(更生計画の認否)
第二百三十二條 関係人集会において更生計画案を可決したときは、裁判所は、その期日又は直ちに言い渡した期日において、計画の認否につき決定をしなければならない。
2 第百六十四條及び第百六十五條に掲げる者は、計画の認否につき意見を述べることができる。
3 計画認否の期日を定める決定は、言渡をしたときは、公告及び送達をすることを要しない。
(更生計画認可の要件)
第二百三十三條 裁判所は、左の要件を備えている場合に限り、更生計画認可の決定をすることができる。
一 更生手続又は計画が法律の規定に合致していること。
二 計画が公正、衡平であり、且つ、遂行可能であること。
四 合併を内容とする計画については、他の会社の株主総会の合併契約書承認の決議があつたこと。
五 行政庁の許可、認可、免許その他の処分を要する事項を定めた計画については、第百九十四條第二項の規定による行政庁の意見と重要な点において反していないこと。
2 更生手続が法律の規定に違反している場合でも、その違反の程度、会社の現況その他一切の事情を考慮して計画を認可しないことが不適当と認めるときは、裁判所は、計画認可の決定をすることができる。
(不同意の組のある場合の認可)
第二百三十四條 更生計画案につき関係人集会において法定の額又は数以上の議決権を有する者の同意を得られなかつた組がある場合においても、裁判所は、計画案を変更し、その組の更生債権者、更生担保権者又は株主のために、左に掲げるいずれかの方法によつてその権利を保護する條項を定めて、計画認可の決定をすることができる。
一 更生担保権者について、その担保権の目的たる財産を、その権利を存続させたまま新会社に移転し、他に譲渡し、又は会社に留保すること。
二 更生担保権者についてはその権利の目的たる財産、更生債権者についてはその債権の弁済に充てられるべき会社の財産、株主については残余財産の分配に充てられるべき会社の財産を、裁判所が定める公正な取引価額(担保権の目的たる財産については、その権利による負担がないものとして評価するものとする。)以上の価額で売却し、その売得金から売却の費用を控除した残金で弁済し、又はこれを分配し、若しくは供託すること。
三 裁判所の定めるその権利の公正な取引価額を権利者に支払うこと。
四 その他前各号に準じて公正、衡平に権利者を保護すること。
2 計画案につき、関係人集会において法定の額又は数以上の議決権を有する者の同意を得られないことが明らかな組があるときは、裁判所は、計画案作成者の申立により、あらかじめその組の更生債権者、更生担保権者又は株主のために前項に掲げるいずれかの方法によつてその権利を保護する條項を定めて、計画案を作成することを許可することができる。
3 前項の申立があつたときは、裁判所は、申立人及び同項に定める組の権利者一人以上の意見を聞かなければならない。
(更生計画認否の決定の言渡等)
第二百三十五條 更生計画認否の決定は、言い渡し、且つ、その主文、理由の要旨及び計画又はその要旨を公告しなければならない。但し、送達をすることを要しない。
2 第三十五條第一項の規定は、前項の決定があつた場合に準用する。
(更生計画の効力発生の時)
第二百三十六條 更生計画は、認可の決定の時から、効力を生ずる。
(抗告)
第二百三十七條 更生計画認否の決定に対しては、即時抗告をすることができる。但し、届出をしなかつた更生債権者、更生担保権者又は株主は、この限りでない。
2 議決権を有しなかつた更生債権者、更生担保権者又は株主が前項の抗告をするには、更生債権者、更生担保権者又は株主であることを疎明しなければならない。
3 第一項の抗告は、計画の遂行に影響を及ぼさない。但し、抗告裁判所又は更生裁判所は、抗告が法律上の理由があるとみえ、計画の遂行によつて生ずべき償うことができない損害を避けるため緊急の必要があり、且つ、事実上の点について疎明があつたときは、申立により、抗告につき決定があるまで、保証を立てさせ、又は立てさせないで、計画の全部又は一部の遂行を停止し、その他必要な処分をすることができる。
4 前三項の規定は、第八條において準用する民事訴訟法第四百十九條ノ二(特別抗告)の規定による抗告について準用する。
(更生計画不認可の決定が確定した場合)
第二百三十八條 第二百八十二條及び第二百八十三條の規定は、更生計画不認可の決定が確定した場合に準用する。
(更生債権者表等への記載)
第二百三十九條 更生計画認可の決定が確定したときは、裁判所書記官は、計画の條項を更生債権者表、更生担保権者表及び株主表に記載しなければならない。
(更生計画の効力範囲)
第二百四十條 更生計画は、会社、すべての更生債権者、更生担保権者及び株主、更生のために債務を負担し、又は担保を供する者並びに新会社(合併によつて設立される新会社を除く。)のために、且つ、それらの者に対して効力を有する。
2 計画は、更生債権者又は更生担保権者が会社の保証人その他会社とともに債務を負担する者に対して有する権利及び会社以外の者が更生債権者又は更生担保権者のために供した担保に影響を及ぼさない。
(更生債権等の免責等)
第二百四十一條 更生計画認可の決定があつたときは、計画の定又はこの法律の規定によつて認められた権利を除き、会社は、すべての更生債権及び更生担保権につきその責を免かれ、株主の権利及び会社の財産の上に存した担保権は、すべて消滅する。但し 、第百二十一條第一項第五号及び第六号に掲げる請求権については、この限りでない。
(権利の変更)
第二百四十二條 更生計画認可の決定があつたときは、更生債権者、更生担保権者及び株主の権利は、計画の定に従い変更される。
2 商法第二百八條(質権の効力)及び第二百九條第四項(株券の引渡)の規定は、株主が前項の規定による権利の変更により受けるべき金銭その他の物、株式、債権その他の権利及び株券について準用する。
(更生債権者及び更生担保権者の権利)
第二百四十三條 更生計画の定によつて更生債権者又は更生担保権者に対し権利が認められた場合には、その権利は、確定した更生債権又は更生担保権を有する者に対してのみ認められるものとする。
(届出をしない株主の権利)
第二百四十四條 更生計画の定によつて株主に対し権利が認められた場合には、その権利は、株式の届出をしなかつた者に対しても、認められるものとする。
(更生債権者表等の記載の効力)
第二百四十五條 更生計画認可の決定が確定したときは、更生債権又は更生担保権に基き計画の定によつて認められた権利については、その更生債権者表又は更生担保権者表の記載は、会社、新会社(合併によつて設立される新会社を除く。)更生債権者、更生担保権者、会社の株主及び更生のために債務を負担し、又は担保を供する者に対し、確定判決と同一の効力を有する。
2 前項に定める権利で金銭の支払その他の給付の請求を内容とするものを有する者は、更生手続終結の後、会社及び更生のために債務を負担した者に対し、更生債権者表又は更生担保権者表に基いて強制執行をすることができる。但し、民法第四百五十二條(催告の抗弁権)及び第四百五十三條(検索の抗弁権)の規定の適用を妨げない。
3 民事訴訟法第五百十六條から第五百五十八條まで(判決に基く強制執行)の規定は、前項の場合に準用する。但し、同法第五百二十一條(執行文付与の訴)、第五百四十五條(請求異議の訴)及び第五百四十六條(執行文付与に対する異議の訴)の規定による訴は、更生裁判所の管轄に専属する。
(中止中の手続の失効)
第二百四十六條 更生計画認可の決定があつたときは、第六十七條第一項の規定によつて中止した破産手続、強制執行、仮差押、仮処分及び競売法による競売手続は、その効力を失う。但し、同條第六項の規定によつて続行された手続又は処分については、この限りでない。
2 前項の規定によつて効力を失つた破産手続における財団債権(但し、破産法第四十七條第二号(国税徴収法又は国税徴収の例により徴収することのできる請求権)及び第九号(破産者及びこれに扶養される者の扶助料)に掲げるものを除く。)は、共益債権とする。
(更生計画の遂行)
第二百四十七條 更生計画認可の決定があつたときは、管財人は、すみやかに計画を遂行しなければならない。
2 計画の定によつて新会社を設立するときは、発起人又は設立委員の職務は、管財人が行う。
(更生計画遂行に関する裁判所の命令)
第二百四十八條 裁判所は、第二百四十條第一項に掲げる者及び管財人に対し、更生計画の遂行に関し必要な命令をすることができる。
2 裁判所は、計画の遂行を確実ならしめるため必要があると認めるときは、計画の定又はこの法律の規定により債権を有する者又は異議のある更生債権若しくは更生担保権でその確定手続の落着しないものを有する者のために、相当な担保を供させることができる。
3 民事訴訟法第百十二條(担保提供の方法)、第百十三條(担保物に対する被告の権利)、第百十五條(担保の取消)及び第百十六條(担保物の交換)の規定は、前項の規定による担保について準用する。
(株主総会の決議等に関する法令の規定等の排除)
第二百四十九條 更生計画の遂行については、法令又は定款の規定にかかわらず、会社の創立総会、株主総会(ある種類の株主の総会を含む。)又は取締役会の決議を要しない。
(営業の譲渡等に関する商法の規定の特例)
第二百五十條 第二百十七條の規定により更生計画において会社の営業若しくは財産の全部若しくは一部を譲渡し、出資し、若しくは賃貸し、会社の事業の経営の全部若しくは一部を委任し、他人と営業上の損益を共通にする契約その他これに準ずべき契約を締結し、変更し、若しくは解約し、又は他人の営業若しくは財産の全部若しくは一部を譲り受けることを定めたときは、計画の定によつてこれらの行為をすることができる。
2 前項の場合においては、商法第二百四十五條ノ二から第二百四十五條ノ四まで(反対株主の株式買取請求)の規定は、適用しない。
(定款の変更に関する商法の規定の特例)
第二百五十一條 第二百十九條の規定により更生計画において会社の定款を変更することを定めたときは、定款は、計画認可の決定の時に計画の定によつて変更される。
(取締役等の変更に関する商法の規定の特例)
第二百五十二條 第二百二十條の規定により更生計画において取締役若しくは監査役の選任又は代表取締役の選定を定めたときは、これらの者は、計画認可の決定の時に選任又は選定されるものとする。
2 第二百二十條の規定により計画において取締役若しくは監査役の選任又は代表取締役の選定の方法を定めたときは、これらの者の選任又は選定は、計画に定める方法によつてすることができる。この場合においては、商法第二百五十四條第一項(同法第二百八十條において準用する場合を含む。)(取締役、監査役の選任)及び第二百六十一條第一項(代表取締役の選定)の規定は、適用しない。
3 会社の取締役、代表取締役又は監査役で、計画において留任することを定められなかつた者は、計画認可の決定の時に解任されるものとする。
4 第一項及び第二項の規定により選任され、若しくは選定され、又は計画の定によつて留任した取締役、代表取締役又は監査役の任期及び代表取締役の代表の方法は、計画に定めるところによる。
(資本の減少に関する商法等の規定の特例)
第二百五十三條 第二百二十一條の規定により更生計画において資本の減少を定めたときは、計画の定によつて資本を減少することができる。
2 前項の場合においては、商法第二百十二條第二項(株式消却の手続)、第三百七十六條第二項、第三項(資本減少の手続)及び第三百八十條(資本減少無効の訴)の規定は、適用せず、同法第三百七十九條第一項但書(競売以外の方法による端株の売却の許可)に定めた事件は、更生裁判所の管轄とする。
3 第一項の場合においては、会社の資本減少による変更の登記の申請書には、計画認可の決定書の謄本又は抄本を添附しなければならない。
(新株の発行に関する商法等の規定の特例)
第二百五十四條 第二百二十二條第一項の規定により更生計画において会社が更生債権者、更生担保権者又は株主に対し、あらたに払込又は現物出資をさせないで新株を発行することを定めたときは、これらの権利者は、計画認可の決定の時に株主となる。
2 前項の場合においては、新株引受権に関する定款の定に拘束されない。
3 商法第三百七十七條から第三百七十九條まで(株式併合)の規定は、株主に対し割り当てる株式に端数を生ずる場合に準用する。この場合においては、同法第三百七十九條第一項但書に定めた事件は、更生裁判所の管轄とし、非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第百三十二條ノ三(競売以外の方法による端株の売却の許可の申請)の規定を準用する。
第二百五十五條 第二百二十二條第二項又は第三項の規定により、更生計画において会社が新株を発行することを定めたときは、計画の定によつて新株を発行することができる。
2 前項の場合においては、商法第二百八十條ノ三(発行條件の均等)、第二百八十條ノ八(現物出資の検査)、第二百八十條ノ十(発行の差止)、第二百八十條ノ十一(不公正な価額で株式を引き受けた者の責任)、第二百八十條ノ十三(取締役の引受担保責任)及び第二百八十條ノ十五から第二百八十條ノ十八まで(新株発行無効の訴)の規定は、適用しない。
3 第一項の場合においては、新株引受権に関する定款の定に拘束されず、商法第二百八十條ノ十四(新株発行の場合における設立に関する規定の準用)において準用する同法第百七十八條(払込取扱銀行等の変更)に定めた事件は、更生裁判所の管轄とする。
4 第一項の場合においては、商法第二百八十條ノ五(新株引受権の行使)の規定を準用する。この場合において、同條第二項中「株券」とあるのは、「株券又ハ社債券」と読み替えるものとする。
5 更生債権者、更生担保権者又は株主に対し、あらたに払込又は現物出資をさせて新株を発行するときは、これらの権利者は、計画に定める金額を払い込み、又は計画に定める現物出資をすれば足りる。
6 前條第三項の規定は、株主に対しあらたに払込又は現物出資をさせて割り当てる株式に端数を生ずる場合に準用する。但し、この場合においては、従前の株主に交付すべき代金から、端株につき払い込むべき金額又は給付すべき現物出資に相当する金額を控除しなければならない。
7 第一項の場合においては、会社の新株発行による変更の登記の嘱託書又は申請書には、計画認可の決定書の謄本又は抄本の外、株式の申込及び引受を証する書面並びに払込を取り扱つた銀行又は信託会社の払込金の保管に関する証明書を添附しなければならない。
(社債の発行に関する商法等の規定の特例)
第二百五十六條 第二百二十三條の規定により更生計画において会社が更生債権者、更生担保権者又は株主に対し、あらたに払込をさせないで社債を発行することを定めたときは、これらの権利者は、計画認可の決定の時に社債権者となる。
2 前項の場合においては、商法第二百九十八條(未払込社債のある場合の社債募集の制限)の規定は、適用しない。
3 第一項の場合においては、計画の定によつて更生債権者又は更生担保権者に対して発行する社債の額は、商法第二百九十七條(社債総額の制限)の規定の適用については、これを社債の総額に算入しない。
4 第一項の場合においては、社債の登記の嘱託書には、計画認可の決定書の謄本又は抄本の外、名義書換代理人を置いたときは、これを証する書面を添附しなければならない。
5 第一項の場合において、その社債が担保附社債であるときは、前項の嘱託書には、同項に掲げる書面の外、信託証書及び担保附社債信託法第十九條ノ四第一項(社債の総額を数回に分けて発行する場合の信託契約の方式)の契約証書があるときは、その証書を添附しなければならない。
第二百五十七條 前條に定める場合を除き、第二百二十三條の規定により更生計画において会社が社債を発行することを定めたときは、計画の定によつて社債を発行することができる。
2 更生債権者、更生担保権者又は株主に対し、あらたに払込をさせて社債を発行するときは、これらの権利者は、計画に定める金額を払い込めば足りる。
3 第二百五十五條第四項並びに前條第二項及び第三項の規定は、第一項の場合に準用する。
4 第一項の場合においては、社債の登記の嘱託書又は申請書には、計画認可の決定書の謄本又は抄本の外、社債の申込及び引受を証する書面、各社債につき払込のあつたことを証する書面並びに社債募集の委託を受けた会社があるときは、その委託を証する書面及び名義書換代理人を置いたときは、これを証する書面を添附しなければならない。
5 第一項の場合において、その社債が担保附社債であるときは、前項の嘱託書又は申請書には、同項に掲げる書面の外、信託証書及び担保附社債信託法第十九條ノ四第一項の契約証書があるときは、その証書を添附しなければならない。
(合併に関する商法等の規定の特例)
第二百五十八條 第二百二十四條又は第二百二十五條の規定により更生計画において会社が他の会社と合併することを定めたときは、計画の定によつて合併をすることができる。
2 前項の場合においては、合併後存続する会社又は合併により設立される新会社の株式の割当を受けた更生債権者又は更生担保権者は、計画認可の決定の時に株式引受人となり、合併の効力が生じた時に株主となる。
3 第一項の場合においては、商法第四百八條ノ二(反対株主の株式買取請求)及び第四百十五條(合併無効の訴の提起権者)の規定は、適用せず、同法第四百十六條第三項(合併の場合における株式併合に関する規定の準用)において準用する同法第三百七十九條第一項但書に定めた事件は、更生裁判所の管轄とする。
4 第一項の場合においては、商法第四百十六條第一項及び第二項(合名会社の合併等に関する規定の準用)の規定にかかわらず、同法第九十九條(財産目録及び貸借対照表の作成)、第百條(債権者保護の手続)、第百四條第一項、第三項(合併無効の訴)、第百五條(合併無効の訴の手続)、第百六條(債権者に対する担保提供の命令)、第百八條から第百十一條まで(合併無効の登記、判決の第三者に対する効力、判決の効果の不遡及、合併後の債務弁済の責任及び財産の帰属)及び第三百七十六條第三項(社債権者の異議)の規定は、準用しない。
5 前四項の規定は、合併の相手方たる他の会社に対する商法の規定の適用を妨げない。
6 第二百五十六條の規定は、第二百二十四條第五号又は第二百二十五條第七号の規定により株主に社債を割り当てた場合に準用する。この場合においては、株主は、合併の効力を生じた時に社債権者となる。
7 第一項の場合においては、合併による会社の解散又は変更の登記の嘱託書又は申請書には、計画認可の決定書の謄本又は抄本の外、合併契約書及び非訟事件手続法第百九十三條ノ二第二項(合併による社債承継に関する登記)に掲げた書面を添附しなければならない。
8 第一項の場合においては、合併による設立の登記の嘱託書又は申請書には、計画認可の決定書の謄本又は抄本の外、合併契約書、定款、創立総会の議事録、代表取締役に関する取締役会の議事録、合併の相手方たる他の会社の選任した設立委員の資格を証する書面及び非訟事件手続法第百九十三條ノ三第二項(合併による社債承継に関する登記の規定の準用)において準用する同法第百九十三條ノ二第二項に掲げた書面を添附しなければならない。
(新会社の設立に関する商法等の規定の特例)
第二百五十九條 第二百二十六條の規定により更生計画において更生債権者、更生担保権者又は株主に対し、あらたに払込又は現物出資をさせないで株式を引き受けさせることによつて新会社を設立することを定めたときは、新会社は、定款を作成し、更生裁判所の認証を得た後設立の登記をした時に成立する。
2 前項の場合においては、新会社成立の時において、計画の定により新会社に移転すべき会社の財産は、新会社に移転し、新会社の株式又は社債の割当を受けた更生債権者、更生担保権者又は株主は、株主又は社債権者となる。
3 第二百五十二條第一項、第二項、第四項、第二百五十四條第三項、第二百五十六條第三項から第五項まで及び第二百五十七條の規定は、前二項の場合に準用する。
4 第一項の場合においては、新会社の設立の登記の嘱託書には、計画認可の決定書の謄本又は抄本の外、定款並びに計画において取締役若しくは監査役の選任又は代表取締役の選定の方法を定めたときは、その選任又は選定に関する書類及び名義書換代理人又は登録機関を置いたときは、これを証する書面を添附しなければならない。
第二百六十條 前條に定める場合を除き、第二百二十六條の規定により更生計画において合併によらないで新会社を設立することを定めたときは、計画の定によつて新会社を設立することができる。
2 前項の場合においては、商法第百六十五條(発起人の員数)、第百六十七條(定款の認証)、第百六十八條ノ二(設立に際しての株式発行事項の決定)、第百六十九條(発起人の株式引受)、第百七十條(発起設立における払込及び役員の選任)、第百七十三條(検査役の調査及び裁判所の処分)、第百七十五條第二項第九号(発起人の株式引受に関する株式申込証の記載)、第百八十一條(検査役の調査)、第百八十三條(創立総会における取締役及び監査役の選任)、第百八十四條第二項、第三項(設立手続の調査及び報告)、第百八十五條(変態設立事項の変更)、第百八十六條(発起人に対する損害賠償の請求)、第百九十二條(発起人の株式引受及び払込担保責任)、第百九十三條(発起人の損害賠償責任)、第百九十五條(取締役等の連帯責任)、第百九十六條(発起人に対する責任の免除、株主の代表訴訟)、第百九十八條(擬似発起人の責任)及び第四百二十八條(設立無効の訴)の規定は、適用しない。
3 第一項の場合においては、定款は、更生裁判所の認証を受けるものとし、商法第百七十八條に定めた事件は、更生裁判所の管轄とし、創立総会においては計画の趣旨に反して定款を変更することができず、同法第百九十四條(会社不成立の場合の発起人の責任)に定める発起人の責任は、会社において負うものとする。
4 第一項の場合において、更生債権者、更生担保権者又は株主に対し、あらたに払込若しくは現物出資をさせないで株式を引き受けさせ、又はあらたに払込をさせないで社債を引き受けさせるときは、これらの権利者は、新会社成立の時に株主又は社債権者となる。
5 第一項の場合において、更生債権者、更生担保権者又は株主に対し、あらたに払込若しくは現物出資をさせて株式を引き受けさせるときは、これらの者に対し発行すべき株式のうち引受のない株式については、商法第百六十六條第二項(会社の設立に際して発行すべき株式の総数)の規定に反しない限り、さらに株主を募集せず、その株式数を新会社の設立に際して発行する株式の総数から控除することができる。
6 第二百五十二條第一項、第二項、第四項、第二百五十四條第三項、第二百五十五條第四項から第六項まで、第二百五十六條第三項から第五項まで及び第二百五十七條の規定は、前五項の場合に準用する。
7 第一項の場合においては、新会社の設立の登記の嘱託書又は申請書には、前條第四項に掲げる書類の外、株式の申込及び引受を証する書面、取締役及び監査役の調査報告書及びその附属書類、創立総会の議事録並びに払込を取り扱つた銀行又は信託会社の払込金の保管に関する証明書を添附しなければならない。
(解散に関する商法等の規定の特例)
第二百六十一條 第二百二十七條の規定により更生計画において会社が合併によらないで解散することを定めたときは、会社は、計画に定める時期に解散する。
2 前項の場合においては、解散の登記の申請書には、計画認可の決定書の騰本又は抄本を添附しなければならない。
(新株主等の失権)
第二百六十二條 更生債権者、更生担保権者又は株主が第二百五十四條第一項、第二百五十六條第一項、第二百五十八條第二項、第六項、第二百五十九條第二項又は第二百六十條第四項の規定により、あらたに会社又は新会社の株主又は社債権者となつたときは、第二百五十四條第三項(第二百五十九條第三項及び第二百六十條第六項において準用する場合を含む。)又は商法第四百十六條第三項の規定により株券の提出のあつた場合を除き、会社又は新会社は、遅滞なくその者に対し、株券又は債券の交付を請求すべき旨及び株主又は社債権者となつた後三年内にこれを請求しないときは、その権利を失うべき旨を公告し、且つ、知れたる権利者には各別にその旨を通知しなければならない。
2 株主又は社債権者であつた者が前項の請求をするには、従前の株券又は債券を会社又は新会社に提出しなければならない。
3 従前の株券又は債券は、公示催告の手続によつて、無効とすることができる。この場合においては、除権判決を得た者については、前項の規定を適用しない。
4 会社又は新会社が第一項の公告をしても同項の期間内に株券又は債券の交付を請求しないときは、同項に定める株主又は社債権者は、その権利を失う。
5 前項の規定により株主がその権利を失つたときは、会社又は新会社は、商法第二百十條(自己株式の取得の禁止)の規定にかかわらず、その株式を取得することができる。この場合においては、会社又は新会社は、相当の時期にその株式を処分しなければならない。
第二百六十三條 株主又は社債権者であつた者が前條第一項の期間内に従前の株券又は債券を提出できない場合において、同期間内にその者の請求があり、且つ、その期間内に他にこれを請求する者がないときは、会社又は新会社は、同條の規定にかかわらず、その請求者に対し、株券又は債券を交付することができる。
(株式等の引受権の譲渡)
第二百六十四條 更生債権者、更生担保権者又は株主は、更生計画の定によつて会社又は新会社の株式又は社債を引き受ける権利を有するときは、これを他に譲渡することができる。
(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の特例)
第二百六十五條 更生債権者、更生担保権者又は株主が更生計画の定によつて会社又は新会社の株式を取得する場合には、その取得は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)第十一條(金融会社の株式保有の制限)の規定の適用については、これを代物弁済による取得とみなす。
(証券取引法の特例)
第二百六十六條 更生計画の定によつて更生債権者、更生担保権者又は株主に対して会社又は新会社の株式又は社債を発行する場合には、証券取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第四條第一項(有価証券の募集又は売出に関する届出)の規定は、適用しない。
(財団に関する処分の制限の特例)
第二百六十七條 更生計画の定によつて、会社の財産を処分する場合には、工場財団その他の財団又は財団に属する財産の処分の制限に関する法令の規定は、適用しない。
(許可、認可等に基く権利の承継)
第二百六十八條 更生計画において会社が行政庁から得ていた許可、認可、免許その他の処分に基く権利義務を新会社に移転することを定めたときは、新会社は、他の法令の規定にかかわらず、その権利義務を承継する。
(法人税法等の特例)
第二百六十九條 更生計画において新会社が会社の租税債務を承継することを定めたときは、新会社は、その租税を納める義務を負い、会社の租税債務は、消滅する。
2 更生手続開始の決定があつたときは、会社の事業年度は、その開始の時に終了し、これに続く事業年度は、計画認可の時又は更生手続終了の日に終了するものとする。但し、法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)第七條第三項(事業年度の期間が一年をこえる場合)の規定の適用を妨げない。
3 更生手続による会社の財産の評価換及び債務の消滅による益金で、更生手続開始の時までの各事業年度の法人税額(利子税額を除く。)と更生手続開始前から繰りこされた損金(法人税法第九條第五項(青色申告書を提出した場合の繰越損金の損金への算入)の規定の適用を受ける損金を除く。)の額との合計額から更生手続開始の時における法人税法第十六條第一項(積立金額)に定める積立金額と法人税(利子税額及び延滞加算税額を除く。)の引当金との合計額を控除した金額に達するまでの金額は、当該財産の評価換又は債務の消滅のあつた各事業年度の同法による所得の計算上益金に算入しない。
4 更生手続開始の時に続く会社の事業年度の法人税及び附加価値税については、法人税法第十九條(中間申告)及び地方税法第三十六條(法人の附加価値税の概算納付又は概算申告納付)の規定は、適用しない。
5 第十七條第一項、第二項、第三項前段、第十八條第一項、第十九條、第二十條第二項から第四項まで及び第二十一條(第二十二條においてこれらの規定を準用する場合を含む。)の規定による登記については、登録税を課さない。
6 計画において合併によらないで新会社を設立することを定めた場合においては、更生債権者、更生担保権者又は株主に対しあらたに払込又は現物出資をさせないで株式を発行する部分の資本の金額についての登録税の額は、登録税法(明治二十九年法律第二十七号)第六條(営利法人の登記の税率)の規定にかかわらず、その金額の千分の一・五とし、計画において新会社が会社の不動産又は船舶に関する権利を取得することを定めた場合においては、その登録税の額は、同法第二條(不動産の登記の税率)及び第三條(船舶の登記の税率)の規定にかかわらず、不動産又は船舶の価格の千分の四とする。但し、同法の規定により計算した登録税の額がこれらの額より少いときは、その額による。
(退職手当)
第二百七十條 更生手続開始後会社の取締役、代表取締役、監査役又は使用人であつた者で、引き続き新会社の取締役、代表取締役、監査役又は使用人となつたものは、会社から退職したことを理由として退職手当の支給を受けることができない。
2 前項に定める者の更生手続開始後の会社における在職期間は、退職手当の計算については、新会社における在職期間とみなす。
(更生計画の変更)
第二百七十一條 更生計画認可の決定があつた後やむを得ない事由で計画に定める事項を変更する必要が生じたときは、更生手続終了前に限り、裁判所は、管財人、会社又は届出をした更生債権者、更生担保権者若しくは株主の申立により、計画を変更することができる。
2 前項の規定により更生債権者、更生担保権者又は株主に不利な影響を及ぼすものと認められる計画の変更の申立があつた場合には、更生計画案の提出があつた場合の手続に関する規定を準用する。但し、計画の変更によつて不利な影響を受けない権利者は、手続に参加させることを要せず、また、従前の計画に同意した者で変更計画案について決議をするための関係人集会に出席しないものは、変更計画案に同意したものとみなす。
3 第二百三十六條及び第二百三十七條の規定は、計画変更の決定があつた場合に準用する。
(更生手続の終結)
第二百七十二條 更生計画が遂行されたとき、又は計画が遂行されることが確実であると認めるに至つたときは、裁判所は、管財人の申立により又は職権で、更生手続終結の決定をし、且つ、その主文及び理由の要旨を公告しなければならない。但し、送達をすることを要しない。
2 第三十五條第一項の規定は、前項の決定があつた場合に準用する。