第三百三十四條 書證ノ申出ハ證書ヲ提出シテ之ヲ爲ス
第三百三十五條 擧證者其使用セントスル證書カ相手方ノ手ニ存スル旨ヲ主張スルトキハ書證ノ申出ハ相手方ニ其證書ノ提出ヲ命センコトヲ申立テテ之ヲ爲ス可シ
第三百三十六條 相手方ハ左ノ場合ニ於テ證書ヲ提出スル義務アリ
第一 擧證者カ民法ノ規定ニ從ヒ訴訟外ニ於テモ證書ノ引渡又ハ其提出ヲ求ムルコトヲ得ルトキ
第二 證書カ其旨趣ニ因リ擧證者及ヒ相手方ニ共通ナルトキ
第三百三十七條 相手方ハ其手ニ存スル證書ニシテ其訴訟ニ於テ擧證ノ爲メ引用シタルモノヲ提出スル義務アリ準備書面中ニノミ引用シタルトキト雖モ亦同シ
第三百三十八條 證書ノ提出ヲ命センコトノ申立ニハ左ノ諸件ヲ揭ク可シ
第四 證書カ相手方ノ手ニ存スル旨ヲ主張スル理由タル事情
第三百三十九條 裁判所ハ證書ニ依リ證ス可キ事實ノ重要ニシテ且申立ヲ正當ナリト認ムル場合ニ於テ相手方カ證書ノ其手ニ存スルコトヲ自白スルトキ又ハ申立ニ對シ陳述セサルトキハ證據決定ヲ以テ證書ノ提出ヲ命ス
第三百四十條 相手方カ證書ヲ所持セサル旨ヲ申立ツルトキハ此申立ノ眞實ナルヤ否ヤヲ定ムル爲メ又ハ證書ノ所在ヲ穿鑿スル爲メ又ハ擧證者ノ使用ヲ妨クル目的ヲ以テ故意ニ證書ヲ隱匿シ若クハ使用ニ耐ヘサラシメタルヤ否ヤヲ穿鑿スル爲メ本章第十節ノ規定ニ從ヒテ相手方本人ヲ訊問ス可シ
相手方カ官廳ナルトキハ證書カ其官廳ノ保藏ニ係ラス又ハ其所在ヲ開示スルヲ得サル旨ノ長官ノ證明書ヲ以テ訊問ニ換フ裁判所ハ此證明書ヲ差出サシムル爲メ相當ノ期間ヲ定ム可シ
第三百四十一條 證書ヲ所持スルコトヲ自白シ又ハ之ヲ所持セスト申立テサル相手方カ其證書ヲ提出ス可シトノ命ニ從ハス又ハ相手方カ所持セスト申立テタル證書ニ付キ訊問ヲ受ケテ供述ヲ爲スコトヲ拒ミタルトキ又ハ擧證者ノ使用ヲ妨クル目的ヲ以テ故意ニ證書ヲ隱匿シ若クハ使用ニ耐ヘサラシメタルコトノ明確ナルトキハ擧證者ノ差出シタル證書ノ謄本ヲ正當ナルモノト看做ス若シ謄本ヲ差出ササルトキハ裁判所ハ其意見ヲ以テ證書ノ性質及ヒ旨趣ニ付キ擧證者ノ主張ヲ正當ナリト認ムルコトヲ得
前條第二項ニ揭ケタル證明書ヲ裁判所ノ定メタル期間內ニ差出ササルトキハ相手方タル官廳ニ對シ前項ト同一ノ結果ヲ生ス
第三百四十二條 擧證者其使用セントスル證書カ第三者ノ手ニ存スル旨ヲ主張スルトキハ書證ノ申出ハ其證書ヲ取寄スル爲メ期間ヲ定メンコトヲ申立テテ之ヲ爲ス
第三百四十三條 第三者ハ擧證者ノ相手方ニ於ケルト同一ナル理由ニ因リ證書ヲ提出スル義務アリ然レトモ强テ證書ヲ提出セシムルコトハ訴ヲ以テノミ之ヲ爲スコトヲ得
第三百四十四條 第三百四十二條ニ從ヒ申立ヲ爲スニハ第三百三十八條第一號乃至第三號及ヒ第五號ノ要件ラ履ミ且證書カ第三者ノ手ニ存スルコトヲ疏明ス可シ
第三百四十五條 證書ニ依リ證ス可キ事實ノ重要ニシテ且其申立カ前條ノ規定ニ適スルトキハ裁判所ハ證書提出ノ期間ヲ定ム可シ
第三者ニ對スル訴訟ノ完結シタルトキ又ハ擧證者カ訴ノ提起、訴訟ノ繼續又ハ强制執行ヲ遲延シタルトキハ相手方ハ前項ノ期間ノ滿了前ト雖モ訴訟手續ノ繼續ヲ申立ツルコトヲ得
第三百四十六條 擧證者其使用セントスル證書カ官廳又ハ公吏ノ手ニ存スル旨ヲ主張スルトキハ書證ノ申出ハ證書ノ送付ヲ官廳又ハ公吏ニ囑託セラレンコトヲ申立テテ之ヲ爲ス
此規定ハ當事者カ法律上ノ規定ニ從ヒ裁判所ノ助力ナクシテ取寄スルコトヲ得ヘキ證書ニハ之ヲ適用セス
官廳又ハ公吏カ第三百三十六條ノ規定ニ基キ證書ヲ提出スル義務アル場合ニ於テ其送付ヲ拒ムトキハ第三百四十二條乃至第三百四十五條ノ規定ヲ適用ス
第三百四十七條 證據決定ヲ爲シタル後第三百四十二條及ヒ第三百四十六條ノ規定ニ從ヒ書證ヲ申出テタル場合ニ於テ證書取寄ノ手續ノ爲ニ訴訟ノ完結ヲ遲延スルニ至ル可ク且裁判所ニ於テ原吿若クハ被吿カ訴訟ヲ遲延スル故意ヲ以テ又ハ甚シキ怠慢ニ因リ書證ヲ早ク申出テサリシコトノ心證ヲ得タルトキハ申立ニ因リ其書證ノ申出ヲ却下スルコトヲ得
第三百四十八條 口頭辯論ノ際證書ヲ提出スルニ於テハ其毀損若クハ紛失ノ恐アリ又ハ他ノ顯著ナル障碍アルトキハ受命判事又ハ受託判事ノ面前ニ證書ヲ提出ス可キ旨ヲ命スルコトヲ得
受命判事又ハ受託判事ハ證書ノ明細書及ヒ其謄本ヲ調書ニ添附シ又證書ノ一分ノミ必要ナルトキハ第百七條第二項ノ規定ニ從ヒテ作リタル抄本ヲ之ニ添附ス可シ
第三百四十九條 公正證書ハ正本又ハ認證ヲ受ケタル謄本ヲ以テ之ヲ提出スルコトヲ得然レトモ裁判所ハ擧證者ニ正本ノ提出ヲ命スルコトヲ得
私署證書ハ原本ヲ以テ之ヲ提出ス可シ若シ當事者カ未タ提出セサル原本ノ眞正ニ付キ一致シ只其證書ノ效力又ハ解釋ニ付テノミ爭ヲ爲ストキハ謄本ヲ提出スルヲ以テ足ル然レトモ裁判所ハ職權ヲ以テ擧證者ニ原本ノ提出ヲ命スルコトヲ得
提出シタル謄本ニ換ヘテ正本又ハ原本ヲ提出ス可キ旨ノ命ニ從ハサルトキハ裁判所ハ心證ヲ以テ謄本ニ如何ナル證據力ヲ付ス可キヤヲ裁判ス
第三百五十條 擧證者ハ證書ヲ提出シタル後ハ相手方ノ承諾ヲ得ルトキニ限リ此證據方法ヲ抛棄スルコトヲ得
第三百五十一條 公正證書又ハ檢眞ヲ經タル私署證書ヲ僞造若クハ變造ナリト主張スル者ハ其證書ノ眞否ヲ確定センコトノ申立ヲ爲ス可シ
此場合ニ於テハ裁判所ハ其證書ノ眞否ニ付キ中間判決ヲ以テ裁判ヲ爲ス可シ
第三百五十二條 私署證書ノ眞否ニ付キ爭アルトキハ裁判所ハ擧證者ノ申立ニ因リ檢眞ヲ爲スコトヲ得
第三百五十三條 私署證書ノ檢眞ハ總テノ證據方法及ヒ手跡若クハ印章ノ對照ニ因リテ之ヲ爲ス
證書ノ眞否ヲ證セントスル當事者ハ裁判所ノ定ムル期間內ニ手跡若クハ印章ヲ對照スル爲ニ適當ナル書類ヲ提出ス可シ
眞正ナリトノ自白又ハ證明シタル適當ノ對照書類ナキトキハ對照ノ爲メ原吿若クハ被吿ニ對シ裁判所ニ於テ一定ノ語辭ノ手記ヲ命スルコトヲ得其手記シタル語辭ハ調書ノ附錄トシテ之ニ添附ス可シ
裁判所ハ手跡若クハ印章ヲ對照シタル結果ニ付キ自由ナル心證ヲ以テ裁判ヲ爲シ又必要ナル場合ニ於テハ鑑定ヲ爲サシメタル後之ヲ爲ス
原吿若クハ被吿カ裁判所ノ定メタル期間內ニ對照書類ヲ提出セサルトキ又ハ對照ス可キ語辭ヲ手記ス可キ裁判所ノ命ニ對シ十分ナル辯解ヲ爲サスシテ之ニ從ハサルトキ又ハ書樣ヲ變シテ手記シタルトキハ證書ノ眞否ニ付テノ相手方ノ主張ハ其他ノ證據ヲ要セスシテ之ヲ眞正ナリト看做スコトヲ得
第三百五十四條 提出シタル證書ハ直チニ之ヲ還付シ又適當ナル場合ニ於テハ其謄本ヲ記錄ニ留メテ之ヲ還付ス可シ
然レトモ證書ノ僞造又ハ變造ナリト爭フトキハ檢事ノ意見ヲ聽キタル後ニ非サレハ之ヲ還付スルコトヲ得ス
第三百五十五條 公正證書ノ僞造若クハ變造ナルコトヲ眞實ニ反キテ主張シタル原吿若クハ被吿ニ惡意若クハ重過失ノ責アルトキハ五十圓以下ノ過料ヲ言渡ス
又私署證書ノ眞正ナルコトヲ眞實ニ反キテ爭フトキハ前項ト同一ナル條件ヲ以テ二十圓以下ノ過料ヲ言渡ス
第三百五十六條 本節ノ規定ハ事件ノ性質ニ於テ許ス限リハ事跡ノ紀念又ハ權利ノ證徵ノ爲メ作リタル割符、界標等ノ如キモノニモ之ヲ準用ス