朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル抵當證券法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和六年三月二十八日
內閣總理大臣 濱口雄幸
司法大臣 子爵 渡邊千冬
大藏大臣 井上準之助
內務大臣 安達謙藏
農林大臣 町田忠治
法律第十五號
抵當證券法
第一條 土地、建物又ハ地上權ヲ目的トスル抵當權ヲ有スル者ハ其ノ登記ヲ管轄スル登記所ニ抵當證券ノ交付ヲ申請スルコトヲ得
抵當權ノ目的物ガ數個ノ登記所ノ管轄地ニ散在スルトキハ抵當證券ノ交付ハ其ノ一ノ登記所ニ之ヲ申請スルコトヲ要ス
抵當證券交付ノ申請ハ申請人(代理人ニ依リテ申請スルトキハ其ノ代理人)登記所ニ出頭シテ之ヲ爲スコトヲ要ス
第二條 左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ抵當證券ヲ發行スルコトヲ得ズ
一 抵當權ガ根抵當ナルトキ
二 抵當權ニ付本登記ナキトキ
三 債權ノ差押若ハ假差押ノ登記又ハ抵當權ノ處分禁止若ハ抵當權ヲ他ノ債權ノ擔保ト爲シタル旨ノ登記アルトキ
四 債權又ハ抵當權ニ附シタル解除條件ノ登記アルトキ
五 抵當證券發行ノ特約ナキトキ
第三條 抵當證券ノ交付ヲ申請スルニハ左ノ書面ヲ提出スルコトヲ要ス
一 申請書
二 抵當權者ノ權利ニ關スル登記濟證
三 手形其ノ他ノ債權ニ關スル證書
四 抵當證券發行ノ特約ノ登記ナキトキハ抵當權設定者又ハ第三取得者及債務者ノ同意書
五 代理人ニ依リテ申請スルトキハ其ノ權限ヲ證スル書面
前項第三號ノ證書ナキトキハ申請書ニ其ノ旨ヲ記載スルコトヲ要ス
第一條第二項ノ申請ヲ爲スニハ申請書ニ其ノ旨ヲ記載シ且他ノ登記所ノ管轄ニ屬スル目的物ノ登記簿ノ謄本竝ニ其ノ登記所ノ數ニ應ジ申請書ノ副本及附屬書面ノ寫本ヲ提出スルコトヲ要ス
抵當證券ノ交付ヲ申請スルニハ命令ノ定ムル所ニ依リ手數料ヲ納付スルコトヲ要ス
第四條 申請書ニハ左ノ事項ヲ記載シ申請人之ニ記名捺印スルコトヲ要ス
一 申請人ノ氏名及住所
二 代理人ニ依リテ申請スルトキハ其ノ氏名及住所
三 抵當權ノ目的タル土地、建物又ハ地上權ノ表示
四 抵當權設定者及第三取得者ノ氏名及住所
五 抵當權ノ順位及登記ノ年月日
六 不動產登記法第百十七條ニ揭グル事項
七 債務者ノ氏名及住所
八 抵當權、質權又ハ先取特權ノ登記アルトキハ債權額、債權者ノ氏名及住所竝ニ登記ノ年月日
九 地上權、永小作權、地役權又ハ賃借權ノ登記アルトキハ其ノ權利者ノ氏名及住所竝ニ登記ノ年月日
十 登記所ノ表示
十一 申請ノ年月日
第五條 登記官吏ハ抵當證券交付ノ申請ガ左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ理由ヲ附シタル決定ヲ以テ之ヲ却下スルコトヲ要ス但シ申請ノ欠缺ガ補正スルコトヲ得ベキモノナル場合ニ於テ申請人ガ卽日之ヲ補正シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
一 其ノ登記所ノ管轄ニ屬セザルトキ
二 第二條ニ規定スル事由アルトキ
三 申請書ニ記載シタル事項ガ登記簿ト符合セザルトキ
四 申請人ガ出頭セザルトキ
五 申請書ガ方式ニ適合セザルトキ
六 必要ナル書面ヲ提出セザルトキ
七 手數料ヲ納付セザルトキ
第一條第二項ノ申請アリタル場合ニ於テハ登記官吏ハ申請書ノ副本及附屬書面ノ寫本ヲ各管轄登記所ニ送付シ其ノ管轄ニ屬スル目的物ニ付抵當證券ヲ作成スベキ旨ヲ囑託スルコトヲ要ス
第六條 抵當證券交付ノ申請ヲ受理シタルトキハ登記官吏(前條第二項ノ規定ニ依ル囑託アリタルトキハ其ノ部分ニ付テハ囑託ヲ受ケタル登記所ノ登記官吏)ハ遲滯ナク抵當證券ノ交付ニ付異議アラバ一定ノ期間內ニ之ヲ申立ツベキ旨ヲ抵當權設定者、第三取得者、債務者、抵當權又ハ其ノ順位ノ讓渡人及先順位ヲ抛棄シタル者ニ催吿スルコトヲ要ス但シ抵當證券ノ發行ヲ妨グル事由アルコトヲ發見シタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
囑託ヲ受ケタル登記所ノ登記官吏ガ抵當證券ノ發行ヲ妨グル事由アルコトヲ發見シタルトキハ其ノ旨ヲ囑託ヲ爲シタル登記所ニ通知スルコトヲ要ス
第一項ノ催吿ニハ第四條第一號及第三號乃至第七號ニ揭グル事項ヲ記載スルコトヲ要ス
債務者ニ對スル催吿ニハ前項ノ事項ノ外第三條第一項第三號ノ證書ガ手形ナルトキハ其ノ表示及同條第二項ノ規定ニ依ル記載ヲモ記載スルコトヲ要ス
第七條 抵當證券ノ交付ニ關スル異議ハ左ノ理由ニ基クトキニ限リ之ヲ申立ツルコトヲ得
一 申請ニ付第二條ニ規定スル事由アルコト
二 債權ノ質入、差押又ハ假差押アリタルコト
三 催吿ニ記載シタル事項ガ登記簿ノ記載又ハ事實ト符合セザルコト
四 債務者ガ抵當權者ニ對シ相殺ヲ以テ對抗シ得ベキ債權ニシテ其ノ辨濟期ガ抵當權者ノ債權ノ辨濟期以前ニ到來スルモノヲ有スルコト
異議ハ他ノ利害關係人ノ權利ニ關スル理由ニ基キ之ヲ申立ツルコトヲ得ズ
異議申立ノ權利ハ豫メ之ヲ抛棄スルコトヲ得ズ
第八條 異議ニ關スル裁判ハ抵當證券交付ノ申請ヲ受理シタル登記所ノ所在地ヲ管轄スル區裁判所ニ於テ非訟事件手續法ニ依リ之ヲ爲ス
前項ノ裁判ニ對シテハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得抗吿ハ執行停止ノ效力ヲ有ス
異議ノ申立ヲ受理シタルトキハ登記官吏ハ事件ヲ管轄裁判所ニ送付スルコトヲ要ス
第九條 異議ニ關スル裁判確定シタルトキハ裁判所ハ遲滯ナク其ノ旨ヲ關係登記所ニ通知スルコトヲ要ス
第十條 第六條ノ催吿ヲ受ケタル者ハ異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得ル事由ニ付テハ其ノ申立ヲ爲シタルモノニ非ザレバ之ヲ以テ抵當證券ノ善意ノ取得者ニ對抗スルコトヲ得ズ
異議ノ申立ヲ理由ナシトスル裁判確定シタル場合ニ於テハ其ノ申立ヲ爲シタル者ハ二月內ニ訴ヲ提起スルニ非ザレバ申立ヲ爲シタル事由ヲ以テ抵當證券ノ善意ノ取得者ニ對抗スルコトヲ得ズ
前項ノ訴ノ提起アリタルトキハ裁判所ハ之ヲ公吿スルコトヲ要ス
第十一條 第六條ノ催吿ニ指定シタル期間內ニ異議ノ申立ナキトキハ登記官吏ハ抵當權ノ目的物ガ其ノ登記所ノ管轄地ノミニ在ル場合ニハ直ニ、抵當權ノ目的物ガ數個ノ登記所ノ管轄地ニ散在スル場合ニハ囑託ヲ受ケタル登記所ヨリ抵當證券ノ送付ヲ受ケタル後直ニ抵當證券ヲ交付スルコトヲ要ス異議ヲ理由ナシトスル裁判確定シタルトキ亦同ジ
第十二條 抵當證券ニハ左ニ揭グル事項ヲ記載シ登記官吏記名捺印シ且登記所ノ印ヲ押捺スルコトヲ要ス
一 證券ノ番號
二 第四條第一號及第三號乃至第九號ニ揭グル事項
三 登記所ノ表示
四 證券作成ノ年月日
囑託ヲ受ケタル登記所ヨリ抵當證券ノ送付ヲ受ケタルトキハ登記官吏ハ其ノ作成ニ係ルモノト一括シ之ニ各證券ハ同一ノ債權ノ爲ニ作成シタルモノナル旨ヲ記載シ且記名捺印スルコトヲ要ス
第十三條 第三條第一項第二號及第三號ノ書面ノ提出アリタル場合ニ於テ抵當證券ヲ交付シタルトキハ登記官吏ハ抵當證券ヲ交付シタル旨ヲ其ノ書面ニ記載シ登記所ノ印ヲ押捺シテ之ヲ申請人ニ還付スルコトヲ要ス其ノ書面中ニ手形アルトキハ其ノ手形ハ爾後效力ヲ有セズ
第十四條 抵當證券ノ發行アリタルトキハ抵當權及債權ノ處分ハ抵當證券ヲ以テスルニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得ズ
抵當權ト債權トハ分離シテ之ヲ處分スルコトヲ得ズ
第十五條 抵當證券ノ讓渡ハ裏書ニ依リテ之ヲ爲ス
商法第四百五十七條第一項ノ規定ハ前項ノ裏書ニ之ヲ準用ス尙其ノ裏書ニハ裏書人ノ住所ヲ記載スルコトヲ要ス
第十六條 抵當證券ノ發行アリタル場合ニ於テハ抵當權ノ變更ハ不動產登記法ノ定ムル所ニ從ヒ其ノ登記ヲ爲シ且抵當證券ノ記載ノ變更ヲ爲スニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ズ數個ノ不動產ニ付抵當權アル場合ニ於テ其ノ一ヲ消滅セシメタルトキ亦同ジ
第十七條 抵當證券ノ記載ノ錯誤又ハ遺漏ガ登記ノ錯誤又ハ遺漏ニ基カザル場合ニ於テハ所持人ハ抵當證券ノ記載ノ變更ヲ申請スルコトヲ得債務者ノ表示ノ變更其ノ他ノ事由ニ因リ登記ヲ變更又ハ更正シタル爲抵當證券ノ記載ガ登記ト符合セザルニ至リタル場合亦同ジ
第十八條 前條ノ場合ヲ除クノ外抵當證券ノ記載ノ變更ハ不動產登記法第五十六條、第六十四條、第八十一條又ハ第九十三條ノ規定ニ依ル登記ヲ爲シタル後ニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得ズ
第十九條 抵當證券ノ發行アリタル場合ニ於テ登記官吏ガ抵當權ノ變更、消滅又ハ更正ノ登記ヲ完了シタルトキハ抵當證券ノ記載ヲ變更シ之ヲ其ノ所持人ニ還付スルコトヲ要ス
第二十條 前條ノ規定ハ不動產登記法第八十一條又ハ第九十三條ノ登記ヲ完了シタル場合ニ之ヲ準用ス
第二十一條 抵當證券ノ所持人ハ左ノ場合ニ於テ抵當證券ヲ交付シタル登記所ニ證券ノ再交付ヲ申請スルコトヲ得
一 證券ヲ汚損シタルトキ
二 證券ヲ喪失シタル場合ニ於テ除權判決アリタルトキ
第二十二條 抵當證券ノ再交付ニ關シテハ命令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外第三條乃至第十三條ノ規定ヲ準用ス
第二十三條 不動產登記法第六十五條ノ場合ニ於テ登記官吏ガ囘復登記ノ手續ヲ完了シタルトキハ更ニ抵當證券ヲ作成シ舊證券ノ所持人ニ交付スルコトヲ要ス
第二十四條 民法第三百七十八條及第三百八十一條乃至第三百八十七條ノ規定ハ抵當證券ノ發行アリタル抵當權ニハ之ヲ適用セズ
第二十五條 抵當證券ノ所持人ハ元本ノ一部又ハ利息ノ支拂アリタルトキハ證券ニ其ノ金額及受領ノ年月日ヲ記載シ且之ニ記名捺印スルコトヲ要ス
第二十六條 債務者ガ利息ノ支拂ヲ怠リタル場合ニ於テ其ノ延滯ガ二年ニ達シタルトキハ元本ノ辨濟期到來シタルモノト看做ス但シ抵當證券ニ特約ノ記載アルトキハ其ノ定ニ從フ定期ニ元本ヲ辨濟スベキ場合ニ於テ其ノ延滯ガ二年ニ達シタルトキ全元本ニ付亦同ジ
第二十七條 抵當證券ノ所持人ハ元本ノ辨濟期後一月內ニ債務者ニ對シテ支拂ノ請求ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テ債務者ガ支拂ヲ爲サザルトキハ抵當證券ノ所持人ハ公證人又ハ執達吏ニ其ノ支拂ナキ旨ノ證明ヲ求ムルコトヲ要ス
第二十八條 抵當證券ニ元本及利息ノ支拂ノ場所ノ記載ナキ場合ニ於テ債務者ノ現時ノ住所ガ知レザルトキハ登記簿ニ記載シタル住所ニ於テ支拂ノ請求ヲ爲スヲ以テ足ル
第二十九條 第二十七條第一項ノ場合ニ於テ債務者ガ支拂ヲ爲サザルトキハ抵當證券ノ所持人ハ五日內ニ各裏書人ニ對シテ其ノ旨ノ通知ヲ發スルコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テハ各裏書人ハ抵當證券ト引換ニ其ノ支拂ヲ爲スコトヲ得
第三十條 抵當證券ノ所持人ハ債務者ガ元本ノ支拂ヲ爲サザルトキハ辨濟期ヨリ三月內ニ抵當權ノ目的タル土地、建物又ハ地上權ニ付競賣ノ申立ヲ爲スコトヲ要ス
已ムコトヲ得ザル事由ニ因リ前項ノ期間內ニ競賣ノ申立ヲ爲スコト能ハザルトキハ抵當證券ノ所持人ハ期間ノ伸長ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得裏書人全員ノ同意アリタルトキ亦同ジ
第三十一條 抵當證券ノ所持人ハ競賣代金ヲ以テ支拂ヲ受ケザル債權ノ部分ニ付テノミ其ノ前者ニ對シ償還ノ請求ヲ爲スコトヲ得但シ第二十七條又ハ前條ニ定メタル手續ヲ爲サザリシトキハ其ノ權利ヲ失フ
第三十二條 抵當權ガ存在セズ若ハ其ノ目的タル物及權利ノ全部ガ滅失シタルニ因リ競賣ノ申立ヲ爲スコト能ハザルトキ又ハ競賣代金ヲ以テ競賣費用ヲ償フ見込ナキトキハ抵當證券ノ所持人ハ前二條ノ規定ニ拘ラズ裁判所ノ許可ヲ得テ其ノ前者ニ對シ償還ノ請求ヲ爲スコトヲ得但シ辨濟期ヨリ三月內ニ許可ノ申請ヲ爲スコトヲ要ス
第三十條第二項ノ規定ハ前項但書ノ許可ノ申請ニ付之ヲ準用ス
第三十三條 第三十條第二項及前條ノ裁判ハ抵當權ノ目的物ノ所在地ヲ管轄スル區裁判所ニ於テ非訟事件手續法ニ依リ之ヲ爲ス
許可ヲ與ヘタル裁判ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ズ
申請ヲ却下シタル裁判ニ對シテハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
第三十四條 本法ニ依ル裁判ノ費用ニ付テハ民事訴訟費用法第十六條及民事訴訟用印紙法第十六條ノ規定ニ依ル
第三十五條 抵當證券ノ所持人ガ第三十一條又ハ第三十二條ノ規定ニ依リ其ノ前者ニ對シ償還ノ請求ヲ爲サントスルトキハ競賣代金ヲ受取リタル日又ハ第三十二條ノ許可ヲ得タル日ヨリ五日內ニ各裏書人ニ對シ償還請求ノ通知ヲ發スルコトヲ要ス
第三十六條 抵當證券ノ所持人ノ裏書人ニ對スル通知ハ證券ニ記載シタル住所ニ宛ツルヲ以テ足ル
第三十七條 抵當證券ノ所持人ガ第二十九條第一項又ハ第三十五條ニ規定スル通知ヲ發セザリシトキハ之ニ因リテ生ジタル損害ヲ賠償スル責ニ任ズ
第三十八條 抵當證券ノ所持人又ハ償還ヲ爲シタル裏書人ハ左ノ金額中支拂アラザリシモノニ付其ノ前者又ハ債務者ニ對シ償還又ハ支拂ノ請求ヲ爲スコトヲ得
一 元本及支拂ノ請求ヲ爲シタル日迄ノ利息
二 支拂ノ請求ヲ爲シタル日後ノ元本ニ對スル法定利率ニ依ル利息但シ約定利率ガ法定利率ニ超ユルトキハ約定利率ニ依ル利息
三 第二十七條第二項ノ規定ニ依ル證明書作成ノ費用其ノ他ノ費用
第三十九條 抵當證券ノ所持人ノ其ノ前者ニ對スル償還請求權ハ競賣代金ヲ受取リタル日又ハ第三十二條第一項ノ許可ヲ得タル日ヨリ一年、裏書人ノ其ノ前者ニ對スル償還請求權ハ償還ヲ爲シタル日ヨリ六月ヲ經過シタルトキハ時效ニ因リテ消滅ス
第四十條 民法第四百七十條、第四百七十二條、商法第二百七十八條第二項、第二百七十九條、第二百八十一條、第四百三十七條、第四百三十八條、第四百四十條、第四百四十一條、第四百五十九條、第四百六十三條、第四百六十四條(第一項但書ヲ除ク)第四百八十三條、第四百八十八條ノ四、第四百九十五條及民法施行法第五十七條ノ規定ハ抵當證券ニ付之ヲ準用ス
第四十一條 不動產登記法第十條、第十二條、第十三條、第二十一條、第四十四條、第四十五條、第七十七條、第百五十條乃至第百五十四條第一項、第百五十五條、第百五十六條、第百五十八條及第百五十九條ノ規定ハ抵當證券ニ付之ヲ準用ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四項乃至第九項ノ規定ヲ除クノ外本法施行ノ地域ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ニ關シ必要ナル規定ハ司法大臣之ヲ定ム
耕地整理法第二條中「登記シタル權利ヲ有スル者」ノ下ニ「(抵當證券ノ發行アリタルトキハ其ノ所持人)」ヲ加フ
耕地整理法第二十五條中「第四十四條第二項」ヲ「第四十四條第三項」ニ、「前項」ヲ「第一項」ニ、「前二項」ヲ「第一項又ハ第三項」ニ改メ同條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
同一所有者ニ屬スル數筆ノ土地ヲ目的トスル抵當權ニ付抵當證券ノ發行アリタル場合ニ於テハ前項ノ規定ニ依リ供託スヘキ第三十條第一項又ハ第二項ノ規定ニ依ル拂渡金額ノ計算ニ付テハ其ノ數筆ノ土地ヲ一筆ノ土地ト看做ス但シ其ノ土地ニ付當該抵當權以外ノ前項ニ揭クル權利アル場合ニ於テ其ノ權利者ノ同意ヲ得サルトキハ此ノ限ニ在ラス
耕地整理法第四十三條第一項中「建物ニ付登記シタル權利ヲ有スル者」ノ次ニ「(抵當證券ノ發行アリタルトキハ其ノ所持人)」ヲ加ヘ同條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ場合ニ於テ抵當證券ノ所持人ノ同意ヲ得ルコト能ハサルトキハ地方長官ノ認可ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
耕地整理法第四十四條第二項中「前項」ヲ「第一項」ニ改メ同條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
前條第二項ノ規定ハ前項本文ノ場合ニ於テ抵當證券ノ所持人ノ同意ニ付之ヲ準用ス
耕地整理法第八十七條中「第四十四條第二項」ヲ「第四十四條第三項」ニ改ム
都市計畫法第十五條ノ次ニ左ノ一條ヲ加フ
第十五條ノ二 土地區劃整理ニ付テハ耕地整理法第四十三條ノ規定ニ拘ラス建物アル宅地ヲ土地區劃整理施行地區ニ編入スルコトヲ得
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル抵当証券法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和六年三月二十八日
内閣総理大臣 浜口雄幸
司法大臣 子爵 渡辺千冬
大蔵大臣 井上準之助
内務大臣 安達謙蔵
農林大臣 町田忠治
法律第十五号
抵当証券法
第一条 土地、建物又ハ地上権ヲ目的トスル抵当権ヲ有スル者ハ其ノ登記ヲ管轄スル登記所ニ抵当証券ノ交付ヲ申請スルコトヲ得
抵当権ノ目的物ガ数個ノ登記所ノ管轄地ニ散在スルトキハ抵当証券ノ交付ハ其ノ一ノ登記所ニ之ヲ申請スルコトヲ要ス
抵当証券交付ノ申請ハ申請人(代理人ニ依リテ申請スルトキハ其ノ代理人)登記所ニ出頭シテ之ヲ為スコトヲ要ス
第二条 左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニ於テハ抵当証券ヲ発行スルコトヲ得ズ
一 抵当権ガ根抵当ナルトキ
二 抵当権ニ付本登記ナキトキ
三 債権ノ差押若ハ仮差押ノ登記又ハ抵当権ノ処分禁止若ハ抵当権ヲ他ノ債権ノ担保ト為シタル旨ノ登記アルトキ
四 債権又ハ抵当権ニ附シタル解除条件ノ登記アルトキ
五 抵当証券発行ノ特約ナキトキ
第三条 抵当証券ノ交付ヲ申請スルニハ左ノ書面ヲ提出スルコトヲ要ス
一 申請書
二 抵当権者ノ権利ニ関スル登記済証
三 手形其ノ他ノ債権ニ関スル証書
四 抵当証券発行ノ特約ノ登記ナキトキハ抵当権設定者又ハ第三取得者及債務者ノ同意書
五 代理人ニ依リテ申請スルトキハ其ノ権限ヲ証スル書面
前項第三号ノ証書ナキトキハ申請書ニ其ノ旨ヲ記載スルコトヲ要ス
第一条第二項ノ申請ヲ為スニハ申請書ニ其ノ旨ヲ記載シ且他ノ登記所ノ管轄ニ属スル目的物ノ登記簿ノ謄本並ニ其ノ登記所ノ数ニ応ジ申請書ノ副本及附属書面ノ写本ヲ提出スルコトヲ要ス
抵当証券ノ交付ヲ申請スルニハ命令ノ定ムル所ニ依リ手数料ヲ納付スルコトヲ要ス
第四条 申請書ニハ左ノ事項ヲ記載シ申請人之ニ記名捺印スルコトヲ要ス
一 申請人ノ氏名及住所
二 代理人ニ依リテ申請スルトキハ其ノ氏名及住所
三 抵当権ノ目的タル土地、建物又ハ地上権ノ表示
四 抵当権設定者及第三取得者ノ氏名及住所
五 抵当権ノ順位及登記ノ年月日
六 不動産登記法第百十七条ニ掲グル事項
七 債務者ノ氏名及住所
八 抵当権、質権又ハ先取特権ノ登記アルトキハ債権額、債権者ノ氏名及住所並ニ登記ノ年月日
九 地上権、永小作権、地役権又ハ賃借権ノ登記アルトキハ其ノ権利者ノ氏名及住所並ニ登記ノ年月日
十 登記所ノ表示
十一 申請ノ年月日
第五条 登記官吏ハ抵当証券交付ノ申請ガ左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ理由ヲ附シタル決定ヲ以テ之ヲ却下スルコトヲ要ス但シ申請ノ欠欠ガ補正スルコトヲ得ベキモノナル場合ニ於テ申請人ガ即日之ヲ補正シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
一 其ノ登記所ノ管轄ニ属セザルトキ
二 第二条ニ規定スル事由アルトキ
三 申請書ニ記載シタル事項ガ登記簿ト符合セザルトキ
四 申請人ガ出頭セザルトキ
五 申請書ガ方式ニ適合セザルトキ
六 必要ナル書面ヲ提出セザルトキ
七 手数料ヲ納付セザルトキ
第一条第二項ノ申請アリタル場合ニ於テハ登記官吏ハ申請書ノ副本及附属書面ノ写本ヲ各管轄登記所ニ送付シ其ノ管轄ニ属スル目的物ニ付抵当証券ヲ作成スベキ旨ヲ嘱託スルコトヲ要ス
第六条 抵当証券交付ノ申請ヲ受理シタルトキハ登記官吏(前条第二項ノ規定ニ依ル嘱託アリタルトキハ其ノ部分ニ付テハ嘱託ヲ受ケタル登記所ノ登記官吏)ハ遅滞ナク抵当証券ノ交付ニ付異議アラバ一定ノ期間内ニ之ヲ申立ツベキ旨ヲ抵当権設定者、第三取得者、債務者、抵当権又ハ其ノ順位ノ譲渡人及先順位ヲ抛棄シタル者ニ催告スルコトヲ要ス但シ抵当証券ノ発行ヲ妨グル事由アルコトヲ発見シタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
嘱託ヲ受ケタル登記所ノ登記官吏ガ抵当証券ノ発行ヲ妨グル事由アルコトヲ発見シタルトキハ其ノ旨ヲ嘱託ヲ為シタル登記所ニ通知スルコトヲ要ス
第一項ノ催告ニハ第四条第一号及第三号乃至第七号ニ掲グル事項ヲ記載スルコトヲ要ス
債務者ニ対スル催告ニハ前項ノ事項ノ外第三条第一項第三号ノ証書ガ手形ナルトキハ其ノ表示及同条第二項ノ規定ニ依ル記載ヲモ記載スルコトヲ要ス
第七条 抵当証券ノ交付ニ関スル異議ハ左ノ理由ニ基クトキニ限リ之ヲ申立ツルコトヲ得
一 申請ニ付第二条ニ規定スル事由アルコト
二 債権ノ質入、差押又ハ仮差押アリタルコト
三 催告ニ記載シタル事項ガ登記簿ノ記載又ハ事実ト符合セザルコト
四 債務者ガ抵当権者ニ対シ相殺ヲ以テ対抗シ得ベキ債権ニシテ其ノ弁済期ガ抵当権者ノ債権ノ弁済期以前ニ到来スルモノヲ有スルコト
異議ハ他ノ利害関係人ノ権利ニ関スル理由ニ基キ之ヲ申立ツルコトヲ得ズ
異議申立ノ権利ハ予メ之ヲ抛棄スルコトヲ得ズ
第八条 異議ニ関スル裁判ハ抵当証券交付ノ申請ヲ受理シタル登記所ノ所在地ヲ管轄スル区裁判所ニ於テ非訟事件手続法ニ依リ之ヲ為ス
前項ノ裁判ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得抗告ハ執行停止ノ効力ヲ有ス
異議ノ申立ヲ受理シタルトキハ登記官吏ハ事件ヲ管轄裁判所ニ送付スルコトヲ要ス
第九条 異議ニ関スル裁判確定シタルトキハ裁判所ハ遅滞ナク其ノ旨ヲ関係登記所ニ通知スルコトヲ要ス
第十条 第六条ノ催告ヲ受ケタル者ハ異議ノ申立ヲ為スコトヲ得ル事由ニ付テハ其ノ申立ヲ為シタルモノニ非ザレバ之ヲ以テ抵当証券ノ善意ノ取得者ニ対抗スルコトヲ得ズ
異議ノ申立ヲ理由ナシトスル裁判確定シタル場合ニ於テハ其ノ申立ヲ為シタル者ハ二月内ニ訴ヲ提起スルニ非ザレバ申立ヲ為シタル事由ヲ以テ抵当証券ノ善意ノ取得者ニ対抗スルコトヲ得ズ
前項ノ訴ノ提起アリタルトキハ裁判所ハ之ヲ公告スルコトヲ要ス
第十一条 第六条ノ催告ニ指定シタル期間内ニ異議ノ申立ナキトキハ登記官吏ハ抵当権ノ目的物ガ其ノ登記所ノ管轄地ノミニ在ル場合ニハ直ニ、抵当権ノ目的物ガ数個ノ登記所ノ管轄地ニ散在スル場合ニハ嘱託ヲ受ケタル登記所ヨリ抵当証券ノ送付ヲ受ケタル後直ニ抵当証券ヲ交付スルコトヲ要ス異議ヲ理由ナシトスル裁判確定シタルトキ亦同ジ
第十二条 抵当証券ニハ左ニ掲グル事項ヲ記載シ登記官吏記名捺印シ且登記所ノ印ヲ押捺スルコトヲ要ス
一 証券ノ番号
二 第四条第一号及第三号乃至第九号ニ掲グル事項
三 登記所ノ表示
四 証券作成ノ年月日
嘱託ヲ受ケタル登記所ヨリ抵当証券ノ送付ヲ受ケタルトキハ登記官吏ハ其ノ作成ニ係ルモノト一括シ之ニ各証券ハ同一ノ債権ノ為ニ作成シタルモノナル旨ヲ記載シ且記名捺印スルコトヲ要ス
第十三条 第三条第一項第二号及第三号ノ書面ノ提出アリタル場合ニ於テ抵当証券ヲ交付シタルトキハ登記官吏ハ抵当証券ヲ交付シタル旨ヲ其ノ書面ニ記載シ登記所ノ印ヲ押捺シテ之ヲ申請人ニ還付スルコトヲ要ス其ノ書面中ニ手形アルトキハ其ノ手形ハ爾後効力ヲ有セズ
第十四条 抵当証券ノ発行アリタルトキハ抵当権及債権ノ処分ハ抵当証券ヲ以テスルニ非ザレバ之ヲ為スコトヲ得ズ
抵当権ト債権トハ分離シテ之ヲ処分スルコトヲ得ズ
第十五条 抵当証券ノ譲渡ハ裏書ニ依リテ之ヲ為ス
商法第四百五十七条第一項ノ規定ハ前項ノ裏書ニ之ヲ準用ス尚其ノ裏書ニハ裏書人ノ住所ヲ記載スルコトヲ要ス
第十六条 抵当証券ノ発行アリタル場合ニ於テハ抵当権ノ変更ハ不動産登記法ノ定ムル所ニ従ヒ其ノ登記ヲ為シ且抵当証券ノ記載ノ変更ヲ為スニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ズ数個ノ不動産ニ付抵当権アル場合ニ於テ其ノ一ヲ消滅セシメタルトキ亦同ジ
第十七条 抵当証券ノ記載ノ錯誤又ハ遺漏ガ登記ノ錯誤又ハ遺漏ニ基カザル場合ニ於テハ所持人ハ抵当証券ノ記載ノ変更ヲ申請スルコトヲ得債務者ノ表示ノ変更其ノ他ノ事由ニ因リ登記ヲ変更又ハ更正シタル為抵当証券ノ記載ガ登記ト符合セザルニ至リタル場合亦同ジ
第十八条 前条ノ場合ヲ除クノ外抵当証券ノ記載ノ変更ハ不動産登記法第五十六条、第六十四条、第八十一条又ハ第九十三条ノ規定ニ依ル登記ヲ為シタル後ニ非ザレバ之ヲ為スコトヲ得ズ
第十九条 抵当証券ノ発行アリタル場合ニ於テ登記官吏ガ抵当権ノ変更、消滅又ハ更正ノ登記ヲ完了シタルトキハ抵当証券ノ記載ヲ変更シ之ヲ其ノ所持人ニ還付スルコトヲ要ス
第二十条 前条ノ規定ハ不動産登記法第八十一条又ハ第九十三条ノ登記ヲ完了シタル場合ニ之ヲ準用ス
第二十一条 抵当証券ノ所持人ハ左ノ場合ニ於テ抵当証券ヲ交付シタル登記所ニ証券ノ再交付ヲ申請スルコトヲ得
一 証券ヲ汚損シタルトキ
二 証券ヲ喪失シタル場合ニ於テ除権判決アリタルトキ
第二十二条 抵当証券ノ再交付ニ関シテハ命令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外第三条乃至第十三条ノ規定ヲ準用ス
第二十三条 不動産登記法第六十五条ノ場合ニ於テ登記官吏ガ回復登記ノ手続ヲ完了シタルトキハ更ニ抵当証券ヲ作成シ旧証券ノ所持人ニ交付スルコトヲ要ス
第二十四条 民法第三百七十八条及第三百八十一条乃至第三百八十七条ノ規定ハ抵当証券ノ発行アリタル抵当権ニハ之ヲ適用セズ
第二十五条 抵当証券ノ所持人ハ元本ノ一部又ハ利息ノ支払アリタルトキハ証券ニ其ノ金額及受領ノ年月日ヲ記載シ且之ニ記名捺印スルコトヲ要ス
第二十六条 債務者ガ利息ノ支払ヲ怠リタル場合ニ於テ其ノ延滞ガ二年ニ達シタルトキハ元本ノ弁済期到来シタルモノト看做ス但シ抵当証券ニ特約ノ記載アルトキハ其ノ定ニ従フ定期ニ元本ヲ弁済スベキ場合ニ於テ其ノ延滞ガ二年ニ達シタルトキ全元本ニ付亦同ジ
第二十七条 抵当証券ノ所持人ハ元本ノ弁済期後一月内ニ債務者ニ対シテ支払ノ請求ヲ為スコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テ債務者ガ支払ヲ為サザルトキハ抵当証券ノ所持人ハ公証人又ハ執達吏ニ其ノ支払ナキ旨ノ証明ヲ求ムルコトヲ要ス
第二十八条 抵当証券ニ元本及利息ノ支払ノ場所ノ記載ナキ場合ニ於テ債務者ノ現時ノ住所ガ知レザルトキハ登記簿ニ記載シタル住所ニ於テ支払ノ請求ヲ為スヲ以テ足ル
第二十九条 第二十七条第一項ノ場合ニ於テ債務者ガ支払ヲ為サザルトキハ抵当証券ノ所持人ハ五日内ニ各裏書人ニ対シテ其ノ旨ノ通知ヲ発スルコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テハ各裏書人ハ抵当証券ト引換ニ其ノ支払ヲ為スコトヲ得
第三十条 抵当証券ノ所持人ハ債務者ガ元本ノ支払ヲ為サザルトキハ弁済期ヨリ三月内ニ抵当権ノ目的タル土地、建物又ハ地上権ニ付競売ノ申立ヲ為スコトヲ要ス
已ムコトヲ得ザル事由ニ因リ前項ノ期間内ニ競売ノ申立ヲ為スコト能ハザルトキハ抵当証券ノ所持人ハ期間ノ伸長ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得裏書人全員ノ同意アリタルトキ亦同ジ
第三十一条 抵当証券ノ所持人ハ競売代金ヲ以テ支払ヲ受ケザル債権ノ部分ニ付テノミ其ノ前者ニ対シ償還ノ請求ヲ為スコトヲ得但シ第二十七条又ハ前条ニ定メタル手続ヲ為サザリシトキハ其ノ権利ヲ失フ
第三十二条 抵当権ガ存在セズ若ハ其ノ目的タル物及権利ノ全部ガ滅失シタルニ因リ競売ノ申立ヲ為スコト能ハザルトキ又ハ競売代金ヲ以テ競売費用ヲ償フ見込ナキトキハ抵当証券ノ所持人ハ前二条ノ規定ニ拘ラズ裁判所ノ許可ヲ得テ其ノ前者ニ対シ償還ノ請求ヲ為スコトヲ得但シ弁済期ヨリ三月内ニ許可ノ申請ヲ為スコトヲ要ス
第三十条第二項ノ規定ハ前項但書ノ許可ノ申請ニ付之ヲ準用ス
第三十三条 第三十条第二項及前条ノ裁判ハ抵当権ノ目的物ノ所在地ヲ管轄スル区裁判所ニ於テ非訟事件手続法ニ依リ之ヲ為ス
許可ヲ与ヘタル裁判ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ズ
申請ヲ却下シタル裁判ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第三十四条 本法ニ依ル裁判ノ費用ニ付テハ民事訴訟費用法第十六条及民事訴訟用印紙法第十六条ノ規定ニ依ル
第三十五条 抵当証券ノ所持人ガ第三十一条又ハ第三十二条ノ規定ニ依リ其ノ前者ニ対シ償還ノ請求ヲ為サントスルトキハ競売代金ヲ受取リタル日又ハ第三十二条ノ許可ヲ得タル日ヨリ五日内ニ各裏書人ニ対シ償還請求ノ通知ヲ発スルコトヲ要ス
第三十六条 抵当証券ノ所持人ノ裏書人ニ対スル通知ハ証券ニ記載シタル住所ニ宛ツルヲ以テ足ル
第三十七条 抵当証券ノ所持人ガ第二十九条第一項又ハ第三十五条ニ規定スル通知ヲ発セザリシトキハ之ニ因リテ生ジタル損害ヲ賠償スル責ニ任ズ
第三十八条 抵当証券ノ所持人又ハ償還ヲ為シタル裏書人ハ左ノ金額中支払アラザリシモノニ付其ノ前者又ハ債務者ニ対シ償還又ハ支払ノ請求ヲ為スコトヲ得
一 元本及支払ノ請求ヲ為シタル日迄ノ利息
二 支払ノ請求ヲ為シタル日後ノ元本ニ対スル法定利率ニ依ル利息但シ約定利率ガ法定利率ニ超ユルトキハ約定利率ニ依ル利息
三 第二十七条第二項ノ規定ニ依ル証明書作成ノ費用其ノ他ノ費用
第三十九条 抵当証券ノ所持人ノ其ノ前者ニ対スル償還請求権ハ競売代金ヲ受取リタル日又ハ第三十二条第一項ノ許可ヲ得タル日ヨリ一年、裏書人ノ其ノ前者ニ対スル償還請求権ハ償還ヲ為シタル日ヨリ六月ヲ経過シタルトキハ時効ニ因リテ消滅ス
第四十条 民法第四百七十条、第四百七十二条、商法第二百七十八条第二項、第二百七十九条、第二百八十一条、第四百三十七条、第四百三十八条、第四百四十条、第四百四十一条、第四百五十九条、第四百六十三条、第四百六十四条(第一項但書ヲ除ク)第四百八十三条、第四百八十八条ノ四、第四百九十五条及民法施行法第五十七条ノ規定ハ抵当証券ニ付之ヲ準用ス
第四十一条 不動産登記法第十条、第十二条、第十三条、第二十一条、第四十四条、第四十五条、第七十七条、第百五十条乃至第百五十四条第一項、第百五十五条、第百五十六条、第百五十八条及第百五十九条ノ規定ハ抵当証券ニ付之ヲ準用ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四項乃至第九項ノ規定ヲ除クノ外本法施行ノ地域ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ニ関シ必要ナル規定ハ司法大臣之ヲ定ム
耕地整理法第二条中「登記シタル権利ヲ有スル者」ノ下ニ「(抵当証券ノ発行アリタルトキハ其ノ所持人)」ヲ加フ
耕地整理法第二十五条中「第四十四条第二項」ヲ「第四十四条第三項」ニ、「前項」ヲ「第一項」ニ、「前二項」ヲ「第一項又ハ第三項」ニ改メ同条第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
同一所有者ニ属スル数筆ノ土地ヲ目的トスル抵当権ニ付抵当証券ノ発行アリタル場合ニ於テハ前項ノ規定ニ依リ供託スヘキ第三十条第一項又ハ第二項ノ規定ニ依ル払渡金額ノ計算ニ付テハ其ノ数筆ノ土地ヲ一筆ノ土地ト看做ス但シ其ノ土地ニ付当該抵当権以外ノ前項ニ掲クル権利アル場合ニ於テ其ノ権利者ノ同意ヲ得サルトキハ此ノ限ニ在ラス
耕地整理法第四十三条第一項中「建物ニ付登記シタル権利ヲ有スル者」ノ次ニ「(抵当証券ノ発行アリタルトキハ其ノ所持人)」ヲ加ヘ同条第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ場合ニ於テ抵当証券ノ所持人ノ同意ヲ得ルコト能ハサルトキハ地方長官ノ認可ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
耕地整理法第四十四条第二項中「前項」ヲ「第一項」ニ改メ同条第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
前条第二項ノ規定ハ前項本文ノ場合ニ於テ抵当証券ノ所持人ノ同意ニ付之ヲ準用ス
耕地整理法第八十七条中「第四十四条第二項」ヲ「第四十四条第三項」ニ改ム
都市計画法第十五条ノ次ニ左ノ一条ヲ加フ
第十五条ノ二 土地区画整理ニ付テハ耕地整理法第四十三条ノ規定ニ拘ラス建物アル宅地ヲ土地区画整理施行地区ニ編入スルコトヲ得