(目的)
第一条 この法律は、窮境にある株式会社について、更生計画の策定及びその遂行に関する手続を定めること等により、債権者、株主その他の利害関係人の利害を適切に調整し、もって当該株式会社の事業の維持更生を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「更生手続」とは、株式会社について、この法律の定めるところにより、更生計画を定め、更生計画が定められた場合にこれを遂行する手続(更生手続開始の申立てについて更生手続開始の決定をするかどうかに関する審理及び裁判をする手続を含む。)をいう。
2 この法律において「更生計画」とは、更生債権者等又は株主等の権利の全部又は一部を変更する条項その他の第百六十七条に規定する条項を定めた計画をいう。
3 この法律において「更生事件」とは、更生手続に係る事件をいう。
4 この法律において「更生裁判所」とは、更生事件が係属している地方裁判所をいう。
5 この法律(第六条、第四十一条第一項第二号、第百五十五条第二項及び第百五十九条を除く。)において「裁判所」とは、更生事件を取り扱う一人の裁判官又は裁判官の合議体をいう。
6 この法律において「開始前会社」とは、更生裁判所に更生事件が係属している株式会社であって、更生手続開始の決定がされていないものをいう。
7 この法律において「更生会社」とは、更生裁判所に更生事件が係属している株式会社であって、更生手続開始の決定がされたものをいう。
8 この法律において「更生債権」とは、更生会社に対し更生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権又は次に掲げる権利であって、更生担保権又は共益債権に該当しないものをいう。
二 更生手続開始後の不履行による損害賠償又は違約金の請求権
四 第五十八条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)に規定する債権
五 第六十一条第一項の規定により双務契約が解除された場合における相手方の損害賠償の請求権
六 第六十三条において準用する破産法(大正十一年法律第七十一号)第六十三条の規定による損害賠償の請求権
七 第六十三条において準用する破産法第六十六条第一項の規定による請求権(更生会社の有するものを除く。)
9 この法律において「更生債権者」とは、更生債権を有する者をいう。
10 この法律において「更生担保権」とは、更生手続開始当時更生会社の財産につき存する担保権(特別の先取特権、質権、抵当権及び商法(明治三十二年法律第四十八号)の規定による留置権に限る。)の被担保債権であって更生手続開始前の原因に基づいて生じたもの又は第八項各号に掲げるもの(共益債権であるものを除く。)のうち、当該担保権の目的である財産の価額が更生手続開始の時における時価であるとした場合における当該担保権によって担保された範囲のものをいう。ただし、当該被担保債権(社債を除く。)のうち利息又は不履行による損害賠償若しくは違約金の請求権の部分については、更生手続開始後一年を経過する時(その時までに更生計画認可の決定があるときは、当該決定の時)までに生ずるものに限る。
11 この法律において「更生担保権者」とは、更生担保権を有する者をいう。
12 この法律において「更生債権等」とは、更生債権又は更生担保権をいう。ただし、第二章第二節においては、開始前会社について更生手続開始の決定がされたとすれば更生債権又は更生担保権となるものをいう。
13 この法律において「更生債権者等」とは、更生債権者又は更生担保権者をいう。ただし、第二章第二節においては、開始前会社について更生手続開始の決定がされたとすれば更生債権者又は更生担保権者となるものをいう。
14 この法律において「株主等」とは、株主又は端株主をいう。
15 この法律において「更生会社財産」とは、更生会社に属する一切の財産をいう。
16 この法律において「租税等の請求権」とは、国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)又は国税徴収の例によって徴収することのできる請求権であって、共益債権に該当しないものをいう。
(外国人の地位)
第三条 外国人又は外国法人は、更生手続に関し日本人又は日本法人と同一の地位を有する。
(更生事件の管轄)
第四条 この法律の規定による更生手続開始の申立ては、株式会社が日本国内に営業所を有するときに限り、することができる。
第五条 更生事件は、株式会社の主たる営業所の所在地(外国に主たる営業所がある場合にあっては、日本における主たる営業所の所在地)を管轄する地方裁判所が管轄する。
2 前項の規定にかかわらず、更生手続開始の申立ては、次に掲げる地方裁判所にもすることができる。
二 株式会社が商法第二百十一条ノ二第一項に規定する親会社に該当する場合における同項に規定する子会社(同条第三項の規定により子会社とみなされるものを含む。)である株式会社についての更生事件が係属する地方裁判所
三 株式会社が商法第二百十一条ノ二第一項に規定する子会社(同条第三項の規定により子会社とみなされるものを含む。)に該当する場合における同条第一項に規定する親会社についての更生事件が係属する地方裁判所
四 株式会社が株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(昭和四十九年法律第二十二号。以下「商法特例法」という。)第一条の二第一項に規定する大会社に該当する場合における同条第四項に規定する連結子会社(当該株式会社の直前の決算期において商法特例法第十九条の二又は第二十一条の三十二の規定により当該連結子会社に係る連結計算書類が作成され、かつ、定時総会において当該連結計算書類が報告されたものに限る。)についての更生事件が係属する地方裁判所
五 株式会社が商法特例法第一条の二第四項に規定する連結子会社に該当する場合における同項に規定する他の株式会社(当該他の株式会社の直前の決算期において商法特例法第十九条の二又は第二十一条の三十二の規定により当該連結子会社に係る連結計算書類が作成され、かつ、定時総会において当該連結計算書類が報告されたものに限る。)についての更生事件が係属する地方裁判所
3 前二項の規定により二以上の地方裁判所が管轄権を有するときは、更生事件は、先に更生手続開始の申立てがあった地方裁判所が管轄する。
(専属管轄)
第六条 この法律に規定する裁判所の管轄は、専属とする。
(更生事件の移送)
第七条 裁判所は、著しい損害又は遅滞を避けるため必要があると認めるときは、職権で、更生事件を次に掲げる地方裁判所のいずれかに移送することができる。
一 更生手続開始の申立てに係る株式会社の営業所の所在地を管轄する地方裁判所
二 前号の株式会社の財産の所在地(債権については、裁判上の請求をすることができる地)を管轄する地方裁判所
(任意的口頭弁論等)
第八条 更生手続に関する裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。
2 裁判所は、職権で、更生事件に関して必要な調査をすることができる。
3 裁判所は、必要があると認めるときは、開始前会社又は更生会社の事業を所管する行政庁及び租税等の請求権につき徴収の権限を有する者に対して、当該開始前会社又は当該更生会社の更生手続について意見の陳述を求めることができる。
4 前項に規定する行政庁又は徴収の権限を有する者は、裁判所に対して、同項に規定する開始前会社又は更生会社の更生手続について意見を述べることができる。
(不服申立て)
第九条 更生手続に関する裁判につき利害関係を有する者は、この法律に特別の定めがある場合に限り、当該裁判に対し即時抗告をすることができる。その期間は、裁判の公告があった場合には、その公告が効力を生じた日から起算して二週間とする。
(公告等)
第十条 この法律の規定による公告は、官報に掲載してする。
2 公告は、掲載があった日の翌日に、その効力を生ずる。
3 この法律の規定によって送達をしなければならない場合には、公告をもって、これに代えることができる。ただし、この法律の規定によって公告及び送達をしなければならない場合は、この限りでない。
4 この法律の規定により裁判の公告がされたときは、一切の関係人に対して当該裁判の告知があったものとみなす。
5 前二項の規定は、この法律に特別の定めがある場合には、適用しない。
(更生手続の終了に伴う破産宣告等)
第十一条 破産宣告前の株式会社について第二百三十四条第一号から第四号までに掲げる事由が生じた場合において、裁判所は、当該株式会社に破産の原因となる事実があると認めるときは、職権で、破産法に従い、破産の宣告をすることができる。ただし、当該株式会社について再生事件が係属している場合は、この限りでない。
2 前項本文の規定による破産の宣告があった場合における破産法第七十二条第二号から第五号まで、第七十三条第二項、第七十四条第一項並びに第百四条第二号及び第四号の規定の適用については、次に掲げる裁判又は行為は、当該裁判又は当該行為の前に支払の停止又は破産の申立てがないときに限り、支払の停止又は破産の申立てとみなす。
二 更生手続開始によって効力を失った整理又は特別清算の手続におけるその手続開始の命令
三 更生計画認可の決定により効力を失った再生手続におけるその手続開始の決定
四 詐欺破産の罪に該当することとなる当該株式会社の取締役、執行役又はこれらに準ずる者の行為
3 破産宣告後の株式会社について更生計画認可の決定により破産手続が効力を失った後に第二百四十一条第一項の規定による更生手続廃止の決定が確定した場合には、裁判所は、職権で、破産法に従い、破産の宣告をしなければならない。この場合における同法第七十二条第二号から第五号まで、第七十三条第二項、第七十四条第一項並びに第百四条第二号及び第四号の規定の適用については、更生計画認可の決定によって効力を失った破産手続における破産の申立ての時に破産の申立てがあったものとみなす。
4 第一項本文及び前項の規定により破産の宣告がされた場合には、共益債権(更生手続が開始されなかった場合における第六十二条第二項並びに第百二十八条第一項及び第四項に規定する請求権を含む。次項及び第十三条において同じ。)は、財団債権とする。
5 破産宣告後の株式会社について第二百三十四条第一号から第三号までに掲げる事由の発生又は第二百三十六条若しくは第二百三十七条第一項の規定による更生手続廃止の決定の確定によって破産手続が続行された場合も、共益債権は、財団債権とする。
(破産宣告前の保全処分)
第十二条 裁判所は、次に掲げる場合において、必要があると認めるときは、職権で、破産法第百五十五条第一項に規定する保全処分を命ずることができる。
一 破産宣告前の株式会社につき更生手続開始の申立ての棄却の決定があった場合
二 破産宣告前の更生会社につき更生手続廃止又は更生計画不認可の決定が確定した場合
三 破産宣告後の更生会社につき更生計画認可の決定により破産手続が効力を失った後に第二百四十一条第一項の規定による更生手続廃止の決定が確定した場合
2 裁判所は、前項第一号又は第二号の規定による保全処分を命じた場合において、前条第一項本文の規定による破産の宣告をしないこととしたときは、遅滞なく、当該保全処分を取り消さなければならない。
3 第一項第一号の規定による保全処分は、同号に規定する決定を取り消す決定があったときは、その効力を失う。
4 破産法第百十二条前段の規定にかかわらず、第二項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。
(更生手続の終了に伴い再生手続が続行された場合の取扱い)
第十三条 株式会社について再生事件が係属している場合において、第二百三十四条第一号から第三号までに掲げる事由の発生又は第二百三十六条若しくは第二百三十七条第一項の規定による更生手続廃止の決定の確定によって再生手続が続行されたときは、共益債権は、再生手続における共益債権とする。
(事件に関する文書の閲覧等)
第十四条 利害関係人は、裁判所書記官に対し、この法律(この法律において準用する他の法律を含む。)の規定に基づき、裁判所に提出され、又は裁判所が作成した文書その他の物件(以下この条及び次条において「文書等」という。)の閲覧を請求することができる。
2 利害関係人は、裁判所書記官に対し、文書等の謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。
3 前項の規定は、文書等のうち録音テープ又はビデオテープ(これらに準ずる方法により一定の事項を記録した物を含む。)に関しては、適用しない。この場合において、これらの物について利害関係人の請求があるときは、裁判所書記官は、その複製を許さなければならない。
4 前三項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる者は、当該各号に定める裁判のいずれかがあるまでの間は、前三項の規定による請求をすることができない。ただし、当該者が更生手続開始の申立人である場合は、この限りでない。
一 開始前会社以外の利害関係人 第二十四条第一項若しくは第二項の規定による中止の命令、第二十五条第二項に規定する包括的禁止命令、第二十八条第一項の規定による保全処分、第二十九条第三項の規定による許可、第三十条第二項に規定する保全管理命令、第三十五条第二項に規定する監督命令又は更生手続開始の申立てについての裁判
二 開始前会社 更生手続開始の申立てに関する口頭弁論若しくは開始前会社を呼び出す審尋の期日の指定又は前号に定める裁判
(支障部分の閲覧等の制限)
第十五条 次に掲げる文書等について、利害関係人がその閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又はその複製(以下この条において「閲覧等」という。)を行うことにより、更生会社(開始前会社及び開始前会社又は更生会社であった株式会社を含む。以下この条において同じ。)の事業の維持更生に著しい支障を生ずるおそれ又は更生会社の財産に著しい損害を与えるおそれがある部分(以下この条において「支障部分」という。)があることにつき疎明があった場合には、裁判所は、当該文書等を提出した保全管理人、管財人又は調査委員の申立てにより、支障部分の閲覧等の請求をすることができる者を、当該申立てをした者及び更生会社(管財人又は保全管理人が選任されている場合にあっては、管財人又は保全管理人。次項において同じ。)に限ることができる。
一 第三十二条第一項ただし書、第四十六条第二項前段又は第七十二条第二項(第三十二条第三項において準用する場合を含む。)の許可を得るために裁判所に提出された文書等
二 第八十四条第二項の規定による報告又は第百二十五条第二項に規定する調査若しくは意見陳述に係る文書等
2 前項の申立てがあったときは、その申立てについての裁判が確定するまで、利害関係人(同項の申立てをした者及び更生会社を除く。次項において同じ。)は、支障部分の閲覧等の請求をすることができない。
3 支障部分の閲覧等の請求をしようとする利害関係人は、更生裁判所に対し、第一項に規定する要件を欠くこと又はこれを欠くに至ったことを理由として、同項の規定による決定の取消しの申立てをすることができる。
4 第一項の申立てを却下した決定及び前項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
5 第一項の規定による決定を取り消す決定は、確定しなければその効力を生じない。
(民事訴訟法の準用)
第十六条 更生手続に関しては、特別の定めがある場合を除き、民事訴訟法(平成八年法律第百九号)の規定を準用する。