砂利採取法
法令番号: 法律第1号
公布年月日: 昭和31年2月21日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

砂利は公共施設や土木建築工事に不可欠な基礎物資であり、需要は年々増加している。しかし都会地方では供給が円滑を欠き、工事の進捗に支障をきたすことがある。一方で、砂利採取による河川の破損や公共施設への危害、産業への悪影響を防ぐ必要がある。現状では砂利採取を規制・保護する法規が不十分で、河川等での採取は都道府県令による管理のみ、その他地域は放任状態である。そこで本法案では、採取管理者の常置による監督、一般地域での通商産業局長による規制、河川等での採取許可における業者への配慮、一般土地での採石権の認定を定め、砂利採取業の健全な発達と公害防止の両立を図ることを目的とする。

参照した発言:
第22回国会 衆議院 商工委員会 第40号

審議経過

第22回国会

衆議院
(昭和30年7月12日)
(昭和30年7月12日)
参議院
(昭和30年7月12日)
(昭和30年7月15日)
(昭和30年7月21日)
衆議院
(昭和30年7月25日)

第23回国会

参議院
(昭和30年12月12日)
(昭和30年12月13日)
(昭和30年12月16日)

第24回国会

参議院
(昭和31年2月7日)
(昭和31年2月9日)
(昭和31年2月10日)
衆議院
(昭和31年2月14日)
(昭和31年2月14日)
(昭和31年6月3日)
参議院
(昭和31年6月3日)
砂利採取法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十一年二月二十一日
内閣総理大臣 鳩山一郎
法律第一号
砂利採取法
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
砂利採取業(第三条―第十条)
第三章
砂利採取の許可等(第十一条・第十二条)
第四章
雑則(第十三条―第十七条)
第五章
罰則(第十八条―第二十一条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、砂利採取業の健全な発達に資するとともに、砂利の採取と河川の保全等との調整を図り、もつて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「砂利採取業」とは、販売の目的をもつて砂利(砂及び玉石を含む。以下同じ。)を採取する事業(国及び地方公共団体が行うものを除く。)をいい、「砂利採取業者」とは、砂利採取業を行う者をいい、「河川等」とは、砂利の採取又は払下が河川法(明治二十九年法律第七十一号)その他の法令(条例及び規則を含む。)の規定に基き行政庁の許可を必要とする土地をいう。
第二章 砂利採取業
(公益の保持)
第三条 砂利採取業者は、砂利の採取に当つては、土地の掘さく又は砂利若しくは廃土のたい積により河川等の保全に障害を与え、若しくは公共の用に供する施設を破壊し、又は他の産業の利益を損じないように努めなければならない。
(届出)
第四条 砂利採取業者(省令で定める業態のものを除く。以下この条、第五条、第七条及び第八条において同じ。)は、砂利の採取に着手(休止後の再開を含む。)したときは、省令で定める期間内に、その年月日、採取場の位置、採取の方法その他省令で定める事項を通商産業局長に届け出なければならない。
2 砂利採取業者は、砂利の採取を休止し、又は廃止したときは、省令で定める期間内に、その旨を通商産業局長に届け出なければならない。
(作業主任者)
第五条 砂利採取業者は、採取場ごとに、砂利採取作業主任者(以下「作業主任者」という。)を選任しなければならない。ただし、砂利採取業者が自ら作業主任者となることを妨げない。
第六条 作業主任者は、その採取場における砂利の採取に関する業務につき、第三条に規定する事項を管理するものとする。
2 作業主任者の職務に関し必要な事項は、省令で定める。
第七条 砂利採取業者が作業主任者を選任し、又は解任したときは、省令で定める期間内に、省令で定める事項を通商産業局長に届け出なければならない。砂利採取業者が自ら作業主任者となり、又はこれをやめたときも、同様とする。
第八条 砂利採取業者は、作業主任者が旅行、疾病その他の事故によつてその職務を行うことができない場合に、その職務を行わせるため、あらかじめ、代理者を選任し、省令で定めるところにより、これを通商産業局長に届け出なければならない。
2 前項の代理者がその職務を行う場合には、この法律及びこの法律に基く省令の規定の適用については、これを作業主任者とみなす。
(公益の保護)
第九条 通商産業局長は、河川等以外の土地の区域において、砂利の採取のための土地の掘さく又は砂利若しくは廃土のたい積により公共の用に供する施設を破壊し、又は農業、林業若しくはその他の産業の利益を損じ、著しく公共の福祉に反すると認めるときは、砂利採取業者に対し、その防止のために必要な措置を採るべきことを命ずることができる。
2 採石法(昭和二十五年法律第二百九十一号)第三十三条第二項から第四項までの規定は、前項の規定による命令に準用する。
(鉱業権者との協議)
第十条 砂利採取業を行う土地の区域と鉱区とが重複するときは、砂利採取業者又は鉱業権者(租鉱区については、租鉱権者。以下同じ。)は、事業の実施について、鉱業権者又は砂利採取業者に対し協議することができる。
2 採石法第三十四条第二項から第七項までの規定は、前項の規定による協議に準用する。
第三章 砂利採取の許可等
(砂利採取の許可等の方針)
第十一条 河川法その他の法令(条例及び規則を含む。)の規定に基き砂利の採取若しくは払下の許可をし、又は許可の取消若しくはその効力の停止若しくはその条件の変更をするに当つては、当該行政庁は、河川等の管理上その他公益の保持の上に支障がある場合を除き、砂利採取業の運営を考慮してこれをするものとする。
(採石権の設定区域及び存続期間の承認)
第十二条 砂利の採取が河川法及びこれに基く命令(条例及び規則を含む。)の規定に基き行政庁の許可を要する土地について砂利の採取を目的とする採石権の設定を受けようとする者は、採石法第九条から第二十条までに規定する手続によつて設定する場合を除き、あらかじめ、当該採石権の設定区域及び存続期間について、当該行政庁の承認を受けなければならない。
第四章 雑則
(行為の効力)
第十三条 この法律の規定(第九条第二項及び第十条第二項において準用する採石法の規定を含む。)によつてした処分、手続その他の行為は、砂利採取業者又は土地の所有者その他土地に関して権利を有する者の承継人に対しても、その効力を有する。
(報告徴収及び立入検査)
第十四条 通商産業大臣及び通商産業局長は、この法律の施行に必要な限度において、砂利採取業者からその業務の状況に関する報告を徴し、又はその職員に、その採取場若しくは事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿書類を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
3 第一項の規定による検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(手数料)
第十五条 第十条第二項において準用する採石法第三十四条第二項の決定の申請をする者は、一件につき千円以内において政令で定める額の手数料を納付しなければならない。
(公示)
第十六条 通商産業局長は、この法律又はこの法律に基く命令の規定による処分をしたときは、省令で定める手続に従い、その要旨を公示しなければならない。
(異議の申立)
第十七条 この法律又はこの法律に基く命令の規定による通商産業局長の処分に不服のある者は、通商産業大臣に対して異議の申立をすることができる。
2 鉱業法(昭和二十五年法律第二百八十九号)第七章の規定は、前項の異議の申立に準用する。
第五章 罰則
第十八条 第九条第一項の規定による命令に違反した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
第十九条 次の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。
一 第四条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
二 第十二条の規定による承認を受けないで採石権の設定を受けた者
三 第十四条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
第二十条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。
第二十一条 第七条又は第八条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、一万円以下の過料に処する。
附 則
1 この法律の施行期日は、公布の日から起算して三月をこえない期間内において、政令で定める。
2 採石法の一部を次のように改正する。
第四条第一項中「岩石」の下に「及び砂利(砂及び玉石を含む。以下同じ。)」を加える。
第七条中「岩石」の下に「若しくは砂利」を加える。
第十条第一項第二号中「採石業」の下に「又は砂利採取業(砂利採取法(昭和三十一年法律第一号)第二条に規定するものをいう。以下同じ。)」を加え、同号を同項第三号とし、同項第一号の次に次の一号を加える。
二 砂利の採取を目的とする場合においては、その土地が海浜地又は農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)第二条第一項に規定する農地若しくは採草放牧地であるとき。
第十条第二項中「保安林」を「河川法(明治二十九年法律第七十一号)第四十七条の規定に基く命令の規定の適用を受ける河川附近の土地若しくは同法第四十八条の規定に基く命令の規定の適用を受ける河川となるべき区域若しくはその附近の土地、砂防法(明治三十年法律第二十九号)第二条の規定により指定された土地又は森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)第二十五条の規定に基き保安林として指定された森林、同法第三十条の規定に基き保安林予定森林として告示された森林、同法第四十一条第一項の規定に基き保安施設地区として指定された土地若しくは同法第四十四条において準用する同法第三十条の規定に基き保安施設地区に予定された地区として告示された土地」に改める。
第十六条第一項第二号中「岩石」の下に「若しくは砂利」を加え、同項第三号中「岩石」の下に「又は砂利」を加え、同項第四号中「岩石」の下に「又は砂利」を、「採石業」の下に「又は砂利採取業」を加え、同条第四項第一号及び第二号中「採石業」の下に「又は砂利採取業」を加える。
第二十九条第一項第二号中「採石業」の下に「又は砂利採取業」を加える。
3 土地調整委員会設置法(昭和二十五年法律第二百九十二号)の一部を次のように改正する。
第三条中「又は採石業と一般公益」を「、採石業又は砂利採取業と一般公益」に改める。
4 森林法の一部を次のように改正する。
第百九十一条第三項中「又は採石業」を「、採石業又は砂利採取業」に改める。
5 農地法の一部を次のように改正する。
第八十五条第二項中「又は採石業者」を「、採石業者又は砂利採取業者」に改める。
内閣総理大臣 鳩山一郎
農林大臣 河野一郎
通商産業大臣 石橋湛山
建設大臣 馬場元治