鉄道抵当法
法令番号: 法律第五十三號
公布年月日: 明治38年3月13日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル鐵道抵當法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十八年三月十一日
內閣總理大臣 伯爵 桂太郞
司法大臣 波多野敬直
遞信大臣 大浦兼武
法律第五十三號
鐵道抵當法
第一章 總則
第一條 本法ニ於テ會社ト稱スルハ私設鐵道株式會社ヲ謂フ
第二條 會社ハ抵當權ノ目的ト爲ス爲鐵道ノ全部又ハ一部ニ付鐵道財團ヲ設クルコトヲ得
鐵道財團ニ屬スルモノハ同時ニ他ノ鐵道財團ニ屬スルコトヲ得ス
鐵道財團ハ之ヲ一箇ノ物ト看做ス
鐵道財團ハ抵當權ノ消滅ニ因リテ消滅ス
第三條 鐵道財團ハ左ニ揭クルモノニシテ鐵道財團ノ所有者ニ屬スルモノヲ以テ之ヲ組成ス
一 鐵道線路、其ノ他ノ鐵道用地及其ノ上ニ存スル工作物竝之ニ屬スル器具機械
二 工場、倉庫、發電所、變壓所、配電所、事務所、舍宅及其ノ敷地竝之ニ屬スル器具機械
三 鐵道用水ニ關スル工作物及其ノ敷地竝之ニ屬スル器具機械
四 鐵道用通信、信號又ハ送電ニ要スル工作物及其ノ敷地竝之ニ屬スル器具機械
五 前四號ニ揭ケタル工作物ヲ所有シ又ハ使用スル爲他人ノ不動產ノ上ニ存スル地上權、登記シタル賃借權及前四號ニ揭ケタル土地ノ爲ニ存スル地役權
六 車輛及之ニ屬スル器具機械
七 保線ニ要スル材料及器具機械
第四條 鐵道財團ハ所有權及抵當權以外ノ物權又ハ差押、假差押若ハ假處分ノ目的ト爲スコトヲ得ス
鐵道財團ニ屬スルモノハ所有權以外ノ物權又ハ差押、假差押若ハ假處分ノ目的ト爲スコトヲ得ス
鐵道財團ニ屬スヘキモノニシテ所有權以外ノ物權又ハ差押、假差押若ハ假處分ノ目的タルトキ又ハ鐵道財團ニ屬スヘキ不動產ニシテ賃借權ノ目的タルトキハ會社ハ鐵道財團ヲ設クルコトヲ得ス但シ不動產ニ關スル權利ニ付其ノ登記ナキトキハ此ノ限ニ在ラス
第五條 抵當權ノ設定又ハ變更ハ總株金四分ノ一以上ノ拂込アリタル後定款變更ト同一方法ノ決議ヲ經主務官廳ノ認可ヲ受クルニ因リテ其ノ效力ヲ生ス
第六條 鐵道財團ヲ抵當ト爲ス債務ノ額ハ社債ノ額ト合セテ總株金拂込額ヲ超ユルコトヲ得ス但シ舊債償還ノ爲ニスル場合ニ於テハ舊債務ノ額ハ之ヲ算入セス
第七條 抵當權設定ノ認可ヲ申請スルニハ抵當證書及鐵道財團目錄ヲ差出スヘシ但シ擔保附社債ヲ發行スル場合ニ在リテハ信託證書ヲ以テ抵當證書ニ代フ
抵當證書ニハ左ノ事項ヲ記載スヘシ
一 鐵道財團ニ屬スル線路ノ表示
二 抵當權者、債務者及鐵道財團ノ所有者ノ名稱及住所
三 抵當權ノ順位
四 債權額及償還ノ方法竝期限
五 利率及利息支拂ノ方法竝期限
抵當證書又ハ信託證書ニ記載シタル事項ニ變更ヲ生スヘキ契約ハ主務官廳ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ效力ヲ生セス
第八條 抵當權ノ設定認可ノ申請アリタルトキハ主務官廳ハ直ニ官報ヲ以テ鐵道財團ニ屬スヘキモノニ關シ第四條第三項ノ權利ヲ有スル者又ハ差押、假差押若ハ假處分ノ債權者ハ一定ノ期間內ニ申出ツヘキ旨ヲ公吿スヘシ但シ其ノ期間ハ一箇月ヲ下ルコトヲ得ス
主務官廳ハ抵當權ノ設定認可ノ申請前ニ於テモ會社ノ申請ニ因リ豫メ前項ノ公吿ヲ爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テ公吿後六箇月內ニ抵當權設定認可ノ申請ナキトキハ公吿ハ其ノ效力ヲ失フ
會社カ前項ノ申請ヲ爲ストキハ鐵道財團目錄ヲ差出スヘシ
第九條 前條第二項ニ依ル公吿ヲ爲シタルトキ又ハ抵當權ノ設定認可ノ申請ヲ爲シタルトキハ鐵道財團ニ屬スヘキモノハ之ヲ讓渡スコトヲ得ス
第十條 第八條ノ公吿アリタル後ハ同條第二項ニ依ル公吿カ效力ヲ失ハサル間、抵當權ノ設定認可ノ申請カ却下セラレサル間及其ノ認可カ效力ヲ失ハサル間ハ鐵道財團ニ屬スヘキ不動產ニ關スル權利ニ付競落ヲ許ス決定ヲ爲スコトヲ得ス
前項ノ規定ハ動產ニ對スル競賣ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十一條 抵當權設定ノ認可アリタルトキハ其ノ鐵道ニ關スルモノニシテ第三條ニ揭ケタルモノハ當然鐵道財團ニ屬ス其ノ抵當權設定後新ニ鐵道財團ノ所有者ニ屬シタルモノ亦同シ
前項ニ揭ケタルモノニ關シ第四條第三項ノ權利アルトキハ不動產ニ關スルモノノ登記ハ其ノ效力ヲ失ヒ動產ニ關スルモノハ存セサルモノト看做シ差押、假差押若ハ假處分ハ其ノ效力ヲ失フ但シ抵當權設定ノ認可カ效力ヲ失ヒタルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ場合ニ於テハ第四條第三項ノ權利ヲ有スル者又ハ差押、假差押若ハ假處分ノ債權者ハ鐵道財團ノ所有者ニ對シ損害賠償ノ請求ヲ爲スコトヲ得但シ第八條ノ公吿アリタルモノニ付期間內ニ申出ヲ爲ササル權利者竝期間經過後ニ於テ登記ノ申請ヲ爲シタル者、動產ニ關シ所有權以外ノ物權ヲ取得シタル者又ハ差押、假差押若ハ假處分ヲ爲シタル者ハ此ノ限ニ在ラス
第十二條 第八條第二項ニ依ル公吿カ效力ヲ失ヒタルトキ、抵當權ノ設定カ認可セラレサルトキ又ハ其ノ認可カ效力ヲ失ヒタルトキハ主務官廳ハ直ニ官報ヲ以テ其ノ旨ヲ公吿スヘシ
第十三條 抵當權設定ノ認可アリタル後二箇月內ニ其ノ登錄ノ申請ナキトキハ認可ハ其ノ效力ヲ失フ
第十四條 抵當權ハ債權成立以前ニ於テモ其ノ效力ヲ生ス
第十五條 抵當權ノ得喪若ハ變更又ハ鐵道財團ノ所有權ノ移轉ハ登錄ヲ爲スニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第十六條 數箇ノ債權ヲ擔保スル爲同一ノ鐵道財團ニ付抵當權ヲ設定シタルトキハ其ノ抵當權ノ順位ハ登錄ノ前後ニ依ル
第十七條 抵當權者ハ鐵道財團ニ付他ノ債權者ニ先チテ自己ノ債權ノ辨濟ヲ受クルコトヲ得
第十八條 抵當權者ハ債權ノ全部ノ辨濟ヲ受クル迄ハ鐵道財團ノ全部ニ付其ノ權利ヲ行フコトヲ得
第十九條 抵當權ハ鐵道財團又ハ之ニ屬スルモノノ讓渡、貸付、滅失又ハ毀損ニ因リテ會社カ受クヘキ金錢其ノ他ノ物ニ對シテモ之ヲ行フコトヲ得但シ抵當權者ハ其ノ拂渡又ハ引渡前ニ差押ヲ爲スコトヲ要ス
第二十條 會社カ鐵道財團ヲ讓渡シ、貸付シ若ハ抵當ト爲シ、鐵道財團ニ關スル營業ノ管理委託ヲ爲シ、其ノ線路ヲ變更シ又ハ其ノ線路ノ全部若ハ一部ニ付營業ヲ休止セムトスルトキ又ハ鐵道財團ニ屬スルモノヲ處分セムトスルトキハ抵當權者ニ對シ異議アラハ一定ノ期間內ニ之ヲ述フヘキ旨ヲ催吿スヘシ但シ其ノ期間ハ二箇月ヲ下ルコトヲ得ス
抵當權者カ前項ノ期間內ニ異議ヲ述ヘタルトキハ會社ハ主務官廳ノ裁定ヲ求ムヘシ此ノ裁定ハ終局トス
抵當權者カ外國ニ住所ヲ有スル場合ニ於テハ第一項ノ期間ハ四箇月ヲ下ルコトヲ得ス
本條ノ規定ハ抵當權者カ豫メ同意ヲ與ヘタル場合ニハ之ヲ適用セス
第二十一條 會社カ鐵道財團ニ關スル工事方法ノ變更ニ付認可ヲ申請シタル場合ニ於テ其ノ變更カ鐵道財團ノ價額ヲ著シク減スヘキ虞アリト認ムルトキハ主務官廳ハ會社ヲシテ抵當權者ニ對シ異議アラハ之ヲ述フヘキ旨ヲ催吿セシムヘシ
前條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十二條 免許ノ失效又ハ取消ノ場合ニ於テハ抵當權者ハ其ノ權利ヲ實行スルコトヲ得
前項ニ依リ抵當權ヲ實行セムトスルトキハ抵當權者ハ免許ノ失效又ハ取消ノ日ヨリ六箇月內ニ其ノ手續ヲ爲スヘシ
免許ハ前項ノ期間及抵當權實行ノ終了ニ至ル迄仍存續スルモノト看做ス
第二十三條 債權者カ同一ノ債權ノ擔保トシテ數箇ノ鐵道財團ノ上ニ抵當權ヲ有スル場合ニ於テ同時ニ其ノ代價ヲ配當スヘキトキハ其ノ各鐵道財團ノ價額ニ準シテ其ノ債權ノ負擔ヲ分ツ
或鐵道財團ノ代價ノミヲ配當スヘキトキハ抵當權者ハ其ノ代價ニ付債權ノ全部ノ辨濟ヲ受クルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ次ノ順位ニ在ル抵當權者ハ前項ノ規定ニ從ヒ右ノ抵當權者カ他ノ鐵道財團ニ付辨濟ヲ受クヘキ金額ニ滿ツル迄之ニ代位シテ抵當權ヲ行フコトヲ得
第二十四條 前條ノ規定ニ從ヒ代位ニ因リテ抵當權ヲ行フ者ハ其ノ抵當權ノ登錄ニ其ノ代位ヲ附記スルコトヲ得
第二十五條 抵當權者ハ鐵道財團ノ代價ヲ以テ辨濟ヲ受ケサル債權ノ部分ニ付テノミ他ノ財產ヲ以テ辨濟ヲ受クルコトヲ得
前項ノ規定ハ鐵道財團ノ代價ニ先チテ他ノ財產ノ代價ヲ配當スヘキ場合ニハ之ヲ適用セス但シ他ノ債權者ハ抵當權者ヲシテ前項ノ規定ニ從ヒ辨濟ヲ受ケシムルカ爲之ニ配當スヘキ金額ノ供託ヲ請求スルコトヲ得
第二十六條 政府カ鐵道及附屬物件ヲ買上ケタル場合ニ於テ抵當權設定後二十箇年又ハ据置年限ヲ經過シタルトキハ抵當附債務ヲ辨濟スルコトヲ得但シ少クトモ一箇年前ニ豫吿スヘシ
第二章 登錄
第二十七條 鐵道財團ニ關スル登錄ヲ爲ス爲主務官廳ニ鐵道抵當原簿ヲ備フ
鐵道抵當原簿ハ一箇ノ鐵道財團ニ付一用紙ヲ設ク
第二十八條 登錄ハ本法ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外當事者ノ申請ニ因リテ之ヲ爲ス
第二十九條 抵當權設定ノ登錄申請書ニハ左ノ書面ヲ添附スヘシ
一 抵當權ノ設定ニ關スル證書
二 鐵道財團目錄
當事者ハ抵當權設定認可ノ申請書ニ添附シタル鐵道財團目錄ヲ前項第二號ノ書面トシテ引用スルコトヲ得
第一項第二號ノ書面ハ第二以下ノ順位ノ抵當權設定ノ登錄申請書ニハ之ヲ添附スルコトヲ要セス
第三十條 抵當權設定ノ登錄ハ鐵道抵當原簿ニ左ノ事項ヲ記載スルニ依リテ之ヲ爲ス
一 第七條第二項第一號乃至第五號ニ揭ケタル事項
二 免許ニ附シタル條件
三 抵當權ヲ設定シタルコト
四 抵當權設定認可ノ年月日
五 登錄ノ年月日
第七條第二項第一號及前項第二號ニ揭ケタル事項ハ第二以下ノ順位ノ抵當權ニ付テハ之ヲ登錄スルコトヲ要セス
第三十一條 登錄シタル事項ニ變更ヲ生シ又ハ其ノ事項消滅シタルトキハ當事者ハ遲滯ナク變更又ハ消滅ノ登錄ヲ申請スヘシ
前項ノ申請書ニハ變更又ハ消滅ノ事由ヲ記載シ之ヲ證スル書面ヲ添附スヘシ
變更又ハ消滅カ主務官廳ノ命令又ハ認可ニ因リテ生シタル場合ニ於テハ前項ノ證明書ハ之ヲ添附スルコトヲ要セス
第三十二條 同一ノ債權ノ擔保トシテ數箇ノ鐵道財團ノ上ニ抵當權ヲ設定シタル場合ニ於テハ其ノ各鐵道財團ノ用紙ニ他ノ鐵道財團ヲ表示シ之ト共ニ抵當權ノ目的タル旨ヲ記載スヘシ
他ノ鐵道財團ニ關スル變更又ハ消滅ノ登錄カ前項ノ記載ヲ變更スルコトヲ要スルニ至リタルトキハ其ノ記載ニ變更ヲ附記シ他ノ鐵道財團ニ關スル消滅ノ登錄カ前項ノ記載ヲ要セサルニ至リタルトキハ其ノ記載ヲ抹消スヘシ
第三十三條 鐵道抵當原簿ニ抵當權ノ設定ヲ登錄シタルトキハ鐵道財團目錄ニ爲シタル記載ハ登錄ト同一ノ效力ヲ生ス
第三十四條 鐵道財團目錄ニ記載シタル事項ニ變更ヲ生シ又ハ其ノ事項消滅シタルトキハ會社ハ遲滯ナク其ノ旨ヲ屆出ヘシ
前項ノ屆書ハ鐵道財團目錄ニ編綴スルニ依リテ前條ノ效力ヲ生ス
第三十五條 一用紙ノ抵當權ノ登錄カ全部抹消セラレタルトキハ主務官廳ハ其ノ用紙ヲ閉鎖スヘシ
第三十六條 左ノ場合ニ於テハ主務官廳ハ直ニ其ノ旨ヲ管轄登記所ニ通知スヘシ但シ第二號ノ場合ニ於テハ新ナル管轄登記所ニノミ通知スヘシ
一 第一順位ノ抵當權ノ設定ヲ登錄シタルトキ
二 不動產ニ關スル權利カ新ニ鐵道財團ニ屬シタルトキ
三 鐵道財團ノ用紙ヲ閉鎖シタルトキ
前項第一號又ハ第三號ノ場合ニ於テハ主務官廳ハ直ニ官報ヲ以テ其ノ旨ヲ公吿スヘシ
第三十七條 登記官吏カ前條第一號又ハ第二號ノ通知ヲ受ケタルトキハ第三號ノ通知ヲ受クル迄ハ鐵道財團ノ所有者ニ屬スルモノニ付所有權以外ノ物權、賃借權又ハ差押、假差押若ハ假處分ノ登記ヲ爲スコトヲ得ス但シ所有權以外ノ物權、賃借權又ハ差押、假差押若ハ假處分ノ目的タルモノカ主務官廳ノ證明書ニ依リ鐵道財團ニ屬セサルコト明白ナルトキハ此ノ限ニ在ラス
第三十八條 何人ト雖鐵道抵當原簿及鐵道財團目錄ノ閱覽ヲ請求シ又ハ手數料ヲ納付シテ鐵道抵當原簿ノ謄本若ハ抄本ノ交付ヲ請求スルコトヲ得
手數料ノ外郵送料ヲ納付シテ鐵道抵當原簿ノ謄本又ハ抄本ノ送付ヲ請求スルコトヲ得
第三十九條 鐵道抵當原簿ノ調製、鐵道財團目錄ノ樣式其ノ他登錄ニ關スル細則ハ主務大臣之ヲ定ム
第三章 强制競賣及强制管理
第四十條 鐵道財團ニ對スル抵當權ノ强制執行ハ强制競賣又ハ强制管理ニ依リテ之ヲ爲ス
抵當權者ハ自己ノ選擇ニ依リ前項ニ揭ケタル一箇ノ方法ヲ以テ又ハ二箇ノ方法ヲ併セテ强制執行ヲ爲スコトヲ得
第四十一條 抵當證書又ハ信託證書及之ニ記載シタル事項ヲ變更スル契約證書ハ强制執行ニ關シテハ公證人ノ作成シタル債務名義ト看做ス但シ其ノ執行力アル正本ハ主務官廳ノ官吏之ヲ付與ス
第四十二條 强制執行ハ鐵道財團ノ所有者タル會社ノ本店所在地ヲ管轄スル區裁判所ノ管轄ニ專屬ス
第四十三條 强制競賣ノ申立ハ書面ヲ以テ之ヲ爲スヘシ
申立書ニハ左ノ事項ヲ記載シ申立人又ハ其ノ代理人之ニ署名捺印スヘシ
一 債務者タル會社及鐵道財團ノ所有者タル會社ノ商號及其ノ本店ノ所在地
二 競賣ニ付スヘキ鐵道財團ノ表示
三 競賣ノ原因タル事由
四 年月日
五 裁判所
申立書ニハ執行力アル正本ノ外鐵道抵當原簿ノ謄本ヲ添附スヘシ但シ强制管理ノ開始アリタル場合ニ於テハ鐵道抵當原簿ノ謄本ヲ添附スルコトヲ要セス
第四十四條 强制競賣ノ申立ハ競落期日迄ハ競買人ノ同意アル場合ニ限リ之ヲ取下クルコトヲ得
第四十五條 競賣手續ノ開始ハ決定ヲ以テ之ヲ爲ス
開始決定ニハ申立人ノ名稱、住所及第四十三條第二項第一號乃至第四號ニ揭ケタル事項ヲ記載シ決定ヲ爲シタル判事之ニ署名捺印スヘシ
第四十六條 裁判所カ競賣手續開始ノ決定ヲ爲シタルトキハ直ニ鐵道抵當原簿ニ競賣申立ノ登錄ヲ爲スヘキ旨ヲ主務官廳ニ囑託スヘシ
主務官廳ニ於テ前項ノ囑託ヲ受ケタルトキハ直ニ登錄ヲ爲シ其ノ旨ヲ裁判所ニ通知スヘシ
第四十七條 裁判所カ競賣手續開始ノ決定ヲ爲シタルトキハ官報ヲ以テ租稅其ノ他ノ公課ヲ主管スル官廳及公署ニ對シ一定ノ期間內ニ鐵道財團ノ所有者ニ對スル權利ノ有無及其ノ限度ヲ申出ツヘキ旨ヲ公吿スヘシ
第四十八條 裁判所ハ主務官廳ノ意見ヲ聽キ鑑定人ヲ選定シ競賣ニ付スヘキ鐵道財團ヲ評價セシメ其ノ評價額ヲ以テ最低競賣價額ト爲スヘシ
第四十九條 裁判所ハ競賣期日ヲ定メ官報ヲ以テ之ヲ公吿スヘシ
前項ノ公吿ニハ左ノ事項ヲ記載スヘシ
一 競賣ニ付スヘキ鐵道財團ノ表示
二 競賣期日ノ場所、日時及入札締切ノ時
三 最低競賣價額
四 競落期日ノ場所及日時
五 執行記錄ヲ閱覽シ得ヘキ場所
第五十條 鐵道事業ヲ營厶者ニ非スシテ競賣ニ加入スルニハ競賣ニ付セラレタル鐵道ノ營業ヲ目的トシ會社ヲ發起セムトスル者七人以上合同スルコトヲ要ス
前項ニ依リ競賣ニ加入スル者ハ競賣ノ申込ニ關シテハ連帶シテ其ノ責ニ任ス
第五十一條 前條第一項ニ依リ競賣ニ加入スル者ハ競賣ノ申込ト共ニ保證トシテ最低競賣價額百分ノ五ニ相當スル金額ヲ現金又ハ有價證券ヲ以テ供託スヘシ
前項ノ規定ハ競買人ニシテ抵當權者カ之ニ加ハルモノニ付テハ其ノ債權額カ最低競賣價額ノ百分ノ五以上ニ相當スル場合ニ限リ之ヲ適用セス
第五十二條 競賣ハ入札ノ方法ヲ以テ之ヲ行フ
第五十三條 裁判所ハ競買人ノ面前ニ於テ入札ヲ開封スヘシ
競落ト爲ルヘキ同價額ノ入札二箇以上アルトキハ裁判所ハ同價額ノ競買人ヲシテ直ニ再度ノ入札ヲ爲サシムヘシ
再度ノ入札ヲ爲スモ仍同價額ノ入札アルトキハ裁判所ハ直ニ抽籤ヲ以テ最高價競買人ヲ定ムヘシ
第五十四條 競賣ニ加入スルコトヲ得サル者ノ爲シタル入札ハ無效トス
第五十五條 競賣期日ニ於テ入札ナキトキ、許スヘキ入札ナキトキ又ハ最低競賣價額ニ達スル入札ナキトキハ裁判所ハ職權ヲ以テ更ニ競賣期日ヲ定ムヘシ
前項ノ場合ニ於テ裁判所ハ鑑定人ノ意見ヲ聽キ最低競賣價額ヲ低減スルコトヲ得
第五十六條 入札ハ之ヲ變更シ又ハ取消スコトヲ得ス
入札ハ其ノ入札ヲ爲シタル競買人以外ノ者ニ競落ヲ許ス決定カ確定シタルトキ、競落ヲ許ササル決定カ確定シタルトキ又ハ競落ヲ爲サスシテ競賣手續ヲ終了シタルトキハ其ノ效力ヲ失フ
第五十七條 裁判所ハ最高價競買人ノ名稱及其ノ競買價額ヲ表示シ競賣ノ終局ヲ吿知スヘシ
第五十八條 裁判所ハ競賣ニ關スル調書ヲ作成シ左ノ事項ヲ記載スヘシ
一 競賣ニ付セラレタル鐵道財團ノ表示
二 競賣申立人ノ表示
三 入札及開札ノ日時
四 總テノ競買價額及競買人ノ名稱、住所又ハ入札ナキコト、許スヘキ入札ナキコト若ハ最低競賣價額ニ達スル入札ナキコト竝第五十三條第二項又ハ第三項ノ手續ヲ爲シタルコト
五 競賣ノ終局ヲ吿知シタル日時竝最高價競買人ノ名稱及其ノ競買價額
第五十九條 裁判所ハ競落期日ニ出頭シタル債務者、鐵道財團ノ所有者、抵當權者及競買人ニ競落ノ許可ニ付陳述ヲ爲サシムヘシ
第六十條 强制競賣申立ノ取下若ハ强制執行ノ取消アリタル場合又ハ第四十八條乃至第五十四條若ハ第五十七條ノ規定ニ違反シテ競賣ヲ爲シタル場合ニ限リ債務者、鐵道財團ノ所有者、抵當權者又ハ競買人ハ競落ノ許可ニ付異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得
第六十一條 裁判所ハ異議ノ申立ヲ正當トスル場合ニ於テ更ニ競賣ヲ許スヘキトキハ職權ヲ以テ競賣期日ヲ定ムヘシ
前項ニ依リ競賣期日ヲ定ムル場合ノ外競落ノ許否ハ決定ヲ以テ之ヲ言渡スヘシ
第六十二條 競落ノ許可ニ付異議ノ申立ヲ爲シタル者ハ第六十條ニ揭ケタル理由アル場合ニ限リ競落ヲ許ス決定ニ對シ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
競落期日ニ出頭シ競落ノ許可ニ付異議ノ申立ヲ爲ササル者ハ競落ヲ許ササル理由ナキ場合ニ限リ競落ヲ許ササル決定ニ對シ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
抗吿ハ執行停止ノ效力ヲ有ス
第六十三條 裁判所ハ競落ニ關スル調書ヲ作成スヘシ
第六十四條 競落ヲ許ス決定カ確定シタルトキハ裁判所ハ其ノ決定ノ謄本ヲ主務官廳ニ送付スヘシ
第六十五條 競落代金ハ競落ヲ許ス決定カ確定シタル日又ハ本免許ヲ受クルコトヲ要スル者ニ在リテハ本免許ヲ受ケタル日ヨリ一週間以內ニ之ヲ裁判所ニ支拂フヘシ但シ債權者カ競落人タル場合ニ於テハ自己カ競落代金中ヨリ受取ルヘキ金額ヲ控除シ其ノ殘額ノミヲ支拂フヲ以テ足ル
第六十六條 競落代金ノ支拂アリタルトキハ競賣ニ付セラレタル鐵道財團ニ關スル權利ハ競落人ニ、競落人カ第五十條第一項ニ依リ競賣ニ加入シタル者ナルトキ其ノ競落人ニ依リテ發起セラレタル會社ニ移轉ス
抵當權ハ前項ニ依リ鐵道財團ニ關スル權利カ移轉シタルトキニ消滅ス
第六十七條 本免許狀ノ下付ナキトキ、第七十三條ノ期間內ニ本免許ノ申請ナキトキ又ハ第六十五條ノ期間內ニ競落代金ノ支拂ナキトキハ裁判所ハ職權ヲ以テ競落ヲ許ス決定ヲ取消シ更ニ競賣期日ヲ定ムヘシ
前項ニ依リ競落ヲ許ス決定カ取消サレタルトキハ本免許ハ取消サレタルモノトス
競落人ハ新競賣ニ加入スルコトヲ得ス且新競賣ニ於ケル競落代金カ最初ノ競落代金ヨリ少ナキトキハ其ノ不足額及手續ノ費用ヲ賠償スヘシ
第六十八條 裁判所ハ競落代金ノ中ヨリ順次ニ競賣ノ費用及租稅其ノ他ノ公課ヲ控除シ其ノ殘額ハ抵當權ノ順位ニ從ヒ之ヲ抵當權者ニ配當シ仍殘餘アルトキハ之ヲ鐵道財團ノ所有者ニ交付スヘシ
前項ノ場合ニ於テハ裁判所ハ其ノ旨ヲ主務官廳ニ通知シ競賣申立ノ登錄ノ抹消ヲ囑託スヘシ
主務官廳ニ於テ前項ノ囑託ヲ受ケタルトキハ左ノ手續ヲ爲スヘシ
一 第四十六條第二項ニ依リテ爲シタル登錄及抵當權ノ登錄ヲ抹消スルコト
二 競落ヲ許ス決定アリタルコトヲ管轄登記所ニ通知シ競落人又ハ競落人ニ依リテ發起セラレタル會社カ取得シタル不動產ニ關スル權利ノ登記竝第十一條第二項ニ依リ效力ヲ失ヒタル登記ノ抹消ヲ囑託スルコト
第六十九條 競落ヲ爲サスシテ競賣手續ヲ終了シタルトキハ裁判所ハ其ノ旨ヲ主務官廳ニ通知シ競賣申立ノ登錄ノ抹消ヲ囑託スヘシ
主務官廳ニ於テ前項ノ囑託ヲ受ケタルトキハ第四十六條第二項ニ依リテ爲シタル登錄ヲ抹消スヘシ
第七十條 裁判所ハ二囘以上競賣期日ヲ開始シタルモ入札ナキトキ、許スヘキ入札ナキトキ又ハ最低競賣價額ニ達スル入札ナキトキハ抵當權者ノ同意アル場合ニ限リ競賣ニ付シタル鐵道財團ヲ箇箇ノモノトシテ競賣ニ付スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ裁判所ハ抵當權者ノ意見ヲ聽キ鐵道財團ニ屬スルモノヲ分割シテ競賣ニ付スルコトヲ得
第七十一條 前條ノ競賣ニ關シテハ第四十八條、第四十九條、第五十二條乃至第六十六條、第六十七條第一項、第三項、第六十八條及第六十九條ノ規定ヲ準用ス
競買人ハ競買ノ申込ト共ニ保證トシテ最低競賣價額百分ノ五ニ相當スル金額ヲ現金又ハ有價證券ヲ以テ供託スヘシ
第七十二條 競落人カ第五十條第一項ニ依リ競賣ニ加入シタル者ナルトキハ發起人トナリテ會社ヲ設立スヘシ
第七十三條 競落人ニ依リテ發起セラレタル會社又ハ競落人タル會社ハ競落ヲ許ス決定カ確定シタル日ヨリ三箇月內ニ本免許ヲ申請スヘシ
第七十四條 競落人ニ依リテ發起セラレタル會社カ本免許ヲ申請スルニハ左ニ揭クル書類ヲ添附スヘシ
一 定款
二 發起人ニ於テ株式ノ總數ヲ引受ケタルトキハ檢査役カ裁判所ニ爲シタル報吿書ノ謄本及裁判所カ檢査役ノ報吿ヲ聽キ爲シタル決定ノ謄本
三 株主ヲ募集シタルトキハ株式申込證ノ謄本、發起人、取締役、監査役又ハ檢査役ヨリ創立總會ニ爲シタル報吿ノ要領及創立總會ノ議事及決議ノ要領
第七十五條 競落人タル會社カ本免許ヲ申請スルニハ定款ノ變更ト同一方法ノ決議ニ依ルヘシ
本免許ノ申請ハ定款變更ノ決議認可ノ申請ト共ニ之ヲ爲スヘシ
第七十六條 主務官廳ハ前三條ノ規定ニ依ル申請アリタルトキハ本免許狀ヲ下付スヘシ
第七十七條 本免許ハ會社カ競落代金ヲ支拂ヒタルトキニ其ノ效力ヲ生ス
本免許カ效力ヲ生シタルトキハ會社ハ原免許ニ屬スル權利及義務ヲ承繼ス
第七十八條 强制管理ニ付テハ第四十三條、第四十五條乃至第四十七條ノ規定ヲ準用ス
第七十九條 强制管理開始ノ決定確定シタルトキハ裁判所ハ其ノ決定ノ謄本ヲ主務官廳ニ送付スヘシ
第八十條 前條決定ノ謄本ノ送付アリタルトキハ主務官廳ハ一人又ハ數人ノ管理人ヲ選任スヘシ但シ强制管理ノ申立人ハ適當ノ人ヲ推薦スルコトヲ得
商事會社ハ管理人タルコトヲ得
第八十一條 主務官廳ハ管理人ヲ監督シ、管理方法ニ付指揮ヲ爲シ且管理人ニ與フヘキ報酬ノ額ヲ定ムヘシ
主務官廳ハ前項ニ揭ケタル事項ニ付債務者、鐵道財團ノ所有者、抵當權者及鑑定人ノ意見ヲ聽クコトヲ得
主務官廳ハ管理人ニ擔保ヲ供スヘキコトヲ命シ又ハ之ヲ解任スルコトヲ得
第八十二條 主務官廳カ管理人ヲ任免シタルトキハ其ノ旨ヲ債務者、鐵道財團ノ所有者、抵當權者及裁判所ニ通知スヘシ
第八十三條 鐵道財團ノ所有者カ管理人選任ノ通知ヲ受ケタルトキハ直ニ鐵道財團ヲ管理人ニ引渡スヘシ
管理人ハ鐵道財團ノ所有者ニ對シ管理ニ必要ナル書類其ノ他ノ引渡ヲ求ムルコトヲ得
鐵道財團ノ所有者カ前二項ノ引渡ヲ爲ササルトキハ裁判所ハ管理人ノ申立ニ因リ執達吏ヲシテ其ノ引渡ヲ爲サシムヘシ
第八十四條 强制管理ノ申立人ハ管理人ノ請求ニ因リ管理ノ費用ヲ立替支辨スヘシ
第八十五條 管理人ハ鐵道財團ノ管理及收益ニ付必要ナル裁判上又ハ裁判外ノ行爲ヲ爲スヘシ
第八十六條 鐵道財團ノ管理ニ付官廳ニ對スル取締役ノ責任ハ管理人之ヲ負フ
第八十七條 管理人ハ每營業年度ノ終ニ於テ鐵道財團ノ收入ヨリ順次ニ管理ノ費用、管理人ノ報酬及租稅其ノ他ノ公課ヲ控除シ其ノ殘額ヲ抵當權者ニ交付スヘシ
第八十八條 管理人ハ每營業年度ノ終ニ於テ計算報吿書ヲ主務官廳ニ差出スヘシ
主務官廳ハ前項計算報吿書ノ謄本ヲ債務者、鐵道財團ノ所有者及抵當權者ニ送付シ且一定ノ期間內ニ異議アラハ之ヲ申出ツヘキ旨ヲ催吿スヘシ
前項ノ期間內ニ異議ヲ申出テサリシ者ハ計算ヲ承認シタルモノト看做ス
異議ヲ申出テタル者アリタルトキハ主務官廳ハ管理人ノ陳述ヲ聽キタル後之ヲ裁定ス此ノ裁定ハ終局トス
第八十九條 管理人ハ前條第二項ノ期間ヲ過キ又ハ前條第四項ノ裁定ヲ經タル後ニ非サレハ抵當權者ニ對シ配當額ノ交付ヲ爲スコトヲ得ス
管理人カ配當額ノ交付ヲ爲シタルトキハ抵當權者ノ名稱及配當額ヲ主務官廳及裁判所ニ通知スヘシ
第九十條 强制管理ノ取消ハ裁判所ノ決定ヲ以テ之ヲ爲ス
强制管理ノ申立ヲ爲シタル抵當權者カ辨濟ヲ受ケタルトキハ裁判所ハ强制管理ノ取消ヲ命スヘシ
强制管理ノ申立人カ管理費用ノ立替支辨ヲ爲ササルトキハ裁判所ハ管理人ノ申立ニ因リ强制管理ノ取消ヲ命スルコトヲ得
第九十一條 前條第二項ノ場合ニ關シテハ第六十八條第二項及第三項ノ規定ヲ準用ス
前項ノ場合ヲ除クノ外强制管理ノ取消ニ關シテハ第六十九條ノ規定ヲ準用ス
第四章 罰則
第九十二條 左ノ場合ニ於テハ取締役又ハ管理人ヲ十圓以上千圓以下ノ過料ニ處ス
一 本法ニ定メタル裁定ヲ遵守セサルトキ
二 第九條ノ規定ニ違反シタルトキ
三 第二十條又ハ第二十一條ノ催吿ヲ爲ササルトキ
四 登錄ニ關シ不正ノ申請ヲ爲シタルトキ又ハ第三十一條ノ登錄ノ申請ヲ爲ササルトキ
五 鐵道財團目錄ニ不正ノ記載ヲ爲シタルトキ、第三十四條ノ屆出ヲ爲ササルトキ又ハ不正ノ屆出ヲ爲シタルトキ
六 管理方法ニ付主務官廳ノ命令ニ違反シタルトキ
七 第八十八條ノ計算報吿書ヲ差出ササルトキ又ハ不正ノ報吿ヲ爲シタルトキ
八 配當額ノ交付ヲ爲ササルトキ又ハ第八十七條若ハ第八十九條第一項ノ規定ニ違反シテ配當額ノ交付ヲ爲シタルトキ
九 第八十九條第二項ノ通知ヲ爲ササルトキ
第九十三條 非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ前條ニ定メタル過料ニ之ヲ準用ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル鉄道抵当法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十八年三月十一日
内閣総理大臣 伯爵 桂太郎
司法大臣 波多野敬直
逓信大臣 大浦兼武
法律第五十三号
鉄道抵当法
第一章 総則
第一条 本法ニ於テ会社ト称スルハ私設鉄道株式会社ヲ謂フ
第二条 会社ハ抵当権ノ目的ト為ス為鉄道ノ全部又ハ一部ニ付鉄道財団ヲ設クルコトヲ得
鉄道財団ニ属スルモノハ同時ニ他ノ鉄道財団ニ属スルコトヲ得ス
鉄道財団ハ之ヲ一箇ノ物ト看做ス
鉄道財団ハ抵当権ノ消滅ニ因リテ消滅ス
第三条 鉄道財団ハ左ニ掲クルモノニシテ鉄道財団ノ所有者ニ属スルモノヲ以テ之ヲ組成ス
一 鉄道線路、其ノ他ノ鉄道用地及其ノ上ニ存スル工作物並之ニ属スル器具機械
二 工場、倉庫、発電所、変圧所、配電所、事務所、舎宅及其ノ敷地並之ニ属スル器具機械
三 鉄道用水ニ関スル工作物及其ノ敷地並之ニ属スル器具機械
四 鉄道用通信、信号又ハ送電ニ要スル工作物及其ノ敷地並之ニ属スル器具機械
五 前四号ニ掲ケタル工作物ヲ所有シ又ハ使用スル為他人ノ不動産ノ上ニ存スル地上権、登記シタル賃借権及前四号ニ掲ケタル土地ノ為ニ存スル地役権
六 車輛及之ニ属スル器具機械
七 保線ニ要スル材料及器具機械
第四条 鉄道財団ハ所有権及抵当権以外ノ物権又ハ差押、仮差押若ハ仮処分ノ目的ト為スコトヲ得ス
鉄道財団ニ属スルモノハ所有権以外ノ物権又ハ差押、仮差押若ハ仮処分ノ目的ト為スコトヲ得ス
鉄道財団ニ属スヘキモノニシテ所有権以外ノ物権又ハ差押、仮差押若ハ仮処分ノ目的タルトキ又ハ鉄道財団ニ属スヘキ不動産ニシテ賃借権ノ目的タルトキハ会社ハ鉄道財団ヲ設クルコトヲ得ス但シ不動産ニ関スル権利ニ付其ノ登記ナキトキハ此ノ限ニ在ラス
第五条 抵当権ノ設定又ハ変更ハ総株金四分ノ一以上ノ払込アリタル後定款変更ト同一方法ノ決議ヲ経主務官庁ノ認可ヲ受クルニ因リテ其ノ効力ヲ生ス
第六条 鉄道財団ヲ抵当ト為ス債務ノ額ハ社債ノ額ト合セテ総株金払込額ヲ超ユルコトヲ得ス但シ旧債償還ノ為ニスル場合ニ於テハ旧債務ノ額ハ之ヲ算入セス
第七条 抵当権設定ノ認可ヲ申請スルニハ抵当証書及鉄道財団目録ヲ差出スヘシ但シ担保附社債ヲ発行スル場合ニ在リテハ信託証書ヲ以テ抵当証書ニ代フ
抵当証書ニハ左ノ事項ヲ記載スヘシ
一 鉄道財団ニ属スル線路ノ表示
二 抵当権者、債務者及鉄道財団ノ所有者ノ名称及住所
三 抵当権ノ順位
四 債権額及償還ノ方法並期限
五 利率及利息支払ノ方法並期限
抵当証書又ハ信託証書ニ記載シタル事項ニ変更ヲ生スヘキ契約ハ主務官庁ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ効力ヲ生セス
第八条 抵当権ノ設定認可ノ申請アリタルトキハ主務官庁ハ直ニ官報ヲ以テ鉄道財団ニ属スヘキモノニ関シ第四条第三項ノ権利ヲ有スル者又ハ差押、仮差押若ハ仮処分ノ債権者ハ一定ノ期間内ニ申出ツヘキ旨ヲ公告スヘシ但シ其ノ期間ハ一箇月ヲ下ルコトヲ得ス
主務官庁ハ抵当権ノ設定認可ノ申請前ニ於テモ会社ノ申請ニ因リ予メ前項ノ公告ヲ為スコトヲ得此ノ場合ニ於テ公告後六箇月内ニ抵当権設定認可ノ申請ナキトキハ公告ハ其ノ効力ヲ失フ
会社カ前項ノ申請ヲ為ストキハ鉄道財団目録ヲ差出スヘシ
第九条 前条第二項ニ依ル公告ヲ為シタルトキ又ハ抵当権ノ設定認可ノ申請ヲ為シタルトキハ鉄道財団ニ属スヘキモノハ之ヲ譲渡スコトヲ得ス
第十条 第八条ノ公告アリタル後ハ同条第二項ニ依ル公告カ効力ヲ失ハサル間、抵当権ノ設定認可ノ申請カ却下セラレサル間及其ノ認可カ効力ヲ失ハサル間ハ鉄道財団ニ属スヘキ不動産ニ関スル権利ニ付競落ヲ許ス決定ヲ為スコトヲ得ス
前項ノ規定ハ動産ニ対スル競売ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十一条 抵当権設定ノ認可アリタルトキハ其ノ鉄道ニ関スルモノニシテ第三条ニ掲ケタルモノハ当然鉄道財団ニ属ス其ノ抵当権設定後新ニ鉄道財団ノ所有者ニ属シタルモノ亦同シ
前項ニ掲ケタルモノニ関シ第四条第三項ノ権利アルトキハ不動産ニ関スルモノノ登記ハ其ノ効力ヲ失ヒ動産ニ関スルモノハ存セサルモノト看做シ差押、仮差押若ハ仮処分ハ其ノ効力ヲ失フ但シ抵当権設定ノ認可カ効力ヲ失ヒタルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ場合ニ於テハ第四条第三項ノ権利ヲ有スル者又ハ差押、仮差押若ハ仮処分ノ債権者ハ鉄道財団ノ所有者ニ対シ損害賠償ノ請求ヲ為スコトヲ得但シ第八条ノ公告アリタルモノニ付期間内ニ申出ヲ為ササル権利者並期間経過後ニ於テ登記ノ申請ヲ為シタル者、動産ニ関シ所有権以外ノ物権ヲ取得シタル者又ハ差押、仮差押若ハ仮処分ヲ為シタル者ハ此ノ限ニ在ラス
第十二条 第八条第二項ニ依ル公告カ効力ヲ失ヒタルトキ、抵当権ノ設定カ認可セラレサルトキ又ハ其ノ認可カ効力ヲ失ヒタルトキハ主務官庁ハ直ニ官報ヲ以テ其ノ旨ヲ公告スヘシ
第十三条 抵当権設定ノ認可アリタル後二箇月内ニ其ノ登録ノ申請ナキトキハ認可ハ其ノ効力ヲ失フ
第十四条 抵当権ハ債権成立以前ニ於テモ其ノ効力ヲ生ス
第十五条 抵当権ノ得喪若ハ変更又ハ鉄道財団ノ所有権ノ移転ハ登録ヲ為スニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス
第十六条 数箇ノ債権ヲ担保スル為同一ノ鉄道財団ニ付抵当権ヲ設定シタルトキハ其ノ抵当権ノ順位ハ登録ノ前後ニ依ル
第十七条 抵当権者ハ鉄道財団ニ付他ノ債権者ニ先チテ自己ノ債権ノ弁済ヲ受クルコトヲ得
第十八条 抵当権者ハ債権ノ全部ノ弁済ヲ受クル迄ハ鉄道財団ノ全部ニ付其ノ権利ヲ行フコトヲ得
第十九条 抵当権ハ鉄道財団又ハ之ニ属スルモノノ譲渡、貸付、滅失又ハ毀損ニ因リテ会社カ受クヘキ金銭其ノ他ノ物ニ対シテモ之ヲ行フコトヲ得但シ抵当権者ハ其ノ払渡又ハ引渡前ニ差押ヲ為スコトヲ要ス
第二十条 会社カ鉄道財団ヲ譲渡シ、貸付シ若ハ抵当ト為シ、鉄道財団ニ関スル営業ノ管理委託ヲ為シ、其ノ線路ヲ変更シ又ハ其ノ線路ノ全部若ハ一部ニ付営業ヲ休止セムトスルトキ又ハ鉄道財団ニ属スルモノヲ処分セムトスルトキハ抵当権者ニ対シ異議アラハ一定ノ期間内ニ之ヲ述フヘキ旨ヲ催告スヘシ但シ其ノ期間ハ二箇月ヲ下ルコトヲ得ス
抵当権者カ前項ノ期間内ニ異議ヲ述ヘタルトキハ会社ハ主務官庁ノ裁定ヲ求ムヘシ此ノ裁定ハ終局トス
抵当権者カ外国ニ住所ヲ有スル場合ニ於テハ第一項ノ期間ハ四箇月ヲ下ルコトヲ得ス
本条ノ規定ハ抵当権者カ予メ同意ヲ与ヘタル場合ニハ之ヲ適用セス
第二十一条 会社カ鉄道財団ニ関スル工事方法ノ変更ニ付認可ヲ申請シタル場合ニ於テ其ノ変更カ鉄道財団ノ価額ヲ著シク減スヘキ虞アリト認ムルトキハ主務官庁ハ会社ヲシテ抵当権者ニ対シ異議アラハ之ヲ述フヘキ旨ヲ催告セシムヘシ
前条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十二条 免許ノ失効又ハ取消ノ場合ニ於テハ抵当権者ハ其ノ権利ヲ実行スルコトヲ得
前項ニ依リ抵当権ヲ実行セムトスルトキハ抵当権者ハ免許ノ失効又ハ取消ノ日ヨリ六箇月内ニ其ノ手続ヲ為スヘシ
免許ハ前項ノ期間及抵当権実行ノ終了ニ至ル迄仍存続スルモノト看做ス
第二十三条 債権者カ同一ノ債権ノ担保トシテ数箇ノ鉄道財団ノ上ニ抵当権ヲ有スル場合ニ於テ同時ニ其ノ代価ヲ配当スヘキトキハ其ノ各鉄道財団ノ価額ニ準シテ其ノ債権ノ負担ヲ分ツ
或鉄道財団ノ代価ノミヲ配当スヘキトキハ抵当権者ハ其ノ代価ニ付債権ノ全部ノ弁済ヲ受クルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ次ノ順位ニ在ル抵当権者ハ前項ノ規定ニ従ヒ右ノ抵当権者カ他ノ鉄道財団ニ付弁済ヲ受クヘキ金額ニ満ツル迄之ニ代位シテ抵当権ヲ行フコトヲ得
第二十四条 前条ノ規定ニ従ヒ代位ニ因リテ抵当権ヲ行フ者ハ其ノ抵当権ノ登録ニ其ノ代位ヲ附記スルコトヲ得
第二十五条 抵当権者ハ鉄道財団ノ代価ヲ以テ弁済ヲ受ケサル債権ノ部分ニ付テノミ他ノ財産ヲ以テ弁済ヲ受クルコトヲ得
前項ノ規定ハ鉄道財団ノ代価ニ先チテ他ノ財産ノ代価ヲ配当スヘキ場合ニハ之ヲ適用セス但シ他ノ債権者ハ抵当権者ヲシテ前項ノ規定ニ従ヒ弁済ヲ受ケシムルカ為之ニ配当スヘキ金額ノ供託ヲ請求スルコトヲ得
第二十六条 政府カ鉄道及附属物件ヲ買上ケタル場合ニ於テ抵当権設定後二十箇年又ハ据置年限ヲ経過シタルトキハ抵当附債務ヲ弁済スルコトヲ得但シ少クトモ一箇年前ニ予告スヘシ
第二章 登録
第二十七条 鉄道財団ニ関スル登録ヲ為ス為主務官庁ニ鉄道抵当原簿ヲ備フ
鉄道抵当原簿ハ一箇ノ鉄道財団ニ付一用紙ヲ設ク
第二十八条 登録ハ本法ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外当事者ノ申請ニ因リテ之ヲ為ス
第二十九条 抵当権設定ノ登録申請書ニハ左ノ書面ヲ添附スヘシ
一 抵当権ノ設定ニ関スル証書
二 鉄道財団目録
当事者ハ抵当権設定認可ノ申請書ニ添附シタル鉄道財団目録ヲ前項第二号ノ書面トシテ引用スルコトヲ得
第一項第二号ノ書面ハ第二以下ノ順位ノ抵当権設定ノ登録申請書ニハ之ヲ添附スルコトヲ要セス
第三十条 抵当権設定ノ登録ハ鉄道抵当原簿ニ左ノ事項ヲ記載スルニ依リテ之ヲ為ス
一 第七条第二項第一号乃至第五号ニ掲ケタル事項
二 免許ニ附シタル条件
三 抵当権ヲ設定シタルコト
四 抵当権設定認可ノ年月日
五 登録ノ年月日
第七条第二項第一号及前項第二号ニ掲ケタル事項ハ第二以下ノ順位ノ抵当権ニ付テハ之ヲ登録スルコトヲ要セス
第三十一条 登録シタル事項ニ変更ヲ生シ又ハ其ノ事項消滅シタルトキハ当事者ハ遅滞ナク変更又ハ消滅ノ登録ヲ申請スヘシ
前項ノ申請書ニハ変更又ハ消滅ノ事由ヲ記載シ之ヲ証スル書面ヲ添附スヘシ
変更又ハ消滅カ主務官庁ノ命令又ハ認可ニ因リテ生シタル場合ニ於テハ前項ノ証明書ハ之ヲ添附スルコトヲ要セス
第三十二条 同一ノ債権ノ担保トシテ数箇ノ鉄道財団ノ上ニ抵当権ヲ設定シタル場合ニ於テハ其ノ各鉄道財団ノ用紙ニ他ノ鉄道財団ヲ表示シ之ト共ニ抵当権ノ目的タル旨ヲ記載スヘシ
他ノ鉄道財団ニ関スル変更又ハ消滅ノ登録カ前項ノ記載ヲ変更スルコトヲ要スルニ至リタルトキハ其ノ記載ニ変更ヲ附記シ他ノ鉄道財団ニ関スル消滅ノ登録カ前項ノ記載ヲ要セサルニ至リタルトキハ其ノ記載ヲ抹消スヘシ
第三十三条 鉄道抵当原簿ニ抵当権ノ設定ヲ登録シタルトキハ鉄道財団目録ニ為シタル記載ハ登録ト同一ノ効力ヲ生ス
第三十四条 鉄道財団目録ニ記載シタル事項ニ変更ヲ生シ又ハ其ノ事項消滅シタルトキハ会社ハ遅滞ナク其ノ旨ヲ届出ヘシ
前項ノ届書ハ鉄道財団目録ニ編綴スルニ依リテ前条ノ効力ヲ生ス
第三十五条 一用紙ノ抵当権ノ登録カ全部抹消セラレタルトキハ主務官庁ハ其ノ用紙ヲ閉鎖スヘシ
第三十六条 左ノ場合ニ於テハ主務官庁ハ直ニ其ノ旨ヲ管轄登記所ニ通知スヘシ但シ第二号ノ場合ニ於テハ新ナル管轄登記所ニノミ通知スヘシ
一 第一順位ノ抵当権ノ設定ヲ登録シタルトキ
二 不動産ニ関スル権利カ新ニ鉄道財団ニ属シタルトキ
三 鉄道財団ノ用紙ヲ閉鎖シタルトキ
前項第一号又ハ第三号ノ場合ニ於テハ主務官庁ハ直ニ官報ヲ以テ其ノ旨ヲ公告スヘシ
第三十七条 登記官吏カ前条第一号又ハ第二号ノ通知ヲ受ケタルトキハ第三号ノ通知ヲ受クル迄ハ鉄道財団ノ所有者ニ属スルモノニ付所有権以外ノ物権、賃借権又ハ差押、仮差押若ハ仮処分ノ登記ヲ為スコトヲ得ス但シ所有権以外ノ物権、賃借権又ハ差押、仮差押若ハ仮処分ノ目的タルモノカ主務官庁ノ証明書ニ依リ鉄道財団ニ属セサルコト明白ナルトキハ此ノ限ニ在ラス
第三十八条 何人ト雖鉄道抵当原簿及鉄道財団目録ノ閲覧ヲ請求シ又ハ手数料ヲ納付シテ鉄道抵当原簿ノ謄本若ハ抄本ノ交付ヲ請求スルコトヲ得
手数料ノ外郵送料ヲ納付シテ鉄道抵当原簿ノ謄本又ハ抄本ノ送付ヲ請求スルコトヲ得
第三十九条 鉄道抵当原簿ノ調製、鉄道財団目録ノ様式其ノ他登録ニ関スル細則ハ主務大臣之ヲ定ム
第三章 強制競売及強制管理
第四十条 鉄道財団ニ対スル抵当権ノ強制執行ハ強制競売又ハ強制管理ニ依リテ之ヲ為ス
抵当権者ハ自己ノ選択ニ依リ前項ニ掲ケタル一箇ノ方法ヲ以テ又ハ二箇ノ方法ヲ併セテ強制執行ヲ為スコトヲ得
第四十一条 抵当証書又ハ信託証書及之ニ記載シタル事項ヲ変更スル契約証書ハ強制執行ニ関シテハ公証人ノ作成シタル債務名義ト看做ス但シ其ノ執行力アル正本ハ主務官庁ノ官吏之ヲ付与ス
第四十二条 強制執行ハ鉄道財団ノ所有者タル会社ノ本店所在地ヲ管轄スル区裁判所ノ管轄ニ専属ス
第四十三条 強制競売ノ申立ハ書面ヲ以テ之ヲ為スヘシ
申立書ニハ左ノ事項ヲ記載シ申立人又ハ其ノ代理人之ニ署名捺印スヘシ
一 債務者タル会社及鉄道財団ノ所有者タル会社ノ商号及其ノ本店ノ所在地
二 競売ニ付スヘキ鉄道財団ノ表示
三 競売ノ原因タル事由
四 年月日
五 裁判所
申立書ニハ執行力アル正本ノ外鉄道抵当原簿ノ謄本ヲ添附スヘシ但シ強制管理ノ開始アリタル場合ニ於テハ鉄道抵当原簿ノ謄本ヲ添附スルコトヲ要セス
第四十四条 強制競売ノ申立ハ競落期日迄ハ競買人ノ同意アル場合ニ限リ之ヲ取下クルコトヲ得
第四十五条 競売手続ノ開始ハ決定ヲ以テ之ヲ為ス
開始決定ニハ申立人ノ名称、住所及第四十三条第二項第一号乃至第四号ニ掲ケタル事項ヲ記載シ決定ヲ為シタル判事之ニ署名捺印スヘシ
第四十六条 裁判所カ競売手続開始ノ決定ヲ為シタルトキハ直ニ鉄道抵当原簿ニ競売申立ノ登録ヲ為スヘキ旨ヲ主務官庁ニ嘱託スヘシ
主務官庁ニ於テ前項ノ嘱託ヲ受ケタルトキハ直ニ登録ヲ為シ其ノ旨ヲ裁判所ニ通知スヘシ
第四十七条 裁判所カ競売手続開始ノ決定ヲ為シタルトキハ官報ヲ以テ租税其ノ他ノ公課ヲ主管スル官庁及公署ニ対シ一定ノ期間内ニ鉄道財団ノ所有者ニ対スル権利ノ有無及其ノ限度ヲ申出ツヘキ旨ヲ公告スヘシ
第四十八条 裁判所ハ主務官庁ノ意見ヲ聴キ鑑定人ヲ選定シ競売ニ付スヘキ鉄道財団ヲ評価セシメ其ノ評価額ヲ以テ最低競売価額ト為スヘシ
第四十九条 裁判所ハ競売期日ヲ定メ官報ヲ以テ之ヲ公告スヘシ
前項ノ公告ニハ左ノ事項ヲ記載スヘシ
一 競売ニ付スヘキ鉄道財団ノ表示
二 競売期日ノ場所、日時及入札締切ノ時
三 最低競売価額
四 競落期日ノ場所及日時
五 執行記録ヲ閲覧シ得ヘキ場所
第五十条 鉄道事業ヲ営厶者ニ非スシテ競売ニ加入スルニハ競売ニ付セラレタル鉄道ノ営業ヲ目的トシ会社ヲ発起セムトスル者七人以上合同スルコトヲ要ス
前項ニ依リ競売ニ加入スル者ハ競売ノ申込ニ関シテハ連帯シテ其ノ責ニ任ス
第五十一条 前条第一項ニ依リ競売ニ加入スル者ハ競売ノ申込ト共ニ保証トシテ最低競売価額百分ノ五ニ相当スル金額ヲ現金又ハ有価証券ヲ以テ供託スヘシ
前項ノ規定ハ競買人ニシテ抵当権者カ之ニ加ハルモノニ付テハ其ノ債権額カ最低競売価額ノ百分ノ五以上ニ相当スル場合ニ限リ之ヲ適用セス
第五十二条 競売ハ入札ノ方法ヲ以テ之ヲ行フ
第五十三条 裁判所ハ競買人ノ面前ニ於テ入札ヲ開封スヘシ
競落ト為ルヘキ同価額ノ入札二箇以上アルトキハ裁判所ハ同価額ノ競買人ヲシテ直ニ再度ノ入札ヲ為サシムヘシ
再度ノ入札ヲ為スモ仍同価額ノ入札アルトキハ裁判所ハ直ニ抽籤ヲ以テ最高価競買人ヲ定ムヘシ
第五十四条 競売ニ加入スルコトヲ得サル者ノ為シタル入札ハ無効トス
第五十五条 競売期日ニ於テ入札ナキトキ、許スヘキ入札ナキトキ又ハ最低競売価額ニ達スル入札ナキトキハ裁判所ハ職権ヲ以テ更ニ競売期日ヲ定ムヘシ
前項ノ場合ニ於テ裁判所ハ鑑定人ノ意見ヲ聴キ最低競売価額ヲ低減スルコトヲ得
第五十六条 入札ハ之ヲ変更シ又ハ取消スコトヲ得ス
入札ハ其ノ入札ヲ為シタル競買人以外ノ者ニ競落ヲ許ス決定カ確定シタルトキ、競落ヲ許ササル決定カ確定シタルトキ又ハ競落ヲ為サスシテ競売手続ヲ終了シタルトキハ其ノ効力ヲ失フ
第五十七条 裁判所ハ最高価競買人ノ名称及其ノ競買価額ヲ表示シ競売ノ終局ヲ告知スヘシ
第五十八条 裁判所ハ競売ニ関スル調書ヲ作成シ左ノ事項ヲ記載スヘシ
一 競売ニ付セラレタル鉄道財団ノ表示
二 競売申立人ノ表示
三 入札及開札ノ日時
四 総テノ競買価額及競買人ノ名称、住所又ハ入札ナキコト、許スヘキ入札ナキコト若ハ最低競売価額ニ達スル入札ナキコト並第五十三条第二項又ハ第三項ノ手続ヲ為シタルコト
五 競売ノ終局ヲ告知シタル日時並最高価競買人ノ名称及其ノ競買価額
第五十九条 裁判所ハ競落期日ニ出頭シタル債務者、鉄道財団ノ所有者、抵当権者及競買人ニ競落ノ許可ニ付陳述ヲ為サシムヘシ
第六十条 強制競売申立ノ取下若ハ強制執行ノ取消アリタル場合又ハ第四十八条乃至第五十四条若ハ第五十七条ノ規定ニ違反シテ競売ヲ為シタル場合ニ限リ債務者、鉄道財団ノ所有者、抵当権者又ハ競買人ハ競落ノ許可ニ付異議ノ申立ヲ為スコトヲ得
第六十一条 裁判所ハ異議ノ申立ヲ正当トスル場合ニ於テ更ニ競売ヲ許スヘキトキハ職権ヲ以テ競売期日ヲ定ムヘシ
前項ニ依リ競売期日ヲ定ムル場合ノ外競落ノ許否ハ決定ヲ以テ之ヲ言渡スヘシ
第六十二条 競落ノ許可ニ付異議ノ申立ヲ為シタル者ハ第六十条ニ掲ケタル理由アル場合ニ限リ競落ヲ許ス決定ニ対シ即時抗告ヲ為スコトヲ得
競落期日ニ出頭シ競落ノ許可ニ付異議ノ申立ヲ為ササル者ハ競落ヲ許ササル理由ナキ場合ニ限リ競落ヲ許ササル決定ニ対シ即時抗告ヲ為スコトヲ得
抗告ハ執行停止ノ効力ヲ有ス
第六十三条 裁判所ハ競落ニ関スル調書ヲ作成スヘシ
第六十四条 競落ヲ許ス決定カ確定シタルトキハ裁判所ハ其ノ決定ノ謄本ヲ主務官庁ニ送付スヘシ
第六十五条 競落代金ハ競落ヲ許ス決定カ確定シタル日又ハ本免許ヲ受クルコトヲ要スル者ニ在リテハ本免許ヲ受ケタル日ヨリ一週間以内ニ之ヲ裁判所ニ支払フヘシ但シ債権者カ競落人タル場合ニ於テハ自己カ競落代金中ヨリ受取ルヘキ金額ヲ控除シ其ノ残額ノミヲ支払フヲ以テ足ル
第六十六条 競落代金ノ支払アリタルトキハ競売ニ付セラレタル鉄道財団ニ関スル権利ハ競落人ニ、競落人カ第五十条第一項ニ依リ競売ニ加入シタル者ナルトキ其ノ競落人ニ依リテ発起セラレタル会社ニ移転ス
抵当権ハ前項ニ依リ鉄道財団ニ関スル権利カ移転シタルトキニ消滅ス
第六十七条 本免許状ノ下付ナキトキ、第七十三条ノ期間内ニ本免許ノ申請ナキトキ又ハ第六十五条ノ期間内ニ競落代金ノ支払ナキトキハ裁判所ハ職権ヲ以テ競落ヲ許ス決定ヲ取消シ更ニ競売期日ヲ定ムヘシ
前項ニ依リ競落ヲ許ス決定カ取消サレタルトキハ本免許ハ取消サレタルモノトス
競落人ハ新競売ニ加入スルコトヲ得ス且新競売ニ於ケル競落代金カ最初ノ競落代金ヨリ少ナキトキハ其ノ不足額及手続ノ費用ヲ賠償スヘシ
第六十八条 裁判所ハ競落代金ノ中ヨリ順次ニ競売ノ費用及租税其ノ他ノ公課ヲ控除シ其ノ残額ハ抵当権ノ順位ニ従ヒ之ヲ抵当権者ニ配当シ仍残余アルトキハ之ヲ鉄道財団ノ所有者ニ交付スヘシ
前項ノ場合ニ於テハ裁判所ハ其ノ旨ヲ主務官庁ニ通知シ競売申立ノ登録ノ抹消ヲ嘱託スヘシ
主務官庁ニ於テ前項ノ嘱託ヲ受ケタルトキハ左ノ手続ヲ為スヘシ
一 第四十六条第二項ニ依リテ為シタル登録及抵当権ノ登録ヲ抹消スルコト
二 競落ヲ許ス決定アリタルコトヲ管轄登記所ニ通知シ競落人又ハ競落人ニ依リテ発起セラレタル会社カ取得シタル不動産ニ関スル権利ノ登記並第十一条第二項ニ依リ効力ヲ失ヒタル登記ノ抹消ヲ嘱託スルコト
第六十九条 競落ヲ為サスシテ競売手続ヲ終了シタルトキハ裁判所ハ其ノ旨ヲ主務官庁ニ通知シ競売申立ノ登録ノ抹消ヲ嘱託スヘシ
主務官庁ニ於テ前項ノ嘱託ヲ受ケタルトキハ第四十六条第二項ニ依リテ為シタル登録ヲ抹消スヘシ
第七十条 裁判所ハ二回以上競売期日ヲ開始シタルモ入札ナキトキ、許スヘキ入札ナキトキ又ハ最低競売価額ニ達スル入札ナキトキハ抵当権者ノ同意アル場合ニ限リ競売ニ付シタル鉄道財団ヲ箇箇ノモノトシテ競売ニ付スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ裁判所ハ抵当権者ノ意見ヲ聴キ鉄道財団ニ属スルモノヲ分割シテ競売ニ付スルコトヲ得
第七十一条 前条ノ競売ニ関シテハ第四十八条、第四十九条、第五十二条乃至第六十六条、第六十七条第一項、第三項、第六十八条及第六十九条ノ規定ヲ準用ス
競買人ハ競買ノ申込ト共ニ保証トシテ最低競売価額百分ノ五ニ相当スル金額ヲ現金又ハ有価証券ヲ以テ供託スヘシ
第七十二条 競落人カ第五十条第一項ニ依リ競売ニ加入シタル者ナルトキハ発起人トナリテ会社ヲ設立スヘシ
第七十三条 競落人ニ依リテ発起セラレタル会社又ハ競落人タル会社ハ競落ヲ許ス決定カ確定シタル日ヨリ三箇月内ニ本免許ヲ申請スヘシ
第七十四条 競落人ニ依リテ発起セラレタル会社カ本免許ヲ申請スルニハ左ニ掲クル書類ヲ添附スヘシ
一 定款
二 発起人ニ於テ株式ノ総数ヲ引受ケタルトキハ検査役カ裁判所ニ為シタル報告書ノ謄本及裁判所カ検査役ノ報告ヲ聴キ為シタル決定ノ謄本
三 株主ヲ募集シタルトキハ株式申込証ノ謄本、発起人、取締役、監査役又ハ検査役ヨリ創立総会ニ為シタル報告ノ要領及創立総会ノ議事及決議ノ要領
第七十五条 競落人タル会社カ本免許ヲ申請スルニハ定款ノ変更ト同一方法ノ決議ニ依ルヘシ
本免許ノ申請ハ定款変更ノ決議認可ノ申請ト共ニ之ヲ為スヘシ
第七十六条 主務官庁ハ前三条ノ規定ニ依ル申請アリタルトキハ本免許状ヲ下付スヘシ
第七十七条 本免許ハ会社カ競落代金ヲ支払ヒタルトキニ其ノ効力ヲ生ス
本免許カ効力ヲ生シタルトキハ会社ハ原免許ニ属スル権利及義務ヲ承継ス
第七十八条 強制管理ニ付テハ第四十三条、第四十五条乃至第四十七条ノ規定ヲ準用ス
第七十九条 強制管理開始ノ決定確定シタルトキハ裁判所ハ其ノ決定ノ謄本ヲ主務官庁ニ送付スヘシ
第八十条 前条決定ノ謄本ノ送付アリタルトキハ主務官庁ハ一人又ハ数人ノ管理人ヲ選任スヘシ但シ強制管理ノ申立人ハ適当ノ人ヲ推薦スルコトヲ得
商事会社ハ管理人タルコトヲ得
第八十一条 主務官庁ハ管理人ヲ監督シ、管理方法ニ付指揮ヲ為シ且管理人ニ与フヘキ報酬ノ額ヲ定ムヘシ
主務官庁ハ前項ニ掲ケタル事項ニ付債務者、鉄道財団ノ所有者、抵当権者及鑑定人ノ意見ヲ聴クコトヲ得
主務官庁ハ管理人ニ担保ヲ供スヘキコトヲ命シ又ハ之ヲ解任スルコトヲ得
第八十二条 主務官庁カ管理人ヲ任免シタルトキハ其ノ旨ヲ債務者、鉄道財団ノ所有者、抵当権者及裁判所ニ通知スヘシ
第八十三条 鉄道財団ノ所有者カ管理人選任ノ通知ヲ受ケタルトキハ直ニ鉄道財団ヲ管理人ニ引渡スヘシ
管理人ハ鉄道財団ノ所有者ニ対シ管理ニ必要ナル書類其ノ他ノ引渡ヲ求ムルコトヲ得
鉄道財団ノ所有者カ前二項ノ引渡ヲ為ササルトキハ裁判所ハ管理人ノ申立ニ因リ執達吏ヲシテ其ノ引渡ヲ為サシムヘシ
第八十四条 強制管理ノ申立人ハ管理人ノ請求ニ因リ管理ノ費用ヲ立替支弁スヘシ
第八十五条 管理人ハ鉄道財団ノ管理及収益ニ付必要ナル裁判上又ハ裁判外ノ行為ヲ為スヘシ
第八十六条 鉄道財団ノ管理ニ付官庁ニ対スル取締役ノ責任ハ管理人之ヲ負フ
第八十七条 管理人ハ毎営業年度ノ終ニ於テ鉄道財団ノ収入ヨリ順次ニ管理ノ費用、管理人ノ報酬及租税其ノ他ノ公課ヲ控除シ其ノ残額ヲ抵当権者ニ交付スヘシ
第八十八条 管理人ハ毎営業年度ノ終ニ於テ計算報告書ヲ主務官庁ニ差出スヘシ
主務官庁ハ前項計算報告書ノ謄本ヲ債務者、鉄道財団ノ所有者及抵当権者ニ送付シ且一定ノ期間内ニ異議アラハ之ヲ申出ツヘキ旨ヲ催告スヘシ
前項ノ期間内ニ異議ヲ申出テサリシ者ハ計算ヲ承認シタルモノト看做ス
異議ヲ申出テタル者アリタルトキハ主務官庁ハ管理人ノ陳述ヲ聴キタル後之ヲ裁定ス此ノ裁定ハ終局トス
第八十九条 管理人ハ前条第二項ノ期間ヲ過キ又ハ前条第四項ノ裁定ヲ経タル後ニ非サレハ抵当権者ニ対シ配当額ノ交付ヲ為スコトヲ得ス
管理人カ配当額ノ交付ヲ為シタルトキハ抵当権者ノ名称及配当額ヲ主務官庁及裁判所ニ通知スヘシ
第九十条 強制管理ノ取消ハ裁判所ノ決定ヲ以テ之ヲ為ス
強制管理ノ申立ヲ為シタル抵当権者カ弁済ヲ受ケタルトキハ裁判所ハ強制管理ノ取消ヲ命スヘシ
強制管理ノ申立人カ管理費用ノ立替支弁ヲ為ササルトキハ裁判所ハ管理人ノ申立ニ因リ強制管理ノ取消ヲ命スルコトヲ得
第九十一条 前条第二項ノ場合ニ関シテハ第六十八条第二項及第三項ノ規定ヲ準用ス
前項ノ場合ヲ除クノ外強制管理ノ取消ニ関シテハ第六十九条ノ規定ヲ準用ス
第四章 罰則
第九十二条 左ノ場合ニ於テハ取締役又ハ管理人ヲ十円以上千円以下ノ過料ニ処ス
一 本法ニ定メタル裁定ヲ遵守セサルトキ
二 第九条ノ規定ニ違反シタルトキ
三 第二十条又ハ第二十一条ノ催告ヲ為ササルトキ
四 登録ニ関シ不正ノ申請ヲ為シタルトキ又ハ第三十一条ノ登録ノ申請ヲ為ササルトキ
五 鉄道財団目録ニ不正ノ記載ヲ為シタルトキ、第三十四条ノ届出ヲ為ササルトキ又ハ不正ノ届出ヲ為シタルトキ
六 管理方法ニ付主務官庁ノ命令ニ違反シタルトキ
七 第八十八条ノ計算報告書ヲ差出ササルトキ又ハ不正ノ報告ヲ為シタルトキ
八 配当額ノ交付ヲ為ササルトキ又ハ第八十七条若ハ第八十九条第一項ノ規定ニ違反シテ配当額ノ交付ヲ為シタルトキ
九 第八十九条第二項ノ通知ヲ為ササルトキ
第九十三条 非訟事件手続法第二百六条乃至第二百八条ノ規定ハ前条ニ定メタル過料ニ之ヲ準用ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム