朕執達吏手數料規則ヲ裁可シ之ヲ公布セシム此法律ハ明治二十三年十一月一日ヨリ施行スヘキコトヲ命ス
御名御璽
明治二十三年七月二十四日
內閣總理大臣 伯爵 山縣有朋
司法大臣 伯爵 山田顯義
法律第五十二號
執達吏手數料規則
第一條 執達吏ハ此規則ニ從ヒ手數料ヲ受ク
第二條 書類送達ノ手數料ハ一通ニ付五錢トス
第三條 有體動產及未タ土地ヨリ離レサル果實竝爲替證券其他裏書ヲ以テ移轉スルコトヲ得ル證券ノ差押、假差押ニ付テノ手數料ハ左ノ區別ニ從フ
執行スヘキ債權額 手數料
貳拾圓マテ 三拾錢
五拾圓マテ 五拾錢
百圓マテ 七拾五錢
貳百五拾圓マテ 壹圓
五百圓マテ 壹圓貳拾五錢
千圓マテ 壹圓五拾錢
千圓ヲ超ユルトキハ貳圓トス
若シ執務三時間以上ニ涉ルトキハ一時間每ニ本條ニ定メタル手數料ノ十分ノ三ヲ加フ但其執務一時間ニ滿タサルモ一時間ト看做シテ算定ス
第四條 執達吏差押、假差押ヲ爲スヘキ場所ニ臨ムト雖差押フヘキ物ナキトキ又ハ差押フヘキ物ヲ換價スルモ强制執行ノ費用ヲ償フテ剩餘ヲ得ル見込ナキトキハ前條ニ定メタル手數料ノ半額ヲ受ク
第五條 民事訴訟法第五百五十六條第二項、第五百八十六條第二項、第六百十五條ノ場合及既ニ差押、假差押ニ著手シタル執達吏ノ死亡若クハ其他ノ理由ニ依リ委任ノ消滅シタルトキ物ヲ換價スル爲其委任ヲ引受ケタル場合ニ於テハ執達吏ハ第三條ニ定メタル手數料ノ半額ヲ受ク
第六條 特定ノ動產又ハ代替物ノ一定ノ數量ヲ債務者ヨリ取上ケ之ヲ債權者ニ引渡ス場合ニ於テハ其手數料ヲ五拾錢トス若シ執務二時間以上ニ涉ルトキハ一時間每ニ拾五錢ヲ加フ但其執務一時間ニ滿タサルモ一時間ト看做シテ算定ス
前項ノ場合ニ於テ執達吏其場所ニ臨ムト雖引渡スヘキ物ナキトキハ前項ニ定メタル手數料ノ半額ヲ受ク
第七條 民事訴訟法第七百三十一條第一項ノ場合ニ於テハ執務三時間以內ハ手數料ヲ五拾錢トス若シ其執務三時間以上ニ涉ルトキハ一時間每ニ拾五錢ヲ加フ但其執務一時間ニ滿タサルモ一時間ト看做シテ算定ス
前項ノ場合ニ於テ執達吏其場所ニ臨ムト雖船舶アラサルトキハ前項ニ定メタル手數料ノ半額ヲ受ク
第八條 民事訴訟法第六百四十三條第三項ニ依リ不動產ノ取調ヲ爲ス場合ニ於テハ第三條ニ定メタル區別ニ從ヒ其手數料ヲ受ク
第九條 動產、不動產及船舶ノ競賣ニ付テノ手數料ハ左ノ區別ニ從フ但競賣ニ依リ得タル金額執行スヘキ債權額ニ超過スルトキハ其債權額ヲ以テ競賣金額ト看做ス
競賣金額 手數料
貳拾圓マテ 六拾錢
五拾圓マテ 壹圓
百圓マテ 壹圓五拾錢
貳百五拾圓マテ 貳圓
五百圓マテ 貳圓五拾錢
千圓マテ 四圓
以上千圓每ニ壹圓ヲ加フ
任意競賣ニ付テモ亦前項ニ同シ
第十條 執達吏執行行爲ヲ爲スヘキ場所ニ臨マサル以前ニ民事訴訟法第五百五十條ニ依リ又ハ委任ノ消滅ニ依リ强制執行ヲ止メタルトキ又ハ支拂若クハ引渡ニ依リ强制執行ノ委任終了シタルトキハ各本條ニ定メタル手數料ノ十分ノ三ヲ受ク但第九條ノ場合ニ於テハ其手數料ヲ三拾錢トス
第十一條 執達吏執行行爲ヲ爲スヘキ場所ニ臨ミタル後民事訴訟法第五百五十條ニ依リ又ハ委任ノ消滅ニ依リ强制執行ヲ止メタルトキ又ハ支拂若クハ引渡ニ依リ强制執行ノ委任終了シタルトキハ各本條ニ定メタル手數料ノ半額ヲ受ク但第九條ノ場合ニ於テハ其手數料ヲ五拾錢トス
第十二條 第三條乃至第十一條ノ手數料ヲ受クヘキ行爲ニハ强制執行ノ場合ニ於ケル左ノ行爲ヲ包含ス
第一 警察上ノ援助ヲ求メ又ハ證人鑑定人ノ立會ヲ爲サシムルコト
第二 執行行爲ニ屬スル催吿其他ノ通知ヲ爲シ又ハ書類ノ送達ヲ爲スコト
第三 記名證券ヲ買主ノ氏名ニ書換ヘ及必要ナル陳述ヲ債務者ニ代リ爲スコト
第四 支拂其他ノ給付、差押金錢及賣却金ヲ受取リ、交付シ若クハ供託シ又ハ受取證書ヲ交付シ又ハ差押物ヲ還付スルコト
第五 競賣ノ公吿ヲ爲スコト
第十三條 執達吏ハ立替金トシテ左ノ費用ノ辨濟ヲ受ク
第一 書記料
第二 郵便料、電信料
第三 公吿料
第四 證人、鑑定人ノ手當
第五 職工、役夫ノ手當
第六 有價證券ノ記名書換及流通ヲ止メタル證券ノ流通ヲ囘復スル爲ノ費用
第七 人及物ノ送致費用
第八 物ノ保存竝監視ノ費用
第九 果實收獲ノ費用
第十 旅費
第十四條 前條ノ書記料ハ左ノ場合ニ於テ之ヲ受ク
第一 法律ニ依リ又ハ利害關係人ノ求ニ依リ證書及記錄中ニ存スル書類ノ謄本ヲ作リタルトキ但法律ニ依リ交付スヘキ送達證書ノ謄本ハ此限ニ在ラス
第二 供託ヲ爲スニ際シ執行裁判所ニ差出スヘキ屆書ヲ作リタルトキ
第三 差押命令ノ送達後第三債務者ノ爲ス陳述ヲ筆記シタルトキ
書記料ハ半枚十二行二十字詰ニ付貳錢五厘トス但十二行ニ滿タサルモ半枚ト看做シテ算定ス
第十五條 强制執行ニ關セサル吿知及催吿ヲ爲ストキハ其手數料拾錢ヲ受ク
第十六條 執達吏拒證書ヲ作リタルトキハ手數料拾錢ヲ受ク
拒者ノ營業場又ハ住居ノ問合ヲ爲シ拒證書ヲ作リタルトキハ手數料貳拾錢ヲ受ク
第十七條 證人ニ支給スヘキ日當ハ貳拾錢以下鑑定人ニ支給スヘキ日當ハ五拾錢以下トシ執達吏土地ノ情況ニ從ヒ之ヲ支給ス若シ一里以上ノ地ヨリ呼出シタルトキハ第十八條ノ規定ニ從ヒ旅費ヲ支給ス
第十八條 執達吏自己ノ役場ヨリ一里以上ノ地ニ至リ職務ヲ行フトキハ一里每ニ拾錢以下ノ旅費ヲ受ク但一里ニ滿タサルモ一里ト看做シテ算定ス
右旅費ノ額ハ控訴院長ノ認可ヲ經テ地方裁判所長之ヲ定ム
第十九條 執達吏ハ總テノ事務ヲ擔任スルニ當リ手數料及立替金ノ槪算額ヲ委任者ヨリ豫納セシム若シ豫納セサルトキハ委任ニ應セサルコトヲ得但裁判所及檢事局ノ命令ニ依ルトキ又ハ訴訟上ノ救助ヲ受ケタル者ノ爲ニ事務ヲ擔任スルトキハ此限ニ在ラス
第二十條 執達吏ハ委任ノ終了シタル後手數料及立替金ノ辨濟ヲ受クヘキモノトス但民事訴訟法第五百五十四條ニ規定シタル場合ハ此限ニ在ラス
第二十一條 執達吏裁判所及檢事局ノ命令ニ依リ其職務ヲ行フ爲ニ要シタル立替金ハ三箇月每ニ確定シテ之ヲ支給ス
右立替金ハ國庫ヨリ之ヲ支辨ス
第二十二條 訴訟上ノ救助ヲ付與シタル場合ニ於テハ執達吏ノ立替金ハ國庫ヨリ支辨ス但債務者ヨリ辨濟シ能ハサル場合ニ限ル
第二十三條 執達吏ハ其職務執行ニ付作リタル書類ノ正本又ハ謄本ニ手數料及立替金ノ額ヲ附記スヘシ又執務時間ニ應シ其辨濟ヲ受クヘキトキハ調書ニ其執務時間ヲ附記スヘシ若シ之ヲ附記セサルトキハ最短ノ時間ニ付テ定メタル金額ヲ以テ算定ス
朕執達吏手数料規則ヲ裁可シ之ヲ公布セシム此法律ハ明治二十三年十一月一日ヨリ施行スヘキコトヲ命ス
御名御璽
明治二十三年七月二十四日
内閣総理大臣 伯爵 山県有朋
司法大臣 伯爵 山田顕義
法律第五十二号
執達吏手数料規則
第一条 執達吏ハ此規則ニ従ヒ手数料ヲ受ク
第二条 書類送達ノ手数料ハ一通ニ付五銭トス
第三条 有体動産及未タ土地ヨリ離レサル果実並為替証券其他裏書ヲ以テ移転スルコトヲ得ル証券ノ差押、仮差押ニ付テノ手数料ハ左ノ区別ニ従フ
執行スヘキ債権額 手数料
弐拾円マテ 三拾銭
五拾円マテ 五拾銭
百円マテ 七拾五銭
弐百五拾円マテ 壱円
五百円マテ 壱円弐拾五銭
千円マテ 壱円五拾銭
千円ヲ超ユルトキハ弐円トス
若シ執務三時間以上ニ渉ルトキハ一時間毎ニ本条ニ定メタル手数料ノ十分ノ三ヲ加フ但其執務一時間ニ満タサルモ一時間ト看做シテ算定ス
第四条 執達吏差押、仮差押ヲ為スヘキ場所ニ臨ムト雖差押フヘキ物ナキトキ又ハ差押フヘキ物ヲ換価スルモ強制執行ノ費用ヲ償フテ剰余ヲ得ル見込ナキトキハ前条ニ定メタル手数料ノ半額ヲ受ク
第五条 民事訴訟法第五百五十六条第二項、第五百八十六条第二項、第六百十五条ノ場合及既ニ差押、仮差押ニ著手シタル執達吏ノ死亡若クハ其他ノ理由ニ依リ委任ノ消滅シタルトキ物ヲ換価スル為其委任ヲ引受ケタル場合ニ於テハ執達吏ハ第三条ニ定メタル手数料ノ半額ヲ受ク
第六条 特定ノ動産又ハ代替物ノ一定ノ数量ヲ債務者ヨリ取上ケ之ヲ債権者ニ引渡ス場合ニ於テハ其手数料ヲ五拾銭トス若シ執務二時間以上ニ渉ルトキハ一時間毎ニ拾五銭ヲ加フ但其執務一時間ニ満タサルモ一時間ト看做シテ算定ス
前項ノ場合ニ於テ執達吏其場所ニ臨ムト雖引渡スヘキ物ナキトキハ前項ニ定メタル手数料ノ半額ヲ受ク
第七条 民事訴訟法第七百三十一条第一項ノ場合ニ於テハ執務三時間以内ハ手数料ヲ五拾銭トス若シ其執務三時間以上ニ渉ルトキハ一時間毎ニ拾五銭ヲ加フ但其執務一時間ニ満タサルモ一時間ト看做シテ算定ス
前項ノ場合ニ於テ執達吏其場所ニ臨ムト雖船舶アラサルトキハ前項ニ定メタル手数料ノ半額ヲ受ク
第八条 民事訴訟法第六百四十三条第三項ニ依リ不動産ノ取調ヲ為ス場合ニ於テハ第三条ニ定メタル区別ニ従ヒ其手数料ヲ受ク
第九条 動産、不動産及船舶ノ競売ニ付テノ手数料ハ左ノ区別ニ従フ但競売ニ依リ得タル金額執行スヘキ債権額ニ超過スルトキハ其債権額ヲ以テ競売金額ト看做ス
競売金額 手数料
弐拾円マテ 六拾銭
五拾円マテ 壱円
百円マテ 壱円五拾銭
弐百五拾円マテ 弐円
五百円マテ 弐円五拾銭
千円マテ 四円
以上千円毎ニ壱円ヲ加フ
任意競売ニ付テモ亦前項ニ同シ
第十条 執達吏執行行為ヲ為スヘキ場所ニ臨マサル以前ニ民事訴訟法第五百五十条ニ依リ又ハ委任ノ消滅ニ依リ強制執行ヲ止メタルトキ又ハ支払若クハ引渡ニ依リ強制執行ノ委任終了シタルトキハ各本条ニ定メタル手数料ノ十分ノ三ヲ受ク但第九条ノ場合ニ於テハ其手数料ヲ三拾銭トス
第十一条 執達吏執行行為ヲ為スヘキ場所ニ臨ミタル後民事訴訟法第五百五十条ニ依リ又ハ委任ノ消滅ニ依リ強制執行ヲ止メタルトキ又ハ支払若クハ引渡ニ依リ強制執行ノ委任終了シタルトキハ各本条ニ定メタル手数料ノ半額ヲ受ク但第九条ノ場合ニ於テハ其手数料ヲ五拾銭トス
第十二条 第三条乃至第十一条ノ手数料ヲ受クヘキ行為ニハ強制執行ノ場合ニ於ケル左ノ行為ヲ包含ス
第一 警察上ノ援助ヲ求メ又ハ証人鑑定人ノ立会ヲ為サシムルコト
第二 執行行為ニ属スル催告其他ノ通知ヲ為シ又ハ書類ノ送達ヲ為スコト
第三 記名証券ヲ買主ノ氏名ニ書換ヘ及必要ナル陳述ヲ債務者ニ代リ為スコト
第四 支払其他ノ給付、差押金銭及売却金ヲ受取リ、交付シ若クハ供託シ又ハ受取証書ヲ交付シ又ハ差押物ヲ還付スルコト
第五 競売ノ公告ヲ為スコト
第十三条 執達吏ハ立替金トシテ左ノ費用ノ弁済ヲ受ク
第一 書記料
第二 郵便料、電信料
第三 公告料
第四 証人、鑑定人ノ手当
第五 職工、役夫ノ手当
第六 有価証券ノ記名書換及流通ヲ止メタル証券ノ流通ヲ回復スル為ノ費用
第七 人及物ノ送致費用
第八 物ノ保存並監視ノ費用
第九 果実収獲ノ費用
第十 旅費
第十四条 前条ノ書記料ハ左ノ場合ニ於テ之ヲ受ク
第一 法律ニ依リ又ハ利害関係人ノ求ニ依リ証書及記録中ニ存スル書類ノ謄本ヲ作リタルトキ但法律ニ依リ交付スヘキ送達証書ノ謄本ハ此限ニ在ラス
第二 供託ヲ為スニ際シ執行裁判所ニ差出スヘキ届書ヲ作リタルトキ
第三 差押命令ノ送達後第三債務者ノ為ス陳述ヲ筆記シタルトキ
書記料ハ半枚十二行二十字詰ニ付弐銭五厘トス但十二行ニ満タサルモ半枚ト看做シテ算定ス
第十五条 強制執行ニ関セサル告知及催告ヲ為ストキハ其手数料拾銭ヲ受ク
第十六条 執達吏拒証書ヲ作リタルトキハ手数料拾銭ヲ受ク
拒者ノ営業場又ハ住居ノ問合ヲ為シ拒証書ヲ作リタルトキハ手数料弐拾銭ヲ受ク
第十七条 証人ニ支給スヘキ日当ハ弐拾銭以下鑑定人ニ支給スヘキ日当ハ五拾銭以下トシ執達吏土地ノ情況ニ従ヒ之ヲ支給ス若シ一里以上ノ地ヨリ呼出シタルトキハ第十八条ノ規定ニ従ヒ旅費ヲ支給ス
第十八条 執達吏自己ノ役場ヨリ一里以上ノ地ニ至リ職務ヲ行フトキハ一里毎ニ拾銭以下ノ旅費ヲ受ク但一里ニ満タサルモ一里ト看做シテ算定ス
右旅費ノ額ハ控訴院長ノ認可ヲ経テ地方裁判所長之ヲ定ム
第十九条 執達吏ハ総テノ事務ヲ担任スルニ当リ手数料及立替金ノ概算額ヲ委任者ヨリ予納セシム若シ予納セサルトキハ委任ニ応セサルコトヲ得但裁判所及検事局ノ命令ニ依ルトキ又ハ訴訟上ノ救助ヲ受ケタル者ノ為ニ事務ヲ担任スルトキハ此限ニ在ラス
第二十条 執達吏ハ委任ノ終了シタル後手数料及立替金ノ弁済ヲ受クヘキモノトス但民事訴訟法第五百五十四条ニ規定シタル場合ハ此限ニ在ラス
第二十一条 執達吏裁判所及検事局ノ命令ニ依リ其職務ヲ行フ為ニ要シタル立替金ハ三箇月毎ニ確定シテ之ヲ支給ス
右立替金ハ国庫ヨリ之ヲ支弁ス
第二十二条 訴訟上ノ救助ヲ付与シタル場合ニ於テハ執達吏ノ立替金ハ国庫ヨリ支弁ス但債務者ヨリ弁済シ能ハサル場合ニ限ル
第二十三条 執達吏ハ其職務執行ニ付作リタル書類ノ正本又ハ謄本ニ手数料及立替金ノ額ヲ附記スヘシ又執務時間ニ応シ其弁済ヲ受クヘキトキハ調書ニ其執務時間ヲ附記スヘシ若シ之ヲ附記セサルトキハ最短ノ時間ニ付テ定メタル金額ヲ以テ算定ス