民事訴訟法
法令番号: 法律第二十九號
公布年月日: 明治23年4月21日
法令の形式: 法律
朕民事訴訟法ヲ裁可シ之ヲ公布セシム此法律ハ明治二十四年四月一日ヨリ施行スヘキコトヲ命ス
御名御璽
明治二十三年三月二十七日
內閣總理大臣兼內務大臣 伯爵 山縣有朋
海軍大臣 伯爵 西鄕從道
司法大臣 伯爵 山田顯義
大藏大臣 伯爵 松方正義
陸軍大臣 伯爵 大山巖
文部大臣 子爵 榎本武揚
遞信大臣 伯爵 後藤象二郞
外務大臣 子爵 靑木周藏
農商務大臣 岩村通俊
法律第二十九號
民事訴訟法目錄
第一編
總則
第一章
裁判所
第一節
裁判所ノ事物ノ管轄
第二節
裁判所ノ土地ノ管轄
第三節
管轄裁判所ノ指定
第四節
裁判所ノ管轄ニ付テノ合意
第五節
裁判所職員ノ除斥及ヒ忌避
第六節
檢事ノ立會
第二章
當事者
第一節
訴訟能力
第二節
共同訴訟人
第三節
第三者ノ訴訟參加
第四節
訴訟代理人及ヒ輔佐人
第五節
訴訟費用
第六節
保證
第七節
訴訟上ノ救助
第三章
訴訟手續
第一節
口頭辯論及ヒ準備書面
第二節
送達
第三節
期日及ヒ期間
第四節
懈怠ノ結果及ヒ原狀囘復
第五節
訴訟手續ノ中斷及ヒ中止
第二編
第一審ノ訴訟手續
第一章
地方裁判所ノ訴訟手續
第一節
判決前ノ訴訟手續
第二節
判決
第三節
闕席判決
第四節
計算事件、財產分別及ヒ此ニ類スル訴訟ノ準備手續
第五節
證據調ノ總則
第六節
人證
第七節
鑑定
第八節
書證
第九節
檢證
第十節
當事者本人ノ訊問
第十一節
證據保全
第二章
區裁判所ノ訴訟手續
第一節
通常ノ訴訟手續
第二節
督促手續
第三編
上訴
第一章
控訴
第二章
上吿
第三章
抗吿
第四編
再審
第五編
證書訴訟及ヒ爲替訴訟
第六編
强制執行
第一章
總則
第二章
金錢ノ債權ニ付テノ强制執行
第一節
動產ニ對スル强制執行
第一款
通則
第二款
有體動產ニ對スル强制執行
第三款
債權及ヒ他ノ財產權ニ對スル强制執行
第四款
配當手續
第二節
不動產ニ對スル强制執行
第一款
通則
第二款
强制競賣
第三款
强制管理
第三節
船舶ニ對スル强制執行
第三章
金錢ノ支拂ヲ目的トセサル債權ニ付テノ强制執行
第四章
假差押及ヒ假處分
第七編
公示催吿手續
第八編
仲裁手續
民事訴訟法
第一編 總則
第一章 裁判所
第一節 裁判所ノ事物ノ管轄
第一條 裁判所ノ事物ノ管轄ハ裁判所構成法ノ規定ニ從フ
第二條 訴訟物ノ價額ニ依リ管轄ノ定マルトキハ以下數條ノ規定ニ從フ
第三條 訴訟物ノ價額ハ起訴ノ日時ニ於ケル價額ニ依リ之ヲ算定ス
果實、損害賠償及ヒ訴訟費用ハ法律上相牽連スル主タル請求ニ附帶シ一ノ訴ヲ以テ請求スルトキハ之ヲ算入セス
第四條 一ノ訴ヲ以テ數箇ノ請求ヲ爲ストキハ前條第二項ニ揭クルモノヲ除ク外其額ヲ合算ス
本訴ト反訴トノ訴訟物ノ價額ハ之ヲ合算セス
第五條 訴訟物ノ價額ハ左ノ方法ニ依リ之ヲ定ム
第一 債權ノ擔保又ハ債權ノ擔保ヲ爲ス從タル物權カ訴訟物ナルトキハ其債權ノ額ニ依ル但物權ノ目的物ノ價額寡キトキハ其額ニ依ル
第二 地役カ訴訟物ナルトキハ要役地ノ地役ニ依リ得ル所ノ價額ニ依ル但地役ノ爲メ承役地ノ價額ノ減シタル額カ要役地ノ地役ニ依リ得ル所ノ價額ヨリ多キトキハ其減額ニ依ル
第三 賃貸借又ハ永貸借ノ契約ノ有無又ハ其時期カ訴訟物ナルトキハ爭アル時期ニ當ル借賃ノ額ニ依ル但一个年借賃ノ二十倍ノ額カ右ノ額ヨリ寡キトキハ其二十倍ノ額ニ依ル
第四 定時ノ供給又ハ收益ニ付テノ權利カ訴訟物ナルトキハ一个年收入ノ二十倍ノ額ニ依ル但收入權ノ期限定マリタルモノニ付テハ其將來ノ收入ノ總額カ二十倍ノ額ヨリ寡キトキハ其額ニ依ル
第六條 訴訟物ノ價額ハ必要ナル場合ニ於テハ第三條乃至第五條ノ規定ニ從ヒ裁判所ノ意見ヲ以テ之ヲ定ム
裁判所ハ申立ニ因リ證據調ヲ命シ又ハ職權ヲ以テ檢證若クハ鑑定ヲ命スルコトヲ得
第七條 地方裁判所ノ判決ニ對シテハ其事件カ區裁判所ノ事物ノ管轄ニ屬ス可キ理由ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第八條 事物ノ管轄ニ付キ區裁判所又ハ地方裁判所カ管轄違ナリト宣言シ其裁判確定シタルトキハ此裁判ハ後ニ其事件ノ繫屬ス可キ裁判所ヲ覊束ス
第九條 地方裁判所カ事物ノ管轄違ナリトシテ訴ヲ却下スルトキハ原吿ノ申立ニ因リ同時ニ判決ヲ以テ原吿ノ指定シタル自己ノ管轄內ノ區裁判所ニ其訴訟ヲ移送ス可シ
區裁判所カ事物ノ管轄違ナリトシテ訴ヲ却下スルトキハ同時ニ判決ヲ以テ其訴訟ヲ所屬ノ地方裁判所ニ移送ス可シ
移送ノ申立ハ判決ニ接著スル口頭辯論ノ終結前ニ之ヲ爲ス可シ
移送言渡ノ判決確定シタルトキハ其訴訟ハ移送ヲ受ケタル裁判所ニ繫屬スルモノト看做ス
第二節 裁判所ノ土地ノ管轄(裁判籍)
第十條 人ノ普通裁判籍ハ其住所ニ依リテ定マル
普通裁判籍アル地ノ裁判所ハ其人ニ對スル總テノ訴ニ付キ管轄ヲ有ス但訴ニ付キ專屬裁判籍ヲ定メサル場合ニ限ル
第十一條 軍人、軍屬ハ裁判籍ニ付テハ兵營地若クハ軍艦定繫所ヲ以テ住所トス但此規定ハ豫備、後備ノ軍籍ニ在ル者及ヒ兵役義務履行ノ爲メノミニ服役スル軍人、軍屬ニ之ヲ適用セス
第十二條 外國ニ在ル本邦ノ公使及ヒ公使館ノ官吏竝ニ其家族、從者ノ裁判籍上ノ住所ハ本邦ニ於テ本人ノ最後ニ有セシ住所ナリトス此住所ナキモノニ付テハ司法大臣ノ命令ヲ以テ豫メ定ムル東京內ノ區ヲ以テ其住所ナリトス
第十三條 內國ニ住所ヲ有セサル者ノ普通裁判籍ハ本人ノ現在地ニ依リテ定マル若シ其現在地ノ知レサルカ又ハ外國ニ在ルトキハ其最後ニ有セシ內國ノ住所ニ依リテ定マル
然レトモ外國ニ住所ヲ有スル者ニ對シテハ內國ニ於テ生シタル權利關係ニ限リ前項ノ裁判籍ニ於テ訴ヲ起スコトヲ得
第十四條 國ノ普通裁判籍ハ訴訟ニ付キ國ヲ代表スル官廳ノ所在地ニ依リテ定マル但訴訟ニ付キ國ヲ代表スルニ付テノ規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
公又ハ私ノ法人及ヒ其資格ニ於テ訴ヘラルルコトヲ得ル會社其他ノ社團又ハ財團等ノ普通裁判籍ハ其所在地ニ依リテ定マル此所在地ハ別段ノ定ナキトキハ事務所所在ノ地トス若シ事務所ナキトキ又ハ數所ニ於テ事務ヲ取扱フトキハ其首長又ハ事務擔當者ノ住所ヲ以テ事務所ト看做ス
第十五條 生徒、雇人、營業使用人、職工、習業者其他性質上一定ノ地ニ永ク寓在ス可キ者ニ對スル財產權上ノ請求ニ付テノ訴ハ其現在地ノ裁判所ニ之ヲ起スコトヲ得
兵役義務履行ノ爲メノミニ服役スル軍人、軍屬ニ對シテハ其兵營地若クハ軍艦定繫所ノ裁判所ニ前項ノ訴ヲ起スコトヲ得
第十六條 製造、商業其他ノ營業ニ付キ直接ニ取引ヲ爲ス店舖ヲ有スル者ニ對シテハ其店舖所在地ノ裁判所ニ營業上ニ關スル訴ヲ起スコトヲ得
前項ノ裁判籍ハ住家及ヒ農業用建物アル地所ヲ利用スル所有者、用益者又ハ賃借人ニ對スル訴ニ付テモ亦之ヲ適用ス但此訴カ地所ノ利用ニ付テノ權利關係ヲ有スルトキニ限ル
第十七條 內國ニ住所ヲ有セサル債務者ニ對スル財產權上ノ請求ニ付テノ訴ハ其財產又ハ訴ヲ爲シテ請求スル物ノ所在地ノ裁判所ニ之ヲ起スコトヲ得債權ニ付テハ債務者(第三債務者)ノ住所ヲ以テ其財產ノ所在地トス又債權ニ付キ物カ擔保ノ責ヲ負フトキハ其物ノ所在地ヲ以テ財產ノ所在地トス
第十八條 契約ノ成立若クハ不成立ノ確定又ハ其履行若クハ銷除、廢罷、解除又ハ其不履行若クハ不十分ノ履行ニ關スル賠償ノ訴ハ其訴訟ニ係ル義務ヲ履行ス可キ地ノ裁判所ニ之ヲ起スコトヲ得
第十九條 會社其他ノ社團ヨリ社員ニ對シ又ハ社員ヨリ社員ニ對シ其社員タル資格ニ基ク請求ノ訴ハ其會社其他ノ社團ノ普通裁判籍アル地ノ裁判所ニ之ヲ起スコトヲ得
第二十條 不正ノ損害ノ訴ハ責任者ニ對シ其行爲ノ有リタル地ノ裁判所ニ之ヲ起スコトヲ得
第二十一條 辯護士又ハ執達吏ノ手數料及ヒ立替金ニ付キ其委任者ニ對スル訴ハ訴訟物ノ價額ノ多寡ニ拘ハラス本訴訟ノ第一審裁判所ニ之ヲ起スコトヲ得
第二十二條 不動產ニ付テハ其所在地ノ裁判所ハ總テ不動產上ノ訴殊ニ本權竝ニ占有ノ訴及ヒ分割竝ニ經界ノ訴ヲ專ラニ管轄ス
地役ニ付テノ訴ハ承役地所在地ノ裁判所專ラニ之ヲ管轄ス
第二十三條 不動產上ノ裁判籍ニ於テハ債權ノ擔保ヲ爲ス從タル物權ニ基ク不動產上ノ訴ニ附帶シテ同一被吿ニ對スル債權ノ訴ヲ起スコトヲ得
不動產上ノ裁判籍ニ於テハ不動產ノ所有者若クハ占有者ニ對スル人權ノ訴又ハ不動產ニ加ヘタル損害ノ訴ヲ起スコトヲ得
第二十四條 相續權、遺贈其他死亡ニ因リテ效果ヲ生スル處分ニ基ク請求ノ訴ハ遺產者死亡ノ時普通裁判籍ヲ有セシ裁判所ニ之ヲ起スコトヲ得
相續裁判籍ニ於テハ遺產債權者ヨリ遺產者又ハ相續人ニ對スル請求ノ訴ヲ起スコトヲ得但遺產ノ全部又ハ一分カ其裁判所ノ管轄區內ニ存在スルトキニ限ル
第二十五條 第二十二條ノ規定ヲ除ク外原吿ハ數箇ノ管轄裁判所ノ中ニ就キ選擇ヲ爲スコトヲ得
第三節 管轄裁判所ノ指定
第二十六條 管轄裁判所ノ指定ハ裁判所構成法ニ定メタル場合ノ外尙ホ不動產上ノ裁判籍ニ訴ヲ起ス可キ場合ニ於テ不動產カ數箇ノ裁判所ノ管轄區內ニ散在スルトキモ亦之ヲ爲ス
第二十七條 管轄裁判所ノ指定ニ付キ申請ヲ爲ス場合及ヒ其決定ヲ爲ス裁判所ハ裁判所構成法第十條ノ規定ニ從フ
第二十八條 管轄裁判所ノ指定ニ付テノ申請ハ書面又ハ口頭ヲ以テ其申請ニ付キ管轄權ヲ有スル裁判所ニ之ヲ爲スコトヲ得
右裁判所ハ口頭辯論ヲ經スシテ其申請ヲ決定ス
管轄裁判所ヲ定メタル決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第四節 裁判所ノ管轄ニ付テノ合意
第二十九條 第一審裁判所ハ當然管轄權ヲ有セサルモ當事者ノ合意ニ因リ管轄權ヲ有ス但書面ヲ以テ合意ヲ爲シ且其合意カ一定ノ權利關係及ヒ其權利關係ヨリ生スル訴訟ニ係ルトキニ限ル
第三十條 被吿カ管轄違ノ申立ヲ爲サスシテ本案ノ口頭辯論ヲ爲ストキハ亦前條ト同一ノ效力ヲ生ス
第三十一條 左ノ場合ニ於テハ第二十九條及ヒ第三十條ノ規定ヲ適用セス
第一 財產權上ノ請求ニ非サル訴訟ニ係ルトキ
第二 專屬管轄ニ屬スル訴ナルトキ
第五節 裁判所職員ノ除斥及ヒ忌避
第三十二條 判事ハ左ノ場合ニ於テ法律ニ依リ其職務ノ執行ヨリ除斥セラル可シ
第一 判事又ハ其婦カ原吿若クハ被吿タルトキ又ハ訴訟ニ係ル請求ニ付キ當事者ノ一方若クハ雙方ト共同權利者、共同義務者若クハ償還義務者タル關係ヲ有スルトキ
第二 判事又ハ其婦カ當事者ノ一方若クハ雙方又ハ其配偶者ト親族ナルトキ但姻族ニ付テハ婚姻ノ解除シタルトキト雖モ亦同シ
第三 判事カ同一ノ事件ニ付キ證人若クハ鑑定人ト爲リテ訊問ヲ受クルトキ又ハ訴訟代理人タル任ヲ受クルトキ若クハ受ケタルトキ又ハ法律上代理人ト爲ル權利ヲ有スルトキ若クハ之ヲ有シタルトキ
第四 判事カ不服ノ申立アル裁判ヲ前審又ハ仲裁ニ於テ爲スニ當リ判事又ハ仲裁人トシテ干與シタルトキ但此場合ニ於テ判事ハ受命判事又ハ受託判事トシテハ職務ノ執行ヨリ除斥セラルルコト無シ
第三十三條 判事カ法律ニ依リ職務ノ執行ヨリ除斥セラルルトキ及ヒ偏頗ノ恐アルトキハ總テノ場合ニ於テ各當事者ヨリ之ヲ忌避スルコトヲ得
偏頗ノ忌避ハ判事ノ不公平ナル裁判ヲ爲スコトヲ疑フニ足ル可キ事情アルトキ之ヲ爲スコトヲ得
第三十四條 判事カ法律ニ依リ職務ノ執行ヨリ除斥セラルル場合ニ於ケル判事ノ忌避ハ其訴訟ノ如何ナル程度ニ在ルヲ問ハス之ヲ爲スコトヲ得
偏頗ノ恐アル場合ニ於テハ原吿若クハ被吿其覺知シタル忌避ノ原因ヲ主張セスシテ判事ノ面前ニ於テ申立ヲ爲シ又ハ相手方ノ申立ニ對シ陳述ヲ爲シタル後ハ其判事ヲ忌避スルコトヲ得ス
第三十五條 忌避ノ申請ハ判事所屬ノ裁判所ニ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
忌避ノ原因ハ之ヲ疏明スルコトヲ要ス忌避セラレタル判事ノ職務上ノ陳述ハ其疏明ノ用ニ充ツルコトヲ得
原吿若クハ被吿カ判事ノ面前ニ於テ申立ヲ爲シ又ハ相手方ノ申立ニ對シ陳述ヲ爲シタル後其判事ニ對シ偏頗ノ忌避ヲ爲ストキハ忌避ノ原因其後ニ生シ又ハ之ヲ其後ニ覺知シタルコトヲ疏明ス可シ
第三十六條 忌避セラレタル判事合議裁判所ニ屬スルトキハ其裁判所忌避ノ申請ヲ裁判ス但忌避セラレタル判事ハ其裁判ニ參與スルコトヲ得ス
若シ其裁判所右判事ノ退去ニ因リ決定ヲ爲スコト能ハサルトキハ直近上級ノ裁判所其申請ヲ裁判ス
區裁判所判事忌避セラレタルトキハ上級ノ地方裁判所其申請ヲ裁判ス若シ區裁判所判事カ忌避ノ申請ヲ正當ナリト爲ストキハ裁判ヲ要セス
第三十七條 忌避ノ申請ニ付テノ裁判ハ口頭辯論ヲ經スシテ之ヲ爲スコトヲ得忌避セラレタル判事ハ先ツ申請ノ理由ニ付キ職務上意見ヲ述フ可シ
第三十八條 忌避ノ申請ヲ正當ナリト宣言スル決定ニ對シテハ上訴ヲ爲スコトヲ得ス其申請ヲ不當ナリト宣言スル決定ニ對シテハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
第三十九條 忌避セラレタル判事ハ忌避申請ノ完結スルマテ總テノ行爲ヲ避ク可シ然レトモ偏頗ノ爲ニ忌避セラレタル判事ハ猶豫ス可カラサル行爲ヲ爲ス可シ
第四十條 忌避申請ノ管轄裁判所ハ其申請アラサルモ忌避ノ原因タル事情ニ付キ判事ヨリ申出アルトキ又ハ他ノ事由ヨリシテ判事カ法律ニ依リ除斥セラルル疑アルトキモ亦裁判ヲ爲ス
此裁判ハ豫メ當事者ヲ審訊セスシテ之ヲ爲ス又其裁判ハ之ヲ當事者ニ送達スルコトヲ要セス
第四十一條 本節ノ規定ハ裁判所書記ニモ之ヲ準用ス但其裁判ハ書記所屬ノ裁判所之ヲ爲ス
第六節 檢事ノ立會
第四十二條 檢事ハ左ノ訴訟ニ付キ意見ヲ述フル爲メ其口頭辯論ニ立會フ可シ
第一 公ノ法人ニ關スル訴訟
第二 婚姻ニ關スル訴訟
第三 夫婦間ノ財產ニ關スル訴訟
第四 親子若クハ養親子ノ分限其他總テ人ノ分限ニ關スル訴訟
第五 無能力者ニ關スル訴訟
第六 養料ニ關スル訴訟
第七 失踪者及ヒ相續人虧缺ノ遺產ニ關スル訴訟
第八 證書ノ僞造若クハ變造ノ訴訟
第九 再審
檢事ノ陳述ハ當事者ノ辯論終リタルトキ之ヲ爲ス
當事者ハ檢事ノ意見ニ對シ事實ノ更正ノミニ付キ陳述ヲ爲スコトヲ得
第二章 當事者
第一節 訴訟能力
第四十三條 原吿若クハ被吿カ自ラ訴訟ヲ爲シ又ハ訴訟代理人ヲシテ之ヲ爲サシムル能力ト法律上代理人ニ依レル訴訟無能力者ノ代表ト法律上代理人カ訴訟ヲ爲シ又ハ一ノ訴訟行爲ヲ爲スニ付テノ特別授權ノ必要トハ民法ノ規定ニ從フ
第四十四條 外國人ハ自國ノ法律ニ從ヒ訴訟能力ヲ有セサルモ本邦ノ法律ニ從ヒ訴訟能力ヲ有スルモノナルトキハ之ヲ有スルモノト看做ス
第四十五條 裁判所ハ訴訟ノ如何ナル程度ニ在ルヲ問ハス職權ヲ以テ訴訟能力、法律上代理人タル資格及ヒ訴訟ヲ爲スニ必要ナル授權ニ欠缺ナキヤ否ヤヲ調査ス可シ
裁判所ハ遲滯ノ爲メ原吿若クハ被吿ニ危害アリ且其欠缺ノ補正ヲ爲シ得ルモノト認ムルトキハ原吿若クハ被吿又ハ其法律上代理人ニ其欠缺ノ補正ヲ爲ス條件ヲ以テ一時訴訟ヲ爲スヲ許スコトヲ得此場合ニ於テ裁判所ハ欠缺補正ノ爲メ相當ノ期間ヲ定メ其期間ノ滿了前ニ判決ヲ爲スコトヲ得ス但其欠缺ノ補正ハ判決ニ接著スル口頭辯論ノ終結マテ之ヲ追完スルコトヲ得
第四十六條 訴訟無能力者又ハ相續人ノ未定ノ遺產又ハ不分明ナル相續人ニ對シ訴ヲ起ス可キ場合ニ於テ法律上代理人アラサルトキハ其事件ノ繫屬ス可キ裁判所ノ裁判長ハ申立ニ因リ遲滯ノ爲ニ危害ノ恐アル場合ニ限リ特別代理人ヲ任ス可シ
右申請ハ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得此裁判ハ口頭辯論ヲ經スシテ之ヲ爲シ其裁判ハ申請人ニ之ヲ送達シ又申請ヲ認許シタルトキハ其任セラレタル特別代理人ニモ亦之ヲ送達ス可シ
申請ヲ却下スル裁判ニ對シテハ抗吿ヲ爲スコトヲ得
裁判長ヨリ任セラレタル特別代理人ハ法律上代理人又ハ相續人ノ出頭スルマテ訴訟行爲ニ付キ法律上代理人ノ權利及ヒ義務ヲ有ス
第四十七條 第十五條ニ揭ケタル場合ニ於テ訴訟無能力者カ其現在地又ハ兵營地若クハ軍艦定繫所ノ裁判所ニ訴ヲ受ク可キ場合ニ於テ其法律上代理人他ノ地ニ住スルトキハ遲滯ノ爲メ危害ナシト雖モ前條ノ規定ニ從ヒ特別代理人ヲ任スルコトヲ得
此他裁判ニ對シ抗吿ヲ許ス規定ヲ除ク外總テ前條ノ規定ヲ適用ス
第二節 共同訴訟人
第四十八條 左ノ場合ニ於テハ共同訴訟人トシテ數人カ共ニ訴ヲ爲シ又ハ訴ヲ受クルコトヲ得
第一 數人カ訴訟物ニ付キ權利共通若クハ義務共通ノ地位ニ立ツトキ
第二 同一ナル事實上及ヒ法律上ノ原因ニ基ク請求又ハ義務カ訴訟ノ目的物タルトキ
第三 性質ニ於テ同種類ナル事實上及ヒ法律上ノ原因ニ基ク同種類ナル請求又ハ義務カ訴訟ノ目的物タルトキ
第四十九條 共同訴訟人ハ其資格ニ於テハ各別ニ相手方ニ對立シ其一人ノ訴訟行爲及ヒ懈怠又ハ相手方ヨリ其一人ニ對スル訴訟行爲及ヒ懈怠ハ他ノ共同訴訟人ニ利害ヲ及ホサス
第五十條 然レトモ總テノ共同訴訟人ニ對シ訴訟ニ係ル權利關係カ合一ニノミ確定ス可キトキニ限リ左ノ規定ヲ適用ス
共同訴訟人中ノ或ル人ノ攻擊及ヒ防禦ノ方法(證據方法ヲ包含ス)ハ他ノ共同訴訟人ノ利益ニ於テ效ヲ生ス
共同訴訟人中ノ或ル人カ爭ヒ又ハ認諾セサルトキト雖モ總テノ共同訴訟人カ悉ク爭ヒ又ハ認諾セサルモノト看做ス
共同訴訟人中ノ或ル人ノミカ期日又ハ期間ヲ懈怠シタルトキハ其懈怠シタル者ハ懈怠セサル者ニ代理ヲ任シタルモノト看做ス
然レトモ懈怠シタル共同訴訟人ニハ其懈怠セサリシ場合ニ於テ爲ス可キ總テノ送達及ヒ呼出ヲ爲スコトヲ要ス其懈怠シタル共同訴訟人ハ何時タリトモ其後ノ訴訟手續ニ再ヒ加ハルコトヲ得
第三節 第三者ノ訴訟參加
第五十一條 他人ノ間ニ權利拘束ト爲リタル訴訟ノ目的物ノ全部又ハ一分ヲ自己ノ爲ニ請求スル第三者ハ本訴訟ノ權利拘束ノ終ニ至ルマテ其訴訟カ第一審ニ於テ繫屬シタル裁判所ニ當事者雙方ニ對スル訴(主參加)ヲ爲シテ其請求ヲ主張スルコトヲ得
第三者カ原吿及ヒ被吿ノ共謀ニ因リ自己ノ債權ニ損害ヲ生スルコトヲ主張スルトキモ亦同シ
第五十二條 本訴訟ハ第一審ニ繫屬スルト上級審ニ繫屬スルトヲ問ハス原吿、被吿若クハ主參加人ノ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ主參加ニ付テノ權利拘束ノ終ニ至ルマテ之ヲ中止スルコトヲ得
中止ノ申請ハ書面又ハ口頭ヲ以テ本訴訟ノ繫屬スル裁判所ニ之ヲ爲スコトヲ得
決定ハ口頭辯論ヲ經スシテ之ヲ爲スコトヲ得
中止ヲ命スル決定ニ對シテハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
第五十三條 他人ノ間ニ權利拘束ト爲リタル訴訟ニ於テ其一方ノ勝訴ニ依リ權利上利害ノ關係ヲ有スル者ハ訴訟ノ如何ナル程度ニ在ルヲ問ハス權利拘束ノ繼續スル間ハ其一方ヲ補助(從參加)スル爲メ之ニ附隨スルコトヲ得
第五十四條 從參加人ハ其附隨スル時ニ於ケル訴訟ノ程度ヲ妨ケサル限リハ其主タル原吿若クハ被吿ノ爲ニ攻擊及ヒ防禦ノ方法ヲ施用シ且總テノ訴訟行爲ヲ有效ニ行ヒ殊ニ主タル原吿若クハ被吿ノ爲ニ存スル期間內ニ故障、支拂命令ニ對スル異議又ハ上訴ヲ爲ス權利ヲ有ス
從參加人ノ陳述及ヒ行爲ト主タル原吿若クハ被吿ノ陳述及ヒ行爲ト相牴觸スル場合ニ於テハ主タル原吿若クハ被吿ノ陳述及ヒ行爲ヲ以テ標準ト爲ス但民法ニ於テ此ニ異ナル規定アルトキハ此限ニ在ラス
第五十五條 從參加人ハ訴訟ヨリ脫退シタルトキト雖モ其補助シタル原吿若クハ被吿トノ關係ニ於テハ其訴訟ノ確定裁判ヲ不當ナリト主張スルコトヲ得ス
從參加人ハ其附隨ノ時ノ訴訟ノ程度ニ因リ又ハ主タル原吿若クハ被吿ノ所爲ニ因リ攻擊及ヒ防禦ノ方法ヲ施用スルコトヲ妨ケラルルトキ又ハ主タル原吿若クハ被吿カ從參加人ノ當時知ラサリシ攻擊及ヒ防禦ノ方法ヲ故意又ハ重過失ニ因リ施用セサリシトキニ限リ其補助シタル原吿若クハ被吿カ訴訟ヲ不十分ニ爲シタリト主張スルコトヲ得
第五十六條 從參加ハ本訴訟ノ繫屬スル裁判所ニ申請ヲ以テ之ヲ爲ス可シ
申請ニハ當事者及ヒ訴訟ヲ表示シ又一定ノ利害關係及ヒ附隨セントスル陳述ヲ開示ス可シ
申請ハ當事者ニ之ヲ送達ス可シ
從參加ハ故障、異議又ハ上訴ト併合シテ之ヲ爲スコトヲ得
第五十七條 原吿若クハ被吿カ從參加ニ付キ異議ヲ述フルトキハ當事者及ヒ從參加人ヲ審訊シタル後決定ヲ以テ參加ノ許否ヲ裁判ス其裁判ハ口頭辯論ヲ經スシテ之ヲ爲スコトヲ得
利害關係ノ存否ニ付キ爭アルトキハ從參加人其關係ヲ疏明スルノミヲ以テ參加ヲ許スニ足ル
右ノ決定ニ對シテハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
參加ヲ許ササル裁判確定セサル間ハ從參加人ヲ本訴訟ニ立會ハシメ殊ニ總テノ期日ニ之ヲ呼出シ又本訴訟ニ關係アル裁判ヲ爲シタルトキハ從參加人ニ其裁判ヲ送達ス可シ
第五十八條 從參加人ハ當事者雙方ノ承諾ヲ得テ其附隨シタル原吿若クハ被吿ニ代リ訴訟ヲ擔任スルコトヲ得此場合ニ於テハ其原吿若クハ被吿ノ申立ニ因リ判決ヲ以テ訴訟ヨリ其原吿若クハ被吿ヲ脫退セシム可シ
第五十九條 原吿若クハ被吿若シ敗訴スルトキハ第三者ニ對シ擔保又ハ賠償ノ請求ヲ爲シ得ヘシト信シ又ハ第三者ヨリ請求ヲ受ク可キコトヲ恐ルル場合ニ於テハ訴訟ノ權利拘束間第三者ニ訴訟ヲ吿知スルコトヲ得
訴訟ノ吿知ヲ受ケタル者ハ更ニ訴訟ヲ吿知スルコトヲ得
第六十條 訴訟吿知ハ訴訟ノ繫屬スル裁判所ニ其訴訟吿知ノ理由及ヒ訴訟ノ程度ヲ記載シタル書面ヲ提出シテ之ヲ爲ス可シ
此書面ハ第三者ニ送達スルコトヲ要ス又訴訟ヲ吿知スル原吿若クハ被吿ノ相手方ニハ其謄本ヲ送付ス可シ
第六十一條 訴訟ハ訴訟吿知ニ拘ハラス之ヲ續行ス
第三者參加ス可キコトヲ陳述スルトキハ從參加ノ規定ヲ適用ス
第六十二條 第三者ノ名ヲ以テ物ヲ占有スルコトヲ主張スル者其物ノ占有者トシテ被吿ト爲リタルトキハ本案ノ辯論前第三者ヲ指名シ之ニ陳述ヲ爲サシムル爲メ其呼出ヲ求ムルトキハ第三者ノ陳述ヲ爲シ又ハ之ヲ爲ス可キ期日マテ本案ノ辯論ヲ拒ムコトヲ得
第三者カ被吿ノ主張ヲ爭フトキ又ハ陳述ヲ爲ササルトキハ被吿ハ原吿ノ申立ニ應スルコトヲ得
第三者カ被吿ノ主張ヲ正當ト認ムルトキハ被吿ノ承諾ヲ得テ之ニ代リ訴訟ヲ引受クルコトヲ得
第三者カ訴訟ヲ引受ケタルトキハ裁判所ハ被吿ノ申立ニ因リ其被吿ヲ訴訟ヨリ脫退セシム可シ其物ニ付テノ裁判ハ被吿ニ對シテモ效力ヲ有シ且之ヲ執行スルコトヲ得
第四節 訴訟代理人及ヒ輔佐人
第六十三條 原吿若クハ被吿自ラ訴訟ヲ爲ササルトキハ辯護士ヲ以テ訴訟代理人トシ之ヲ爲ス
辯護士ノ在ラサル場合ニ於テハ訴訟能力者タル親族若クハ雇人ヲ以テ訴訟代理人ト爲シ若シ此等ノ者ノ在ラサルトキハ他ノ訴訟能力者ヲ以テ訴訟代理人ト爲スコトヲ得
區裁判所ニ於テハ辯護士ノ在ルトキト雖モ訴訟能力者タル親族若クハ雇人ヲ以テ訴訟代理人ト爲スコトヲ得
第六十四條 訴訟委任ハ裁判所ノ記錄ニ備フ可キ書面委任ヲ以テ之ヲ證ス可シ
私署證書ハ相手方ノ求ニ因リ之ヲ認證ス可シ其認證ハ公證人之ヲ爲シ又相當官吏之ヲ爲スコトヲ得
口頭辯論ノ期日又ハ受命判事若クハ受託判事ノ面前ニ於テ口頭委任ヲ爲シ其陳述ヲ調書ニ記載セシムルトキハ書面委任ト同一ナリトス
第六十五條 訴訟委任ハ反訴、主參加、故障、假差押若クハ假處分又ハ强制執行ニ因リ生スル訴訟行爲ヲ併セ訴訟ニ關スル總テノ訴訟行爲ヲ爲シ及ヒ相手方ヨリ辨濟スル費用ノ領收ヲ爲ス權ヲ授與ス
訴訟代理人ハ特別ノ委任ヲ受クルニ非サレハ控訴若クハ上吿ヲ爲シ、再審ヲ求メ、代人ヲ任シ、和解ヲ爲シ、訴訟物ヲ抛棄シ又ハ相手方ヨリ主張シタル請求ヲ認諾スル權ヲ有セス
第六十六條 訴訟委任ハ法律上ノ範圍(第六十五條第一項)ヲ制限スルモ其制限ハ相手方ニ對シ效力ナシ
然レトモ辯護士ニ依レル代理ヲ除ク外ハ各箇ノ訴訟行爲ニ付キ委任ヲ爲スコトヲ得
第六十七條 訴訟代理人數人アルトキハ共同若クハ各別ニテ代理スルコトヲ得但委任ニ此ト異ナル定アルモ相手方ニ對シ其效力ナシ
第六十八條 訴訟代理人カ委任ノ範圍內ニ於テ爲シタル訴訟上ノ行爲及ヒ不行爲ハ原吿若クハ被吿ニ對シテハ其本人ノ行爲又ハ不行爲ト同一ナリトス
然レトモ代理人ノ事實上ノ陳述ハ其代理人ト共ニ裁判所ニ出頭シタル原吿若クハ被吿ヨリ卽時ニ之ヲ取消シ又ハ更正シタルトキニ限リ其效力ヲ失フ
第六十九條 委任者ノ死亡、訴訟能力若クハ法律上代理ノ變更、委任ノ廢罷及ヒ代理ノ謝絕ニ因ル委任ノ消滅ハ其消滅ヲ通知スルマテ相手方ニ對シ其效力ナシ
此通知書ハ原吿若クハ被吿ヨリ受訴裁判所ニ之ヲ差出シ裁判所ハ相手方ニ之ヲ送達ス可シ
代理人ハ謝絕ヲ爲スモ委任者他ノ方法ヲ以テ自己ノ權利ノ防衞ヲ爲ササル間ハ其委任者ノ爲ニ行爲ヲ爲スコトヲ得
第七十條 委任ノ欠缺ハ原吿若クハ被吿ノ爲メ其代理人ナキモノト看做ス
裁判所ハ職權ヲ以テ委任ノ欠缺ヲ調査シ委任ナク又ハ適式ノ委任ナク代理人トシテ出頭スル者ニ事情ニ從ヒ費用及ヒ損害ノ保證ヲ立テシメ又ハ之ヲ立テシメスシテ假ニ訴訟ヲ爲スヲ許スコトヲ得
判決ハ欠缺ヲ補正シ又ハ之ヲ補正スル爲メ裁判所ノ適宜ニ定ムル期間ノ滿了後ニ限リ之ヲ爲スコトヲ得但欠缺ノ補正ハ判決ニ接著スル口頭辯論ノ終結マテ之ヲ追完スルコトヲ得
第七十一條 原吿若クハ被吿ハ辯護士ヲ輔佐人ト爲シ又ハ何時ニテモ裁判所ノ取消シ得ヘキ許可ヲ得テ他ノ訴訟能力者ヲ輔佐人ト爲シテ共ニ出頭スルコトヲ得其輔佐人ハ口頭辯論ニ於テ權利ヲ伸張シ又ハ防禦スル爲メ原吿若クハ被吿ヲ補助スルモノトス
輔佐人ノ演述ハ原吿若クハ被吿卽時ニ之ヲ取消シ又ハ更正セサルトキニ限リ原吿若クハ被吿自ラ演述シタルモノト看做ス
第五節 訴訟費用
第七十二條 敗訴ノ原吿若クハ被吿ハ訴訟ノ費用ヲ負擔シ殊ニ訴訟ニ因リ生シタル費用ヲ相手方ニ辨濟ス可シ但其費用ハ裁判所ノ意見ニ於テ相當ナル權利伸張又ハ權利防禦ニ必要ナリト認ムルモノニ限ル
訴訟中ニ訴ヲ取下ケ、請求ヲ抛棄シ又ハ相手方ノ請求ヲ認諾スル原吿若クハ被吿ハ敗訴ノ原吿若クハ被吿ニ同シ
第七十三條 當事者ノ各方一分ハ勝訴ト爲リ一分ハ敗訴ト爲ルトキハ其費用ヲ相消シ又ハ割合ヲ以テ之ヲ分擔ス可シ第一ノ場合ニ於テハ各當事者ハ其支出シタル費用ヲ自ラ負擔シ他ノ一方ニ對シ辨濟ヲ請求スルコトヲ得ス
然レトモ裁判所ハ相手方ノ要求格外ニ過分ナルニ非ス且別段ノ費用ヲ生セサリシトキ又ハ判事ノ意見、鑑定人ノ鑑定若クハ相互ノ計算ニ因リ要求額ヲ定ムルニ非サレハ容易ニ過分ノ要求ヲ避クルコトヲ得サリシトキハ當事者ノ一方ニ訴訟費用ノ全部ヲ負擔セシムルコトヲ得
第七十四條 被吿直チニ請求ヲ認諾シ且其作爲ニ因リ訴ヲ起スニ至ラシメタルニ非サルトキハ訴訟費用ハ原吿ノ勝訴ト爲リタルニ拘ハラス其負擔ニ歸ス
第七十五條 期日若クハ期間ヲ懈怠シ又ハ自己ノ過失ニ因リ期日ノ變更、辯論ノ延期、辯論續行ノ爲ニスル期日ノ指定、期間ノ延長其他訴訟ノ遲滯ヲ生セシメタル原吿若クハ被吿ハ本案ノ勝訴者ト爲リタルニ拘ハラス此カ爲ニ生シタル費用ヲ負擔ス可シ
第七十六條 裁判所ハ無益ナル攻擊又ハ防禦ノ方法(證據方法ヲ包含ス)ヲ主張シタル原吿若クハ被吿ヲシテ本案ノ勝訴者ト爲リタルニ拘ハラス其方法ノ費用ヲ負擔セシムルコトヲ得
第七十七條 無益ナル上訴又ハ取下ケタル上訴ノ費用ハ之ヲ提出シタル原吿若クハ被吿ノ負擔ニ歸ス
第七十八條 上訴ニ因リ裁判ノ全部又ハ一分ヲ廢棄若クハ破毀スルトキハ訴訟ノ總費用(上訴ノ費用ヲ包含ス)ノ裁判ハ本案ノ終局裁判ト併合シテ更ニ之ヲ爲ス可シ
原吿若クハ被吿カ前審ニ於テ主張スルコトヲ得ヘカリシ事實又ハ攻擊若クハ防禦ノ方法ヲ新ニ提出スルニ因リ勝訴者ト爲ルトキハ其原吿若クハ被吿ニ上訴費用ノ全部又ハ一分ヲ負擔セシムルコトヲ得
第七十九條 當事者カ訴訟物ニ付キ和解ヲ爲ストキハ其訴訟ノ費用及ヒ和解ノ費用ハ共ニ相消シタルモノト看做ス但當事者別段ノ合意ヲ爲シタルトキハ此限ニ在ラス
第八十條 法律ノ規定ニ從ヒ費用ニ付キ共同訴訟人ノ連帶義務ノ生セサルトキニ限リ其共同訴訟人ハ相手方ニ對シ平等ニ費用ヲ負擔ス然レトモ共同訴訟人ノ訴訟ニ於ケル利害ノ關係著シク相異ナルトキハ裁判所ハ其利害關係ノ割合ニ從ヒ費用ヲ負擔セシムルコトヲ得
共同訴訟人中ノ或ル人カ特別ノ攻擊又ハ防禦ノ方法ヲ主張シタルトキハ他ノ共同訴訟人ハ此カ爲ニ生シタル費用ヲ負擔セス
第八十一條 從參加ニ對シ原吿若クハ被吿カ異議ヲ述フルトキハ其異議ノ決定ニ於テ從參加人ト其原吿若クハ被吿トノ中間訴訟ノ費用ニ付キ第七十二條乃至第七十八條ノ規定ニ從ヒテ裁判ヲ爲ス可シ
從參加ヲ許シタルトキ又ハ異議ヲ述ヘサルトキハ本訴訟ノ判決ニ於テ從參加人ト相手方ナル原吿若クハ被吿トノ間ニ從參加ニ因リ生シタル費用ニ付テモ亦前數條ノ規定ニ從ヒテ裁判ヲ爲ス可シ
第八十二條 費用ノ㸃ニ限リタル裁判ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス然レトモ本案ノ裁判ニ對シ許ス可キ上訴ヲ提出シ且追行スルトキニ限リ費用ノ㸃ニ付キ不服ヲ申立ツルコトヲ得
費用ノ㸃ニ限リタルトキト雖モ相手方ヨリ提出シタル上訴ニ附帶スル場合ニ於テハ不服ヲ申立ツルコトヲ得
第八十三條 裁判所書記、法律上代理人、辯護士其他ノ代理人及ヒ執達吏ノ過失又ハ懈怠ニ因リ費用ノ生シタルトキハ受訴裁判所ハ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ其費用ノ辨濟ヲ負擔セシムル決定ヲ爲スコトヲ得但其決定前關係人ニ口頭又ハ書面ニテ陳辯ヲ爲ス機會ヲ與フ可シ
此裁判ハ口頭辯論ヲ經スシテ之ヲ爲スコトヲ得其決定ニ對シテハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
第八十四條 辨濟ス可キ費用額ノ確定ハ申請ニ因リ訴訟ノ第一審ニ繫屬シタル裁判所ノ決定ヲ以テ之ヲ爲ス
申請ハ第七十二條第二項又ハ上訴取下ノ場合ヲ除ク外執行シ得ヘキ裁判ニ依ルトキニ限リ之ヲ爲スコトヲ得
申請ハ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
申請ニハ費用計算書、相手方ニ付與ス可キ計算書ノ謄本及ヒ各箇費用額ノ疏明ニ必要ナル證書ヲ添附ス可シ
第八十五條 費用額確定ノ裁判ハ口頭辯論ヲ經スシテ之ヲ爲スコトヲ得
裁判所ハ裁判所書記ニ費用計算書ノ計算上ノ檢査ヲ命スルコトヲ得
裁判所ハ費用額確定ノ決定ヲ爲ス前相手方ニ計算書ヲ付與シテ裁判所ノ定ムル期間內ニ陳述ヲ爲ス可キ旨ヲ之ニ催吿スルコトヲ得此決定ニ對シテハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
第八十六條 當事者ハ訴訟費用ノ全部又ハ一分ヲ割合ニ從ヒ分擔ス可キトキハ裁判所ハ費用額確定ノ決定ヲ爲ス前相手方ニ裁判所ノ定ムル期間內ニ其費用ノ計算書ヲ差出ス可キ旨ヲ催吿ス可シ此期間ヲ徒過シタル後ハ費用額確定ノ決定ハ相手方ノ費用ヲ顧ミス之ヲ爲ス可シ但相手方ハ後ニ自己ノ費用ヲ以テ其費用額確定ノ申請ヲ爲ス妨ト爲ルコト無シ
第六節 保證
第八十七條 訴訟上ノ保證ハ當事者カ別段ノ合意ヲ爲ス場合又ハ此法律ニ於テ保證ヲ定ムルコトヲ裁判所ノ自由ナル意見ニ任スル場合ヲ除ク外裁判所ノ意見ニ於テ擔保ニ十分ナリトスル現金又ハ有價證券ヲ供託シテ之ヲ爲ス
第八十八條 原吿又ハ原吿ノ從參加人タル外國人ハ被吿ニ對シ其求ニ因リ訴訟費用ニ付キ保證ヲ立ツ可シ
左ノ場合ニ於テハ保證ヲ立ツル義務ヲ生セス
第一 國際條約又ハ原吿ノ屬スル國ノ法律ニ依リ本邦人カ同一ノ場合ニ於テ保證ヲ立ツル義務ナキトキ
第二 反訴ノ場合
第三 證書訴訟及ヒ爲替訴訟ノ場合
第四 公示催吿ニ基キ起シタル訴ノ場合
第八十九條 裁判所ハ前條第一項ノ場合ニ於テハ保證ヲ立ツ可キ數額ヲ確定ス可シ
此數額ヲ確定スルニハ被吿ノ訴ヲ受ケタルカ爲メ各審級ニ於テ支出ス可キ訴訟費用ノ額ヲ標準ト爲ス可シ
訴訟中ニ保證ノ不足ヲ生シ且追增保證ヲ立ツ可キコトヲ被吿カ求ムルトキハ前項ト同一ノ手續ニ依ル可シ但爭ナキ請求ノ部分カ擔保ニ十分ナルトキハ此限ニ在ラス
第九十條 裁判所ハ保證ヲ立ツ可キ期間ヲ定ム可シ
此期間ノ經過後裁判アルマテニ保證ヲ立テサル場合ニ於テハ被吿ノ申立ニ因リ判決ヲ以テ訴ヲ取下ケタリト宣言シ又原吿カ上訴ヲ爲シタルトキハ其上訴ヲ取下ケタリト宣言ス可シ
第七節 訴訟上ノ救助
第九十一條 何人ヲ問ハス自己及ヒ其家族ノ必要ナル生活ヲ害スルニ非サレハ訴訟費用ヲ出タスコト能ハサル者ハ訴訟上ノ救助ヲ求ムルコトヲ得但其目的トスル權利ノ伸張又ハ防禦ノ輕忽ナラス又ハ見込ナキニ非スト見ユルトキニ限ル
第九十二條 外國人ハ國際條約又ハ其屬スル國ノ法律ニ依リ本邦人カ同一ノ場合ニ於テ訴訟上ノ救助ヲ求ムルコトヲ得ルトキニ限リ之ヲ求ムルコトヲ得
第九十三條 訴訟上救助ノ申請ハ訴訟ノ關係ヲ表明シ且證據方法ヲ開示シテ其救助ヲ求ムル審級ノ裁判所ニ之ヲ提出ス可シ其申請ハ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
原吿若クハ被吿ハ申請ノ提出ト共ニ管轄市町村長ヨリ發シタル證書ヲ出タスコトヲ要ス其證書ニハ原吿若クハ被吿ノ身分、職業、財產竝ニ家族ノ實況及ヒ其納ム可キ直稅ノ額ヲ開示シテ訴訟費用支拂ノ無資力ヲ證ス可シ
第九十四條 訴訟上ノ救助ハ各審ニ於テ各別ニ之ヲ付與ス第一審ニ於テハ强制執行ニ付テモ之ヲ付與スルモノトス
前審ニ於テ訴訟上ノ救助ヲ受ケタルトキハ上級審ニ於テハ無資力ヲ證スルコトヲ要セス相手方上訴ヲ提出シタルトキハ上級審ニ於テハ訴訟上ノ救助ヲ求ムル原吿若クハ被吿ノ權利ノ伸張又ハ防禦ノ輕忽ナラス又ハ見込ナキニ非スト見ユルヤヲ調査スルコトヲ要セス
第九十五條 訴訟上ノ救助ハ之ヲ受ケタル條件ノ存セサリシトキ又ハ消滅シタルトキハ何時タリトモ之ヲ取消スコトヲ得
第九十六條 訴訟上ノ救助ハ之ヲ受ケタル原吿若クハ被吿ノ死亡ト共ニ消滅ス
第九十七條 訴訟上ノ救助ハ之ヲ受ケタル原吿若クハ被吿ノ爲ニ左ノ效力ヲ生ス
第一 裁判費用(國庫ノ立替金ヲ包含ス)ヲ濟淸スルコトノ假免除
第二 訴訟費用ノ保證ヲ立ツルコトノ免除
第三 送達及ヒ執行行爲ヲ爲サシムル爲メ一時無報酬ニテ執達吏ノ附添ヲ求ムル權利
受訴裁判所ハ必要ナル場合ニ於テハ訴訟上ノ救助ヲ受ケタル原吿若クハ被吿ノ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ一時無報酬ニテ辯護士ノ附添ヲ命スルコトヲ得
第九十八條 訴訟上ノ救助ハ相手方ニ生シタル費用ヲ辨濟スル義務ニ影響ヲ及ホサス
第九十九條 救助ヲ受ケタル原吿若クハ被吿ノ爲メ假ニ濟淸ヲ免除シタル裁判費用ハ訴訟費用ニ付キ確定裁判ヲ受ケタル相手方又ハ訴若クハ上訴ノ取下、抛棄、認諾若クハ和解ニ因リ訴訟費用ヲ負擔ス可キ相手方ヨリ之ヲ取立ツルコトヲ得
救助ヲ受ケタル原吿若クハ被吿ニ附添ヒタル執達吏又ハ辯護士ハ同一ノ條件アルトキハ亦自己ノ權利ニ依リ費用確定ノ方法ヲ以テ其手數料及ヒ立替金ヲ取立ツルコトヲ得
第百條 救助ヲ受ケタル原吿若クハ被吿ハ自己及ヒ其家族ノ必要ナル生活ヲ害セスシテ費用ノ濟淸ヲ爲シ得ルニ至ルトキハ假免除ヲ得タル數額(第九十七條第一號)ヲ直チニ追拂ヒスル義務アリ
第百一條 裁判所ハ檢事ノ意見ヲ聽キタル後訴訟上救助ノ付與竝ニ辯護士附添ノ命令ニ付テノ申請、訴訟上救助ノ取消及ヒ數額追拂ノ義務ニ付キ決定ヲ爲ス
此裁判ハ口頭辯論ヲ經スシテ之ヲ爲スコトヲ得
第百二條 訴訟上ノ救助ヲ付與シ又ハ其取消ヲ拒ミ若クハ費用追拂ヲ命スルコトヲ拒ム決定ニ對シテハ檢事ニ限リ抗吿ヲ爲スコトヲ得
辯護士ノ附添ヲ命スル決定ニ對シテハ上訴ヲ爲スコトヲ得ス
訴訟上ノ救助ヲ拒ミ若クハ取消シ又ハ辯護士ノ附添ヲ拒ミ又ハ費用ノ追拂ヲ命スル決定ニ對シテハ原吿若クハ被吿ハ抗吿ヲ爲スコトヲ得
第三章 訴訟手續
第一節 口頭辯論及ヒ準備書面
第百三條 判決裁判所ニ於ケル訴訟ニ付テノ當事者ノ辯論ハ口頭ナリトス但此法律ニ於テ口頭辯論ヲ經スシテ裁判ヲ爲スコトヲ定メタルトキハ此限ニ在ラス
第百四條 口頭辯論ハ書面ヲ以テ之ヲ準備ス
第百五條 準備書面ニハ左ノ諸件ヲ揭ク可シ
第一 當事者及ヒ其法律上代理人ノ氏名、身分、職業、住所、裁判所、訴訟物及ヒ附屬書類ノ表示
第二 原吿若クハ被吿カ法廷ニ於テ爲サント欲スル申立
第三 申立ノ原因タル事實上ノ關係
第四 相手方ノ事實上ノ主張ニ對スル陳述
第五 原吿若クハ被吿カ事實上主張ノ證明又ハ攻擊ノ爲メ用井ントスル證據方法及ヒ相手方ノ申出テタル證據方法ニ對スル陳述
第六 原吿若クハ被吿又ハ其訴訟代理人ノ署名及ヒ捺印
第七 年月日
第百六條 準備書面ニ於テ提出ス可キ事實ハ簡明ニ之ヲ記載ス可シ
此他事實上ノ關係ノ說明竝ニ法律上ノ討論ハ書面ニ之ヲ揭クルコトヲ得ス
第百七條 準備書面ニハ訴訟ヲ爲ス可キ資格ニ付テノ證書ノ原本、正本又ハ謄本其他總テ原吿若クハ被吿ノ手中ニ存スル證書ニシテ書面中ニ申立ノ原因トシテ引用シタルモノノ謄本ヲ添附ス可シ
證書ノ一部分ノミヲ要用トスルトキハ其冒頭、事件ニ屬スル部分、終尾、日附、署名及ヒ印章ヲ謄寫シタル抄本ヲ添附スルヲ以テ足ル
證書カ既ニ相手方ニ知レタルトキ又ハ大部ナルトキハ其證書ヲ表示シ且相手方ニ之ヲ閱覽セシメント欲スル旨ヲ附記スルヲ以テ足ル
第百八條 當事者ハ準備書面及ヒ其附屬書類竝ニ相手方ニ付與スル爲メ必要ナル謄本ヲ裁判所書記課ニ差出ス可シ
第百九條 裁判長ハ口頭辯論ヲ開キ且之ヲ指揮ス
裁判長ハ發言ヲ許シ又其命ニ從ハサル者ニ發言ヲ禁スルコトヲ得
裁判長ハ事件ニ付キ十分ナル說明ヲ爲サシメ且間斷ナク辯論ノ終了スルコトニ注意ス又必要ナル場合ニ於テハ直チニ辯論續行ノ期日ヲ定ム
裁判所ニ於テ事件ニ付キ十分ナル說明ヲ爲セリト認ムルトキハ裁判長ハ口頭辯論ヲ閉チ及ヒ裁判所ノ判決竝ニ決定ヲ言渡ス
第百十條 口頭辯論ハ當事者ノ申立ヲ爲スニ因リテ始マル
當事者ノ演述ハ事實上及ヒ法律上ノ㸃ニ於ケル訴訟關係ヲ包括ス可シ
口頭演述ニ換ヘテ書類ヲ援用スルコトヲ許サス文字上ノ旨趣ヲ要用トスルトキハ其要用ナル部分ニ限リ之ヲ朗讀スルコトヲ得
第百十一條 各當事者ハ相手方ノ主張シタル事實ニ對シ陳述ヲ爲ス可シ
明カニ爭ハサル事實ハ原吿若クハ被吿ノ他ノ陳述ヨリ之ヲ爭ハントスル意思カ顯レサルトキハ自白シタルモノト看做ス
不知ノ陳述ハ原吿若クハ被吿ノ自己ノ行爲ニ非ス又自己ノ實驗シタルモノニモ非サル事實ニ限リ之ヲ許ス此場合ニ於テ不知ヲ以テ答ヘタル事實ハ爭ヒタルモノト看做ス
第百十二條 裁判長ハ職權上調査ス可キ㸃ニ關シ相手方ヨリ起ササル疑ノ存スルトキハ其疑ニ付キ注意ヲ爲スコトヲ得
裁判長ハ問ヲ發シテ不明暸ナル申立ヲ釋明シ主張シタル事實ノ不十分ナル證明ヲ補充シ證據方法ヲ申出テ其他事件ノ關係ヲ定ムルニ必要ナル陳述ヲ爲サシム可シ
陪席判事ハ裁判長ニ吿ケテ問ヲ發スルコトヲ得
當事者ハ相手方ニ對シ自ラ問ヲ發スルコトヲ得ス然レトモ其問ヲ發ス可キ旨ヲ裁判長ニ求ムルコトヲ得
若シ其問ニ對シテ答ヘス又ハ判然答ヘサルトキハ相手方ノ利益ト爲ル可キ答ヲ爲シタルモノト看做スコトヲ得
第百十三條 事件ノ指揮ニ關スル裁判長ノ命又ハ裁判長若クハ陪席判事ノ發シタル問ニ對シ辯論ニ與カル者ヨリ不適法ナリトシテ異議ヲ述ヘタルトキハ裁判所ハ其異議ニ付キ直チニ裁判ヲ爲ス
第百十四條 裁判所ハ事件ノ關係ヲ明暸ナラシムル爲メ原吿若クハ被吿ノ自身出頭ヲ命スルコトヲ得
第百十五條 裁判所ハ原吿若クハ被吿ノ援用シタル證書ニシテ其手中ニ存スルモノヲ提出ス可キヲ命スルコトヲ得
裁判所ハ外國語ヲ以テ作リタル證書ニ付テハ其譯書ヲ添附ス可キヲ命スルコトヲ得
第百十六條 裁判所ハ當事者ノ所持スル訴訟記錄ニシテ事件ノ辯論及ヒ裁判ニ關スルモノヲ提出ス可キヲ命スルコトヲ得
第百十七條 裁判所ハ檢證及ヒ鑑定ヲ命スルコトヲ得
此手續ハ申立ニ因リ命スル檢證及ヒ鑑定ニ付テノ規定ニ從フ
第百十八條 裁判所ハ一箇ノ訴ニ於テ爲シタル數箇ノ請求又ハ本訴及ヒ反訴ニ付テノ辯論ヲ分離シテ爲ス可キヲ命スルコトヲ得
第百十九條 同一ノ請求ニ關シ數箇ノ獨立ナル攻擊及ヒ防禦ノ方法ヲ提出シタルトキハ裁判所ハ先ツ辯論ヲ其一二ニ制限ス可キヲ命スルコトヲ得
第百二十條 裁判所ハ同一ノ人又ハ別異ノ人ノ數箇ノ訴訟ニシテ其裁判所ニ繫屬スルモノノ辯論及ヒ裁判ヲ併合ス可キヲ命スルコトヲ得但其訴訟ノ目的物タル請求ヲ元來一箇ノ訴ニ於テ主張シ得ヘキトキニ限ル
第百二十一條 裁判所ハ訴訟ノ全部又ハ一分ノ裁判カ他ノ繫屬スル訴訟ニ於テ定マル可キ權利關係ノ成立又ハ不成立ニ繫ルトキハ他ノ訴訟ノ完結ニ至ルマテ辯論ヲ中止ス可シ
第百二十二條 裁判所ハ民事訴訟中罰ス可キ行爲ノ嫌疑生スルトキハ刑事訴訟手續ノ完結ニ至ルマテ辯論ヲ中止ス可シ但其罰ス可キ行爲カ訴訟ノ裁判ニ影響ヲ及ホストキニ限ル
第百二十三條 裁判所ハ分離若クハ併合ニ關シ發シタル命ヲ取消スコトヲ得
第百二十四條 裁判所ハ閉チタル辯論ノ再開ヲ命スルコトヲ得
第百二十五條 裁判所ハ辯論ニ與カル者日本語ニ通セサルトキハ通事ヲ立會ハシム但裁判所構成法第百十八條ノ場合ハ此限ニ在ラス
第百二十六條 裁判所ハ辯論ニ與カル者聾又ハ啞ナルトキ之ニ文字ヲ以テ理會セシムルコトヲ得サル場合ニ限リ通事ヲ立會ハシムルコトヲ得
第百二十七條 裁判所ハ相當ノ演述ヲ爲ス能力ノ缺ケタル原吿若クハ被吿又ハ訴訟代理人若クハ輔佐人ニ其後ノ演述ヲ禁シ且新期日ヲ定メ辯護士ヲシテ演述セシム可キコトヲ命ス可シ
裁判所ハ裁判所ニ於テ辯論ヲ業トスル訴訟代理人若クハ輔佐人ヲ退斥セシムルコトヲ得此場合ニ於テハ新期日ヲ定メ且退斥ノ決定ヲ原吿若クハ被吿ニ送達ス可シ
本條ノ規定ニ從ヒ爲シタル命ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
辯護士ニハ本條ノ規定ヲ適用セス
第百二十八條 辯論ニ與カル者秩序維持ノ爲メ辯論ノ場所ヨリ退斥セラレタルトキハ申立ニ因リ本人ノ任意ニ退去シタルト同一ノ方法ヲ以テ之ヲ取扱フコトヲ得但裁判所構成法第百十條ニ依リ中止シタル場合ハ此限ニ在ラス
前條ノ場合ニ於テ禁止又ハ退斥ノ命ヲ受ケタル者再ヒ出頭スルトキハ前項ノ方法ヲ以テ之ヲ取扱フコトヲ得
第百二十九條 口頭辯論ニ付テハ調書ヲ作ル可シ
調書ニハ左ノ諸件ヲ揭ク可シ
第一 辯論ノ場所、年月日
第二 判事、裁判所書記及ヒ立會ヒタル檢事若クハ通事ノ氏名
第三 訴訟物及ヒ當事者ノ氏名
第四 出頭シタル當事者、法律上代理人、訴訟代理人及ヒ輔佐人ノ氏名若シ原吿若クハ被吿闕席シタルトキハ其闕席シタルコト
第五 公ニ辯論ヲ爲シ又ハ公開ヲ禁シタルコト
第百三十條 辯論ノ進行ニ付テハ其要領ノミヲ調書ニ記載ス可シ
調書ニ記載シテ明確ニス可キ諸件ハ左ノ如シ
第一 自白、認諾、抛棄及ヒ和解
第二 明確ニス可キ規定アル申立及ヒ陳述
第三 證人及ヒ鑑定人ノ供述但其供述ハ以前聽カサルモノナルトキ又ハ以前ノ供述ニ異ナルトキニ限ル
第四 檢證ノ結果
第五 書面ニ作リ調書ニ添附セサル裁判(判決、決定及ヒ命令)
第六 裁判ノ言渡
附錄トシテ調書ニ添附シ且調書ニ附錄トシテ表示シタル書類ニ於ケル記載ハ調書ニ於ケル記載ニ同シ
第百三十一條 前條第一號乃至第四號ニ揭ケタル調書ノ部分ハ法廷ニ於テ之ヲ關係人ニ讀聞カセ又ハ閱覽ノ爲メ之ヲ關係人ニ示ス
調書ニハ前項ノ手續ヲ履ミタルコト及ヒ承諾ヲ爲シタルコト又ハ承諾ヲ拒ミタル理由ヲ附記ス可シ
第百三十二條 調書ニハ裁判長及ヒ裁判所書記署名捺印ス可シ
裁判長差支アルトキハ官等最モ高キ陪席判事之ニ代リ署名捺印ス區裁判所判事差支アルトキハ其裁判所書記ノ署名捺印ヲ以テ足ル
第百三十三條 受命判事若クハ受託判事又ハ區裁判所判事カ法廷外ニ於テ爲ス審問ニモ亦裁判所書記ヲ立會ハシム
前四條ノ規定ハ右ノ審問調書ニ之ヲ準用ス
第百三十四條 口頭辯論ノ爲メ規定シタル方式ノ遵守ハ調書ヲ以テノミ之ヲ證スルコトヲ得
第百三十五條 此法律ニ從ヒ口頭ヲ以テ訴、抗吿、申立、申請及ヒ陳述ヲ爲シ又ハ證言ヲ拒ム場合ニ於テハ裁判所書記ハ其調書ヲ作ル可シ
第二節 送達
第百三十六條 送達ハ裁判所書記職權ヲ以テ之ヲ爲サシム
裁判所書記ハ執達吏ニ送達ノ施行ヲ委任シ又ハ送達ヲ施行ス可キ地ヲ管轄スル區裁判所ノ書記ニ送達ノ施行ヲ執達吏ニ委任ス可キコトヲ囑託ス
裁判所書記ハ郵便ニ依リテモ亦送達ヲ爲サシムルコトヲ得
第二項ノ場合ニ於テハ執達吏又第三項ノ場合ニ於テハ郵便配達人ヲ以下ニ規定スル送達吏ト爲ス
第百三十七條 送達ハ其送達ス可キ書類ノ正本又ハ認證シタル謄本ヲ交付ス可キ規定アルトキハ其正本又ハ其謄本ノ交付ヲ以テ之ヲ爲シ其他ノ場合ニ於テハ謄本ノ交付ヲ以テ之ヲ爲ス
原吿若クハ被吿數人ノ代理人ニ爲シ又ハ同一ナル原吿若クハ被吿ノ代理人數人中ノ一人ニ爲ス可キ送達ハ謄本又ハ正本ノ一通ヲ交付スルヲ以テ足ル
第百三十八條 訴訟能力ヲ有セサル原吿若クハ被吿ニ對スル送達ハ其法律上代理人ニ之ヲ爲ス
公又ハ私ノ法人及ヒ其資格ニ於テ訴ヘ又ハ訴ヘラルルコトヲ得ル會社又ハ社團ニ對スル送達ハ其首長又ハ事務擔當者ニ之ヲ爲スヲ以テ足ル
數人ノ首長若クハ事務擔當者アル場合ニ於テハ送達ハ其一人ニ之ヲ爲スヲ以テ足ル
第百三十九條 豫備、後備ノ軍籍ニ在ラサル下士以下ノ軍人、軍屬ニ對スル送達ハ其所屬ノ長官又ハ隊長ニ之ヲ爲ス
第百四十條 囚人ニ對スル送達ハ監獄署ノ首長ニ之ヲ爲ス
第百四十一條 送達ハ財產權上ノ訴訟ニ付テハ總理代人ニ之ヲ爲シ又商業上ヨリ生シタル訴訟ニ付テハ代務人ニ之ヲ爲スヲ以テ原吿若クハ被吿ノ本人ニ爲シタルト同一ノ效力ヲ有ス
第百四十二條 訴訟代理人アルトキハ送達ハ其代理人委任ノ旨趣ニ依リ原吿若クハ被吿ノ代理ヲ爲ス權ヲ有スルトキニ限リ其代理人ニ之ヲ爲ス
然レトモ原吿若クハ被吿ノ本人ニ爲シタル送達ハ其訴訟代理人アルトキト雖モ效力ヲ有ス
第百四十三條 受訴裁判所ノ所在地ニ住居ヲモ事務所ヲモ有セサル原吿若クハ被吿ハ其所在地ニ假住所ヲ選定シテ之ヲ屆出ツ可シ
假住所選定ノ屆出ハ遲クトモ最近ノ口頭辯論ニ於テ之ヲ爲シ又其前ニ書面ヲ差出ストキハ其書面ヲ以テ之ヲ爲ス可シ
前項ノ屆出ヲ爲ササルトキハ裁判所書記又ハ其委任ヲ受ケタル吏員交付ス可キ書類ヲ原吿若クハ被吿ノ名宛ニテ郵便ニ付シテ送達ヲ爲スコトヲ得此送達ハ其書類ノ原吿若クハ被吿ニ到達スルト否トヲ問ハス又何時ニ到達スルトヲ問ハス郵便ニ付シタル時ヲ以テ之ヲ爲シタルモノト看做ス
第百四十四條 送達ハ何レノ地ヲ問ハス送達ヲ受ク可キ人ニ出會ヒタル地ニ於テ之ヲ爲スコトヲ得然レトモ其人カ其地ニ住居又ハ事務所ヲ有スルトキ其住居又ハ事務所ノ外ニ於テ爲シタル送達ハ其受取ヲ拒マサリシトキニ限リ效力ヲ有ス
第百三十八條第二項ノ場合ニ於テ特別ノ事務所アルトキハ其事務所ノ外ニ於テ法律上代理人又ハ首長若クハ事務擔當者ニ爲シタル送達ハ其受取ヲ拒マサリシトキニ限リ效力ヲ有ス
第百四十五條 送達ヲ受ク可キ人ニ住居ニ於テ出會ハサルトキハ其住居ニ於テスル送達ハ成長シタル同居ノ親族又ハ雇人ニ之ヲ爲スコトヲ得
此規定ニ從ヒ送達ヲ施行スルコトヲ得サルトキハ其送達ハ交付ス可キ書類ヲ其地ノ市町村長ニ預置キ送達ノ吿知書ヲ作リ之ヲ住居ノ戶ニ貼附シ且近隣ニ住居スル者二人ニ其旨ヲ口頭ヲ以テ通知シテ之ヲ爲スコトヲ得
第百四十六條 住居ノ外ニ事務所ヲ有スル人ニ對スル送達ハ事務所ニ於テ之ニ出會ハサルトキハ其事務所ニ在ル營業使用人ニ之ヲ爲スコトヲ得此規定ハ辯護士ニモ亦之ヲ適用ス但此場合ニ於ケル送達ハ筆生ニモ亦之ヲ爲スコトヲ得
第百四十七條 第百三十八條第二項ノ場合ニ於テ法律上代理人又ハ首長若クハ事務擔當者ニ事務所ニ於テ出會ハス又ハ此等ノ者受取ニ付キ差支アルトキハ送達ハ事務所ニ在ル他ノ役員又ハ雇人ニ之ヲ爲スコトヲ得
第百四十八條 前二條ノ規定ニ從ヒ送達ヲ施行スルコトヲ得サルトキハ第百四十五條第二項ニ準シ送達ヲ爲ス可シ但住居ニ於ケル送達ヲ施行スルヲ得サルコトノ明白ナルトキニ限ル
前項ノ場合ニ於テハ送達吿知書ノ貼附ハ事務所又ハ住居ノ戶ニ之ヲ爲ス
第百四十九條 法律上ノ理由ナクシテ送達ノ受取ヲ拒ムトキハ交付ス可キ書類ヲ送達ノ場所ニ差置ク可シ
第百五十條 日曜日及ヒ一般ノ祝祭日ニハ執達吏ノ爲ス可キ送達ハ裁判官ノ許可ヲ得ルトキニ限リ之ヲ施行スルコトヲ得
前項ノ規定ハ郵便ニ付シテ爲ス送達ヲ除ク外ハ夜間ニ爲ス可キ送達ニ之ヲ適用ス夜間トハ日沒ヨリ日出マテノ時間ヲ謂フ
右ノ許可ハ受訴裁判所ノ裁判長又ハ送達ヲ爲ス可キ地ヲ管轄スル區裁判所ノ判事之ヲ與ヘ又ハ受命判事若クハ受託判事ノ完結ス可キ事件ニ在テハ其判事之ヲ與フ
許可ノ命令ハ認證シタル謄本ヲ以テ送達ノ際之ヲ交付ス可シ
本條ノ規定ヲ遵守セサル送達ハ之ヲ受取リタルトキニ限リ效力ヲ有ス
第百五十一條 送達ニ付テハ之ヲ施行スル吏員ハ送達ノ場所、年月日時、方法及ヒ受取人ノ受取證竝ニ送達吏ノ署名捺印ヲ具備スル證書ヲ作ルコトヲ要ス
受取人受取ヲ拒ミ若クハ受取證ヲ出タスコトヲ拒ミタルトキ又ハ受取證ヲ作ルコト能ハサル旨ヲ述フルトキハ之ヲ送達證書ニ記載ス可シ
第百四十三條第三項ノ場合ニ於テハ郵便ニ付シタル吏員ノ報吿書ヲ以テ送達ノ證ト爲スニ足ル
第百五十二條 外國ニ在ル本邦ノ公使及ヒ公使館ノ官吏竝ニ其家族、從者ニ對スル送達ハ外務大臣ニ囑託シテ之ヲ爲ス
第百五十三條 前條ノ場合ヲ除ク外外國ニ於テ施行ス可キ送達ハ外國ノ管轄官廳又ハ外國ニ駐在スル帝國ノ公使又ハ領事ニ囑託シテ之ヲ爲ス
第百五十四條 出陣ノ軍隊又ハ役務ニ服シタル軍艦ノ乘組員ニ屬スル人ニ對スル送達ハ上班司令官廳ニ囑託シテ之ヲ爲スコトヲ得
第百五十五條 前三條ノ場合ニ於テ必要ナル囑託書ハ受訴裁判所ノ裁判長之ヲ發ス
送達ハ囑託ヲ受ケタル官廳又ハ官吏ノ送達施行濟ノ證書ヲ以テ之ヲ證ス
第百五十六條 原吿若クハ被吿ノ現在地知レサルトキ又ハ外國ニ於テ爲ス可キ送達ニ付テハ其規定ニ從フコト能ハス若クハ之ニ從フモ其效ナキコトヲ豫知スルトキハ其送達ハ公ノ吿示ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
第百五十七條 公示送達ハ原吿若クハ被吿ノ申立ニ因リ裁判所ノ命ヲ以テ裁判所書記之ヲ取扱フ
此送達ハ交付ス可キ書類ヲ裁判所ノ揭示板ニ貼附シテ之ヲ爲ス判決及ヒ決定ニ在テハ其裁判ノ部分ノミヲ貼附ス可シ
右ノ外裁判所ハ送達ス可キ書類ノ抄本ヲ一箇又ハ數箇ノ新聞紙ニ一囘又ハ數囘揭載ス可キヲ命スルコトヲ得其抄本ニハ裁判所、當事者竝ニ訴訟物及ヒ送達ス可キ書類ノ要旨ヲ揭クルコトヲ要ス
第百五十八條 公示送達ハ書類ノ貼附ヨリ十四日ヲ經過シタル日ヲ以テ之ヲ爲シタルモノト看做ス然レトモ裁判所ハ公示送達ヲ命スルニ際シ此ヨリ長キ期間ヲ必要トスルトキハ相當ナル期間ヲ定ムルコトヲ得
同一ノ事件ニ付キ同一ノ原吿若クハ被吿ニ對シテ爲ス其後ノ公示送達ハ貼附ヲ以テ之ヲ爲シタルモノト看做ス
第三節 期日及ヒ期間
第百五十九條 期日ハ裁判長日及ヒ時ヲ以テ之ヲ定ム
第百六十條 期日ハ已ムヲ得サル場合ニ限リ日曜日及ヒ一般ノ祝祭日ニ之ヲ定ムルコトヲ得
第百六十一條 期日ニ付テノ呼出ハ裁判長ノ命ニ從ヒ裁判所書記正本ノ送達ヲ以テ之ヲ爲ス但在廷シタル者ニ期日ヲ定メ出頭ヲ命シタルトキハ之ヲ送達スルコトヲ要セス
第百六十二條 期日ハ裁判所內ニ於テ之ヲ開ク但臨檢又ハ裁判所ニ出頭スルニ差支アル人ノ審問其他裁判所內ニ於テ爲スコトヲ得サル行爲ヲ要スルトキハ此限ニ在ラス
第百六十三條 期日ハ事件ノ呼上ヲ以テ始マル
原吿若クハ被吿カ期日ノ終ニ至ルマテ辯論ヲ爲ササルトキハ期日ヲ怠リタルモノト看做ス
第百六十四條 裁判所又ハ裁判長ノ定ムル期間ノ進行ハ期間ヲ定メタル書類ノ送達ヲ以テ始マリ又其送達ヲ要セサル場合ニ於テハ期間ノ言渡ヲ以テ始マル但期間指定ノ際此ヨリ遲キ起期ヲ定メタルトキハ此限ニ在ラス
第百六十五條 期間ヲ計算スルニ時ヲ以テスルモノハ卽時ヨリ起算シ又日ヲ以テスルモノハ初日ヲ算入セス
第百六十六條 一日ノ期間ハ二十四時トシ一个月ノ期間ハ三十日トシ一个年ノ期間ハ暦ニ從フ
期間ノ終カ日曜日又ハ一般ノ祝祭日ニ當ルトキハ其日ヲ期間ニ算入セス
第百六十七條 法律上ノ期間ハ裁判所ノ所在地ニ住居セサル原吿若クハ被吿ノ爲メ其住居地ト裁判所所在地トノ距離ノ割合ニ應シ海陸路八里每ニ一日ヲ伸長ス八里以外ノ端數三里ヲ超ユルトキモ亦同シ
裁判所ハ外國又ハ島嶼ニ於テ住所ヲ有スル原吿若クハ被吿ノ爲メ特ニ附加期間ヲ定ムルコトヲ得
第百六十八條 期間ノ進行ハ裁判所ノ休暇ニ依リテ停止ス其期間ノ殘餘ノ部分ハ休暇ノ終ヲ以テ其進行ヲ始ム期間ノ初カ休暇ニ當ルトキハ其期間ノ進行ハ休暇ノ終ヲ以テ始マル
前項ノ規定ハ不變期間及ヒ休暇事件ノ期間ニハ之ヲ適用セス
不變期間ハ此法律ニ於テ不變期間トシテ揭ケタル期間ニ限ル
休暇事件トハ裁判所構成法第百二十八條、第百二十九條ニ揭ケタル事件ヲ謂フ
第百六十九條 期日ノ變更、辯論ノ延期、辯論續行ノ期日ノ指定ハ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得但申立ニ因レル期日ノ變更ハ合意ノ場合ヲ除ク外顯著ナル理由アルトキニ限リ之ヲ許ス
第百七十條 期間ハ不變期間ヲ除ク外當事者ノ合意ノ申立ニ因リ之ヲ短縮シ又ハ伸長スルコトヲ得
裁判所又ハ裁判長ノ定ムル期間及ヒ法律上ノ期間ハ合意ナキモ申立ニ因リ顯著ナル理由アルトキハ之ヲ短縮シ又ハ伸長スルコトヲ得然レトモ法律上ノ期間ノ短縮又ハ伸長ハ此法律ニ特定シタル場合ニ限リ之ヲ許ス
伸長ニ係ル新期間ハ前期間ノ滿了ヨリ之ヲ起算ス
第百七十一條 期日ノ變更又ハ期間ノ短縮若クハ伸長ニ付テノ申請ノ理由ハ之ヲ疏明ス可シ其申請ハ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
申請ノ裁判ハ口頭辯論ヲ經スシテ之ヲ爲スコトヲ得
同一期日ノ再度ノ變更又ハ同一期間ノ再度ノ伸長ハ相手方ノ承諾書ヲ提出セサルトキハ相手方ヲ審訊シタル後ニ限リ之ヲ許スコトヲ得又相手方カ異議ヲ述フルトキハ顯著ナル差支ノ理由及ヒ其差支ヲ除去スルコトノ特別ナル困難ヲ生シタルコトヲ證スルトキニ限リ之ヲ許スコトヲ得訴訟代理人ノ差支ニ原因スル期日ノ再度ノ變更又ハ期間ノ再度ノ伸長ハ相手方ノ承諾アルニ非サレハ之ヲ許サス
期日ノ變更又ハ期間ノ伸長ニ付テノ申請ヲ却下スル裁判ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第百七十二條 本節ニ於テ裁判所及ヒ裁判長ニ與ヘタル權ハ受命判事又ハ受託判事モ亦其定ム可キ期日及ヒ期間ニ付キ之ヲ行フコトヲ得
第四節 懈怠ノ結果及ヒ原狀囘復
第百七十三條 訴訟行爲ヲ怠リタル原吿若クハ被吿ハ其訴訟行爲ヲ爲ス權利ヲ失フ但此法律ニ於テ追完ヲ許ストキハ此限ニ在ラス
法律上懈怠ノ結果ハ當然生スルモノトス但此法律ニ於テ失權ヲ爲サシムルコトニ付キ相手方ノ申立ヲ要スルトキハ此限ニ在ラス
第百七十四條 天災其他避ク可カラサル事變ノ爲ニ不變期間ヲ遵守スルコトヲ得サル原吿若クハ被吿ニハ申立ニ因リ原狀囘復ヲ許ス
原吿若クハ被吿カ故障期間ヲ懈怠シタルトキハ其過失ニ非スシテ闕席判決ノ送達ヲ知ラサリシ場合ニ於テモ亦之ニ原狀囘復ヲ許ス
第百七十五條 原狀囘復ハ十四日ノ期間內ニ之ヲ申立ツルコトヲ要ス
右期間ハ障碍ノ止ミタル日ヲ以テ始マル此期間ハ當事者ノ合意ニ因リ之ヲ伸長スルコトヲ得ス
懈怠シタル不變期間ノ終ヨリ起算シテ一个年ノ滿了後ハ原狀囘復ヲ申立ツルコトヲ得ス
第百七十六條 原狀囘復ハ追完スル訴訟行爲ニ付キ裁判ヲ爲ス權アル裁判所ニ書面ヲ差出シテ之ヲ申立ツ可シ
此書面ニハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 原狀囘復ノ原因タル事實
第二 原狀囘復ノ疏明方法
第三 懈怠シタル訴訟行爲ノ追完
卽時抗吿ノ提出ヲ懈怠シタルトキハ原狀囘復ノ申立ハ不服ヲ申立テラレタル裁判ヲ爲シタル裁判所又ハ抗吿裁判所ニ之ヲ爲スコトヲ得
第百七十七條 原狀囘復ノ申立ニ付テノ訴訟手續ハ追完スル訴訟行爲ニ付テノ訴訟手續ト之ヲ併合ス然レトモ裁判所ハ先ツ申立ニ付テノ辯論及ヒ裁判ノミニ其訴訟手續ヲ制限スルコトヲ得
申立ノ許否ニ關スル裁判及ヒ其裁判ニ對スル不服ノ申立ニ付テハ追完スル訴訟行爲ニ於テ行ハル可キ規定ヲ適用ス然レトモ申立ヲ爲シタル原吿若クハ被吿ハ故障ヲ爲スコトヲ得ス
原狀囘復ノ費用ハ申立人之ヲ負擔ス但相手方ノ不當ナル異議ニ因リ生シタルモノハ此限ニ在ラス
第五節 訴訟手續ノ中斷及ヒ中止
第百七十八條 原吿若クハ被吿ノ死亡シタル場合ニ於テハ承繼人カ訴訟手續ヲ受繼クマテ之ヲ中斷ス
受繼ヲ遲滯シタルトキハ裁判所ハ申立ニ因リ受繼及ヒ本案辯論ノ爲メ其承繼人ヲ呼出ス
承繼人期日ニ出頭セサルトキハ申立ニ因リ相手方ノ主張シタル承繼ヲ自白シタルモノト看做シ且裁判所ハ闕席判決ヲ以テ承繼人訴訟手續ヲ受繼キタリト言渡ス又本案ノ辯論ハ故障期間ノ滿了後始メテ之ヲ爲シ又其期間內ニ故障ヲ申立テタルトキハ其完結後始メテ之ヲ爲ス
第百七十九條 原吿若クハ被吿ノ財產ニ付キ破產ノ開始シタル場合ニ於テ訴訟手續カ破產財團ニ關スルトキハ破產ニ付テノ規定ニ從ヒ手續ヲ受繼キ又ハ破產手續ヲ解止スルマテ之ヲ中斷ス
第百八十條 原吿若クハ被吿カ訴訟能力ヲ失ヒ又ハ其法律上代理人カ死亡シ又ハ其代理權カ原吿若クハ被吿ノ訴訟能力ヲ得ル前ニ消滅シタルトキハ訴訟手續ハ法律上代理人又ハ新法律上代理人カ其任設ヲ相手方ニ通知シ又ハ相手方カ訴訟手續ヲ續行セントスルコトヲ其代理人ニ通知スルマテ之ヲ中斷ス
第百八十一條 原吿若クハ被吿ノ死亡ニ因リ訴訟手續ヲ中斷スル場合ニ於ケル訴訟手續ノ受繼ニ關シ遺產ニ付キ管理人ヲ任設スルトキハ前條ノ規定又遺產ニ付キ破產ヲ開始スルトキハ第百七十九條ノ規定ヲ適用ス
第百八十二條 戰爭其他ノ事故ニ因リ裁判所ノ行務ヲ止メタルトキハ此事情ノ繼續間訴訟手續ヲ中斷ス
第百八十三條 訴訟代理人ヲ以テ訴訟ヲ爲ス場合ニ於テ原吿若クハ被吿カ死亡シ又ハ訴訟能力ヲ失ヒ又ハ法律上代理人カ死亡シ又ハ其代理權カ消滅スルトキハ委任消滅ノ通知ニ因リ訴訟手續ヲ中斷ス
訴訟手續ノ受繼ニ付テハ第百七十八條、第百八十條、第百八十一條ノ規定ニ從フ
第百八十四條 原吿若クハ被吿カ戰時兵役ニ服スルトキ又ハ官廳ノ布令、戰爭其他ノ事變ニ因リ受訴裁判所ト交通ノ絕エタル地ニ在ルトキハ受訴裁判所ハ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ障碍ノ消除スルマテ訴訟手續ノ中止ヲ命スルコトヲ得
第百八十五條 訴訟手續中止ノ申請ハ受訴裁判所ニ之ヲ提出ス其申請ハ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
此裁判ハ口頭辯論ヲ經スシテ之ヲ爲スコトヲ得
第百八十六條 訴訟手續ノ中斷及ヒ中止ハ各期間ノ進行ヲ止メ及ヒ中斷又ハ中止ノ終リタル後更ニ全期間ノ進行ヲ始ムル效力ヲ有ス
中斷及ヒ中止ノ間本案ニ付キ爲シタル原吿若クハ被吿ノ訴訟行爲ハ他ノ一方ニ對シ其效力ナシ
口頭辯論ノ終結後ニ生シタル中斷ハ其辯論ニ基キテ爲ス可キ裁判ノ言渡ヲ妨クルコト無シ
第百八十七條 中斷シ又ハ中止シタル訴訟手續ノ受繼及ヒ本節ニ定メタル通知ハ原吿若クハ被吿ヨリ其書面ヲ受訴裁判所ニ差出シ裁判所ハ相手方ニ之ヲ送達ス可シ
第百八十八條 當事者ハ訴訟手續ヲ休止ス可キ合意ヲ爲スコトヲ得其合意ハ不變期間ノ進行ニ影響ヲ及ホサス
口頭辯論ノ期日ニ於テ當事者雙方出頭セサルトキハ訴訟手續ハ其一方ヨリ更ニ口頭辯論ノ期日ヲ定ム可キコトヲ申立ツルマテ之ヲ休止ス
一个年內ニ前項ノ申立ヲ爲ササルトキハ本訴及ヒ反訴ヲ取下ケタルモノト看做ス
第百八十九條 本節ノ規定其他此法律ノ規定ニ基キ訴訟手續ノ中止ヲ命スル裁判ニ對シテハ抗吿ヲ爲スコトヲ得又其中止ヲ拒ム裁判ニ對シテハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
第二編 第一審ノ訴訟手續
第一章 地方裁判所ノ訴訟手續
第一節 判決前ノ訴訟手續
第百九十條 訴ノ提起ハ訴狀ヲ裁判所ニ差出シテ之ヲ爲ス此訴狀ニハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 當事者及ヒ裁判所ノ表示
第二 起シタル請求ノ一定ノ目的物及ヒ其請求ノ一定ノ原因
第三 一定ノ申立
此他訴狀ハ準備書面ニ關スル一般ノ規定ニ從ヒ之ヲ作リ且裁判所ノ管轄カ訴訟物ノ價額ニ依リ定マル場合ニ於テ訴訟物カ一定ノ金額ニ非サルトキハ其價額ヲ揭ク可シ
第百九十一條 同一ノ被吿ニ對スル原吿ノ請求數箇アル場合ニ於テ其各請求ニ付キ受訴裁判所カ管轄權ヲ有シ且法律ニ於テ同一種類ノ訴訟手續ヲ許ストキハ原吿ハ其請求ヲ一箇ノ訴ニ併合スルコトヲ得但民法ノ規定ニ反スルトキハ此限ニ在ラス
第百九十二條 訴狀カ第百九十條第一號乃至第三號ノ規定ニ適セサルトキハ相當ノ期間ヲ定メ裁判長ノ命令ヲ以テ其期間內ニ欠缺ヲ補正ス可キコトヲ命ス若シ原吿此命ニ從ハサルトキハ其期間ノ滿了後訴狀ヲ差戾ス可シ
此差戾ノ命令ニ對シテハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
第百九十三條 訴狀カ第百九十條第一號乃至第三號ノ規定ニ適スルトキハ口頭辯論ノ期日ヲ定メテ之ヲ被吿ニ送達ス可シ
第百九十四條 訴狀ノ送達ト口頭辯論ノ期日トノ間ニハ少ナクトモ二十日ノ時間ヲ存スルコトヲ要ス
外國ニ於テ送達ヲ施行ス可キトキハ裁判長相當ノ時間ヲ定ム
第百九十五條 訴訟物ノ權利拘束ハ訴狀ノ送達ニ因リテ生ス
權利拘束ハ左ノ效力ヲ有ス
第一 權利拘束ノ繼續中原吿若クハ被吿ヨリ同一ノ訴訟物ニ付キ他ノ裁判所ニ於テ本訴又ハ反訴ヲ以テ請求ヲ爲シタルトキハ相手方ハ權利拘束ノ抗辯ヲ爲スコトヲ得
第二 受訴裁判所ノ管轄ハ訴訟物ノ價額ノ增減、住所ノ變更其他管轄ヲ定ムル事情ノ變更ニ因リテ變換スルコト無シ
第三 原吿ハ訴ノ原因ヲ變更スル權利ナシ但變更シタル訴ニ對シ本案ノ口頭辯論前被吿カ異議ヲ述ヘサルトキハ此限ニ在ラス
第百九十六條 原吿カ訴ノ原因ヲ變更セスシテ左ノ諸件ヲ爲ストキハ被吿ハ異議ヲ述フルコトヲ得ス
第一 事實上又ハ法律上ノ申述ヲ補充シ又ハ更正スルコト
第二 本案又ハ附帶請求ニ付キ訴ノ申立ヲ擴張シ又ハ減縮スルコト
第三 最初求メタル物ノ滅盡又ハ變更ニ因リ賠償ヲ求ムルコト
第百九十七條 訴ノ原因ニ變更ナシトスル裁判ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第百九十八條 訴ノ全部又ハ一分ハ本案ニ付キ被吿ノ第一口頭辯論ノ始マルマテハ被吿ノ承諾ナクシテ之ヲ取下ケ又其後口頭辯論ノ終結ニ至ルマテハ被吿ノ承諾ヲ得テ之ヲ取下クルコトヲ得
訴ノ取下ハ口頭辯論ニ於テ之ヲ爲ササルトキハ書面ヲ以テ之ヲ爲ス可シ
訴狀ヲ既ニ送達シタル場合ニ於テハ訴取下ノ書面ハ之ヲ被吿ニ送達ス可シ
適法ナル取下ハ權利拘束ノ總テノ效力ヲ消滅セシムル結果ヲ生ス
取下ケタル訴ヲ再ヒ起シタルトキハ被吿ハ前訴訟費用ノ辨濟ヲ受クルマテ應訴ヲ拒ムコトヲ得
第百九十九條 訴狀送達ノ際十四日ノ期間內ニ答辯書ヲ差出ス可キコトヲ被吿ニ催吿ス可シ
答辯書ニハ準備書面ニ關スル一般ノ規定ヲ適用ス
第二百條 訴カ管轄裁判所ニ於テ權利拘束ト爲リタルトキハ被吿ハ原吿ニ對シ其裁判所ニ反訴ヲ起スコトヲ得
然レトモ財產權上ノ請求ニ非サル請求ニ係ル反訴又ハ目的物ニ付キ專屬管轄ノ規定アル反訴ハ若シ其反訴カ本訴ナルトキ其裁判所ニ於テ管轄權ヲ有ス可キ場合ニ限リ之ヲ爲スコトヲ許ス
反訴ニ對シテハ更ニ反訴ヲ爲スコトヲ得ス
第二百一條 反訴ハ答辯書若クハ特別ノ書面ヲ以テ又ハ口頭辯論中相手方ノ面前ニ於テ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
然レトモ答辯書差出ノ期間內ニ差出シタル書面ヲ以テ起ササル反訴ハ被吿ノ請求ノ全部又ハ一分ト相殺ヲ爲ス可キ場合ニ於テ同時ニ被吿カ自己ノ過失ニ因ラスシテ其以前反訴ヲ起スヲ得サリシコトヲ疏明スルトキニ限リ之ヲ爲スコトヲ許ス
第二百二條 訴ニ關スル此法律ノ規定ハ反訴ニ之ヲ適用ス但其規定ニ因リ差異ノ生ス可キトキハ此限ニ在ラス
第二百三條 裁判長ハ申立ニ因リ其命令ヲ以テ第百九十九條ニ定メタル期間ヲ相當ニ短縮若クハ伸長シ又第百九十四條ニ定メタル時間ヲ切迫ナル危險ノ場合ニ限リ二十四時マテニ短縮スルコトヲ得
前項時間ノ短縮ハ此カ爲メ答辯書ヲ差出スコトヲ得サルトキト雖モ亦之ヲ爲スコトヲ得
本條ノ規定ハ第百六十七條ニ揭ケタル規定ヲ妨ケス
第二百四條 各當事者ハ訴狀又ハ答辯書ニ揭ケサリシ事實上ノ主張若クハ證據方法又ハ申立ニ付キ相手方カ豫メ穿鑿ヲ爲スニ非サレハ陳述ヲ爲ス能ハスト豫知スル事項アルトキハ口頭辯論ノ前ニ書面ニテ差出ス可シ但其書面ヲ相手方ニ送達スル時間及ヒ相手方ヲシテ必要ナル穿鑿ヲ爲ス時間ヲ得セシム可シ
口頭辯論ノ延期ヲ爲ストキハ裁判所ハ爾後必要ナル準備書面ヲ差出ス可キ期間ヲ定ムルコトヲ得
第二百五條 口頭辯論ハ一般ノ規定ニ從ヒテ之ヲ爲ス
第二百六條 妨訴ノ抗辯ハ本案ニ付テノ被吿ノ辯論前同時ニ之ヲ提出ス可シ
左ニ揭クルモノヲ妨訴ノ抗辯トス
第一 無訴權ノ抗辯
第二 裁判所管轄違ノ抗辯
第三 權利拘束ノ抗辯
第四 訴訟能力ノ欠缺又ハ法律上代理ノ欠缺ノ抗辯
第五 訴訟費用保證ノ欠缺ノ抗辯
第六 再訴ニ付キ前訴訟費用未濟ノ抗辯
第七 延期ノ抗辯
本案ニ付キ被吿ノ口頭辯論ノ始マリタル後ハ妨訴ノ抗辯ハ被吿ノ有效ニ抛棄スルコトヲ得サルモノナルトキ又ハ被吿ノ過失ニ非スシテ本案ノ辯論前ニ其抗辯ヲ主張スル能ハサリシコトヲ疏明スルトキニ限リ之ヲ主張スルコトヲ得
第二百七條 被吿カ妨訴ノ抗辯ニ基キ本案ノ辯論ヲ拒ムトキ又ハ裁判所カ申立ニ因リ若クハ職權ヲ以テ別ニ辯論ヲ命スルトキハ其抗辯ニ付キ別ニ辯論ヲ爲シ及ヒ判決ヲ以テ裁判ヲ爲ス可シ
妨訴ノ抗辯ヲ棄却スル判決ハ上訴ニ關シテハ終局判決ト看做ス但裁判所ハ申立ニ因リ本案ニ付キ辯論ヲ爲ス可キヲ命スルコトヲ得
第二百八條 裁判所ハ計算事件、財產分別及ヒ此ニ類スル訴訟ニ於テハ口頭辯論ヲ延期シ準備手續ヲ命スルコトヲ得但妨訴ノ抗辯アリタルトキハ其完結後之ヲ爲ス
第二百九條 攻擊及ヒ防禦ノ方法(反訴、抗辯、再抗辯等)ハ第二百一條ニ規定スル制限ヲ以テ判決ニ接著スル口頭辯論ノ終結ニ至ルマテ之ヲ提出スルコトヲ得
第二百十條 被吿ヨリ時機ニ後レテ提出シタル防禦ノ方法ハ裁判所カ若シ之ヲ許スニ於テハ訴訟ヲ遲延ス可ク且被吿ハ訴訟ヲ遲延セシメントスル故意ヲ以テ又ハ甚シキ怠慢ニ因リ早ク之ヲ提出セサリシコトノ心證ヲ得タルトキハ申立ニ因リ之ヲ却下スルコトヲ得
第二百十一條 訴訟ノ進行中ニ爭ト爲リタル權利關係ノ成立又ハ不成立カ訴訟ノ裁判ノ全部又ハ一分ニ影響ヲ及ホストキハ判決ニ接著スル口頭辯論ノ終結ニ至ルマテ原吿ハ訴ノ申立ノ擴張ニ依リ又被吿ハ反訴ノ提起ニ依リ判決ヲ以テ其權利關係ヲ確定センコトヲ申立ツルコトヲ得
第二百十二條 訴狀其他ノ準備書面ニ於テ主張セサル請求ノ權利拘束ハ口頭辯論ニ於テ其請求ヲ主張シタル時ヲ以テ始マル
第二百十三條 各當事者ハ事實上ノ主張ヲ證明シ又ハ之ヲ辯駁セン爲ニ用井ントスル證據方法ヲ開示シ且相手方ヨリ開示シタル證據方法ニ付キ陳述ス可シ
各箇ノ證據方法ニ付テノ證據申出及ヒ之ニ關スル陳述ハ第六節乃至第十節ノ規定ニ從フ
第二百十四條 證據方法及ヒ證據抗辯ハ判決ニ接著スル口頭辯論ノ終結ニ至ルマテ之ヲ主張スルコトヲ得
證據方法及ヒ證據抗辯ノ時機ニ後レタル提出ニ付テハ第二百十條ノ規定ヲ準用ス
第二百十五條 證據調竝ニ證據決定ヲ以テスル特別ノ證據調手續ノ命令ハ第五節乃至第十節ノ規定ニ從フ
第二百十六條 當事者ハ訴訟ノ關係ヲ表明シ證據調ノ結果ニ付キ辯論ヲ爲ス可シ
受命判事又ハ受託判事ノ面前ニ於テ證據調ヲ爲シタルトキハ當事者ハ證據調ニ關スル審問調書ニ基キ其結果ヲ演述ス可シ
第二百十七條 裁判所ハ民法又ハ此法律ノ規定ニ反セサル限リハ辯論ノ全旨趣及ヒ或ル證據調ノ結果ヲ斟酌シ事實上ノ主張ヲ眞實ナリト認ム可キヤ否ヤヲ自由ナル心證ヲ以テ判斷ス可シ
第二百十八條 裁判所ニ於テ顯著ナル事實ハ之ヲ證スルコトヲ要セス
第二百十九條 地方慣習法、商慣習及ヒ規約又ハ外國ノ現行法ハ之ヲ證ス可シ裁判所ハ當事者カ其證明ヲ爲スト否トニ拘ハラス職權ヲ以テ必要ナル取調ヲ爲スコトヲ得
第二百二十條 此法律ノ規定ニ依リ事實上ノ主張ヲ疏明ス可キトキハ裁判官ヲシテ其主張ヲ眞實ナリト認メシム可キ證據方法ヲ申出ツルヲ以テ足ル但卽時ニ爲スコトヲ得サル證據調ハ疏明ノ方法トシテハ之ヲ許サス
第二百二十一條 裁判所ハ事件ノ如何ナル程度ニ在ルヲ問ハス自ラ又ハ受命判事若クハ受託判事ニ依リ訴訟又ハ或ル爭㸃ノ和解ヲ試ムル權アリ和解ヲ試ムル爲ニハ當事者ノ自身出頭ヲ命スルコトヲ得
第二百二十二條 判決ヲ受ク可キ事項ノ申立ハ書面ニ基キ之ヲ爲スコトヲ要ス
書面ニ揭ケサル申立アルトキハ調書ニ附錄トシテ添附ス可キ書面ヲ差出シテ之ヲ爲スコトヲ要ス
重要ノ㸃ニ於テ以前申立テタルモノト異ナル申立ニ付テモ亦同シ
本條ノ規定ヲ遵守セサルトキハ申立ナキモノト看做ス
第二百二十三條 前條ノ申立ヲ除ク外書面ニ揭ケサル重要ナル陳述又ハ其書面ノ旨趣ト重要ノ㸃ニ於テ差異ノ存スル事項ハ其差異カ附加、削除其他ノ變更ニ係ルヲ問ハス申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ調書若クハ其附錄トシテ添附ス可キ爲メ差出シタル書面ニ依リテ之ヲ明確ニス可シ
第二百二十四條 當事者ハ訴訟記錄ヲ閱覽シ且裁判所書記ヲシテ其正本、抄本及ヒ謄本ヲ付與セシムルコトヲ得
裁判長ハ第三者カ權利上ノ利害ヲ疏明スルトキニ限リ當事者ノ承諾ナクシテ訴訟記錄ノ閱覽及ヒ其抄本竝ニ謄本ノ付與ヲ許スコトヲ得
判決、決定命令ノ草案及ヒ其準備ニ供シタル書類竝ニ評議又ハ處罰ニ關スル書類ハ其原本ナルト謄本ナルトヲ問ハス之ヲ閱覽スルコトヲ許サス
第二節 判決
第二百二十五條 訴訟カ裁判ヲ爲スニ熟スルトキハ裁判所ハ終局判決ヲ以テ裁判ヲ爲ス
同時ニ辯論及ヒ裁判ヲ爲ス爲メ併合シタル數箇ノ訴訟中ノ一ノミ裁判ヲ爲スニ熟スルトキモ亦同シ
第二百二十六條 一ノ訴ヲ以テ起シタル數箇ノ請求中ノ一箇又ハ一箇ノ請求中ノ一分又ハ反訴ヲ起シタル場合ニ於テハ本訴若クハ反訴ノミ裁判ヲ爲スニ熟スルトキハ裁判所ハ終局判決(一分判決)ヲ以テ裁判ヲ爲ス
然レトモ裁判所ハ事件ノ事情ニ從ヒテ一分判決ヲ相當トセサルトキハ之ヲ爲ササルコトヲ得
第二百二十七條 各箇ノ獨立ナル攻擊若クハ防禦ノ方法又ハ中間ノ爭カ裁判ヲ爲スニ熟スルトキハ中間判決ヲ以テ裁判ヲ爲スコトヲ得
第二百二十八條 請求ノ原因及ヒ數額ニ付キ爭アルトキハ裁判所ハ先ツ其原因ニ付キ裁判ヲ爲スコトヲ得
請求ノ原因ヲ正當ナリトスル判決ハ上訴ニ關シテハ終局判決ト看做シ其判決確定ニ至ルマテ爾後ノ手續ヲ中止ス然レトモ裁判所ハ申立ニ因リ其數額ニ付キ辯論ヲ爲ス可キヲ命スルコトヲ得
第二百二十九條 口頭辯論ノ際原吿其訴ヘタル請求ヲ抛棄シ又ハ被吿之ヲ認諾スルトキハ裁判所ハ申立ニ因リ其抛棄又ハ認諾ニ基キ判決ヲ以テ却下又ハ敗訴ノ言渡ヲ爲ス可シ
第二百三十條 判決ハ辯論ヲ經タル總テノ攻擊及ヒ防禦ノ方法ヲ包括ス
然レトモ數箇ノ獨立ナル攻擊又ハ防禦ノ方法中其一箇ヲ適切ナリトスルトキハ裁判所ハ他ノ方法ニ付キ判斷スル義務ナシ
第二百三十一條 裁判所ハ申立テサル事物ヲ原吿若クハ被吿ニ歸セシムル權ナシ
裁判所ハ終局判決ヲ爲ス場合ニ於テハ訴訟費用ノ負擔ニ限リ申立アラサルモ判決ヲ爲ス可シ然レトモ一分判決ヲ爲ス場合ニ於テハ費用ノ裁判ヲ後ノ判決ニ讓ルコトヲ得
第二百三十二條 判決ハ其基本タル口頭辯論ニ臨席シタル判事ニ限リ之ヲ爲ス
第二百三十三條 判決ハ口頭辯論ノ終結スル期日又ハ直チニ指定スル期日ニ於テ之ヲ言渡ス但其期日ハ七日ヲ過クルコトヲ得ス
第二百三十四條 判決ノ言渡ハ判決主文ノ朗讀ニ因リ之ヲ爲ス闕席判決ノ言渡ハ其主文ヲ作ラサル前ト雖モ之ヲ爲スコトヲ得
裁判ノ理由ヲ言渡スコトヲ至當ト認ムルトキハ判決ノ言渡ト同時ニ其理由ヲ朗讀シ又ハ口頭ニテ其要領ヲ吿ク可シ
第二百三十五條 判決ノ言渡ハ當事者又ハ其一方ノ在廷スルト否トニ拘ハラス其效力ヲ有ス
言渡アリタル判決ニ基キ訴訟手續ヲ續行シ又ハ他ニ其判決ヲ使用スル原吿若クハ被吿ノ權ハ此法律ニ特定シタル場合ヲ除ク外相手方ニ其判決ヲ送達スルト否トニ拘ハラサルモノトス
第二百三十六條 判決ニハ左ノ諸件ヲ揭ク可シ
第一 當事者及ヒ其法律上代理人ノ氏名、身分、職業及ヒ住所
第二 事實及ヒ爭㸃ノ摘示但其摘示ハ當事者ノ口頭演述ニ基キ殊ニ其提出シタル申立ヲ表示シテ之ヲ爲ス
第三 裁判ノ理由
第四 判決主文
第五 裁判所ノ名稱、裁判ヲ爲シタル判事ノ官氏名
第二百三十七條 判決ノ原本ニハ裁判ヲ爲シタル判事署名捺印ス若シ陪席判事署名捺印スルニ差支アルトキハ其理由ヲ開示シテ裁判長其旨ヲ附記シ裁判長差支アルトキハ官等最モ高キ陪席判事之ヲ附記ス
判決ノ原本ハ言渡ノ日ヨリ起算シテ七日內ニ裁判所書記ニ之ヲ交付ス可シ
裁判所書記ハ言渡ノ日及ヒ原本領收ノ日ヲ原本ニ附記シ且其附記ニ署名捺印ス可シ
第二百三十八條 各當事者ハ判決ノ送達アランコトヲ申立ツルコトヲ得其申立アリタルトキハ判決ノ正本ヲ送達ス可シ
第二百三十九條 未タ判決ヲ言渡サス又ハ未タ判決ノ原本ニ署名捺印セサル間ハ裁判所書記ハ其正本、抄本及ヒ謄本ヲ付與スルコトヲ得ス
裁判所書記ハ判決ノ正本、抄本及ヒ謄本ニ署名捺印シ且裁判所ノ印ヲ捺シテ之ヲ認證ス可シ
第二百四十條 裁判所ハ其言渡シタル終局判決及ヒ中間判決ノ中ニ包含シタル裁判ニ覊束セラル
第二百四十一條 裁判所ハ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ何時ニテモ判決中ノ違算、書損及ヒ此ニ類スル著シキ誤謬ヲ更正ス
此更正ニ付テハ口頭辯論ヲ經スシテ裁判ヲ爲スコトヲ得
右更正ノ申立ヲ却下スル決定ニ對シテハ上訴ヲ爲スコトヲ得ス更正ヲ宣言スル決定ニ對シテハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
第二百四十二條 主タル請求若クハ附帶ノ請求又ハ費用ノ全部若クハ一分ノ裁判ヲ爲スニ際シ脫漏シタルトキハ申立ニ因リ追加ノ裁判ヲ以テ判決ヲ補充ス可シ
判決ノ言渡後直チニ追加裁判ノ申立ヲ爲ササルトキハ遲クトモ判決ノ正本ヲ送達シタル日ヨリ起算シテ七日ノ期間內ニ之ヲ爲スコトヲ要ス
追加裁判ノ申立アルトキハ卽時ニ又ハ新期日ヲ定メテ口頭辯論ヲ爲サシム可シ其辯論ハ訴訟ノ完結セサル部分ニ限リ之ヲ爲ス
第二百四十三條 判決ヲ更正シ又ハ補充スル裁判ハ判決ノ原本及ヒ正本ニ之ヲ追加シ若シ正本ニ之ヲ追加スルコトヲ得サルトキハ更正又ハ補充ノ裁判ノ正本ヲ作ル可シ
第二百四十四條 判決ハ其主文ニ包含スルモノニ限リ確定力ヲ有ス
第二百四十五條 口頭辯論ニ基キ爲ス裁判所ノ決定ハ之ヲ言渡スコトヲ要ス
第二百三十三條、第二百三十四條ノ規定ハ裁判所ノ決定ニ之ヲ準用シ又第二百三十五條、第二百三十九條及ヒ第二百四十條ノ規定ハ裁判所ノ決定及ヒ裁判長竝ニ受命判事又ハ受託判事ノ命令ニ之ヲ準用ス
言渡ヲ爲ササル裁判所ノ決定及ヒ言渡ヲ爲ササル裁判長竝ニ受命判事又ハ受託判事ノ命令ハ職權ヲ以テ之ヲ當事者ニ送達ス可シ
第三節 闕席判決
第二百四十六條 原吿若クハ被吿口頭辯論ノ期日ニ出頭セサル場合ニ於テハ出頭シタル相手方ノ申立ニ因リ闕席判決ヲ爲ス
第二百四十七條 出頭セサル一方カ原吿ナルトキハ裁判所ハ闕席判決ヲ以テ其訴ノ却下ヲ言渡ス可シ
第二百四十八條 出頭セサル一方カ被吿ナルトキハ裁判所ハ被吿カ原吿ノ事實上ノ口頭供述ヲ自白シタルモノト看做シ原吿ノ請求ヲ正當ト爲ストキハ闕席判決ヲ以テ被吿ノ敗訴ヲ言渡シ又其請求ヲ正當ト爲ササルトキハ其訴ノ却下ヲ言渡ス可シ
第二百四十九條 延期シタル口頭辯論ノ期日又ハ口頭辯論ヲ續行スル爲ニ定ムル期日モ亦第二百四十六條ノ辯論期日ニ同シ
第二百五十條 原吿若クハ被吿出頭スルモ辯論ヲ爲ササルトキ又ハ辯論ヲ爲サスシテ任意ニ退廷シタルトキハ出頭セサルモノト看做ス
第二百五十一條 原吿若クハ被吿カ本案ノ辯論ヲ爲シタルトキハ各箇ノ事實、證書又ハ發問ニ付キ陳述ヲ爲サス又ハ任意ニ退廷スルモ本節ノ規定ヲ適用セス
第二百五十二條 左ノ場合ニ於テハ闕席判決ノ申立ヲ却下ス然レトモ出頭シタル原吿若クハ被吿ハ口頭辯論ノ延期ヲ申立ツルコトヲ得
第一 出頭シタル原吿若クハ被吿カ裁判所ノ職權上調査ス可キ事情ニ付キ必要ナル證明ヲ爲ス能ハサルトキ
第二 出頭セサル原吿若クハ被吿ニ口頭上事實ノ供述又ハ申立ヲ適當ナル時期ニ書面ヲ以テ通知セサルトキ
辯論ヲ延期シタルトキハ出頭セサル原吿若クハ被吿ヲ新期日ニ呼出ス可シ
第二百五十三條 闕席判決ノ申立ヲ却下スル決定ニ對シテハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得又其決定ヲ取消シタルトキハ出頭セサリシ原吿若クハ被吿ヲ新期日ニ呼出サスシテ闕席判決ヲ爲ス
第二百五十四條 裁判所ハ左ノ場合ニ於テハ職權ヲ以テ闕席判決ノ申立ニ付テノ辯論ヲ延期スルコトヲ得
第一 出頭セサル原吿若クハ被吿カ合式ニ呼出サレサリシトキ
第二 出頭セサル原吿若クハ被吿カ天災其他避ク可カラサル事變ノ爲ニ出頭スル能ハサルコトノ眞實ト認ム可キ事情アルトキ
出頭セサリシ原吿若クハ被吿ハ新期日ニ之ヲ呼出ス可シ
第二百五十五條 闕席判決ヲ受ケタル原吿若クハ被吿ハ其判決ニ對シ故障ヲ申立ツルコトヲ得
故障申立ノ期間ハ十四日トス此期間ハ不變期間ニシテ闕席判決ノ送達ヲ以テ始マル
故障申立ハ判決ノ送達前ト雖モ之ヲ爲スコトヲ得
外國ニ於テ送達ヲ爲ス可キトキ又ハ公ノ吿示ヲ以テ之ヲ爲ス可キトキハ裁判所ハ闕席判決ニ於テ故障期間ヲ定メ又ハ後日決定ヲ以テ之ヲ定ム此決定ハ口頭辯論ヲ經スシテ爲スコトヲ得
第二百五十六條 故障申立ハ闕席判決ヲ爲シタル裁判所ニ書面ヲ差出シテ之ヲ爲ス
此書面ニハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 故障ヲ申出テラレタル闕席判決ノ表示
第二 其判決ニ對スル故障ノ申立
此書面ニハ本案ニ付テノ口頭辯論準備ノ爲ニ必要ナル事項アルトキモ亦之ヲ揭ク可シ
第二百五十七條 判然許ス可カラサル故障又ハ判然法律上ノ方式ニ適セス若クハ其期間ノ經過後ニ起シタル故障ハ裁判長ノ命令ヲ以テ之ヲ却下ス可シ
此却下ノ命令ニ對シテハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
第二百五十八條 前條ノ場合ヲ除ク外裁判所ハ故障申立ノ書面ヲ相手方ニ送達シ且故障ニ付キ口頭辯論ノ新期日ヲ定メ當事者ノ雙方ヲ呼出ス可シ
第二百五十九條 裁判所ハ職權ヲ以テ故障ヲ許ス可キヤ否ヤ又法律上ノ方式ニ從ヒ若クハ其期間ニ於テ故障ヲ申立テタルヤ否ヤヲ調査ス可シ
若シ此要件ノ一ヲ缺クトキハ判決ヲ以テ故障ヲ不適法トシテ棄却ス
第二百六十條 故障ヲ適法トスルトキハ訴訟ハ闕席前ノ程度ニ復ス
第二百六十一條 新辯論ニ基キ爲ス可キ判決カ闕席判決ト符合スルトキハ闕席判決ヲ維持スルコトヲ言渡シ其符合セサル場合ニ於テハ新判決ニ於テ闕席判決ヲ廢棄ス
第二百六十二條 法律ニ從ヒ闕席判決ヲ爲シタルトキ闕席ニ因リテ生シタル費用ハ相手方ノ不當ナル異議ニ因リ生セサルモノニ限リ故障ノ爲メ闕席判決ヲ變更スル場合ニ於テモ其闕席シタル原吿若クハ被吿ニ之ヲ負擔セシム
第二百六十三條 故障ヲ申立テタル原吿若クハ被吿口頭辯論ノ期日又ハ辯論延期ノ期日ニ出頭セサルトキハ第二百五十二條及ヒ第二百五十四條ニ規定シタル場合ヲ除ク外出頭シタル相手方ノ申立ニ因リ故障ヲ棄却スル新闕席判決ヲ言渡ス
新闕席判決ニ對シテハ故障ヲ申立ツルコトヲ得ス
第二百六十四條 故障ノ抛棄及ヒ其取下ニ付テハ控訴ノ抛棄及ヒ其取下ニ付テノ規定ヲ準用ス
第二百六十五條 本節ノ規定ハ反訴又ハ既ニ原因ノ確定シタル請求ノ數額ノ定ヲ目的物トスル訴訟手續ニ之ヲ準用ス
中間訴訟ノ辯論ノ爲メ期日ヲ定メタルトキハ其闕席訴訟手續及ヒ闕席判決ハ其中間訴訟ヲ完結スルニ止マリ本節ノ規定ヲ之ニ準用ス
第四節 計算事件、財產分別及ヒ此ニ類スル訴訟ノ準備手續
第二百六十六條 計算ノ當否、財產ノ分別又ハ此ニ類スル關係ヲ目的トスル訴訟ニ於テ計算書又ハ財產目錄ニ對シ許多ノ爭アル請求ノ生シ又ハ許多ノ爭アル異議ノ生シタルトキハ受訴裁判所ハ受命判事ノ面前ニ於ケル準備手續ヲ命スルコトヲ得
第二百六十七條 準備手續ヲ命スル決定ヲ言渡スニ際シ裁判長ハ受命判事ヲ指定シ決定施行ノ期日ヲ定ム可シ若シ裁判長此期日ヲ定メサルトキハ受命判事之ヲ定ム又受命判事其委任ヲ施行スルニ差支アルトキハ裁判長更ニ他ノ判事ヲ任ス
第二百六十八條 準備手續ニ於テハ調書ヲ以テ左ノ諸件ヲ明確ニス可シ
第一 如何ナル請求ヲ爲スヤ及ヒ如何ナル攻擊、防禦ノ方法ヲ主張スルヤ
第二 如何ナル請求及ヒ如何ナル攻擊、防禦ノ方法ヲ爭フヤ又ハ之ヲ爭ハサルヤ
第三 爭ト爲リタル請求及ヒ爭ト爲リタル攻擊、防禦ノ方法ニ付テハ其事實上ノ關係及ヒ當事者ノ表示シタル證據方法、主張シタル證據抗辯、證據方法竝ニ證據抗辯ニ關シテ爲シタル陳述及ヒ提出シタル申立
此手續ハ受訴裁判所ニ於テ訴訟又ハ中間訴訟カ判決又ハ證據決定ヲ爲スニ熟スルマテ之ヲ續行ス可シ
第二百六十九條 原吿若クハ被吿カ期日ニ於テ受命判事ノ面前ニ出頭セサルトキハ受命判事ハ前條ノ規定ニ依リ調書ヲ以テ出頭シタル原吿若クハ被吿ノ提供ヲ明確ニシ且新期日ヲ定メ出頭セサル原吿若クハ被吿ニハ調書ノ謄本ヲ付與シテ新期日ニ之ヲ呼出ス可シ
原吿若クハ被吿カ新期日ニモ亦出頭セサルトキハ送達セシ調書ニ揭ケタル相手方ノ事實上ノ主張ヲ自白シタリト看做シ其主張ニ付テノ準備手續ハ完結シタルモノトス
第二百七十條 受訴裁判所ハ準備手續ノ終結後ニ口頭辯論ノ期日ヲ定メ之ヲ當事者ニ通知ス可シ
第二百七十一條 當事者ハ口頭辯論ニ於テ準備手續ノ結果ヲ調書ニ基キ演述ス可シ
原吿若クハ被吿カ出頭セサルトキハ準備手續ニ於テ爭ハサル請求ハ一分判決ヲ以テ之ヲ完結ス其他ニ付テハ申立ニ因リテ闕席判決ヲ爲ス可シ
第二百七十二條 受命判事ノ調書ヲ以テ明確ニス可キ事實又ハ證書ニ付キ陳述ヲ爲サス又ハ之ヲ拒ミタルトキハ口頭辯論ニ於テ之ヲ追完スルコトヲ得ス
請求、攻擊若クハ防禦ノ方法、證據方法及ヒ證據抗辯ニシテ受命判事ノ調書ヲ以テ之ヲ明確ニセサルモノニ付テハ後日ニ至リ始メテ生シ又ハ後日ニ至リ始メテ原吿若クハ被吿ノ知リタルコトヲ疏明スルトキニ限リ口頭辯論ニ於テ之ヲ主張スルコトヲ得
第五節 證據調ノ總則
第二百七十三條 證據調ハ受訴裁判所ニ於テ之ヲ爲スヲ以テ通例トス
證據調ハ此法律ニ定メタル場合ニ限リ受訴裁判所ノ部員一名ニ之ヲ命シ又ハ區裁判所ニ之ヲ囑託スルコトヲ得
此證據調ヲ命スル決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第二百七十四條 當事者ノ申立テタル數多ノ證據中其調フ可キ限度ハ裁判所之ヲ定ム
當事者ノ演述ニ引續キ直チニ證據調ヲ爲サスシテ受訴裁判所ニ於テ新期日ニ之ヲ爲シ又ハ受命判事若クハ受託判事ノ面前ニ於テ之ヲ爲ス可キトキハ證據決定ニ因リ之ヲ命ス可シ
第二百七十五條 證據調ニ付キ不定時間ノ障碍アルトキハ申立ニ因リ相當ノ期間ヲ定ム可シ此期間ノ滿了後ト雖モ訴訟手續ヲ遲滯セシメサル限リハ其證據方法ヲ用井ルコトヲ得
第二百七十六條 證據決定ニハ左ノ諸件ヲ揭ク可シ
第一 證ス可キ係爭事實ノ表示
第二 證據方法ノ表示殊ニ證人又ハ鑑定人ヲ訊問ス可キトキハ其表示
第三 證據方法ヲ申出テタル原吿若クハ被吿ノ表示
第二百七十七條 證據決定ノ變更ハ其決定ノ施行完結前ニ在リテ新ナル辯論ニ基クトキニ限リ之ヲ申立ツルコトヲ得
證據決定ノ施行ハ職權ヲ以テ之ヲ爲ス
第二百七十八條 受訴裁判所ノ部員カ證據調ヲ爲ス可キトキハ裁判長證據決定言渡ノ際受命判事ヲ指名シ且證據調ノ期日ヲ定ム若シ其期日ヲ定メサルトキハ受命判事之ヲ定ム
受命判事其命ヲ施行スルニ差支アルトキハ裁判長更ニ他ノ部員ヲ命ス
第二百七十九條 他ノ裁判所ニ於テ證據調ヲ爲ス可キトキハ裁判長ハ其囑託書ヲ發ス可シ
證據調ニ關スル書類ハ原本ヲ以テ受託判事ヨリ受訴裁判所書記ニ之ヲ送致シ其書記ハ之ヲ受領シタルコトヲ當事者ニ通知ス可シ
第二百八十條 受命判事又ハ受託判事カ證據調ノ期日ヲ定メタルトキハ其期日及ヒ場所ヲ當事者ニ通知ス可シ
第二百八十一條 外國ニ於テ爲ス可キ證據調ハ外國ノ管轄官廳又ハ其國駐在ノ帝國ノ公使若クハ領事ニ囑託シテ之ヲ爲ス其囑託ニ付テハ第百五十二條及ヒ第百五十五條ノ規定ヲ準用ス
第二百八十二條 受命判事又ハ受託判事ハ他ノ裁判所ニ於テ證據調ヲ爲ス可キコトノ至當ナル原因ノ爾後ニ生シタルトキハ其裁判所ニ證據調ヲ囑託スルコトヲ得此囑託ヲ爲シタルトキハ當事者ニ之ヲ通知ス可シ
第二百八十三條 受命判事又ハ受託判事ノ面前ニ於テ證據調ノ際ニ爭ヲ生シ其爭ノ完結スルニ非サレハ證據調ヲ續行スルコトヲ得ス且其判事之ヲ裁判スル權ナキトキハ其完結ハ受訴裁判所之ヲ爲ス
第二百八十四條 當事者ノ一方又ハ雙方證據調ノ期日ニ出頭セサルトキハ事件ノ程度ニ因リ爲シ得ヘキ限リハ證據調ヲ爲ス可シ
原吿若クハ被吿ノ出頭セサルカ爲ニ證據調ノ全部又ハ一分ヲ爲スコトヲ得サル場合ニ於テハ其追完又ハ補充ハ此カ爲メ訴訟手續ノ遲滯セサルトキ又ハ擧證者其過失ニ非スシテ前期日ニ出頭スル能ハサリシコトヲ疏明スルトキニ限リ判決ニ接著スル口頭辯論ノ終結ニ至ルマテ申立ニ因リ之ヲ命ス
第二百八十五條 裁判所ハ事件ノ未タ判決ヲ爲スニ熟セスト認ムルトキハ證據調ノ補充ヲ決定スルコトヲ得
第二百八十六條 證據調又ハ其續行ノ爲メ新期日ヲ定ムル必要アルトキハ擧證者又ハ當事者雙方前期日ニ出頭セサリシトキト雖モ職權ヲ以テ之ヲ定ム
第二百八十七條 受訴裁判所ニ於テ證據調ヲ爲ストキハ其期日ハ同時ニ口頭辯論ヲ續行スル期日ナリトス
受命判事又ハ受託判事ノ面前ニ於テ證據調ヲ爲ス可キコトヲ命シタルトキハ受訴裁判所ハ證據決定中ニ併セテ口頭辯論續行ノ期日ヲ定ムルコトヲ得若シ之ヲ定メサルトキハ證據調ノ終結後職權ヲ以テ其期日ヲ定メ之ヲ當事者ニ通知ス可シ
第二百八十八條 擧證者ハ裁判所ノ定ムル期間內ニ證據調ノ費用ヲ豫納ス可シ若シ其期間內ニ豫納セサルトキハ證據調ヲ爲サス但期間ノ滿了後ト雖モ豫納シタルトキハ訴訟手續ノ遲滯ヲ生セサル場合ニ限リ證據調ヲ許ス
第六節 人證
第二百八十九條 何人ヲ問ハス法律ニ別段ノ規定ナキ限リハ民事訴訟ニ關シ裁判所ニ於テ證言スル義務アリ
第二百九十條 官吏、公吏ハ退職ノ後ト雖モ其職務上默祕ス可キ義務アル事情ニ付テハ其所屬廳又ノ其最後ノ所屬廳ノ許可ヲ得タルトキニ限リ證人トシテ之ヲ訊問スルコトヲ得大臣ニ付テハ勅許ヲ得ルコトヲ要ス
此許可ハ證言カ國家ノ安寧ヲ害スル恐アルトキニ限リ之ヲ拒ムコトヲ得
右許可ハ受訴裁判所ヨリ之ヲ求メ且證人ニ之ヲ通知ス可シ
第二百九十一條 人證ノ申出ハ證人ヲ指名シ及ヒ證人ノ訊問ヲ受ク可キ事實ヲ表示シテ之ヲ爲ス
第二百九十二條 證人ノ呼出狀ニハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 證人及ヒ當事者ノ表示
第二 證據決定ノ旨趣ニ依リ訊問ヲ爲ス可キ事實ノ表示
第三 證人ノ出頭ス可キ場所及ヒ日時
第四 出頭セサルトキハ法律ニ依リ處罰ス可キ旨
第五 裁判所ノ名稱
第二百九十三條 豫備、後備ノ軍籍ニ在ラサル軍人、軍屬ヲ證人トシテ呼出スニハ其所屬ノ長官又ハ隊長ニ囑託シテ之ヲ爲ス其長官又ハ隊長ハ期日ヲ遵守セシムル爲ニ其呼出ヲ受ケタル者ノ闕勤ヲ許ス可シ若シ軍務上之ヲ許ス能ハサルトキハ其旨ヲ裁判所ニ通知シ且他ノ期日ヲ定ムル求ヲ爲ス義務アリ
第二百九十四條 合式ニ呼出サレタル證人ニシテ正當ノ理由ナク出頭セサル者ニ對シテハ申立ナシト雖モ決定ヲ以テ其不參ニ因リ生シタル費用ノ賠償及ヒ貳拾圓以下ノ罰金ヲ言渡ス可シ
證人カ再度出頭セサル場合ニ於テハ更ニ費用ノ賠償及ヒ罰金ヲ言渡ス可シ又其勾引ヲ命スルコトヲ得
證人ハ右ノ決定ニ對シテ抗吿ヲ爲スコトヲ得此抗吿ハ執行ヲ停止スル效力ヲ有ス
豫備、後備ノ軍籍ニ在ラサル軍人、軍屬ニ對スル罰金ノ言渡及ヒ執行ハ軍事裁判所又ハ所屬ノ長官又ハ隊長ニ囑託シテ之ヲ爲ス其勾引ニ付テモ亦同シ
第二百九十五條 證人其出頭セサリシコトヲ後日ニ正當ノ理由ヲ以テ辯解スルトキハ罰金及ヒ賠償ノ決定ヲ取消ス可シ
證人ノ不參屆及ヒ決定取消ノ申請ハ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
第二百九十六條 皇族證人ナルトキハ受命判事又ハ受託判事其所在ニ就キ訊問ヲ爲ス
各大臣ニ付テハ其官廳ノ所在地ニ於テ之ヲ訊問ス若シ其所在地外ニ滯在スルトキハ其現在地ニ於テ之ヲ訊問ス
帝國議會ノ議員ニ付テハ開會期間其議會ノ所在地ニ滯在中ハ其所在地ニ於テ之ヲ訊問ス
第二百九十七條 左ニ揭クル者ハ證言ヲ拒ムコトヲ得
第一 原吿若クハ被吿又ハ其配偶者ト親族ナルトキ但姻族ニ付テハ婚姻ノ解除シタルトキト雖モ亦同シ
第二 原吿若クハ被吿ノ後見ヲ受クル者
第三 原吿若クハ被吿ト同居スル者又ハ雇人トシテ之ニ仕フル者
裁判長ハ訊問前ニ前項ノ者ニ證言ヲ拒ム權利アル旨ヲ吿ク可シ
第二百九十八條 左ノ場合ニ於テハ證言ヲ拒ムコトヲ得
第一 官吏、公吏又ハ官吏、公吏タリシ者カ其職務上默祕ス可キ義務アル事情ニ關スルトキ
第二 醫師、藥商、穩婆、辯護士、公證人、神職及ヒ僧侶カ其身分又ハ職業ノ爲メ委託ヲ受ケタルニ因リテ知リタル事實ニシテ默祕ス可キモノニ關スルトキ
第三 問ニ付テノ答辯カ證人又ハ前條ニ揭ケタル者ノ耻辱ニ歸スルカ又ハ其刑事上ノ訴追ヲ招ク恐アルトキ
第四 問ニ付テノ答辯カ證人又ハ前條ニ揭ケタル者ノ爲メ直接ニ財產權上ノ損害ヲ生セシム可キトキ
第五 證人カ其技術又ハ職業ノ祕密ヲ公ニスルニ非サレハ答辯スルコト能ハサルトキ
第二百九十九條 證人ハ第二百九十七條第一號及ヒ第二百九十八條第四號ノ場合ニ於テ左ノ事項ニ付キ證言ヲ拒ムコトヲ得ス
第一 家族ノ出產、婚姻又ハ死亡
第二 家族ノ關係ニ因リ生スル財產事件ニ關スル事實
第三 證人トシテ立會ヒタル場合ニ於ケル權利行爲ノ成立及ヒ旨趣
第四 原吿若クハ被吿ノ前主又ハ代理人トシテ係爭ノ權利關係ニ關シ爲シタル行爲
前條第一號、第二號ニ揭ケタル者其默祕ス可キ義務ヲ免除セラレタルトキハ證言ヲ拒ムコトヲ得ス
第三百條 證言ヲ拒ム證人ハ其訊問ノ期日前ニ書面又ハ口頭ヲ以テ又ハ期日ニ於テ其拒絕ノ原因タル事實ヲ開示シ且之ヲ疏明ス可シ
期日前ニ證言ヲ拒ミタル證人ハ期日ニ出頭スル義務ナシ
裁判所書記ハ拒絕ノ書面ヲ受領シ又ハ其陳述ニ付キ調書ヲ作リタルトキハ之ヲ當事者ニ通知ス可シ
第三百一條 拒絕ノ當否ニ付テハ受訴裁判所當事者ヲ審訊シタル後決定ヲ以テ其裁判ヲ爲ス但第二百九十八條第一號ノ場合ニ於テ爲シタル拒絕ノ當否ニ付テハ所屬廳又ハ最後ノ所屬廳ノ裁定ニ任ス
原吿若クハ被吿カ出頭セサルトキハ出頭シタル者ノ申述ヲ斟酌シテ決定ヲ爲ス
右決定ニ對シテハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得此抗吿ハ執行ヲ停止スル效力ヲ有ス
第三百二條 原因ヲ開示セスシテ證言ヲ拒ミ又ハ開示シタル原因ノ棄却確定シタル後ニ之ヲ拒ミタルトキハ申立ヲ要セスシテ決定ヲ以テ證人ニ對シ其拒絕ニ因リテ生シタル費用ノ賠償及ヒ四十圓以下ノ罰金ヲ言渡ス
證人ハ費用ノ賠償及ヒ罰金ノ言渡ニ對シ抗吿ヲ爲スコトヲ得此抗吿ハ執行ヲ停止スル效力ヲ有ス
豫備、後備ノ軍籍ニ在ラサル軍人、軍屬ニ對スル罰金ノ言渡及ヒ執行ハ軍事裁判所ニ囑託シテ之ヲ爲ス
第三百三條 原吿若クハ被吿ハ相手方ト相手方ノ證人トノ間ニ第二百九十七條第一號乃至第三號ノ關係アルトキハ其證人ヲ忌避スルコトヲ得
第三百四條 忌避ノ申請ハ證人ノ訊問前ニ之ヲ爲ス可シ此時限後ハ其前ニ忌避ノ原因ヲ主張スルヲ得サリシコトヲ疏明スルトキニ限リ其證人ヲ忌避スルコトヲ得
忌避ノ申請ハ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
忌避ノ原因ハ之ヲ疏明ス可シ
第三百五條 忌避ノ申請ニ付テノ裁判ハ口頭辯論ヲ經スシテ之ヲ爲スコトヲ得
忌避ノ原因アリト宣言スル決定ニ對シテハ上訴ヲ爲スコトヲ得ス忌避ノ原因ナシト宣言スル決定ニ對シテハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
第三百六條 各證人ニハ其携帶ス可キ呼出狀其他適當ノ方法ヲ以テ人違ナラサルコトヲ判然ナラシメタル後訊問前各別ニ宣誓ヲ爲サシム可シ
然レトモ宣誓ハ特別ノ原因アルトキ殊ニ之ヲ爲サシム可キヤ否ヤニ付キ疑ノ存スルトキハ訊問ノ終ルマテ之ヲ延フルコトヲ得
第三百七條 證人ハ訊問前ニ宣誓ヲ爲ス可キ場合ニ於テハ良心ニ從ヒ眞實ヲ述ヘ何事ヲモ默祕セス又何事ヲモ附加セサル旨ノ誓ヲ宣フ可シ
又訊問後ニ宣誓ヲ爲ス可キ場合ニ於テハ良心ニ從ヒ眞實ヲ述ヘ何事ヲモ默祕セス又何事ヲモ附加セサリシ旨ノ誓ヲ宣フ可シ
第三百八條 判事ハ宣誓前ニ相當ナル方法ヲ以テ宣誓者ニ僞證ノ罰ヲ諭示ス可シ
第三百九條 宣誓ヲ拒ム證人ニ付テハ第三百條乃至第三百二條ノ規定ヲ適用ス
第三百十條 左ノ者ハ宣誓ヲ爲サシメスシテ參考ノ爲メ之ヲ訊問スルコトヲ得
第一 訊問ノ時未タ滿十六歲ニ達セサル者
第二 宣誓ノ何物タルヤヲ了解スルニ必要ナル精神上ノ發達ノ缺クル者
第三 刑事上ノ判決ニ因リ公權ヲ剝奪又ハ停止セラレタル者
第四 第二百九十七條及ヒ第二百九十八條第三號竝ニ第四號ノ規定ニ依リ證言ヲ拒絕スル權利アリテ之ヲ行使セサル者但第二百九十八條第三號竝ニ第四號ノ場合ニ於テハ拒絕ノ權利ニ關スル事實ニ付キ證言ヲ爲ス可キコトヲ申立テラレタルトキニ限ル
第五 訴訟ノ成績ニ直接ノ利害關係ヲ有スル者
第三百十一條 證人訊問ハ後ニ訊問ス可キ證人ノ在ラサル場所ニ於テ各別ニ之ヲ爲ス
證人ノ供述互ニ齟齬シタルトキハ之ヲ對質セシムルコトヲ得
第三百十二條 證人訊問ハ證人ニ其氏名、年齡、身分職業及ヒ住居ヲ問フヲ以テ始マル又必要ナル場合ニ於テハ其事件ニ於テ證言ノ信用ニ關スル事情殊ニ當事者トノ關係ニ付テノ問ヲ爲ス可シ
第三百十三條 證人ニハ其訊問事項ニ付キ知リタルモノヲ牽連シテ供述セシム可シ
證人ノ供述ヲ明白及ヒ完全ナラシメ且其知リ得タル原因ヲ穿鑿スル爲メ必要ナル場合ニ於テハ尙ホ他ノ問ヲ發ス可シ
第三百十四條 證人ハ其供述ニ換ヘテ書類ヲ朗讀シ其他覺書ヲ用井ルコトヲ得ス但算數ノ關係ニ限リ覺書ヲ用井ルコトヲ得
第三百十五條 陪席判事ハ裁判長ニ吿ケテ證人ニ問ヲ發スルコトヲ得
當事者ハ證人ニ對シ自ラ問ヲ發スルコトヲ得ス然レトモ當事者ハ證人ノ供述ヲ明白ナラシムル爲ニ其必要ナリトスル問ヲ發センコトヲ裁判長ニ申立ツルコトヲ得
發問ノ許否ニ付キ異議アルトキハ裁判所ハ直チニ之ヲ裁判ス
第三百十六條 調書ニハ證人カ其訊問ノ前若クハ後ニ宣誓シタルヤ又ハ宣誓セスシテ訊問ヲ受ケタルヤヲ記載ス可シ
第三百十七條 受訴裁判所ハ左ノ場合ニ於テ證人ノ再訊問ヲ命スルコトヲ得
第一 證人訊問カ法律上ノ規定ニ違ヒタルトキ
第二 證人訊問ノ完全ナラサルトキ
第三 證人ノ供述カ明白ナラス又ハ兩義ニ涉ルトキ
第四 證人カ其供述ノ補充又ハ更正ヲ申立ツルトキ
第五 此他裁判所カ再訊問ヲ必要トスルトキ
第三百十八條 左ノ場合ニ於テ證人ニ依レル證據調ハ受訴裁判所ノ部員一名ニ之ヲ命シ又ハ區裁判所ニ之ヲ囑託スルコトヲ得
第一 眞實ヲ探知スル爲メ現場ニ就キ證人ヲ訊問スルノ必要ナルトキ
第二 證人カ疾病其他ノ事由ノ爲メ受訴裁判所ニ出頭スル能ハサルトキ
第三 證人カ受訴裁判所ノ所在地ヨリ遠隔ノ地ニ在リテ其裁判所ニ出頭スルニ付キ不相應ノ時日及ヒ費用ヲ要スルトキ
第三百十九條 第二百九十四條、第二百九十五條、第三百二條及ヒ第三百九條ニ揭ケタル證人ニ對スル受訴裁判所ノ權ハ受命判事又ハ受託判事ニモ屬ス
證人カ受命判事又ハ受託判事ノ面前ニ於テ理由ヲ開示シテ證言ヲ拒ミ又ハ宣誓ヲ拒ミ又ハ職權若クハ申立ニ因リ發シタル問ニ答フルコトヲ拒ムトキハ此拒絕ノ當否ニ付キ裁判ヲ爲ス權ハ受訴裁判所ニ屬ス
受命判事又ハ受託判事カ原吿若クハ被吿ヨリ申立テタル問ヲ發スルコトヲ否ムトキハ原吿若クハ被吿ハ其當否ニ付キ受訴裁判所ノ裁判ヲ求ムルコトヲ得
證人ノ再訊問ハ受命判事又ハ受託判事ノ意見ヲ以テ之ヲ命スルコトヲ得
第三百二十條 證人ヲ申出テタル原吿若クハ被吿ハ其訊問ノ開始マテハ此證據方法ヲ抛棄スルコトヲ得其後ハ相手方ノ承諾ヲ得ルトキニ限リ之ヲ抛棄スルコトヲ得
第三百二十一條 各證人ハ日當ノ辨濟及ヒ其出頭ノ爲ニ旅行ヲ要スルトキハ旅費ノ辨濟ヲ請求スルコトヲ得
此金額ノ拂渡ハ訊問期日ノ終リタル後直チニ之ヲ求ムルコトヲ得
擧證者ノ豫納シタル金額不足スルトキハ職權ヲ以テ其不足額ヲ取立ツ可シ
第七節 鑑定
第三百二十二條 鑑定ニ付テハ以下數條ニ於テ別段ノ規定ヲ設ケサル限リハ人證ニ付テノ規定ヲ準用ス
第三百二十三條 鑑定ノ申出ハ鑑定ス可キ事項ヲ表示シテ之ヲ爲ス
第三百二十四條 立會フ可キ鑑定人ノ選定及ヒ其員數ノ指定ハ受訴裁判所之ヲ爲ス其裁判所ハ鑑定人ノ任命ヲ一名マテニ制限シ又ハ何時ニテモ既ニ任命シタル者ニ代ヘ他ノ鑑定人ヲ任命スルコトヲ得
裁判所ハ鑑定人トシテ訊問ヲ受クルニ適當ナル者ヲ指名ス可キ旨ヲ當事者ニ催吿スルコトヲ得
當事者カ一定ノ者ヲ鑑定人ニ爲スコトヲ合意シタルトキハ裁判所ハ其合意ニ從フ可シ然レトモ裁判所ハ當事者ノ爲ス可キ選定ヲ一定ノ員數ニ制限スルコトヲ得
第三百二十五條 外國ノ書類又ハ產物ノ審査ヲ要スル場合ニ於テ必要ナル能力ヲ有スル本邦人ノ在ラサルトキハ裁判所ハ外國人ヲ鑑定人ニ任命スルコトヲ得
第三百二十六條 左ニ揭クル者鑑定ヲ命セラレタルトキハ之ヲ爲ス義務アリ
第一 必要ナル種類ノ鑑定ヲ爲ス爲ニ公ニ任命セラレタル者
第二 鑑定ヲ爲スニ必要ナル學術、技藝若クハ職業ニ常ニ從事スル者又ハ學術、技藝若クハ職業ニ從事スル爲ニ公ニ任命セラレ若クハ授權セラレタル者
右ノ外鑑定ヲ爲ス可キ旨ヲ裁判所ニ於テ述ヘタル者ハ鑑定人タル義務ナキトキト雖モ鑑定ヲ爲ス義務アリ
第三百二十七條 鑑定人ハ證人カ證言ヲ拒ムコトヲ得ルト同一ノ原因ニ依リ鑑定ヲ拒ム權利アリ
官吏、公吏ハ其所屬廳ニ於テ異議アルトキハ之ヲ鑑定人トシテ訊問スルコトヲ得ス
第三百二十八條 鑑定ヲ爲ス義務アル鑑定人出頭セス又ハ鑑定ヲ拒ミタル場合ニ於テハ其者ニ對シ此カ爲ニ生シタル費用ノ賠償及ヒ罰金ヲ言渡ス可シ但其鑑定人ヲ勾引スルコトヲ得ス
第三百二十九條 鑑定人ハ其鑑定ヲ爲ス前ニ其鑑定人タル義務ヲ公平且誠實ニ履行スヘキ旨ノ誓ヲ宣フ可シ
第三百三十條 受訴裁判所ハ其意見ヲ以テ左ノ諸件ヲ定ム可シ
第一 鑑定人ノ意見ハ口頭又ハ書面ニテ之ヲ述ヘシム可キヤ
第二 數名ノ鑑定人ヲ訊問ス可キ場合ニ於テ各意見カ異ナルトキハ共同ニテ鑑定書ヲ作ラシム可キヤ又ハ各別ニ之ヲ作ラシム可キヤ
第三 口頭辯論ノ際鑑定人ノ總員又ハ其一名ヲシテ鑑定書ヲ說明セシム可キヤ
第四 鑑定ノ結果カ不十分ナルトキハ同一又ハ他ノ鑑定人ヲシテ再ヒ鑑定ヲ爲サシム可キヤ
第三百三十一條 受訴裁判所ハ鑑定人ノ任命ヲ受命判事又ハ受託判事ニ委任スルコトヲ得此場合ニ於テハ受命判事又ハ受託判事ハ第三百二十四條及ヒ第三百三十條第一號竝ニ第二號ノ規定ニ依リ受訴裁判所ニ屬スル權ヲ有ス
第三百三十二條 鑑定人ハ日當、旅費及ヒ立替金ノ辨濟ヲ請求スルコトヲ得
此場合ニ於テハ第三百二十一條ノ規定ヲ準用ス
第三百三十三條 特別ノ智識ヲ要セシ過去ノ事實又ハ事情ニシテ其實驗アル者ノ訊問ニ因リテ確定ス可キトキハ人證ニ付テノ規定ヲ適用ス
第八節 書證
第三百三十四條 書證ノ申出ハ證書ヲ提出シテ之ヲ爲ス
第三百三十五條 擧證者其使用セントスル證書カ相手方ノ手ニ存スル旨ヲ主張スルトキハ書證ノ申出ハ相手方ニ其證書ノ提出ヲ命センコトヲ申立テテ之ヲ爲ス可シ
第三百三十六條 相手方ハ左ノ場合ニ於テ證書ヲ提出スル義務アリ
第一 擧證者カ民法ノ規定ニ從ヒ訴訟外ニ於テモ證書ノ引渡又ハ其提出ヲ求ムルコトヲ得ルトキ
第二 證書カ其旨趣ニ因リ擧證者及ヒ相手方ニ共通ナルトキ
第三百三十七條 相手方ハ其手ニ存スル證書ニシテ其訴訟ニ於テ擧證ノ爲メ引用シタルモノヲ提出スル義務アリ準備書面中ニノミ引用シタルトキト雖モ亦同シ
第三百三十八條 證書ノ提出ヲ命センコトノ申立ニハ左ノ諸件ヲ揭ク可シ
第一 證書ノ表示
第二 證書ニ依リ證ス可キ事實ノ表示
第三 證書ノ旨趣
第四 證書カ相手方ノ手ニ存スル旨ヲ主張スル理由タル事情
第五 證書ヲ提出ス可キ義務ノ原因ノ表示
第三百三十九條 裁判所ハ證書ニ依リ證ス可キ事實ノ重要ニシテ且申立ヲ正當ナリト認ムル場合ニ於テ相手方カ證書ノ其手ニ存スルコトヲ自白スルトキ又ハ申立ニ對シ陳述セサルトキハ證據決定ヲ以テ證書ノ提出ヲ命ス
第三百四十條 相手方カ證書ヲ所持セサル旨ヲ申立ツルトキハ此申立ノ眞實ナルヤ否ヤヲ定ムル爲メ又ハ證書ノ所在ヲ穿鑿スル爲メ又ハ擧證者ノ使用ヲ妨クル目的ヲ以テ故意ニ證書ヲ隱匿シ若クハ使用ニ耐ヘサラシメタルヤ否ヤヲ穿鑿スル爲メ本章第十節ノ規定ニ從ヒテ相手方本人ヲ訊問ス可シ
相手方カ官廳ナルトキハ證書カ其官廳ノ保藏ニ係ラス又ハ其所在ヲ開示スルヲ得サル旨ノ長官ノ證明書ヲ以テ訊問ニ換フ裁判所ハ此證明書ヲ差出サシムル爲メ相當ノ期間ヲ定ム可シ
第三百四十一條 證書ヲ所持スルコトヲ自白シ又ハ之ヲ所持セスト申立テサル相手方カ其證書ヲ提出ス可シトノ命ニ從ハス又ハ相手方カ所持セスト申立テタル證書ニ付キ訊問ヲ受ケテ供述ヲ爲スコトヲ拒ミタルトキ又ハ擧證者ノ使用ヲ妨クル目的ヲ以テ故意ニ證書ヲ隱匿シ若クハ使用ニ耐ヘサラシメタルコトノ明確ナルトキハ擧證者ノ差出シタル證書ノ謄本ヲ正當ナルモノト看做ス若シ謄本ヲ差出ササルトキハ裁判所ハ其意見ヲ以テ證書ノ性質及ヒ旨趣ニ付キ擧證者ノ主張ヲ正當ナリト認ムルコトヲ得
前條第二項ニ揭ケタル證明書ヲ裁判所ノ定メタル期間內ニ差出ササルトキハ相手方タル官廳ニ對シ前項ト同一ノ結果ヲ生ス
第三百四十二條 擧證者其使用セントスル證書カ第三者ノ手ニ存スル旨ヲ主張スルトキハ書證ノ申出ハ其證書ヲ取寄スル爲メ期間ヲ定メンコトヲ申立テテ之ヲ爲ス
第三百四十三條 第三者ハ擧證者ノ相手方ニ於ケルト同一ナル理由ニ因リ證書ヲ提出スル義務アリ然レトモ强テ證書ヲ提出セシムルコトハ訴ヲ以テノミ之ヲ爲スコトヲ得
第三百四十四條 第三百四十二條ニ從ヒ申立ヲ爲スニハ第三百三十八條第一號乃至第三號及ヒ第五號ノ要件ラ履ミ且證書カ第三者ノ手ニ存スルコトヲ疏明ス可シ
第三百四十五條 證書ニ依リ證ス可キ事實ノ重要ニシテ且其申立カ前條ノ規定ニ適スルトキハ裁判所ハ證書提出ノ期間ヲ定ム可シ
第三者ニ對スル訴訟ノ完結シタルトキ又ハ擧證者カ訴ノ提起、訴訟ノ繼續又ハ强制執行ヲ遲延シタルトキハ相手方ハ前項ノ期間ノ滿了前ト雖モ訴訟手續ノ繼續ヲ申立ツルコトヲ得
第三百四十六條 擧證者其使用セントスル證書カ官廳又ハ公吏ノ手ニ存スル旨ヲ主張スルトキハ書證ノ申出ハ證書ノ送付ヲ官廳又ハ公吏ニ囑託セラレンコトヲ申立テテ之ヲ爲ス
此規定ハ當事者カ法律上ノ規定ニ從ヒ裁判所ノ助力ナクシテ取寄スルコトヲ得ヘキ證書ニハ之ヲ適用セス
官廳又ハ公吏カ第三百三十六條ノ規定ニ基キ證書ヲ提出スル義務アル場合ニ於テ其送付ヲ拒ムトキハ第三百四十二條乃至第三百四十五條ノ規定ヲ適用ス
第三百四十七條 證據決定ヲ爲シタル後第三百四十二條及ヒ第三百四十六條ノ規定ニ從ヒ書證ヲ申出テタル場合ニ於テ證書取寄ノ手續ノ爲ニ訴訟ノ完結ヲ遲延スルニ至ル可ク且裁判所ニ於テ原吿若クハ被吿カ訴訟ヲ遲延スル故意ヲ以テ又ハ甚シキ怠慢ニ因リ書證ヲ早ク申出テサリシコトノ心證ヲ得タルトキハ申立ニ因リ其書證ノ申出ヲ却下スルコトヲ得
第三百四十八條 口頭辯論ノ際證書ヲ提出スルニ於テハ其毀損若クハ紛失ノ恐アリ又ハ他ノ顯著ナル障碍アルトキハ受命判事又ハ受託判事ノ面前ニ證書ヲ提出ス可キ旨ヲ命スルコトヲ得
受命判事又ハ受託判事ハ證書ノ明細書及ヒ其謄本ヲ調書ニ添附シ又證書ノ一分ノミ必要ナルトキハ第百七條第二項ノ規定ニ從ヒテ作リタル抄本ヲ之ニ添附ス可シ
第三百四十九條 公正證書ハ正本又ハ認證ヲ受ケタル謄本ヲ以テ之ヲ提出スルコトヲ得然レトモ裁判所ハ擧證者ニ正本ノ提出ヲ命スルコトヲ得
私署證書ハ原本ヲ以テ之ヲ提出ス可シ若シ當事者カ未タ提出セサル原本ノ眞正ニ付キ一致シ只其證書ノ效力又ハ解釋ニ付テノミ爭ヲ爲ストキハ謄本ヲ提出スルヲ以テ足ル然レトモ裁判所ハ職權ヲ以テ擧證者ニ原本ノ提出ヲ命スルコトヲ得
提出シタル謄本ニ換ヘテ正本又ハ原本ヲ提出ス可キ旨ノ命ニ從ハサルトキハ裁判所ハ心證ヲ以テ謄本ニ如何ナル證據力ヲ付ス可キヤヲ裁判ス
第三百五十條 擧證者ハ證書ヲ提出シタル後ハ相手方ノ承諾ヲ得ルトキニ限リ此證據方法ヲ抛棄スルコトヲ得
第三百五十一條 公正證書又ハ檢眞ヲ經タル私署證書ヲ僞造若クハ變造ナリト主張スル者ハ其證書ノ眞否ヲ確定センコトノ申立ヲ爲ス可シ
此場合ニ於テハ裁判所ハ其證書ノ眞否ニ付キ中間判決ヲ以テ裁判ヲ爲ス可シ
第三百五十二條 私署證書ノ眞否ニ付キ爭アルトキハ裁判所ハ擧證者ノ申立ニ因リ檢眞ヲ爲スコトヲ得
第三百五十三條 私署證書ノ檢眞ハ總テノ證據方法及ヒ手跡若クハ印章ノ對照ニ因リテ之ヲ爲ス
證書ノ眞否ヲ證セントスル當事者ハ裁判所ノ定ムル期間內ニ手跡若クハ印章ヲ對照スル爲ニ適當ナル書類ヲ提出ス可シ
眞正ナリトノ自白又ハ證明シタル適當ノ對照書類ナキトキハ對照ノ爲メ原吿若クハ被吿ニ對シ裁判所ニ於テ一定ノ語辭ノ手記ヲ命スルコトヲ得其手記シタル語辭ハ調書ノ附錄トシテ之ニ添附ス可シ
裁判所ハ手跡若クハ印章ヲ對照シタル結果ニ付キ自由ナル心證ヲ以テ裁判ヲ爲シ又必要ナル場合ニ於テハ鑑定ヲ爲サシメタル後之ヲ爲ス
原吿若クハ被吿カ裁判所ノ定メタル期間內ニ對照書類ヲ提出セサルトキ又ハ對照ス可キ語辭ヲ手記ス可キ裁判所ノ命ニ對シ十分ナル辯解ヲ爲サスシテ之ニ從ハサルトキ又ハ書樣ヲ變シテ手記シタルトキハ證書ノ眞否ニ付テノ相手方ノ主張ハ其他ノ證據ヲ要セスシテ之ヲ眞正ナリト看做スコトヲ得
第三百五十四條 提出シタル證書ハ直チニ之ヲ還付シ又適當ナル場合ニ於テハ其謄本ヲ記錄ニ留メテ之ヲ還付ス可シ
然レトモ證書ノ僞造又ハ變造ナリト爭フトキハ檢事ノ意見ヲ聽キタル後ニ非サレハ之ヲ還付スルコトヲ得ス
第三百五十五條 公正證書ノ僞造若クハ變造ナルコトヲ眞實ニ反キテ主張シタル原吿若クハ被吿ニ惡意若クハ重過失ノ責アルトキハ五十圓以下ノ過料ヲ言渡ス
又私署證書ノ眞正ナルコトヲ眞實ニ反キテ爭フトキハ前項ト同一ナル條件ヲ以テ二十圓以下ノ過料ヲ言渡ス
第三百五十六條 本節ノ規定ハ事件ノ性質ニ於テ許ス限リハ事跡ノ紀念又ハ權利ノ證徵ノ爲メ作リタル割符、界標等ノ如キモノニモ之ヲ準用ス
第九節 檢證
第三百五十七條 檢證ノ申出ハ檢證物ヲ表示シ及ヒ證ス可キ事實ヲ開示シテ之ヲ爲ス
第三百五十八條 受訴裁判所ハ檢證ヲ爲スニ際シ鑑定人ノ立會ヲ命スルコトヲ得
受訴裁判所ハ檢證及ヒ鑑定人ノ任命ヲ其部員一名ニ命シ又ハ區裁判所ニ囑託スルコトヲ得
第三百五十九條 檢證ヲ爲ス際發見シタル事項ハ調書ニ記載シテ之ヲ明確ナラシメ又必要ナル場合ニ於テハ調書ノ附錄トシテ添附ス可キ圖面ヲ作リ之ヲ明確ナラシム可シ
若シ既ニ記錄ニ圖面ノ存スルトキハ之ヲ檢證物ニ對照シ必要ナル場合ニ於テハ之ヲ更正ス可シ
第十節 當事者本人ノ訊問
第三百六十條 當事者ノ提出シタル許ス可キ證據ヲ調ヘタル結果ニ因リ證ス可キ事實ノ眞否ニ付キ裁判所カ心證ヲ得ルニ足ラサルトキハ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ原吿若クハ被吿ノ本人ヲ訊問スルコトヲ得
第三百六十一條 裁判所ハ原吿若クハ被吿ヲ訊問スルコトヲ決定シ且原吿若クハ被吿ノ自身カ決定言渡ノ際在廷スルトキハ直チニ其訊問ヲ爲スヲ以テ通例トス
第三百六十二條 訊問ヲ受クル原吿若クハ被吿ハ供述ニ換ヘテ書類ヲ朗讀シ其他覺書ヲ用井ルコトヲ得ス但算數ノ關係ニ限リ覺書ヲ用井ルコトヲ得
第三百六十三條 原吿若クハ被吿カ十分ナル理由ナクシテ供述スルコトヲ拒ミ又ハ訊問期日ニ出頭セサルトキハ裁判所ハ其意見ヲ以テ訊問ニ因リテ擧證ス可キ相手方ノ主張ヲ正當ナリト認ムルコトヲ得
第三百六十四條 訴訟無能力者ノ法律上代理人カ訴訟ヲ爲ストキハ法律上代理人若クハ訴訟無能力者ヲ訊問ス可キヤ又ハ此等ノ者ヲ共ニ訊問ス可キヤ裁判所ノ意見ヲ以テ之ヲ決定ス
法律上代理人數人アルトキハ其一人ヲ訊問ス可キヤ又ハ數人ヲ訊問ス可キヤモ亦前項ニ同シ
第十一節 證據保全
第三百六十五條 證據ヲ紛失スル恐アリ又ハ之ヲ使用シ難キ恐アルトキハ證據保全ノ爲メ證人若クハ鑑定人ノ訊問又ハ檢證ヲ申立ツルコトヲ得
第三百六十六條 訴訟カ既ニ繫屬シタルトキハ此申請ハ受訴裁判所ニ之ヲ爲ス可シ
切迫ナル危險ノ場合ニ於テハ訊問ヲ受ク可キ者ノ現在地又ハ檢證ス可キ物ノ所在地ヲ管轄スル區裁判所ニ申請ヲ爲スコトヲ得
訴訟ノ未タ繫屬セサルトキハ前項ニ記載シタル區裁判所ニ申請ヲ爲スコトヲ要ス
右申請ハ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
第三百六十七條 申請ニハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 相手方ノ表示
第二 證據調ヲ爲ス可キ事實ノ表示
第三 證據方法殊ニ證人若クハ鑑定人ノ訊問ヲ爲ス可キトキハ其表示
第四 證據ヲ紛失スル恐アリ又ハ之ヲ使用シ難キ恐アル理由此理由ハ之ヲ疏明ス可シ
第三百六十八條 申請ニ付テノ決定ハ口頭辯論ヲ經スシテ之ヲ爲スコトヲ得
申請ヲ許容スル決定ニハ證據調ヲ爲ス可キ事實及ヒ證據方法殊ニ訊問ス可キ證人若クハ鑑定人ノ氏名ヲ記載ス可シ此決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第三百六十九條 證據調ノ期日ニハ申立人ヲ呼出シ又決定及ヒ申請ノ謄本ヲ送達シテ其權利防衞ノ爲ニ相手方ヲモ呼出ス可シ
切迫ナル危險ノ場合ニ於テハ適當ナル時間ニ相手方ヲ呼出スコトヲ得サリシトキト雖モ證據調ヲ妨クルコト無シ
第三百七十條 證據調ハ本章第六節、第七節及ヒ第九節ノ規定ニ從ヒテ之ヲ爲ス
證據調ノ調書ハ證據調ヲ命シタル裁判所ニ之ヲ保存ス可シ各當事者ハ證據調ノ調書ヲ訴訟ニ於テ使用スル權利アリ
受訴裁判所ハ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ再度ノ證據調ヲ命シ又ハ既ニ調ヘタル證據ノ補充ヲ命スルコトヲ得
第三百七十一條 證據調ハ第三百六十五條ノ條件ナキトキト雖モ相手方ノ承諾ニ因リ之ヲ許スコトヲ得
第三百七十二條 申立人カ相手方ヲ指定セサルトキハ申立人自己ノ過失ニ非スシテ相手方ヲ指定シ能ハサルコトヲ疏明スル塲合ニ限リ其申請ヲ許ス
申請ヲ許容シタルトキハ裁判所ハ其知レサル相手方ノ權利防衞ノ爲ニ臨時代理人ヲ任スルコトヲ得
第二章 區裁判所ノ訴訟手續
第一節 通常ノ訴訟手續
第三百七十三條 區裁判所ノ通常ノ訴訟手續ニ付テハ區裁判所ノ構成又ハ第一編及ヒ本節ノ規定ニ依リ差異ノ生セサル限リハ地方裁判所ノ訴訟手續ニ付テノ規定ヲ適用ス
第三百七十四條 訴ハ書面又ハ口頭ヲ以テ裁判所ニ之ヲ爲スコトヲ得
第三百七十五條 起訴アリタルトキハ裁判所書記ハ訴狀ヲ被吿ニ送達スル手續ヲ爲ス
準備書面ノ交換ハ之ヲ爲スコトヲ要セス
第三百七十六條 原吿若クハ被吿ハ其申立及ヒ事實上ノ主張ニシテ豫メ通知スルニ非サレハ相手方ニ於テ之ニ對シ陳述ヲ爲シ得ヘカラサルモノヲ口頭辯論ノ前直接ニ相手方ニ通知スルコトヲ得
第三百七十七條 口頭辯論ノ期日ト訴狀送達トノ間ニ少ナクトモ三日ノ時間ヲ存スルコトヲ要ス急迫ナル場合ニ於テハ此時間ヲ二十四時マテニ短縮スルコトヲ得
送達ヲ外國ニ於テ爲ス可キトキハ事情ニ應シテ時間ヲ定ム可シ
第三百七十八條 當事者ハ通常ノ裁判日ニ於テハ豫メ期日ノ指定ナクシテ裁判所ニ出頭シ訴訟ニ付キ辯論ヲ爲スコトヲ得
此場合ニ於テ訴ノ提起ハ口頭ノ演述ヲ以テ之ヲ爲ス
第三百七十九條 數箇ノ妨訴ノ抗辯ヲ本案ノ辯論前同時ニ提出ス可キ規定ハ裁判所管轄違ノ抗辯ニ限リ之ヲ適用ス
被吿ハ妨訴ノ抗辯ニ基キ本案ノ辯論ヲ拒ム權利ナシ然レトモ裁判所ハ職權ヲ以テ右抗辯ニ付キ分離シタル辯論ヲ命スルコトヲ得
第三百八十條 第二百二十二條、第二百六十六條乃至第二百七十二條ノ規定ハ區裁判所ノ訴訟手續ニ之ヲ適用セス
然レトモ原吿若クハ被吿ノ申立及ヒ陳述ハ裁判所ノ意見ニ從ヒ訴訟關係ヲ十分ニ明確ナラシムル爲メ必要ナルモノニ限リ調書ヲ以テ之ヲ明確ナラシム可シ
第三百八十一條 訴ヲ起サントスル者ハ和解ノ爲メ請求ノ目的物ヲ開示シテ相手方ヲ其普通裁判籍ヲ有スル區裁判所ニ呼出ス可キコトヲ申立ツルコトヲ得其申立ハ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
當事者雙方出頭シ和解ノ調ヒタルトキハ調書ヲ以テ之ヲ明確ナラシム可シ
和解ノ調ハサルトキハ當事者雙方ノ申立ニ因リ其訴訟ニ付キ直チニ辯論ヲ爲ス此場合ニ於ケル訴ノ提起ハ口頭ノ演述ヲ以テ之ヲ爲ス
相手方カ出頭セス又ハ和解ノ調ハルトキハ此カ爲ニ生シタル費用ハ訴訟費用ノ一分ト看做ス
第二節 督促手續
第三百八十二條 一定ノ金額ノ支拂其他ノ代替物若クハ有價證券ノ一定ノ數量ノ給付ヲ目的トスル請求ニ付キ債權者ハ通常ノ訴訟手續ニ依ラスシテ督促手續ニ依リ條件附ノ支拂命令ヲ債務者ニ對シ發センコトヲ申立ツルコトヲ得
申請ノ旨趣ニ依レハ申請者反對給付ヲ爲スニ非サレハ其求請ヲ主張スルコトヲ得サルトキ又ハ支拂命令ノ送達ヲ外國ニ於テ爲シ若クハ公示送達ヲ以テ爲ス可キトキハ督促手續ヲ許サス
第三百八十三條 支拂命令ハ區裁判所之ヲ發ス
此命令ハ區裁判所ノ第一審ノ事物ノ管轄ノ制限ナキモノト看做シ通常ノ訴訟手續ニ於ケル訴ノ提起ニ付キ普通裁判籍又ハ不動產上裁判籍ノ屬ス可キ區裁判所ノ管轄ニ專屬ス
第三百八十四條 支拂命令ヲ發スルコトノ申請ハ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
此申請ハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 當事者及ヒ裁判所ノ表示
第二 請求ノ一定ノ數額、目的物及ヒ原因ノ表示若シ請求ノ數箇ナルトキハ其各箇ノ一定ノ數額、目的物及ヒ原因ノ表示
第三 支拂命令ヲ發センコトノ申立
第三百八十五條 裁判所ハ申請ヲ調査シ其申請カ前三條ノ規定ニ適當セス又ハ申請ノ旨趣ニ於テ請求ノ理由ナク又ハ現時理由ナキコトノ顯ハルルトキハ其申請ヲ却下ス
請求ノ一分ノミニ付キ支拂命令ヲ發スルコトヲ得サルトキハ亦其申請ヲ却下ス然レトモ數箇ノ請求中或ルモノニ理由ナクシテ其他ノモノニ理由アリト見ユルトキハ其理由アリト見ユルモノニ限リ申請ヲ許容ス
右却下ノ命令ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス然レトモ通常ノ訴訟手續ニ依リ訴追スルヲ妨クルコト無シ
第三百八十六條 支拂命令ハ豫メ債務者ヲ審訊セスシテ之ヲ發ス
支拂命令ニハ第三百八十四條第一號及ヒ第二號ニ揭ケタル申請ノ要件ヲ記載シ且卽時ノ强制執行ヲ避ケント欲セハ此命令送達ノ日ヨリ十四日ノ期間內ニ請求ヲ滿足セシメ及ヒ其手續ノ費用ニ付キ定ムル數額ヲ債權者ニ辨濟ス可ク又ハ裁判所ニ異議ヲ申立ツ可キ旨ノ債務者ニ對スル命令ヲ記載ス可シ
前項ノ期間ハ爲替ヨリ生スル請求ニ付テハ二十四時間其他ノ請求ニ付テハ申立ニ因リ三日マテニ之ヲ短縮スルコトヲ得
第三百八十七條 權利拘束ノ效力ハ支拂命令ヲ債務者ニ送達スルヲ以テ始マル
支拂命令ノ送達ハ之ヲ債權者ニ通知ス可シ
第三百八十八條 債務者ハ支拂命令ニ對シ書面又ハ口頭ヲ以テ異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得
第三百八十九條 債務者カ請求ノ全部又ハ一分ニ對シ適當ナル時間ニ異議ヲ申立ツルトキハ支拂命令ノ效力ヲ失フ然レトモ權利拘束ノ效力ヲ存續ス
數箇ノ請求中或ルモノニ對シ異議ヲ申立テタルトキノ支拂命令ハ其他ノ請求及ヒ之ニ相當スル費用ノ部分ニ付キ效力ヲ有ス
第三百九十條 適當ナル時間ニ異議ヲ申立テタル場合ニ於テ請求ニ付キ起ス可キ訴カ區裁判所ノ管轄ニ屬スルトキハ其訴ハ支拂命令ノ送達ト同時ニ區裁判所ニ之ヲ起シタルモノト看做ス其口頭辯論ノ期日ハ第三百七十七條ノ規定ニ從ヒテ之ヲ定ム
第三百九十一條 請求ニ付キ起ス可キ訴カ地方裁判所ノ管轄ニ屬スル場合ニ於テハ適當ナル時間ニ異議ノ申立アリタルコトヲ債權者ニ通知ス可シ
債權者其通知書ノ送達アリタル日ヨリ起算シ一个月ノ期間內ニ管轄裁判所ニ訴ヲ起ササルトキハ權利拘束ノ效力ヲ失フ
第三百九十二條 督促手續ノ費用ハ適當ナル時間ニ異議ノ申立アリタル場合ニ於テハ起ス可キ訴訟ノ費用ノ一分ト看做ス
前條ノ場合ニ於テ期間內ニ訴ヲ起ササルトキハ手續ノ費用ハ債權者ノ負擔ニ歸ス
第三百九十三條 支拂命令ハ其命令中ニ揭ケタル期間ノ經過後債權者ノ申請ニ因リ之ヲ假ニ執行シ得ヘキコトヲ宣言ス但假執行ノ宣言前債務者異議ヲ申立テサルトキニ限ル
右假執行ノ宣言ハ支拂命令ニ付ス可キ執行命令ヲ以テ之ヲ爲ス其執行命令ニハ債權者ニ於テ計算スル手續ノ費用ヲ揭ク可シ
債權者ノ申請ヲ却下スル決定ニ對シテハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
第三百九十四條 執行命令ハ假執行ノ宣言ヲ付シタル闕席判決ト同一ナリトス其執行命令ニ對シテハ第二百五十五條乃至第二百六十四條ノ規定ニ從ヒテ故障ヲ申立ツルコトヲ得請求カ區裁判所ノ管轄ニ屬セサルトキハ區裁判所ハ其故障ヲ法律上ノ方式及ヒ期間ニ於テ申立テタルヤノ㸃ノミニ付キ辯論及ヒ裁判ヲ爲ス此場合ニ於テハ第三百九十一條第二項ニ定メタル期間ハ故障ヲ許ス判決ノ確定ヲ以テ始マル
第三百九十五條 時期ニ後レテ申立テタル異議ハ命令ヲ以テ之ヲ却下ス
此却下ノ命令ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第三編 上訴
第一章 控訴
第三百九十六條 控訴ハ區裁判所又ハ地方裁判所ノ第一審ニ於テ爲シタル終局判決ニ對シテ之ヲ爲ス
第三百九十七條 終局判決前ニ爲シタル裁判ハ亦控訴裁判所ノ判斷ヲ受ク但此法律ニ於テ不服ヲ申立ツルコトヲ得スト明記シタルトキ又ハ抗吿ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトヲ得ルトキハ此限ニ在ラス
第三百九十八條 闕席判決ニ對シテハ期日ヲ懈怠シタル者ヨリ控訴ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス但故障ヲ許ササル闕席判決ニ對シテハ懈怠ナカリシコトヲ理由トスルトキニ限リ控訴ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトヲ得
第三百九十九條 控訴ハ口頭辯論ノ前ニ於テハ被控訴人ノ承諾ナクシテ之ヲ取下クルコトヲ得
控訴ノ取下ハ上訴權ヲ喪失スル結果ヲ生ス
第四百條 控訴期間ハ一个月トス此期間ハ不變期間ニシテ判決ノ送達ヲ以テ始マル
判決ノ送達前ニ提起シタル控訴ハ無效トス
第二百四十二條ノ規定ニ從ヒ控訴期間內ニ追加裁判ヲ以テ判決ヲ補充シタルトキハ控訴期間ノ進行ハ最初ノ判決ニ對スル控訴ニ付テモ追加裁判ノ送達ヲ以テ始マル
第四百一條 控訴ノ提起ハ控訴狀ヲ控訴裁判所ニ差出シテ之ヲ爲ス
此控訴狀ニハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 控訴セラルル判決ノ表示
第二 此判決ニ對シ控訴ヲ爲ス旨ノ陳述
此他控訴狀ハ準備書面ニ關スル一般ノ規定ニ從ヒテ之ヲ作リ且判決ニ對シ如何ナル程度ニ於テ不服ナルヤ及ヒ判決ニ付キ如何ナル變更ヲ爲ス可キヤノ申立ヲ揭ケ若シ新ニ主張セントスル事實及ヒ證據方法アルトキハ其新ナル事實及ヒ證據方法ヲモ揭ク可シ
第四百二條 判然許ス可カラサル控訴又ハ判然法律上ノ方式ニ適セス若クハ其期間ノ經過後ニ起シタル控訴ハ裁判長ノ命令ヲ以テ之ヲ却下ス
此却下ノ命令ニ對シテハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
第四百三條 控訴狀ノ送達ト口頭辯論ノ期日トノ間ニ存スルコトヲ要スル時間ニ付テハ第百九十四條ノ規定ヲ適用シ答辯書ヲ差出ス可キ期間ノ催吿ニ付テハ第百九十九條ノ規定ヲ適用ス
前項ノ場合ニ於テモ亦第二百三條ノ規定ヲ適用スルコトヲ得
第四百四條 答辯書ハ準備書面ニ關スル一般ノ規定ニ從ヒテ之ヲ作リ且被控訴人ノ一定ノ申立及ヒ其主張セントスル新ナル事實及ヒ證據方法ヲ揭ク可シ
第四百五條 被控訴人ハ自己ノ控訴ヲ抛棄シタルトキ又ハ控訴期間ノ經過シタルトキト雖モ附帶控訴ヲ爲スコトヲ得
闕席判決ニ對シ附帶控訴ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトニ付テハ第三百九十八條ノ規定ニ從フ
第四百六條 左ノ場合ニ於テハ附帶控訴ハ其效力ヲ失フ
第一 控訴ヲ不適法トシテ判決ヲ以テ棄却シタルトキ
第二 控訴ヲ取下ケタルトキ
然レトモ被控訴人カ控訴期間內ニ附帶控訴ヲ爲シタルトキハ之ヲ獨立ノ控訴ト看做ス
第四百七條 答辯書ニ新ナル事實若クハ證據方法ヲ揭ケ又ハ附帶控訴ヲ爲ス旨ノ陳述ヲ揭ケタルトキハ之ヲ控訴人ニ送達ス可シ
第四百八條 右ノ外控訴ノ訴訟手續ニハ地方裁判所ノ第一審ノ訴訟手續ノ規定ヲ準用ス但本章ノ規定ニ依リ差異ノ生スルモノハ此限ニ在ラス
第四百九條 當事者ノ雙方ヨリ控訴ヲ起シタルトキハ其兩控訴ニ付キ辯論及ヒ裁判ヲ同時ニ爲スヲ以テ通例トス
第四百十條 口頭辯論ハ其期日ニ於テ被控訟人ノ控訴期間ノ未タ經過セサルトキハ其申立ニ因リ期間ノ滿了マテ之ヲ延期ス
闕席判決ヲ受ケタル原吿若クハ被吿ヨリ其判決ニ對シ故障ヲ申立テ相手方ヨリ控訴ヲ起シタルトキハ控訴ニ付テノ辯論及ヒ裁判ハ故障ノ完結マテ職權ヲ以テ之ヲ延期ス
第四百十一條 控訴裁判所ニ於ケル訴訟ハ不服ノ申立ニ因リ定マリタル範圍內ニ於テ更ニ之ヲ辯論ス
第四百十二條 當事者ハ其控訴ノ申立及ヒ不服ヲ申立テラレタル裁判ノ當否ヲ明暸ナラシムル爲メ必要ナル限リハ口頭辯論ノ際第一審ニ於ケル辯論ノ結果ヲ演述ス可シ
演述ノ不正確又ハ不完全ナル場合ニ於テハ裁判長ハ其更正若クハ補完ヲ爲サシメ又必要ナル場合ニ於テハ辯論ヲ再開シテ之ヲ爲サシム可シ
第四百十三條 訴ノ變更ハ相手方ノ承諾アルトキト雖モ之ヲ許サス
第四百十四條 妨訴ノ抗辯ハ職權ヲ以テ調査ス可カラサルモノニシテ且原吿若クハ被吿カ其過失ニ非スシテ第一審ニ於テ提出シ能ハサリシコトヲ疏明スルトキニ限リ之ヲ主張スルコトヲ得
本案ノ辯論ハ妨訴ノ抗辯ニ基キ之ヲ拒ムコトヲ得ス然レトモ裁判所ハ職權ヲ以テ妨訴ノ抗辯ニ付キ分離シタル辯論ヲ命スルコトヲ得
第四百十五條 當事者ハ第一審ニ於テ主張セサリシ攻擊防禦ノ方法殊ニ新ナル事實及ヒ證據方法ヲ提出スルコトヲ得
第四百十六條 新ナル請求ハ第百九十六條第二號及ヒ第三號ノ場合又ハ相殺スルコトヲ得ヘキモノニシテ且原吿若クハ被吿カ其過失ニ非スシテ第一審ニ於テ提出シ能ハサリシコトヲ疏明スルトキニ限リ之ヲ起スコトヲ得
第四百十七條 事實又ハ證書ニ付キ第一審ニ於テ爲ササリシ陳述又ハ拒ミタル陳述ハ第二審ニ於テ之ヲ爲スコトヲ得
第四百十八條 第一審ニ於テ爲シタル裁判上ノ自白ハ第二審ニ於テモ亦其效力ヲ有ス
第四百十九條 控訴裁判所ハ控訴ヲ許ス可キヤ否ヤ又控訴ヲ法律上ノ方式ニ從ヒ若クハ其期間ニ於テ起シタルヤ否ヤヲ職權ヲ以テ調査ス可シ若シ此要件ノ一ヲ缺クトキハ判決ヲ以テ控訴ヲ不適法トシテ棄却ス可シ
第四百二十條 第一審ノ裁判ハ變更ヲ申立テタル部分ニ限リ之ヲ變更スルコトヲ得
第四百二十一條 第一審ニ於テ是認シ又ハ非認シタル請求ニ關スル總テノ爭㸃ニシテ申立ニ從ヒ辯論及ヒ裁判ヲ必要トスルモノハ第一審ニ於テ此爭㸃ニ付キ辯論及ヒ裁判ヲ爲ササルトキト雖モ控訴裁判所ニ於テ其辯論及ヒ裁判ヲ爲ス
第四百二十二條 控訴裁判所ハ左ノ場合ニ於テ事件ニ付キ尙ホ辯論ヲ必要トスルトキハ其事件ヲ第一審裁判所ニ差戾ス可シ
第一 不服ヲ申立テラレタル判決カ闕席判決ナルトキ
第二 不服ヲ申立テラレタル判決カ闕席判決ニ對スル故障ヲ不適法トシテ棄却シタルモノナルトキ
第三 不服ヲ申立テラレタル判決カ妨訴ノ抗辯ノミニ付キ裁判ヲ爲シタルモノナルトキ
第四 請求カ其原因及ヒ數額ニ付キ爭アル場合ニ於テ不服ヲ申立テラレタル判決カ先ツ其原因ニ付キ裁判ヲ爲シタルモノナルトキ
第五 不服ヲ申立テラレタル判決カ證書訴訟及ヒ爲替訴訟ニ於テ敗訴ノ被吿ニ別訴訟ヲ以テ追行ヲ爲ス權ヲ留保シタルモノナルトキ
第四百二十三條 第一審ニ於テ訴訟手續ニ付テノ規定ニ違背シタルトキハ控訴裁判所ハ其判決及ヒ違背シタル訴訟手續ノ部分ヲ廢棄シ事件ヲ第一審裁判所ニ差戾スコトヲ得
第四百二十四條 控訴ヲ理由ナシトスルトキハ判決ヲ以テ控訴ノ棄却ヲ言渡ス可シ
第四百二十五條 判決ヲ控訴人ノ不利益ニ變更スルコトハ相手方カ控訴又ハ附帶控訴ノ方法ヲ以テ判決ニ付キ不服ヲ申立テタル部分ニ限リ之ヲ爲スコトヲ得
第四百二十六條 第二百十條ノ規定ニ從ヒテ防禦ノ方法ヲ却下スルトキハ其防禦ノ方法ヲ主張スル權ハ之ヲ被吿ニ留保ス可シ
判決ニ此留保ヲ揭ケサルトキハ第二百四十二條ノ規定ニ從ヒテ判決ノ補充ヲ申立ツルコトヲ得
留保ヲ揭ケタル判決ハ上訴及ヒ强制執行ニ付テハ終局判決ト看做ス
第四百二十七條 防禦ノ方法ニシテ被吿ニ其主張ヲ留保スルモノニ付テハ其訴訟ハ第二審ニ繫屬ス
爾後ノ手續ニ於テ訴ヲ以テ主張シタル請求ノ理由ナカリシコトノ顯ハルルトキハ前判決ヲ廢棄シテ其訴ヲ棄却シ且申立ニ因リ判決ニ基キ支拂ヒタルモノ又ハ給付シタルモノヲ返還ス可キコトヲ言渡シ竝ニ費用ニ付キ裁判ヲ爲ス可シ
第四百二十八條 控訴人カ口頭辯論ノ期日ニ出頭セサルトキハ出頭シタル被控訴人ノ申立ニ因リ闕席判決ヲ以テ控訴ノ棄却ヲ言渡ス可シ
第四百二十九條 被控訴人口頭辯論ノ期日ニ出頭セサル場合ニ於テ出頭シタル控訴人ヨリ闕席判決ノ申立ヲ爲ストキハ第一審裁判ノ憑據ト爲リタルモノニ牴觸セサル控訴人ノ事實上ノ供述ハ被控訴人之ヲ自白シタルモノト看做シ且第一審裁判所ノ事實上ノ確定ヲ補充シ若クハ辯駁スル爲メ控訴人ノ申立テタル適法ノ證據調ハ既ニ之ヲ爲シ及ヒ其結果ヲ得タルモノト看做シ闕席判決ヲ爲ス
第四百三十條 判決中ノ事實ノ摘示ニ付テハ前審ノ判決ヲ引用スルコトヲ得
第四百三十一條 控訴裁判所ノ書記ハ控訴狀ノ提出ヨリ二十四時間ニ第一審裁判所ノ書記ニ訴訟記錄ノ送付ヲ求ム可シ
控訴完結ノ後其記錄ハ第二審ニ於テ爲シタル判決ノ認證アル謄本ト共ニ第一審裁判所ノ書記ニ之ヲ返還ス可シ
第二章 上吿
第四百三十二條 上吿ハ地方裁判所及ヒ控訴院ノ第二審ニ於テ爲シタル終局判決ニ對シテ之ヲ爲ス
第四百三十三條 終局判決前ニ爲シタル裁判ハ亦上吿裁判所ノ判斷ヲ受ク但此法律ニ於テ不服ヲ申立ツルコトヲ得スト明記シタルトキ又ハ抗吿ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトヲ得ルトキハ此限ニ在ラス
第四百三十四條 上吿ハ法律ニ違背シタル裁判ナルコトヲ理由トスルトキニ限リ之ヲ爲スコトヲ得
第四百三十五條 法則ヲ適用セス又ハ不當ニ適用シタルトキハ法律ニ違背シタルモノトス
第四百三十六條 裁判ハ左ノ場合ニ於テハ常ニ法律ニ違背シタルモノトス
第一 規定ニ從ヒ判決裁判所ヲ構成セサリシトキ
第二 法律ニ依リ職務ノ執行ヨリ除斥セラレタル判事カ裁判ニ參與シタルトキ但忌避ノ申請又ハ上訴ヲ以テ除斥ノ理由ヲ主張シタルモ其效ナカリシトキハ此限ニ在ラス
第三 判事カ忌避セラレ且忌避ノ申請ヲ理由アリト認メタルニ拘ハラス裁判ニ參與シタルトキ
第四 裁判所カ其管轄又ハ管轄違ヲ不當ニ認メタルトキ
第五 訴訟手續ニ於テ原吿若クハ被吿カ法律ノ規定ニ從ヒ代理セラレサリシトキ
第六 訴訟手續ノ公行ニ付テノ規定ニ違背シタル口頭辯論ニ基キ裁判ヲ爲シタルトキ
第七 裁判ニ理由ヲ付セサルトキ
第四百三十七條 上吿期間ハ一个月トス此期間ハ不變期間ニシテ判決ノ送達ヲ以テ始マル
判決ノ送達前ニ提起シタル上吿ハ無效トス
第四百三十八條 上吿ノ提起ハ上吿狀ヲ上吿裁判所ニ差出シテ之ヲ爲ス
此上吿狀ニハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 上吿セラルル判決ノ表示
第二 此判決ニ對シ上吿ヲ爲ス旨ノ陳述
此他上吿狀ハ準備書面ニ關スル一般ノ規定ニ從ヒテ之ヲ作リ特ニ判決ニ對シ如何ナル程度ニ於テ不服ナルヤ及ヒ判決ニ付キ如何ナル程度ニ於テ破毀ヲ爲ス可キヤノ申立ヲ揭ケ且法則ヲ適用セス若クハ不當ニ適用シタルコトヲ上吿ノ理由トスルトキハ其法則ノ表示又ハ訴訟手續ニ付テノ規定ニ違背シタルコトヲ上吿ノ理由トスルトキハ其欠缺ヲ明カニスル事實ノ表示又ハ法律ニ違背シテ事實ヲ確定シ若クハ遺脫シ若クハ提出シタリト看做シタルコトヲ上吿ノ理由トスルトキハ其事實ノ表示ヲ揭ク可シ
第四百三十九條 上吿裁判所ハ上吿人ヲ呼出シ其陳述ヲ聽キ上吿ヲ許ス可カラサルモノナルトキ又ハ法律上ノ方式及ヒ期間ニ於テ起ササルトキ又ハ第四百三十四條ノ規定ニ依ラサルトキハ判決ヲ以テ之ヲ棄却ス可シ
上吿人カ呼出ノ期日ニ出頭セサルトキハ上吿ヲ取下ケタルモノト看做ス但出頭セサリシコトヲ期日ヨリ七日ノ期間內ニ十分ナル理由ヲ以テ辯解シタルトキハ更ニ期日ヲ定ム
第四百四十條 上吿狀ノ送達ト口頭辯論ノ期日トノ間ニ存スルコトヲ要スル時間ニ付テハ第百九十四條ノ規定ヲ適用シ答辯書ヲ差出ス可キ期間ノ催吿ニ付テハ第百九十九條ノ規定ヲ適用ス
前項ノ場合ニ於テモ亦第二百三條ノ規定ヲ適用スルコトヲ得
第四百四十一條 答辯書ハ準備書面ニ關スル一般ノ規定ニ從ヒテ之ヲ作リ且一定ノ申立ヲ揭ク可シ
第四百四十二條 被上吿人ハ附帶上吿ヲ爲スコトヲ得
此附帶上吿ニ付テハ附帶控訴ノ規定ヲ準用ス
第四百四十三條 答辯書ニ附帶上吿ヲ爲ス旨ノ陳述ヲ揭ケタルトキハ之ヲ上吿人ニ送達ス可シ
第四百四十四條 右ノ外上吿ノ訴訟手續ニハ地方裁判所ノ第一審ノ訴訟手續ノ規定ヲ準用ス但本章ノ規定ニ依リ差異ノ生スルモノハ此限ニ在ラス
第四百四十五條 上吿裁判所ハ當事者ノ爲シタル申立ノミニ付キ調査ヲ爲ス
第四百四十六條 上吿裁判所ハ裁判ヲ爲スニ付キ控訴裁判所カ其裁判ノ憑據トシタル事實ヲ標準トス此事實ノ外ハ第四百三十八條第三項ニ揭ケタル事實ニ限リ之ヲ斟酌スルコトヲ得
證據調ヲ必要トスルトキハ上吿裁判所ハ之ヲ命ス可シ
第四百四十七條 上吿ヲ理由アリトスルトキハ不服ヲ申立テラレタル判決ヲ破毀ス可シ
訴訟手續ニ關スル規定ニ違背シタルニ因リ判決ヲ破毀スルトキハ其違背シタル部分ニ限リ訴訟手續ヲモ亦破毀ス可シ
第四百四十八條 判決ヲ破毀スル場合ニ於テハ第四百五十一條ノ規定ヲ除ク外更ニ辯論及ヒ裁判ヲ爲サシムル爲メ事件ヲ控訴裁判所ニ差戾シ又ハ之ヲ他ノ同等ナル裁判所ニ移送ス可シ
事件ノ差戾又ハ移送ヲ受ケタル裁判所ハ新口頭辯論ニ基キ裁判ヲ爲スコトヲ要ス
第四百四十九條 當事者ハ破毀セラレタル判決ノ以前ニ於ケル口頭辯論ニ當リ提出スルコトヲ得ヘカリシ事項ヲ新口頭辯論ニ際シ提出スル權利アリ
第四百五十條 事件ノ差戾又ハ移送ヲ受ケタル裁判所ハ上吿裁判所ノ爲シタル法律ニ係ル判斷ニシテ判決ヲ破毀スル基本ト爲シタルモノヲ以テ新ナル辯論及ヒ裁判ノ基本ト爲ス義務アリ
第四百五十一條 上吿裁判所ハ左ノ場合ニ於テ事件ニ付キ裁判ヲ爲ス可シ
第一 確定シタル事實ニ法律ヲ適用スルニ當リ法律ニ違背シタル爲ニ判決ヲ破毀シ且其事件カ裁判ヲ爲スニ熟スルトキ
第二 無訴權ノ爲メ又ハ裁判所ノ管轄違ナル爲ニ判決ヲ破毀スルトキ
第四百五十二條 上吿ヲ理由ナシトスルトキハ之ヲ棄却ス可シ
第四百五十三條 裁判カ其理由ニ於テ法律ニ違背シタルトキト雖モ他ノ理由ニ因リ裁判ノ正當ナルトキハ上吿ヲ棄却ス可シ
第四百五十四條 左ノ諸件ニ關スル控訴ノ規定ハ上吿ニ之ヲ準用ス
第一 闕席判決ニ對スル不服ノ申立
第二 控訴ノ取下
第三 當事者ノ雙方ヨリ控訴ヲ起シタル場合ニ於ケル訴訟手續及ヒ控訴ト故障トヲ同時ニ爲シタルトキノ訴訟手續
第四 口頭辯論ノ延期
第五 口頭辯論ノ際ニ於ケル當事者ノ演述
第六 妨訴ノ抗辯ニ付テノ辯論
第七 控訴ヲ起シタル者ノ不利益ト爲ル裁判ヲ爲ス可カラサルコト
第八 記錄ノ送付竝ニ返還
第三章 抗吿
第四百五十五條 抗吿ハ訴訟手續ニ關スル申請ヲ口頭辯論ヲ經スシテ却下シタル裁判ニ對シ其他此法律ニ於テ特ニ揭ケタル場合ニ限リ之ヲ爲スコトヲ得
第四百五十六條 抗吿ニ付テハ直近ノ上級裁判所其裁判ヲ爲ス
抗吿裁判所ノ裁判ニ對シテハ其裁判ニ因リ新ナル獨立ノ抗吿理由ヲ生シタルトキニ非サレハ更ニ抗吿ヲ爲スコトヲ得ス
第四百五十七條 抗吿ハ不服ヲ申立テラレタル裁判ヲ爲シタル裁判所又ハ裁判長ノ屬スル裁判所ニ抗吿狀ヲ差出シテ之ヲ爲ス
訴訟カ區裁判所ニ繫屬シ若クハ嘗テ繫屬シタルトキ又ハ證人、鑑定人ヨリ若クハ證書ヲ提出スル義務アリト宣言ヲ受ケタル第三者ヨリ抗吿ヲ爲ストキハ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
第四百五十八條 抗吿ハ新ナル事實及ヒ證據方法ヲ以テ憑據ト爲スコトヲ得
第四百五十九條 不服ヲ申立テラレタル裁判ヲ爲シタル裁判所又ハ裁判長カ再度ノ考案若クハ新ナル提供ニ基キ抗吿ヲ理由アリトスルトキハ不服ノ㸃ヲ更正シ又理由ナシトスルトキハ裁判所又ハ裁判長ハ意見ヲ付シテ三日ノ期間內ニ抗吿ヲ抗吿裁判所ニ送付シ反適當トスル場合ニ於テハ訴訟記錄ヲモ送付ス可シ
第四百六十條 抗吿ハ此法律ニ於テ別段ノ規定ヲ設ケタル場合ニ限リ執行停止ノ效力ヲ有ス
然レトモ不服ヲ申立テラレタル裁判ヲ爲シタル裁判所又ハ裁判長ハ抗吿ニ付テノ裁判アルマテ其執行ノ中止ヲ命スルコトヲ得
抗吿裁判所ハ抗吿ニ付テノ裁判ヲ爲ス前ニ不服ヲ申立テラレタル裁判ノ執行中止ヲ命スルコトヲ得
第四百六十一條 抗吿ハ急迫ナル場合ニ限リ直チニ抗吿裁判所ニ之ヲ爲スコトヲ得
抗吿裁判所ハ裁判ヲ爲ス前ニ不服ヲ申立テラレタル裁判ヲ爲シタル裁判所又ハ裁判長ノ意見及ヒ記錄ヲ要求スルコトヲ得
抗吿裁判所ハ事件ヲ急迫ナラスト認ムルトキハ不服ヲ申立テラレタル裁判ヲ爲シタル裁判所又ハ裁判長ニ其事件ヲ送付シ且其旨ヲ抗吿人ニ通知ス可シ
第四百六十二條 抗吿裁判所ハ口頭辯論ヲ經スシテ裁判ヲ爲スヲ以テ通例トス
抗吿裁判所ハ抗吿人ト反對ノ利害關係ヲ有スル者ニ抗吿ヲ通知シテ書面上ノ陳述ヲ爲サシムルコトヲ得
陳述ハ口頭ヲ以テ抗吿ヲ爲シ得ヘキ場合ニ於テハ亦口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
抗吿裁判所ハ口頭辯論ノ爲ニ當事者ヲ呼出スコトヲ得
第四百六十三條 抗吿裁判所ハ抗吿ヲ許ス可キヤ否ヤ又法律上ノ方式ニ從ヒ若クハ其期間ニ於テ提出シタルヤ否ヤヲ職權ヲ以テ調査ス可シ
若シ此要件ノ一ヲ缺クトキハ抗吿ヲ不適法トシテ棄却ス可シ
第四百六十四條 抗吿ヲ適法ニシテ且理由アリトスルトキハ抗吿裁判所ハ不服ヲ申立テラレタル裁判ヲ廢棄シテ自ラ更ニ裁判ヲ爲シ又ハ不服ヲ申立テラレタル裁判ヲ爲シタル裁判所又ハ裁判長ニ委任シテ裁判ヲ爲サシムルコトヲ得
抗吿裁判所ノ裁判ハ不服ヲ申立テラレタル裁判ヲ爲シタル裁判所又ハ裁判長ニ之ヲ通知ス可シ
第四百六十五條 受命判事若クハ受託判事ノ裁判又ハ裁判所書記ノ處分ノ變更ヲ求ムルニハ先ツ受訴裁判所ノ裁判ヲ求ム可シ
抗吿ハ受訴裁判所ノ裁判ニ對シテ之ヲ爲スコトヲ得
第一項ノ規定ハ大審院ニモ亦之ヲ適用ス
第四百六十六條 卽時抗吿ノ場合ニ於テハ左ノ特別ノ規定ニ從フ
抗吿ハ七日ノ不變期間內ニ之ヲ爲ス可シ其期間ハ裁判ノ送達ヨリ始マリ第二百五十三條、第六百八十條及ヒ第七百六十九條第三項ノ場合ニ於テハ裁判ノ言渡ヨリ始マル抗吿裁判所ニ抗吿ヲ提出シタルトキハ急迫ナラスト認メタル場合ニ於テモ亦不變期間ヲ保存ス
再審ヲ求ムル訴ニ付テノ要件存スルトキハ不變期間ノ滿了後ト雖モ此訴ノ爲メ定メタル期間內ハ抗吿ヲ爲スコトヲ得
前條第一項ノ場合ニ於テハ抗吿提出ノ爲メ定メタル方法ニ依リ不變期間內ニ受訴裁判所ノ裁判ヲ求ムルコトヲ要ス受訴裁判所ハ其申請ヲ正當ト認メサルトキハ之ヲ抗吿裁判所ニ送付ス可シ
第四編 再審
第四百六十七條 確定ノ終局判決ヲ以テ終結シタル訴訟ハ取消ノ訴又ハ原狀囘復ノ訴ニ因リ之ヲ再審スルコトヲ得
當事者ノ一方又ハ雙方ヨリ此兩訴ヲ起シタルトキハ原狀囘復ノ訴ニ付テノ辯論及ヒ裁判ハ取消ノ訴ニ付テノ裁判カ確定スルマテ之ヲ中止ス可シ
第四百六十八條 左ノ場合ニ於テハ取消ノ訴ニ因リ再審ヲ求ムルコトヲ得
第一 規定ニ從ヒ判決裁判所ヲ構成セサリシトキ
第二 法律ニ依リ職務ノ執行ヨリ除斥セラレタル判事カ裁判ニ參與シタルトキ但忌避ノ申請又ハ上訴ヲ以テ除斥ノ理由ヲ主張シタルモ其效ナカリシトキハ此限ニ在ラス
第三 判事カ忌避セラレ且忌避ノ申請カ理由アリト認メラレタルニ拘ハラス裁判ニ參與シタリシトキ
第四 訴訟手續ニ於テ原吿若クハ被吿カ法律ノ規定ニ從ヒ代理セラレサリシトキ
第一號及ヒ第三號ノ場合ニ於テ上訴若クハ故障ヲ以テ取消ヲ主張シ得ヘカリシトキハ取消ノ訴ヲ許サス
第四百六十九條 左ノ場合ニ於テハ原狀囘復ノ訴ニ因リ再審ヲ求ムルコトヲ得
第一 刑法ニ揭ケタル職務上ノ義務ニ違背シタル罪ヲ訴訟ニ關シ犯シタル判事カ裁判ニ參與シタリシトキ
第二 原吿若クハ被吿ノ法律上代理人若クハ訴訟代理人又ハ相手方若クハ其法律上代理人若クハ訴訟代理人カ罰セラル可キ行爲ヲ訴訟ニ關シテ爲シタリシトキ
第三 判決ノ憑據ト爲リタル證書カ僞造又ハ變造ナリシトキ
第四 證人若クハ鑑定人カ供述ニ因リ又ハ通事カ判決ノ憑據ト爲リタル通譯ニ因リ僞證ノ罪ヲ犯シタリシトキ
第五 判決ノ憑據ト爲リタル刑事上ノ判決カ他ノ確定ト爲リタル刑事上ノ判決ヲ以テ廢棄若クハ破毀セラレタリシトキ
第六 原吿若クハ被吿カ同一ノ事件ニ付テノ判決ニシテ前ニ確定ト爲リタルモノヲ發見シ其判決カ不服ヲ申立テラレタル判決ト牴觸スルトキ
第七 相手方若クハ第三者ノ所爲ニ依リ以前ニ提出スルコトヲ得サリシ證書ニシテ原吿若クハ被吿ノ利益ト爲ル可キ裁判ヲ爲スニ至ラシム可キモノヲ發見シタルトキ
第一號乃至第四號ノ場合ニ於テハ罰セラル可キ行爲ニ付テ判決カ確定ト爲リタルトキ又ハ證據欠缺外ナル理由ヲ以テ刑事訴訟手續ノ開始若クハ實行ヲ爲シ得サルトキニ限リ再審ヲ求ムルコトヲ得
第四百七十條 原狀囘復ノ訴ハ原吿若クハ被吿カ自己ノ過失ニ非スシテ前訴訟手續ニ於テ殊ニ故障又ハ控訴若クハ附帶控訴ニ依リ原狀囘復ノ理由ヲ主張スルコト能ハサリシトキニ限リ之ヲ爲スコトヲ得
第四百七十一條 不服ヲ申立テラレタル判決前ニ同一ノ裁判所又ハ下級ノ裁判所ニ於テ爲シタル裁判ニ關スル不服ノ理由ハ再審ヲ求ムル訴ト共ニ之ヲ主張スルコトヲ得但不服ヲ申立テラレタル判決カ其裁判ニ根據スルトキニ限ル
第四百七十二條 再審ヲ求ムル訴ハ不服ヲ申立テラレタル裁判ヲ爲シタル裁判所ノ管轄ニ專屬ス
同一ノ事件ニ付キ一分ハ下級ノ裁判所又一分ハ上級ノ裁判所ニ於テ爲シタル數箇ノ判決ニ對スル訴ハ上級ノ裁判所ノ管轄ニ專屬ス
督促手續ニ依リテ區裁判所ノ發シタル執行命令ニ對シ再審ヲ求ムル訴ハ其命令ヲ發シタル區裁判所ノ管轄ニ專屬ス然レトモ其請求カ區裁判所ノ管轄ニ屬セサルトキハ請求ニ付テノ訴訟ヲ管轄スル裁判所ニ專屬ス
第四百七十三條 訴ノ提起及ヒ其後ノ訴訟手續ニハ以下數條ニ於テ別段ノ規定ヲ設ケサル限リハ其訴ニ付キ辯論及ヒ裁判ヲ爲ス可キ裁判所ノ訴訟手續ニ關スル規定ヲ準用ス
第四百七十四條 訴ハ一个月ノ不變期間內ニ之ヲ起ス可シ
此期間ハ原吿若クハ被吿カ不服ノ理由ヲ知リタル日ヲ以テ始マル若シ原吿若クハ被吿カ判決ノ確定前ニ不服ノ理由ヲ知リタルトキハ判決ノ確定ヲ以テ始マル
判決確定ノ日ヨリ起算シテ五个年ノ滿了後ハ訴ヲ爲スコトヲ得ス
前二項ノ規定ハ第四百六十八條第四號ノ場合ニ之ヲ適用セス此場合ニ於テ其訴ノ提起ノ期間ハ原吿若クハ被吿又ハ其法律上代理人カ送達ニ因リ判決アリタルコトヲ知リタル日ヲ以テ始マル
第四百七十五條 訴狀ニハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 取消又ハ原狀囘復ノ訴ヲ受クル判決ノ表示
第二 取消又ハ原狀囘復ノ訴ヲ起ス旨ノ陳述
此他訴狀ハ準備書面ニ關スル一般ノ規定ニ從ヒテ之ヲ作リ且不服ノ理由ノ表示、此理由及ヒ不變期間ノ遵守ヲ明白ナラシムル事實ニ付テノ證據方法又如何ナル程度ニ於テ不服ヲ申立テラレタル判決ヲ廢棄若クハ破毀ス可キヤノ申立又本案ニ付キ更ニ如何ナル裁判ヲ爲ス可キヤノ申立ヲモ揭ク可シ
第四百七十六條 判然許ス可カラサル訴又ハ判然法律上ノ方式ニ適セス若クハ其期間ノ經過後ニ起シタル訴ハ裁判長ノ命令ヲ以テ之ヲ却下ス可シ
此却下ノ命令ニ對シテハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
第四百七十七條 原吿ハ口頭辯論ノ期日ニ於テ相手方ノ陳述ノ有無ニ拘ハラス再審ヲ求ムル理由及ヒ法律上ノ期間ノ遵守ヲ明白ニスル事實ヲ疏明ス可シ
第四百七十八條 許ス可カラサル訴又ハ法律上ノ方式ニ適セス若クハ其期間ノ經過後ニ起シタル訴ハ職權ヲ以テ判決ニ因リ不適法トシテ之ヲ棄却ス可シ
第四百七十九條 本案ニ付テノ辯論及ヒ裁判ハ不服申立ノ理由ノ存スル部分ニ限リ更ニ之ヲ爲ス可シ
裁判所ハ本案ニ付テノ辯論前ニ再審ヲ求ムル理由及ヒ許否ニ付キ辯論及ヒ裁判ヲ爲スコトヲ得此場合ニ於テハ本案ニ付テノ辯論ハ再審ヲ求ムル理由及ヒ許否ニ付テノ辯論ノ續行ト看做ス
第四百八十條 原吿ノ不利益ト爲ル判決ノ變更ハ相手方カ再審ヲ求ムル訴ヲ起シテ變更ヲ申立テタルトキニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
第四百八十一條 訴カ上吿裁判所ニ屬スルトキハ上吿裁判所ハ再審ヲ求ムル理由及ヒ其許否ニ付テノ辯論ノ完結カ係爭事實ノ確定及ヒ斟酌ニ繫ルトキト雖モ其完結ヲ爲ス可シ
第四百八十二條 上訴ハ訴ニ付キ裁判ヲ爲シタル裁判所ノ判決ニ對シ一般ニ爲スコトヲ得ヘキトキニ限リ之ヲ爲スコトヲ得
第四百八十三條 第三者カ原吿及ヒ被吿ノ共謀ニ因リ第三者ノ債權ヲ詐害スル目的ヲ以テ判決ヲ爲サシメタリト主張シ其判決ニ對シ不服ヲ申立ツルトキハ原狀囘復ノ訴ニ因レル再審ノ規定ヲ準用ス
此場合ニ於テハ原吿及ヒ被吿ヲ共同被吿ト爲ス
第五編 證書訴訟及ヒ爲替訴訟
第四百八十四條 一定ノ金額ノ支拂其他ノ代替物若クハ有價證券ノ一定ノ數量ノ給付ヲ目的トスル請求ハ其請求ヲ起ス理由タル總テノ必要ナル事實ヲ證書ニ依リ證スルコトヲ得ヘキトキハ證書訴訟ヲ以テ之ヲ主張スルコトヲ得
第四百八十五條 訴狀ニハ證書訴訟トシテ訴フル旨ノ陳述ヲ揭ケ且證書ノ原本又ハ謄本ヲ添フルコトヲ要ス
第四百八十六條 本案ノ辯論ハ妨訴ノ抗辯ニ基キ之ヲ拒ムコトヲ得ス然レトモ裁判所ハ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ此抗辯ニ付キ辯論ノ分離ヲ命スルコトヲ得
第四百八十七條 反訴ハ之ヲ爲スコトヲ得ス
證書ノ眞否及ヒ第四百八十四條ニ揭ケタル以外ノ事實ニ關シテハ書證ノミヲ以テ適法ノ證據方法ト爲スコトヲ得
書證ノ申出ハ證書ノ提出ヲ以テノミ之ヲ爲スコトヲ得
第四百八十八條 原吿ハ口頭辯論ノ終結ニ至ルマテハ被吿ノ承諾ヲ要セスシテ通常ノ手續ニテ訴訟ヲ繫屬セシメテ證書訴訟ヲ止ムルコトヲ得
第四百八十九條 訴ヲ以テ主張シタル請求カ理由ナシト見エ又ハ被吿ノ抗辯ニ因リ理由ナシト見ユルトキハ原吿ノ請求ヲ却下ス可シ
證書訴訟ヲ許ス可カラサルトキ殊ニ適法ノ證據方法ヲ以テ原吿ノ義務タル證據ヲ申出テス又ハ完全ニ之ヲ擧ケサル場合ニ於テハ被吿カ口頭辯論ノ期日ニ出頭セス又ハ法律上ノ理由ナキ異議若クハ證書訴訟ニ於テ許ササル異議ノミヲ以テ訴ニ對シ抗辯シタルトキト雖モ此訴訟ニ於テハ其訴ヲ許ササルモノトシテ之ヲ却下ス可シ
第四百九十條 證書訴訟ニ於テ適法ノ證據方法ヲ以テ被吿ノ義務タル證據ヲ申出テス又ハ完全ニ之ヲ擧ケサルトキハ被吿ノ異議ハ證書訴訟ニ於テ許ササルモノトシテ之ヲ却下ス可シ
第四百九十一條 主張シタル請求ヲ爭ヒタル被吿ニハ敗訴ノ言渡ヲ受ケタル總ノ場合ニ於テ其權利ノ行使ヲ留保ス可シ
判決ニ此留保ヲ揭ケサルトキハ第二百四十二條ノ規定ニ依リ判決ノ補充ヲ申立ツルコトヲ得
留保ヲ揭ケタル判決ハ上訴及ヒ强制執行ニ付テハ之ヲ終局判決ト看做ス
第四百九十二條 被吿ニ權利ノ行使ヲ留保シタルトキハ訴訟ハ通常ノ訴訟手續ニ於テ繫屬ス
此手續ニ於テ證書訴訟ヲ以テ主張シタル請求ノ理由ナカリシコトノ顯ハルルトキハ前判決ヲ廢棄シ原吿ノ請求ヲ却下シ且其生セシメタル費用ノ全部又ハ一分ノ辨濟ヲ原吿ニ言渡シ又前判決ニ基キ被吿ヨリ支拂ヒ又ハ給付シタルモノノ辨濟ヲ申立ニ因リ原吿ニ言渡ス可シ
右手續ニ於テ原吿若クハ被吿カ出頭セサルトキハ闕席判決ニ關スル規定ヲ準用ス
第四百九十三條 第四百二十六條及ヒ第四百二十七條ノ規定ハ證書訴訟ニ之ヲ適用セス
第四百九十四條 商法ニ規定シタル手形ニ因ル請求ヲ證書訴訟ヲ以テ主張スルトキハ爲替訴訟トシテ以下二條ニ揭クル特別ノ規定ヲ適用ス
第四百九十五條 爲替ノ訴ハ支拂地ノ裁判所又ハ被吿カ其普通裁判籍ヲ有スル地ノ裁判所ニ之ヲ起スコトヲ得
數人ノ爲替義務者カ共同ニテ訴ヲ受ク可キトキハ支拂地ノ裁判所又ハ被吿ノ各人カ其普通裁判籍ヲ有スル地ノ裁判所各之ヲ管轄ス
第四百九十六條 訴狀ニハ爲替訴訟トシテ訴フル旨ヲ揭クルコトヲ要ス
訴ノ許ス可キモノナルトキハ直チニ口頭辯論ノ期日ヲ定ム
口頭辯論ノ期日ト訴狀送達トノ間ニハ少ナクトモ二十四時ノ時間ヲ存スルコトヲ要ス
第六編 强制執行
第一章 總則
第四百九十七條 强制執行ハ確定ノ終局判決又ハ假執行ノ宣言ヲ付シタル終局判決ニ因リテ之ヲ爲ス
第四百九十八條 判決ハ適法ナル故障ノ申立又ハ適法ナル上訴ノ提起ニ付キ定メタル期間ノ滿了前ニハ確定セサルモノトス
判決ノ確定ハ故障若クハ上訴ヲ其期間內ニ申立若クハ提起スルニ因リ之ヲ遮斷ス
第四百九十九條 原吿若クハ被吿カ判決ノ確定ニ付キ證明書ヲ求ムルトキハ第一審裁判所ノ書記ハ記錄ニ基キ之ヲ付與ス
訴訟カ猶ホ上級審ニ於テ繫屬中ナルトキハ上級裁判所ノ書記ハ判決ノ確定ト爲リタル部分ノミニ付キ證明書ヲ付與ス
判決ニ對シ上訴ノ提起ナキ場合ニ非サレハ證明書ヲ付與スルコトヲ得サルトキニ限リ上訴ヲ管轄スル裁判所ノ書記カ不變期間內ニ上訴ノ提起ナキコトヲ認メタル證明書ヲ以テ足ル
第五百條 原狀囘復又ハ再審ヲ求ムル申立アルトキハ裁判所ハ申立ニ因リ保證ヲ立テシメ又ハ保證ヲ立テシメスシテ强制執行ヲ一時停止ス可キコトヲ命シ又ハ保證ヲ立テシメテ强制執行ヲ爲ス可キコトヲ命シ及ヒ保證ヲ立テシメテ其爲シタル强制處分ヲ取消ス可キヲ命スルコトヲ得
保證ヲ立テシメスシテ爲ス强制執行ノ停止ハ其執行ニ因リ償フコト能ハサル損害ヲ生ス可キコトヲ疏明スルトキニ限リ之ヲ許ス
右裁判ハ口頭辯論ヲ經スシテ之ヲ爲スコトヲ得其裁判ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第五百一條 左ノ判決ニ付テハ職權ヲ以テ假執行ノ宣言ヲ爲ス可シ
第一 認諾ニ基キ敗訴ヲ言渡ス判決
第二 證書訴訟又ハ爲替訴訟ニ於テ言渡ス判決
第三 同一審ニ於テ同一ノ原吿若クハ被吿ニ對シ本案ニ付キ言渡シタル第二又ハ其後ノ闕席判決
第四 假差押又ハ假處分ヲ取消ス判決
第五 養料ヲ支拂フ義務ヲ言渡ス判決但訴ノ提起後ノ時間及ヒ其提起前最後ノ三个月間ノ爲ニ支拂フ可キモノナルトキニ限ル
第五百二條 左ノ場合ニ於テハ申立ニ因リ假執行ノ宣言ヲ爲ス可シ
第一 總テノ住家其他ノ建物又ハ其或ル部分ノ受取、明渡、使用、占據若クハ修繕ニ關シ又ハ賃借人ノ家具若クハ所持品ヲ賃貸人ノ差押ヘタルコトニ關シ賃貸人ト賃借人トノ間ニ起リタル訴訟
第二 占有ノミニ係ル訴訟
第三 雇主ト雇人トノ間ニ雇期限一个年以下ノ契約ニ關リ起リタル訴訟
第四 左ニ揭ケタル事項ニ付キ旅人ト旅店若クハ飮食店ノ主人トノ間ニ又ハ旅人ト水陸運送人トノ間ニ起リタル訴訟
イ 賄料又ハ宿料又ハ旅人ノ運送料又ハ之ニ伴フ手荷物ノ運送料
ロ 旅店若クハ飮食店ノ主人又ハ運送人ニ旅人ヨリ保護ノ爲メ預ケタル手荷物、金錢又ハ有價物
第五 此他財產權上ノ請求ニ關シ金額又ハ價額ニ於テ貳拾圓ヲ超過セサル訴訟但其物ノ價額ニ付テハ第三條乃至第六條ノ規定ヲ適用ス
第五百三條 前二條ニ揭ケタル外左ノ場合ニ於テハ財產權上ノ請求ニ關スル判決ニ限リ債權者ノ申立ニ因リ假執行ノ宣言ヲ爲ス可シ
第一 債權者カ執行ノ前ニ保證ヲ立テント申出ツルトキ
第二 債權者カ判決ノ確定ト爲ルマテ執行ヲ中止セハ償ヒ難キ損害又ハ計リ難キ損害ヲ受ク可キコトヲ疏明スルトキ
第五百四條 債務者カ判決ノ確定ト爲ル前ニ判決ヲ執行セハ囘復スルコトヲ得サル損害ヲ受ク可キコトヲ疏明シタルトキハ其申立ニ因リ左ノ宣言ヲ爲ス可シ
第一 第五百一條ノ場合ニ於テハ判決ヲ假ニ執行ス可カラサルコト
第二 第五百二條及ヒ第五百三條ノ場合ニ於テハ債權者ノ假執行ノ申立ヲ却下スルコト
第五百五條 總テノ場合ニ於テ裁判所ハ債務者ノ申立ニ因リ債權者豫メ保證ヲ立ツルトキハ假執行ヲ爲シ得ヘキ旨ヲ宣言スルコトヲ得
債權者カ執行ノ前ニ保證ヲ立ツルコトヲ申出テサルトキハ債務者ノ申立ニ因リ債務者ニ保證ヲ立テシメ又ハ供託ヲ爲サシメテ執行ヲ免カルルコトヲ許ス可シ
第五百六條 假執行ニ關スル申立ハ判決ニ接著スル口頭辯論ノ終結前ニ之ヲ爲ス可シ
第五百七條 假執行ニ付テノ裁判ハ判決主文ニ之ヲ揭ク可シ
第五百八條 職權ヲ以テ判決ノ假執行ヲ宣言ス可キ場合ニ於テ假執行ニ付テノ裁判ヲ爲ササルトキ又ハ判決ノ假執行ヲ宣言ス可キ債權者ノ申立ヲ看過シタルトキハ第二百四十二條及ヒ第二百四十三條ノ規定ニ從ヒ判決ノ補充ヲ爲スコトヲ得
第五百九條 第一審又ハ第二審ノ判決ニシテ假執行ノ宣言ナカリシモノ又ハ條件附ノ假執行ノ宣言アリタルモノハ上訴ヲ以テ不服ヲ申立テサル部分ニ限リ口頭辯論ノ進行中ニ爲シタル原吿若クハ被吿ノ申立ニ因リ上級審ニ於テ其判決ニ假執行ノ宣言ヲ付ス可シ
第五百十條 本案ノ裁判又ハ假執行ノ宣言ヲ廢棄若クハ破毀又ハ變更スル判決ノ言渡アルトキハ假執行ハ其廢棄若クハ破毀又ハ變更ヲ爲ス限度ニ於テ效力ヲ失フ
假執行ノ宣言アリタル本案ノ判決ヲ廢棄若クハ破毀又ハ變更スルトキハ判決ニ基キ被吿ノ支拂又ハ給付シタルモノノ辨濟ヲ被吿ノ申立ニ因リ判決ヲ以テ原吿ニ言渡ス可シ
第五百十一條 第二審ニ於テハ申立ニ因リ先ツ假執行ニ付キ辯論及ヒ裁判ヲ爲ス可シ
口頭辯論ノ延期ニ付テノ第四百十條ノ規定ハ此場合ニ於テハ之ヲ適用セス
第二審ニ於テ假執行ニ付キ爲シタル裁判ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第五百十二條 假執行ノ宣言ヲ付シタル判決ニ對シ故障ヲ申立又ハ上訴ヲ起シタルトキハ第五百條ノ規定ヲ準用ス
第五百十三條 本編ノ規定ニ從ヒ原吿若クハ被吿ニ保證ヲ立ツル義務ヲ負ハシメ若クハ保證ヲ立又ハ供託ヲ爲スコトヲ許シタル場合ニ於テハ原吿若クハ被吿ハ其普通裁判籍ヲ有スル地ノ區裁判所又ハ執行裁判所ニ保證ヲ立又ハ供託ヲ爲スコトヲ得
保證ヲ立又ハ供託ヲ爲シタルコトニ付テハ求ニ因リ證明書ヲ付與ス可シ
第五百十四條 外國裁判所ノ判決ニ因レル强制執行ハ本邦ノ裁判所ニ於テ執行判決ヲ以テ其適法ナルコトヲ言渡シタルトキニ限リ之ヲ爲スコトヲ得
執行判決ヲ求ムル訴ニ付テハ債務者ノ普通裁判籍ヲ有スル地ノ區裁判所又ハ地方裁判所之ヲ管轄シ又普通裁判籍ナキトキハ第十七條ノ規定ニ從ヒテ債務者ニ對スル訴ヲ管轄スル裁判所之ヲ管轄ス
第五百十五條 執行判決ハ裁判ノ當否ヲ調査セスシテ之ヲ爲ス可シ
執行判決ヲ求ムル訴ハ左ノ場合ニ於テハ之ヲ却下ス可シ
第一 外國裁判所ノ判決ノ確定ト爲リタルコトヲ證明セサルトキ
第二 本邦ノ法律ニ依リ强テ爲サシムルコトヲ得サル行爲ヲ執行セシム可キトキ
第三 本邦ノ法律ニ從ヘハ外國裁判所カ管轄權ヲ有セサルトキ
第四 敗訴ノ債務者本邦人ニシテ應訴セサリシトキ但訴訟ヲ開始スル呼出又ハ命令ヲ受訴裁判所所屬ノ國ニ於テ又ハ法律上ノ共助ニ依リ本邦ニ於テ本人ニ送達セサリシトキニ限ル
第五 國際條約ニ於テ相互ヲ保セサルトキ
第五百十六條 强制執行ハ執行文ヲ付シタル判決ノ正本ニ基キ之ヲ爲ス
執行力アル正本ハ第一審裁判所ノ書記又訴訟カ上級裁判所ニ繫屬スルトキハ其裁判所ノ書記之ヲ付與ス
執行力アル正本ヲ求ムル申立ハ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
第五百十七條 執行文ハ判決ノ正本ノ末尾ニ之ヲ附記ス
其文式左ノ如シ
前記ノ正本ハ被吿某若クハ原吿某ニ對シ强制執行ノ爲メ原吿某若クハ被吿某ニ之ヲ付與ス
執行文ニハ裁判所書記署名捺印シ且裁判所ノ印ヲ押ス可シ
第五百十八條 執行力アル正本ハ判決ノ確定シタルトキ又ハ假執行ノ宣言アリタルトキニ限リ之ヲ付與ス
判決ノ執行カ其旨趣ニ從ヒ保證ヲ立ツルコトニ繫ル場合ノ外他ノ條件ニ繫ル場合ニ於テハ債權者カ證明書ヲ以テ其條件ヲ履行シタルコトヲ證スルトキニ限リ執行力アル正本ヲ付與スルコトヲ得
第五百十九條 執行力アル正本ハ判決ニ表示シタル債權者ノ承繼人ノ爲ニ之ヲ付與シ又ハ判決ニ表示シタル債務者ノ一般ノ承繼人ニ對シ之ヲ付與スルコトヲ得但其承繼カ裁判所ニ於テ明白ナルトキ又ハ證明書ヲ以テ之ヲ證スルトキニ限ル
此承繼カ裁判所ニ於テ明白ナルトキハ之ヲ執行文ニ記載ス可シ
第五百二十條 第五百十八條第二項及ヒ第五百十九條ノ場合ニ於テハ執行力アル正本ハ裁判長ノ命令アルトキニ限リ之ヲ付與スルコトヲ得
裁判長ハ其命令前ニ書面又ハ口頭ヲ以テ債務者ヲ審訊スルコトヲ得
右命令ハ執行文ニ之ヲ記載ス可シ
第五百二十一條 第五百十八條第二項及ヒ第五百十九條ニ依リ必要ナル證明ヲ爲ス能ハサルトキハ債權者ハ判決ニ基キ執行文ノ付與ニ付キ第一審ノ受訴裁判所ニ訴ヲ起スコトヲ得
第五百二十二條 執行文ノ付與ニ對シ債務者カ異議ヲ申立テタルトキハ其執行文ヲ付與シタル裁判所書記ノ屬スル裁判所之ヲ裁判ス
裁判長ハ其裁判前ニ假處分ヲ爲スコトヲ得殊ニ保證ヲ立テシメ若クハ之ヲ立テシメスシテ强制執行ヲ一時停止シ又ハ保證ヲ立テシメテ强制執行ヲ續行ス可キヲ命スルコトヲ得
第五百二十三條 債權者カ執行力アル正本ノ數通ヲ求メ又ハ前ニ付與シタル正本ヲ返還セスシテ更ニ同一判決ノ正本ヲ求ムルトキハ裁判長ノ命令アルトキニ限リ之ヲ付與スルコトヲ得
裁判長ハ其命令ノ前ニ書面又ハ口頭ヲ以テ債務者ヲ審訊スルコトヲ得
相手方ヲ審訊セスシテ執行力アル正本ノ數通ヲ付與シ又ハ更ニ正本ヲ付與シタルトキハ其旨ヲ相手方ニ通知ス可シ
正本ノ數通ヲ付與シ又ハ更ニ正本ヲ付與シタルトキハ其旨ヲ明記ス可シ
第五百二十四條 執行力アル正本ノ付與前ニ判決ノ原本ニ原吿ノ爲メ若クハ被吿ノ爲ニ之ヲ付與スル旨且之ヲ付與スル日時ヲ記載ス可シ
第五百二十五條 執行力アル正本ノ效力ハ之ヲ付與シタル裁判所ノ管轄內ニ止マラス總テ本邦ノ裁判區域內ニ及フモノトス
第五百二十六條 債權者ハ一箇ノ地又ハ一箇ノ方法ニテ强制執行ヲ爲スモ完全ナル辨濟ヲ得ル能ハサルトキハ數通ノ執行力アル正本ニ基キ數箇ノ地又ハ數箇ノ方法ニテ同時ニ强制執行ヲ爲ス權利ヲ有ス
第五百二十七條 債權者ハ執行ヲ爲ス可キ地ヲ管轄スル區裁判所ノ所在地ニ住居ヲモ事務所ヲモ有セサルトキハ其所在地ニ假住所ヲ選定シ其旨ヲ裁判所ニ屆出ツ可シ
第五百二十八條 强制執行ハ之ヲ求ムル者及ヒ之ヲ受クル者ノ氏名ヲ判決又ハ之ニ附記スル執行文ニ表示シ且判決ヲ既ニ送達シ又ハ同時ニ送達シタルトキニ限リ之ヲ始ムルコトヲ得
判決ノ執行カ其旨趣ニ從ヒ債權者ノ證明ス可キ事實ノ到來ニ繫ルトキ又ハ判決ノ執行カ判決ニ表示シタル債權者ノ承繼人ノ爲ニ爲シ又ハ判決ニ表示シタル債務者ノ承繼人ニ對シ爲ス可キトキハ執行ス可キ判決ノ外尙ホ之ニ附記スル執行文ヲ强制執行ヲ始ムル前ニ送達スルコトヲ要ス
若シ證明書ニ依リ執行文ヲ付與シタルトキハ亦其證書ノ謄本ヲ强制執行ヲ始ムル前ニ送達シ又ハ同時ニ送達スルコトヲ要ス
第五百二十九條 請求ノ主張カ或ル日時ノ到來ニ繫ルトキハ其日時ノ滿了後ニ限リ强制執行ヲ始ムルコトヲ得
若シ執行カ債權者ヨリ保證ヲ立ツルコトニ繫ルトキハ債權者カ保證ヲ立テタルコトニ付テノ公正ノ證明書ヲ提出シ且其謄本ヲ既ニ送達シ又ハ同時ニ送達シタルトキニ限リ其執行ヲ始ムルコトヲ得
第五百三十條 豫備、後備ノ軍籍ニ在ラサル軍人、軍屬ニ對シテ爲ス强制執行ハ其上班司令官廳ニ通知ヲ爲シタル後ニ限リ之ヲ始ムルコトヲ得
此官廳ハ債權者ノ求ニ因リ通知ノ受取證ヲ付與ス可シ
第五百三十一條 强制執行ハ此法律ニ於テ別段ノ規定ナキトキニ限リ執達吏之ヲ實施ス
債權者ハ强制執行ヲ委任スル爲ニ區裁判所書記ノ補助ヲ求ムルコトヲ得
裁判所書記ノ委任シタル執達吏ハ債權者ノ委任シタルモノト看做ス
第五百三十二條 執達吏ハ債權者ノ委任ニ因リテ爲ス行爲及ヒ職務上ノ義務ノ違背ヨリシテ債權者其他ノ關係人ニ對シ損害ヲ生セシメタルトキハ第一ニ其責ニ任ス
第五百三十三條 債權者執行力アル正本ヲ交付シテ强制執行ヲ委任シタルトキハ執達吏ハ特別ノ委任ヲ受ケサルトキト雖モ支拂其他ノ給付ヲ受取リ其受取リタルモノニ付キ有效ニ受取ノ證書ヲ作リ之ヲ交付シ且債務者ニ於テ其義務ヲ完全ニ盡シタルトキハ執行力アル正本ヲ債務者ニ交付スルコトヲ得
第五百三十四條 執達吏ハ執行力アル正本ヲ所持スルヲ以テ債務者及ヒ第三者ニ對シ强制執行及ヒ前條ニ揭ケタル行爲ヲ實施スル權利ヲ有ス債權者ハ此等ノ者ニ對シ委任ノ欠缺又ハ制限ヲ主張スルコトヲ得ス
執達吏ハ其正本ヲ携帶シ關係人ノ求アルトキハ其資格ヲ證スル爲ニ之ヲ示ス可シ
第五百三十五條 執達吏ハ債務者カ其義務ヲ完全ニ盡シタルトキハ執行力アル正本及ヒ受取ノ證ヲ之ニ交付シ又其義務ノ一分ヲ盡シタルトキハ執行力アル正本ニ其旨ヲ附記シ且受取ノ證ヲ債務者ニ交付ス可シ
債務者カ後ニ債權者ニ對シ受取ノ證ヲ求ムル權利ハ前項ノ規定ニ因リテ妨ケラルルコト無シ
第五百三十六條 執達吏ハ執行ノ爲メ必要ナル場合ニ於テハ債務者ノ住居、倉庫及ヒ筐匣ヲ搜索シ又ハ閉鎖シタル戶扉及ヒ筐匣ヲ開カシムル權利ヲ有ス
抵抗ヲ受クル場合ニ於テハ執達吏ハ威力ヲ用井且警察上ノ援助ヲ求ムルコトヲ得若シ兵力ヲ要スルトキハ之ヲ執行裁判所ニ申立ツ可シ
第五百三十七條 執達吏ハ執行行爲ヲ爲スニ際シ抵抗ヲ受クルトキ又ハ債務者ノ住居ニ於テ執行行爲ヲ爲スニ際シ債務者又ハ成長シタル其家族若クハ雇人ニ出會ハサルトキハ成丁者二人又ハ市町村若クハ警察ノ吏員一人ヲ證人トシテ立會ハシム可シ
第五百三十八條 强制執行ニ付キ利害ノ關係ヲ有スル各人ニハ其求ニ因リ執達吏ノ記錄ノ閱覽ヲ許シ及ヒ記錄中ニ存スル書類ノ謄本ヲ付與スルコトヲ要ス
第五百三十九條 夜間及ヒ日曜日竝ニ一般ノ祝祭日ニハ執行裁判所ノ許可アルトキニ限リ執行行爲ヲ爲スコトヲ得
右許可ノ命令ハ强制執行ノ際之ヲ示ス可シ
第五百四十條 執達吏ハ各執行行爲ニ付キ調書ヲ作ル可シ
此調書ニハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 調書ヲ作リタル場所、年月日
第二 執行行爲ノ目的物及ヒ其重要ナル事情ノ略記
第三 執行ニ與カリタル各人ノ表示
第四 右各人ノ署名捺印
第五 調書ヲ其各人ニ讀聞セ又ハ閱覽セシメ其承諾ノ後署名捺印ヲ爲シタルコトノ開示
第六 執達吏ノ署名捺印
第四號及ヒ第五號ノ要件ヲ具備スルコト能ハサルトキハ其理由ヲ記載ス可シ
第五百四十一條 執行行爲ニ屬スル催吿其他ノ通知ハ執達吏口頭ヲ以テ之ヲ爲シ且調書ニ之ヲ記載ス可シ
若シ口頭ヲ以テ催吿又ハ通知ヲ爲ス能ハサルトキハ第百三十九條、第百四十條及ヒ第百四十五條乃至第百四十九條ノ規定ヲ準用シテ其調書ノ謄本ヲ送達シ又別ニ送達證ヲ作ラサルトキハ調書ニ其送達ヲ爲シタルコトヲ記載ス可シ
若シ强制執行ノ地ニ於テモ執行裁判所ノ管轄內ニ於テモ送達ヲ爲ス能ハサルトキハ催吿又ハ通知ヲ受ク可キ者ニ郵便ヲ以テ調書ノ謄本ヲ送達シ且之ヲ郵便ニ付シタルコトヲ調書ニ記載ス可シ
第五百四十二條 執行行爲ノ際債務者ニ爲ス可キ送達及ヒ通知ハ債務者ノ所在明カナラサルトキ又ハ外國ニ在ルトキハ之ヲ必要トセス
第五百四十三條 此法律ニ於テ裁判所ニ任カセタル執行行爲ノ處分又ハ其行爲ノ共力ハ執行裁判所トシテ區裁判所ノ管轄ニ屬ス
法律ニ於テ別段ニ裁判所ヲ指定セサル各箇ノ場合ニ於テハ執行手續ヲ爲ス可キ地又ハ之ヲ爲シタル地ヲ管轄スル區裁判所ヲ以テ執行裁判所ト看做ス
執行裁判所ノ裁判ハ口頭辯論ヲ經スシテ之ヲ爲スコトヲ得
第五百四十四條 强制執行ノ方法又ハ執行ニ際シ執達吏ノ遵守ス可キ手續ニ關スル申立及ヒ異議ニ付テハ執行裁判所之ヲ裁判ス又執行裁判所ハ第五百二十二條第二項ニ定メタル命ヲ發スル權ヲ有ス
執達吏カ執行委任ヲ受クルヲ拒ミ若クハ委任ニ從ヒ執行行爲ヲ實施スルコトヲ拒ミタルトキ又ハ執達吏ノ計算セシ手數料ニ付キ異議アルトキハ執行裁判所ハ之ヲ裁判スル權ヲ有ス
第五百四十五條 判決ニ因リテ確定シタル請求ニ關スル債務者ノ異議ハ訴ヲ以テ第一審ノ受訴裁判所ニ之ヲ主張ス可シ
右ノ異議ハ此法律ノ規定ニ從ヒ遲クトモ異議ヲ主張スルコトヲ要スル口頭辯論ノ終結後ニ其原因ヲ生シ且故障ヲ以テ之ヲ主張スルコトヲ得サルトキニ限リ之ヲ許ス
債務者カ數箇ノ異議ヲ有スルトキハ同時ニ之ヲ主張スルコトヲ要ス
第五百四十六條 前條ノ規定ハ第五百十八條第二項及ヒ第五百十九條ノ場合ニ於テ債務者カ執行文付與ノ際證明シタリト認メラレタル事實ノ到來ニシテ此ニ因リ判決ノ執行ヲ爲シ得ヘキモノヲ爭ヒ又ハ認メラレタル承繼ヲ爭フトキハ亦之ヲ準用ス但此場合ニ於テ第五百二十二條ノ規定ニ從ヒ執行文ノ付與ニ對シ異議ヲ申立ツル債務者ノ權ハ此カ爲ニ妨ケラルルコト無シ
第五百四十七條 强制執行ノ續行ハ前二條ノ場合ニ於ケル異議ノ訴ノ提起ニ因リテ妨ケラルルコト無シ
然レトモ異議ノ爲メ主張シタル事情カ法律上理由アリト見エ且事實上ノ㸃ニ付キ疏明アリタルトキハ受訴裁判所ハ申立ニ因リ判決ヲ爲スニ至ルマテ保證ヲ立テシメ若クハ之ヲ立テシメスシテ强制執行ヲ停止ス可キコトヲ命シ又ハ保證ヲ立テシメテ强制執行ヲ續行ス可キコトヲ命シ又ハ其爲シタル執行處分ヲ保證ヲ立テシメテ取消ス可キヲ命スルコトヲ得
右裁判ハ口頭辯論ヲ經スシテ之ヲ爲シ又急迫ナル場合ニ於テハ裁判長之ヲ爲スコトヲ得
急迫ナル場合ニ於テハ執行裁判所モ亦此權利ヲ行使スルコトヲ得此場合ニ於テハ執行裁判所ハ受訴裁判所ノ裁判ヲ提出セシムル爲ニ相當ノ期間ヲ定ム可シ此期間ヲ徒過シタルトキハ債權者ノ申立ニ因リ强制執行ヲ續行ス
第五百四十八條 受訴裁判所ハ異議ノ訴ニ付キ裁判スル判決ニ於テ前條ニ揭ケタル命ヲ發シ又ハ既ニ發シタル命ヲ取消シ之ヲ變更シ若クハ之ヲ認可スルコトヲ得
判決中前項ニ揭クル事項ニ限リ職權ヲ以テ假執行ノ宣言ヲ爲ス可シ
右裁判ニ對スル不服ニ付テハ第五百十一條ノ規定ヲ準用ス
第五百四十九條 第三者カ强制執行ノ目的物ニ付キ所有權ヲ主張シ其他目的物ノ讓渡若クハ引渡ヲ妨クル權利ヲ主張スルトキハ訴ヲ以テ債權者ニ對シ其强制執行ニ對スル異議ヲ主張シ又債務者ニ於テ其異議ヲ正當ナリトセサルトキハ債權者及ヒ債務者ニ對シテ之ヲ主張ス可シ
右訴ヲ債權者及ヒ債務者ニ對シテ起ストキハ之ヲ共同被吿ト爲ス
右訴ハ執行裁判所ノ管轄ニ屬ス然レトモ訴訟物カ區裁判所ノ管轄ニ屬セサルトキハ執行裁判所ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所之ヲ管轄ス
强制執行ノ停止及ヒ既ニ爲シタル執行處分ノ取消ニ付テハ第五百四十七條及ヒ第五百四十八條ノ規定ヲ準用ス但執行處分ノ取消ハ保證ヲ立テシメスシテ之ヲ爲スコトヲ得
第五百五十條 强制執行ハ左ノ書類ヲ提出シタル場合ニ於テ之ヲ停止シ又ハ之ヲ制限ス可シ
第一 執行ス可キ判決若クハ其假執行ヲ取消ス旨又ハ强制執行ヲ許サストシテ宣言シ若クハ其停止ヲ命シタル旨ヲ記載シタル執行力アル裁判ノ正本
第二 執行又ハ執行處分ノ一時ノ停止ヲ命シタル旨ヲ記載シタル裁判ノ正本
第三 執行ヲ免カルル爲メ保證ヲ立テ又ハ供託ヲ爲シタル旨ヲ記載シタル公正ノ證明書
第四 執行ス可キ判決ノ後ニ債權者カ辨濟ヲ受ケ又ハ義務履行ノ猶豫ヲ承諾シタル旨ヲ記載シタル證書
第五百五十一條 前條第一號及ヒ第三號ノ場合ニ於テハ既ニ爲シタル執行處分ヲモ取消ス可ク第四號ノ場合ニ於テハ既ニ爲シタル執行處分ヲ一時保持セシム可ク第二號ノ場合ニ於テハ其裁判ヲ以テ從前ノ執行行爲ノ取消ヲ命セサルトキニ限リ既ニ爲シタル執行處分ヲ一時保持セシム可シ
第五百五十二條 强制執行ノ開始後ニ債務者カ死亡スルトキハ强制執行ハ遺產ニ對シ之ヲ續行ス可シ
債務者ノ知ルコトヲ要スル執行行爲ヲ實施スル場合ニ於テ相續人アラサルトキ又ハ相續人ノ所在明カナラサルトキハ執行裁判所ハ債權者ノ申立ニ因リ遺產又ハ相續人ノ爲メ特別代理人ヲ任ス可シ
第五百五十三條 强制執行ノ開始後ニ戶主タリシ債務者カ其地位ヲ辭シ又ハ之ヲ失ヒタルトキハ此變更ノ生セシ當時債務者ノ所持シタル財產ニ付キ前條ノ規定ヲ準用ス
第五百五十四條 强制執行ノ費用ハ必要ナリシ部分ニ限リ債務者ノ負擔ニ歸ス此費用ハ强制執行ヲ受クル請求ト同時ニ之ヲ取立ツ可シ
强制執行ノ基本タル判決ヲ廢棄若クハ破毀シタルトキハ其費用ハ之ヲ債務者ニ辨濟ス可シ
第五百五十五條 執行ノ爲メ官廳ノ援助ヲ必要トスルトキハ裁判所ハ其援助ヲ官廳ニ求ム可シ
第五百五十六條 豫備、後備ノ軍籍ニ在ラサル軍人、軍屬ニ對シ兵營及ヒ軍事用廳舍又ハ軍艦ニ於テ强制執行ヲ爲ス可キトキハ債權者ノ申立ニ因リ執行裁判所ハ管轄ノ軍事裁判所又ハ所屬ノ長官又ハ隊長ニ囑託シテ之ヲ爲ス
囑託ニ因リ差押ヘタル物ハ債權者ノ委任シタル執達吏ニ之ヲ交付ス可シ
第五百五十七條 外國ニ於テ强制執行ヲ爲ス可キ場合ニ於テ其外國官廳カ本邦裁判所ニ法律上ノ其助ヲ爲ス可キトキハ債權者ノ申立ニ因リ第一審ノ受訴裁判所ハ之ヲ外國官廳ニ囑託ス可シ
外國駐在ノ本邦領事ニ依リ强制執行ヲ爲シ得ヘキトキハ第一審ノ受訴裁判所ハ之ヲ其領事ニ囑託ス可シ
第五百五十八條 强制執行ノ手續ニ於テ口頭辯論ヲ經スシテ爲スコトヲ得ル裁判ニ對シテハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
第五百五十九條 强制執行ハ左ノ諸件ニ付テモ亦之ヲ爲スコトヲ得
第一 抗吿ヲ以テノミ不服ヲ申立ツルコトヲ得ル裁判
第二 執行命令
第三 訴ノ提起後受訴裁判所ニ於テ又ハ受命判事若クハ受託判事ノ面前ニ於テ爲シタル和解
第四 第三百八十一條ノ規定ニ從ヒ區裁判所ニ於テ爲シタル和解
第五 公證人カ其權限內ニ於テ成規ノ方式ニ依リ作リタル證書但一定ノ金額ノ支拂又ハ他ノ代替物若クハ有價證券ノ一定ノ數量ノ給付ヲ以テ目的トスル請求ニ付キ作リタル證書ニシテ直チニ强制執行ヲ受ク可キ旨ヲ記載シタルモノニ限ル
第五百六十條 前條ニ揭ケタル債務名義ニ因レル强制執行ニハ第五百十六條乃至第五百五十八條ノ規定ヲ準用ス但第五百六十一條、第五百六十二條ノ規定ニ依リ差異ノ生スルトキハ此限ニ在ラス
第五百六十一條 執行命令ニハ其命令ヲ發シタル後債權者又ハ債務者ニ於テ承繼アル場合ニ限リ執行文ヲ附記スルコトヲ要ス
請求ニ關スル異議ハ執行命令ノ送達後ニ生シタル原因ニ基クトキニ限リ之ヲ許ス
執行文付與ニ付テノ訴又ハ請求ニ關シ異議ヲ主張スル訴又ハ執行文付與ノ際到來シタリト認メタル承繼ヲ爭フ訴ハ執行命令ヲ發シタル區裁判所之ヲ管轄ス但其請求カ區裁判所ノ管轄ニ屬セサルモノナルトキハ管轄地方裁判所ニ其訴ヲ起ス可シ
第五百六十二條 公證人ノ作リタル證書ノ執行力アル正本ハ其證書ヲ保存スル公證人之ヲ付與ス
執行文付與ニ關スル異議ニ付テノ裁判及ヒ更ニ執行文付與ニ付テノ裁判ハ公證人職務上ノ住所ヲ有スル地ヲ管轄スル區裁判所ニ於テ之ヲ爲ス
請求ニ關スル異議ノ主張ニ付テハ第五百四十五條第二項ニ規定シタル制限ニ從ハス
執行文付與ニ付テノ訴又ハ請求ニ關シ異議ヲ主張スル訴又ハ執行文付與ノ際證明シタリト認メタル事實ノ到來ニ係リ此ニ因リテ證書ノ執行ヲ爲シ得ヘキモノヲ爭フ訴ハ債務者カ本邦ニ於テ普通裁判籍ヲ有スル地ノ裁判所又ハ此裁判所ナキトキハ第十七條ノ規定ニ從ヒテ債務者ニ對シ訴ヲ起シ得ヘキ裁判所之ヲ管轄ス
第五百六十三條 本編ニ定メタル裁判籍ハ專屬ナリトス
第二章 金錢ノ債權ニ付テノ强制執行
第一節 動產ニ對スル强制執行
第一款 通則
第五百六十四條 動產ニ對スル强制執行ハ差押ヲ以テ之ヲ爲ス
差押ハ執行力アル正本ニ揭ケタル請求ヲ債權者ニ辨濟スル爲メ及ヒ强制執行ノ費用ヲ償フ爲ニ必要ナルモノノ外ニ及ホスコトヲ得ス
差押フ可キ物ヲ換價スルモ强制執行ノ費用ヲ償フテ剩餘ヲ得ル見込ナキトキハ强制執行ヲ爲スコトヲ得ス
第五百六十五條 第三者カ差押ヲ受ク可キ物ニ付キ物上ノ擔保權ヲ有スルモ差押ヲ妨クルコトヲ得ス然レトモ第五百四十九條ノ規定ニ從ヒ訴ヲ以テ賣得金ニ付キ優先ノ辨濟ヲ請求スル權利ハ此カ爲ニ妨ケラルルコト無シ
此場合ニ於テ請求ノ爲メ主張シタル事情カ法律上理由アリト見エ且事實上ノ㸃ニ付キ疏明アリタルトキハ裁判所ハ賣得金ノ供託ヲ命ス可シ但此事項ニ付テハ第五百四十七條及ヒ第五百四十八條ノ規定ヲ準用ス
第二款 有體動產ニ對スル强制執行
第五百六十六條 債務者ノ占有中ニ在ル有體動產ノ差押ハ執達吏其物ヲ占有シテ之ヲ爲ス
其物ハ債權者ノ承諾アルトキ又ハ其運搬ヲ爲スニ付キ重大ナル困難アルトキハ之ヲ債務者ノ保管ニ任ス可シ此場合ニ於テハ封印其他ノ方法ヲ以テ差押ヲ明白ニスルトキニ限リ其效力ヲ生ス
執達吏ハ債務者ニ其差押ヲ爲シタルコトヲ通知ス可シ
第五百六十七條 前條ノ規定ハ債權者又ハ物ノ提出ヲ拒マサル第三者ノ占有中ニ在ル物ノ差押ニ付テモ亦之ヲ準用ス
第五百六十八條 果實ハ未タ土地ヨリ離レサル前ト雖モ之ヲ差押フルコトヲ得然レトモ其差押ハ通常ノ成熟時期ノ前一个月內ニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
蠶ハ其多分カ繭ヲ成造スル爲メ揚リ蠶ト爲リタル後ニ非サレハ之ヲ差押フルコトヲ得ス
第五百六十九條 差押ノ效力ハ差押物ヨリ生スル天然ノ產出物ニモ當然及フモノトス
第五百七十條 左ニ揭クル物ハ之ヲ差押フルコトヲ得ス
第一 衣服、寢具、家具及ヒ廚具但此物カ債務者及ヒ其家族ノ爲メ缺ク可カラサルトキニ限ル
第二 債務者及ヒ其家族ニ必要ナル一个月間ノ食料及ヒ薪炭
第三 技術者、職工、勞役者及ヒ穩婆ニ在テハ其營業上缺ク可カラサル物
第四 農業者ニ在テハ其農業上缺ク可カラサル農具、家畜、肥料及ヒ次ノ收穫マテ農業ヲ續行スル爲メ缺ク可力ラサル農產物
第五 文武ノ官吏、神職、僧侶、公立私立ノ敎育場敎師、辯護士、公證人及ヒ醫師ニ在テハ其職業ヲ執行スル爲メ缺ク可カラサル物竝ニ身分相當ノ衣服
第六 文武ノ官吏、神職、僧侶及ヒ公立私立ノ敎育場敎師ニ在テハ第六百十八條ニ規定スル職務上ノ收入又ハ恩給ノ差押ヲ受ケサル金額但差押ヨリ次期ノ俸給又ハ恩給ノ支拂マテノ日數ニ應シテ之ヲ計算ス
第七 藥舖ニ在テハ調藥ヲ爲ス爲メ缺ク可カラサル器具及ヒ藥品
第八 勳章及ヒ名譽ノ證標
第九 實印其他職業ニ必要ナル印
第十 神體、佛像其他禮拜ノ用ニ供スル物
第十一 系譜
第十二 債務者又ハ其家族ノ未タ公ニセサル發明ニ關スル物及ヒ債務者又ハ其家族ノ未タ公ニセサル著述ノ稿本
第十三 債務者及ヒ其家族カ學校ニ於テ使用ニ供スル書籍
然レトモ債務者ノ承諾アルトキハ第三號乃至第八號ニ揭ケタル物ヲ除ク外之ヲ差押フルコトヲ得
第五百七十一條 差押物保存ノ爲メ特別ノ處分ヲ必要トスルトキハ執達吏ハ適當ノ方法ヲ以テ之ヲ爲ス可シ若シ此カ爲ニ費用ヲ要スルトキハ債權者ヲシテ之ヲ豫納セシメ又債權者數名關係スルトキハ其要求額ノ割合ニ從ヒテ其各債權者ヨリ之ヲ豫納セシム可シ
第五百七十二條 執達吏ハ差押ヲ實施シタル後債權者又ハ裁判所ノ特別委任ヲ要セスシテ以下數條ノ規定ニ從ヒテ公ノ競賣方法ヲ以テ其差押物ヲ賣却ス可シ
第五百七十三條 競賣ス可キ物ノ中ニ高價ノモノ有ルトキハ執達吏ハ適當ナル鑑定人ヲシテ其評價ヲ爲サシム可シ
第五百七十四條 差押金錢ハ之ヲ債權者ニ引渡ス可シ
執達吏カ金錢ヲ取立テタルトキハ債務者ヨリ支拂ヲ爲シタルモノト看做ス但保證ヲ立テ又ハ供託ヲ爲シテ執行ヲ免カルルコトヲ債務者ニ許シタルトキハ此限ニ在ラス
第五百七十五條 差押ノ日ト競賣ノ日トノ間ニハ少ナクトモ七日ノ時間ヲ存スルコトヲ要ス但差押債權者、執行力アル正本ニ因リ配當ヲ要求スル債權者及ヒ債務者カ競賣ヲ更ニ早ク爲サンコトヲ合意シタルトキ又ハ差押物ヲ永ク貯藏スルニ付キ不相應ノ費用若クハ其物ノ價格ノ著シク減少スル危害ヲ避ケン爲メ競賣ヲ早ク爲スコトノ必要ナルトキハ此限ニ在ラス
第五百七十六條 競賣ハ差押ヲ爲シタル市町村ニ於テ之ヲ爲ス但差押債權者及ヒ債務者カ他ノ地ニ於テ之ヲ爲スコトヲ合意シタルトキハ此限ニ在ラス
競賣ノ日時及ヒ場所ハ之ヲ公吿ス但其公吿ニハ競賣ス可キ物ヲ表示ス可シ
第五百七十七條 最高價競買ノ爲メノ競落ハ其價額ヲ三囘呼上ケタル後之ヲ爲ス
競落物ノ引渡ハ代金ト引換ヘ之ヲ爲ス
最高價競買人競賣條件ニ定メタル支拂期日又ハ其定ナキトキハ競賣期日ノ終ル前ニ代金ノ支拂ヲ爲シテ物ノ引渡ヲ求メサルトキハ更ニ其物ヲ競賣ス可シ此場合ニ於テハ前ノ最高價競買人ハ競買ニ加ハルコトヲ得ス且再度ノ競落代價カ最初ノ競落代價ヨリ低キトキハ不足ヲ擔任ス可シ其高キトキハ剩餘ヲ請求スルコトヲ得ス
第五百七十八條 競賣ハ賣得金ヲ以テ債權者ニ辯濟ヲ爲シ及ヒ强制執行ノ費用ヲ償フニ足ルニ至ルトキハ直チニ之ヲ止ム可シ
第五百七十九條 執達吏賣得金ヲ領收シタルトキハ債務者ヨリ支拂ヲ爲シタルモノト看做ス但保證ヲ立テ又ハ供託ヲ爲シテ執行ヲ免カルルコトヲ債務者ニ許シタルトキハ此限ニ在ラス
第五百八十條 金銀物ハ其金銀ノ實價ヨリ以下ニ競落スルコトヲ許サス其實價マテニ競買ヲ爲ス者ナキトキハ執達吏ハ金銀ノ實價ニ達スル價額ヲ以テ適宜ニ之ヲ賣却スルコトヲ得
第五百八十一條 執達吏有價證券ヲ差押ヘタルトキハ相場アルモノハ賣却日ノ相場ヲ以テ適宜ニ之ヲ賣却シ其相場ナキモノハ一般ノ規定ニ從ヒテ之ヲ競賣ス可シ
第五百八十二條 有價證券ノ記名ナルトキハ執行裁判所ハ買主ノ氏名ニ書換ヲ爲サシメ及ヒ此カ爲メ必要ナル陳述ヲ債務者ニ代リ爲ス權ヲ執達吏ニ與フルコトヲ得
第五百八十三條 無記名ノ證券ニシテ記名ニ換ヘ又ハ他ノ方法ニ依リ流通ヲ止メタルモノナルトキハ執行裁判所ハ其流通囘復ヲ爲サシメ及ヒ此カ爲メ必要ナル陳述ヲ債務者ニ代リテ爲ス權ヲ執達吏ニ與フルコトヲ得
第五百八十四條 土地ヨリ離レサル前ニ差押ヘタル果實ノ競賣ハ其成熟ノ後始メテ之ヲ爲スコトヲ許ス執達吏ハ競賣ノ爲メ其收穫ヲ爲サシムル權利アリ
差押ヘタル蠶ノ競賣ハ全ク繭ト爲リタル後始メテ之ヲ爲スコトヲ許ス
第五百八十五條 差押債權者、執行力アル正本ニ因リ配當ヲ要求スル債權者又ハ債務者ノ申立ニ因リ執行裁判所ハ前數條ノ規定ニ依ラス他ノ方法又ハ他ノ場所ニ於テ差押物ノ賣却ヲ爲ス可キ旨又ハ執達吏ニ依ラス他ノ者ヲシテ競賣ヲ爲サシム可キ旨ヲ命スルコトヲ得
第五百八十六條 執達吏ハ既ニ差押ヘタル物ニ付キ他ノ債權者ノ爲メ更ニ差押ノ手續ヲ爲スコトヲ得ス
執達吏ハ既ニ差押ヲ爲シタル執達吏ニ差押調書ノ閱覽ヲ求メテ物ノ照査ヲ爲シ未タ差押ニ係ラサル物アルトキハ之ヲ差押ヘ既ニ差押ヲ爲シタル執達吏ニ差押調書ヲ交付シ且總テノ差押物ヲ競賣ニ付ス可キコトヲ求ム可シ若シ差押フ可キ物アラサルトキハ照査調書ヲ作リ既ニ差押ヲ爲シタル執達吏ニ之ヲ交付ス可シ
前項ノ求ニ因リ執行ニ關スル債權者ノ委任ハ既ニ差押ヲ爲シタル執達吏ニ法律上移轉ス
假差押ニ係ル物ニ付テハ本條ノ規定ヲ適用セス
第五百八十七條 前條ニ揭ケタル物ノ照査手續ハ配當要求ノ效力ヲ生シ又既ニ爲シタル差押カ取消ト爲リタルトキハ差押ノ效力ヲ生ス
第五百八十八條 適當ナル期間經過スルモ執達吏競賣ヲ爲ササルトキハ差押債權者及ヒ執行力アル正本ニ因リ配當ヲ要求スル債權者ハ一定ノ期間內ニ競賣ヲ爲ス可キコトヲ催吿シ其催吿ノ效アラサルトキハ相當ノ命令アランコトヲ執行裁判所ニ申請スルコトヲ得
第五百八十九條 民法ニ從ヒ配當ヲ要求シ得ヘキ債權者ハ執行力アル正本ニ因スシテ賣得金ノ配當ヲ要求スルコトヲ得
第五百九十條 前條ノ配當要求ハ其原因ヲ開示シ且裁判所ノ所在地ニ住居ヲモ事務所ヲモ有セサル者ハ假住所ヲ選定シ執達吏ニ之ヲ爲ス可シ
第五百九十一條 第五百八十六條第二項及ヒ第五百九十條ノ場合ニ於テ執達吏ハ配當要求ノ有リタルコトヲ配當ニ與カル各債權者及ヒ債務者ニ通知ス可シ
執行力アル正本ニ因スシテ配當ヲ要求スル債權者アルトキハ債務者ハ執達吏ノ通知アリタルヨリ三日ノ期間內ニ其債權ヲ認諾スルヤ否ヤヲ執達吏ニ申立ツ可シ
債務者カ認諾セサルコトヲ執達吏ヨリ通知アリタルトキハ債權者ハ其通知アリタルヨリ三日ノ期間內ニ債務者ニ對シ訴ヲ起シ其債權ヲ確定ス可シ
第五百九十二條 配當ノ要求ハ競賣期日ノ終ニ至ルマテ之ヲ爲スコトヲ得
第五百九十三條 賣得金ヲ以テ配當ニ與カル各債權者ヲ滿足セシムルニ足ラサル場合ニ於テ債權者間ニ配當ノ協議調ハサルトキハ其賣得金ヲ供託ス可シ
數多ノ債權者ノ爲メ同時ニ金錢ヲ差押ヘタルトキ之ヲ以テ各債權者ヲ滿足セシムルニ足ラサル場合ニ於テモ亦同シ
右ノ場合ニ於テ執達吏ハ其事情ヲ執行裁判所ニ屆出ツ可ク其屆書ニハ執行手續ニ關スル書類ヲ添附ス可シ
第三款 債權及ヒ他ノ財產權ニ對スル强制執行
第五百九十四條 第三者(第三債務者)ニ對スル債務者ノ債權ニシテ金錢ノ支拂又ハ他ノ有體物若クハ有價證券ノ引渡若クハ給付ヲ目的トスルモノノ强制執行ハ執行裁判所ノ差押命令ヲ以テ之ヲ爲ス
第五百九十五條 執行裁判所トシテハ債務者ノ普通裁判籍ヲ有スル地ノ區裁判所若シ此區裁判所ナキトキハ第十七條ノ規定ニ從ヒテ債務者ニ對スル訴ヲ管轄スル區裁判所管轄權ヲ有ス
第五百九十六條 債權者ハ差押命令ノ申請ニ差押フ可キ債權ノ種類及ヒ數額ヲ開示ス可シ
右申請ハ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
第五百九十七條 差押命令ハ豫メ第三債務者及ヒ債務者ノ審訊ヲ經スシテ之ヲ發ス
第五百九十八條 金錢ノ債權ヲ差押フ可キトキハ裁判所ハ第三債務者ニ對シ債務者ニ支拂ヲ爲スコトヲ禁シ又債務者ニ對シ債權ノ處分殊ニ其取立ヲ爲ス可カラサルコトヲ命ス可シ
差押命令ハ職權ヲ以テ第三債務者及ヒ債務者ニ之ヲ送達シ又債權者ニハ其送達シタル旨ヲ通知ス可シ
差押ハ第三債務者ニ對スル送達ヲ以テ之ヲ爲シタルモノト看做ス
第五百九十九條 抵當アル債權ノ差押ノ場合ニ於テハ債權者ハ債務者ノ承諾ヲ要セスシテ其債權ノ差押ヲ登記簿ニ記入スル權利アリ
此記入ノ申請ハ裁判所ニ之ヲ爲ス可シ其申請ハ差押命令ノ申請ト之ヲ併合スルコトヲ得
裁判所ハ義務ヲ負フタル不動產ノ所有者(第三債務者)ニ差押命令ヲ送達シタル後記入ノ手續ヲ爲ス可シ
第六百條 差押ヘタル金錢ノ債權ニ付テハ差押債權者ノ選擇ニ從ヒ代位ノ手續ヲ要セスシテ之ヲ取立ツル爲メ又ハ支拂ニ換ヘ券面額ニテ差押債權者ニ之ヲ轉付スル爲メ命令アランコトヲ申請スルコトヲ得
右命令ノ送達ニ付テハ第五百九十八條第二項ノ規定ヲ準用ス
第六百一條 支拂ニ換ヘ券面額ニテ債權ヲ轉付スル命令アル場合ニ於テハ其債權ノ存スル限リハ第五百九十八條第二項ノ手續ヲ爲スニ因リ債務者ハ債權ノ辨濟ヲ爲シタルモノト看做ス
第六百二條 取立ノ爲メノ命令ハ其債權ノ全額ニ及フモノトス但執行裁判所ハ債務者ノ申立ニ因リ差押債權者ヲ審訊シテ差押額ヲ其債權者ノ要求額マテニ制限シ其超過スル額ノ處分殊ニ取立ヲ爲スヲ許スコトヲ得其制限シタル部分ニ限リ他ノ債權者ハ配當要求ヲ爲スコトヲ得ス
右許可ハ第三債務者及ヒ債權者ニ通知ス可シ
第六百三條 手形其他裏書ヲ以テ移轉スルコトヲ得ル證券ニ因レル債權ノ差押ハ執達吏其證券ヲ占有シテ之ヲ爲ス
第六百四條 俸給又ハ此ニ類スル繼續收入ノ債權ノ差押ハ債權額ヲ限トシ差押後ニ收入ス可キ金額ニ及フモノトス
第六百五條 職務上收入ノ差押ハ債務者ノ轉官兼任又ハ增俸ニ因ル收入ニモ亦及フモノトス
第六百六條 債務者ハ債權ニ關スル所持ノ證書ヲ差押債權者ニ引渡ス義務アリ債權者ハ差押命令ニ基キ强制執行ノ方法ヲ以テ其證書ヲ債務者ヨリ取上ケシムルコトヲ得
第六百七條 第五百五條第二項ニ從ヒテ債務者ニ保證ヲ立テシメ又ハ供託ヲ爲サシメテ執行ヲ免カルルコトヲ許ス可キトキハ差押ヘタル金錢債權ニ付テハ取立ノ命令ノミヲ爲ス可シ但此命令ハ第三債務者ヲシテ債務額ヲ供託セシムル效力ノミヲ有ス
第六百八條 債權者取立ヲ爲シタルトキハ其旨ヲ執行裁判所ニ屆出ツ可シ
第六百九條 差押債權者ハ第三債務者ヲシテ差押命令ノ送達ヨリ七日ノ期間內ニ書面ヲ以テ左ノ陳述ヲ爲サシメンコトヲ裁判所ニ申立ツルコトヲ得
第一 債權ノ認諾ノ有無及ヒ其限度竝ニ支拂ヲ爲ス意思ノ有無及ヒ其限度
第二 債權ニ付キ他ノ者ヨリ請求ノ有無及ヒ其種類
第三 債權カ既ニ他ノ債權者ヨリ差押ヘラレタルコトノ有無及ヒ其請求ノ種類
右ノ陳述ヲ求ムル催吿ハ之ヲ送達證書ニ記載ス可シ第三債務者陳述ヲ怠リタルトキハ此ニ因リテ生スル損害ニ付キ其責ニ任ス
第六百十條 債權者カ命令ノ旨趣ニ基キ第三債務者ニ對シ訴ヲ起スニ至リタルトキハ一般ノ規定ニ從ヒテ管轄ヲ有スル裁判所ニ其訴ヲ起シ且債務者內國ニ在リテ住所ノ知レタルトキハ其訴訟ヲ之ニ吿知ス可シ
第六百十一條 債權者カ取立ヲ爲ス可キ債權ノ行用ヲ怠リタルトキハ此カ爲メ債務者ニ生シタル損害ノ責ニ任ス
第六百十二條 債權者ハ命令ニ因リ取立ノ爲メ取得シタル權利ヲ抛棄スルコトヲ得但此カ爲メ其請求ヲ害セラルルコト無シ
此抛棄ハ裁判所ニ屆書ヲ差出シテ之ヲ爲ス但其謄本ハ第三債務者及ヒ債務者ニ之ヲ送達ス可シ
第六百十三條 差押ヘタル債權カ條件附若クハ有期ナルトキ又ハ反對給付ニ繫リ若クハ他ノ理由アリテ其取立ノ困難ナルトキハ裁判所ハ申立ニ因リ取立ニ換ヘ他ノ換價方法ヲ命スルコトヲ得
債務者內國ニ在リテ住所ノ知レタルトキハ其申立ヲ許ス決定前ニ之ヲ審訊ス可シ
第六百十四條 有體物ノ引渡又ハ給付ノ請求ニ對スル强制執行ハ以下數條ノ規定ヲ斟酌シテ第五百九十八條乃至第六百十二條ノ規定ニ從ヒテ之ヲ爲ス
第六百十五條 有體動產ノ請求ノ差押ニ付テハ其動產ヲ債權者ノ委任シタル執達吏ニ引渡ス可キコトヲ命ス可シ
右動產ノ換價ニ付テハ差押物ノ換價ニ關スル規定ヲ適用ス
第六百十六條 不動產ノ請求ノ差押ニ付テハ債權者ノ申立ニ因リ其不動產ヲ不動產所在地ノ區裁判所ヨリ命シタル保管人ニ引渡ス可キコトヲ命ス可シ
引渡シタル不動產ニ付テノ强制執行ハ不動產ニ對スル强制執行ニ付テノ規定ニ從ヒテ之ヲ爲ス
第六百十七條 有體物ノ引渡又ハ給付ノ請求ニ付テハ支拂ニ換ヘ轉付スル命令ヲ爲スコトヲ得ス
第六百十八條 左ニ揭クル債權ハ之ヲ差押フルコトヲ得ス
第一 法律上ノ養料
第二 債務者カ義捐建設所ヨリ又ハ第三者ノ慈惠ニ因リ受クル繼續ノ收入但債務者及ヒ其家族ノ生活ノ爲メ必要ナルモノニ限ル
第三 下士、兵卒ノ給料竝ニ恩給及ヒ其遺族ノ扶助料
第四 出陣ノ軍隊又ハ役務ニ服シタル軍艦ノ乘組員ニ屬スル軍人、軍屬ノ職務上ノ收入
第五 文武ノ官吏、神職、僧侶及ヒ公立私立ノ敎育場敎師ノ職務上ノ收入、恩給及ヒ其遺族ノ扶助料
第六 職工、勞役者又ハ雇人カ其勞力又ハ役務ノ爲ニ受クル報酬
第一號、第五號、第六號ノ場合ニ於テ職務上ノ收入、恩給其他ノ收入カ一个年間ニ三百圓ヲ超過スルトキハ其超過額ノ半額ヲ差押フルコトヲ得
第六百十九條 數名ノ差押債權者ノ爲メ同時ニ爲ス可キ債權ノ差押ニ付テハ前數條ノ規定ヲ準用ス
第六百二十條 執行力アル正本ヲ有スル債權者及ヒ民法ニ從ヒ配當ノ要求ヲ爲シ得ヘキ債權者ハ差押債權者カ取立ヲ爲シ其旨ヲ執行裁判所ニ屆出ツルマテ又ハ執達吏カ賣得金ヲ領收スルマテ配當ヲ要求スルコトヲ得但執行力アル正本ニ因ラスシテ配當ヲ要求スル債權者ニ付テハ第五百九十條及ヒ第五百九十一條第二項第三項ノ規定ヲ適用ス
支拂ニ換ヘテノ轉付ノ命令アリタル後ハ配當ノ要求ヲ爲スコトヲ得ス
右配當要求ハ職權ヲ以テ之ヲ第三債務者、債務者及ヒ差押債權者ニ送達シ又既ニ爲シタル差押カ取消ト爲リタルトキハ執行力アル正本ニ因リ要求シタル債權者ノ爲メ要求ノ順序ニ因リ差押ノ效力ヲ生ス
第六百二十一條 金錢ノ債權ニ付キ配當要求ノ送達ヲ受ケタル第三債務者ハ債務額ヲ供託スル權利アリ
第三債務者ハ配當ニ與カル或ル債權者ノ求ニ因リ債務額ヲ供託スル義務アリ
第三債務者債務額ヲ供託シタルトキハ其事情ヲ裁判所ニ屆出ツ可シ
第六百二十二條 請求カ不動產ニ關スルトキハ第三債務者ハ其不動產所在地ノ區裁判所カ差押債權者又ハ第三債務者ノ申立ニ因リ命シタル保管人ニ事情ヲ開示シ且送達セラレタル命令ヲ添ヘ其不動產ヲ引渡ス權利ヲ有シ又ハ差押債權者ノ求ニ因リ之ヲ引渡ス義務アリ
第六百二十三條 第三債務者カ取立手續ニ對シテ義務ヲ履行セサルトキハ差押債權者ハ訴ヲ以テ之ヲ履行セシムルコトヲ得
執行力アル正本ヲ有スル各債權者ハ共同訴訟人トシテ原吿ニ加ハル權利アリ
訴ヲ受ケタル第三債務者ハ原吿ニ加ハラサル債權者ヲ共同訴訟人トシテ呼出アランコトヲ口頭辯論ノ第一期日マテニ申立ツルコトヲ得
右ノ場合ニ於ケル裁判ハ呼出ヲ受ケタル債權者ニ利害ヲ及ホス效力アリ
第六百二十四條 差押債權者取立手續ヲ怠リタルトキハ執行力アル正本ニ因リ要求シタル各債權者ハ一定ノ期間內ニ取立ヲ爲ス可キコトヲ催吿シ其催吿ノ效アラサルトキハ執行裁判所ノ許可ヲ得テ自ラ取立ヲ爲スコトヲ得
第六百二十五條 不動產ヲ目的トセス又前數條ニ揭ケタル以外ノ財產權ニ對スル强制執行ニ付テハ本款ノ規定ヲ準用ス
若シ第三債務者ナキトキハ差押ハ債務者ニ權利ノ處分ヲ禁スル命令ヲ送達シタル日時ヲ以テ之ヲ爲シタルモノト看做ス
右ノ場合ニ於テハ裁判所ハ特別ノ處分殊ニ其權利ノ管理若クハ讓渡ヲ命スルコトヲ得
第四款 配當手續
第六百二十六條 配當手續ハ動產ニ對スル强制執行ニ際シ競賣期日又ハ金錢差押ノ日ヨリ十四日ノ期間內ニ債權者間ノ協議調ハサル爲メ金額ヲ供託シタルトキ之ヲ爲ス
第六百二十七條 裁判所ハ事情屆書ニ基キ七日ノ期間內ニ元金、利息、費用其他附帶ノ債權ノ計算書ヲ差出ス可キ旨ヲ各債權者ニ催吿ス可シ
第六百二十八條 前條ノ期間滿了後裁判所ハ配當表ヲ作ル可シ
右期間ヲ遵守セサル債權者ノ債權ハ配當表ヲ作ルニ際シ配當要求竝ニ屆書ノ旨趣及ヒ其憑據書類ニ依リ之ヲ計算ス但後ニ債權額ヲ補充スルコトヲ許サス
第六百二十九條 裁判所ハ配當表ニ關スル陳述及ヒ配當實施ノ爲メ期日ヲ指定シ其期日ニハ各債權者及ヒ債務者ヲ呼出ス可シ但債務者ノ所在明カナラサルトキ又ハ外國ニ在ルトキハ呼出ヲ爲スコトヲ要セス
配當表ハ各債權者及ヒ債務者ニ閱覽セシムル爲メ遲クトモ期日ノ三日前ニ裁判所書記課ニ之ヲ備置ク可シ
第六百三十條 期日ニ於テ異議ノ申立ナキトキハ配當表ニ從ヒテ其配當ヲ實施ス可シ
停止條件附ノ債權ノ配當額ハ仍ホ之ヲ供託シ民法ニ從ヒテ條件ノ成否ニ依リ後ニ之ヲ支拂ヒ又ハ更ニ配當ス可シ
第五百九十一條第三項ノ場合又ハ假差押ノ場合ニ於テ未タ確定セサル債權其他異議アル債權ノ配當額ハ仍ホ之ヲ供託ス可シ
配當實施ニ付テハ調書ヲ作ル可シ
第六百三十一條 異議ノ申立アルトキハ他ノ債權者ハ直チニ陳述ヲ爲ス可シ若シ關係人異議ヲ正當ナリト認ムルトキ又ハ他ノ方法ニ於テ合意スルトキハ之ニ從ヒ配當表ヲ更正シ配當ヲ實施ス可シ
異議ノ完結セサルトキハ異議ナキ部分ニ限リ配當ヲ實施ス可シ
第六百三十二條 期日ニ出頭セサル債權者ハ配當表ノ實施ニ同意シタルモノト看做ス
若シ期日ニ出頭セサル債權者カ他ノ債權者ヨリ申立テタル異議ニ關係ヲ有スルトキハ其債權者ハ異議ヲ正當ナリト認メサルモノト看做ス
第六百三十三條 期日ニ於テ異議ノ完結セサルトキハ異議ヲ申立テタル債權者ハ他ノ債權者ニ對シ訴ヲ起シタルコトヲ期日ヨリ七日ノ期間內ニ裁判所ニ證明ス可シ若シ其期間ヲ徒過シタル後ハ裁判所ハ異議ニ拘ハラス配當ノ實施ヲ命ス可シ
第六百三十四條 異議ヲ申立テタル債權者前條ノ期間ヲ怠リタルトキト雖モ配當表ニ從ヒテ配當ヲ受ケタル債權者ニ對シ訴ヲ以テ優先權ヲ主張スル權利ハ配當實施ノ爲メ妨ケラルルコト無シ
第六百三十五條 異議ヲ申立テタル債權者ノ訴ニ付テハ配當裁判所之ヲ管轄ス然レトモ訴訟物カ區裁判所ノ管轄ニ屬セサルトキハ其配當裁判所ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所之ヲ管轄ス若シ數箇ノ訴ノ提起アリタル場合ニ於テ一ノ訴ヲ地方裁判所カ管轄スルトキハ其他ノ訴ヲモ亦之ヲ管轄ス但各債權者總テノ異議ニ付キ配當裁判所ノ裁判ヲ受ク可キコトヲ合意シタルトキハ此限ニ在ラス
第六百三十六條 異議ニ付キ裁判ヲ爲ス判決ニハ配當額ノ係爭部分ヲ如何ナル債權者ニ如何ナル數額ヲ以テ支拂フ可キヤヲ定ム可シ若シ之ヲ定ムルコトヲ適當トセサルトキハ判決ニ於テ新ナル配當表ノ調製及ヒ他ノ配當手續ヲ命ス可シ
第六百三十七條 異議ヲ申立テタル債權者カ口頭辯論ノ期日ニ出頭セサルトキハ異議ヲ取下ケタルモノト看做ス旨ノ闕席判決ヲ爲ス可シ
第六百三十八條 前二條ノ判決確定ノ證明アルトキハ配當裁判所ハ其判決ニ基キ支拂又ハ他ノ配當手續ヲ命ス
第六百三十九條 裁判所ハ配當表ニ依リテ左ノ手續ヲ爲シ配當ヲ實施ス可シ
債權全部ノ配當ヲ受ク可キ債權者ニハ配當額支拂證ヲ交付スルト同時ニ其所持スル執行力アル正本又ハ債權ノ證書ヲ差出サシメ之ヲ債務者ニ交付ス可シ
債權一分ノミノ配當ヲ受ク可キ債權者ニハ執行力アル正本又ハ債權ノ證書ヲ差出サシメ之ニ配當額ヲ記入シテ返還シ且配當額支拂證ヲ交付スルト同時ニ右債權者ヨリ金額ヲ證記シタル受取書ヲ差出サシメ之ヲ債務者ニ交付ス可シ
期日ニ出頭セサル債權者ノ配當額ハ仍ホ之ヲ供託ス可シ
右ノ手續ヲ爲シタルトキハ調書ニ記載シテ之ヲ明確ニス可シ
第二節 不動產ニ對スル强制執行
第一款 通則
第六百四十條 不動產ニ對スル强制執行ハ左ノ方法ヲ以テ之ヲ爲ス
第一 强制競賣
第二 强制管理
債權者ハ自己ノ選擇ニ依リ一箇ノ方法ヲ以テ又ハ二箇ノ方法ヲ併セテ執行セシムルコトヲ得
强制管理ハ假差押ノ執行ノ爲ニモ亦之ヲ爲ス
第六百四十一條 不動產ニ對スル强制執行ニ付テハ其不動產所在地ノ區裁判所執行裁判所トシテ之ヲ管轄ス若シ其不動產數箇ノ區裁判所ノ管轄區內ニ散在スルトキハ第二十六條ノ規定ヲ適用ス
强制執行ハ申立ニ因リテ裁判所之ヲ爲ス
第二款 强制競賣
第六百四十二條 强制競賣ノ申立ニハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 債權者、債務者及ヒ裁判所ノ表示
第二 不動產ノ表示
第三 競賣ノ原因タル一定ノ債權及ヒ其執行シ得ヘキ一定ノ債務名義
第六百四十三條 申立ニハ執行力アル正本ノ外左ノ證書ヲ添附ス可シ
第一 登記簿ニ債務者ノ所有トシテ登記シタル不動產ニ付テハ登記判事ノ認證書
第二 登記簿ニ登記アラサル不動產ニ付テハ債務者ノ所有タルコトヲ證ス可キ證書
第三 地所ニ付テハ國郡市町村、字、番地、地目、反別若クハ坪數、土地臺帳ニ登錄シタル地價及ヒ其地所ニ付キ納ム可キ一个年ノ租稅其他ノ公課ヲ證ス可キ證書
第四 建物ニ付テハ國郡市町村、字、番地、構造ノ種類、建坪及ヒ其建物ニ付キ納ム可キ一个年ノ公課ヲ證ス可キ證書
第五 地所、建物ニ付キ賃貸借アル場合ニ於テハ其期限竝ニ借賃ヲ證ス可キ證書
第二號、第三號及ヒ第四號ノ要件ニ付テハ債權者公簿ヲ主管スル官廳ニ其證明書ヲ求ムルコトヲ得
第四號及ヒ第五號ノ要件ヲ證明スル能ハサルトキハ債權者ハ競賣申立ノ際其取調ヲ執行裁判所ニ申請スルコトヲ得但此場合ニ於テハ裁判所ハ執達吏ヲシテ其取調ヲ爲サシム可シ
强制管理ノ爲メ既ニ不動產ヲ差押ヘタル場合ニ於テ其執行記錄ニ第一號乃至第五號ノ要件ヲ記載シタルモノ有ルトキハ其證書ヲ添附スルコトヲ要セス
第六百四十四條 競賣手續ノ開始決定ニハ同時ニ債權者ノ爲メ不動產ヲ差押フルコトヲ宣言ス可シ
差押ハ債務者カ不動產ノ利用及ヒ管理ヲ爲スコトヲ妨ケス
差押ハ其決定ヲ債務者ニ送達スルニ因リ其效力ヲ生ス此送達ハ職權ヲ以テ之ヲ爲ス
第六百四十五條 裁判所ハ競賣手續開始ノ決定ヲ爲シタル不動產ニ付キ强制競賣ノ申立アルモ更ニ開始決定ヲ爲スコトヲ得ス
右申立ハ執行記錄ニ添附スルニ因リ配當要求ノ效力ヲ生シ又既ニ開始シタル競賣手續取消ト爲リタルトキハ第六百四十九條第一項ノ規定ヲ害セサル限リハ開始決定ヲ受ケタル效力ヲ生ス
假差押ノ命令アリタル不動產ニ付テハ本條ノ規定ヲ適用セス
第六百四十六條 配當要求ハ其原因ヲ開示シ且裁判所ノ所在地ニ住居ヲモ事務所ヲモ有セサル者ハ假住所ヲ選定シテ執行裁判所ニ之ヲ爲ス可シ
右要求ハ競落期日ノ終ニ至ルマテ之ヲ爲スコトヲ得
第六百四十七條 執行裁判所ハ前二條ノ申立及ヒ要求アリタルコトヲ利害關係人ニ通知ス可シ
執行力アル正本ニ因ラスシテ配當ヲ要求スル債權者アルトキハ債務者ハ右通知アリタルヨリ三日ノ期間內ニ其債權ヲ認諾スルヤ否ヤヲ裁判所ニ申出ツ可シ
債務者カ認諾セサルコトヲ裁判所ヨリ通知アリタルトキハ債權者ハ其通知アリタルヨリ三日ノ期間內ニ債務者ニ對シ訴ヲ起シ其債權ヲ確定ス可シ
第六百四十八條 左ニ揭クル者ヲ競賣手續ニ於テノ利害關係人ト爲ス
第一 差押債權者及ヒ執行力アル正本ニ因リ配當ヲ要求スル債權者
第二 債務者
第三 登記簿ニ記入アル不動產上權利者
第四 不動產上權利者トシテ其債權ヲ證明シ執行記錄ニ備フ可キ屆出ヲ爲シタル者
第六百四十九條 差押債權者ノ債權ニ先タツ債權ニ關スル不動產ノ負擔ヲ競落人ニ引受ケシムルカ又ハ賣却代金ヲ以テ其負擔ヲ辨濟スルニ足ル見込アルトキニ非サレハ賣却ヲ爲スコトヲ得ス
不動產ハ賣却ニ因リ登記簿ニ記入ヲ要スル總テノ不動產上ノ負擔ヲ免カルルモノトス但競落人其負擔ヲ引受ケタルトキハ此限ニ在ラス
登記簿ニ記入ヲ要セサル不動產ノ負擔ハ競落人之ヲ引受クルモノトス
第六百五十條 權利ヲ取得スル第三者其取得ノ際差押又ハ競賣ノ申立アリタルコトヲ知リタルトキハ差押ノ效力ニ對シ其善意ナリシコトヲ主張スルコトヲ得ス
若シ不動產カ差押ノ原因タル債權ノ爲メ義務ヲ負擔スルトキハ差押後所有ノ移轉シタル場合ニ限リ新所有者其取得ノ際差押又ハ競賣ノ申立アリタルコトヲ知ラサルトキト雖モ競賣手續ヲ續行ス可シ
競賣申立ノ取下ニ因リテ差押ハ消滅ス
第六百五十一條 裁判所ハ競賣手續開始ノ決定ヲ爲ス際職權ヲ以テ競賣ノ申立アリタルコトヲ登記簿ニ記入ス可キ旨ヲ登記判事ニ囑託ス可シ
登記判事ハ前項ノ囑託ニ從ヒテ記入ヲ爲ス可シ
第六百五十二條 登記判事ハ前條ニ揭ケタル記入ヲ爲シタル後登記簿ノ謄本ヲ裁判所ニ送付シ不動產上權利者ヨリ差出シタル證書アルトキハ其抄本ヲモ送付ス可シ
第六百五十三條 豫メ知ルニ於テハ手續ノ開始ヲ妨ク可キ事實カ登記判事ノ通知ニ依リ顯ハルルトキハ裁判所ハ其事情ニ因リ直チニ手續ヲ取消シ又ハ裁判所ノ意見ヲ以テ定ムル期間內ニ其障碍ノ消滅シタルコトヲ證明ス可キコトヲ債權者ニ命ス可シ其期間內ニ此證明ヲ爲ササルトキハ期間ノ滿了後職權ヲ以テ手續ヲ取消ス可シ
第六百五十四條 裁判所ハ競賣開始ノ決定ヲ爲シタルトキハ租稅其他ノ公課ヲ主管スル官廳ニ通知シ其不動產ニ對スル債權ノ有無及ヒ限度ヲ申出ツ可キコトヲ期間ヲ定メテ催吿ス可シ
第六百五十五條 裁判所ハ登記判事及ヒ租稅其他ノ公課ヲ主管スル官廳ヨリ通知ヲ受ケタル後鑑定人ヲシテ不動產ノ評價ヲ爲サシメ其評價額ヲ以テ最低競賣價額ト爲ス
第六百五十六條 裁判所ハ最低競賣價額ヲ以テ差押債權者ノ債權ニ先タツ不動產上ノ總テノ負擔及ヒ手續ノ費用ヲ辨濟シテ剩餘アル見込ナシトスルトキハ差押債權者ニ其旨ヲ通知ス可シ
右通知ヨリ七日ノ期間內ニ差押債權者カ前項ノ負擔及ヒ費用ヲ辨濟シテ剩餘アル可キ價額ヲ定メ且其價額ニ應スル競買人ナキ場合ニ於テハ自ラ其價額ヲ以テ買受ク可キ旨ヲ申立テ十分ナル保證ヲ立テサルトキハ競賣手續ヲ取消ス可シ
第六百五十七條 裁判所ハ前條第一項ノ債權及ヒ費用ヲ辨濟シ剩餘ヲ得ル見込アルトキ又ハ差押債權者前條第二項ノ申立ヲ爲シ十分ナル保證ヲ立テタルトキハ職權ヲ以テ競賣期日及ヒ競落期日ヲ定メテ之ヲ公吿ス
第六百五十八條 競賣期日ノ公吿ニハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 不動產ノ表示
第二 租稅其他ノ公課
第三 賃貸借アル場合ニ於テハ其期限竝ニ借賃
第四 强制執行ニ因リ競賣ヲ爲ス旨
第五 競賣期日ノ場所、日時及ヒ競賣ヲ爲ス可キ執達吏ノ氏名竝ニ住所
第六 最低地競賣價額
第七 競落期日ノ場所及ヒ日時
第八 執行記錄ヲ閱覽シ得ヘキ場所
第九 登記簿ニ記入ヲ要セサル不動產上權利ヲ有スル者其債權ヲ申出ツ可キ旨
第十 利害關係人競賣期日ニ出頭ス可キ旨
第六百五十九條 競賣期日ハ公吿ノ日ヨリ少ナクトモ十四日ノ後タル可シ
此期日ハ裁判所ノ意見ヲ以テ裁判所內又ハ其他ノ場所ニ於テ執達吏ヲシテ之ヲ開カシム
第六百六十條 競落期日ハ競賣期日ヨリ七日ヲ過クルコトヲ得ス
此期日ハ裁判所ニ於テ之ヲ開ク
第六百六十一條 競賣期日ノ公吿ハ左ノ箇所ニ揭示シテ之ヲ爲ス
第一 裁判所ノ揭示板
第二 不動產所在地ノ市町村ノ揭示板
此他公吿ハ裁判所ノ意見ニ從ヒ一箇又ハ數箇ノ新聞紙ニ揭載スルコトヲ得
第六百六十二條 最低競賣價額ヲ除ク外本款ニ揭ケタル賣却條件ノ變更ハ利害關係人ノ合意アルトキニ限リ之ヲ許ス但此合意ハ競賣期日ニ至ルマテ之ヲ爲スコトヲ得
第六百六十三條 競賣期日ヲ開キタル後執達吏ハ執行記錄ヲ各人ノ閱覽ニ供シ又特別ノ賣却條件アルトキハ之ヲ吿知シ且競買價額申出ヲ催吿ス可シ
第六百六十四條 利害關係人カ或ル競買人ヨリ保證ヲ立テシメンコトヲ申立ツルトキハ其競買人カ保證トシテ競買價額十分ノ一ニ當ル金額ヲ現金又ハ有價證券ヲ以テ直チニ執達吏ニ預クルトキニ非サレハ其競買ヲ許サス
右申立ハ競買價額ノ申出アリタル後直チニ之ヲ述フルコトヲ要ス其申立ハ同一ナル競買人ノ其後ノ競買ニ付テモ亦效力アリ
第六百六十五條 競買ヲ許サレタル各競買人ハ更ニ高價ノ競買ノ許アルマテ其申出テタル價額ニ付キ拘束ヲ受クルモノトス
競賣ハ競買價額ヲ申出ツ可キ催吿後滿一時間ヲ過クルニ非サレハ之ヲ終局スルコトヲ得ス
第六百六十六條 執達吏ハ最高價競買人ノ氏名及ヒ其價額ヲ呼上ケタル後競賣ノ終局ヲ吿知ス可シ
他ノ各競買人ハ右ノ吿知ニ因リ其競買ノ責務ヲ免カレ且預ケタル保證アルトキハ卽時ニ其返還ヲ求ムル權利アリ
第六百六十七條 競賣ニ付キ作ル可キ調書ニハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 不動產ノ表示
第二 差押債權者ノ表示
第三 執行記錄ヲ各人ノ閱覽ニ供シタルコト又特別賣却條件アルトキハ之ヲ吿知シタルコト
第四 競買價額ノ申出ヲ催吿シタル日時
第五 總テノ競買價額竝ニ其申出人ノ氏名、住所又ハ許ス可キ競買ノ申出ナキコト
第六 競賣ノ終局ヲ吿知シタル日時
第七 申立ニ因リ競買ノ爲メ保證ヲ立テタルコト又ハ申立アルモ保證ヲ立テサル爲メ其競買ヲ許ササルコト
第八 最高價競買人ノ氏名及ヒ其價額ヲ呼上ケタルコト
最高價競買人及ヒ出頭シタル利害關係人ハ調書ニ署名捺印ス可シ若シ此等ノ者調書ノ作成前ニ退席シタルトキハ其旨ヲ附記ス可シ
競買ノ保證ノ爲メ預リタル金錢又ハ有價證券ヲ返還シタルトキハ執達吏ハ受取證ヲ取リ之ヲ調書ニ添附ス可シ
第六百六十八條 執達吏ハ調書及ヒ總テ競買ノ保證ノ爲メ預リタル金錢又ハ有價證券ニシテ返還セサルモノハ三日內ニ裁判所書記ニ之ヲ渡ス可シ
第六百六十九條 最高價競買人執行裁判所ノ所在地ニ住居ヲモ事務所ヲモ有セサルトキハ其所在地ニ假住所ヲ選定シ其旨ヲ裁判所ニ屆出ツ可シ若シ之ヲ怠リタルトキハ第百四十三條第三項ノ規定ヲ準用ス
住所ノ選定ハ執達吏ニ口述シ其調書ヲ作ラシメテ之ヲ爲スコトヲ得
第六百七十條 競賣期日ニ於テ許ス可キ競買價額ノ申出ナキトキハ第六百四十九條第一項ノ規定ヲ害セサル限リハ裁判所ハ其意見ヲ以テ最低競賣價額ヲ相當ニ低減シ新競賣期日ヲ定ム可シ若シ其期日ニ於テ仍ホ許ス可キ競買價額ノ申出ナキトキモ亦同シ
新競賣期日ハ少ナクトモ十四日ノ後タル可シ
第六百七十一條 裁判所ハ競落期日ニ出頭シタル利害關係人ニ競落ノ許可ニ付キ陳述ヲ爲サシム可シ
競落ノ許可ニ付テノ異議ハ期日ノ終ニ至ルマテニ之ヲ申立ツ可シ既ニ申立テタル異議ニ對スル陳述ニ付テモ亦同シ
第六百七十二條 競落ノ許可ニ付テノ異議ハ左ノ理由ニ基クコトヲ要ス
第一 强制執行ヲ許ス可カラサルコト又ハ執行ヲ續行ス可カラサルコト
第二 最高價競買人賣買契約ヲ取結ヒ若クハ其不動產ヲ取得スル能力ナキコト
第三 法律上ノ賣却條件ニ牴觸シテ競買ヲ爲シタルコト又ハ總テノ利害關係人ノ合意ヲ得スシテ法律上ノ賣却條件ヲ變更シタルコト
第四 競賣期日ノ公吿ニ第六百五十八條ニ揭ケタル要件ノ記載ナキコト
第五 競賣期日ノ公吿ハ法律上規定シタル方法ニ依リテ之ヲ爲ササルコト
第六 第六百五十九條ニ規定シタル期間ヲ存セサリシコト
第七 第六百六十五條第二項及ヒ第六百六十六條第一項ノ規定ニ違背シタルコト
第八 第六百六十四條ノ規定ニ違背シ最高價競買人ナリト呼上ケタルコト
第六百七十三條 異議ハ他ノ利害關係人ノ權利ニ關スル理由ニ基テハ之ヲ許サス
第六百七十四條 裁判所ハ異議ノ申立ヲ正當トスルトキハ競落ヲ許サス
第六百七十二條第一號乃至第八號ニ揭ケタル事項ノ一アルトキハ職權ヲ以テモ競落ヲ許サス但第一號ノ場合ニ於テハ競賣シタル不動產カ讓渡スコトヲ得サルモノナルトキ又ハ競賣手續ノ停止ヲ爲シタルトキニ限リ第二號ノ場合ニ於テハ能力若クハ資格ノ欠缺カ除去セラレサルトキニ限リ第三號ノ場合ニ於テハ利害關係人手續ノ續行ニ付キ承認セサルトキニ限ル
第六百七十五條 數箇ノ不動產ヲ競賣ニ付シタル場合ニ於テ或ル不動產ノ賣得金ヲ以テ各債權者ニ辨濟ヲ爲シ及ヒ强制執行ノ費用ヲ償フニ足ル可キトキハ他ノ不動產ニ付テハ競落ヲ許サス
此場合ニ於テ債務者ハ其不動產中賣却ス可キモノヲ指定スルコトヲ得
第六百七十六條 第六百七十二條及ヒ第六百七十四條ノ規定ニ從ヒ全ク競落ヲ許ササル場合ニ於テ更ニ競賣ヲ許ス可キトキハ職權ヲ以テ新競賣期日ヲ定ム可シ
新競賣期日ハ少ナクトモ十四日ノ後タル可シ
第六百七十七條 前條ノ規定ニ從ヒテ新競賣期日ヲ定ムル場合ノ外競落ヲ許シ又ハ許ササル決定ノ言渡ヲ爲ス可シ
競落期日ノ調書ニ付テハ第百二十九條乃至第百三十二條及ヒ第百三十四條ノ規定ヲ準用ス
第六百七十八條 競賣期日ト競落期日トノ間ニ天災其他ノ事變ニ因リ不動產カ著シク毀損シタルトキハ最高價競買人タル呼上ヲ受ケタル者ハ其競買ヲ取消ス權利アリ其毀損ノ著シキヤ否ヤハ裁判所事情ヲ斟酌シテ之ヲ定ム
第六百七十九條 競落ヲ許ス決定ニハ競賣ヲ爲シタル不動產、競落人及ヒ競落ヲ許シタル競買價額ヲ揭ケ又特別ノ賣却條件ヲ以テ競落ヲ爲シタルトキハ其條件ヲモ揭ク可シ
右決定ハ之ヲ言渡ス外尙ホ裁判所ノ揭示板ニ揭示シテ公吿ス可シ
第六百八十條 利害關係人ハ競落ノ許否ニ付テノ決定ニ因リ損失ヲ被ムル可キ場合ニ於テハ其決定ニ對シ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
競落ヲ許ス可キ理由ナキコト又ハ決定ニ揭ケタル以外ノ條件ヲ以テ許ス可キコトヲ主張スル競落人又ハ競落ヲ求メ之ヲ許ス可キコトヲ主張スル競買人モ亦卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
右抗吿ハ執行停止ノ效力ヲ有ス
第二項ノ場合ニ於テ競落ヲ求メタル競買人ハ其申出テタル價額ニ付キ拘束ヲ受クルモノトス
第六百八十一條 競落ヲ許ササル決定ニ對スル抗吿ハ此法律ニ揭クル總テノ不許ノ原因ナキコトヲ理由トスルトキニ限リ之ヲ爲スコトヲ得
競落ヲ許シタル決定ニ對スル抗吿ハ此法律ニ揭クル競落ノ許可ニ對スル異議ノ原因ノ一ヲ理由トスルトキ又ハ競落決定カ競落期日ノ調書ノ旨趣ニ牴觸シタルコトヲ理由トスルトキニ限リ之ヲ爲スコトヲ得
取消ノ訴若クハ原狀囘復ノ訴ノ要件ヲ理由トスル抗吿ハ前二項ノ規定ニ依リ妨ケラルルコト無シ
第六百八十二條 抗吿裁判所ハ必要ナル場合ニ於テハ反對陳述ヲ爲サシムル爲メ抗吿人ノ相手方ヲ定ム可シ
一ノ決定ニ關スル數箇ノ抗吿ハ互ニ之ヲ併合ス可シ
第六百七十三條及ヒ第六百七十四條ノ規定ハ抗吿審ニモ亦之ヲ準用ス
第六百八十三條 執行裁判所ノ決定ヲ變更シ又ハ廢棄シタル抗吿裁判所ノ裁判ハ執行裁判所之ヲ裁判所ノ揭示板ニ揭示シテ公吿ス可シ
第六百八十四條 競落ヲ許ササル決定確定シタルトキハ競落人及ヒ競落ヲ求メタル競買人ハ其競買ノ責務ヲ免カル
第六百八十五條 第六百七十八條ノ場合ニ於テ競買取消ノ爲メ競落ヲ許ササルトキハ第六百五十五條乃至第六百五十七條ノ規定ヲ準用ス
第六百八十六條 競落人ハ競落ヲ許ス決定ニ因リテ不動產ノ所有權ヲ取得スルモノトス
第六百八十七條 競落人ハ代金ノ全額ヲ支拂ヒタル後ニ非サレハ不動產ノ引渡ヲ求ムルコトヲ得ス
競落人若クハ債權者競落ヲ許ス決定アリタル後引渡アルマテ管理人ヲシテ不動產ヲ管理セシメンコトヲ申立テタルトキハ裁判所ハ之ヲ命ス可シ
債務者カ引渡ヲ拒ミタルトキハ競落人若クハ債權者ノ申立ニ因リ裁判所ハ執達吏ヲシテ債務者ノ占有ヲ解キ其不動產ヲ管理人ニ引渡サシム可シ
第六百八十八條 競落人カ代金支拂期日ニ其義務ヲ完全ニ履行セサルトキハ裁判所ハ職權ヲ以テ不動產ノ再競賣ヲ命ス可シ
最初ノ競賣ノ爲ニ定メタル最低競賣價額其他賣却條件ハ再競賣ノ手續ニモ亦之ヲ適用ス
再競賣期日ハ少ナクトモ十四日ノ後タル可シ
競落人カ再競賣期日ノ三日前マテニ買入代金及ヒ手續ノ費用ヲ支拂ヒタルトキハ再競賣手續ヲ取消ス可シ
再競賣ヲ爲ストキハ前ノ競落人ハ競買ニ加ハルコトヲ許サス且再度ノ競落代價カ最初ノ競落代價ヨリ低キトキハ不足ノ額及ヒ手續ノ費用ヲ負擔シ其高キトキハ剩餘ノ額ヲ請求スルコトヲ得ス
第六百八十九條 共有物持分ノ强制競賣ニ付テハ債權者ノ債權ノ爲メ債務者ノ持分ニ付キ强制競賣ノ申立アリタルコトヲ登記簿ニ記入ス但他ノ共有者ニハ其强制競賣ノ申立ヲ通知ス可シ
最低競賣價額ハ共有物全部ノ評價額ニ基キ債務者ノ持分ニ付キ之ヲ定ム可シ
第六百九十條 競賣申立カ競落ヲ許スコト無クシテ完結シタルトキハ裁判所ハ第六百五十一條ノ規定ニ從ヒテ爲シタル差押記入ノ抹消ヲ登記判事ニ囑託ス可シ
第六百九十一條 競落ヲ許ス決定確定スルトキハ賣却代金カ配當ニ與カル各債權者ヲ滿足セシムルニ足ラサル場合ニ於テハ民法、商法及ヒ特別法ニ從ヒテ之ヲ配當ス可シ
第六百九十二條 各債權者ハ競落期日マテニ其債權ノ元金、利息、費用其他附帶ノ債權ノ計算書ヲ差出ス可シ
前項ノ規定ニ從ハサル債權者ニ付テハ第六百二十八條第二項ノ規定ヲ準用ス
第六百九十三條 代金ノ支拂及ヒ配當ハ競落ヲ許ス決定ノ確定後ニ裁判所カ職權ヲ以テ定ムル期日ニ於テ之ヲ爲ス
此期日ニハ利害關係人、執行力アル正本ニ因ラスシテ配當ヲ要求スル債權者及ヒ競落人ヲ呼出ス可シ
第六百九十四條 期日ニ於テハ先ツ配當ス可キ不動產ノ賣却代金ノ幾許ナルヤヲ定ム可シ
左ノモノヲ賣却代金トス
第一 代金
第二 不動產カ果實其他金錢ニ見積ルコトヲ得ヘキ利益ヲ生スル場合ニ於テハ競落決定言渡ヨリ代金支拂マテノ利息
代金支拂ハ裁判所ニ之ヲ爲ス可シ
最高競買價額ノ保證ノ爲メ預リタル金額ハ代金ニ之ヲ算入ス
第六百九十五條 裁判所ハ出頭シタル利害關係人及ヒ執行力アル正本ニ因ラスシテ配當ヲ要求スル債權者ヲ訊問シテ配當表ヲ確定ス可シ
第六百九十六條 配當表ニハ賣却代金各債權者ノ債權ノ元金、利息、費用及ヒ配當ノ順位竝ニ配當ノ割合ヲ記載ス可シ
若シ出頭シタル總テノ利害關係人及ヒ執行力アル正本ニ因ラスシテ配當ヲ要求スル債權者一致シタルトキハ其一致ニ基キ配當表ヲ作ル可シ
第六百九十七條 配當表ニ對スル異議ノ完結及ヒ配當表ノ實施ニ付テハ第六百三十條以下ノ規定ヲ準用ス但以下數條ニ於テ別段ノ規定ヲ設ケタルモノハ此限ニ在ラス
第六百九十八條 期日ニ出頭シタル債務者ハ各債權者ノ債權ニ對シ又ハ其債權ノ爲メ主張スル順位ニ對シ異議ヲ申立ツル權利アリ
出頭シタル各債權者ハ自己ノ利害ニ關シテハ他ノ債權者ニ對シ前項ト同一ノ權利アリ
執行スルヲ得ヘキ債權ニ對スル債務者ノ異議ハ第五百四十五條、第五百四十七條及ヒ第五百四十八條ノ規定ニ從ヒテ之ヲ完結ス
第六百九十九條 競落人ハ賣却條件ニ因リ不動產ノ負擔ヲ引受クル外配當表ノ實施ニ際シ買入代金ノ額ニ滿ツルヲ限トシ關係債權者ノ承諾ヲ得テ買入代金ノ支拂ニ換ヘ債務ヲ引受クルコトヲ得若シ債權者競落人ナルトキハ其債權ノ配當額カ買入代金ノ額ニ滿ツル限リハ買入代金トシテ之ヲ計算スルニ因リテ消滅ス然レトモ引受ク可キ債務又ハ計算ス可キ競落人ノ債權ニ對シ適當ナル異議アルトキハ之ニ相當スル代金ヲ支拂ヒ又ハ保證ヲ立ツ可シ
第七百條 配當表ヲ實施シタル後裁判所ハ配當調書及ヒ競落決定ノ正本ヲ登記判事ニ送付シテ左ノ諸件ヲ囑託ス可シ
第一 競落人ノ所有權ノ登記
第二 競落人ノ引受ケサル不動產上負擔記入ノ抹消
第三 第六百五十一條ノ規定ニ從ヒ爲シタル記入ノ抹消
右登記及ヒ抹消ニ關スル總テノ費用ハ競落人之ヲ負擔ス可シ
第七百一條 數多ノ差押債權者ノ爲メ同時ニ爲ス可キ不動產ノ競賣手續ニ付テハ前數條ノ規定ヲ準用ス
第七百二條 裁判所ハ競賣期日ノ公吿前利害關係人ノ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ競賣ニ換ヘテ入札拂ヲ命スルコトヲ得但入札拂ニ付テハ以下數條ニ於テ別段ノ規定ナキモノハ前數條ノ規定ヲ準用ス
第七百三條 入札ハ入札期日ニ於テ執達吏ニ之ヲ差出ス可シ
入札ニハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 入札人ノ氏名及ヒ住所
第二 不動產ノ表示
第三 入札價額
第七百四條 執達吏ハ入札人ノ面前ニ於テ入札ヲ開封シ之ヲ朗讀ス可シ
二人以上同價額ノ入札アルトキハ執達吏ハ其者ヲシテ追加ノ入札ヲ爲サシメ最高價入札人ヲ定ム
一定ノ金額ヲ以テ入札價額ヲ表セスシテ他ノ入札價額ニ對スル比例ヲ以テ價額ヲ表シタル入札ハ之ヲ許サス
第七百五條 最高價入札人タル呼上ヲ受ケタル者第六百六十四條ノ規定ニ從ヒ保證ヲ立ツ可キ求ヲ受クルモ之ヲ立テサルトキハ其次位ノ入札人ヲ以テ最高價入札人ト定ム但此場合ニ於テハ最初呼上ヲ受ケタル者ハ其入札價額ト次位ノ入札價額トノ差金ヲ負擔スル義務アリ
第三款 强制管理
第七百六條 强制管理ニ付テハ第六百四十二條、第六百四十三條、第六百四十四條第一項第三項及ヒ第六百五十一條乃至第六百五十四條ノ規定ヲ準用ス
不動產カ債權者ノ債權ニ付キ不動產上ノ義務ヲ負フタル場合ニ於テハ第六百四十三條第一號第二號ニ依リ提出ス可キ證書ハ不動產ヲ債務者カ占有スルコトヲ疏明スル證書ヲ以テ足ル
第七百七條 裁判所ハ强制管理開始ノ決定ニ於テ債務者カ管理人ノ事務ニ干涉スルコト及ヒ不動產ノ收益ニ付キ處分スルコトヲ禁シ又不動產ノ收益ノ給付ヲ爲ス可キ第三者アルトキハ其第三者ニ其後ノ給付ヲ管理人ニ爲ス可キコトヲ命ス可シ
既ニ收穫シ若クハ收穫ス可ク又ハ期限ノ到來シ若クハ到來ス可キ果實ハ收益ニ屬ス
開始決定ハ第三者ニ對シテハ之ヲ送達スルニ因リ其效力ヲ生ス此送達ハ職權ヲ以テ之ヲ爲ス
第七百八條 裁判所ハ强制管理開始ノ決定ヲ爲シタル不動產ニ付キ强制管理ノ申立アルモ更ニ開始決定ヲ爲スコトヲ得ス
右申立ハ執行記錄ニ添附スルニ依リ配當要求ノ效力ヲ生シ又既ニ開始シタル强制管理ノ取消ト爲リタルトキハ開始決定ヲ受ケタル效力ヲ生ス
假差押ノ命令アリタル不動產ニ付テハ本條ノ規定ヲ適用セス
第七百九條 配當要求ハ執行力アル正本ニ因リ且裁判所ノ所在地ニ住居ヲモ事務所ヲモ有セサル者ハ假住所ヲ選定シテ執行裁判所ニ之ヲ爲ス可シ
第七百十條 執行裁判所ハ前二條ノ申立及ヒ要求アリタルコトヲ債權者、債務者及ヒ管理人ニ通知ス可シ
第七百十一條 管理人ハ裁判所之ヲ任命ス但債權者ハ適當ノ人ヲ推薦スルコトヲ得
管理人ハ管理及ヒ收益ノ爲メ自ラ不動產ヲ占有スル權ヲ有ス此場合ニ於テ抵抗ヲ受クルトキハ執達吏ヲ立會ハシムルコトヲ得
管理人ノ任命ハ債務者ニ代リ第三者ノ給付ス可キ收益ヲ取立ツル權ヲ授與スルモノトス
第七百十二條 裁判所ハ債權者及ヒ債務者ヲ審訊シタル後又適當トスル場合ニ於テハ鑑定人ヲ立會ハシメタル上管理人ニ管理ニ關シ必要ナル指揮ヲ爲シ又管理人ニ與フ可キ報酬ヲ定メ且管理人ノ業務施行ヲ監督ス可シ
裁判所ハ管理人ニ保證ヲ立テシメ又ハ貳拾圓以下ノ過料ヲ言渡シ又ハ其職ヲ免スルコトヲ得
第七百十三條 第三者不動產ニ付キ强制管理ヲ許スコトヲ妨クル權利ヲ主張スルトキハ第五百四十九條ノ規定ヲ準用ス
第七百十四條 管理人ハ直チニ不動產ニ付キ得タル收益ヨリ其不動產ノ負擔ニ係ル租稅其他ノ公課ヲ控除シタル後別段ノ手續ヲ要セスシテ管理ノ費用ヲ辨濟シ其殘額ノ配當ニ付キ債權者間ニ協議調ハサルトキハ其旨ヲ裁判所ニ屆出ツ可シ
前項ノ屆出アリタルトキハ裁判所ハ第六百九十一條、第六百九十六條乃至第六百九十八條ノ規定ヲ準用シテ配當表ヲ作リ其配當表ニ基キ管理人ヲシテ債權者ニ支拂ヲ爲サシム可シ
第七百十五條 管理人ハ每年及ヒ其業務施行ノ終了後各債權者、債務者及ヒ裁判所ニ計算書ヲ差出ス可シ
各債權者及ヒ債務者ハ計算書ノ送達アリタルヨリ七日ノ期間內ニ執行裁判所ニ異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得
右期間內ニ異議ノ申立ナキトキハ計算ニ付キ全ク異議ナク且管理人ノ卸任ヲ承諾シタルモノト看做ス
異議ノ申立アルトキハ裁判所ハ管理人ヲ審訊シタル後之ヲ裁判ス可シ若シ異議ノ申立ナク又ハ申立テタル異議ヲ完結シタルトキハ裁判所ハ管理人ヲシテ卸任セシム可シ
第七百十六條 强制管理ノ取消ハ裁判所ノ決定ヲ以テ之ヲ爲ス
此取消ハ各債權者不動產ノ收益ヲ以テ辨濟ヲ受ケタルトキハ職權ヲ以テ之ヲ爲ス
若シ管理續行ノ爲メ特別ノ費用ヲ要スルトキ債權者カ必要ナル金額ヲ豫納セサルニ於テハ裁判所ハ强制管理ノ取消ヲ命スルコトヲ得
裁判所ハ右ノ取消ヲ決定スル際登記判事ニ强制管理ニ關スル記入ノ抹消ヲ囑託ス可シ
第三節 船舶ニ對スル强制執行
第七百十七條 商船其他ノ海船ニ對スル强制執行ハ不動產ノ强制競賣ニ關スル規定ニ從ヒテ之ヲ爲ス但事物ノ性質ニ因リテ差異ノ顯ハルルトキ又ハ以下數條ニ於テ別段ノ規定ヲ設ケタルトキハ此限ニ在ラス
端舟其他㯭櫂ノミヲ以テ運轉シ又ハ主トシテ㯭櫂ヲ以テ運轉スル舟ニハ本節ノ規定ヲ適用セス
第七百十八條 船舶ノ强制競賣ニ付テハ船舶カ差押ノ當時碇泊スル港ノ區裁判所ヲ以テ管轄執行裁判所トス
第七百十九條 船舶ハ執行手續中差押ノ港ニ之ヲ碇泊セシム可シ然レトモ商業上利益ノ爲メ適當トスル場合ニ於テハ裁判所ハ總テノ利害關係人ノ中立ニ因リ航行ヲ許スコトヲ得
第七百二十條 强制競賣ニ付テノ申立ニハ左ノ證書ヲ添附ス可シ
第一 債務者カ所有者ナル場合ニ於テハ其所有者トシテ船舶ヲ占有スルコト又船長ナル場合ニ於テハ船長トシテ船舶ヲ指揮スルコトヲ疏明スルニ足ル可キ證書
第二 船舶カ船舶登記簿ニ登記アル場合ニ於テハ其船舶ニ關スル有效ナル各登記事項ヲ包含シタル登記簿ノ抄本
債權者ハ公簿ヲ主管スル官廳カ遠隔ノ地ニ在ルトキハ第二號ノ抄本ノ求アランコトヲ執行裁判所ニ申立ツルコトヲ得
第七百二十一條 裁判所ハ債權者ノ申立ニ因リ船舶ノ監守及ヒ保存ノ爲メ必要ナル處分ヲ爲サシム可シ
此處分ヲ爲シタルトキハ開始決定ノ送達前ト雖モ差押ノ效力ヲ生ス
若シ此處分ヲ續行スル爲メ債權者カ必要ナル金額ヲ豫納セサルトキハ裁判所ハ之ヲ取消スコトヲ得
第七百二十二條 船長ニ對シ爲シタル判決ニ基キ船舶債權者ノ爲メ船舶ノ差押ヲ爲ストキハ其差押ハ所有者ニ對シテモ效力アリ此場合ニ於テハ所有者モ亦利害關係人トス
差押後所有者若クハ船長ノ變更アルモ手續ノ續行ヲ妨ケス
差押後新ニ船長ト爲リタル者ハ之ヲ利害關係人トス此場合ニ於テハ前船長ハ其關係人タル責務ヲ免カル
第七百二十三條 船舶カ差押ノ當時其裁判所管轄內ニ存セサルコトノ顯ハルルトキハ其手續ヲ取消ス可シ
第七百二十四條 競賣期日ノ公吿ニハ第六百五十八條第一號ニ揭ケタル旨趣ニ換ヘテ船舶ノ表示及ヒ其碇泊ノ場所ヲ揭ク可シ
第七百二十五條 定繫港ノ區裁判所管轄外ニ於テ差押ヲ爲シタルトキハ執行裁判所ハ競賣期日ノ公吿ヲ定繫港ノ區裁判所ニ送付シ其裁判所ノ揭示板ニ揭示ス可キコトヲ囑託ス可シ
第七百二十六條 船舶ノ股分ニ對スル强制執行ハ第六百二十五條ノ規定ニ從ヒテ之ヲ爲ス其執行ニ付テハ定繫港ノ區裁判所之ヲ管轄ス
第七百二十七條 債權者ハ差押命令ノ申請ニ債務者カ船舶ノ股分ニ付キ所有權ヲ有スルコトヲ證ス可キ船舶登記簿ノ抄本又ハ信用ス可キ證明書ヲ添附ス可シ
差押命令ハ債務者ノ外船舶管理人ニモ之ヲ送達ス可シ
差押ハ此命令ヲ船舶管理人ニ送達スルニ因リ債務者ニ送達スルト同一ノ效力ヲ生ス
第七百二十八條 船舶股分ノ競賣代金ノ配當ニ付テハ第六百二十六條以下ノ規定ヲ準用ス
第七百二十九條 外國ノ船舶ヲ差押ヘタルトキ又ハ登記簿ニ登記セサル船舶ヲ差押ヘタルトキハ登記簿ニ記入ス可キ手續ニ關スル規定ヲ適用セス
第三章 金錢ノ支拂ヲ目的トセサル債權ニ付テノ强制執行
第七百三十條 債務者カ特定ノ動產又ハ代替物ノ一定ノ數量ヲ引渡ス可キトキハ執達吏ハ之ヲ債務者ヨリ取上ケテ債權者ニ引渡ス可シ
第七百三十一條 債務者カ不動產又ハ人ノ住居スル船舶ヲ引渡シ又ハ明渡ス可キトキハ執達吏ハ債務者ノ占有ヲ解キ債權者ニ其占有ヲ得セシム可シ
此强制執行ハ債權者又ハ其代理人カ受取ノ爲メ出頭シタルトキニ限リ之ヲ爲スコトヲ得
强制執行ノ目的物ニ非サル動產ハ執達吏之ヲ取除キテ債務者ニ引渡ス可シ若シ債務者不在ナルトキハ其代理人又ハ債務者ノ成長シタル家族若クハ雇人ニ之ヲ引渡ス可シ
債務者及ヒ前項ニ揭ケタル者不在ナルトキハ執達吏ハ右ノ動產ヲ債務者ノ費用ニテ保管ニ付ス可シ
債務者カ其動產ノ受取ヲ怠ルトキハ執達吏ハ執行裁判所ノ許可ヲ得テ差押物ノ競賣ニ關スル規定ニ從ヒテ之ヲ賣却シ其費用ヲ控除シタル後其代金ヲ供託ス可シ
第七百三十二條 引渡ス可キ物カ第三者ノ手中ニ存スルトキハ債務者ノ引渡ノ請求ハ申立ニ因リ金錢債權ノ差押ニ關スル規定ニ從ヒテ之ヲ債權者ニ轉付ス可シ
第七百三十三條 債務者カ爲ス可キ行爲ヲ爲ササル場合ニ於テ第三者之ヲ爲シ得ヘキモノナルトキハ第一審ノ受訴裁判所ハ申立ニ因リ民法(財產編第三百八十二條第三項第四項)ノ規定ニ從ヒテ決定ヲ爲ス
債權者ハ同時ニ其行爲ヲ爲スニ因リ生ス可キ費用ヲ豫メ債務者ニ支拂ヲ爲サシムル決定ノ宣言アランコトヲ申立ツルコトヲ得但其行爲ヲ爲スニ因リ此ヨリ多額ノ費用ヲ生スルトキ後日其請求ヲ爲ス權利ヲ妨ケス
第七百三十四條 債務者カ其意思ノミニ因リ爲シ得ヘキ行爲ニシテ第三者之ヲ爲シ得ヘカラサルモノナルトキハ第一審ノ受訴裁判所ハ申立ニ因リ民法(財產編第三百八十六條第三項)ノ規定ニ從ヒテ決定ヲ爲ス
第七百三十五條 前二條ノ決定ハ口頭辯論ヲ經スシテ之ヲ爲スコトヲ得但決定前債務者ヲ審訊ス可シ
第七百三十六條 債務者カ權利關係ノ成立ヲ認諾ス可キコト又ハ其他ノ意思ノ陳述ヲ爲ス可キコトノ判決ヲ受ケタルトキハ其判決ノ確定ヲ以テ認諾又ハ意思ノ陳述ヲ爲シタルモノト看做ス反對給付ノ有リタル後認諾又ハ意思ノ陳述ヲ爲ス可キ場合ニ於テハ第五百十八條及ヒ第五百二十條ノ規定ニ從ヒ執行力アル正本ヲ付與シタルトキ其效力ヲ生ス
第四章 假差押及ヒ假處分
第七百三十七條 假差押ハ金錢ノ債權又ハ金錢ノ債權ニ換フルコトヲ得ヘキ請求ニ付キ動產又ハ不動產ニ對スル强制執行ヲ保全スル爲メ之ヲ爲スコトヲ得
假差押ハ未タ期限ニ至ラサル請求ニ付テモ亦之ヲ爲スコトヲ得
第七百三十八條 假差押ハ之ヲ爲ササレハ判決ノ執行ヲ爲スコト能ハス又ハ判決ノ執行ヲ爲スニ著シキ困難ヲ生スル恐アルトキ殊ニ外國ニ於テ判決ノ執行ヲ爲スニ至ル可キトキハ之ヲ爲スコトヲ得
第七百三十九條 假差押ノ命令ハ假ニ差押フ可キ物ノ所在地ヲ管轄スル區裁判所又ハ本案ノ管轄裁判所之ヲ管轄ス
第七百四十條 假差押ノ申請ニハ左ノ諸件ヲ揭ク可シ
第一 請求ノ表示若シ其請求カ一定ノ金額ニ係ラサルトキハ其價額
第二 假差押ノ理由タル事實ノ表示
請求及ヒ假差押ノ理由ハ之ヲ疏明ス可シ
申請ハ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
第七百四十一條 假差押ノ申請ニ付テノ裁判ハ口頭辯論ヲ經スシテ之ヲ爲スコトヲ得
請求又ハ假差押ノ理由ヲ疏明セサルトキト雖モ假差押ニ因リ債務者ニ生ス可キ損害ノ爲メ債權者カ裁判所ノ自由ナル意見ヲ以テ定ムル保證ヲ立テタルトキハ裁判所ハ假差押ヲ命スルコトヲ得
又請求及ヒ假差押ノ理由ヲ疏明シタルトキト雖モ裁判所ハ保證ヲ立テシメ假差押ヲ命スルコトヲ得
保證ヲ立テタルトキハ其保證ヲ立テタルコト及ヒ如何ナル方法ヲ以テ之ヲ立テタルコトヲ假差押ノ命令ニ記載ス可シ
第七百四十二條 假差押ノ申請ニ付テノ裁判ハ口頭辯論ヲ爲ス場合ニ於テハ終局判決ヲ以テ之ヲ爲シ其他ノ場合ニ於テハ決定ヲ以テ之ヲ爲ス
假差押ノ申請ヲ却下シ又ハ保證ヲ立テシムル裁判ハ債務者ニ之ヲ通知スルコトヲ要セス
第七百四十三條 假差押ノ命令ニハ假差押ノ執行ヲ停止スルコトヲ得ル爲メ又ハ執行シタル假差押ヲ取消スコトヲ得ル爲ニ債務者ヨリ供託ス可キ金額ヲ記載ス可シ
第七百四十四條 債務者ハ假差押決定ニ對シ異議ヲ申立ツルコトヲ得
此異議ニ付テハ假差押ノ取消又ハ變更ヲ申立ツル理由ヲ開示ス可シ
異議ノ申立ハ假差押ノ執行ヲ停止セス
第七百四十五條 異議ノ申立アリタルトキハ裁判所ハ口頭辯論ノ爲メ當事者ヲ呼出ス可シ
裁判所ハ終局判決ヲ以テ假差押ノ全部若クハ一分ノ認可、變更又ハ取消ヲ言渡シ又自由ナル意見ヲ以テ定ムル保證ヲ立ツ可キコトノ條件ヲ附シテ之ヲ言渡スコトヲ得
第七百四十六條 本案ノ未タ繫屬セサルトキハ假差押裁判所ハ債務者ノ申立ニ因リ口頭辯論ヲ經スシテ相當ニ定ムル期間內ニ訴ヲ起ス可キコトヲ債權者ニ命ス可シ
此期間ヲ徒過シタル後ハ債務者ノ申立ニ因リ終局判決ヲ以テ假差押ヲ取消ス可シ
第七百四十七條 債務者ハ假差押ノ理由消滅シ其他事情ノ變更シタルトキ又ハ裁判所ノ自由ナル意見ヲ以テ定ム可キ保證ヲ立テントノ提供ヲ爲シタルトキハ假差押ノ認可後ト雖モ假差押ノ取消ヲ申立ツルコトヲ得
此申立ニ付テハ終局判決ヲ以テ之ヲ裁判ス其裁判ハ假差押ヲ命シタル裁判所又本案カ既ニ繫屬シタルトキハ本案ノ裁判所之ヲ爲ス
第七百四十八條 假差押ノ執行ニ付テハ强制執行ニ關スル規定ヲ準用ス但以下數條ニ於テ差異ノ生スルトキハ此限ニ在ラス
第七百四十九條 假差押ノ命令ニハ其命令ヲ發シタル後債權者又ハ債務者ニ於テ承繼アル場合ニ限リ執行文ヲ附記スルコトヲ要ス
假差押命令ノ執行ハ命令ヲ言渡シ又ハ申立人ニ命令ヲ送達シタルヨリ十四日ノ期間ヲ徒過スルトキハ之ヲ爲スコトヲ許サス
右執行ハ債務者ニ差押命令ヲ送達スル前ト雖モ之ヲ爲スコトヲ得
第七百五十條 動產ニ對スル假差押ノ執行ハ各差押ト同一ノ原則ニ從ヒテ之ヲ爲ス
債權ノ假差押ニ付テハ其命令ヲ發シタル裁判所ヲ以テ管轄執行裁判所トス
債權ノ假差押ニ付テハ第三債務者ニ對シ債務者ニ支拂ヲ爲スコトヲ禁スル命令ノミヲ爲ス可シ
假差押ノ金錢ハ之ヲ供託ス可シ其他假差押物ノ競賣及ヒ假差押有價證券ノ換價ハ一時之ヲ爲サス然レトモ假差押物ニ著シキ價額ノ減少ヲ生スル恐アルトキ又ハ其貯藏ニ付キ不相應ナル費用ヲ生ス可キトキハ執行裁判所ハ申立ニ因リ其物ヲ競賣シ賣得金ヲ供託ス可キ旨ヲ執達吏ニ命スルコトヲ得
第七百五十一條 不動產ニ對スル假差押ノ執行ハ假差押ノ命令ヲ登記簿ニ記入スルニ因リテ之ヲ爲ス
第七百五十二條 假差押執行ノ爲メ强制管理ヲ爲ス場合ニ於テハ保全ス可キ債權ニ相當スル金額ヲ取立テ之ヲ供託ス可シ
第七百五十三條 船舶ニ對スル假差押ノ執行ハ假差押ノ當時碇泊スル港ニ碇泊セシムルコトニ因リテ之ヲ爲ス裁判所ハ債權者ノ申立ニ因リ船舶ノ監守及ヒ保存ノ爲メ必要ナル處分ヲ爲ス
第七百五十四條 假差押命令ニ於テ定メタル金額ヲ供託シタルトキハ執行裁判所ハ執行シタル假差押ヲ取消ス可シ
假差押ノ續行ニ付キ特別ノ費用ヲ要シ且之カ爲メ必要ナル金額ヲ債權者カ豫納セサルトキモ亦執行裁判所ハ假差押ノ取消ヲ命スルコトヲ得
右裁判ハ口頭辯論ヲ經スシテ之ヲ爲スコトヲ得
假差押ヲ取消ス決定ニ對シテハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
第七百五十五條 係爭物ニ關スル假處分ハ現狀ノ變更ニ因リ當事者一方ノ權利ノ實行ヲ爲スコト能ハス又ハ之ヲ爲スニ著シキ困難ヲ生スル恐アルトキ之ヲ許ス
第七百五十六條 假處分ノ命令其他ノ手續ニ付テハ假差押ノ命令及ヒ手續ニ關スル規定ヲ準用ス但以下數條ニ於テ差異ノ生スルトキハ此限ニ在ラス
第七百五十七條 假處分ノ命令ハ本案ノ管轄裁判所之ヲ管轄ス
右裁判ハ急迫ナル場合ニ於テハ口頭辯論ヲ經スシテ之ヲ爲スコトヲ得
第七百五十八條 裁判所ハ其意見ヲ以テ申立ノ目的ヲ達スルニ必要ナル處分ヲ定ム
假處分ハ保管人ヲ置キ又ハ相手方ニ行爲ヲ命シ若クハ之ヲ禁シ又ハ給付ヲ命スルコトヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
假處分ヲ以テ不動產ヲ讓渡シ又ハ抵當ト爲スコトヲ禁シタルトキハ裁判所ハ第七百五十一條ノ規定ヲ準用シテ登記簿ニ其禁止ヲ記入セシム可シ
第七百五十九條 特別ノ事情アルトキニ限リ保證ヲ立テシメテ假處分ノ取消ヲ許スコトヲ得
第七百六十條 假處分ハ爭アル權利關係ニ付キ假ノ地位ヲ定ムル爲ニモ亦之ヲ爲スコトヲ得但其處分ハ殊ニ繼續スル權利關係ニ付キ著シキ損害ヲ避ケ若クハ急迫ナル强暴ヲ防ク爲メ又ハ其他ノ理由ニ因リ之ヲ必要トスルトキニ限ル
第七百六十一條 急迫ナル場合ニ於テハ係爭物ノ所在地ヲ管轄スル區裁判所ハ假處分ノ當否ニ付テノ口頭辯論ノ爲メ本案ノ管轄裁判所ニ相手方ヲ呼出ス可キ申立ノ期間ヲ定メ假處分ヲ命スルコトヲ得
此期間ヲ徒過シタル後區裁判所ハ申立ニ因リ其命シタル假處分ヲ取消ス可シ
右裁判ハ口頭辯論ヲ經スシテ之ヲ爲スコトヲ得
第七百六十二條 本章ノ規定ニ於ケル本案ノ管轄裁判所ハ第一審裁判所トス但本案カ控訴審ニ繫屬スルトキニ限リ控訴裁判所トス
第七百六十三條 急迫ナル場合ニ於テ口頭辯論ヲ要セサルモノニ限リ裁判長ハ本章ノ申立ニ付キ裁判ヲ爲スコトヲ得
第七編 公示催吿手續
第七百六十四條 請求又ハ權利ノ屆出ヲ爲サシムル爲メノ裁判上ノ公示催吿ハ其屆出ヲ爲ササルトキハ失權ヲ生スル效力ヲ以テ法律ニ定メタル場合ニ限リ之ヲ爲スコトヲ得
公示催吿手續ハ區裁判所之ヲ管轄ス
第七百六十五條 公示催吿ノ申立ハ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
此申立ニ付テノ裁判ハ口頭辯論ヲ經スシテ之ヲ爲スコトヲ得
申立ヲ許ス可キトキハ裁判所ハ公示催吿ヲ爲ス可ク其公示催吿ニハ殊ニ左ノ諸件ヲ揭ク可シ
第一 申立人ノ表示
第二 請求又ハ權利ヲ公示催吿期日マテニ屆出ツ可キコトノ催吿
第三 屆出ヲ爲ササルニ因リ生ス可キ失權ノ表示
第四 公示催吿期日ノ指定
第七百六十六條 公示催吿ニ付テノ公吿ハ裁判所ノ揭示板ニ揭示シ及ヒ官報又ハ公報ニ揭載シテ之ヲ爲シ其他法律ニ別段ノ規定ヲ設ケサルトキハ第百五十七條第三項ノ規定ニ從ヒテ之ヲ爲ス
第七百六十七條 公示催吿ヲ官報又ハ公報ニ揭載シタル日ト公示催吿期日トノ間ニハ法律ニ別段ノ規定ヲ設ケサルトキハ少ナクトモ二个月ノ時間ヲ存スルコトヲ要ス
第七百六十八條 公示催吿期日ノ終リタル後ト雖モ除權判決前ニ屆出ヲ爲ストキハ適當ナル時間ニ之ヲ爲シタルモノト看做ス
第七百六十九條 除權判決ハ申立ニ因リテ之ヲ爲ス
右判決前ニ詳細ナル探知ヲ爲ス可キ旨ヲ命スルコトヲ得
除權判決ノ申立ヲ却下スル決定及ヒ除權判決ニ付シタル制限又ハ留保ニ對シテハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
第七百七十條 申立人ノ申立ノ理由トシテ主張シタル權利ヲ爭フコトノ屆出アリタルトキハ其事情ニ從ヒ屆出テタル權利ニ付テノ裁判確定スルマテ公示催吿手續ヲ中止シ又ハ除權判決ニ於テ屆出テタル權利ヲ留保ス可シ
第七百七十一條 申立人カ公示催吿期日ニ出頭セサルトキハ其申立ニ因リ新期日ヲ定ム可シ此申立ハ公示催吿期日ヨリ六个月ノ期間內ニ限リ之ヲ爲スコトヲ許ス
第七百七十二條 公示催吿手續ヲ完結スル爲メ新期日ヲ定メタルトキハ其期日ノ公吿ヲ爲スコトヲ要セス
第七百七十三條 裁判所ハ除權判決ノ重要ナル旨趣ヲ官報又ハ公報ニ揭載シテ公吿ヲ爲スコトヲ得
第七百七十四條 除權判決ニ對シテハ上訴ヲ爲スコトヲ得ス
除權判決ニ對シテハ左ノ場合ニ於テ申立人ニ對スル訴ヲ以テ催吿裁判所ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所ニ不服ヲ申立ツルコトヲ得
第一 法律ニ於テ公示催吿手續ヲ許ス場合ニ非サルトキ
第二 公示催吿ニ付テノ公吿ヲ爲サス又ハ法律ニ定メタル方法ヲ以テ公吿ヲ爲ササルトキ
第三 公示催吿ノ期間ヲ遵守セサルトキ
第四 判決ヲ爲ス判事カ法律ニ依リ職務ノ執行ヨリ除斥セラレタルトキ
第五 請求又ハ權利ノ屆出アリタルニ拘ハラス判決ニ於テ其屆出ヲ法律ニ從ヒ顧ミサルトキ
第六 第四百六十九條第一號乃至第五號ノ場合ニ於テ原狀囘復ノ訴ヲ許ス條件ノ存スルトキ
第七百七十五條 不服申立ノ訴ハ一个月ノ不變期間內ニ之ヲ起ス可シ此期間ハ原吿カ除權判決ヲ知リタル日ヲ以テ始マル然レトモ前條第四號及ヒ第六號ニ揭ケタル不服申立ノ理由ノ一ニ基キ訴ヲ起シ且原吿カ右ノ日ニ其理由ヲ知ラサリシ場合ニ於テハ其期間ハ不服ノ理由ノ原吿ニ知レタル日ヲ以テ始マル
除權判決ノ言渡ノ日ヨリ起算シテ五个年ノ滿了後ハ此訴ヲ起スコトヲ得ス
第七百七十六條 裁判所ハ第百二十條ノ條件ノ存セサルトキト雖モ數箇ノ公示催吿ノ併合ヲ命スルコトヲ得
第七百七十七條 盜取セラレ又ハ紛失若クハ滅失シタル手形其他商法ニ無效ト爲シ得ヘキコトヲ定メタル證書ノ無效宣言ノ爲ニ爲ス公示催吿手續ニ付テハ以下數條ノ特別規定ヲ適用ス
此規定ハ法律上公示催吿手續ヲ許ス他ノ證書ニ付キ其法律中ニ特別規定ヲ設ケサル限リハ之ヲ適用ス
第七百七十八條 無記名證券又ハ裏書ヲ以テ移轉シ得ヘク且略式裏書ヲ付シタル證書ニ付テハ最終ノ所持人公示催吿手續ヲ申立ツル權アリ
此他ノ證書ニ付テハ證書ニ因リ權利ヲ主張シ得ヘキ者此申立ヲ爲ス權アリ
第七百七十九條 公示催吿手續ハ證書ニ表示シタル履行地ノ裁判所之ヲ管轄ス若シ證書ニ其履行地ヲ表示セサルトキハ發行人カ普通裁判籍ヲ有スル地ノ裁判所之ヲ管轄シ其裁判所ナキトキハ發行人カ發行ノ當時普通裁判籍ヲ有セシ地ノ裁判所之ヲ管轄ス
證書ヲ發行スル原因タル請求ヲ登記簿ニ記入シタルトキハ其物ノ所在地ノ裁判所ノ管轄ニ專屬ス
第七百八十條 申立人ハ申立ノ憑據トシテ左ノ手續ヲ爲ス可シ
第一 證書ノ謄本ヲ差出シ又ハ證書ノ重要ナル旨趣及ヒ證書ヲ十分ニ認知スルニ必要ナル諸件ヲ開示スルコト
第二 證書ノ盜難、紛失、滅失及ヒ公示催吿手續ヲ申立ツルコトヲ得ルノ理由タル事實ヲ疏明スルコト
第七百八十一條 公示催吿中ニ公示催吿期日マテニ權利ヲ裁判所ニ屆出テ且其證書ヲ提出ス可キ旨ヲ證書ノ所持人ニ催吿ス可ク又失權トシテ證書ノ無效宣言ヲ爲ス可キ旨ヲ戒示ス可シ
第七百八十二條 公示催吿ノ公吿ハ裁判所ノ揭示板ニ揭示シ且官報又ハ公報ニ揭載シ及ヒ新聞紙ニ三囘揭載シテ之ヲ爲ス
公示催吿裁判所ノ所在地ニ取引所アルトキハ取引所ニモ亦此公吿ヲ揭示ス可シ
第七百八十三條 公示催吿ヲ官報又ハ公報ニ揭載シタル日ト公示催吿期日トノ間ニハ少ナクトモ六个月ノ時間ヲ存スルコトヲ要ス
第七百八十四條 除權判決ニ於テハ證書ヲ無效ナリト宣言ス可シ
除權判決ノ重要ナル旨趣ハ官報又ハ公報ヲ以テ之ヲ公吿ス可シ
不服申立ノ訴ニ因リ判決ヲ以テ無效宣言ヲ取消シタルトキハ其判決ノ確定後官報又ハ公報ヲ以テ之ヲ公吿ス可シ
第七百八十五條 除權判決アリタルトキハ其申立人ハ證書ニ因リ義務ヲ負擔スル者ニ對シテ證書ニ因レル權利ヲ主張スルコトヲ得
第八編 仲裁手續
第七百八十六條 一名又ハ數名ノ仲裁人ヲシテ爭ノ判斷ヲ爲サシムル合意ハ當事者カ係爭物ニ付キ和解ヲ爲ス權利アル場合ニ限リ其效力ヲ有ス
第七百八十七條 將來ノ爭ニ關スル仲裁契約ハ一定ノ權利關係及ヒ其關係ヨリ生スル爭ニ關セサルトキハ其效力ヲ有セス
第七百八十八條 仲裁契約ニ仲裁人ノ選定ニ關スル定ナキトキハ當事者ハ各一名ノ仲裁人ヲ選定ス
第七百八十九條 當事者ノ雙方カ仲裁人ヲ選定スル權利ヲ有スルトキハ先ニ手續ヲ爲ス一方ハ書面ヲ以テ相手方ニ其選定シタル仲裁人ヲ指示シ且七日ノ期間內ニ同一ノ手續ヲ爲ス可キ旨ヲ催吿ス可シ
右期間ヲ徒過シタルトキハ管轄裁判所ハ先ニ手續ヲ爲ス一方ノ申立ニ因リ仲裁人ヲ選定ス
第七百九十條 當事者ノ一方ハ相手方ニ仲裁人選定ノ通知ヲ爲シタル後ハ相手方ニ對シテ其選定ニ覊束セラル
第七百九十一條 仲裁契約ヲ以テ選定シタルニ非サル仲裁人カ死亡シ又ハ其他ノ理由ニ因リ欠缺シ又ハ其職務ノ引受若クハ施行ヲ拒ミタルトキハ其仲裁人ヲ選定シタル當事者ハ相手方ノ催吿ニ因リ七日ノ期間內ニ他ノ仲裁人ヲ選定ス可シ此期間ヲ徒過シタルトキハ管轄裁判所ハ其催吿ヲ爲シタル者ノ申立ニ因リ仲裁人ヲ選定ス可シ
第七百九十二條 當事者ハ判事ヲ忌避スル權利アルト同一ノ理由及ヒ條件ヲ以テ仲裁人ヲ忌避スルコトヲ得
此他仲裁契約ヲ以テ選定シタルニ非サル仲裁人カ其責務ノ履行ヲ不當ニ遲延スルトキハ亦之ヲ忌避スルコトヲ得
無能力者、聾者、啞者及ヒ公權ノ剝奪又ハ停止中ノ者ハ之ヲ忌避スルコトヲ得
第七百九十三條 仲裁契約ハ當事者ノ合意ヲ以テ左ノ場合ノ爲メ豫定ヲ爲ササリシトキハ其效力ヲ失フ
第一 契約ニ於テ一定ノ人ヲ仲裁人ニ選定シ其仲裁人中ノ或ル人カ死亡シ又ハ其他ノ理由ニ因リ欠缺シ又ハ其職務ノ引受ヲ拒ミ又ハ仲裁人ノ取結ヒタル契約ヲ解キ又ハ其責務ノ履行ヲ不當ニ遲延シタルトキ
第二 仲裁人カ其意見ノ可否同數ナル旨ヲ當事者ニ通知シタルトキ
第七百九十四條 仲裁人ハ仲裁判斷前ニ當事者ヲ審訊シ且必要トスル限リハ爭ノ原因タル事件關係ヲ探知ス可シ
仲裁手續ニ付キ當事者ノ合意アラサル場合ニ於テハ其手續ハ仲裁人ノ意見ヲ以テ之ヲ定ム
第七百九十五條 仲裁人ハ其面前ニ任意ニ出頭スル證人及ヒ鑑定人ヲ訊問スルコトヲ得
仲裁人ハ證人又ハ鑑定人ヲシテ宣誓ヲ爲サシムル權ナシ
第七百九十六條 仲裁人ノ必要ト認ムル判斷上ノ行爲ニシテ仲裁人ノ爲スコトヲ得サルモノハ當事者ノ申立ニ因リ管轄裁判所之ヲ爲ス可シ但其申立ヲ相當ト認メタルトキニ限ル
證人又ハ鑑定人ニ供述ヲ命シタル裁判所ハ證據ヲ述フルコト又ハ鑑定ヲ爲スコトヲ拒ミタル場合ニ於テ必要ナル裁判ヲモ亦爲ス權アリ
第七百九十七條 仲裁人ハ當事者カ仲裁手續ヲ許ス可カラサルコトヲ主張スルトキ殊ニ法律上有效ナル仲裁契約ノ成立セサルコト、仲裁契約カ判斷ス可キ爭ニ關係セサルコト又ハ仲裁人カ其職務ヲ施行スル權ナキコトヲ主張スルトキト雖モ仲裁手續ヲ續行シ且仲裁判斷ヲ爲スコトヲ得
第七百九十八條 數名ノ仲裁人カ仲裁判斷ヲ爲ス可キトキハ過半數ヲ以テ其判斷ヲ爲ス可シ但仲裁契約ニ別段ノ定アルトキハ此限ニ在ラス
第七百九十九條 仲裁判斷ニハ其作リタル年月日ヲ記載シテ仲裁人之ニ署名捺印ス可シ
仲裁人ノ署名捺印シタル判斷ノ正本ハ之ヲ當事者ニ送達シ其原本ハ送達ノ證書ヲ添ヘテ管轄裁判所ノ書記課ニ之ヲ預ケ置ク可シ
第八百條 仲裁判斷ハ當事者間ニ於テ確定シタル裁判所ノ判決ト同一ノ效力ヲ有ス
第八百一條 仲裁判斷ノ取消ハ左ノ場合ニ於テ之ヲ申立ツルコトヲ得
第一 仲裁手續ヲ許ス可カラサリシトキ
第二 仲裁判斷カ法律上禁止ノ行爲ヲ爲ス可キ旨ヲ當事者ニ言渡シタルトキ
第三 當事者カ仲裁手續ニ於テ法律ノ規定ニ從ヒ代理セラレサリシトキ
第四 仲裁手續ニ於テ當事者ヲ審訊セサリシトキ
第五 仲裁判斷ニ理由ヲ付セサリシトキ
第六 第四百六十九條第一號乃至第五號ノ場合ニ於テ原狀囘復ノ訴ヲ許ス條件ノ存スルトキ
仲裁判斷ノ取消ハ當事者カ別段ノ合意ヲ爲シタルトキハ本條第四號及ヒ第五號ニ揭ケタル理由ニ因リ之ヲ爲スコトヲ得ス
第八百二條 仲裁判斷ニ因リ爲ス强制執行ハ執行判決ヲ以テ其許ス可キコトヲ言渡シタルトキニ限リ之ヲ爲スコトヲ得
右執行判決ハ仲裁判斷ノ取消ヲ申立ツルコトヲ得ヘキ理由ノ存スルトキハ之ヲ爲スコトヲ得ス
第八百三條 執行判決ヲ爲シタル後ハ仲裁判斷ノ取消ハ第八百一條第六號ニ揭ケタル理由ニ因リテノミ之ヲ申立ツルコトヲ得但當事者カ自己ノ過失ニ非スシテ前手續ニ於テ取消ノ理由ヲ主張スル能ハサリシコトヲ疏明シタルトキニ限ル
第八百四條 仲裁判斷取消ノ訴ハ前條ノ場合ニ於テハ一个月ノ不變期間內ニ之ヲ起ス可シ
右期間ハ當事者カ取消ノ理由ヲ知リタル日ヲ以テ始マル然レトモ執行判決ノ確定前ニハ始マラサルモノトス但執行判決ノ確定ト爲リタル日ヨリ起算シテ五个年ノ滿了後ハ此訴ヲ起スコトヲ許サス
仲裁判斷ヲ取消ストキハ執行判決ノ取消ヲモ亦言渡ス可シ
第八百五條 仲裁人ヲ選定シ若クハ忌避スルコト、仲裁契約ノ消滅スルコト、仲裁手續ヲ許ス可カラサルコト、仲裁判斷ヲ取消スコト又ハ執行判決ヲ爲スコトヲ目的トスル訴ニ付テハ仲裁契約ニ指定シタル區裁判所又ハ地方裁判所之ヲ管轄シ其指定ナキトキハ請求ヲ裁判上主張スル場合ニ於テ管轄ヲ有ス可キ區裁判所又ハ地方裁判所之ヲ管轄ス
前項ニ依リ管轄ヲ有スル裁判所數箇アルトキハ當事者又ハ仲裁人カ最初ニ關係セシメタル裁判所之ヲ管轄ス
朕民事訴訟法ヲ裁可シ之ヲ公布セシム此法律ハ明治二十四年四月一日ヨリ施行スヘキコトヲ命ス
御名御璽
明治二十三年三月二十七日
内閣総理大臣兼内務大臣 伯爵 山県有朋
海軍大臣 伯爵 西郷従道
司法大臣 伯爵 山田顕義
大蔵大臣 伯爵 松方正義
陸軍大臣 伯爵 大山巌
文部大臣 子爵 榎本武揚
逓信大臣 伯爵 後藤象二郎
外務大臣 子爵 青木周蔵
農商務大臣 岩村通俊
法律第二十九号
民事訴訟法目録
第一編
総則
第一章
裁判所
第一節
裁判所ノ事物ノ管轄
第二節
裁判所ノ土地ノ管轄
第三節
管轄裁判所ノ指定
第四節
裁判所ノ管轄ニ付テノ合意
第五節
裁判所職員ノ除斥及ヒ忌避
第六節
検事ノ立会
第二章
当事者
第一節
訴訟能力
第二節
共同訴訟人
第三節
第三者ノ訴訟参加
第四節
訴訟代理人及ヒ輔佐人
第五節
訴訟費用
第六節
保証
第七節
訴訟上ノ救助
第三章
訴訟手続
第一節
口頭弁論及ヒ準備書面
第二節
送達
第三節
期日及ヒ期間
第四節
懈怠ノ結果及ヒ原状回復
第五節
訴訟手続ノ中断及ヒ中止
第二編
第一審ノ訴訟手続
第一章
地方裁判所ノ訴訟手続
第一節
判決前ノ訴訟手続
第二節
判決
第三節
闕席判決
第四節
計算事件、財産分別及ヒ此ニ類スル訴訟ノ準備手続
第五節
証拠調ノ総則
第六節
人証
第七節
鑑定
第八節
書証
第九節
検証
第十節
当事者本人ノ訊問
第十一節
証拠保全
第二章
区裁判所ノ訴訟手続
第一節
通常ノ訴訟手続
第二節
督促手続
第三編
上訴
第一章
控訴
第二章
上告
第三章
抗告
第四編
再審
第五編
証書訴訟及ヒ為替訴訟
第六編
強制執行
第一章
総則
第二章
金銭ノ債権ニ付テノ強制執行
第一節
動産ニ対スル強制執行
第一款
通則
第二款
有体動産ニ対スル強制執行
第三款
債権及ヒ他ノ財産権ニ対スル強制執行
第四款
配当手続
第二節
不動産ニ対スル強制執行
第一款
通則
第二款
強制競売
第三款
強制管理
第三節
船舶ニ対スル強制執行
第三章
金銭ノ支払ヲ目的トセサル債権ニ付テノ強制執行
第四章
仮差押及ヒ仮処分
第七編
公示催告手続
第八編
仲裁手続
民事訴訟法
第一編 総則
第一章 裁判所
第一節 裁判所ノ事物ノ管轄
第一条 裁判所ノ事物ノ管轄ハ裁判所構成法ノ規定ニ従フ
第二条 訴訟物ノ価額ニ依リ管轄ノ定マルトキハ以下数条ノ規定ニ従フ
第三条 訴訟物ノ価額ハ起訴ノ日時ニ於ケル価額ニ依リ之ヲ算定ス
果実、損害賠償及ヒ訴訟費用ハ法律上相牽連スル主タル請求ニ附帯シ一ノ訴ヲ以テ請求スルトキハ之ヲ算入セス
第四条 一ノ訴ヲ以テ数箇ノ請求ヲ為ストキハ前条第二項ニ掲クルモノヲ除ク外其額ヲ合算ス
本訴ト反訴トノ訴訟物ノ価額ハ之ヲ合算セス
第五条 訴訟物ノ価額ハ左ノ方法ニ依リ之ヲ定ム
第一 債権ノ担保又ハ債権ノ担保ヲ為ス従タル物権カ訴訟物ナルトキハ其債権ノ額ニ依ル但物権ノ目的物ノ価額寡キトキハ其額ニ依ル
第二 地役カ訴訟物ナルトキハ要役地ノ地役ニ依リ得ル所ノ価額ニ依ル但地役ノ為メ承役地ノ価額ノ減シタル額カ要役地ノ地役ニ依リ得ル所ノ価額ヨリ多キトキハ其減額ニ依ル
第三 賃貸借又ハ永貸借ノ契約ノ有無又ハ其時期カ訴訟物ナルトキハ争アル時期ニ当ル借賃ノ額ニ依ル但一个年借賃ノ二十倍ノ額カ右ノ額ヨリ寡キトキハ其二十倍ノ額ニ依ル
第四 定時ノ供給又ハ収益ニ付テノ権利カ訴訟物ナルトキハ一个年収入ノ二十倍ノ額ニ依ル但収入権ノ期限定マリタルモノニ付テハ其将来ノ収入ノ総額カ二十倍ノ額ヨリ寡キトキハ其額ニ依ル
第六条 訴訟物ノ価額ハ必要ナル場合ニ於テハ第三条乃至第五条ノ規定ニ従ヒ裁判所ノ意見ヲ以テ之ヲ定ム
裁判所ハ申立ニ因リ証拠調ヲ命シ又ハ職権ヲ以テ検証若クハ鑑定ヲ命スルコトヲ得
第七条 地方裁判所ノ判決ニ対シテハ其事件カ区裁判所ノ事物ノ管轄ニ属ス可キ理由ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第八条 事物ノ管轄ニ付キ区裁判所又ハ地方裁判所カ管轄違ナリト宣言シ其裁判確定シタルトキハ此裁判ハ後ニ其事件ノ繋属ス可キ裁判所ヲ羈束ス
第九条 地方裁判所カ事物ノ管轄違ナリトシテ訴ヲ却下スルトキハ原告ノ申立ニ因リ同時ニ判決ヲ以テ原告ノ指定シタル自己ノ管轄内ノ区裁判所ニ其訴訟ヲ移送ス可シ
区裁判所カ事物ノ管轄違ナリトシテ訴ヲ却下スルトキハ同時ニ判決ヲ以テ其訴訟ヲ所属ノ地方裁判所ニ移送ス可シ
移送ノ申立ハ判決ニ接著スル口頭弁論ノ終結前ニ之ヲ為ス可シ
移送言渡ノ判決確定シタルトキハ其訴訟ハ移送ヲ受ケタル裁判所ニ繋属スルモノト看做ス
第二節 裁判所ノ土地ノ管轄(裁判籍)
第十条 人ノ普通裁判籍ハ其住所ニ依リテ定マル
普通裁判籍アル地ノ裁判所ハ其人ニ対スル総テノ訴ニ付キ管轄ヲ有ス但訴ニ付キ専属裁判籍ヲ定メサル場合ニ限ル
第十一条 軍人、軍属ハ裁判籍ニ付テハ兵営地若クハ軍艦定繋所ヲ以テ住所トス但此規定ハ予備、後備ノ軍籍ニ在ル者及ヒ兵役義務履行ノ為メノミニ服役スル軍人、軍属ニ之ヲ適用セス
第十二条 外国ニ在ル本邦ノ公使及ヒ公使館ノ官吏並ニ其家族、従者ノ裁判籍上ノ住所ハ本邦ニ於テ本人ノ最後ニ有セシ住所ナリトス此住所ナキモノニ付テハ司法大臣ノ命令ヲ以テ予メ定ムル東京内ノ区ヲ以テ其住所ナリトス
第十三条 内国ニ住所ヲ有セサル者ノ普通裁判籍ハ本人ノ現在地ニ依リテ定マル若シ其現在地ノ知レサルカ又ハ外国ニ在ルトキハ其最後ニ有セシ内国ノ住所ニ依リテ定マル
然レトモ外国ニ住所ヲ有スル者ニ対シテハ内国ニ於テ生シタル権利関係ニ限リ前項ノ裁判籍ニ於テ訴ヲ起スコトヲ得
第十四条 国ノ普通裁判籍ハ訴訟ニ付キ国ヲ代表スル官庁ノ所在地ニ依リテ定マル但訴訟ニ付キ国ヲ代表スルニ付テノ規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
公又ハ私ノ法人及ヒ其資格ニ於テ訴ヘラルルコトヲ得ル会社其他ノ社団又ハ財団等ノ普通裁判籍ハ其所在地ニ依リテ定マル此所在地ハ別段ノ定ナキトキハ事務所所在ノ地トス若シ事務所ナキトキ又ハ数所ニ於テ事務ヲ取扱フトキハ其首長又ハ事務担当者ノ住所ヲ以テ事務所ト看做ス
第十五条 生徒、雇人、営業使用人、職工、習業者其他性質上一定ノ地ニ永ク寓在ス可キ者ニ対スル財産権上ノ請求ニ付テノ訴ハ其現在地ノ裁判所ニ之ヲ起スコトヲ得
兵役義務履行ノ為メノミニ服役スル軍人、軍属ニ対シテハ其兵営地若クハ軍艦定繋所ノ裁判所ニ前項ノ訴ヲ起スコトヲ得
第十六条 製造、商業其他ノ営業ニ付キ直接ニ取引ヲ為ス店舗ヲ有スル者ニ対シテハ其店舗所在地ノ裁判所ニ営業上ニ関スル訴ヲ起スコトヲ得
前項ノ裁判籍ハ住家及ヒ農業用建物アル地所ヲ利用スル所有者、用益者又ハ賃借人ニ対スル訴ニ付テモ亦之ヲ適用ス但此訴カ地所ノ利用ニ付テノ権利関係ヲ有スルトキニ限ル
第十七条 内国ニ住所ヲ有セサル債務者ニ対スル財産権上ノ請求ニ付テノ訴ハ其財産又ハ訴ヲ為シテ請求スル物ノ所在地ノ裁判所ニ之ヲ起スコトヲ得債権ニ付テハ債務者(第三債務者)ノ住所ヲ以テ其財産ノ所在地トス又債権ニ付キ物カ担保ノ責ヲ負フトキハ其物ノ所在地ヲ以テ財産ノ所在地トス
第十八条 契約ノ成立若クハ不成立ノ確定又ハ其履行若クハ銷除、廃罷、解除又ハ其不履行若クハ不十分ノ履行ニ関スル賠償ノ訴ハ其訴訟ニ係ル義務ヲ履行ス可キ地ノ裁判所ニ之ヲ起スコトヲ得
第十九条 会社其他ノ社団ヨリ社員ニ対シ又ハ社員ヨリ社員ニ対シ其社員タル資格ニ基ク請求ノ訴ハ其会社其他ノ社団ノ普通裁判籍アル地ノ裁判所ニ之ヲ起スコトヲ得
第二十条 不正ノ損害ノ訴ハ責任者ニ対シ其行為ノ有リタル地ノ裁判所ニ之ヲ起スコトヲ得
第二十一条 弁護士又ハ執達吏ノ手数料及ヒ立替金ニ付キ其委任者ニ対スル訴ハ訴訟物ノ価額ノ多寡ニ拘ハラス本訴訟ノ第一審裁判所ニ之ヲ起スコトヲ得
第二十二条 不動産ニ付テハ其所在地ノ裁判所ハ総テ不動産上ノ訴殊ニ本権並ニ占有ノ訴及ヒ分割並ニ経界ノ訴ヲ専ラニ管轄ス
地役ニ付テノ訴ハ承役地所在地ノ裁判所専ラニ之ヲ管轄ス
第二十三条 不動産上ノ裁判籍ニ於テハ債権ノ担保ヲ為ス従タル物権ニ基ク不動産上ノ訴ニ附帯シテ同一被告ニ対スル債権ノ訴ヲ起スコトヲ得
不動産上ノ裁判籍ニ於テハ不動産ノ所有者若クハ占有者ニ対スル人権ノ訴又ハ不動産ニ加ヘタル損害ノ訴ヲ起スコトヲ得
第二十四条 相続権、遺贈其他死亡ニ因リテ効果ヲ生スル処分ニ基ク請求ノ訴ハ遺産者死亡ノ時普通裁判籍ヲ有セシ裁判所ニ之ヲ起スコトヲ得
相続裁判籍ニ於テハ遺産債権者ヨリ遺産者又ハ相続人ニ対スル請求ノ訴ヲ起スコトヲ得但遺産ノ全部又ハ一分カ其裁判所ノ管轄区内ニ存在スルトキニ限ル
第二十五条 第二十二条ノ規定ヲ除ク外原告ハ数箇ノ管轄裁判所ノ中ニ就キ選択ヲ為スコトヲ得
第三節 管轄裁判所ノ指定
第二十六条 管轄裁判所ノ指定ハ裁判所構成法ニ定メタル場合ノ外尚ホ不動産上ノ裁判籍ニ訴ヲ起ス可キ場合ニ於テ不動産カ数箇ノ裁判所ノ管轄区内ニ散在スルトキモ亦之ヲ為ス
第二十七条 管轄裁判所ノ指定ニ付キ申請ヲ為ス場合及ヒ其決定ヲ為ス裁判所ハ裁判所構成法第十条ノ規定ニ従フ
第二十八条 管轄裁判所ノ指定ニ付テノ申請ハ書面又ハ口頭ヲ以テ其申請ニ付キ管轄権ヲ有スル裁判所ニ之ヲ為スコトヲ得
右裁判所ハ口頭弁論ヲ経スシテ其申請ヲ決定ス
管轄裁判所ヲ定メタル決定ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第四節 裁判所ノ管轄ニ付テノ合意
第二十九条 第一審裁判所ハ当然管轄権ヲ有セサルモ当事者ノ合意ニ因リ管轄権ヲ有ス但書面ヲ以テ合意ヲ為シ且其合意カ一定ノ権利関係及ヒ其権利関係ヨリ生スル訴訟ニ係ルトキニ限ル
第三十条 被告カ管轄違ノ申立ヲ為サスシテ本案ノ口頭弁論ヲ為ストキハ亦前条ト同一ノ効力ヲ生ス
第三十一条 左ノ場合ニ於テハ第二十九条及ヒ第三十条ノ規定ヲ適用セス
第一 財産権上ノ請求ニ非サル訴訟ニ係ルトキ
第二 専属管轄ニ属スル訴ナルトキ
第五節 裁判所職員ノ除斥及ヒ忌避
第三十二条 判事ハ左ノ場合ニ於テ法律ニ依リ其職務ノ執行ヨリ除斥セラル可シ
第一 判事又ハ其婦カ原告若クハ被告タルトキ又ハ訴訟ニ係ル請求ニ付キ当事者ノ一方若クハ双方ト共同権利者、共同義務者若クハ償還義務者タル関係ヲ有スルトキ
第二 判事又ハ其婦カ当事者ノ一方若クハ双方又ハ其配偶者ト親族ナルトキ但姻族ニ付テハ婚姻ノ解除シタルトキト雖モ亦同シ
第三 判事カ同一ノ事件ニ付キ証人若クハ鑑定人ト為リテ訊問ヲ受クルトキ又ハ訴訟代理人タル任ヲ受クルトキ若クハ受ケタルトキ又ハ法律上代理人ト為ル権利ヲ有スルトキ若クハ之ヲ有シタルトキ
第四 判事カ不服ノ申立アル裁判ヲ前審又ハ仲裁ニ於テ為スニ当リ判事又ハ仲裁人トシテ干与シタルトキ但此場合ニ於テ判事ハ受命判事又ハ受託判事トシテハ職務ノ執行ヨリ除斥セラルルコト無シ
第三十三条 判事カ法律ニ依リ職務ノ執行ヨリ除斥セラルルトキ及ヒ偏頗ノ恐アルトキハ総テノ場合ニ於テ各当事者ヨリ之ヲ忌避スルコトヲ得
偏頗ノ忌避ハ判事ノ不公平ナル裁判ヲ為スコトヲ疑フニ足ル可キ事情アルトキ之ヲ為スコトヲ得
第三十四条 判事カ法律ニ依リ職務ノ執行ヨリ除斥セラルル場合ニ於ケル判事ノ忌避ハ其訴訟ノ如何ナル程度ニ在ルヲ問ハス之ヲ為スコトヲ得
偏頗ノ恐アル場合ニ於テハ原告若クハ被告其覚知シタル忌避ノ原因ヲ主張セスシテ判事ノ面前ニ於テ申立ヲ為シ又ハ相手方ノ申立ニ対シ陳述ヲ為シタル後ハ其判事ヲ忌避スルコトヲ得ス
第三十五条 忌避ノ申請ハ判事所属ノ裁判所ニ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
忌避ノ原因ハ之ヲ疏明スルコトヲ要ス忌避セラレタル判事ノ職務上ノ陳述ハ其疏明ノ用ニ充ツルコトヲ得
原告若クハ被告カ判事ノ面前ニ於テ申立ヲ為シ又ハ相手方ノ申立ニ対シ陳述ヲ為シタル後其判事ニ対シ偏頗ノ忌避ヲ為ストキハ忌避ノ原因其後ニ生シ又ハ之ヲ其後ニ覚知シタルコトヲ疏明ス可シ
第三十六条 忌避セラレタル判事合議裁判所ニ属スルトキハ其裁判所忌避ノ申請ヲ裁判ス但忌避セラレタル判事ハ其裁判ニ参与スルコトヲ得ス
若シ其裁判所右判事ノ退去ニ因リ決定ヲ為スコト能ハサルトキハ直近上級ノ裁判所其申請ヲ裁判ス
区裁判所判事忌避セラレタルトキハ上級ノ地方裁判所其申請ヲ裁判ス若シ区裁判所判事カ忌避ノ申請ヲ正当ナリト為ストキハ裁判ヲ要セス
第三十七条 忌避ノ申請ニ付テノ裁判ハ口頭弁論ヲ経スシテ之ヲ為スコトヲ得忌避セラレタル判事ハ先ツ申請ノ理由ニ付キ職務上意見ヲ述フ可シ
第三十八条 忌避ノ申請ヲ正当ナリト宣言スル決定ニ対シテハ上訴ヲ為スコトヲ得ス其申請ヲ不当ナリト宣言スル決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第三十九条 忌避セラレタル判事ハ忌避申請ノ完結スルマテ総テノ行為ヲ避ク可シ然レトモ偏頗ノ為ニ忌避セラレタル判事ハ猶予ス可カラサル行為ヲ為ス可シ
第四十条 忌避申請ノ管轄裁判所ハ其申請アラサルモ忌避ノ原因タル事情ニ付キ判事ヨリ申出アルトキ又ハ他ノ事由ヨリシテ判事カ法律ニ依リ除斥セラルル疑アルトキモ亦裁判ヲ為ス
此裁判ハ予メ当事者ヲ審訊セスシテ之ヲ為ス又其裁判ハ之ヲ当事者ニ送達スルコトヲ要セス
第四十一条 本節ノ規定ハ裁判所書記ニモ之ヲ準用ス但其裁判ハ書記所属ノ裁判所之ヲ為ス
第六節 検事ノ立会
第四十二条 検事ハ左ノ訴訟ニ付キ意見ヲ述フル為メ其口頭弁論ニ立会フ可シ
第一 公ノ法人ニ関スル訴訟
第二 婚姻ニ関スル訴訟
第三 夫婦間ノ財産ニ関スル訴訟
第四 親子若クハ養親子ノ分限其他総テ人ノ分限ニ関スル訴訟
第五 無能力者ニ関スル訴訟
第六 養料ニ関スル訴訟
第七 失踪者及ヒ相続人虧欠ノ遺産ニ関スル訴訟
第八 証書ノ偽造若クハ変造ノ訴訟
第九 再審
検事ノ陳述ハ当事者ノ弁論終リタルトキ之ヲ為ス
当事者ハ検事ノ意見ニ対シ事実ノ更正ノミニ付キ陳述ヲ為スコトヲ得
第二章 当事者
第一節 訴訟能力
第四十三条 原告若クハ被告カ自ラ訴訟ヲ為シ又ハ訴訟代理人ヲシテ之ヲ為サシムル能力ト法律上代理人ニ依レル訴訟無能力者ノ代表ト法律上代理人カ訴訟ヲ為シ又ハ一ノ訴訟行為ヲ為スニ付テノ特別授権ノ必要トハ民法ノ規定ニ従フ
第四十四条 外国人ハ自国ノ法律ニ従ヒ訴訟能力ヲ有セサルモ本邦ノ法律ニ従ヒ訴訟能力ヲ有スルモノナルトキハ之ヲ有スルモノト看做ス
第四十五条 裁判所ハ訴訟ノ如何ナル程度ニ在ルヲ問ハス職権ヲ以テ訴訟能力、法律上代理人タル資格及ヒ訴訟ヲ為スニ必要ナル授権ニ欠欠ナキヤ否ヤヲ調査ス可シ
裁判所ハ遅滞ノ為メ原告若クハ被告ニ危害アリ且其欠欠ノ補正ヲ為シ得ルモノト認ムルトキハ原告若クハ被告又ハ其法律上代理人ニ其欠欠ノ補正ヲ為ス条件ヲ以テ一時訴訟ヲ為スヲ許スコトヲ得此場合ニ於テ裁判所ハ欠欠補正ノ為メ相当ノ期間ヲ定メ其期間ノ満了前ニ判決ヲ為スコトヲ得ス但其欠欠ノ補正ハ判決ニ接著スル口頭弁論ノ終結マテ之ヲ追完スルコトヲ得
第四十六条 訴訟無能力者又ハ相続人ノ未定ノ遺産又ハ不分明ナル相続人ニ対シ訴ヲ起ス可キ場合ニ於テ法律上代理人アラサルトキハ其事件ノ繋属ス可キ裁判所ノ裁判長ハ申立ニ因リ遅滞ノ為ニ危害ノ恐アル場合ニ限リ特別代理人ヲ任ス可シ
右申請ハ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得此裁判ハ口頭弁論ヲ経スシテ之ヲ為シ其裁判ハ申請人ニ之ヲ送達シ又申請ヲ認許シタルトキハ其任セラレタル特別代理人ニモ亦之ヲ送達ス可シ
申請ヲ却下スル裁判ニ対シテハ抗告ヲ為スコトヲ得
裁判長ヨリ任セラレタル特別代理人ハ法律上代理人又ハ相続人ノ出頭スルマテ訴訟行為ニ付キ法律上代理人ノ権利及ヒ義務ヲ有ス
第四十七条 第十五条ニ掲ケタル場合ニ於テ訴訟無能力者カ其現在地又ハ兵営地若クハ軍艦定繋所ノ裁判所ニ訴ヲ受ク可キ場合ニ於テ其法律上代理人他ノ地ニ住スルトキハ遅滞ノ為メ危害ナシト雖モ前条ノ規定ニ従ヒ特別代理人ヲ任スルコトヲ得
此他裁判ニ対シ抗告ヲ許ス規定ヲ除ク外総テ前条ノ規定ヲ適用ス
第二節 共同訴訟人
第四十八条 左ノ場合ニ於テハ共同訴訟人トシテ数人カ共ニ訴ヲ為シ又ハ訴ヲ受クルコトヲ得
第一 数人カ訴訟物ニ付キ権利共通若クハ義務共通ノ地位ニ立ツトキ
第二 同一ナル事実上及ヒ法律上ノ原因ニ基ク請求又ハ義務カ訴訟ノ目的物タルトキ
第三 性質ニ於テ同種類ナル事実上及ヒ法律上ノ原因ニ基ク同種類ナル請求又ハ義務カ訴訟ノ目的物タルトキ
第四十九条 共同訴訟人ハ其資格ニ於テハ各別ニ相手方ニ対立シ其一人ノ訴訟行為及ヒ懈怠又ハ相手方ヨリ其一人ニ対スル訴訟行為及ヒ懈怠ハ他ノ共同訴訟人ニ利害ヲ及ホサス
第五十条 然レトモ総テノ共同訴訟人ニ対シ訴訟ニ係ル権利関係カ合一ニノミ確定ス可キトキニ限リ左ノ規定ヲ適用ス
共同訴訟人中ノ或ル人ノ攻撃及ヒ防禦ノ方法(証拠方法ヲ包含ス)ハ他ノ共同訴訟人ノ利益ニ於テ効ヲ生ス
共同訴訟人中ノ或ル人カ争ヒ又ハ認諾セサルトキト雖モ総テノ共同訴訟人カ悉ク争ヒ又ハ認諾セサルモノト看做ス
共同訴訟人中ノ或ル人ノミカ期日又ハ期間ヲ懈怠シタルトキハ其懈怠シタル者ハ懈怠セサル者ニ代理ヲ任シタルモノト看做ス
然レトモ懈怠シタル共同訴訟人ニハ其懈怠セサリシ場合ニ於テ為ス可キ総テノ送達及ヒ呼出ヲ為スコトヲ要ス其懈怠シタル共同訴訟人ハ何時タリトモ其後ノ訴訟手続ニ再ヒ加ハルコトヲ得
第三節 第三者ノ訴訟参加
第五十一条 他人ノ間ニ権利拘束ト為リタル訴訟ノ目的物ノ全部又ハ一分ヲ自己ノ為ニ請求スル第三者ハ本訴訟ノ権利拘束ノ終ニ至ルマテ其訴訟カ第一審ニ於テ繋属シタル裁判所ニ当事者双方ニ対スル訴(主参加)ヲ為シテ其請求ヲ主張スルコトヲ得
第三者カ原告及ヒ被告ノ共謀ニ因リ自己ノ債権ニ損害ヲ生スルコトヲ主張スルトキモ亦同シ
第五十二条 本訴訟ハ第一審ニ繋属スルト上級審ニ繋属スルトヲ問ハス原告、被告若クハ主参加人ノ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ主参加ニ付テノ権利拘束ノ終ニ至ルマテ之ヲ中止スルコトヲ得
中止ノ申請ハ書面又ハ口頭ヲ以テ本訴訟ノ繋属スル裁判所ニ之ヲ為スコトヲ得
決定ハ口頭弁論ヲ経スシテ之ヲ為スコトヲ得
中止ヲ命スル決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第五十三条 他人ノ間ニ権利拘束ト為リタル訴訟ニ於テ其一方ノ勝訴ニ依リ権利上利害ノ関係ヲ有スル者ハ訴訟ノ如何ナル程度ニ在ルヲ問ハス権利拘束ノ継続スル間ハ其一方ヲ補助(従参加)スル為メ之ニ附随スルコトヲ得
第五十四条 従参加人ハ其附随スル時ニ於ケル訴訟ノ程度ヲ妨ケサル限リハ其主タル原告若クハ被告ノ為ニ攻撃及ヒ防禦ノ方法ヲ施用シ且総テノ訴訟行為ヲ有効ニ行ヒ殊ニ主タル原告若クハ被告ノ為ニ存スル期間内ニ故障、支払命令ニ対スル異議又ハ上訴ヲ為ス権利ヲ有ス
従参加人ノ陳述及ヒ行為ト主タル原告若クハ被告ノ陳述及ヒ行為ト相牴触スル場合ニ於テハ主タル原告若クハ被告ノ陳述及ヒ行為ヲ以テ標準ト為ス但民法ニ於テ此ニ異ナル規定アルトキハ此限ニ在ラス
第五十五条 従参加人ハ訴訟ヨリ脱退シタルトキト雖モ其補助シタル原告若クハ被告トノ関係ニ於テハ其訴訟ノ確定裁判ヲ不当ナリト主張スルコトヲ得ス
従参加人ハ其附随ノ時ノ訴訟ノ程度ニ因リ又ハ主タル原告若クハ被告ノ所為ニ因リ攻撃及ヒ防禦ノ方法ヲ施用スルコトヲ妨ケラルルトキ又ハ主タル原告若クハ被告カ従参加人ノ当時知ラサリシ攻撃及ヒ防禦ノ方法ヲ故意又ハ重過失ニ因リ施用セサリシトキニ限リ其補助シタル原告若クハ被告カ訴訟ヲ不十分ニ為シタリト主張スルコトヲ得
第五十六条 従参加ハ本訴訟ノ繋属スル裁判所ニ申請ヲ以テ之ヲ為ス可シ
申請ニハ当事者及ヒ訴訟ヲ表示シ又一定ノ利害関係及ヒ附随セントスル陳述ヲ開示ス可シ
申請ハ当事者ニ之ヲ送達ス可シ
従参加ハ故障、異議又ハ上訴ト併合シテ之ヲ為スコトヲ得
第五十七条 原告若クハ被告カ従参加ニ付キ異議ヲ述フルトキハ当事者及ヒ従参加人ヲ審訊シタル後決定ヲ以テ参加ノ許否ヲ裁判ス其裁判ハ口頭弁論ヲ経スシテ之ヲ為スコトヲ得
利害関係ノ存否ニ付キ争アルトキハ従参加人其関係ヲ疏明スルノミヲ以テ参加ヲ許スニ足ル
右ノ決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
参加ヲ許ササル裁判確定セサル間ハ従参加人ヲ本訴訟ニ立会ハシメ殊ニ総テノ期日ニ之ヲ呼出シ又本訴訟ニ関係アル裁判ヲ為シタルトキハ従参加人ニ其裁判ヲ送達ス可シ
第五十八条 従参加人ハ当事者双方ノ承諾ヲ得テ其附随シタル原告若クハ被告ニ代リ訴訟ヲ担任スルコトヲ得此場合ニ於テハ其原告若クハ被告ノ申立ニ因リ判決ヲ以テ訴訟ヨリ其原告若クハ被告ヲ脱退セシム可シ
第五十九条 原告若クハ被告若シ敗訴スルトキハ第三者ニ対シ担保又ハ賠償ノ請求ヲ為シ得ヘシト信シ又ハ第三者ヨリ請求ヲ受ク可キコトヲ恐ルル場合ニ於テハ訴訟ノ権利拘束間第三者ニ訴訟ヲ告知スルコトヲ得
訴訟ノ告知ヲ受ケタル者ハ更ニ訴訟ヲ告知スルコトヲ得
第六十条 訴訟告知ハ訴訟ノ繋属スル裁判所ニ其訴訟告知ノ理由及ヒ訴訟ノ程度ヲ記載シタル書面ヲ提出シテ之ヲ為ス可シ
此書面ハ第三者ニ送達スルコトヲ要ス又訴訟ヲ告知スル原告若クハ被告ノ相手方ニハ其謄本ヲ送付ス可シ
第六十一条 訴訟ハ訴訟告知ニ拘ハラス之ヲ続行ス
第三者参加ス可キコトヲ陳述スルトキハ従参加ノ規定ヲ適用ス
第六十二条 第三者ノ名ヲ以テ物ヲ占有スルコトヲ主張スル者其物ノ占有者トシテ被告ト為リタルトキハ本案ノ弁論前第三者ヲ指名シ之ニ陳述ヲ為サシムル為メ其呼出ヲ求ムルトキハ第三者ノ陳述ヲ為シ又ハ之ヲ為ス可キ期日マテ本案ノ弁論ヲ拒ムコトヲ得
第三者カ被告ノ主張ヲ争フトキ又ハ陳述ヲ為ササルトキハ被告ハ原告ノ申立ニ応スルコトヲ得
第三者カ被告ノ主張ヲ正当ト認ムルトキハ被告ノ承諾ヲ得テ之ニ代リ訴訟ヲ引受クルコトヲ得
第三者カ訴訟ヲ引受ケタルトキハ裁判所ハ被告ノ申立ニ因リ其被告ヲ訴訟ヨリ脱退セシム可シ其物ニ付テノ裁判ハ被告ニ対シテモ効力ヲ有シ且之ヲ執行スルコトヲ得
第四節 訴訟代理人及ヒ輔佐人
第六十三条 原告若クハ被告自ラ訴訟ヲ為ササルトキハ弁護士ヲ以テ訴訟代理人トシ之ヲ為ス
弁護士ノ在ラサル場合ニ於テハ訴訟能力者タル親族若クハ雇人ヲ以テ訴訟代理人ト為シ若シ此等ノ者ノ在ラサルトキハ他ノ訴訟能力者ヲ以テ訴訟代理人ト為スコトヲ得
区裁判所ニ於テハ弁護士ノ在ルトキト雖モ訴訟能力者タル親族若クハ雇人ヲ以テ訴訟代理人ト為スコトヲ得
第六十四条 訴訟委任ハ裁判所ノ記録ニ備フ可キ書面委任ヲ以テ之ヲ証ス可シ
私署証書ハ相手方ノ求ニ因リ之ヲ認証ス可シ其認証ハ公証人之ヲ為シ又相当官吏之ヲ為スコトヲ得
口頭弁論ノ期日又ハ受命判事若クハ受託判事ノ面前ニ於テ口頭委任ヲ為シ其陳述ヲ調書ニ記載セシムルトキハ書面委任ト同一ナリトス
第六十五条 訴訟委任ハ反訴、主参加、故障、仮差押若クハ仮処分又ハ強制執行ニ因リ生スル訴訟行為ヲ併セ訴訟ニ関スル総テノ訴訟行為ヲ為シ及ヒ相手方ヨリ弁済スル費用ノ領収ヲ為ス権ヲ授与ス
訴訟代理人ハ特別ノ委任ヲ受クルニ非サレハ控訴若クハ上告ヲ為シ、再審ヲ求メ、代人ヲ任シ、和解ヲ為シ、訴訟物ヲ抛棄シ又ハ相手方ヨリ主張シタル請求ヲ認諾スル権ヲ有セス
第六十六条 訴訟委任ハ法律上ノ範囲(第六十五条第一項)ヲ制限スルモ其制限ハ相手方ニ対シ効力ナシ
然レトモ弁護士ニ依レル代理ヲ除ク外ハ各箇ノ訴訟行為ニ付キ委任ヲ為スコトヲ得
第六十七条 訴訟代理人数人アルトキハ共同若クハ各別ニテ代理スルコトヲ得但委任ニ此ト異ナル定アルモ相手方ニ対シ其効力ナシ
第六十八条 訴訟代理人カ委任ノ範囲内ニ於テ為シタル訴訟上ノ行為及ヒ不行為ハ原告若クハ被告ニ対シテハ其本人ノ行為又ハ不行為ト同一ナリトス
然レトモ代理人ノ事実上ノ陳述ハ其代理人ト共ニ裁判所ニ出頭シタル原告若クハ被告ヨリ即時ニ之ヲ取消シ又ハ更正シタルトキニ限リ其効力ヲ失フ
第六十九条 委任者ノ死亡、訴訟能力若クハ法律上代理ノ変更、委任ノ廃罷及ヒ代理ノ謝絶ニ因ル委任ノ消滅ハ其消滅ヲ通知スルマテ相手方ニ対シ其効力ナシ
此通知書ハ原告若クハ被告ヨリ受訴裁判所ニ之ヲ差出シ裁判所ハ相手方ニ之ヲ送達ス可シ
代理人ハ謝絶ヲ為スモ委任者他ノ方法ヲ以テ自己ノ権利ノ防衛ヲ為ササル間ハ其委任者ノ為ニ行為ヲ為スコトヲ得
第七十条 委任ノ欠欠ハ原告若クハ被告ノ為メ其代理人ナキモノト看做ス
裁判所ハ職権ヲ以テ委任ノ欠欠ヲ調査シ委任ナク又ハ適式ノ委任ナク代理人トシテ出頭スル者ニ事情ニ従ヒ費用及ヒ損害ノ保証ヲ立テシメ又ハ之ヲ立テシメスシテ仮ニ訴訟ヲ為スヲ許スコトヲ得
判決ハ欠欠ヲ補正シ又ハ之ヲ補正スル為メ裁判所ノ適宜ニ定ムル期間ノ満了後ニ限リ之ヲ為スコトヲ得但欠欠ノ補正ハ判決ニ接著スル口頭弁論ノ終結マテ之ヲ追完スルコトヲ得
第七十一条 原告若クハ被告ハ弁護士ヲ輔佐人ト為シ又ハ何時ニテモ裁判所ノ取消シ得ヘキ許可ヲ得テ他ノ訴訟能力者ヲ輔佐人ト為シテ共ニ出頭スルコトヲ得其輔佐人ハ口頭弁論ニ於テ権利ヲ伸張シ又ハ防禦スル為メ原告若クハ被告ヲ補助スルモノトス
輔佐人ノ演述ハ原告若クハ被告即時ニ之ヲ取消シ又ハ更正セサルトキニ限リ原告若クハ被告自ラ演述シタルモノト看做ス
第五節 訴訟費用
第七十二条 敗訴ノ原告若クハ被告ハ訴訟ノ費用ヲ負担シ殊ニ訴訟ニ因リ生シタル費用ヲ相手方ニ弁済ス可シ但其費用ハ裁判所ノ意見ニ於テ相当ナル権利伸張又ハ権利防禦ニ必要ナリト認ムルモノニ限ル
訴訟中ニ訴ヲ取下ケ、請求ヲ抛棄シ又ハ相手方ノ請求ヲ認諾スル原告若クハ被告ハ敗訴ノ原告若クハ被告ニ同シ
第七十三条 当事者ノ各方一分ハ勝訴ト為リ一分ハ敗訴ト為ルトキハ其費用ヲ相消シ又ハ割合ヲ以テ之ヲ分担ス可シ第一ノ場合ニ於テハ各当事者ハ其支出シタル費用ヲ自ラ負担シ他ノ一方ニ対シ弁済ヲ請求スルコトヲ得ス
然レトモ裁判所ハ相手方ノ要求格外ニ過分ナルニ非ス且別段ノ費用ヲ生セサリシトキ又ハ判事ノ意見、鑑定人ノ鑑定若クハ相互ノ計算ニ因リ要求額ヲ定ムルニ非サレハ容易ニ過分ノ要求ヲ避クルコトヲ得サリシトキハ当事者ノ一方ニ訴訟費用ノ全部ヲ負担セシムルコトヲ得
第七十四条 被告直チニ請求ヲ認諾シ且其作為ニ因リ訴ヲ起スニ至ラシメタルニ非サルトキハ訴訟費用ハ原告ノ勝訴ト為リタルニ拘ハラス其負担ニ帰ス
第七十五条 期日若クハ期間ヲ懈怠シ又ハ自己ノ過失ニ因リ期日ノ変更、弁論ノ延期、弁論続行ノ為ニスル期日ノ指定、期間ノ延長其他訴訟ノ遅滞ヲ生セシメタル原告若クハ被告ハ本案ノ勝訴者ト為リタルニ拘ハラス此カ為ニ生シタル費用ヲ負担ス可シ
第七十六条 裁判所ハ無益ナル攻撃又ハ防禦ノ方法(証拠方法ヲ包含ス)ヲ主張シタル原告若クハ被告ヲシテ本案ノ勝訴者ト為リタルニ拘ハラス其方法ノ費用ヲ負担セシムルコトヲ得
第七十七条 無益ナル上訴又ハ取下ケタル上訴ノ費用ハ之ヲ提出シタル原告若クハ被告ノ負担ニ帰ス
第七十八条 上訴ニ因リ裁判ノ全部又ハ一分ヲ廃棄若クハ破毀スルトキハ訴訟ノ総費用(上訴ノ費用ヲ包含ス)ノ裁判ハ本案ノ終局裁判ト併合シテ更ニ之ヲ為ス可シ
原告若クハ被告カ前審ニ於テ主張スルコトヲ得ヘカリシ事実又ハ攻撃若クハ防禦ノ方法ヲ新ニ提出スルニ因リ勝訴者ト為ルトキハ其原告若クハ被告ニ上訴費用ノ全部又ハ一分ヲ負担セシムルコトヲ得
第七十九条 当事者カ訴訟物ニ付キ和解ヲ為ストキハ其訴訟ノ費用及ヒ和解ノ費用ハ共ニ相消シタルモノト看做ス但当事者別段ノ合意ヲ為シタルトキハ此限ニ在ラス
第八十条 法律ノ規定ニ従ヒ費用ニ付キ共同訴訟人ノ連帯義務ノ生セサルトキニ限リ其共同訴訟人ハ相手方ニ対シ平等ニ費用ヲ負担ス然レトモ共同訴訟人ノ訴訟ニ於ケル利害ノ関係著シク相異ナルトキハ裁判所ハ其利害関係ノ割合ニ従ヒ費用ヲ負担セシムルコトヲ得
共同訴訟人中ノ或ル人カ特別ノ攻撃又ハ防禦ノ方法ヲ主張シタルトキハ他ノ共同訴訟人ハ此カ為ニ生シタル費用ヲ負担セス
第八十一条 従参加ニ対シ原告若クハ被告カ異議ヲ述フルトキハ其異議ノ決定ニ於テ従参加人ト其原告若クハ被告トノ中間訴訟ノ費用ニ付キ第七十二条乃至第七十八条ノ規定ニ従ヒテ裁判ヲ為ス可シ
従参加ヲ許シタルトキ又ハ異議ヲ述ヘサルトキハ本訴訟ノ判決ニ於テ従参加人ト相手方ナル原告若クハ被告トノ間ニ従参加ニ因リ生シタル費用ニ付テモ亦前数条ノ規定ニ従ヒテ裁判ヲ為ス可シ
第八十二条 費用ノ点ニ限リタル裁判ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス然レトモ本案ノ裁判ニ対シ許ス可キ上訴ヲ提出シ且追行スルトキニ限リ費用ノ点ニ付キ不服ヲ申立ツルコトヲ得
費用ノ点ニ限リタルトキト雖モ相手方ヨリ提出シタル上訴ニ附帯スル場合ニ於テハ不服ヲ申立ツルコトヲ得
第八十三条 裁判所書記、法律上代理人、弁護士其他ノ代理人及ヒ執達吏ノ過失又ハ懈怠ニ因リ費用ノ生シタルトキハ受訴裁判所ハ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ其費用ノ弁済ヲ負担セシムル決定ヲ為スコトヲ得但其決定前関係人ニ口頭又ハ書面ニテ陳弁ヲ為ス機会ヲ与フ可シ
此裁判ハ口頭弁論ヲ経スシテ之ヲ為スコトヲ得其決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第八十四条 弁済ス可キ費用額ノ確定ハ申請ニ因リ訴訟ノ第一審ニ繋属シタル裁判所ノ決定ヲ以テ之ヲ為ス
申請ハ第七十二条第二項又ハ上訴取下ノ場合ヲ除ク外執行シ得ヘキ裁判ニ依ルトキニ限リ之ヲ為スコトヲ得
申請ハ口頭ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
申請ニハ費用計算書、相手方ニ付与ス可キ計算書ノ謄本及ヒ各箇費用額ノ疏明ニ必要ナル証書ヲ添附ス可シ
第八十五条 費用額確定ノ裁判ハ口頭弁論ヲ経スシテ之ヲ為スコトヲ得
裁判所ハ裁判所書記ニ費用計算書ノ計算上ノ検査ヲ命スルコトヲ得
裁判所ハ費用額確定ノ決定ヲ為ス前相手方ニ計算書ヲ付与シテ裁判所ノ定ムル期間内ニ陳述ヲ為ス可キ旨ヲ之ニ催告スルコトヲ得此決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第八十六条 当事者ハ訴訟費用ノ全部又ハ一分ヲ割合ニ従ヒ分担ス可キトキハ裁判所ハ費用額確定ノ決定ヲ為ス前相手方ニ裁判所ノ定ムル期間内ニ其費用ノ計算書ヲ差出ス可キ旨ヲ催告ス可シ此期間ヲ徒過シタル後ハ費用額確定ノ決定ハ相手方ノ費用ヲ顧ミス之ヲ為ス可シ但相手方ハ後ニ自己ノ費用ヲ以テ其費用額確定ノ申請ヲ為ス妨ト為ルコト無シ
第六節 保証
第八十七条 訴訟上ノ保証ハ当事者カ別段ノ合意ヲ為ス場合又ハ此法律ニ於テ保証ヲ定ムルコトヲ裁判所ノ自由ナル意見ニ任スル場合ヲ除ク外裁判所ノ意見ニ於テ担保ニ十分ナリトスル現金又ハ有価証券ヲ供託シテ之ヲ為ス
第八十八条 原告又ハ原告ノ従参加人タル外国人ハ被告ニ対シ其求ニ因リ訴訟費用ニ付キ保証ヲ立ツ可シ
左ノ場合ニ於テハ保証ヲ立ツル義務ヲ生セス
第一 国際条約又ハ原告ノ属スル国ノ法律ニ依リ本邦人カ同一ノ場合ニ於テ保証ヲ立ツル義務ナキトキ
第二 反訴ノ場合
第三 証書訴訟及ヒ為替訴訟ノ場合
第四 公示催告ニ基キ起シタル訴ノ場合
第八十九条 裁判所ハ前条第一項ノ場合ニ於テハ保証ヲ立ツ可キ数額ヲ確定ス可シ
此数額ヲ確定スルニハ被告ノ訴ヲ受ケタルカ為メ各審級ニ於テ支出ス可キ訴訟費用ノ額ヲ標準ト為ス可シ
訴訟中ニ保証ノ不足ヲ生シ且追増保証ヲ立ツ可キコトヲ被告カ求ムルトキハ前項ト同一ノ手続ニ依ル可シ但争ナキ請求ノ部分カ担保ニ十分ナルトキハ此限ニ在ラス
第九十条 裁判所ハ保証ヲ立ツ可キ期間ヲ定ム可シ
此期間ノ経過後裁判アルマテニ保証ヲ立テサル場合ニ於テハ被告ノ申立ニ因リ判決ヲ以テ訴ヲ取下ケタリト宣言シ又原告カ上訴ヲ為シタルトキハ其上訴ヲ取下ケタリト宣言ス可シ
第七節 訴訟上ノ救助
第九十一条 何人ヲ問ハス自己及ヒ其家族ノ必要ナル生活ヲ害スルニ非サレハ訴訟費用ヲ出タスコト能ハサル者ハ訴訟上ノ救助ヲ求ムルコトヲ得但其目的トスル権利ノ伸張又ハ防禦ノ軽忽ナラス又ハ見込ナキニ非スト見ユルトキニ限ル
第九十二条 外国人ハ国際条約又ハ其属スル国ノ法律ニ依リ本邦人カ同一ノ場合ニ於テ訴訟上ノ救助ヲ求ムルコトヲ得ルトキニ限リ之ヲ求ムルコトヲ得
第九十三条 訴訟上救助ノ申請ハ訴訟ノ関係ヲ表明シ且証拠方法ヲ開示シテ其救助ヲ求ムル審級ノ裁判所ニ之ヲ提出ス可シ其申請ハ口頭ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
原告若クハ被告ハ申請ノ提出ト共ニ管轄市町村長ヨリ発シタル証書ヲ出タスコトヲ要ス其証書ニハ原告若クハ被告ノ身分、職業、財産並ニ家族ノ実況及ヒ其納ム可キ直税ノ額ヲ開示シテ訴訟費用支払ノ無資力ヲ証ス可シ
第九十四条 訴訟上ノ救助ハ各審ニ於テ各別ニ之ヲ付与ス第一審ニ於テハ強制執行ニ付テモ之ヲ付与スルモノトス
前審ニ於テ訴訟上ノ救助ヲ受ケタルトキハ上級審ニ於テハ無資力ヲ証スルコトヲ要セス相手方上訴ヲ提出シタルトキハ上級審ニ於テハ訴訟上ノ救助ヲ求ムル原告若クハ被告ノ権利ノ伸張又ハ防禦ノ軽忽ナラス又ハ見込ナキニ非スト見ユルヤヲ調査スルコトヲ要セス
第九十五条 訴訟上ノ救助ハ之ヲ受ケタル条件ノ存セサリシトキ又ハ消滅シタルトキハ何時タリトモ之ヲ取消スコトヲ得
第九十六条 訴訟上ノ救助ハ之ヲ受ケタル原告若クハ被告ノ死亡ト共ニ消滅ス
第九十七条 訴訟上ノ救助ハ之ヲ受ケタル原告若クハ被告ノ為ニ左ノ効力ヲ生ス
第一 裁判費用(国庫ノ立替金ヲ包含ス)ヲ済清スルコトノ仮免除
第二 訴訟費用ノ保証ヲ立ツルコトノ免除
第三 送達及ヒ執行行為ヲ為サシムル為メ一時無報酬ニテ執達吏ノ附添ヲ求ムル権利
受訴裁判所ハ必要ナル場合ニ於テハ訴訟上ノ救助ヲ受ケタル原告若クハ被告ノ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ一時無報酬ニテ弁護士ノ附添ヲ命スルコトヲ得
第九十八条 訴訟上ノ救助ハ相手方ニ生シタル費用ヲ弁済スル義務ニ影響ヲ及ホサス
第九十九条 救助ヲ受ケタル原告若クハ被告ノ為メ仮ニ済清ヲ免除シタル裁判費用ハ訴訟費用ニ付キ確定裁判ヲ受ケタル相手方又ハ訴若クハ上訴ノ取下、抛棄、認諾若クハ和解ニ因リ訴訟費用ヲ負担ス可キ相手方ヨリ之ヲ取立ツルコトヲ得
救助ヲ受ケタル原告若クハ被告ニ附添ヒタル執達吏又ハ弁護士ハ同一ノ条件アルトキハ亦自己ノ権利ニ依リ費用確定ノ方法ヲ以テ其手数料及ヒ立替金ヲ取立ツルコトヲ得
第百条 救助ヲ受ケタル原告若クハ被告ハ自己及ヒ其家族ノ必要ナル生活ヲ害セスシテ費用ノ済清ヲ為シ得ルニ至ルトキハ仮免除ヲ得タル数額(第九十七条第一号)ヲ直チニ追払ヒスル義務アリ
第百一条 裁判所ハ検事ノ意見ヲ聴キタル後訴訟上救助ノ付与並ニ弁護士附添ノ命令ニ付テノ申請、訴訟上救助ノ取消及ヒ数額追払ノ義務ニ付キ決定ヲ為ス
此裁判ハ口頭弁論ヲ経スシテ之ヲ為スコトヲ得
第百二条 訴訟上ノ救助ヲ付与シ又ハ其取消ヲ拒ミ若クハ費用追払ヲ命スルコトヲ拒ム決定ニ対シテハ検事ニ限リ抗告ヲ為スコトヲ得
弁護士ノ附添ヲ命スル決定ニ対シテハ上訴ヲ為スコトヲ得ス
訴訟上ノ救助ヲ拒ミ若クハ取消シ又ハ弁護士ノ附添ヲ拒ミ又ハ費用ノ追払ヲ命スル決定ニ対シテハ原告若クハ被告ハ抗告ヲ為スコトヲ得
第三章 訴訟手続
第一節 口頭弁論及ヒ準備書面
第百三条 判決裁判所ニ於ケル訴訟ニ付テノ当事者ノ弁論ハ口頭ナリトス但此法律ニ於テ口頭弁論ヲ経スシテ裁判ヲ為スコトヲ定メタルトキハ此限ニ在ラス
第百四条 口頭弁論ハ書面ヲ以テ之ヲ準備ス
第百五条 準備書面ニハ左ノ諸件ヲ掲ク可シ
第一 当事者及ヒ其法律上代理人ノ氏名、身分、職業、住所、裁判所、訴訟物及ヒ附属書類ノ表示
第二 原告若クハ被告カ法廷ニ於テ為サント欲スル申立
第三 申立ノ原因タル事実上ノ関係
第四 相手方ノ事実上ノ主張ニ対スル陳述
第五 原告若クハ被告カ事実上主張ノ証明又ハ攻撃ノ為メ用井ントスル証拠方法及ヒ相手方ノ申出テタル証拠方法ニ対スル陳述
第六 原告若クハ被告又ハ其訴訟代理人ノ署名及ヒ捺印
第七 年月日
第百六条 準備書面ニ於テ提出ス可キ事実ハ簡明ニ之ヲ記載ス可シ
此他事実上ノ関係ノ説明並ニ法律上ノ討論ハ書面ニ之ヲ掲クルコトヲ得ス
第百七条 準備書面ニハ訴訟ヲ為ス可キ資格ニ付テノ証書ノ原本、正本又ハ謄本其他総テ原告若クハ被告ノ手中ニ存スル証書ニシテ書面中ニ申立ノ原因トシテ引用シタルモノノ謄本ヲ添附ス可シ
証書ノ一部分ノミヲ要用トスルトキハ其冒頭、事件ニ属スル部分、終尾、日附、署名及ヒ印章ヲ謄写シタル抄本ヲ添附スルヲ以テ足ル
証書カ既ニ相手方ニ知レタルトキ又ハ大部ナルトキハ其証書ヲ表示シ且相手方ニ之ヲ閲覧セシメント欲スル旨ヲ附記スルヲ以テ足ル
第百八条 当事者ハ準備書面及ヒ其附属書類並ニ相手方ニ付与スル為メ必要ナル謄本ヲ裁判所書記課ニ差出ス可シ
第百九条 裁判長ハ口頭弁論ヲ開キ且之ヲ指揮ス
裁判長ハ発言ヲ許シ又其命ニ従ハサル者ニ発言ヲ禁スルコトヲ得
裁判長ハ事件ニ付キ十分ナル説明ヲ為サシメ且間断ナク弁論ノ終了スルコトニ注意ス又必要ナル場合ニ於テハ直チニ弁論続行ノ期日ヲ定ム
裁判所ニ於テ事件ニ付キ十分ナル説明ヲ為セリト認ムルトキハ裁判長ハ口頭弁論ヲ閉チ及ヒ裁判所ノ判決並ニ決定ヲ言渡ス
第百十条 口頭弁論ハ当事者ノ申立ヲ為スニ因リテ始マル
当事者ノ演述ハ事実上及ヒ法律上ノ点ニ於ケル訴訟関係ヲ包括ス可シ
口頭演述ニ換ヘテ書類ヲ援用スルコトヲ許サス文字上ノ旨趣ヲ要用トスルトキハ其要用ナル部分ニ限リ之ヲ朗読スルコトヲ得
第百十一条 各当事者ハ相手方ノ主張シタル事実ニ対シ陳述ヲ為ス可シ
明カニ争ハサル事実ハ原告若クハ被告ノ他ノ陳述ヨリ之ヲ争ハントスル意思カ顕レサルトキハ自白シタルモノト看做ス
不知ノ陳述ハ原告若クハ被告ノ自己ノ行為ニ非ス又自己ノ実験シタルモノニモ非サル事実ニ限リ之ヲ許ス此場合ニ於テ不知ヲ以テ答ヘタル事実ハ争ヒタルモノト看做ス
第百十二条 裁判長ハ職権上調査ス可キ点ニ関シ相手方ヨリ起ササル疑ノ存スルトキハ其疑ニ付キ注意ヲ為スコトヲ得
裁判長ハ問ヲ発シテ不明瞭ナル申立ヲ釈明シ主張シタル事実ノ不十分ナル証明ヲ補充シ証拠方法ヲ申出テ其他事件ノ関係ヲ定ムルニ必要ナル陳述ヲ為サシム可シ
陪席判事ハ裁判長ニ告ケテ問ヲ発スルコトヲ得
当事者ハ相手方ニ対シ自ラ問ヲ発スルコトヲ得ス然レトモ其問ヲ発ス可キ旨ヲ裁判長ニ求ムルコトヲ得
若シ其問ニ対シテ答ヘス又ハ判然答ヘサルトキハ相手方ノ利益ト為ル可キ答ヲ為シタルモノト看做スコトヲ得
第百十三条 事件ノ指揮ニ関スル裁判長ノ命又ハ裁判長若クハ陪席判事ノ発シタル問ニ対シ弁論ニ与カル者ヨリ不適法ナリトシテ異議ヲ述ヘタルトキハ裁判所ハ其異議ニ付キ直チニ裁判ヲ為ス
第百十四条 裁判所ハ事件ノ関係ヲ明瞭ナラシムル為メ原告若クハ被告ノ自身出頭ヲ命スルコトヲ得
第百十五条 裁判所ハ原告若クハ被告ノ援用シタル証書ニシテ其手中ニ存スルモノヲ提出ス可キヲ命スルコトヲ得
裁判所ハ外国語ヲ以テ作リタル証書ニ付テハ其訳書ヲ添附ス可キヲ命スルコトヲ得
第百十六条 裁判所ハ当事者ノ所持スル訴訟記録ニシテ事件ノ弁論及ヒ裁判ニ関スルモノヲ提出ス可キヲ命スルコトヲ得
第百十七条 裁判所ハ検証及ヒ鑑定ヲ命スルコトヲ得
此手続ハ申立ニ因リ命スル検証及ヒ鑑定ニ付テノ規定ニ従フ
第百十八条 裁判所ハ一箇ノ訴ニ於テ為シタル数箇ノ請求又ハ本訴及ヒ反訴ニ付テノ弁論ヲ分離シテ為ス可キヲ命スルコトヲ得
第百十九条 同一ノ請求ニ関シ数箇ノ独立ナル攻撃及ヒ防禦ノ方法ヲ提出シタルトキハ裁判所ハ先ツ弁論ヲ其一二ニ制限ス可キヲ命スルコトヲ得
第百二十条 裁判所ハ同一ノ人又ハ別異ノ人ノ数箇ノ訴訟ニシテ其裁判所ニ繋属スルモノノ弁論及ヒ裁判ヲ併合ス可キヲ命スルコトヲ得但其訴訟ノ目的物タル請求ヲ元来一箇ノ訴ニ於テ主張シ得ヘキトキニ限ル
第百二十一条 裁判所ハ訴訟ノ全部又ハ一分ノ裁判カ他ノ繋属スル訴訟ニ於テ定マル可キ権利関係ノ成立又ハ不成立ニ繋ルトキハ他ノ訴訟ノ完結ニ至ルマテ弁論ヲ中止ス可シ
第百二十二条 裁判所ハ民事訴訟中罰ス可キ行為ノ嫌疑生スルトキハ刑事訴訟手続ノ完結ニ至ルマテ弁論ヲ中止ス可シ但其罰ス可キ行為カ訴訟ノ裁判ニ影響ヲ及ホストキニ限ル
第百二十三条 裁判所ハ分離若クハ併合ニ関シ発シタル命ヲ取消スコトヲ得
第百二十四条 裁判所ハ閉チタル弁論ノ再開ヲ命スルコトヲ得
第百二十五条 裁判所ハ弁論ニ与カル者日本語ニ通セサルトキハ通事ヲ立会ハシム但裁判所構成法第百十八条ノ場合ハ此限ニ在ラス
第百二十六条 裁判所ハ弁論ニ与カル者聾又ハ唖ナルトキ之ニ文字ヲ以テ理会セシムルコトヲ得サル場合ニ限リ通事ヲ立会ハシムルコトヲ得
第百二十七条 裁判所ハ相当ノ演述ヲ為ス能力ノ欠ケタル原告若クハ被告又ハ訴訟代理人若クハ輔佐人ニ其後ノ演述ヲ禁シ且新期日ヲ定メ弁護士ヲシテ演述セシム可キコトヲ命ス可シ
裁判所ハ裁判所ニ於テ弁論ヲ業トスル訴訟代理人若クハ輔佐人ヲ退斥セシムルコトヲ得此場合ニ於テハ新期日ヲ定メ且退斥ノ決定ヲ原告若クハ被告ニ送達ス可シ
本条ノ規定ニ従ヒ為シタル命ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
弁護士ニハ本条ノ規定ヲ適用セス
第百二十八条 弁論ニ与カル者秩序維持ノ為メ弁論ノ場所ヨリ退斥セラレタルトキハ申立ニ因リ本人ノ任意ニ退去シタルト同一ノ方法ヲ以テ之ヲ取扱フコトヲ得但裁判所構成法第百十条ニ依リ中止シタル場合ハ此限ニ在ラス
前条ノ場合ニ於テ禁止又ハ退斥ノ命ヲ受ケタル者再ヒ出頭スルトキハ前項ノ方法ヲ以テ之ヲ取扱フコトヲ得
第百二十九条 口頭弁論ニ付テハ調書ヲ作ル可シ
調書ニハ左ノ諸件ヲ掲ク可シ
第一 弁論ノ場所、年月日
第二 判事、裁判所書記及ヒ立会ヒタル検事若クハ通事ノ氏名
第三 訴訟物及ヒ当事者ノ氏名
第四 出頭シタル当事者、法律上代理人、訴訟代理人及ヒ輔佐人ノ氏名若シ原告若クハ被告闕席シタルトキハ其闕席シタルコト
第五 公ニ弁論ヲ為シ又ハ公開ヲ禁シタルコト
第百三十条 弁論ノ進行ニ付テハ其要領ノミヲ調書ニ記載ス可シ
調書ニ記載シテ明確ニス可キ諸件ハ左ノ如シ
第一 自白、認諾、抛棄及ヒ和解
第二 明確ニス可キ規定アル申立及ヒ陳述
第三 証人及ヒ鑑定人ノ供述但其供述ハ以前聴カサルモノナルトキ又ハ以前ノ供述ニ異ナルトキニ限ル
第四 検証ノ結果
第五 書面ニ作リ調書ニ添附セサル裁判(判決、決定及ヒ命令)
第六 裁判ノ言渡
附録トシテ調書ニ添附シ且調書ニ附録トシテ表示シタル書類ニ於ケル記載ハ調書ニ於ケル記載ニ同シ
第百三十一条 前条第一号乃至第四号ニ掲ケタル調書ノ部分ハ法廷ニ於テ之ヲ関係人ニ読聞カセ又ハ閲覧ノ為メ之ヲ関係人ニ示ス
調書ニハ前項ノ手続ヲ履ミタルコト及ヒ承諾ヲ為シタルコト又ハ承諾ヲ拒ミタル理由ヲ附記ス可シ
第百三十二条 調書ニハ裁判長及ヒ裁判所書記署名捺印ス可シ
裁判長差支アルトキハ官等最モ高キ陪席判事之ニ代リ署名捺印ス区裁判所判事差支アルトキハ其裁判所書記ノ署名捺印ヲ以テ足ル
第百三十三条 受命判事若クハ受託判事又ハ区裁判所判事カ法廷外ニ於テ為ス審問ニモ亦裁判所書記ヲ立会ハシム
前四条ノ規定ハ右ノ審問調書ニ之ヲ準用ス
第百三十四条 口頭弁論ノ為メ規定シタル方式ノ遵守ハ調書ヲ以テノミ之ヲ証スルコトヲ得
第百三十五条 此法律ニ従ヒ口頭ヲ以テ訴、抗告、申立、申請及ヒ陳述ヲ為シ又ハ証言ヲ拒ム場合ニ於テハ裁判所書記ハ其調書ヲ作ル可シ
第二節 送達
第百三十六条 送達ハ裁判所書記職権ヲ以テ之ヲ為サシム
裁判所書記ハ執達吏ニ送達ノ施行ヲ委任シ又ハ送達ヲ施行ス可キ地ヲ管轄スル区裁判所ノ書記ニ送達ノ施行ヲ執達吏ニ委任ス可キコトヲ嘱託ス
裁判所書記ハ郵便ニ依リテモ亦送達ヲ為サシムルコトヲ得
第二項ノ場合ニ於テハ執達吏又第三項ノ場合ニ於テハ郵便配達人ヲ以下ニ規定スル送達吏ト為ス
第百三十七条 送達ハ其送達ス可キ書類ノ正本又ハ認証シタル謄本ヲ交付ス可キ規定アルトキハ其正本又ハ其謄本ノ交付ヲ以テ之ヲ為シ其他ノ場合ニ於テハ謄本ノ交付ヲ以テ之ヲ為ス
原告若クハ被告数人ノ代理人ニ為シ又ハ同一ナル原告若クハ被告ノ代理人数人中ノ一人ニ為ス可キ送達ハ謄本又ハ正本ノ一通ヲ交付スルヲ以テ足ル
第百三十八条 訴訟能力ヲ有セサル原告若クハ被告ニ対スル送達ハ其法律上代理人ニ之ヲ為ス
公又ハ私ノ法人及ヒ其資格ニ於テ訴ヘ又ハ訴ヘラルルコトヲ得ル会社又ハ社団ニ対スル送達ハ其首長又ハ事務担当者ニ之ヲ為スヲ以テ足ル
数人ノ首長若クハ事務担当者アル場合ニ於テハ送達ハ其一人ニ之ヲ為スヲ以テ足ル
第百三十九条 予備、後備ノ軍籍ニ在ラサル下士以下ノ軍人、軍属ニ対スル送達ハ其所属ノ長官又ハ隊長ニ之ヲ為ス
第百四十条 囚人ニ対スル送達ハ監獄署ノ首長ニ之ヲ為ス
第百四十一条 送達ハ財産権上ノ訴訟ニ付テハ総理代人ニ之ヲ為シ又商業上ヨリ生シタル訴訟ニ付テハ代務人ニ之ヲ為スヲ以テ原告若クハ被告ノ本人ニ為シタルト同一ノ効力ヲ有ス
第百四十二条 訴訟代理人アルトキハ送達ハ其代理人委任ノ旨趣ニ依リ原告若クハ被告ノ代理ヲ為ス権ヲ有スルトキニ限リ其代理人ニ之ヲ為ス
然レトモ原告若クハ被告ノ本人ニ為シタル送達ハ其訴訟代理人アルトキト雖モ効力ヲ有ス
第百四十三条 受訴裁判所ノ所在地ニ住居ヲモ事務所ヲモ有セサル原告若クハ被告ハ其所在地ニ仮住所ヲ選定シテ之ヲ届出ツ可シ
仮住所選定ノ届出ハ遅クトモ最近ノ口頭弁論ニ於テ之ヲ為シ又其前ニ書面ヲ差出ストキハ其書面ヲ以テ之ヲ為ス可シ
前項ノ届出ヲ為ササルトキハ裁判所書記又ハ其委任ヲ受ケタル吏員交付ス可キ書類ヲ原告若クハ被告ノ名宛ニテ郵便ニ付シテ送達ヲ為スコトヲ得此送達ハ其書類ノ原告若クハ被告ニ到達スルト否トヲ問ハス又何時ニ到達スルトヲ問ハス郵便ニ付シタル時ヲ以テ之ヲ為シタルモノト看做ス
第百四十四条 送達ハ何レノ地ヲ問ハス送達ヲ受ク可キ人ニ出会ヒタル地ニ於テ之ヲ為スコトヲ得然レトモ其人カ其地ニ住居又ハ事務所ヲ有スルトキ其住居又ハ事務所ノ外ニ於テ為シタル送達ハ其受取ヲ拒マサリシトキニ限リ効力ヲ有ス
第百三十八条第二項ノ場合ニ於テ特別ノ事務所アルトキハ其事務所ノ外ニ於テ法律上代理人又ハ首長若クハ事務担当者ニ為シタル送達ハ其受取ヲ拒マサリシトキニ限リ効力ヲ有ス
第百四十五条 送達ヲ受ク可キ人ニ住居ニ於テ出会ハサルトキハ其住居ニ於テスル送達ハ成長シタル同居ノ親族又ハ雇人ニ之ヲ為スコトヲ得
此規定ニ従ヒ送達ヲ施行スルコトヲ得サルトキハ其送達ハ交付ス可キ書類ヲ其地ノ市町村長ニ預置キ送達ノ告知書ヲ作リ之ヲ住居ノ戸ニ貼附シ且近隣ニ住居スル者二人ニ其旨ヲ口頭ヲ以テ通知シテ之ヲ為スコトヲ得
第百四十六条 住居ノ外ニ事務所ヲ有スル人ニ対スル送達ハ事務所ニ於テ之ニ出会ハサルトキハ其事務所ニ在ル営業使用人ニ之ヲ為スコトヲ得此規定ハ弁護士ニモ亦之ヲ適用ス但此場合ニ於ケル送達ハ筆生ニモ亦之ヲ為スコトヲ得
第百四十七条 第百三十八条第二項ノ場合ニ於テ法律上代理人又ハ首長若クハ事務担当者ニ事務所ニ於テ出会ハス又ハ此等ノ者受取ニ付キ差支アルトキハ送達ハ事務所ニ在ル他ノ役員又ハ雇人ニ之ヲ為スコトヲ得
第百四十八条 前二条ノ規定ニ従ヒ送達ヲ施行スルコトヲ得サルトキハ第百四十五条第二項ニ準シ送達ヲ為ス可シ但住居ニ於ケル送達ヲ施行スルヲ得サルコトノ明白ナルトキニ限ル
前項ノ場合ニ於テハ送達告知書ノ貼附ハ事務所又ハ住居ノ戸ニ之ヲ為ス
第百四十九条 法律上ノ理由ナクシテ送達ノ受取ヲ拒ムトキハ交付ス可キ書類ヲ送達ノ場所ニ差置ク可シ
第百五十条 日曜日及ヒ一般ノ祝祭日ニハ執達吏ノ為ス可キ送達ハ裁判官ノ許可ヲ得ルトキニ限リ之ヲ施行スルコトヲ得
前項ノ規定ハ郵便ニ付シテ為ス送達ヲ除ク外ハ夜間ニ為ス可キ送達ニ之ヲ適用ス夜間トハ日没ヨリ日出マテノ時間ヲ謂フ
右ノ許可ハ受訴裁判所ノ裁判長又ハ送達ヲ為ス可キ地ヲ管轄スル区裁判所ノ判事之ヲ与ヘ又ハ受命判事若クハ受託判事ノ完結ス可キ事件ニ在テハ其判事之ヲ与フ
許可ノ命令ハ認証シタル謄本ヲ以テ送達ノ際之ヲ交付ス可シ
本条ノ規定ヲ遵守セサル送達ハ之ヲ受取リタルトキニ限リ効力ヲ有ス
第百五十一条 送達ニ付テハ之ヲ施行スル吏員ハ送達ノ場所、年月日時、方法及ヒ受取人ノ受取証並ニ送達吏ノ署名捺印ヲ具備スル証書ヲ作ルコトヲ要ス
受取人受取ヲ拒ミ若クハ受取証ヲ出タスコトヲ拒ミタルトキ又ハ受取証ヲ作ルコト能ハサル旨ヲ述フルトキハ之ヲ送達証書ニ記載ス可シ
第百四十三条第三項ノ場合ニ於テハ郵便ニ付シタル吏員ノ報告書ヲ以テ送達ノ証ト為スニ足ル
第百五十二条 外国ニ在ル本邦ノ公使及ヒ公使館ノ官吏並ニ其家族、従者ニ対スル送達ハ外務大臣ニ嘱託シテ之ヲ為ス
第百五十三条 前条ノ場合ヲ除ク外外国ニ於テ施行ス可キ送達ハ外国ノ管轄官庁又ハ外国ニ駐在スル帝国ノ公使又ハ領事ニ嘱託シテ之ヲ為ス
第百五十四条 出陣ノ軍隊又ハ役務ニ服シタル軍艦ノ乗組員ニ属スル人ニ対スル送達ハ上班司令官庁ニ嘱託シテ之ヲ為スコトヲ得
第百五十五条 前三条ノ場合ニ於テ必要ナル嘱託書ハ受訴裁判所ノ裁判長之ヲ発ス
送達ハ嘱託ヲ受ケタル官庁又ハ官吏ノ送達施行済ノ証書ヲ以テ之ヲ証ス
第百五十六条 原告若クハ被告ノ現在地知レサルトキ又ハ外国ニ於テ為ス可キ送達ニ付テハ其規定ニ従フコト能ハス若クハ之ニ従フモ其効ナキコトヲ予知スルトキハ其送達ハ公ノ告示ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
第百五十七条 公示送達ハ原告若クハ被告ノ申立ニ因リ裁判所ノ命ヲ以テ裁判所書記之ヲ取扱フ
此送達ハ交付ス可キ書類ヲ裁判所ノ掲示板ニ貼附シテ之ヲ為ス判決及ヒ決定ニ在テハ其裁判ノ部分ノミヲ貼附ス可シ
右ノ外裁判所ハ送達ス可キ書類ノ抄本ヲ一箇又ハ数箇ノ新聞紙ニ一回又ハ数回掲載ス可キヲ命スルコトヲ得其抄本ニハ裁判所、当事者並ニ訴訟物及ヒ送達ス可キ書類ノ要旨ヲ掲クルコトヲ要ス
第百五十八条 公示送達ハ書類ノ貼附ヨリ十四日ヲ経過シタル日ヲ以テ之ヲ為シタルモノト看做ス然レトモ裁判所ハ公示送達ヲ命スルニ際シ此ヨリ長キ期間ヲ必要トスルトキハ相当ナル期間ヲ定ムルコトヲ得
同一ノ事件ニ付キ同一ノ原告若クハ被告ニ対シテ為ス其後ノ公示送達ハ貼附ヲ以テ之ヲ為シタルモノト看做ス
第三節 期日及ヒ期間
第百五十九条 期日ハ裁判長日及ヒ時ヲ以テ之ヲ定ム
第百六十条 期日ハ已ムヲ得サル場合ニ限リ日曜日及ヒ一般ノ祝祭日ニ之ヲ定ムルコトヲ得
第百六十一条 期日ニ付テノ呼出ハ裁判長ノ命ニ従ヒ裁判所書記正本ノ送達ヲ以テ之ヲ為ス但在廷シタル者ニ期日ヲ定メ出頭ヲ命シタルトキハ之ヲ送達スルコトヲ要セス
第百六十二条 期日ハ裁判所内ニ於テ之ヲ開ク但臨検又ハ裁判所ニ出頭スルニ差支アル人ノ審問其他裁判所内ニ於テ為スコトヲ得サル行為ヲ要スルトキハ此限ニ在ラス
第百六十三条 期日ハ事件ノ呼上ヲ以テ始マル
原告若クハ被告カ期日ノ終ニ至ルマテ弁論ヲ為ササルトキハ期日ヲ怠リタルモノト看做ス
第百六十四条 裁判所又ハ裁判長ノ定ムル期間ノ進行ハ期間ヲ定メタル書類ノ送達ヲ以テ始マリ又其送達ヲ要セサル場合ニ於テハ期間ノ言渡ヲ以テ始マル但期間指定ノ際此ヨリ遅キ起期ヲ定メタルトキハ此限ニ在ラス
第百六十五条 期間ヲ計算スルニ時ヲ以テスルモノハ即時ヨリ起算シ又日ヲ以テスルモノハ初日ヲ算入セス
第百六十六条 一日ノ期間ハ二十四時トシ一个月ノ期間ハ三十日トシ一个年ノ期間ハ暦ニ従フ
期間ノ終カ日曜日又ハ一般ノ祝祭日ニ当ルトキハ其日ヲ期間ニ算入セス
第百六十七条 法律上ノ期間ハ裁判所ノ所在地ニ住居セサル原告若クハ被告ノ為メ其住居地ト裁判所所在地トノ距離ノ割合ニ応シ海陸路八里毎ニ一日ヲ伸長ス八里以外ノ端数三里ヲ超ユルトキモ亦同シ
裁判所ハ外国又ハ島嶼ニ於テ住所ヲ有スル原告若クハ被告ノ為メ特ニ附加期間ヲ定ムルコトヲ得
第百六十八条 期間ノ進行ハ裁判所ノ休暇ニ依リテ停止ス其期間ノ残余ノ部分ハ休暇ノ終ヲ以テ其進行ヲ始ム期間ノ初カ休暇ニ当ルトキハ其期間ノ進行ハ休暇ノ終ヲ以テ始マル
前項ノ規定ハ不変期間及ヒ休暇事件ノ期間ニハ之ヲ適用セス
不変期間ハ此法律ニ於テ不変期間トシテ掲ケタル期間ニ限ル
休暇事件トハ裁判所構成法第百二十八条、第百二十九条ニ掲ケタル事件ヲ謂フ
第百六十九条 期日ノ変更、弁論ノ延期、弁論続行ノ期日ノ指定ハ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得但申立ニ因レル期日ノ変更ハ合意ノ場合ヲ除ク外顕著ナル理由アルトキニ限リ之ヲ許ス
第百七十条 期間ハ不変期間ヲ除ク外当事者ノ合意ノ申立ニ因リ之ヲ短縮シ又ハ伸長スルコトヲ得
裁判所又ハ裁判長ノ定ムル期間及ヒ法律上ノ期間ハ合意ナキモ申立ニ因リ顕著ナル理由アルトキハ之ヲ短縮シ又ハ伸長スルコトヲ得然レトモ法律上ノ期間ノ短縮又ハ伸長ハ此法律ニ特定シタル場合ニ限リ之ヲ許ス
伸長ニ係ル新期間ハ前期間ノ満了ヨリ之ヲ起算ス
第百七十一条 期日ノ変更又ハ期間ノ短縮若クハ伸長ニ付テノ申請ノ理由ハ之ヲ疏明ス可シ其申請ハ口頭ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
申請ノ裁判ハ口頭弁論ヲ経スシテ之ヲ為スコトヲ得
同一期日ノ再度ノ変更又ハ同一期間ノ再度ノ伸長ハ相手方ノ承諾書ヲ提出セサルトキハ相手方ヲ審訊シタル後ニ限リ之ヲ許スコトヲ得又相手方カ異議ヲ述フルトキハ顕著ナル差支ノ理由及ヒ其差支ヲ除去スルコトノ特別ナル困難ヲ生シタルコトヲ証スルトキニ限リ之ヲ許スコトヲ得訴訟代理人ノ差支ニ原因スル期日ノ再度ノ変更又ハ期間ノ再度ノ伸長ハ相手方ノ承諾アルニ非サレハ之ヲ許サス
期日ノ変更又ハ期間ノ伸長ニ付テノ申請ヲ却下スル裁判ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第百七十二条 本節ニ於テ裁判所及ヒ裁判長ニ与ヘタル権ハ受命判事又ハ受託判事モ亦其定ム可キ期日及ヒ期間ニ付キ之ヲ行フコトヲ得
第四節 懈怠ノ結果及ヒ原状回復
第百七十三条 訴訟行為ヲ怠リタル原告若クハ被告ハ其訴訟行為ヲ為ス権利ヲ失フ但此法律ニ於テ追完ヲ許ストキハ此限ニ在ラス
法律上懈怠ノ結果ハ当然生スルモノトス但此法律ニ於テ失権ヲ為サシムルコトニ付キ相手方ノ申立ヲ要スルトキハ此限ニ在ラス
第百七十四条 天災其他避ク可カラサル事変ノ為ニ不変期間ヲ遵守スルコトヲ得サル原告若クハ被告ニハ申立ニ因リ原状回復ヲ許ス
原告若クハ被告カ故障期間ヲ懈怠シタルトキハ其過失ニ非スシテ闕席判決ノ送達ヲ知ラサリシ場合ニ於テモ亦之ニ原状回復ヲ許ス
第百七十五条 原状回復ハ十四日ノ期間内ニ之ヲ申立ツルコトヲ要ス
右期間ハ障碍ノ止ミタル日ヲ以テ始マル此期間ハ当事者ノ合意ニ因リ之ヲ伸長スルコトヲ得ス
懈怠シタル不変期間ノ終ヨリ起算シテ一个年ノ満了後ハ原状回復ヲ申立ツルコトヲ得ス
第百七十六条 原状回復ハ追完スル訴訟行為ニ付キ裁判ヲ為ス権アル裁判所ニ書面ヲ差出シテ之ヲ申立ツ可シ
此書面ニハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 原状回復ノ原因タル事実
第二 原状回復ノ疏明方法
第三 懈怠シタル訴訟行為ノ追完
即時抗告ノ提出ヲ懈怠シタルトキハ原状回復ノ申立ハ不服ヲ申立テラレタル裁判ヲ為シタル裁判所又ハ抗告裁判所ニ之ヲ為スコトヲ得
第百七十七条 原状回復ノ申立ニ付テノ訴訟手続ハ追完スル訴訟行為ニ付テノ訴訟手続ト之ヲ併合ス然レトモ裁判所ハ先ツ申立ニ付テノ弁論及ヒ裁判ノミニ其訴訟手続ヲ制限スルコトヲ得
申立ノ許否ニ関スル裁判及ヒ其裁判ニ対スル不服ノ申立ニ付テハ追完スル訴訟行為ニ於テ行ハル可キ規定ヲ適用ス然レトモ申立ヲ為シタル原告若クハ被告ハ故障ヲ為スコトヲ得ス
原状回復ノ費用ハ申立人之ヲ負担ス但相手方ノ不当ナル異議ニ因リ生シタルモノハ此限ニ在ラス
第五節 訴訟手続ノ中断及ヒ中止
第百七十八条 原告若クハ被告ノ死亡シタル場合ニ於テハ承継人カ訴訟手続ヲ受継クマテ之ヲ中断ス
受継ヲ遅滞シタルトキハ裁判所ハ申立ニ因リ受継及ヒ本案弁論ノ為メ其承継人ヲ呼出ス
承継人期日ニ出頭セサルトキハ申立ニ因リ相手方ノ主張シタル承継ヲ自白シタルモノト看做シ且裁判所ハ闕席判決ヲ以テ承継人訴訟手続ヲ受継キタリト言渡ス又本案ノ弁論ハ故障期間ノ満了後始メテ之ヲ為シ又其期間内ニ故障ヲ申立テタルトキハ其完結後始メテ之ヲ為ス
第百七十九条 原告若クハ被告ノ財産ニ付キ破産ノ開始シタル場合ニ於テ訴訟手続カ破産財団ニ関スルトキハ破産ニ付テノ規定ニ従ヒ手続ヲ受継キ又ハ破産手続ヲ解止スルマテ之ヲ中断ス
第百八十条 原告若クハ被告カ訴訟能力ヲ失ヒ又ハ其法律上代理人カ死亡シ又ハ其代理権カ原告若クハ被告ノ訴訟能力ヲ得ル前ニ消滅シタルトキハ訴訟手続ハ法律上代理人又ハ新法律上代理人カ其任設ヲ相手方ニ通知シ又ハ相手方カ訴訟手続ヲ続行セントスルコトヲ其代理人ニ通知スルマテ之ヲ中断ス
第百八十一条 原告若クハ被告ノ死亡ニ因リ訴訟手続ヲ中断スル場合ニ於ケル訴訟手続ノ受継ニ関シ遺産ニ付キ管理人ヲ任設スルトキハ前条ノ規定又遺産ニ付キ破産ヲ開始スルトキハ第百七十九条ノ規定ヲ適用ス
第百八十二条 戦争其他ノ事故ニ因リ裁判所ノ行務ヲ止メタルトキハ此事情ノ継続間訴訟手続ヲ中断ス
第百八十三条 訴訟代理人ヲ以テ訴訟ヲ為ス場合ニ於テ原告若クハ被告カ死亡シ又ハ訴訟能力ヲ失ヒ又ハ法律上代理人カ死亡シ又ハ其代理権カ消滅スルトキハ委任消滅ノ通知ニ因リ訴訟手続ヲ中断ス
訴訟手続ノ受継ニ付テハ第百七十八条、第百八十条、第百八十一条ノ規定ニ従フ
第百八十四条 原告若クハ被告カ戦時兵役ニ服スルトキ又ハ官庁ノ布令、戦争其他ノ事変ニ因リ受訴裁判所ト交通ノ絶エタル地ニ在ルトキハ受訴裁判所ハ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ障碍ノ消除スルマテ訴訟手続ノ中止ヲ命スルコトヲ得
第百八十五条 訴訟手続中止ノ申請ハ受訴裁判所ニ之ヲ提出ス其申請ハ口頭ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
此裁判ハ口頭弁論ヲ経スシテ之ヲ為スコトヲ得
第百八十六条 訴訟手続ノ中断及ヒ中止ハ各期間ノ進行ヲ止メ及ヒ中断又ハ中止ノ終リタル後更ニ全期間ノ進行ヲ始ムル効力ヲ有ス
中断及ヒ中止ノ間本案ニ付キ為シタル原告若クハ被告ノ訴訟行為ハ他ノ一方ニ対シ其効力ナシ
口頭弁論ノ終結後ニ生シタル中断ハ其弁論ニ基キテ為ス可キ裁判ノ言渡ヲ妨クルコト無シ
第百八十七条 中断シ又ハ中止シタル訴訟手続ノ受継及ヒ本節ニ定メタル通知ハ原告若クハ被告ヨリ其書面ヲ受訴裁判所ニ差出シ裁判所ハ相手方ニ之ヲ送達ス可シ
第百八十八条 当事者ハ訴訟手続ヲ休止ス可キ合意ヲ為スコトヲ得其合意ハ不変期間ノ進行ニ影響ヲ及ホサス
口頭弁論ノ期日ニ於テ当事者双方出頭セサルトキハ訴訟手続ハ其一方ヨリ更ニ口頭弁論ノ期日ヲ定ム可キコトヲ申立ツルマテ之ヲ休止ス
一个年内ニ前項ノ申立ヲ為ササルトキハ本訴及ヒ反訴ヲ取下ケタルモノト看做ス
第百八十九条 本節ノ規定其他此法律ノ規定ニ基キ訴訟手続ノ中止ヲ命スル裁判ニ対シテハ抗告ヲ為スコトヲ得又其中止ヲ拒ム裁判ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第二編 第一審ノ訴訟手続
第一章 地方裁判所ノ訴訟手続
第一節 判決前ノ訴訟手続
第百九十条 訴ノ提起ハ訴状ヲ裁判所ニ差出シテ之ヲ為ス此訴状ニハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 当事者及ヒ裁判所ノ表示
第二 起シタル請求ノ一定ノ目的物及ヒ其請求ノ一定ノ原因
第三 一定ノ申立
此他訴状ハ準備書面ニ関スル一般ノ規定ニ従ヒ之ヲ作リ且裁判所ノ管轄カ訴訟物ノ価額ニ依リ定マル場合ニ於テ訴訟物カ一定ノ金額ニ非サルトキハ其価額ヲ掲ク可シ
第百九十一条 同一ノ被告ニ対スル原告ノ請求数箇アル場合ニ於テ其各請求ニ付キ受訴裁判所カ管轄権ヲ有シ且法律ニ於テ同一種類ノ訴訟手続ヲ許ストキハ原告ハ其請求ヲ一箇ノ訴ニ併合スルコトヲ得但民法ノ規定ニ反スルトキハ此限ニ在ラス
第百九十二条 訴状カ第百九十条第一号乃至第三号ノ規定ニ適セサルトキハ相当ノ期間ヲ定メ裁判長ノ命令ヲ以テ其期間内ニ欠欠ヲ補正ス可キコトヲ命ス若シ原告此命ニ従ハサルトキハ其期間ノ満了後訴状ヲ差戻ス可シ
此差戻ノ命令ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第百九十三条 訴状カ第百九十条第一号乃至第三号ノ規定ニ適スルトキハ口頭弁論ノ期日ヲ定メテ之ヲ被告ニ送達ス可シ
第百九十四条 訴状ノ送達ト口頭弁論ノ期日トノ間ニハ少ナクトモ二十日ノ時間ヲ存スルコトヲ要ス
外国ニ於テ送達ヲ施行ス可キトキハ裁判長相当ノ時間ヲ定ム
第百九十五条 訴訟物ノ権利拘束ハ訴状ノ送達ニ因リテ生ス
権利拘束ハ左ノ効力ヲ有ス
第一 権利拘束ノ継続中原告若クハ被告ヨリ同一ノ訴訟物ニ付キ他ノ裁判所ニ於テ本訴又ハ反訴ヲ以テ請求ヲ為シタルトキハ相手方ハ権利拘束ノ抗弁ヲ為スコトヲ得
第二 受訴裁判所ノ管轄ハ訴訟物ノ価額ノ増減、住所ノ変更其他管轄ヲ定ムル事情ノ変更ニ因リテ変換スルコト無シ
第三 原告ハ訴ノ原因ヲ変更スル権利ナシ但変更シタル訴ニ対シ本案ノ口頭弁論前被告カ異議ヲ述ヘサルトキハ此限ニ在ラス
第百九十六条 原告カ訴ノ原因ヲ変更セスシテ左ノ諸件ヲ為ストキハ被告ハ異議ヲ述フルコトヲ得ス
第一 事実上又ハ法律上ノ申述ヲ補充シ又ハ更正スルコト
第二 本案又ハ附帯請求ニ付キ訴ノ申立ヲ拡張シ又ハ減縮スルコト
第三 最初求メタル物ノ滅尽又ハ変更ニ因リ賠償ヲ求ムルコト
第百九十七条 訴ノ原因ニ変更ナシトスル裁判ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第百九十八条 訴ノ全部又ハ一分ハ本案ニ付キ被告ノ第一口頭弁論ノ始マルマテハ被告ノ承諾ナクシテ之ヲ取下ケ又其後口頭弁論ノ終結ニ至ルマテハ被告ノ承諾ヲ得テ之ヲ取下クルコトヲ得
訴ノ取下ハ口頭弁論ニ於テ之ヲ為ササルトキハ書面ヲ以テ之ヲ為ス可シ
訴状ヲ既ニ送達シタル場合ニ於テハ訴取下ノ書面ハ之ヲ被告ニ送達ス可シ
適法ナル取下ハ権利拘束ノ総テノ効力ヲ消滅セシムル結果ヲ生ス
取下ケタル訴ヲ再ヒ起シタルトキハ被告ハ前訴訟費用ノ弁済ヲ受クルマテ応訴ヲ拒ムコトヲ得
第百九十九条 訴状送達ノ際十四日ノ期間内ニ答弁書ヲ差出ス可キコトヲ被告ニ催告ス可シ
答弁書ニハ準備書面ニ関スル一般ノ規定ヲ適用ス
第二百条 訴カ管轄裁判所ニ於テ権利拘束ト為リタルトキハ被告ハ原告ニ対シ其裁判所ニ反訴ヲ起スコトヲ得
然レトモ財産権上ノ請求ニ非サル請求ニ係ル反訴又ハ目的物ニ付キ専属管轄ノ規定アル反訴ハ若シ其反訴カ本訴ナルトキ其裁判所ニ於テ管轄権ヲ有ス可キ場合ニ限リ之ヲ為スコトヲ許ス
反訴ニ対シテハ更ニ反訴ヲ為スコトヲ得ス
第二百一条 反訴ハ答弁書若クハ特別ノ書面ヲ以テ又ハ口頭弁論中相手方ノ面前ニ於テ口頭ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
然レトモ答弁書差出ノ期間内ニ差出シタル書面ヲ以テ起ササル反訴ハ被告ノ請求ノ全部又ハ一分ト相殺ヲ為ス可キ場合ニ於テ同時ニ被告カ自己ノ過失ニ因ラスシテ其以前反訴ヲ起スヲ得サリシコトヲ疏明スルトキニ限リ之ヲ為スコトヲ許ス
第二百二条 訴ニ関スル此法律ノ規定ハ反訴ニ之ヲ適用ス但其規定ニ因リ差異ノ生ス可キトキハ此限ニ在ラス
第二百三条 裁判長ハ申立ニ因リ其命令ヲ以テ第百九十九条ニ定メタル期間ヲ相当ニ短縮若クハ伸長シ又第百九十四条ニ定メタル時間ヲ切迫ナル危険ノ場合ニ限リ二十四時マテニ短縮スルコトヲ得
前項時間ノ短縮ハ此カ為メ答弁書ヲ差出スコトヲ得サルトキト雖モ亦之ヲ為スコトヲ得
本条ノ規定ハ第百六十七条ニ掲ケタル規定ヲ妨ケス
第二百四条 各当事者ハ訴状又ハ答弁書ニ掲ケサリシ事実上ノ主張若クハ証拠方法又ハ申立ニ付キ相手方カ予メ穿鑿ヲ為スニ非サレハ陳述ヲ為ス能ハスト予知スル事項アルトキハ口頭弁論ノ前ニ書面ニテ差出ス可シ但其書面ヲ相手方ニ送達スル時間及ヒ相手方ヲシテ必要ナル穿鑿ヲ為ス時間ヲ得セシム可シ
口頭弁論ノ延期ヲ為ストキハ裁判所ハ爾後必要ナル準備書面ヲ差出ス可キ期間ヲ定ムルコトヲ得
第二百五条 口頭弁論ハ一般ノ規定ニ従ヒテ之ヲ為ス
第二百六条 妨訴ノ抗弁ハ本案ニ付テノ被告ノ弁論前同時ニ之ヲ提出ス可シ
左ニ掲クルモノヲ妨訴ノ抗弁トス
第一 無訴権ノ抗弁
第二 裁判所管轄違ノ抗弁
第三 権利拘束ノ抗弁
第四 訴訟能力ノ欠欠又ハ法律上代理ノ欠欠ノ抗弁
第五 訴訟費用保証ノ欠欠ノ抗弁
第六 再訴ニ付キ前訴訟費用未済ノ抗弁
第七 延期ノ抗弁
本案ニ付キ被告ノ口頭弁論ノ始マリタル後ハ妨訴ノ抗弁ハ被告ノ有効ニ抛棄スルコトヲ得サルモノナルトキ又ハ被告ノ過失ニ非スシテ本案ノ弁論前ニ其抗弁ヲ主張スル能ハサリシコトヲ疏明スルトキニ限リ之ヲ主張スルコトヲ得
第二百七条 被告カ妨訴ノ抗弁ニ基キ本案ノ弁論ヲ拒ムトキ又ハ裁判所カ申立ニ因リ若クハ職権ヲ以テ別ニ弁論ヲ命スルトキハ其抗弁ニ付キ別ニ弁論ヲ為シ及ヒ判決ヲ以テ裁判ヲ為ス可シ
妨訴ノ抗弁ヲ棄却スル判決ハ上訴ニ関シテハ終局判決ト看做ス但裁判所ハ申立ニ因リ本案ニ付キ弁論ヲ為ス可キヲ命スルコトヲ得
第二百八条 裁判所ハ計算事件、財産分別及ヒ此ニ類スル訴訟ニ於テハ口頭弁論ヲ延期シ準備手続ヲ命スルコトヲ得但妨訴ノ抗弁アリタルトキハ其完結後之ヲ為ス
第二百九条 攻撃及ヒ防禦ノ方法(反訴、抗弁、再抗弁等)ハ第二百一条ニ規定スル制限ヲ以テ判決ニ接著スル口頭弁論ノ終結ニ至ルマテ之ヲ提出スルコトヲ得
第二百十条 被告ヨリ時機ニ後レテ提出シタル防禦ノ方法ハ裁判所カ若シ之ヲ許スニ於テハ訴訟ヲ遅延ス可ク且被告ハ訴訟ヲ遅延セシメントスル故意ヲ以テ又ハ甚シキ怠慢ニ因リ早ク之ヲ提出セサリシコトノ心証ヲ得タルトキハ申立ニ因リ之ヲ却下スルコトヲ得
第二百十一条 訴訟ノ進行中ニ争ト為リタル権利関係ノ成立又ハ不成立カ訴訟ノ裁判ノ全部又ハ一分ニ影響ヲ及ホストキハ判決ニ接著スル口頭弁論ノ終結ニ至ルマテ原告ハ訴ノ申立ノ拡張ニ依リ又被告ハ反訴ノ提起ニ依リ判決ヲ以テ其権利関係ヲ確定センコトヲ申立ツルコトヲ得
第二百十二条 訴状其他ノ準備書面ニ於テ主張セサル請求ノ権利拘束ハ口頭弁論ニ於テ其請求ヲ主張シタル時ヲ以テ始マル
第二百十三条 各当事者ハ事実上ノ主張ヲ証明シ又ハ之ヲ弁駁セン為ニ用井ントスル証拠方法ヲ開示シ且相手方ヨリ開示シタル証拠方法ニ付キ陳述ス可シ
各箇ノ証拠方法ニ付テノ証拠申出及ヒ之ニ関スル陳述ハ第六節乃至第十節ノ規定ニ従フ
第二百十四条 証拠方法及ヒ証拠抗弁ハ判決ニ接著スル口頭弁論ノ終結ニ至ルマテ之ヲ主張スルコトヲ得
証拠方法及ヒ証拠抗弁ノ時機ニ後レタル提出ニ付テハ第二百十条ノ規定ヲ準用ス
第二百十五条 証拠調並ニ証拠決定ヲ以テスル特別ノ証拠調手続ノ命令ハ第五節乃至第十節ノ規定ニ従フ
第二百十六条 当事者ハ訴訟ノ関係ヲ表明シ証拠調ノ結果ニ付キ弁論ヲ為ス可シ
受命判事又ハ受託判事ノ面前ニ於テ証拠調ヲ為シタルトキハ当事者ハ証拠調ニ関スル審問調書ニ基キ其結果ヲ演述ス可シ
第二百十七条 裁判所ハ民法又ハ此法律ノ規定ニ反セサル限リハ弁論ノ全旨趣及ヒ或ル証拠調ノ結果ヲ斟酌シ事実上ノ主張ヲ真実ナリト認ム可キヤ否ヤヲ自由ナル心証ヲ以テ判断ス可シ
第二百十八条 裁判所ニ於テ顕著ナル事実ハ之ヲ証スルコトヲ要セス
第二百十九条 地方慣習法、商慣習及ヒ規約又ハ外国ノ現行法ハ之ヲ証ス可シ裁判所ハ当事者カ其証明ヲ為スト否トニ拘ハラス職権ヲ以テ必要ナル取調ヲ為スコトヲ得
第二百二十条 此法律ノ規定ニ依リ事実上ノ主張ヲ疏明ス可キトキハ裁判官ヲシテ其主張ヲ真実ナリト認メシム可キ証拠方法ヲ申出ツルヲ以テ足ル但即時ニ為スコトヲ得サル証拠調ハ疏明ノ方法トシテハ之ヲ許サス
第二百二十一条 裁判所ハ事件ノ如何ナル程度ニ在ルヲ問ハス自ラ又ハ受命判事若クハ受託判事ニ依リ訴訟又ハ或ル争点ノ和解ヲ試ムル権アリ和解ヲ試ムル為ニハ当事者ノ自身出頭ヲ命スルコトヲ得
第二百二十二条 判決ヲ受ク可キ事項ノ申立ハ書面ニ基キ之ヲ為スコトヲ要ス
書面ニ掲ケサル申立アルトキハ調書ニ附録トシテ添附ス可キ書面ヲ差出シテ之ヲ為スコトヲ要ス
重要ノ点ニ於テ以前申立テタルモノト異ナル申立ニ付テモ亦同シ
本条ノ規定ヲ遵守セサルトキハ申立ナキモノト看做ス
第二百二十三条 前条ノ申立ヲ除ク外書面ニ掲ケサル重要ナル陳述又ハ其書面ノ旨趣ト重要ノ点ニ於テ差異ノ存スル事項ハ其差異カ附加、削除其他ノ変更ニ係ルヲ問ハス申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ調書若クハ其附録トシテ添附ス可キ為メ差出シタル書面ニ依リテ之ヲ明確ニス可シ
第二百二十四条 当事者ハ訴訟記録ヲ閲覧シ且裁判所書記ヲシテ其正本、抄本及ヒ謄本ヲ付与セシムルコトヲ得
裁判長ハ第三者カ権利上ノ利害ヲ疏明スルトキニ限リ当事者ノ承諾ナクシテ訴訟記録ノ閲覧及ヒ其抄本並ニ謄本ノ付与ヲ許スコトヲ得
判決、決定命令ノ草案及ヒ其準備ニ供シタル書類並ニ評議又ハ処罰ニ関スル書類ハ其原本ナルト謄本ナルトヲ問ハス之ヲ閲覧スルコトヲ許サス
第二節 判決
第二百二十五条 訴訟カ裁判ヲ為スニ熟スルトキハ裁判所ハ終局判決ヲ以テ裁判ヲ為ス
同時ニ弁論及ヒ裁判ヲ為ス為メ併合シタル数箇ノ訴訟中ノ一ノミ裁判ヲ為スニ熟スルトキモ亦同シ
第二百二十六条 一ノ訴ヲ以テ起シタル数箇ノ請求中ノ一箇又ハ一箇ノ請求中ノ一分又ハ反訴ヲ起シタル場合ニ於テハ本訴若クハ反訴ノミ裁判ヲ為スニ熟スルトキハ裁判所ハ終局判決(一分判決)ヲ以テ裁判ヲ為ス
然レトモ裁判所ハ事件ノ事情ニ従ヒテ一分判決ヲ相当トセサルトキハ之ヲ為ササルコトヲ得
第二百二十七条 各箇ノ独立ナル攻撃若クハ防禦ノ方法又ハ中間ノ争カ裁判ヲ為スニ熟スルトキハ中間判決ヲ以テ裁判ヲ為スコトヲ得
第二百二十八条 請求ノ原因及ヒ数額ニ付キ争アルトキハ裁判所ハ先ツ其原因ニ付キ裁判ヲ為スコトヲ得
請求ノ原因ヲ正当ナリトスル判決ハ上訴ニ関シテハ終局判決ト看做シ其判決確定ニ至ルマテ爾後ノ手続ヲ中止ス然レトモ裁判所ハ申立ニ因リ其数額ニ付キ弁論ヲ為ス可キヲ命スルコトヲ得
第二百二十九条 口頭弁論ノ際原告其訴ヘタル請求ヲ抛棄シ又ハ被告之ヲ認諾スルトキハ裁判所ハ申立ニ因リ其抛棄又ハ認諾ニ基キ判決ヲ以テ却下又ハ敗訴ノ言渡ヲ為ス可シ
第二百三十条 判決ハ弁論ヲ経タル総テノ攻撃及ヒ防禦ノ方法ヲ包括ス
然レトモ数箇ノ独立ナル攻撃又ハ防禦ノ方法中其一箇ヲ適切ナリトスルトキハ裁判所ハ他ノ方法ニ付キ判断スル義務ナシ
第二百三十一条 裁判所ハ申立テサル事物ヲ原告若クハ被告ニ帰セシムル権ナシ
裁判所ハ終局判決ヲ為ス場合ニ於テハ訴訟費用ノ負担ニ限リ申立アラサルモ判決ヲ為ス可シ然レトモ一分判決ヲ為ス場合ニ於テハ費用ノ裁判ヲ後ノ判決ニ譲ルコトヲ得
第二百三十二条 判決ハ其基本タル口頭弁論ニ臨席シタル判事ニ限リ之ヲ為ス
第二百三十三条 判決ハ口頭弁論ノ終結スル期日又ハ直チニ指定スル期日ニ於テ之ヲ言渡ス但其期日ハ七日ヲ過クルコトヲ得ス
第二百三十四条 判決ノ言渡ハ判決主文ノ朗読ニ因リ之ヲ為ス闕席判決ノ言渡ハ其主文ヲ作ラサル前ト雖モ之ヲ為スコトヲ得
裁判ノ理由ヲ言渡スコトヲ至当ト認ムルトキハ判決ノ言渡ト同時ニ其理由ヲ朗読シ又ハ口頭ニテ其要領ヲ告ク可シ
第二百三十五条 判決ノ言渡ハ当事者又ハ其一方ノ在廷スルト否トニ拘ハラス其効力ヲ有ス
言渡アリタル判決ニ基キ訴訟手続ヲ続行シ又ハ他ニ其判決ヲ使用スル原告若クハ被告ノ権ハ此法律ニ特定シタル場合ヲ除ク外相手方ニ其判決ヲ送達スルト否トニ拘ハラサルモノトス
第二百三十六条 判決ニハ左ノ諸件ヲ掲ク可シ
第一 当事者及ヒ其法律上代理人ノ氏名、身分、職業及ヒ住所
第二 事実及ヒ争点ノ摘示但其摘示ハ当事者ノ口頭演述ニ基キ殊ニ其提出シタル申立ヲ表示シテ之ヲ為ス
第三 裁判ノ理由
第四 判決主文
第五 裁判所ノ名称、裁判ヲ為シタル判事ノ官氏名
第二百三十七条 判決ノ原本ニハ裁判ヲ為シタル判事署名捺印ス若シ陪席判事署名捺印スルニ差支アルトキハ其理由ヲ開示シテ裁判長其旨ヲ附記シ裁判長差支アルトキハ官等最モ高キ陪席判事之ヲ附記ス
判決ノ原本ハ言渡ノ日ヨリ起算シテ七日内ニ裁判所書記ニ之ヲ交付ス可シ
裁判所書記ハ言渡ノ日及ヒ原本領収ノ日ヲ原本ニ附記シ且其附記ニ署名捺印ス可シ
第二百三十八条 各当事者ハ判決ノ送達アランコトヲ申立ツルコトヲ得其申立アリタルトキハ判決ノ正本ヲ送達ス可シ
第二百三十九条 未タ判決ヲ言渡サス又ハ未タ判決ノ原本ニ署名捺印セサル間ハ裁判所書記ハ其正本、抄本及ヒ謄本ヲ付与スルコトヲ得ス
裁判所書記ハ判決ノ正本、抄本及ヒ謄本ニ署名捺印シ且裁判所ノ印ヲ捺シテ之ヲ認証ス可シ
第二百四十条 裁判所ハ其言渡シタル終局判決及ヒ中間判決ノ中ニ包含シタル裁判ニ羈束セラル
第二百四十一条 裁判所ハ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ何時ニテモ判決中ノ違算、書損及ヒ此ニ類スル著シキ誤謬ヲ更正ス
此更正ニ付テハ口頭弁論ヲ経スシテ裁判ヲ為スコトヲ得
右更正ノ申立ヲ却下スル決定ニ対シテハ上訴ヲ為スコトヲ得ス更正ヲ宣言スル決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第二百四十二条 主タル請求若クハ附帯ノ請求又ハ費用ノ全部若クハ一分ノ裁判ヲ為スニ際シ脱漏シタルトキハ申立ニ因リ追加ノ裁判ヲ以テ判決ヲ補充ス可シ
判決ノ言渡後直チニ追加裁判ノ申立ヲ為ササルトキハ遅クトモ判決ノ正本ヲ送達シタル日ヨリ起算シテ七日ノ期間内ニ之ヲ為スコトヲ要ス
追加裁判ノ申立アルトキハ即時ニ又ハ新期日ヲ定メテ口頭弁論ヲ為サシム可シ其弁論ハ訴訟ノ完結セサル部分ニ限リ之ヲ為ス
第二百四十三条 判決ヲ更正シ又ハ補充スル裁判ハ判決ノ原本及ヒ正本ニ之ヲ追加シ若シ正本ニ之ヲ追加スルコトヲ得サルトキハ更正又ハ補充ノ裁判ノ正本ヲ作ル可シ
第二百四十四条 判決ハ其主文ニ包含スルモノニ限リ確定力ヲ有ス
第二百四十五条 口頭弁論ニ基キ為ス裁判所ノ決定ハ之ヲ言渡スコトヲ要ス
第二百三十三条、第二百三十四条ノ規定ハ裁判所ノ決定ニ之ヲ準用シ又第二百三十五条、第二百三十九条及ヒ第二百四十条ノ規定ハ裁判所ノ決定及ヒ裁判長並ニ受命判事又ハ受託判事ノ命令ニ之ヲ準用ス
言渡ヲ為ササル裁判所ノ決定及ヒ言渡ヲ為ササル裁判長並ニ受命判事又ハ受託判事ノ命令ハ職権ヲ以テ之ヲ当事者ニ送達ス可シ
第三節 闕席判決
第二百四十六条 原告若クハ被告口頭弁論ノ期日ニ出頭セサル場合ニ於テハ出頭シタル相手方ノ申立ニ因リ闕席判決ヲ為ス
第二百四十七条 出頭セサル一方カ原告ナルトキハ裁判所ハ闕席判決ヲ以テ其訴ノ却下ヲ言渡ス可シ
第二百四十八条 出頭セサル一方カ被告ナルトキハ裁判所ハ被告カ原告ノ事実上ノ口頭供述ヲ自白シタルモノト看做シ原告ノ請求ヲ正当ト為ストキハ闕席判決ヲ以テ被告ノ敗訴ヲ言渡シ又其請求ヲ正当ト為ササルトキハ其訴ノ却下ヲ言渡ス可シ
第二百四十九条 延期シタル口頭弁論ノ期日又ハ口頭弁論ヲ続行スル為ニ定ムル期日モ亦第二百四十六条ノ弁論期日ニ同シ
第二百五十条 原告若クハ被告出頭スルモ弁論ヲ為ササルトキ又ハ弁論ヲ為サスシテ任意ニ退廷シタルトキハ出頭セサルモノト看做ス
第二百五十一条 原告若クハ被告カ本案ノ弁論ヲ為シタルトキハ各箇ノ事実、証書又ハ発問ニ付キ陳述ヲ為サス又ハ任意ニ退廷スルモ本節ノ規定ヲ適用セス
第二百五十二条 左ノ場合ニ於テハ闕席判決ノ申立ヲ却下ス然レトモ出頭シタル原告若クハ被告ハ口頭弁論ノ延期ヲ申立ツルコトヲ得
第一 出頭シタル原告若クハ被告カ裁判所ノ職権上調査ス可キ事情ニ付キ必要ナル証明ヲ為ス能ハサルトキ
第二 出頭セサル原告若クハ被告ニ口頭上事実ノ供述又ハ申立ヲ適当ナル時期ニ書面ヲ以テ通知セサルトキ
弁論ヲ延期シタルトキハ出頭セサル原告若クハ被告ヲ新期日ニ呼出ス可シ
第二百五十三条 闕席判決ノ申立ヲ却下スル決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得又其決定ヲ取消シタルトキハ出頭セサリシ原告若クハ被告ヲ新期日ニ呼出サスシテ闕席判決ヲ為ス
第二百五十四条 裁判所ハ左ノ場合ニ於テハ職権ヲ以テ闕席判決ノ申立ニ付テノ弁論ヲ延期スルコトヲ得
第一 出頭セサル原告若クハ被告カ合式ニ呼出サレサリシトキ
第二 出頭セサル原告若クハ被告カ天災其他避ク可カラサル事変ノ為ニ出頭スル能ハサルコトノ真実ト認ム可キ事情アルトキ
出頭セサリシ原告若クハ被告ハ新期日ニ之ヲ呼出ス可シ
第二百五十五条 闕席判決ヲ受ケタル原告若クハ被告ハ其判決ニ対シ故障ヲ申立ツルコトヲ得
故障申立ノ期間ハ十四日トス此期間ハ不変期間ニシテ闕席判決ノ送達ヲ以テ始マル
故障申立ハ判決ノ送達前ト雖モ之ヲ為スコトヲ得
外国ニ於テ送達ヲ為ス可キトキ又ハ公ノ告示ヲ以テ之ヲ為ス可キトキハ裁判所ハ闕席判決ニ於テ故障期間ヲ定メ又ハ後日決定ヲ以テ之ヲ定ム此決定ハ口頭弁論ヲ経スシテ為スコトヲ得
第二百五十六条 故障申立ハ闕席判決ヲ為シタル裁判所ニ書面ヲ差出シテ之ヲ為ス
此書面ニハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 故障ヲ申出テラレタル闕席判決ノ表示
第二 其判決ニ対スル故障ノ申立
此書面ニハ本案ニ付テノ口頭弁論準備ノ為ニ必要ナル事項アルトキモ亦之ヲ掲ク可シ
第二百五十七条 判然許ス可カラサル故障又ハ判然法律上ノ方式ニ適セス若クハ其期間ノ経過後ニ起シタル故障ハ裁判長ノ命令ヲ以テ之ヲ却下ス可シ
此却下ノ命令ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第二百五十八条 前条ノ場合ヲ除ク外裁判所ハ故障申立ノ書面ヲ相手方ニ送達シ且故障ニ付キ口頭弁論ノ新期日ヲ定メ当事者ノ双方ヲ呼出ス可シ
第二百五十九条 裁判所ハ職権ヲ以テ故障ヲ許ス可キヤ否ヤ又法律上ノ方式ニ従ヒ若クハ其期間ニ於テ故障ヲ申立テタルヤ否ヤヲ調査ス可シ
若シ此要件ノ一ヲ欠クトキハ判決ヲ以テ故障ヲ不適法トシテ棄却ス
第二百六十条 故障ヲ適法トスルトキハ訴訟ハ闕席前ノ程度ニ復ス
第二百六十一条 新弁論ニ基キ為ス可キ判決カ闕席判決ト符合スルトキハ闕席判決ヲ維持スルコトヲ言渡シ其符合セサル場合ニ於テハ新判決ニ於テ闕席判決ヲ廃棄ス
第二百六十二条 法律ニ従ヒ闕席判決ヲ為シタルトキ闕席ニ因リテ生シタル費用ハ相手方ノ不当ナル異議ニ因リ生セサルモノニ限リ故障ノ為メ闕席判決ヲ変更スル場合ニ於テモ其闕席シタル原告若クハ被告ニ之ヲ負担セシム
第二百六十三条 故障ヲ申立テタル原告若クハ被告口頭弁論ノ期日又ハ弁論延期ノ期日ニ出頭セサルトキハ第二百五十二条及ヒ第二百五十四条ニ規定シタル場合ヲ除ク外出頭シタル相手方ノ申立ニ因リ故障ヲ棄却スル新闕席判決ヲ言渡ス
新闕席判決ニ対シテハ故障ヲ申立ツルコトヲ得ス
第二百六十四条 故障ノ抛棄及ヒ其取下ニ付テハ控訴ノ抛棄及ヒ其取下ニ付テノ規定ヲ準用ス
第二百六十五条 本節ノ規定ハ反訴又ハ既ニ原因ノ確定シタル請求ノ数額ノ定ヲ目的物トスル訴訟手続ニ之ヲ準用ス
中間訴訟ノ弁論ノ為メ期日ヲ定メタルトキハ其闕席訴訟手続及ヒ闕席判決ハ其中間訴訟ヲ完結スルニ止マリ本節ノ規定ヲ之ニ準用ス
第四節 計算事件、財産分別及ヒ此ニ類スル訴訟ノ準備手続
第二百六十六条 計算ノ当否、財産ノ分別又ハ此ニ類スル関係ヲ目的トスル訴訟ニ於テ計算書又ハ財産目録ニ対シ許多ノ争アル請求ノ生シ又ハ許多ノ争アル異議ノ生シタルトキハ受訴裁判所ハ受命判事ノ面前ニ於ケル準備手続ヲ命スルコトヲ得
第二百六十七条 準備手続ヲ命スル決定ヲ言渡スニ際シ裁判長ハ受命判事ヲ指定シ決定施行ノ期日ヲ定ム可シ若シ裁判長此期日ヲ定メサルトキハ受命判事之ヲ定ム又受命判事其委任ヲ施行スルニ差支アルトキハ裁判長更ニ他ノ判事ヲ任ス
第二百六十八条 準備手続ニ於テハ調書ヲ以テ左ノ諸件ヲ明確ニス可シ
第一 如何ナル請求ヲ為スヤ及ヒ如何ナル攻撃、防禦ノ方法ヲ主張スルヤ
第二 如何ナル請求及ヒ如何ナル攻撃、防禦ノ方法ヲ争フヤ又ハ之ヲ争ハサルヤ
第三 争ト為リタル請求及ヒ争ト為リタル攻撃、防禦ノ方法ニ付テハ其事実上ノ関係及ヒ当事者ノ表示シタル証拠方法、主張シタル証拠抗弁、証拠方法並ニ証拠抗弁ニ関シテ為シタル陳述及ヒ提出シタル申立
此手続ハ受訴裁判所ニ於テ訴訟又ハ中間訴訟カ判決又ハ証拠決定ヲ為スニ熟スルマテ之ヲ続行ス可シ
第二百六十九条 原告若クハ被告カ期日ニ於テ受命判事ノ面前ニ出頭セサルトキハ受命判事ハ前条ノ規定ニ依リ調書ヲ以テ出頭シタル原告若クハ被告ノ提供ヲ明確ニシ且新期日ヲ定メ出頭セサル原告若クハ被告ニハ調書ノ謄本ヲ付与シテ新期日ニ之ヲ呼出ス可シ
原告若クハ被告カ新期日ニモ亦出頭セサルトキハ送達セシ調書ニ掲ケタル相手方ノ事実上ノ主張ヲ自白シタリト看做シ其主張ニ付テノ準備手続ハ完結シタルモノトス
第二百七十条 受訴裁判所ハ準備手続ノ終結後ニ口頭弁論ノ期日ヲ定メ之ヲ当事者ニ通知ス可シ
第二百七十一条 当事者ハ口頭弁論ニ於テ準備手続ノ結果ヲ調書ニ基キ演述ス可シ
原告若クハ被告カ出頭セサルトキハ準備手続ニ於テ争ハサル請求ハ一分判決ヲ以テ之ヲ完結ス其他ニ付テハ申立ニ因リテ闕席判決ヲ為ス可シ
第二百七十二条 受命判事ノ調書ヲ以テ明確ニス可キ事実又ハ証書ニ付キ陳述ヲ為サス又ハ之ヲ拒ミタルトキハ口頭弁論ニ於テ之ヲ追完スルコトヲ得ス
請求、攻撃若クハ防禦ノ方法、証拠方法及ヒ証拠抗弁ニシテ受命判事ノ調書ヲ以テ之ヲ明確ニセサルモノニ付テハ後日ニ至リ始メテ生シ又ハ後日ニ至リ始メテ原告若クハ被告ノ知リタルコトヲ疏明スルトキニ限リ口頭弁論ニ於テ之ヲ主張スルコトヲ得
第五節 証拠調ノ総則
第二百七十三条 証拠調ハ受訴裁判所ニ於テ之ヲ為スヲ以テ通例トス
証拠調ハ此法律ニ定メタル場合ニ限リ受訴裁判所ノ部員一名ニ之ヲ命シ又ハ区裁判所ニ之ヲ嘱託スルコトヲ得
此証拠調ヲ命スル決定ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第二百七十四条 当事者ノ申立テタル数多ノ証拠中其調フ可キ限度ハ裁判所之ヲ定ム
当事者ノ演述ニ引続キ直チニ証拠調ヲ為サスシテ受訴裁判所ニ於テ新期日ニ之ヲ為シ又ハ受命判事若クハ受託判事ノ面前ニ於テ之ヲ為ス可キトキハ証拠決定ニ因リ之ヲ命ス可シ
第二百七十五条 証拠調ニ付キ不定時間ノ障碍アルトキハ申立ニ因リ相当ノ期間ヲ定ム可シ此期間ノ満了後ト雖モ訴訟手続ヲ遅滞セシメサル限リハ其証拠方法ヲ用井ルコトヲ得
第二百七十六条 証拠決定ニハ左ノ諸件ヲ掲ク可シ
第一 証ス可キ係争事実ノ表示
第二 証拠方法ノ表示殊ニ証人又ハ鑑定人ヲ訊問ス可キトキハ其表示
第三 証拠方法ヲ申出テタル原告若クハ被告ノ表示
第二百七十七条 証拠決定ノ変更ハ其決定ノ施行完結前ニ在リテ新ナル弁論ニ基クトキニ限リ之ヲ申立ツルコトヲ得
証拠決定ノ施行ハ職権ヲ以テ之ヲ為ス
第二百七十八条 受訴裁判所ノ部員カ証拠調ヲ為ス可キトキハ裁判長証拠決定言渡ノ際受命判事ヲ指名シ且証拠調ノ期日ヲ定ム若シ其期日ヲ定メサルトキハ受命判事之ヲ定ム
受命判事其命ヲ施行スルニ差支アルトキハ裁判長更ニ他ノ部員ヲ命ス
第二百七十九条 他ノ裁判所ニ於テ証拠調ヲ為ス可キトキハ裁判長ハ其嘱託書ヲ発ス可シ
証拠調ニ関スル書類ハ原本ヲ以テ受託判事ヨリ受訴裁判所書記ニ之ヲ送致シ其書記ハ之ヲ受領シタルコトヲ当事者ニ通知ス可シ
第二百八十条 受命判事又ハ受託判事カ証拠調ノ期日ヲ定メタルトキハ其期日及ヒ場所ヲ当事者ニ通知ス可シ
第二百八十一条 外国ニ於テ為ス可キ証拠調ハ外国ノ管轄官庁又ハ其国駐在ノ帝国ノ公使若クハ領事ニ嘱託シテ之ヲ為ス其嘱託ニ付テハ第百五十二条及ヒ第百五十五条ノ規定ヲ準用ス
第二百八十二条 受命判事又ハ受託判事ハ他ノ裁判所ニ於テ証拠調ヲ為ス可キコトノ至当ナル原因ノ爾後ニ生シタルトキハ其裁判所ニ証拠調ヲ嘱託スルコトヲ得此嘱託ヲ為シタルトキハ当事者ニ之ヲ通知ス可シ
第二百八十三条 受命判事又ハ受託判事ノ面前ニ於テ証拠調ノ際ニ争ヲ生シ其争ノ完結スルニ非サレハ証拠調ヲ続行スルコトヲ得ス且其判事之ヲ裁判スル権ナキトキハ其完結ハ受訴裁判所之ヲ為ス
第二百八十四条 当事者ノ一方又ハ双方証拠調ノ期日ニ出頭セサルトキハ事件ノ程度ニ因リ為シ得ヘキ限リハ証拠調ヲ為ス可シ
原告若クハ被告ノ出頭セサルカ為ニ証拠調ノ全部又ハ一分ヲ為スコトヲ得サル場合ニ於テハ其追完又ハ補充ハ此カ為メ訴訟手続ノ遅滞セサルトキ又ハ挙証者其過失ニ非スシテ前期日ニ出頭スル能ハサリシコトヲ疏明スルトキニ限リ判決ニ接著スル口頭弁論ノ終結ニ至ルマテ申立ニ因リ之ヲ命ス
第二百八十五条 裁判所ハ事件ノ未タ判決ヲ為スニ熟セスト認ムルトキハ証拠調ノ補充ヲ決定スルコトヲ得
第二百八十六条 証拠調又ハ其続行ノ為メ新期日ヲ定ムル必要アルトキハ挙証者又ハ当事者双方前期日ニ出頭セサリシトキト雖モ職権ヲ以テ之ヲ定ム
第二百八十七条 受訴裁判所ニ於テ証拠調ヲ為ストキハ其期日ハ同時ニ口頭弁論ヲ続行スル期日ナリトス
受命判事又ハ受託判事ノ面前ニ於テ証拠調ヲ為ス可キコトヲ命シタルトキハ受訴裁判所ハ証拠決定中ニ併セテ口頭弁論続行ノ期日ヲ定ムルコトヲ得若シ之ヲ定メサルトキハ証拠調ノ終結後職権ヲ以テ其期日ヲ定メ之ヲ当事者ニ通知ス可シ
第二百八十八条 挙証者ハ裁判所ノ定ムル期間内ニ証拠調ノ費用ヲ予納ス可シ若シ其期間内ニ予納セサルトキハ証拠調ヲ為サス但期間ノ満了後ト雖モ予納シタルトキハ訴訟手続ノ遅滞ヲ生セサル場合ニ限リ証拠調ヲ許ス
第六節 人証
第二百八十九条 何人ヲ問ハス法律ニ別段ノ規定ナキ限リハ民事訴訟ニ関シ裁判所ニ於テ証言スル義務アリ
第二百九十条 官吏、公吏ハ退職ノ後ト雖モ其職務上黙秘ス可キ義務アル事情ニ付テハ其所属庁又ノ其最後ノ所属庁ノ許可ヲ得タルトキニ限リ証人トシテ之ヲ訊問スルコトヲ得大臣ニ付テハ勅許ヲ得ルコトヲ要ス
此許可ハ証言カ国家ノ安寧ヲ害スル恐アルトキニ限リ之ヲ拒ムコトヲ得
右許可ハ受訴裁判所ヨリ之ヲ求メ且証人ニ之ヲ通知ス可シ
第二百九十一条 人証ノ申出ハ証人ヲ指名シ及ヒ証人ノ訊問ヲ受ク可キ事実ヲ表示シテ之ヲ為ス
第二百九十二条 証人ノ呼出状ニハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 証人及ヒ当事者ノ表示
第二 証拠決定ノ旨趣ニ依リ訊問ヲ為ス可キ事実ノ表示
第三 証人ノ出頭ス可キ場所及ヒ日時
第四 出頭セサルトキハ法律ニ依リ処罰ス可キ旨
第五 裁判所ノ名称
第二百九十三条 予備、後備ノ軍籍ニ在ラサル軍人、軍属ヲ証人トシテ呼出スニハ其所属ノ長官又ハ隊長ニ嘱託シテ之ヲ為ス其長官又ハ隊長ハ期日ヲ遵守セシムル為ニ其呼出ヲ受ケタル者ノ闕勤ヲ許ス可シ若シ軍務上之ヲ許ス能ハサルトキハ其旨ヲ裁判所ニ通知シ且他ノ期日ヲ定ムル求ヲ為ス義務アリ
第二百九十四条 合式ニ呼出サレタル証人ニシテ正当ノ理由ナク出頭セサル者ニ対シテハ申立ナシト雖モ決定ヲ以テ其不参ニ因リ生シタル費用ノ賠償及ヒ弐拾円以下ノ罰金ヲ言渡ス可シ
証人カ再度出頭セサル場合ニ於テハ更ニ費用ノ賠償及ヒ罰金ヲ言渡ス可シ又其勾引ヲ命スルコトヲ得
証人ハ右ノ決定ニ対シテ抗告ヲ為スコトヲ得此抗告ハ執行ヲ停止スル効力ヲ有ス
予備、後備ノ軍籍ニ在ラサル軍人、軍属ニ対スル罰金ノ言渡及ヒ執行ハ軍事裁判所又ハ所属ノ長官又ハ隊長ニ嘱託シテ之ヲ為ス其勾引ニ付テモ亦同シ
第二百九十五条 証人其出頭セサリシコトヲ後日ニ正当ノ理由ヲ以テ弁解スルトキハ罰金及ヒ賠償ノ決定ヲ取消ス可シ
証人ノ不参届及ヒ決定取消ノ申請ハ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
第二百九十六条 皇族証人ナルトキハ受命判事又ハ受託判事其所在ニ就キ訊問ヲ為ス
各大臣ニ付テハ其官庁ノ所在地ニ於テ之ヲ訊問ス若シ其所在地外ニ滞在スルトキハ其現在地ニ於テ之ヲ訊問ス
帝国議会ノ議員ニ付テハ開会期間其議会ノ所在地ニ滞在中ハ其所在地ニ於テ之ヲ訊問ス
第二百九十七条 左ニ掲クル者ハ証言ヲ拒ムコトヲ得
第一 原告若クハ被告又ハ其配偶者ト親族ナルトキ但姻族ニ付テハ婚姻ノ解除シタルトキト雖モ亦同シ
第二 原告若クハ被告ノ後見ヲ受クル者
第三 原告若クハ被告ト同居スル者又ハ雇人トシテ之ニ仕フル者
裁判長ハ訊問前ニ前項ノ者ニ証言ヲ拒ム権利アル旨ヲ告ク可シ
第二百九十八条 左ノ場合ニ於テハ証言ヲ拒ムコトヲ得
第一 官吏、公吏又ハ官吏、公吏タリシ者カ其職務上黙秘ス可キ義務アル事情ニ関スルトキ
第二 医師、薬商、穏婆、弁護士、公証人、神職及ヒ僧侶カ其身分又ハ職業ノ為メ委託ヲ受ケタルニ因リテ知リタル事実ニシテ黙秘ス可キモノニ関スルトキ
第三 問ニ付テノ答弁カ証人又ハ前条ニ掲ケタル者ノ耻辱ニ帰スルカ又ハ其刑事上ノ訴追ヲ招ク恐アルトキ
第四 問ニ付テノ答弁カ証人又ハ前条ニ掲ケタル者ノ為メ直接ニ財産権上ノ損害ヲ生セシム可キトキ
第五 証人カ其技術又ハ職業ノ秘密ヲ公ニスルニ非サレハ答弁スルコト能ハサルトキ
第二百九十九条 証人ハ第二百九十七条第一号及ヒ第二百九十八条第四号ノ場合ニ於テ左ノ事項ニ付キ証言ヲ拒ムコトヲ得ス
第一 家族ノ出産、婚姻又ハ死亡
第二 家族ノ関係ニ因リ生スル財産事件ニ関スル事実
第三 証人トシテ立会ヒタル場合ニ於ケル権利行為ノ成立及ヒ旨趣
第四 原告若クハ被告ノ前主又ハ代理人トシテ係争ノ権利関係ニ関シ為シタル行為
前条第一号、第二号ニ掲ケタル者其黙秘ス可キ義務ヲ免除セラレタルトキハ証言ヲ拒ムコトヲ得ス
第三百条 証言ヲ拒ム証人ハ其訊問ノ期日前ニ書面又ハ口頭ヲ以テ又ハ期日ニ於テ其拒絶ノ原因タル事実ヲ開示シ且之ヲ疏明ス可シ
期日前ニ証言ヲ拒ミタル証人ハ期日ニ出頭スル義務ナシ
裁判所書記ハ拒絶ノ書面ヲ受領シ又ハ其陳述ニ付キ調書ヲ作リタルトキハ之ヲ当事者ニ通知ス可シ
第三百一条 拒絶ノ当否ニ付テハ受訴裁判所当事者ヲ審訊シタル後決定ヲ以テ其裁判ヲ為ス但第二百九十八条第一号ノ場合ニ於テ為シタル拒絶ノ当否ニ付テハ所属庁又ハ最後ノ所属庁ノ裁定ニ任ス
原告若クハ被告カ出頭セサルトキハ出頭シタル者ノ申述ヲ斟酌シテ決定ヲ為ス
右決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得此抗告ハ執行ヲ停止スル効力ヲ有ス
第三百二条 原因ヲ開示セスシテ証言ヲ拒ミ又ハ開示シタル原因ノ棄却確定シタル後ニ之ヲ拒ミタルトキハ申立ヲ要セスシテ決定ヲ以テ証人ニ対シ其拒絶ニ因リテ生シタル費用ノ賠償及ヒ四十円以下ノ罰金ヲ言渡ス
証人ハ費用ノ賠償及ヒ罰金ノ言渡ニ対シ抗告ヲ為スコトヲ得此抗告ハ執行ヲ停止スル効力ヲ有ス
予備、後備ノ軍籍ニ在ラサル軍人、軍属ニ対スル罰金ノ言渡及ヒ執行ハ軍事裁判所ニ嘱託シテ之ヲ為ス
第三百三条 原告若クハ被告ハ相手方ト相手方ノ証人トノ間ニ第二百九十七条第一号乃至第三号ノ関係アルトキハ其証人ヲ忌避スルコトヲ得
第三百四条 忌避ノ申請ハ証人ノ訊問前ニ之ヲ為ス可シ此時限後ハ其前ニ忌避ノ原因ヲ主張スルヲ得サリシコトヲ疏明スルトキニ限リ其証人ヲ忌避スルコトヲ得
忌避ノ申請ハ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
忌避ノ原因ハ之ヲ疏明ス可シ
第三百五条 忌避ノ申請ニ付テノ裁判ハ口頭弁論ヲ経スシテ之ヲ為スコトヲ得
忌避ノ原因アリト宣言スル決定ニ対シテハ上訴ヲ為スコトヲ得ス忌避ノ原因ナシト宣言スル決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第三百六条 各証人ニハ其携帯ス可キ呼出状其他適当ノ方法ヲ以テ人違ナラサルコトヲ判然ナラシメタル後訊問前各別ニ宣誓ヲ為サシム可シ
然レトモ宣誓ハ特別ノ原因アルトキ殊ニ之ヲ為サシム可キヤ否ヤニ付キ疑ノ存スルトキハ訊問ノ終ルマテ之ヲ延フルコトヲ得
第三百七条 証人ハ訊問前ニ宣誓ヲ為ス可キ場合ニ於テハ良心ニ従ヒ真実ヲ述ヘ何事ヲモ黙秘セス又何事ヲモ附加セサル旨ノ誓ヲ宣フ可シ
又訊問後ニ宣誓ヲ為ス可キ場合ニ於テハ良心ニ従ヒ真実ヲ述ヘ何事ヲモ黙秘セス又何事ヲモ附加セサリシ旨ノ誓ヲ宣フ可シ
第三百八条 判事ハ宣誓前ニ相当ナル方法ヲ以テ宣誓者ニ偽証ノ罰ヲ諭示ス可シ
第三百九条 宣誓ヲ拒ム証人ニ付テハ第三百条乃至第三百二条ノ規定ヲ適用ス
第三百十条 左ノ者ハ宣誓ヲ為サシメスシテ参考ノ為メ之ヲ訊問スルコトヲ得
第一 訊問ノ時未タ満十六歳ニ達セサル者
第二 宣誓ノ何物タルヤヲ了解スルニ必要ナル精神上ノ発達ノ欠クル者
第三 刑事上ノ判決ニ因リ公権ヲ剥奪又ハ停止セラレタル者
第四 第二百九十七条及ヒ第二百九十八条第三号並ニ第四号ノ規定ニ依リ証言ヲ拒絶スル権利アリテ之ヲ行使セサル者但第二百九十八条第三号並ニ第四号ノ場合ニ於テハ拒絶ノ権利ニ関スル事実ニ付キ証言ヲ為ス可キコトヲ申立テラレタルトキニ限ル
第五 訴訟ノ成績ニ直接ノ利害関係ヲ有スル者
第三百十一条 証人訊問ハ後ニ訊問ス可キ証人ノ在ラサル場所ニ於テ各別ニ之ヲ為ス
証人ノ供述互ニ齟齬シタルトキハ之ヲ対質セシムルコトヲ得
第三百十二条 証人訊問ハ証人ニ其氏名、年齢、身分職業及ヒ住居ヲ問フヲ以テ始マル又必要ナル場合ニ於テハ其事件ニ於テ証言ノ信用ニ関スル事情殊ニ当事者トノ関係ニ付テノ問ヲ為ス可シ
第三百十三条 証人ニハ其訊問事項ニ付キ知リタルモノヲ牽連シテ供述セシム可シ
証人ノ供述ヲ明白及ヒ完全ナラシメ且其知リ得タル原因ヲ穿鑿スル為メ必要ナル場合ニ於テハ尚ホ他ノ問ヲ発ス可シ
第三百十四条 証人ハ其供述ニ換ヘテ書類ヲ朗読シ其他覚書ヲ用井ルコトヲ得ス但算数ノ関係ニ限リ覚書ヲ用井ルコトヲ得
第三百十五条 陪席判事ハ裁判長ニ告ケテ証人ニ問ヲ発スルコトヲ得
当事者ハ証人ニ対シ自ラ問ヲ発スルコトヲ得ス然レトモ当事者ハ証人ノ供述ヲ明白ナラシムル為ニ其必要ナリトスル問ヲ発センコトヲ裁判長ニ申立ツルコトヲ得
発問ノ許否ニ付キ異議アルトキハ裁判所ハ直チニ之ヲ裁判ス
第三百十六条 調書ニハ証人カ其訊問ノ前若クハ後ニ宣誓シタルヤ又ハ宣誓セスシテ訊問ヲ受ケタルヤヲ記載ス可シ
第三百十七条 受訴裁判所ハ左ノ場合ニ於テ証人ノ再訊問ヲ命スルコトヲ得
第一 証人訊問カ法律上ノ規定ニ違ヒタルトキ
第二 証人訊問ノ完全ナラサルトキ
第三 証人ノ供述カ明白ナラス又ハ両義ニ渉ルトキ
第四 証人カ其供述ノ補充又ハ更正ヲ申立ツルトキ
第五 此他裁判所カ再訊問ヲ必要トスルトキ
第三百十八条 左ノ場合ニ於テ証人ニ依レル証拠調ハ受訴裁判所ノ部員一名ニ之ヲ命シ又ハ区裁判所ニ之ヲ嘱託スルコトヲ得
第一 真実ヲ探知スル為メ現場ニ就キ証人ヲ訊問スルノ必要ナルトキ
第二 証人カ疾病其他ノ事由ノ為メ受訴裁判所ニ出頭スル能ハサルトキ
第三 証人カ受訴裁判所ノ所在地ヨリ遠隔ノ地ニ在リテ其裁判所ニ出頭スルニ付キ不相応ノ時日及ヒ費用ヲ要スルトキ
第三百十九条 第二百九十四条、第二百九十五条、第三百二条及ヒ第三百九条ニ掲ケタル証人ニ対スル受訴裁判所ノ権ハ受命判事又ハ受託判事ニモ属ス
証人カ受命判事又ハ受託判事ノ面前ニ於テ理由ヲ開示シテ証言ヲ拒ミ又ハ宣誓ヲ拒ミ又ハ職権若クハ申立ニ因リ発シタル問ニ答フルコトヲ拒ムトキハ此拒絶ノ当否ニ付キ裁判ヲ為ス権ハ受訴裁判所ニ属ス
受命判事又ハ受託判事カ原告若クハ被告ヨリ申立テタル問ヲ発スルコトヲ否ムトキハ原告若クハ被告ハ其当否ニ付キ受訴裁判所ノ裁判ヲ求ムルコトヲ得
証人ノ再訊問ハ受命判事又ハ受託判事ノ意見ヲ以テ之ヲ命スルコトヲ得
第三百二十条 証人ヲ申出テタル原告若クハ被告ハ其訊問ノ開始マテハ此証拠方法ヲ抛棄スルコトヲ得其後ハ相手方ノ承諾ヲ得ルトキニ限リ之ヲ抛棄スルコトヲ得
第三百二十一条 各証人ハ日当ノ弁済及ヒ其出頭ノ為ニ旅行ヲ要スルトキハ旅費ノ弁済ヲ請求スルコトヲ得
此金額ノ払渡ハ訊問期日ノ終リタル後直チニ之ヲ求ムルコトヲ得
挙証者ノ予納シタル金額不足スルトキハ職権ヲ以テ其不足額ヲ取立ツ可シ
第七節 鑑定
第三百二十二条 鑑定ニ付テハ以下数条ニ於テ別段ノ規定ヲ設ケサル限リハ人証ニ付テノ規定ヲ準用ス
第三百二十三条 鑑定ノ申出ハ鑑定ス可キ事項ヲ表示シテ之ヲ為ス
第三百二十四条 立会フ可キ鑑定人ノ選定及ヒ其員数ノ指定ハ受訴裁判所之ヲ為ス其裁判所ハ鑑定人ノ任命ヲ一名マテニ制限シ又ハ何時ニテモ既ニ任命シタル者ニ代ヘ他ノ鑑定人ヲ任命スルコトヲ得
裁判所ハ鑑定人トシテ訊問ヲ受クルニ適当ナル者ヲ指名ス可キ旨ヲ当事者ニ催告スルコトヲ得
当事者カ一定ノ者ヲ鑑定人ニ為スコトヲ合意シタルトキハ裁判所ハ其合意ニ従フ可シ然レトモ裁判所ハ当事者ノ為ス可キ選定ヲ一定ノ員数ニ制限スルコトヲ得
第三百二十五条 外国ノ書類又ハ産物ノ審査ヲ要スル場合ニ於テ必要ナル能力ヲ有スル本邦人ノ在ラサルトキハ裁判所ハ外国人ヲ鑑定人ニ任命スルコトヲ得
第三百二十六条 左ニ掲クル者鑑定ヲ命セラレタルトキハ之ヲ為ス義務アリ
第一 必要ナル種類ノ鑑定ヲ為ス為ニ公ニ任命セラレタル者
第二 鑑定ヲ為スニ必要ナル学術、技芸若クハ職業ニ常ニ従事スル者又ハ学術、技芸若クハ職業ニ従事スル為ニ公ニ任命セラレ若クハ授権セラレタル者
右ノ外鑑定ヲ為ス可キ旨ヲ裁判所ニ於テ述ヘタル者ハ鑑定人タル義務ナキトキト雖モ鑑定ヲ為ス義務アリ
第三百二十七条 鑑定人ハ証人カ証言ヲ拒ムコトヲ得ルト同一ノ原因ニ依リ鑑定ヲ拒ム権利アリ
官吏、公吏ハ其所属庁ニ於テ異議アルトキハ之ヲ鑑定人トシテ訊問スルコトヲ得ス
第三百二十八条 鑑定ヲ為ス義務アル鑑定人出頭セス又ハ鑑定ヲ拒ミタル場合ニ於テハ其者ニ対シ此カ為ニ生シタル費用ノ賠償及ヒ罰金ヲ言渡ス可シ但其鑑定人ヲ勾引スルコトヲ得ス
第三百二十九条 鑑定人ハ其鑑定ヲ為ス前ニ其鑑定人タル義務ヲ公平且誠実ニ履行スヘキ旨ノ誓ヲ宣フ可シ
第三百三十条 受訴裁判所ハ其意見ヲ以テ左ノ諸件ヲ定ム可シ
第一 鑑定人ノ意見ハ口頭又ハ書面ニテ之ヲ述ヘシム可キヤ
第二 数名ノ鑑定人ヲ訊問ス可キ場合ニ於テ各意見カ異ナルトキハ共同ニテ鑑定書ヲ作ラシム可キヤ又ハ各別ニ之ヲ作ラシム可キヤ
第三 口頭弁論ノ際鑑定人ノ総員又ハ其一名ヲシテ鑑定書ヲ説明セシム可キヤ
第四 鑑定ノ結果カ不十分ナルトキハ同一又ハ他ノ鑑定人ヲシテ再ヒ鑑定ヲ為サシム可キヤ
第三百三十一条 受訴裁判所ハ鑑定人ノ任命ヲ受命判事又ハ受託判事ニ委任スルコトヲ得此場合ニ於テハ受命判事又ハ受託判事ハ第三百二十四条及ヒ第三百三十条第一号並ニ第二号ノ規定ニ依リ受訴裁判所ニ属スル権ヲ有ス
第三百三十二条 鑑定人ハ日当、旅費及ヒ立替金ノ弁済ヲ請求スルコトヲ得
此場合ニ於テハ第三百二十一条ノ規定ヲ準用ス
第三百三十三条 特別ノ智識ヲ要セシ過去ノ事実又ハ事情ニシテ其実験アル者ノ訊問ニ因リテ確定ス可キトキハ人証ニ付テノ規定ヲ適用ス
第八節 書証
第三百三十四条 書証ノ申出ハ証書ヲ提出シテ之ヲ為ス
第三百三十五条 挙証者其使用セントスル証書カ相手方ノ手ニ存スル旨ヲ主張スルトキハ書証ノ申出ハ相手方ニ其証書ノ提出ヲ命センコトヲ申立テテ之ヲ為ス可シ
第三百三十六条 相手方ハ左ノ場合ニ於テ証書ヲ提出スル義務アリ
第一 挙証者カ民法ノ規定ニ従ヒ訴訟外ニ於テモ証書ノ引渡又ハ其提出ヲ求ムルコトヲ得ルトキ
第二 証書カ其旨趣ニ因リ挙証者及ヒ相手方ニ共通ナルトキ
第三百三十七条 相手方ハ其手ニ存スル証書ニシテ其訴訟ニ於テ挙証ノ為メ引用シタルモノヲ提出スル義務アリ準備書面中ニノミ引用シタルトキト雖モ亦同シ
第三百三十八条 証書ノ提出ヲ命センコトノ申立ニハ左ノ諸件ヲ掲ク可シ
第一 証書ノ表示
第二 証書ニ依リ証ス可キ事実ノ表示
第三 証書ノ旨趣
第四 証書カ相手方ノ手ニ存スル旨ヲ主張スル理由タル事情
第五 証書ヲ提出ス可キ義務ノ原因ノ表示
第三百三十九条 裁判所ハ証書ニ依リ証ス可キ事実ノ重要ニシテ且申立ヲ正当ナリト認ムル場合ニ於テ相手方カ証書ノ其手ニ存スルコトヲ自白スルトキ又ハ申立ニ対シ陳述セサルトキハ証拠決定ヲ以テ証書ノ提出ヲ命ス
第三百四十条 相手方カ証書ヲ所持セサル旨ヲ申立ツルトキハ此申立ノ真実ナルヤ否ヤヲ定ムル為メ又ハ証書ノ所在ヲ穿鑿スル為メ又ハ挙証者ノ使用ヲ妨クル目的ヲ以テ故意ニ証書ヲ隠匿シ若クハ使用ニ耐ヘサラシメタルヤ否ヤヲ穿鑿スル為メ本章第十節ノ規定ニ従ヒテ相手方本人ヲ訊問ス可シ
相手方カ官庁ナルトキハ証書カ其官庁ノ保蔵ニ係ラス又ハ其所在ヲ開示スルヲ得サル旨ノ長官ノ証明書ヲ以テ訊問ニ換フ裁判所ハ此証明書ヲ差出サシムル為メ相当ノ期間ヲ定ム可シ
第三百四十一条 証書ヲ所持スルコトヲ自白シ又ハ之ヲ所持セスト申立テサル相手方カ其証書ヲ提出ス可シトノ命ニ従ハス又ハ相手方カ所持セスト申立テタル証書ニ付キ訊問ヲ受ケテ供述ヲ為スコトヲ拒ミタルトキ又ハ挙証者ノ使用ヲ妨クル目的ヲ以テ故意ニ証書ヲ隠匿シ若クハ使用ニ耐ヘサラシメタルコトノ明確ナルトキハ挙証者ノ差出シタル証書ノ謄本ヲ正当ナルモノト看做ス若シ謄本ヲ差出ササルトキハ裁判所ハ其意見ヲ以テ証書ノ性質及ヒ旨趣ニ付キ挙証者ノ主張ヲ正当ナリト認ムルコトヲ得
前条第二項ニ掲ケタル証明書ヲ裁判所ノ定メタル期間内ニ差出ササルトキハ相手方タル官庁ニ対シ前項ト同一ノ結果ヲ生ス
第三百四十二条 挙証者其使用セントスル証書カ第三者ノ手ニ存スル旨ヲ主張スルトキハ書証ノ申出ハ其証書ヲ取寄スル為メ期間ヲ定メンコトヲ申立テテ之ヲ為ス
第三百四十三条 第三者ハ挙証者ノ相手方ニ於ケルト同一ナル理由ニ因リ証書ヲ提出スル義務アリ然レトモ強テ証書ヲ提出セシムルコトハ訴ヲ以テノミ之ヲ為スコトヲ得
第三百四十四条 第三百四十二条ニ従ヒ申立ヲ為スニハ第三百三十八条第一号乃至第三号及ヒ第五号ノ要件ラ履ミ且証書カ第三者ノ手ニ存スルコトヲ疏明ス可シ
第三百四十五条 証書ニ依リ証ス可キ事実ノ重要ニシテ且其申立カ前条ノ規定ニ適スルトキハ裁判所ハ証書提出ノ期間ヲ定ム可シ
第三者ニ対スル訴訟ノ完結シタルトキ又ハ挙証者カ訴ノ提起、訴訟ノ継続又ハ強制執行ヲ遅延シタルトキハ相手方ハ前項ノ期間ノ満了前ト雖モ訴訟手続ノ継続ヲ申立ツルコトヲ得
第三百四十六条 挙証者其使用セントスル証書カ官庁又ハ公吏ノ手ニ存スル旨ヲ主張スルトキハ書証ノ申出ハ証書ノ送付ヲ官庁又ハ公吏ニ嘱託セラレンコトヲ申立テテ之ヲ為ス
此規定ハ当事者カ法律上ノ規定ニ従ヒ裁判所ノ助力ナクシテ取寄スルコトヲ得ヘキ証書ニハ之ヲ適用セス
官庁又ハ公吏カ第三百三十六条ノ規定ニ基キ証書ヲ提出スル義務アル場合ニ於テ其送付ヲ拒ムトキハ第三百四十二条乃至第三百四十五条ノ規定ヲ適用ス
第三百四十七条 証拠決定ヲ為シタル後第三百四十二条及ヒ第三百四十六条ノ規定ニ従ヒ書証ヲ申出テタル場合ニ於テ証書取寄ノ手続ノ為ニ訴訟ノ完結ヲ遅延スルニ至ル可ク且裁判所ニ於テ原告若クハ被告カ訴訟ヲ遅延スル故意ヲ以テ又ハ甚シキ怠慢ニ因リ書証ヲ早ク申出テサリシコトノ心証ヲ得タルトキハ申立ニ因リ其書証ノ申出ヲ却下スルコトヲ得
第三百四十八条 口頭弁論ノ際証書ヲ提出スルニ於テハ其毀損若クハ紛失ノ恐アリ又ハ他ノ顕著ナル障碍アルトキハ受命判事又ハ受託判事ノ面前ニ証書ヲ提出ス可キ旨ヲ命スルコトヲ得
受命判事又ハ受託判事ハ証書ノ明細書及ヒ其謄本ヲ調書ニ添附シ又証書ノ一分ノミ必要ナルトキハ第百七条第二項ノ規定ニ従ヒテ作リタル抄本ヲ之ニ添附ス可シ
第三百四十九条 公正証書ハ正本又ハ認証ヲ受ケタル謄本ヲ以テ之ヲ提出スルコトヲ得然レトモ裁判所ハ挙証者ニ正本ノ提出ヲ命スルコトヲ得
私署証書ハ原本ヲ以テ之ヲ提出ス可シ若シ当事者カ未タ提出セサル原本ノ真正ニ付キ一致シ只其証書ノ効力又ハ解釈ニ付テノミ争ヲ為ストキハ謄本ヲ提出スルヲ以テ足ル然レトモ裁判所ハ職権ヲ以テ挙証者ニ原本ノ提出ヲ命スルコトヲ得
提出シタル謄本ニ換ヘテ正本又ハ原本ヲ提出ス可キ旨ノ命ニ従ハサルトキハ裁判所ハ心証ヲ以テ謄本ニ如何ナル証拠力ヲ付ス可キヤヲ裁判ス
第三百五十条 挙証者ハ証書ヲ提出シタル後ハ相手方ノ承諾ヲ得ルトキニ限リ此証拠方法ヲ抛棄スルコトヲ得
第三百五十一条 公正証書又ハ検真ヲ経タル私署証書ヲ偽造若クハ変造ナリト主張スル者ハ其証書ノ真否ヲ確定センコトノ申立ヲ為ス可シ
此場合ニ於テハ裁判所ハ其証書ノ真否ニ付キ中間判決ヲ以テ裁判ヲ為ス可シ
第三百五十二条 私署証書ノ真否ニ付キ争アルトキハ裁判所ハ挙証者ノ申立ニ因リ検真ヲ為スコトヲ得
第三百五十三条 私署証書ノ検真ハ総テノ証拠方法及ヒ手跡若クハ印章ノ対照ニ因リテ之ヲ為ス
証書ノ真否ヲ証セントスル当事者ハ裁判所ノ定ムル期間内ニ手跡若クハ印章ヲ対照スル為ニ適当ナル書類ヲ提出ス可シ
真正ナリトノ自白又ハ証明シタル適当ノ対照書類ナキトキハ対照ノ為メ原告若クハ被告ニ対シ裁判所ニ於テ一定ノ語辞ノ手記ヲ命スルコトヲ得其手記シタル語辞ハ調書ノ附録トシテ之ニ添附ス可シ
裁判所ハ手跡若クハ印章ヲ対照シタル結果ニ付キ自由ナル心証ヲ以テ裁判ヲ為シ又必要ナル場合ニ於テハ鑑定ヲ為サシメタル後之ヲ為ス
原告若クハ被告カ裁判所ノ定メタル期間内ニ対照書類ヲ提出セサルトキ又ハ対照ス可キ語辞ヲ手記ス可キ裁判所ノ命ニ対シ十分ナル弁解ヲ為サスシテ之ニ従ハサルトキ又ハ書様ヲ変シテ手記シタルトキハ証書ノ真否ニ付テノ相手方ノ主張ハ其他ノ証拠ヲ要セスシテ之ヲ真正ナリト看做スコトヲ得
第三百五十四条 提出シタル証書ハ直チニ之ヲ還付シ又適当ナル場合ニ於テハ其謄本ヲ記録ニ留メテ之ヲ還付ス可シ
然レトモ証書ノ偽造又ハ変造ナリト争フトキハ検事ノ意見ヲ聴キタル後ニ非サレハ之ヲ還付スルコトヲ得ス
第三百五十五条 公正証書ノ偽造若クハ変造ナルコトヲ真実ニ反キテ主張シタル原告若クハ被告ニ悪意若クハ重過失ノ責アルトキハ五十円以下ノ過料ヲ言渡ス
又私署証書ノ真正ナルコトヲ真実ニ反キテ争フトキハ前項ト同一ナル条件ヲ以テ二十円以下ノ過料ヲ言渡ス
第三百五十六条 本節ノ規定ハ事件ノ性質ニ於テ許ス限リハ事跡ノ紀念又ハ権利ノ証徴ノ為メ作リタル割符、界標等ノ如キモノニモ之ヲ準用ス
第九節 検証
第三百五十七条 検証ノ申出ハ検証物ヲ表示シ及ヒ証ス可キ事実ヲ開示シテ之ヲ為ス
第三百五十八条 受訴裁判所ハ検証ヲ為スニ際シ鑑定人ノ立会ヲ命スルコトヲ得
受訴裁判所ハ検証及ヒ鑑定人ノ任命ヲ其部員一名ニ命シ又ハ区裁判所ニ嘱託スルコトヲ得
第三百五十九条 検証ヲ為ス際発見シタル事項ハ調書ニ記載シテ之ヲ明確ナラシメ又必要ナル場合ニ於テハ調書ノ附録トシテ添附ス可キ図面ヲ作リ之ヲ明確ナラシム可シ
若シ既ニ記録ニ図面ノ存スルトキハ之ヲ検証物ニ対照シ必要ナル場合ニ於テハ之ヲ更正ス可シ
第十節 当事者本人ノ訊問
第三百六十条 当事者ノ提出シタル許ス可キ証拠ヲ調ヘタル結果ニ因リ証ス可キ事実ノ真否ニ付キ裁判所カ心証ヲ得ルニ足ラサルトキハ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ原告若クハ被告ノ本人ヲ訊問スルコトヲ得
第三百六十一条 裁判所ハ原告若クハ被告ヲ訊問スルコトヲ決定シ且原告若クハ被告ノ自身カ決定言渡ノ際在廷スルトキハ直チニ其訊問ヲ為スヲ以テ通例トス
第三百六十二条 訊問ヲ受クル原告若クハ被告ハ供述ニ換ヘテ書類ヲ朗読シ其他覚書ヲ用井ルコトヲ得ス但算数ノ関係ニ限リ覚書ヲ用井ルコトヲ得
第三百六十三条 原告若クハ被告カ十分ナル理由ナクシテ供述スルコトヲ拒ミ又ハ訊問期日ニ出頭セサルトキハ裁判所ハ其意見ヲ以テ訊問ニ因リテ挙証ス可キ相手方ノ主張ヲ正当ナリト認ムルコトヲ得
第三百六十四条 訴訟無能力者ノ法律上代理人カ訴訟ヲ為ストキハ法律上代理人若クハ訴訟無能力者ヲ訊問ス可キヤ又ハ此等ノ者ヲ共ニ訊問ス可キヤ裁判所ノ意見ヲ以テ之ヲ決定ス
法律上代理人数人アルトキハ其一人ヲ訊問ス可キヤ又ハ数人ヲ訊問ス可キヤモ亦前項ニ同シ
第十一節 証拠保全
第三百六十五条 証拠ヲ紛失スル恐アリ又ハ之ヲ使用シ難キ恐アルトキハ証拠保全ノ為メ証人若クハ鑑定人ノ訊問又ハ検証ヲ申立ツルコトヲ得
第三百六十六条 訴訟カ既ニ繋属シタルトキハ此申請ハ受訴裁判所ニ之ヲ為ス可シ
切迫ナル危険ノ場合ニ於テハ訊問ヲ受ク可キ者ノ現在地又ハ検証ス可キ物ノ所在地ヲ管轄スル区裁判所ニ申請ヲ為スコトヲ得
訴訟ノ未タ繋属セサルトキハ前項ニ記載シタル区裁判所ニ申請ヲ為スコトヲ要ス
右申請ハ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
第三百六十七条 申請ニハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 相手方ノ表示
第二 証拠調ヲ為ス可キ事実ノ表示
第三 証拠方法殊ニ証人若クハ鑑定人ノ訊問ヲ為ス可キトキハ其表示
第四 証拠ヲ紛失スル恐アリ又ハ之ヲ使用シ難キ恐アル理由此理由ハ之ヲ疏明ス可シ
第三百六十八条 申請ニ付テノ決定ハ口頭弁論ヲ経スシテ之ヲ為スコトヲ得
申請ヲ許容スル決定ニハ証拠調ヲ為ス可キ事実及ヒ証拠方法殊ニ訊問ス可キ証人若クハ鑑定人ノ氏名ヲ記載ス可シ此決定ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第三百六十九条 証拠調ノ期日ニハ申立人ヲ呼出シ又決定及ヒ申請ノ謄本ヲ送達シテ其権利防衛ノ為ニ相手方ヲモ呼出ス可シ
切迫ナル危険ノ場合ニ於テハ適当ナル時間ニ相手方ヲ呼出スコトヲ得サリシトキト雖モ証拠調ヲ妨クルコト無シ
第三百七十条 証拠調ハ本章第六節、第七節及ヒ第九節ノ規定ニ従ヒテ之ヲ為ス
証拠調ノ調書ハ証拠調ヲ命シタル裁判所ニ之ヲ保存ス可シ各当事者ハ証拠調ノ調書ヲ訴訟ニ於テ使用スル権利アリ
受訴裁判所ハ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ再度ノ証拠調ヲ命シ又ハ既ニ調ヘタル証拠ノ補充ヲ命スルコトヲ得
第三百七十一条 証拠調ハ第三百六十五条ノ条件ナキトキト雖モ相手方ノ承諾ニ因リ之ヲ許スコトヲ得
第三百七十二条 申立人カ相手方ヲ指定セサルトキハ申立人自己ノ過失ニ非スシテ相手方ヲ指定シ能ハサルコトヲ疏明スル場合ニ限リ其申請ヲ許ス
申請ヲ許容シタルトキハ裁判所ハ其知レサル相手方ノ権利防衛ノ為ニ臨時代理人ヲ任スルコトヲ得
第二章 区裁判所ノ訴訟手続
第一節 通常ノ訴訟手続
第三百七十三条 区裁判所ノ通常ノ訴訟手続ニ付テハ区裁判所ノ構成又ハ第一編及ヒ本節ノ規定ニ依リ差異ノ生セサル限リハ地方裁判所ノ訴訟手続ニ付テノ規定ヲ適用ス
第三百七十四条 訴ハ書面又ハ口頭ヲ以テ裁判所ニ之ヲ為スコトヲ得
第三百七十五条 起訴アリタルトキハ裁判所書記ハ訴状ヲ被告ニ送達スル手続ヲ為ス
準備書面ノ交換ハ之ヲ為スコトヲ要セス
第三百七十六条 原告若クハ被告ハ其申立及ヒ事実上ノ主張ニシテ予メ通知スルニ非サレハ相手方ニ於テ之ニ対シ陳述ヲ為シ得ヘカラサルモノヲ口頭弁論ノ前直接ニ相手方ニ通知スルコトヲ得
第三百七十七条 口頭弁論ノ期日ト訴状送達トノ間ニ少ナクトモ三日ノ時間ヲ存スルコトヲ要ス急迫ナル場合ニ於テハ此時間ヲ二十四時マテニ短縮スルコトヲ得
送達ヲ外国ニ於テ為ス可キトキハ事情ニ応シテ時間ヲ定ム可シ
第三百七十八条 当事者ハ通常ノ裁判日ニ於テハ予メ期日ノ指定ナクシテ裁判所ニ出頭シ訴訟ニ付キ弁論ヲ為スコトヲ得
此場合ニ於テ訴ノ提起ハ口頭ノ演述ヲ以テ之ヲ為ス
第三百七十九条 数箇ノ妨訴ノ抗弁ヲ本案ノ弁論前同時ニ提出ス可キ規定ハ裁判所管轄違ノ抗弁ニ限リ之ヲ適用ス
被告ハ妨訴ノ抗弁ニ基キ本案ノ弁論ヲ拒ム権利ナシ然レトモ裁判所ハ職権ヲ以テ右抗弁ニ付キ分離シタル弁論ヲ命スルコトヲ得
第三百八十条 第二百二十二条、第二百六十六条乃至第二百七十二条ノ規定ハ区裁判所ノ訴訟手続ニ之ヲ適用セス
然レトモ原告若クハ被告ノ申立及ヒ陳述ハ裁判所ノ意見ニ従ヒ訴訟関係ヲ十分ニ明確ナラシムル為メ必要ナルモノニ限リ調書ヲ以テ之ヲ明確ナラシム可シ
第三百八十一条 訴ヲ起サントスル者ハ和解ノ為メ請求ノ目的物ヲ開示シテ相手方ヲ其普通裁判籍ヲ有スル区裁判所ニ呼出ス可キコトヲ申立ツルコトヲ得其申立ハ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
当事者双方出頭シ和解ノ調ヒタルトキハ調書ヲ以テ之ヲ明確ナラシム可シ
和解ノ調ハサルトキハ当事者双方ノ申立ニ因リ其訴訟ニ付キ直チニ弁論ヲ為ス此場合ニ於ケル訴ノ提起ハ口頭ノ演述ヲ以テ之ヲ為ス
相手方カ出頭セス又ハ和解ノ調ハルトキハ此カ為ニ生シタル費用ハ訴訟費用ノ一分ト看做ス
第二節 督促手続
第三百八十二条 一定ノ金額ノ支払其他ノ代替物若クハ有価証券ノ一定ノ数量ノ給付ヲ目的トスル請求ニ付キ債権者ハ通常ノ訴訟手続ニ依ラスシテ督促手続ニ依リ条件附ノ支払命令ヲ債務者ニ対シ発センコトヲ申立ツルコトヲ得
申請ノ旨趣ニ依レハ申請者反対給付ヲ為スニ非サレハ其求請ヲ主張スルコトヲ得サルトキ又ハ支払命令ノ送達ヲ外国ニ於テ為シ若クハ公示送達ヲ以テ為ス可キトキハ督促手続ヲ許サス
第三百八十三条 支払命令ハ区裁判所之ヲ発ス
此命令ハ区裁判所ノ第一審ノ事物ノ管轄ノ制限ナキモノト看做シ通常ノ訴訟手続ニ於ケル訴ノ提起ニ付キ普通裁判籍又ハ不動産上裁判籍ノ属ス可キ区裁判所ノ管轄ニ専属ス
第三百八十四条 支払命令ヲ発スルコトノ申請ハ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
此申請ハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 当事者及ヒ裁判所ノ表示
第二 請求ノ一定ノ数額、目的物及ヒ原因ノ表示若シ請求ノ数箇ナルトキハ其各箇ノ一定ノ数額、目的物及ヒ原因ノ表示
第三 支払命令ヲ発センコトノ申立
第三百八十五条 裁判所ハ申請ヲ調査シ其申請カ前三条ノ規定ニ適当セス又ハ申請ノ旨趣ニ於テ請求ノ理由ナク又ハ現時理由ナキコトノ顕ハルルトキハ其申請ヲ却下ス
請求ノ一分ノミニ付キ支払命令ヲ発スルコトヲ得サルトキハ亦其申請ヲ却下ス然レトモ数箇ノ請求中或ルモノニ理由ナクシテ其他ノモノニ理由アリト見ユルトキハ其理由アリト見ユルモノニ限リ申請ヲ許容ス
右却下ノ命令ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス然レトモ通常ノ訴訟手続ニ依リ訴追スルヲ妨クルコト無シ
第三百八十六条 支払命令ハ予メ債務者ヲ審訊セスシテ之ヲ発ス
支払命令ニハ第三百八十四条第一号及ヒ第二号ニ掲ケタル申請ノ要件ヲ記載シ且即時ノ強制執行ヲ避ケント欲セハ此命令送達ノ日ヨリ十四日ノ期間内ニ請求ヲ満足セシメ及ヒ其手続ノ費用ニ付キ定ムル数額ヲ債権者ニ弁済ス可ク又ハ裁判所ニ異議ヲ申立ツ可キ旨ノ債務者ニ対スル命令ヲ記載ス可シ
前項ノ期間ハ為替ヨリ生スル請求ニ付テハ二十四時間其他ノ請求ニ付テハ申立ニ因リ三日マテニ之ヲ短縮スルコトヲ得
第三百八十七条 権利拘束ノ効力ハ支払命令ヲ債務者ニ送達スルヲ以テ始マル
支払命令ノ送達ハ之ヲ債権者ニ通知ス可シ
第三百八十八条 債務者ハ支払命令ニ対シ書面又ハ口頭ヲ以テ異議ノ申立ヲ為スコトヲ得
第三百八十九条 債務者カ請求ノ全部又ハ一分ニ対シ適当ナル時間ニ異議ヲ申立ツルトキハ支払命令ノ効力ヲ失フ然レトモ権利拘束ノ効力ヲ存続ス
数箇ノ請求中或ルモノニ対シ異議ヲ申立テタルトキノ支払命令ハ其他ノ請求及ヒ之ニ相当スル費用ノ部分ニ付キ効力ヲ有ス
第三百九十条 適当ナル時間ニ異議ヲ申立テタル場合ニ於テ請求ニ付キ起ス可キ訴カ区裁判所ノ管轄ニ属スルトキハ其訴ハ支払命令ノ送達ト同時ニ区裁判所ニ之ヲ起シタルモノト看做ス其口頭弁論ノ期日ハ第三百七十七条ノ規定ニ従ヒテ之ヲ定ム
第三百九十一条 請求ニ付キ起ス可キ訴カ地方裁判所ノ管轄ニ属スル場合ニ於テハ適当ナル時間ニ異議ノ申立アリタルコトヲ債権者ニ通知ス可シ
債権者其通知書ノ送達アリタル日ヨリ起算シ一个月ノ期間内ニ管轄裁判所ニ訴ヲ起ササルトキハ権利拘束ノ効力ヲ失フ
第三百九十二条 督促手続ノ費用ハ適当ナル時間ニ異議ノ申立アリタル場合ニ於テハ起ス可キ訴訟ノ費用ノ一分ト看做ス
前条ノ場合ニ於テ期間内ニ訴ヲ起ササルトキハ手続ノ費用ハ債権者ノ負担ニ帰ス
第三百九十三条 支払命令ハ其命令中ニ掲ケタル期間ノ経過後債権者ノ申請ニ因リ之ヲ仮ニ執行シ得ヘキコトヲ宣言ス但仮執行ノ宣言前債務者異議ヲ申立テサルトキニ限ル
右仮執行ノ宣言ハ支払命令ニ付ス可キ執行命令ヲ以テ之ヲ為ス其執行命令ニハ債権者ニ於テ計算スル手続ノ費用ヲ掲ク可シ
債権者ノ申請ヲ却下スル決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第三百九十四条 執行命令ハ仮執行ノ宣言ヲ付シタル闕席判決ト同一ナリトス其執行命令ニ対シテハ第二百五十五条乃至第二百六十四条ノ規定ニ従ヒテ故障ヲ申立ツルコトヲ得請求カ区裁判所ノ管轄ニ属セサルトキハ区裁判所ハ其故障ヲ法律上ノ方式及ヒ期間ニ於テ申立テタルヤノ点ノミニ付キ弁論及ヒ裁判ヲ為ス此場合ニ於テハ第三百九十一条第二項ニ定メタル期間ハ故障ヲ許ス判決ノ確定ヲ以テ始マル
第三百九十五条 時期ニ後レテ申立テタル異議ハ命令ヲ以テ之ヲ却下ス
此却下ノ命令ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第三編 上訴
第一章 控訴
第三百九十六条 控訴ハ区裁判所又ハ地方裁判所ノ第一審ニ於テ為シタル終局判決ニ対シテ之ヲ為ス
第三百九十七条 終局判決前ニ為シタル裁判ハ亦控訴裁判所ノ判断ヲ受ク但此法律ニ於テ不服ヲ申立ツルコトヲ得スト明記シタルトキ又ハ抗告ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトヲ得ルトキハ此限ニ在ラス
第三百九十八条 闕席判決ニ対シテハ期日ヲ懈怠シタル者ヨリ控訴ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス但故障ヲ許ササル闕席判決ニ対シテハ懈怠ナカリシコトヲ理由トスルトキニ限リ控訴ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトヲ得
第三百九十九条 控訴ハ口頭弁論ノ前ニ於テハ被控訴人ノ承諾ナクシテ之ヲ取下クルコトヲ得
控訴ノ取下ハ上訴権ヲ喪失スル結果ヲ生ス
第四百条 控訴期間ハ一个月トス此期間ハ不変期間ニシテ判決ノ送達ヲ以テ始マル
判決ノ送達前ニ提起シタル控訴ハ無効トス
第二百四十二条ノ規定ニ従ヒ控訴期間内ニ追加裁判ヲ以テ判決ヲ補充シタルトキハ控訴期間ノ進行ハ最初ノ判決ニ対スル控訴ニ付テモ追加裁判ノ送達ヲ以テ始マル
第四百一条 控訴ノ提起ハ控訴状ヲ控訴裁判所ニ差出シテ之ヲ為ス
此控訴状ニハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 控訴セラルル判決ノ表示
第二 此判決ニ対シ控訴ヲ為ス旨ノ陳述
此他控訴状ハ準備書面ニ関スル一般ノ規定ニ従ヒテ之ヲ作リ且判決ニ対シ如何ナル程度ニ於テ不服ナルヤ及ヒ判決ニ付キ如何ナル変更ヲ為ス可キヤノ申立ヲ掲ケ若シ新ニ主張セントスル事実及ヒ証拠方法アルトキハ其新ナル事実及ヒ証拠方法ヲモ掲ク可シ
第四百二条 判然許ス可カラサル控訴又ハ判然法律上ノ方式ニ適セス若クハ其期間ノ経過後ニ起シタル控訴ハ裁判長ノ命令ヲ以テ之ヲ却下ス
此却下ノ命令ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第四百三条 控訴状ノ送達ト口頭弁論ノ期日トノ間ニ存スルコトヲ要スル時間ニ付テハ第百九十四条ノ規定ヲ適用シ答弁書ヲ差出ス可キ期間ノ催告ニ付テハ第百九十九条ノ規定ヲ適用ス
前項ノ場合ニ於テモ亦第二百三条ノ規定ヲ適用スルコトヲ得
第四百四条 答弁書ハ準備書面ニ関スル一般ノ規定ニ従ヒテ之ヲ作リ且被控訴人ノ一定ノ申立及ヒ其主張セントスル新ナル事実及ヒ証拠方法ヲ掲ク可シ
第四百五条 被控訴人ハ自己ノ控訴ヲ抛棄シタルトキ又ハ控訴期間ノ経過シタルトキト雖モ附帯控訴ヲ為スコトヲ得
闕席判決ニ対シ附帯控訴ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトニ付テハ第三百九十八条ノ規定ニ従フ
第四百六条 左ノ場合ニ於テハ附帯控訴ハ其効力ヲ失フ
第一 控訴ヲ不適法トシテ判決ヲ以テ棄却シタルトキ
第二 控訴ヲ取下ケタルトキ
然レトモ被控訴人カ控訴期間内ニ附帯控訴ヲ為シタルトキハ之ヲ独立ノ控訴ト看做ス
第四百七条 答弁書ニ新ナル事実若クハ証拠方法ヲ掲ケ又ハ附帯控訴ヲ為ス旨ノ陳述ヲ掲ケタルトキハ之ヲ控訴人ニ送達ス可シ
第四百八条 右ノ外控訴ノ訴訟手続ニハ地方裁判所ノ第一審ノ訴訟手続ノ規定ヲ準用ス但本章ノ規定ニ依リ差異ノ生スルモノハ此限ニ在ラス
第四百九条 当事者ノ双方ヨリ控訴ヲ起シタルトキハ其両控訴ニ付キ弁論及ヒ裁判ヲ同時ニ為スヲ以テ通例トス
第四百十条 口頭弁論ハ其期日ニ於テ被控訟人ノ控訴期間ノ未タ経過セサルトキハ其申立ニ因リ期間ノ満了マテ之ヲ延期ス
闕席判決ヲ受ケタル原告若クハ被告ヨリ其判決ニ対シ故障ヲ申立テ相手方ヨリ控訴ヲ起シタルトキハ控訴ニ付テノ弁論及ヒ裁判ハ故障ノ完結マテ職権ヲ以テ之ヲ延期ス
第四百十一条 控訴裁判所ニ於ケル訴訟ハ不服ノ申立ニ因リ定マリタル範囲内ニ於テ更ニ之ヲ弁論ス
第四百十二条 当事者ハ其控訴ノ申立及ヒ不服ヲ申立テラレタル裁判ノ当否ヲ明瞭ナラシムル為メ必要ナル限リハ口頭弁論ノ際第一審ニ於ケル弁論ノ結果ヲ演述ス可シ
演述ノ不正確又ハ不完全ナル場合ニ於テハ裁判長ハ其更正若クハ補完ヲ為サシメ又必要ナル場合ニ於テハ弁論ヲ再開シテ之ヲ為サシム可シ
第四百十三条 訴ノ変更ハ相手方ノ承諾アルトキト雖モ之ヲ許サス
第四百十四条 妨訴ノ抗弁ハ職権ヲ以テ調査ス可カラサルモノニシテ且原告若クハ被告カ其過失ニ非スシテ第一審ニ於テ提出シ能ハサリシコトヲ疏明スルトキニ限リ之ヲ主張スルコトヲ得
本案ノ弁論ハ妨訴ノ抗弁ニ基キ之ヲ拒ムコトヲ得ス然レトモ裁判所ハ職権ヲ以テ妨訴ノ抗弁ニ付キ分離シタル弁論ヲ命スルコトヲ得
第四百十五条 当事者ハ第一審ニ於テ主張セサリシ攻撃防禦ノ方法殊ニ新ナル事実及ヒ証拠方法ヲ提出スルコトヲ得
第四百十六条 新ナル請求ハ第百九十六条第二号及ヒ第三号ノ場合又ハ相殺スルコトヲ得ヘキモノニシテ且原告若クハ被告カ其過失ニ非スシテ第一審ニ於テ提出シ能ハサリシコトヲ疏明スルトキニ限リ之ヲ起スコトヲ得
第四百十七条 事実又ハ証書ニ付キ第一審ニ於テ為ササリシ陳述又ハ拒ミタル陳述ハ第二審ニ於テ之ヲ為スコトヲ得
第四百十八条 第一審ニ於テ為シタル裁判上ノ自白ハ第二審ニ於テモ亦其効力ヲ有ス
第四百十九条 控訴裁判所ハ控訴ヲ許ス可キヤ否ヤ又控訴ヲ法律上ノ方式ニ従ヒ若クハ其期間ニ於テ起シタルヤ否ヤヲ職権ヲ以テ調査ス可シ若シ此要件ノ一ヲ欠クトキハ判決ヲ以テ控訴ヲ不適法トシテ棄却ス可シ
第四百二十条 第一審ノ裁判ハ変更ヲ申立テタル部分ニ限リ之ヲ変更スルコトヲ得
第四百二十一条 第一審ニ於テ是認シ又ハ非認シタル請求ニ関スル総テノ争点ニシテ申立ニ従ヒ弁論及ヒ裁判ヲ必要トスルモノハ第一審ニ於テ此争点ニ付キ弁論及ヒ裁判ヲ為ササルトキト雖モ控訴裁判所ニ於テ其弁論及ヒ裁判ヲ為ス
第四百二十二条 控訴裁判所ハ左ノ場合ニ於テ事件ニ付キ尚ホ弁論ヲ必要トスルトキハ其事件ヲ第一審裁判所ニ差戻ス可シ
第一 不服ヲ申立テラレタル判決カ闕席判決ナルトキ
第二 不服ヲ申立テラレタル判決カ闕席判決ニ対スル故障ヲ不適法トシテ棄却シタルモノナルトキ
第三 不服ヲ申立テラレタル判決カ妨訴ノ抗弁ノミニ付キ裁判ヲ為シタルモノナルトキ
第四 請求カ其原因及ヒ数額ニ付キ争アル場合ニ於テ不服ヲ申立テラレタル判決カ先ツ其原因ニ付キ裁判ヲ為シタルモノナルトキ
第五 不服ヲ申立テラレタル判決カ証書訴訟及ヒ為替訴訟ニ於テ敗訴ノ被告ニ別訴訟ヲ以テ追行ヲ為ス権ヲ留保シタルモノナルトキ
第四百二十三条 第一審ニ於テ訴訟手続ニ付テノ規定ニ違背シタルトキハ控訴裁判所ハ其判決及ヒ違背シタル訴訟手続ノ部分ヲ廃棄シ事件ヲ第一審裁判所ニ差戻スコトヲ得
第四百二十四条 控訴ヲ理由ナシトスルトキハ判決ヲ以テ控訴ノ棄却ヲ言渡ス可シ
第四百二十五条 判決ヲ控訴人ノ不利益ニ変更スルコトハ相手方カ控訴又ハ附帯控訴ノ方法ヲ以テ判決ニ付キ不服ヲ申立テタル部分ニ限リ之ヲ為スコトヲ得
第四百二十六条 第二百十条ノ規定ニ従ヒテ防禦ノ方法ヲ却下スルトキハ其防禦ノ方法ヲ主張スル権ハ之ヲ被告ニ留保ス可シ
判決ニ此留保ヲ掲ケサルトキハ第二百四十二条ノ規定ニ従ヒテ判決ノ補充ヲ申立ツルコトヲ得
留保ヲ掲ケタル判決ハ上訴及ヒ強制執行ニ付テハ終局判決ト看做ス
第四百二十七条 防禦ノ方法ニシテ被告ニ其主張ヲ留保スルモノニ付テハ其訴訟ハ第二審ニ繋属ス
爾後ノ手続ニ於テ訴ヲ以テ主張シタル請求ノ理由ナカリシコトノ顕ハルルトキハ前判決ヲ廃棄シテ其訴ヲ棄却シ且申立ニ因リ判決ニ基キ支払ヒタルモノ又ハ給付シタルモノヲ返還ス可キコトヲ言渡シ並ニ費用ニ付キ裁判ヲ為ス可シ
第四百二十八条 控訴人カ口頭弁論ノ期日ニ出頭セサルトキハ出頭シタル被控訴人ノ申立ニ因リ闕席判決ヲ以テ控訴ノ棄却ヲ言渡ス可シ
第四百二十九条 被控訴人口頭弁論ノ期日ニ出頭セサル場合ニ於テ出頭シタル控訴人ヨリ闕席判決ノ申立ヲ為ストキハ第一審裁判ノ憑拠ト為リタルモノニ牴触セサル控訴人ノ事実上ノ供述ハ被控訴人之ヲ自白シタルモノト看做シ且第一審裁判所ノ事実上ノ確定ヲ補充シ若クハ弁駁スル為メ控訴人ノ申立テタル適法ノ証拠調ハ既ニ之ヲ為シ及ヒ其結果ヲ得タルモノト看做シ闕席判決ヲ為ス
第四百三十条 判決中ノ事実ノ摘示ニ付テハ前審ノ判決ヲ引用スルコトヲ得
第四百三十一条 控訴裁判所ノ書記ハ控訴状ノ提出ヨリ二十四時間ニ第一審裁判所ノ書記ニ訴訟記録ノ送付ヲ求ム可シ
控訴完結ノ後其記録ハ第二審ニ於テ為シタル判決ノ認証アル謄本ト共ニ第一審裁判所ノ書記ニ之ヲ返還ス可シ
第二章 上告
第四百三十二条 上告ハ地方裁判所及ヒ控訴院ノ第二審ニ於テ為シタル終局判決ニ対シテ之ヲ為ス
第四百三十三条 終局判決前ニ為シタル裁判ハ亦上告裁判所ノ判断ヲ受ク但此法律ニ於テ不服ヲ申立ツルコトヲ得スト明記シタルトキ又ハ抗告ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトヲ得ルトキハ此限ニ在ラス
第四百三十四条 上告ハ法律ニ違背シタル裁判ナルコトヲ理由トスルトキニ限リ之ヲ為スコトヲ得
第四百三十五条 法則ヲ適用セス又ハ不当ニ適用シタルトキハ法律ニ違背シタルモノトス
第四百三十六条 裁判ハ左ノ場合ニ於テハ常ニ法律ニ違背シタルモノトス
第一 規定ニ従ヒ判決裁判所ヲ構成セサリシトキ
第二 法律ニ依リ職務ノ執行ヨリ除斥セラレタル判事カ裁判ニ参与シタルトキ但忌避ノ申請又ハ上訴ヲ以テ除斥ノ理由ヲ主張シタルモ其効ナカリシトキハ此限ニ在ラス
第三 判事カ忌避セラレ且忌避ノ申請ヲ理由アリト認メタルニ拘ハラス裁判ニ参与シタルトキ
第四 裁判所カ其管轄又ハ管轄違ヲ不当ニ認メタルトキ
第五 訴訟手続ニ於テ原告若クハ被告カ法律ノ規定ニ従ヒ代理セラレサリシトキ
第六 訴訟手続ノ公行ニ付テノ規定ニ違背シタル口頭弁論ニ基キ裁判ヲ為シタルトキ
第七 裁判ニ理由ヲ付セサルトキ
第四百三十七条 上告期間ハ一个月トス此期間ハ不変期間ニシテ判決ノ送達ヲ以テ始マル
判決ノ送達前ニ提起シタル上告ハ無効トス
第四百三十八条 上告ノ提起ハ上告状ヲ上告裁判所ニ差出シテ之ヲ為ス
此上告状ニハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 上告セラルル判決ノ表示
第二 此判決ニ対シ上告ヲ為ス旨ノ陳述
此他上告状ハ準備書面ニ関スル一般ノ規定ニ従ヒテ之ヲ作リ特ニ判決ニ対シ如何ナル程度ニ於テ不服ナルヤ及ヒ判決ニ付キ如何ナル程度ニ於テ破毀ヲ為ス可キヤノ申立ヲ掲ケ且法則ヲ適用セス若クハ不当ニ適用シタルコトヲ上告ノ理由トスルトキハ其法則ノ表示又ハ訴訟手続ニ付テノ規定ニ違背シタルコトヲ上告ノ理由トスルトキハ其欠欠ヲ明カニスル事実ノ表示又ハ法律ニ違背シテ事実ヲ確定シ若クハ遺脱シ若クハ提出シタリト看做シタルコトヲ上告ノ理由トスルトキハ其事実ノ表示ヲ掲ク可シ
第四百三十九条 上告裁判所ハ上告人ヲ呼出シ其陳述ヲ聴キ上告ヲ許ス可カラサルモノナルトキ又ハ法律上ノ方式及ヒ期間ニ於テ起ササルトキ又ハ第四百三十四条ノ規定ニ依ラサルトキハ判決ヲ以テ之ヲ棄却ス可シ
上告人カ呼出ノ期日ニ出頭セサルトキハ上告ヲ取下ケタルモノト看做ス但出頭セサリシコトヲ期日ヨリ七日ノ期間内ニ十分ナル理由ヲ以テ弁解シタルトキハ更ニ期日ヲ定ム
第四百四十条 上告状ノ送達ト口頭弁論ノ期日トノ間ニ存スルコトヲ要スル時間ニ付テハ第百九十四条ノ規定ヲ適用シ答弁書ヲ差出ス可キ期間ノ催告ニ付テハ第百九十九条ノ規定ヲ適用ス
前項ノ場合ニ於テモ亦第二百三条ノ規定ヲ適用スルコトヲ得
第四百四十一条 答弁書ハ準備書面ニ関スル一般ノ規定ニ従ヒテ之ヲ作リ且一定ノ申立ヲ掲ク可シ
第四百四十二条 被上告人ハ附帯上告ヲ為スコトヲ得
此附帯上告ニ付テハ附帯控訴ノ規定ヲ準用ス
第四百四十三条 答弁書ニ附帯上告ヲ為ス旨ノ陳述ヲ掲ケタルトキハ之ヲ上告人ニ送達ス可シ
第四百四十四条 右ノ外上告ノ訴訟手続ニハ地方裁判所ノ第一審ノ訴訟手続ノ規定ヲ準用ス但本章ノ規定ニ依リ差異ノ生スルモノハ此限ニ在ラス
第四百四十五条 上告裁判所ハ当事者ノ為シタル申立ノミニ付キ調査ヲ為ス
第四百四十六条 上告裁判所ハ裁判ヲ為スニ付キ控訴裁判所カ其裁判ノ憑拠トシタル事実ヲ標準トス此事実ノ外ハ第四百三十八条第三項ニ掲ケタル事実ニ限リ之ヲ斟酌スルコトヲ得
証拠調ヲ必要トスルトキハ上告裁判所ハ之ヲ命ス可シ
第四百四十七条 上告ヲ理由アリトスルトキハ不服ヲ申立テラレタル判決ヲ破毀ス可シ
訴訟手続ニ関スル規定ニ違背シタルニ因リ判決ヲ破毀スルトキハ其違背シタル部分ニ限リ訴訟手続ヲモ亦破毀ス可シ
第四百四十八条 判決ヲ破毀スル場合ニ於テハ第四百五十一条ノ規定ヲ除ク外更ニ弁論及ヒ裁判ヲ為サシムル為メ事件ヲ控訴裁判所ニ差戻シ又ハ之ヲ他ノ同等ナル裁判所ニ移送ス可シ
事件ノ差戻又ハ移送ヲ受ケタル裁判所ハ新口頭弁論ニ基キ裁判ヲ為スコトヲ要ス
第四百四十九条 当事者ハ破毀セラレタル判決ノ以前ニ於ケル口頭弁論ニ当リ提出スルコトヲ得ヘカリシ事項ヲ新口頭弁論ニ際シ提出スル権利アリ
第四百五十条 事件ノ差戻又ハ移送ヲ受ケタル裁判所ハ上告裁判所ノ為シタル法律ニ係ル判断ニシテ判決ヲ破毀スル基本ト為シタルモノヲ以テ新ナル弁論及ヒ裁判ノ基本ト為ス義務アリ
第四百五十一条 上告裁判所ハ左ノ場合ニ於テ事件ニ付キ裁判ヲ為ス可シ
第一 確定シタル事実ニ法律ヲ適用スルニ当リ法律ニ違背シタル為ニ判決ヲ破毀シ且其事件カ裁判ヲ為スニ熟スルトキ
第二 無訴権ノ為メ又ハ裁判所ノ管轄違ナル為ニ判決ヲ破毀スルトキ
第四百五十二条 上告ヲ理由ナシトスルトキハ之ヲ棄却ス可シ
第四百五十三条 裁判カ其理由ニ於テ法律ニ違背シタルトキト雖モ他ノ理由ニ因リ裁判ノ正当ナルトキハ上告ヲ棄却ス可シ
第四百五十四条 左ノ諸件ニ関スル控訴ノ規定ハ上告ニ之ヲ準用ス
第一 闕席判決ニ対スル不服ノ申立
第二 控訴ノ取下
第三 当事者ノ双方ヨリ控訴ヲ起シタル場合ニ於ケル訴訟手続及ヒ控訴ト故障トヲ同時ニ為シタルトキノ訴訟手続
第四 口頭弁論ノ延期
第五 口頭弁論ノ際ニ於ケル当事者ノ演述
第六 妨訴ノ抗弁ニ付テノ弁論
第七 控訴ヲ起シタル者ノ不利益ト為ル裁判ヲ為ス可カラサルコト
第八 記録ノ送付並ニ返還
第三章 抗告
第四百五十五条 抗告ハ訴訟手続ニ関スル申請ヲ口頭弁論ヲ経スシテ却下シタル裁判ニ対シ其他此法律ニ於テ特ニ掲ケタル場合ニ限リ之ヲ為スコトヲ得
第四百五十六条 抗告ニ付テハ直近ノ上級裁判所其裁判ヲ為ス
抗告裁判所ノ裁判ニ対シテハ其裁判ニ因リ新ナル独立ノ抗告理由ヲ生シタルトキニ非サレハ更ニ抗告ヲ為スコトヲ得ス
第四百五十七条 抗告ハ不服ヲ申立テラレタル裁判ヲ為シタル裁判所又ハ裁判長ノ属スル裁判所ニ抗告状ヲ差出シテ之ヲ為ス
訴訟カ区裁判所ニ繋属シ若クハ嘗テ繋属シタルトキ又ハ証人、鑑定人ヨリ若クハ証書ヲ提出スル義務アリト宣言ヲ受ケタル第三者ヨリ抗告ヲ為ストキハ口頭ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
第四百五十八条 抗告ハ新ナル事実及ヒ証拠方法ヲ以テ憑拠ト為スコトヲ得
第四百五十九条 不服ヲ申立テラレタル裁判ヲ為シタル裁判所又ハ裁判長カ再度ノ考案若クハ新ナル提供ニ基キ抗告ヲ理由アリトスルトキハ不服ノ点ヲ更正シ又理由ナシトスルトキハ裁判所又ハ裁判長ハ意見ヲ付シテ三日ノ期間内ニ抗告ヲ抗告裁判所ニ送付シ反適当トスル場合ニ於テハ訴訟記録ヲモ送付ス可シ
第四百六十条 抗告ハ此法律ニ於テ別段ノ規定ヲ設ケタル場合ニ限リ執行停止ノ効力ヲ有ス
然レトモ不服ヲ申立テラレタル裁判ヲ為シタル裁判所又ハ裁判長ハ抗告ニ付テノ裁判アルマテ其執行ノ中止ヲ命スルコトヲ得
抗告裁判所ハ抗告ニ付テノ裁判ヲ為ス前ニ不服ヲ申立テラレタル裁判ノ執行中止ヲ命スルコトヲ得
第四百六十一条 抗告ハ急迫ナル場合ニ限リ直チニ抗告裁判所ニ之ヲ為スコトヲ得
抗告裁判所ハ裁判ヲ為ス前ニ不服ヲ申立テラレタル裁判ヲ為シタル裁判所又ハ裁判長ノ意見及ヒ記録ヲ要求スルコトヲ得
抗告裁判所ハ事件ヲ急迫ナラスト認ムルトキハ不服ヲ申立テラレタル裁判ヲ為シタル裁判所又ハ裁判長ニ其事件ヲ送付シ且其旨ヲ抗告人ニ通知ス可シ
第四百六十二条 抗告裁判所ハ口頭弁論ヲ経スシテ裁判ヲ為スヲ以テ通例トス
抗告裁判所ハ抗告人ト反対ノ利害関係ヲ有スル者ニ抗告ヲ通知シテ書面上ノ陳述ヲ為サシムルコトヲ得
陳述ハ口頭ヲ以テ抗告ヲ為シ得ヘキ場合ニ於テハ亦口頭ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
抗告裁判所ハ口頭弁論ノ為ニ当事者ヲ呼出スコトヲ得
第四百六十三条 抗告裁判所ハ抗告ヲ許ス可キヤ否ヤ又法律上ノ方式ニ従ヒ若クハ其期間ニ於テ提出シタルヤ否ヤヲ職権ヲ以テ調査ス可シ
若シ此要件ノ一ヲ欠クトキハ抗告ヲ不適法トシテ棄却ス可シ
第四百六十四条 抗告ヲ適法ニシテ且理由アリトスルトキハ抗告裁判所ハ不服ヲ申立テラレタル裁判ヲ廃棄シテ自ラ更ニ裁判ヲ為シ又ハ不服ヲ申立テラレタル裁判ヲ為シタル裁判所又ハ裁判長ニ委任シテ裁判ヲ為サシムルコトヲ得
抗告裁判所ノ裁判ハ不服ヲ申立テラレタル裁判ヲ為シタル裁判所又ハ裁判長ニ之ヲ通知ス可シ
第四百六十五条 受命判事若クハ受託判事ノ裁判又ハ裁判所書記ノ処分ノ変更ヲ求ムルニハ先ツ受訴裁判所ノ裁判ヲ求ム可シ
抗告ハ受訴裁判所ノ裁判ニ対シテ之ヲ為スコトヲ得
第一項ノ規定ハ大審院ニモ亦之ヲ適用ス
第四百六十六条 即時抗告ノ場合ニ於テハ左ノ特別ノ規定ニ従フ
抗告ハ七日ノ不変期間内ニ之ヲ為ス可シ其期間ハ裁判ノ送達ヨリ始マリ第二百五十三条、第六百八十条及ヒ第七百六十九条第三項ノ場合ニ於テハ裁判ノ言渡ヨリ始マル抗告裁判所ニ抗告ヲ提出シタルトキハ急迫ナラスト認メタル場合ニ於テモ亦不変期間ヲ保存ス
再審ヲ求ムル訴ニ付テノ要件存スルトキハ不変期間ノ満了後ト雖モ此訴ノ為メ定メタル期間内ハ抗告ヲ為スコトヲ得
前条第一項ノ場合ニ於テハ抗告提出ノ為メ定メタル方法ニ依リ不変期間内ニ受訴裁判所ノ裁判ヲ求ムルコトヲ要ス受訴裁判所ハ其申請ヲ正当ト認メサルトキハ之ヲ抗告裁判所ニ送付ス可シ
第四編 再審
第四百六十七条 確定ノ終局判決ヲ以テ終結シタル訴訟ハ取消ノ訴又ハ原状回復ノ訴ニ因リ之ヲ再審スルコトヲ得
当事者ノ一方又ハ双方ヨリ此両訴ヲ起シタルトキハ原状回復ノ訴ニ付テノ弁論及ヒ裁判ハ取消ノ訴ニ付テノ裁判カ確定スルマテ之ヲ中止ス可シ
第四百六十八条 左ノ場合ニ於テハ取消ノ訴ニ因リ再審ヲ求ムルコトヲ得
第一 規定ニ従ヒ判決裁判所ヲ構成セサリシトキ
第二 法律ニ依リ職務ノ執行ヨリ除斥セラレタル判事カ裁判ニ参与シタルトキ但忌避ノ申請又ハ上訴ヲ以テ除斥ノ理由ヲ主張シタルモ其効ナカリシトキハ此限ニ在ラス
第三 判事カ忌避セラレ且忌避ノ申請カ理由アリト認メラレタルニ拘ハラス裁判ニ参与シタリシトキ
第四 訴訟手続ニ於テ原告若クハ被告カ法律ノ規定ニ従ヒ代理セラレサリシトキ
第一号及ヒ第三号ノ場合ニ於テ上訴若クハ故障ヲ以テ取消ヲ主張シ得ヘカリシトキハ取消ノ訴ヲ許サス
第四百六十九条 左ノ場合ニ於テハ原状回復ノ訴ニ因リ再審ヲ求ムルコトヲ得
第一 刑法ニ掲ケタル職務上ノ義務ニ違背シタル罪ヲ訴訟ニ関シ犯シタル判事カ裁判ニ参与シタリシトキ
第二 原告若クハ被告ノ法律上代理人若クハ訴訟代理人又ハ相手方若クハ其法律上代理人若クハ訴訟代理人カ罰セラル可キ行為ヲ訴訟ニ関シテ為シタリシトキ
第三 判決ノ憑拠ト為リタル証書カ偽造又ハ変造ナリシトキ
第四 証人若クハ鑑定人カ供述ニ因リ又ハ通事カ判決ノ憑拠ト為リタル通訳ニ因リ偽証ノ罪ヲ犯シタリシトキ
第五 判決ノ憑拠ト為リタル刑事上ノ判決カ他ノ確定ト為リタル刑事上ノ判決ヲ以テ廃棄若クハ破毀セラレタリシトキ
第六 原告若クハ被告カ同一ノ事件ニ付テノ判決ニシテ前ニ確定ト為リタルモノヲ発見シ其判決カ不服ヲ申立テラレタル判決ト牴触スルトキ
第七 相手方若クハ第三者ノ所為ニ依リ以前ニ提出スルコトヲ得サリシ証書ニシテ原告若クハ被告ノ利益ト為ル可キ裁判ヲ為スニ至ラシム可キモノヲ発見シタルトキ
第一号乃至第四号ノ場合ニ於テハ罰セラル可キ行為ニ付テ判決カ確定ト為リタルトキ又ハ証拠欠欠外ナル理由ヲ以テ刑事訴訟手続ノ開始若クハ実行ヲ為シ得サルトキニ限リ再審ヲ求ムルコトヲ得
第四百七十条 原状回復ノ訴ハ原告若クハ被告カ自己ノ過失ニ非スシテ前訴訟手続ニ於テ殊ニ故障又ハ控訴若クハ附帯控訴ニ依リ原状回復ノ理由ヲ主張スルコト能ハサリシトキニ限リ之ヲ為スコトヲ得
第四百七十一条 不服ヲ申立テラレタル判決前ニ同一ノ裁判所又ハ下級ノ裁判所ニ於テ為シタル裁判ニ関スル不服ノ理由ハ再審ヲ求ムル訴ト共ニ之ヲ主張スルコトヲ得但不服ヲ申立テラレタル判決カ其裁判ニ根拠スルトキニ限ル
第四百七十二条 再審ヲ求ムル訴ハ不服ヲ申立テラレタル裁判ヲ為シタル裁判所ノ管轄ニ専属ス
同一ノ事件ニ付キ一分ハ下級ノ裁判所又一分ハ上級ノ裁判所ニ於テ為シタル数箇ノ判決ニ対スル訴ハ上級ノ裁判所ノ管轄ニ専属ス
督促手続ニ依リテ区裁判所ノ発シタル執行命令ニ対シ再審ヲ求ムル訴ハ其命令ヲ発シタル区裁判所ノ管轄ニ専属ス然レトモ其請求カ区裁判所ノ管轄ニ属セサルトキハ請求ニ付テノ訴訟ヲ管轄スル裁判所ニ専属ス
第四百七十三条 訴ノ提起及ヒ其後ノ訴訟手続ニハ以下数条ニ於テ別段ノ規定ヲ設ケサル限リハ其訴ニ付キ弁論及ヒ裁判ヲ為ス可キ裁判所ノ訴訟手続ニ関スル規定ヲ準用ス
第四百七十四条 訴ハ一个月ノ不変期間内ニ之ヲ起ス可シ
此期間ハ原告若クハ被告カ不服ノ理由ヲ知リタル日ヲ以テ始マル若シ原告若クハ被告カ判決ノ確定前ニ不服ノ理由ヲ知リタルトキハ判決ノ確定ヲ以テ始マル
判決確定ノ日ヨリ起算シテ五个年ノ満了後ハ訴ヲ為スコトヲ得ス
前二項ノ規定ハ第四百六十八条第四号ノ場合ニ之ヲ適用セス此場合ニ於テ其訴ノ提起ノ期間ハ原告若クハ被告又ハ其法律上代理人カ送達ニ因リ判決アリタルコトヲ知リタル日ヲ以テ始マル
第四百七十五条 訴状ニハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 取消又ハ原状回復ノ訴ヲ受クル判決ノ表示
第二 取消又ハ原状回復ノ訴ヲ起ス旨ノ陳述
此他訴状ハ準備書面ニ関スル一般ノ規定ニ従ヒテ之ヲ作リ且不服ノ理由ノ表示、此理由及ヒ不変期間ノ遵守ヲ明白ナラシムル事実ニ付テノ証拠方法又如何ナル程度ニ於テ不服ヲ申立テラレタル判決ヲ廃棄若クハ破毀ス可キヤノ申立又本案ニ付キ更ニ如何ナル裁判ヲ為ス可キヤノ申立ヲモ掲ク可シ
第四百七十六条 判然許ス可カラサル訴又ハ判然法律上ノ方式ニ適セス若クハ其期間ノ経過後ニ起シタル訴ハ裁判長ノ命令ヲ以テ之ヲ却下ス可シ
此却下ノ命令ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第四百七十七条 原告ハ口頭弁論ノ期日ニ於テ相手方ノ陳述ノ有無ニ拘ハラス再審ヲ求ムル理由及ヒ法律上ノ期間ノ遵守ヲ明白ニスル事実ヲ疏明ス可シ
第四百七十八条 許ス可カラサル訴又ハ法律上ノ方式ニ適セス若クハ其期間ノ経過後ニ起シタル訴ハ職権ヲ以テ判決ニ因リ不適法トシテ之ヲ棄却ス可シ
第四百七十九条 本案ニ付テノ弁論及ヒ裁判ハ不服申立ノ理由ノ存スル部分ニ限リ更ニ之ヲ為ス可シ
裁判所ハ本案ニ付テノ弁論前ニ再審ヲ求ムル理由及ヒ許否ニ付キ弁論及ヒ裁判ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ本案ニ付テノ弁論ハ再審ヲ求ムル理由及ヒ許否ニ付テノ弁論ノ続行ト看做ス
第四百八十条 原告ノ不利益ト為ル判決ノ変更ハ相手方カ再審ヲ求ムル訴ヲ起シテ変更ヲ申立テタルトキニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス
第四百八十一条 訴カ上告裁判所ニ属スルトキハ上告裁判所ハ再審ヲ求ムル理由及ヒ其許否ニ付テノ弁論ノ完結カ係争事実ノ確定及ヒ斟酌ニ繋ルトキト雖モ其完結ヲ為ス可シ
第四百八十二条 上訴ハ訴ニ付キ裁判ヲ為シタル裁判所ノ判決ニ対シ一般ニ為スコトヲ得ヘキトキニ限リ之ヲ為スコトヲ得
第四百八十三条 第三者カ原告及ヒ被告ノ共謀ニ因リ第三者ノ債権ヲ詐害スル目的ヲ以テ判決ヲ為サシメタリト主張シ其判決ニ対シ不服ヲ申立ツルトキハ原状回復ノ訴ニ因レル再審ノ規定ヲ準用ス
此場合ニ於テハ原告及ヒ被告ヲ共同被告ト為ス
第五編 証書訴訟及ヒ為替訴訟
第四百八十四条 一定ノ金額ノ支払其他ノ代替物若クハ有価証券ノ一定ノ数量ノ給付ヲ目的トスル請求ハ其請求ヲ起ス理由タル総テノ必要ナル事実ヲ証書ニ依リ証スルコトヲ得ヘキトキハ証書訴訟ヲ以テ之ヲ主張スルコトヲ得
第四百八十五条 訴状ニハ証書訴訟トシテ訴フル旨ノ陳述ヲ掲ケ且証書ノ原本又ハ謄本ヲ添フルコトヲ要ス
第四百八十六条 本案ノ弁論ハ妨訴ノ抗弁ニ基キ之ヲ拒ムコトヲ得ス然レトモ裁判所ハ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ此抗弁ニ付キ弁論ノ分離ヲ命スルコトヲ得
第四百八十七条 反訴ハ之ヲ為スコトヲ得ス
証書ノ真否及ヒ第四百八十四条ニ掲ケタル以外ノ事実ニ関シテハ書証ノミヲ以テ適法ノ証拠方法ト為スコトヲ得
書証ノ申出ハ証書ノ提出ヲ以テノミ之ヲ為スコトヲ得
第四百八十八条 原告ハ口頭弁論ノ終結ニ至ルマテハ被告ノ承諾ヲ要セスシテ通常ノ手続ニテ訴訟ヲ繋属セシメテ証書訴訟ヲ止ムルコトヲ得
第四百八十九条 訴ヲ以テ主張シタル請求カ理由ナシト見エ又ハ被告ノ抗弁ニ因リ理由ナシト見ユルトキハ原告ノ請求ヲ却下ス可シ
証書訴訟ヲ許ス可カラサルトキ殊ニ適法ノ証拠方法ヲ以テ原告ノ義務タル証拠ヲ申出テス又ハ完全ニ之ヲ挙ケサル場合ニ於テハ被告カ口頭弁論ノ期日ニ出頭セス又ハ法律上ノ理由ナキ異議若クハ証書訴訟ニ於テ許ササル異議ノミヲ以テ訴ニ対シ抗弁シタルトキト雖モ此訴訟ニ於テハ其訴ヲ許ササルモノトシテ之ヲ却下ス可シ
第四百九十条 証書訴訟ニ於テ適法ノ証拠方法ヲ以テ被告ノ義務タル証拠ヲ申出テス又ハ完全ニ之ヲ挙ケサルトキハ被告ノ異議ハ証書訴訟ニ於テ許ササルモノトシテ之ヲ却下ス可シ
第四百九十一条 主張シタル請求ヲ争ヒタル被告ニハ敗訴ノ言渡ヲ受ケタル総ノ場合ニ於テ其権利ノ行使ヲ留保ス可シ
判決ニ此留保ヲ掲ケサルトキハ第二百四十二条ノ規定ニ依リ判決ノ補充ヲ申立ツルコトヲ得
留保ヲ掲ケタル判決ハ上訴及ヒ強制執行ニ付テハ之ヲ終局判決ト看做ス
第四百九十二条 被告ニ権利ノ行使ヲ留保シタルトキハ訴訟ハ通常ノ訴訟手続ニ於テ繋属ス
此手続ニ於テ証書訴訟ヲ以テ主張シタル請求ノ理由ナカリシコトノ顕ハルルトキハ前判決ヲ廃棄シ原告ノ請求ヲ却下シ且其生セシメタル費用ノ全部又ハ一分ノ弁済ヲ原告ニ言渡シ又前判決ニ基キ被告ヨリ支払ヒ又ハ給付シタルモノノ弁済ヲ申立ニ因リ原告ニ言渡ス可シ
右手続ニ於テ原告若クハ被告カ出頭セサルトキハ闕席判決ニ関スル規定ヲ準用ス
第四百九十三条 第四百二十六条及ヒ第四百二十七条ノ規定ハ証書訴訟ニ之ヲ適用セス
第四百九十四条 商法ニ規定シタル手形ニ因ル請求ヲ証書訴訟ヲ以テ主張スルトキハ為替訴訟トシテ以下二条ニ掲クル特別ノ規定ヲ適用ス
第四百九十五条 為替ノ訴ハ支払地ノ裁判所又ハ被告カ其普通裁判籍ヲ有スル地ノ裁判所ニ之ヲ起スコトヲ得
数人ノ為替義務者カ共同ニテ訴ヲ受ク可キトキハ支払地ノ裁判所又ハ被告ノ各人カ其普通裁判籍ヲ有スル地ノ裁判所各之ヲ管轄ス
第四百九十六条 訴状ニハ為替訴訟トシテ訴フル旨ヲ掲クルコトヲ要ス
訴ノ許ス可キモノナルトキハ直チニ口頭弁論ノ期日ヲ定ム
口頭弁論ノ期日ト訴状送達トノ間ニハ少ナクトモ二十四時ノ時間ヲ存スルコトヲ要ス
第六編 強制執行
第一章 総則
第四百九十七条 強制執行ハ確定ノ終局判決又ハ仮執行ノ宣言ヲ付シタル終局判決ニ因リテ之ヲ為ス
第四百九十八条 判決ハ適法ナル故障ノ申立又ハ適法ナル上訴ノ提起ニ付キ定メタル期間ノ満了前ニハ確定セサルモノトス
判決ノ確定ハ故障若クハ上訴ヲ其期間内ニ申立若クハ提起スルニ因リ之ヲ遮断ス
第四百九十九条 原告若クハ被告カ判決ノ確定ニ付キ証明書ヲ求ムルトキハ第一審裁判所ノ書記ハ記録ニ基キ之ヲ付与ス
訴訟カ猶ホ上級審ニ於テ繋属中ナルトキハ上級裁判所ノ書記ハ判決ノ確定ト為リタル部分ノミニ付キ証明書ヲ付与ス
判決ニ対シ上訴ノ提起ナキ場合ニ非サレハ証明書ヲ付与スルコトヲ得サルトキニ限リ上訴ヲ管轄スル裁判所ノ書記カ不変期間内ニ上訴ノ提起ナキコトヲ認メタル証明書ヲ以テ足ル
第五百条 原状回復又ハ再審ヲ求ムル申立アルトキハ裁判所ハ申立ニ因リ保証ヲ立テシメ又ハ保証ヲ立テシメスシテ強制執行ヲ一時停止ス可キコトヲ命シ又ハ保証ヲ立テシメテ強制執行ヲ為ス可キコトヲ命シ及ヒ保証ヲ立テシメテ其為シタル強制処分ヲ取消ス可キヲ命スルコトヲ得
保証ヲ立テシメスシテ為ス強制執行ノ停止ハ其執行ニ因リ償フコト能ハサル損害ヲ生ス可キコトヲ疏明スルトキニ限リ之ヲ許ス
右裁判ハ口頭弁論ヲ経スシテ之ヲ為スコトヲ得其裁判ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第五百一条 左ノ判決ニ付テハ職権ヲ以テ仮執行ノ宣言ヲ為ス可シ
第一 認諾ニ基キ敗訴ヲ言渡ス判決
第二 証書訴訟又ハ為替訴訟ニ於テ言渡ス判決
第三 同一審ニ於テ同一ノ原告若クハ被告ニ対シ本案ニ付キ言渡シタル第二又ハ其後ノ闕席判決
第四 仮差押又ハ仮処分ヲ取消ス判決
第五 養料ヲ支払フ義務ヲ言渡ス判決但訴ノ提起後ノ時間及ヒ其提起前最後ノ三个月間ノ為ニ支払フ可キモノナルトキニ限ル
第五百二条 左ノ場合ニ於テハ申立ニ因リ仮執行ノ宣言ヲ為ス可シ
第一 総テノ住家其他ノ建物又ハ其或ル部分ノ受取、明渡、使用、占拠若クハ修繕ニ関シ又ハ賃借人ノ家具若クハ所持品ヲ賃貸人ノ差押ヘタルコトニ関シ賃貸人ト賃借人トノ間ニ起リタル訴訟
第二 占有ノミニ係ル訴訟
第三 雇主ト雇人トノ間ニ雇期限一个年以下ノ契約ニ関リ起リタル訴訟
第四 左ニ掲ケタル事項ニ付キ旅人ト旅店若クハ飲食店ノ主人トノ間ニ又ハ旅人ト水陸運送人トノ間ニ起リタル訴訟
イ 賄料又ハ宿料又ハ旅人ノ運送料又ハ之ニ伴フ手荷物ノ運送料
ロ 旅店若クハ飲食店ノ主人又ハ運送人ニ旅人ヨリ保護ノ為メ預ケタル手荷物、金銭又ハ有価物
第五 此他財産権上ノ請求ニ関シ金額又ハ価額ニ於テ弐拾円ヲ超過セサル訴訟但其物ノ価額ニ付テハ第三条乃至第六条ノ規定ヲ適用ス
第五百三条 前二条ニ掲ケタル外左ノ場合ニ於テハ財産権上ノ請求ニ関スル判決ニ限リ債権者ノ申立ニ因リ仮執行ノ宣言ヲ為ス可シ
第一 債権者カ執行ノ前ニ保証ヲ立テント申出ツルトキ
第二 債権者カ判決ノ確定ト為ルマテ執行ヲ中止セハ償ヒ難キ損害又ハ計リ難キ損害ヲ受ク可キコトヲ疏明スルトキ
第五百四条 債務者カ判決ノ確定ト為ル前ニ判決ヲ執行セハ回復スルコトヲ得サル損害ヲ受ク可キコトヲ疏明シタルトキハ其申立ニ因リ左ノ宣言ヲ為ス可シ
第一 第五百一条ノ場合ニ於テハ判決ヲ仮ニ執行ス可カラサルコト
第二 第五百二条及ヒ第五百三条ノ場合ニ於テハ債権者ノ仮執行ノ申立ヲ却下スルコト
第五百五条 総テノ場合ニ於テ裁判所ハ債務者ノ申立ニ因リ債権者予メ保証ヲ立ツルトキハ仮執行ヲ為シ得ヘキ旨ヲ宣言スルコトヲ得
債権者カ執行ノ前ニ保証ヲ立ツルコトヲ申出テサルトキハ債務者ノ申立ニ因リ債務者ニ保証ヲ立テシメ又ハ供託ヲ為サシメテ執行ヲ免カルルコトヲ許ス可シ
第五百六条 仮執行ニ関スル申立ハ判決ニ接著スル口頭弁論ノ終結前ニ之ヲ為ス可シ
第五百七条 仮執行ニ付テノ裁判ハ判決主文ニ之ヲ掲ク可シ
第五百八条 職権ヲ以テ判決ノ仮執行ヲ宣言ス可キ場合ニ於テ仮執行ニ付テノ裁判ヲ為ササルトキ又ハ判決ノ仮執行ヲ宣言ス可キ債権者ノ申立ヲ看過シタルトキハ第二百四十二条及ヒ第二百四十三条ノ規定ニ従ヒ判決ノ補充ヲ為スコトヲ得
第五百九条 第一審又ハ第二審ノ判決ニシテ仮執行ノ宣言ナカリシモノ又ハ条件附ノ仮執行ノ宣言アリタルモノハ上訴ヲ以テ不服ヲ申立テサル部分ニ限リ口頭弁論ノ進行中ニ為シタル原告若クハ被告ノ申立ニ因リ上級審ニ於テ其判決ニ仮執行ノ宣言ヲ付ス可シ
第五百十条 本案ノ裁判又ハ仮執行ノ宣言ヲ廃棄若クハ破毀又ハ変更スル判決ノ言渡アルトキハ仮執行ハ其廃棄若クハ破毀又ハ変更ヲ為ス限度ニ於テ効力ヲ失フ
仮執行ノ宣言アリタル本案ノ判決ヲ廃棄若クハ破毀又ハ変更スルトキハ判決ニ基キ被告ノ支払又ハ給付シタルモノノ弁済ヲ被告ノ申立ニ因リ判決ヲ以テ原告ニ言渡ス可シ
第五百十一条 第二審ニ於テハ申立ニ因リ先ツ仮執行ニ付キ弁論及ヒ裁判ヲ為ス可シ
口頭弁論ノ延期ニ付テノ第四百十条ノ規定ハ此場合ニ於テハ之ヲ適用セス
第二審ニ於テ仮執行ニ付キ為シタル裁判ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第五百十二条 仮執行ノ宣言ヲ付シタル判決ニ対シ故障ヲ申立又ハ上訴ヲ起シタルトキハ第五百条ノ規定ヲ準用ス
第五百十三条 本編ノ規定ニ従ヒ原告若クハ被告ニ保証ヲ立ツル義務ヲ負ハシメ若クハ保証ヲ立又ハ供託ヲ為スコトヲ許シタル場合ニ於テハ原告若クハ被告ハ其普通裁判籍ヲ有スル地ノ区裁判所又ハ執行裁判所ニ保証ヲ立又ハ供託ヲ為スコトヲ得
保証ヲ立又ハ供託ヲ為シタルコトニ付テハ求ニ因リ証明書ヲ付与ス可シ
第五百十四条 外国裁判所ノ判決ニ因レル強制執行ハ本邦ノ裁判所ニ於テ執行判決ヲ以テ其適法ナルコトヲ言渡シタルトキニ限リ之ヲ為スコトヲ得
執行判決ヲ求ムル訴ニ付テハ債務者ノ普通裁判籍ヲ有スル地ノ区裁判所又ハ地方裁判所之ヲ管轄シ又普通裁判籍ナキトキハ第十七条ノ規定ニ従ヒテ債務者ニ対スル訴ヲ管轄スル裁判所之ヲ管轄ス
第五百十五条 執行判決ハ裁判ノ当否ヲ調査セスシテ之ヲ為ス可シ
執行判決ヲ求ムル訴ハ左ノ場合ニ於テハ之ヲ却下ス可シ
第一 外国裁判所ノ判決ノ確定ト為リタルコトヲ証明セサルトキ
第二 本邦ノ法律ニ依リ強テ為サシムルコトヲ得サル行為ヲ執行セシム可キトキ
第三 本邦ノ法律ニ従ヘハ外国裁判所カ管轄権ヲ有セサルトキ
第四 敗訴ノ債務者本邦人ニシテ応訴セサリシトキ但訴訟ヲ開始スル呼出又ハ命令ヲ受訴裁判所所属ノ国ニ於テ又ハ法律上ノ共助ニ依リ本邦ニ於テ本人ニ送達セサリシトキニ限ル
第五 国際条約ニ於テ相互ヲ保セサルトキ
第五百十六条 強制執行ハ執行文ヲ付シタル判決ノ正本ニ基キ之ヲ為ス
執行力アル正本ハ第一審裁判所ノ書記又訴訟カ上級裁判所ニ繋属スルトキハ其裁判所ノ書記之ヲ付与ス
執行力アル正本ヲ求ムル申立ハ口頭ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
第五百十七条 執行文ハ判決ノ正本ノ末尾ニ之ヲ附記ス
其文式左ノ如シ
前記ノ正本ハ被告某若クハ原告某ニ対シ強制執行ノ為メ原告某若クハ被告某ニ之ヲ付与ス
執行文ニハ裁判所書記署名捺印シ且裁判所ノ印ヲ押ス可シ
第五百十八条 執行力アル正本ハ判決ノ確定シタルトキ又ハ仮執行ノ宣言アリタルトキニ限リ之ヲ付与ス
判決ノ執行カ其旨趣ニ従ヒ保証ヲ立ツルコトニ繋ル場合ノ外他ノ条件ニ繋ル場合ニ於テハ債権者カ証明書ヲ以テ其条件ヲ履行シタルコトヲ証スルトキニ限リ執行力アル正本ヲ付与スルコトヲ得
第五百十九条 執行力アル正本ハ判決ニ表示シタル債権者ノ承継人ノ為ニ之ヲ付与シ又ハ判決ニ表示シタル債務者ノ一般ノ承継人ニ対シ之ヲ付与スルコトヲ得但其承継カ裁判所ニ於テ明白ナルトキ又ハ証明書ヲ以テ之ヲ証スルトキニ限ル
此承継カ裁判所ニ於テ明白ナルトキハ之ヲ執行文ニ記載ス可シ
第五百二十条 第五百十八条第二項及ヒ第五百十九条ノ場合ニ於テハ執行力アル正本ハ裁判長ノ命令アルトキニ限リ之ヲ付与スルコトヲ得
裁判長ハ其命令前ニ書面又ハ口頭ヲ以テ債務者ヲ審訊スルコトヲ得
右命令ハ執行文ニ之ヲ記載ス可シ
第五百二十一条 第五百十八条第二項及ヒ第五百十九条ニ依リ必要ナル証明ヲ為ス能ハサルトキハ債権者ハ判決ニ基キ執行文ノ付与ニ付キ第一審ノ受訴裁判所ニ訴ヲ起スコトヲ得
第五百二十二条 執行文ノ付与ニ対シ債務者カ異議ヲ申立テタルトキハ其執行文ヲ付与シタル裁判所書記ノ属スル裁判所之ヲ裁判ス
裁判長ハ其裁判前ニ仮処分ヲ為スコトヲ得殊ニ保証ヲ立テシメ若クハ之ヲ立テシメスシテ強制執行ヲ一時停止シ又ハ保証ヲ立テシメテ強制執行ヲ続行ス可キヲ命スルコトヲ得
第五百二十三条 債権者カ執行力アル正本ノ数通ヲ求メ又ハ前ニ付与シタル正本ヲ返還セスシテ更ニ同一判決ノ正本ヲ求ムルトキハ裁判長ノ命令アルトキニ限リ之ヲ付与スルコトヲ得
裁判長ハ其命令ノ前ニ書面又ハ口頭ヲ以テ債務者ヲ審訊スルコトヲ得
相手方ヲ審訊セスシテ執行力アル正本ノ数通ヲ付与シ又ハ更ニ正本ヲ付与シタルトキハ其旨ヲ相手方ニ通知ス可シ
正本ノ数通ヲ付与シ又ハ更ニ正本ヲ付与シタルトキハ其旨ヲ明記ス可シ
第五百二十四条 執行力アル正本ノ付与前ニ判決ノ原本ニ原告ノ為メ若クハ被告ノ為ニ之ヲ付与スル旨且之ヲ付与スル日時ヲ記載ス可シ
第五百二十五条 執行力アル正本ノ効力ハ之ヲ付与シタル裁判所ノ管轄内ニ止マラス総テ本邦ノ裁判区域内ニ及フモノトス
第五百二十六条 債権者ハ一箇ノ地又ハ一箇ノ方法ニテ強制執行ヲ為スモ完全ナル弁済ヲ得ル能ハサルトキハ数通ノ執行力アル正本ニ基キ数箇ノ地又ハ数箇ノ方法ニテ同時ニ強制執行ヲ為ス権利ヲ有ス
第五百二十七条 債権者ハ執行ヲ為ス可キ地ヲ管轄スル区裁判所ノ所在地ニ住居ヲモ事務所ヲモ有セサルトキハ其所在地ニ仮住所ヲ選定シ其旨ヲ裁判所ニ届出ツ可シ
第五百二十八条 強制執行ハ之ヲ求ムル者及ヒ之ヲ受クル者ノ氏名ヲ判決又ハ之ニ附記スル執行文ニ表示シ且判決ヲ既ニ送達シ又ハ同時ニ送達シタルトキニ限リ之ヲ始ムルコトヲ得
判決ノ執行カ其旨趣ニ従ヒ債権者ノ証明ス可キ事実ノ到来ニ繋ルトキ又ハ判決ノ執行カ判決ニ表示シタル債権者ノ承継人ノ為ニ為シ又ハ判決ニ表示シタル債務者ノ承継人ニ対シ為ス可キトキハ執行ス可キ判決ノ外尚ホ之ニ附記スル執行文ヲ強制執行ヲ始ムル前ニ送達スルコトヲ要ス
若シ証明書ニ依リ執行文ヲ付与シタルトキハ亦其証書ノ謄本ヲ強制執行ヲ始ムル前ニ送達シ又ハ同時ニ送達スルコトヲ要ス
第五百二十九条 請求ノ主張カ或ル日時ノ到来ニ繋ルトキハ其日時ノ満了後ニ限リ強制執行ヲ始ムルコトヲ得
若シ執行カ債権者ヨリ保証ヲ立ツルコトニ繋ルトキハ債権者カ保証ヲ立テタルコトニ付テノ公正ノ証明書ヲ提出シ且其謄本ヲ既ニ送達シ又ハ同時ニ送達シタルトキニ限リ其執行ヲ始ムルコトヲ得
第五百三十条 予備、後備ノ軍籍ニ在ラサル軍人、軍属ニ対シテ為ス強制執行ハ其上班司令官庁ニ通知ヲ為シタル後ニ限リ之ヲ始ムルコトヲ得
此官庁ハ債権者ノ求ニ因リ通知ノ受取証ヲ付与ス可シ
第五百三十一条 強制執行ハ此法律ニ於テ別段ノ規定ナキトキニ限リ執達吏之ヲ実施ス
債権者ハ強制執行ヲ委任スル為ニ区裁判所書記ノ補助ヲ求ムルコトヲ得
裁判所書記ノ委任シタル執達吏ハ債権者ノ委任シタルモノト看做ス
第五百三十二条 執達吏ハ債権者ノ委任ニ因リテ為ス行為及ヒ職務上ノ義務ノ違背ヨリシテ債権者其他ノ関係人ニ対シ損害ヲ生セシメタルトキハ第一ニ其責ニ任ス
第五百三十三条 債権者執行力アル正本ヲ交付シテ強制執行ヲ委任シタルトキハ執達吏ハ特別ノ委任ヲ受ケサルトキト雖モ支払其他ノ給付ヲ受取リ其受取リタルモノニ付キ有効ニ受取ノ証書ヲ作リ之ヲ交付シ且債務者ニ於テ其義務ヲ完全ニ尽シタルトキハ執行力アル正本ヲ債務者ニ交付スルコトヲ得
第五百三十四条 執達吏ハ執行力アル正本ヲ所持スルヲ以テ債務者及ヒ第三者ニ対シ強制執行及ヒ前条ニ掲ケタル行為ヲ実施スル権利ヲ有ス債権者ハ此等ノ者ニ対シ委任ノ欠欠又ハ制限ヲ主張スルコトヲ得ス
執達吏ハ其正本ヲ携帯シ関係人ノ求アルトキハ其資格ヲ証スル為ニ之ヲ示ス可シ
第五百三十五条 執達吏ハ債務者カ其義務ヲ完全ニ尽シタルトキハ執行力アル正本及ヒ受取ノ証ヲ之ニ交付シ又其義務ノ一分ヲ尽シタルトキハ執行力アル正本ニ其旨ヲ附記シ且受取ノ証ヲ債務者ニ交付ス可シ
債務者カ後ニ債権者ニ対シ受取ノ証ヲ求ムル権利ハ前項ノ規定ニ因リテ妨ケラルルコト無シ
第五百三十六条 執達吏ハ執行ノ為メ必要ナル場合ニ於テハ債務者ノ住居、倉庫及ヒ筐匣ヲ捜索シ又ハ閉鎖シタル戸扉及ヒ筐匣ヲ開カシムル権利ヲ有ス
抵抗ヲ受クル場合ニ於テハ執達吏ハ威力ヲ用井且警察上ノ援助ヲ求ムルコトヲ得若シ兵力ヲ要スルトキハ之ヲ執行裁判所ニ申立ツ可シ
第五百三十七条 執達吏ハ執行行為ヲ為スニ際シ抵抗ヲ受クルトキ又ハ債務者ノ住居ニ於テ執行行為ヲ為スニ際シ債務者又ハ成長シタル其家族若クハ雇人ニ出会ハサルトキハ成丁者二人又ハ市町村若クハ警察ノ吏員一人ヲ証人トシテ立会ハシム可シ
第五百三十八条 強制執行ニ付キ利害ノ関係ヲ有スル各人ニハ其求ニ因リ執達吏ノ記録ノ閲覧ヲ許シ及ヒ記録中ニ存スル書類ノ謄本ヲ付与スルコトヲ要ス
第五百三十九条 夜間及ヒ日曜日並ニ一般ノ祝祭日ニハ執行裁判所ノ許可アルトキニ限リ執行行為ヲ為スコトヲ得
右許可ノ命令ハ強制執行ノ際之ヲ示ス可シ
第五百四十条 執達吏ハ各執行行為ニ付キ調書ヲ作ル可シ
此調書ニハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 調書ヲ作リタル場所、年月日
第二 執行行為ノ目的物及ヒ其重要ナル事情ノ略記
第三 執行ニ与カリタル各人ノ表示
第四 右各人ノ署名捺印
第五 調書ヲ其各人ニ読聞セ又ハ閲覧セシメ其承諾ノ後署名捺印ヲ為シタルコトノ開示
第六 執達吏ノ署名捺印
第四号及ヒ第五号ノ要件ヲ具備スルコト能ハサルトキハ其理由ヲ記載ス可シ
第五百四十一条 執行行為ニ属スル催告其他ノ通知ハ執達吏口頭ヲ以テ之ヲ為シ且調書ニ之ヲ記載ス可シ
若シ口頭ヲ以テ催告又ハ通知ヲ為ス能ハサルトキハ第百三十九条、第百四十条及ヒ第百四十五条乃至第百四十九条ノ規定ヲ準用シテ其調書ノ謄本ヲ送達シ又別ニ送達証ヲ作ラサルトキハ調書ニ其送達ヲ為シタルコトヲ記載ス可シ
若シ強制執行ノ地ニ於テモ執行裁判所ノ管轄内ニ於テモ送達ヲ為ス能ハサルトキハ催告又ハ通知ヲ受ク可キ者ニ郵便ヲ以テ調書ノ謄本ヲ送達シ且之ヲ郵便ニ付シタルコトヲ調書ニ記載ス可シ
第五百四十二条 執行行為ノ際債務者ニ為ス可キ送達及ヒ通知ハ債務者ノ所在明カナラサルトキ又ハ外国ニ在ルトキハ之ヲ必要トセス
第五百四十三条 此法律ニ於テ裁判所ニ任カセタル執行行為ノ処分又ハ其行為ノ共力ハ執行裁判所トシテ区裁判所ノ管轄ニ属ス
法律ニ於テ別段ニ裁判所ヲ指定セサル各箇ノ場合ニ於テハ執行手続ヲ為ス可キ地又ハ之ヲ為シタル地ヲ管轄スル区裁判所ヲ以テ執行裁判所ト看做ス
執行裁判所ノ裁判ハ口頭弁論ヲ経スシテ之ヲ為スコトヲ得
第五百四十四条 強制執行ノ方法又ハ執行ニ際シ執達吏ノ遵守ス可キ手続ニ関スル申立及ヒ異議ニ付テハ執行裁判所之ヲ裁判ス又執行裁判所ハ第五百二十二条第二項ニ定メタル命ヲ発スル権ヲ有ス
執達吏カ執行委任ヲ受クルヲ拒ミ若クハ委任ニ従ヒ執行行為ヲ実施スルコトヲ拒ミタルトキ又ハ執達吏ノ計算セシ手数料ニ付キ異議アルトキハ執行裁判所ハ之ヲ裁判スル権ヲ有ス
第五百四十五条 判決ニ因リテ確定シタル請求ニ関スル債務者ノ異議ハ訴ヲ以テ第一審ノ受訴裁判所ニ之ヲ主張ス可シ
右ノ異議ハ此法律ノ規定ニ従ヒ遅クトモ異議ヲ主張スルコトヲ要スル口頭弁論ノ終結後ニ其原因ヲ生シ且故障ヲ以テ之ヲ主張スルコトヲ得サルトキニ限リ之ヲ許ス
債務者カ数箇ノ異議ヲ有スルトキハ同時ニ之ヲ主張スルコトヲ要ス
第五百四十六条 前条ノ規定ハ第五百十八条第二項及ヒ第五百十九条ノ場合ニ於テ債務者カ執行文付与ノ際証明シタリト認メラレタル事実ノ到来ニシテ此ニ因リ判決ノ執行ヲ為シ得ヘキモノヲ争ヒ又ハ認メラレタル承継ヲ争フトキハ亦之ヲ準用ス但此場合ニ於テ第五百二十二条ノ規定ニ従ヒ執行文ノ付与ニ対シ異議ヲ申立ツル債務者ノ権ハ此カ為ニ妨ケラルルコト無シ
第五百四十七条 強制執行ノ続行ハ前二条ノ場合ニ於ケル異議ノ訴ノ提起ニ因リテ妨ケラルルコト無シ
然レトモ異議ノ為メ主張シタル事情カ法律上理由アリト見エ且事実上ノ点ニ付キ疏明アリタルトキハ受訴裁判所ハ申立ニ因リ判決ヲ為スニ至ルマテ保証ヲ立テシメ若クハ之ヲ立テシメスシテ強制執行ヲ停止ス可キコトヲ命シ又ハ保証ヲ立テシメテ強制執行ヲ続行ス可キコトヲ命シ又ハ其為シタル執行処分ヲ保証ヲ立テシメテ取消ス可キヲ命スルコトヲ得
右裁判ハ口頭弁論ヲ経スシテ之ヲ為シ又急迫ナル場合ニ於テハ裁判長之ヲ為スコトヲ得
急迫ナル場合ニ於テハ執行裁判所モ亦此権利ヲ行使スルコトヲ得此場合ニ於テハ執行裁判所ハ受訴裁判所ノ裁判ヲ提出セシムル為ニ相当ノ期間ヲ定ム可シ此期間ヲ徒過シタルトキハ債権者ノ申立ニ因リ強制執行ヲ続行ス
第五百四十八条 受訴裁判所ハ異議ノ訴ニ付キ裁判スル判決ニ於テ前条ニ掲ケタル命ヲ発シ又ハ既ニ発シタル命ヲ取消シ之ヲ変更シ若クハ之ヲ認可スルコトヲ得
判決中前項ニ掲クル事項ニ限リ職権ヲ以テ仮執行ノ宣言ヲ為ス可シ
右裁判ニ対スル不服ニ付テハ第五百十一条ノ規定ヲ準用ス
第五百四十九条 第三者カ強制執行ノ目的物ニ付キ所有権ヲ主張シ其他目的物ノ譲渡若クハ引渡ヲ妨クル権利ヲ主張スルトキハ訴ヲ以テ債権者ニ対シ其強制執行ニ対スル異議ヲ主張シ又債務者ニ於テ其異議ヲ正当ナリトセサルトキハ債権者及ヒ債務者ニ対シテ之ヲ主張ス可シ
右訴ヲ債権者及ヒ債務者ニ対シテ起ストキハ之ヲ共同被告ト為ス
右訴ハ執行裁判所ノ管轄ニ属ス然レトモ訴訟物カ区裁判所ノ管轄ニ属セサルトキハ執行裁判所ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所之ヲ管轄ス
強制執行ノ停止及ヒ既ニ為シタル執行処分ノ取消ニ付テハ第五百四十七条及ヒ第五百四十八条ノ規定ヲ準用ス但執行処分ノ取消ハ保証ヲ立テシメスシテ之ヲ為スコトヲ得
第五百五十条 強制執行ハ左ノ書類ヲ提出シタル場合ニ於テ之ヲ停止シ又ハ之ヲ制限ス可シ
第一 執行ス可キ判決若クハ其仮執行ヲ取消ス旨又ハ強制執行ヲ許サストシテ宣言シ若クハ其停止ヲ命シタル旨ヲ記載シタル執行力アル裁判ノ正本
第二 執行又ハ執行処分ノ一時ノ停止ヲ命シタル旨ヲ記載シタル裁判ノ正本
第三 執行ヲ免カルル為メ保証ヲ立テ又ハ供託ヲ為シタル旨ヲ記載シタル公正ノ証明書
第四 執行ス可キ判決ノ後ニ債権者カ弁済ヲ受ケ又ハ義務履行ノ猶予ヲ承諾シタル旨ヲ記載シタル証書
第五百五十一条 前条第一号及ヒ第三号ノ場合ニ於テハ既ニ為シタル執行処分ヲモ取消ス可ク第四号ノ場合ニ於テハ既ニ為シタル執行処分ヲ一時保持セシム可ク第二号ノ場合ニ於テハ其裁判ヲ以テ従前ノ執行行為ノ取消ヲ命セサルトキニ限リ既ニ為シタル執行処分ヲ一時保持セシム可シ
第五百五十二条 強制執行ノ開始後ニ債務者カ死亡スルトキハ強制執行ハ遺産ニ対シ之ヲ続行ス可シ
債務者ノ知ルコトヲ要スル執行行為ヲ実施スル場合ニ於テ相続人アラサルトキ又ハ相続人ノ所在明カナラサルトキハ執行裁判所ハ債権者ノ申立ニ因リ遺産又ハ相続人ノ為メ特別代理人ヲ任ス可シ
第五百五十三条 強制執行ノ開始後ニ戸主タリシ債務者カ其地位ヲ辞シ又ハ之ヲ失ヒタルトキハ此変更ノ生セシ当時債務者ノ所持シタル財産ニ付キ前条ノ規定ヲ準用ス
第五百五十四条 強制執行ノ費用ハ必要ナリシ部分ニ限リ債務者ノ負担ニ帰ス此費用ハ強制執行ヲ受クル請求ト同時ニ之ヲ取立ツ可シ
強制執行ノ基本タル判決ヲ廃棄若クハ破毀シタルトキハ其費用ハ之ヲ債務者ニ弁済ス可シ
第五百五十五条 執行ノ為メ官庁ノ援助ヲ必要トスルトキハ裁判所ハ其援助ヲ官庁ニ求ム可シ
第五百五十六条 予備、後備ノ軍籍ニ在ラサル軍人、軍属ニ対シ兵営及ヒ軍事用庁舎又ハ軍艦ニ於テ強制執行ヲ為ス可キトキハ債権者ノ申立ニ因リ執行裁判所ハ管轄ノ軍事裁判所又ハ所属ノ長官又ハ隊長ニ嘱託シテ之ヲ為ス
嘱託ニ因リ差押ヘタル物ハ債権者ノ委任シタル執達吏ニ之ヲ交付ス可シ
第五百五十七条 外国ニ於テ強制執行ヲ為ス可キ場合ニ於テ其外国官庁カ本邦裁判所ニ法律上ノ其助ヲ為ス可キトキハ債権者ノ申立ニ因リ第一審ノ受訴裁判所ハ之ヲ外国官庁ニ嘱託ス可シ
外国駐在ノ本邦領事ニ依リ強制執行ヲ為シ得ヘキトキハ第一審ノ受訴裁判所ハ之ヲ其領事ニ嘱託ス可シ
第五百五十八条 強制執行ノ手続ニ於テ口頭弁論ヲ経スシテ為スコトヲ得ル裁判ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第五百五十九条 強制執行ハ左ノ諸件ニ付テモ亦之ヲ為スコトヲ得
第一 抗告ヲ以テノミ不服ヲ申立ツルコトヲ得ル裁判
第二 執行命令
第三 訴ノ提起後受訴裁判所ニ於テ又ハ受命判事若クハ受託判事ノ面前ニ於テ為シタル和解
第四 第三百八十一条ノ規定ニ従ヒ区裁判所ニ於テ為シタル和解
第五 公証人カ其権限内ニ於テ成規ノ方式ニ依リ作リタル証書但一定ノ金額ノ支払又ハ他ノ代替物若クハ有価証券ノ一定ノ数量ノ給付ヲ以テ目的トスル請求ニ付キ作リタル証書ニシテ直チニ強制執行ヲ受ク可キ旨ヲ記載シタルモノニ限ル
第五百六十条 前条ニ掲ケタル債務名義ニ因レル強制執行ニハ第五百十六条乃至第五百五十八条ノ規定ヲ準用ス但第五百六十一条、第五百六十二条ノ規定ニ依リ差異ノ生スルトキハ此限ニ在ラス
第五百六十一条 執行命令ニハ其命令ヲ発シタル後債権者又ハ債務者ニ於テ承継アル場合ニ限リ執行文ヲ附記スルコトヲ要ス
請求ニ関スル異議ハ執行命令ノ送達後ニ生シタル原因ニ基クトキニ限リ之ヲ許ス
執行文付与ニ付テノ訴又ハ請求ニ関シ異議ヲ主張スル訴又ハ執行文付与ノ際到来シタリト認メタル承継ヲ争フ訴ハ執行命令ヲ発シタル区裁判所之ヲ管轄ス但其請求カ区裁判所ノ管轄ニ属セサルモノナルトキハ管轄地方裁判所ニ其訴ヲ起ス可シ
第五百六十二条 公証人ノ作リタル証書ノ執行力アル正本ハ其証書ヲ保存スル公証人之ヲ付与ス
執行文付与ニ関スル異議ニ付テノ裁判及ヒ更ニ執行文付与ニ付テノ裁判ハ公証人職務上ノ住所ヲ有スル地ヲ管轄スル区裁判所ニ於テ之ヲ為ス
請求ニ関スル異議ノ主張ニ付テハ第五百四十五条第二項ニ規定シタル制限ニ従ハス
執行文付与ニ付テノ訴又ハ請求ニ関シ異議ヲ主張スル訴又ハ執行文付与ノ際証明シタリト認メタル事実ノ到来ニ係リ此ニ因リテ証書ノ執行ヲ為シ得ヘキモノヲ争フ訴ハ債務者カ本邦ニ於テ普通裁判籍ヲ有スル地ノ裁判所又ハ此裁判所ナキトキハ第十七条ノ規定ニ従ヒテ債務者ニ対シ訴ヲ起シ得ヘキ裁判所之ヲ管轄ス
第五百六十三条 本編ニ定メタル裁判籍ハ専属ナリトス
第二章 金銭ノ債権ニ付テノ強制執行
第一節 動産ニ対スル強制執行
第一款 通則
第五百六十四条 動産ニ対スル強制執行ハ差押ヲ以テ之ヲ為ス
差押ハ執行力アル正本ニ掲ケタル請求ヲ債権者ニ弁済スル為メ及ヒ強制執行ノ費用ヲ償フ為ニ必要ナルモノノ外ニ及ホスコトヲ得ス
差押フ可キ物ヲ換価スルモ強制執行ノ費用ヲ償フテ剰余ヲ得ル見込ナキトキハ強制執行ヲ為スコトヲ得ス
第五百六十五条 第三者カ差押ヲ受ク可キ物ニ付キ物上ノ担保権ヲ有スルモ差押ヲ妨クルコトヲ得ス然レトモ第五百四十九条ノ規定ニ従ヒ訴ヲ以テ売得金ニ付キ優先ノ弁済ヲ請求スル権利ハ此カ為ニ妨ケラルルコト無シ
此場合ニ於テ請求ノ為メ主張シタル事情カ法律上理由アリト見エ且事実上ノ点ニ付キ疏明アリタルトキハ裁判所ハ売得金ノ供託ヲ命ス可シ但此事項ニ付テハ第五百四十七条及ヒ第五百四十八条ノ規定ヲ準用ス
第二款 有体動産ニ対スル強制執行
第五百六十六条 債務者ノ占有中ニ在ル有体動産ノ差押ハ執達吏其物ヲ占有シテ之ヲ為ス
其物ハ債権者ノ承諾アルトキ又ハ其運搬ヲ為スニ付キ重大ナル困難アルトキハ之ヲ債務者ノ保管ニ任ス可シ此場合ニ於テハ封印其他ノ方法ヲ以テ差押ヲ明白ニスルトキニ限リ其効力ヲ生ス
執達吏ハ債務者ニ其差押ヲ為シタルコトヲ通知ス可シ
第五百六十七条 前条ノ規定ハ債権者又ハ物ノ提出ヲ拒マサル第三者ノ占有中ニ在ル物ノ差押ニ付テモ亦之ヲ準用ス
第五百六十八条 果実ハ未タ土地ヨリ離レサル前ト雖モ之ヲ差押フルコトヲ得然レトモ其差押ハ通常ノ成熟時期ノ前一个月内ニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス
蚕ハ其多分カ繭ヲ成造スル為メ揚リ蚕ト為リタル後ニ非サレハ之ヲ差押フルコトヲ得ス
第五百六十九条 差押ノ効力ハ差押物ヨリ生スル天然ノ産出物ニモ当然及フモノトス
第五百七十条 左ニ掲クル物ハ之ヲ差押フルコトヲ得ス
第一 衣服、寝具、家具及ヒ厨具但此物カ債務者及ヒ其家族ノ為メ欠ク可カラサルトキニ限ル
第二 債務者及ヒ其家族ニ必要ナル一个月間ノ食料及ヒ薪炭
第三 技術者、職工、労役者及ヒ穏婆ニ在テハ其営業上欠ク可カラサル物
第四 農業者ニ在テハ其農業上欠ク可カラサル農具、家畜、肥料及ヒ次ノ収穫マテ農業ヲ続行スル為メ欠ク可力ラサル農産物
第五 文武ノ官吏、神職、僧侶、公立私立ノ教育場教師、弁護士、公証人及ヒ医師ニ在テハ其職業ヲ執行スル為メ欠ク可カラサル物並ニ身分相当ノ衣服
第六 文武ノ官吏、神職、僧侶及ヒ公立私立ノ教育場教師ニ在テハ第六百十八条ニ規定スル職務上ノ収入又ハ恩給ノ差押ヲ受ケサル金額但差押ヨリ次期ノ俸給又ハ恩給ノ支払マテノ日数ニ応シテ之ヲ計算ス
第七 薬舗ニ在テハ調薬ヲ為ス為メ欠ク可カラサル器具及ヒ薬品
第八 勲章及ヒ名誉ノ証標
第九 実印其他職業ニ必要ナル印
第十 神体、仏像其他礼拝ノ用ニ供スル物
第十一 系譜
第十二 債務者又ハ其家族ノ未タ公ニセサル発明ニ関スル物及ヒ債務者又ハ其家族ノ未タ公ニセサル著述ノ稿本
第十三 債務者及ヒ其家族カ学校ニ於テ使用ニ供スル書籍
然レトモ債務者ノ承諾アルトキハ第三号乃至第八号ニ掲ケタル物ヲ除ク外之ヲ差押フルコトヲ得
第五百七十一条 差押物保存ノ為メ特別ノ処分ヲ必要トスルトキハ執達吏ハ適当ノ方法ヲ以テ之ヲ為ス可シ若シ此カ為ニ費用ヲ要スルトキハ債権者ヲシテ之ヲ予納セシメ又債権者数名関係スルトキハ其要求額ノ割合ニ従ヒテ其各債権者ヨリ之ヲ予納セシム可シ
第五百七十二条 執達吏ハ差押ヲ実施シタル後債権者又ハ裁判所ノ特別委任ヲ要セスシテ以下数条ノ規定ニ従ヒテ公ノ競売方法ヲ以テ其差押物ヲ売却ス可シ
第五百七十三条 競売ス可キ物ノ中ニ高価ノモノ有ルトキハ執達吏ハ適当ナル鑑定人ヲシテ其評価ヲ為サシム可シ
第五百七十四条 差押金銭ハ之ヲ債権者ニ引渡ス可シ
執達吏カ金銭ヲ取立テタルトキハ債務者ヨリ支払ヲ為シタルモノト看做ス但保証ヲ立テ又ハ供託ヲ為シテ執行ヲ免カルルコトヲ債務者ニ許シタルトキハ此限ニ在ラス
第五百七十五条 差押ノ日ト競売ノ日トノ間ニハ少ナクトモ七日ノ時間ヲ存スルコトヲ要ス但差押債権者、執行力アル正本ニ因リ配当ヲ要求スル債権者及ヒ債務者カ競売ヲ更ニ早ク為サンコトヲ合意シタルトキ又ハ差押物ヲ永ク貯蔵スルニ付キ不相応ノ費用若クハ其物ノ価格ノ著シク減少スル危害ヲ避ケン為メ競売ヲ早ク為スコトノ必要ナルトキハ此限ニ在ラス
第五百七十六条 競売ハ差押ヲ為シタル市町村ニ於テ之ヲ為ス但差押債権者及ヒ債務者カ他ノ地ニ於テ之ヲ為スコトヲ合意シタルトキハ此限ニ在ラス
競売ノ日時及ヒ場所ハ之ヲ公告ス但其公告ニハ競売ス可キ物ヲ表示ス可シ
第五百七十七条 最高価競買ノ為メノ競落ハ其価額ヲ三回呼上ケタル後之ヲ為ス
競落物ノ引渡ハ代金ト引換ヘ之ヲ為ス
最高価競買人競売条件ニ定メタル支払期日又ハ其定ナキトキハ競売期日ノ終ル前ニ代金ノ支払ヲ為シテ物ノ引渡ヲ求メサルトキハ更ニ其物ヲ競売ス可シ此場合ニ於テハ前ノ最高価競買人ハ競買ニ加ハルコトヲ得ス且再度ノ競落代価カ最初ノ競落代価ヨリ低キトキハ不足ヲ担任ス可シ其高キトキハ剰余ヲ請求スルコトヲ得ス
第五百七十八条 競売ハ売得金ヲ以テ債権者ニ弁済ヲ為シ及ヒ強制執行ノ費用ヲ償フニ足ルニ至ルトキハ直チニ之ヲ止ム可シ
第五百七十九条 執達吏売得金ヲ領収シタルトキハ債務者ヨリ支払ヲ為シタルモノト看做ス但保証ヲ立テ又ハ供託ヲ為シテ執行ヲ免カルルコトヲ債務者ニ許シタルトキハ此限ニ在ラス
第五百八十条 金銀物ハ其金銀ノ実価ヨリ以下ニ競落スルコトヲ許サス其実価マテニ競買ヲ為ス者ナキトキハ執達吏ハ金銀ノ実価ニ達スル価額ヲ以テ適宜ニ之ヲ売却スルコトヲ得
第五百八十一条 執達吏有価証券ヲ差押ヘタルトキハ相場アルモノハ売却日ノ相場ヲ以テ適宜ニ之ヲ売却シ其相場ナキモノハ一般ノ規定ニ従ヒテ之ヲ競売ス可シ
第五百八十二条 有価証券ノ記名ナルトキハ執行裁判所ハ買主ノ氏名ニ書換ヲ為サシメ及ヒ此カ為メ必要ナル陳述ヲ債務者ニ代リ為ス権ヲ執達吏ニ与フルコトヲ得
第五百八十三条 無記名ノ証券ニシテ記名ニ換ヘ又ハ他ノ方法ニ依リ流通ヲ止メタルモノナルトキハ執行裁判所ハ其流通回復ヲ為サシメ及ヒ此カ為メ必要ナル陳述ヲ債務者ニ代リテ為ス権ヲ執達吏ニ与フルコトヲ得
第五百八十四条 土地ヨリ離レサル前ニ差押ヘタル果実ノ競売ハ其成熟ノ後始メテ之ヲ為スコトヲ許ス執達吏ハ競売ノ為メ其収穫ヲ為サシムル権利アリ
差押ヘタル蚕ノ競売ハ全ク繭ト為リタル後始メテ之ヲ為スコトヲ許ス
第五百八十五条 差押債権者、執行力アル正本ニ因リ配当ヲ要求スル債権者又ハ債務者ノ申立ニ因リ執行裁判所ハ前数条ノ規定ニ依ラス他ノ方法又ハ他ノ場所ニ於テ差押物ノ売却ヲ為ス可キ旨又ハ執達吏ニ依ラス他ノ者ヲシテ競売ヲ為サシム可キ旨ヲ命スルコトヲ得
第五百八十六条 執達吏ハ既ニ差押ヘタル物ニ付キ他ノ債権者ノ為メ更ニ差押ノ手続ヲ為スコトヲ得ス
執達吏ハ既ニ差押ヲ為シタル執達吏ニ差押調書ノ閲覧ヲ求メテ物ノ照査ヲ為シ未タ差押ニ係ラサル物アルトキハ之ヲ差押ヘ既ニ差押ヲ為シタル執達吏ニ差押調書ヲ交付シ且総テノ差押物ヲ競売ニ付ス可キコトヲ求ム可シ若シ差押フ可キ物アラサルトキハ照査調書ヲ作リ既ニ差押ヲ為シタル執達吏ニ之ヲ交付ス可シ
前項ノ求ニ因リ執行ニ関スル債権者ノ委任ハ既ニ差押ヲ為シタル執達吏ニ法律上移転ス
仮差押ニ係ル物ニ付テハ本条ノ規定ヲ適用セス
第五百八十七条 前条ニ掲ケタル物ノ照査手続ハ配当要求ノ効力ヲ生シ又既ニ為シタル差押カ取消ト為リタルトキハ差押ノ効力ヲ生ス
第五百八十八条 適当ナル期間経過スルモ執達吏競売ヲ為ササルトキハ差押債権者及ヒ執行力アル正本ニ因リ配当ヲ要求スル債権者ハ一定ノ期間内ニ競売ヲ為ス可キコトヲ催告シ其催告ノ効アラサルトキハ相当ノ命令アランコトヲ執行裁判所ニ申請スルコトヲ得
第五百八十九条 民法ニ従ヒ配当ヲ要求シ得ヘキ債権者ハ執行力アル正本ニ因スシテ売得金ノ配当ヲ要求スルコトヲ得
第五百九十条 前条ノ配当要求ハ其原因ヲ開示シ且裁判所ノ所在地ニ住居ヲモ事務所ヲモ有セサル者ハ仮住所ヲ選定シ執達吏ニ之ヲ為ス可シ
第五百九十一条 第五百八十六条第二項及ヒ第五百九十条ノ場合ニ於テ執達吏ハ配当要求ノ有リタルコトヲ配当ニ与カル各債権者及ヒ債務者ニ通知ス可シ
執行力アル正本ニ因スシテ配当ヲ要求スル債権者アルトキハ債務者ハ執達吏ノ通知アリタルヨリ三日ノ期間内ニ其債権ヲ認諾スルヤ否ヤヲ執達吏ニ申立ツ可シ
債務者カ認諾セサルコトヲ執達吏ヨリ通知アリタルトキハ債権者ハ其通知アリタルヨリ三日ノ期間内ニ債務者ニ対シ訴ヲ起シ其債権ヲ確定ス可シ
第五百九十二条 配当ノ要求ハ競売期日ノ終ニ至ルマテ之ヲ為スコトヲ得
第五百九十三条 売得金ヲ以テ配当ニ与カル各債権者ヲ満足セシムルニ足ラサル場合ニ於テ債権者間ニ配当ノ協議調ハサルトキハ其売得金ヲ供託ス可シ
数多ノ債権者ノ為メ同時ニ金銭ヲ差押ヘタルトキ之ヲ以テ各債権者ヲ満足セシムルニ足ラサル場合ニ於テモ亦同シ
右ノ場合ニ於テ執達吏ハ其事情ヲ執行裁判所ニ届出ツ可ク其届書ニハ執行手続ニ関スル書類ヲ添附ス可シ
第三款 債権及ヒ他ノ財産権ニ対スル強制執行
第五百九十四条 第三者(第三債務者)ニ対スル債務者ノ債権ニシテ金銭ノ支払又ハ他ノ有体物若クハ有価証券ノ引渡若クハ給付ヲ目的トスルモノノ強制執行ハ執行裁判所ノ差押命令ヲ以テ之ヲ為ス
第五百九十五条 執行裁判所トシテハ債務者ノ普通裁判籍ヲ有スル地ノ区裁判所若シ此区裁判所ナキトキハ第十七条ノ規定ニ従ヒテ債務者ニ対スル訴ヲ管轄スル区裁判所管轄権ヲ有ス
第五百九十六条 債権者ハ差押命令ノ申請ニ差押フ可キ債権ノ種類及ヒ数額ヲ開示ス可シ
右申請ハ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
第五百九十七条 差押命令ハ予メ第三債務者及ヒ債務者ノ審訊ヲ経スシテ之ヲ発ス
第五百九十八条 金銭ノ債権ヲ差押フ可キトキハ裁判所ハ第三債務者ニ対シ債務者ニ支払ヲ為スコトヲ禁シ又債務者ニ対シ債権ノ処分殊ニ其取立ヲ為ス可カラサルコトヲ命ス可シ
差押命令ハ職権ヲ以テ第三債務者及ヒ債務者ニ之ヲ送達シ又債権者ニハ其送達シタル旨ヲ通知ス可シ
差押ハ第三債務者ニ対スル送達ヲ以テ之ヲ為シタルモノト看做ス
第五百九十九条 抵当アル債権ノ差押ノ場合ニ於テハ債権者ハ債務者ノ承諾ヲ要セスシテ其債権ノ差押ヲ登記簿ニ記入スル権利アリ
此記入ノ申請ハ裁判所ニ之ヲ為ス可シ其申請ハ差押命令ノ申請ト之ヲ併合スルコトヲ得
裁判所ハ義務ヲ負フタル不動産ノ所有者(第三債務者)ニ差押命令ヲ送達シタル後記入ノ手続ヲ為ス可シ
第六百条 差押ヘタル金銭ノ債権ニ付テハ差押債権者ノ選択ニ従ヒ代位ノ手続ヲ要セスシテ之ヲ取立ツル為メ又ハ支払ニ換ヘ券面額ニテ差押債権者ニ之ヲ転付スル為メ命令アランコトヲ申請スルコトヲ得
右命令ノ送達ニ付テハ第五百九十八条第二項ノ規定ヲ準用ス
第六百一条 支払ニ換ヘ券面額ニテ債権ヲ転付スル命令アル場合ニ於テハ其債権ノ存スル限リハ第五百九十八条第二項ノ手続ヲ為スニ因リ債務者ハ債権ノ弁済ヲ為シタルモノト看做ス
第六百二条 取立ノ為メノ命令ハ其債権ノ全額ニ及フモノトス但執行裁判所ハ債務者ノ申立ニ因リ差押債権者ヲ審訊シテ差押額ヲ其債権者ノ要求額マテニ制限シ其超過スル額ノ処分殊ニ取立ヲ為スヲ許スコトヲ得其制限シタル部分ニ限リ他ノ債権者ハ配当要求ヲ為スコトヲ得ス
右許可ハ第三債務者及ヒ債権者ニ通知ス可シ
第六百三条 手形其他裏書ヲ以テ移転スルコトヲ得ル証券ニ因レル債権ノ差押ハ執達吏其証券ヲ占有シテ之ヲ為ス
第六百四条 俸給又ハ此ニ類スル継続収入ノ債権ノ差押ハ債権額ヲ限トシ差押後ニ収入ス可キ金額ニ及フモノトス
第六百五条 職務上収入ノ差押ハ債務者ノ転官兼任又ハ増俸ニ因ル収入ニモ亦及フモノトス
第六百六条 債務者ハ債権ニ関スル所持ノ証書ヲ差押債権者ニ引渡ス義務アリ債権者ハ差押命令ニ基キ強制執行ノ方法ヲ以テ其証書ヲ債務者ヨリ取上ケシムルコトヲ得
第六百七条 第五百五条第二項ニ従ヒテ債務者ニ保証ヲ立テシメ又ハ供託ヲ為サシメテ執行ヲ免カルルコトヲ許ス可キトキハ差押ヘタル金銭債権ニ付テハ取立ノ命令ノミヲ為ス可シ但此命令ハ第三債務者ヲシテ債務額ヲ供託セシムル効力ノミヲ有ス
第六百八条 債権者取立ヲ為シタルトキハ其旨ヲ執行裁判所ニ届出ツ可シ
第六百九条 差押債権者ハ第三債務者ヲシテ差押命令ノ送達ヨリ七日ノ期間内ニ書面ヲ以テ左ノ陳述ヲ為サシメンコトヲ裁判所ニ申立ツルコトヲ得
第一 債権ノ認諾ノ有無及ヒ其限度並ニ支払ヲ為ス意思ノ有無及ヒ其限度
第二 債権ニ付キ他ノ者ヨリ請求ノ有無及ヒ其種類
第三 債権カ既ニ他ノ債権者ヨリ差押ヘラレタルコトノ有無及ヒ其請求ノ種類
右ノ陳述ヲ求ムル催告ハ之ヲ送達証書ニ記載ス可シ第三債務者陳述ヲ怠リタルトキハ此ニ因リテ生スル損害ニ付キ其責ニ任ス
第六百十条 債権者カ命令ノ旨趣ニ基キ第三債務者ニ対シ訴ヲ起スニ至リタルトキハ一般ノ規定ニ従ヒテ管轄ヲ有スル裁判所ニ其訴ヲ起シ且債務者内国ニ在リテ住所ノ知レタルトキハ其訴訟ヲ之ニ告知ス可シ
第六百十一条 債権者カ取立ヲ為ス可キ債権ノ行用ヲ怠リタルトキハ此カ為メ債務者ニ生シタル損害ノ責ニ任ス
第六百十二条 債権者ハ命令ニ因リ取立ノ為メ取得シタル権利ヲ抛棄スルコトヲ得但此カ為メ其請求ヲ害セラルルコト無シ
此抛棄ハ裁判所ニ届書ヲ差出シテ之ヲ為ス但其謄本ハ第三債務者及ヒ債務者ニ之ヲ送達ス可シ
第六百十三条 差押ヘタル債権カ条件附若クハ有期ナルトキ又ハ反対給付ニ繋リ若クハ他ノ理由アリテ其取立ノ困難ナルトキハ裁判所ハ申立ニ因リ取立ニ換ヘ他ノ換価方法ヲ命スルコトヲ得
債務者内国ニ在リテ住所ノ知レタルトキハ其申立ヲ許ス決定前ニ之ヲ審訊ス可シ
第六百十四条 有体物ノ引渡又ハ給付ノ請求ニ対スル強制執行ハ以下数条ノ規定ヲ斟酌シテ第五百九十八条乃至第六百十二条ノ規定ニ従ヒテ之ヲ為ス
第六百十五条 有体動産ノ請求ノ差押ニ付テハ其動産ヲ債権者ノ委任シタル執達吏ニ引渡ス可キコトヲ命ス可シ
右動産ノ換価ニ付テハ差押物ノ換価ニ関スル規定ヲ適用ス
第六百十六条 不動産ノ請求ノ差押ニ付テハ債権者ノ申立ニ因リ其不動産ヲ不動産所在地ノ区裁判所ヨリ命シタル保管人ニ引渡ス可キコトヲ命ス可シ
引渡シタル不動産ニ付テノ強制執行ハ不動産ニ対スル強制執行ニ付テノ規定ニ従ヒテ之ヲ為ス
第六百十七条 有体物ノ引渡又ハ給付ノ請求ニ付テハ支払ニ換ヘ転付スル命令ヲ為スコトヲ得ス
第六百十八条 左ニ掲クル債権ハ之ヲ差押フルコトヲ得ス
第一 法律上ノ養料
第二 債務者カ義捐建設所ヨリ又ハ第三者ノ慈恵ニ因リ受クル継続ノ収入但債務者及ヒ其家族ノ生活ノ為メ必要ナルモノニ限ル
第三 下士、兵卒ノ給料並ニ恩給及ヒ其遺族ノ扶助料
第四 出陣ノ軍隊又ハ役務ニ服シタル軍艦ノ乗組員ニ属スル軍人、軍属ノ職務上ノ収入
第五 文武ノ官吏、神職、僧侶及ヒ公立私立ノ教育場教師ノ職務上ノ収入、恩給及ヒ其遺族ノ扶助料
第六 職工、労役者又ハ雇人カ其労力又ハ役務ノ為ニ受クル報酬
第一号、第五号、第六号ノ場合ニ於テ職務上ノ収入、恩給其他ノ収入カ一个年間ニ三百円ヲ超過スルトキハ其超過額ノ半額ヲ差押フルコトヲ得
第六百十九条 数名ノ差押債権者ノ為メ同時ニ為ス可キ債権ノ差押ニ付テハ前数条ノ規定ヲ準用ス
第六百二十条 執行力アル正本ヲ有スル債権者及ヒ民法ニ従ヒ配当ノ要求ヲ為シ得ヘキ債権者ハ差押債権者カ取立ヲ為シ其旨ヲ執行裁判所ニ届出ツルマテ又ハ執達吏カ売得金ヲ領収スルマテ配当ヲ要求スルコトヲ得但執行力アル正本ニ因ラスシテ配当ヲ要求スル債権者ニ付テハ第五百九十条及ヒ第五百九十一条第二項第三項ノ規定ヲ適用ス
支払ニ換ヘテノ転付ノ命令アリタル後ハ配当ノ要求ヲ為スコトヲ得ス
右配当要求ハ職権ヲ以テ之ヲ第三債務者、債務者及ヒ差押債権者ニ送達シ又既ニ為シタル差押カ取消ト為リタルトキハ執行力アル正本ニ因リ要求シタル債権者ノ為メ要求ノ順序ニ因リ差押ノ効力ヲ生ス
第六百二十一条 金銭ノ債権ニ付キ配当要求ノ送達ヲ受ケタル第三債務者ハ債務額ヲ供託スル権利アリ
第三債務者ハ配当ニ与カル或ル債権者ノ求ニ因リ債務額ヲ供託スル義務アリ
第三債務者債務額ヲ供託シタルトキハ其事情ヲ裁判所ニ届出ツ可シ
第六百二十二条 請求カ不動産ニ関スルトキハ第三債務者ハ其不動産所在地ノ区裁判所カ差押債権者又ハ第三債務者ノ申立ニ因リ命シタル保管人ニ事情ヲ開示シ且送達セラレタル命令ヲ添ヘ其不動産ヲ引渡ス権利ヲ有シ又ハ差押債権者ノ求ニ因リ之ヲ引渡ス義務アリ
第六百二十三条 第三債務者カ取立手続ニ対シテ義務ヲ履行セサルトキハ差押債権者ハ訴ヲ以テ之ヲ履行セシムルコトヲ得
執行力アル正本ヲ有スル各債権者ハ共同訴訟人トシテ原告ニ加ハル権利アリ
訴ヲ受ケタル第三債務者ハ原告ニ加ハラサル債権者ヲ共同訴訟人トシテ呼出アランコトヲ口頭弁論ノ第一期日マテニ申立ツルコトヲ得
右ノ場合ニ於ケル裁判ハ呼出ヲ受ケタル債権者ニ利害ヲ及ホス効力アリ
第六百二十四条 差押債権者取立手続ヲ怠リタルトキハ執行力アル正本ニ因リ要求シタル各債権者ハ一定ノ期間内ニ取立ヲ為ス可キコトヲ催告シ其催告ノ効アラサルトキハ執行裁判所ノ許可ヲ得テ自ラ取立ヲ為スコトヲ得
第六百二十五条 不動産ヲ目的トセス又前数条ニ掲ケタル以外ノ財産権ニ対スル強制執行ニ付テハ本款ノ規定ヲ準用ス
若シ第三債務者ナキトキハ差押ハ債務者ニ権利ノ処分ヲ禁スル命令ヲ送達シタル日時ヲ以テ之ヲ為シタルモノト看做ス
右ノ場合ニ於テハ裁判所ハ特別ノ処分殊ニ其権利ノ管理若クハ譲渡ヲ命スルコトヲ得
第四款 配当手続
第六百二十六条 配当手続ハ動産ニ対スル強制執行ニ際シ競売期日又ハ金銭差押ノ日ヨリ十四日ノ期間内ニ債権者間ノ協議調ハサル為メ金額ヲ供託シタルトキ之ヲ為ス
第六百二十七条 裁判所ハ事情届書ニ基キ七日ノ期間内ニ元金、利息、費用其他附帯ノ債権ノ計算書ヲ差出ス可キ旨ヲ各債権者ニ催告ス可シ
第六百二十八条 前条ノ期間満了後裁判所ハ配当表ヲ作ル可シ
右期間ヲ遵守セサル債権者ノ債権ハ配当表ヲ作ルニ際シ配当要求並ニ届書ノ旨趣及ヒ其憑拠書類ニ依リ之ヲ計算ス但後ニ債権額ヲ補充スルコトヲ許サス
第六百二十九条 裁判所ハ配当表ニ関スル陳述及ヒ配当実施ノ為メ期日ヲ指定シ其期日ニハ各債権者及ヒ債務者ヲ呼出ス可シ但債務者ノ所在明カナラサルトキ又ハ外国ニ在ルトキハ呼出ヲ為スコトヲ要セス
配当表ハ各債権者及ヒ債務者ニ閲覧セシムル為メ遅クトモ期日ノ三日前ニ裁判所書記課ニ之ヲ備置ク可シ
第六百三十条 期日ニ於テ異議ノ申立ナキトキハ配当表ニ従ヒテ其配当ヲ実施ス可シ
停止条件附ノ債権ノ配当額ハ仍ホ之ヲ供託シ民法ニ従ヒテ条件ノ成否ニ依リ後ニ之ヲ支払ヒ又ハ更ニ配当ス可シ
第五百九十一条第三項ノ場合又ハ仮差押ノ場合ニ於テ未タ確定セサル債権其他異議アル債権ノ配当額ハ仍ホ之ヲ供託ス可シ
配当実施ニ付テハ調書ヲ作ル可シ
第六百三十一条 異議ノ申立アルトキハ他ノ債権者ハ直チニ陳述ヲ為ス可シ若シ関係人異議ヲ正当ナリト認ムルトキ又ハ他ノ方法ニ於テ合意スルトキハ之ニ従ヒ配当表ヲ更正シ配当ヲ実施ス可シ
異議ノ完結セサルトキハ異議ナキ部分ニ限リ配当ヲ実施ス可シ
第六百三十二条 期日ニ出頭セサル債権者ハ配当表ノ実施ニ同意シタルモノト看做ス
若シ期日ニ出頭セサル債権者カ他ノ債権者ヨリ申立テタル異議ニ関係ヲ有スルトキハ其債権者ハ異議ヲ正当ナリト認メサルモノト看做ス
第六百三十三条 期日ニ於テ異議ノ完結セサルトキハ異議ヲ申立テタル債権者ハ他ノ債権者ニ対シ訴ヲ起シタルコトヲ期日ヨリ七日ノ期間内ニ裁判所ニ証明ス可シ若シ其期間ヲ徒過シタル後ハ裁判所ハ異議ニ拘ハラス配当ノ実施ヲ命ス可シ
第六百三十四条 異議ヲ申立テタル債権者前条ノ期間ヲ怠リタルトキト雖モ配当表ニ従ヒテ配当ヲ受ケタル債権者ニ対シ訴ヲ以テ優先権ヲ主張スル権利ハ配当実施ノ為メ妨ケラルルコト無シ
第六百三十五条 異議ヲ申立テタル債権者ノ訴ニ付テハ配当裁判所之ヲ管轄ス然レトモ訴訟物カ区裁判所ノ管轄ニ属セサルトキハ其配当裁判所ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所之ヲ管轄ス若シ数箇ノ訴ノ提起アリタル場合ニ於テ一ノ訴ヲ地方裁判所カ管轄スルトキハ其他ノ訴ヲモ亦之ヲ管轄ス但各債権者総テノ異議ニ付キ配当裁判所ノ裁判ヲ受ク可キコトヲ合意シタルトキハ此限ニ在ラス
第六百三十六条 異議ニ付キ裁判ヲ為ス判決ニハ配当額ノ係争部分ヲ如何ナル債権者ニ如何ナル数額ヲ以テ支払フ可キヤヲ定ム可シ若シ之ヲ定ムルコトヲ適当トセサルトキハ判決ニ於テ新ナル配当表ノ調製及ヒ他ノ配当手続ヲ命ス可シ
第六百三十七条 異議ヲ申立テタル債権者カ口頭弁論ノ期日ニ出頭セサルトキハ異議ヲ取下ケタルモノト看做ス旨ノ闕席判決ヲ為ス可シ
第六百三十八条 前二条ノ判決確定ノ証明アルトキハ配当裁判所ハ其判決ニ基キ支払又ハ他ノ配当手続ヲ命ス
第六百三十九条 裁判所ハ配当表ニ依リテ左ノ手続ヲ為シ配当ヲ実施ス可シ
債権全部ノ配当ヲ受ク可キ債権者ニハ配当額支払証ヲ交付スルト同時ニ其所持スル執行力アル正本又ハ債権ノ証書ヲ差出サシメ之ヲ債務者ニ交付ス可シ
債権一分ノミノ配当ヲ受ク可キ債権者ニハ執行力アル正本又ハ債権ノ証書ヲ差出サシメ之ニ配当額ヲ記入シテ返還シ且配当額支払証ヲ交付スルト同時ニ右債権者ヨリ金額ヲ証記シタル受取書ヲ差出サシメ之ヲ債務者ニ交付ス可シ
期日ニ出頭セサル債権者ノ配当額ハ仍ホ之ヲ供託ス可シ
右ノ手続ヲ為シタルトキハ調書ニ記載シテ之ヲ明確ニス可シ
第二節 不動産ニ対スル強制執行
第一款 通則
第六百四十条 不動産ニ対スル強制執行ハ左ノ方法ヲ以テ之ヲ為ス
第一 強制競売
第二 強制管理
債権者ハ自己ノ選択ニ依リ一箇ノ方法ヲ以テ又ハ二箇ノ方法ヲ併セテ執行セシムルコトヲ得
強制管理ハ仮差押ノ執行ノ為ニモ亦之ヲ為ス
第六百四十一条 不動産ニ対スル強制執行ニ付テハ其不動産所在地ノ区裁判所執行裁判所トシテ之ヲ管轄ス若シ其不動産数箇ノ区裁判所ノ管轄区内ニ散在スルトキハ第二十六条ノ規定ヲ適用ス
強制執行ハ申立ニ因リテ裁判所之ヲ為ス
第二款 強制競売
第六百四十二条 強制競売ノ申立ニハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 債権者、債務者及ヒ裁判所ノ表示
第二 不動産ノ表示
第三 競売ノ原因タル一定ノ債権及ヒ其執行シ得ヘキ一定ノ債務名義
第六百四十三条 申立ニハ執行力アル正本ノ外左ノ証書ヲ添附ス可シ
第一 登記簿ニ債務者ノ所有トシテ登記シタル不動産ニ付テハ登記判事ノ認証書
第二 登記簿ニ登記アラサル不動産ニ付テハ債務者ノ所有タルコトヲ証ス可キ証書
第三 地所ニ付テハ国郡市町村、字、番地、地目、反別若クハ坪数、土地台帳ニ登録シタル地価及ヒ其地所ニ付キ納ム可キ一个年ノ租税其他ノ公課ヲ証ス可キ証書
第四 建物ニ付テハ国郡市町村、字、番地、構造ノ種類、建坪及ヒ其建物ニ付キ納ム可キ一个年ノ公課ヲ証ス可キ証書
第五 地所、建物ニ付キ賃貸借アル場合ニ於テハ其期限並ニ借賃ヲ証ス可キ証書
第二号、第三号及ヒ第四号ノ要件ニ付テハ債権者公簿ヲ主管スル官庁ニ其証明書ヲ求ムルコトヲ得
第四号及ヒ第五号ノ要件ヲ証明スル能ハサルトキハ債権者ハ競売申立ノ際其取調ヲ執行裁判所ニ申請スルコトヲ得但此場合ニ於テハ裁判所ハ執達吏ヲシテ其取調ヲ為サシム可シ
強制管理ノ為メ既ニ不動産ヲ差押ヘタル場合ニ於テ其執行記録ニ第一号乃至第五号ノ要件ヲ記載シタルモノ有ルトキハ其証書ヲ添附スルコトヲ要セス
第六百四十四条 競売手続ノ開始決定ニハ同時ニ債権者ノ為メ不動産ヲ差押フルコトヲ宣言ス可シ
差押ハ債務者カ不動産ノ利用及ヒ管理ヲ為スコトヲ妨ケス
差押ハ其決定ヲ債務者ニ送達スルニ因リ其効力ヲ生ス此送達ハ職権ヲ以テ之ヲ為ス
第六百四十五条 裁判所ハ競売手続開始ノ決定ヲ為シタル不動産ニ付キ強制競売ノ申立アルモ更ニ開始決定ヲ為スコトヲ得ス
右申立ハ執行記録ニ添附スルニ因リ配当要求ノ効力ヲ生シ又既ニ開始シタル競売手続取消ト為リタルトキハ第六百四十九条第一項ノ規定ヲ害セサル限リハ開始決定ヲ受ケタル効力ヲ生ス
仮差押ノ命令アリタル不動産ニ付テハ本条ノ規定ヲ適用セス
第六百四十六条 配当要求ハ其原因ヲ開示シ且裁判所ノ所在地ニ住居ヲモ事務所ヲモ有セサル者ハ仮住所ヲ選定シテ執行裁判所ニ之ヲ為ス可シ
右要求ハ競落期日ノ終ニ至ルマテ之ヲ為スコトヲ得
第六百四十七条 執行裁判所ハ前二条ノ申立及ヒ要求アリタルコトヲ利害関係人ニ通知ス可シ
執行力アル正本ニ因ラスシテ配当ヲ要求スル債権者アルトキハ債務者ハ右通知アリタルヨリ三日ノ期間内ニ其債権ヲ認諾スルヤ否ヤヲ裁判所ニ申出ツ可シ
債務者カ認諾セサルコトヲ裁判所ヨリ通知アリタルトキハ債権者ハ其通知アリタルヨリ三日ノ期間内ニ債務者ニ対シ訴ヲ起シ其債権ヲ確定ス可シ
第六百四十八条 左ニ掲クル者ヲ競売手続ニ於テノ利害関係人ト為ス
第一 差押債権者及ヒ執行力アル正本ニ因リ配当ヲ要求スル債権者
第二 債務者
第三 登記簿ニ記入アル不動産上権利者
第四 不動産上権利者トシテ其債権ヲ証明シ執行記録ニ備フ可キ届出ヲ為シタル者
第六百四十九条 差押債権者ノ債権ニ先タツ債権ニ関スル不動産ノ負担ヲ競落人ニ引受ケシムルカ又ハ売却代金ヲ以テ其負担ヲ弁済スルニ足ル見込アルトキニ非サレハ売却ヲ為スコトヲ得ス
不動産ハ売却ニ因リ登記簿ニ記入ヲ要スル総テノ不動産上ノ負担ヲ免カルルモノトス但競落人其負担ヲ引受ケタルトキハ此限ニ在ラス
登記簿ニ記入ヲ要セサル不動産ノ負担ハ競落人之ヲ引受クルモノトス
第六百五十条 権利ヲ取得スル第三者其取得ノ際差押又ハ競売ノ申立アリタルコトヲ知リタルトキハ差押ノ効力ニ対シ其善意ナリシコトヲ主張スルコトヲ得ス
若シ不動産カ差押ノ原因タル債権ノ為メ義務ヲ負担スルトキハ差押後所有ノ移転シタル場合ニ限リ新所有者其取得ノ際差押又ハ競売ノ申立アリタルコトヲ知ラサルトキト雖モ競売手続ヲ続行ス可シ
競売申立ノ取下ニ因リテ差押ハ消滅ス
第六百五十一条 裁判所ハ競売手続開始ノ決定ヲ為ス際職権ヲ以テ競売ノ申立アリタルコトヲ登記簿ニ記入ス可キ旨ヲ登記判事ニ嘱託ス可シ
登記判事ハ前項ノ嘱託ニ従ヒテ記入ヲ為ス可シ
第六百五十二条 登記判事ハ前条ニ掲ケタル記入ヲ為シタル後登記簿ノ謄本ヲ裁判所ニ送付シ不動産上権利者ヨリ差出シタル証書アルトキハ其抄本ヲモ送付ス可シ
第六百五十三条 予メ知ルニ於テハ手続ノ開始ヲ妨ク可キ事実カ登記判事ノ通知ニ依リ顕ハルルトキハ裁判所ハ其事情ニ因リ直チニ手続ヲ取消シ又ハ裁判所ノ意見ヲ以テ定ムル期間内ニ其障碍ノ消滅シタルコトヲ証明ス可キコトヲ債権者ニ命ス可シ其期間内ニ此証明ヲ為ササルトキハ期間ノ満了後職権ヲ以テ手続ヲ取消ス可シ
第六百五十四条 裁判所ハ競売開始ノ決定ヲ為シタルトキハ租税其他ノ公課ヲ主管スル官庁ニ通知シ其不動産ニ対スル債権ノ有無及ヒ限度ヲ申出ツ可キコトヲ期間ヲ定メテ催告ス可シ
第六百五十五条 裁判所ハ登記判事及ヒ租税其他ノ公課ヲ主管スル官庁ヨリ通知ヲ受ケタル後鑑定人ヲシテ不動産ノ評価ヲ為サシメ其評価額ヲ以テ最低競売価額ト為ス
第六百五十六条 裁判所ハ最低競売価額ヲ以テ差押債権者ノ債権ニ先タツ不動産上ノ総テノ負担及ヒ手続ノ費用ヲ弁済シテ剰余アル見込ナシトスルトキハ差押債権者ニ其旨ヲ通知ス可シ
右通知ヨリ七日ノ期間内ニ差押債権者カ前項ノ負担及ヒ費用ヲ弁済シテ剰余アル可キ価額ヲ定メ且其価額ニ応スル競買人ナキ場合ニ於テハ自ラ其価額ヲ以テ買受ク可キ旨ヲ申立テ十分ナル保証ヲ立テサルトキハ競売手続ヲ取消ス可シ
第六百五十七条 裁判所ハ前条第一項ノ債権及ヒ費用ヲ弁済シ剰余ヲ得ル見込アルトキ又ハ差押債権者前条第二項ノ申立ヲ為シ十分ナル保証ヲ立テタルトキハ職権ヲ以テ競売期日及ヒ競落期日ヲ定メテ之ヲ公告ス
第六百五十八条 競売期日ノ公告ニハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 不動産ノ表示
第二 租税其他ノ公課
第三 賃貸借アル場合ニ於テハ其期限並ニ借賃
第四 強制執行ニ因リ競売ヲ為ス旨
第五 競売期日ノ場所、日時及ヒ競売ヲ為ス可キ執達吏ノ氏名並ニ住所
第六 最低地競売価額
第七 競落期日ノ場所及ヒ日時
第八 執行記録ヲ閲覧シ得ヘキ場所
第九 登記簿ニ記入ヲ要セサル不動産上権利ヲ有スル者其債権ヲ申出ツ可キ旨
第十 利害関係人競売期日ニ出頭ス可キ旨
第六百五十九条 競売期日ハ公告ノ日ヨリ少ナクトモ十四日ノ後タル可シ
此期日ハ裁判所ノ意見ヲ以テ裁判所内又ハ其他ノ場所ニ於テ執達吏ヲシテ之ヲ開カシム
第六百六十条 競落期日ハ競売期日ヨリ七日ヲ過クルコトヲ得ス
此期日ハ裁判所ニ於テ之ヲ開ク
第六百六十一条 競売期日ノ公告ハ左ノ箇所ニ掲示シテ之ヲ為ス
第一 裁判所ノ掲示板
第二 不動産所在地ノ市町村ノ掲示板
此他公告ハ裁判所ノ意見ニ従ヒ一箇又ハ数箇ノ新聞紙ニ掲載スルコトヲ得
第六百六十二条 最低競売価額ヲ除ク外本款ニ掲ケタル売却条件ノ変更ハ利害関係人ノ合意アルトキニ限リ之ヲ許ス但此合意ハ競売期日ニ至ルマテ之ヲ為スコトヲ得
第六百六十三条 競売期日ヲ開キタル後執達吏ハ執行記録ヲ各人ノ閲覧ニ供シ又特別ノ売却条件アルトキハ之ヲ告知シ且競買価額申出ヲ催告ス可シ
第六百六十四条 利害関係人カ或ル競買人ヨリ保証ヲ立テシメンコトヲ申立ツルトキハ其競買人カ保証トシテ競買価額十分ノ一ニ当ル金額ヲ現金又ハ有価証券ヲ以テ直チニ執達吏ニ預クルトキニ非サレハ其競買ヲ許サス
右申立ハ競買価額ノ申出アリタル後直チニ之ヲ述フルコトヲ要ス其申立ハ同一ナル競買人ノ其後ノ競買ニ付テモ亦効力アリ
第六百六十五条 競買ヲ許サレタル各競買人ハ更ニ高価ノ競買ノ許アルマテ其申出テタル価額ニ付キ拘束ヲ受クルモノトス
競売ハ競買価額ヲ申出ツ可キ催告後満一時間ヲ過クルニ非サレハ之ヲ終局スルコトヲ得ス
第六百六十六条 執達吏ハ最高価競買人ノ氏名及ヒ其価額ヲ呼上ケタル後競売ノ終局ヲ告知ス可シ
他ノ各競買人ハ右ノ告知ニ因リ其競買ノ責務ヲ免カレ且預ケタル保証アルトキハ即時ニ其返還ヲ求ムル権利アリ
第六百六十七条 競売ニ付キ作ル可キ調書ニハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 不動産ノ表示
第二 差押債権者ノ表示
第三 執行記録ヲ各人ノ閲覧ニ供シタルコト又特別売却条件アルトキハ之ヲ告知シタルコト
第四 競買価額ノ申出ヲ催告シタル日時
第五 総テノ競買価額並ニ其申出人ノ氏名、住所又ハ許ス可キ競買ノ申出ナキコト
第六 競売ノ終局ヲ告知シタル日時
第七 申立ニ因リ競買ノ為メ保証ヲ立テタルコト又ハ申立アルモ保証ヲ立テサル為メ其競買ヲ許ササルコト
第八 最高価競買人ノ氏名及ヒ其価額ヲ呼上ケタルコト
最高価競買人及ヒ出頭シタル利害関係人ハ調書ニ署名捺印ス可シ若シ此等ノ者調書ノ作成前ニ退席シタルトキハ其旨ヲ附記ス可シ
競買ノ保証ノ為メ預リタル金銭又ハ有価証券ヲ返還シタルトキハ執達吏ハ受取証ヲ取リ之ヲ調書ニ添附ス可シ
第六百六十八条 執達吏ハ調書及ヒ総テ競買ノ保証ノ為メ預リタル金銭又ハ有価証券ニシテ返還セサルモノハ三日内ニ裁判所書記ニ之ヲ渡ス可シ
第六百六十九条 最高価競買人執行裁判所ノ所在地ニ住居ヲモ事務所ヲモ有セサルトキハ其所在地ニ仮住所ヲ選定シ其旨ヲ裁判所ニ届出ツ可シ若シ之ヲ怠リタルトキハ第百四十三条第三項ノ規定ヲ準用ス
住所ノ選定ハ執達吏ニ口述シ其調書ヲ作ラシメテ之ヲ為スコトヲ得
第六百七十条 競売期日ニ於テ許ス可キ競買価額ノ申出ナキトキハ第六百四十九条第一項ノ規定ヲ害セサル限リハ裁判所ハ其意見ヲ以テ最低競売価額ヲ相当ニ低減シ新競売期日ヲ定ム可シ若シ其期日ニ於テ仍ホ許ス可キ競買価額ノ申出ナキトキモ亦同シ
新競売期日ハ少ナクトモ十四日ノ後タル可シ
第六百七十一条 裁判所ハ競落期日ニ出頭シタル利害関係人ニ競落ノ許可ニ付キ陳述ヲ為サシム可シ
競落ノ許可ニ付テノ異議ハ期日ノ終ニ至ルマテニ之ヲ申立ツ可シ既ニ申立テタル異議ニ対スル陳述ニ付テモ亦同シ
第六百七十二条 競落ノ許可ニ付テノ異議ハ左ノ理由ニ基クコトヲ要ス
第一 強制執行ヲ許ス可カラサルコト又ハ執行ヲ続行ス可カラサルコト
第二 最高価競買人売買契約ヲ取結ヒ若クハ其不動産ヲ取得スル能力ナキコト
第三 法律上ノ売却条件ニ牴触シテ競買ヲ為シタルコト又ハ総テノ利害関係人ノ合意ヲ得スシテ法律上ノ売却条件ヲ変更シタルコト
第四 競売期日ノ公告ニ第六百五十八条ニ掲ケタル要件ノ記載ナキコト
第五 競売期日ノ公告ハ法律上規定シタル方法ニ依リテ之ヲ為ササルコト
第六 第六百五十九条ニ規定シタル期間ヲ存セサリシコト
第七 第六百六十五条第二項及ヒ第六百六十六条第一項ノ規定ニ違背シタルコト
第八 第六百六十四条ノ規定ニ違背シ最高価競買人ナリト呼上ケタルコト
第六百七十三条 異議ハ他ノ利害関係人ノ権利ニ関スル理由ニ基テハ之ヲ許サス
第六百七十四条 裁判所ハ異議ノ申立ヲ正当トスルトキハ競落ヲ許サス
第六百七十二条第一号乃至第八号ニ掲ケタル事項ノ一アルトキハ職権ヲ以テモ競落ヲ許サス但第一号ノ場合ニ於テハ競売シタル不動産カ譲渡スコトヲ得サルモノナルトキ又ハ競売手続ノ停止ヲ為シタルトキニ限リ第二号ノ場合ニ於テハ能力若クハ資格ノ欠欠カ除去セラレサルトキニ限リ第三号ノ場合ニ於テハ利害関係人手続ノ続行ニ付キ承認セサルトキニ限ル
第六百七十五条 数箇ノ不動産ヲ競売ニ付シタル場合ニ於テ或ル不動産ノ売得金ヲ以テ各債権者ニ弁済ヲ為シ及ヒ強制執行ノ費用ヲ償フニ足ル可キトキハ他ノ不動産ニ付テハ競落ヲ許サス
此場合ニ於テ債務者ハ其不動産中売却ス可キモノヲ指定スルコトヲ得
第六百七十六条 第六百七十二条及ヒ第六百七十四条ノ規定ニ従ヒ全ク競落ヲ許ササル場合ニ於テ更ニ競売ヲ許ス可キトキハ職権ヲ以テ新競売期日ヲ定ム可シ
新競売期日ハ少ナクトモ十四日ノ後タル可シ
第六百七十七条 前条ノ規定ニ従ヒテ新競売期日ヲ定ムル場合ノ外競落ヲ許シ又ハ許ササル決定ノ言渡ヲ為ス可シ
競落期日ノ調書ニ付テハ第百二十九条乃至第百三十二条及ヒ第百三十四条ノ規定ヲ準用ス
第六百七十八条 競売期日ト競落期日トノ間ニ天災其他ノ事変ニ因リ不動産カ著シク毀損シタルトキハ最高価競買人タル呼上ヲ受ケタル者ハ其競買ヲ取消ス権利アリ其毀損ノ著シキヤ否ヤハ裁判所事情ヲ斟酌シテ之ヲ定ム
第六百七十九条 競落ヲ許ス決定ニハ競売ヲ為シタル不動産、競落人及ヒ競落ヲ許シタル競買価額ヲ掲ケ又特別ノ売却条件ヲ以テ競落ヲ為シタルトキハ其条件ヲモ掲ク可シ
右決定ハ之ヲ言渡ス外尚ホ裁判所ノ掲示板ニ掲示シテ公告ス可シ
第六百八十条 利害関係人ハ競落ノ許否ニ付テノ決定ニ因リ損失ヲ被ムル可キ場合ニ於テハ其決定ニ対シ即時抗告ヲ為スコトヲ得
競落ヲ許ス可キ理由ナキコト又ハ決定ニ掲ケタル以外ノ条件ヲ以テ許ス可キコトヲ主張スル競落人又ハ競落ヲ求メ之ヲ許ス可キコトヲ主張スル競買人モ亦即時抗告ヲ為スコトヲ得
右抗告ハ執行停止ノ効力ヲ有ス
第二項ノ場合ニ於テ競落ヲ求メタル競買人ハ其申出テタル価額ニ付キ拘束ヲ受クルモノトス
第六百八十一条 競落ヲ許ササル決定ニ対スル抗告ハ此法律ニ掲クル総テノ不許ノ原因ナキコトヲ理由トスルトキニ限リ之ヲ為スコトヲ得
競落ヲ許シタル決定ニ対スル抗告ハ此法律ニ掲クル競落ノ許可ニ対スル異議ノ原因ノ一ヲ理由トスルトキ又ハ競落決定カ競落期日ノ調書ノ旨趣ニ牴触シタルコトヲ理由トスルトキニ限リ之ヲ為スコトヲ得
取消ノ訴若クハ原状回復ノ訴ノ要件ヲ理由トスル抗告ハ前二項ノ規定ニ依リ妨ケラルルコト無シ
第六百八十二条 抗告裁判所ハ必要ナル場合ニ於テハ反対陳述ヲ為サシムル為メ抗告人ノ相手方ヲ定ム可シ
一ノ決定ニ関スル数箇ノ抗告ハ互ニ之ヲ併合ス可シ
第六百七十三条及ヒ第六百七十四条ノ規定ハ抗告審ニモ亦之ヲ準用ス
第六百八十三条 執行裁判所ノ決定ヲ変更シ又ハ廃棄シタル抗告裁判所ノ裁判ハ執行裁判所之ヲ裁判所ノ掲示板ニ掲示シテ公告ス可シ
第六百八十四条 競落ヲ許ササル決定確定シタルトキハ競落人及ヒ競落ヲ求メタル競買人ハ其競買ノ責務ヲ免カル
第六百八十五条 第六百七十八条ノ場合ニ於テ競買取消ノ為メ競落ヲ許ササルトキハ第六百五十五条乃至第六百五十七条ノ規定ヲ準用ス
第六百八十六条 競落人ハ競落ヲ許ス決定ニ因リテ不動産ノ所有権ヲ取得スルモノトス
第六百八十七条 競落人ハ代金ノ全額ヲ支払ヒタル後ニ非サレハ不動産ノ引渡ヲ求ムルコトヲ得ス
競落人若クハ債権者競落ヲ許ス決定アリタル後引渡アルマテ管理人ヲシテ不動産ヲ管理セシメンコトヲ申立テタルトキハ裁判所ハ之ヲ命ス可シ
債務者カ引渡ヲ拒ミタルトキハ競落人若クハ債権者ノ申立ニ因リ裁判所ハ執達吏ヲシテ債務者ノ占有ヲ解キ其不動産ヲ管理人ニ引渡サシム可シ
第六百八十八条 競落人カ代金支払期日ニ其義務ヲ完全ニ履行セサルトキハ裁判所ハ職権ヲ以テ不動産ノ再競売ヲ命ス可シ
最初ノ競売ノ為ニ定メタル最低競売価額其他売却条件ハ再競売ノ手続ニモ亦之ヲ適用ス
再競売期日ハ少ナクトモ十四日ノ後タル可シ
競落人カ再競売期日ノ三日前マテニ買入代金及ヒ手続ノ費用ヲ支払ヒタルトキハ再競売手続ヲ取消ス可シ
再競売ヲ為ストキハ前ノ競落人ハ競買ニ加ハルコトヲ許サス且再度ノ競落代価カ最初ノ競落代価ヨリ低キトキハ不足ノ額及ヒ手続ノ費用ヲ負担シ其高キトキハ剰余ノ額ヲ請求スルコトヲ得ス
第六百八十九条 共有物持分ノ強制競売ニ付テハ債権者ノ債権ノ為メ債務者ノ持分ニ付キ強制競売ノ申立アリタルコトヲ登記簿ニ記入ス但他ノ共有者ニハ其強制競売ノ申立ヲ通知ス可シ
最低競売価額ハ共有物全部ノ評価額ニ基キ債務者ノ持分ニ付キ之ヲ定ム可シ
第六百九十条 競売申立カ競落ヲ許スコト無クシテ完結シタルトキハ裁判所ハ第六百五十一条ノ規定ニ従ヒテ為シタル差押記入ノ抹消ヲ登記判事ニ嘱託ス可シ
第六百九十一条 競落ヲ許ス決定確定スルトキハ売却代金カ配当ニ与カル各債権者ヲ満足セシムルニ足ラサル場合ニ於テハ民法、商法及ヒ特別法ニ従ヒテ之ヲ配当ス可シ
第六百九十二条 各債権者ハ競落期日マテニ其債権ノ元金、利息、費用其他附帯ノ債権ノ計算書ヲ差出ス可シ
前項ノ規定ニ従ハサル債権者ニ付テハ第六百二十八条第二項ノ規定ヲ準用ス
第六百九十三条 代金ノ支払及ヒ配当ハ競落ヲ許ス決定ノ確定後ニ裁判所カ職権ヲ以テ定ムル期日ニ於テ之ヲ為ス
此期日ニハ利害関係人、執行力アル正本ニ因ラスシテ配当ヲ要求スル債権者及ヒ競落人ヲ呼出ス可シ
第六百九十四条 期日ニ於テハ先ツ配当ス可キ不動産ノ売却代金ノ幾許ナルヤヲ定ム可シ
左ノモノヲ売却代金トス
第一 代金
第二 不動産カ果実其他金銭ニ見積ルコトヲ得ヘキ利益ヲ生スル場合ニ於テハ競落決定言渡ヨリ代金支払マテノ利息
代金支払ハ裁判所ニ之ヲ為ス可シ
最高競買価額ノ保証ノ為メ預リタル金額ハ代金ニ之ヲ算入ス
第六百九十五条 裁判所ハ出頭シタル利害関係人及ヒ執行力アル正本ニ因ラスシテ配当ヲ要求スル債権者ヲ訊問シテ配当表ヲ確定ス可シ
第六百九十六条 配当表ニハ売却代金各債権者ノ債権ノ元金、利息、費用及ヒ配当ノ順位並ニ配当ノ割合ヲ記載ス可シ
若シ出頭シタル総テノ利害関係人及ヒ執行力アル正本ニ因ラスシテ配当ヲ要求スル債権者一致シタルトキハ其一致ニ基キ配当表ヲ作ル可シ
第六百九十七条 配当表ニ対スル異議ノ完結及ヒ配当表ノ実施ニ付テハ第六百三十条以下ノ規定ヲ準用ス但以下数条ニ於テ別段ノ規定ヲ設ケタルモノハ此限ニ在ラス
第六百九十八条 期日ニ出頭シタル債務者ハ各債権者ノ債権ニ対シ又ハ其債権ノ為メ主張スル順位ニ対シ異議ヲ申立ツル権利アリ
出頭シタル各債権者ハ自己ノ利害ニ関シテハ他ノ債権者ニ対シ前項ト同一ノ権利アリ
執行スルヲ得ヘキ債権ニ対スル債務者ノ異議ハ第五百四十五条、第五百四十七条及ヒ第五百四十八条ノ規定ニ従ヒテ之ヲ完結ス
第六百九十九条 競落人ハ売却条件ニ因リ不動産ノ負担ヲ引受クル外配当表ノ実施ニ際シ買入代金ノ額ニ満ツルヲ限トシ関係債権者ノ承諾ヲ得テ買入代金ノ支払ニ換ヘ債務ヲ引受クルコトヲ得若シ債権者競落人ナルトキハ其債権ノ配当額カ買入代金ノ額ニ満ツル限リハ買入代金トシテ之ヲ計算スルニ因リテ消滅ス然レトモ引受ク可キ債務又ハ計算ス可キ競落人ノ債権ニ対シ適当ナル異議アルトキハ之ニ相当スル代金ヲ支払ヒ又ハ保証ヲ立ツ可シ
第七百条 配当表ヲ実施シタル後裁判所ハ配当調書及ヒ競落決定ノ正本ヲ登記判事ニ送付シテ左ノ諸件ヲ嘱託ス可シ
第一 競落人ノ所有権ノ登記
第二 競落人ノ引受ケサル不動産上負担記入ノ抹消
第三 第六百五十一条ノ規定ニ従ヒ為シタル記入ノ抹消
右登記及ヒ抹消ニ関スル総テノ費用ハ競落人之ヲ負担ス可シ
第七百一条 数多ノ差押債権者ノ為メ同時ニ為ス可キ不動産ノ競売手続ニ付テハ前数条ノ規定ヲ準用ス
第七百二条 裁判所ハ競売期日ノ公告前利害関係人ノ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ競売ニ換ヘテ入札払ヲ命スルコトヲ得但入札払ニ付テハ以下数条ニ於テ別段ノ規定ナキモノハ前数条ノ規定ヲ準用ス
第七百三条 入札ハ入札期日ニ於テ執達吏ニ之ヲ差出ス可シ
入札ニハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 入札人ノ氏名及ヒ住所
第二 不動産ノ表示
第三 入札価額
第七百四条 執達吏ハ入札人ノ面前ニ於テ入札ヲ開封シ之ヲ朗読ス可シ
二人以上同価額ノ入札アルトキハ執達吏ハ其者ヲシテ追加ノ入札ヲ為サシメ最高価入札人ヲ定ム
一定ノ金額ヲ以テ入札価額ヲ表セスシテ他ノ入札価額ニ対スル比例ヲ以テ価額ヲ表シタル入札ハ之ヲ許サス
第七百五条 最高価入札人タル呼上ヲ受ケタル者第六百六十四条ノ規定ニ従ヒ保証ヲ立ツ可キ求ヲ受クルモ之ヲ立テサルトキハ其次位ノ入札人ヲ以テ最高価入札人ト定ム但此場合ニ於テハ最初呼上ヲ受ケタル者ハ其入札価額ト次位ノ入札価額トノ差金ヲ負担スル義務アリ
第三款 強制管理
第七百六条 強制管理ニ付テハ第六百四十二条、第六百四十三条、第六百四十四条第一項第三項及ヒ第六百五十一条乃至第六百五十四条ノ規定ヲ準用ス
不動産カ債権者ノ債権ニ付キ不動産上ノ義務ヲ負フタル場合ニ於テハ第六百四十三条第一号第二号ニ依リ提出ス可キ証書ハ不動産ヲ債務者カ占有スルコトヲ疏明スル証書ヲ以テ足ル
第七百七条 裁判所ハ強制管理開始ノ決定ニ於テ債務者カ管理人ノ事務ニ干渉スルコト及ヒ不動産ノ収益ニ付キ処分スルコトヲ禁シ又不動産ノ収益ノ給付ヲ為ス可キ第三者アルトキハ其第三者ニ其後ノ給付ヲ管理人ニ為ス可キコトヲ命ス可シ
既ニ収穫シ若クハ収穫ス可ク又ハ期限ノ到来シ若クハ到来ス可キ果実ハ収益ニ属ス
開始決定ハ第三者ニ対シテハ之ヲ送達スルニ因リ其効力ヲ生ス此送達ハ職権ヲ以テ之ヲ為ス
第七百八条 裁判所ハ強制管理開始ノ決定ヲ為シタル不動産ニ付キ強制管理ノ申立アルモ更ニ開始決定ヲ為スコトヲ得ス
右申立ハ執行記録ニ添附スルニ依リ配当要求ノ効力ヲ生シ又既ニ開始シタル強制管理ノ取消ト為リタルトキハ開始決定ヲ受ケタル効力ヲ生ス
仮差押ノ命令アリタル不動産ニ付テハ本条ノ規定ヲ適用セス
第七百九条 配当要求ハ執行力アル正本ニ因リ且裁判所ノ所在地ニ住居ヲモ事務所ヲモ有セサル者ハ仮住所ヲ選定シテ執行裁判所ニ之ヲ為ス可シ
第七百十条 執行裁判所ハ前二条ノ申立及ヒ要求アリタルコトヲ債権者、債務者及ヒ管理人ニ通知ス可シ
第七百十一条 管理人ハ裁判所之ヲ任命ス但債権者ハ適当ノ人ヲ推薦スルコトヲ得
管理人ハ管理及ヒ収益ノ為メ自ラ不動産ヲ占有スル権ヲ有ス此場合ニ於テ抵抗ヲ受クルトキハ執達吏ヲ立会ハシムルコトヲ得
管理人ノ任命ハ債務者ニ代リ第三者ノ給付ス可キ収益ヲ取立ツル権ヲ授与スルモノトス
第七百十二条 裁判所ハ債権者及ヒ債務者ヲ審訊シタル後又適当トスル場合ニ於テハ鑑定人ヲ立会ハシメタル上管理人ニ管理ニ関シ必要ナル指揮ヲ為シ又管理人ニ与フ可キ報酬ヲ定メ且管理人ノ業務施行ヲ監督ス可シ
裁判所ハ管理人ニ保証ヲ立テシメ又ハ弐拾円以下ノ過料ヲ言渡シ又ハ其職ヲ免スルコトヲ得
第七百十三条 第三者不動産ニ付キ強制管理ヲ許スコトヲ妨クル権利ヲ主張スルトキハ第五百四十九条ノ規定ヲ準用ス
第七百十四条 管理人ハ直チニ不動産ニ付キ得タル収益ヨリ其不動産ノ負担ニ係ル租税其他ノ公課ヲ控除シタル後別段ノ手続ヲ要セスシテ管理ノ費用ヲ弁済シ其残額ノ配当ニ付キ債権者間ニ協議調ハサルトキハ其旨ヲ裁判所ニ届出ツ可シ
前項ノ届出アリタルトキハ裁判所ハ第六百九十一条、第六百九十六条乃至第六百九十八条ノ規定ヲ準用シテ配当表ヲ作リ其配当表ニ基キ管理人ヲシテ債権者ニ支払ヲ為サシム可シ
第七百十五条 管理人ハ毎年及ヒ其業務施行ノ終了後各債権者、債務者及ヒ裁判所ニ計算書ヲ差出ス可シ
各債権者及ヒ債務者ハ計算書ノ送達アリタルヨリ七日ノ期間内ニ執行裁判所ニ異議ノ申立ヲ為スコトヲ得
右期間内ニ異議ノ申立ナキトキハ計算ニ付キ全ク異議ナク且管理人ノ卸任ヲ承諾シタルモノト看做ス
異議ノ申立アルトキハ裁判所ハ管理人ヲ審訊シタル後之ヲ裁判ス可シ若シ異議ノ申立ナク又ハ申立テタル異議ヲ完結シタルトキハ裁判所ハ管理人ヲシテ卸任セシム可シ
第七百十六条 強制管理ノ取消ハ裁判所ノ決定ヲ以テ之ヲ為ス
此取消ハ各債権者不動産ノ収益ヲ以テ弁済ヲ受ケタルトキハ職権ヲ以テ之ヲ為ス
若シ管理続行ノ為メ特別ノ費用ヲ要スルトキ債権者カ必要ナル金額ヲ予納セサルニ於テハ裁判所ハ強制管理ノ取消ヲ命スルコトヲ得
裁判所ハ右ノ取消ヲ決定スル際登記判事ニ強制管理ニ関スル記入ノ抹消ヲ嘱託ス可シ
第三節 船舶ニ対スル強制執行
第七百十七条 商船其他ノ海船ニ対スル強制執行ハ不動産ノ強制競売ニ関スル規定ニ従ヒテ之ヲ為ス但事物ノ性質ニ因リテ差異ノ顕ハルルトキ又ハ以下数条ニ於テ別段ノ規定ヲ設ケタルトキハ此限ニ在ラス
端舟其他㯭櫂ノミヲ以テ運転シ又ハ主トシテ㯭櫂ヲ以テ運転スル舟ニハ本節ノ規定ヲ適用セス
第七百十八条 船舶ノ強制競売ニ付テハ船舶カ差押ノ当時碇泊スル港ノ区裁判所ヲ以テ管轄執行裁判所トス
第七百十九条 船舶ハ執行手続中差押ノ港ニ之ヲ碇泊セシム可シ然レトモ商業上利益ノ為メ適当トスル場合ニ於テハ裁判所ハ総テノ利害関係人ノ中立ニ因リ航行ヲ許スコトヲ得
第七百二十条 強制競売ニ付テノ申立ニハ左ノ証書ヲ添附ス可シ
第一 債務者カ所有者ナル場合ニ於テハ其所有者トシテ船舶ヲ占有スルコト又船長ナル場合ニ於テハ船長トシテ船舶ヲ指揮スルコトヲ疏明スルニ足ル可キ証書
第二 船舶カ船舶登記簿ニ登記アル場合ニ於テハ其船舶ニ関スル有効ナル各登記事項ヲ包含シタル登記簿ノ抄本
債権者ハ公簿ヲ主管スル官庁カ遠隔ノ地ニ在ルトキハ第二号ノ抄本ノ求アランコトヲ執行裁判所ニ申立ツルコトヲ得
第七百二十一条 裁判所ハ債権者ノ申立ニ因リ船舶ノ監守及ヒ保存ノ為メ必要ナル処分ヲ為サシム可シ
此処分ヲ為シタルトキハ開始決定ノ送達前ト雖モ差押ノ効力ヲ生ス
若シ此処分ヲ続行スル為メ債権者カ必要ナル金額ヲ予納セサルトキハ裁判所ハ之ヲ取消スコトヲ得
第七百二十二条 船長ニ対シ為シタル判決ニ基キ船舶債権者ノ為メ船舶ノ差押ヲ為ストキハ其差押ハ所有者ニ対シテモ効力アリ此場合ニ於テハ所有者モ亦利害関係人トス
差押後所有者若クハ船長ノ変更アルモ手続ノ続行ヲ妨ケス
差押後新ニ船長ト為リタル者ハ之ヲ利害関係人トス此場合ニ於テハ前船長ハ其関係人タル責務ヲ免カル
第七百二十三条 船舶カ差押ノ当時其裁判所管轄内ニ存セサルコトノ顕ハルルトキハ其手続ヲ取消ス可シ
第七百二十四条 競売期日ノ公告ニハ第六百五十八条第一号ニ掲ケタル旨趣ニ換ヘテ船舶ノ表示及ヒ其碇泊ノ場所ヲ掲ク可シ
第七百二十五条 定繋港ノ区裁判所管轄外ニ於テ差押ヲ為シタルトキハ執行裁判所ハ競売期日ノ公告ヲ定繋港ノ区裁判所ニ送付シ其裁判所ノ掲示板ニ掲示ス可キコトヲ嘱託ス可シ
第七百二十六条 船舶ノ股分ニ対スル強制執行ハ第六百二十五条ノ規定ニ従ヒテ之ヲ為ス其執行ニ付テハ定繋港ノ区裁判所之ヲ管轄ス
第七百二十七条 債権者ハ差押命令ノ申請ニ債務者カ船舶ノ股分ニ付キ所有権ヲ有スルコトヲ証ス可キ船舶登記簿ノ抄本又ハ信用ス可キ証明書ヲ添附ス可シ
差押命令ハ債務者ノ外船舶管理人ニモ之ヲ送達ス可シ
差押ハ此命令ヲ船舶管理人ニ送達スルニ因リ債務者ニ送達スルト同一ノ効力ヲ生ス
第七百二十八条 船舶股分ノ競売代金ノ配当ニ付テハ第六百二十六条以下ノ規定ヲ準用ス
第七百二十九条 外国ノ船舶ヲ差押ヘタルトキ又ハ登記簿ニ登記セサル船舶ヲ差押ヘタルトキハ登記簿ニ記入ス可キ手続ニ関スル規定ヲ適用セス
第三章 金銭ノ支払ヲ目的トセサル債権ニ付テノ強制執行
第七百三十条 債務者カ特定ノ動産又ハ代替物ノ一定ノ数量ヲ引渡ス可キトキハ執達吏ハ之ヲ債務者ヨリ取上ケテ債権者ニ引渡ス可シ
第七百三十一条 債務者カ不動産又ハ人ノ住居スル船舶ヲ引渡シ又ハ明渡ス可キトキハ執達吏ハ債務者ノ占有ヲ解キ債権者ニ其占有ヲ得セシム可シ
此強制執行ハ債権者又ハ其代理人カ受取ノ為メ出頭シタルトキニ限リ之ヲ為スコトヲ得
強制執行ノ目的物ニ非サル動産ハ執達吏之ヲ取除キテ債務者ニ引渡ス可シ若シ債務者不在ナルトキハ其代理人又ハ債務者ノ成長シタル家族若クハ雇人ニ之ヲ引渡ス可シ
債務者及ヒ前項ニ掲ケタル者不在ナルトキハ執達吏ハ右ノ動産ヲ債務者ノ費用ニテ保管ニ付ス可シ
債務者カ其動産ノ受取ヲ怠ルトキハ執達吏ハ執行裁判所ノ許可ヲ得テ差押物ノ競売ニ関スル規定ニ従ヒテ之ヲ売却シ其費用ヲ控除シタル後其代金ヲ供託ス可シ
第七百三十二条 引渡ス可キ物カ第三者ノ手中ニ存スルトキハ債務者ノ引渡ノ請求ハ申立ニ因リ金銭債権ノ差押ニ関スル規定ニ従ヒテ之ヲ債権者ニ転付ス可シ
第七百三十三条 債務者カ為ス可キ行為ヲ為ササル場合ニ於テ第三者之ヲ為シ得ヘキモノナルトキハ第一審ノ受訴裁判所ハ申立ニ因リ民法(財産編第三百八十二条第三項第四項)ノ規定ニ従ヒテ決定ヲ為ス
債権者ハ同時ニ其行為ヲ為スニ因リ生ス可キ費用ヲ予メ債務者ニ支払ヲ為サシムル決定ノ宣言アランコトヲ申立ツルコトヲ得但其行為ヲ為スニ因リ此ヨリ多額ノ費用ヲ生スルトキ後日其請求ヲ為ス権利ヲ妨ケス
第七百三十四条 債務者カ其意思ノミニ因リ為シ得ヘキ行為ニシテ第三者之ヲ為シ得ヘカラサルモノナルトキハ第一審ノ受訴裁判所ハ申立ニ因リ民法(財産編第三百八十六条第三項)ノ規定ニ従ヒテ決定ヲ為ス
第七百三十五条 前二条ノ決定ハ口頭弁論ヲ経スシテ之ヲ為スコトヲ得但決定前債務者ヲ審訊ス可シ
第七百三十六条 債務者カ権利関係ノ成立ヲ認諾ス可キコト又ハ其他ノ意思ノ陳述ヲ為ス可キコトノ判決ヲ受ケタルトキハ其判決ノ確定ヲ以テ認諾又ハ意思ノ陳述ヲ為シタルモノト看做ス反対給付ノ有リタル後認諾又ハ意思ノ陳述ヲ為ス可キ場合ニ於テハ第五百十八条及ヒ第五百二十条ノ規定ニ従ヒ執行力アル正本ヲ付与シタルトキ其効力ヲ生ス
第四章 仮差押及ヒ仮処分
第七百三十七条 仮差押ハ金銭ノ債権又ハ金銭ノ債権ニ換フルコトヲ得ヘキ請求ニ付キ動産又ハ不動産ニ対スル強制執行ヲ保全スル為メ之ヲ為スコトヲ得
仮差押ハ未タ期限ニ至ラサル請求ニ付テモ亦之ヲ為スコトヲ得
第七百三十八条 仮差押ハ之ヲ為ササレハ判決ノ執行ヲ為スコト能ハス又ハ判決ノ執行ヲ為スニ著シキ困難ヲ生スル恐アルトキ殊ニ外国ニ於テ判決ノ執行ヲ為スニ至ル可キトキハ之ヲ為スコトヲ得
第七百三十九条 仮差押ノ命令ハ仮ニ差押フ可キ物ノ所在地ヲ管轄スル区裁判所又ハ本案ノ管轄裁判所之ヲ管轄ス
第七百四十条 仮差押ノ申請ニハ左ノ諸件ヲ掲ク可シ
第一 請求ノ表示若シ其請求カ一定ノ金額ニ係ラサルトキハ其価額
第二 仮差押ノ理由タル事実ノ表示
請求及ヒ仮差押ノ理由ハ之ヲ疏明ス可シ
申請ハ口頭ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
第七百四十一条 仮差押ノ申請ニ付テノ裁判ハ口頭弁論ヲ経スシテ之ヲ為スコトヲ得
請求又ハ仮差押ノ理由ヲ疏明セサルトキト雖モ仮差押ニ因リ債務者ニ生ス可キ損害ノ為メ債権者カ裁判所ノ自由ナル意見ヲ以テ定ムル保証ヲ立テタルトキハ裁判所ハ仮差押ヲ命スルコトヲ得
又請求及ヒ仮差押ノ理由ヲ疏明シタルトキト雖モ裁判所ハ保証ヲ立テシメ仮差押ヲ命スルコトヲ得
保証ヲ立テタルトキハ其保証ヲ立テタルコト及ヒ如何ナル方法ヲ以テ之ヲ立テタルコトヲ仮差押ノ命令ニ記載ス可シ
第七百四十二条 仮差押ノ申請ニ付テノ裁判ハ口頭弁論ヲ為ス場合ニ於テハ終局判決ヲ以テ之ヲ為シ其他ノ場合ニ於テハ決定ヲ以テ之ヲ為ス
仮差押ノ申請ヲ却下シ又ハ保証ヲ立テシムル裁判ハ債務者ニ之ヲ通知スルコトヲ要セス
第七百四十三条 仮差押ノ命令ニハ仮差押ノ執行ヲ停止スルコトヲ得ル為メ又ハ執行シタル仮差押ヲ取消スコトヲ得ル為ニ債務者ヨリ供託ス可キ金額ヲ記載ス可シ
第七百四十四条 債務者ハ仮差押決定ニ対シ異議ヲ申立ツルコトヲ得
此異議ニ付テハ仮差押ノ取消又ハ変更ヲ申立ツル理由ヲ開示ス可シ
異議ノ申立ハ仮差押ノ執行ヲ停止セス
第七百四十五条 異議ノ申立アリタルトキハ裁判所ハ口頭弁論ノ為メ当事者ヲ呼出ス可シ
裁判所ハ終局判決ヲ以テ仮差押ノ全部若クハ一分ノ認可、変更又ハ取消ヲ言渡シ又自由ナル意見ヲ以テ定ムル保証ヲ立ツ可キコトノ条件ヲ附シテ之ヲ言渡スコトヲ得
第七百四十六条 本案ノ未タ繋属セサルトキハ仮差押裁判所ハ債務者ノ申立ニ因リ口頭弁論ヲ経スシテ相当ニ定ムル期間内ニ訴ヲ起ス可キコトヲ債権者ニ命ス可シ
此期間ヲ徒過シタル後ハ債務者ノ申立ニ因リ終局判決ヲ以テ仮差押ヲ取消ス可シ
第七百四十七条 債務者ハ仮差押ノ理由消滅シ其他事情ノ変更シタルトキ又ハ裁判所ノ自由ナル意見ヲ以テ定ム可キ保証ヲ立テントノ提供ヲ為シタルトキハ仮差押ノ認可後ト雖モ仮差押ノ取消ヲ申立ツルコトヲ得
此申立ニ付テハ終局判決ヲ以テ之ヲ裁判ス其裁判ハ仮差押ヲ命シタル裁判所又本案カ既ニ繋属シタルトキハ本案ノ裁判所之ヲ為ス
第七百四十八条 仮差押ノ執行ニ付テハ強制執行ニ関スル規定ヲ準用ス但以下数条ニ於テ差異ノ生スルトキハ此限ニ在ラス
第七百四十九条 仮差押ノ命令ニハ其命令ヲ発シタル後債権者又ハ債務者ニ於テ承継アル場合ニ限リ執行文ヲ附記スルコトヲ要ス
仮差押命令ノ執行ハ命令ヲ言渡シ又ハ申立人ニ命令ヲ送達シタルヨリ十四日ノ期間ヲ徒過スルトキハ之ヲ為スコトヲ許サス
右執行ハ債務者ニ差押命令ヲ送達スル前ト雖モ之ヲ為スコトヲ得
第七百五十条 動産ニ対スル仮差押ノ執行ハ各差押ト同一ノ原則ニ従ヒテ之ヲ為ス
債権ノ仮差押ニ付テハ其命令ヲ発シタル裁判所ヲ以テ管轄執行裁判所トス
債権ノ仮差押ニ付テハ第三債務者ニ対シ債務者ニ支払ヲ為スコトヲ禁スル命令ノミヲ為ス可シ
仮差押ノ金銭ハ之ヲ供託ス可シ其他仮差押物ノ競売及ヒ仮差押有価証券ノ換価ハ一時之ヲ為サス然レトモ仮差押物ニ著シキ価額ノ減少ヲ生スル恐アルトキ又ハ其貯蔵ニ付キ不相応ナル費用ヲ生ス可キトキハ執行裁判所ハ申立ニ因リ其物ヲ競売シ売得金ヲ供託ス可キ旨ヲ執達吏ニ命スルコトヲ得
第七百五十一条 不動産ニ対スル仮差押ノ執行ハ仮差押ノ命令ヲ登記簿ニ記入スルニ因リテ之ヲ為ス
第七百五十二条 仮差押執行ノ為メ強制管理ヲ為ス場合ニ於テハ保全ス可キ債権ニ相当スル金額ヲ取立テ之ヲ供託ス可シ
第七百五十三条 船舶ニ対スル仮差押ノ執行ハ仮差押ノ当時碇泊スル港ニ碇泊セシムルコトニ因リテ之ヲ為ス裁判所ハ債権者ノ申立ニ因リ船舶ノ監守及ヒ保存ノ為メ必要ナル処分ヲ為ス
第七百五十四条 仮差押命令ニ於テ定メタル金額ヲ供託シタルトキハ執行裁判所ハ執行シタル仮差押ヲ取消ス可シ
仮差押ノ続行ニ付キ特別ノ費用ヲ要シ且之カ為メ必要ナル金額ヲ債権者カ予納セサルトキモ亦執行裁判所ハ仮差押ノ取消ヲ命スルコトヲ得
右裁判ハ口頭弁論ヲ経スシテ之ヲ為スコトヲ得
仮差押ヲ取消ス決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第七百五十五条 係争物ニ関スル仮処分ハ現状ノ変更ニ因リ当事者一方ノ権利ノ実行ヲ為スコト能ハス又ハ之ヲ為スニ著シキ困難ヲ生スル恐アルトキ之ヲ許ス
第七百五十六条 仮処分ノ命令其他ノ手続ニ付テハ仮差押ノ命令及ヒ手続ニ関スル規定ヲ準用ス但以下数条ニ於テ差異ノ生スルトキハ此限ニ在ラス
第七百五十七条 仮処分ノ命令ハ本案ノ管轄裁判所之ヲ管轄ス
右裁判ハ急迫ナル場合ニ於テハ口頭弁論ヲ経スシテ之ヲ為スコトヲ得
第七百五十八条 裁判所ハ其意見ヲ以テ申立ノ目的ヲ達スルニ必要ナル処分ヲ定ム
仮処分ハ保管人ヲ置キ又ハ相手方ニ行為ヲ命シ若クハ之ヲ禁シ又ハ給付ヲ命スルコトヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
仮処分ヲ以テ不動産ヲ譲渡シ又ハ抵当ト為スコトヲ禁シタルトキハ裁判所ハ第七百五十一条ノ規定ヲ準用シテ登記簿ニ其禁止ヲ記入セシム可シ
第七百五十九条 特別ノ事情アルトキニ限リ保証ヲ立テシメテ仮処分ノ取消ヲ許スコトヲ得
第七百六十条 仮処分ハ争アル権利関係ニ付キ仮ノ地位ヲ定ムル為ニモ亦之ヲ為スコトヲ得但其処分ハ殊ニ継続スル権利関係ニ付キ著シキ損害ヲ避ケ若クハ急迫ナル強暴ヲ防ク為メ又ハ其他ノ理由ニ因リ之ヲ必要トスルトキニ限ル
第七百六十一条 急迫ナル場合ニ於テハ係争物ノ所在地ヲ管轄スル区裁判所ハ仮処分ノ当否ニ付テノ口頭弁論ノ為メ本案ノ管轄裁判所ニ相手方ヲ呼出ス可キ申立ノ期間ヲ定メ仮処分ヲ命スルコトヲ得
此期間ヲ徒過シタル後区裁判所ハ申立ニ因リ其命シタル仮処分ヲ取消ス可シ
右裁判ハ口頭弁論ヲ経スシテ之ヲ為スコトヲ得
第七百六十二条 本章ノ規定ニ於ケル本案ノ管轄裁判所ハ第一審裁判所トス但本案カ控訴審ニ繋属スルトキニ限リ控訴裁判所トス
第七百六十三条 急迫ナル場合ニ於テ口頭弁論ヲ要セサルモノニ限リ裁判長ハ本章ノ申立ニ付キ裁判ヲ為スコトヲ得
第七編 公示催告手続
第七百六十四条 請求又ハ権利ノ届出ヲ為サシムル為メノ裁判上ノ公示催告ハ其届出ヲ為ササルトキハ失権ヲ生スル効力ヲ以テ法律ニ定メタル場合ニ限リ之ヲ為スコトヲ得
公示催告手続ハ区裁判所之ヲ管轄ス
第七百六十五条 公示催告ノ申立ハ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
此申立ニ付テノ裁判ハ口頭弁論ヲ経スシテ之ヲ為スコトヲ得
申立ヲ許ス可キトキハ裁判所ハ公示催告ヲ為ス可ク其公示催告ニハ殊ニ左ノ諸件ヲ掲ク可シ
第一 申立人ノ表示
第二 請求又ハ権利ヲ公示催告期日マテニ届出ツ可キコトノ催告
第三 届出ヲ為ササルニ因リ生ス可キ失権ノ表示
第四 公示催告期日ノ指定
第七百六十六条 公示催告ニ付テノ公告ハ裁判所ノ掲示板ニ掲示シ及ヒ官報又ハ公報ニ掲載シテ之ヲ為シ其他法律ニ別段ノ規定ヲ設ケサルトキハ第百五十七条第三項ノ規定ニ従ヒテ之ヲ為ス
第七百六十七条 公示催告ヲ官報又ハ公報ニ掲載シタル日ト公示催告期日トノ間ニハ法律ニ別段ノ規定ヲ設ケサルトキハ少ナクトモ二个月ノ時間ヲ存スルコトヲ要ス
第七百六十八条 公示催告期日ノ終リタル後ト雖モ除権判決前ニ届出ヲ為ストキハ適当ナル時間ニ之ヲ為シタルモノト看做ス
第七百六十九条 除権判決ハ申立ニ因リテ之ヲ為ス
右判決前ニ詳細ナル探知ヲ為ス可キ旨ヲ命スルコトヲ得
除権判決ノ申立ヲ却下スル決定及ヒ除権判決ニ付シタル制限又ハ留保ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第七百七十条 申立人ノ申立ノ理由トシテ主張シタル権利ヲ争フコトノ届出アリタルトキハ其事情ニ従ヒ届出テタル権利ニ付テノ裁判確定スルマテ公示催告手続ヲ中止シ又ハ除権判決ニ於テ届出テタル権利ヲ留保ス可シ
第七百七十一条 申立人カ公示催告期日ニ出頭セサルトキハ其申立ニ因リ新期日ヲ定ム可シ此申立ハ公示催告期日ヨリ六个月ノ期間内ニ限リ之ヲ為スコトヲ許ス
第七百七十二条 公示催告手続ヲ完結スル為メ新期日ヲ定メタルトキハ其期日ノ公告ヲ為スコトヲ要セス
第七百七十三条 裁判所ハ除権判決ノ重要ナル旨趣ヲ官報又ハ公報ニ掲載シテ公告ヲ為スコトヲ得
第七百七十四条 除権判決ニ対シテハ上訴ヲ為スコトヲ得ス
除権判決ニ対シテハ左ノ場合ニ於テ申立人ニ対スル訴ヲ以テ催告裁判所ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所ニ不服ヲ申立ツルコトヲ得
第一 法律ニ於テ公示催告手続ヲ許ス場合ニ非サルトキ
第二 公示催告ニ付テノ公告ヲ為サス又ハ法律ニ定メタル方法ヲ以テ公告ヲ為ササルトキ
第三 公示催告ノ期間ヲ遵守セサルトキ
第四 判決ヲ為ス判事カ法律ニ依リ職務ノ執行ヨリ除斥セラレタルトキ
第五 請求又ハ権利ノ届出アリタルニ拘ハラス判決ニ於テ其届出ヲ法律ニ従ヒ顧ミサルトキ
第六 第四百六十九条第一号乃至第五号ノ場合ニ於テ原状回復ノ訴ヲ許ス条件ノ存スルトキ
第七百七十五条 不服申立ノ訴ハ一个月ノ不変期間内ニ之ヲ起ス可シ此期間ハ原告カ除権判決ヲ知リタル日ヲ以テ始マル然レトモ前条第四号及ヒ第六号ニ掲ケタル不服申立ノ理由ノ一ニ基キ訴ヲ起シ且原告カ右ノ日ニ其理由ヲ知ラサリシ場合ニ於テハ其期間ハ不服ノ理由ノ原告ニ知レタル日ヲ以テ始マル
除権判決ノ言渡ノ日ヨリ起算シテ五个年ノ満了後ハ此訴ヲ起スコトヲ得ス
第七百七十六条 裁判所ハ第百二十条ノ条件ノ存セサルトキト雖モ数箇ノ公示催告ノ併合ヲ命スルコトヲ得
第七百七十七条 盗取セラレ又ハ紛失若クハ滅失シタル手形其他商法ニ無効ト為シ得ヘキコトヲ定メタル証書ノ無効宣言ノ為ニ為ス公示催告手続ニ付テハ以下数条ノ特別規定ヲ適用ス
此規定ハ法律上公示催告手続ヲ許ス他ノ証書ニ付キ其法律中ニ特別規定ヲ設ケサル限リハ之ヲ適用ス
第七百七十八条 無記名証券又ハ裏書ヲ以テ移転シ得ヘク且略式裏書ヲ付シタル証書ニ付テハ最終ノ所持人公示催告手続ヲ申立ツル権アリ
此他ノ証書ニ付テハ証書ニ因リ権利ヲ主張シ得ヘキ者此申立ヲ為ス権アリ
第七百七十九条 公示催告手続ハ証書ニ表示シタル履行地ノ裁判所之ヲ管轄ス若シ証書ニ其履行地ヲ表示セサルトキハ発行人カ普通裁判籍ヲ有スル地ノ裁判所之ヲ管轄シ其裁判所ナキトキハ発行人カ発行ノ当時普通裁判籍ヲ有セシ地ノ裁判所之ヲ管轄ス
証書ヲ発行スル原因タル請求ヲ登記簿ニ記入シタルトキハ其物ノ所在地ノ裁判所ノ管轄ニ専属ス
第七百八十条 申立人ハ申立ノ憑拠トシテ左ノ手続ヲ為ス可シ
第一 証書ノ謄本ヲ差出シ又ハ証書ノ重要ナル旨趣及ヒ証書ヲ十分ニ認知スルニ必要ナル諸件ヲ開示スルコト
第二 証書ノ盗難、紛失、滅失及ヒ公示催告手続ヲ申立ツルコトヲ得ルノ理由タル事実ヲ疏明スルコト
第七百八十一条 公示催告中ニ公示催告期日マテニ権利ヲ裁判所ニ届出テ且其証書ヲ提出ス可キ旨ヲ証書ノ所持人ニ催告ス可ク又失権トシテ証書ノ無効宣言ヲ為ス可キ旨ヲ戒示ス可シ
第七百八十二条 公示催告ノ公告ハ裁判所ノ掲示板ニ掲示シ且官報又ハ公報ニ掲載シ及ヒ新聞紙ニ三回掲載シテ之ヲ為ス
公示催告裁判所ノ所在地ニ取引所アルトキハ取引所ニモ亦此公告ヲ掲示ス可シ
第七百八十三条 公示催告ヲ官報又ハ公報ニ掲載シタル日ト公示催告期日トノ間ニハ少ナクトモ六个月ノ時間ヲ存スルコトヲ要ス
第七百八十四条 除権判決ニ於テハ証書ヲ無効ナリト宣言ス可シ
除権判決ノ重要ナル旨趣ハ官報又ハ公報ヲ以テ之ヲ公告ス可シ
不服申立ノ訴ニ因リ判決ヲ以テ無効宣言ヲ取消シタルトキハ其判決ノ確定後官報又ハ公報ヲ以テ之ヲ公告ス可シ
第七百八十五条 除権判決アリタルトキハ其申立人ハ証書ニ因リ義務ヲ負担スル者ニ対シテ証書ニ因レル権利ヲ主張スルコトヲ得
第八編 仲裁手続
第七百八十六条 一名又ハ数名ノ仲裁人ヲシテ争ノ判断ヲ為サシムル合意ハ当事者カ係争物ニ付キ和解ヲ為ス権利アル場合ニ限リ其効力ヲ有ス
第七百八十七条 将来ノ争ニ関スル仲裁契約ハ一定ノ権利関係及ヒ其関係ヨリ生スル争ニ関セサルトキハ其効力ヲ有セス
第七百八十八条 仲裁契約ニ仲裁人ノ選定ニ関スル定ナキトキハ当事者ハ各一名ノ仲裁人ヲ選定ス
第七百八十九条 当事者ノ双方カ仲裁人ヲ選定スル権利ヲ有スルトキハ先ニ手続ヲ為ス一方ハ書面ヲ以テ相手方ニ其選定シタル仲裁人ヲ指示シ且七日ノ期間内ニ同一ノ手続ヲ為ス可キ旨ヲ催告ス可シ
右期間ヲ徒過シタルトキハ管轄裁判所ハ先ニ手続ヲ為ス一方ノ申立ニ因リ仲裁人ヲ選定ス
第七百九十条 当事者ノ一方ハ相手方ニ仲裁人選定ノ通知ヲ為シタル後ハ相手方ニ対シテ其選定ニ羈束セラル
第七百九十一条 仲裁契約ヲ以テ選定シタルニ非サル仲裁人カ死亡シ又ハ其他ノ理由ニ因リ欠欠シ又ハ其職務ノ引受若クハ施行ヲ拒ミタルトキハ其仲裁人ヲ選定シタル当事者ハ相手方ノ催告ニ因リ七日ノ期間内ニ他ノ仲裁人ヲ選定ス可シ此期間ヲ徒過シタルトキハ管轄裁判所ハ其催告ヲ為シタル者ノ申立ニ因リ仲裁人ヲ選定ス可シ
第七百九十二条 当事者ハ判事ヲ忌避スル権利アルト同一ノ理由及ヒ条件ヲ以テ仲裁人ヲ忌避スルコトヲ得
此他仲裁契約ヲ以テ選定シタルニ非サル仲裁人カ其責務ノ履行ヲ不当ニ遅延スルトキハ亦之ヲ忌避スルコトヲ得
無能力者、聾者、唖者及ヒ公権ノ剥奪又ハ停止中ノ者ハ之ヲ忌避スルコトヲ得
第七百九十三条 仲裁契約ハ当事者ノ合意ヲ以テ左ノ場合ノ為メ予定ヲ為ササリシトキハ其効力ヲ失フ
第一 契約ニ於テ一定ノ人ヲ仲裁人ニ選定シ其仲裁人中ノ或ル人カ死亡シ又ハ其他ノ理由ニ因リ欠欠シ又ハ其職務ノ引受ヲ拒ミ又ハ仲裁人ノ取結ヒタル契約ヲ解キ又ハ其責務ノ履行ヲ不当ニ遅延シタルトキ
第二 仲裁人カ其意見ノ可否同数ナル旨ヲ当事者ニ通知シタルトキ
第七百九十四条 仲裁人ハ仲裁判断前ニ当事者ヲ審訊シ且必要トスル限リハ争ノ原因タル事件関係ヲ探知ス可シ
仲裁手続ニ付キ当事者ノ合意アラサル場合ニ於テハ其手続ハ仲裁人ノ意見ヲ以テ之ヲ定ム
第七百九十五条 仲裁人ハ其面前ニ任意ニ出頭スル証人及ヒ鑑定人ヲ訊問スルコトヲ得
仲裁人ハ証人又ハ鑑定人ヲシテ宣誓ヲ為サシムル権ナシ
第七百九十六条 仲裁人ノ必要ト認ムル判断上ノ行為ニシテ仲裁人ノ為スコトヲ得サルモノハ当事者ノ申立ニ因リ管轄裁判所之ヲ為ス可シ但其申立ヲ相当ト認メタルトキニ限ル
証人又ハ鑑定人ニ供述ヲ命シタル裁判所ハ証拠ヲ述フルコト又ハ鑑定ヲ為スコトヲ拒ミタル場合ニ於テ必要ナル裁判ヲモ亦為ス権アリ
第七百九十七条 仲裁人ハ当事者カ仲裁手続ヲ許ス可カラサルコトヲ主張スルトキ殊ニ法律上有効ナル仲裁契約ノ成立セサルコト、仲裁契約カ判断ス可キ争ニ関係セサルコト又ハ仲裁人カ其職務ヲ施行スル権ナキコトヲ主張スルトキト雖モ仲裁手続ヲ続行シ且仲裁判断ヲ為スコトヲ得
第七百九十八条 数名ノ仲裁人カ仲裁判断ヲ為ス可キトキハ過半数ヲ以テ其判断ヲ為ス可シ但仲裁契約ニ別段ノ定アルトキハ此限ニ在ラス
第七百九十九条 仲裁判断ニハ其作リタル年月日ヲ記載シテ仲裁人之ニ署名捺印ス可シ
仲裁人ノ署名捺印シタル判断ノ正本ハ之ヲ当事者ニ送達シ其原本ハ送達ノ証書ヲ添ヘテ管轄裁判所ノ書記課ニ之ヲ預ケ置ク可シ
第八百条 仲裁判断ハ当事者間ニ於テ確定シタル裁判所ノ判決ト同一ノ効力ヲ有ス
第八百一条 仲裁判断ノ取消ハ左ノ場合ニ於テ之ヲ申立ツルコトヲ得
第一 仲裁手続ヲ許ス可カラサリシトキ
第二 仲裁判断カ法律上禁止ノ行為ヲ為ス可キ旨ヲ当事者ニ言渡シタルトキ
第三 当事者カ仲裁手続ニ於テ法律ノ規定ニ従ヒ代理セラレサリシトキ
第四 仲裁手続ニ於テ当事者ヲ審訊セサリシトキ
第五 仲裁判断ニ理由ヲ付セサリシトキ
第六 第四百六十九条第一号乃至第五号ノ場合ニ於テ原状回復ノ訴ヲ許ス条件ノ存スルトキ
仲裁判断ノ取消ハ当事者カ別段ノ合意ヲ為シタルトキハ本条第四号及ヒ第五号ニ掲ケタル理由ニ因リ之ヲ為スコトヲ得ス
第八百二条 仲裁判断ニ因リ為ス強制執行ハ執行判決ヲ以テ其許ス可キコトヲ言渡シタルトキニ限リ之ヲ為スコトヲ得
右執行判決ハ仲裁判断ノ取消ヲ申立ツルコトヲ得ヘキ理由ノ存スルトキハ之ヲ為スコトヲ得ス
第八百三条 執行判決ヲ為シタル後ハ仲裁判断ノ取消ハ第八百一条第六号ニ掲ケタル理由ニ因リテノミ之ヲ申立ツルコトヲ得但当事者カ自己ノ過失ニ非スシテ前手続ニ於テ取消ノ理由ヲ主張スル能ハサリシコトヲ疏明シタルトキニ限ル
第八百四条 仲裁判断取消ノ訴ハ前条ノ場合ニ於テハ一个月ノ不変期間内ニ之ヲ起ス可シ
右期間ハ当事者カ取消ノ理由ヲ知リタル日ヲ以テ始マル然レトモ執行判決ノ確定前ニハ始マラサルモノトス但執行判決ノ確定ト為リタル日ヨリ起算シテ五个年ノ満了後ハ此訴ヲ起スコトヲ許サス
仲裁判断ヲ取消ストキハ執行判決ノ取消ヲモ亦言渡ス可シ
第八百五条 仲裁人ヲ選定シ若クハ忌避スルコト、仲裁契約ノ消滅スルコト、仲裁手続ヲ許ス可カラサルコト、仲裁判断ヲ取消スコト又ハ執行判決ヲ為スコトヲ目的トスル訴ニ付テハ仲裁契約ニ指定シタル区裁判所又ハ地方裁判所之ヲ管轄シ其指定ナキトキハ請求ヲ裁判上主張スル場合ニ於テ管轄ヲ有ス可キ区裁判所又ハ地方裁判所之ヲ管轄ス
前項ニ依リ管轄ヲ有スル裁判所数箇アルトキハ当事者又ハ仲裁人カ最初ニ関係セシメタル裁判所之ヲ管轄ス