破産法
法令番号: 法律第七十一號
公布年月日: 大正11年4月25日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル破產法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
攝政名
大正十一年四月二十四日
內閣總理大臣兼大藏大臣 子爵 高橋是淸
外務大臣 伯爵 內田康哉
海軍大臣 男爵 加藤友三郞
農商務大臣 男爵 山本達雄
內務大臣 床次竹二郞
文部大臣 中橋德五郞
遞信大臣 野田卯太郞
鐵道大臣 元田肇
司法大臣 伯爵 大木遠吉
陸軍大臣 山梨半造
法律第七十一號
破產法
第一編 實體規定
第一章 總則
第一條 破產ハ其ノ宣告ノ時ヨリ效力ヲ生ス
第二條 外國人又ハ外國法人ハ破產ニ關シ日本人又ハ日本法人ト同一ノ地位ヲ有ス但シ其ノ本國法ニ依リ日本人又ハ日本法人カ同一ノ地位ヲ有スルトキニ限ル
第三條 日本ニ於テ宣告シタル破產ハ破產者ノ財產ニシテ日本ニ在ルモノニ付テノミ其ノ效力ヲ有ス
外國ニ於テ宣告シタル破產ハ日本ニ在ル財產ニ付テハ其ノ效力ヲ有セス
民事訴訟法ニ依リ裁判上ノ請求ヲ爲スコトヲ得ヘキ債權ハ日本ニ在ルモノト看做ス
第四條 解散シタル法人ハ破產ノ目的ノ範圍內ニ於テハ仍存續スルモノト看做ス
第五條 相續人又ハ相續財產ニ對スル破產ノ宣告ハ限定承認又ハ財產分離ヲ妨ケス但シ破產取消若ハ破產廢止ノ決定カ確定シ又ハ破產終結ノ決定アル迄其ノ手續ヲ中止ス
第二章 破產財團
第六條 破產者カ破產宣告ノ時ニ於テ有スル一切ノ財產ハ之ヲ破產財團トス
破產者カ破產宣告前ニ生シタル原因ニ基キ將來行フコトアルヘキ請求權ハ破產財團ニ屬ス
差押フルコトヲ得サル財產ハ破產財團ニ屬セス但シ民事訴訟法第五百七十條第一項第四號第七號ニ揭クルモノ、同條第二項ノ規定ニ依リ差押ノ承諾アリタルモノ及破產宣告後差押フルコトヲ得ルニ至リタルモノハ此ノ限ニ在ラス
第七條 破產財團ノ管理及處分ヲ爲ス權利ハ破產管財人ニ專屬ス
第八條 破產宣告前ニ破產者ノ爲ニ相續ノ開始アリタル場合ニ於テ破產者カ破產宣告後ニ爲シタル單純承認ハ破產財團ニ對シテハ限定承認ノ效力ヲ有ス
第九條 破產宣告前ニ破產者ノ爲ニ遺產相續ノ開始アリタル場合ニ於テ破產者カ破產宣告後ニ相續ノ抛棄ヲ爲シタルトキト雖破產財團ニ對シテハ限定承認ノ效力ヲ有ス
破產管財人ハ前項ノ規定ニ拘ラス抛棄ノ效力ヲ認ムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ抛棄アリタルコトヲ知リタル時ヨリ三月內ニ其ノ旨ヲ裁判所ニ申述スルコトヲ要ス
第十條 前二條ノ規定ハ包括遺贈ニ之ヲ準用ス
第十一條 破產宣告前ニ破產者ノ爲ニ特定遺贈アリタル場合ニ於テ破產者カ破產宣告ノ當時承認又ハ抛棄ヲ爲ササリシトキハ破產管財人破產者ニ代リテ其ノ承認又ハ抛棄ヲ爲スコトヲ得
民法第千八十九條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十二條 相續財產ニ對シテ破產ノ宣告アリタル場合ニ於テハ之ニ屬スル一切ノ財產ヲ以テ破產財團トス
被相續人カ相續人ニ對シ及相續人カ被相續人ニ對シテ有シタル權利ハ消滅セサリシモノト看做ス
第十三條 隱居又ハ入夫婚姻ニ因ル家督相續ノ場合ニ於テ相續財產ニ對シテ破產ノ宣告アリタルトキハ留保財產モ亦破產財團ニ屬ス
國籍喪失ニ因ル家督相續ノ場合ニ於テ相續財產ニ對シテ破產ノ宣告アリタルトキハ相續開始ノ時ニ於テ前戶主カ有シタル財產ヲ以テ破產財團トス
第十四條 相續人カ相續財產ノ全部又ハ一部ヲ處分シタル後相續財產ニ對シテ破產ノ宣告アリタルトキハ相續人カ反對給付ニ付有スル權利ハ破產財團ニ屬ス
相續人カ旣ニ反對給付ヲ受ケタルトキハ之ヲ破產財團ニ返還スルコトヲ要ス但シ其ノ當時相續人カ破產ノ原因タル事實又ハ破產ノ申立アリタルコトヲ知ラサリシトキハ其ノ現ニ受クル利益ヲ返還スルヲ以テ足ル
前二項ノ規定ハ前戶主カ前條ノ財產ヲ處分シタル場合ニ之ヲ準用ス
第三章 破產債權
第十五條 破產者ニ對シ破產宣告前ノ原因ニ基キテ生シタル財產上ノ請求權ハ之ヲ破產債權トス
第十六條 破產債權ハ破產手續ニ依ルニ非サレハ之ヲ行フコトヲ得ス
第十七條 期限附債權ハ破產宣告ノ時ニ於テ辨濟期ニ至リタルモノト看做ス
第十八條 債權カ無利息ニシテ其ノ期限カ破產宣告後ニ到來スヘキ場合ニ於テハ破產債權ノ額ハ破產宣告ノ時ヨリ期限ニ至ル迄ノ破產債權ニ對スル法定利息ヲ債權額ヨリ控除スルモノトス
第十九條 前條ノ規定ハ金額及存續期間ノ確定スル定期金債權ニ之ヲ準用ス但シ其ノ總額カ法定利率ニ依リ其ノ定期金ニ相當スル利息ヲ生スヘキ元本額ヲ超ユルトキハ其ノ元本額ヲ以テ破產債權ノ額トス
第二十條 第十八條ノ場合ニ於テ期限カ不確定ナルトキハ破產宣告ノ時ニ於ケル評價額ヲ以テ破產債權ノ額トス定期金債權ノ金額又ハ存續期間カ不確定ナルトキ亦同シ
第二十一條 前三條ノ規定ハ法人又ハ相續財產ニ對シテ破產ノ宣告アリタル場合ニハ之ヲ適用セス
第二十二條 債權ノ目的カ金錢ニ非サルトキ又ハ金錢ナルモ其ノ額カ不確定ナルトキ若ハ外國ノ通貨ヲ以テ定メタルモノナルトキハ破產宣告ノ時ニ於ケル評價額ヲ以テ破產債權ノ額トス
第二十三條 條件附債權ハ其ノ全額又ハ前條ノ規定ニ依ル評價額ヲ以テ破產債權ノ額トス
前項ノ規定ハ破產者ニ對シテ行フコトアルヘキ將來ノ請求權ニ之ヲ準用ス
第二十四條 數人カ各自全部ノ履行ヲ爲ス義務ヲ負フ場合ニ於テ其ノ全員又ハ其ノ中ノ數人カ破產ノ宣告ヲ受ケタルトキハ債權者ハ破產宣告ノ時ニ於テ有スル債權ノ全額ニ付各破產財團ニ對シ破產債權者トシテ其ノ權利ヲ行フコトヲ得
第二十五條 保證人カ破產ノ宣告ヲ受ケタルトキハ債權者ハ破產宣告ノ時ニ於テ有スル債權ノ全額ニ付破產債權者トシテ其ノ權利ヲ行フコトヲ得
第二十六條 數人カ各自全部ノ履行ヲ爲ス義務ヲ負フ場合ニ於テ其ノ全員又ハ其ノ中ノ數人若ハ一人カ破產ノ宣告ヲ受ケタルトキハ破產者ニ對シテ將來行フコトアルヘキ求償權ヲ有スル者ハ其ノ全額ニ付破產債權者トシテ其ノ權利ヲ行フコトヲ得但シ債權者カ其ノ債權ノ全額ニ付破產債權者トシテ其ノ權利ヲ行ヒタルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項但書ノ場合ニ於テ前項ノ求償權ヲ有スル者カ辨濟ヲ爲シタルトキハ其ノ辨濟ノ割合ニ應シテ債權者ノ權利ヲ取得ス
前二項ノ規定ハ擔保ヲ供シタル第三者カ破產者ニ對シテ將來行フコトアルヘキ求償權ニ付之ヲ準用ス
第二十七條 第二十四條、第二十五條及前條第一項第二項ノ規定ハ數人ノ保證人カ各自債務ノ一部ヲ負擔スヘキ場合ニ於テ其ノ負擔部分ニ付之ヲ準用ス
第二十八條 法人ノ債務ニ付其ノ債權者ニ對シテ無限ノ責任ヲ負フ者カ破產ノ宣告ヲ受ケタルトキハ法人ノ債權者ハ破產宣告ノ時ニ於テ有スル債權ノ全額ニ付破產債權者トシテ其ノ權利ヲ行フコトヲ得
第二十九條 法人ノ債務ニ付其ノ債權者ニ對シテ有限ノ責任ヲ負フ者又ハ其ノ法人カ破產ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ於テハ法人ノ債權者ハ有限ノ責任ヲ負フ者ニ對シテ其ノ權利ヲ行フコトヲ得ス但シ法人ハ出資ノ請求ニ付破產債權者トシテ其ノ權利ヲ行フコトヲ妨ケス
第三十條 相續人カ破產ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ於テハ財產ノ分離アリタルトキト雖相續債權者及受遺者ハ其ノ債權ノ全額ニ付破產債權者トシテ其ノ權利ヲ行フコトヲ得
第三十一條 相續財產及相續人ニ對シテ破產ノ宣告アリタルトキハ相續債權者及受遺者ハ其ノ債權ノ全額ニ付各破產財團ニ對シ破產債權者トシテ其ノ權利ヲ行フコトヲ得民法第九百八十九條又ハ第九百九十一條ノ場合ニ於テ相續財產及前戶主、相續人及前戶主又ハ相續財產相續人及前戶主ニ對シテ破產ノ宣告アリタルトキ相續債權者ニ付亦同シ
第三十二條 前二條ノ場合ニ於テ破產ノ宣告ヲ受ケタル相續人カ限定承認ヲ爲シタルトキハ相續債權者及受遺者ハ相續人ノ固有財產ニ付破產債權者トシテ其ノ權利ヲ行フコトヲ得ス第八條又ハ第九條第一項ノ規定ニ依リ限定承認ノ效力ヲ有スル場合亦同シ
第三十三條 相續財產ニ對シテ破產ノ宣告アリタルトキハ相續人ハ其ノ被相續人ニ對スル債權及被相續人ノ債務消滅ノ爲ニ爲シタル出捐ニ付相續債權者ト同一ノ權利ヲ有ス
第三十四條 相續財產ニ對シテ破產ノ宣告アリタルトキハ相續人ノ債權者ハ破產債權者トシテ其ノ權利ヲ行フコトヲ得ス
第三十五條 相續財產ニ對シテ破產ノ宣告アリタル場合ニ於テ第十三條ノ財產アルトキハ相續開始後ノ前戶主ノ債權者ハ債權ノ全額ニ付破產債權者トシテ其ノ權利ヲ行フコトヲ得
第三十六條 相續財產及前戶主ニ對シテ破產ノ宣告アリタル場合ニ於テ第十三條ノ財產アルトキハ相續開始後ノ前戶主ノ債權者ハ債權ノ全額ニ付各破產財團ニ對シ破產債權者トシテ其ノ權利ヲ行フコトヲ得
第三十七條 民法第九百八十九條又ハ第九百九十一條ノ場合ニ於テ相續人カ破產ノ宣告ヲ受ケタルトキハ前戶主ハ將來行フコトアルヘキ求償權ノ全額ニ付破產債權者トシテ其ノ權利ヲ行フコトヲ得
第二十六條第一項但書及第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三十八條 左ニ揭クル請求權ハ之ヲ破產債權トセス但シ法人又ハ相續財產ニ對シテ破產ノ宣告アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス
一 破產宣告後ノ利息
二 破產宣告後ノ不履行ニ因ル損害賠償及違約金
三 破產手續參加ノ費用
四 罰金、科料、刑事訴訟費用、追徵金及過料
第三十九條 破產財團ニ屬スル財產ニ付一般ノ先取特權其ノ他一般ノ優先權アル破產債權ハ他ノ債權ニ先ツ
第四十條 同一順位ニ於テ辨濟スヘキ債權ハ各其ノ債權額ノ割合ニ應シテ之ヲ辨濟ス
第四十一條 優先權カ一定ノ期間內ノ債權額ニ付存在スル場合ニ於テハ其ノ期間ハ破產宣告ノ時ヨリ遡リテ之ヲ計算ス
第四十二條 相續財產ニ對シテ破產ノ宣告アリタルトキハ相續債權者ノ債權ハ受遺者ノ債權又ハ相續開始後ノ前戶主ノ債權者ノ債權ニ先ツ
第四十三條 相續財產ニ對シ破產ノ申立ヲ爲スコトヲ得ル期間內ノ申立ニ因リ相續人ニ對シテ破產ノ宣告アリタルトキハ相續人ノ債權者ノ債權ハ相續債權者及受遺者ノ債權ニ先チ相續財產ニ付テハ相續債權者及受遺者ノ債權ハ相續人ノ債權者ノ債權ニ先ツ
第四十四條 相續財產及相續人ニ對シテ破產ノ宣告アリタルトキハ相續人ノ債權者ノ債權ハ相續人ノ破產財團ニ付テハ相續債權者及受遺者ノ債權ニ先ツ
第四十五條 相續財產及前戶主ニ對シテ破產ノ宣告アリタルトキハ相續開始後ノ前戶主ノ債權者ノ債權ハ前戶主ノ破產財團ニ付テハ相續債權者ノ債權ニ先ツ
第四十六條 法人又ハ相續財產ニ對シテ破產ノ宣告アリタル場合ニ於テハ債權額ト第十八條乃至第二十條ノ規定ニ依リテ定ル額トノ差額ノ請求權及第三十八條ニ揭クル請求權ハ法人ノ債權者又ハ相續債權者ノ他ノ債權ニ後ル
第四章 財團債權
第四十七條 左ニ揭クル請求權ハ之ヲ財團債權トス
一 破產債權者ノ共同ノ利益ノ爲ニスル裁判上ノ費用
二 國稅徵收法又ハ國稅徵收ノ例ニ依リ徵收スルコトヲ得ヘキ請求權但シ破產宣告後ノ原因ニ基ク請求權ハ破產財團ニ關シテ生シタルモノニ限ル
三 破產財團ノ管理、換價及配當ニ關スル費用
四 破產財團ニ關シ破產管財人ノ爲シタル行爲ニ因リテ生シタル請求權
五 事務管理又ハ不當利得ニ因リ破產財團ニ對シテ生シタル請求權
六 委任終了又ハ代理權消滅ノ後急迫ノ必要ノ爲ニ爲シタル行爲ニ因リ破產財團ニ對シテ生シタル請求權
七 第五十九條第一項ノ規定ニ依リ破產管財人カ債務ノ履行ヲ爲ス場合ニ於テ相手方カ有スル請求權
八 破產宣告ニ因リテ雙務契約ニ關シ解約ノ申入アリタル場合ニ於テ其ノ終了ニ至ル迄ノ間ニ生シタル請求權
九 破產者及之ニ扶養セラルル者ノ扶助料
第四十八條 破產管財人負擔附遺贈ノ履行ヲ受ケタルトキハ負擔ノ利益ヲ受クヘキ請求權ハ遺贈ノ目的ノ價額ヲ超エサル限度ニ於テ之ヲ財團債權トス
第四十九條 財團債權ハ破產手續ニ依ラスシテ隨時之ヲ辨濟ス
第五十條 財團債權ハ破產財團ヨリ先ツ之ヲ辨濟ス
第五十一條 破產財團カ財團債權ノ總額ヲ辨濟スルニ不足ナルコト分明ナルニ至リタルトキハ財團債權ノ辨濟ハ法令ニ定ムル優先權ニ拘ラス未タ辨濟セサル債權額ノ割合ニ應シテ之ヲ爲ス但シ財團債權ニ付存スル留置權、特別ノ先取特權、質權及抵當權ノ效力ヲ妨ケス
第四十七條第一號乃至第七號ノ財團債權ハ他ノ財團債權ニ先ツ
第五十二條 第十七條乃至第二十條、第二十二條及第二十三條第一項ノ規定ハ第四十七條第七號及第四十八條ニ規定スル財團債權ニ之ヲ準用ス
第五章 法律行爲ニ關スル破產ノ效力
第五十三條 破產者カ破產宣告ノ後破產財團ニ屬スル財產ニ關シテ爲シタル法律行爲ハ之ヲ以テ破產債權者ニ對抗スルコトヲ得ス
破產者カ破產宣告ノ日ニ於テ爲シタル法律行爲ハ破產宣告後ニ之ヲ爲シタルモノト推定ス
第五十四條 破產宣告ノ後破產財團ニ屬スル財產ニ關シ破產者ノ法律行爲ニ因ラスシテ權利ヲ取得スルモ其ノ取得ハ之ヲ以テ破產債權者ニ對抗スルコトヲ得ス
前條第二項ノ規定ハ前項ノ取得ニ之ヲ準用ス
第五十五條 不動產又ハ船舶ニ關シ破產宣告前ニ生シタル登記原因ニ基キ破產宣告ノ後爲シタル登記又ハ不動產登記法第二條第一號ノ規定ニ依ル假登記ハ之ヲ以テ破產債權者ニ對抗スルコトヲ得ス但シ登記權利者カ破產宣告ノ事實ヲ知ラスシテ爲シタル登記又ハ假登記ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ規定ハ權利ノ設定、移轉又ハ變更ニ關スル登錄又ハ假登錄ニ付之ヲ準用ス
第五十六條 破產宣告ノ後其ノ事實ヲ知ラスシテ破產者ニ爲シタル辨濟ハ之ヲ以テ破產債權者ニ對抗スルコトヲ得
破產宣告ノ後其ノ事實ヲ知リテ破產者ニ爲シタル辨濟ハ破產財團カ受ケタル利益ノ限度ニ於テノミ之ヲ以テ破產債權者ニ對抗スルコトヲ得
第五十七條 爲替手形ノ振出人又ハ裏書人カ破產ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ於テ支拂人又ハ豫備支拂人カ其ノ事實ヲ知ラスシテ引受又ハ支拂ヲ爲シタルトキハ之ニ因リテ生シタル債權ニ付破產債權者トシテ其ノ權利ヲ行フコトヲ得
前項ノ規定ハ小切手及金錢其ノ他ノ物又ハ有價證券ノ給付ヲ目的トスル有價證券ニ之ヲ準用ス
第五十八條 前三條ノ規定ノ適用ニ付テハ破產宣告ノ公告前ニ在リテハ其ノ事實ヲ知ラサリシモノト推定シ公告後ニ在リテハ其ノ事實ヲ知リタルモノト推定ス
第五十九條 雙務契約ニ付破產者及其ノ相手方カ破產宣告ノ當時未タ共ニ其ノ履行ヲ完了セサルトキハ破產管財人ハ其ノ選擇ニ從ヒ契約ノ解除ヲ爲シ又ハ破產者ノ債務ヲ履行シテ相手方ノ債務ノ履行ヲ請求スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ相手方ハ破產管財人ニ對シ相當ノ期間ヲ定メ其ノ期間內ニ契約ノ解除ヲ爲スカ又ハ債務ノ履行ヲ請求スルカヲ確答スヘキ旨ヲ催告スルコトヲ得破產管財人カ其ノ期間內ニ確答ヲ爲ササルトキハ契約ノ解除ヲ爲シタルモノト看做ス
第六十條 前條ノ規定ニ依リ契約ノ解除アリタルトキハ相手方ハ損害ノ賠償ニ付破產債權者トシテ其ノ權利ヲ行フコトヲ得
破產者ノ受ケタル反對給付カ破產財團中ニ現存スルトキハ相手方ハ其ノ返還ヲ請求シ現存セサルトキハ其ノ價額ニ付財團債權者トシテ其ノ權利ヲ行フコトヲ得
第六十一條 取引所ノ相場アル商品ノ賣買ニ付一定ノ日時又ハ一定ノ期間內ニ履行ヲ爲スニ非サレハ契約ヲ爲シタル目的ヲ達スルコト能ハサル場合ニ於テ其ノ時期カ破產宣告後ニ到來スヘキトキハ契約ノ解除アリタルモノト看做ス此ノ場合ニ於テ損害賠償ノ額ハ履行地又ハ其ノ地ノ相場ノ標準ト爲ルヘキ地ニ於ケル同種ノ取引ニシテ同一ノ時期ニ履行スヘキモノノ相場ト賣買ノ代價トノ差額ニ依リテ之ヲ定ム
前條第一項ノ規定ハ前項ノ規定ニ依ル損害賠償ニ付之ヲ準用ス
第一項ノ場合ニ付取引所ニ於テ別段ノ定ヲ爲シタルトキハ其ノ定ニ從フ
第六十二條 第五十九條第二項ノ規定ハ民法第六百二十一條、第六百三十一條又ハ第六百四十二條第一項ノ規定ニ依リ相手方又ハ破產管財人カ有スル解除權ノ行使ニ付之ヲ準用ス
第六十三條 賃貸人カ破產ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ於テハ借賃ノ前拂又ハ借賃ノ債權ノ處分ハ破產宣告ノ時ニ於ケル當期及次期ニ關スルモノヲ除クノ外之ヲ以テ破產債權者ニ對抗スルコトヲ得ス
前項ノ規定ニ依リ破產債權者ニ對抗スルコトヲ得サルニ因リテ損害ヲ受ケタル者ハ其ノ損害ノ賠償ニ付破產債權者トシテ其ノ權利ヲ行フコトヲ得
前二項ノ規定ハ地上權及永小作權ニ付之ヲ準用ス
第六十四條 破產者カ請負契約ニ因リ仕事ヲ爲ス義務ヲ負擔スルトキハ破產管財人ハ必要ナル材料ヲ供シ破產者ヲシテ其ノ仕事ヲ爲サシムルコトヲ得其ノ仕事カ破產者自ラ爲スコトヲ要セサルモノナルトキハ第三者ヲシテ之ヲ爲サシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ破產者カ其ノ相手方ヨリ受クヘキ報酬ハ破產財團ニ屬ス
第六十五條 委任者カ破產ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ於テ受任者カ破產宣告ノ通知ヲ受ケス且破產宣告ノ事實ヲ知ラスシテ委任事務ヲ處理シタルトキハ之ニ因リテ生シタル債權ニ付破產債權者トシテ其ノ權利ヲ行フコトヲ得
第六十六條 交互計算ハ當事者ノ一方カ破產ノ宣告ヲ受ケタルトキハ終了ス此ノ場合ニ於テハ各當事者ハ計算ヲ閉鎖シ殘額ノ支拂ヲ請求スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル請求權ハ破產者之ヲ有スルトキハ破產財團ニ屬シ相手方之ヲ有スルトキハ破產債權トス
第六十七條 數人共同シテ財產權ヲ有スル場合ニ於テ共有者ノ中破產ノ宣告ヲ受ケタル者アルトキハ分割ヲ爲ササル定アルトキト雖破產手續ニ依ラスシテ其ノ分割ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ他ノ共有者ハ相當ノ償金ヲ拂ヒテ破產者ノ持分ヲ取得スルコトヲ得
第六十八條 民法第七百九十六條第二項第三項及第七百九十七條ノ規定ハ配偶者ノ財產ヲ管理スル者カ破產ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ、同法第八百九十七條ノ規定ハ親權ヲ行フ者カ破產ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ之ヲ準用ス
第六十九條 破產財團ニ屬スル財產ニ關シ破產宣告ノ當時繫屬スル訴訟ハ破產管財人又ハ相手方ニ於テ之ヲ受繼クコトヲ得第四十七條第七號ニ揭クル請求權ニ關スル訴訟ニ付亦同シ
前項ノ場合ニ於テハ訴訟費用ハ之ヲ財團債權トス
第七十條 破產債權ニ付破產財團ニ屬スル財產ニ對シ爲シタル强制執行、假差押又ハ假處分ハ破產財團ニ對シテハ其ノ效力ヲ失フ但シ强制執行ニ付テハ破產管財人ニ於テ破產財團ノ爲其ノ手續ヲ續行スルコトヲ妨ケス
前項但書ノ規定ニ依リ破產管財人カ强制執行ノ手續ヲ續行スルトキハ費用ハ之ヲ財團債權トシ强制執行ニ對スル第三者ノ異議ノ訴ニ付テハ破產管財人ヲ被告トス
前二項ノ規定ハ一般ノ先取特權者カ破產財團ニ屬スル財產ニ對シ爲シタル競賣手續ニ之ヲ準用ス
第七十一條 破產財團ニ屬スル財產ニ對シ國稅徵收法又ハ國稅徵收ノ例ニ依ル滯納處分ヲ爲シタル場合ニ於テハ破產ノ宣告ハ其ノ處分ノ續行ヲ妨ケス
破產財團ニ屬スル財產ニ關シ破產宣告ノ當時行政廳ニ繫屬スル事件アルトキハ其ノ手續ハ受繼又ハ破產手續ノ解止ニ至ル迄之ヲ中斷ス
第六十九條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第六章 否認權
第七十二條 左ニ揭クル行爲ハ破產財團ノ爲之ヲ否認スルコトヲ得
一 破產者カ破產債權者ヲ害スルコトヲ知リテ爲シタル行爲但シ之ニ因リテ利益ヲ受ケタル者カ其ノ行爲ノ當時破產債權者ヲ害スヘキ事實ヲ知ラサリシトキハ此ノ限ニ在ラス
二 破產者カ支拂ノ停止又ハ破產ノ申立アリタル後ニ爲シタル擔保ノ供與、債務ノ消滅ニ關スル行爲其ノ他破產債權者ヲ害スル行爲但シ之ニ因リテ利益ヲ受ケタル者カ其ノ行爲ノ當時支拂ノ停止又ハ破產ノ申立アリタルコトヲ知リタルトキニ限ル
三 前號ノ行爲ニシテ破產者ノ親族、戶主、家族又ハ同居者ヲ相手方トスルモノ但シ相手方カ其ノ行爲ノ當時支拂ノ停止又ハ破產ノ申立アリタルコトヲ知ラサリシトキハ此ノ限ニ在ラス
四 破產者カ支拂ノ停止若ハ破產ノ申立アリタル後又ハ其ノ前三十日內ニ爲シタル擔保ノ供與又ハ債務ノ消滅ニ關スル行爲ニシテ破產者ノ義務ニ屬セス又ハ其ノ方法若ハ時期カ破產者ノ義務ニ屬セサルモノ但シ債權者カ其ノ行爲ノ當時支拂ノ停止若ハ破產ノ申立アリタルコト又ハ破產債權者ヲ害スヘキ事實ヲ知ラサリシトキハ此ノ限ニ在ラス
五 破產者カ支拂ノ停止若ハ破產ノ申立アリタル後又ハ其ノ前六月內ニ爲シタル無償行爲及之ト同視スヘキ有償行爲
第七十三條 前條ノ規定ハ破產者ヨリ手形ノ支拂ヲ受ケタル者カ其ノ支拂ヲ受ケサレハ債務者ノ一人又ハ數人ニ對スル手形上ノ權利ヲ失フヘカリシ場合ニハ之ヲ適用セス
前項ノ場合ニ於テ最終ノ償還義務者又ハ手形ノ振出ヲ委託シタル者カ振出ノ當時支拂ノ停止又ハ破產ノ申立アリタルコトヲ知リ又ハ過失ニ因リテ之ヲ知ラサリシトキハ破產管財人ハ之ヲシテ破產者カ支拂ヒタル金額ヲ償還セシムルコトヲ得
第七十四條 支拂ノ停止又ハ破產ノ申立アリタル後權利ノ設定、移轉又ハ變更ヲ以テ第三者ニ對抗スルニ必要ナル行爲ヲ爲シタル場合ニ於テ其ノ行爲カ權利ノ設定、移轉又ハ變更アリタル日ヨリ十五日ヲ經過シタル後惡意ニテ爲シタルモノナルトキハ之ヲ否認スルコトヲ得但シ登記及登錄ニ付テハ假登記又ハ假登錄アリタル後本登記又ハ本登錄ヲ爲シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ規定ハ權利取得ノ效力ヲ生スル登錄ニ付之ヲ準用ス
第七十五條 否認權ハ否認セムトスル行爲ニ付執行力アル債務名義アルトキ又ハ其ノ行爲カ執行行爲ニ基クモノナルトキト雖之ヲ行フコトヲ妨ケス
第七十六條 否認權ハ訴又ハ抗辯ニ依リ破產管財人之ヲ行フ
第七十七條 否認權ノ行使ハ破產財團ヲ原狀ニ復セシム
第七十二條第五號ニ揭クル行爲カ否認セラレタル場合ニ於テ相手方カ行爲ノ當時善意ナリシトキハ其ノ現ニ受クル利益ヲ償還スルヲ以テ足ル
第七十八條 破產者ノ行爲カ否認セラレタル場合ニ於テ其ノ受ケタル反對給付カ破產財團中ニ現存スルトキハ相手方ハ其ノ返還ヲ請求シ反對給付ニ因リテ生シタル利益カ現存スルトキハ其ノ利益ノ限度ニ於テ財團債權者トシテ其ノ權利ヲ行フコトヲ得
反對給付ニ因リテ生シタル利益カ現存セサルトキハ相手方ハ其ノ價額ノ償還ニ付破產債權者トシテ其ノ權利ヲ行フコトヲ得反對給付ノ價額カ現存スル利益ヨリ大ナル場合ニ於テ其ノ差額ニ付亦同シ
第七十九條 破產者ノ行爲カ否認セラレタル場合ニ於テ相手方カ其ノ受ケタル給付ヲ返還シ又ハ其ノ價額ヲ償還シタルトキハ相手方ノ債權ハ之ニ因リテ原狀ニ復ス
第八十條 第七十二條、第七十三條及前二條ノ規定ハ相續財產ニ對シテ破產ノ宣告アリタル場合ニ於テ被相續人、相續人、相續財產管理人及遺言執行者カ相續財產ニ關シテ爲シタル行爲竝前戶主カ第十三條ノ財產ニ關シテ爲シタル行爲ニ之ヲ準用ス
第八十一條 相續財產ニ對シ破產ノ宣告アリタル場合ニ於テ受遺者ニ對スル辨濟其ノ他債務ノ消滅ニ關スル行爲カ其ノ債權ニ先ツ債權ヲ有スル破產債權者ヲ害スルトキハ之ヲ否認スルコトヲ得
第八十二條 相續財產ニ對シテ破產ノ宣告アリタル場合ニ於テ第八十條ニ規定スル行爲カ否認セラレタルトキハ相續債權者ニ辨濟ヲ爲シタル後否認セラレタル行爲ノ相手方ニ其ノ權利ノ價額ニ應シテ殘餘財產ヲ分配スルコトヲ要ス
第八十三條 左ノ場合ニ於テハ否認權ハ轉得者ニ對シテモ亦之ヲ行フコトヲ得
一 轉得者カ轉得ノ當時各其ノ前者ニ對スル否認ノ原因アルコトヲ知リタルトキ
二 轉得者カ破產者ノ親族、戶主、家族又ハ同居者ナルトキ但シ轉得ノ當時各其ノ前者ニ對スル否認ノ原因アルコトヲ知ラサリシトキハ此ノ限ニ在ラス
三 轉得者カ無償行爲又ハ之ト同視スヘキ有償行爲ニ因リテ轉得シタル場合ニ於テ各其ノ前者ニ對シ否認ノ原因アルトキ
第七十七條第二項ノ規定ハ前項第三號ノ規定ニ依リ否認權ノ行使アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第八十四條 破產宣告ノ日ヨリ一年前ニ爲シタル行爲ハ支拂停止ノ事實ヲ知リタルコトヲ理由トシテ之ヲ否認スルコトヲ得ス
第八十五條 否認權ハ破產宣告ノ日ヨリ二年間之ヲ行ハサルトキハ時效ニ因リテ消滅ス行爲ノ日ヨリ二十年ヲ經過シタルトキ亦同シ
第八十六條 民法第四百二十四條ノ規定ニ依リ破產債權者ノ提起シタル訴訟カ破產宣告ノ當時繫屬スルトキハ其ノ訴訟手續ハ受繼又ハ破產手續ノ解止ニ至ル迄之ヲ中斷ス
第六十九條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第七章 取戾權
第八十七條 破產ノ宣告ハ破產者ニ屬セサル財產ヲ破產財團ヨリ取戾ス權利ニ影響ヲ及ホサス
第八十八條 破產宣告前破產者ニ財產ヲ讓渡シタル者ハ擔保ノ目的ヲ以テシタルコトヲ理由トシテ其ノ財產ヲ取戾スコトヲ得ス
第八十九條 賣主カ賣買ノ目的タル物品ヲ買主ニ發送シタル場合ニ於テ買主カ未タ代金ノ全額ヲ辨濟セス且到達地ニ於テ其ノ物品ヲ受取ラサル間ニ破產ノ宣告ヲ受ケタルトキハ賣主ハ其ノ物品ヲ取戾スコトヲ得但シ破產管財人カ代金ノ全額ヲ支拂ヒテ其ノ物品ノ引渡ヲ請求スルコトヲ妨ケス
前項ノ規定ハ第五十九條ノ規定ノ適用ヲ妨ケス
第九十條 前條第一項ノ規定ハ物品買入ノ委託ヲ受ケタル問屋カ其ノ物品ヲ委託者ニ發送シタル場合ニ之ヲ準用ス
第九十一條 破產者カ破產宣告前取戾權ノ目的タル財產ヲ讓渡シタル場合ニ於テハ取戾權者ハ反對給付ノ請求權ノ移轉ヲ請求スルコトヲ得破產管財人カ取戾權ノ目的タル財產ヲ讓渡シタル場合亦同シ
前項ノ場合ニ於テ破產管財人カ反對給付ヲ受ケタルトキハ取戾權者ハ破產管財人カ反對給付トシテ受ケタル財產ノ給付ヲ請求スルコトヲ得
第八章 別除權
第九十二條 破產財團ニ屬スル財產ノ上ニ存スル特別ノ先取特權、質權又ハ抵當權ヲ有スル者ハ其ノ目的タル財產ニ付別除權ヲ有ス
第九十三條 破產財團ニ屬スル財產ノ上ニ存スル留置權ニシテ商法ニ依ルモノハ破產財團ニ對シテハ之ヲ特別ノ先取特權ト看做ス此ノ先取特權ハ他ノ特別ノ先取特權ニ後ル
前項ニ規定スルモノヲ除クノ外留置權ハ破產財團ニ對シテハ其ノ效力ヲ失フ
第九十四條 數人共同シテ財產權ヲ有スル場合ニ於テ其ノ一人カ破產ノ宣告ヲ受ケタルトキハ之ニ對シ共有ニ關スル債權ヲ有スル他ノ共有者ハ分割ニ因リテ破產者ニ歸スヘキ共有財產ノ部分ニ付別除權ヲ有ス
第九十五條 別除權ハ破產手續ニ依ラスシテ之ヲ行フ
第九十六條 別除權者ハ其ノ別除權ノ行使ニ依リテ辨濟ヲ受クルコト能ハサル債權額ニ付テノミ破產債權者トシテ其ノ權利ヲ行フコトヲ得但シ別除權ヲ抛棄シタル債權額ニ付破產債權者トシテ其ノ權利ヲ行フコトヲ妨ケス
第九十七條 破產財團ニ屬セサル破產者ノ財產ノ上ニ特別ノ先取特權、質權又ハ抵當權ヲ有スル者ハ其ノ權利ノ行使ニ依リテ辨濟ヲ受クルコト能ハサル債權額ニ付テノミ破產債權者トシテ其ノ權利ヲ行フコトヲ得華族世襲財產ヲ差押フル權利ヲ有スル者及破產者カ更ニ破產ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ於テ前ノ破產ニ付破產債權ヲ有スル者亦同シ
前項ニ揭クル權利ヲ有スル者ニハ第二編中別除權ニ關スル規定ヲ準用ス
第九章 相殺權
第九十八條 破產債權者カ破產宣告ノ當時破產者ニ對シテ債務ヲ負擔スルトキハ破產手續ニ依ラスシテ相殺ヲ爲スコトヲ得
第九十九條 破產債權者ノ債權カ破產宣告ノ時ニ於テ期限附若ハ解除條件附ナルトキ又ハ第二十二條ニ揭クルモノナルトキト雖相殺ヲ爲スコトヲ妨ケス債務カ期限附若ハ條件附ナルトキ又ハ將來ノ請求權ニ關スルモノナルトキ亦同シ
第百條 停止條件附債權又ハ將來ノ請求權ヲ有スル者カ其ノ債務ヲ辨濟スル場合ニ於テハ後日相殺ヲ爲ス爲其ノ債權額ノ限度ニ於テ辨濟額ノ寄託ヲ請求スルコトヲ得
第百一條 解除條件附債權ヲ有スル者カ相殺ヲ爲ストキハ其ノ相殺額ニ付擔保ヲ供シ又ハ寄託ヲ爲スコトヲ要ス
第百二條 第十八條乃至第二十條、第二十二條及第二十三條ノ規定ハ破產債權者ノ債權ニ之ヲ準用ス
第百三條 破產債權者カ賃借人ナルトキハ破產宣告ノ時ニ於ケル當期及次期ノ借賃ニ付相殺ヲ爲スコトヲ得敷金アルトキハ其ノ後ノ借賃ニ付亦同シ
前項ノ規定ハ地代及小作料ニ付之ヲ準用ス
第百四條 左ノ場合ニ於テハ相殺ヲ爲スコトヲ得ス
一 破產債權者カ破產宣告ノ後破產財團ニ對シテ債務ヲ負擔シタルトキ
二 破產者ノ債務者カ破產宣告ノ後他人ノ破產債權ヲ取得シタルトキ
三 破產者ノ債務者カ支拂ノ停止又ハ破產ノ申立アリタルコトヲ知リテ破產債權ヲ取得シタルトキ但シ其ノ取得カ法定ノ原因ニ基クトキ、債務者カ支拂ノ停止若ハ破產ノ申立アリタルコトヲ知リタル時ヨリ前ニ生シタル原因ニ基クトキ又ハ破產宣告ノ時ヨリ一年前ニ生シタル原因ニ基クトキハ此ノ限ニ在ラス
第二編 手續規定
第一章 總則
第百五條 破產事件ハ債務者カ營業者ナルトキハ其ノ主タル營業所ノ所在地、外國ニ主タル營業所ヲ有スルトキハ日本ニ於ケル主タル營業所ノ所在地、營業者ニ非サルトキ又ハ營業所ヲ有セサルトキハ其ノ普通裁判籍ノ所在地ヲ管轄スル區裁判所ノ管轄ニ專屬ス
第百六條 相續財產ニ關スル破產事件ハ相續開始地ヲ管轄スル區裁判所ノ管轄ニ專屬ス
第百七條 前二條ノ規定ニ依ル管轄裁判所ナキトキハ財產ノ所在地ヲ管轄スル區裁判所ノ管轄ニ專屬ス
債權ハ裁判上ノ請求ヲ爲スコトヲ得ル地ヲ以テ其ノ所在地ト看做ス
前二項ノ規定ニ依リ二以上ノ裁判所カ管轄權ヲ有スルトキハ先ニ破產ノ申立アリタル裁判所ノ管轄ニ專屬ス
第百八條 破產手續ニ關シテハ本法ニ別段ノ定ナキトキハ民事訴訟法ヲ準用ス
第百九條 破產事件ニ關シテハ裁判所ハ互ニ法律上ノ輔助ヲ求ムルコトヲ得
第百十條 破產手續ニ關スル裁判ハ口頭辯論ヲ經スシテ之ヲ爲スコトヲ得
裁判所ハ職權ヲ以テ破產事件ニ關シ必要ナル調査ヲ爲スコトヲ得
第百十一條 破產手續ニ關スル裁判ハ職權ヲ以テ其ノ送達ヲ爲スコトヲ要ス
第百十二條 破產手續ニ關スル裁判ニ對シテハ本編ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外其ノ裁判ニ付利害關係ヲ有スル者ハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得其ノ期間ハ裁判ノ公告アリタル場合ニ於テハ其ノ公告アリタル日ヨリ起算シテ二週間トス
第百十三條 抗告裁判所ノ決定ハ確定ノ後ニ非サレハ其ノ效力ヲ生セス但シ裁判所ハ其ノ決定ヲ以テ直ニ效力ヲ生スヘキコトヲ定ムルコトヲ得
抗告裁判所ノ破產ノ宣告ハ前項ノ規定ニ拘ラス直ニ其ノ效力ヲ生ス
第百十四條 破產手續ニ關スル申立、陳述及抗告ハ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
第百十五條 本編ノ規定ニ依リ爲スヘキ公告ハ官報及登記事項ノ公告ヲ揭載スヘキ新聞紙ヲ以テ之ヲ爲ス
公告ハ最終ノ揭載アリタル日ノ翌日ニ於テ其ノ效力ヲ生ス
第百十六條 裁判所ノ管轄內ニ前條第一項ノ新聞紙ナキトキハ公告ハ裁判所及破產者ノ營業所若ハ住所ノ所在地ノ出張所又ハ其ノ管轄內ノ市役所、町村役場若ハ之ニ準スヘキ公署ノ揭示場ニ揭示シテ之ヲ爲ス此ノ場合ニ於テハ公告ハ揭示ノ日ヨリ三日ヲ經過シタル後其ノ效力ヲ生ス
第百十七條 本編ノ規定ニ依リ送達ヲ爲スヘキ場合ニ於テハ公告ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
第百十八條 本編ノ規定ニ依リ公告ノ外送達ヲ爲スヘキ場合ニ於テハ送達ハ書類ヲ郵便ニ付シテ之ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ公告ハ一切ノ關係人ニ對スル送達ノ效力ヲ有ス
第百十九條 法人ニ對シテ破產ノ宣告ヲ爲シタルトキハ裁判所ハ職權ヲ以テ遲滯ナク囑託書ニ破產決定書ノ謄本ヲ添附シテ破產ノ登記ヲ各營業所又ハ各事務所ノ所在地ノ登記所ニ囑託スルコトヲ要ス
第百二十條 裁判所カ破產者ニ關スル登記アルコトヲ知リタルトキハ職權ヲ以テ遲滯ナク囑託書ニ破產決定書ノ謄本ヲ添附シテ破產ノ登記ヲ登記所ニ囑託スルコトヲ要ス破產財團ニ屬スル權利ニシテ登記シタルモノアルコトヲ知リタルトキ亦同シ
第百二十一條 前二條ノ規定ハ破產取消、破產廢止又ハ强制和議取消ノ決定カ確定シタル場合及破產終結ノ決定アリタル場合ニ之ヲ準用ス破產管財人カ破產ノ登記アリタル權利ヲ破產財團ヨリ抛棄シタル場合ニ於テ登記囑託ノ申立アリタルトキ亦同シ
第百二十二條 登記所カ前三條ノ規定ニ依リテ登記ノ囑託ヲ受ケタルトキハ遲滯ナク其ノ登記ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ登記ニ付テハ登錄稅ヲ課セス
第百二十三條 登記ノ原因タル行爲カ否認セラレタルトキハ破產管財人ハ否認ノ登記ヲ爲スコトヲ要ス登記カ否認セラレタルトキ亦同シ
第百二十一條及前條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第百二十四條 前四條ノ規定ハ破產財團ニ屬スル權利ニシテ登錄シタルモノニ之ヲ準用ス
第百二十五條 法人ニ對シテ破產ノ宣告ヲ爲シタル場合ニ於テ其ノ法人ノ設立又ハ目的タル事業ニ付官廳ノ許可アリタルモノナルトキハ裁判所ハ破產ノ宣告アリタル旨ヲ主務官廳ニ通知スルコトヲ要ス
前項ノ規定ハ破產取消、破產廢止若ハ强制和議取消ノ決定カ確定シ又ハ破產終結ノ決定アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第二章 破產宣告
第百二十六條 債務者カ支拂ヲ爲スコト能ハサルトキハ裁判所ハ申立ニ因リ決定ヲ以テ破產ヲ宣告ス
債務者カ支拂ヲ停止シタルトキハ支拂ヲ爲スコト能ハサルモノト推定ス
第百二十七條 法人ニ對シテハ其ノ財產ヲ以テ債務ヲ完濟スルコト能ハサル場合ニ於テモ亦破產ノ宣告ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ハ合名會社及合資會社ノ存立中ハ之ヲ適用セス
第百二十八條 法人ニ對シテハ其ノ解散ノ後ト雖殘餘財產ノ引渡又ハ分配カ終了セサル間ハ破產ノ申立ヲ爲スコトヲ得
第百二十九條 相續財產ヲ以テ相續債權者及受遺者ニ對スル債務ヲ完濟スルコト能ハサルトキハ裁判所ハ申立ニ因リ決定ヲ以テ破產ヲ宣告ス
第百三十條 破產ノ申立又ハ破產ノ宣告アリタル後相續カ開始シタルトキハ破產手續ハ相續財產ニ對シテ之ヲ續行ス
破產ノ申立又ハ破產ノ宣告アリタル後ニ於ケル國籍ノ喪失ハ破產手續ニ關シテハ其ノ效力ヲ有セス
第百三十一條 相續財產ニ對シテハ民法第千四十一條ノ規定ニ依リ財產分離ノ請求ヲ爲スコトヲ得ル間ニ限リ破產ノ申立ヲ爲スコトヲ得其ノ間ニ限定承認又ハ財產分離アリタル場合ニ於テハ相續債權者及受遺者ニ對スル辨濟カ未タ終了セサル間亦同シ
第百三十二條 債權者又ハ債務者ハ破產ノ申立ヲ爲スコトヲ得
債權者カ破產ノ申立ヲ爲ストキハ其ノ債權ノ存在及破產ノ原因タル事實ヲ疏明スルコトヲ要ス
第百三十三條 民法ニ依リテ設立シタル法人又ハ產業組合ニ對シテハ理事、合名會社合資會社又ハ株式合資會社ニ對シテハ無限責任社員、株式會社又ハ相互保險會社ニ對シテハ取締役ハ破產ノ申立ヲ爲スコトヲ得
前項ニ規定スル法人ニ對シテハ淸算人モ亦破產ノ申立ヲ爲スコトヲ得
第百三十四條 理事、無限責任社員、取締役又ハ淸算人ノ全員カ破產ノ申立ヲ爲ササル場合ニ於テハ破產ノ原因タル事實ヲ疏明スルコトヲ要ス
第百三十五條 前二條ノ規定ハ第百三十三條ニ規定スル法人以外ノ法人ニ之ヲ準用ス
第百三十六條 相續財產ニ對シテハ相續債權者及受遺者ノ外相續人、相續財產管理人及遺言執行者モ亦破產ノ申立ヲ爲スコトヲ得
相續財產管理人、遺言執行者又ハ限定承認若ハ財產分離アリタル場合ニ於テハ相續人カ相續財產ヲ以テ相續債權者及受遺者ニ對スル債務ヲ完濟スルコト能ハサルコトヲ發見シタルトキハ直ニ破產ノ申立ヲ爲スコトヲ要ス
相續人、相續財產管理人又ハ遺言執行者カ破產ノ申立ヲ爲ストキハ破產ノ原因タル事實ヲ疏明スルコトヲ要ス
第百三十七條 破產申立ノ當時旣ニ外國ニ於テ破產ノ宣告アリタルトキハ破產申立人ハ破產ノ原因タル事實ヲ疏明スルコトヲ要セス
第百三十八條 破產申立人カ債權者ニ非サルトキハ申立ト同時ニ財產ノ槪況ヲ示スヘキ書面竝債權者及債務者ノ一覽表ヲ提出スルコトヲ要ス申立ト同時ニ提出スルコト能ハサルトキハ爾後遲滯ナク之ヲ提出スルコトヲ要ス
第百三十九條 債權者カ破產ノ申立ヲ爲ス場合ニ於テハ破產手續ノ費用トシテ裁判所カ相當ト認ムル金額ノ豫納アルコトヲ要ス豫納ナキトキハ裁判所ハ其ノ申立ヲ棄却スルコトヲ得
費用ノ豫納ニ關スル決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第百四十條 破產申立人カ債權者ニ非サルトキハ破產手續ノ費用ハ假ニ國庫ヨリ之ヲ支辨ス破產申立人カ債權者ナル場合ニ於テ費用ノ豫納ナキニ拘ラス裁判所カ破產ノ宣告ヲ爲シタルトキ、豫納金カ不足ナルニ至リタルトキ及裁判所カ職權ヲ以テ破產ノ宣告ヲ爲シタルトキ亦同シ
第百四十一條 破產決定書ニハ破產宣告ノ年月日時ヲ記載スルコトヲ要ス
第百四十二條 裁判所ハ破產ノ宣告ト同時ニ破產管財人ヲ選任シ且左ノ事項ヲ定ムルコトヲ要ス
一 債權屆出ノ期間但シ其ノ期間ハ破產宣告ノ日ヨリ二週間以上四月以下ナルコトヲ要ス
二 第一囘ノ債權者集會ノ期日但シ其ノ期日ハ破產宣告ノ日ヨリ一月內ナルコトヲ要ス
三 債權調査ノ期日但シ其ノ期日ト債權屆出期間ノ末日トノ間ニハ一週間以上一月以下ノ期間ヲ存スルコトヲ要ス
前項第二號及第三號ノ期日ハ之ヲ併合スルコトヲ妨ケス
第百四十三條 裁判所カ破產ノ宣告ヲ爲シタルトキハ直ニ左ノ事項ヲ公告スルコトヲ要ス
一 破產決定ノ主文
二 破產管財人ノ氏名及住所
三 前條ノ規定ニ依リ定メタル期間及期日
四 破產者ノ債務者及破產財團ニ屬スル財產ノ所持者ハ破產者ニ辨濟ヲ爲シ又ハ其ノ財產ヲ交付スヘカラサル旨及債務ヲ負擔スルコト又ハ其ノ財產ヲ所持スルコト、所持者カ別除權ヲ有スルトキハ其ノ債權ヲ有スルコトヲ一定ノ期間內ニ破產管財人ニ屆出ツヘキ旨ノ命令
知レタル債權者、債務者及財產所持者ニハ前項ニ揭クル事項ヲ記載シタル書面ヲ送達スルコトヲ要ス
前二項ノ規定ハ第一項第二號乃至第四號ニ揭クル事項ニ變更ヲ生シタル場合ニ之ヲ準用ス
第一項第四號ノ屆出ヲ怠リタル者ハ之ニ因リテ破產財團ニ生シタル損害ヲ賠償スルコトヲ要ス
第百四十四條 裁判所カ破產ノ宣告ヲ爲シタルトキハ遲滯ナク其ノ旨ヲ檢事ニ通知スルコトヲ要ス
第百四十五條 裁判所カ破產財團ヲ以テ破產手續ノ費用ヲ償フニ足ラスト認ムルトキハ破產ノ宣告ト同時ニ破產廢止ノ決定ヲ爲スコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ裁判所ハ破產決定ノ主文竝破產廢止ノ決定ノ主文及理由ノ要領ヲ公告スルコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テ破產廢止ノ決定ノ取消カ確定シタルトキハ前三條ノ規定ヲ準用ス
第百四十六條 前條ノ規定ハ無限責任又ハ保證責任ノ相互保險會社、產業組合其ノ他ノ法人ニハ之ヲ適用セス破產手續ノ費用ヲ償フニ足ルヘキ金額ノ豫納アリタル場合亦同シ
第百四十七條 破產者ハ裁判所ノ許可ヲ得ルニ非サレハ其ノ居住地ヲ離ルルコトヲ得ス
第百四十八條 裁判所ハ必要ト認ムルトキハ破產者ノ引致ヲ命スルコトヲ得
引致ハ引致狀ヲ發シテ之ヲ爲ス
引致ニハ刑事訴訟法中勾引ニ關スル規定ヲ準用ス
第百四十九條 破產者カ逃走シ又ハ財產ヲ隱匿若ハ毀棄スル虞アルトキハ裁判所ハ其ノ監守ヲ命スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ裁判所ハ決定書ノ正本ヲ檢事ニ送致スルコトヲ要ス檢事ハ破產者ノ居住地ヲ管轄スル警察官署ニ命シテ監守ヲ執行セシム
第百五十條 監守ヲ命セラレタル破產者ハ裁判所ノ許可ヲ得ルニ非サレハ外人ト面接又ハ通信スルコトヲ得ス
第百五十一條 監守ノ必要カ止ミタルトキハ裁判所ハ破產者若ハ破產管財人ノ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ監守ノ決定ヲ取消スコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テハ裁判所ハ決定書ノ正本ヲ檢事ニ送致スルコトヲ要ス檢事ハ警察官署ニ命シテ監守ヲ解カシム
第百五十二條 前五條ノ規定ハ破產者ノ法定代理人、理事及之ニ準スヘキ者竝支配人ニ付之ヲ準用ス相續財產ニ對スル破產ニ於テ相續人及前戶主竝其ノ法定代理人及支配人ニ付亦同シ
第百五十三條 破產者、其ノ代理人竝其ノ理事及之ニ準スヘキ者ハ破產管財人、監査委員又ハ債權者集會ノ請求ニ因リ破產ニ關シ必要ナル說明ヲ爲スコトヲ要ス相續財產ニ對スル破產ニ於テ相續人、前戶主、相續財產管理人、遺言執行者竝相續人及前戶主ノ代理人亦同シ
前項ノ規定ハ前ニ前項ニ規定スル資格ヲ有シタル者ニ之ヲ準用ス
第百五十四條 破產ノ申立アリタルトキハ裁判所ハ破產宣告前ト雖債務者及第百五十二條ニ規定スル者ノ引致又ハ監守ヲ命スルコトヲ得
第百五十五條 破產ノ申立アリタルトキハ裁判所ハ破產宣告前ト雖利害關係人ノ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ破產財團ニ關シ假差押、假處分其ノ他ノ必要ナル保全處分ヲ命スルコトヲ得
裁判所ハ前項ノ規定ニ依ル處分ヲ變更シ又ハ之ヲ取消スコトヲ得
前二項ノ規定ニ依ル裁判ハ決定ヲ以テ之ヲ爲ス
第百五十六條 破產取消ノ決定カ確定シタル場合ニ於テハ裁判所ハ直ニ其ノ主文ヲ公告スルコトヲ要ス
第百四十三條第二項、第百四十四條、第百五十一條第二項、第百五十二條及第三百五十五條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三章 破產管財人
第百五十七條 破產管財人ハ裁判所之ヲ選任ス
第百五十八條 破產管財人ハ一人トス但シ裁判所必要ト認ムルトキハ數人ヲ選任スルコトヲ得
第百五十九條 裁判所ハ破產管財人ニ其ノ選任ヲ證スル書面ヲ交付スルコトヲ要ス
破產管財人ハ其ノ職務ヲ行フニ當リ利害關係人ノ請求アルトキハ前項ノ書面ヲ示スコトヲ要ス
第百六十條 破產管財人ハ正當ノ事由アルニ非サレハ其ノ任務ヲ辭スルコトヲ得ス
破產管財人カ其ノ任務ヲ辭セムトスルトキハ裁判所ニ申立ヲ爲スコトヲ要ス
第百六十一條 破產管財人ハ裁判所ノ監督ニ屬ス
第百六十二條 破產財團ニ關スル訴ニ付テハ破產管財人ヲ以テ原告又ハ被告トス
第百六十三條 破產管財人數人アルトキハ共同シテ其ノ職務ヲ行フ但シ裁判所ノ許可ヲ得テ職務ヲ分掌スルコトヲ得
破產管財人數人アルトキハ第三者ノ意思表示ハ其ノ一人ニ對シテ之ヲ爲スヲ以テ足ル
第百六十四條 破產管財人ハ善良ナル管理者ノ注意ヲ以テ其ノ職務ヲ行フコトヲ要ス
破產管財人カ前項ノ注意ヲ怠リタルトキハ其ノ破產管財人ハ利害關係人ニ對シ連帶シテ損害賠償ノ責ニ任ス
第百六十五條 破產管財人ハ臨時故障アル場合ニ於テ其ノ職務ヲ行ハシムル爲自己ノ責任ヲ以テ豫メ代理人ヲ選任スルコトヲ得
前項ノ代理人ノ選任ハ裁判所ノ認可ヲ得ルコトヲ要ス
第百六十六條 破產管財人ハ費用ノ前拂及報酬ヲ受クルコトヲ得其ノ額ハ裁判所之ヲ定ム
第百六十七條 裁判所ハ債權者集會ノ決議若ハ監査委員ノ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ破產管財人ヲ解任スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ破產管財人ヲ審訊スルコトヲ要ス
第百六十八條 破產管財人ノ任務終了ノ場合ニ於テハ破產管財人又ハ其ノ相續人ハ遲滯ナク債權者集會ニ計算ノ報告ヲ爲スコトヲ要ス
破產者、破產債權者又ハ後任ノ破產管財人カ債權者集會ニ於テ計算ニ付異議ヲ述ヘサリシトキハ之ヲ承認シタルモノト看做ス
破產管財人ハ利害關係人ノ閱覽ニ供スル爲計算報告書及監査委員ノ意見書ヲ債權者集會ノ日ヨリ三日前ニ裁判所ニ提出スルコトヲ要ス
第百六十九條 破產管財人ノ任務終了ノ場合ニ於テ急迫ノ事情アルトキハ破產管財人又ハ其ノ相續人ハ後任ノ破產管財人又ハ破產者カ財產ヲ管理スルコトヲ得ルニ至ル迄必要ナル處分ヲ爲スコトヲ要ス
第四章 監査委員
第百七十條 監査委員ヲ置クカ否ハ第一囘ノ債權者集會ニ於テ之ヲ議決スルコトヲ要ス但シ後ノ債權者集會ニ於テ其ノ決議ヲ變更スルコトヲ得
第百七十一條 監査委員ハ三人以上トシ債權者集會ニ於テ之ヲ選任ス
監査委員ノ選任ノ決議ハ裁判所ノ認可ヲ得ルコトヲ要ス
第百七十二條 監査委員ノ職務ノ執行ハ過半數ヲ以テ之ヲ決ス
特別ノ利害關係ヲ有スル者ハ表決ヲ爲スコトヲ得ス
第百七十三條 各監査委員ハ何時ニテモ破產管財人ニ對シテ破產財團ニ關スル報告ヲ求メ又ハ破產財團ノ狀況ヲ調査スルコトヲ得
第百七十四條 監査委員ハ何時ニテモ債權者集會ノ決議ヲ以テ之ヲ解任スルコトヲ得
重要ナル事由アルトキハ裁判所ハ利害關係人ノ申立ニ因リ監査委員ヲ解任スルコトヲ得
第百七十五條 第百六十四條及第百六十六條ノ規定ハ監査委員ニ之ヲ準用ス
第五章 債權者集會
第百七十六條 債權者集會ハ破產管財人若ハ監査委員ノ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ裁判所之ヲ招集ス屆出ヲ爲シタル總債權ニ付裁判所ノ評價シタル額ノ五分ノ一以上ニ當ル破產債權者ノ申立アリタルトキ亦同シ
第百七十七條 債權者集會ノ期日及會議ノ目的タル事項ハ裁判所之ヲ公告スルコトヲ要ス
債權者集會ノ延期又ハ續行ニ付言渡アリタルトキハ送達又ハ公告ヲ爲スコトヲ要セス
第百七十八條 債權者集會ハ裁判所之ヲ指揮ス
第百七十九條 債權者集會ノ決議ニハ議決權ヲ行フコトヲ得ヘキ出席破產債權者ノ過半數ニシテ其ノ債權額カ其ノ者ノ總債權ノ半額ヲ超ユル者ノ同意アルコトヲ要ス
債權者集會ノ決議ニ付特別ノ利害關係ヲ有スル者ハ其ノ議決權ヲ行フコトヲ得ス
第百八十條 前條ノ規定ニ依リ決議ヲ爲スコト能ハサルトキト雖議決スヘキ事項ニ付同意シタル者ノ債權額カ議決權ヲ行フコトヲ得ヘキ出席破產債權者ノ總債權ノ半額ヲ超ユルトキハ裁判所ハ決定ヲ以テ決議アリタルモノト看做スコトヲ得
前項ノ決定ハ裁判所之ヲ公告スルコトヲ要ス其ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第百八十一條 破產債權者ハ代理人ヲ以テ其ノ議決權ヲ行フコトヲ得此ノ場合ニ於テハ代理人ハ代理權ヲ證スル書面ヲ提出スルコトヲ要ス
第百八十二條 破產債權者ハ確定債權額ニ應シテ其ノ議決權ヲ行フコトヲ得
未確定債權、停止條件附債權、將來ノ請求權又ハ別除權ノ行使ニ依リテ辨濟ヲ受クルコト能ハサルヘキ債權額ニ付破產管財人又ハ破產債權者ノ異議アルトキハ裁判所ハ議決權ヲ行ハシムヘキカ否及如何ナル金額ニ付之ヲ行ハシムヘキカヲ定ム
裁判所ハ利害關係人ノ申立ニ因リ何時ニテモ前項ノ規定ニ依ル決定ヲ變更スルコトヲ得
前二項ノ規定ニ依ル決定ハ其ノ言渡アリタルトキハ送達ヲ爲スコトヲ要セス其ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第百八十三條 債權者集會ノ決議ハ之ヲ以テ監査委員ノ同意ニ代フルコトヲ得
債權者集會ノ決議カ監査委員ノ意見ト異ナルトキハ其ノ決議ニ從フ
第百八十四條 債權者集會ノ決議カ破產債權者ノ一般ノ利益ニ反スルトキハ裁判所ハ破產管財人、監査委員若ハ破產債權者ノ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ其ノ決議ノ執行ヲ禁止スルコトヲ得
議決權ヲ有セサリシ破產債權者カ前項ノ申立ヲ爲スニハ其ノ破產債權者タルコトヲ疏明スルコトヲ要ス
第一項ノ規定ニ依ル禁止決定ハ其ノ言渡アリタルトキハ送達ヲ爲スコトヲ要セス
第六章 破產財團ノ管理及換價
第百八十五條 破產管財人ハ就職ノ後直ニ破產財團ニ屬スル財產ノ占有及管理ニ著手スルコトヲ要ス
第百八十六條 破產管財人必要ト認ムルトキハ裁判所書記、執達吏又ハ公證人ヲシテ破產財團ニ屬スル財產ニ封印ヲ爲サシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テ封印ヲ爲シタル者ハ調書ヲ作ルコトヲ要ス
前項ノ規定ハ封印除去ノ場合ニ之ヲ準用ス
第百八十七條 裁判所書記ハ破產宣告ノ後直ニ破產者ノ財產ニ關スル帳簿ヲ閉鎖シ之ニ署名捺印シ且調書ヲ作リ之ニ帳簿ノ現狀ヲ記載スルコトヲ要ス
第百八十八條 破產管財人ハ遲滯ナク裁判所書記、執達吏又ハ公證人ノ立會ヲ以テ破產財團ニ屬スル一切ノ財產ノ價額ヲ評定スルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ遲滯ノ虞アル場合ヲ除クノ外破產者ノ立會ヲ求ムルコトヲ要ス
第百八十九條 破產管財人ハ財產目錄及貸借對照表ヲ作ルコトヲ要ス
破產管財人ハ財產目錄及貸借對照表ノ謄本ニ署名捺印シ之ヲ裁判所ニ提出スルコトヲ要ス封印ニ關スル調書ニ付亦同シ
利害關係人ハ前項ニ規定スル書類ノ閱覽ヲ求ムルコトヲ得
第百九十條 裁判所ハ通信官署又ハ公衆通信取扱所ニ對シ破產者ニ宛テタル郵便物又ハ電報ヲ破產管財人ニ配達スヘキ旨ヲ囑託スルコトヲ要ス
破產管財人ハ其ノ受取リタル前項ノ郵便物又ハ電報ノ開披ヲ爲スコトヲ得
破產者ハ前項ノ郵便物又ハ電報ノ閱覽ヲ求メ且破產財團ニ關セサルモノノ交付ヲ求ムルコトヲ得
第百九十一條 裁判所ハ破產者ノ申立ニ因リ破產管財人ノ意見ヲ聽キ前條第一項ノ囑託ヲ取消シ又ハ之ヲ制限スルコトヲ得
破產取消若ハ破產廢止ノ決定カ確定シタルトキ又ハ破產終結ノ決定アリタルトキハ裁判所ハ前條第一項ノ囑託ヲ取消スコトヲ要ス
第百九十二條 第一囘ノ債權者集會前ニ於テハ破產管財人ハ裁判所ノ許可ヲ得テ破產者及之ニ扶養セラルル者ニ扶助料ヲ與ヘ又ハ破產者ノ營業ヲ繼續スルコトヲ得
貨幣、有價證券其ノ他ノ高價品ノ保管方法ハ裁判所之ヲ定ム
第百九十三條 破產管財人ハ破產宣告ニ至リタル事情竝破產者及破產財團ニ關スル經過及現狀ニ付第一囘ノ債權者集會ニ報告ヲ爲スコトヲ要ス
第百九十四條 第一囘ノ債權者集會ニ於テハ扶助料ノ給與、營業ノ廢止又ハ繼續及高價品ノ保管方法ニ付決議ヲ爲スコトヲ要ス
第百九十五條 破產管財人ハ別除權者ニ對シ其ノ權利ノ目的タル財產ヲ示スヘキコトヲ求ムルコトヲ得
破產管財人カ前項ノ財產ヲ評價セムトスルトキハ別除權者ハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
第百九十六條 一般ノ債權調査ノ終了前ニ於テハ破產管財人ハ破產財團ノ換價ヲ爲スコトヲ得ス一般ノ債權調査ノ終了前强制和議ノ提供アリタル場合ニ於テ其ノ落著ニ至ル迄亦同シ
破產財團ニ屬スル財產ニシテ遲滯ナク之ヲ換價スルニ非サレハ破產財團ニ損害ヲ生スル虞アルモノハ前項ノ規定ニ拘ラス監査委員ノ同意、監査委員ナキトキハ裁判所ノ許可ヲ得テ破產管財人其ノ換價ヲ爲スコトヲ得
第百九十七條 破產管財人左ニ揭クル行爲ヲ爲スニハ監査委員ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス但シ第七號乃至第十四號ニ揭クル行爲ニ付千圓以上ノ價額ヲ有スルモノニ關セサルトキハ此ノ限ニ在ラス
一 不動產ニ關スル物權、登記スヘキ日本船舶及外國船舶ノ任意賣却
二 鑛業權、漁業權、特許權、意匠權、實用新案權及著作權ノ任意賣却
三 營業ノ讓渡
四 商品ノ一括賣却
五 借財
六 第九條第二項ノ規定ニ依ル相續抛棄ノ承認、第十條ノ規定ニ依ル包括遺贈抛棄ノ承認及第十一條第一項ノ規定ニ依ル特定遺贈ノ抛棄
七 動產ノ任意賣却
八 債權及有價證券ノ讓渡
九 第五十九條第一項ノ規定ニ依ル履行ノ請求
十 訴ノ提起
十一 和解及仲裁契約
十二 權利ノ抛棄
十三 財團債權、取戾權及別除權ノ承認
十四 別除權ノ目的ノ受戾
第百九十八條 第一囘ノ債權者集會前ニ於テ前條ノ規定ニ依リ監査委員ノ同意ヲ要スル行爲ヲ爲スノ必要アルトキハ破產管財人ハ裁判所ノ許可ヲ得ルコトヲ要ス
監査委員ヲ置カサル場合ニ於テハ破產管財人ハ債權者集會ノ決議ヲ經ルコトヲ要ス但シ急迫ノ必要アルトキハ裁判所ノ許可ヲ得ルヲ以テ足ル
第百九十九條 前二條ノ場合ニ於テ破產管財人ハ遲滯ノ虞アル場合ヲ除クノ外破產者ノ意見ヲ聽クコトヲ要ス
第二百條 破產管財人カ第百九十七條ニ揭クル行爲ヲ爲スニ付監査委員ノ同意ヲ得タルトキト雖裁判所ハ破產者ノ申立ニ因リ其ノ行爲ノ執行ノ中止ヲ命シ且其ノ行爲ニ關スル決議ヲ爲サシムル爲債權者集會ヲ招集スルコトヲ得
第二百一條 破產管財人カ第百九十六條乃至第百九十八條ノ規定ニ違反シ又ハ前條ノ規定ニ依ル執行中止ノ命令ニ違反シタルトキト雖之ヲ以テ善意ノ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第二百二條 第百九十七條第一號及第二號ニ揭クルモノノ換價ハ民事訴訟法ニ依リテ之ヲ爲ス
第二百三條 破產管財人ハ民事訴訟法ニ依リ別除權ノ目的タル財產ノ換價ヲ爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ別除權者ハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
前項ノ場合ニ於テ別除權者ノ受クヘキ金額カ未タ確定セサルトキハ破產管財人ハ代金ヲ別ニ寄託スルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ別除權ハ代金ノ上ニ存ス
第二百四條 別除權者カ法律ニ定メタル方法ニ依ラスシテ別除權ノ目的ヲ處分スル權利ヲ有スルトキハ裁判所ハ破產管財人ノ申立ニ因リ別除權者カ其ノ處分ヲ爲スヘキ期間ヲ定ム
別除權者カ前項ノ期間內ニ處分ヲ爲ササルトキハ前項ノ權利ヲ失フ
第二百五條 破產管財人ハ債權者集會ノ定ムル所ニ依リ債權者集會又ハ監査委員ニ破產財團ノ狀況ヲ報告スルコトヲ要ス
第二百六條 破產管財人カ其ノ寄託シタル貨幣、有價證券其ノ他ノ高價品ノ返還ヲ求ムルニハ監査委員ノ同意、監査委員ナキトキハ裁判所ノ許可ヲ得ルコトヲ要ス但シ債權者集會ニ於テ別段ノ決議ヲ爲シタルトキハ其ノ決議ニ依ル
破產管財人カ前項ノ規定ニ違反シタル場合ニ於テ受寄者カ善意ニシテ且過失ナキトキハ辨濟ハ其ノ效力ヲ有ス
前二項ノ規定ハ破產管財人カ受寄者ヲシテ支拂其ノ他ノ給付ヲ爲サシムル爲證券ヲ發行スル場合ニ之ヲ準用ス
第二百七條 商法第九十二條ノ規定ハ法人カ破產ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ之ヲ準用ス相互保險會社カ破產ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ於テ基金ノ支拂ニ付亦同シ
第二百八條 無限責任又ハ保證責任ノ相互保險會社カ破產ノ宣告ヲ受ケタルトキハ破產管財人ハ損失分擔ノ割合ニ應シ會社ノ債務ヲ辨濟スルニ必要ナル金額ヲ社員ニ賦課スルコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テ社員中ニ無資力者アルトキハ其ノ負擔スヘキ金額ハ他ノ社員之ヲ負擔ス
第二百九條 前條ノ場合ニ於テハ破產管財人ハ第百八十九條第二項ノ規定ニ依リ財產目錄及貸借對照表ノ謄本ヲ裁判所ニ提出シタル後直ニ計算表ヲ作リ之ニ各社員ノ氏名、住所及負擔額ヲ記載スルコトヲ要ス
第二百十條 破產管財人ハ前條ノ計算表ニ主務官廳カ認證シタル定款ノ謄本ヲ添附シ之ヲ裁判所ニ提出シテ其ノ認可ヲ申請スルコトヲ要ス
破產ノ宣告ヲ受ケタル相互保險會社ニ關スル登記簿カ破產裁判所タル區裁判所ノ出張所ニ在ルトキハ登記所カ交付シタル社員名簿ノ謄本ヲ申請書ニ添附スルコトヲ要ス
第二百十一條 前條ノ申請アリタルトキハ裁判所ハ計算表ニ記載シタル社員ヲ呼出ス爲期日ヲ定メ之ヲ公告スルコトヲ要ス
裁判所ハ利害關係人ノ閱覽ニ供スル爲期日ヨリ三日前ニ計算表ヲ備ヘ置クコトヲ要ス
第二百十二條 裁判所ハ前條ノ期日ニ於テ相互保險會社ノ取締役、監査役、破產管財人及監査委員ノ意見ヲ聽クコトヲ要ス
社員ハ期日ニ於テ異議ヲ述フルコトヲ得
第二百十三條 裁判所ハ社員ノ異議ヲ理由アリトスルトキ其ノ他必要ト認ムルトキハ計算表ヲ更正シ又ハ破產管財人ヲシテ之ヲ更正セシメタル後計算表認可ノ決定ヲ爲スコトヲ要ス
計算表認可ノ決定ハ期日又ハ直ニ言渡シタル一週間內ノ期日ニ於テ之ヲ言渡スコトヲ要ス
計算表認可ノ決定書ハ利害關係人ノ閱覽ニ供スル爲計算表ト共ニ之ヲ備ヘ置クコトヲ要ス
第二百十四條 第二百十一條第一項及前條第一項第二項ノ規定ニ依ル決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第二百十五條 計算表認可ノ決定アリタルトキハ破產管財人ハ遲滯ナク各社員ヲシテ其ノ負擔額ノ拂込ヲ爲サシムルコトヲ要ス
社員ニ對スル强制執行ハ執行文ヲ附シタル決定ノ正本及計算表ノ抄本ニ依リテ之ヲ爲ス
民事訴訟法第五百二十一條、第五百四十五條及第五百四十六條ノ規定ニ依ル訴ハ第二百四十五條ニ定ムル裁判所ノ管轄ニ專屬ス
第二百十六條 各社員ハ計算表認可ノ決定言渡ノ日ヨリ一月ノ不變期間內ニ破產管財人ニ對シ計算表ニ付異議ノ訴ヲ提起スルコトヲ得
異議ノ訴ハ期日ニ於テ其ノ理由ヲ主張シタルトキ又ハ過失ナクシテ之ヲ主張スルコト能ハサリシコトヲ疏明スルニ非サレハ之ヲ提起スルコトヲ得ス
第二百十七條 前條ノ異議ノ訴ハ破產裁判所ノ管轄ニ專屬ス但シ訴訟ノ目的ノ價額カ區裁判所ノ權限ヲ超ユル場合ニ於テ本案ノ辯論前ニ當事者ノ申立アリタルトキハ決定ヲ以テ破產裁判所ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所ニ一切ノ事件ヲ移送スルコトヲ要ス
前項ノ決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得其ノ抗告期間ハ決定言渡ノ日ヨリ之ヲ起算ス
第一項ノ決定カ確定シタルトキハ事件ハ地方裁判所ニ繫屬ス此ノ場合ニ於テハ區裁判所ノ訴訟手續ニ關スル費用ハ之ヲ地方裁判所ノ訴訟手續ニ關スル費用ノ一部ト看做ス
第二百十八條 第二百十六條第一項ノ期間內ハ異議ノ訴ニ付口頭辯論ヲ開クコトヲ得ス
數個ノ訴ノ辯論及裁判ハ併合シテ之ヲ爲スコトヲ要ス
第二百十九條 强制執行ノ停止及續行竝執行處分ノ取消ニ付テハ民事訴訟法第五百四十七條及第五百四十八條ノ規定ヲ準用ス
第二百二十條 異議ノ訴ニ付爲シタル判決ハ社員ノ全員ニ對シテ其ノ效力ヲ有ス
第二百二十一條 社員ノ無資力、異議ノ訴其ノ他ノ理由ニ因リ社員ニ對スル賦課ヲ必要トスルトキハ破產管財人ハ更ニ計算表ヲ作ルコトヲ要ス
第二百二十二條 最後ノ配當ノ許可アリタルトキハ破產管財人ハ最後ノ計算表ヲ作ルコトヲ要ス
第二百二十三條 最後ノ計算表ニ依リ全部ノ辨濟ヲ爲スニ足ルヘキ金額ヲ得ルコト能ハサルトキハ破產管財人ハ更ニ計算表ヲ作ルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ脫退シタル社員ニ對シテモ亦其ノ責任ノ限度內ニ於テ賦課ヲ爲スコトヲ得
第二百二十四條 前十六條ノ規定ハ無限責任又ハ保證責任ノ產業組合其ノ他ノ法人カ破產ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ之ヲ準用ス
第二百二十五條 匿名組合契約カ營業者ノ破產ニ因リテ終了シタルトキハ破產管財人ハ匿名組合員カ負擔スヘキ損失ノ額ヲ限度トシテ出資ヲ爲サシムルコトヲ得
第二百二十六條 相續人カ破產ノ宣告ヲ受ケタル後限定承認ヲ爲シタルトキ又ハ財產分離アリタルトキハ相續財產ノ處分ハ破產管財人之ヲ爲スコトヲ要ス限定承認又ハ財產分離アリタル後相續人カ破產ノ宣告ヲ受ケタルトキ亦同シ
破產管財人カ前項ノ處分ヲ終ヘタルトキハ殘餘財產ニ付破產財團ノ財產目錄及貸借對照表ヲ補充スルコトヲ要ス
前二項ノ規定ハ包括受遺者カ破產ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ之ヲ準用ス
第二百二十七條 前條ノ規定ハ第八條又ハ第九條第一項ノ規定ニ依リ限定承認ノ效力ヲ有スル場合ニ之ヲ準用ス
第七章 破產債權ノ屆出及調査
第二百二十八條 破產債權者ハ裁判所ノ定メタル期間內ニ其ノ債權ノ額及原因、一般ノ先取特權其ノ他一般ノ優先權アルトキハ其ノ權利ヲ裁判所ニ屆出テ且證據書類又ハ其ノ謄本若ハ抄本ヲ提出スルコトヲ要ス
別除權者ハ前項ニ規定スル事項ノ外別除權ノ目的及其ノ行使ニ依リテ辨濟ヲ受クルコト能ハサルヘキ債權額ヲ屆出ツルコトヲ要ス
破產債權ニ付破產宣告ノ當時訴訟カ繫屬スルトキハ第一項ニ規定スル事項ノ外裁判所、件名及番號ヲ屆出ツルコトヲ要ス
第二百二十九條 裁判所書記ハ債權表ヲ作リ之ニ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス
一 債權者ノ氏名及住所
二 債權ノ額及原因
三 優先權アルトキハ其ノ權利
四 別除權者カ前條第二項ノ規定ニ依リテ屆出テタル債權額
裁判所書記ハ債權表ノ謄本ヲ破產管財人ニ交付スルコトヲ要ス
第二百三十條 債權ノ屆出ニ關スル書類及債權表ハ利害關係人ノ閱覽ニ供スル爲之ヲ裁判所ニ備ヘ置クコトヲ要ス
第二百三十一條 債權調査ノ期日ニ於テハ屆出アリタル各債權ニ付第二百二十九條第一項ニ揭クル事項ヲ調査ス
第二百三十二條 破產者ハ債權調査ノ期日ニ出頭シテ意見ヲ述フルコトヲ要ス但シ正當ノ事由アルトキハ代理人ヲ出頭セシムルコトヲ得
屆出ヲ爲シタル破產債權者又ハ其ノ代理人ハ債權調査ノ期日ニ出頭シテ意見ヲ述フルコトヲ得代理人ハ代理權ヲ證スル書面ヲ提出スルコトヲ要ス
第二百三十三條 債權ノ調査ハ破產管財人出頭スルニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
第二百三十四條 期間後ニ屆出アリタル債權ニ付テハ破產管財人及破產債權者ノ異議アル場合ヲ除クノ外債權調査ノ一般期日ニ於テ其ノ調査ヲ爲スコトヲ得
破產管財人又ハ破產債權者ノ異議アリタルトキハ裁判所ハ前項ノ債權ノ調査ヲ爲ス爲特別期日ヲ定ムルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ費用ハ期間後ニ屆出ヲ爲シタル破產債權者ノ負擔トス
第二百三十五條 前條ノ規定ハ破產債權者カ屆出テタル事項ニ付屆出期間後他ノ破產債權者ノ利益ヲ害スヘキ變更ヲ加ヘタル場合ニ之ヲ準用ス
第二百三十六條 第二百三十四條第二項ノ規定ハ破產債權者カ債權調査ノ一般期日後ニ債權ノ屆出ヲ爲シタル場合ニ之ヲ準用ス
第二百三十七條 債權調査ノ特別期日ヲ定ムル決定ハ之ヲ公告シ且破產管財人、破產者及屆出ヲ爲シタル破產債權者ニ之ヲ送達スルコトヲ要ス
第二百三十八條 前條ノ規定ハ債權調査ノ期日ノ變更竝債權調査ノ延期及續行ニ之ヲ準用ス但シ言渡アリタルトキハ公告及送達ヲ爲スコトヲ要セス
第二百三十九條 前二條ノ規定ニ依ル決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第二百四十條 債權調査ノ期日ニ於テ破產管財人及破產債權者ノ異議ナカリシトキハ債權ノ額及優先權ハ之ニ因リテ確定ス
破產者カ異議ヲ述ヘタル債權ニ付破產宣告ノ當時訴訟カ繫屬スルトキハ債權者ハ破產者ヲ相手方トシテ之ヲ受繼クコトヲ得
第二百四十一條 裁判所ハ債權調査ノ結果ヲ債權表ニ記載スルコトヲ要ス破產者ノ述ヘタル異議亦同シ
裁判所書記ハ確定シタル債權ノ證書ニ確定ノ旨ヲ記載シ裁判所ノ印ヲ押捺スルコトヲ要ス
第二百四十二條 確定債權ニ付テハ債權表ノ記載ハ破產債權者ノ全員ニ對シ確定判決ト同一ノ效力ヲ有ス
第二百四十三條 破產債權者カ債權調査ノ期日ニ出頭セサル場合ニ於テ其ノ債權ニ付異議アリタルトキハ裁判所ハ之ヲ其ノ債權者ニ通知スルコトヲ要ス
第百十八條第一項ノ規定ハ前項ノ通知ニ之ヲ準用ス
第二百四十四條 異議アル債權ニ付テハ其ノ債權者ハ異議者ニ對シ訴ヲ以テ其ノ債權ノ確定ヲ求ムルコトヲ得
異議者數人アルトキハ之ヲ共同被告トス破產者カ異議者ノ一人ナルトキ亦同シ
裁判所ハ債權者ニ其ノ債權ニ關スル債權表ノ抄本ヲ交付スルコトヲ要ス
第二百四十五條 債權確定ノ訴ハ破產裁判所ノ管轄ニ專屬ス但シ訴カ地方裁判所ノ權限ニ屬スルトキハ破產裁判所ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所ノ管轄ニ專屬ス
第二百四十六條 異議アル債權ニ付破產宣告ノ當時訴訟カ繫屬スル場合ニ於テ債權者カ其ノ債權ノ確定ヲ求メムトスルトキハ異議者ヲ相手方トシテ訴訟ヲ受繼クコトヲ要ス
第二百四十四條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二百四十七條 破產債權者ハ第二百四十一條第一項ノ規定ニ依リ債權表ニ記載シタル事項ニ付テノミ債權確定ノ訴ヲ提起シ又ハ第二百四十條第二項若ハ前條ノ規定ニ依リ訴訟ヲ受繼クコトヲ得
第二百四十八條 執行力アル債務名義又ハ終局判決アル債權ニ付テハ異議者ハ破產者カ爲スコトヲ得ヘキ訴訟手續ニ依リテノミ其ノ異議ヲ主張スルコトヲ得
第二百四十四條第二項、第三項、第二百四十六條及前條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二百四十九條 裁判所ハ破產管財人又ハ破產債權者ノ申立ニ因リ債權ノ確定ニ關スル訴訟ノ結果ヲ債權表ニ記載スルコトヲ要ス
第二百五十條 債權ノ確定ニ關スル訴訟ニ付爲シタル判決ハ破產債權者ノ全員ニ對シテ其ノ效力ヲ有ス
第二百五十一條 破產財團カ債權ノ確定ニ關スル訴訟ニ因リテ利益ヲ受ケタルトキハ異議ヲ主張シタル破產債權者ハ其ノ利益ノ限度ニ於テ財團債權者トシテ訴訟費用ノ償還ヲ請求スルコトヲ得
第二百五十二條 債權ノ確定ニ關スル訴訟ノ目的ノ價額ハ配當ノ豫定額ヲ標準トシ受訴裁判所之ヲ定ム
第二百五十三條 公訴附帶ノ私訴ニ付テハ第二百四十六條又ハ第二百四十八條ノ規定ニ依リ訴訟ヲ受繼キ、上訴ヲ爲シ又ハ再審ノ訴ヲ提起スルコトヲ得ス
公訴附帶ノ私訴ノ目的タル債權ニ付破產者カ異議者ノ一人ナル場合ニ於テハ之ヲ共同被告トスルコトヲ得ス
第二百五十四條 第三十八條第四號ニ揭クル請求權ニ付テハ國又ハ公共團體ハ遲滯ナク其ノ額及原因ヲ裁判所ニ屆出ツルコトヲ要ス
第二百四十一條第一項ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ屆出アリタル請求權ニ付之ヲ準用ス
第二百五十五條 前條第一項ノ規定ニ依リ屆出アリタル請求權ノ原因カ訴願又ハ行政訴訟ヲ爲スコトヲ得ヘキ處分ナルトキハ裁判所ハ遲滯ナク其ノ請求權ノ額及原因ヲ破產管財人ニ通知スルコトヲ要ス
第二百四十八條乃至第二百五十條ノ規定ハ破產管財人カ異議ヲ主張スル場合ニ之ヲ準用ス
第八章 配當
第二百五十六條 一般ノ債權調査終了後ニ於テハ破產管財人配當スルニ適當ナル金錢アリト認ムル每ニ遲滯ナク配當ヲ爲スコトヲ要ス
第二百五十七條 破產管財人配當ヲ爲スニハ監査委員ノ同意、監査委員ナキトキハ裁判所ノ許可ヲ得ルコトヲ要ス
第二百五十八條 破產管財人ハ配當表ヲ作リ之ニ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス
一 配當ニ加フヘキ債權者ノ氏名及住所
二 配當ニ加フヘキ債權ノ額
三 配當スルコトヲ得ヘキ金額
配當ニ加フヘキ債權ハ優先權ノ有無ニ依リテ之ヲ區別シ優先權アルモノニ付テハ其ノ順位ニ從ヒテ之ヲ記載スルコトヲ要ス
第二百五十九條 破產管財人ハ利害關係人ノ閱覽ニ供スル爲配當表ヲ裁判所ニ提出スルコトヲ要ス
第二百六十條 破產管財人ハ配當ニ加フヘキ債權ノ總額及配當スルコトヲ得ヘキ金額ヲ公告スルコトヲ要ス
第二百六十一條 異議アル債權ニ付テハ債權者カ配當ノ公告アリタル日ヨリ起算シテ二週間內ニ破產管財人ニ對シ其ノ債權ノ確定ニ關スル訴ノ提起又ハ訴訟ノ受繼ヲ爲シタルコトヲ證明セサルトキハ其ノ配當ヨリ除斥セラル
第二百六十二條 別除權者カ前條ニ定ムル除斥期間內ニ破產管財人ニ對シ其ノ權利ノ目的ノ處分ニ著手シタルコトヲ證明シ且其ノ處分ニ依リテ辨濟ヲ受クルコト能ハサルヘキ債權額ヲ疏明セサルトキハ配當ヨリ除斥セラル
第二百六十三條 左ノ場合ニ於テハ破產管財人ハ直ニ配當表ヲ更正スルコトヲ要ス
一 債權表ヲ更正スヘキ事由カ除斥期間內ニ生シタルトキ
二 前二條ニ定ムル事項ノ證明及疏明アリタルトキ
三 別除權者カ除斥期間內ニ破產管財人ニ對シ其ノ權利抛棄ノ意思ヲ表示シ又ハ其ノ權利ノ行使ニ依リテ辨濟ヲ受クルコト能ハサリシ債權額ヲ證明シタルトキ
第二百六十四條 債權者ハ配當表ニ對シ除斥期間經過ノ後一週間內ニ限リ裁判所ニ異議ヲ申立ツルコトヲ得
裁判所カ配當表ノ更正ヲ命シタルトキハ其ノ決定書ハ利害關係人ノ閱覽ニ供スル爲之ヲ備ヘ置クコトヲ要ス此ノ場合ニ於テ抗告期間ハ決定書ヲ備ヘタル日ヨリ之ヲ起算ス
第二百六十五條 破產管財人ハ前條第一項ニ定ムル期間經過シタル後、異議ノ申立アリタルトキハ其ノ決定アリタル後遲滯ナク配當率ヲ定メ配當ニ加フヘキ各債權者ニ對シテ其ノ通知ヲ發スルコトヲ要ス
配當率ヲ定ムルニハ監査委員ノ同意、監査委員ナキトキハ裁判所ノ許可ヲ得ルコトヲ要ス
第二百六十六條 解除條件附債權ヲ有スル者ハ相當ノ擔保ヲ供スルニ非サレハ配當ヲ受クルコトヲ得ス
第二百六十七條 强制和議ノ提供アリタルトキハ裁判所ハ破產管財人カ未タ配當率ノ通知ヲ發セサル場合ニ限リ提供者ノ申立ニ因リ其ノ配當ノ中止ヲ命スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ旨ヲ公告スルコトヲ要ス
第二百六十八條 前條ノ規定ニ依リ配當ノ中止ヲ命シタル場合ニ於テ强制和議ノ提供ノ棄却若ハ其ノ不認可ノ決定カ確定シタルトキ又ハ債權者集會ニ於テ强制和議ヲ否決シタルトキハ裁判所ハ配當手續ヲ續行スヘキコトヲ命ス此ノ場合ニ於テハ其ノ旨ヲ公告スルコトヲ要ス
第二百六十九條 債權者ハ破產管財人ニ就キ配當ヲ受クルコトヲ要ス
破產管財人カ配當ヲ爲シタルトキハ債權表及債權ノ證書ニ配當シタル金額ヲ記入シ之ニ記名捺印スルコトヲ要ス
第二百七十條 第二百六十一條又ハ第二百六十二條ニ定ムル事項ヲ證明又ハ疏明セサルニ因リテ配當ヨリ除斥セラレタル債權者カ後ノ配當ニ關スル除斥期間內ニ其ノ證明又ハ疏明ヲ爲シタルトキハ前ノ配當ニ於テ受クヘカリシ額ニ付他ノ同順位ノ債權者ニ先チテ配當ヲ受クルコトヲ得
第二百七十一條 左ニ揭クル債權ニ對スル配當額ハ破產管財人之ヲ寄託スルコトヲ要ス
一 第二百四十四條、第二百四十六條又ハ第二百四十八條ノ規定ニ依リ異議アル債權ニ付訴ノ提起又ハ訴訟ノ受繼アリタルモノ
二 配當率ノ通知ヲ發スル前ニ訴願又ハ行政訴訟ノ落著セサル債權
三 第二百六十二條ノ規定ニ依リ別除權者カ疏明シタル債權額
四 停止條件附債權及將來ノ請求權
五 第二百六十六條ノ規定ニ依リ擔保ヲ供セサル場合ニ於ケル解除條件附債權
第二百七十二條 破產管財人最後ノ配當ヲ爲スニハ監査委員ノ同意アリタルトキト雖裁判所ノ許可ヲ得ルコトヲ要ス
第二百七十三條 最後ノ配當ニ關スル除斥期間ハ配當ノ公告アリタル日ヨリ起算シテ二週間以上一月內ニ於テ裁判所之ヲ定ム此ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第二百七十四條 最後ノ配當ニ在リテハ破產管財人ハ配當表ニ對スル異議落著ノ後遲滯ナク各債權者ニ對スル配當額ヲ定メ其ノ通知ヲ發スルコトヲ要ス
第二百七十五條 停止條件附債權又ハ將來ノ請求權カ最後ノ配當ニ關スル除斥期間內ニ之ヲ行使スルコトヲ得ルニ至ラサルトキハ其ノ債權者ハ配當ヨリ除斥セラル
第二百七十六條 解除條件附債權ノ條件カ最後ノ配當ニ關スル除斥期間內ニ成就セサルトキハ第二百六十六條ノ規定ニ依リテ供シタル擔保ハ其ノ效力ヲ失ヒ第二百七十一條第五號ノ規定ニ依リテ寄託シタル金額ハ之ヲ其ノ債權者ニ支拂フコトヲ要ス第百一條ノ規定ニ依リテ供シタル擔保又ハ寄託シタル金額亦同シ
第二百七十七條 別除權者カ最後ノ配當ニ關スル除斥期間內ニ破產管財人ニ對シ其ノ權利抛棄ノ意思ヲ表示セス又ハ其ノ權利ノ行使ニ依リテ辨濟ヲ受クルコト能ハサリシ債權額ヲ證明セサルトキハ配當ヨリ除斥セラル
第二百七十八條 第二百七十五條又ハ前條ノ規定ニ依リテ除斥セラレタル債權者ノ爲ニ寄託シタル金額ハ之ヲ他ノ債權者ニ配當スルコトヲ要ス第百條ノ規定ニ依リテ寄託シタル金額亦同シ
第二百七十九條 配當額ノ通知ヲ發スル前新ニ配當ニ充ツヘキ財產アルニ至リタルトキハ破產管財人ハ遲滯ナク配當表ヲ更正スルコトヲ要ス
第二百八十條 左ニ揭クル配當額ハ債權者ノ爲破產管財人之ヲ供託スルコトヲ要ス
一 第二百七十一條第一號又ハ第二號ノ規定ニ依リ寄託シタル配當額
二 配當額ノ通知ヲ發スル前ニ異議ノ訴、訴願又ハ行政訴訟ノ落著セサル債權ニ對スル配當額
三 債權者カ受取ラサル配當額
第二百八十一條 計算報告ノ爲ニ招集シタル債權者集會ニ於テハ破產管財人カ價値ナキ爲換價セサリシ財產ノ處分ニ付決議ヲ爲スコトヲ要ス
第二百八十二條 債權者集會終結シタルトキハ裁判所ハ破產終結ノ決定ヲ爲シ且其ノ主文及理由ノ要領ヲ公告スルコトヲ要ス
前項ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第二百八十三條 配當額ノ通知ヲ發シタル後新ニ配當ニ充ツヘキ相當ノ財產アルニ至リタルトキハ破產管財人ハ裁判所ノ許可ヲ得テ追加配當ヲ爲スコトヲ要ス破產終結ノ決定アリタル後ト雖亦同シ
破產管財人追加配當ノ許可ヲ得タルトキハ遲滯ナク配當スルコトヲ得ヘキ金額ヲ公告シ且各債權者ニ對スル配當額ヲ定メ其ノ通知ヲ發スルコトヲ要ス
第二百八十四條 追加配當ハ最後ノ配當ニ付作リタル配當表ニ依リテ之ヲ爲ス
第二百八十五條 破產管財人追加配當ヲ爲シタルトキハ遲滯ナク計算報告書ヲ作リ之ヲ裁判所ニ提出シテ其ノ認可ヲ申請スルコトヲ要ス
第二百八十六條 配當率又ハ配當額ノ通知ヲ發スル前破產管財人ニ知レサル財團債權者ハ各配當ニ於テ配當スヘキ金額ヲ以テ辨濟ヲ受クルコトヲ得ス
第二百八十七條 確定債權ニ付テハ破產者カ債權調査ノ期日ニ於テ其ノ債權ニ對シテ異議ヲ述ヘサリシ場合ニ限リ債權表ノ記載ハ破產者ニ對シ確定判決ト同一ノ效力ヲ有ス
債權者ハ破產終結ノ後債權表ノ記載ニ基キテ强制執行ヲ爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ第二百十五條第三項及民事訴訟法第五百十六條乃至第五百五十八條ノ規定ヲ準用ス
第二百八十八條 破產者カ天災其ノ他避クヘカラサル事變ノ爲債權調査ノ期日ニ出頭スルコト能ハサリシトキハ破產裁判所ニ原狀囘復ノ申立ヲ爲スコトヲ得
裁判所ハ職權ヲ以テ破產者ノ異議アル債權ノ債權者ニ原狀囘復ノ申立書ヲ送達スルコトヲ要ス
裁判所原狀囘復ヲ許シタルトキハ破產者カ債權調査ノ期日ニ於テ異議ヲ述ヘタルト同一ノ效力ヲ生ス此ノ場合ニ於テハ裁判所ハ債權表ニ異議ノ記載ヲ爲スコトヲ要ス
民事訴訟法第百七十五條及第百七十六條第二項ノ規定ハ第一項ニ定ムル原狀囘復ニ付之ヲ準用ス
第二百八十九條 相續財產ニ對シテ破產ノ宣告アリタル場合ニ於テ最後ノ配當ヨリ除斥セラレタル相續債權者及受遺者ハ殘餘財產ニ付其ノ權利ヲ行フコトヲ得
第九章 强制和議
第二百九十條 破產者ハ何時ニテモ强制和議ノ提供ヲ爲スコトヲ得
第二百九十一條 强制和議ノ提供ハ法人ニ在リテハ理事又ハ之ニ準スヘキ者ノ一致アルコトヲ要ス
第二百九十二條 强制和議ノ提供ハ相續財產ニ在リテハ相續人之ヲ爲シ相續人數人アルトキハ其ノ一致アルコトヲ要ス
第二百九十三條 一般ノ先取特權其ノ他一般ノ優先權ヲ有スル者ハ强制和議ニ付テハ之ヲ破產債權者ト看做サス
第二百九十四條 强制和議ノ提供ヲ爲スニハ提供者ハ辨濟ノ方法、擔保ヲ供セムトスルトキハ其ノ擔保其ノ他强制和議ノ條件ヲ裁判所ニ申出ツルコトヲ要ス
第二百九十五條 强制和議ノ提供者ノ所在不明ナルトキ又ハ詐欺破產ノ公訴繫屬スルトキハ强制和議ヲ爲スコトヲ得ス詐欺破產ニ付有罪ノ判決確定シタルトキ亦同シ
第二百九十六條 左ノ場合ニ於テハ裁判所ハ破產管財人及監査委員ノ意見ヲ聽キ强制和議ノ提供ヲ棄却スルコトヲ得
一 債權者集會ニ於テ强制和議ヲ否決シタルコトアルトキ
二 强制和議ノ爲ニスル債權者集會ノ期日公告後ニ其ノ提供ヲ撤囘シタルコトアルトキ
三 强制和議不認可ノ決定ヲ爲シタルコトアルトキ
四 强制和議取消ノ決定ヲ爲シタルコトアルトキ
第二百九十七條 裁判所强制和議ノ提供ヲ棄却セサル場合ニ於テ監査委員アルトキハ之ヲシテ意見書ヲ提出セシムルコトヲ要ス
第二百九十八條 强制和議ノ提供ニ關スル書類及監査委員ノ意見書ハ利害關係人ノ閱覽ニ供スル爲之ヲ裁判所ニ備ヘ置クコトヲ要ス
第二百九十九條 强制和議ノ爲ニスル債權者集會ノ期日ハ其ノ決定公告ノ日ヨリ一月內ニ於テ之ヲ定ムルコトヲ要ス
期日ニハ屆出ヲ爲シタル破產債權者、强制和議ノ提供者、强制和議ノ爲ニ保證人ト爲リ其ノ他破產者ト共ニ債務ヲ負擔シ又ハ破產債權者ノ爲ニ擔保ヲ供スル者、破產管財人及監査委員ヲ呼出スコトヲ要ス
前項ニ規定スル者ニハ强制和議ノ條件及監査委員ノ意見ノ要領ヲ記載シタル書面ヲ送達スルコトヲ要ス
第三百條 裁判所ハ强制和議ノ提供者及監査委員ノ申立ニ因リ强制和議ノ爲ニスル債權者集會ノ期日ヲ債權調査ノ一般期日ト併合スルコトヲ得
第三百一條 强制和議ノ提供者ハ期日ニ出頭シテ强制和議ノ申立ヲ爲スコトヲ要ス但シ正當ノ事由アルトキハ代理人ヲ出頭セシムルコトヲ得
代理人ハ代理權ヲ證スル書面ヲ提出スルコトヲ要ス
强制和議ノ提供者又ハ其ノ代理人期日ニ出頭シテ强制和議ノ申立ヲ爲ササルトキハ其ノ提供ヲ撤囘シタルモノト看做ス
第三百二條 强制和議ノ提供者ハ破產債權者ヲ利スル場合ニ限リ債權者集會ニ於テ其ノ條件ヲ變更スルコトヲ得
第三百三條 强制和議ハ一般ノ債權調査ノ終了前又ハ最後ノ配當ノ許可アリタル後ハ之ヲ決議スルコトヲ得ス
第三百四條 强制和議ノ條件ハ各破產債權者ニ付平等ナルコトヲ要ス但シ不利益ヲ受クル者ノ同意アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第三百五條 强制和議ノ提供者又ハ第三者カ强制和議ノ條件ニ依ラスシテ或破產債權者ニ特別ノ利益ヲ與フル行爲ハ之ヲ無效トス
第三百六條 强制和議ヲ可決スルニハ議決權ヲ行フコトヲ得ヘキ出席破產債權者ノ過半數ニシテ其ノ債權額カ屆出ヲ爲シタル破產債權者ノ總債權ノ四分ノ三以上ニ當ル者ノ同意アルコトヲ要ス
前項ノ債權額及總債權ノ計算ニ付テハ確定債權ニ在リテハ其ノ額ニ依リ其ノ他ノ債權ニ在リテハ裁判所カ第百八十二條第二項ノ規定ニ依リ定メタル所ニ依ル
第三百七條 前條ニ規定スル條件ノ一カ成立シタルトキ又ハ議決權ヲ行フコトヲ得ヘキ出席破產債權者ノ過半數ニシテ其ノ債權額カ其ノ者ノ總債權ノ半額ニ超ユル者カ期日ノ續行ニ同意シタルトキハ裁判所ハ强制和議ノ提供者ノ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ續行期日ヲ定メ之ヲ言渡スコトヲ要ス
第三百八條 强制和議ノ可決アリタルトキハ裁判所ハ其ノ期日又ハ直ニ言渡シタル期日ニ於テ强制和議ノ認否ニ付決定ヲ爲スコトヲ要ス
第二百九十九條第二項ニ規定スル者ハ强制和議ノ認否ニ付意見ヲ述フルコトヲ得
第三百九條 第二百三十八條但書及第二百三十九條ノ規定ハ前二條ノ規定ニ依リ期日ヲ定ムル決定ニ之ヲ準用ス
第三百十條 裁判所ハ左ノ場合ニ限リ破產債權者ノ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ强制和議不認可ノ決定ヲ爲スコトヲ得
一 强制和議ノ手續又ハ決議カ法律ノ規定ニ反スル場合ニ於テ其ノ欠缺カ追完スヘカラサルモノナルトキ
二 第二百九十五條ニ規定スル事由カ强制和議ノ決議後ニ生シタルトキ
三 强制和議ノ決議カ不正ノ方法ニ因リテ成立スルニ至リタルトキ
四 强制和議ノ決議カ破產債權者ノ一般ノ利益ニ反スルトキ
議決權ヲ有セサリシ破產債權者カ前項ノ申立ヲ爲スニハ其ノ破產債權者タルコトヲ疏明スルコトヲ要ス
申立人ハ申立ノ原因タル事實ヲ疏明スルコトヲ要ス
第三百十一條 法人カ破產ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ於テ强制和議ノ可決アリタルトキハ社團法人ニ在リテハ定款ノ變更ニ關スル規定ニ從ヒ財團法人ニ在リテハ主務官廳ノ認可ヲ得テ法人ヲ繼續スルコトヲ得
第三百十二條 法人ヲ繼續スルカ否ノ定リタルトキ又ハ遲滯ナク其ノ手續ヲ爲ササルトキハ裁判所ハ其ノ法人ノ理事又ハ之ニ準スヘキ者ノ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ强制和議ノ認否ニ付決定ヲ爲ス爲期日ヲ定メ之ヲ公告スルコトヲ要ス
前項ノ期日ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
法人ヲ繼續セサルトキ又ハ遲滯ナク其ノ手續ヲ爲ササルトキハ裁判所ハ强制和議不認可ノ決定ヲ爲スコトヲ要ス
第三百十三條 相續財產ニ對シテ破產ノ宣告アリタル場合ニ於テハ相續債權者ニ限リ强制和議ニ關スル決議ニ加ハルコトヲ得
第三百十四條 相續人ニ對シテ破產ノ宣告アリタル場合ニ於テ限定承認又ハ財產分離アリタルトキハ相續人ノ債權者ニ限リ强制和議ニ關スル決議ニ加ハルコトヲ得
第三百十五條 相續財產及相續人又ハ前戶主ニ對シテ破產ノ宣告アリタル場合ニ於テハ相續人又ハ前戶主ノ强制和議ニ付テハ相續人ノ債權者又ハ前戶主ノ相續開始後ノ債權者ニ限リ之ニ關スル決議ニ加ハルコトヲ得
第三百十六條 前三條ノ場合ニ於テハ强制和議ニ關スル決議ニ加ハルコトヲ得サル破產債權者ノ債權ハ第三百六條第一項ノ總債權ニ之ヲ算入セス
第三百十七條 强制和議カ前條ノ破產債權者ノ正當ノ利益ヲ害スヘキトキハ裁判所ハ其ノ申立ニ因リ强制和議不認可ノ決定ヲ爲スコトヲ要ス
第三百十條第二項及第三項ノ規定ハ前項ノ申立ニ之ヲ準用ス
第三百十八條 强制和議認否ノ決定ハ之ヲ言渡シ且公告スルコトヲ要ス但シ送達ヲ爲スコトヲ要セス
第三百十九條 議決權ヲ有セサリシ破產債權者カ强制和議認否ノ決定ニ對シテ不服ヲ申立ツルニハ其ノ破產債權者タルコトヲ疏明スルコトヲ要ス
第三百二十條 强制和議ニ關スル決議ニ加ハルコトヲ得サル破產債權者ハ强制和議不認可ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第三百二十一條 强制和議ハ認可ノ決定ノ確定ニ因リテ其ノ效力ヲ生ス
第三百二十二條 强制和議認可ノ決定カ確定シタルトキハ裁判所書記ハ强制和議ノ條件ヲ債權表ニ記載スルコトヲ要ス
第三百二十三條 强制和議認可ノ決定カ確定シタルトキハ破產管財人ハ財團債權者及一般ノ先取特權其ノ他一般ノ優先權ヲ有スル者ノ確定債權ノ辨濟ヲ爲スコトヲ要ス
財團債權及一般ノ優先權アル債權ニシテ異議アルモノニ付テハ破產管財人ハ債權者ノ爲供託ヲ爲スコトヲ要ス破產管財人ニ對シ疏明アリタル一般ノ優先權アル債權ニ付亦同シ
第三百二十四條 第二百八十二條ノ規定ハ强制和議ノ認可ノ決定カ確定シタル場合ニ之ヲ準用ス
第三百二十五條 破產財團ノ管理及處分ニ付テハ破產者ハ强制和議ニ定メタル制限ニ從フコトヲ要ス
第三百二十六條 强制和議ハ破產債權者ノ全員ノ爲且其ノ全員ニ對シテ效力ヲ有ス
强制和議ハ破產債權者カ破產者ノ保證人其ノ他破產者ト共ニ債務ヲ負擔スル者ニ對シテ有スル權利及破產債權者ノ爲ニ供シタル擔保ニ影響ヲ及ホサス
第三百二十七條 法人ノ債務ニ付責任ヲ負フ社員ハ破產債權者ニ對シ强制和議ノ定ムル限度ニ於テ其ノ責任ヲ負フ但シ强制和議ニ別段ノ定アルトキハ其ノ定ニ從フ
第三百二十八條 確定債權ヲ有スル破產債權者ハ破產者カ債權調査ノ期日ニ於テ其ノ債權ニ對シ異議ヲ述ヘサリシ場合ニ限リ破產終結ノ後破產者、强制和議ノ爲ニ保證人ト爲リ其ノ他破產者ト共ニ債務ヲ負擔シ又ハ破產債權者ノ爲ニ擔保ヲ供シタル者ニ對シ債權表ノ記載ニ基キテ强制執行ヲ爲スコトヲ得但シ民法第四百五十二條及第四百五十三條ノ適用ヲ妨ケス
第二百十五條第三項及民事訴訟法第五百十六條乃至第五百五十八條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三百二十九條 强制和議カ不正ノ方法ニ因リテ成立スルニ至リタルトキハ各破產債權者ハ强制和議ヲ以テ定メタル讓步ヲ取消スコトヲ得但シ過失ニ因リ强制和議不認可ノ申立ヲ爲ササリシ破產債權者ハ此ノ限ニ在ラス
讓步ノ取消權ハ破產債權者カ取消ノ原因ヲ知リタル時ヨリ一月間之ヲ行ハサルトキハ消滅ス强制和議認可ノ決定確定ノ時ヨリ二年ヲ經過シタルトキ亦同シ
第三百三十條 破產者カ强制和議ノ履行ヲ怠リタルトキハ其ノ履行ヲ受ケサル破產債權者ハ强制和議ヲ以テ定メタル讓步ヲ取消スコトヲ得
第三百三十一條 讓步ノ取消ハ破產債權者カ强制和議ニ因リテ得タル權利ニ影響ヲ及ホサス
讓步ノ取消ニ因リテ囘復シタル債權額ニ付テハ破產債權者ハ强制和議ノ履行完了ノ後ニ非サレハ其ノ權利ヲ行フコトヲ得ス
第三百三十二條 破產者カ强制和議ノ履行ヲ怠リタル場合ニ於テ屆出ヲ爲シタル破產債權者ノ過半數ニシテ其ノ債權額カ其ノ者ノ總債權ノ四分ノ三以上ニ當ル者ノ申立アリタルトキハ裁判所ハ强制和議取消ノ決定ヲ爲スコトヲ要ス
强制和議ノ定ムル所ニ從ヒ全部ノ履行ヲ受ケタル破產債權者ハ前項ノ申立ニ必要ナル員數ニハ之ヲ算入セス全部又ハ一部ノ履行ヲ受ケタル者ニ付テハ從前ノ破產債權ノ額ヨリ其ノ受ケタル額ヲ控除シタルモノヲ以テ其ノ債權額トス
第一項ノ債權額及總債權ノ計算ニ付テハ第三百六條第二項ノ規定ヲ準用ス
第三百三十三條 詐欺破產ニ付有罪ノ判決カ確定シタルトキハ裁判所ハ破產債權者ノ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ强制和議取消ノ決定ヲ爲スコトヲ得
裁判所ハ有罪ノ判決確定前ト雖第百五十四條及第百五十五條ニ定ムル處分ヲ命スルコトヲ得
第三百三十四條 第三百三十一條第一項ノ規定ハ强制和議ノ取消ニ之ヲ準用ス
第三百三十五條 强制和議取消ノ決定カ確定シタルトキハ破產手續ヲ續行ス
第三百三十六條 第一編ノ規定ノ適用ニ付テハ强制和議ノ取消ハ之ヲ破產ノ宣告ト看做シ第三百三十二條ノ場合ニ在リテハ强制和議取消ノ申立、第三百三十三條ノ場合ニ在リテハ公訴ノ提起ハ其ノ前ニ支拂ノ停止又ハ破產ノ申立ナキトキハ之ヲ支拂ノ停止又ハ破產ノ申立ト看做ス
第三百三十七條 第百四十一條乃至第百四十六條及第百五十四條乃至第百五十六條ノ規定ハ强制和議ノ取消ニ付之ヲ準用ス
破產手續續行ノ費用ハ假ニ國庫ヨリ之ヲ支辨ス
第三百三十八條 强制和議ノ效力ヲ受ケタル債權者ニ付テハ從前ノ破產債權ノ額ヨリ强制和議ノ定ムル所ニ從ヒテ受ケタル額ヲ控除シタルモノヲ以テ破產債權ノ額トス
第三百三十九條 從前ノ確定債權ニ付テハ破產債權者カ强制和議ノ定ムル所ニ從ヒテ受ケタル額ノミヲ調査ス
第三百四十條 强制和議ノ效力ヲ受ケタル債權者カ强制和議ノ定ムル所ニ從ヒテ受ケタルモノアルトキハ從前ノ破產債權ノ額ヲ以テ配當ニ加フヘキ債權ノ額ト看做シ破產財團ニ其ノ債權者カ受ケタルモノヲ加算シテ配當率ノ標準ヲ定ム但シ其ノ債權者ハ他ノ破產債權者カ自己ノ受ケタルモノト同一ノ割合ノ配當ヲ受クル迄ハ配當ヲ受クルコトヲ得ス
第三百四十一條 破產終結ノ後破產者カ强制和議ノ效力ヲ受ケタル債權者ニ對シテ爲シタル擔保ノ供與ハ强制和議ノ取消ニ因リテ其ノ效力ヲ失フ
第三百四十二條 强制和議ノ效力ヲ受ケタル債權者ハ從前ノ債權ニ付テハ破產ノ申立ヲ爲スコトヲ得ス
第三百四十三條 强制和議取消ノ申立及破產ノ申立アリタル場合ニ於テ裁判所カ其ノ一ニ付强制和議取消ノ決定又ハ破產ノ宣告ヲ爲シタルトキハ他ノ一ノ申立ヲ棄却スルコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依ル棄却ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第三百四十四條 第三百三十一條第一項及第三百三十八條乃至第三百四十一條ノ規定ハ强制和議ノ履行完了前ニ破產ノ宣告アリタル場合ニ之ヲ準用ス第三百三十三條ノ規定ニ依リ强制和議取消ノ決定ヲ爲スコトヲ得ル場合ニ於テ破產ノ宣告アリタルトキ亦同シ
第三百四十五條 相續財產ニ對シテ破產ノ宣告アリタル場合ニ於テハ相續人ハ强制和議ノ履行完了前其ノ固有財產ニ於ケルト同一ノ注意ヲ以テ相續財產ノ管理ヲ繼續スルコトヲ要ス但シ强制和議ニ別段ノ定アルトキハ其ノ定ニ從フ
民法第六百四十五條、第六百四十六條、第六百五十條第一項第二項及第千二十一條第二項第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三百四十六條 第百三十一條ノ規定ハ相續財產ニ關スル强制和議取消ノ申立ニ之ヲ準用ス
第十章 破產廢止
第三百四十七條 破產者ハ債權屆出ノ期間內ニ屆出ヲ爲シタル總破產債權者ノ同意ヲ得タルトキ又ハ同意ヲ爲ササル破產債權者ニ對シ他ノ破產債權者ノ同意ヲ得テ破產財團ヨリ擔保ヲ供シタルトキハ破產廢止ノ申立ヲ爲スコトヲ得
未確定債權ニ付其ノ債權者ノ同意ヲ必要トスヘキカ否ハ裁判所之ヲ定ム破產債權者ニ供スヘキ擔保カ相當ナルカ否ニ付亦同シ
前項ノ規定ニ依ル決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第三百四十八條 法人カ破產ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ於テ破產廢止ノ申立ヲ爲スニハ法人繼續ノ手續ヲ爲スコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ第三百十一條ノ規定ヲ準用ス
第三百四十九條 破產廢止ノ申立ヲ爲スニハ其ノ申立ニ必要ナル條件カ具備スルコトヲ證スル書面ヲ提出スルコトヲ要ス
第三百五十條 裁判所ハ破產廢止ノ申立アリタル旨ヲ公告シ且利害關係人ノ閱覽ニ供スル爲其ノ申立ニ關スル書類ヲ備ヘ置クコトヲ要ス
第三百五十一條 破產債權者ハ前條ノ公告アリタル日ヨリ起算シテ二週間內ニ破產廢止ノ申立ニ付裁判所ニ異議ヲ申立ツルコトヲ得
前項ノ期間經過前ニ屆出ヲ爲シタル破產債權者モ亦異議ヲ申立ツルコトヲ得
第三百五十二條 裁判所ハ前條第一項ノ期間經過ノ後破產廢止ノ決定ヲ爲スニ必要ナル條件カ具備スルカ否ニ付破產者、破產管財人及異議ヲ申立テタル破產債權者ノ意見ヲ聽クコトヲ要ス
第三百五十三條 破產宣告ノ後裁判所カ破產財團ヲ以テ破產手續ノ費用ヲ償フニ足ラスト認メタルトキハ破產管財人ノ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ破產廢止ノ決定ヲ爲スコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ裁判所ハ債權者集會ノ意見ヲ聽クコトヲ要ス
前項ノ規定ハ無限責任又ハ保證責任ノ相互保險會社、產業組合其ノ他ノ法人ニハ之ヲ適用セス破產手續ノ費用ヲ償フニ足ルヘキ金額ノ豫納アリタル場合亦同シ
第三百五十四條 裁判所カ破產廢止ノ決定ヲ爲シタルトキハ其ノ主文及理由ノ要領ヲ公告スルコトヲ要ス
第三百五十五條 破產廢止ノ決定カ確定シタルトキハ破產管財人ハ財團債權ノ辨濟ヲ爲シ異議アルモノニ付テハ債權者ノ爲供託ヲ爲スコトヲ要ス
第三百五十六條 第二百九十一條及第二百九十二條ノ規定ハ破產廢止ノ申立ニ之ヲ準用ス
第三百五十七條 第二百八十七條ノ規定ハ破產廢止ノ決定カ確定シタル場合ニ之ヲ準用ス
第十一章 小破產
第三百五十八條 破產財團ニ屬スル財產ノ額カ一萬圓ニ滿タスト認ムルトキハ裁判所ハ破產ノ宣告ト同時ニ小破產ノ決定ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テハ裁判所ハ第百四十三條第一項ニ揭クル事項ノ外小破產決定ノ主文ヲ公告シ且同條第二項ノ書面ニ之ヲ記載スルコトヲ要ス
第三百五十九條 裁判所破產手續中ニ破產財團ニ屬スル財產ノ額カ一萬圓ニ滿タサルコトヲ發見シタルトキハ小破產ノ決定ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ小破產ノ決定ヲ爲シタル場合ニ於テハ裁判所ハ決定ノ主文ヲ公告シ且破產管財人、監査委員竝知レタル債權者及債務者ニ之ヲ記載シタル書面ヲ送達スルコトヲ要ス
第三百六十條 裁判所破產手續中ニ破產財團ニ屬スル財產ノ額カ一萬圓以上ナルコトヲ發見シタルトキハ小破產取消ノ決定ヲ爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ前條第二項ノ規定ヲ準用ス
第三百六十一條 小破產ノ決定及小破產取消ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第三百六十二條 第一囘ノ債權者集會ノ期日及債權調査ノ期日ハ已ムコトヲ得サル事由アル場合ヲ除クノ外之ヲ併合スルコトヲ要ス
第三百六十三條 監査委員ハ之ヲ置カス
第三百六十四條 第一囘ノ債權者集會、强制和議取消後ノ第一囘ノ債權者集會竝債權調査、計算報告及强制和議ノ爲ニスル債權者集會ヲ除クノ外裁判所ノ決定ヲ以テ債權者集會ノ決議ニ代フ
前項ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第三百六十五條 配當ハ一囘トシ最後ノ配當ニ關スル規定ニ依ル但シ追加配當ヲ爲スコトヲ妨ケス
第三百六十六條 小破產手續ニ關スル公告ハ第百十六條ノ規定ニ依ル揭示ヲ爲スヲ以テ足ル
第三編 復權
第三百六十七條 破產者カ辨濟其ノ他ノ方法ニ因リ破產債權者ニ對スル債務ノ全部ノ免責ヲ得タルトキハ破產裁判所ハ破產者ノ申立ニ因リ復權ノ決定ヲ爲スコトヲ要ス
申立人ハ免責ヲ證スル書面ヲ提出スルコトヲ要ス
第三百六十八條 復權ノ決定ハ確定ノ後ニ非サレハ其ノ效力ヲ生セス
第三百六十九條 裁判所ハ復權ノ申立アリタル旨ヲ公告シ且利害關係人ノ閱覽ニ供スル爲其ノ申立ニ關スル書類ヲ備ヘ置クコトヲ要ス
第三百七十條 破產債權者ハ前條ノ公告アリタル日ヨリ起算シテ三月內ニ復權ノ申立ニ付裁判所ニ異議ヲ申立ツルコトヲ得
第三百七十一條 異議ノ申立アリタルトキハ裁判所ハ破產者及異議ヲ申立テタル破產債權者ノ意見ヲ聽クコトヲ要ス
第三百七十二條 復權ノ決定カ確定シタルトキハ裁判所ハ其ノ主文ヲ公告スルコトヲ要ス
第三百七十三條 第百八條乃至第百十二條及第百十四條乃至第百十七條ノ規定ハ復權ノ手續ニ之ヲ準用ス
第四編 罰則
第三百七十四條 債務者破產宣告ノ前後ヲ問ハス自己若ハ他人ノ利益ヲ圖リ又ハ債權者ヲ害スル目的ヲ以テ左ニ揭クル行爲ヲ爲シ其ノ宣告確定シタルトキハ詐欺破產ノ罪ト爲シ十年以下ノ懲役ニ處ス
一 破產財團ニ屬スル財產ヲ隱匿、毀棄又ハ債權者ノ不利益ニ處分スルコト
二 破產財團ノ負擔ヲ虛僞ニ增加スルコト
三 法律ノ規定ニ依リ作ルヘキ商業帳簿ヲ作ラス、之ニ財產ノ現況ヲ知ルニ足ルヘキ記載ヲ爲サス又ハ不正ノ記載ヲ爲シ又ハ之ヲ隱匿若ハ毀棄スルコト
四 第百八十七條ノ規定ニ依リ裁判所書記カ閉鎖シタル帳簿ニ變更ヲ加ヘ又ハ之ヲ隱匿若ハ毀棄スルコト
第三百七十五條 債務者破產宣告ノ前後ヲ問ハス左ニ揭クル行爲ヲ爲シ其ノ宣告確定シタルトキハ五年以下ノ懲役又ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 浪費又ハ賭博其ノ他ノ射倖行爲ヲ爲シ因テ著ク財產ヲ減少シ又ハ過大ノ債務ヲ負擔スルコト
二 破產ノ宣告ヲ遲延セシムル目的ヲ以テ著ク不利益ナル條件ニテ債務ヲ負擔シ又ハ信用取引ニ因リ商品ヲ買入レ著ク不利益ナル條件ニテ之ヲ處分スルコト
三 破產ノ原因タル事實アルコトヲ知ルニ拘ラス或債權者ニ特別ノ利益ヲ與フル目的ヲ以テ爲シタル擔保ノ供與又ハ債務ノ消滅ニ關スル行爲ニシテ債務者ノ義務ニ屬セス又ハ其ノ方法若ハ時期カ債務者ノ義務ニ屬セサルモノ
四 法律ノ規定ニ依リ作ルヘキ商業帳簿ヲ作ラス、之ニ財產ノ現況ヲ知ルニ足ルヘキ記載ヲ爲サス又ハ不正ノ記載ヲ爲シ又ハ之ヲ隱匿若ハ毀棄スルコト
五 第百八十七條ノ規定ニ依リ裁判所書記カ閉鎖シタル帳簿ニ變更ヲ加ヘ又ハ之ヲ隱匿若ハ毀棄スルコト
第三百七十六條 債務者ノ法定代理人、理事及之ニ準スヘキ者竝支配人前二條ニ規定スル行爲ヲ爲シ債務者ニ對スル破產宣告確定シタルトキハ前二條ノ例ニ依ル相續財產ニ對スル破產ニ於テ相續人及前戶主竝其ノ法定代理人及支配人ニ付亦同シ
第三百七十七條 本法ニ依リ監守ヲ命セラレタル者逃走シ又ハ裁判所ノ許可ヲ得スシテ外人ト面接若ハ通信シタルトキハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
破產者裁判所ノ許可ヲ得スシテ居住地ヲ離レタルトキ罰前項ニ同シ
第三百七十八條 債務者及第三百七十六條ニ規定スル者ニ非スシテ第三百七十四條ニ規定スル行爲ヲ爲シタル者又ハ自己若ハ他人ヲ利スル目的ヲ以テ破產債權者トシテ虛僞ノ權利ヲ行ヒタル者ハ債務者ニ對スル破產宣告確定シタルトキハ十年以下ノ懲役ニ處ス
第三百七十九條 第三百七十四條、第三百七十五條及前條ノ規定ノ適用ニ付テハ强制和議ノ取消ハ之ヲ破產ノ宣告ト看做ス
第三百八十條 破產管財人又ハ監査委員其ノ職務ニ關シ賄賂ヲ收受シ又ハ之ヲ要求若ハ約束シタルトキハ三年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス破產債權者、其ノ代理人又ハ理事若ハ之ニ準スヘキ者債權者集會ノ決議ニ關シ賄賂ヲ收受シ又ハ之ヲ要求若ハ約束シタルトキ亦同シ
前項ノ場合ニ於テ收受シタル賄賂ハ之ヲ沒收ス其ノ全部又ハ一部ヲ沒收スルコト能ハサルトキハ其ノ價額ヲ追徵ス
第三百八十一條 破產管財人、監査委員、破產債權者、其ノ代理人又ハ理事若ハ之ニ準スヘキ者ニ賄賂ヲ交付、提供又ハ約束シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
第三百八十二條 第百五十三條ノ規定ニ依リ說明ノ義務アル者故ナク說明ヲ爲サス又ハ虛僞ノ說明ヲ爲シタルトキハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者破產裁判所ニ其ノ事實ヲ申出テタルトキハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
附 則
第三百八十三條 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三百八十四條 明治二十三年法律第三十二號商法第三編、同年法律第百一號及家資分散法ハ之ヲ廢止ス
第三百八十五條 
民法施行法第二條第三條及非訟事件手續法第百五十二條第百五十三條ハ之ヲ削除シ刑法施行法第二十五條第一項第三號ハ之ヲ削ル
第三百八十六條 他ノ法令中身代限ノ處分ヲ受ケ債務ヲ完濟セサル者ニ關スル規定ハ破產又ハ家資分散ノ宣告ヲ受ケタル者ニ之ヲ準用ス
身代限ノ處分ヲ受ケ債務ヲ完濟セサル者及家資分散ノ宣告ヲ受ケタル者ハ他ノ法令ノ適用ニ付テハ之ヲ破產者ト看做ス
第三百八十七條 本法施行前破產若ハ復權ノ申立、破產若ハ家資分散ノ宣告又ハ支拂猶豫ノ許可若ハ假許可アリタルモノニ付テハ仍舊法ニ依ル但シ明治二十三年法律第三十二號商法第千五十四條ノ規定ハ此ノ限ニ在ラス
本法施行前ニ爲シタル家資分散又ハ支拂猶豫ノ申立ハ決定ヲ以テ之ヲ棄却ス此ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第三百八十八條 舊法ニ依リテ破產若ハ家資分散ノ宣告又ハ身代限ノ處分ヲ受ケタル者ハ本法ニ依リテ復權ノ申立ヲ爲スコトヲ得此ノ申立ハ其ノ事件ノ第一審裁判所ニ之ヲ爲スコトヲ要ス
第三百八十九條 他ノ法律ニ依リ法人ノ理事又ハ之ニ準スヘキ者カ其ノ法人ニ對シ破產ノ申立ヲ爲スコトヲ要スル場合ニ於テモ和議開始ノ申立ヲ爲スコトヲ妨ケス
第三百九十條 
商法第四百五條ヲ左ノ如ク改ム
保險者カ破產ノ宣告ヲ受ケタルトキハ保險契約者ハ契約ノ解除ヲ爲スコトヲ得但其解除ハ將來ニ向テノミ其效力ヲ生ス
前項ノ規定ニ依リテ解除ヲ爲ササル保險契約ハ破產宣告ノ後三个月ヲ經過シタルトキハ其效力ヲ失フ
第三百九十一條 
商法施行法中第百三十八條乃至第百四十五條及第百四十七條ヲ削リ「第百四十六條」ヲ「第百三十八條」ニ改メ同法ニ左ノ一條ヲ加フ
第百三十九條 商法施行條例ハ之ヲ廢止ス但シ同條例第二十一條乃至第二十三條及第五十一條ノ規定ハ舊商法ノ規定ニ依ルヘキ場合ニ於テハ仍其ノ效力ヲ有ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル破産法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
摂政名
大正十一年四月二十四日
内閣総理大臣兼大蔵大臣 子爵 高橋是清
外務大臣 伯爵 内田康哉
海軍大臣 男爵 加藤友三郎
農商務大臣 男爵 山本達雄
内務大臣 床次竹二郎
文部大臣 中橋徳五郎
逓信大臣 野田卯太郎
鉄道大臣 元田肇
司法大臣 伯爵 大木遠吉
陸軍大臣 山梨半造
法律第七十一号
破産法
第一編 実体規定
第一章 総則
第一条 破産ハ其ノ宣告ノ時ヨリ効力ヲ生ス
第二条 外国人又ハ外国法人ハ破産ニ関シ日本人又ハ日本法人ト同一ノ地位ヲ有ス但シ其ノ本国法ニ依リ日本人又ハ日本法人カ同一ノ地位ヲ有スルトキニ限ル
第三条 日本ニ於テ宣告シタル破産ハ破産者ノ財産ニシテ日本ニ在ルモノニ付テノミ其ノ効力ヲ有ス
外国ニ於テ宣告シタル破産ハ日本ニ在ル財産ニ付テハ其ノ効力ヲ有セス
民事訴訟法ニ依リ裁判上ノ請求ヲ為スコトヲ得ヘキ債権ハ日本ニ在ルモノト看做ス
第四条 解散シタル法人ハ破産ノ目的ノ範囲内ニ於テハ仍存続スルモノト看做ス
第五条 相続人又ハ相続財産ニ対スル破産ノ宣告ハ限定承認又ハ財産分離ヲ妨ケス但シ破産取消若ハ破産廃止ノ決定カ確定シ又ハ破産終結ノ決定アル迄其ノ手続ヲ中止ス
第二章 破産財団
第六条 破産者カ破産宣告ノ時ニ於テ有スル一切ノ財産ハ之ヲ破産財団トス
破産者カ破産宣告前ニ生シタル原因ニ基キ将来行フコトアルヘキ請求権ハ破産財団ニ属ス
差押フルコトヲ得サル財産ハ破産財団ニ属セス但シ民事訴訟法第五百七十条第一項第四号第七号ニ掲クルモノ、同条第二項ノ規定ニ依リ差押ノ承諾アリタルモノ及破産宣告後差押フルコトヲ得ルニ至リタルモノハ此ノ限ニ在ラス
第七条 破産財団ノ管理及処分ヲ為ス権利ハ破産管財人ニ専属ス
第八条 破産宣告前ニ破産者ノ為ニ相続ノ開始アリタル場合ニ於テ破産者カ破産宣告後ニ為シタル単純承認ハ破産財団ニ対シテハ限定承認ノ効力ヲ有ス
第九条 破産宣告前ニ破産者ノ為ニ遺産相続ノ開始アリタル場合ニ於テ破産者カ破産宣告後ニ相続ノ抛棄ヲ為シタルトキト雖破産財団ニ対シテハ限定承認ノ効力ヲ有ス
破産管財人ハ前項ノ規定ニ拘ラス抛棄ノ効力ヲ認ムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ抛棄アリタルコトヲ知リタル時ヨリ三月内ニ其ノ旨ヲ裁判所ニ申述スルコトヲ要ス
第十条 前二条ノ規定ハ包括遺贈ニ之ヲ準用ス
第十一条 破産宣告前ニ破産者ノ為ニ特定遺贈アリタル場合ニ於テ破産者カ破産宣告ノ当時承認又ハ抛棄ヲ為ササリシトキハ破産管財人破産者ニ代リテ其ノ承認又ハ抛棄ヲ為スコトヲ得
民法第千八十九条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十二条 相続財産ニ対シテ破産ノ宣告アリタル場合ニ於テハ之ニ属スル一切ノ財産ヲ以テ破産財団トス
被相続人カ相続人ニ対シ及相続人カ被相続人ニ対シテ有シタル権利ハ消滅セサリシモノト看做ス
第十三条 隠居又ハ入夫婚姻ニ因ル家督相続ノ場合ニ於テ相続財産ニ対シテ破産ノ宣告アリタルトキハ留保財産モ亦破産財団ニ属ス
国籍喪失ニ因ル家督相続ノ場合ニ於テ相続財産ニ対シテ破産ノ宣告アリタルトキハ相続開始ノ時ニ於テ前戸主カ有シタル財産ヲ以テ破産財団トス
第十四条 相続人カ相続財産ノ全部又ハ一部ヲ処分シタル後相続財産ニ対シテ破産ノ宣告アリタルトキハ相続人カ反対給付ニ付有スル権利ハ破産財団ニ属ス
相続人カ既ニ反対給付ヲ受ケタルトキハ之ヲ破産財団ニ返還スルコトヲ要ス但シ其ノ当時相続人カ破産ノ原因タル事実又ハ破産ノ申立アリタルコトヲ知ラサリシトキハ其ノ現ニ受クル利益ヲ返還スルヲ以テ足ル
前二項ノ規定ハ前戸主カ前条ノ財産ヲ処分シタル場合ニ之ヲ準用ス
第三章 破産債権
第十五条 破産者ニ対シ破産宣告前ノ原因ニ基キテ生シタル財産上ノ請求権ハ之ヲ破産債権トス
第十六条 破産債権ハ破産手続ニ依ルニ非サレハ之ヲ行フコトヲ得ス
第十七条 期限附債権ハ破産宣告ノ時ニ於テ弁済期ニ至リタルモノト看做ス
第十八条 債権カ無利息ニシテ其ノ期限カ破産宣告後ニ到来スヘキ場合ニ於テハ破産債権ノ額ハ破産宣告ノ時ヨリ期限ニ至ル迄ノ破産債権ニ対スル法定利息ヲ債権額ヨリ控除スルモノトス
第十九条 前条ノ規定ハ金額及存続期間ノ確定スル定期金債権ニ之ヲ準用ス但シ其ノ総額カ法定利率ニ依リ其ノ定期金ニ相当スル利息ヲ生スヘキ元本額ヲ超ユルトキハ其ノ元本額ヲ以テ破産債権ノ額トス
第二十条 第十八条ノ場合ニ於テ期限カ不確定ナルトキハ破産宣告ノ時ニ於ケル評価額ヲ以テ破産債権ノ額トス定期金債権ノ金額又ハ存続期間カ不確定ナルトキ亦同シ
第二十一条 前三条ノ規定ハ法人又ハ相続財産ニ対シテ破産ノ宣告アリタル場合ニハ之ヲ適用セス
第二十二条 債権ノ目的カ金銭ニ非サルトキ又ハ金銭ナルモ其ノ額カ不確定ナルトキ若ハ外国ノ通貨ヲ以テ定メタルモノナルトキハ破産宣告ノ時ニ於ケル評価額ヲ以テ破産債権ノ額トス
第二十三条 条件附債権ハ其ノ全額又ハ前条ノ規定ニ依ル評価額ヲ以テ破産債権ノ額トス
前項ノ規定ハ破産者ニ対シテ行フコトアルヘキ将来ノ請求権ニ之ヲ準用ス
第二十四条 数人カ各自全部ノ履行ヲ為ス義務ヲ負フ場合ニ於テ其ノ全員又ハ其ノ中ノ数人カ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキハ債権者ハ破産宣告ノ時ニ於テ有スル債権ノ全額ニ付各破産財団ニ対シ破産債権者トシテ其ノ権利ヲ行フコトヲ得
第二十五条 保証人カ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキハ債権者ハ破産宣告ノ時ニ於テ有スル債権ノ全額ニ付破産債権者トシテ其ノ権利ヲ行フコトヲ得
第二十六条 数人カ各自全部ノ履行ヲ為ス義務ヲ負フ場合ニ於テ其ノ全員又ハ其ノ中ノ数人若ハ一人カ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキハ破産者ニ対シテ将来行フコトアルヘキ求償権ヲ有スル者ハ其ノ全額ニ付破産債権者トシテ其ノ権利ヲ行フコトヲ得但シ債権者カ其ノ債権ノ全額ニ付破産債権者トシテ其ノ権利ヲ行ヒタルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項但書ノ場合ニ於テ前項ノ求償権ヲ有スル者カ弁済ヲ為シタルトキハ其ノ弁済ノ割合ニ応シテ債権者ノ権利ヲ取得ス
前二項ノ規定ハ担保ヲ供シタル第三者カ破産者ニ対シテ将来行フコトアルヘキ求償権ニ付之ヲ準用ス
第二十七条 第二十四条、第二十五条及前条第一項第二項ノ規定ハ数人ノ保証人カ各自債務ノ一部ヲ負担スヘキ場合ニ於テ其ノ負担部分ニ付之ヲ準用ス
第二十八条 法人ノ債務ニ付其ノ債権者ニ対シテ無限ノ責任ヲ負フ者カ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキハ法人ノ債権者ハ破産宣告ノ時ニ於テ有スル債権ノ全額ニ付破産債権者トシテ其ノ権利ヲ行フコトヲ得
第二十九条 法人ノ債務ニ付其ノ債権者ニ対シテ有限ノ責任ヲ負フ者又ハ其ノ法人カ破産ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ於テハ法人ノ債権者ハ有限ノ責任ヲ負フ者ニ対シテ其ノ権利ヲ行フコトヲ得ス但シ法人ハ出資ノ請求ニ付破産債権者トシテ其ノ権利ヲ行フコトヲ妨ケス
第三十条 相続人カ破産ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ於テハ財産ノ分離アリタルトキト雖相続債権者及受遺者ハ其ノ債権ノ全額ニ付破産債権者トシテ其ノ権利ヲ行フコトヲ得
第三十一条 相続財産及相続人ニ対シテ破産ノ宣告アリタルトキハ相続債権者及受遺者ハ其ノ債権ノ全額ニ付各破産財団ニ対シ破産債権者トシテ其ノ権利ヲ行フコトヲ得民法第九百八十九条又ハ第九百九十一条ノ場合ニ於テ相続財産及前戸主、相続人及前戸主又ハ相続財産相続人及前戸主ニ対シテ破産ノ宣告アリタルトキ相続債権者ニ付亦同シ
第三十二条 前二条ノ場合ニ於テ破産ノ宣告ヲ受ケタル相続人カ限定承認ヲ為シタルトキハ相続債権者及受遺者ハ相続人ノ固有財産ニ付破産債権者トシテ其ノ権利ヲ行フコトヲ得ス第八条又ハ第九条第一項ノ規定ニ依リ限定承認ノ効力ヲ有スル場合亦同シ
第三十三条 相続財産ニ対シテ破産ノ宣告アリタルトキハ相続人ハ其ノ被相続人ニ対スル債権及被相続人ノ債務消滅ノ為ニ為シタル出捐ニ付相続債権者ト同一ノ権利ヲ有ス
第三十四条 相続財産ニ対シテ破産ノ宣告アリタルトキハ相続人ノ債権者ハ破産債権者トシテ其ノ権利ヲ行フコトヲ得ス
第三十五条 相続財産ニ対シテ破産ノ宣告アリタル場合ニ於テ第十三条ノ財産アルトキハ相続開始後ノ前戸主ノ債権者ハ債権ノ全額ニ付破産債権者トシテ其ノ権利ヲ行フコトヲ得
第三十六条 相続財産及前戸主ニ対シテ破産ノ宣告アリタル場合ニ於テ第十三条ノ財産アルトキハ相続開始後ノ前戸主ノ債権者ハ債権ノ全額ニ付各破産財団ニ対シ破産債権者トシテ其ノ権利ヲ行フコトヲ得
第三十七条 民法第九百八十九条又ハ第九百九十一条ノ場合ニ於テ相続人カ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキハ前戸主ハ将来行フコトアルヘキ求償権ノ全額ニ付破産債権者トシテ其ノ権利ヲ行フコトヲ得
第二十六条第一項但書及第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三十八条 左ニ掲クル請求権ハ之ヲ破産債権トセス但シ法人又ハ相続財産ニ対シテ破産ノ宣告アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス
一 破産宣告後ノ利息
二 破産宣告後ノ不履行ニ因ル損害賠償及違約金
三 破産手続参加ノ費用
四 罰金、科料、刑事訴訟費用、追徴金及過料
第三十九条 破産財団ニ属スル財産ニ付一般ノ先取特権其ノ他一般ノ優先権アル破産債権ハ他ノ債権ニ先ツ
第四十条 同一順位ニ於テ弁済スヘキ債権ハ各其ノ債権額ノ割合ニ応シテ之ヲ弁済ス
第四十一条 優先権カ一定ノ期間内ノ債権額ニ付存在スル場合ニ於テハ其ノ期間ハ破産宣告ノ時ヨリ遡リテ之ヲ計算ス
第四十二条 相続財産ニ対シテ破産ノ宣告アリタルトキハ相続債権者ノ債権ハ受遺者ノ債権又ハ相続開始後ノ前戸主ノ債権者ノ債権ニ先ツ
第四十三条 相続財産ニ対シ破産ノ申立ヲ為スコトヲ得ル期間内ノ申立ニ因リ相続人ニ対シテ破産ノ宣告アリタルトキハ相続人ノ債権者ノ債権ハ相続債権者及受遺者ノ債権ニ先チ相続財産ニ付テハ相続債権者及受遺者ノ債権ハ相続人ノ債権者ノ債権ニ先ツ
第四十四条 相続財産及相続人ニ対シテ破産ノ宣告アリタルトキハ相続人ノ債権者ノ債権ハ相続人ノ破産財団ニ付テハ相続債権者及受遺者ノ債権ニ先ツ
第四十五条 相続財産及前戸主ニ対シテ破産ノ宣告アリタルトキハ相続開始後ノ前戸主ノ債権者ノ債権ハ前戸主ノ破産財団ニ付テハ相続債権者ノ債権ニ先ツ
第四十六条 法人又ハ相続財産ニ対シテ破産ノ宣告アリタル場合ニ於テハ債権額ト第十八条乃至第二十条ノ規定ニ依リテ定ル額トノ差額ノ請求権及第三十八条ニ掲クル請求権ハ法人ノ債権者又ハ相続債権者ノ他ノ債権ニ後ル
第四章 財団債権
第四十七条 左ニ掲クル請求権ハ之ヲ財団債権トス
一 破産債権者ノ共同ノ利益ノ為ニスル裁判上ノ費用
二 国税徴収法又ハ国税徴収ノ例ニ依リ徴収スルコトヲ得ヘキ請求権但シ破産宣告後ノ原因ニ基ク請求権ハ破産財団ニ関シテ生シタルモノニ限ル
三 破産財団ノ管理、換価及配当ニ関スル費用
四 破産財団ニ関シ破産管財人ノ為シタル行為ニ因リテ生シタル請求権
五 事務管理又ハ不当利得ニ因リ破産財団ニ対シテ生シタル請求権
六 委任終了又ハ代理権消滅ノ後急迫ノ必要ノ為ニ為シタル行為ニ因リ破産財団ニ対シテ生シタル請求権
七 第五十九条第一項ノ規定ニ依リ破産管財人カ債務ノ履行ヲ為ス場合ニ於テ相手方カ有スル請求権
八 破産宣告ニ因リテ双務契約ニ関シ解約ノ申入アリタル場合ニ於テ其ノ終了ニ至ル迄ノ間ニ生シタル請求権
九 破産者及之ニ扶養セラルル者ノ扶助料
第四十八条 破産管財人負担附遺贈ノ履行ヲ受ケタルトキハ負担ノ利益ヲ受クヘキ請求権ハ遺贈ノ目的ノ価額ヲ超エサル限度ニ於テ之ヲ財団債権トス
第四十九条 財団債権ハ破産手続ニ依ラスシテ随時之ヲ弁済ス
第五十条 財団債権ハ破産財団ヨリ先ツ之ヲ弁済ス
第五十一条 破産財団カ財団債権ノ総額ヲ弁済スルニ不足ナルコト分明ナルニ至リタルトキハ財団債権ノ弁済ハ法令ニ定ムル優先権ニ拘ラス未タ弁済セサル債権額ノ割合ニ応シテ之ヲ為ス但シ財団債権ニ付存スル留置権、特別ノ先取特権、質権及抵当権ノ効力ヲ妨ケス
第四十七条第一号乃至第七号ノ財団債権ハ他ノ財団債権ニ先ツ
第五十二条 第十七条乃至第二十条、第二十二条及第二十三条第一項ノ規定ハ第四十七条第七号及第四十八条ニ規定スル財団債権ニ之ヲ準用ス
第五章 法律行為ニ関スル破産ノ効力
第五十三条 破産者カ破産宣告ノ後破産財団ニ属スル財産ニ関シテ為シタル法律行為ハ之ヲ以テ破産債権者ニ対抗スルコトヲ得ス
破産者カ破産宣告ノ日ニ於テ為シタル法律行為ハ破産宣告後ニ之ヲ為シタルモノト推定ス
第五十四条 破産宣告ノ後破産財団ニ属スル財産ニ関シ破産者ノ法律行為ニ因ラスシテ権利ヲ取得スルモ其ノ取得ハ之ヲ以テ破産債権者ニ対抗スルコトヲ得ス
前条第二項ノ規定ハ前項ノ取得ニ之ヲ準用ス
第五十五条 不動産又ハ船舶ニ関シ破産宣告前ニ生シタル登記原因ニ基キ破産宣告ノ後為シタル登記又ハ不動産登記法第二条第一号ノ規定ニ依ル仮登記ハ之ヲ以テ破産債権者ニ対抗スルコトヲ得ス但シ登記権利者カ破産宣告ノ事実ヲ知ラスシテ為シタル登記又ハ仮登記ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ規定ハ権利ノ設定、移転又ハ変更ニ関スル登録又ハ仮登録ニ付之ヲ準用ス
第五十六条 破産宣告ノ後其ノ事実ヲ知ラスシテ破産者ニ為シタル弁済ハ之ヲ以テ破産債権者ニ対抗スルコトヲ得
破産宣告ノ後其ノ事実ヲ知リテ破産者ニ為シタル弁済ハ破産財団カ受ケタル利益ノ限度ニ於テノミ之ヲ以テ破産債権者ニ対抗スルコトヲ得
第五十七条 為替手形ノ振出人又ハ裏書人カ破産ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ於テ支払人又ハ予備支払人カ其ノ事実ヲ知ラスシテ引受又ハ支払ヲ為シタルトキハ之ニ因リテ生シタル債権ニ付破産債権者トシテ其ノ権利ヲ行フコトヲ得
前項ノ規定ハ小切手及金銭其ノ他ノ物又ハ有価証券ノ給付ヲ目的トスル有価証券ニ之ヲ準用ス
第五十八条 前三条ノ規定ノ適用ニ付テハ破産宣告ノ公告前ニ在リテハ其ノ事実ヲ知ラサリシモノト推定シ公告後ニ在リテハ其ノ事実ヲ知リタルモノト推定ス
第五十九条 双務契約ニ付破産者及其ノ相手方カ破産宣告ノ当時未タ共ニ其ノ履行ヲ完了セサルトキハ破産管財人ハ其ノ選択ニ従ヒ契約ノ解除ヲ為シ又ハ破産者ノ債務ヲ履行シテ相手方ノ債務ノ履行ヲ請求スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ相手方ハ破産管財人ニ対シ相当ノ期間ヲ定メ其ノ期間内ニ契約ノ解除ヲ為スカ又ハ債務ノ履行ヲ請求スルカヲ確答スヘキ旨ヲ催告スルコトヲ得破産管財人カ其ノ期間内ニ確答ヲ為ササルトキハ契約ノ解除ヲ為シタルモノト看做ス
第六十条 前条ノ規定ニ依リ契約ノ解除アリタルトキハ相手方ハ損害ノ賠償ニ付破産債権者トシテ其ノ権利ヲ行フコトヲ得
破産者ノ受ケタル反対給付カ破産財団中ニ現存スルトキハ相手方ハ其ノ返還ヲ請求シ現存セサルトキハ其ノ価額ニ付財団債権者トシテ其ノ権利ヲ行フコトヲ得
第六十一条 取引所ノ相場アル商品ノ売買ニ付一定ノ日時又ハ一定ノ期間内ニ履行ヲ為スニ非サレハ契約ヲ為シタル目的ヲ達スルコト能ハサル場合ニ於テ其ノ時期カ破産宣告後ニ到来スヘキトキハ契約ノ解除アリタルモノト看做ス此ノ場合ニ於テ損害賠償ノ額ハ履行地又ハ其ノ地ノ相場ノ標準ト為ルヘキ地ニ於ケル同種ノ取引ニシテ同一ノ時期ニ履行スヘキモノノ相場ト売買ノ代価トノ差額ニ依リテ之ヲ定ム
前条第一項ノ規定ハ前項ノ規定ニ依ル損害賠償ニ付之ヲ準用ス
第一項ノ場合ニ付取引所ニ於テ別段ノ定ヲ為シタルトキハ其ノ定ニ従フ
第六十二条 第五十九条第二項ノ規定ハ民法第六百二十一条、第六百三十一条又ハ第六百四十二条第一項ノ規定ニ依リ相手方又ハ破産管財人カ有スル解除権ノ行使ニ付之ヲ準用ス
第六十三条 賃貸人カ破産ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ於テハ借賃ノ前払又ハ借賃ノ債権ノ処分ハ破産宣告ノ時ニ於ケル当期及次期ニ関スルモノヲ除クノ外之ヲ以テ破産債権者ニ対抗スルコトヲ得ス
前項ノ規定ニ依リ破産債権者ニ対抗スルコトヲ得サルニ因リテ損害ヲ受ケタル者ハ其ノ損害ノ賠償ニ付破産債権者トシテ其ノ権利ヲ行フコトヲ得
前二項ノ規定ハ地上権及永小作権ニ付之ヲ準用ス
第六十四条 破産者カ請負契約ニ因リ仕事ヲ為ス義務ヲ負担スルトキハ破産管財人ハ必要ナル材料ヲ供シ破産者ヲシテ其ノ仕事ヲ為サシムルコトヲ得其ノ仕事カ破産者自ラ為スコトヲ要セサルモノナルトキハ第三者ヲシテ之ヲ為サシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ破産者カ其ノ相手方ヨリ受クヘキ報酬ハ破産財団ニ属ス
第六十五条 委任者カ破産ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ於テ受任者カ破産宣告ノ通知ヲ受ケス且破産宣告ノ事実ヲ知ラスシテ委任事務ヲ処理シタルトキハ之ニ因リテ生シタル債権ニ付破産債権者トシテ其ノ権利ヲ行フコトヲ得
第六十六条 交互計算ハ当事者ノ一方カ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキハ終了ス此ノ場合ニ於テハ各当事者ハ計算ヲ閉鎖シ残額ノ支払ヲ請求スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル請求権ハ破産者之ヲ有スルトキハ破産財団ニ属シ相手方之ヲ有スルトキハ破産債権トス
第六十七条 数人共同シテ財産権ヲ有スル場合ニ於テ共有者ノ中破産ノ宣告ヲ受ケタル者アルトキハ分割ヲ為ササル定アルトキト雖破産手続ニ依ラスシテ其ノ分割ヲ為スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ他ノ共有者ハ相当ノ償金ヲ払ヒテ破産者ノ持分ヲ取得スルコトヲ得
第六十八条 民法第七百九十六条第二項第三項及第七百九十七条ノ規定ハ配偶者ノ財産ヲ管理スル者カ破産ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ、同法第八百九十七条ノ規定ハ親権ヲ行フ者カ破産ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ之ヲ準用ス
第六十九条 破産財団ニ属スル財産ニ関シ破産宣告ノ当時繋属スル訴訟ハ破産管財人又ハ相手方ニ於テ之ヲ受継クコトヲ得第四十七条第七号ニ掲クル請求権ニ関スル訴訟ニ付亦同シ
前項ノ場合ニ於テハ訴訟費用ハ之ヲ財団債権トス
第七十条 破産債権ニ付破産財団ニ属スル財産ニ対シ為シタル強制執行、仮差押又ハ仮処分ハ破産財団ニ対シテハ其ノ効力ヲ失フ但シ強制執行ニ付テハ破産管財人ニ於テ破産財団ノ為其ノ手続ヲ続行スルコトヲ妨ケス
前項但書ノ規定ニ依リ破産管財人カ強制執行ノ手続ヲ続行スルトキハ費用ハ之ヲ財団債権トシ強制執行ニ対スル第三者ノ異議ノ訴ニ付テハ破産管財人ヲ被告トス
前二項ノ規定ハ一般ノ先取特権者カ破産財団ニ属スル財産ニ対シ為シタル競売手続ニ之ヲ準用ス
第七十一条 破産財団ニ属スル財産ニ対シ国税徴収法又ハ国税徴収ノ例ニ依ル滞納処分ヲ為シタル場合ニ於テハ破産ノ宣告ハ其ノ処分ノ続行ヲ妨ケス
破産財団ニ属スル財産ニ関シ破産宣告ノ当時行政庁ニ繋属スル事件アルトキハ其ノ手続ハ受継又ハ破産手続ノ解止ニ至ル迄之ヲ中断ス
第六十九条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第六章 否認権
第七十二条 左ニ掲クル行為ハ破産財団ノ為之ヲ否認スルコトヲ得
一 破産者カ破産債権者ヲ害スルコトヲ知リテ為シタル行為但シ之ニ因リテ利益ヲ受ケタル者カ其ノ行為ノ当時破産債権者ヲ害スヘキ事実ヲ知ラサリシトキハ此ノ限ニ在ラス
二 破産者カ支払ノ停止又ハ破産ノ申立アリタル後ニ為シタル担保ノ供与、債務ノ消滅ニ関スル行為其ノ他破産債権者ヲ害スル行為但シ之ニ因リテ利益ヲ受ケタル者カ其ノ行為ノ当時支払ノ停止又ハ破産ノ申立アリタルコトヲ知リタルトキニ限ル
三 前号ノ行為ニシテ破産者ノ親族、戸主、家族又ハ同居者ヲ相手方トスルモノ但シ相手方カ其ノ行為ノ当時支払ノ停止又ハ破産ノ申立アリタルコトヲ知ラサリシトキハ此ノ限ニ在ラス
四 破産者カ支払ノ停止若ハ破産ノ申立アリタル後又ハ其ノ前三十日内ニ為シタル担保ノ供与又ハ債務ノ消滅ニ関スル行為ニシテ破産者ノ義務ニ属セス又ハ其ノ方法若ハ時期カ破産者ノ義務ニ属セサルモノ但シ債権者カ其ノ行為ノ当時支払ノ停止若ハ破産ノ申立アリタルコト又ハ破産債権者ヲ害スヘキ事実ヲ知ラサリシトキハ此ノ限ニ在ラス
五 破産者カ支払ノ停止若ハ破産ノ申立アリタル後又ハ其ノ前六月内ニ為シタル無償行為及之ト同視スヘキ有償行為
第七十三条 前条ノ規定ハ破産者ヨリ手形ノ支払ヲ受ケタル者カ其ノ支払ヲ受ケサレハ債務者ノ一人又ハ数人ニ対スル手形上ノ権利ヲ失フヘカリシ場合ニハ之ヲ適用セス
前項ノ場合ニ於テ最終ノ償還義務者又ハ手形ノ振出ヲ委託シタル者カ振出ノ当時支払ノ停止又ハ破産ノ申立アリタルコトヲ知リ又ハ過失ニ因リテ之ヲ知ラサリシトキハ破産管財人ハ之ヲシテ破産者カ支払ヒタル金額ヲ償還セシムルコトヲ得
第七十四条 支払ノ停止又ハ破産ノ申立アリタル後権利ノ設定、移転又ハ変更ヲ以テ第三者ニ対抗スルニ必要ナル行為ヲ為シタル場合ニ於テ其ノ行為カ権利ノ設定、移転又ハ変更アリタル日ヨリ十五日ヲ経過シタル後悪意ニテ為シタルモノナルトキハ之ヲ否認スルコトヲ得但シ登記及登録ニ付テハ仮登記又ハ仮登録アリタル後本登記又ハ本登録ヲ為シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ規定ハ権利取得ノ効力ヲ生スル登録ニ付之ヲ準用ス
第七十五条 否認権ハ否認セムトスル行為ニ付執行力アル債務名義アルトキ又ハ其ノ行為カ執行行為ニ基クモノナルトキト雖之ヲ行フコトヲ妨ケス
第七十六条 否認権ハ訴又ハ抗弁ニ依リ破産管財人之ヲ行フ
第七十七条 否認権ノ行使ハ破産財団ヲ原状ニ復セシム
第七十二条第五号ニ掲クル行為カ否認セラレタル場合ニ於テ相手方カ行為ノ当時善意ナリシトキハ其ノ現ニ受クル利益ヲ償還スルヲ以テ足ル
第七十八条 破産者ノ行為カ否認セラレタル場合ニ於テ其ノ受ケタル反対給付カ破産財団中ニ現存スルトキハ相手方ハ其ノ返還ヲ請求シ反対給付ニ因リテ生シタル利益カ現存スルトキハ其ノ利益ノ限度ニ於テ財団債権者トシテ其ノ権利ヲ行フコトヲ得
反対給付ニ因リテ生シタル利益カ現存セサルトキハ相手方ハ其ノ価額ノ償還ニ付破産債権者トシテ其ノ権利ヲ行フコトヲ得反対給付ノ価額カ現存スル利益ヨリ大ナル場合ニ於テ其ノ差額ニ付亦同シ
第七十九条 破産者ノ行為カ否認セラレタル場合ニ於テ相手方カ其ノ受ケタル給付ヲ返還シ又ハ其ノ価額ヲ償還シタルトキハ相手方ノ債権ハ之ニ因リテ原状ニ復ス
第八十条 第七十二条、第七十三条及前二条ノ規定ハ相続財産ニ対シテ破産ノ宣告アリタル場合ニ於テ被相続人、相続人、相続財産管理人及遺言執行者カ相続財産ニ関シテ為シタル行為並前戸主カ第十三条ノ財産ニ関シテ為シタル行為ニ之ヲ準用ス
第八十一条 相続財産ニ対シ破産ノ宣告アリタル場合ニ於テ受遺者ニ対スル弁済其ノ他債務ノ消滅ニ関スル行為カ其ノ債権ニ先ツ債権ヲ有スル破産債権者ヲ害スルトキハ之ヲ否認スルコトヲ得
第八十二条 相続財産ニ対シテ破産ノ宣告アリタル場合ニ於テ第八十条ニ規定スル行為カ否認セラレタルトキハ相続債権者ニ弁済ヲ為シタル後否認セラレタル行為ノ相手方ニ其ノ権利ノ価額ニ応シテ残余財産ヲ分配スルコトヲ要ス
第八十三条 左ノ場合ニ於テハ否認権ハ転得者ニ対シテモ亦之ヲ行フコトヲ得
一 転得者カ転得ノ当時各其ノ前者ニ対スル否認ノ原因アルコトヲ知リタルトキ
二 転得者カ破産者ノ親族、戸主、家族又ハ同居者ナルトキ但シ転得ノ当時各其ノ前者ニ対スル否認ノ原因アルコトヲ知ラサリシトキハ此ノ限ニ在ラス
三 転得者カ無償行為又ハ之ト同視スヘキ有償行為ニ因リテ転得シタル場合ニ於テ各其ノ前者ニ対シ否認ノ原因アルトキ
第七十七条第二項ノ規定ハ前項第三号ノ規定ニ依リ否認権ノ行使アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第八十四条 破産宣告ノ日ヨリ一年前ニ為シタル行為ハ支払停止ノ事実ヲ知リタルコトヲ理由トシテ之ヲ否認スルコトヲ得ス
第八十五条 否認権ハ破産宣告ノ日ヨリ二年間之ヲ行ハサルトキハ時効ニ因リテ消滅ス行為ノ日ヨリ二十年ヲ経過シタルトキ亦同シ
第八十六条 民法第四百二十四条ノ規定ニ依リ破産債権者ノ提起シタル訴訟カ破産宣告ノ当時繋属スルトキハ其ノ訴訟手続ハ受継又ハ破産手続ノ解止ニ至ル迄之ヲ中断ス
第六十九条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第七章 取戻権
第八十七条 破産ノ宣告ハ破産者ニ属セサル財産ヲ破産財団ヨリ取戻ス権利ニ影響ヲ及ホサス
第八十八条 破産宣告前破産者ニ財産ヲ譲渡シタル者ハ担保ノ目的ヲ以テシタルコトヲ理由トシテ其ノ財産ヲ取戻スコトヲ得ス
第八十九条 売主カ売買ノ目的タル物品ヲ買主ニ発送シタル場合ニ於テ買主カ未タ代金ノ全額ヲ弁済セス且到達地ニ於テ其ノ物品ヲ受取ラサル間ニ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキハ売主ハ其ノ物品ヲ取戻スコトヲ得但シ破産管財人カ代金ノ全額ヲ支払ヒテ其ノ物品ノ引渡ヲ請求スルコトヲ妨ケス
前項ノ規定ハ第五十九条ノ規定ノ適用ヲ妨ケス
第九十条 前条第一項ノ規定ハ物品買入ノ委託ヲ受ケタル問屋カ其ノ物品ヲ委託者ニ発送シタル場合ニ之ヲ準用ス
第九十一条 破産者カ破産宣告前取戻権ノ目的タル財産ヲ譲渡シタル場合ニ於テハ取戻権者ハ反対給付ノ請求権ノ移転ヲ請求スルコトヲ得破産管財人カ取戻権ノ目的タル財産ヲ譲渡シタル場合亦同シ
前項ノ場合ニ於テ破産管財人カ反対給付ヲ受ケタルトキハ取戻権者ハ破産管財人カ反対給付トシテ受ケタル財産ノ給付ヲ請求スルコトヲ得
第八章 別除権
第九十二条 破産財団ニ属スル財産ノ上ニ存スル特別ノ先取特権、質権又ハ抵当権ヲ有スル者ハ其ノ目的タル財産ニ付別除権ヲ有ス
第九十三条 破産財団ニ属スル財産ノ上ニ存スル留置権ニシテ商法ニ依ルモノハ破産財団ニ対シテハ之ヲ特別ノ先取特権ト看做ス此ノ先取特権ハ他ノ特別ノ先取特権ニ後ル
前項ニ規定スルモノヲ除クノ外留置権ハ破産財団ニ対シテハ其ノ効力ヲ失フ
第九十四条 数人共同シテ財産権ヲ有スル場合ニ於テ其ノ一人カ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキハ之ニ対シ共有ニ関スル債権ヲ有スル他ノ共有者ハ分割ニ因リテ破産者ニ帰スヘキ共有財産ノ部分ニ付別除権ヲ有ス
第九十五条 別除権ハ破産手続ニ依ラスシテ之ヲ行フ
第九十六条 別除権者ハ其ノ別除権ノ行使ニ依リテ弁済ヲ受クルコト能ハサル債権額ニ付テノミ破産債権者トシテ其ノ権利ヲ行フコトヲ得但シ別除権ヲ抛棄シタル債権額ニ付破産債権者トシテ其ノ権利ヲ行フコトヲ妨ケス
第九十七条 破産財団ニ属セサル破産者ノ財産ノ上ニ特別ノ先取特権、質権又ハ抵当権ヲ有スル者ハ其ノ権利ノ行使ニ依リテ弁済ヲ受クルコト能ハサル債権額ニ付テノミ破産債権者トシテ其ノ権利ヲ行フコトヲ得華族世襲財産ヲ差押フル権利ヲ有スル者及破産者カ更ニ破産ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ於テ前ノ破産ニ付破産債権ヲ有スル者亦同シ
前項ニ掲クル権利ヲ有スル者ニハ第二編中別除権ニ関スル規定ヲ準用ス
第九章 相殺権
第九十八条 破産債権者カ破産宣告ノ当時破産者ニ対シテ債務ヲ負担スルトキハ破産手続ニ依ラスシテ相殺ヲ為スコトヲ得
第九十九条 破産債権者ノ債権カ破産宣告ノ時ニ於テ期限附若ハ解除条件附ナルトキ又ハ第二十二条ニ掲クルモノナルトキト雖相殺ヲ為スコトヲ妨ケス債務カ期限附若ハ条件附ナルトキ又ハ将来ノ請求権ニ関スルモノナルトキ亦同シ
第百条 停止条件附債権又ハ将来ノ請求権ヲ有スル者カ其ノ債務ヲ弁済スル場合ニ於テハ後日相殺ヲ為ス為其ノ債権額ノ限度ニ於テ弁済額ノ寄託ヲ請求スルコトヲ得
第百一条 解除条件附債権ヲ有スル者カ相殺ヲ為ストキハ其ノ相殺額ニ付担保ヲ供シ又ハ寄託ヲ為スコトヲ要ス
第百二条 第十八条乃至第二十条、第二十二条及第二十三条ノ規定ハ破産債権者ノ債権ニ之ヲ準用ス
第百三条 破産債権者カ賃借人ナルトキハ破産宣告ノ時ニ於ケル当期及次期ノ借賃ニ付相殺ヲ為スコトヲ得敷金アルトキハ其ノ後ノ借賃ニ付亦同シ
前項ノ規定ハ地代及小作料ニ付之ヲ準用ス
第百四条 左ノ場合ニ於テハ相殺ヲ為スコトヲ得ス
一 破産債権者カ破産宣告ノ後破産財団ニ対シテ債務ヲ負担シタルトキ
二 破産者ノ債務者カ破産宣告ノ後他人ノ破産債権ヲ取得シタルトキ
三 破産者ノ債務者カ支払ノ停止又ハ破産ノ申立アリタルコトヲ知リテ破産債権ヲ取得シタルトキ但シ其ノ取得カ法定ノ原因ニ基クトキ、債務者カ支払ノ停止若ハ破産ノ申立アリタルコトヲ知リタル時ヨリ前ニ生シタル原因ニ基クトキ又ハ破産宣告ノ時ヨリ一年前ニ生シタル原因ニ基クトキハ此ノ限ニ在ラス
第二編 手続規定
第一章 総則
第百五条 破産事件ハ債務者カ営業者ナルトキハ其ノ主タル営業所ノ所在地、外国ニ主タル営業所ヲ有スルトキハ日本ニ於ケル主タル営業所ノ所在地、営業者ニ非サルトキ又ハ営業所ヲ有セサルトキハ其ノ普通裁判籍ノ所在地ヲ管轄スル区裁判所ノ管轄ニ専属ス
第百六条 相続財産ニ関スル破産事件ハ相続開始地ヲ管轄スル区裁判所ノ管轄ニ専属ス
第百七条 前二条ノ規定ニ依ル管轄裁判所ナキトキハ財産ノ所在地ヲ管轄スル区裁判所ノ管轄ニ専属ス
債権ハ裁判上ノ請求ヲ為スコトヲ得ル地ヲ以テ其ノ所在地ト看做ス
前二項ノ規定ニ依リ二以上ノ裁判所カ管轄権ヲ有スルトキハ先ニ破産ノ申立アリタル裁判所ノ管轄ニ専属ス
第百八条 破産手続ニ関シテハ本法ニ別段ノ定ナキトキハ民事訴訟法ヲ準用ス
第百九条 破産事件ニ関シテハ裁判所ハ互ニ法律上ノ輔助ヲ求ムルコトヲ得
第百十条 破産手続ニ関スル裁判ハ口頭弁論ヲ経スシテ之ヲ為スコトヲ得
裁判所ハ職権ヲ以テ破産事件ニ関シ必要ナル調査ヲ為スコトヲ得
第百十一条 破産手続ニ関スル裁判ハ職権ヲ以テ其ノ送達ヲ為スコトヲ要ス
第百十二条 破産手続ニ関スル裁判ニ対シテハ本編ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外其ノ裁判ニ付利害関係ヲ有スル者ハ即時抗告ヲ為スコトヲ得其ノ期間ハ裁判ノ公告アリタル場合ニ於テハ其ノ公告アリタル日ヨリ起算シテ二週間トス
第百十三条 抗告裁判所ノ決定ハ確定ノ後ニ非サレハ其ノ効力ヲ生セス但シ裁判所ハ其ノ決定ヲ以テ直ニ効力ヲ生スヘキコトヲ定ムルコトヲ得
抗告裁判所ノ破産ノ宣告ハ前項ノ規定ニ拘ラス直ニ其ノ効力ヲ生ス
第百十四条 破産手続ニ関スル申立、陳述及抗告ハ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
第百十五条 本編ノ規定ニ依リ為スヘキ公告ハ官報及登記事項ノ公告ヲ掲載スヘキ新聞紙ヲ以テ之ヲ為ス
公告ハ最終ノ掲載アリタル日ノ翌日ニ於テ其ノ効力ヲ生ス
第百十六条 裁判所ノ管轄内ニ前条第一項ノ新聞紙ナキトキハ公告ハ裁判所及破産者ノ営業所若ハ住所ノ所在地ノ出張所又ハ其ノ管轄内ノ市役所、町村役場若ハ之ニ準スヘキ公署ノ掲示場ニ掲示シテ之ヲ為ス此ノ場合ニ於テハ公告ハ掲示ノ日ヨリ三日ヲ経過シタル後其ノ効力ヲ生ス
第百十七条 本編ノ規定ニ依リ送達ヲ為スヘキ場合ニ於テハ公告ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
第百十八条 本編ノ規定ニ依リ公告ノ外送達ヲ為スヘキ場合ニ於テハ送達ハ書類ヲ郵便ニ付シテ之ヲ為スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ公告ハ一切ノ関係人ニ対スル送達ノ効力ヲ有ス
第百十九条 法人ニ対シテ破産ノ宣告ヲ為シタルトキハ裁判所ハ職権ヲ以テ遅滞ナク嘱託書ニ破産決定書ノ謄本ヲ添附シテ破産ノ登記ヲ各営業所又ハ各事務所ノ所在地ノ登記所ニ嘱託スルコトヲ要ス
第百二十条 裁判所カ破産者ニ関スル登記アルコトヲ知リタルトキハ職権ヲ以テ遅滞ナク嘱託書ニ破産決定書ノ謄本ヲ添附シテ破産ノ登記ヲ登記所ニ嘱託スルコトヲ要ス破産財団ニ属スル権利ニシテ登記シタルモノアルコトヲ知リタルトキ亦同シ
第百二十一条 前二条ノ規定ハ破産取消、破産廃止又ハ強制和議取消ノ決定カ確定シタル場合及破産終結ノ決定アリタル場合ニ之ヲ準用ス破産管財人カ破産ノ登記アリタル権利ヲ破産財団ヨリ抛棄シタル場合ニ於テ登記嘱託ノ申立アリタルトキ亦同シ
第百二十二条 登記所カ前三条ノ規定ニ依リテ登記ノ嘱託ヲ受ケタルトキハ遅滞ナク其ノ登記ヲ為スコトヲ要ス
前項ノ登記ニ付テハ登録税ヲ課セス
第百二十三条 登記ノ原因タル行為カ否認セラレタルトキハ破産管財人ハ否認ノ登記ヲ為スコトヲ要ス登記カ否認セラレタルトキ亦同シ
第百二十一条及前条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第百二十四条 前四条ノ規定ハ破産財団ニ属スル権利ニシテ登録シタルモノニ之ヲ準用ス
第百二十五条 法人ニ対シテ破産ノ宣告ヲ為シタル場合ニ於テ其ノ法人ノ設立又ハ目的タル事業ニ付官庁ノ許可アリタルモノナルトキハ裁判所ハ破産ノ宣告アリタル旨ヲ主務官庁ニ通知スルコトヲ要ス
前項ノ規定ハ破産取消、破産廃止若ハ強制和議取消ノ決定カ確定シ又ハ破産終結ノ決定アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第二章 破産宣告
第百二十六条 債務者カ支払ヲ為スコト能ハサルトキハ裁判所ハ申立ニ因リ決定ヲ以テ破産ヲ宣告ス
債務者カ支払ヲ停止シタルトキハ支払ヲ為スコト能ハサルモノト推定ス
第百二十七条 法人ニ対シテハ其ノ財産ヲ以テ債務ヲ完済スルコト能ハサル場合ニ於テモ亦破産ノ宣告ヲ為スコトヲ得
前項ノ規定ハ合名会社及合資会社ノ存立中ハ之ヲ適用セス
第百二十八条 法人ニ対シテハ其ノ解散ノ後ト雖残余財産ノ引渡又ハ分配カ終了セサル間ハ破産ノ申立ヲ為スコトヲ得
第百二十九条 相続財産ヲ以テ相続債権者及受遺者ニ対スル債務ヲ完済スルコト能ハサルトキハ裁判所ハ申立ニ因リ決定ヲ以テ破産ヲ宣告ス
第百三十条 破産ノ申立又ハ破産ノ宣告アリタル後相続カ開始シタルトキハ破産手続ハ相続財産ニ対シテ之ヲ続行ス
破産ノ申立又ハ破産ノ宣告アリタル後ニ於ケル国籍ノ喪失ハ破産手続ニ関シテハ其ノ効力ヲ有セス
第百三十一条 相続財産ニ対シテハ民法第千四十一条ノ規定ニ依リ財産分離ノ請求ヲ為スコトヲ得ル間ニ限リ破産ノ申立ヲ為スコトヲ得其ノ間ニ限定承認又ハ財産分離アリタル場合ニ於テハ相続債権者及受遺者ニ対スル弁済カ未タ終了セサル間亦同シ
第百三十二条 債権者又ハ債務者ハ破産ノ申立ヲ為スコトヲ得
債権者カ破産ノ申立ヲ為ストキハ其ノ債権ノ存在及破産ノ原因タル事実ヲ疏明スルコトヲ要ス
第百三十三条 民法ニ依リテ設立シタル法人又ハ産業組合ニ対シテハ理事、合名会社合資会社又ハ株式合資会社ニ対シテハ無限責任社員、株式会社又ハ相互保険会社ニ対シテハ取締役ハ破産ノ申立ヲ為スコトヲ得
前項ニ規定スル法人ニ対シテハ清算人モ亦破産ノ申立ヲ為スコトヲ得
第百三十四条 理事、無限責任社員、取締役又ハ清算人ノ全員カ破産ノ申立ヲ為ササル場合ニ於テハ破産ノ原因タル事実ヲ疏明スルコトヲ要ス
第百三十五条 前二条ノ規定ハ第百三十三条ニ規定スル法人以外ノ法人ニ之ヲ準用ス
第百三十六条 相続財産ニ対シテハ相続債権者及受遺者ノ外相続人、相続財産管理人及遺言執行者モ亦破産ノ申立ヲ為スコトヲ得
相続財産管理人、遺言執行者又ハ限定承認若ハ財産分離アリタル場合ニ於テハ相続人カ相続財産ヲ以テ相続債権者及受遺者ニ対スル債務ヲ完済スルコト能ハサルコトヲ発見シタルトキハ直ニ破産ノ申立ヲ為スコトヲ要ス
相続人、相続財産管理人又ハ遺言執行者カ破産ノ申立ヲ為ストキハ破産ノ原因タル事実ヲ疏明スルコトヲ要ス
第百三十七条 破産申立ノ当時既ニ外国ニ於テ破産ノ宣告アリタルトキハ破産申立人ハ破産ノ原因タル事実ヲ疏明スルコトヲ要セス
第百三十八条 破産申立人カ債権者ニ非サルトキハ申立ト同時ニ財産ノ概況ヲ示スヘキ書面並債権者及債務者ノ一覧表ヲ提出スルコトヲ要ス申立ト同時ニ提出スルコト能ハサルトキハ爾後遅滞ナク之ヲ提出スルコトヲ要ス
第百三十九条 債権者カ破産ノ申立ヲ為ス場合ニ於テハ破産手続ノ費用トシテ裁判所カ相当ト認ムル金額ノ予納アルコトヲ要ス予納ナキトキハ裁判所ハ其ノ申立ヲ棄却スルコトヲ得
費用ノ予納ニ関スル決定ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第百四十条 破産申立人カ債権者ニ非サルトキハ破産手続ノ費用ハ仮ニ国庫ヨリ之ヲ支弁ス破産申立人カ債権者ナル場合ニ於テ費用ノ予納ナキニ拘ラス裁判所カ破産ノ宣告ヲ為シタルトキ、予納金カ不足ナルニ至リタルトキ及裁判所カ職権ヲ以テ破産ノ宣告ヲ為シタルトキ亦同シ
第百四十一条 破産決定書ニハ破産宣告ノ年月日時ヲ記載スルコトヲ要ス
第百四十二条 裁判所ハ破産ノ宣告ト同時ニ破産管財人ヲ選任シ且左ノ事項ヲ定ムルコトヲ要ス
一 債権届出ノ期間但シ其ノ期間ハ破産宣告ノ日ヨリ二週間以上四月以下ナルコトヲ要ス
二 第一回ノ債権者集会ノ期日但シ其ノ期日ハ破産宣告ノ日ヨリ一月内ナルコトヲ要ス
三 債権調査ノ期日但シ其ノ期日ト債権届出期間ノ末日トノ間ニハ一週間以上一月以下ノ期間ヲ存スルコトヲ要ス
前項第二号及第三号ノ期日ハ之ヲ併合スルコトヲ妨ケス
第百四十三条 裁判所カ破産ノ宣告ヲ為シタルトキハ直ニ左ノ事項ヲ公告スルコトヲ要ス
一 破産決定ノ主文
二 破産管財人ノ氏名及住所
三 前条ノ規定ニ依リ定メタル期間及期日
四 破産者ノ債務者及破産財団ニ属スル財産ノ所持者ハ破産者ニ弁済ヲ為シ又ハ其ノ財産ヲ交付スヘカラサル旨及債務ヲ負担スルコト又ハ其ノ財産ヲ所持スルコト、所持者カ別除権ヲ有スルトキハ其ノ債権ヲ有スルコトヲ一定ノ期間内ニ破産管財人ニ届出ツヘキ旨ノ命令
知レタル債権者、債務者及財産所持者ニハ前項ニ掲クル事項ヲ記載シタル書面ヲ送達スルコトヲ要ス
前二項ノ規定ハ第一項第二号乃至第四号ニ掲クル事項ニ変更ヲ生シタル場合ニ之ヲ準用ス
第一項第四号ノ届出ヲ怠リタル者ハ之ニ因リテ破産財団ニ生シタル損害ヲ賠償スルコトヲ要ス
第百四十四条 裁判所カ破産ノ宣告ヲ為シタルトキハ遅滞ナク其ノ旨ヲ検事ニ通知スルコトヲ要ス
第百四十五条 裁判所カ破産財団ヲ以テ破産手続ノ費用ヲ償フニ足ラスト認ムルトキハ破産ノ宣告ト同時ニ破産廃止ノ決定ヲ為スコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ裁判所ハ破産決定ノ主文並破産廃止ノ決定ノ主文及理由ノ要領ヲ公告スルコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テ破産廃止ノ決定ノ取消カ確定シタルトキハ前三条ノ規定ヲ準用ス
第百四十六条 前条ノ規定ハ無限責任又ハ保証責任ノ相互保険会社、産業組合其ノ他ノ法人ニハ之ヲ適用セス破産手続ノ費用ヲ償フニ足ルヘキ金額ノ予納アリタル場合亦同シ
第百四十七条 破産者ハ裁判所ノ許可ヲ得ルニ非サレハ其ノ居住地ヲ離ルルコトヲ得ス
第百四十八条 裁判所ハ必要ト認ムルトキハ破産者ノ引致ヲ命スルコトヲ得
引致ハ引致状ヲ発シテ之ヲ為ス
引致ニハ刑事訴訟法中勾引ニ関スル規定ヲ準用ス
第百四十九条 破産者カ逃走シ又ハ財産ヲ隠匿若ハ毀棄スル虞アルトキハ裁判所ハ其ノ監守ヲ命スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ裁判所ハ決定書ノ正本ヲ検事ニ送致スルコトヲ要ス検事ハ破産者ノ居住地ヲ管轄スル警察官署ニ命シテ監守ヲ執行セシム
第百五十条 監守ヲ命セラレタル破産者ハ裁判所ノ許可ヲ得ルニ非サレハ外人ト面接又ハ通信スルコトヲ得ス
第百五十一条 監守ノ必要カ止ミタルトキハ裁判所ハ破産者若ハ破産管財人ノ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ監守ノ決定ヲ取消スコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テハ裁判所ハ決定書ノ正本ヲ検事ニ送致スルコトヲ要ス検事ハ警察官署ニ命シテ監守ヲ解カシム
第百五十二条 前五条ノ規定ハ破産者ノ法定代理人、理事及之ニ準スヘキ者並支配人ニ付之ヲ準用ス相続財産ニ対スル破産ニ於テ相続人及前戸主並其ノ法定代理人及支配人ニ付亦同シ
第百五十三条 破産者、其ノ代理人並其ノ理事及之ニ準スヘキ者ハ破産管財人、監査委員又ハ債権者集会ノ請求ニ因リ破産ニ関シ必要ナル説明ヲ為スコトヲ要ス相続財産ニ対スル破産ニ於テ相続人、前戸主、相続財産管理人、遺言執行者並相続人及前戸主ノ代理人亦同シ
前項ノ規定ハ前ニ前項ニ規定スル資格ヲ有シタル者ニ之ヲ準用ス
第百五十四条 破産ノ申立アリタルトキハ裁判所ハ破産宣告前ト雖債務者及第百五十二条ニ規定スル者ノ引致又ハ監守ヲ命スルコトヲ得
第百五十五条 破産ノ申立アリタルトキハ裁判所ハ破産宣告前ト雖利害関係人ノ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ破産財団ニ関シ仮差押、仮処分其ノ他ノ必要ナル保全処分ヲ命スルコトヲ得
裁判所ハ前項ノ規定ニ依ル処分ヲ変更シ又ハ之ヲ取消スコトヲ得
前二項ノ規定ニ依ル裁判ハ決定ヲ以テ之ヲ為ス
第百五十六条 破産取消ノ決定カ確定シタル場合ニ於テハ裁判所ハ直ニ其ノ主文ヲ公告スルコトヲ要ス
第百四十三条第二項、第百四十四条、第百五十一条第二項、第百五十二条及第三百五十五条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三章 破産管財人
第百五十七条 破産管財人ハ裁判所之ヲ選任ス
第百五十八条 破産管財人ハ一人トス但シ裁判所必要ト認ムルトキハ数人ヲ選任スルコトヲ得
第百五十九条 裁判所ハ破産管財人ニ其ノ選任ヲ証スル書面ヲ交付スルコトヲ要ス
破産管財人ハ其ノ職務ヲ行フニ当リ利害関係人ノ請求アルトキハ前項ノ書面ヲ示スコトヲ要ス
第百六十条 破産管財人ハ正当ノ事由アルニ非サレハ其ノ任務ヲ辞スルコトヲ得ス
破産管財人カ其ノ任務ヲ辞セムトスルトキハ裁判所ニ申立ヲ為スコトヲ要ス
第百六十一条 破産管財人ハ裁判所ノ監督ニ属ス
第百六十二条 破産財団ニ関スル訴ニ付テハ破産管財人ヲ以テ原告又ハ被告トス
第百六十三条 破産管財人数人アルトキハ共同シテ其ノ職務ヲ行フ但シ裁判所ノ許可ヲ得テ職務ヲ分掌スルコトヲ得
破産管財人数人アルトキハ第三者ノ意思表示ハ其ノ一人ニ対シテ之ヲ為スヲ以テ足ル
第百六十四条 破産管財人ハ善良ナル管理者ノ注意ヲ以テ其ノ職務ヲ行フコトヲ要ス
破産管財人カ前項ノ注意ヲ怠リタルトキハ其ノ破産管財人ハ利害関係人ニ対シ連帯シテ損害賠償ノ責ニ任ス
第百六十五条 破産管財人ハ臨時故障アル場合ニ於テ其ノ職務ヲ行ハシムル為自己ノ責任ヲ以テ予メ代理人ヲ選任スルコトヲ得
前項ノ代理人ノ選任ハ裁判所ノ認可ヲ得ルコトヲ要ス
第百六十六条 破産管財人ハ費用ノ前払及報酬ヲ受クルコトヲ得其ノ額ハ裁判所之ヲ定ム
第百六十七条 裁判所ハ債権者集会ノ決議若ハ監査委員ノ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ破産管財人ヲ解任スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ破産管財人ヲ審訊スルコトヲ要ス
第百六十八条 破産管財人ノ任務終了ノ場合ニ於テハ破産管財人又ハ其ノ相続人ハ遅滞ナク債権者集会ニ計算ノ報告ヲ為スコトヲ要ス
破産者、破産債権者又ハ後任ノ破産管財人カ債権者集会ニ於テ計算ニ付異議ヲ述ヘサリシトキハ之ヲ承認シタルモノト看做ス
破産管財人ハ利害関係人ノ閲覧ニ供スル為計算報告書及監査委員ノ意見書ヲ債権者集会ノ日ヨリ三日前ニ裁判所ニ提出スルコトヲ要ス
第百六十九条 破産管財人ノ任務終了ノ場合ニ於テ急迫ノ事情アルトキハ破産管財人又ハ其ノ相続人ハ後任ノ破産管財人又ハ破産者カ財産ヲ管理スルコトヲ得ルニ至ル迄必要ナル処分ヲ為スコトヲ要ス
第四章 監査委員
第百七十条 監査委員ヲ置クカ否ハ第一回ノ債権者集会ニ於テ之ヲ議決スルコトヲ要ス但シ後ノ債権者集会ニ於テ其ノ決議ヲ変更スルコトヲ得
第百七十一条 監査委員ハ三人以上トシ債権者集会ニ於テ之ヲ選任ス
監査委員ノ選任ノ決議ハ裁判所ノ認可ヲ得ルコトヲ要ス
第百七十二条 監査委員ノ職務ノ執行ハ過半数ヲ以テ之ヲ決ス
特別ノ利害関係ヲ有スル者ハ表決ヲ為スコトヲ得ス
第百七十三条 各監査委員ハ何時ニテモ破産管財人ニ対シテ破産財団ニ関スル報告ヲ求メ又ハ破産財団ノ状況ヲ調査スルコトヲ得
第百七十四条 監査委員ハ何時ニテモ債権者集会ノ決議ヲ以テ之ヲ解任スルコトヲ得
重要ナル事由アルトキハ裁判所ハ利害関係人ノ申立ニ因リ監査委員ヲ解任スルコトヲ得
第百七十五条 第百六十四条及第百六十六条ノ規定ハ監査委員ニ之ヲ準用ス
第五章 債権者集会
第百七十六条 債権者集会ハ破産管財人若ハ監査委員ノ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ裁判所之ヲ招集ス届出ヲ為シタル総債権ニ付裁判所ノ評価シタル額ノ五分ノ一以上ニ当ル破産債権者ノ申立アリタルトキ亦同シ
第百七十七条 債権者集会ノ期日及会議ノ目的タル事項ハ裁判所之ヲ公告スルコトヲ要ス
債権者集会ノ延期又ハ続行ニ付言渡アリタルトキハ送達又ハ公告ヲ為スコトヲ要セス
第百七十八条 債権者集会ハ裁判所之ヲ指揮ス
第百七十九条 債権者集会ノ決議ニハ議決権ヲ行フコトヲ得ヘキ出席破産債権者ノ過半数ニシテ其ノ債権額カ其ノ者ノ総債権ノ半額ヲ超ユル者ノ同意アルコトヲ要ス
債権者集会ノ決議ニ付特別ノ利害関係ヲ有スル者ハ其ノ議決権ヲ行フコトヲ得ス
第百八十条 前条ノ規定ニ依リ決議ヲ為スコト能ハサルトキト雖議決スヘキ事項ニ付同意シタル者ノ債権額カ議決権ヲ行フコトヲ得ヘキ出席破産債権者ノ総債権ノ半額ヲ超ユルトキハ裁判所ハ決定ヲ以テ決議アリタルモノト看做スコトヲ得
前項ノ決定ハ裁判所之ヲ公告スルコトヲ要ス其ノ決定ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第百八十一条 破産債権者ハ代理人ヲ以テ其ノ議決権ヲ行フコトヲ得此ノ場合ニ於テハ代理人ハ代理権ヲ証スル書面ヲ提出スルコトヲ要ス
第百八十二条 破産債権者ハ確定債権額ニ応シテ其ノ議決権ヲ行フコトヲ得
未確定債権、停止条件附債権、将来ノ請求権又ハ別除権ノ行使ニ依リテ弁済ヲ受クルコト能ハサルヘキ債権額ニ付破産管財人又ハ破産債権者ノ異議アルトキハ裁判所ハ議決権ヲ行ハシムヘキカ否及如何ナル金額ニ付之ヲ行ハシムヘキカヲ定ム
裁判所ハ利害関係人ノ申立ニ因リ何時ニテモ前項ノ規定ニ依ル決定ヲ変更スルコトヲ得
前二項ノ規定ニ依ル決定ハ其ノ言渡アリタルトキハ送達ヲ為スコトヲ要セス其ノ決定ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第百八十三条 債権者集会ノ決議ハ之ヲ以テ監査委員ノ同意ニ代フルコトヲ得
債権者集会ノ決議カ監査委員ノ意見ト異ナルトキハ其ノ決議ニ従フ
第百八十四条 債権者集会ノ決議カ破産債権者ノ一般ノ利益ニ反スルトキハ裁判所ハ破産管財人、監査委員若ハ破産債権者ノ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ其ノ決議ノ執行ヲ禁止スルコトヲ得
議決権ヲ有セサリシ破産債権者カ前項ノ申立ヲ為スニハ其ノ破産債権者タルコトヲ疏明スルコトヲ要ス
第一項ノ規定ニ依ル禁止決定ハ其ノ言渡アリタルトキハ送達ヲ為スコトヲ要セス
第六章 破産財団ノ管理及換価
第百八十五条 破産管財人ハ就職ノ後直ニ破産財団ニ属スル財産ノ占有及管理ニ著手スルコトヲ要ス
第百八十六条 破産管財人必要ト認ムルトキハ裁判所書記、執達吏又ハ公証人ヲシテ破産財団ニ属スル財産ニ封印ヲ為サシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テ封印ヲ為シタル者ハ調書ヲ作ルコトヲ要ス
前項ノ規定ハ封印除去ノ場合ニ之ヲ準用ス
第百八十七条 裁判所書記ハ破産宣告ノ後直ニ破産者ノ財産ニ関スル帳簿ヲ閉鎖シ之ニ署名捺印シ且調書ヲ作リ之ニ帳簿ノ現状ヲ記載スルコトヲ要ス
第百八十八条 破産管財人ハ遅滞ナク裁判所書記、執達吏又ハ公証人ノ立会ヲ以テ破産財団ニ属スル一切ノ財産ノ価額ヲ評定スルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ遅滞ノ虞アル場合ヲ除クノ外破産者ノ立会ヲ求ムルコトヲ要ス
第百八十九条 破産管財人ハ財産目録及貸借対照表ヲ作ルコトヲ要ス
破産管財人ハ財産目録及貸借対照表ノ謄本ニ署名捺印シ之ヲ裁判所ニ提出スルコトヲ要ス封印ニ関スル調書ニ付亦同シ
利害関係人ハ前項ニ規定スル書類ノ閲覧ヲ求ムルコトヲ得
第百九十条 裁判所ハ通信官署又ハ公衆通信取扱所ニ対シ破産者ニ宛テタル郵便物又ハ電報ヲ破産管財人ニ配達スヘキ旨ヲ嘱託スルコトヲ要ス
破産管財人ハ其ノ受取リタル前項ノ郵便物又ハ電報ノ開披ヲ為スコトヲ得
破産者ハ前項ノ郵便物又ハ電報ノ閲覧ヲ求メ且破産財団ニ関セサルモノノ交付ヲ求ムルコトヲ得
第百九十一条 裁判所ハ破産者ノ申立ニ因リ破産管財人ノ意見ヲ聴キ前条第一項ノ嘱託ヲ取消シ又ハ之ヲ制限スルコトヲ得
破産取消若ハ破産廃止ノ決定カ確定シタルトキ又ハ破産終結ノ決定アリタルトキハ裁判所ハ前条第一項ノ嘱託ヲ取消スコトヲ要ス
第百九十二条 第一回ノ債権者集会前ニ於テハ破産管財人ハ裁判所ノ許可ヲ得テ破産者及之ニ扶養セラルル者ニ扶助料ヲ与ヘ又ハ破産者ノ営業ヲ継続スルコトヲ得
貨幣、有価証券其ノ他ノ高価品ノ保管方法ハ裁判所之ヲ定ム
第百九十三条 破産管財人ハ破産宣告ニ至リタル事情並破産者及破産財団ニ関スル経過及現状ニ付第一回ノ債権者集会ニ報告ヲ為スコトヲ要ス
第百九十四条 第一回ノ債権者集会ニ於テハ扶助料ノ給与、営業ノ廃止又ハ継続及高価品ノ保管方法ニ付決議ヲ為スコトヲ要ス
第百九十五条 破産管財人ハ別除権者ニ対シ其ノ権利ノ目的タル財産ヲ示スヘキコトヲ求ムルコトヲ得
破産管財人カ前項ノ財産ヲ評価セムトスルトキハ別除権者ハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
第百九十六条 一般ノ債権調査ノ終了前ニ於テハ破産管財人ハ破産財団ノ換価ヲ為スコトヲ得ス一般ノ債権調査ノ終了前強制和議ノ提供アリタル場合ニ於テ其ノ落著ニ至ル迄亦同シ
破産財団ニ属スル財産ニシテ遅滞ナク之ヲ換価スルニ非サレハ破産財団ニ損害ヲ生スル虞アルモノハ前項ノ規定ニ拘ラス監査委員ノ同意、監査委員ナキトキハ裁判所ノ許可ヲ得テ破産管財人其ノ換価ヲ為スコトヲ得
第百九十七条 破産管財人左ニ掲クル行為ヲ為スニハ監査委員ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス但シ第七号乃至第十四号ニ掲クル行為ニ付千円以上ノ価額ヲ有スルモノニ関セサルトキハ此ノ限ニ在ラス
一 不動産ニ関スル物権、登記スヘキ日本船舶及外国船舶ノ任意売却
二 鉱業権、漁業権、特許権、意匠権、実用新案権及著作権ノ任意売却
三 営業ノ譲渡
四 商品ノ一括売却
五 借財
六 第九条第二項ノ規定ニ依ル相続抛棄ノ承認、第十条ノ規定ニ依ル包括遺贈抛棄ノ承認及第十一条第一項ノ規定ニ依ル特定遺贈ノ抛棄
七 動産ノ任意売却
八 債権及有価証券ノ譲渡
九 第五十九条第一項ノ規定ニ依ル履行ノ請求
十 訴ノ提起
十一 和解及仲裁契約
十二 権利ノ抛棄
十三 財団債権、取戻権及別除権ノ承認
十四 別除権ノ目的ノ受戻
第百九十八条 第一回ノ債権者集会前ニ於テ前条ノ規定ニ依リ監査委員ノ同意ヲ要スル行為ヲ為スノ必要アルトキハ破産管財人ハ裁判所ノ許可ヲ得ルコトヲ要ス
監査委員ヲ置カサル場合ニ於テハ破産管財人ハ債権者集会ノ決議ヲ経ルコトヲ要ス但シ急迫ノ必要アルトキハ裁判所ノ許可ヲ得ルヲ以テ足ル
第百九十九条 前二条ノ場合ニ於テ破産管財人ハ遅滞ノ虞アル場合ヲ除クノ外破産者ノ意見ヲ聴クコトヲ要ス
第二百条 破産管財人カ第百九十七条ニ掲クル行為ヲ為スニ付監査委員ノ同意ヲ得タルトキト雖裁判所ハ破産者ノ申立ニ因リ其ノ行為ノ執行ノ中止ヲ命シ且其ノ行為ニ関スル決議ヲ為サシムル為債権者集会ヲ招集スルコトヲ得
第二百一条 破産管財人カ第百九十六条乃至第百九十八条ノ規定ニ違反シ又ハ前条ノ規定ニ依ル執行中止ノ命令ニ違反シタルトキト雖之ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス
第二百二条 第百九十七条第一号及第二号ニ掲クルモノノ換価ハ民事訴訟法ニ依リテ之ヲ為ス
第二百三条 破産管財人ハ民事訴訟法ニ依リ別除権ノ目的タル財産ノ換価ヲ為スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ別除権者ハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
前項ノ場合ニ於テ別除権者ノ受クヘキ金額カ未タ確定セサルトキハ破産管財人ハ代金ヲ別ニ寄託スルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ別除権ハ代金ノ上ニ存ス
第二百四条 別除権者カ法律ニ定メタル方法ニ依ラスシテ別除権ノ目的ヲ処分スル権利ヲ有スルトキハ裁判所ハ破産管財人ノ申立ニ因リ別除権者カ其ノ処分ヲ為スヘキ期間ヲ定ム
別除権者カ前項ノ期間内ニ処分ヲ為ササルトキハ前項ノ権利ヲ失フ
第二百五条 破産管財人ハ債権者集会ノ定ムル所ニ依リ債権者集会又ハ監査委員ニ破産財団ノ状況ヲ報告スルコトヲ要ス
第二百六条 破産管財人カ其ノ寄託シタル貨幣、有価証券其ノ他ノ高価品ノ返還ヲ求ムルニハ監査委員ノ同意、監査委員ナキトキハ裁判所ノ許可ヲ得ルコトヲ要ス但シ債権者集会ニ於テ別段ノ決議ヲ為シタルトキハ其ノ決議ニ依ル
破産管財人カ前項ノ規定ニ違反シタル場合ニ於テ受寄者カ善意ニシテ且過失ナキトキハ弁済ハ其ノ効力ヲ有ス
前二項ノ規定ハ破産管財人カ受寄者ヲシテ支払其ノ他ノ給付ヲ為サシムル為証券ヲ発行スル場合ニ之ヲ準用ス
第二百七条 商法第九十二条ノ規定ハ法人カ破産ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ之ヲ準用ス相互保険会社カ破産ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ於テ基金ノ支払ニ付亦同シ
第二百八条 無限責任又ハ保証責任ノ相互保険会社カ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキハ破産管財人ハ損失分担ノ割合ニ応シ会社ノ債務ヲ弁済スルニ必要ナル金額ヲ社員ニ賦課スルコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テ社員中ニ無資力者アルトキハ其ノ負担スヘキ金額ハ他ノ社員之ヲ負担ス
第二百九条 前条ノ場合ニ於テハ破産管財人ハ第百八十九条第二項ノ規定ニ依リ財産目録及貸借対照表ノ謄本ヲ裁判所ニ提出シタル後直ニ計算表ヲ作リ之ニ各社員ノ氏名、住所及負担額ヲ記載スルコトヲ要ス
第二百十条 破産管財人ハ前条ノ計算表ニ主務官庁カ認証シタル定款ノ謄本ヲ添附シ之ヲ裁判所ニ提出シテ其ノ認可ヲ申請スルコトヲ要ス
破産ノ宣告ヲ受ケタル相互保険会社ニ関スル登記簿カ破産裁判所タル区裁判所ノ出張所ニ在ルトキハ登記所カ交付シタル社員名簿ノ謄本ヲ申請書ニ添附スルコトヲ要ス
第二百十一条 前条ノ申請アリタルトキハ裁判所ハ計算表ニ記載シタル社員ヲ呼出ス為期日ヲ定メ之ヲ公告スルコトヲ要ス
裁判所ハ利害関係人ノ閲覧ニ供スル為期日ヨリ三日前ニ計算表ヲ備ヘ置クコトヲ要ス
第二百十二条 裁判所ハ前条ノ期日ニ於テ相互保険会社ノ取締役、監査役、破産管財人及監査委員ノ意見ヲ聴クコトヲ要ス
社員ハ期日ニ於テ異議ヲ述フルコトヲ得
第二百十三条 裁判所ハ社員ノ異議ヲ理由アリトスルトキ其ノ他必要ト認ムルトキハ計算表ヲ更正シ又ハ破産管財人ヲシテ之ヲ更正セシメタル後計算表認可ノ決定ヲ為スコトヲ要ス
計算表認可ノ決定ハ期日又ハ直ニ言渡シタル一週間内ノ期日ニ於テ之ヲ言渡スコトヲ要ス
計算表認可ノ決定書ハ利害関係人ノ閲覧ニ供スル為計算表ト共ニ之ヲ備ヘ置クコトヲ要ス
第二百十四条 第二百十一条第一項及前条第一項第二項ノ規定ニ依ル決定ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第二百十五条 計算表認可ノ決定アリタルトキハ破産管財人ハ遅滞ナク各社員ヲシテ其ノ負担額ノ払込ヲ為サシムルコトヲ要ス
社員ニ対スル強制執行ハ執行文ヲ附シタル決定ノ正本及計算表ノ抄本ニ依リテ之ヲ為ス
民事訴訟法第五百二十一条、第五百四十五条及第五百四十六条ノ規定ニ依ル訴ハ第二百四十五条ニ定ムル裁判所ノ管轄ニ専属ス
第二百十六条 各社員ハ計算表認可ノ決定言渡ノ日ヨリ一月ノ不変期間内ニ破産管財人ニ対シ計算表ニ付異議ノ訴ヲ提起スルコトヲ得
異議ノ訴ハ期日ニ於テ其ノ理由ヲ主張シタルトキ又ハ過失ナクシテ之ヲ主張スルコト能ハサリシコトヲ疏明スルニ非サレハ之ヲ提起スルコトヲ得ス
第二百十七条 前条ノ異議ノ訴ハ破産裁判所ノ管轄ニ専属ス但シ訴訟ノ目的ノ価額カ区裁判所ノ権限ヲ超ユル場合ニ於テ本案ノ弁論前ニ当事者ノ申立アリタルトキハ決定ヲ以テ破産裁判所ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所ニ一切ノ事件ヲ移送スルコトヲ要ス
前項ノ決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得其ノ抗告期間ハ決定言渡ノ日ヨリ之ヲ起算ス
第一項ノ決定カ確定シタルトキハ事件ハ地方裁判所ニ繋属ス此ノ場合ニ於テハ区裁判所ノ訴訟手続ニ関スル費用ハ之ヲ地方裁判所ノ訴訟手続ニ関スル費用ノ一部ト看做ス
第二百十八条 第二百十六条第一項ノ期間内ハ異議ノ訴ニ付口頭弁論ヲ開クコトヲ得ス
数個ノ訴ノ弁論及裁判ハ併合シテ之ヲ為スコトヲ要ス
第二百十九条 強制執行ノ停止及続行並執行処分ノ取消ニ付テハ民事訴訟法第五百四十七条及第五百四十八条ノ規定ヲ準用ス
第二百二十条 異議ノ訴ニ付為シタル判決ハ社員ノ全員ニ対シテ其ノ効力ヲ有ス
第二百二十一条 社員ノ無資力、異議ノ訴其ノ他ノ理由ニ因リ社員ニ対スル賦課ヲ必要トスルトキハ破産管財人ハ更ニ計算表ヲ作ルコトヲ要ス
第二百二十二条 最後ノ配当ノ許可アリタルトキハ破産管財人ハ最後ノ計算表ヲ作ルコトヲ要ス
第二百二十三条 最後ノ計算表ニ依リ全部ノ弁済ヲ為スニ足ルヘキ金額ヲ得ルコト能ハサルトキハ破産管財人ハ更ニ計算表ヲ作ルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ脱退シタル社員ニ対シテモ亦其ノ責任ノ限度内ニ於テ賦課ヲ為スコトヲ得
第二百二十四条 前十六条ノ規定ハ無限責任又ハ保証責任ノ産業組合其ノ他ノ法人カ破産ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ之ヲ準用ス
第二百二十五条 匿名組合契約カ営業者ノ破産ニ因リテ終了シタルトキハ破産管財人ハ匿名組合員カ負担スヘキ損失ノ額ヲ限度トシテ出資ヲ為サシムルコトヲ得
第二百二十六条 相続人カ破産ノ宣告ヲ受ケタル後限定承認ヲ為シタルトキ又ハ財産分離アリタルトキハ相続財産ノ処分ハ破産管財人之ヲ為スコトヲ要ス限定承認又ハ財産分離アリタル後相続人カ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキ亦同シ
破産管財人カ前項ノ処分ヲ終ヘタルトキハ残余財産ニ付破産財団ノ財産目録及貸借対照表ヲ補充スルコトヲ要ス
前二項ノ規定ハ包括受遺者カ破産ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ之ヲ準用ス
第二百二十七条 前条ノ規定ハ第八条又ハ第九条第一項ノ規定ニ依リ限定承認ノ効力ヲ有スル場合ニ之ヲ準用ス
第七章 破産債権ノ届出及調査
第二百二十八条 破産債権者ハ裁判所ノ定メタル期間内ニ其ノ債権ノ額及原因、一般ノ先取特権其ノ他一般ノ優先権アルトキハ其ノ権利ヲ裁判所ニ届出テ且証拠書類又ハ其ノ謄本若ハ抄本ヲ提出スルコトヲ要ス
別除権者ハ前項ニ規定スル事項ノ外別除権ノ目的及其ノ行使ニ依リテ弁済ヲ受クルコト能ハサルヘキ債権額ヲ届出ツルコトヲ要ス
破産債権ニ付破産宣告ノ当時訴訟カ繋属スルトキハ第一項ニ規定スル事項ノ外裁判所、件名及番号ヲ届出ツルコトヲ要ス
第二百二十九条 裁判所書記ハ債権表ヲ作リ之ニ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス
一 債権者ノ氏名及住所
二 債権ノ額及原因
三 優先権アルトキハ其ノ権利
四 別除権者カ前条第二項ノ規定ニ依リテ届出テタル債権額
裁判所書記ハ債権表ノ謄本ヲ破産管財人ニ交付スルコトヲ要ス
第二百三十条 債権ノ届出ニ関スル書類及債権表ハ利害関係人ノ閲覧ニ供スル為之ヲ裁判所ニ備ヘ置クコトヲ要ス
第二百三十一条 債権調査ノ期日ニ於テハ届出アリタル各債権ニ付第二百二十九条第一項ニ掲クル事項ヲ調査ス
第二百三十二条 破産者ハ債権調査ノ期日ニ出頭シテ意見ヲ述フルコトヲ要ス但シ正当ノ事由アルトキハ代理人ヲ出頭セシムルコトヲ得
届出ヲ為シタル破産債権者又ハ其ノ代理人ハ債権調査ノ期日ニ出頭シテ意見ヲ述フルコトヲ得代理人ハ代理権ヲ証スル書面ヲ提出スルコトヲ要ス
第二百三十三条 債権ノ調査ハ破産管財人出頭スルニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス
第二百三十四条 期間後ニ届出アリタル債権ニ付テハ破産管財人及破産債権者ノ異議アル場合ヲ除クノ外債権調査ノ一般期日ニ於テ其ノ調査ヲ為スコトヲ得
破産管財人又ハ破産債権者ノ異議アリタルトキハ裁判所ハ前項ノ債権ノ調査ヲ為ス為特別期日ヲ定ムルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ費用ハ期間後ニ届出ヲ為シタル破産債権者ノ負担トス
第二百三十五条 前条ノ規定ハ破産債権者カ届出テタル事項ニ付届出期間後他ノ破産債権者ノ利益ヲ害スヘキ変更ヲ加ヘタル場合ニ之ヲ準用ス
第二百三十六条 第二百三十四条第二項ノ規定ハ破産債権者カ債権調査ノ一般期日後ニ債権ノ届出ヲ為シタル場合ニ之ヲ準用ス
第二百三十七条 債権調査ノ特別期日ヲ定ムル決定ハ之ヲ公告シ且破産管財人、破産者及届出ヲ為シタル破産債権者ニ之ヲ送達スルコトヲ要ス
第二百三十八条 前条ノ規定ハ債権調査ノ期日ノ変更並債権調査ノ延期及続行ニ之ヲ準用ス但シ言渡アリタルトキハ公告及送達ヲ為スコトヲ要セス
第二百三十九条 前二条ノ規定ニ依ル決定ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第二百四十条 債権調査ノ期日ニ於テ破産管財人及破産債権者ノ異議ナカリシトキハ債権ノ額及優先権ハ之ニ因リテ確定ス
破産者カ異議ヲ述ヘタル債権ニ付破産宣告ノ当時訴訟カ繋属スルトキハ債権者ハ破産者ヲ相手方トシテ之ヲ受継クコトヲ得
第二百四十一条 裁判所ハ債権調査ノ結果ヲ債権表ニ記載スルコトヲ要ス破産者ノ述ヘタル異議亦同シ
裁判所書記ハ確定シタル債権ノ証書ニ確定ノ旨ヲ記載シ裁判所ノ印ヲ押捺スルコトヲ要ス
第二百四十二条 確定債権ニ付テハ債権表ノ記載ハ破産債権者ノ全員ニ対シ確定判決ト同一ノ効力ヲ有ス
第二百四十三条 破産債権者カ債権調査ノ期日ニ出頭セサル場合ニ於テ其ノ債権ニ付異議アリタルトキハ裁判所ハ之ヲ其ノ債権者ニ通知スルコトヲ要ス
第百十八条第一項ノ規定ハ前項ノ通知ニ之ヲ準用ス
第二百四十四条 異議アル債権ニ付テハ其ノ債権者ハ異議者ニ対シ訴ヲ以テ其ノ債権ノ確定ヲ求ムルコトヲ得
異議者数人アルトキハ之ヲ共同被告トス破産者カ異議者ノ一人ナルトキ亦同シ
裁判所ハ債権者ニ其ノ債権ニ関スル債権表ノ抄本ヲ交付スルコトヲ要ス
第二百四十五条 債権確定ノ訴ハ破産裁判所ノ管轄ニ専属ス但シ訴カ地方裁判所ノ権限ニ属スルトキハ破産裁判所ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所ノ管轄ニ専属ス
第二百四十六条 異議アル債権ニ付破産宣告ノ当時訴訟カ繋属スル場合ニ於テ債権者カ其ノ債権ノ確定ヲ求メムトスルトキハ異議者ヲ相手方トシテ訴訟ヲ受継クコトヲ要ス
第二百四十四条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二百四十七条 破産債権者ハ第二百四十一条第一項ノ規定ニ依リ債権表ニ記載シタル事項ニ付テノミ債権確定ノ訴ヲ提起シ又ハ第二百四十条第二項若ハ前条ノ規定ニ依リ訴訟ヲ受継クコトヲ得
第二百四十八条 執行力アル債務名義又ハ終局判決アル債権ニ付テハ異議者ハ破産者カ為スコトヲ得ヘキ訴訟手続ニ依リテノミ其ノ異議ヲ主張スルコトヲ得
第二百四十四条第二項、第三項、第二百四十六条及前条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二百四十九条 裁判所ハ破産管財人又ハ破産債権者ノ申立ニ因リ債権ノ確定ニ関スル訴訟ノ結果ヲ債権表ニ記載スルコトヲ要ス
第二百五十条 債権ノ確定ニ関スル訴訟ニ付為シタル判決ハ破産債権者ノ全員ニ対シテ其ノ効力ヲ有ス
第二百五十一条 破産財団カ債権ノ確定ニ関スル訴訟ニ因リテ利益ヲ受ケタルトキハ異議ヲ主張シタル破産債権者ハ其ノ利益ノ限度ニ於テ財団債権者トシテ訴訟費用ノ償還ヲ請求スルコトヲ得
第二百五十二条 債権ノ確定ニ関スル訴訟ノ目的ノ価額ハ配当ノ予定額ヲ標準トシ受訴裁判所之ヲ定ム
第二百五十三条 公訴附帯ノ私訴ニ付テハ第二百四十六条又ハ第二百四十八条ノ規定ニ依リ訴訟ヲ受継キ、上訴ヲ為シ又ハ再審ノ訴ヲ提起スルコトヲ得ス
公訴附帯ノ私訴ノ目的タル債権ニ付破産者カ異議者ノ一人ナル場合ニ於テハ之ヲ共同被告トスルコトヲ得ス
第二百五十四条 第三十八条第四号ニ掲クル請求権ニ付テハ国又ハ公共団体ハ遅滞ナク其ノ額及原因ヲ裁判所ニ届出ツルコトヲ要ス
第二百四十一条第一項ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ届出アリタル請求権ニ付之ヲ準用ス
第二百五十五条 前条第一項ノ規定ニ依リ届出アリタル請求権ノ原因カ訴願又ハ行政訴訟ヲ為スコトヲ得ヘキ処分ナルトキハ裁判所ハ遅滞ナク其ノ請求権ノ額及原因ヲ破産管財人ニ通知スルコトヲ要ス
第二百四十八条乃至第二百五十条ノ規定ハ破産管財人カ異議ヲ主張スル場合ニ之ヲ準用ス
第八章 配当
第二百五十六条 一般ノ債権調査終了後ニ於テハ破産管財人配当スルニ適当ナル金銭アリト認ムル毎ニ遅滞ナク配当ヲ為スコトヲ要ス
第二百五十七条 破産管財人配当ヲ為スニハ監査委員ノ同意、監査委員ナキトキハ裁判所ノ許可ヲ得ルコトヲ要ス
第二百五十八条 破産管財人ハ配当表ヲ作リ之ニ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス
一 配当ニ加フヘキ債権者ノ氏名及住所
二 配当ニ加フヘキ債権ノ額
三 配当スルコトヲ得ヘキ金額
配当ニ加フヘキ債権ハ優先権ノ有無ニ依リテ之ヲ区別シ優先権アルモノニ付テハ其ノ順位ニ従ヒテ之ヲ記載スルコトヲ要ス
第二百五十九条 破産管財人ハ利害関係人ノ閲覧ニ供スル為配当表ヲ裁判所ニ提出スルコトヲ要ス
第二百六十条 破産管財人ハ配当ニ加フヘキ債権ノ総額及配当スルコトヲ得ヘキ金額ヲ公告スルコトヲ要ス
第二百六十一条 異議アル債権ニ付テハ債権者カ配当ノ公告アリタル日ヨリ起算シテ二週間内ニ破産管財人ニ対シ其ノ債権ノ確定ニ関スル訴ノ提起又ハ訴訟ノ受継ヲ為シタルコトヲ証明セサルトキハ其ノ配当ヨリ除斥セラル
第二百六十二条 別除権者カ前条ニ定ムル除斥期間内ニ破産管財人ニ対シ其ノ権利ノ目的ノ処分ニ著手シタルコトヲ証明シ且其ノ処分ニ依リテ弁済ヲ受クルコト能ハサルヘキ債権額ヲ疏明セサルトキハ配当ヨリ除斥セラル
第二百六十三条 左ノ場合ニ於テハ破産管財人ハ直ニ配当表ヲ更正スルコトヲ要ス
一 債権表ヲ更正スヘキ事由カ除斥期間内ニ生シタルトキ
二 前二条ニ定ムル事項ノ証明及疏明アリタルトキ
三 別除権者カ除斥期間内ニ破産管財人ニ対シ其ノ権利抛棄ノ意思ヲ表示シ又ハ其ノ権利ノ行使ニ依リテ弁済ヲ受クルコト能ハサリシ債権額ヲ証明シタルトキ
第二百六十四条 債権者ハ配当表ニ対シ除斥期間経過ノ後一週間内ニ限リ裁判所ニ異議ヲ申立ツルコトヲ得
裁判所カ配当表ノ更正ヲ命シタルトキハ其ノ決定書ハ利害関係人ノ閲覧ニ供スル為之ヲ備ヘ置クコトヲ要ス此ノ場合ニ於テ抗告期間ハ決定書ヲ備ヘタル日ヨリ之ヲ起算ス
第二百六十五条 破産管財人ハ前条第一項ニ定ムル期間経過シタル後、異議ノ申立アリタルトキハ其ノ決定アリタル後遅滞ナク配当率ヲ定メ配当ニ加フヘキ各債権者ニ対シテ其ノ通知ヲ発スルコトヲ要ス
配当率ヲ定ムルニハ監査委員ノ同意、監査委員ナキトキハ裁判所ノ許可ヲ得ルコトヲ要ス
第二百六十六条 解除条件附債権ヲ有スル者ハ相当ノ担保ヲ供スルニ非サレハ配当ヲ受クルコトヲ得ス
第二百六十七条 強制和議ノ提供アリタルトキハ裁判所ハ破産管財人カ未タ配当率ノ通知ヲ発セサル場合ニ限リ提供者ノ申立ニ因リ其ノ配当ノ中止ヲ命スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ旨ヲ公告スルコトヲ要ス
第二百六十八条 前条ノ規定ニ依リ配当ノ中止ヲ命シタル場合ニ於テ強制和議ノ提供ノ棄却若ハ其ノ不認可ノ決定カ確定シタルトキ又ハ債権者集会ニ於テ強制和議ヲ否決シタルトキハ裁判所ハ配当手続ヲ続行スヘキコトヲ命ス此ノ場合ニ於テハ其ノ旨ヲ公告スルコトヲ要ス
第二百六十九条 債権者ハ破産管財人ニ就キ配当ヲ受クルコトヲ要ス
破産管財人カ配当ヲ為シタルトキハ債権表及債権ノ証書ニ配当シタル金額ヲ記入シ之ニ記名捺印スルコトヲ要ス
第二百七十条 第二百六十一条又ハ第二百六十二条ニ定ムル事項ヲ証明又ハ疏明セサルニ因リテ配当ヨリ除斥セラレタル債権者カ後ノ配当ニ関スル除斥期間内ニ其ノ証明又ハ疏明ヲ為シタルトキハ前ノ配当ニ於テ受クヘカリシ額ニ付他ノ同順位ノ債権者ニ先チテ配当ヲ受クルコトヲ得
第二百七十一条 左ニ掲クル債権ニ対スル配当額ハ破産管財人之ヲ寄託スルコトヲ要ス
一 第二百四十四条、第二百四十六条又ハ第二百四十八条ノ規定ニ依リ異議アル債権ニ付訴ノ提起又ハ訴訟ノ受継アリタルモノ
二 配当率ノ通知ヲ発スル前ニ訴願又ハ行政訴訟ノ落著セサル債権
三 第二百六十二条ノ規定ニ依リ別除権者カ疏明シタル債権額
四 停止条件附債権及将来ノ請求権
五 第二百六十六条ノ規定ニ依リ担保ヲ供セサル場合ニ於ケル解除条件附債権
第二百七十二条 破産管財人最後ノ配当ヲ為スニハ監査委員ノ同意アリタルトキト雖裁判所ノ許可ヲ得ルコトヲ要ス
第二百七十三条 最後ノ配当ニ関スル除斥期間ハ配当ノ公告アリタル日ヨリ起算シテ二週間以上一月内ニ於テ裁判所之ヲ定ム此ノ決定ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第二百七十四条 最後ノ配当ニ在リテハ破産管財人ハ配当表ニ対スル異議落著ノ後遅滞ナク各債権者ニ対スル配当額ヲ定メ其ノ通知ヲ発スルコトヲ要ス
第二百七十五条 停止条件附債権又ハ将来ノ請求権カ最後ノ配当ニ関スル除斥期間内ニ之ヲ行使スルコトヲ得ルニ至ラサルトキハ其ノ債権者ハ配当ヨリ除斥セラル
第二百七十六条 解除条件附債権ノ条件カ最後ノ配当ニ関スル除斥期間内ニ成就セサルトキハ第二百六十六条ノ規定ニ依リテ供シタル担保ハ其ノ効力ヲ失ヒ第二百七十一条第五号ノ規定ニ依リテ寄託シタル金額ハ之ヲ其ノ債権者ニ支払フコトヲ要ス第百一条ノ規定ニ依リテ供シタル担保又ハ寄託シタル金額亦同シ
第二百七十七条 別除権者カ最後ノ配当ニ関スル除斥期間内ニ破産管財人ニ対シ其ノ権利抛棄ノ意思ヲ表示セス又ハ其ノ権利ノ行使ニ依リテ弁済ヲ受クルコト能ハサリシ債権額ヲ証明セサルトキハ配当ヨリ除斥セラル
第二百七十八条 第二百七十五条又ハ前条ノ規定ニ依リテ除斥セラレタル債権者ノ為ニ寄託シタル金額ハ之ヲ他ノ債権者ニ配当スルコトヲ要ス第百条ノ規定ニ依リテ寄託シタル金額亦同シ
第二百七十九条 配当額ノ通知ヲ発スル前新ニ配当ニ充ツヘキ財産アルニ至リタルトキハ破産管財人ハ遅滞ナク配当表ヲ更正スルコトヲ要ス
第二百八十条 左ニ掲クル配当額ハ債権者ノ為破産管財人之ヲ供託スルコトヲ要ス
一 第二百七十一条第一号又ハ第二号ノ規定ニ依リ寄託シタル配当額
二 配当額ノ通知ヲ発スル前ニ異議ノ訴、訴願又ハ行政訴訟ノ落著セサル債権ニ対スル配当額
三 債権者カ受取ラサル配当額
第二百八十一条 計算報告ノ為ニ招集シタル債権者集会ニ於テハ破産管財人カ価値ナキ為換価セサリシ財産ノ処分ニ付決議ヲ為スコトヲ要ス
第二百八十二条 債権者集会終結シタルトキハ裁判所ハ破産終結ノ決定ヲ為シ且其ノ主文及理由ノ要領ヲ公告スルコトヲ要ス
前項ノ決定ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第二百八十三条 配当額ノ通知ヲ発シタル後新ニ配当ニ充ツヘキ相当ノ財産アルニ至リタルトキハ破産管財人ハ裁判所ノ許可ヲ得テ追加配当ヲ為スコトヲ要ス破産終結ノ決定アリタル後ト雖亦同シ
破産管財人追加配当ノ許可ヲ得タルトキハ遅滞ナク配当スルコトヲ得ヘキ金額ヲ公告シ且各債権者ニ対スル配当額ヲ定メ其ノ通知ヲ発スルコトヲ要ス
第二百八十四条 追加配当ハ最後ノ配当ニ付作リタル配当表ニ依リテ之ヲ為ス
第二百八十五条 破産管財人追加配当ヲ為シタルトキハ遅滞ナク計算報告書ヲ作リ之ヲ裁判所ニ提出シテ其ノ認可ヲ申請スルコトヲ要ス
第二百八十六条 配当率又ハ配当額ノ通知ヲ発スル前破産管財人ニ知レサル財団債権者ハ各配当ニ於テ配当スヘキ金額ヲ以テ弁済ヲ受クルコトヲ得ス
第二百八十七条 確定債権ニ付テハ破産者カ債権調査ノ期日ニ於テ其ノ債権ニ対シテ異議ヲ述ヘサリシ場合ニ限リ債権表ノ記載ハ破産者ニ対シ確定判決ト同一ノ効力ヲ有ス
債権者ハ破産終結ノ後債権表ノ記載ニ基キテ強制執行ヲ為スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ第二百十五条第三項及民事訴訟法第五百十六条乃至第五百五十八条ノ規定ヲ準用ス
第二百八十八条 破産者カ天災其ノ他避クヘカラサル事変ノ為債権調査ノ期日ニ出頭スルコト能ハサリシトキハ破産裁判所ニ原状回復ノ申立ヲ為スコトヲ得
裁判所ハ職権ヲ以テ破産者ノ異議アル債権ノ債権者ニ原状回復ノ申立書ヲ送達スルコトヲ要ス
裁判所原状回復ヲ許シタルトキハ破産者カ債権調査ノ期日ニ於テ異議ヲ述ヘタルト同一ノ効力ヲ生ス此ノ場合ニ於テハ裁判所ハ債権表ニ異議ノ記載ヲ為スコトヲ要ス
民事訴訟法第百七十五条及第百七十六条第二項ノ規定ハ第一項ニ定ムル原状回復ニ付之ヲ準用ス
第二百八十九条 相続財産ニ対シテ破産ノ宣告アリタル場合ニ於テ最後ノ配当ヨリ除斥セラレタル相続債権者及受遺者ハ残余財産ニ付其ノ権利ヲ行フコトヲ得
第九章 強制和議
第二百九十条 破産者ハ何時ニテモ強制和議ノ提供ヲ為スコトヲ得
第二百九十一条 強制和議ノ提供ハ法人ニ在リテハ理事又ハ之ニ準スヘキ者ノ一致アルコトヲ要ス
第二百九十二条 強制和議ノ提供ハ相続財産ニ在リテハ相続人之ヲ為シ相続人数人アルトキハ其ノ一致アルコトヲ要ス
第二百九十三条 一般ノ先取特権其ノ他一般ノ優先権ヲ有スル者ハ強制和議ニ付テハ之ヲ破産債権者ト看做サス
第二百九十四条 強制和議ノ提供ヲ為スニハ提供者ハ弁済ノ方法、担保ヲ供セムトスルトキハ其ノ担保其ノ他強制和議ノ条件ヲ裁判所ニ申出ツルコトヲ要ス
第二百九十五条 強制和議ノ提供者ノ所在不明ナルトキ又ハ詐欺破産ノ公訴繋属スルトキハ強制和議ヲ為スコトヲ得ス詐欺破産ニ付有罪ノ判決確定シタルトキ亦同シ
第二百九十六条 左ノ場合ニ於テハ裁判所ハ破産管財人及監査委員ノ意見ヲ聴キ強制和議ノ提供ヲ棄却スルコトヲ得
一 債権者集会ニ於テ強制和議ヲ否決シタルコトアルトキ
二 強制和議ノ為ニスル債権者集会ノ期日公告後ニ其ノ提供ヲ撤回シタルコトアルトキ
三 強制和議不認可ノ決定ヲ為シタルコトアルトキ
四 強制和議取消ノ決定ヲ為シタルコトアルトキ
第二百九十七条 裁判所強制和議ノ提供ヲ棄却セサル場合ニ於テ監査委員アルトキハ之ヲシテ意見書ヲ提出セシムルコトヲ要ス
第二百九十八条 強制和議ノ提供ニ関スル書類及監査委員ノ意見書ハ利害関係人ノ閲覧ニ供スル為之ヲ裁判所ニ備ヘ置クコトヲ要ス
第二百九十九条 強制和議ノ為ニスル債権者集会ノ期日ハ其ノ決定公告ノ日ヨリ一月内ニ於テ之ヲ定ムルコトヲ要ス
期日ニハ届出ヲ為シタル破産債権者、強制和議ノ提供者、強制和議ノ為ニ保証人ト為リ其ノ他破産者ト共ニ債務ヲ負担シ又ハ破産債権者ノ為ニ担保ヲ供スル者、破産管財人及監査委員ヲ呼出スコトヲ要ス
前項ニ規定スル者ニハ強制和議ノ条件及監査委員ノ意見ノ要領ヲ記載シタル書面ヲ送達スルコトヲ要ス
第三百条 裁判所ハ強制和議ノ提供者及監査委員ノ申立ニ因リ強制和議ノ為ニスル債権者集会ノ期日ヲ債権調査ノ一般期日ト併合スルコトヲ得
第三百一条 強制和議ノ提供者ハ期日ニ出頭シテ強制和議ノ申立ヲ為スコトヲ要ス但シ正当ノ事由アルトキハ代理人ヲ出頭セシムルコトヲ得
代理人ハ代理権ヲ証スル書面ヲ提出スルコトヲ要ス
強制和議ノ提供者又ハ其ノ代理人期日ニ出頭シテ強制和議ノ申立ヲ為ササルトキハ其ノ提供ヲ撤回シタルモノト看做ス
第三百二条 強制和議ノ提供者ハ破産債権者ヲ利スル場合ニ限リ債権者集会ニ於テ其ノ条件ヲ変更スルコトヲ得
第三百三条 強制和議ハ一般ノ債権調査ノ終了前又ハ最後ノ配当ノ許可アリタル後ハ之ヲ決議スルコトヲ得ス
第三百四条 強制和議ノ条件ハ各破産債権者ニ付平等ナルコトヲ要ス但シ不利益ヲ受クル者ノ同意アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第三百五条 強制和議ノ提供者又ハ第三者カ強制和議ノ条件ニ依ラスシテ或破産債権者ニ特別ノ利益ヲ与フル行為ハ之ヲ無効トス
第三百六条 強制和議ヲ可決スルニハ議決権ヲ行フコトヲ得ヘキ出席破産債権者ノ過半数ニシテ其ノ債権額カ届出ヲ為シタル破産債権者ノ総債権ノ四分ノ三以上ニ当ル者ノ同意アルコトヲ要ス
前項ノ債権額及総債権ノ計算ニ付テハ確定債権ニ在リテハ其ノ額ニ依リ其ノ他ノ債権ニ在リテハ裁判所カ第百八十二条第二項ノ規定ニ依リ定メタル所ニ依ル
第三百七条 前条ニ規定スル条件ノ一カ成立シタルトキ又ハ議決権ヲ行フコトヲ得ヘキ出席破産債権者ノ過半数ニシテ其ノ債権額カ其ノ者ノ総債権ノ半額ニ超ユル者カ期日ノ続行ニ同意シタルトキハ裁判所ハ強制和議ノ提供者ノ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ続行期日ヲ定メ之ヲ言渡スコトヲ要ス
第三百八条 強制和議ノ可決アリタルトキハ裁判所ハ其ノ期日又ハ直ニ言渡シタル期日ニ於テ強制和議ノ認否ニ付決定ヲ為スコトヲ要ス
第二百九十九条第二項ニ規定スル者ハ強制和議ノ認否ニ付意見ヲ述フルコトヲ得
第三百九条 第二百三十八条但書及第二百三十九条ノ規定ハ前二条ノ規定ニ依リ期日ヲ定ムル決定ニ之ヲ準用ス
第三百十条 裁判所ハ左ノ場合ニ限リ破産債権者ノ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ強制和議不認可ノ決定ヲ為スコトヲ得
一 強制和議ノ手続又ハ決議カ法律ノ規定ニ反スル場合ニ於テ其ノ欠欠カ追完スヘカラサルモノナルトキ
二 第二百九十五条ニ規定スル事由カ強制和議ノ決議後ニ生シタルトキ
三 強制和議ノ決議カ不正ノ方法ニ因リテ成立スルニ至リタルトキ
四 強制和議ノ決議カ破産債権者ノ一般ノ利益ニ反スルトキ
議決権ヲ有セサリシ破産債権者カ前項ノ申立ヲ為スニハ其ノ破産債権者タルコトヲ疏明スルコトヲ要ス
申立人ハ申立ノ原因タル事実ヲ疏明スルコトヲ要ス
第三百十一条 法人カ破産ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ於テ強制和議ノ可決アリタルトキハ社団法人ニ在リテハ定款ノ変更ニ関スル規定ニ従ヒ財団法人ニ在リテハ主務官庁ノ認可ヲ得テ法人ヲ継続スルコトヲ得
第三百十二条 法人ヲ継続スルカ否ノ定リタルトキ又ハ遅滞ナク其ノ手続ヲ為ササルトキハ裁判所ハ其ノ法人ノ理事又ハ之ニ準スヘキ者ノ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ強制和議ノ認否ニ付決定ヲ為ス為期日ヲ定メ之ヲ公告スルコトヲ要ス
前項ノ期日ノ決定ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
法人ヲ継続セサルトキ又ハ遅滞ナク其ノ手続ヲ為ササルトキハ裁判所ハ強制和議不認可ノ決定ヲ為スコトヲ要ス
第三百十三条 相続財産ニ対シテ破産ノ宣告アリタル場合ニ於テハ相続債権者ニ限リ強制和議ニ関スル決議ニ加ハルコトヲ得
第三百十四条 相続人ニ対シテ破産ノ宣告アリタル場合ニ於テ限定承認又ハ財産分離アリタルトキハ相続人ノ債権者ニ限リ強制和議ニ関スル決議ニ加ハルコトヲ得
第三百十五条 相続財産及相続人又ハ前戸主ニ対シテ破産ノ宣告アリタル場合ニ於テハ相続人又ハ前戸主ノ強制和議ニ付テハ相続人ノ債権者又ハ前戸主ノ相続開始後ノ債権者ニ限リ之ニ関スル決議ニ加ハルコトヲ得
第三百十六条 前三条ノ場合ニ於テハ強制和議ニ関スル決議ニ加ハルコトヲ得サル破産債権者ノ債権ハ第三百六条第一項ノ総債権ニ之ヲ算入セス
第三百十七条 強制和議カ前条ノ破産債権者ノ正当ノ利益ヲ害スヘキトキハ裁判所ハ其ノ申立ニ因リ強制和議不認可ノ決定ヲ為スコトヲ要ス
第三百十条第二項及第三項ノ規定ハ前項ノ申立ニ之ヲ準用ス
第三百十八条 強制和議認否ノ決定ハ之ヲ言渡シ且公告スルコトヲ要ス但シ送達ヲ為スコトヲ要セス
第三百十九条 議決権ヲ有セサリシ破産債権者カ強制和議認否ノ決定ニ対シテ不服ヲ申立ツルニハ其ノ破産債権者タルコトヲ疏明スルコトヲ要ス
第三百二十条 強制和議ニ関スル決議ニ加ハルコトヲ得サル破産債権者ハ強制和議不認可ノ決定ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第三百二十一条 強制和議ハ認可ノ決定ノ確定ニ因リテ其ノ効力ヲ生ス
第三百二十二条 強制和議認可ノ決定カ確定シタルトキハ裁判所書記ハ強制和議ノ条件ヲ債権表ニ記載スルコトヲ要ス
第三百二十三条 強制和議認可ノ決定カ確定シタルトキハ破産管財人ハ財団債権者及一般ノ先取特権其ノ他一般ノ優先権ヲ有スル者ノ確定債権ノ弁済ヲ為スコトヲ要ス
財団債権及一般ノ優先権アル債権ニシテ異議アルモノニ付テハ破産管財人ハ債権者ノ為供託ヲ為スコトヲ要ス破産管財人ニ対シ疏明アリタル一般ノ優先権アル債権ニ付亦同シ
第三百二十四条 第二百八十二条ノ規定ハ強制和議ノ認可ノ決定カ確定シタル場合ニ之ヲ準用ス
第三百二十五条 破産財団ノ管理及処分ニ付テハ破産者ハ強制和議ニ定メタル制限ニ従フコトヲ要ス
第三百二十六条 強制和議ハ破産債権者ノ全員ノ為且其ノ全員ニ対シテ効力ヲ有ス
強制和議ハ破産債権者カ破産者ノ保証人其ノ他破産者ト共ニ債務ヲ負担スル者ニ対シテ有スル権利及破産債権者ノ為ニ供シタル担保ニ影響ヲ及ホサス
第三百二十七条 法人ノ債務ニ付責任ヲ負フ社員ハ破産債権者ニ対シ強制和議ノ定ムル限度ニ於テ其ノ責任ヲ負フ但シ強制和議ニ別段ノ定アルトキハ其ノ定ニ従フ
第三百二十八条 確定債権ヲ有スル破産債権者ハ破産者カ債権調査ノ期日ニ於テ其ノ債権ニ対シ異議ヲ述ヘサリシ場合ニ限リ破産終結ノ後破産者、強制和議ノ為ニ保証人ト為リ其ノ他破産者ト共ニ債務ヲ負担シ又ハ破産債権者ノ為ニ担保ヲ供シタル者ニ対シ債権表ノ記載ニ基キテ強制執行ヲ為スコトヲ得但シ民法第四百五十二条及第四百五十三条ノ適用ヲ妨ケス
第二百十五条第三項及民事訴訟法第五百十六条乃至第五百五十八条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三百二十九条 強制和議カ不正ノ方法ニ因リテ成立スルニ至リタルトキハ各破産債権者ハ強制和議ヲ以テ定メタル譲歩ヲ取消スコトヲ得但シ過失ニ因リ強制和議不認可ノ申立ヲ為ササリシ破産債権者ハ此ノ限ニ在ラス
譲歩ノ取消権ハ破産債権者カ取消ノ原因ヲ知リタル時ヨリ一月間之ヲ行ハサルトキハ消滅ス強制和議認可ノ決定確定ノ時ヨリ二年ヲ経過シタルトキ亦同シ
第三百三十条 破産者カ強制和議ノ履行ヲ怠リタルトキハ其ノ履行ヲ受ケサル破産債権者ハ強制和議ヲ以テ定メタル譲歩ヲ取消スコトヲ得
第三百三十一条 譲歩ノ取消ハ破産債権者カ強制和議ニ因リテ得タル権利ニ影響ヲ及ホサス
譲歩ノ取消ニ因リテ回復シタル債権額ニ付テハ破産債権者ハ強制和議ノ履行完了ノ後ニ非サレハ其ノ権利ヲ行フコトヲ得ス
第三百三十二条 破産者カ強制和議ノ履行ヲ怠リタル場合ニ於テ届出ヲ為シタル破産債権者ノ過半数ニシテ其ノ債権額カ其ノ者ノ総債権ノ四分ノ三以上ニ当ル者ノ申立アリタルトキハ裁判所ハ強制和議取消ノ決定ヲ為スコトヲ要ス
強制和議ノ定ムル所ニ従ヒ全部ノ履行ヲ受ケタル破産債権者ハ前項ノ申立ニ必要ナル員数ニハ之ヲ算入セス全部又ハ一部ノ履行ヲ受ケタル者ニ付テハ従前ノ破産債権ノ額ヨリ其ノ受ケタル額ヲ控除シタルモノヲ以テ其ノ債権額トス
第一項ノ債権額及総債権ノ計算ニ付テハ第三百六条第二項ノ規定ヲ準用ス
第三百三十三条 詐欺破産ニ付有罪ノ判決カ確定シタルトキハ裁判所ハ破産債権者ノ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ強制和議取消ノ決定ヲ為スコトヲ得
裁判所ハ有罪ノ判決確定前ト雖第百五十四条及第百五十五条ニ定ムル処分ヲ命スルコトヲ得
第三百三十四条 第三百三十一条第一項ノ規定ハ強制和議ノ取消ニ之ヲ準用ス
第三百三十五条 強制和議取消ノ決定カ確定シタルトキハ破産手続ヲ続行ス
第三百三十六条 第一編ノ規定ノ適用ニ付テハ強制和議ノ取消ハ之ヲ破産ノ宣告ト看做シ第三百三十二条ノ場合ニ在リテハ強制和議取消ノ申立、第三百三十三条ノ場合ニ在リテハ公訴ノ提起ハ其ノ前ニ支払ノ停止又ハ破産ノ申立ナキトキハ之ヲ支払ノ停止又ハ破産ノ申立ト看做ス
第三百三十七条 第百四十一条乃至第百四十六条及第百五十四条乃至第百五十六条ノ規定ハ強制和議ノ取消ニ付之ヲ準用ス
破産手続続行ノ費用ハ仮ニ国庫ヨリ之ヲ支弁ス
第三百三十八条 強制和議ノ効力ヲ受ケタル債権者ニ付テハ従前ノ破産債権ノ額ヨリ強制和議ノ定ムル所ニ従ヒテ受ケタル額ヲ控除シタルモノヲ以テ破産債権ノ額トス
第三百三十九条 従前ノ確定債権ニ付テハ破産債権者カ強制和議ノ定ムル所ニ従ヒテ受ケタル額ノミヲ調査ス
第三百四十条 強制和議ノ効力ヲ受ケタル債権者カ強制和議ノ定ムル所ニ従ヒテ受ケタルモノアルトキハ従前ノ破産債権ノ額ヲ以テ配当ニ加フヘキ債権ノ額ト看做シ破産財団ニ其ノ債権者カ受ケタルモノヲ加算シテ配当率ノ標準ヲ定ム但シ其ノ債権者ハ他ノ破産債権者カ自己ノ受ケタルモノト同一ノ割合ノ配当ヲ受クル迄ハ配当ヲ受クルコトヲ得ス
第三百四十一条 破産終結ノ後破産者カ強制和議ノ効力ヲ受ケタル債権者ニ対シテ為シタル担保ノ供与ハ強制和議ノ取消ニ因リテ其ノ効力ヲ失フ
第三百四十二条 強制和議ノ効力ヲ受ケタル債権者ハ従前ノ債権ニ付テハ破産ノ申立ヲ為スコトヲ得ス
第三百四十三条 強制和議取消ノ申立及破産ノ申立アリタル場合ニ於テ裁判所カ其ノ一ニ付強制和議取消ノ決定又ハ破産ノ宣告ヲ為シタルトキハ他ノ一ノ申立ヲ棄却スルコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依ル棄却ノ決定ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第三百四十四条 第三百三十一条第一項及第三百三十八条乃至第三百四十一条ノ規定ハ強制和議ノ履行完了前ニ破産ノ宣告アリタル場合ニ之ヲ準用ス第三百三十三条ノ規定ニ依リ強制和議取消ノ決定ヲ為スコトヲ得ル場合ニ於テ破産ノ宣告アリタルトキ亦同シ
第三百四十五条 相続財産ニ対シテ破産ノ宣告アリタル場合ニ於テハ相続人ハ強制和議ノ履行完了前其ノ固有財産ニ於ケルト同一ノ注意ヲ以テ相続財産ノ管理ヲ継続スルコトヲ要ス但シ強制和議ニ別段ノ定アルトキハ其ノ定ニ従フ
民法第六百四十五条、第六百四十六条、第六百五十条第一項第二項及第千二十一条第二項第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三百四十六条 第百三十一条ノ規定ハ相続財産ニ関スル強制和議取消ノ申立ニ之ヲ準用ス
第十章 破産廃止
第三百四十七条 破産者ハ債権届出ノ期間内ニ届出ヲ為シタル総破産債権者ノ同意ヲ得タルトキ又ハ同意ヲ為ササル破産債権者ニ対シ他ノ破産債権者ノ同意ヲ得テ破産財団ヨリ担保ヲ供シタルトキハ破産廃止ノ申立ヲ為スコトヲ得
未確定債権ニ付其ノ債権者ノ同意ヲ必要トスヘキカ否ハ裁判所之ヲ定ム破産債権者ニ供スヘキ担保カ相当ナルカ否ニ付亦同シ
前項ノ規定ニ依ル決定ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第三百四十八条 法人カ破産ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ於テ破産廃止ノ申立ヲ為スニハ法人継続ノ手続ヲ為スコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ第三百十一条ノ規定ヲ準用ス
第三百四十九条 破産廃止ノ申立ヲ為スニハ其ノ申立ニ必要ナル条件カ具備スルコトヲ証スル書面ヲ提出スルコトヲ要ス
第三百五十条 裁判所ハ破産廃止ノ申立アリタル旨ヲ公告シ且利害関係人ノ閲覧ニ供スル為其ノ申立ニ関スル書類ヲ備ヘ置クコトヲ要ス
第三百五十一条 破産債権者ハ前条ノ公告アリタル日ヨリ起算シテ二週間内ニ破産廃止ノ申立ニ付裁判所ニ異議ヲ申立ツルコトヲ得
前項ノ期間経過前ニ届出ヲ為シタル破産債権者モ亦異議ヲ申立ツルコトヲ得
第三百五十二条 裁判所ハ前条第一項ノ期間経過ノ後破産廃止ノ決定ヲ為スニ必要ナル条件カ具備スルカ否ニ付破産者、破産管財人及異議ヲ申立テタル破産債権者ノ意見ヲ聴クコトヲ要ス
第三百五十三条 破産宣告ノ後裁判所カ破産財団ヲ以テ破産手続ノ費用ヲ償フニ足ラスト認メタルトキハ破産管財人ノ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ破産廃止ノ決定ヲ為スコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ裁判所ハ債権者集会ノ意見ヲ聴クコトヲ要ス
前項ノ規定ハ無限責任又ハ保証責任ノ相互保険会社、産業組合其ノ他ノ法人ニハ之ヲ適用セス破産手続ノ費用ヲ償フニ足ルヘキ金額ノ予納アリタル場合亦同シ
第三百五十四条 裁判所カ破産廃止ノ決定ヲ為シタルトキハ其ノ主文及理由ノ要領ヲ公告スルコトヲ要ス
第三百五十五条 破産廃止ノ決定カ確定シタルトキハ破産管財人ハ財団債権ノ弁済ヲ為シ異議アルモノニ付テハ債権者ノ為供託ヲ為スコトヲ要ス
第三百五十六条 第二百九十一条及第二百九十二条ノ規定ハ破産廃止ノ申立ニ之ヲ準用ス
第三百五十七条 第二百八十七条ノ規定ハ破産廃止ノ決定カ確定シタル場合ニ之ヲ準用ス
第十一章 小破産
第三百五十八条 破産財団ニ属スル財産ノ額カ一万円ニ満タスト認ムルトキハ裁判所ハ破産ノ宣告ト同時ニ小破産ノ決定ヲ為スコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テハ裁判所ハ第百四十三条第一項ニ掲クル事項ノ外小破産決定ノ主文ヲ公告シ且同条第二項ノ書面ニ之ヲ記載スルコトヲ要ス
第三百五十九条 裁判所破産手続中ニ破産財団ニ属スル財産ノ額カ一万円ニ満タサルコトヲ発見シタルトキハ小破産ノ決定ヲ為スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ小破産ノ決定ヲ為シタル場合ニ於テハ裁判所ハ決定ノ主文ヲ公告シ且破産管財人、監査委員並知レタル債権者及債務者ニ之ヲ記載シタル書面ヲ送達スルコトヲ要ス
第三百六十条 裁判所破産手続中ニ破産財団ニ属スル財産ノ額カ一万円以上ナルコトヲ発見シタルトキハ小破産取消ノ決定ヲ為スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ前条第二項ノ規定ヲ準用ス
第三百六十一条 小破産ノ決定及小破産取消ノ決定ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第三百六十二条 第一回ノ債権者集会ノ期日及債権調査ノ期日ハ已ムコトヲ得サル事由アル場合ヲ除クノ外之ヲ併合スルコトヲ要ス
第三百六十三条 監査委員ハ之ヲ置カス
第三百六十四条 第一回ノ債権者集会、強制和議取消後ノ第一回ノ債権者集会並債権調査、計算報告及強制和議ノ為ニスル債権者集会ヲ除クノ外裁判所ノ決定ヲ以テ債権者集会ノ決議ニ代フ
前項ノ決定ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第三百六十五条 配当ハ一回トシ最後ノ配当ニ関スル規定ニ依ル但シ追加配当ヲ為スコトヲ妨ケス
第三百六十六条 小破産手続ニ関スル公告ハ第百十六条ノ規定ニ依ル掲示ヲ為スヲ以テ足ル
第三編 復権
第三百六十七条 破産者カ弁済其ノ他ノ方法ニ因リ破産債権者ニ対スル債務ノ全部ノ免責ヲ得タルトキハ破産裁判所ハ破産者ノ申立ニ因リ復権ノ決定ヲ為スコトヲ要ス
申立人ハ免責ヲ証スル書面ヲ提出スルコトヲ要ス
第三百六十八条 復権ノ決定ハ確定ノ後ニ非サレハ其ノ効力ヲ生セス
第三百六十九条 裁判所ハ復権ノ申立アリタル旨ヲ公告シ且利害関係人ノ閲覧ニ供スル為其ノ申立ニ関スル書類ヲ備ヘ置クコトヲ要ス
第三百七十条 破産債権者ハ前条ノ公告アリタル日ヨリ起算シテ三月内ニ復権ノ申立ニ付裁判所ニ異議ヲ申立ツルコトヲ得
第三百七十一条 異議ノ申立アリタルトキハ裁判所ハ破産者及異議ヲ申立テタル破産債権者ノ意見ヲ聴クコトヲ要ス
第三百七十二条 復権ノ決定カ確定シタルトキハ裁判所ハ其ノ主文ヲ公告スルコトヲ要ス
第三百七十三条 第百八条乃至第百十二条及第百十四条乃至第百十七条ノ規定ハ復権ノ手続ニ之ヲ準用ス
第四編 罰則
第三百七十四条 債務者破産宣告ノ前後ヲ問ハス自己若ハ他人ノ利益ヲ図リ又ハ債権者ヲ害スル目的ヲ以テ左ニ掲クル行為ヲ為シ其ノ宣告確定シタルトキハ詐欺破産ノ罪ト為シ十年以下ノ懲役ニ処ス
一 破産財団ニ属スル財産ヲ隠匿、毀棄又ハ債権者ノ不利益ニ処分スルコト
二 破産財団ノ負担ヲ虚偽ニ増加スルコト
三 法律ノ規定ニ依リ作ルヘキ商業帳簿ヲ作ラス、之ニ財産ノ現況ヲ知ルニ足ルヘキ記載ヲ為サス又ハ不正ノ記載ヲ為シ又ハ之ヲ隠匿若ハ毀棄スルコト
四 第百八十七条ノ規定ニ依リ裁判所書記カ閉鎖シタル帳簿ニ変更ヲ加ヘ又ハ之ヲ隠匿若ハ毀棄スルコト
第三百七十五条 債務者破産宣告ノ前後ヲ問ハス左ニ掲クル行為ヲ為シ其ノ宣告確定シタルトキハ五年以下ノ懲役又ハ五千円以下ノ罰金ニ処ス
一 浪費又ハ賭博其ノ他ノ射倖行為ヲ為シ因テ著ク財産ヲ減少シ又ハ過大ノ債務ヲ負担スルコト
二 破産ノ宣告ヲ遅延セシムル目的ヲ以テ著ク不利益ナル条件ニテ債務ヲ負担シ又ハ信用取引ニ因リ商品ヲ買入レ著ク不利益ナル条件ニテ之ヲ処分スルコト
三 破産ノ原因タル事実アルコトヲ知ルニ拘ラス或債権者ニ特別ノ利益ヲ与フル目的ヲ以テ為シタル担保ノ供与又ハ債務ノ消滅ニ関スル行為ニシテ債務者ノ義務ニ属セス又ハ其ノ方法若ハ時期カ債務者ノ義務ニ属セサルモノ
四 法律ノ規定ニ依リ作ルヘキ商業帳簿ヲ作ラス、之ニ財産ノ現況ヲ知ルニ足ルヘキ記載ヲ為サス又ハ不正ノ記載ヲ為シ又ハ之ヲ隠匿若ハ毀棄スルコト
五 第百八十七条ノ規定ニ依リ裁判所書記カ閉鎖シタル帳簿ニ変更ヲ加ヘ又ハ之ヲ隠匿若ハ毀棄スルコト
第三百七十六条 債務者ノ法定代理人、理事及之ニ準スヘキ者並支配人前二条ニ規定スル行為ヲ為シ債務者ニ対スル破産宣告確定シタルトキハ前二条ノ例ニ依ル相続財産ニ対スル破産ニ於テ相続人及前戸主並其ノ法定代理人及支配人ニ付亦同シ
第三百七十七条 本法ニ依リ監守ヲ命セラレタル者逃走シ又ハ裁判所ノ許可ヲ得スシテ外人ト面接若ハ通信シタルトキハ一年以下ノ懲役又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
破産者裁判所ノ許可ヲ得スシテ居住地ヲ離レタルトキ罰前項ニ同シ
第三百七十八条 債務者及第三百七十六条ニ規定スル者ニ非スシテ第三百七十四条ニ規定スル行為ヲ為シタル者又ハ自己若ハ他人ヲ利スル目的ヲ以テ破産債権者トシテ虚偽ノ権利ヲ行ヒタル者ハ債務者ニ対スル破産宣告確定シタルトキハ十年以下ノ懲役ニ処ス
第三百七十九条 第三百七十四条、第三百七十五条及前条ノ規定ノ適用ニ付テハ強制和議ノ取消ハ之ヲ破産ノ宣告ト看做ス
第三百八十条 破産管財人又ハ監査委員其ノ職務ニ関シ賄賂ヲ収受シ又ハ之ヲ要求若ハ約束シタルトキハ三年以下ノ懲役又ハ三千円以下ノ罰金ニ処ス破産債権者、其ノ代理人又ハ理事若ハ之ニ準スヘキ者債権者集会ノ決議ニ関シ賄賂ヲ収受シ又ハ之ヲ要求若ハ約束シタルトキ亦同シ
前項ノ場合ニ於テ収受シタル賄賂ハ之ヲ没収ス其ノ全部又ハ一部ヲ没収スルコト能ハサルトキハ其ノ価額ヲ追徴ス
第三百八十一条 破産管財人、監査委員、破産債権者、其ノ代理人又ハ理事若ハ之ニ準スヘキ者ニ賄賂ヲ交付、提供又ハ約束シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三千円以下ノ罰金ニ処ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減軽又ハ免除スルコトヲ得
第三百八十二条 第百五十三条ノ規定ニ依リ説明ノ義務アル者故ナク説明ヲ為サス又ハ虚偽ノ説明ヲ為シタルトキハ一年以下ノ懲役又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者破産裁判所ニ其ノ事実ヲ申出テタルトキハ其ノ刑ヲ減軽又ハ免除スルコトヲ得
附 則
第三百八十三条 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三百八十四条 明治二十三年法律第三十二号商法第三編、同年法律第百一号及家資分散法ハ之ヲ廃止ス
第三百八十五条 
民法施行法第二条第三条及非訟事件手続法第百五十二条第百五十三条ハ之ヲ削除シ刑法施行法第二十五条第一項第三号ハ之ヲ削ル
第三百八十六条 他ノ法令中身代限ノ処分ヲ受ケ債務ヲ完済セサル者ニ関スル規定ハ破産又ハ家資分散ノ宣告ヲ受ケタル者ニ之ヲ準用ス
身代限ノ処分ヲ受ケ債務ヲ完済セサル者及家資分散ノ宣告ヲ受ケタル者ハ他ノ法令ノ適用ニ付テハ之ヲ破産者ト看做ス
第三百八十七条 本法施行前破産若ハ復権ノ申立、破産若ハ家資分散ノ宣告又ハ支払猶予ノ許可若ハ仮許可アリタルモノニ付テハ仍旧法ニ依ル但シ明治二十三年法律第三十二号商法第千五十四条ノ規定ハ此ノ限ニ在ラス
本法施行前ニ為シタル家資分散又ハ支払猶予ノ申立ハ決定ヲ以テ之ヲ棄却ス此ノ決定ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第三百八十八条 旧法ニ依リテ破産若ハ家資分散ノ宣告又ハ身代限ノ処分ヲ受ケタル者ハ本法ニ依リテ復権ノ申立ヲ為スコトヲ得此ノ申立ハ其ノ事件ノ第一審裁判所ニ之ヲ為スコトヲ要ス
第三百八十九条 他ノ法律ニ依リ法人ノ理事又ハ之ニ準スヘキ者カ其ノ法人ニ対シ破産ノ申立ヲ為スコトヲ要スル場合ニ於テモ和議開始ノ申立ヲ為スコトヲ妨ケス
第三百九十条 
商法第四百五条ヲ左ノ如ク改ム
保険者カ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキハ保険契約者ハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得但其解除ハ将来ニ向テノミ其効力ヲ生ス
前項ノ規定ニ依リテ解除ヲ為ササル保険契約ハ破産宣告ノ後三个月ヲ経過シタルトキハ其効力ヲ失フ
第三百九十一条 
商法施行法中第百三十八条乃至第百四十五条及第百四十七条ヲ削リ「第百四十六条」ヲ「第百三十八条」ニ改メ同法ニ左ノ一条ヲ加フ
第百三十九条 商法施行条例ハ之ヲ廃止ス但シ同条例第二十一条乃至第二十三条及第五十一条ノ規定ハ旧商法ノ規定ニ依ルヘキ場合ニ於テハ仍其ノ効力ヲ有ス