第一條 建造物、寶物其ノ他ノ物件ニシテ特ニ歷史ノ證徵又ハ美術ノ模範ト爲ルベキモノハ主務大臣國寶保存會ニ諮問シ之ヲ國寶トシテ指定スルコトヲ得
第二條 主務大臣前條ノ規定ニ依ル指定ヲ爲シタルトキハ其ノ旨ヲ官報ヲ以テ告示シ且當該物件ノ所有者ニ通知ス
第三條 國寶ハ之ヲ輸出又ハ移出スルコトヲ得ズ但シ主務大臣ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第四條 國寶ノ現狀ヲ變更セントスルトキハ主務大臣ノ許可ヲ受クベシ但シ維持修理ヲ爲スハ此ノ限ニ在ラズ
第五條 主務大臣前二條ノ規定ニ依ル許可ヲ爲サントスルトキハ國寶保存會ニ諮問スベシ
第六條 國寶ノ所有者ニ付變更アリタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ所有者ヨリ主務大臣ニ屆出ヲ爲スベシ國寶滅失又ハ毀損シタルトキ亦同ジ
第七條 國寶ノ所有者ハ主務大臣ノ命令ニ依リ一年內ノ期間ヲ限リ帝室、官立又ハ公立ノ博物館又ハ美術館ニ其ノ國寶ヲ出陳スル義務アルモノトス但シ祭祀法用又ハ公務執行ノ爲必要アルトキ其ノ他已ムコトヲ得ザル事由アルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第八條 前條ノ規定ニ依リテ國寶ヲ出陳シタル者ニ對シテハ命令ノ定ムル所ニ依リ國庫ヨリ補給金ヲ交付ス
第九條 第七條ノ規定ニ依リテ出陳シタル國寶其ノ出陳中滅失又ハ毀損シタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ國庫ヨリ其ノ所有者ニ對シ通常生ズベキ損害ヲ補償ス但シ不可抗力ニ因リタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ損害補償額ハ主務大臣之ヲ決定ス其ノ決定ニ對シテ不服アル者ハ決定通知ノ日ヨリ三月內ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第十條 第七條ノ規定ニ依リテ出陳シタル國寶ニ付其ノ出陳中所有者ノ變更アリタルトキハ新所有者ハ當該國寶ニ關シ本法ニ規定スル舊所有者ノ權利義務ヲ承繼ス
第十一條 公益上其ノ他特殊ノ事由ニ依リ必要アルトキハ主務大臣國寶保存會ニ諮問シ國寶ノ指定解除ヲ爲スコトヲ得
主務大臣前項ノ規定ニ依ル指定解除ヲ爲シタルトキハ其ノ旨ヲ官報ヲ以テ告示シ且當該物件ノ所有者ニ通知ス
第十二條 神社又ハ寺院(佛堂ヲ含ム以下同ジ)ノ所有ニ屬スル國寶ハ神社ニ在リテハ神職(官國幣社ニ在リテハ宮司、府縣鄕社ニ在リテハ社司、村社以下ニ在リテハ社掌)、寺院ニ在リテハ住職(佛堂ニ在リテハ受持僧侶)之ヲ管理ス但シ主務大臣ノ許可ヲ受ケ別ニ管理者ヲ定ムルコトヲ得
第十三條 神社又ハ寺院ノ所有ニ屬スル國寶ハ之ヲ處分シ、擔保ニ供シ又ハ差押フルコトヲ得ズ但シ主務大臣ノ許可ヲ受ケ處分シ又ハ擔保ニ供スルハ此ノ限ニ在ラズ
主務大臣前項ノ規定ニ依ル許可ヲ爲サントスルトキハ國寶保存會ニ諮問スベシ
主務大臣ノ許可ヲ受ケズシテ神社又ハ寺院ノ所有ニ屬スル國寶ヲ處分シ又ハ擔保ニ供シタルトキハ之ヲ無效トス
第十四條 神社又ハ寺院其ノ所有ニ屬スル國寶ヲ維持修理スルコト能ハザルトキハ主務大臣國寶保存會ニ諮問シ之ニ對シ補助金ヲ交付スルコトヲ得
特ニ必要アルトキハ神社又ハ寺院以外ノモノノ所有ニ屬スル國寶ニ付前項ノ規定ヲ準用ス
第十五條 補助金ハ豫算額ヲ以テ之ヲ交付スルコトヲ得此ノ場合ニ於テ精算ノ上剩餘アルトキハ之ヲ還付セシムルコトヲ得
第十六條 補助金及補給金トシテ國庫ヨリ支出スベキ金額ハ每年度十五萬圓以上二十萬圓以下トス
前項ノ金額ノ外特ニ必要アルトキハ豫算ノ定ムル所ニ依リ臨時ニ補助金又ハ補給金ヲ支出スルコトヲ得
第十七條 國寶保存會ノ組織及權限ニ關スル事項ハ本法ニ規定スルモノノ外勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十八條 神社又ハ寺院ノ所有ニ屬スル國寶ノ管理ニ關スル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十九條 國ノ所有ニ屬スル國寶ニ關シテハ勅令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲スコトヲ得
第二十條 主務大臣ノ許可ナクシテ國寶ヲ輸出又ハ移出シタル者ハ五年以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十一條 國寶ヲ損壞、毀棄又ハ隱匿シタル者ハ五年以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ國寶自己ノ所有ニ係ルトキハ二年以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ二百圓以下ノ罰金若ハ科料ニ處ス
第二十二條 第四條ノ規定ニ違反シ許可ヲ受クベキ者之ヲ受ケズシテ國寶ノ現狀ヲ變更シタルトキハ五百圓以下ノ過料ニ處ス
第二十三條 第六條ノ規定ニ違反シ屆出ヲ爲サザル者ハ百圓以下ノ過料ニ處ス
第二十四條 第七條ノ規定ニ依リテ出陳シタル國寶ノ管理者又ハ神社若ハ寺院ノ所有ニ屬スル國寶ノ管理者怠慢ニ因リ其ノ管理スル國寶ヲ滅失又ハ毀損スルニ至ラシメタルトキハ五百圓以下ノ過料ニ處ス
第二十五條 非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ本法ニ規定スル過料ニ付之ヲ準用ス