(目的)
第一條 この法律は、政府が再保險を行うことにより、輸出貿易において生ずる為替取引の制限その他通常の保險によつて救済することができない危險を保險する制度を確立することによつて、輸出貿易の振興を図ることを目的とする。
(再保險契約)
第二條 政府は、会計年度ごとに、保險会社(外国保險事業者に関する法律(昭和二十四年法律第百八十四号)第三條第一項の規定により大蔵大臣の免許を受けた外国保險事業者を含む。以下同じ。)を相手方として、当該保險会社がその会計年度内に引き受ける輸出信用保險を再保險する契約(以下「再保險契約」という。)を締結することができる。
2 再保險契約の保險料率は、再保險契約に基いて政府の支拂う保險金及びこの法律の施行に伴い必要となる政府の事務取扱費を償うように、政令で定める。
3 再保險契約に基いて政府の支拂うべき保險金の額は、保險会社が輸出信用保險契約に基いててん補すべき額と同額とする。
4 政府は、保險会社がこの法律(これに基く命令を含む。)の規定又は再保險契約の條項に違反したときは、再保險契約に基く保險金の全部若しくは一部を支拂わず、保險金の全部若しくは一部を返還させ、又は将来にわたつて再保險契約を解除することができる。
5 政府は、取引上の危險が大であるとき、その他この法律による再保險事業の経営上必要があるときは、将来にわたつて、再保險を引き受ける輸出信用保險の保險金額を制限し、又は再保險の引受をしないことができる。
6 政府は、再保險契約に基いて支拂うべき保險金の総額が国会の議決を経た金額をこえない範囲内において、再保險契約を締結するものとする。
(輸出信用保險)
第三條 輸出信用保險は、輸出契約(本邦内で生産、加工又は集荷される貨物を輸出する契約であつて、政令で定めるものをいう。以下同じ。)に関し左の各号の一に該当する事由によつて輸出者が受ける損失(輸出貨物について生じた損失を除く。)をてん補する損害保險とする。
一 輸出貨物の代金の決済について、輸出契約の成立後新たに外国において実施される為替取引の制限又は禁止
二 輸出契約の成立後新たに仕向国において実施される輸入の制限若しくは禁止又は輸入許可の取消
四 前各号に掲げるものの外、本邦外において生じた事由であつて、輸出契約の当事者の責に帰することができないもの。
五 外国為替及び外国貿易管理法(昭和二十四年法律第二百二十八号)による輸出の承認の取消又は輸出契約の成立後新たに実施される輸出の制限若しくは禁止
第四條 輸出信用保險においては、輸出契約で定める輸出貨物の代金の額を保險価額とする。
2 輸出信用保險契約の保險金額が保險価額に百分の八十の範囲内において政令で定める割合を乘じて得た金額をこえるときは、そのこえる部分については、その契約は、無効とする。
3 同一の輸出契約について数個の輸出信用保險契約がある場合において、その保險金額の合計額が前項に規定する金額をこえるときは、各保險者の負担額は、その各自の保險金額の割合によつて定める。
第五條 輸出信用保險において保險会社がてん補すべき額は、保險価額のうち第三條各号の一に該当する事由により輸出者が輸出契約に基いて受け取ることができなかつた金額から左の各号に掲げる金額を控除した残額に、保險金額の保險価額に対する割合を乘じて得た金額とする。
一 輸出者が輸出貨物の処分その他損失を軽減するために必要な措置を講じて回收した金額又は回收し得べき金額
二 輸出者が当該事由の発生により輸出契約の履行を免れたために支出を要しなくなつた金額
(不服の申立)
第六條 保險会社は、再保險契約に基いて政府の支拂うべき保險金の額に関する決定及び第二條第四項の規定による措置について不服があるときは、通商産業大臣に対し、その旨を申し立てることができる。
2 通商産業大臣は、前項の規定による申立を受けたときは、省令で定める手続に従い、公開による聽聞を行い、申立を受けた日から五十日以内に決定し、申立人に対しその旨を通知しなければならない。
3 前二項の規定は、保險会社が裁判所に出訴することを禁止するものと解釈されてはならない。
(輸出信用保險審議会)
第七條 通商産業省に、輸出信用保險審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 通商産業大臣(第一号については、通商産業大臣及び大蔵大臣)は、左に掲げる行為をしようとするときは、審議会に諮問しなければならない。
一 第二條第二項又は第四條第二項の規定に基く政令案の立案
3 審議会は、この法律の運用に関し、通商産業大臣又は大蔵大臣に対し、随時意見を述べることができる。
第八條 審議会は、通商産業大臣及び委員九人以内で組織する。
3 委員は、関係各庁の職員及び貿易又は保險に関し学識経験のある者のうちから、通商産業大臣が任命する。
第九條 学識経験のある者のうちから任命された委員の任期は、二年とする、但し、補欠の委員は、前任者の残任期間存在する。
第十條 審議会の庶務は、通商産業省通商振興局において処理する。