第一條 土地、建物又ハ地上權ヲ目的トスル抵當權ヲ有スル者ハ其ノ登記ヲ管轄スル登記所ニ抵當證券ノ交付ヲ申請スルコトヲ得
抵當權ノ目的物ガ數個ノ登記所ノ管轄地ニ散在スルトキハ抵當證券ノ交付ハ其ノ一ノ登記所ニ之ヲ申請スルコトヲ要ス
抵當證券交付ノ申請ハ申請人(代理人ニ依リテ申請スルトキハ其ノ代理人)登記所ニ出頭シテ之ヲ爲スコトヲ要ス
第二條 左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ抵當證券ヲ發行スルコトヲ得ズ
三 債權ノ差押若ハ假差押ノ登記又ハ抵當權ノ處分禁止若ハ抵當權ヲ他ノ債權ノ擔保ト爲シタル旨ノ登記アルトキ
四 債權又ハ抵當權ニ附シタル解除條件ノ登記アルトキ
第三條 抵當證券ノ交付ヲ申請スルニハ左ノ書面ヲ提出スルコトヲ要ス
四 抵當證券發行ノ特約ノ登記ナキトキハ抵當權設定者又ハ第三取得者及債務者ノ同意書
五 代理人ニ依リテ申請スルトキハ其ノ權限ヲ證スル書面
前項第三號ノ證書ナキトキハ申請書ニ其ノ旨ヲ記載スルコトヲ要ス
第一條第二項ノ申請ヲ爲スニハ申請書ニ其ノ旨ヲ記載シ且他ノ登記所ノ管轄ニ屬スル目的物ノ登記簿ノ謄本竝ニ其ノ登記所ノ數ニ應ジ申請書ノ副本及附屬書面ノ寫本ヲ提出スルコトヲ要ス
抵當證券ノ交付ヲ申請スルニハ命令ノ定ムル所ニ依リ手數料ヲ納付スルコトヲ要ス
第四條 申請書ニハ左ノ事項ヲ記載シ申請人之ニ記名捺印スルコトヲ要ス
八 抵當權、質權又ハ先取特權ノ登記アルトキハ債權額、債權者ノ氏名及住所竝ニ登記ノ年月日
九 地上權、永小作權、地役權又ハ賃借權ノ登記アルトキハ其ノ權利者ノ氏名及住所竝ニ登記ノ年月日
第五條 登記官吏ハ抵當證券交付ノ申請ガ左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ理由ヲ附シタル決定ヲ以テ之ヲ却下スルコトヲ要ス但シ申請ノ欠缺ガ補正スルコトヲ得ベキモノナル場合ニ於テ申請人ガ卽日之ヲ補正シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
三 申請書ニ記載シタル事項ガ登記簿ト符合セザルトキ
第一條第二項ノ申請アリタル場合ニ於テハ登記官吏ハ申請書ノ副本及附屬書面ノ寫本ヲ各管轄登記所ニ送付シ其ノ管轄ニ屬スル目的物ニ付抵當證券ヲ作成スベキ旨ヲ囑託スルコトヲ要ス
第六條 抵當證券交付ノ申請ヲ受理シタルトキハ登記官吏(前條第二項ノ規定ニ依ル囑託アリタルトキハ其ノ部分ニ付テハ囑託ヲ受ケタル登記所ノ登記官吏)ハ遲滯ナク抵當證券ノ交付ニ付異議アラバ一定ノ期間內ニ之ヲ申立ツベキ旨ヲ抵當權設定者、第三取得者、債務者、抵當權又ハ其ノ順位ノ讓渡人及先順位ヲ抛棄シタル者ニ催吿スルコトヲ要ス但シ抵當證券ノ發行ヲ妨グル事由アルコトヲ發見シタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
囑託ヲ受ケタル登記所ノ登記官吏ガ抵當證券ノ發行ヲ妨グル事由アルコトヲ發見シタルトキハ其ノ旨ヲ囑託ヲ爲シタル登記所ニ通知スルコトヲ要ス
第一項ノ催吿ニハ第四條第一號及第三號乃至第七號ニ揭グル事項ヲ記載スルコトヲ要ス
債務者ニ對スル催吿ニハ前項ノ事項ノ外第三條第一項第三號ノ證書ガ手形ナルトキハ其ノ表示及同條第二項ノ規定ニ依ル記載ヲモ記載スルコトヲ要ス
第七條 抵當證券ノ交付ニ關スル異議ハ左ノ理由ニ基クトキニ限リ之ヲ申立ツルコトヲ得
三 催吿ニ記載シタル事項ガ登記簿ノ記載又ハ事實ト符合セザルコト
四 債務者ガ抵當權者ニ對シ相殺ヲ以テ對抗シ得ベキ債權ニシテ其ノ辨濟期ガ抵當權者ノ債權ノ辨濟期以前ニ到來スルモノヲ有スルコト
異議ハ他ノ利害關係人ノ權利ニ關スル理由ニ基キ之ヲ申立ツルコトヲ得ズ
第八條 異議ニ關スル裁判ハ抵當證券交付ノ申請ヲ受理シタル登記所ノ所在地ヲ管轄スル區裁判所ニ於テ非訟事件手續法ニ依リ之ヲ爲ス
前項ノ裁判ニ對シテハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得抗吿ハ執行停止ノ效力ヲ有ス
異議ノ申立ヲ受理シタルトキハ登記官吏ハ事件ヲ管轄裁判所ニ送付スルコトヲ要ス
第九條 異議ニ關スル裁判確定シタルトキハ裁判所ハ遲滯ナク其ノ旨ヲ關係登記所ニ通知スルコトヲ要ス
第十條 第六條ノ催吿ヲ受ケタル者ハ異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得ル事由ニ付テハ其ノ申立ヲ爲シタルモノニ非ザレバ之ヲ以テ抵當證券ノ善意ノ取得者ニ對抗スルコトヲ得ズ
異議ノ申立ヲ理由ナシトスル裁判確定シタル場合ニ於テハ其ノ申立ヲ爲シタル者ハ二月內ニ訴ヲ提起スルニ非ザレバ申立ヲ爲シタル事由ヲ以テ抵當證券ノ善意ノ取得者ニ對抗スルコトヲ得ズ
前項ノ訴ノ提起アリタルトキハ裁判所ハ之ヲ公吿スルコトヲ要ス
第十一條 第六條ノ催吿ニ指定シタル期間內ニ異議ノ申立ナキトキハ登記官吏ハ抵當權ノ目的物ガ其ノ登記所ノ管轄地ノミニ在ル場合ニハ直ニ、抵當權ノ目的物ガ數個ノ登記所ノ管轄地ニ散在スル場合ニハ囑託ヲ受ケタル登記所ヨリ抵當證券ノ送付ヲ受ケタル後直ニ抵當證券ヲ交付スルコトヲ要ス異議ヲ理由ナシトスル裁判確定シタルトキ亦同ジ
第十二條 抵當證券ニハ左ニ揭グル事項ヲ記載シ登記官吏記名捺印シ且登記所ノ印ヲ押捺スルコトヲ要ス
囑託ヲ受ケタル登記所ヨリ抵當證券ノ送付ヲ受ケタルトキハ登記官吏ハ其ノ作成ニ係ルモノト一括シ之ニ各證券ハ同一ノ債權ノ爲ニ作成シタルモノナル旨ヲ記載シ且記名捺印スルコトヲ要ス
第十三條 第三條第一項第二號及第三號ノ書面ノ提出アリタル場合ニ於テ抵當證券ヲ交付シタルトキハ登記官吏ハ抵當證券ヲ交付シタル旨ヲ其ノ書面ニ記載シ登記所ノ印ヲ押捺シテ之ヲ申請人ニ還付スルコトヲ要ス其ノ書面中ニ手形アルトキハ其ノ手形ハ爾後效力ヲ有セズ
第十四條 抵當證券ノ發行アリタルトキハ抵當權及債權ノ處分ハ抵當證券ヲ以テスルニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得ズ
商法第四百五十七條第一項ノ規定ハ前項ノ裏書ニ之ヲ準用ス尙其ノ裏書ニハ裏書人ノ住所ヲ記載スルコトヲ要ス
第十六條 抵當證券ノ發行アリタル場合ニ於テハ抵當權ノ變更ハ不動產登記法ノ定ムル所ニ從ヒ其ノ登記ヲ爲シ且抵當證券ノ記載ノ變更ヲ爲スニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ズ數個ノ不動產ニ付抵當權アル場合ニ於テ其ノ一ヲ消滅セシメタルトキ亦同ジ
第十七條 抵當證券ノ記載ノ錯誤又ハ遺漏ガ登記ノ錯誤又ハ遺漏ニ基カザル場合ニ於テハ所持人ハ抵當證券ノ記載ノ變更ヲ申請スルコトヲ得債務者ノ表示ノ變更其ノ他ノ事由ニ因リ登記ヲ變更又ハ更正シタル爲抵當證券ノ記載ガ登記ト符合セザルニ至リタル場合亦同ジ
第十八條 前條ノ場合ヲ除クノ外抵當證券ノ記載ノ變更ハ不動產登記法第五十六條、第六十四條、第八十一條又ハ第九十三條ノ規定ニ依ル登記ヲ爲シタル後ニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得ズ
第十九條 抵當證券ノ發行アリタル場合ニ於テ登記官吏ガ抵當權ノ變更、消滅又ハ更正ノ登記ヲ完了シタルトキハ抵當證券ノ記載ヲ變更シ之ヲ其ノ所持人ニ還付スルコトヲ要ス
第二十條 前條ノ規定ハ不動產登記法第八十一條又ハ第九十三條ノ登記ヲ完了シタル場合ニ之ヲ準用ス
第二十一條 抵當證券ノ所持人ハ左ノ場合ニ於テ抵當證券ヲ交付シタル登記所ニ證券ノ再交付ヲ申請スルコトヲ得
二 證券ヲ喪失シタル場合ニ於テ除權判決アリタルトキ
第二十二條 抵當證券ノ再交付ニ關シテハ命令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外第三條乃至第十三條ノ規定ヲ準用ス
第二十三條 不動產登記法第六十五條ノ場合ニ於テ登記官吏ガ囘復登記ノ手續ヲ完了シタルトキハ更ニ抵當證券ヲ作成シ舊證券ノ所持人ニ交付スルコトヲ要ス
第二十四條 民法第三百七十八條及第三百八十一條乃至第三百八十七條ノ規定ハ抵當證券ノ發行アリタル抵當權ニハ之ヲ適用セズ
第二十五條 抵當證券ノ所持人ハ元本ノ一部又ハ利息ノ支拂アリタルトキハ證券ニ其ノ金額及受領ノ年月日ヲ記載シ且之ニ記名捺印スルコトヲ要ス
第二十六條 債務者ガ利息ノ支拂ヲ怠リタル場合ニ於テ其ノ延滯ガ二年ニ達シタルトキハ元本ノ辨濟期到來シタルモノト看做ス但シ抵當證券ニ特約ノ記載アルトキハ其ノ定ニ從フ定期ニ元本ヲ辨濟スベキ場合ニ於テ其ノ延滯ガ二年ニ達シタルトキ全元本ニ付亦同ジ
第二十七條 抵當證券ノ所持人ハ元本ノ辨濟期後一月內ニ債務者ニ對シテ支拂ノ請求ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テ債務者ガ支拂ヲ爲サザルトキハ抵當證券ノ所持人ハ公證人又ハ執達吏ニ其ノ支拂ナキ旨ノ證明ヲ求ムルコトヲ要ス
第二十八條 抵當證券ニ元本及利息ノ支拂ノ場所ノ記載ナキ場合ニ於テ債務者ノ現時ノ住所ガ知レザルトキハ登記簿ニ記載シタル住所ニ於テ支拂ノ請求ヲ爲スヲ以テ足ル
第二十九條 第二十七條第一項ノ場合ニ於テ債務者ガ支拂ヲ爲サザルトキハ抵當證券ノ所持人ハ五日內ニ各裏書人ニ對シテ其ノ旨ノ通知ヲ發スルコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テハ各裏書人ハ抵當證券ト引換ニ其ノ支拂ヲ爲スコトヲ得
第三十條 抵當證券ノ所持人ハ債務者ガ元本ノ支拂ヲ爲サザルトキハ辨濟期ヨリ三月內ニ抵當權ノ目的タル土地、建物又ハ地上權ニ付競賣ノ申立ヲ爲スコトヲ要ス
已ムコトヲ得ザル事由ニ因リ前項ノ期間內ニ競賣ノ申立ヲ爲スコト能ハザルトキハ抵當證券ノ所持人ハ期間ノ伸長ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得裏書人全員ノ同意アリタルトキ亦同ジ
第三十一條 抵當證券ノ所持人ハ競賣代金ヲ以テ支拂ヲ受ケザル債權ノ部分ニ付テノミ其ノ前者ニ對シ償還ノ請求ヲ爲スコトヲ得但シ第二十七條又ハ前條ニ定メタル手續ヲ爲サザリシトキハ其ノ權利ヲ失フ
第三十二條 抵當權ガ存在セズ若ハ其ノ目的タル物及權利ノ全部ガ滅失シタルニ因リ競賣ノ申立ヲ爲スコト能ハザルトキ又ハ競賣代金ヲ以テ競賣費用ヲ償フ見込ナキトキハ抵當證券ノ所持人ハ前二條ノ規定ニ拘ラズ裁判所ノ許可ヲ得テ其ノ前者ニ對シ償還ノ請求ヲ爲スコトヲ得但シ辨濟期ヨリ三月內ニ許可ノ申請ヲ爲スコトヲ要ス
第三十條第二項ノ規定ハ前項但書ノ許可ノ申請ニ付之ヲ準用ス
第三十三條 第三十條第二項及前條ノ裁判ハ抵當權ノ目的物ノ所在地ヲ管轄スル區裁判所ニ於テ非訟事件手續法ニ依リ之ヲ爲ス
許可ヲ與ヘタル裁判ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ズ
申請ヲ却下シタル裁判ニ對シテハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
第三十四條 本法ニ依ル裁判ノ費用ニ付テハ民事訴訟費用法第十六條及民事訴訟用印紙法第十六條ノ規定ニ依ル
第三十五條 抵當證券ノ所持人ガ第三十一條又ハ第三十二條ノ規定ニ依リ其ノ前者ニ對シ償還ノ請求ヲ爲サントスルトキハ競賣代金ヲ受取リタル日又ハ第三十二條ノ許可ヲ得タル日ヨリ五日內ニ各裏書人ニ對シ償還請求ノ通知ヲ發スルコトヲ要ス
第三十六條 抵當證券ノ所持人ノ裏書人ニ對スル通知ハ證券ニ記載シタル住所ニ宛ツルヲ以テ足ル
第三十七條 抵當證券ノ所持人ガ第二十九條第一項又ハ第三十五條ニ規定スル通知ヲ發セザリシトキハ之ニ因リテ生ジタル損害ヲ賠償スル責ニ任ズ
第三十八條 抵當證券ノ所持人又ハ償還ヲ爲シタル裏書人ハ左ノ金額中支拂アラザリシモノニ付其ノ前者又ハ債務者ニ對シ償還又ハ支拂ノ請求ヲ爲スコトヲ得
二 支拂ノ請求ヲ爲シタル日後ノ元本ニ對スル法定利率ニ依ル利息但シ約定利率ガ法定利率ニ超ユルトキハ約定利率ニ依ル利息
三 第二十七條第二項ノ規定ニ依ル證明書作成ノ費用其ノ他ノ費用
第三十九條 抵當證券ノ所持人ノ其ノ前者ニ對スル償還請求權ハ競賣代金ヲ受取リタル日又ハ第三十二條第一項ノ許可ヲ得タル日ヨリ一年、裏書人ノ其ノ前者ニ對スル償還請求權ハ償還ヲ爲シタル日ヨリ六月ヲ經過シタルトキハ時效ニ因リテ消滅ス
第四十條 民法第四百七十條、第四百七十二條、商法第二百七十八條第二項、第二百七十九條、第二百八十一條、第四百三十七條、第四百三十八條、第四百四十條、第四百四十一條、第四百五十九條、第四百六十三條、第四百六十四條(第一項但書ヲ除ク)第四百八十三條、第四百八十八條ノ四、第四百九十五條及民法施行法第五十七條ノ規定ハ抵當證券ニ付之ヲ準用ス
第四十一條 不動產登記法第十條、第十二條、第十三條、第二十一條、第四十四條、第四十五條、第七十七條、第百五十條乃至第百五十四條第一項、第百五十五條、第百五十六條、第百五十八條及第百五十九條ノ規定ハ抵當證券ニ付之ヲ準用ス