくは所在の場所につき変更があつたとき。
三 重要文化財が滅失し、又はき損する虞のあるとき。
四 特別の事情によりあらためて国宝又は重要文化財としての価値を鑑査する必要があるとき。
2 前項の規定により立ち入り、調査する場合においては、当該調査に当る者は、その身分を証明する証票を携帶し、関係者の請求があつたときは、これを示し、且つ、その正当な意見を十分に尊重しなければならない。
3 第一項の規定による調査によつて損害を受けた者に対しては、政府は、その通常生ずべき損害を補償する。
4 前項の場合には、第四十一條第二項の規定を準用する。
第六款 雑則
(所有者変更に伴う権利義務の承継)
第五十六條 重要文化財の所有者が変更したときは、新所有者は、当該重要文化財に関しこの法律に基いてする委員会の命令、勧告、指示その他の処分による旧所有者の権利義務を承継する。
2 前項の場合には、旧所有者は、当該重要文化財の引渡と同時にその指定書を新所有者に引き渡さなければならない。
第二節 重要文化財以外の有形文化財
第一款 埋蔵文化財
(発掘に関する届出、指示及び命令)
第五十七條 第六十九條又は第七十條の規定により史跡に指定された土地以外の土地において埋蔵物たる文化財(以下「埋蔵文化財」という。)を発掘しようとするときは、委員会規則の定める事項を記載した書面をもつて、発掘しようとする日の二十日前までに委員会に届け出なければならない。
2 埋蔵文化財の保護上特に必要があると認めるときは、委員会は、前項の届出に係る埋蔵文化財の発掘に関し必要な事項を指示し、又はその発掘の禁止、停止若しくは中止を命ずることができる。
(発掘の施行)
第五十八條 委員会は、必要があると認めるときは、自ら埋蔵文化財の発掘を施行することができる。
2 前項の規定により発掘を自ら施行しようとするときは、委員会は、あらかじめ、当該土地の所有者及び権原に基く占有者に対し、発掘の目的、方法、着手の時期その他必要と認める事項を記載した令書を交付しなければならない。
3 第一項の場合には、第三十九條及び第四十一條の規定を準用する。
第五十九條 前條第一項の規定による発掘により文化財を発見したときは、委員会は、当該文化財をその所有者に返還する場合を除いて、遺失物法(明治三十二年法律第八十七号)第十三條で準用する同法第一條第一項の規定にかかわらず、警察署長にその旨を通知することをもつて足りる。
2 前項の通知を受けたときは、警察署長は、直ちに当該文化財につき遺失物法第十三條で準用する同法第一條第二項の規定による公告をしなければならない。
(提出)
第六十條 遺失物法第十三條で準用する同法第一條第一項の規定により、埋蔵物として差し出された物件が文化財と認められるときは、警察署長は、直ちに当該物件を委員会に提出しなければならない。但し、所有者の判明している場合は、この限りでない。
(鑑査)
第六十一條 前條の規定により物件が提出されたときは、委員会は、当該物件が文化財であるかどうかを鑑査しなければならない。
2 委員会は、前項の鑑査の結果当該物件を文化財と認めたときは、その旨を警察署長に通知し、文化財でないと認めたときは、当該物件を警察署長に差し戻さなければならない。
(引渡)
第六十二條 第五十九條第一項又は前條第二項に規定する文化財の所有者から、警察署長に対し、その文化財の返還の請求があつたときは、委員会は、当該警察署長にこれを引き渡さなければならない。
(国庫帰属及び報償金)
第六十三條 第五十九條第一項又は第六十一條第二項に規定する文化財でその所有者が判明しないものの所有権は、国庫に帰属する。この場合においては、委員会は、当該文化財の発見者及びその発見された土地の所有者にその旨を通知し、且つ、その価格に相当する額の報償金を支給する。
2 前項に規定する発見者と土地所有者とが異なるときは、前項の報償金は、折半して支給する。
3 前二項の場合には、第四十一條第二項の規定を準用する。
(譲與等)
第六十四條 政府は、第六十一條第二項に規定する文化財の保存のため又はその効用から見て国が保有する必要がある場合を除いて、当該文化財の発見者又はその発見された土地の所有者に、その者が前條の規定により受けるべき報償金の額に相当するものの範囲内でこれを譲與することができる。
2 前項の場合には、その譲與した文化財の価格に相当する金額は、前條に規定する報償金の額から控除するものとする。
3 政府は、発見された埋蔵文化財の保存のため又はその効用から見て国が保有する必要がある場合を除いて、当該埋蔵文化財の発見された土地を管轄する地方公共団体に対し、その申請に基き、当該埋蔵文化財を譲與し、又は時価よりも低い対価で譲渡することができる。
(遺失物法の適用)
第六十五條 埋蔵文化財に関しては、この法律に特別の定のある場合の外、遺失物法第十三條の規定の適用があるものとする。
第二款 有形文化財に関する技術的指導
(技術的指導)
第六十六條 重要文化財以外の有形文化財の所有者は、委員会規則の定めるところにより、委員会に有形文化財の管理又は修理に関し技術的指導を求めることができる。
第四章 無形文化財
(助成)
第六十七條 無形文化財のうち特に価値の高いもので国が保護しなければ衰亡する虞のあるものについては、委員会は、その保存に当ることを適当と認める者に対し、補助金を交付し、又は資材のあつ旋その他適当な助成の措置を講じなければならない。
2 前項の補助金を交付する場合には、第三十五條第二項及び第三項の規定を準用する。
(公開)
第六十八條 委員会は、前條の規定による措置を受けた者に対し、三箇月以内の期間を限つて、当該無形文化財の公開を命ずることができる。
2 前項の場合には、第五十一條第三項から第六項までの規定を準用する。
3 前條に規定する無形文化財の保存に当つている者から、その保存に係る無形文化財を国庫の費用負担において公開したい旨の申出があつた場合には、第五十一條第七項の規定を準用する。
第五章 史跡名勝天然記念物
(指定)
第六十九條 史跡名勝天然記念物は、委員会が指定する。
2 委員会は、前項の史跡名勝天然記念物のうち特に重要なものを特別史跡名勝天然記念物に指定することができる。
3 前二項の規定による指定をしたときは、委員会は、その旨を官報で告示し、且つ、指定されたものの所有者及び権原に基く占有者に通知しなければならない。
(仮指定)
第七十條 前條第一項の規定による指定前において緊急の必要があると認めるときは、都道府県の教育委員会は、史跡名勝天然記念物の仮指定を行うことができる。
2 前項の規定により仮指定を行つたときは、都道府県の教育委員会は、直ちにその旨を委員会に報告しなければならない。
3 第一項の規定により仮指定をした場合には、前條第三項の規定を準用する。
(解除)
第七十一條 特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物がその価値を失つた場合その他特殊の事由のあるときは、委員会又は都道府県の教育委員会は、その指定又は仮指定を解除することができる。
2 前條の規定により仮指定された史跡名勝天然記念物につき第六十九條第一項の規定による指定があつたときは、仮指定は、その効力を失う。
3 前條の規定による仮指定が適当でないと認めるときは、委員会は、これを解除することができる。
4 第一項又は前項の規定による指定又は仮指定の解除には、第六十九條第三項の規定を準用する。
(管理)
第七十二條 委員会は、適当な地方公共団体その他の団体を指定して史跡名勝天然記念物の管理(復旧を含む。以下本條第二項から第四項まで、第七十三條及び第七十四條において同じ。)をさせることができる。
2 史跡名勝天然記念物に指定(仮指定を含む。以下同じ。)されたものの所有者又は占有者は、正当な理由がなくて、前項に規定する管理及び管理のため必要な措置を拒み、妨げ、又は忌避してはならない。
3 第一項の規定による管理に要する費用は、この法律に特別の定のある場合を除いて、当該地方公共団体その他の団体の負担とする。
4 第一項に規定する地方公共団体その他の団体は、その管理する史跡名勝天然記念物につき観覽料を徴收することができる。
5 政府は、第三項の費用の一部を補助することができる。
6 前項の場合には、第三十五條第二項及び第三項の規定を準用する。
第七十三條 前條の規定により地方公共団体その他の団体が行う史跡名勝天然記念物の管理によつて損害を受けた者に対しては、当該地方公共団体その他の団体は、その通常生ずべき損害を補償しなければならない。
2 前項の場合には、第四十一條第二項の規定を準用する。
第七十四條 第七十二條に規定する場合を除いて、史跡名勝天然記念物に指定されたものの所有者は、当該史跡名勝天然記念物の管理に当るものとする。
2 前項の規定により史跡名勝天然記念物の管理に当る所有者は、特別の事情があるときは、適当な者をもつぱら自己に代り当該史跡名勝天然記念物の管理の責に任ずべき者(以下「管理責任者」という。)に選任することができる。
3 第一項に規定する所有者には、第三十五條の規定を、前項の規定により管理責任者を選任した場合には、第三十一條第三項の規定を準用する。
第七十五條 第七十二條第一項に規定する地方公共団体その他の団体、前條第一項に規定する所有者及び同條第二項の規定による管理責任者(以下これらの者を「管理者」と総称する。)には、第三十條、第三十一條第一項及び第三十三條の規定を、前條第一項に規定する所有者及び同條第二項の規定による管理責任者には、第三十二條の規定を準用する。
(管理に関する命令又は勧告)
第七十六條 管理が適当でないため史跡名勝天然記念物が滅失し、き損し、又は衰亡する虞があると認めるときは、委員会は、管理者に対し、管理方法の改善、保存施設の設置その他管理に関し必要な措置を命じ、又は勧告することができる。
2 前項の場合には、第三十六條第二項及び第三項の規定を準用する。
(復旧に関する命令又は勧告)
第七十七條 委員会は、特別史跡名勝天然記念物がき損し、又は衰亡している場合において、その保存のため必要があると認めるときは、管理者に対し、その復旧について必要な命令又は勧告をすることができる。
2 委員会は、特別史跡名勝天然記念物以外の史跡名勝天然記念物が、き損し、又は衰亡している場合において、その保存のため必要があると認めるときは、管理者に対し、その復旧について必要な勧告をすることができる。
3 前二項の場合には、第三十七條第三項及び第四項の規定を準用する。
(政府による復旧等の施行)
第七十八條 委員会は、左の各号の一に該当する場合においては、特別史跡名勝天然記念物につき自ら復旧を行い、又は滅失、き損若しくは衰亡の防止の措置をすることができる。
一 管理者が前二條の規定による命令に従わないとき。
二 特別史跡名勝天然記念物がき損し、若しくは衰亡している場合又は滅失し、き損し、若しくは衰亡する虞のある場合において、管理者に復旧又は滅失、き損若しくは衰亡の防止の措置をさせることが適当でないと認められるとき。
2 前項の場合には、第三十八條第二項及び第三十九條から第四十一條までの規定を準用する。
(補助等に係る史跡名勝天然記念物譲渡の場合の納付金)
第七十九條 国が復旧又は滅失、き損若しくは衰亡の防止の措置につき第七十四條第三項で準用する第三十五條第一項の規定により補助金を交付し、又は第七十六條第二項で準用する第三十六條第二項、第七十七條第三項で準用する第三十七條第三項若しくは第七十八條第二項で準用する第四十條第一項の規定により費用を負担した史跡名勝天然記念物については、第四十二條の規定を準用する。
(現状変更等の制限)
第八十條 史跡名勝天然記念物に関しその現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは、委員会の許可を受けなければならない。但し、その維持の措置をする場合は、この限りでない。
2 前項の許可を與える場合には、第四十三條第二項の規定を、前項の許可を受けた者には、同條第三項の規定を準用する。
(環境保全)
第八十一條 委員会は、史跡名勝天然記念物の保存のため必要があると認めるときは、地域を定めて一定の行為を制限し、若しくは禁止し、又は必要な施設をすることを命ずることができる。
2 前項の規定による処分によつて損害を受けた者に対しては、政府は、その通常生ずべき損害を補償する。
3 前項の場合には、第四十一條第二項の規定を準用する。
(保存のための調査)
第八十二條 委員会は、必要があると認めるときは、管理者に対し、史跡名勝天然記念物の現状又は管理、復旧若しくは環境保全の状況につき報告を求めることができる。
第八十三條 委員会は、左の各号の一に該当する場合においては、前條の報告によつてもなお史跡名勝天然記念物に関する状況を確認することができず、且つ、その確認のため他に方法がないと認めるときは、調査に当る者を定め、その所在する土地又はその隣接地に立ち入つてその現状又は管理、復旧若しくは環境保全の状況につき実地調査及び土地の発掘、障害物の除却その他調査のため必要な措置をさせることができる。但し、当該土地の所有者、占有者その他の関係者に対し、著しい損害を及ぼす虞のある措置は、させてはならない。
一 史跡名勝天然記念物に関する現状変更又は保存に影響を及ぼす行為の許可の申請があつたとき。
二 史跡名勝天然記念物がき損し、又は衰亡しているとき。
三 史跡名勝天然記念物が滅失し、き損し、又は衰亡する虞のあるとき。
四 特別の事情によりあらためて特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物としての価値を調査する必要があるとき。
2 前項の規定による調査又は措置によつて損害を受けた者に対しては、政府は、その通常生ずべき損害を補償する。
3 第一項の規定により立ち入り、調査する場合には、第五十五條第二項の規定を、前項の場合には、第四十一條第二項の規定を準用する。
(古墳、旧跡その他の遺跡発見の届出)
第八十四條 土地の所有者又は占有者が古墳、旧跡その他の遺跡と認められるものを発見したときは、その現状を変更することなく、委員会規則の定める事項を記載した書面をもつて、発見の日から十日以内に委員会に届け出なければならない。
第六章 補則
(聽聞)
第八十五條 委員会が左に掲げる処分又は措置を行おうとするときは、関係者又はその代理人の出頭を求めて、公開による聽聞を行わなければならない。
一 第三十八條第一項又は第七十八條第一項の規定による修理若しくは復旧又は措置の施行
二 第四十三條第三項(第八十條第二項で準用する場合を含む。)又は第五十三條第三項の規定による許可の取消
三 第四十五條又は第八十一條の規定による制限、禁止又は命令で特定の者に対して行われるもの
四 第五十一條第五項(同條第七項並びに第六十八條第二項及び第三項で準用する場合を含む。)の規定による公開の中止命令
五 第五十五條第一項又は第八十三條第一項の規定による立入調査又は調査のため必要な措置の施行
六 第五十七條第二項の規定による発掘の禁止又は中止命令
七 第五十八條第一項の規定による発掘の施行
2 委員会は、前項の聽聞を行おうとするときは、前項各号に規定する処分又は措置を行おうとする理由、その処分又は措置の内容並びに聽聞の期日及び場所をその期日の十日前までに当該関係者に通告し、且つ、聽聞の期日及び場所を公示しなければならない。
3 聽聞においては、当該関係者又はその代理人は、自己又は本人のために意見を述べ、又は釈明し、且つ、証拠を提出することができる。
4 当該関係者又はその代理人が正当な理由がなくて聽聞に応じなかつたときは、委員会は、聽聞を行わないで第一項に規定する処分又は措置をすることができる。
(国に関する特例)
第八十六條 国が重要文化財若しくは史跡名勝天然記念物に指定されたものを取得し、又は委員会が国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)に規定する国有財産(公共福祉用財産を除く。)を重要文化財若しくは史跡名勝天然記念物に指定する場合においては、同法第十三條の規定にかかわらず、国会の議決を経ることを要しない。その指定を解除する場合も同様とする。
第八十七條 重要文化財又は史跡名勝天然記念物に指定されたものが国有財産法に規定する国有財産であるときは、そのものは、文部大臣が管理する。但し、そのものが同法第三條第二項に規定する行政財産であるとき又は国有林野法(明治三十二年法律第八十五号)に規定する国有林野に属するものであるときは、そのものを管理すべき機関は、文部大臣、関係各省各庁の長(国有財産法第四條第二項に規定する各省各庁の長をいう。以下同じ。)及び大蔵大臣が協議して定める。
2 前項但書の規定により協議する場合には、文部大臣は、委員会の意見を聞かなければならない。
第八十八條 国の所有に属する有形文化財を国宝又は重要文化財に指定したときは、第二十八條第一項の規定により所有者に交付すべき指定書は、当該有形文化財を管理する各省各庁の長に交付するものとする。この場合においては、国宝の指定書を受けた各省各庁の長は、直ちに国宝に指定された重要文化財の指定書を委員会に返付しなければならない。
2 国の所有に属する国宝又は重要文化財の指定を解除したときは、第二十九條第二項又は第四項の規定により所有者に対し行うべき通知又は指定書の交付は、当該国宝又は重要文化財を管理する各省各庁の長に対し行うものとする。この場合においては、当該各省各庁の長は、直ちに指定書を委員会に返付しなければならない。
3 国の所有又は占有に属するものを特別史跡名勝天然記念物若しくは史跡名勝天然記念物に指定し、又はその指定を解除したときは、第六十九條第三項(第七十條第三項及び第七十一條第四項で準用する場合を含む。)の規定により所有者又は占有者に対し行うべき通知は、その指定又は解除に係るものを管理する各省各庁の長に対し行うものとする。
第八十九條 重要文化財又は史跡名勝天然記念物に指定されたものを管理する各省各庁の長は、この法律並びにこれに基いて発する委員会規則及び委員会の勧告に従い、重要文化財又は史跡名勝天然記念物を管理しなければならない。
第九十條 左に掲げる場合には、関係各省各庁の長は、文部大臣を通じ委員会に通知しなければならない。
一 重要文化財又は史跡名勝天然記念物に指定されたものを取得したとき。
二 重要文化財又は史跡名勝天然記念物の所管換を受け、又は所属替をしたとき。
三 所管に属する重要文化財又は史跡名勝天然記念物が滅失し、き損し、又は衰亡したとき。
四 所管に属する重要文化財の所在の場所を変更したとき。
五 所管に属する土地において古墳、旧跡その他の遺跡と認められるものを発見したとき。
2 前項第一号及び第二号の場合に係る通知には、第三十二條第一項及び同項を準用する第七十五條の規定を、前項第三号の場合に係る通知には、第三十三條及び同項を準用する第七十五條の規定を、前項第四号の場合に係る通知には、第三十四條の規定を、前項第五号の場合に係る通知には、第八十四條の規定を準用する。
第九十一條 左に掲げる場合には、関係各省各庁の長は、あらかじめ、文部大臣を通じ委員会の同意を求めなければならない。
一 重要文化財又は史跡名勝天然記念物の現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとするとき。(その維持の措置をする場合を除く。)
二 所管に属する重要文化財を輸出しようとするとき。
三 所管に属する重要文化財又は史跡名勝天然記念物に指定されたものの貸付、交換、売拂、譲與その他の処分をしようとするとき。
2 委員会は、前項第一号に規定する措置につき同意を與える場合においては、その條件としてその措置に関し必要な勧告をすることができる。
3 関係各省各庁の長は、前項の規定による委員会の勧告を十分に尊重しなければならない。
第九十二條 委員会は、必要があると認めるときは、文部大臣を通じ各省各庁の長に対し、左に掲げる事項につき必要な勧告をすることができる。
一 所管に属する重要文化財又は史跡名勝天然記念物の管理方法
二 所管に属する重要文化財又は史跡名勝天然記念物に指定されたものの修理若しくは復旧又は滅失、き損若しくは衰亡の防止の措置
三 重要文化財又は史跡名勝天然記念物の環境保全のため必要な施設
四 所管に属する重要文化財の出品又は公開
2 前項の勧告については、前條第三項の規定を準用する。
3 第一項の規定による委員会の勧告に基いて施行する同項第二号に規定する修理、復旧若しくは措置又は同項第三号に規定する施設に要する経費の分担については、文部大臣と各省各庁の長が協議して定める。
4 前項の規定により協議する場合には、第八十七條第二項の規定を準用する。
第九十三條 委員会は、左の各号の一に該当する場合においては、国の所有に属する国宝又は特別史跡名勝天然記念物に指定されたものにつき、自ら修理若しくは復旧を行い、又は滅失、き損若しくは衰亡の防止の措置をすることができる。この場合においては、委員会は、当該文化財が文部大臣以外の各省各庁の長の所管に属するものであるときは、あらかじめ、修理若しくは復旧又は措置の内容、着手の時期その他必要な事項につき、文部大臣を通じ当該文化財を管理する各省各庁の長と協議し、当該文化財が文部大臣の所管に属するものであるときは、文部大臣の定める場合を除いて、その承認を受けなければならない。
一 関係各省各庁の長が前條第一項第二号に規定する修理若しくは復旧又は措置についての委員会の勧告に応じないとき。
二 国宝又は特別史跡名勝天然記念物がき損し、若しくは衰亡している場合又は滅失し、き損し、若しくは衰亡する虞のある場合において、関係各省各庁の長に当該修理若しくは復旧又は措置をさせることが適当でないと認められるとき。
第九十四條 委員会は、国の所有に属するものを国宝、重要文化財、特別史跡名勝天然記念物若しくは史跡名勝天然記念物に指定するに当り、又は国の所有に属する国宝、重要文化財、特別史跡名勝天然記念物若しくは史跡名勝天然記念物に関する状況を確認するため必要があると認めるときは、関係各省各庁の長に対し調査のため必要な報告を求め、又は調査に当る者を定めて実地調査をさせることができる。
第九十五條 国の所有に属する史跡名勝天然記念物を第七十二條の規定により地方公共団体その他の団体に管理させる場合においては、委員会は、当該史跡名勝天然記念物から生ずる收益を当該地方公共団体その他の団体に帰属させることができる。
第九十六條 委員会は、第五十八條第一項の規定により自ら埋蔵文化財の発掘を施行しようとする場合において、その発掘を施行しようとする土地が国の所有に属し、又は国の機関の占有するものであるときは、あらかじめ、発掘の目的、方法、着手の時期その他必要と認める事項につき、文部大臣を通じ関係各省各庁の長と協議しなければならない。但し、当該各省各庁の長が文部大臣であるときは、その承認を受けるべきものとする。
第九十七條 第六十三條の規定により国庫に帰属した埋蔵文化財は、委員会が管理する。但し、その保存のため又はその効用から見て他の機関に管理させることが適当であるときは、これを当該機関の管理に移さなければならない。
第九十八條 国の所有に属する重要文化財又は史跡名勝天然記念物については、第三十條から第三十四條まで、第三十六條から第四十一條まで、第四十三條、第四十四條、第四十八條から第五十二條まで、第五十四條、第五十五條、第七十四條から第七十八條まで、第八十條及び第八十二條から第八十四條までの規定は、適用しない。
2 国に対しては、第四十五條第一項中施設の命令に関する部分、同條第二項及び第三項、第八十一條第一項中施設の命令に関する部分並びに同條第二項及び第三項の規定は、適用しない。
3 第五十八條第一項の規定により埋蔵文化財の発掘を施行する土地が国の所有に属し、又は国の機関の占有するものである場合には、同條第二項の規定及び同條第三項中第四十一條の規定を準用する部分は、国に対しては、適用しない。
(権限の委任)
第九十九條 委員会は、必要があると認めるときは、左に掲げる委員会の権限の一部を都道府県の教育委員会に委任することができる。
一 第三十五條第三項(第三十六條第三項、第三十七條第四項、第六十七條第二項、第七十二條第六項、第七十四條第三項、第七十六條第二項及び第七十七條第三項で準用する場合を含む。)の規定による指揮監督
二 第四十三條(第八十條第二項で準用する場合を含む。)の規定による現状変更又は保存に影響を及ぼす行為の許可及びその取消並びにその停止命令(重大な現状変更又は保存に重大な影響を及ぼす行為の許可及びその取消を除く。)
三 第五十一條第五項(同條第七項並びに第六十八條第二項及び第三項で準用する場合を含む。)の規定による公開の停止命令
四 第五十三條の規定による公開の許可及びその取消並びに公開の停止命令
五 第五十四條、第五十五條、第八十二條又は第八十三條の規定による調査又は調査のため必要な措置の施行
六 第五十七條第二項の規定による発掘の停止命令
2 都道府県の教育委員会が前項の規定による委任に基き同項第二号若しくは第四号に規定する許可の取消又は同項第五号に規定する立入調査若しくは調査のため必要な措置を行う場合には、第八十五條の規定を準用する。
(出品された重要文化財の管理の委任)
第百條 委員会は、必要があると認めるときは、都道府県又は地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第百五十五條第二項の市の教育委員会に対し第四十八條の規定により出品された重要文化財の管理の事務を委任することができる。
2 前項の規定による委任を受けた場合には、都道府県又は前項に規定する市の教育委員会は、その職員のうちから、当該重要文化財の管理の責に任ずべき者を定めなければならない。
(修理等の施行の委託)
第百一條 委員会は、必要があると認めるときは、第三十八條第一項又は第九十三條の規定による国宝の修理又は滅失若しくはき損の防止の措置の施行、第五十八條第一項の規定による埋蔵文化財の発掘の施行及び第七十八條第一項又は第九十三條の規定による特別史跡名勝天然記念物の復旧又は滅失、き損若しくは衰亡の防止の措置の施行につき、都道府県の教育委員会に対し、その全部又は一部を委託することができる。
2 都道府県の教育委員会が前項の規定による委託に基き、第三十八條第一項の規定による修理又は措置の施行の全部又は一部を行う場合には、第三十九條の規定を、第五十八條第一項の規定による発掘の施行の全部又は一部を行う場合には、同條第三項で準用する第三十九條の規定を、第七十八條第一項の規定による復旧又は措置の施行の全部又は一部を行う場合には、同條第二項で準用する第三十九條の規定を準用する。
(重要文化財の管理又は修理の受託等)
第百二條 都道府県の教育委員会は、あらかじめ、委員会の承認を得て、所有者又は第三十一條の規定による管理責任者の求めに応じ、重要文化財の管理若しくは修理につき委託を受け、又は技術的指導をすることができる。
2 都道府県の教育委員会が前項の規定により管理又は修理の委託を受ける場合には、第三十九條の規定を準用する。
(書類等の経由)
第百三條 この法律の規定により文化財に関し委員会に提出すべき届書その他の書類及び物件の提出は、都道府県の教育委員会を経由すべきものとする。
2 都道府県の教育委員会は、前項に規定する書類及び物件を受理したときは、意見を具してこれを委員会に送付しなければならない。
3 この法律の規定により文化財に関し委員会が発する命令、勧告、指示その他の処分の告知は、都道府県の教育委員会を経由すべきものとする。但し、特に緊急な場合は、この限りでない。
(指揮監督及び経費の負担)
第百四條 委員会は、この法律の規定により都道府県又は第百條第一項に規定する市の教育委員会に行わせる事務につき、その教育委員会を指揮監督することができる。
2 都道府県又は第百條第一項に規定する市の教育委員会が第九十九條から第百一條までの規定による事務を処理するために要する経費は、国庫の負担とする。
(地方公共団体の補助)
第百五條 地方公共団体は、地方自治法第二百三十一條の規定により文化財の管理、修理、復旧その他保存に要する経費につき補助することができる。
2 前項の規定により補助したときは、当該地方公共団体は、委員会にその補助金の額、補助の比率、補助の方法その他必要な事項につき報告しなければならない。
第七章 罰則
(刑罰)
第百六條 第四十四條の規定に違反し、委員会の許可を受けないで重要文化財を輸出した者は、五年以下の懲役若しくは禁こ又は十万円以下の罰金に処する。
第百七條 重要文化財を損壞し、き棄し、又は隠匿した者は、五年以下の懲役若しくは禁こ又は二万五千円以下の罰金若しくは科料に処する。
2 前項に規定する者が当該重要文化財の所有者であるときは、二年以下の懲役若しくは禁こ又は一万円以下の罰金若しくは科料に処する。
(行政罰)
第百八條 第三十九條第一項(第四十七條第三項、第七十八條第二項、第百一條第二項又は第百二條第二項で準用する場合を含む。)、第四十九條又は第百條第二項に規定する重要文化財又は史跡名勝天然記念物の管理、修理又は復旧の施行の責に任ずべき者が怠慢又は重大な過失によりその管理、修理又は復旧に係る重要文化財又は史跡名勝天然記念物を滅失し、き損し、又は衰亡するに至らしめたときは、二万五千円以下の過料に処する。
第百九條 左の各号の一に該当する者は、二万五千円以下の過料に処する。
一 正当な理由がなくて、第三十六條第一項又は第三十七條第一項の規定による重要文化財の管理又は修理に関する委員会の命令に従わなかつた者
二 第四十三條の規定に違反して、委員会若しくは都道府県の教育委員会の許可を受けず、若しくはその許可の條件に従わないで重要文化財の現状を変更し、又は委員会若しくは都道府県の教育委員会の現状変更の停止の命令に従わなかつた者
三 正当な理由がなくて、第七十六條第一項又は第七十七條第一項の規定による史跡名勝天然記念物の管理又は復旧に関する委員会の命令に従わなかつた者
四 第八十條の規定に違反して、委員会又は都道府県の教育委員会の許可を受けず、若しくはその許可の條件に従わないで史跡名勝天然記念物の現状を変更し、若しくはその保存に影響を及ぼす行為をし、又は委員会若しくは都道府県の教育委員会の現状変更若しくは保存に影響を及ぼす行為の停止の命令に従わなかつた者
第百十條 左の各号の一に該当する者は、一万円以下の過料に処する。
一 第三十八條第一項の規定による国宝の修理又は滅失若しくはき損の防止の措置の施行を拒み、又は妨げた者
二 正当な理由がなくて、第四十五條第一項の規定による制限若しくは禁止又は施設の命令に違反した者
三 第四十六條の規定に違反して、委員会に国に対する売渡の申出をせず、若しくは申出をした後同條第三項に規定する期間内に、国以外の者に重要文化財を譲り渡し、又は同條第一項の規定による売渡の申出若しくは同項但書の規定による承認の申請につき、虚僞の事実を申し立てた者
四 第五十三條の規定に違反して、委員会若しくは都道府県の教育委員会の許可を受けず、若しくはその許可の條件に従わないで重要文化財を公開し、又は委員会若しくは都道府県の教育委員会の公開の停止の命令に従わなかつた者
五 第七十八條の規定による特別史跡名勝天然記念物の復旧又は滅失、き損若しくは衰亡の防止の措置の施行を拒み、又は妨げた者
六 正当な理由がなくて、第八十一條第一項の規定による制限若しくは禁止又は施設の命令に違反した者
第百十一條 左の各号の一に該当する者は、五千円以下の過料に処する。
一 第二十八條第三項、第二十九條第三項又は第五十六條第二項の規定に違反して、重要文化財の指定書を委員会に返付せず、又は新所有者に引き渡さなかつた者
二 第三十一條第三項(第七十四條第三項で準用する場合を含む。)、第三十二條(第七十五條で準用する場合を含む。)、第三十三條(第七十五條で準用する場合を含む。)、第三十四條、第五十七條第一項又は第八十四條の規定に違反して、届出をせず、又は虚僞の届出をした者
三 第四十八條第二項から第四項まで、第五十一條第二項及び第三項若しくは第六十八條第一項及び第二項の規定に違反して、出品若しくは公開をせず、又は第五十一條第五項(同條第七項並びに第六十八條第二項及び第三項で準用する場合を含む。)の規定に違反して、委員会若しくは都道府県の教育委員会の公開の停止若しくは中止の命令に従わなかつた者
四 第五十四條、第五十五條、第八十二條又は第八十三條の規定に違反して、報告をせず、若しくは虚僞の報告をし、又は当該公務員の立入調査若しくは調査のため必要な措置の施行を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
五 第五十七條第二項の規定に違反して、委員会又は都道府県の教育委員会の埋蔵文化財の発掘の禁止又は停止若しくは中止の命令に従わなかつた者
六 第五十八條の規定による埋蔵文化財の発掘の施行を拒み、又は妨げた者
七 正当な理由がなくて、第七十二條第一項の規定による管理(復旧を含む。)又は管理のため必要な措置を拒み、妨げ、又は忌避した者
(両罰規定)
第百十二條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務又は財産の管理に関して第百六條、第百七條又は第百九條から前條までの違反行為をしたときは、その行為者を罰する外、その法人又は人に対し、各本條の罰金刑又は過料を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため当該業務又は財産の管理に対し相当の注意及び監督が盡されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。
附 則
(施行期日)
第百十三條 この法律施行の期日は、公布の日から起算して三箇月をこえない期間内において、政令で定める。
(関係法令の廃止)
第百十四條 左に掲げる法律、勅令及び政令は、廃止する。
国宝保存法(昭和四年法律第十七号)
重要美術品等の保存に関する法律(昭和八年法律第四十三号)
史跡名勝天然紀念物保存法(大正八年法律第四十四号)
国宝保存法施行令(昭和四年勅令第二百十号)
史跡名勝天然紀念物保存法施行令(大正八年勅令第四百九十九号)
国宝保存会官制(昭和四年勅令第二百十一号)
重要美術品等調査審議会令(昭和二十四年政令第二百五十一号)
史跡名勝天然記念物調査会令(昭和二十四年政令第二百五十二号)
(法令廃止に伴う経過規定)
第百十五條 この法律施行前に行つた国宝保存法第一條の規定による国宝の指定(同法第十一條第一項の規定により解除された場合を除く。)は、第二十七條第一項の規定による重要文化財の指定とみなし、同法第三條又は第四條の規定による許可は、第四十三條又は第四十四條の規定による許可とみなす。
2 この法律施行前の国宝の滅失又はき損並びにこの法律施行前に行つた国宝保存法第七條第一項の規定による命令及び同法第十五條前段の規定により交付した補助金については、同法第七條から第十條まで、第十五條後段及び第二十四條の規定は、なおその効力を有する。この場合において同法第九條第二項中「主務大臣」とあるのは、「文化財保護委員会」と読み替えるものとする。
3 この法律施行前にした行為の処罰については、国宝保存法は、第六條及び第二十三條の規定を除く外、なおその効力を有する。
4 この法律施行の際現に国宝保存法第一條の規定による国宝を所有している者は、委員会規則の定める事項を記載した書面をもつて、この法律施行後三箇月以内に委員会に届け出なければならない。
5 前項の規定による届出があつたときは、委員会は、当該所有者に第二十八條に規定する重要文化財の指定書を交付しなければならない。
6 第四項の規定に違反して、届出をせず、又は虚僞の届出をした者は、五千円以下の過料に処する。
7 前項の場合には、第百十二條の規定を準用する。
8 この法律施行の際現に国宝保存法第一條の規定による国宝で国の所有に属するものを管理する各省各庁の長は、委員会規則の定める事項を記載した書面をもつて、この法律施行後三箇月以内に委員会に通知しなければならない。但し、委員会規則で定める場合は、この限りでない。
9 前項の規定による通知があつたときは、委員会は、当該各省各庁の長に第二十八條に規定する重要文化財の指定書を交付するものとする。
第百十六條 この法律施行の際現に重要美術品等の保存に関する法律第二條第一項の規定により認定されている物件については、同法は当分の間、なおその効力を有する。この場合において、同法の施行に関する事務は、委員会が行うものとし、同法中「国宝」とあるのは、「文化財保護法ノ規定ニ依ル重要文化財」と、「主務大臣」とあるのは、「文化財保護委員会」と、「国宝保存法第一條ノ規定ニ依リテ国宝トシテ指定シ」とあるのは、「文化財保護法第二十七條第一項ノ規定ニ依リテ重要文化財トシテ指定シ」と読み替えるものとする。
2 委員会事務局の保存部においては、当分の間、第十八條に規定する事務の外、重要美術品等の保存に関する法律の施行に関する事務をつかさどる。
3 文化財專門審議会においては、当分の間、委員会の諮問に応じて重要美術品等の保存に関する法律第一條の規定による輸出及び移出の許可、同法第二條の規定による認定の取消に関する事項その他重要美術品等の保存に関する重要事項を調査審議し、且つ、これらの事項に関し必要と認める事項を委員会に建議する。
4 重要美術品等の保存に関する法律の施行に関しては、当分の間、第百三條の規定を準用する。
第百十七條 この法律施行前に行つた史跡名勝天然紀念物保存法第一條第一項の規定による指定(解除された場合を除く。)は、第六十九條第一項の規定による指定、同法第一條第二項の規定による仮指定(解除された場合を除く。)は、第七十條第一項の規定による仮指定とみなし、同法第三條の規定による許可は、第八十條第一項の規定による許可とみなす。
2 この法律施行前に行つた史跡名勝天然紀念物保存法第四條第一項の規定による命令又は処分については、同法第四條及び史跡名勝天然紀念物保存法施行令第四條の規定は、なおその効力を有する。この場合において同令第四條中「文部大臣」とあるのは、「文化財保護委員会」と読み替えるものとする。
3 この法律施行前にした行為の処罰については、史跡名勝天然紀念物保存法は、なおその効力を有する。
(最初の委員の任命)
第百十八條 委員会の最初の委員の任命については、国会の閉会又は衆議院の解散の場合に限り、第九條第一項の規定にかかわらず、その後最初に召集された国会において両議院の事後の承認を得れば足りる。
2 文部大臣は、前項の規定による両議院の事後の承認が得られないときは、その委員を罷免しなければならない。
(第一回の委員会の招集)
第百十九條 この法律に基く第一回の委員会は、第十四條の規定にかかわらず、文部大臣が招集する。
(最初の委員の任期)
第百二十條 この法律により初めて任命される委員会の委員で委員長及びその職務を代理する委員以外のものの任期は、第十條第一項の規定にかかわらず、一人については一年、二人については二年とする。
2 前項の規定の適用を受ける委員の任期は、くじで定める。
(国家行政組織法の一部改正)
第百二十一條 国家行政組織法の一部を次のように改正する。
別表第一中
文部省
文部省
文化財保護委員会
に改める。
(文部省設置法の一部改正)
第百二十二條 文部省設置法(昭和二十四年法律第百四十六号)の一部を次のように改正する。
目次中「第三章 職員(第二十五條・第二十六條)」を
第三章
外局(第二十五條・第二十六條)
第四章
職員(第二十七條・第二十八條)
に改める。
第二條第一項第二号中「国宝、重要美術品、史跡名勝天然記念物その他の文化財」を「文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)に規定する文化財」に改める。
同條第三項中「出版」を「文化財保護法に規定する文化財、出版」に改める。
第十條第九号を次のように改める。
九 削除
第十三條中「国立博物館」を削る。
第十四條第一項中「国立博物館、」を削る。
第十七條を次のように改める。
第十七條 削除
第二十四條左表中国宝保存会、重要美術品等調査審議会及び史跡名勝天然記念物調査会の項を削る。
第三章を第四章とし、第二十五條を第二十七條とし、第二十六條を第二十八條とし、第二章の次に次の一章を加える。
第三章 外局
(外局の設置)
第二十五條 国家行政組織法第三條第二項の規定に基いて文部省に置かれる外局は、左の通りとする。
文化財保護委員会
(文化財保護委員会)
第二十六條 文化財保護委員会の組織、所掌事務及び権限は、文化財保護法の定めるところによる。
(行政機関職員定員法の一部改正)
第百二十三條 行政機関職員定員法(昭和二十四年法律第百二十六号)の一部を次のように改正する。
第二條第一項中
文部省
本省
六三、九八六人
うち六一、八四七人は、国立学校の職員とする
文部省
本省
六三、六一一
うち六一、八四七人は、国立学校の職員とする
文化財保護委員会
四一〇
六四、〇二一
に改める。
(従前の国立博物館)
第百二十四條 法律(これに基く命令を含む。)に特別の定のある場合を除く外、従前の国立博物館及びその職員(美術研究所及びこれに所属する職員を除く。)は、この法律に基く国立博物館及びその職員となり、従前の国立博物館附置の美術研究所及びこれに所属する職員は、この法律に基く研究所及びその職員となり、同一性をもつて存続するものとする。
2 この法律に基く研究所は、従前の国立博物館附置の美術研究所の所掌した調査研究と同一のものについては、「美術研究所」の名称を用いることができる。
(特別職の職員の給與に関する法律の一部改正)
第百二十五條 特別職の職員の給與に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十二号)の一部を次のように改正する。
第一條第十四号の二の次に次の一号を加える。
十四の三 文化財保護委員会の委員長及び委員
別表中「全国選挙管理委員会委員長」を
全国選挙管理委員会委員長
文化財保護委員会委員長
に、「中央更生保護委員会委員」を
中央更生保護委員会委員
文化財保護委員会委員
に改める。
(遺失物法の一部改正)
第百二十六條 遺失物法の一部を次のように改正する。
第十三條第二項から第四項までの規定を削る。
2 この法律施行前に国庫に帰属した埋蔵物については、前項の規定にかかわらず、なお従前の例による。
(国有財産法の一部改正)
第百二十七條 国有財産法の一部を次のように改正する。
第三條第二項第二号中「国宝」の下に「その他の重要文化財」を加える。
(屋外広告物法の一部改正)
第百二十八條 屋外広告物法(昭和二十四年法律第百八十九号)の一部を次のように改正する。
第四條第一項第三号を次のように改める。
三 文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)第二十七條の規定により指定された建造物の周囲で、当該都道府県が定める範囲内にある地域及び同法第六十九條又は第七十條の規定により指定され、又は仮指定された地域
同項第四号を削り、第五号を第四号とし、以下一号ずつ繰り上げる。
(教育委員会法の一部改正)
第百二十九條 教育委員会法(昭和二十三年法律第百七十号)の一部を次のように改正する。
第五十條第六号を次のように改める。
六 文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)及び重要美術品等の保存に関する法律(昭和八年法律第四十三号)の施行に関すること。
(富裕税法の一部改正)
第百三十條 富裕税法(昭和二十五年法律第百七十四号)の一部を次のように改正する。
第九條第一項第四号を次のように改める。
四 文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)の規定により国宝若しくは重要文化財、特別史跡若しくは史跡、特別名勝若しくは名勝又は特別天然記念物若しくは天然記念物として指定され、若しくは仮指定され、又は重要美術品等の保存に関する法律(昭和八年法律第四十三号)第二條第一項の規定により認定されたもの
内閣総理大臣 吉田茂
法務総裁 殖田俊吉
外務大臣 吉田茂
大蔵大臣 池田勇人
文部大臣 天野貞祐
厚生大臣 林譲治
農林大臣 森幸太郎
通商産業大臣 高瀬荘太郎
運輸大臣 大屋晋三
郵政大臣 小沢佐重喜
電気通信大臣 小沢佐重喜
労働大臣 鈴木正文
建設大臣 増田甲子七
経済安定本部総裁 吉田茂
文化財保護法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十五年五月三十日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第二百十四号
文化財保護法
目次
第一章
総則(第一条―第四条)
第二章
文化財保護委員会
第一節
総則(第五条―第十五条)
第二節
事務局(第十六条―第十九条)
第三節
附属機関及び事務局出張所(第二十条―第二十四条)
第四節
職員(第二十五条・第二十六条)
第三章
有形文化財
第一節
重要文化財(第二十七条―第五十六条)
第一款
指定(第二十七条―第二十九条)
第二款
管理(第三十条―第三十四条)
第三款
保護(第三十五条―第四十七条)
第四款
公開(第四十八条―第五十三条)
第五款
調査(第五十四条・第五十五条)
第六款
雑則(第五十六条)
第二節
重要文化財以外の有形文化財(第五十七条―第六十六条)
第一款
埋蔵文化財(第五十七条―第六十五条)
第二款
有形文化財に関する技術的指導(第六十六条)
第四章
無形文化財(第六十七条・第六十八条)
第五章
史跡名勝天然記念物(第六十九条―第八十四条)
第六章
補則(第八十五条―第百五条)
第七章
罰則(第百六条―第百十二条)
附則
(第百十三条―第百三十条)
第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、文化財を保存し、且つ、その活用を図り、もつて国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献することを目的とする。
(文化財の定義)
第二条 この法律で「文化財」とは、左に掲げるものをいう。
一 建造物、絵画、彫刻、工芸品、書跡、筆跡、典籍、古文書、民俗資料その他の有形の文化的所産でわが国にとつて歴史上又は芸術上価値の高いもの及び考古資料(以下「有形文化財」という。)
二 演劇、音楽、工芸技術その他の無形の文化的所産でわが国にとつて歴史上又は芸術上価値の高いもの(以下「無形文化財」という。)
三 史跡、名勝及び天然記念物(以下「史跡名勝天然記念物」という。)
2 この法律の規定(第十八条第一号、第二十一条第二項第一号、第二十七条第一項、第二項、第二十八条第一項、第三項、第二十九条第一項、第四項、第三十七条第二項、第五十五条第一項第四号、第八十八条第一項、第二項、第九十四条及び第百十五条の規定を除く。)中「重要文化財」には、国宝を含むものとする。
3 この法律の規定(第十八条第八号、第二十一条第二項第九号、第六十九条第一項、第二項、第七十条第一項、第七十一条第一項、第二項、第七十七条第二項、第八十三条第一項第四号、第八十八条第三項及び第九十四条の規定を除く。)中「史跡名勝天然記念物」には、特別史跡名勝天然記念物を含むものとする。
(政府及び地方公共団体の任務)
第三条 政府及び地方公共団体は、文化財がわが国の歴史、文化等の正しい理解のため欠くことのできないものであり、且つ、将来の文化の向上発展の基礎をなすものであることを認識し、その保存が適切に行われるように、周到の注意をもつてこの法律の趣旨の徹底に努めなければならない。
(国民、所有者等の心構)
第四条 一般国民は、政府及び地方公共団体がこの法律の目的を達成するために行う措置に誠実に協力しなければならない。
2 文化財の所有者その他の関係者は、文化財が貴重な国民的財産であることを自覚し、これを公共のために大切に保存するとともに、できるだけこれを公開する等その文化的活用に努めなければならない。
3 政府及び地方公共団体は、この法律の執行に当つて関係者の所有権その他の財産権を尊重しなければならない。
第二章 文化財保護委員会
第一節 総則
(設置)
第五条 国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項の規定に基いて、文部省の外局として、文化財保護委員会(以下「委員会」という。)を設置する。
2 委員会の委員は、独立してその職権を行う。
(任務)
第六条 委員会は、文化財の保存及び活用、文化財に関する調査研究その他第一条の目的を達成するため必要な事務を行うことを任務とする。
(権限)
第七条 委員会は、その所掌事務を遂行するため、左に掲げる権限を有する。但し、その権限の行使は、法律(これに基く命令を含む。)に従つてなされなければならない。
一 予算の範囲内で、所掌事務の遂行に必要な支出負担行為をすること。
二 収入金を徴収し、所掌事務の遂行に必要な支払をすること。
三 所掌事務の遂行に直接必要な事務所等の施設を設置し、及び管理すること。
四 所掌事務の遂行に直接必要な業務用資材、図書その他研究用資材、事務用品等を調達すること。
五 職員の任免及び賞罰を行い、その他職員の人事を管理すること。
六 職員の厚生及び保健のため必要な施設をなし、及び管理すること。
七 所掌事務の監察を行い、法令の定めるところに従い、必要な措置をとること。
八 所掌事務の周知宣伝を行うこと。
九 委員会の公印を制定すること。
十 広く利用に供する適当な記録を整備すること。
十一 所掌事務に関する法人の設立を認可すること。
十二 所掌事務に関する国庫支出金を割り当て、配分すること。
十三 所掌事務に関する物資の確保について援助すること。
十四 所掌事務に関する統計調査の資料及び結果を収集し、解釈し、及び刊行頒布すること。
十五 所掌事務に関する国家的又は国際的関心のある題目について会議、研究会、討論会等を主催すること。
十六 文化財の保護に関する法令案を作成すること。
十七 前各号に掲げるものの外、法律(これに基く命令を含む。)に基き委員会に属せしめられた権限
2 委員会は、その権限の行使に当つて、法律(法律に基く命令を含む。)に別段の定がある場合を除いては、行政上及び運営上の監督を行わないものとする。
(構成)
第八条 委員会は、五人の委員をもつて組織する。
(委員の任命及び欠格事由)
第九条 委員は、文化に関し高い識見を有する者のうちから両議院の同意を経て、文部大臣が任命する。
2 左の各号の一に該当する者は、委員となることができない。
一 禁治産者若しくは準禁治産者又は破産者で復権を得ない者
二 禁こ以上の刑に処せられた者
3 委員は、そのうち三人以上が同一政党に属する者となることとなつてはならない。
(委員の任期)
第十条 委員の任期は、三年とする。但し、補欠の委員は、前任者の残任期間在任する。
2 委員は、再任されることができる。
3 第一項の規定にかかわらず委員は、国会の閉会又は衆議院の解散の場合に任期が満了したときは、その後最初に召集された国会において両議院の同意を経て文部大臣が委員を任命するまでの間、なお在任するものとする。
(委員の失職及び罷免)
第十一条 委員は、第九条第二項各号の一に該当するに至つた場合及び既に委員中二人が所属している政党にあらたに所属するに至つた場合においては、その職を失う。
2 文部大臣は、委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認める場合又は委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない行為があると認める場合においては、両議院の同意を経て、これを罷免することができる。
3 文部大臣は、両議院の同意を経て、左に掲げる委員を罷免する。
一 委員中何人も所属していなかつた一の政党にあらたに三人以上の委員が所属するに至つた場合、これらの者のうち二人をこえる員数の委員
二 委員中一人が既に所属している政党にあらたに二人以上の委員が所属するに至つた場合、これらの者のうち一人をこえる員数の委員
4 両議院は、前項各号に規定する事実があると認めるときは、同項各号の規定により罷免すべき員数の委員の罷免の同意を与えるべきものとする。
5 国会の閉会又は衆議院の解散のため、第二項又は第三項の規定による罷免につき両議院の同意を経ることができないときは、その後最初に召集された国会において両議院の承認を得れば足りる。
(委員長)
第十二条 委員会に委員長を置く。委員長は、委員の互選により定める。
2 委員長は、会務を総理し、委員会を代表する。
3 委員会は、委員長に事故があるとき、又は委員長が欠けたときにその職務を代理する委員を、あらかじめ、定めて置かなければならない。
(委員の給与)
第十三条 委員長及び委員は、別に法律の定めるところにより相当額の給与を受ける。
(会議)
第十四条 委員会は、委員長が招集する。二人以上の委員から請求があるときは、委員長は、委員会を招集しなければならない。
2 委員会は、委員の半数以上の出席がなければ会議を開くことができない。
3 委員会の議事は、出席委員の過半数で決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。
(委員会規則)
第十五条 委員長は、この法律の執行に関し必要な事項について、委員会の議決を経て、委員会規則を定めることができる。
2 委員会規則は、官報で公布する。
第二節 事務局
(事務局の内部組織)
第十六条 委員会に、その所掌事務を遂行するため、国家行政組織法第七条第四項の規定に従い、事務局を置き、事務局に、その内部組織として総務部及び保存部を置く。
(総務部の所掌事務)
第十七条 総務部においては、委員会を補助するため、その所掌事務に関し左の事務をつかさどる。
一 機密に関すること。
二 職員の職階、任免、分限、懲戒、服務その他の人事並びに厚生教養及び訓練に関すること。
三 委員長の官印及び委員会印を管守すること。
四 公文書類を接受し、発送し、編集し、及び保存すること。
五 会計及び会計の監査に関すること。
六 行政財産及び物品を管理すること。
七 行政の考査に関すること。
八 法令案の審査に関すること。
九 委員会及び文化財専門審議会の会議に関すること。
十 重要文化財の出品又は公開の命令、勧告及び承認に関すること。
十一 出品され、又は管理の委託を受けた重要文化財の管理(滅失又はき損の防止の措置を除く。)に関すること。
十二 重要文化財の買取に関すること。
十三 出品に関する給与金、埋蔵文化財の発見に対する報償金及び埋蔵文化財の譲与及び譲渡に関すること。
十四 無形文化財についての資材のあつ旋その他の助成に関すること。
十五 無形文化財の公開の命令及び承認に関すること。
十六 文化財についての補助、費用負担及び損害補償に関すること。
十七 前各号に掲げるものの外、委員会の所掌事務で保存部の所掌に属さない事務に関すること。
(保存部の所掌事務)
第十八条 保存部においては、委員会を補助するため、左の事務をつかさどる。
一 国宝又は重要文化財の指定及びその解除に関すること。
二 重要文化財の管理又は修理に関する命令、勧告、指示及び指揮監督に関すること。
三 国宝の修理及び滅失又はき損の防止の措置の施行に関すること。
四 重要文化財の現状変更、輸出及び所有者以外の者による公開の許可並びに環境保全のためにする行為の制限、禁止及び必要な施設の命令に関すること。
五 埋蔵文化財の発掘の禁止、停止及び中止の命令に関すること。
六 埋蔵文化財の発掘の施行に関すること。
七 助成の措置を講ずべき無形文化財の選定に関すること。
八 特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物の指定及びその解除に関すること。
九 史跡名勝天然記念物の管理又は復旧に関する命令、勧告、指示及び指揮監督に関すること。
十 特別史跡名勝天然記念物の復旧及び滅失、き損又は衰亡の防止の措置の施行に関すること。
十一 史跡名勝天然記念物の現状変更等の許可並びに環境保全のためにする行為の制限、禁止及び必要な施設の命令に関すること。
十二 文化財に関する調査及び調査のため必要な措置の施行に関すること。
十三 文化財に関する専門的、技術的な指導及び助言に関すること。
十四 文化財の管理に関する届出に関すること。
十五 文化財に関する台帳の整備に関すること。
十六 文化財の管理、修理及び復旧に必要な資料を刊行し、頒布すること。
十七 文化財に関する記録、写真、複写及び複製に関すること。
(事務局長)
第十九条 委員会の事務局に事務局長を置く。事務局長は、委員長の指揮監督を受けて事務局の事務を掌理し、所属職員を指揮監督する。
第三節 附属機関及び事務局出張所
(附属機関)
第二十条 委員会の附属機関として、文化財専門審議会、国立博物館及び研究所を置く。
(文化財専門審議会)
第二十一条 文化財専門審議会は、委員会の諮問に応じて文化財の保存及び活用に関する専門的及び技術的事項を調査審議し、且つ、これらの事項に関し必要と認める事項を委員会に建議する。
2 委員会は、左に掲げる事項については、あらかじめ、文化財専門審議会に諮問しなければならない。
一 国宝又は重要文化財の指定及びその解除
二 重要文化財の管理及び修理に関する命令
三 国宝の修理及び滅失又はき損の防止の措置の施行
四 重要文化財の現状変更及び輸出の許可及び許可の権限の都道府県の教育委員会への委任
五 重要文化財の環境保全のためにする行為の制限、禁止及び必要な施設の命令
六 重要文化財の買取
七 埋蔵文化財の発掘の施行
八 助成の措置を講ずべき無形文化財の選定
九 特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物の指定及びその解除
十 史跡名勝天然記念物の管理又は復旧に関する命令
十一 特別史跡名勝天然記念物の復旧及び滅失、き損又は衰亡の防止の措置の施行
十二 史跡名勝天然記念物の現状変更等の許可及び許可の権限の都道府県の教育委員会への委任
十三 史跡名勝天然記念物の環境保全のためにする行為の制限、禁止及び必要な施設の命令
十四 前各号に掲げるものの外、文化財の保存及び活用に関する重要事項
3 前二項の規定により所掌する事項を分掌させるため、文化財専門審議会に分科会を置く。
4 文化財専門審議会及びその分科会の組織及び所掌事務並びに専門委員、臨時専門委員その他の職員については、他の法律(これに基く命令を含む。)に特別の定がある場合を除く外、政令で定める。
(国立博物館)
第二十二条 国立博物館は、有形文化財を収集し、保管して公衆の観覧に供し、あわせてこれに関連する事業を行う。
2 国立博物館は、東京都に置く。
3 国立博物館に、奈良分館を置く。
4 国立博物館の内部組織は、委員会規則で定める。
(研究所)
第二十三条 研究所は、有形文化財及び無形文化財に関する調査研究、資料の作成及びその公表を行う。
2 研究所は、東京都に置く。
3 研究所には、支所を置くことができる。
4 研究所の内部組織は、委員会規則で定める。
(事務局出張所)
第二十四条 委員会は、その所掌事務の一部を分掌させるため、所要の地に事務局出張所を設置することができる。その名称、位置、所掌事務の範囲は、委員会規則で定める。
第四節 職員
(職員)
第二十五条 委員会に置かれる職員の任免、昇任、懲戒その他人事管理に関する事務については、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)の定めるところによる。
(定員)
第二十六条 委員会に置かれる職員の定員は、別に法律で定める。
第三章 有形文化財
第一節 重要文化財
第一款 指定
(指定)
第二十七条 委員会は、有形文化財のうち重要なものを重要文化財に指定することができる。
2 委員会は、重要文化財のうち世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるものを国宝に指定することができる。
(告示及び指定書の交付)
第二十八条 前条の規定による指定をしたときは、委員会は、その旨を官報で告示し、且つ、国宝又は重要文化財の所有者に指定書を交付しなければならない。
2 指定書に記載すべき事項その他指定書に関し必要な事項は、委員会規則で定める。
3 第一項の規定により国宝の指定書を受けたときは、所有者は、二十日以内に国宝に指定された重要文化財の指定書を委員会に返付しなければならない。
(解除)
第二十九条 国宝又は重要文化財が国宝又は重要文化財としての価値を失つた場合その他特殊の事由があるときは、委員会は、国宝又は重要文化財の指定を解除することができる。
2 前項の規定により指定を解除したときは、委員会は、その旨を官報で告示し、且つ、所有者に通知しなければならない。
3 前項の通知を受けたときは、所有者は、二十日以内に指定書を委員会に返付しなければならない。
4 第一項の規定により国宝の指定を解除した場合において当該有形文化財につき重要文化財の指定を解除しないときは、委員会は、直ちに重要文化財の指定書を所有者に交付しなければならない。
第二款 管理
(管理方法の指示)
第三十条 委員会は、重要文化財の所有者に対し、重要文化財の管理に関し必要な指示をすることができる。
(所有者の管理義務及び管理責任者)
第三十一条 重要文化財の所有者は、この法律並びにこれに基いて発する委員会規則及び委員会の指示に従い、重要文化財を管理しなければならない。
2 重要文化財の所有者は、特別の事情があるときは、適当な者をもつぱら自己に代り当該重要文化財の管理の責に任ずべき者(以下「管理責任者」という。)に選任することができる。
3 前項の規定により管理責任者を選任したときは、重要文化財の所有者は、委員会規則の定める事項を記載した書面をもつて、当該管理責任者と連署の上二十日以内に委員会に届け出なければならない。管理責任者を解任した場合も同様とする。
4 前二項の規定による管理責任者には、第一項の規定を準用する。
(所有者又は管理責任者の変更)
第三十二条 重要文化財の所有者が変更したときは、新所有者は、委員会規則の定める事項を記載した書面をもつて、且つ、旧所有者に対し交付された指定書を添えて、二十日以内に委員会に届け出なければならない。
2 重要文化財の所有者は、前条の規定による管理責任者を変更したときは、委員会規則の定める事項を記載した書面をもつて、新管理責任者と連署の上二十日以内に委員会に届け出なければならない。
3 重要文化財の所有者又は前条の規定による管理責任者は、その氏名若しくは名称又は住所を変更したときは、委員会規則の定める事項を記載した書面をもつて、二十日以内に委員会に届け出なければならない。氏名若しくは名称又は住所の変更が重要文化財の所有者に係るときは、届出の際指定書を添えなければならない。
(滅失又はき損)
第三十三条 重要文化財が滅失し、又はき損したときは、所有者(第三十一条の規定により管理責任者を定めてある場合は、その者)は、委員会規則の定める事項を記載した書面をもつて、その事実を知つた日から十日以内に委員会に届け出なければならない。
(所在の変更)
第三十四条 重要文化財の所在の場所を変更したときは、重要文化財の所有者(第三十一条の規定により管理責任者を定めてある場合は、その者)は、委員会規則の定める事項を記載した書面をもつて、且つ、指定書を添えて、二十日以内に委員会に届け出なければならない。但し、一時的な所在の場所の変更その他委員会規則の定める場合は、この限りでない。
第三款 保護
(管理又は修理の補助)
第三十五条 重要文化財の管理又は修理につき多額の経費を要し、重要文化財の所有者がその負担に堪えない場合その他特別の事情がある場合には、政府は、その経費の一部に充てさせるため、重要文化財の所有者に対し補助金を交付することができる。
2 前項の補助金を交付する場合には、委員会は、その補助の条件として管理又は修理に関し必要な事項を指示することができる。
3 委員会は、必要があると認めるときは、第一項の補助金を交付する重要文化財の管理又は修理について指揮監督することができる。
(管理に関する命令又は勧告)
第三十六条 重要文化財を管理する者が不適任なため又は管理が適当でないため重要文化財が滅失し、又はき損する虞があると認めるときは、委員会は、所有者又は第三十一条の規定による管理責任者に対し、重要文化財の管理をする者の選任又は変更、管理方法の改善、防火施設その他の保存施設の設置その他管理に関し必要な措置を命じ、又は勧告することができる。
2 前項の規定による命令又は勧告に基いてする措置のために要する費用は、委員会規則の定めるところにより、その全部又は一部を国庫の負担とすることができる。
3 前項の規定により国庫が費用の全部又は一部を負担する場合には、前条第三項の規定を準用する。
(修理に関する命令又は勧告)
第三十七条 委員会は、国宝がき損している場合において、その保存のため必要があると認めるときは、所有者又は第三十一条の規定による管理責任者に対し、その修理について必要な命令又は勧告をすることができる。
2 委員会は、国宝以外の重要文化財がき損している場合において、その保存のため必要があると認めるときは、所有者又は第三十一条の規定による管理責任者に対し、その修理について必要な勧告をすることができる。
3 前二項の規定による命令又は勧告に基いてする修理のために要する費用は、委員会規則の定めるところにより、その全部又は一部を国庫の負担とすることができる。
4 前項の規定により国庫が費用の全部又は一部を負担する場合には、第三十五条第三項の規定を準用する。
(政府による修理等の施行)
第三十八条 委員会は、左の各号の一に該当する場合においては、国宝につき自ら修理を行い、又は滅失若しくはき損の防止の措置をすることができる。
一 所有者又は第三十一条の規定による管理責任者が前二条の規定による命令に従わないとき。
二 国宝がき損している場合又は滅失し、若しくはき損する虞がある場合において、所有者又は第三十一条の規定による管理責任者に修理又は滅失若しくはき損の防止の措置をさせることが適当でないと認められるとき。
2 前項の規定による修理又は措置をしようとするときは、委員会は、あらかじめ、所有者又は第三十一条の規定による管理責任者に対し、当該国宝の名称、修理又は措置の内容、着手の時期その他必要と認める事項を記載した令書を交付しなければならない。
第三十九条 委員会は、前条第一項の規定による修理又は措置をするときは、その職員のうちから、当該修理又は措置の施行及び当該国宝の管理の責に任ずべき者を定めなければならない。
2 前項の規定により責に任ずべき者と定められた者は、当該修理又は措置の施行に当るときは、その身分を証明する証票を携帯し、関係者の請求があつたときは、これを示し、且つ、その正当な意見を十分に尊重しなければならない。
第四十条 第三十八条第一項の規定による修理又は措置のために要する費用は、国庫の負担とする。
2 委員会は、委員会規則の定めるところにより、第三十八条第一項の規定による修理又は措置のために要した費用の一部を所有者から徴収することができる。
3 前項の規定による徴収については、行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)第五条から第七条までの規定を準用する。
第四十一条 第三十八条第一項の規定による修理又は措置によつて損害を受けた者に対しては、政府は、その通常生ずべき損害を補償する。
2 前項の規定による補償額に不服のある者は、訴をもつてその増額を請求することができる。但し、前項の補償の決定の通知を受けた日から六箇月を経過したときは、この限りでない。
(補助等に係る重要文化財譲渡の場合の納付金)
第四十二条 国が修理又は滅失若しくはき損の防止の措置(以下この条において、「修理等」という。)につき第三十五条第一項の規定により補助金を交付し、又は第三十六条第二項、第三十七条第三項若しくは第四十条第一項の規定により費用を負担した重要文化財のその当時における所有者又はその相続人、受遺者若しくは受贈者(第二次以下の相続人、受遺者又は受贈者を含む。以下この条において同じ。)(以下この条において、「所有者等」という。)は、補助又は費用負担に係る修理等が行われた後当該重要文化財を有償で譲り渡した場合においては、当該補助金又は負担金の額(第四十条第二項の規定により徴収された部分を除く。)の合計額から当該修理等が行われた後重要文化財の修理等のため自己の費した金額を控除して得た金額(以下この条において、「納付金額」という。)を、委員会規則の定めるところにより国庫に納付しなければならない。
2 前項に規定する「補助金又は負担金の額」とは、補助金又は負担金の額を、補助又は費用負担に係る修理等を施した重要文化財又はその部分につき委員会が個別的に定める耐用年数で除して得た金額に、更に当該耐用年数から修理等を行つた時以後重要文化財の譲渡の時までの年数を控除した残余の年数(一年に満たない部分があるときは、これを切り捨てる。)を乗じて得た金額に相当する金額とする。
3 補助又は費用負担に係る修理等が行われた後、当該重要文化財が所有者等の責に帰することのできない事由により著しくその価値を減じた場合又は当該重要文化財を国に譲り渡した場合には、委員会は、納付金額の全部又は一部の納付を免除することができる。
4 委員会の指定する期限までに納付金額を完納しないときは、国税滞納処分の例により、これを徴収することができる。
5 納付金額を納付する者が相続人、受遺者又は受贈者であるときは、政令の定めるところにより納付金額からその者が納付した相続税額のうち当該重要文化財の相続、遺贈又は贈与に係る部分に相当する金額を控除するものとする。
6 第一項の規定により納付金額を納付する者の同項に規定する譲渡に係る所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)第九条第一項第八号に規定する譲渡所得の計算については、第一項の規定により納付する金額は、同号に規定する譲渡に関する経費とする。
(現状変更の制限)
第四十三条 重要文化財の現状を変更しようとするときは、委員会の許可を受けなければならない。但し、その維持の措置をする場合は、この限りでない。
2 委員会は、前項の許可を与える場合において、その許可の条件として同項の現状の変更に関し必要な指示をすることができる。
3 第一項の許可を受けた者が前項の許可の条件に従わなかつたときは、委員会は、許可に係る現状の変更を停止し、又は許可を取り消すことができる。
(輸出の禁止)
第四十四条 重要文化財は、輸出してはならない。但し、委員会が文化の国際的交流その他の事由により特に必要と認めて許可した場合は、この限りでない。
(環境保全)
第四十五条 委員会は、重要文化財の保存のため必要があると認めるときは、地域を定めて一定の行為を制限し、若しくは禁止し、又は必要な施設をすることを命ずることができる。
2 前項の規定による処分によつて損害を受けた者に対しては、政府は、その通常生ずべき損害を補償する。
3 前項の場合には、第四十一条第二項の規定を準用する。
(国に対する売渡の申出)
第四十六条 重要文化財を有償で譲り渡そうとする者は、譲渡の相手方、予定対価の額(予定対価が金銭以外のものであるときは、これを時価を基準として金銭に見積つた額。以下同じ。)その他委員会規則で定める事項を記載した書面をもつて、まず委員会に国に対する売渡の申出をしなければならない。但し、当該譲受人に対して特に譲り渡したい特別の事情がある場合において委員会の承認を受けたときは、この限りでない。
2 前項の規定による売渡の申出のあつた後二十日以内に委員会が当該重要文化財を国において買い取るべき旨の通知をしたときは、前項の規定による申出書に記載された予定対価の額に相当する代金で、売買が成立したものとみなす。
3 第一項に規定する者は、前項の期間(その期間内に委員会が当該重要文化財を買い取らない旨の通知をしたときは、その時までの期間)内は、当該重要文化財を譲り渡してはならない。
4 委員会が第一項但書の規定による承認をしない旨の処分をした場合において、その処分に不服のある者は、委員会に対し、異議の申立をすることができる。
(管理又は修理の受託又は技術的指導)
第四十七条 重要文化財の所有者は、委員会の定める条件により、委員会に重要文化財の管理又は修理を委託することができる。
2 委員会は、重要文化財の保存上必要があると認めるときは、所有者に対し、条件を示して、委員会にその管理又は修理を委託するように勧告することができる。
3 前二項の規定により委員会が管理又は修理の委託を受けた場合には、第三十九条の規定を準用する。
4 重要文化財の所有者又は第三十一条の規定による管理責任者は、委員会規則の定めるところにより、委員会に重要文化財の管理又は修理に関し技術的指導を求めることができる。
第四款 公開
(出品)
第四十八条 委員会は、重要文化財の所有者に対し、一年以内の期間を限つて、国立博物館その他の施設において国の行う公開の用に供するため重要文化財を出品することを勧告することができる。
2 委員会は、国庫が管理又は修理につき、その費用の全部若しくは一部を負担し、又は補助金を交付した重要文化財の所有者に対し、一年以内の期間を限つて、国立博物館その他の施設において国の行う公開の用に供するため当該重要文化財を出品することを命ずることができる。
3 委員会は、前項の場合において必要があると認めるときは、一年以内の期間を限つて、出品の期間を更新することができる。但し、引き続き五年をこえてはならない。
4 第二項の命令又は前項の更新があつたときは、重要文化財の所有者は、その重要文化財を出品しなければならない。但し、委員会が所有者の申請によりやむを得ない事由があるものと認める場合は、この限りでない。
5 前四項に規定する場合の外、委員会は、重要文化財の所有者から国立博物館その他の施設において国の行う公開の用に供するため重要文化財を出品したい旨の申出があつた場合において適当と認めるときは、その出品を承認することができる。
第四十九条 委員会は、前条の規定により重要文化財が出品されたときは、第百条に規定する場合を除いて、国立博物館所属の職員その他委員会の職員のうちから、その重要文化財の管理の責に任ずべき者を定めなければならない。
第五十条 第四十八条の規定による出品のために要する費用は、委員会規則の定める基準により、国庫の負担とする。
2 政府は、第四十八条の規定により出品した所有者に対し、委員会規則の定める基準により、給与金を支給する。
(所有者による公開)
第五十一条 委員会は、重要文化財の所有者に対し、三箇月以内の期間を限つて、重要文化財の公開を勧告することができる。
2 委員会は、国庫が管理又は修理につき、その費用の全部若しくは一部を負担し、又は補助金を交付した重要文化財の所有者に対し、三箇月以内の期間を限つて、その公開を命ずることができる。
3 前項の場合には、第四十八条第四項の規定を準用する。
4 委員会は、重要文化財の所有者に対し、公開及び公開に係る重要文化財の管理に関し必要な指示をすることができる。
5 重要文化財の所有者又は第三十一条の規定による管理責任者が前項の指示に従わない場合には、委員会は、公開の停止又は中止を命ずることができる。
6 第一項から第四項までの規定による公開のために要する費用は、委員会規則の定めるところにより、その全部又は一部を国庫の負担とすることができる。
7 第一項から第三項までに規定する場合の外、重要文化財の所有者から、その所有に係る重要文化財を国庫の費用負担において公開したい旨の申出があつた場合において、委員会が適当と認めてこれを承認したときは、委員会規則の定めるところにより、その公開のために要する費用の全部又は一部を国庫の負担とすることができる。この場合には、第四項及び第五項の規定を準用する。
(損害の補償)
第五十二条 第四十八条又は前条の規定により出品し、又は公開したことに起因して当該重要文化財が滅失し、又はき損したときは、政府は、その重要文化財の所有者に対し、通常生ずべき損害を補償する。但し、重要文化財が所有者又は第三十一条の規定による管理責任者の責に帰すべき事由によつて滅失し、又はき損した場合は、この限りでない。
2 前項の場合には、第四十一条第二項の規定を準用する。
(所有者以外の者による公開)
第五十三条 重要文化財の所有者以外の者がその主催する展覧会その他の催しにおいて重要文化財を公衆の観覧に供しようとするときは、委員会の許可を受けなければならない。但し、あらかじめ、委員会の承認を受けた博物館その他の施設において、委員会以外の国の機関又は地方公共団体が主催する場合は、委員会に届け出ることをもつて足りる。
2 委員会は、前項の許可を与える場合において、その許可の条件として、公衆の観覧に供する場合における重要文化財の管理に関し必要な指示をすることができる。
3 第一項の許可を受けた者が前項の許可の条件に従わなかつたときは、委員会は、許可に係る公開を停止し、又は許可を取り消すことができる。
第五款 調査
(保存のための調査)
第五十四条 委員会は、必要があると認めるときは、重要文化財の所有者又は第三十一条の規定による管理責任者に対し、重要文化財の現状又は管理、修理若しくは環境保全の状況につき報告を求めることができる。
第五十五条 委員会は、左の各号の一に該当する場合において、前条の報告によつてもなお重要文化財に関する状況を確認することができず、且つ、その確認のため他に方法がないと認めるときは、調査に当る者を定め、その所在する場所に立ち入つてその現状又は管理、修理若しくは環境保全の状況につき実地調査をさせることができる。
一 重要文化財の現状変更の許可の申請があつたとき。
二 重要文化財がき損しているとき又はその現状若しくは所在の場所につき変更があつたとき。
三 重要文化財が滅失し、又はき損する虞のあるとき。
四 特別の事情によりあらためて国宝又は重要文化財としての価値を鑑査する必要があるとき。
2 前項の規定により立ち入り、調査する場合においては、当該調査に当る者は、その身分を証明する証票を携帯し、関係者の請求があつたときは、これを示し、且つ、その正当な意見を十分に尊重しなければならない。
3 第一項の規定による調査によつて損害を受けた者に対しては、政府は、その通常生ずべき損害を補償する。
4 前項の場合には、第四十一条第二項の規定を準用する。
第六款 雑則
(所有者変更に伴う権利義務の承継)
第五十六条 重要文化財の所有者が変更したときは、新所有者は、当該重要文化財に関しこの法律に基いてする委員会の命令、勧告、指示その他の処分による旧所有者の権利義務を承継する。
2 前項の場合には、旧所有者は、当該重要文化財の引渡と同時にその指定書を新所有者に引き渡さなければならない。
第二節 重要文化財以外の有形文化財
第一款 埋蔵文化財
(発掘に関する届出、指示及び命令)
第五十七条 第六十九条又は第七十条の規定により史跡に指定された土地以外の土地において埋蔵物たる文化財(以下「埋蔵文化財」という。)を発掘しようとするときは、委員会規則の定める事項を記載した書面をもつて、発掘しようとする日の二十日前までに委員会に届け出なければならない。
2 埋蔵文化財の保護上特に必要があると認めるときは、委員会は、前項の届出に係る埋蔵文化財の発掘に関し必要な事項を指示し、又はその発掘の禁止、停止若しくは中止を命ずることができる。
(発掘の施行)
第五十八条 委員会は、必要があると認めるときは、自ら埋蔵文化財の発掘を施行することができる。
2 前項の規定により発掘を自ら施行しようとするときは、委員会は、あらかじめ、当該土地の所有者及び権原に基く占有者に対し、発掘の目的、方法、着手の時期その他必要と認める事項を記載した令書を交付しなければならない。
3 第一項の場合には、第三十九条及び第四十一条の規定を準用する。
第五十九条 前条第一項の規定による発掘により文化財を発見したときは、委員会は、当該文化財をその所有者に返還する場合を除いて、遺失物法(明治三十二年法律第八十七号)第十三条で準用する同法第一条第一項の規定にかかわらず、警察署長にその旨を通知することをもつて足りる。
2 前項の通知を受けたときは、警察署長は、直ちに当該文化財につき遺失物法第十三条で準用する同法第一条第二項の規定による公告をしなければならない。
(提出)
第六十条 遺失物法第十三条で準用する同法第一条第一項の規定により、埋蔵物として差し出された物件が文化財と認められるときは、警察署長は、直ちに当該物件を委員会に提出しなければならない。但し、所有者の判明している場合は、この限りでない。
(鑑査)
第六十一条 前条の規定により物件が提出されたときは、委員会は、当該物件が文化財であるかどうかを鑑査しなければならない。
2 委員会は、前項の鑑査の結果当該物件を文化財と認めたときは、その旨を警察署長に通知し、文化財でないと認めたときは、当該物件を警察署長に差し戻さなければならない。
(引渡)
第六十二条 第五十九条第一項又は前条第二項に規定する文化財の所有者から、警察署長に対し、その文化財の返還の請求があつたときは、委員会は、当該警察署長にこれを引き渡さなければならない。
(国庫帰属及び報償金)
第六十三条 第五十九条第一項又は第六十一条第二項に規定する文化財でその所有者が判明しないものの所有権は、国庫に帰属する。この場合においては、委員会は、当該文化財の発見者及びその発見された土地の所有者にその旨を通知し、且つ、その価格に相当する額の報償金を支給する。
2 前項に規定する発見者と土地所有者とが異なるときは、前項の報償金は、折半して支給する。
3 前二項の場合には、第四十一条第二項の規定を準用する。
(譲与等)
第六十四条 政府は、第六十一条第二項に規定する文化財の保存のため又はその効用から見て国が保有する必要がある場合を除いて、当該文化財の発見者又はその発見された土地の所有者に、その者が前条の規定により受けるべき報償金の額に相当するものの範囲内でこれを譲与することができる。
2 前項の場合には、その譲与した文化財の価格に相当する金額は、前条に規定する報償金の額から控除するものとする。
3 政府は、発見された埋蔵文化財の保存のため又はその効用から見て国が保有する必要がある場合を除いて、当該埋蔵文化財の発見された土地を管轄する地方公共団体に対し、その申請に基き、当該埋蔵文化財を譲与し、又は時価よりも低い対価で譲渡することができる。
(遺失物法の適用)
第六十五条 埋蔵文化財に関しては、この法律に特別の定のある場合の外、遺失物法第十三条の規定の適用があるものとする。
第二款 有形文化財に関する技術的指導
(技術的指導)
第六十六条 重要文化財以外の有形文化財の所有者は、委員会規則の定めるところにより、委員会に有形文化財の管理又は修理に関し技術的指導を求めることができる。
第四章 無形文化財
(助成)
第六十七条 無形文化財のうち特に価値の高いもので国が保護しなければ衰亡する虞のあるものについては、委員会は、その保存に当ることを適当と認める者に対し、補助金を交付し、又は資材のあつ旋その他適当な助成の措置を講じなければならない。
2 前項の補助金を交付する場合には、第三十五条第二項及び第三項の規定を準用する。
(公開)
第六十八条 委員会は、前条の規定による措置を受けた者に対し、三箇月以内の期間を限つて、当該無形文化財の公開を命ずることができる。
2 前項の場合には、第五十一条第三項から第六項までの規定を準用する。
3 前条に規定する無形文化財の保存に当つている者から、その保存に係る無形文化財を国庫の費用負担において公開したい旨の申出があつた場合には、第五十一条第七項の規定を準用する。
第五章 史跡名勝天然記念物
(指定)
第六十九条 史跡名勝天然記念物は、委員会が指定する。
2 委員会は、前項の史跡名勝天然記念物のうち特に重要なものを特別史跡名勝天然記念物に指定することができる。
3 前二項の規定による指定をしたときは、委員会は、その旨を官報で告示し、且つ、指定されたものの所有者及び権原に基く占有者に通知しなければならない。
(仮指定)
第七十条 前条第一項の規定による指定前において緊急の必要があると認めるときは、都道府県の教育委員会は、史跡名勝天然記念物の仮指定を行うことができる。
2 前項の規定により仮指定を行つたときは、都道府県の教育委員会は、直ちにその旨を委員会に報告しなければならない。
3 第一項の規定により仮指定をした場合には、前条第三項の規定を準用する。
(解除)
第七十一条 特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物がその価値を失つた場合その他特殊の事由のあるときは、委員会又は都道府県の教育委員会は、その指定又は仮指定を解除することができる。
2 前条の規定により仮指定された史跡名勝天然記念物につき第六十九条第一項の規定による指定があつたときは、仮指定は、その効力を失う。
3 前条の規定による仮指定が適当でないと認めるときは、委員会は、これを解除することができる。
4 第一項又は前項の規定による指定又は仮指定の解除には、第六十九条第三項の規定を準用する。
(管理)
第七十二条 委員会は、適当な地方公共団体その他の団体を指定して史跡名勝天然記念物の管理(復旧を含む。以下本条第二項から第四項まで、第七十三条及び第七十四条において同じ。)をさせることができる。
2 史跡名勝天然記念物に指定(仮指定を含む。以下同じ。)されたものの所有者又は占有者は、正当な理由がなくて、前項に規定する管理及び管理のため必要な措置を拒み、妨げ、又は忌避してはならない。
3 第一項の規定による管理に要する費用は、この法律に特別の定のある場合を除いて、当該地方公共団体その他の団体の負担とする。
4 第一項に規定する地方公共団体その他の団体は、その管理する史跡名勝天然記念物につき観覧料を徴収することができる。
5 政府は、第三項の費用の一部を補助することができる。
6 前項の場合には、第三十五条第二項及び第三項の規定を準用する。
第七十三条 前条の規定により地方公共団体その他の団体が行う史跡名勝天然記念物の管理によつて損害を受けた者に対しては、当該地方公共団体その他の団体は、その通常生ずべき損害を補償しなければならない。
2 前項の場合には、第四十一条第二項の規定を準用する。
第七十四条 第七十二条に規定する場合を除いて、史跡名勝天然記念物に指定されたものの所有者は、当該史跡名勝天然記念物の管理に当るものとする。
2 前項の規定により史跡名勝天然記念物の管理に当る所有者は、特別の事情があるときは、適当な者をもつぱら自己に代り当該史跡名勝天然記念物の管理の責に任ずべき者(以下「管理責任者」という。)に選任することができる。
3 第一項に規定する所有者には、第三十五条の規定を、前項の規定により管理責任者を選任した場合には、第三十一条第三項の規定を準用する。
第七十五条 第七十二条第一項に規定する地方公共団体その他の団体、前条第一項に規定する所有者及び同条第二項の規定による管理責任者(以下これらの者を「管理者」と総称する。)には、第三十条、第三十一条第一項及び第三十三条の規定を、前条第一項に規定する所有者及び同条第二項の規定による管理責任者には、第三十二条の規定を準用する。
(管理に関する命令又は勧告)
第七十六条 管理が適当でないため史跡名勝天然記念物が滅失し、き損し、又は衰亡する虞があると認めるときは、委員会は、管理者に対し、管理方法の改善、保存施設の設置その他管理に関し必要な措置を命じ、又は勧告することができる。
2 前項の場合には、第三十六条第二項及び第三項の規定を準用する。
(復旧に関する命令又は勧告)
第七十七条 委員会は、特別史跡名勝天然記念物がき損し、又は衰亡している場合において、その保存のため必要があると認めるときは、管理者に対し、その復旧について必要な命令又は勧告をすることができる。
2 委員会は、特別史跡名勝天然記念物以外の史跡名勝天然記念物が、き損し、又は衰亡している場合において、その保存のため必要があると認めるときは、管理者に対し、その復旧について必要な勧告をすることができる。
3 前二項の場合には、第三十七条第三項及び第四項の規定を準用する。
(政府による復旧等の施行)
第七十八条 委員会は、左の各号の一に該当する場合においては、特別史跡名勝天然記念物につき自ら復旧を行い、又は滅失、き損若しくは衰亡の防止の措置をすることができる。
一 管理者が前二条の規定による命令に従わないとき。
二 特別史跡名勝天然記念物がき損し、若しくは衰亡している場合又は滅失し、き損し、若しくは衰亡する虞のある場合において、管理者に復旧又は滅失、き損若しくは衰亡の防止の措置をさせることが適当でないと認められるとき。
2 前項の場合には、第三十八条第二項及び第三十九条から第四十一条までの規定を準用する。
(補助等に係る史跡名勝天然記念物譲渡の場合の納付金)
第七十九条 国が復旧又は滅失、き損若しくは衰亡の防止の措置につき第七十四条第三項で準用する第三十五条第一項の規定により補助金を交付し、又は第七十六条第二項で準用する第三十六条第二項、第七十七条第三項で準用する第三十七条第三項若しくは第七十八条第二項で準用する第四十条第一項の規定により費用を負担した史跡名勝天然記念物については、第四十二条の規定を準用する。
(現状変更等の制限)
第八十条 史跡名勝天然記念物に関しその現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは、委員会の許可を受けなければならない。但し、その維持の措置をする場合は、この限りでない。
2 前項の許可を与える場合には、第四十三条第二項の規定を、前項の許可を受けた者には、同条第三項の規定を準用する。
(環境保全)
第八十一条 委員会は、史跡名勝天然記念物の保存のため必要があると認めるときは、地域を定めて一定の行為を制限し、若しくは禁止し、又は必要な施設をすることを命ずることができる。
2 前項の規定による処分によつて損害を受けた者に対しては、政府は、その通常生ずべき損害を補償する。
3 前項の場合には、第四十一条第二項の規定を準用する。
(保存のための調査)
第八十二条 委員会は、必要があると認めるときは、管理者に対し、史跡名勝天然記念物の現状又は管理、復旧若しくは環境保全の状況につき報告を求めることができる。
第八十三条 委員会は、左の各号の一に該当する場合においては、前条の報告によつてもなお史跡名勝天然記念物に関する状況を確認することができず、且つ、その確認のため他に方法がないと認めるときは、調査に当る者を定め、その所在する土地又はその隣接地に立ち入つてその現状又は管理、復旧若しくは環境保全の状況につき実地調査及び土地の発掘、障害物の除却その他調査のため必要な措置をさせることができる。但し、当該土地の所有者、占有者その他の関係者に対し、著しい損害を及ぼす虞のある措置は、させてはならない。
一 史跡名勝天然記念物に関する現状変更又は保存に影響を及ぼす行為の許可の申請があつたとき。
二 史跡名勝天然記念物がき損し、又は衰亡しているとき。
三 史跡名勝天然記念物が滅失し、き損し、又は衰亡する虞のあるとき。
四 特別の事情によりあらためて特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物としての価値を調査する必要があるとき。
2 前項の規定による調査又は措置によつて損害を受けた者に対しては、政府は、その通常生ずべき損害を補償する。
3 第一項の規定により立ち入り、調査する場合には、第五十五条第二項の規定を、前項の場合には、第四十一条第二項の規定を準用する。
(古墳、旧跡その他の遺跡発見の届出)
第八十四条 土地の所有者又は占有者が古墳、旧跡その他の遺跡と認められるものを発見したときは、その現状を変更することなく、委員会規則の定める事項を記載した書面をもつて、発見の日から十日以内に委員会に届け出なければならない。
第六章 補則
(聴聞)
第八十五条 委員会が左に掲げる処分又は措置を行おうとするときは、関係者又はその代理人の出頭を求めて、公開による聴聞を行わなければならない。
一 第三十八条第一項又は第七十八条第一項の規定による修理若しくは復旧又は措置の施行
二 第四十三条第三項(第八十条第二項で準用する場合を含む。)又は第五十三条第三項の規定による許可の取消
三 第四十五条又は第八十一条の規定による制限、禁止又は命令で特定の者に対して行われるもの
四 第五十一条第五項(同条第七項並びに第六十八条第二項及び第三項で準用する場合を含む。)の規定による公開の中止命令
五 第五十五条第一項又は第八十三条第一項の規定による立入調査又は調査のため必要な措置の施行
六 第五十七条第二項の規定による発掘の禁止又は中止命令
七 第五十八条第一項の規定による発掘の施行
2 委員会は、前項の聴聞を行おうとするときは、前項各号に規定する処分又は措置を行おうとする理由、その処分又は措置の内容並びに聴聞の期日及び場所をその期日の十日前までに当該関係者に通告し、且つ、聴聞の期日及び場所を公示しなければならない。
3 聴聞においては、当該関係者又はその代理人は、自己又は本人のために意見を述べ、又は釈明し、且つ、証拠を提出することができる。
4 当該関係者又はその代理人が正当な理由がなくて聴聞に応じなかつたときは、委員会は、聴聞を行わないで第一項に規定する処分又は措置をすることができる。
(国に関する特例)
第八十六条 国が重要文化財若しくは史跡名勝天然記念物に指定されたものを取得し、又は委員会が国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)に規定する国有財産(公共福祉用財産を除く。)を重要文化財若しくは史跡名勝天然記念物に指定する場合においては、同法第十三条の規定にかかわらず、国会の議決を経ることを要しない。その指定を解除する場合も同様とする。
第八十七条 重要文化財又は史跡名勝天然記念物に指定されたものが国有財産法に規定する国有財産であるときは、そのものは、文部大臣が管理する。但し、そのものが同法第三条第二項に規定する行政財産であるとき又は国有林野法(明治三十二年法律第八十五号)に規定する国有林野に属するものであるときは、そのものを管理すべき機関は、文部大臣、関係各省各庁の長(国有財産法第四条第二項に規定する各省各庁の長をいう。以下同じ。)及び大蔵大臣が協議して定める。
2 前項但書の規定により協議する場合には、文部大臣は、委員会の意見を聞かなければならない。
第八十八条 国の所有に属する有形文化財を国宝又は重要文化財に指定したときは、第二十八条第一項の規定により所有者に交付すべき指定書は、当該有形文化財を管理する各省各庁の長に交付するものとする。この場合においては、国宝の指定書を受けた各省各庁の長は、直ちに国宝に指定された重要文化財の指定書を委員会に返付しなければならない。
2 国の所有に属する国宝又は重要文化財の指定を解除したときは、第二十九条第二項又は第四項の規定により所有者に対し行うべき通知又は指定書の交付は、当該国宝又は重要文化財を管理する各省各庁の長に対し行うものとする。この場合においては、当該各省各庁の長は、直ちに指定書を委員会に返付しなければならない。
3 国の所有又は占有に属するものを特別史跡名勝天然記念物若しくは史跡名勝天然記念物に指定し、又はその指定を解除したときは、第六十九条第三項(第七十条第三項及び第七十一条第四項で準用する場合を含む。)の規定により所有者又は占有者に対し行うべき通知は、その指定又は解除に係るものを管理する各省各庁の長に対し行うものとする。
第八十九条 重要文化財又は史跡名勝天然記念物に指定されたものを管理する各省各庁の長は、この法律並びにこれに基いて発する委員会規則及び委員会の勧告に従い、重要文化財又は史跡名勝天然記念物を管理しなければならない。
第九十条 左に掲げる場合には、関係各省各庁の長は、文部大臣を通じ委員会に通知しなければならない。
一 重要文化財又は史跡名勝天然記念物に指定されたものを取得したとき。
二 重要文化財又は史跡名勝天然記念物の所管換を受け、又は所属替をしたとき。
三 所管に属する重要文化財又は史跡名勝天然記念物が滅失し、き損し、又は衰亡したとき。
四 所管に属する重要文化財の所在の場所を変更したとき。
五 所管に属する土地において古墳、旧跡その他の遺跡と認められるものを発見したとき。
2 前項第一号及び第二号の場合に係る通知には、第三十二条第一項及び同項を準用する第七十五条の規定を、前項第三号の場合に係る通知には、第三十三条及び同項を準用する第七十五条の規定を、前項第四号の場合に係る通知には、第三十四条の規定を、前項第五号の場合に係る通知には、第八十四条の規定を準用する。
第九十一条 左に掲げる場合には、関係各省各庁の長は、あらかじめ、文部大臣を通じ委員会の同意を求めなければならない。
一 重要文化財又は史跡名勝天然記念物の現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとするとき。(その維持の措置をする場合を除く。)
二 所管に属する重要文化財を輸出しようとするとき。
三 所管に属する重要文化財又は史跡名勝天然記念物に指定されたものの貸付、交換、売払、譲与その他の処分をしようとするとき。
2 委員会は、前項第一号に規定する措置につき同意を与える場合においては、その条件としてその措置に関し必要な勧告をすることができる。
3 関係各省各庁の長は、前項の規定による委員会の勧告を十分に尊重しなければならない。
第九十二条 委員会は、必要があると認めるときは、文部大臣を通じ各省各庁の長に対し、左に掲げる事項につき必要な勧告をすることができる。
一 所管に属する重要文化財又は史跡名勝天然記念物の管理方法
二 所管に属する重要文化財又は史跡名勝天然記念物に指定されたものの修理若しくは復旧又は滅失、き損若しくは衰亡の防止の措置
三 重要文化財又は史跡名勝天然記念物の環境保全のため必要な施設
四 所管に属する重要文化財の出品又は公開
2 前項の勧告については、前条第三項の規定を準用する。
3 第一項の規定による委員会の勧告に基いて施行する同項第二号に規定する修理、復旧若しくは措置又は同項第三号に規定する施設に要する経費の分担については、文部大臣と各省各庁の長が協議して定める。
4 前項の規定により協議する場合には、第八十七条第二項の規定を準用する。
第九十三条 委員会は、左の各号の一に該当する場合においては、国の所有に属する国宝又は特別史跡名勝天然記念物に指定されたものにつき、自ら修理若しくは復旧を行い、又は滅失、き損若しくは衰亡の防止の措置をすることができる。この場合においては、委員会は、当該文化財が文部大臣以外の各省各庁の長の所管に属するものであるときは、あらかじめ、修理若しくは復旧又は措置の内容、着手の時期その他必要な事項につき、文部大臣を通じ当該文化財を管理する各省各庁の長と協議し、当該文化財が文部大臣の所管に属するものであるときは、文部大臣の定める場合を除いて、その承認を受けなければならない。
一 関係各省各庁の長が前条第一項第二号に規定する修理若しくは復旧又は措置についての委員会の勧告に応じないとき。
二 国宝又は特別史跡名勝天然記念物がき損し、若しくは衰亡している場合又は滅失し、き損し、若しくは衰亡する虞のある場合において、関係各省各庁の長に当該修理若しくは復旧又は措置をさせることが適当でないと認められるとき。
第九十四条 委員会は、国の所有に属するものを国宝、重要文化財、特別史跡名勝天然記念物若しくは史跡名勝天然記念物に指定するに当り、又は国の所有に属する国宝、重要文化財、特別史跡名勝天然記念物若しくは史跡名勝天然記念物に関する状況を確認するため必要があると認めるときは、関係各省各庁の長に対し調査のため必要な報告を求め、又は調査に当る者を定めて実地調査をさせることができる。
第九十五条 国の所有に属する史跡名勝天然記念物を第七十二条の規定により地方公共団体その他の団体に管理させる場合においては、委員会は、当該史跡名勝天然記念物から生ずる収益を当該地方公共団体その他の団体に帰属させることができる。
第九十六条 委員会は、第五十八条第一項の規定により自ら埋蔵文化財の発掘を施行しようとする場合において、その発掘を施行しようとする土地が国の所有に属し、又は国の機関の占有するものであるときは、あらかじめ、発掘の目的、方法、着手の時期その他必要と認める事項につき、文部大臣を通じ関係各省各庁の長と協議しなければならない。但し、当該各省各庁の長が文部大臣であるときは、その承認を受けるべきものとする。
第九十七条 第六十三条の規定により国庫に帰属した埋蔵文化財は、委員会が管理する。但し、その保存のため又はその効用から見て他の機関に管理させることが適当であるときは、これを当該機関の管理に移さなければならない。
第九十八条 国の所有に属する重要文化財又は史跡名勝天然記念物については、第三十条から第三十四条まで、第三十六条から第四十一条まで、第四十三条、第四十四条、第四十八条から第五十二条まで、第五十四条、第五十五条、第七十四条から第七十八条まで、第八十条及び第八十二条から第八十四条までの規定は、適用しない。
2 国に対しては、第四十五条第一項中施設の命令に関する部分、同条第二項及び第三項、第八十一条第一項中施設の命令に関する部分並びに同条第二項及び第三項の規定は、適用しない。
3 第五十八条第一項の規定により埋蔵文化財の発掘を施行する土地が国の所有に属し、又は国の機関の占有するものである場合には、同条第二項の規定及び同条第三項中第四十一条の規定を準用する部分は、国に対しては、適用しない。
(権限の委任)
第九十九条 委員会は、必要があると認めるときは、左に掲げる委員会の権限の一部を都道府県の教育委員会に委任することができる。
一 第三十五条第三項(第三十六条第三項、第三十七条第四項、第六十七条第二項、第七十二条第六項、第七十四条第三項、第七十六条第二項及び第七十七条第三項で準用する場合を含む。)の規定による指揮監督
二 第四十三条(第八十条第二項で準用する場合を含む。)の規定による現状変更又は保存に影響を及ぼす行為の許可及びその取消並びにその停止命令(重大な現状変更又は保存に重大な影響を及ぼす行為の許可及びその取消を除く。)
三 第五十一条第五項(同条第七項並びに第六十八条第二項及び第三項で準用する場合を含む。)の規定による公開の停止命令
四 第五十三条の規定による公開の許可及びその取消並びに公開の停止命令
五 第五十四条、第五十五条、第八十二条又は第八十三条の規定による調査又は調査のため必要な措置の施行
六 第五十七条第二項の規定による発掘の停止命令
2 都道府県の教育委員会が前項の規定による委任に基き同項第二号若しくは第四号に規定する許可の取消又は同項第五号に規定する立入調査若しくは調査のため必要な措置を行う場合には、第八十五条の規定を準用する。
(出品された重要文化財の管理の委任)
第百条 委員会は、必要があると認めるときは、都道府県又は地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第百五十五条第二項の市の教育委員会に対し第四十八条の規定により出品された重要文化財の管理の事務を委任することができる。
2 前項の規定による委任を受けた場合には、都道府県又は前項に規定する市の教育委員会は、その職員のうちから、当該重要文化財の管理の責に任ずべき者を定めなければならない。
(修理等の施行の委託)
第百一条 委員会は、必要があると認めるときは、第三十八条第一項又は第九十三条の規定による国宝の修理又は滅失若しくはき損の防止の措置の施行、第五十八条第一項の規定による埋蔵文化財の発掘の施行及び第七十八条第一項又は第九十三条の規定による特別史跡名勝天然記念物の復旧又は滅失、き損若しくは衰亡の防止の措置の施行につき、都道府県の教育委員会に対し、その全部又は一部を委託することができる。
2 都道府県の教育委員会が前項の規定による委託に基き、第三十八条第一項の規定による修理又は措置の施行の全部又は一部を行う場合には、第三十九条の規定を、第五十八条第一項の規定による発掘の施行の全部又は一部を行う場合には、同条第三項で準用する第三十九条の規定を、第七十八条第一項の規定による復旧又は措置の施行の全部又は一部を行う場合には、同条第二項で準用する第三十九条の規定を準用する。
(重要文化財の管理又は修理の受託等)
第百二条 都道府県の教育委員会は、あらかじめ、委員会の承認を得て、所有者又は第三十一条の規定による管理責任者の求めに応じ、重要文化財の管理若しくは修理につき委託を受け、又は技術的指導をすることができる。
2 都道府県の教育委員会が前項の規定により管理又は修理の委託を受ける場合には、第三十九条の規定を準用する。
(書類等の経由)
第百三条 この法律の規定により文化財に関し委員会に提出すべき届書その他の書類及び物件の提出は、都道府県の教育委員会を経由すべきものとする。
2 都道府県の教育委員会は、前項に規定する書類及び物件を受理したときは、意見を具してこれを委員会に送付しなければならない。
3 この法律の規定により文化財に関し委員会が発する命令、勧告、指示その他の処分の告知は、都道府県の教育委員会を経由すべきものとする。但し、特に緊急な場合は、この限りでない。
(指揮監督及び経費の負担)
第百四条 委員会は、この法律の規定により都道府県又は第百条第一項に規定する市の教育委員会に行わせる事務につき、その教育委員会を指揮監督することができる。
2 都道府県又は第百条第一項に規定する市の教育委員会が第九十九条から第百一条までの規定による事務を処理するために要する経費は、国庫の負担とする。
(地方公共団体の補助)
第百五条 地方公共団体は、地方自治法第二百三十一条の規定により文化財の管理、修理、復旧その他保存に要する経費につき補助することができる。
2 前項の規定により補助したときは、当該地方公共団体は、委員会にその補助金の額、補助の比率、補助の方法その他必要な事項につき報告しなければならない。
第七章 罰則
(刑罰)
第百六条 第四十四条の規定に違反し、委員会の許可を受けないで重要文化財を輸出した者は、五年以下の懲役若しくは禁こ又は十万円以下の罰金に処する。
第百七条 重要文化財を損壊し、き棄し、又は隠匿した者は、五年以下の懲役若しくは禁こ又は二万五千円以下の罰金若しくは科料に処する。
2 前項に規定する者が当該重要文化財の所有者であるときは、二年以下の懲役若しくは禁こ又は一万円以下の罰金若しくは科料に処する。
(行政罰)
第百八条 第三十九条第一項(第四十七条第三項、第七十八条第二項、第百一条第二項又は第百二条第二項で準用する場合を含む。)、第四十九条又は第百条第二項に規定する重要文化財又は史跡名勝天然記念物の管理、修理又は復旧の施行の責に任ずべき者が怠慢又は重大な過失によりその管理、修理又は復旧に係る重要文化財又は史跡名勝天然記念物を滅失し、き損し、又は衰亡するに至らしめたときは、二万五千円以下の過料に処する。
第百九条 左の各号の一に該当する者は、二万五千円以下の過料に処する。
一 正当な理由がなくて、第三十六条第一項又は第三十七条第一項の規定による重要文化財の管理又は修理に関する委員会の命令に従わなかつた者
二 第四十三条の規定に違反して、委員会若しくは都道府県の教育委員会の許可を受けず、若しくはその許可の条件に従わないで重要文化財の現状を変更し、又は委員会若しくは都道府県の教育委員会の現状変更の停止の命令に従わなかつた者
三 正当な理由がなくて、第七十六条第一項又は第七十七条第一項の規定による史跡名勝天然記念物の管理又は復旧に関する委員会の命令に従わなかつた者
四 第八十条の規定に違反して、委員会又は都道府県の教育委員会の許可を受けず、若しくはその許可の条件に従わないで史跡名勝天然記念物の現状を変更し、若しくはその保存に影響を及ぼす行為をし、又は委員会若しくは都道府県の教育委員会の現状変更若しくは保存に影響を及ぼす行為の停止の命令に従わなかつた者
第百十条 左の各号の一に該当する者は、一万円以下の過料に処する。
一 第三十八条第一項の規定による国宝の修理又は滅失若しくはき損の防止の措置の施行を拒み、又は妨げた者
二 正当な理由がなくて、第四十五条第一項の規定による制限若しくは禁止又は施設の命令に違反した者
三 第四十六条の規定に違反して、委員会に国に対する売渡の申出をせず、若しくは申出をした後同条第三項に規定する期間内に、国以外の者に重要文化財を譲り渡し、又は同条第一項の規定による売渡の申出若しくは同項但書の規定による承認の申請につき、虚偽の事実を申し立てた者
四 第五十三条の規定に違反して、委員会若しくは都道府県の教育委員会の許可を受けず、若しくはその許可の条件に従わないで重要文化財を公開し、又は委員会若しくは都道府県の教育委員会の公開の停止の命令に従わなかつた者
五 第七十八条の規定による特別史跡名勝天然記念物の復旧又は滅失、き損若しくは衰亡の防止の措置の施行を拒み、又は妨げた者
六 正当な理由がなくて、第八十一条第一項の規定による制限若しくは禁止又は施設の命令に違反した者
第百十一条 左の各号の一に該当する者は、五千円以下の過料に処する。
一 第二十八条第三項、第二十九条第三項又は第五十六条第二項の規定に違反して、重要文化財の指定書を委員会に返付せず、又は新所有者に引き渡さなかつた者
二 第三十一条第三項(第七十四条第三項で準用する場合を含む。)、第三十二条(第七十五条で準用する場合を含む。)、第三十三条(第七十五条で準用する場合を含む。)、第三十四条、第五十七条第一項又は第八十四条の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者
三 第四十八条第二項から第四項まで、第五十一条第二項及び第三項若しくは第六十八条第一項及び第二項の規定に違反して、出品若しくは公開をせず、又は第五十一条第五項(同条第七項並びに第六十八条第二項及び第三項で準用する場合を含む。)の規定に違反して、委員会若しくは都道府県の教育委員会の公開の停止若しくは中止の命令に従わなかつた者
四 第五十四条、第五十五条、第八十二条又は第八十三条の規定に違反して、報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は当該公務員の立入調査若しくは調査のため必要な措置の施行を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
五 第五十七条第二項の規定に違反して、委員会又は都道府県の教育委員会の埋蔵文化財の発掘の禁止又は停止若しくは中止の命令に従わなかつた者
六 第五十八条の規定による埋蔵文化財の発掘の施行を拒み、又は妨げた者
七 正当な理由がなくて、第七十二条第一項の規定による管理(復旧を含む。)又は管理のため必要な措置を拒み、妨げ、又は忌避した者
(両罰規定)
第百十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務又は財産の管理に関して第百六条、第百七条又は第百九条から前条までの違反行為をしたときは、その行為者を罰する外、その法人又は人に対し、各本条の罰金刑又は過料を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため当該業務又は財産の管理に対し相当の注意及び監督が尽されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。
附 則
(施行期日)
第百十三条 この法律施行の期日は、公布の日から起算して三箇月をこえない期間内において、政令で定める。
(関係法令の廃止)
第百十四条 左に掲げる法律、勅令及び政令は、廃止する。
国宝保存法(昭和四年法律第十七号)
重要美術品等の保存に関する法律(昭和八年法律第四十三号)
史跡名勝天然紀念物保存法(大正八年法律第四十四号)
国宝保存法施行令(昭和四年勅令第二百十号)
史跡名勝天然紀念物保存法施行令(大正八年勅令第四百九十九号)
国宝保存会官制(昭和四年勅令第二百十一号)
重要美術品等調査審議会令(昭和二十四年政令第二百五十一号)
史跡名勝天然記念物調査会令(昭和二十四年政令第二百五十二号)
(法令廃止に伴う経過規定)
第百十五条 この法律施行前に行つた国宝保存法第一条の規定による国宝の指定(同法第十一条第一項の規定により解除された場合を除く。)は、第二十七条第一項の規定による重要文化財の指定とみなし、同法第三条又は第四条の規定による許可は、第四十三条又は第四十四条の規定による許可とみなす。
2 この法律施行前の国宝の滅失又はき損並びにこの法律施行前に行つた国宝保存法第七条第一項の規定による命令及び同法第十五条前段の規定により交付した補助金については、同法第七条から第十条まで、第十五条後段及び第二十四条の規定は、なおその効力を有する。この場合において同法第九条第二項中「主務大臣」とあるのは、「文化財保護委員会」と読み替えるものとする。
3 この法律施行前にした行為の処罰については、国宝保存法は、第六条及び第二十三条の規定を除く外、なおその効力を有する。
4 この法律施行の際現に国宝保存法第一条の規定による国宝を所有している者は、委員会規則の定める事項を記載した書面をもつて、この法律施行後三箇月以内に委員会に届け出なければならない。
5 前項の規定による届出があつたときは、委員会は、当該所有者に第二十八条に規定する重要文化財の指定書を交付しなければならない。
6 第四項の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、五千円以下の過料に処する。
7 前項の場合には、第百十二条の規定を準用する。
8 この法律施行の際現に国宝保存法第一条の規定による国宝で国の所有に属するものを管理する各省各庁の長は、委員会規則の定める事項を記載した書面をもつて、この法律施行後三箇月以内に委員会に通知しなければならない。但し、委員会規則で定める場合は、この限りでない。
9 前項の規定による通知があつたときは、委員会は、当該各省各庁の長に第二十八条に規定する重要文化財の指定書を交付するものとする。
第百十六条 この法律施行の際現に重要美術品等の保存に関する法律第二条第一項の規定により認定されている物件については、同法は当分の間、なおその効力を有する。この場合において、同法の施行に関する事務は、委員会が行うものとし、同法中「国宝」とあるのは、「文化財保護法ノ規定ニ依ル重要文化財」と、「主務大臣」とあるのは、「文化財保護委員会」と、「国宝保存法第一条ノ規定ニ依リテ国宝トシテ指定シ」とあるのは、「文化財保護法第二十七条第一項ノ規定ニ依リテ重要文化財トシテ指定シ」と読み替えるものとする。
2 委員会事務局の保存部においては、当分の間、第十八条に規定する事務の外、重要美術品等の保存に関する法律の施行に関する事務をつかさどる。
3 文化財専門審議会においては、当分の間、委員会の諮問に応じて重要美術品等の保存に関する法律第一条の規定による輸出及び移出の許可、同法第二条の規定による認定の取消に関する事項その他重要美術品等の保存に関する重要事項を調査審議し、且つ、これらの事項に関し必要と認める事項を委員会に建議する。
4 重要美術品等の保存に関する法律の施行に関しては、当分の間、第百三条の規定を準用する。
第百十七条 この法律施行前に行つた史跡名勝天然紀念物保存法第一条第一項の規定による指定(解除された場合を除く。)は、第六十九条第一項の規定による指定、同法第一条第二項の規定による仮指定(解除された場合を除く。)は、第七十条第一項の規定による仮指定とみなし、同法第三条の規定による許可は、第八十条第一項の規定による許可とみなす。
2 この法律施行前に行つた史跡名勝天然紀念物保存法第四条第一項の規定による命令又は処分については、同法第四条及び史跡名勝天然紀念物保存法施行令第四条の規定は、なおその効力を有する。この場合において同令第四条中「文部大臣」とあるのは、「文化財保護委員会」と読み替えるものとする。
3 この法律施行前にした行為の処罰については、史跡名勝天然紀念物保存法は、なおその効力を有する。
(最初の委員の任命)
第百十八条 委員会の最初の委員の任命については、国会の閉会又は衆議院の解散の場合に限り、第九条第一項の規定にかかわらず、その後最初に召集された国会において両議院の事後の承認を得れば足りる。
2 文部大臣は、前項の規定による両議院の事後の承認が得られないときは、その委員を罷免しなければならない。
(第一回の委員会の招集)
第百十九条 この法律に基く第一回の委員会は、第十四条の規定にかかわらず、文部大臣が招集する。
(最初の委員の任期)
第百二十条 この法律により初めて任命される委員会の委員で委員長及びその職務を代理する委員以外のものの任期は、第十条第一項の規定にかかわらず、一人については一年、二人については二年とする。
2 前項の規定の適用を受ける委員の任期は、くじで定める。
(国家行政組織法の一部改正)
第百二十一条 国家行政組織法の一部を次のように改正する。
別表第一中
文部省
文部省
文化財保護委員会
に改める。
(文部省設置法の一部改正)
第百二十二条 文部省設置法(昭和二十四年法律第百四十六号)の一部を次のように改正する。
目次中「第三章 職員(第二十五条・第二十六条)」を
第三章
外局(第二十五条・第二十六条)
第四章
職員(第二十七条・第二十八条)
に改める。
第二条第一項第二号中「国宝、重要美術品、史跡名勝天然記念物その他の文化財」を「文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)に規定する文化財」に改める。
同条第三項中「出版」を「文化財保護法に規定する文化財、出版」に改める。
第十条第九号を次のように改める。
九 削除
第十三条中「国立博物館」を削る。
第十四条第一項中「国立博物館、」を削る。
第十七条を次のように改める。
第十七条 削除
第二十四条左表中国宝保存会、重要美術品等調査審議会及び史跡名勝天然記念物調査会の項を削る。
第三章を第四章とし、第二十五条を第二十七条とし、第二十六条を第二十八条とし、第二章の次に次の一章を加える。
第三章 外局
(外局の設置)
第二十五条 国家行政組織法第三条第二項の規定に基いて文部省に置かれる外局は、左の通りとする。
文化財保護委員会
(文化財保護委員会)
第二十六条 文化財保護委員会の組織、所掌事務及び権限は、文化財保護法の定めるところによる。
(行政機関職員定員法の一部改正)
第百二十三条 行政機関職員定員法(昭和二十四年法律第百二十六号)の一部を次のように改正する。
第二条第一項中
文部省
本省
六三、九八六人
うち六一、八四七人は、国立学校の職員とする
文部省
本省
六三、六一一
うち六一、八四七人は、国立学校の職員とする
文化財保護委員会
四一〇
六四、〇二一
に改める。
(従前の国立博物館)
第百二十四条 法律(これに基く命令を含む。)に特別の定のある場合を除く外、従前の国立博物館及びその職員(美術研究所及びこれに所属する職員を除く。)は、この法律に基く国立博物館及びその職員となり、従前の国立博物館附置の美術研究所及びこれに所属する職員は、この法律に基く研究所及びその職員となり、同一性をもつて存続するものとする。
2 この法律に基く研究所は、従前の国立博物館附置の美術研究所の所掌した調査研究と同一のものについては、「美術研究所」の名称を用いることができる。
(特別職の職員の給与に関する法律の一部改正)
第百二十五条 特別職の職員の給与に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十二号)の一部を次のように改正する。
第一条第十四号の二の次に次の一号を加える。
十四の三 文化財保護委員会の委員長及び委員
別表中「全国選挙管理委員会委員長」を
全国選挙管理委員会委員長
文化財保護委員会委員長
に、「中央更生保護委員会委員」を
中央更生保護委員会委員
文化財保護委員会委員
に改める。
(遺失物法の一部改正)
第百二十六条 遺失物法の一部を次のように改正する。
第十三条第二項から第四項までの規定を削る。
2 この法律施行前に国庫に帰属した埋蔵物については、前項の規定にかかわらず、なお従前の例による。
(国有財産法の一部改正)
第百二十七条 国有財産法の一部を次のように改正する。
第三条第二項第二号中「国宝」の下に「その他の重要文化財」を加える。
(屋外広告物法の一部改正)
第百二十八条 屋外広告物法(昭和二十四年法律第百八十九号)の一部を次のように改正する。
第四条第一項第三号を次のように改める。
三 文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)第二十七条の規定により指定された建造物の周囲で、当該都道府県が定める範囲内にある地域及び同法第六十九条又は第七十条の規定により指定され、又は仮指定された地域
同項第四号を削り、第五号を第四号とし、以下一号ずつ繰り上げる。
(教育委員会法の一部改正)
第百二十九条 教育委員会法(昭和二十三年法律第百七十号)の一部を次のように改正する。
第五十条第六号を次のように改める。
六 文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)及び重要美術品等の保存に関する法律(昭和八年法律第四十三号)の施行に関すること。
(富裕税法の一部改正)
第百三十条 富裕税法(昭和二十五年法律第百七十四号)の一部を次のように改正する。
第九条第一項第四号を次のように改める。
四 文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)の規定により国宝若しくは重要文化財、特別史跡若しくは史跡、特別名勝若しくは名勝又は特別天然記念物若しくは天然記念物として指定され、若しくは仮指定され、又は重要美術品等の保存に関する法律(昭和八年法律第四十三号)第二条第一項の規定により認定されたもの
内閣総理大臣 吉田茂
法務総裁 殖田俊吉
外務大臣 吉田茂
大蔵大臣 池田勇人
文部大臣 天野貞祐
厚生大臣 林譲治
農林大臣 森幸太郎
通商産業大臣 高瀬荘太郎
運輸大臣 大屋晋三
郵政大臣 小沢佐重喜
電気通信大臣 小沢佐重喜
労働大臣 鈴木正文
建設大臣 増田甲子七
経済安定本部総裁 吉田茂