(不動産競売の開始決定前の保全処分)
第百八十七条の二 不動産競売の開始決定がされる前に、債務者又は担保権の目的である不動産の所有者若しくは占有者が不動産の価格を著しく減少する行為又はそのおそれがある行為(以下この項及び次項において「価格減少行為等」という。)をする場合において、特に必要があるときは、執行裁判所は、その不動産につき担保権を実行しようとする者(次項において「担保権実行者」という。)の申立てにより、担保を立てさせ、又は立てさせないで、その行為をする者に対し、その不動産についての民事執行の売却の手続において買受人が代金を納付するまでの間、価格減少行為等を禁止し、又は一定の行為を命ずることができる。
2 不動産競売の開始決定がされる前に、担保権の目的である不動産を占有する債務者若しくは所有者又はその不動産の占有者でその占有の権原を担保権実行者に対抗することができないものが、前項の規定による命令に違反したとき、又は価格減少行為等をする場合において同項の規定による命令によつては不動産の価格の著しい減少を防止することができないと認めるべき特別の事情があるときは、執行裁判所は、担保権実行者の申立てにより、担保を立てさせて、その命令に違反した者又はその行為をする者に対し、その不動産についての民事執行の売却の手続において買受人が代金を納付するまでの間、不動産に対する占有を解いて執行官に保管させるべきことを命ずることができる。
3 前二項の申立てをするには、第百八十一条第一項から第三項までに規定する文書を提示しなければならない。
4 申立人が、第一項又は第二項の規定による決定の告知を受けた日から三月以内に、当該担保権の実行としての不動産競売の申立てをしたことを証する文書を提出しないときは、執行裁判所は、相手方又は当該担保権の目的である不動産の所有者の申立てにより、その決定を取り消さなければならない。
5 第五十五条第三項、第四項及び第六項の規定は第一項又は第二項の規定による決定について、同条第五項の規定は第一項若しくは第二項の申立て又はこの項において準用する第五十五条第四項の申立てについての裁判について、同条第七項及び第八項の規定は第二項の規定による決定について、同条第九項の規定は第一項若しくは第二項の申立て又は同項の規定による決定の執行に要した費用について準用する。この場合において、同条第三項中「債務者以外の占有者」とあるのは、「債務者及び当該担保権の目的である不動産の所有者以外の占有者」と読み替えるものとする。