輸出信用保険法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第79号
公布年月日: 昭和28年7月24日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

輸出信用保険法の改正は、最近の輸出取引の実情を踏まえ、輸出振興のため制度の改善・追加を行うものである。新たに外国為替銀行の荷為替手形買取りに伴う危険を保証する輸出手形保険を創設し、既存の保険制度も拡充強化する。具体的には、各種保険の填補率を引き上げ、輸出代金保険の適用範囲を技術提供の対価にまで拡大。また輸出金融保険と海外広告保険の地域制限を撤廃する。これらにより、制度全般の利用度を高め、輸出振興に資することを目的としている。

参照した発言:
第16回国会 衆議院 通商産業委員会 第9号

審議経過

第16回国会

衆議院
(昭和28年7月2日)
参議院
(昭和28年7月3日)
(昭和28年7月6日)
衆議院
(昭和28年7月10日)
参議院
(昭和28年7月13日)
衆議院
(昭和28年7月14日)
参議院
(昭和28年7月15日)
(昭和28年7月17日)
衆議院
(昭和28年8月10日)
参議院
(昭和28年8月10日)
輸出信用保険法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和二十八年七月二十四日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第七十九号
輸出信用保険法の一部を改正する法律
輸出信用保険法(昭和二十五年法律第六十七号)の一部を次のように改正する。
題名を次のように改める。
輸出保険法
「輸出信用保険」を「輸出保険」に、「甲種保険」を「普通輸出保険」に、「乙種保険」を「輸出代金保険」に、「丙種保険」を「輸出金融保険」に、「丁種保険」を「海外広告保険」に、「輸出信用保険審議会」を「輸出保険審議会」に改める。
目次を次のように改める。
目次
第一章
総則(第一条―第一条の七)
第二章
普通輸出保険(第二条―第五条)
第三章
輸出代金保険(第五条の二―第五条の六)
第三章の二
輸出手形保険(第五条の七―第五条の十一)
第四章
輸出金融保険(第六条―第十条)
第五章
海外広告保険(第十一条―第十四条)
第六章
不服の申立(第十五条)
第七章
輸出保険審議会(第十六条―第十九条)
附則
第一条の二第一項中「輸出する契約」の下に「及びその貨物の輸出に伴い技術を提供する契約」を加え、同条第二項中「貨物を輸出するもの」の下に「及び技術を提供するもの」を加える。
第一条の三を次のように改める。
(輸出保険の種類)
第一条の三 輸出保険は、普通輸出保険、輸出代金保険、輸出手形保険、輸出金融保険及び海外広告保険とする。
第一条の六中「再保険若しくは」を「再保険、輸出手形保険若しくは」に改める。
第一条の七を次のように改める。
(契約の限度)
第一条の七 政府は、左の各号に掲げる金額がそれぞれ会計年度ごとに国会の議決を経た金額をこえない範囲内において、輸出保険の保険契約を締結するものとする。
一 一会計年度内に締結する保険契約により再保険する普通輸出保険の保険金額の総額
二 一会計年度内に引き受ける輸出代金保険の保険金額の総額
三 一会計年度内に締結する輸出手形保険の保険契約に基いて成立する保険関係の保険金額の総額
四 一会計年度内に締結する輸出金融保険の保険契約に基いて成立する保険関係の保険金額の総額
五 一会計年度内に引き受ける海外広告保険の保険金額の総額
第三条を次のように改める。
(保険契約)
第三条 普通輸出保険は、輸出者が保険契約の締結後生じた左の各号の一に該当する事由によつて輸出契約に基いて貨物を輸出し、若しくは輸出貨物の代金を回収することができなくなつたことにより受ける損失(輸出貨物について生じた損失を除く。)、輸出者が当該損失を受けたことによつて供給契約の当事者たる政令で定める貨物に係る生産者が供給契約に基いて当該貨物を引き渡し、若しくは当該貨物の代金を回収することができなくなつたことにより受ける損失又は輸出者が保険契約の締結後生じた左の各号の一に該当する事由による航海若しくは航路の変更により海上の運賃若しくは保険料を新たに負担すべきこととなつたことにより受ける損失をてん補する輸出保険とする。
一 外国において実施される為替取引の制限又は禁止
二 仕向国において実施される輸入の制限又は禁止
三 仕向国における戦争、革命又は内乱
四 前各号に掲げるものの外、本邦外において生じた事由であつて、輸出契約の当事者の責に帰することができないもの
五 外国為替及び外国貿易管理法(昭和二十四年法律第二百二十八号)による輸出の制限又は禁止(同法第五十三条の規定による禁止を除く。)
第五条第一項を次のように改める。
輸出者を被保険者とする普通輸出保険において保険会社がてん補すべき額は、輸出者が第三条各号の一に該当する事由により輸出することができなくなつた貨物の輸出契約に基く代金の額又は輸出契約に基く輸出貨物の代金の額のうち回収することができなくなつた金額から左の各号に掲げる金額を控除した残額又は輸出者が第三条各号の一に該当する事由による航海若しくは航路の変更により新たに負担すべきこととなつた海上の運賃若しくは保険料の増加額に、百分の九十の範囲内において政令で定める割合を乗じて得た額とする。
一 輸出貨物の処分その他損失を軽減するために必要な処置を講じて回収した金額又は回収し得べき金額
二 当該事由の発生により支出を要しなくなつた金額
三 貨物の輸出によつて取得すべきであつた利益(当該事由の発生により輸出することができなくなつた貨物に係る部分に限る。)の額
第五条の二第二項中「政令で定める貨物を輸出した場合」を「、政令で定める貨物を輸出し、又は政令で定める貨物の輸出に伴い技術を提供した場合」に、「輸出貨物の代金」を「輸出貨物の代金又は技術の対価」に改める。
第五条の三第一項中「輸出貨物の代金」を「輸出貨物の代金又は技術の対価」に、「代金の決済」を「代金又は対価の決済」に、「当該代金」を「当該代金又は対価」に改め、同条第二項中「百分の八十」を「百分の九十」に改める。
第五条の四中「代金」の下に「又は対価」を加える。
第五条の四の次に次の二条及び一章を加える。
(代金の回収)
第五条の五 保険金の支払を受けた輸出者は、当該輸出貨物の代金の回収に努めなければならない。
(回収金の納付)
第五条の六 保険金の支払を受けた輸出者は、その支払の請求をした後回収した金額から決済期以後保険金の支払を受けた日の前日までの利息を控除した残額に支払を受けた保険金の額の保険価額に対する割合を乗じて得た金額を政府に納付しなければならない。
第三章の二 輸出手形保険
(保険契約)
第五条の七 政府は、会計年度又はその半期ごとに、外国為替銀行(外国為替及び外国貿易管理法第十条第一項の認可を受けた銀行をいう。以下同じ。)を相手方として、輸出手形保険の保険契約を締結することができる。
2 輸出手形保険は、外国為替銀行が輸出貨物の代金の回収のため振り出された荷為替手形をその振出人から買い取つたことを政府に通知することにより、その買取につき政府と外国為替銀行との間に、外国為替銀行が荷為替手形の満期において支払を受けることができなかつた金額又は荷為替手形につきそ求を受けて支払つた金額をてん補すべき保険関係が成立する輸出保険とする。
(保険価額及び保険金額)
第五条の八 輸出手形保険の保険関係においては、手形金額を保険価額とし、保険価額に百分の八十を乗じて得た金額を保険金額とする。
(保険金)
第五条の九 輸出手形保険の保険関係に基いて政府がてん補すべき額は、保険価額のうち外国為替銀行が荷為替手形の満期において支払を受けることができなかつた金額又は荷為替手形につきそ求を受けて支払つた金額から左の各号に掲げる金額を控除した残額に百分の八十を乗じて得た金額とする。
一 満期後に支払を受けた金額
二 附属貨物の処分その他附属貨物に関する権利の行使により回収した金額
三 そ求権を行使して回収した金額
(手形上の権利等)
第五条の十 保険金の支払を受けた外国為替銀行は、第五条の七第二項の保険関係が成立した荷為替手形について、手形上の権利の行使(次項に規定する場合における支払を受けた保険金の額に相当する金額についてのそ求権の行使を除く。)及び附属貨物の処分その他附属貨物に関する権利の行使に努めなければならない。
2 保険金の支払を受けた外国為替銀行は、荷為替手形の満期において支払を受けることができず、又は荷為替手形につきそ求を受けたことについて荷為替手形の振出人の責に帰すべき事由がない場合は、支払を受けた保険金の額に相当する金額についてそ求権を行使してはならない。
(回収金の納付)
第五条の十一 保険金の支払を受けた外国為替銀行は、その支払の請求をした後回収した金額(前条第二項に規定する場合にそ求権を行使して回収した金額を除く。)から荷為替手形の満期以後保険金の支払を受けた日の前日までの利息を控除した残額に支払を受けた保険金の額の第五条の九に規定する残額に対する割合を乗じて得た金額を政府に納付しなければならない。
第六条第二項中「又は手形割引により」を「若しくは手形割引により」に、「又は輸出する目的」を「若しくは輸出する目的」に、「又は一部」を「若しくは一部」に改め、「譲渡することができなくなつたこと」の下に「又は当該資金によつて輸出した貨物の代金の全部若しくは一部を回収することができなくなつたこと」を加え、同項各号を次のように改める。
一 輸出契約が成立している場合において、輸出者が当該契約に基いて輸出すべき貨物を輸出するため、又は生産者が当該貨物を生産し、加工し、若しくは集荷するために必要とする資金
二 通商産業大臣が政令で定める貨物を輸出する輸出契約が確実に成立する見込があると認めた場合において、生産者が当該貨物を生産し、加工し、又は集荷するために必要とする資金
第七条及び第八条中「百分の七十五」を「百分の八十」に改める。
第十条中「百分の七十五」を「支払を受けた保険金の額の第八条に規定する残額に対する割合」に改める。
第十一条第二項中「政令で定める地域に向け」を削る。
第十五条第一項中「及び」を「又は第一条の五若しくは」に改める。
第十八条第一項中「六箇月」を「一年」に改め、「一回に限り、」を削る。
附 則
1 この法律は、昭和二十八年八月一日から施行する。
2 輸出補償法(昭和五年法律第六号)は、廃止する。
3 退職職員に支給する退職手当支給の財源に充てるための特別会計等からする一般会計への繰入及び納付に関する法律(昭和二十五年法律第六十二号)の一部を次のように改正する。
第一条中「輸出信用保険特別会計」を「輸出保険特別会計」に改める。
4 輸出信用保険特別会計法(昭和二十五年法律第六十八号)の一部を次のように改正する。
題名を次のように改める。
輸出保険特別会計法
第一条中「輸出信用保険法」を「輸出保険法」に、「輸出信用保険」を「輸出保険」に改める。
5 設備輸出為替損失補償法(昭和二十七年法律第百六十一号)の一部を次のように改正する。
第七条(見出しを含む。)中「輸出信用保険法」を「輸出保険法」に、「輸出信用保険」を「輸出保険」に改める。
6 通商産業省設置法(昭和二十七年法律第二百七十五号)の一部を次のように改正する。
第四条第二十三号を次のように改める。
二十三 輸出保険(普通輸出保険にあつては、その再保険)を行うこと。
第七条第一項第五号及び第六号中「輸出信用保険特別会計」を「輸出保険特別会計」に改める。
第八条中第十一号及び第十二号を次のように改める。
十一 輸出保険に関すること。
十二 輸出保険特別会計の経理を行うこと。
第二十五条第一項の表中「輸出信用保険審議会」を「輸出保険審議会」に、「輸出信用保険」を「輸出保険」に改める。
第二十七条第四号を次のように改める。
四 輸出保険に関すること。
7 この法律の施行前に保険会社が引き受けた甲種保険並びにこの法律の施行前に成立した甲種保険の再保険及び丙種保険の保険関係については、なお従前の例による。
大蔵大臣 小笠原三九郎
通商産業大臣 岡野清豪
内閣総理大臣 吉田茂