公害健康被害補償法
法令番号: 法律第百十一号
公布年月日: 昭和48年10月5日
法令の形式: 法律
公害健康被害補償法をここに公布する。
御名御璽
昭和四十八年十月五日
内閣総理大臣臨時代理 国務大臣 三木武夫
法律第百十一号
公害健康被害補償法
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
補償給付
第一節
通則(第三条―第十八条)
第二節
療養の給付及び療養費(第十九条―第二十四条)
第三節
障害補償費(第二十五条―第二十八条)
第四節
遺族補償費及び遺族補償一時金(第二十九条―第三十八条)
第五節
児童補償手当、療養手当及び葬祭料(第三十九条―第四十一条)
第六節
補償給付の制限等(第四十二条・第四十三条)
第七節
公害健康被害認定審査会(第四十四条・第四十五条)
第三章
公害保健福祉事業(第四十六条)
第四章
費用
第一節
費用の支弁及び財源(第四十七条―第五十一条)
第二節
汚染負荷量賦課金(第五十二条―第六十一条)
第三節
特定賦課金(第六十二条―第六十七条)
第五章
公害健康被害補償協会
第一節
総則(第六十八条―第七十三条)
第二節
役員及び職員(第七十四条―第八十四条)
第三節
評議員会(第八十五条―第八十七条)
第四節
業務(第八十八条―第九十一条)
第五節
財務及び会計(第九十二条―第百条)
第六節
監督(第百一条・第百二条)
第七節
補則(第百三条―第百五条)
第六章
不服申立て
第一節
認定又は補償給付の支給に関する処分に対する不服申立て(第百六条―第百八条)
第二節
賦課徴収に関する処分等に対する審査請求(第百九条・第百十条)
第三節
公害健康被害補償不服審査会
第一款
設置及び組織(第百十一条―第百二十五条)
第二款
審査請求の手続(第百二十六条―第百三十五条)
第七章
雑則(第百三十六条―第百四十四条)
第八章
罰則(第百四十五条―第百五十条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、事業活動その他の人の活動に伴つて生ずる相当範囲にわたる著しい大気の汚染又は水質の汚濁(水底の底質が悪化することを含む。以下同じ。)の影響による健康被害に係る損害を填補するための補償を行なうとともに、被害者の福祉に必要な事業を行なうことにより、健康被害に係る被害者の迅速かつ公正な保護を図ることを目的とする。
(地域及び疾病の指定)
第二条 この法律において「第一種地域」とは、事業活動その他の人の活動に伴つて相当範囲にわたる著しい大気の汚染が生じ、その影響による疾病(次項に規定する疾病を除く。)が多発している地域として政令で定める地域をいう。
2 この法律において「第二種地域」とは、事業活動その他の人の活動に伴つて相当範囲にわたる著しい大気の汚染又は水質の汚濁が生じ、その影響により、当該大気の汚染又は水質の汚濁の原因である物質との関係が一般的に明らかであり、かつ、当該物質によらなければかかることがない疾病が多発している地域として政令で定める地域をいう。
3 前二項の政令においては、あわせて前二項の疾病を定めなければならない。
4 内閣総理大臣は、前三項の規定に基づく政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、中央公害対策審議会並びに関係都道府県知事及び関係市町村長の意見をきかなければならない。
第二章 補償給付
第一節 通則
(補償給付の種類等)
第三条 第一条に規定する健康被害に対する補償のため支給されるこの法律による給付(以下「補償給付」という。)は、次のとおりとする。
一 療養の給付及び療養費
二 障害補償費
三 遺族補償費
四 遺族補償一時金
五 児童補償手当
六 療養手当
七 葬祭料
2 前項第二号、第三号及び第五号に掲げる補償給付は、月を単位として支給するものとし、その支払は、定期的に行なう。
(認定等)
第四条 第一種地域の全部又は一部を管轄する都道府県知事は、当該第一種地域につき第二条第三項の規定により定められた疾病にかかつていると認められる者で次の各号の一に該当するものの申請に基づき、当該疾病が当該第一種地域における大気の汚染の影響によるものである旨の認定を行なう。この場合においては、当該疾病にかかつていると認められるかどうかについては、公害健康被害認定審査会の意見をきかなければならない。
一 申請の当時当該第一種地域の区域内に住所を有しており、かつ、申請の時まで引き続き当該第一種地域の区域内に住所を有した期間(当該第一種地域につき第二条第三項の規定により定められた疾病と同一の疾病が同項の規定により定められた他の第一種地域の区域内に住所を有した期間を含む。以下この項において同じ。)が疾病の種類に応じて政令で定める期間以上であり、又は申請の時まで引き続く疾病の種類に応じて政令で定める期間内において当該第一種地域の区域内に住所を有した期間が疾病の種類に応じて政令で定める期間以上である者
二 申請の当時一日のうち政令で定める時間(以下この条において「指定時間」という。)以上の時間を当該第一種地域の区域内で過ごすことが常態であり、かつ、申請の時まで引き続き一日のうち指定時間以上の時間を当該第一種地域の区域内で過ごすことが常態であつた期間(一日のうち指定時間以上の時間を当該第一種地域につき第二条第三項の規定により定められた疾病と同一の疾病が同項の規定により定められた他の第一種地域の区域内で過ごすことが常態であつた期間を含む。以下この項において同じ。)が疾病の種類に応じて政令で定める期間以上であり、又は申請の時まで引き続く疾病の種類に応じて政令で定める期間内において一日のうち指定時間以上の時間を当該第一種地域の区域内で過ごすことが常態であつた期間が疾病の種類に応じて政令で定める期間以上である者
三 前二号に該当する者を除き、申請の当時、当該第一種地域の区域内に住所を有しており、又は指定時間以上の時間を当該第一種地域の区域内で過ごすことが常態であり、かつ、当該第一種地域の区域内に住所を有した期間と指定時間以上の時間を当該第一種地域の区域内で過ごすことが常態であつた期間とが、政令で定めるところにより、疾病の種類に応じて算定した期間以上である者
2 第二種地域の全部又は一部を管轄する都道府県知事は、当該第二種地域につき第二条第三項の規定により定められた疾病にかかつていると認められる者の申請に基づき、当該疾病が当該第二種地域に係る大気の汚染又は水質の汚濁の影響によるものである旨の認定を行なう。前項後段の規定は、この場合について準用する。
3 第一種地域又は第二種地域の全部又は一部が政令で定める市(特別区を含む。以下同じ。)の区域内にある場合には、その区域については、第一項又は前項の規定による都道府県知事の権限は、当該市の長が行なう。
4 都道府県知事(前項の政令で定める市にあつては、当該市の長とする。第四十五条から第四十八条まで及び第百四十三条を除き、以下同じ。)は、第一項又は第二項の認定(第六項、第十三条第二項、第四十九条第一項及び第二項、第五十二条第一項、第六十二条第一項並びに第百十九条第五項を除き、以下本則において単に「認定」という。)を行なつたときは、当該認定を受けた者(第六条の規定による申請に基づいて認定を受けた者を除き、以下「被認定者」という。)に対し、公害医療手帳を交付する。
5 認定は、その申請のあつた日にさかのぼつてその効力を生ずる。
6 第一種地域に係る被認定者は、同一の疾病については、重ねて第一項の認定を受けることができない。ただし、同一の疾病が第二条第三項の規定により定められた他の都道府県知事の管轄に属する第一種地域の区域内に住所を移し、又は一日のうち指定時間以上の時間をその区域内で過ごすことが常態となつた場合において、当該他の都道府県知事に対しその旨の届出をしたときは、当該疾病について現に受けている第一項の認定は、当該他の都道府県知事がした同項の認定とみなす。
第五条 認定の申請をした者が認定を受けないで死亡した場合において、その死亡した者が前条第一項又は第二項の規定により認定を受けることができる者であるときは、都道府県知事は、その死亡した者の第三十条第一項に規定する遺族若しくは第三十五条第一項各号に掲げる者又はその死亡した者について葬祭を行なう者の申請に基づき、その死亡した者が認定を受けることができる者であつた旨の決定を行なう。
2 前項の申請は、同項に規定する死亡した者の死亡の日から六月以内に限り、することができる。
3 第一項の決定があつたときは、同項に規定する死亡した者は、認定を受けたものとみなす。
第六条 第二条第三項の規定により定められた疾病(以下「指定疾病」という。)にかかつていると認められる者が当該指定疾病に関し認定の申請をしないで死亡した場合においては、第四条第一項中「かかつている」とあるのは「かかつていた」と、「ものの申請」とあるのは「ものの第三十条第一項に規定する遺族若しくは第三十五条第一項各号に掲げる者又はその死亡した者について葬祭を行なう者の申請」と、同項各号中「申請」とあるのは「死亡」と、同条第二項中「かかつている」とあるのは「かかつていた」と、「者の申請」とあるのは「者の第三十条第一項に規定する遺族若しくは第三十五条第一項各号に掲げる者又はその死亡した者について葬祭を行なう者の申請」と読み替えて、これらの規定を適用する。この場合において、これらの規定による認定の申請は、当該第一種地域又は第二種地域の指定の日から一年以内でその死亡の日から六月以内に限り、することができる。
(認定の有効期間)
第七条 認定は、指定疾病の種類に応じて政令で定める期間内に限り、その効力を有する。ただし、政令で定める指定疾病に係る認定については、この限りでない。
2 都道府県知事は、認定にあたり、有効期間が定められた指定疾病に係る被認定者の当該指定疾病が有効期間の満了前になおる見込みが少ないと認めるときは、公害健康被害認定審査会の意見をきいて、前項の規定にかかわらず、別に当該認定の有効期間を定めることができる。
(認定の更新)
第八条 前条第一項又は第二項の規定により有効期間が定められた被認定者の当該認定に係る指定疾病が有効期間の満了前になおる見込みがないときは、当該被認定者は、都道府県知事に対し、認定の更新を申請することができる。
2 都道府県知事は、前項の規定による申請があつた場合において、公害健康被害認定審査会の意見をきき当該指定疾病が有効期間の満了後においても継続すると認めるときは、当該指定疾病に係る認定を更新する。
3 前条の規定は、前項の規定により更新される認定について準用する。
(認定の取消し)
第九条 都道府県知事は、公害健康被害認定審査会の意見をききその認定に係る者の指定疾病がなおつたと認めるときは、認定を取り消すものとする。
(補償給付の請求)
第十条 補償給付の請求は、認定の申請がされた後は、認定前であつても、することができる。
2 補償給付を支給する旨の処分は、その請求のあつた日にさかのぼつてその効力を生ずる。
(支給期間及び支払期月)
第十一条 定期的に行なう補償給付の支給は、その請求があつた日の属する月の翌月から始め、支給すべき事由が消滅した日の属する月で終わる。
2 定期的に行なう補償給付は、毎年二月、四月、六月、八月、十月及び十二月の六期に、それぞれの前月及び前前月の分を支払う。ただし、前支払期月に支払うべきであつた補償給付又は支給すべき事由が消滅した場合におけるその期の補償給付は、その支払期月でない月であつても、支払うものとする。
(未支給の補償給付)
第十二条 補償給付を受けることができる者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき補償給付でまだその者に支給していなかつたものがあるときは、その者の配偶者(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む。以下この章において同じ。)、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であつて、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その支給を請求することができる。
2 未支給の補償給付を受けることができる者の順位は、前項に規定する順序による。
3 未支給の補償給付を受けることができる同順位者が二人以上あるときは、その一人がした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなし、その一人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなす。
(補償給付の免責等)
第十三条 補償給付を受けることができる者に対し、同一の事由について、損害の填補がされた場合(次条第二項に規定する場合に該当する場合を除く。)においては、都道府県知事は、その価額の限度で補償給付を支給する義務を免れる。
2 前項の規定により都道府県知事がその支給の義務を免れることとなつた補償給付が第四条第一項の認定に係るものであるときは、公害健康被害補償協会(以下「協会」という。)は、政令で定めるところにより、当該補償給付の支給の原因となつた行為に基づく損害を填補した第五十二条第一項に規定するばい煙発生施設等設置者の請求に基づき、その者に対し、その免れることとなつた補償給付の価額に相当する金額の全部又は一部を支払うことができる。
(他の法律による給付等との調整)
第十四条 補償給付の支給がされた場合においては、政令で定める法令の規定により同一の事由について当該補償給付に相当する給付等を支給すべき者は、その支給された補償給付の価額の限度で当該給付等を支給する義務を免れる。
2 前項の政令で定める法令の規定により同一の事由について補償給付に相当する給付等の支給がされた場合においては、都道府県知事は、政令で定めるところにより、その価額の限度で補償給付を支給する義務を免れる。この場合において、当該給付等を支給した者は、当該都道府県知事が補償給付を支給する義務を免れた価額の限度で、当該都道府県知事に対し、当該給付等の価額に相当する金額を求償することができる。
(不正利得の徴収)
第十五条 偽りその他不正の手段により補償給付の支給を受けた者があるときは、都道府県知事は、国税徴収の例により、その者からその補償給付の支給に要した費用に相当する金額の全部又は一部を徴収することができる。
2 前項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。
(受給権の保護)
第十六条 補償給付の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。
(公課の禁止)
第十七条 租税その他の公課は、補償給付として支給を受けた金品を標準として、課することができない。
(総理府令への委任)
第十八条 この章に定めるもののほか、認定の申請その他の補償給付に関する手続に関し必要な事項は、総理府令で定める。
第二節 療養の給付及び療養費
(療養の給付)
第十九条 都道府県知事は、その認定に係る被認定者の指定疾病について、次に掲げる療養の給付を行なう。
一 診察
二 薬剤又は治療材料の支給
三 医学的処置、手術及びその他の治療
四 病院又は診療所への収容
五 看護
六 移送
2 被認定者が前項第一号から第四号までに掲げる療養の給付を受けようとするときは、自己の選定する次条に規定する公害医療機関に公害医療手帳を提示して、当該機関から受けるものとする。
(公害医療機関)
第二十条 療養の給付を取り扱う者(以下「公害医療機関」という。)は、次に掲げるもの(都道府県知事を対し公害医療機関とならない旨を申し出たものを除く。)とする。
一 健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十三条第三項第一号に規定する保険医療機関及び保険薬局
二 国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)第三十六条第四項に規定する療養取扱機関
三 生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)第五十条第一項に規定する指定医療機関
四 前三号に掲げるもののほか、総理府令で定める病院、診療所及び薬局
(公害医療機関の義務)
第二十一条 公害医療機関は、環境庁長官の定めるところにより、療養の給付を担当しなければならない。
2 公害医療機関は、被認定者の指定疾病についての療養の給付に関し、環境庁長官又は都道府県知事の行なう指導に従わなければならない。
(診療方針及び診療報酬)
第二十二条 公害医療機関の診療方針及び診療報酬は、環境庁長官が中央公害対策審議会の意見をきいて定めるところによる。
(診療報酬の審査及び支払)
第二十三条 公害医療機関から診療報酬の請求があつたときは、都道府県又は第四条第三項の政令で定める市は、当該請求に係る診療内容及び診療報酬を審査して、診療報酬の額を決定し、これを支払うものとする。
2 都道府県又は第四条第三項の政令で定める市は、前項の規定による審査又は支払に関する事務を政令で定める者に委託することができる。
3 第一項の規定による審査をした者は、その職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。
(療養費の支給)
第二十四条 都道府県知事は、療養の給付を行なうことが困難であると認めるとき、又は被認定者が緊急その他やむを得ない理由により公害医療機関以外の病院、診療所若しくは薬局その他の者から診療、薬剤の支給若しくは手当を受けた場合において、その必要があると認めるときは、当該被認定者の請求に基づき、療養の給付に代えて、療養費を支給する。
2 都道府県知事は、被認定者が公害医療手帳を提示しないで公害医療機関から診療又は薬剤の支給を受けた場合において、公害医療手帳を提示しなかつたことが緊急その他やむを得ない理由によるものと認めるときは、当該被認定者の請求に基づき、療養の給付に代えて、療養費を支給する。
3 前二項の療養費の額は、第二十二条の規定に基づき定められた診療報酬の例により算定する。ただし、現に要した費用の額をこえることができない。
4 療養費の支給の請求は、その請求をすることができる時から二年を経過したときは、することができない。
第三節 障害補償費
(障害補償費の支給)
第二十五条 都道府県知事は、その認定に係る被認定者(政令で定める年齢に達しない者を除く。)の指定疾病による障害の程度が政令で定める障害の程度に該当するものであるときは、当該被認定者の請求に基づき、公害健康被害認定審査会の意見をきいて、その障害の程度に応じた障害補償費を支給する。
2 内閣総理大臣は、前項の障害の程度を定める政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、中央公害対策審議会の意見をきかなければならない。
(障害補償費の額)
第二十六条 障害補償費の額は、被認定者の障害補償標準給付基礎月額に相当する額にその者の障害の程度に応じた政令で定める率を乗じて得た額(指定疾病による障害の程度が前条第一項の政令で定める障害の程度のうち最も重度である障害の程度に該当するものである場合にあつては、その額と政令で定める介護加算額とを合算した額)とする。
2 障害補償標準給付基礎月額は、労働者の賃金水準その他の事情を考慮して、政令で定めるところにより、環境庁長官が、中央公害対策審議会の意見をきいて定める。
(併給の調整)
第二十七条 二以上の指定疾病に係る二以上の障害補償費を受けることができる一の被認定者に支給する当該二以上の障害補償費の額を合算した額が、当該被認定者の障害補償標準給付基礎月額(一又は二以上の指定疾病につき前条第一項の規定により介護加算額が合算された障害補償費を受けることができる者にあつては、障害補償標準給付基礎月額と同項の政令で定める介護加算額とを合算した額)をこえるときは、政令で定めるところにより、そのこえる部分に相当する額の障害補償費は、支給しない。
(障害補償費の額の改定等)
第二十八条 障害補償費の支給を受けている者は、当該指定疾病による障害の程度につき、指定疾病の種類に応じて政令で定める期間ごとに、都道府県知事の診査を受けなければならない。都道府県知事が、障害補償費の支給に関し特に必要があると認めて診査を受けるべき旨を命じたときも、同様とする。
2 都道府県知事は、前項の診査の結果、その者の指定疾病による障害の程度が従前の障害の程度と異なると認める場合においては、公害健康被害認定審査会の意見をきいて、新たな障害の程度が第二十五条第一項の政令で定める他の障害の程度に該当するときは新たに該当するに至つた同項の政令で定める障害の程度に応じて障害補償費の額を改定し、新たな障害の程度が同項の政令で定める障害の程度に該当しないときは障害補償費の支給を打ち切るものとする。
3 障害補償費の支給を受けている者は、都道府県知事に対し、当該指定疾病による障害の程度が増進したことを理由として、障害補償費の額の改定を請求することができる。
4 前項の規定による請求があつた場合においては、都道府県知事は、その者の指定疾病による障害の程度を診査しなければならない。第二項の規定は、この場合について準用する。
5 障害補償費の額の算定の基礎となる障害補償標準給付基礎月額に変更があつたときは、障害補償費の額は、改定されるものとする。
6 第二項(第四項において準用する場合を含む。)又は前項の規定により障害補償費の額が改定されたときは、改定後の額による障害補償費の支給は、改定された日の属する月の翌月から始めるものとする。
7 障害補償費の支給を受けている者が、正当な理由がなく第一項の診査を受けなかつたときは、都道府県知事は、障害補償費の支給を一時差し止めることができる。
第四節 遺族補償費及び遺族補償一時金
(遺族補償費の支給)
第二十九条 都道府県知事は、その認定に係る被認定者が当該認定に係る指定疾病に起因して死亡したときは、死亡した被認定者の遺族の請求に基づき、公害健康被害認定審査会の意見をきいて、遺族補償費を支給する。
2 指定疾病にかかつている者が認定を申請しないで当該指定疾病に起因して死亡し、第六条の規定による申請に基づいて認定がされた場合において、その遺族の請求があつたときも、前項と同様とする。
3 遺族補償費の支給は、政令で定める期間を限度として行なう。
4 被認定者又は第六条の規定による申請に基づいて行なわれた認定に係る死亡者(以下「認定死亡者」という。)が二以上の指定疾病に起因して死亡したときは、当該指定疾病に係る認定を行なつた一の都道府県知事に対してのみ、遺族補償費を請求することができる。
5 二以上の指定疾病に起因して死亡した者に係る遺族補償費の支給に要する費用の支弁の方法は、政令で定める。
(遺族補償費を受けることができる遺族の範囲及び順位)
第三十条 遺族補償費を受けることができる遺族は、被認定者又は認定死亡者の配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹であつて、被認定者又は認定死亡者の死亡の当時その者によつて生計を維持していたもの(死亡の当時その者によつて生計を維持していたものがないときは、認定の申請の当時その者によつて生計を維持していたもの)とする。ただし、妻(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む。)以外の者にあつては、被認定者又は認定死亡者の死亡の時に次に掲げる要件に該当した場合に限るものとする。
一 夫(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む。)、父母又は祖父母については、六十歳以上であること。
二 子、孫又は兄弟姉妹については、十八歳未満又は六十歳以上であること。
2 被認定者又は認定死亡者の死亡の時に胎児であつた子が出生したときは、前項の規定の適用については、将来に向かつて、その子は、被認定者又は認定死亡者の死亡の当時その者によつて生計を維持していた子とみなす。
3 遺族補償費を受けることができる遺族の順位は、配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹の順序とする。
(遺族補償費の額)
第三十一条 遺族補償費の額は、当該死亡した被認定者又は認定死亡者の遺族補償標準給付基礎月額に相当する額とする。
2 遺族補償標準給付基礎月額は、労働者の賃金水準、被認定者又は認定死亡者が死亡しなかつたとすれば通常支出すると見込まれる経費その他の事情を考慮して、政令で定めるところにより、環境庁長官が、中央公害対策審議会の意見をきいて定める。
3 遺族補償費を受けることができる同順位の遺族が二人以上ある場合における各人の遺族補償費の額は、第一項の額をその人数で除して得た額とする。
(遺族補償費の額の改定)
第三十二条 遺族補償費を受けることができる同順位の遺族の数に増減を生じたときは、遺族補償費の額を改定する。
2 第二十八条第五項及び第六項の規定は遺族補償標準給付基礎月額に変更があつた場合について、同項の規定は前項の規定により遺族補償費の額が改定された場合について準用する。
(遺族補償費が支給されない場合)
第三十三条 遺族補償費を受けることができる者が次の各号の一に該当するに至つたときは、その者に対する遺族補償費は、支給しない。
一 死亡したとき。
二 婚姻(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む。)をしたとき。
三 直系血族又は直系姻族以外の者の養子(届出をしていないが、事実上養子縁組関係と同様の事情にある者を含む。)となつたとき。
四 離縁によつて、死亡した被認定者又は認定死亡者との親族関係が終了したとき。
五 子、孫又は兄弟姉妹にあつては、十八歳に達したとき。
(後順位者からの遺族補償費の請求)
第三十四条 遺族補償費を受けることができる先順位者がその請求をしないで死亡した場合においては、次順位者が遺族補償費を請求することができる。前条の規定により遺族補償費が支給されないこととなつた場合において、同順位者がなくて後順位者があるときも、同様とする。
(遺族補償一時金の支給)
第三十五条 都道府県知事は、その認定に係る被認定者が当該認定に係る指定疾病に起因して死亡した場合において、その死亡の時に遺族補償費を受けることができる遺族がないときは、次に掲げる者の請求に基づき、公害健康被害認定審査会の意見をきいて、遺族補償一時金を支給する。
一 配偶者
二 被認定者の死亡の当時その者によつて生計を維持していた子、父母、孫及び祖父母
三 被認定者の認定の申請の当時その者によつて生計を維持していた子、父母、孫及び祖父母
四 前二号に該当しない子、父母、孫及び祖父母並びに兄弟姉妹
2 第二十九条第二項、第四項及び第五項の規定は、遺族補償一時金の支給について準用する。
3 遺族補償費を受けていた者が、第三十三条各号の一に該当することにより遺族補償費を支給されないこととなつた場合において、他に遺族補償費を受けることができる遺族がなく、かつ、被認定者又は認定死亡者の死亡により支給された遺族補償費の額の合計額がその死亡した者について次条第一項の規定により算定した額に満たないときは、第一項各号に掲げる者の請求に基づき、遺族補償一時金を支給する。
4 遺族補償一時金を受けることができる者の順位は、第一項各号の順序により、同項第二号から第四号までに掲げる者のうちにあつては、それぞれ当該各号に掲げる順序による。
(遺族補償一時金の額)
第三十六条 前条第一項の規定により支給する遺族補償一時金の額は、当該死亡した被認定者又は認定死亡者の遺族補償標準給付基礎月額に相当する額に政令で定める月数を乗じて得た額に相当する額とする。
2 前条第三項の規定により支給する遺族補償一時金の額は、当該死亡した被認定者又は認定死亡者について前項の規定により算定した額から当該被認定者又は認定死亡者の死亡により支給された遺族補償費の額の合計額を控除した額に相当する額とする。
3 第三十一条第三項の規定は、前二項の遺族補償一時金の額について準用する。
(遺族補償費等の請求の期限)
第三十七条 遺族補償費又は遺族補償一時金の支給の請求は、被認定者又は認定死亡者が死亡した時(第三十四条後段の規定による請求により支給する遺族補償費及び第三十五条第三項の規定により支給する遺族補償一時金にあつては、従前の遺族補償費を受けることができる者が第三十三条各号の一に該当するに至つた時)から二年を経過したときは、することができない。
(遺族補償費等の支給の制限)
第三十八条 遺族補償費又は遺族補償一時金は、被認定者又は認定死亡者を故意に死亡させた者には、支給しない。被認定者又は認定死亡者の死亡前に、その者の死亡によつて遺族補償費又は遺族補償一時金を受けることができる先順位又は同順位となるべき者を故意に死亡させた者についても、同様とする。
2 遺族補償費は、遺族補償費を受けることができる先順位又は同順位の者を故意に死亡させた者には、以後支給しない。
第五節 児童補償手当、療養手当及び葬祭料
(児童補償手当の支給)
第三十九条 都道府県知事は、その認定に係る被認定者で第二十五条第一項の政令で定める年齢に達しないものの指定疾病による障害の程度が政令で定める障害の程度に該当するものであるときは、当該被認定者を養育している者の請求に基づき、公害健康被害認定審査会の意見をきいて、その障害の程度に応じた政令で定める額(指定疾病による障害の程度が当該政令で定める障害の程度のうち最も重度である障害の程度に該当するものである場合にあつては、その額と第二十六条第一項の政令で定める介護加算額とを合算した額)の児童補償手当を支給する。
2 内閣総理大臣は、前項の障害の程度を定める政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、中央公害対策審議会の意見をきかなければならない。
3 第二十七条及び第二十八条(第五項を除く。)の規定は、児童補償手当の支給について準用する。
(療養手当の支給)
第四十条 都道府県知事は、その認定に係る被認定者が当該認定に係る指定疾病について第十九条第一項各号に掲げる療養を受けており、かつ、その病状の程度が政令で定める病状の程度に該当するものであるときは、当該被認定者の請求に基づき、その病状の程度に応じた政令で定める額の療養手当を支給する。
2 第二十四条第四項の規定は、療養手当の支給の請求について準用する。
(葬祭料の支給)
第四十一条 都道府県知事は、その認定に係る被認定者が当該認定に係る指定疾病に起因して死亡したときは、葬祭を行なう者の請求に基づき、政令で定める額の葬祭料を支給する。
2 第二十九条第二項、第四項及び第五項並びに第三十七条の規定は、葬祭料の支給及びその請求について準用する。
第六節 補償給付の制限等
(補償給付の制限)
第四十二条 被認定者又は被認定者で第二十五条第一項の政令で定める年齢に達しないものを養育している者が、正当な理由がなく療養に関する指示に従わなかつたときは、都道府県知事は、補償給付の全部又は一部を支給しないことができる。
(補償給付の額についての他原因の参酌)
第四十三条 都道府県知事は、第三条第一項第二号から第七号までに掲げる補償給付の額を定め、又はその額を改定するにあたり、被認定者又は認定死亡者に係る指定疾病による障害が発生し、若しくはその程度が増進したこと、指定疾病がなおらないこと又は指定疾病に起因して死亡したことにつき他の原因があると認めるときは、公害健康被害認定審査会の意見をきいて、当該他の原因を参酌することができる。
第七節 公害健康被害認定審査会
(設置)
第四十四条 この法律によりその権限に属させられた事項を行なわせるため、第一種地域又は第二種地域の全部又は一部をその区域に含む都道府県又は第四条第三項の政令で定める市に、公害健康被害認定審査会を置く。
(組織等)
第四十五条 公害健康被害認定審査会は、委員十五人以内で組織する。
2 委員は、医学、法律学その他公害に係る健康被害の補償に関し学識経験を有する者のうちから、都道府県知事又は第四条第三項の政令で定める市の長が任命する。
3 委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。
4 第一項及び第二項に定めるもののほか、公害健康被害認定審査会の組織、運営その他公害健康被害認定審査会に関し必要な事項は、都道府県又は第四条第三項の政令で定める市の条例で定める。
第三章 公害保健福祉事業
第四十六条 都道府県知事又は第四条第三項の政令で定める市の長は、指定疾病によりそこなわれた被認定者の健康を回復させ、その回復した健康を保持させ、及び増進させる等被認定者の福祉を増進し、並びに第一種地域又は第二種地域における当該地域に係る指定疾病による被害を予防するために必要なリハビリテーションに関する事業、転地療養に関する事業その他の政令で定める公害保健福祉事業を行なうものとする。
2 都道府県知事又は第四条第三項の政令で定める市の長は、前項の公害保健福祉事業を行なおうとするときは、環境庁長官の承認を受けなければならない。
第四章 費用
第一節 費用の支弁及び財源
(費用の支弁)
第四十七条 都道府県又は第四条第三項の政令で定める市は、次に掲げる費用を支弁する。
一 当該都道府県知事又は当該市の長が行なう補償給付の支給(第十四条第二項の規定による求償に対する支払を含む。以下この章において同じ。)に要する費用
二 この法律又はこの法律に基づく命令の規定により当該都道府県知事又は当該市の長が行なう事務の処理に要する費用
(納付金)
第四十八条 前条の規定により都道府県又は第四条第三項の政令で定める市が支弁する前条第一号に掲げる費用は、政令で定めるところにより、協会が当該都道府県又は第四条第三項の政令で定める市に対して納付する納付金をもつて充てる。
2 都道府県知事又は第四条第三項の政令で定める市の長が第四十六条の規定に基づいて行なう公害保健福祉事業に要する費用のうちその四分の三に相当する額については、政令で定めるところにより、協会が当該都道府県又は第四条第三項の政令で定める市に対して納付する納付金をもつて充てる。
(納付金の財源)
第四十九条 前条の規定による納付金のうち、第四条第一項の認定に係る被認定者及び認定死亡者に関する補償給付の支給に要する費用に充てるためのものの全部並びに第一種地域に係る指定疾病による被害に関して行なう公害保健福祉事業に要する費用に充てるためのものの三分の二については、第五十二条第一項の規定により協会が徴収する汚染負荷量賦課金のほか、別に法律で定めるところにより徴収される金員をもつて充て、第一種地域に係る指定疾病による被害に関して行なう公害保健福祉事業に要する費用に充てるためのものの三分の一については、第五十一条の規定に基づく政府の補助金をもつて充てる。
2 前条の規定による納付金のうち、第四条第二項の認定に係る被認定者及び認定死亡者に関する補償給付の支給に要する費用に充てるためのものの全部並びに第二種地域に係る指定疾病による被害に関して行なう公害保健福祉事業に要する費用に充てるためのものの三分の二については、第六十二条第一項の規定により協会が徴収する特定賦課金をもつて充て、第二種地域に係る指定疾病による被害に関して行なう公害保健福祉事業に要する費用に充てるためのものの三分の一については、第五十一条の規定に基づく政府の補助金をもつて充てる。
3 第一項の規定により前条の規定による納付金に充てるべき汚染負荷量賦課金及び別に法律で定めるところにより徴収される金員の配分比率は、第五十二条第一項に規定するばい煙発生施設等設置者その他の者の第一種地域に係る指定疾病に影響を与える大気の汚染の原因である物質の排出の状況その他の事情を勘案して、政令で定める。
(交付金)
第五十条 政府は、政令で定めるところにより、都道府県又は第四条第三項の政令で定める市に対し、第四十七条の規定により当該都道府県又は当該市が支弁する同条第二号に掲げる費用の二分の一に相当する金額を交付する。
(補助金)
第五十一条 政府は、協会に対し、第四十八条第二項の規定による納付金の三分の一に相当する金額を補助するものとする。
第二節 汚染負荷量賦課金
(汚染負荷量賦課金の徴収及び納付義務)
第五十二条 協会は、第四十八条の規定による納付金のうち、第四条第一項の認定に係る被認定者及び認定死亡者に関する補償給付の支給に要する費用並びに第一種地域に係る指定疾病による被害に関して行なう公害保健福祉事業に要する費用に充てるためのもの、第十三条第二項の規定による支払に要する費用並びに協会が行なう事務の処理に要する費用の一部に充てるため、大気汚染防止法(昭和四十三年法律第九十七号)第二条第二項に規定するばい煙発生施設(鉱山保安法(昭和二十四年法律第七十号)第二条第二項本文に規定する鉱山に設置される施設でこれに相当するものを含む。第六十二条第一項において同じ。)のうち第一種地域に係る指定疾病に影響を与える大気の汚染の原因である政令で定める物質を排出するものが設置される工場又は事業場で、最大排出ガス量が政令で定める地域の区分に応じて政令で定める量以上であるものを、各年度(毎年四月一日から翌年三月三十一日までをいう。以下この章において同じ。)の初日において設置している事業者(以下「ばい煙発生施設等設置者」という。)から、毎年度、汚染負荷量賦課金を徴収する。
2 ばい煙発生施設等設置者は、汚染負荷量賦課金を納付する義務を負う。
(汚染負荷量賦課金の額)
第五十三条 各ばい煙発生施設等設置者から徴収する汚染負荷量賦課金の額は、当該ばい煙発生施設等設置者が排出する前条第一項の政令で定める各物質ごとの単位排出量当たりの賦課金額に前年度の初日の属する年における年間排出量を乗じて得た額の合計額とする。
2 前項の年間排出量の算定の方式は、総理府令、通商産業省令で定める。
(単位排出量当たりの賦課金額)
第五十四条 前条第一項の単位排出量当たりの賦課金額は、第三条第一項に掲げる補償給付の種類ごとの受給者見込数及び平均受給金額の見込額その他の事項に基づき算定した第五十二条第一項に規定する費用に充てるための汚染負荷量賦課金の総額として当該年度において必要であると見込まれる金額とばい煙発生施設等設置者が排出する同項の政令で定める各物質ごとの前年度の初日の属する年における総排出量とを基礎として、当該物質による大気の汚染の状況に応じた地域の別に従い、政令で定める。
(汚染負荷量賦課金の納付等)
第五十五条 ばい煙発生施設等設置者は、各年度ごとに、汚染負荷量賦課金を、総理府令、通商産業省令で定める事項を記載した申告書に添えて、その年度の初日から四十五日以内に協会に納付しなければならない。
2 前項の申告書には、第五十二条第一項の政令で定める物質の年間排出量を証する書類として総理府令、通商産業省令で定める書類を添附しなければならない。
3 協会は、ばい煙発生施設等設置者が第一項に規定する期間内に同項の申告書を提出しないとき、又は同項の申告書に総理府令、通商産業省令で定める事項の記載の誤りがあると認めたときは、汚染負荷量賦課金の額を決定し、これをばい煙発生施設等設置者に通知する。
4 前項の規定による通知を受けたばい煙発生施設等設置者は、汚染負荷量賦課金を納付していないときは同項の規定により協会が決定した汚染負荷量賦課金の全額を、納付した汚染負荷量賦課金の額が同項の規定により協会が決定した汚染負荷量賦課金の額に足りないときはその不足額を、その通知を受けた日から十五日以内に協会に納付しなければならない。
5 ばい煙発生施設等設置者が納付した汚染負荷量賦課金の額が、第三項の規定により協会が決定した汚染負荷量賦課金の額をこえる場合には、協会は、そのこえる額について、未納の汚染負荷量賦課金その他この節の規定による徴収金があるときはこれに充当し、なお残余があれば還付し、未納の徴収金がないときはこれを還付しなければならない。
(汚染負荷量賦課金の延納)
第五十六条 協会は、ばい煙発生施設等設置者の申請に基づき、その者の納付すべき汚染負荷量賦課金を延納させることができる。
(督促及び滞納処分)
第五十七条 汚染負荷量賦課金その他この節の規定による徴収金を納付しない者があるときは、協会は、期限を指定して督促しなければならない。
2 前項の規定により督促するときは、協会は、納付義務者に対して督促状を発する。
3 前項の督促状により指定する第一項の期限は、督促状を発する日から起算して十日以上経過した日でなければならない。
4 協会は、第一項の規定による督促を受けた者がその指定の期限までに汚染負荷量賦課金その他この節の規定による徴収金を完納しないときは、納付義務者の住所地又はその財産の所在地の市町村(特別区を含む。以下この条において同じ。)に対して、その徴収を請求することができる。
5 市町村は、前項の規定による徴収の請求を受けたときは、地方税の滞納処分の例により、滞納処分をすることができる。この場合においては、協会は、徴収金額の百分の四に相当する金額を当該市町村に交付しなければならない。
6 市町村が第四項の規定による徴収の請求を受けた日から三十日以内に滞納処分に着手せず、又は九十日以内にこれを結了しないときは、協会は、環境庁長官及び通商産業大臣の認可を受けて、国税滞納処分の例により、滞納処分をすることができる。
(延滞金)
第五十八条 前条第一項の規定により汚染負荷量賦課金の納付を督促したときは、協会は、その督促に係る汚染負荷量賦課金の額につき年十四・五パーセントの割合で、納付期限の翌日からその完納又は財産差押えの日の前日までの日数により計算した延滞金を徴収する。ただし、督促に係る汚染負荷量賦課金の額が千円未満であるときは、この限りでない。
2 前項の場合において、汚染負荷量賦課金の額の一部につき納付があつたときは、その納付の日以降の期間に係る延滞金の額の計算の基礎となる汚染負荷量賦課金の額は、その納付のあつた汚染負荷量賦課金の額を控除した額とする。
3 延滞金の計算において、前二項の汚染負荷量賦課金の額に千円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。
4 前三項の規定によつて計算した延滞金の額に百円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。
5 延滞金は、次の各号の一に該当する場合には、徴収しない。ただし、第四号の場合には、その執行を停止し、又は猶予した期間に対応する部分の金額に限る。
一 督促状に指定した期限までに汚染負荷量賦課金を完納したとき。
二 納付義務者の住所又は居所がわからないため、公示送達の方法によつて督促したとき。
三 延滞金の額が百円未満であるとき。
四 汚染負荷量賦課金について滞納処分の執行を停止し、又は猶予したとき。
五 汚染負荷量賦課金を納付しないことについてやむを得ない理由があると認められるとき。
(先取特権の順位)
第五十九条 汚染負荷量賦課金その他この節の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。
(徴収金の徴収手続)
第六十条 汚染負荷量賦課金その他この節の規定による徴収金は、この節に別段の定めがある場合を除き、国税徴収の例により徴収する。
(総理府令、通商産業省令への委任)
第六十一条 この節に定めるもののほか、汚染負荷量賦課金その他この節の規定による徴収金に関し必要な事項は、総理府令、通商産業省令で定める。
第三節 特定賦課金
(特定賦課金の徴収及び納付義務)
第六十二条 協会は、第四十八条の規定による納付金のうち、第四条第二項の認定に係る被認定者及び認定死亡者に関する補償給付の支給に要する費用並びに第二種地域に係る指定疾病による被害に関して行なう公害保健福祉事業に要する費用に充てるためのもの並びに協会が行なう事務の処理に要する費用の一部に充てるため、第二種地域に係る指定疾病に影響を与える大気の汚染又は水質の汚濁の原因である物質を排出した大気汚染防止法第二条第二項に規定するばい煙発生施設、同法第十七条第一項に規定する特定施設又は水質汚濁防止法(昭和四十五年法律第百三十八号)第二条第二項に規定する特定施設の設置者(過去の設置者を含む。以下「特定施設等設置者」という。)から、毎年度、特定賦課金を徴収する。
2 特定施設等設置者は、特定賦課金を納付する義務を負う。
(特定賦課金の算定方法)
第六十三条 各特定施設等設置者から徴収する特定賦課金の額の算定方法は、当該第二種地域に係る指定疾病に影響を与えた大気の汚染又は水質の汚濁の原因である物質の排出量その他の事情を考慮して、政令で定める。
2 内閣総理大臣及び通商産業大臣は、前項の規定に基づき政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、中央公害対策審議会の意見をきかなければならない。
(特定賦課金の額の決定、通知等)
第六十四条 協会は、前条第一項の政令で定める特定賦課金の算定方法に従い、各特定施設等設置者が納付すべき特定賦課金の額を決定し、当該各特定施設等設置者に対し、その者が納付すべき特定賦課金の額及び納付すべき期限その他必要な事項を通知しなければならない。
2 前項の規定により特定賦課金の額が定められた後、特定賦課金の額を変更する必要が生じたときは、協会は、当該各特定施設等設置者が納付すべき特定賦課金の額を変更し、当該各特定施設等設置者に対し、変更後の特定賦課金の額を通知しなければならない。
3 協会は、特定施設等設置者が納付した特定賦課金の額が、前項の規定による変更後の特定賦課金の額に満たない場合には、その不足する額について、同項の規定による通知とともに納付すべき期限その他必要な事項を通知し、同項の規定による変更後の特定賦課金の額をこえる場合には、そのこえる額について、未納の特定賦課金その他この節の規定による徴収金があるときはこれに充当し、なお残余があれば還付し、未納の徴収金がないときはこれを還付しなければならない。
(共同納付の場合の特例)
第六十五条 協会は、特定施設等設置者の全部又は一部から当該各特定施設等設置者が納付すべき特定賦課金について納付の方法を明らかにして共同で納付する旨の申出があり、これを承認したときは、前条第一項の規定にかかわらず、当該各特定施設等設置者に係る特定賦課金の額を定めないものとする。
2 前項の規定による承認を受けた特定施設等設置者が当該第二種地域に係る特定賦課金を納付すべき特定施設等設置者の一部であるときは、協会は、特定賦課金の額の決定に準じて、それらの特定施設等設置者が共同で納付すべき特定賦課金の額を定めなければならない。
3 第一項の規定による承認を受けた特定施設等設置者が当該第二種地域に係る特定賦課金を納付すべき特定施設等設置者の全部である場合にはその納付すべき特定賦課金の総額を、その一部である場合には前項の規定により定められた額を共同で納付したときは、当該特定施設等設置者は、その特定賦課金を納付したものとみなす。
4 前条第二項及び第三項の規定は、第二項の共同で納付すべき特定賦課金について準用する。
(準用)
第六十六条 第五十六条から第六十条までの規定は、特定賦課金について準用する。
(総理府令、通商産業省令への委任)
第六十七条 この節に定めるもののほか、特定賦課金その他この節の規定による徴収金に関し必要な事項は、総理府令、通商産業省令で定める。
第五章 公害健康被害補償協会
第一節 総則
(目的)
第六十八条 協会は、ばい煙発生施設等設置者からの汚染負荷量賦課金の徴収及び特定施設等設置者からの特定賦課金の徴収、第十三条第二項の規定による支払並びに第四十八条の規定による納付金の納付に関する業務を行なうことを目的とする。
(法人格)
第六十九条 協会は、法人とする。
(事務所)
第七十条 協会は、主たる事務所を東京都に置く。
2 協会は、環境庁長官及び通商産業大臣の認可を受けて、必要な地に従たる事務所を置くことができる。
(登記)
第七十一条 協会は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(名称の使用制限)
第七十二条 協会でない者は、公害健康被害補償協会という名称を用いてはならない。
(民法の準用)
第七十三条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条及び第五十条の規定は、協会について準用する。
第二節 役員及び職員
(役員)
第七十四条 協会に、役員として、会長一人、理事三人以内及び監事一人を置く。
(役員の職務及び権限)
第七十五条 会長は、協会を代表し、その業務を総理する。
2 理事は、会長の定めるところにより、協会を代表し、会長を補佐して協会の業務を掌理し、会長に事故があるときはその職務を代理し、会長が欠員のときはその職務を行なう。
3 監事は、協会の業務を監査する。
4 監事は、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、会長又は環境庁長官及び通商産業大臣に意見を提出することができる。
(役員の任命)
第七十六条 会長及び監事は、環境庁長官及び通商産業大臣が任命する。
2 理事は、環境庁長官及び通商産業大臣の認可を受けて、会長が任命する。
(役員の任期)
第七十七条 役員の任期は、四年とする。ただし、補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 役員は、再任されることができる。
(役員の欠格条項)
第七十八条 政府又は地方公共団体の職員(非常勤の者を除く。)は、役員となることができない。
(役員の解任)
第七十九条 環境庁長官及び通商産業大臣又は会長は、それぞれその任命に係る役員が前条の規定により役員となることができない者に該当するに至つたときは、その役員を解任しなければならない。
2 環境庁長官及び通商産業大臣又は会長は、それぞれその任命に係る役員が次の各号の一に該当するとき、その他役員たるに適しないと認めるときは、その役員を解任することができる。
一 心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき。
二 職務上の義務違反があるとき。
3 会長は、前項の規定により理事を解任しようとするときは、環境庁長官及び通商産業大臣の認可を受けなければならない。
(役員の兼職禁止)
第八十条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。ただし、環境庁長官及び通商産業大臣の承認を受けたときは、この限りでない。
(代表権の制限)
第八十一条 協会と会長又は第七十五条第二項の規定により協会を代表する理事との利益が相反する事項については、会長及び理事は、代表権を有しない。この場合においては、監事が協会を代表する。
(代理人の選任)
第八十二条 会長は、理事又は協会の職員のうちから、協会の従たる事務所の業務の一部に関し一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する代理人を選任することができる。
(職員の任命)
第八十三条 協会の職員は、会長が任命する。
(役員及び職員の公務員たる性質)
第八十四条 協会の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
第三節 評議員会
(評議員会)
第八十五条 協会に、評議員会を置く。
2 評議員会は、会長の諮問に応じ、協会の業務の運営に関する重要事項を調査審議する。
3 評議員会は、前項の事項に関し、会長に意見を述べることができる。
4 評議員会は、評議員二十人以内で組織する。
(評議員)
第八十六条 評議員は、ばい煙発生施設等設置者若しくは特定施設等設置者の加入している団体又はその連合団体の役員及び協会の業務の適正な運営に必要な学識経験を有する者のうちから、環境庁長官及び通商産業大臣が任命する。
2 評議員の任期は、二年とする。
3 第七十七条第一項ただし書及び第二項並びに第七十九条第二項の規定は、評議員について準用する。
(総理府令、通商産業省令への委任)
第八十七条 前二条に定めるもののほか、評議員会の組織及び運営に関し必要な事項は、総理府令、通商産業省令で定める。
第四節 業務
(業務の範囲)
第八十八条 協会は、第六十八条の目的を達成するため、次の業務を行なう。
一 ばい煙発生施設等設置者及び特定施設等設置者からの汚染負荷量賦課金及び特定賦課金の徴収
二 第十三条第二項の規定による支払
三 第四十八条の規定による納付金の納付
四 前三号に掲げる業務に附帯する業務
(業務の委託)
第八十九条 協会は、環境庁長官及び通商産業大臣の認可を受けて、前条第一号に掲げる業務(汚染負荷量賦課金及び特定賦課金の決定及び滞納処分を除く。)の一部を、ばい煙発生施設等設置者又は特定施設等設置者の加入している団体で政令で定めるものに委託することができる。
2 前項の認可があつた場合においては、同項の政令で定める団体は、他の法律の規定にかかわらず、同項の規定による委託を受けて、当該業務を行なうことができる。
(業務方法書)
第九十条 協会は、業務開始の際、業務方法書を作成し、環境庁長官及び通商産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の業務方法書に記載すべき事項は、総理府令、通商産業省令で定める。
(資料の提出命令)
第九十一条 協会は、第八十八条第一号に掲げる業務に関し必要があると認めるときは、ばい煙発生施設等設置者又は特定施設等設置者に対し、文書その他の物件の提出を求めることができる。
第五節 財務及び会計
(事業年度)
第九十二条 協会の事業年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。
(予算等の認可)
第九十三条 協会は、毎事業年度、予算、事業計画及び資金計画を作成し、当該事業年度の開始前に、環境庁長官及び通商産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(財務諸表)
第九十四条 協会は、毎事業年度、財産目録、貸借対照表及び損益計算書(以下この条において「財務諸表」という。)を作成し、当該事業年度の終了後三月以内に環境庁長官及び通商産業大臣に提出し、その承認を受けなければならない。
2 協会は、前項の規定により財務諸表を環境庁長官及び通商産業大臣に提出するときは、これに当該事業年度の事業報告書及び予算の区分に従い作成した決算報告書並びに事業報告書、財務諸表及び決算報告書に関する監事の意見書を添附しなければならない。
(利益及び損失の処理)
第九十五条 協会は、毎事業年度、損益計算において利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめ、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならない。
2 協会は、毎事業年度、損益計算において損失を生じたときは、前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならない。
(借入金)
第九十六条 協会は、環境庁長官及び通商産業大臣の認可を受けて、長期借入金又は短期借入金をすることができる。
2 前項の規定による短期借入金は、当該事業年度内に償還しなければならない。ただし、資金の不足のため償還することができないときは、その償還することができない金額に限り、環境庁長官及び通商産業大臣の認可を受けて、これを借り換えることができる。
3 前項ただし書の規定により借り換えた短期借入金は、一年以内に償還しなければならない。
(補助金)
第九十七条 政府は、予算の範囲内において、協会に対し、その事務の処理に要する費用を補助することができる。
(余裕金の運用)
第九十八条 協会は、次の方法によるほか、業務上の余裕金を運用してはならない。
一 国債その他環境庁長官及び通商産業大臣の指定する有価証券の保有
二 銀行その他環境庁長官及び通商産業大臣の指定する金融機関への預金又は郵便貯金
三 信託会社又は信託業務を営む銀行への金銭信託
(給与及び退職手当の支給の基準)
第九十九条 協会は、その役員及び職員に対する給与及び退職手当の支給の基準を定めようとするときは、環境庁長官及び通商産業大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(総理府令、通商産業省令への委任)
第百条 この法律に定めるもののほか、協会の財務及び会計に関し必要な事項は、総理府令、通商産業省令で定める。
第六節 監督
(監督)
第百一条 協会は、環境庁長官及び通商産業大臣が監督する。
2 環境庁長官及び通商産業大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、協会に対し、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(報告の徴収等)
第百二条 環境庁長官及び通商産業大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、協会若しくは第八十九条第一項の規定による委託を受けた者(以下「受託者」という。)に対し、その業務に関し報告を求め、又はその職員に、協会若しくは受託者の事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる。ただし、受託者に対しては、当該受託業務の範囲内に限る。
2 前項の規定により検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
3 第一項の規定による検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第七節 補則
(解散)
第百三条 協会の解散については、別に法律で定める。
(大蔵大臣との協議)
第百四条 環境庁長官及び通商産業大臣は、次の場合には、大蔵大臣に協議しなければならない。
一 第八十九条第一項、第九十条第一項、第九十三条又は第九十六条第一項若しくは第二項ただし書の認可をしようとするとき。
二 第九十四条第一項又は第九十九条の承認をしようとするとき。
三 第九十八条第一号又は第二号の規定による指定をしようとするとき。
2 内閣総理大臣及び通商産業大臣は、第九十条第二項又は第百条の総理府令、通商産業省令を定めようとするときは、大蔵大臣に協議しなければならない。
(他の法令の準用)
第百五条 不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)及び政令で定めるその他の法令については、政令で定めるところにより、協会を国の行政機関とみなして、これらの法令を準用する。
第六章 不服申立て
第一節 認定又は補償給付の支給に関する処分に対する不服申立て
(異議申立て及び審査請求)
第百六条 認定又は補償給付の支給に関する処分に不服がある者は、その処分をした都道府県知事に対し、異議申立てをすることができる。
2 認定又は補償給付の支給に関する処分に不服がある者のする審査請求は、公害健康被害補償不服審査会に対してしなければならない。
3 第一項の異議申立て及び前項の審査請求は、時効の中断に関しては、裁判上の請求とみなす。
(行政不服審査法の適用関係)
第百七条 前条第二項の審査請求については、行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)第二十五条の規定は、適用しない。
2 前条第二項の審査請求についての行政不服審査法第二十条及び第三十一条の規定の適用に関しては、同法第二十条第二号中「三箇月」とあるのは「二箇月」と、同法第三十一条中「その庁の職員」とあるのは「審査員」とする。
(不服申立てと訴訟との関係)
第百八条 認定又は補償給付の支給に関する処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する公害健康被害補償不服審査会の裁決を経た後でなければ、提起することができない。
第二節 賦課徴収に関する処分等に対する審査請求
(審査請求)
第百九条 この法律に基づいてした協会の処分に不服がある者は、環境庁長官及び通商産業大臣に対し、行政不服審査法による審査請求をすることができる。
(不服申立てと訴訟との関係)
第百十条 この法律に基づいて協会がした処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する環境庁長官及び通商産業大臣の裁決を経た後でなければ、提起することができない。
第三節 公害健康被害補償不服審査会
第一款 設置及び組織
(設置)
第百十一条 第百六条第二項の審査請求の事件を取り扱わせるため、環境庁長官の所轄の下に、公害健康被害補償不服審査会(以下この章において「審査会」という。)を置く。
(組織)
第百十二条 審査会は、委員六人をもつて組織する。
2 委員のうち三人は、非常勤とすることができる。
(委員の任命)
第百十三条 委員は、人格が高潔であつて、公害問題に関する識見を有し、かつ、医学、法律学その他公害に係る健康被害の補償に関する学識経験を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。
2 委員の任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、前項の規定にかかわらず、同項に定める資格を有する者のうちから、委員を任命することができる。
3 前項の場合においては、任命後最初の国会で、両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認を得られないときは、内閣総理大臣は、その委員を罷免しなければならない。
(任期)
第百十四条 委員の任期は、三年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 委員は、再任されることができる。
3 委員の任期が満了したときは、当該委員は、後任者が任命されるまで引き続きその職務を行なうものとする。
(職権の行使)
第百十五条 委員は、独立してその職権を行なう。
(身分保障)
第百十六条 委員は、次の各号の一に該当する場合を除いては、在任中、その意に反して罷免されることがない。
一 禁治産、準禁治産又は破産の宣告を受けたとき。
二 禁錮以上の刑に処せられたとき。
三 審査会により、心身の故障のため職務の執行ができないと認められたとき、又は職務上の義務違反その他委員たるに適しない行為があると認められたとき。
(罷免)
第百十七条 内閣総理大臣は、委員が前条各号の一に該当するときは、その委員を罷免しなければならない。
(会長)
第百十八条 審査会に会長を置き、委員の互選によつて常勤の委員のうちからこれを定める。
2 会長は、会務を総理し、審査会を代表する。
3 会長に事故があるときは、あらかじめその指名する常勤の委員が、その職務を代理する。
(委員会議)
第百十九条 審査会の会務の処理(審査請求の事件の取扱いを除く。)は、委員の全員の会議(以下この条において「委員会議」という。)の議決によるものとする。
2 委員会議は、会長が招集する。
3 委員会議は、会長及び三人以上の委員の出席がなければ、これを開き、議決をすることができない。
4 委員会議の議事は、出席した委員の過半数をもつて決し、可否同数のときは、会長の決するところによる。
5 審査会が第百十六条第三号の規定による認定をするには、前項の規定にかかわらず、出席した委員のうちの本人を除く全員の一致がなければならない。
6 会長に事故がある場合の第三項の規定の適用については、第百十八条第三項の規定により会長の職務を代理する常勤の委員は、会長とみなす。
(審査請求事件の取扱い)
第百二十条 審査会は、委員のうちから審査会が指名する者三人をもつて構成する合議体で、審査請求の事件を取り扱う。
2 前項の規定にかかわらず、次の各号の一に該当する場合においては、委員の全員をもつて構成する合議体で、審査請求の事件を取り扱う。
一 前項の合議体が、法令の解釈適用について、その意見が前に審査会のした裁決に反すると認めた場合
二 前項の合議体を構成する者の意見が分かれたため、その合議体としての意見が定まらない場合
三 審査会が、委員の全員をもつて構成する合議体において審査請求事件を取り扱う旨の議決をした場合
第百二十一条 前条第一項又は第二項の各合議体を構成する者を審査員とし、うち一人を審査長とする。
2 前条第一項の合議体のうち、会長がその構成に加わるものにあつては、会長が審査長となり、その他のものにあつては、審査会の指名する委員が審査長となる。
3 前条第二項の合議体にあつては、会長が審査長となり、会長に事故があるときは、第百十八条第三項の規定により会長の職務を代理する常勤の委員が審査長となる。
第百二十二条 第百二十条第一項の合議体は、これを構成するすべての審査員の、同条第二項の合議体は、四人以上の審査員の出席がなければ、会議を開き、議決をすることができない。
2 第百二十条第一項の合議体の議事は、その合議体を構成する審査員の過半数をもつて決する。
3 第百二十条第二項の合議体の議事は、出席した三人以上の審査員の賛成をもつて決し、可否それぞれ三人のときは、審査長の決するところによる。
(服務)
第百二十三条 委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。
2 委員は、在任中、政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。
3 常勤の委員は、在任中、内閣総理大臣の許可のある場合を除くほか、報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行なつてはならない。
(給与)
第百二十四条 委員の給与は、別に法律で定める。
(庶務)
第百二十五条 審査会の庶務は、環境庁企画調整局において処理する。
第二款 審査請求の手続
(利害関係人に対する審査請求書の副本の送付)
第百二十六条 審査会は、審査請求を受理したときは、審査請求書の副本を利害関係人に送付しなければならない。
(審理の期日及び場所)
第百二十七条 審査会は、審理の期日及び場所を定め、原処分をした行政庁、審査請求人及び参加人(以下この款において「当事者」という。)に通知しなければならない。
(審理の公開)
第百二十八条 審理は、公開して行なう。ただし、当事者の申立てがあつたときは、公開しないことができる。
(審理の指揮)
第百二十九条 審理の指揮は、審査長が行なう。
(意見の陳述等)
第百三十条 当事者及びその代理人は、審理の期日に出頭して意見を述べることができる。この場合において、当事者又はその代理人は、審査会の許可を得て、補佐人と共に出頭することができる。
(受診命令)
第百三十一条 審査会は、審理を行なうため特に必要があると認めるときは、審査請求人に対し、認定又は補償給付の支給に係る者について、審査会の指定する医師の診断を受けるべきことを命ずることができる。
(調書)
第百三十二条 審査会は、審理の期日における経過について、調書を作成しなければならない。
2 当事者及び利害関係人は、審査会の許可を得て、前項の調書を閲覧することができる。
(合議の非公開)
第百三十三条 審査会の合議は、公開しない。
(不服申立ての制限)
第百三十四条 この款の規定により審査会がした処分については、行政不服審査法による不服申立てをすることができない。
(総理府令への委任)
第百三十五条 この款に定めるもののほか、審査請求の手続に関し必要な事項は、総理府令で定める。
第七章 雑則
(認定を受けた者等に対する報告の徴収等)
第百三十六条 都道府県知事は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、認定又は補償給付を受け、又は受けようとする者に対し、報告又は文書その他の物件の提出を求めることができる。
(受診命令)
第百三十七条 都道府県知事は、認定又は補償給付の支給に関し必要があると認めるときは、認定又は補償給付を受け、又は受けようとする者に対し、その認定又は補償給付の支給に係る者について、当該都道府県知事の指定する医師の診断を受けるべきことを命ずることができる。
(補償給付の一時差止め)
第百三十八条 補償給付を受けることができる者が、第百三十六条の規定により報告又は文書その他の物件の提出を求められて、正当な理由がなくこれに従わず、若しくは虚偽の報告をし、若しくは虚偽の記載をした文書を提出し、又は正当な理由がなく前条の規定による命令に従わないときは、都道府県知事は、その者に対する補償給付を一時差し止めることができる。
(公害医療機関に対する報告の徴収等)
第百三十九条 都道府県知事は、療養の給付に関し必要があると認めるときは、公害医療機関に対し報告若しくは診療録その他の帳簿書類の提出若しくは提示を求め、公害医療機関の開設者若しくは管理者、医師、薬剤師その他の従業者に対して出頭を求め、又はその職員に、公害医療機関の施設に立ち入り、関係者に質問させ、若しくはその設備若しくは診療録、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2 第百二条第二項の規定は前項の規定による質問及び検査について、同条第三項の規定は前項の規定による権限について準用する。
3 公害医療機関が、第一項の規定により報告若しくは診療録その他の帳簿書類の提出若しくは提示を求められて、正当な理由がなくこれに従わず、若しくは虚偽の報告をし、又は公害医療機関の開設者若しくは管理者、医師、薬剤師その他の従業者が、同項の規定により出頭を求められて、正当な理由がなくこれに従わず、同項の規定による質問に対して、正当な理由がなく答弁せず、若しくは虚偽の答弁をし、若しくは同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したときは、都道府県知事は、当該公害医療機関に対する診療報酬の支払を一時差し止めることができる。
(診療を行なつた者等に対する報告の徴収等)
第百四十条 都道府県知事は、認定又は補償給付(療養の給付を除く。以下この項において同じ。)の支給に関し必要があると認めるときは、当該認定の申請に係る診断又は補償給付に関する診療、薬剤の支給若しくは手当を行なつた者又はこれを使用する者に対し、その行なつた診断又は診療、薬剤の支給若しくは手当につき、報告若しくは診療録、帳簿書類その他の物件の提示を求め、又はその職員に質問させることができる。
2 第百二条第二項の規定は前項の規定による質問について、同条第三項の規定は前項の規定による権限について準用する。
(ばい煙発生施設等設置者等に対する報告の徴収等)
第百四十一条 環境庁長官又は通商産業大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、ばい煙発生施設等設置者又は特定施設等設置者に対し、その業務に関し報告を求め、又はその職員に、ばい煙発生施設等設置者若しくは特定施設等設置者の工場若しくは事業場に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2 第百二条第二項の規定は前項の規定による検査について、同条第三項の規定は前項の規定による権限について準用する。
(期間の計算)
第百四十二条 この法律又はこの法律に基づく命令に規定する期間の計算については、別段の定めがある場合を除き、民法の期間に関する規定を準用する。
(戸籍事項の無料証明)
第百四十三条 市町村長(特別区の区長を含むものとし、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあつては、区長とする。)は、都道府県知事、第四条第三項の政令で定める市の長又は補償給付を受けることができる者に対し、条例で定めるところにより、認定を申請しようとする者、被認定者(死亡した者を含む。)、指定疾病にかかつていた者で認定を受けないで死亡したもの、補償給付を受けようとする者又は補償給付を受けていた者の戸籍に関し、無料で証明を行なうことができる。
(政令の制定とその経過措置)
第百四十四条 この法律に基づき政令を制定し、又は改廃する場合においては、その政令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置を定めることができる。
第八章 罰則
第百四十五条 第二十三条第三項、第四十五条第三項又は第百二十三条第一項の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
第百四十六条 次の各号の一に該当する者は、十万円以下の罰金に処する。
一 第九十一条の規定により文書その他の物件の提出を求められて、これに従わず、又は虚偽の記載をした文書を提出した者
二 第百三十六条の規定により報告又は文書その他の物件の提出を求められて、これに従わず、又は虚偽の報告をし、若しくは虚偽の記載をした文書を提出した者
三 第百四十条第一項の規定により報告若しくは診療録、帳簿書類その他の物件の提示を求められて、これに従わず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による質問に対して、答弁せず、若しくは虚偽の答弁をした者
第百四十七条 第百二条第一項の規定により報告を求められて、これに従わず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その違反行為をした協会又は受託者の役員又は職員は、五万円以下の罰金に処する。
2 第百四十一条第一項の規定により報告を求められて、これに従わず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、五万円以下の罰金に処する。
第百四十八条 第七十二条の規定に違反した者は、三万円以下の罰金に処する。
第百四十九条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第百四十六条第一号若しくは第三号、第百四十七条第二項又は前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の刑を科する。
第百五十条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした協会の役員は、三万円以下の過料に処する。
一 この法律の規定により環境庁長官及び通商産業大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。
二 第七十一条第一項の規定による政令に違反して登記することを怠つたとき。
三 第八十八条に規定する業務以外の業務を行なつたとき。
四 第九十八条の規定に違反して業務上の余裕金を運用したとき。
五 第百一条第二項の規定による環境庁長官及び通商産業大臣の命令に違反したとき。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一年をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第一章、第二章第七節、第五章、第百四十五条中第四十五条第三項に係る部分、第百四十六条第一号、第百四十七条第一項、第百四十九条、第百五十条、附則第三条、附則第四条第二項、附則第五条から附則第八条まで、附則第十九条、附則第二十条及び附則第二十五条から附則第二十七条までの規定は公布の日から起算して九月をこえない範囲内において政令で定める日から、附則第四条第一項、附則第三十条及び附則第三十一条の規定は公布の日から施行する。
(最初に徴収する汚染負荷量賦課金に関する特例)
第二条 この法律の施行後最初に徴収する汚染負荷量賦課金に関する第五十二条第一項及び第五十五条第一項の規定の適用については、第五十二条第一項に規定する年度は、同項の規定にかかわらず、この法律の施行の日に始まるものとする。
(協会の設立)
第三条 環境庁長官及び通商産業大臣は、協会の会長又は監事となるべき者を指名する。
2 前項の規定により指名された会長又は監事となるべき者は、協会の成立の時において、この法律の規定により、それぞれ会長又は監事に任命されたものとする。
第四条 環境庁長官及び通商産業大臣は、設立委員を命じて、協会の設立に関する事務を処理させる。
2 設立委員は、協会の設立の準備を完了したときは、その旨を環境庁長官及び通商産業大臣に届け出るとともに、その事務を前条第一項の規定により指名された会長となるべき者に引き継がなければならない。
第五条 附則第三条第一項の規定により指名された会長となるべき者は、前条第二項の規定による事務の引継ぎを受けたときは、遅滞なく、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。
2 協会は、設立の登記をすることによつて成立する。
(協会の設立に伴う経過措置)
第六条 第五章の規定の施行の際現に公害健康被害補償協会という名称を使用している者については、第七十二条の規定は、同章の規定の施行後六月間は、適用しない。
第七条 協会の最初の事業年度は、第九十二条の規定にかかわらず、その成立の日に始まり、昭和五十年三月三十一日に終わるものとする。
第八条 協会の最初の事業年度の予算、事業計画及び資金計画については、第九十三条中「当該事業年度の開始前に」とあるのは、「協会の成立後遅滞なく」とする。
(最初に任命される公害健康被害補償不服審査会の委員に関する特例)
第九条 この法律の施行後最初に任命される公害健康被害補償不服審査会の委員の任命について、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、第百十三条第二項及び第三項の規定の例による。
2 この法律の施行後最初に任命される公害健康被害補償不服審査会の委員の任期は、第百十四条第一項本文の規定にかかわらず、内閣総理大臣の指定するところにより、二人は一年、二人は二年、二人は三年とする。
(公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法の廃止)
第十条 公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法(昭和四十四年法律第九十号。以下「旧法」という。)は、廃止する。
(旧法の廃止に伴う経過措置)
第十一条 この法律の施行の際現に旧法第三条第一項の認定を受けている者は、政令で定めるところにより、この法律による認定を受けた者とみなす。
第十二条 この法律の施行の際現に旧法第三条第一項の認定の申請をしている者に対しては、従前の例によりその認定をすることができる。この場合においては、その認定を受けた者は、政令で定めるところにより、この法律による認定を受けた者とみなす。
第十三条 前二条の規定によりこの法律による認定を受けた者とみなされる者の指定疾病に係る第七条第一項の規定による認定の有効期間の始期は、この法律の施行の日とする。
第十四条 前条に規定する者に対して交付された旧法第三条第三項の公害医療手帳は、次項の規定により第四条第四項の公害医療手帳が交付されるまでの間に限り、同項の公害医療手帳とみなす。
2 都道府県知事は、この法律の施行後すみやかに、前条に規定する者に対し、第四条第四項の公害医療手帳を交付しなければならない。
第十五条 旧法第三条第一項の認定を受けた者及び附則第十二条の規定により旧法第三条第一項の規定の例による認定を受けた者についてのこの法律の施行前の医療又は介護に係る費用の支給に関しては、なお従前の例による。
第十六条 旧法第三条第一項の認定を受けた者が旧法第六条第一項に規定する保険医療機関等又は生活保護指定医療機関で医療を受けた場合における当該保険医療機関等又は生活保護指定医療機関に対する医療費の支払については、なお従前の例による。
第十七条 旧法第三条第一項の認定を受けた者が当該認定に係る疾病に関し損害賠償その他の給付を受けた場合における旧法の規定により支給された医療費、医療手当及び介護手当の額に相当する金額の返還に関しては、なお従前の例による。
2 前項においてなお従前の例によることとされる旧法第二十九条に基づく政令の規定により旧法第二十四条の規定による返還金の一部に相当する金額の納付を受けた公害防止事業団は、その額の金銭を、旧法第十六条第一項に規定する法人が存続する限りその法人に引き継ぐものとする。
第十八条 この法律の施行前にした行為及びこの法律の附則においてなお従前の例によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
第十九条 第二条第一項から第三項までの規定に基づき、旧法の規定により定められた指定地域及び当該指定地域に係る疾病を第二条第一項の第一種地域又は同条第二項の第二種地域及び当該地域に係る疾病として定める政令の立案をしようとするときは、同条第四項の規定は、適用しない。
(公害対策基本法の一部改正)
第二十条 公害対策基本法(昭和四十二年法律第百三十二号)の一部を次のように改正する。
第二十八条第一項中「八十人以内」を「九十人以内」に改め、同条第二項中「公害の防止」を「公害対策」に改める。
(下水道法の一部改正)
第二十一条 下水道法(昭和三十三年法律第七十九号)の一部を次のように改正する。
第十一条の二に次の一項を加える。
2 継続して下水を排除して公共下水道を使用しようとする水質汚濁防止法(昭和四十五年法律第百三十八号)第二条第二項に規定する特定施設の設置者(以下「特定施設設置者」という。)は、前項の規定により届出をする場合を除き、建設省令で定めるところにより、あらかじめ、使用開始の時期を公共下水道管理者に届け出なければならない。
第十二条の二中「定めるもの」の下に「及び継続して下水を排除して公共下水道を使用する特定施設設置者」を加える。
第十八条の次に次の一条を加える。
(汚濁原因者負担金)
第十八条の二 公共下水道管理者は、公害健康被害補償法(昭和四十八年法律第百十一号)第六十二条第一項の規定により特定賦課金を徴収された場合においては、政令で定めるところにより、当該特定賦課金に係る同法第六条に規定する指定疾病に影響を与える水質の汚濁の原因である物質を当該公共下水道に排除した特定施設設置者(過去の特定施設設置者を含む。)に当該特定賦課金の納付に要する費用の全部又は一部を負担させることができる。
第二十五条の十中「第八条」の下に「、第十一条の二、第十二条から第十三条まで」を加え、「第十八条」を「第十八条の二」に、「これらの規定」を「第七条、第八条、第十一条の二、第十二条の二、第十五条から第十八条まで、第二十一条から第二十三条まで及び第二十五条」に改め、「「流域下水道」と」の下に「、第十一条の二、第十二条第一項、第十三条第一項」を、「「流域下水道管理者」と」の下に「、第十二条中「公共下水道を」とあるのは「流域下水道を」と、同条中「公共下水道若しくは流域下水道」、「公共下水道からの放流水又は流域下水道」又は「公共下水道からの放流水若しくは流域下水道」とあり、第十三条第一項中「公共下水道若しくは流域下水道」又は「公共下水道からの放流水若しくは流域下水道」とあるのは「流域下水道」と、同項中「排水区域内の他人の土地又は建築物に立ち入り、排水設備、」とあるのは「他人の土地又は建築物に立ち入り、流域下水道に接続する排水施設又は」と、第十八条の二中「公共下水道」とあるのは「流域下水道又は当該流域下水道に係る流域関連公共下水道」と」を加える。
第三十九条の二中「公共下水道管理者」の下に「又は流域下水道管理者」を、「公共下水道」の下に「又は流域下水道」を、「使用する者」の下に「で政令で定めるもの及び継続して下水を排除して公共下水道又は流域下水道を使用する特定施設設置者」を加える。
第四十九条第一号中「第十一条の二」、同条第二号中「第十二条の二」及び同条第三号中「第十三条第一項」の下に「(第二十五条の十において準用する場合を含む。)」を加える。
(下水道法の一部改正に伴う経過措置)
第二十二条 この法律の施行の際現に継続して下水を排除して公共下水道又は流域下水道を使用している水質汚濁防止法第二条第二項に規定する特定施設の設置者(前条の規定による改正前の下水道法第十一条の二の規定により届出をした者及び届出をしなければならない者に該当する者を除く。)は、この法律の施行の日から起算して三十日以内に、その旨を公共下水道管理者又は流域下水道管理者に届け出なければならない。
2 前項の規定による届出をしなければならない者については、前条の規定による改正後の下水道法第十二条の二の規定は、この法律の施行の日から起算して三十日間は、適用しない。
3 第一項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、五万円以下の罰金に処する。
(地方自治法の一部改正)
第二十三条 地方自治法の一部を次のように改正する。
附則第六条の五第三号中「第十八条を」を「第十八条及び第十八条の二を」に改め、「損傷負担金」の下に「、汚濁原因者負担金」を加える。
(特別職の職員の給与に関する法律の一部改正)
第二十四条 特別職の職員の給与に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十二号)の一部を次のように改正する。
第一条第十二号の二の次に次の一号を加える。
十二の二の二 公害健康被害補償不服審査会の常勤の委員
第一条第十八号の二の次に次の一号を加える。
十八の二の二 公害健康被害補償不服審査会の非常勤の委員
別表第一官職名の欄中「労働保険審査会委員」を
労働保険審査委員会
公害健康被害補償不服審査会の常勤の委員
に改める。
(地方税法の一部改正)
第二十五条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第七十二条の五第一項第六号中「繊維工業構造改善事業協会」の下に「、公害健康被害補償協会」を加える。
(所得税法の一部改正)
第二十六条 所得税法(昭和四十年法律第三十三号)の一部を次のように改正する。
別表第一第一号の表中公営企業金融公庫の項の次に次のように加える。
公害健康被害補償協会
公害健康被害補償法(昭和四十八年法律第百十一号)
(法人税法の一部改正)
第二十七条 法人税法(昭和四十年法律第三十四号)の一部を次のように改正する。
別表第二第一号の表中高圧ガス保安協会の項の次に次のように加える。
公害健康被害補償協会
公害健康被害補償法(昭和四十八年法律第百十一号)
(社会保険診療報酬支払基金法の一部改正)
第二十八条 社会保険診療報酬支払基金法(昭和二十三年法律第百二十九号)の一部を次のように改正する。
第十三条第二項中「、結核予防法」を「又は結核予防法」に改め、「又は公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法(昭和四十四年法律第九十号)第六条第四項」及び「又は公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法第六条第五項」を削る。
(社会保険診療報酬支払基金法の一部改正に伴う経過措置)
第二十九条 この法律の施行前に行なわれた旧法第四条第一項各号の医療に係る旧法第六条第一項に規定する保険医療機関等又は生活保護指定医療機関に対する医療費の支払に関しては、前条の規定による改正後の社会保険診療報酬支払基金法第十三条第二項の規定にかかわらず、なお従前の例による。
(通商産業省設置法の一部改正)
第三十条 通商産業省設置法(昭和二十七年法律第二百七十五号)の一部を次のように改正する。
第九条の二第六号の次に次の一号を加える。
六の二 公害健康被害補償法(昭和四十八年法律第百十一号)の施行に関する事務で通商産業省の所掌に属するものを処理すること。
(環境庁設置法の一部改正)
第三十一条 環境庁設置法(昭和四十六年法律第八十八号)の一部を次のように改正する。
第四条中第二十六号を第二十六号の二とし、第二十五号の次に次の一号を加える。
二十六 公害健康被害補償法(昭和四十八年法律第百十一号)の施行に関する事務を処理すること。
第三十二条 環境庁設置法の一部を次のように改正する。
第四条第二十六号の二を削る。
第五条第三項中「並びに国立公害研究所及び公害研修所に関する事務」を「、国立公害研究所及び公害研修所に関する事務並びに公害健康被害補償不服審査会の庶務に関する事務」に改める。
第八条中「公害研修所」を
公害研修所
公害健康被害補償不服審査会
に改める。
第十条の次に次の一条を加える。
(公害健康被害補償不服審査会)
第十条の二 公害健康被害補償不服審査会に関しては、公害健康被害補償法の定めるところによる。
内閣総理大臣臨時代理 国務大臣 三木武夫
法務大臣 田中伊三次
大蔵大臣 愛知揆一
厚生大臣 齋藤邦吉
通商産業大臣 中曾根康弘
建設大臣臨時代理 国務大臣 江崎真澄
自治大臣 江崎真澄
公害健康被害補償法をここに公布する。
御名御璽
昭和四十八年十月五日
内閣総理大臣臨時代理 国務大臣 三木武夫
法律第百十一号
公害健康被害補償法
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
補償給付
第一節
通則(第三条―第十八条)
第二節
療養の給付及び療養費(第十九条―第二十四条)
第三節
障害補償費(第二十五条―第二十八条)
第四節
遺族補償費及び遺族補償一時金(第二十九条―第三十八条)
第五節
児童補償手当、療養手当及び葬祭料(第三十九条―第四十一条)
第六節
補償給付の制限等(第四十二条・第四十三条)
第七節
公害健康被害認定審査会(第四十四条・第四十五条)
第三章
公害保健福祉事業(第四十六条)
第四章
費用
第一節
費用の支弁及び財源(第四十七条―第五十一条)
第二節
汚染負荷量賦課金(第五十二条―第六十一条)
第三節
特定賦課金(第六十二条―第六十七条)
第五章
公害健康被害補償協会
第一節
総則(第六十八条―第七十三条)
第二節
役員及び職員(第七十四条―第八十四条)
第三節
評議員会(第八十五条―第八十七条)
第四節
業務(第八十八条―第九十一条)
第五節
財務及び会計(第九十二条―第百条)
第六節
監督(第百一条・第百二条)
第七節
補則(第百三条―第百五条)
第六章
不服申立て
第一節
認定又は補償給付の支給に関する処分に対する不服申立て(第百六条―第百八条)
第二節
賦課徴収に関する処分等に対する審査請求(第百九条・第百十条)
第三節
公害健康被害補償不服審査会
第一款
設置及び組織(第百十一条―第百二十五条)
第二款
審査請求の手続(第百二十六条―第百三十五条)
第七章
雑則(第百三十六条―第百四十四条)
第八章
罰則(第百四十五条―第百五十条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、事業活動その他の人の活動に伴つて生ずる相当範囲にわたる著しい大気の汚染又は水質の汚濁(水底の底質が悪化することを含む。以下同じ。)の影響による健康被害に係る損害を填補するための補償を行なうとともに、被害者の福祉に必要な事業を行なうことにより、健康被害に係る被害者の迅速かつ公正な保護を図ることを目的とする。
(地域及び疾病の指定)
第二条 この法律において「第一種地域」とは、事業活動その他の人の活動に伴つて相当範囲にわたる著しい大気の汚染が生じ、その影響による疾病(次項に規定する疾病を除く。)が多発している地域として政令で定める地域をいう。
2 この法律において「第二種地域」とは、事業活動その他の人の活動に伴つて相当範囲にわたる著しい大気の汚染又は水質の汚濁が生じ、その影響により、当該大気の汚染又は水質の汚濁の原因である物質との関係が一般的に明らかであり、かつ、当該物質によらなければかかることがない疾病が多発している地域として政令で定める地域をいう。
3 前二項の政令においては、あわせて前二項の疾病を定めなければならない。
4 内閣総理大臣は、前三項の規定に基づく政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、中央公害対策審議会並びに関係都道府県知事及び関係市町村長の意見をきかなければならない。
第二章 補償給付
第一節 通則
(補償給付の種類等)
第三条 第一条に規定する健康被害に対する補償のため支給されるこの法律による給付(以下「補償給付」という。)は、次のとおりとする。
一 療養の給付及び療養費
二 障害補償費
三 遺族補償費
四 遺族補償一時金
五 児童補償手当
六 療養手当
七 葬祭料
2 前項第二号、第三号及び第五号に掲げる補償給付は、月を単位として支給するものとし、その支払は、定期的に行なう。
(認定等)
第四条 第一種地域の全部又は一部を管轄する都道府県知事は、当該第一種地域につき第二条第三項の規定により定められた疾病にかかつていると認められる者で次の各号の一に該当するものの申請に基づき、当該疾病が当該第一種地域における大気の汚染の影響によるものである旨の認定を行なう。この場合においては、当該疾病にかかつていると認められるかどうかについては、公害健康被害認定審査会の意見をきかなければならない。
一 申請の当時当該第一種地域の区域内に住所を有しており、かつ、申請の時まで引き続き当該第一種地域の区域内に住所を有した期間(当該第一種地域につき第二条第三項の規定により定められた疾病と同一の疾病が同項の規定により定められた他の第一種地域の区域内に住所を有した期間を含む。以下この項において同じ。)が疾病の種類に応じて政令で定める期間以上であり、又は申請の時まで引き続く疾病の種類に応じて政令で定める期間内において当該第一種地域の区域内に住所を有した期間が疾病の種類に応じて政令で定める期間以上である者
二 申請の当時一日のうち政令で定める時間(以下この条において「指定時間」という。)以上の時間を当該第一種地域の区域内で過ごすことが常態であり、かつ、申請の時まで引き続き一日のうち指定時間以上の時間を当該第一種地域の区域内で過ごすことが常態であつた期間(一日のうち指定時間以上の時間を当該第一種地域につき第二条第三項の規定により定められた疾病と同一の疾病が同項の規定により定められた他の第一種地域の区域内で過ごすことが常態であつた期間を含む。以下この項において同じ。)が疾病の種類に応じて政令で定める期間以上であり、又は申請の時まで引き続く疾病の種類に応じて政令で定める期間内において一日のうち指定時間以上の時間を当該第一種地域の区域内で過ごすことが常態であつた期間が疾病の種類に応じて政令で定める期間以上である者
三 前二号に該当する者を除き、申請の当時、当該第一種地域の区域内に住所を有しており、又は指定時間以上の時間を当該第一種地域の区域内で過ごすことが常態であり、かつ、当該第一種地域の区域内に住所を有した期間と指定時間以上の時間を当該第一種地域の区域内で過ごすことが常態であつた期間とが、政令で定めるところにより、疾病の種類に応じて算定した期間以上である者
2 第二種地域の全部又は一部を管轄する都道府県知事は、当該第二種地域につき第二条第三項の規定により定められた疾病にかかつていると認められる者の申請に基づき、当該疾病が当該第二種地域に係る大気の汚染又は水質の汚濁の影響によるものである旨の認定を行なう。前項後段の規定は、この場合について準用する。
3 第一種地域又は第二種地域の全部又は一部が政令で定める市(特別区を含む。以下同じ。)の区域内にある場合には、その区域については、第一項又は前項の規定による都道府県知事の権限は、当該市の長が行なう。
4 都道府県知事(前項の政令で定める市にあつては、当該市の長とする。第四十五条から第四十八条まで及び第百四十三条を除き、以下同じ。)は、第一項又は第二項の認定(第六項、第十三条第二項、第四十九条第一項及び第二項、第五十二条第一項、第六十二条第一項並びに第百十九条第五項を除き、以下本則において単に「認定」という。)を行なつたときは、当該認定を受けた者(第六条の規定による申請に基づいて認定を受けた者を除き、以下「被認定者」という。)に対し、公害医療手帳を交付する。
5 認定は、その申請のあつた日にさかのぼつてその効力を生ずる。
6 第一種地域に係る被認定者は、同一の疾病については、重ねて第一項の認定を受けることができない。ただし、同一の疾病が第二条第三項の規定により定められた他の都道府県知事の管轄に属する第一種地域の区域内に住所を移し、又は一日のうち指定時間以上の時間をその区域内で過ごすことが常態となつた場合において、当該他の都道府県知事に対しその旨の届出をしたときは、当該疾病について現に受けている第一項の認定は、当該他の都道府県知事がした同項の認定とみなす。
第五条 認定の申請をした者が認定を受けないで死亡した場合において、その死亡した者が前条第一項又は第二項の規定により認定を受けることができる者であるときは、都道府県知事は、その死亡した者の第三十条第一項に規定する遺族若しくは第三十五条第一項各号に掲げる者又はその死亡した者について葬祭を行なう者の申請に基づき、その死亡した者が認定を受けることができる者であつた旨の決定を行なう。
2 前項の申請は、同項に規定する死亡した者の死亡の日から六月以内に限り、することができる。
3 第一項の決定があつたときは、同項に規定する死亡した者は、認定を受けたものとみなす。
第六条 第二条第三項の規定により定められた疾病(以下「指定疾病」という。)にかかつていると認められる者が当該指定疾病に関し認定の申請をしないで死亡した場合においては、第四条第一項中「かかつている」とあるのは「かかつていた」と、「ものの申請」とあるのは「ものの第三十条第一項に規定する遺族若しくは第三十五条第一項各号に掲げる者又はその死亡した者について葬祭を行なう者の申請」と、同項各号中「申請」とあるのは「死亡」と、同条第二項中「かかつている」とあるのは「かかつていた」と、「者の申請」とあるのは「者の第三十条第一項に規定する遺族若しくは第三十五条第一項各号に掲げる者又はその死亡した者について葬祭を行なう者の申請」と読み替えて、これらの規定を適用する。この場合において、これらの規定による認定の申請は、当該第一種地域又は第二種地域の指定の日から一年以内でその死亡の日から六月以内に限り、することができる。
(認定の有効期間)
第七条 認定は、指定疾病の種類に応じて政令で定める期間内に限り、その効力を有する。ただし、政令で定める指定疾病に係る認定については、この限りでない。
2 都道府県知事は、認定にあたり、有効期間が定められた指定疾病に係る被認定者の当該指定疾病が有効期間の満了前になおる見込みが少ないと認めるときは、公害健康被害認定審査会の意見をきいて、前項の規定にかかわらず、別に当該認定の有効期間を定めることができる。
(認定の更新)
第八条 前条第一項又は第二項の規定により有効期間が定められた被認定者の当該認定に係る指定疾病が有効期間の満了前になおる見込みがないときは、当該被認定者は、都道府県知事に対し、認定の更新を申請することができる。
2 都道府県知事は、前項の規定による申請があつた場合において、公害健康被害認定審査会の意見をきき当該指定疾病が有効期間の満了後においても継続すると認めるときは、当該指定疾病に係る認定を更新する。
3 前条の規定は、前項の規定により更新される認定について準用する。
(認定の取消し)
第九条 都道府県知事は、公害健康被害認定審査会の意見をききその認定に係る者の指定疾病がなおつたと認めるときは、認定を取り消すものとする。
(補償給付の請求)
第十条 補償給付の請求は、認定の申請がされた後は、認定前であつても、することができる。
2 補償給付を支給する旨の処分は、その請求のあつた日にさかのぼつてその効力を生ずる。
(支給期間及び支払期月)
第十一条 定期的に行なう補償給付の支給は、その請求があつた日の属する月の翌月から始め、支給すべき事由が消滅した日の属する月で終わる。
2 定期的に行なう補償給付は、毎年二月、四月、六月、八月、十月及び十二月の六期に、それぞれの前月及び前前月の分を支払う。ただし、前支払期月に支払うべきであつた補償給付又は支給すべき事由が消滅した場合におけるその期の補償給付は、その支払期月でない月であつても、支払うものとする。
(未支給の補償給付)
第十二条 補償給付を受けることができる者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき補償給付でまだその者に支給していなかつたものがあるときは、その者の配偶者(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む。以下この章において同じ。)、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であつて、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その支給を請求することができる。
2 未支給の補償給付を受けることができる者の順位は、前項に規定する順序による。
3 未支給の補償給付を受けることができる同順位者が二人以上あるときは、その一人がした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなし、その一人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなす。
(補償給付の免責等)
第十三条 補償給付を受けることができる者に対し、同一の事由について、損害の填補がされた場合(次条第二項に規定する場合に該当する場合を除く。)においては、都道府県知事は、その価額の限度で補償給付を支給する義務を免れる。
2 前項の規定により都道府県知事がその支給の義務を免れることとなつた補償給付が第四条第一項の認定に係るものであるときは、公害健康被害補償協会(以下「協会」という。)は、政令で定めるところにより、当該補償給付の支給の原因となつた行為に基づく損害を填補した第五十二条第一項に規定するばい煙発生施設等設置者の請求に基づき、その者に対し、その免れることとなつた補償給付の価額に相当する金額の全部又は一部を支払うことができる。
(他の法律による給付等との調整)
第十四条 補償給付の支給がされた場合においては、政令で定める法令の規定により同一の事由について当該補償給付に相当する給付等を支給すべき者は、その支給された補償給付の価額の限度で当該給付等を支給する義務を免れる。
2 前項の政令で定める法令の規定により同一の事由について補償給付に相当する給付等の支給がされた場合においては、都道府県知事は、政令で定めるところにより、その価額の限度で補償給付を支給する義務を免れる。この場合において、当該給付等を支給した者は、当該都道府県知事が補償給付を支給する義務を免れた価額の限度で、当該都道府県知事に対し、当該給付等の価額に相当する金額を求償することができる。
(不正利得の徴収)
第十五条 偽りその他不正の手段により補償給付の支給を受けた者があるときは、都道府県知事は、国税徴収の例により、その者からその補償給付の支給に要した費用に相当する金額の全部又は一部を徴収することができる。
2 前項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。
(受給権の保護)
第十六条 補償給付の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。
(公課の禁止)
第十七条 租税その他の公課は、補償給付として支給を受けた金品を標準として、課することができない。
(総理府令への委任)
第十八条 この章に定めるもののほか、認定の申請その他の補償給付に関する手続に関し必要な事項は、総理府令で定める。
第二節 療養の給付及び療養費
(療養の給付)
第十九条 都道府県知事は、その認定に係る被認定者の指定疾病について、次に掲げる療養の給付を行なう。
一 診察
二 薬剤又は治療材料の支給
三 医学的処置、手術及びその他の治療
四 病院又は診療所への収容
五 看護
六 移送
2 被認定者が前項第一号から第四号までに掲げる療養の給付を受けようとするときは、自己の選定する次条に規定する公害医療機関に公害医療手帳を提示して、当該機関から受けるものとする。
(公害医療機関)
第二十条 療養の給付を取り扱う者(以下「公害医療機関」という。)は、次に掲げるもの(都道府県知事を対し公害医療機関とならない旨を申し出たものを除く。)とする。
一 健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十三条第三項第一号に規定する保険医療機関及び保険薬局
二 国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)第三十六条第四項に規定する療養取扱機関
三 生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)第五十条第一項に規定する指定医療機関
四 前三号に掲げるもののほか、総理府令で定める病院、診療所及び薬局
(公害医療機関の義務)
第二十一条 公害医療機関は、環境庁長官の定めるところにより、療養の給付を担当しなければならない。
2 公害医療機関は、被認定者の指定疾病についての療養の給付に関し、環境庁長官又は都道府県知事の行なう指導に従わなければならない。
(診療方針及び診療報酬)
第二十二条 公害医療機関の診療方針及び診療報酬は、環境庁長官が中央公害対策審議会の意見をきいて定めるところによる。
(診療報酬の審査及び支払)
第二十三条 公害医療機関から診療報酬の請求があつたときは、都道府県又は第四条第三項の政令で定める市は、当該請求に係る診療内容及び診療報酬を審査して、診療報酬の額を決定し、これを支払うものとする。
2 都道府県又は第四条第三項の政令で定める市は、前項の規定による審査又は支払に関する事務を政令で定める者に委託することができる。
3 第一項の規定による審査をした者は、その職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。
(療養費の支給)
第二十四条 都道府県知事は、療養の給付を行なうことが困難であると認めるとき、又は被認定者が緊急その他やむを得ない理由により公害医療機関以外の病院、診療所若しくは薬局その他の者から診療、薬剤の支給若しくは手当を受けた場合において、その必要があると認めるときは、当該被認定者の請求に基づき、療養の給付に代えて、療養費を支給する。
2 都道府県知事は、被認定者が公害医療手帳を提示しないで公害医療機関から診療又は薬剤の支給を受けた場合において、公害医療手帳を提示しなかつたことが緊急その他やむを得ない理由によるものと認めるときは、当該被認定者の請求に基づき、療養の給付に代えて、療養費を支給する。
3 前二項の療養費の額は、第二十二条の規定に基づき定められた診療報酬の例により算定する。ただし、現に要した費用の額をこえることができない。
4 療養費の支給の請求は、その請求をすることができる時から二年を経過したときは、することができない。
第三節 障害補償費
(障害補償費の支給)
第二十五条 都道府県知事は、その認定に係る被認定者(政令で定める年齢に達しない者を除く。)の指定疾病による障害の程度が政令で定める障害の程度に該当するものであるときは、当該被認定者の請求に基づき、公害健康被害認定審査会の意見をきいて、その障害の程度に応じた障害補償費を支給する。
2 内閣総理大臣は、前項の障害の程度を定める政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、中央公害対策審議会の意見をきかなければならない。
(障害補償費の額)
第二十六条 障害補償費の額は、被認定者の障害補償標準給付基礎月額に相当する額にその者の障害の程度に応じた政令で定める率を乗じて得た額(指定疾病による障害の程度が前条第一項の政令で定める障害の程度のうち最も重度である障害の程度に該当するものである場合にあつては、その額と政令で定める介護加算額とを合算した額)とする。
2 障害補償標準給付基礎月額は、労働者の賃金水準その他の事情を考慮して、政令で定めるところにより、環境庁長官が、中央公害対策審議会の意見をきいて定める。
(併給の調整)
第二十七条 二以上の指定疾病に係る二以上の障害補償費を受けることができる一の被認定者に支給する当該二以上の障害補償費の額を合算した額が、当該被認定者の障害補償標準給付基礎月額(一又は二以上の指定疾病につき前条第一項の規定により介護加算額が合算された障害補償費を受けることができる者にあつては、障害補償標準給付基礎月額と同項の政令で定める介護加算額とを合算した額)をこえるときは、政令で定めるところにより、そのこえる部分に相当する額の障害補償費は、支給しない。
(障害補償費の額の改定等)
第二十八条 障害補償費の支給を受けている者は、当該指定疾病による障害の程度につき、指定疾病の種類に応じて政令で定める期間ごとに、都道府県知事の診査を受けなければならない。都道府県知事が、障害補償費の支給に関し特に必要があると認めて診査を受けるべき旨を命じたときも、同様とする。
2 都道府県知事は、前項の診査の結果、その者の指定疾病による障害の程度が従前の障害の程度と異なると認める場合においては、公害健康被害認定審査会の意見をきいて、新たな障害の程度が第二十五条第一項の政令で定める他の障害の程度に該当するときは新たに該当するに至つた同項の政令で定める障害の程度に応じて障害補償費の額を改定し、新たな障害の程度が同項の政令で定める障害の程度に該当しないときは障害補償費の支給を打ち切るものとする。
3 障害補償費の支給を受けている者は、都道府県知事に対し、当該指定疾病による障害の程度が増進したことを理由として、障害補償費の額の改定を請求することができる。
4 前項の規定による請求があつた場合においては、都道府県知事は、その者の指定疾病による障害の程度を診査しなければならない。第二項の規定は、この場合について準用する。
5 障害補償費の額の算定の基礎となる障害補償標準給付基礎月額に変更があつたときは、障害補償費の額は、改定されるものとする。
6 第二項(第四項において準用する場合を含む。)又は前項の規定により障害補償費の額が改定されたときは、改定後の額による障害補償費の支給は、改定された日の属する月の翌月から始めるものとする。
7 障害補償費の支給を受けている者が、正当な理由がなく第一項の診査を受けなかつたときは、都道府県知事は、障害補償費の支給を一時差し止めることができる。
第四節 遺族補償費及び遺族補償一時金
(遺族補償費の支給)
第二十九条 都道府県知事は、その認定に係る被認定者が当該認定に係る指定疾病に起因して死亡したときは、死亡した被認定者の遺族の請求に基づき、公害健康被害認定審査会の意見をきいて、遺族補償費を支給する。
2 指定疾病にかかつている者が認定を申請しないで当該指定疾病に起因して死亡し、第六条の規定による申請に基づいて認定がされた場合において、その遺族の請求があつたときも、前項と同様とする。
3 遺族補償費の支給は、政令で定める期間を限度として行なう。
4 被認定者又は第六条の規定による申請に基づいて行なわれた認定に係る死亡者(以下「認定死亡者」という。)が二以上の指定疾病に起因して死亡したときは、当該指定疾病に係る認定を行なつた一の都道府県知事に対してのみ、遺族補償費を請求することができる。
5 二以上の指定疾病に起因して死亡した者に係る遺族補償費の支給に要する費用の支弁の方法は、政令で定める。
(遺族補償費を受けることができる遺族の範囲及び順位)
第三十条 遺族補償費を受けることができる遺族は、被認定者又は認定死亡者の配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹であつて、被認定者又は認定死亡者の死亡の当時その者によつて生計を維持していたもの(死亡の当時その者によつて生計を維持していたものがないときは、認定の申請の当時その者によつて生計を維持していたもの)とする。ただし、妻(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む。)以外の者にあつては、被認定者又は認定死亡者の死亡の時に次に掲げる要件に該当した場合に限るものとする。
一 夫(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む。)、父母又は祖父母については、六十歳以上であること。
二 子、孫又は兄弟姉妹については、十八歳未満又は六十歳以上であること。
2 被認定者又は認定死亡者の死亡の時に胎児であつた子が出生したときは、前項の規定の適用については、将来に向かつて、その子は、被認定者又は認定死亡者の死亡の当時その者によつて生計を維持していた子とみなす。
3 遺族補償費を受けることができる遺族の順位は、配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹の順序とする。
(遺族補償費の額)
第三十一条 遺族補償費の額は、当該死亡した被認定者又は認定死亡者の遺族補償標準給付基礎月額に相当する額とする。
2 遺族補償標準給付基礎月額は、労働者の賃金水準、被認定者又は認定死亡者が死亡しなかつたとすれば通常支出すると見込まれる経費その他の事情を考慮して、政令で定めるところにより、環境庁長官が、中央公害対策審議会の意見をきいて定める。
3 遺族補償費を受けることができる同順位の遺族が二人以上ある場合における各人の遺族補償費の額は、第一項の額をその人数で除して得た額とする。
(遺族補償費の額の改定)
第三十二条 遺族補償費を受けることができる同順位の遺族の数に増減を生じたときは、遺族補償費の額を改定する。
2 第二十八条第五項及び第六項の規定は遺族補償標準給付基礎月額に変更があつた場合について、同項の規定は前項の規定により遺族補償費の額が改定された場合について準用する。
(遺族補償費が支給されない場合)
第三十三条 遺族補償費を受けることができる者が次の各号の一に該当するに至つたときは、その者に対する遺族補償費は、支給しない。
一 死亡したとき。
二 婚姻(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む。)をしたとき。
三 直系血族又は直系姻族以外の者の養子(届出をしていないが、事実上養子縁組関係と同様の事情にある者を含む。)となつたとき。
四 離縁によつて、死亡した被認定者又は認定死亡者との親族関係が終了したとき。
五 子、孫又は兄弟姉妹にあつては、十八歳に達したとき。
(後順位者からの遺族補償費の請求)
第三十四条 遺族補償費を受けることができる先順位者がその請求をしないで死亡した場合においては、次順位者が遺族補償費を請求することができる。前条の規定により遺族補償費が支給されないこととなつた場合において、同順位者がなくて後順位者があるときも、同様とする。
(遺族補償一時金の支給)
第三十五条 都道府県知事は、その認定に係る被認定者が当該認定に係る指定疾病に起因して死亡した場合において、その死亡の時に遺族補償費を受けることができる遺族がないときは、次に掲げる者の請求に基づき、公害健康被害認定審査会の意見をきいて、遺族補償一時金を支給する。
一 配偶者
二 被認定者の死亡の当時その者によつて生計を維持していた子、父母、孫及び祖父母
三 被認定者の認定の申請の当時その者によつて生計を維持していた子、父母、孫及び祖父母
四 前二号に該当しない子、父母、孫及び祖父母並びに兄弟姉妹
2 第二十九条第二項、第四項及び第五項の規定は、遺族補償一時金の支給について準用する。
3 遺族補償費を受けていた者が、第三十三条各号の一に該当することにより遺族補償費を支給されないこととなつた場合において、他に遺族補償費を受けることができる遺族がなく、かつ、被認定者又は認定死亡者の死亡により支給された遺族補償費の額の合計額がその死亡した者について次条第一項の規定により算定した額に満たないときは、第一項各号に掲げる者の請求に基づき、遺族補償一時金を支給する。
4 遺族補償一時金を受けることができる者の順位は、第一項各号の順序により、同項第二号から第四号までに掲げる者のうちにあつては、それぞれ当該各号に掲げる順序による。
(遺族補償一時金の額)
第三十六条 前条第一項の規定により支給する遺族補償一時金の額は、当該死亡した被認定者又は認定死亡者の遺族補償標準給付基礎月額に相当する額に政令で定める月数を乗じて得た額に相当する額とする。
2 前条第三項の規定により支給する遺族補償一時金の額は、当該死亡した被認定者又は認定死亡者について前項の規定により算定した額から当該被認定者又は認定死亡者の死亡により支給された遺族補償費の額の合計額を控除した額に相当する額とする。
3 第三十一条第三項の規定は、前二項の遺族補償一時金の額について準用する。
(遺族補償費等の請求の期限)
第三十七条 遺族補償費又は遺族補償一時金の支給の請求は、被認定者又は認定死亡者が死亡した時(第三十四条後段の規定による請求により支給する遺族補償費及び第三十五条第三項の規定により支給する遺族補償一時金にあつては、従前の遺族補償費を受けることができる者が第三十三条各号の一に該当するに至つた時)から二年を経過したときは、することができない。
(遺族補償費等の支給の制限)
第三十八条 遺族補償費又は遺族補償一時金は、被認定者又は認定死亡者を故意に死亡させた者には、支給しない。被認定者又は認定死亡者の死亡前に、その者の死亡によつて遺族補償費又は遺族補償一時金を受けることができる先順位又は同順位となるべき者を故意に死亡させた者についても、同様とする。
2 遺族補償費は、遺族補償費を受けることができる先順位又は同順位の者を故意に死亡させた者には、以後支給しない。
第五節 児童補償手当、療養手当及び葬祭料
(児童補償手当の支給)
第三十九条 都道府県知事は、その認定に係る被認定者で第二十五条第一項の政令で定める年齢に達しないものの指定疾病による障害の程度が政令で定める障害の程度に該当するものであるときは、当該被認定者を養育している者の請求に基づき、公害健康被害認定審査会の意見をきいて、その障害の程度に応じた政令で定める額(指定疾病による障害の程度が当該政令で定める障害の程度のうち最も重度である障害の程度に該当するものである場合にあつては、その額と第二十六条第一項の政令で定める介護加算額とを合算した額)の児童補償手当を支給する。
2 内閣総理大臣は、前項の障害の程度を定める政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、中央公害対策審議会の意見をきかなければならない。
3 第二十七条及び第二十八条(第五項を除く。)の規定は、児童補償手当の支給について準用する。
(療養手当の支給)
第四十条 都道府県知事は、その認定に係る被認定者が当該認定に係る指定疾病について第十九条第一項各号に掲げる療養を受けており、かつ、その病状の程度が政令で定める病状の程度に該当するものであるときは、当該被認定者の請求に基づき、その病状の程度に応じた政令で定める額の療養手当を支給する。
2 第二十四条第四項の規定は、療養手当の支給の請求について準用する。
(葬祭料の支給)
第四十一条 都道府県知事は、その認定に係る被認定者が当該認定に係る指定疾病に起因して死亡したときは、葬祭を行なう者の請求に基づき、政令で定める額の葬祭料を支給する。
2 第二十九条第二項、第四項及び第五項並びに第三十七条の規定は、葬祭料の支給及びその請求について準用する。
第六節 補償給付の制限等
(補償給付の制限)
第四十二条 被認定者又は被認定者で第二十五条第一項の政令で定める年齢に達しないものを養育している者が、正当な理由がなく療養に関する指示に従わなかつたときは、都道府県知事は、補償給付の全部又は一部を支給しないことができる。
(補償給付の額についての他原因の参酌)
第四十三条 都道府県知事は、第三条第一項第二号から第七号までに掲げる補償給付の額を定め、又はその額を改定するにあたり、被認定者又は認定死亡者に係る指定疾病による障害が発生し、若しくはその程度が増進したこと、指定疾病がなおらないこと又は指定疾病に起因して死亡したことにつき他の原因があると認めるときは、公害健康被害認定審査会の意見をきいて、当該他の原因を参酌することができる。
第七節 公害健康被害認定審査会
(設置)
第四十四条 この法律によりその権限に属させられた事項を行なわせるため、第一種地域又は第二種地域の全部又は一部をその区域に含む都道府県又は第四条第三項の政令で定める市に、公害健康被害認定審査会を置く。
(組織等)
第四十五条 公害健康被害認定審査会は、委員十五人以内で組織する。
2 委員は、医学、法律学その他公害に係る健康被害の補償に関し学識経験を有する者のうちから、都道府県知事又は第四条第三項の政令で定める市の長が任命する。
3 委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。
4 第一項及び第二項に定めるもののほか、公害健康被害認定審査会の組織、運営その他公害健康被害認定審査会に関し必要な事項は、都道府県又は第四条第三項の政令で定める市の条例で定める。
第三章 公害保健福祉事業
第四十六条 都道府県知事又は第四条第三項の政令で定める市の長は、指定疾病によりそこなわれた被認定者の健康を回復させ、その回復した健康を保持させ、及び増進させる等被認定者の福祉を増進し、並びに第一種地域又は第二種地域における当該地域に係る指定疾病による被害を予防するために必要なリハビリテーションに関する事業、転地療養に関する事業その他の政令で定める公害保健福祉事業を行なうものとする。
2 都道府県知事又は第四条第三項の政令で定める市の長は、前項の公害保健福祉事業を行なおうとするときは、環境庁長官の承認を受けなければならない。
第四章 費用
第一節 費用の支弁及び財源
(費用の支弁)
第四十七条 都道府県又は第四条第三項の政令で定める市は、次に掲げる費用を支弁する。
一 当該都道府県知事又は当該市の長が行なう補償給付の支給(第十四条第二項の規定による求償に対する支払を含む。以下この章において同じ。)に要する費用
二 この法律又はこの法律に基づく命令の規定により当該都道府県知事又は当該市の長が行なう事務の処理に要する費用
(納付金)
第四十八条 前条の規定により都道府県又は第四条第三項の政令で定める市が支弁する前条第一号に掲げる費用は、政令で定めるところにより、協会が当該都道府県又は第四条第三項の政令で定める市に対して納付する納付金をもつて充てる。
2 都道府県知事又は第四条第三項の政令で定める市の長が第四十六条の規定に基づいて行なう公害保健福祉事業に要する費用のうちその四分の三に相当する額については、政令で定めるところにより、協会が当該都道府県又は第四条第三項の政令で定める市に対して納付する納付金をもつて充てる。
(納付金の財源)
第四十九条 前条の規定による納付金のうち、第四条第一項の認定に係る被認定者及び認定死亡者に関する補償給付の支給に要する費用に充てるためのものの全部並びに第一種地域に係る指定疾病による被害に関して行なう公害保健福祉事業に要する費用に充てるためのものの三分の二については、第五十二条第一項の規定により協会が徴収する汚染負荷量賦課金のほか、別に法律で定めるところにより徴収される金員をもつて充て、第一種地域に係る指定疾病による被害に関して行なう公害保健福祉事業に要する費用に充てるためのものの三分の一については、第五十一条の規定に基づく政府の補助金をもつて充てる。
2 前条の規定による納付金のうち、第四条第二項の認定に係る被認定者及び認定死亡者に関する補償給付の支給に要する費用に充てるためのものの全部並びに第二種地域に係る指定疾病による被害に関して行なう公害保健福祉事業に要する費用に充てるためのものの三分の二については、第六十二条第一項の規定により協会が徴収する特定賦課金をもつて充て、第二種地域に係る指定疾病による被害に関して行なう公害保健福祉事業に要する費用に充てるためのものの三分の一については、第五十一条の規定に基づく政府の補助金をもつて充てる。
3 第一項の規定により前条の規定による納付金に充てるべき汚染負荷量賦課金及び別に法律で定めるところにより徴収される金員の配分比率は、第五十二条第一項に規定するばい煙発生施設等設置者その他の者の第一種地域に係る指定疾病に影響を与える大気の汚染の原因である物質の排出の状況その他の事情を勘案して、政令で定める。
(交付金)
第五十条 政府は、政令で定めるところにより、都道府県又は第四条第三項の政令で定める市に対し、第四十七条の規定により当該都道府県又は当該市が支弁する同条第二号に掲げる費用の二分の一に相当する金額を交付する。
(補助金)
第五十一条 政府は、協会に対し、第四十八条第二項の規定による納付金の三分の一に相当する金額を補助するものとする。
第二節 汚染負荷量賦課金
(汚染負荷量賦課金の徴収及び納付義務)
第五十二条 協会は、第四十八条の規定による納付金のうち、第四条第一項の認定に係る被認定者及び認定死亡者に関する補償給付の支給に要する費用並びに第一種地域に係る指定疾病による被害に関して行なう公害保健福祉事業に要する費用に充てるためのもの、第十三条第二項の規定による支払に要する費用並びに協会が行なう事務の処理に要する費用の一部に充てるため、大気汚染防止法(昭和四十三年法律第九十七号)第二条第二項に規定するばい煙発生施設(鉱山保安法(昭和二十四年法律第七十号)第二条第二項本文に規定する鉱山に設置される施設でこれに相当するものを含む。第六十二条第一項において同じ。)のうち第一種地域に係る指定疾病に影響を与える大気の汚染の原因である政令で定める物質を排出するものが設置される工場又は事業場で、最大排出ガス量が政令で定める地域の区分に応じて政令で定める量以上であるものを、各年度(毎年四月一日から翌年三月三十一日までをいう。以下この章において同じ。)の初日において設置している事業者(以下「ばい煙発生施設等設置者」という。)から、毎年度、汚染負荷量賦課金を徴収する。
2 ばい煙発生施設等設置者は、汚染負荷量賦課金を納付する義務を負う。
(汚染負荷量賦課金の額)
第五十三条 各ばい煙発生施設等設置者から徴収する汚染負荷量賦課金の額は、当該ばい煙発生施設等設置者が排出する前条第一項の政令で定める各物質ごとの単位排出量当たりの賦課金額に前年度の初日の属する年における年間排出量を乗じて得た額の合計額とする。
2 前項の年間排出量の算定の方式は、総理府令、通商産業省令で定める。
(単位排出量当たりの賦課金額)
第五十四条 前条第一項の単位排出量当たりの賦課金額は、第三条第一項に掲げる補償給付の種類ごとの受給者見込数及び平均受給金額の見込額その他の事項に基づき算定した第五十二条第一項に規定する費用に充てるための汚染負荷量賦課金の総額として当該年度において必要であると見込まれる金額とばい煙発生施設等設置者が排出する同項の政令で定める各物質ごとの前年度の初日の属する年における総排出量とを基礎として、当該物質による大気の汚染の状況に応じた地域の別に従い、政令で定める。
(汚染負荷量賦課金の納付等)
第五十五条 ばい煙発生施設等設置者は、各年度ごとに、汚染負荷量賦課金を、総理府令、通商産業省令で定める事項を記載した申告書に添えて、その年度の初日から四十五日以内に協会に納付しなければならない。
2 前項の申告書には、第五十二条第一項の政令で定める物質の年間排出量を証する書類として総理府令、通商産業省令で定める書類を添附しなければならない。
3 協会は、ばい煙発生施設等設置者が第一項に規定する期間内に同項の申告書を提出しないとき、又は同項の申告書に総理府令、通商産業省令で定める事項の記載の誤りがあると認めたときは、汚染負荷量賦課金の額を決定し、これをばい煙発生施設等設置者に通知する。
4 前項の規定による通知を受けたばい煙発生施設等設置者は、汚染負荷量賦課金を納付していないときは同項の規定により協会が決定した汚染負荷量賦課金の全額を、納付した汚染負荷量賦課金の額が同項の規定により協会が決定した汚染負荷量賦課金の額に足りないときはその不足額を、その通知を受けた日から十五日以内に協会に納付しなければならない。
5 ばい煙発生施設等設置者が納付した汚染負荷量賦課金の額が、第三項の規定により協会が決定した汚染負荷量賦課金の額をこえる場合には、協会は、そのこえる額について、未納の汚染負荷量賦課金その他この節の規定による徴収金があるときはこれに充当し、なお残余があれば還付し、未納の徴収金がないときはこれを還付しなければならない。
(汚染負荷量賦課金の延納)
第五十六条 協会は、ばい煙発生施設等設置者の申請に基づき、その者の納付すべき汚染負荷量賦課金を延納させることができる。
(督促及び滞納処分)
第五十七条 汚染負荷量賦課金その他この節の規定による徴収金を納付しない者があるときは、協会は、期限を指定して督促しなければならない。
2 前項の規定により督促するときは、協会は、納付義務者に対して督促状を発する。
3 前項の督促状により指定する第一項の期限は、督促状を発する日から起算して十日以上経過した日でなければならない。
4 協会は、第一項の規定による督促を受けた者がその指定の期限までに汚染負荷量賦課金その他この節の規定による徴収金を完納しないときは、納付義務者の住所地又はその財産の所在地の市町村(特別区を含む。以下この条において同じ。)に対して、その徴収を請求することができる。
5 市町村は、前項の規定による徴収の請求を受けたときは、地方税の滞納処分の例により、滞納処分をすることができる。この場合においては、協会は、徴収金額の百分の四に相当する金額を当該市町村に交付しなければならない。
6 市町村が第四項の規定による徴収の請求を受けた日から三十日以内に滞納処分に着手せず、又は九十日以内にこれを結了しないときは、協会は、環境庁長官及び通商産業大臣の認可を受けて、国税滞納処分の例により、滞納処分をすることができる。
(延滞金)
第五十八条 前条第一項の規定により汚染負荷量賦課金の納付を督促したときは、協会は、その督促に係る汚染負荷量賦課金の額につき年十四・五パーセントの割合で、納付期限の翌日からその完納又は財産差押えの日の前日までの日数により計算した延滞金を徴収する。ただし、督促に係る汚染負荷量賦課金の額が千円未満であるときは、この限りでない。
2 前項の場合において、汚染負荷量賦課金の額の一部につき納付があつたときは、その納付の日以降の期間に係る延滞金の額の計算の基礎となる汚染負荷量賦課金の額は、その納付のあつた汚染負荷量賦課金の額を控除した額とする。
3 延滞金の計算において、前二項の汚染負荷量賦課金の額に千円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。
4 前三項の規定によつて計算した延滞金の額に百円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。
5 延滞金は、次の各号の一に該当する場合には、徴収しない。ただし、第四号の場合には、その執行を停止し、又は猶予した期間に対応する部分の金額に限る。
一 督促状に指定した期限までに汚染負荷量賦課金を完納したとき。
二 納付義務者の住所又は居所がわからないため、公示送達の方法によつて督促したとき。
三 延滞金の額が百円未満であるとき。
四 汚染負荷量賦課金について滞納処分の執行を停止し、又は猶予したとき。
五 汚染負荷量賦課金を納付しないことについてやむを得ない理由があると認められるとき。
(先取特権の順位)
第五十九条 汚染負荷量賦課金その他この節の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。
(徴収金の徴収手続)
第六十条 汚染負荷量賦課金その他この節の規定による徴収金は、この節に別段の定めがある場合を除き、国税徴収の例により徴収する。
(総理府令、通商産業省令への委任)
第六十一条 この節に定めるもののほか、汚染負荷量賦課金その他この節の規定による徴収金に関し必要な事項は、総理府令、通商産業省令で定める。
第三節 特定賦課金
(特定賦課金の徴収及び納付義務)
第六十二条 協会は、第四十八条の規定による納付金のうち、第四条第二項の認定に係る被認定者及び認定死亡者に関する補償給付の支給に要する費用並びに第二種地域に係る指定疾病による被害に関して行なう公害保健福祉事業に要する費用に充てるためのもの並びに協会が行なう事務の処理に要する費用の一部に充てるため、第二種地域に係る指定疾病に影響を与える大気の汚染又は水質の汚濁の原因である物質を排出した大気汚染防止法第二条第二項に規定するばい煙発生施設、同法第十七条第一項に規定する特定施設又は水質汚濁防止法(昭和四十五年法律第百三十八号)第二条第二項に規定する特定施設の設置者(過去の設置者を含む。以下「特定施設等設置者」という。)から、毎年度、特定賦課金を徴収する。
2 特定施設等設置者は、特定賦課金を納付する義務を負う。
(特定賦課金の算定方法)
第六十三条 各特定施設等設置者から徴収する特定賦課金の額の算定方法は、当該第二種地域に係る指定疾病に影響を与えた大気の汚染又は水質の汚濁の原因である物質の排出量その他の事情を考慮して、政令で定める。
2 内閣総理大臣及び通商産業大臣は、前項の規定に基づき政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、中央公害対策審議会の意見をきかなければならない。
(特定賦課金の額の決定、通知等)
第六十四条 協会は、前条第一項の政令で定める特定賦課金の算定方法に従い、各特定施設等設置者が納付すべき特定賦課金の額を決定し、当該各特定施設等設置者に対し、その者が納付すべき特定賦課金の額及び納付すべき期限その他必要な事項を通知しなければならない。
2 前項の規定により特定賦課金の額が定められた後、特定賦課金の額を変更する必要が生じたときは、協会は、当該各特定施設等設置者が納付すべき特定賦課金の額を変更し、当該各特定施設等設置者に対し、変更後の特定賦課金の額を通知しなければならない。
3 協会は、特定施設等設置者が納付した特定賦課金の額が、前項の規定による変更後の特定賦課金の額に満たない場合には、その不足する額について、同項の規定による通知とともに納付すべき期限その他必要な事項を通知し、同項の規定による変更後の特定賦課金の額をこえる場合には、そのこえる額について、未納の特定賦課金その他この節の規定による徴収金があるときはこれに充当し、なお残余があれば還付し、未納の徴収金がないときはこれを還付しなければならない。
(共同納付の場合の特例)
第六十五条 協会は、特定施設等設置者の全部又は一部から当該各特定施設等設置者が納付すべき特定賦課金について納付の方法を明らかにして共同で納付する旨の申出があり、これを承認したときは、前条第一項の規定にかかわらず、当該各特定施設等設置者に係る特定賦課金の額を定めないものとする。
2 前項の規定による承認を受けた特定施設等設置者が当該第二種地域に係る特定賦課金を納付すべき特定施設等設置者の一部であるときは、協会は、特定賦課金の額の決定に準じて、それらの特定施設等設置者が共同で納付すべき特定賦課金の額を定めなければならない。
3 第一項の規定による承認を受けた特定施設等設置者が当該第二種地域に係る特定賦課金を納付すべき特定施設等設置者の全部である場合にはその納付すべき特定賦課金の総額を、その一部である場合には前項の規定により定められた額を共同で納付したときは、当該特定施設等設置者は、その特定賦課金を納付したものとみなす。
4 前条第二項及び第三項の規定は、第二項の共同で納付すべき特定賦課金について準用する。
(準用)
第六十六条 第五十六条から第六十条までの規定は、特定賦課金について準用する。
(総理府令、通商産業省令への委任)
第六十七条 この節に定めるもののほか、特定賦課金その他この節の規定による徴収金に関し必要な事項は、総理府令、通商産業省令で定める。
第五章 公害健康被害補償協会
第一節 総則
(目的)
第六十八条 協会は、ばい煙発生施設等設置者からの汚染負荷量賦課金の徴収及び特定施設等設置者からの特定賦課金の徴収、第十三条第二項の規定による支払並びに第四十八条の規定による納付金の納付に関する業務を行なうことを目的とする。
(法人格)
第六十九条 協会は、法人とする。
(事務所)
第七十条 協会は、主たる事務所を東京都に置く。
2 協会は、環境庁長官及び通商産業大臣の認可を受けて、必要な地に従たる事務所を置くことができる。
(登記)
第七十一条 協会は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(名称の使用制限)
第七十二条 協会でない者は、公害健康被害補償協会という名称を用いてはならない。
(民法の準用)
第七十三条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条及び第五十条の規定は、協会について準用する。
第二節 役員及び職員
(役員)
第七十四条 協会に、役員として、会長一人、理事三人以内及び監事一人を置く。
(役員の職務及び権限)
第七十五条 会長は、協会を代表し、その業務を総理する。
2 理事は、会長の定めるところにより、協会を代表し、会長を補佐して協会の業務を掌理し、会長に事故があるときはその職務を代理し、会長が欠員のときはその職務を行なう。
3 監事は、協会の業務を監査する。
4 監事は、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、会長又は環境庁長官及び通商産業大臣に意見を提出することができる。
(役員の任命)
第七十六条 会長及び監事は、環境庁長官及び通商産業大臣が任命する。
2 理事は、環境庁長官及び通商産業大臣の認可を受けて、会長が任命する。
(役員の任期)
第七十七条 役員の任期は、四年とする。ただし、補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 役員は、再任されることができる。
(役員の欠格条項)
第七十八条 政府又は地方公共団体の職員(非常勤の者を除く。)は、役員となることができない。
(役員の解任)
第七十九条 環境庁長官及び通商産業大臣又は会長は、それぞれその任命に係る役員が前条の規定により役員となることができない者に該当するに至つたときは、その役員を解任しなければならない。
2 環境庁長官及び通商産業大臣又は会長は、それぞれその任命に係る役員が次の各号の一に該当するとき、その他役員たるに適しないと認めるときは、その役員を解任することができる。
一 心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき。
二 職務上の義務違反があるとき。
3 会長は、前項の規定により理事を解任しようとするときは、環境庁長官及び通商産業大臣の認可を受けなければならない。
(役員の兼職禁止)
第八十条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。ただし、環境庁長官及び通商産業大臣の承認を受けたときは、この限りでない。
(代表権の制限)
第八十一条 協会と会長又は第七十五条第二項の規定により協会を代表する理事との利益が相反する事項については、会長及び理事は、代表権を有しない。この場合においては、監事が協会を代表する。
(代理人の選任)
第八十二条 会長は、理事又は協会の職員のうちから、協会の従たる事務所の業務の一部に関し一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する代理人を選任することができる。
(職員の任命)
第八十三条 協会の職員は、会長が任命する。
(役員及び職員の公務員たる性質)
第八十四条 協会の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
第三節 評議員会
(評議員会)
第八十五条 協会に、評議員会を置く。
2 評議員会は、会長の諮問に応じ、協会の業務の運営に関する重要事項を調査審議する。
3 評議員会は、前項の事項に関し、会長に意見を述べることができる。
4 評議員会は、評議員二十人以内で組織する。
(評議員)
第八十六条 評議員は、ばい煙発生施設等設置者若しくは特定施設等設置者の加入している団体又はその連合団体の役員及び協会の業務の適正な運営に必要な学識経験を有する者のうちから、環境庁長官及び通商産業大臣が任命する。
2 評議員の任期は、二年とする。
3 第七十七条第一項ただし書及び第二項並びに第七十九条第二項の規定は、評議員について準用する。
(総理府令、通商産業省令への委任)
第八十七条 前二条に定めるもののほか、評議員会の組織及び運営に関し必要な事項は、総理府令、通商産業省令で定める。
第四節 業務
(業務の範囲)
第八十八条 協会は、第六十八条の目的を達成するため、次の業務を行なう。
一 ばい煙発生施設等設置者及び特定施設等設置者からの汚染負荷量賦課金及び特定賦課金の徴収
二 第十三条第二項の規定による支払
三 第四十八条の規定による納付金の納付
四 前三号に掲げる業務に附帯する業務
(業務の委託)
第八十九条 協会は、環境庁長官及び通商産業大臣の認可を受けて、前条第一号に掲げる業務(汚染負荷量賦課金及び特定賦課金の決定及び滞納処分を除く。)の一部を、ばい煙発生施設等設置者又は特定施設等設置者の加入している団体で政令で定めるものに委託することができる。
2 前項の認可があつた場合においては、同項の政令で定める団体は、他の法律の規定にかかわらず、同項の規定による委託を受けて、当該業務を行なうことができる。
(業務方法書)
第九十条 協会は、業務開始の際、業務方法書を作成し、環境庁長官及び通商産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の業務方法書に記載すべき事項は、総理府令、通商産業省令で定める。
(資料の提出命令)
第九十一条 協会は、第八十八条第一号に掲げる業務に関し必要があると認めるときは、ばい煙発生施設等設置者又は特定施設等設置者に対し、文書その他の物件の提出を求めることができる。
第五節 財務及び会計
(事業年度)
第九十二条 協会の事業年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。
(予算等の認可)
第九十三条 協会は、毎事業年度、予算、事業計画及び資金計画を作成し、当該事業年度の開始前に、環境庁長官及び通商産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(財務諸表)
第九十四条 協会は、毎事業年度、財産目録、貸借対照表及び損益計算書(以下この条において「財務諸表」という。)を作成し、当該事業年度の終了後三月以内に環境庁長官及び通商産業大臣に提出し、その承認を受けなければならない。
2 協会は、前項の規定により財務諸表を環境庁長官及び通商産業大臣に提出するときは、これに当該事業年度の事業報告書及び予算の区分に従い作成した決算報告書並びに事業報告書、財務諸表及び決算報告書に関する監事の意見書を添附しなければならない。
(利益及び損失の処理)
第九十五条 協会は、毎事業年度、損益計算において利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめ、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならない。
2 協会は、毎事業年度、損益計算において損失を生じたときは、前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならない。
(借入金)
第九十六条 協会は、環境庁長官及び通商産業大臣の認可を受けて、長期借入金又は短期借入金をすることができる。
2 前項の規定による短期借入金は、当該事業年度内に償還しなければならない。ただし、資金の不足のため償還することができないときは、その償還することができない金額に限り、環境庁長官及び通商産業大臣の認可を受けて、これを借り換えることができる。
3 前項ただし書の規定により借り換えた短期借入金は、一年以内に償還しなければならない。
(補助金)
第九十七条 政府は、予算の範囲内において、協会に対し、その事務の処理に要する費用を補助することができる。
(余裕金の運用)
第九十八条 協会は、次の方法によるほか、業務上の余裕金を運用してはならない。
一 国債その他環境庁長官及び通商産業大臣の指定する有価証券の保有
二 銀行その他環境庁長官及び通商産業大臣の指定する金融機関への預金又は郵便貯金
三 信託会社又は信託業務を営む銀行への金銭信託
(給与及び退職手当の支給の基準)
第九十九条 協会は、その役員及び職員に対する給与及び退職手当の支給の基準を定めようとするときは、環境庁長官及び通商産業大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(総理府令、通商産業省令への委任)
第百条 この法律に定めるもののほか、協会の財務及び会計に関し必要な事項は、総理府令、通商産業省令で定める。
第六節 監督
(監督)
第百一条 協会は、環境庁長官及び通商産業大臣が監督する。
2 環境庁長官及び通商産業大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、協会に対し、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(報告の徴収等)
第百二条 環境庁長官及び通商産業大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、協会若しくは第八十九条第一項の規定による委託を受けた者(以下「受託者」という。)に対し、その業務に関し報告を求め、又はその職員に、協会若しくは受託者の事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる。ただし、受託者に対しては、当該受託業務の範囲内に限る。
2 前項の規定により検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
3 第一項の規定による検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第七節 補則
(解散)
第百三条 協会の解散については、別に法律で定める。
(大蔵大臣との協議)
第百四条 環境庁長官及び通商産業大臣は、次の場合には、大蔵大臣に協議しなければならない。
一 第八十九条第一項、第九十条第一項、第九十三条又は第九十六条第一項若しくは第二項ただし書の認可をしようとするとき。
二 第九十四条第一項又は第九十九条の承認をしようとするとき。
三 第九十八条第一号又は第二号の規定による指定をしようとするとき。
2 内閣総理大臣及び通商産業大臣は、第九十条第二項又は第百条の総理府令、通商産業省令を定めようとするときは、大蔵大臣に協議しなければならない。
(他の法令の準用)
第百五条 不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)及び政令で定めるその他の法令については、政令で定めるところにより、協会を国の行政機関とみなして、これらの法令を準用する。
第六章 不服申立て
第一節 認定又は補償給付の支給に関する処分に対する不服申立て
(異議申立て及び審査請求)
第百六条 認定又は補償給付の支給に関する処分に不服がある者は、その処分をした都道府県知事に対し、異議申立てをすることができる。
2 認定又は補償給付の支給に関する処分に不服がある者のする審査請求は、公害健康被害補償不服審査会に対してしなければならない。
3 第一項の異議申立て及び前項の審査請求は、時効の中断に関しては、裁判上の請求とみなす。
(行政不服審査法の適用関係)
第百七条 前条第二項の審査請求については、行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)第二十五条の規定は、適用しない。
2 前条第二項の審査請求についての行政不服審査法第二十条及び第三十一条の規定の適用に関しては、同法第二十条第二号中「三箇月」とあるのは「二箇月」と、同法第三十一条中「その庁の職員」とあるのは「審査員」とする。
(不服申立てと訴訟との関係)
第百八条 認定又は補償給付の支給に関する処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する公害健康被害補償不服審査会の裁決を経た後でなければ、提起することができない。
第二節 賦課徴収に関する処分等に対する審査請求
(審査請求)
第百九条 この法律に基づいてした協会の処分に不服がある者は、環境庁長官及び通商産業大臣に対し、行政不服審査法による審査請求をすることができる。
(不服申立てと訴訟との関係)
第百十条 この法律に基づいて協会がした処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する環境庁長官及び通商産業大臣の裁決を経た後でなければ、提起することができない。
第三節 公害健康被害補償不服審査会
第一款 設置及び組織
(設置)
第百十一条 第百六条第二項の審査請求の事件を取り扱わせるため、環境庁長官の所轄の下に、公害健康被害補償不服審査会(以下この章において「審査会」という。)を置く。
(組織)
第百十二条 審査会は、委員六人をもつて組織する。
2 委員のうち三人は、非常勤とすることができる。
(委員の任命)
第百十三条 委員は、人格が高潔であつて、公害問題に関する識見を有し、かつ、医学、法律学その他公害に係る健康被害の補償に関する学識経験を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。
2 委員の任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、前項の規定にかかわらず、同項に定める資格を有する者のうちから、委員を任命することができる。
3 前項の場合においては、任命後最初の国会で、両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認を得られないときは、内閣総理大臣は、その委員を罷免しなければならない。
(任期)
第百十四条 委員の任期は、三年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 委員は、再任されることができる。
3 委員の任期が満了したときは、当該委員は、後任者が任命されるまで引き続きその職務を行なうものとする。
(職権の行使)
第百十五条 委員は、独立してその職権を行なう。
(身分保障)
第百十六条 委員は、次の各号の一に該当する場合を除いては、在任中、その意に反して罷免されることがない。
一 禁治産、準禁治産又は破産の宣告を受けたとき。
二 禁錮以上の刑に処せられたとき。
三 審査会により、心身の故障のため職務の執行ができないと認められたとき、又は職務上の義務違反その他委員たるに適しない行為があると認められたとき。
(罷免)
第百十七条 内閣総理大臣は、委員が前条各号の一に該当するときは、その委員を罷免しなければならない。
(会長)
第百十八条 審査会に会長を置き、委員の互選によつて常勤の委員のうちからこれを定める。
2 会長は、会務を総理し、審査会を代表する。
3 会長に事故があるときは、あらかじめその指名する常勤の委員が、その職務を代理する。
(委員会議)
第百十九条 審査会の会務の処理(審査請求の事件の取扱いを除く。)は、委員の全員の会議(以下この条において「委員会議」という。)の議決によるものとする。
2 委員会議は、会長が招集する。
3 委員会議は、会長及び三人以上の委員の出席がなければ、これを開き、議決をすることができない。
4 委員会議の議事は、出席した委員の過半数をもつて決し、可否同数のときは、会長の決するところによる。
5 審査会が第百十六条第三号の規定による認定をするには、前項の規定にかかわらず、出席した委員のうちの本人を除く全員の一致がなければならない。
6 会長に事故がある場合の第三項の規定の適用については、第百十八条第三項の規定により会長の職務を代理する常勤の委員は、会長とみなす。
(審査請求事件の取扱い)
第百二十条 審査会は、委員のうちから審査会が指名する者三人をもつて構成する合議体で、審査請求の事件を取り扱う。
2 前項の規定にかかわらず、次の各号の一に該当する場合においては、委員の全員をもつて構成する合議体で、審査請求の事件を取り扱う。
一 前項の合議体が、法令の解釈適用について、その意見が前に審査会のした裁決に反すると認めた場合
二 前項の合議体を構成する者の意見が分かれたため、その合議体としての意見が定まらない場合
三 審査会が、委員の全員をもつて構成する合議体において審査請求事件を取り扱う旨の議決をした場合
第百二十一条 前条第一項又は第二項の各合議体を構成する者を審査員とし、うち一人を審査長とする。
2 前条第一項の合議体のうち、会長がその構成に加わるものにあつては、会長が審査長となり、その他のものにあつては、審査会の指名する委員が審査長となる。
3 前条第二項の合議体にあつては、会長が審査長となり、会長に事故があるときは、第百十八条第三項の規定により会長の職務を代理する常勤の委員が審査長となる。
第百二十二条 第百二十条第一項の合議体は、これを構成するすべての審査員の、同条第二項の合議体は、四人以上の審査員の出席がなければ、会議を開き、議決をすることができない。
2 第百二十条第一項の合議体の議事は、その合議体を構成する審査員の過半数をもつて決する。
3 第百二十条第二項の合議体の議事は、出席した三人以上の審査員の賛成をもつて決し、可否それぞれ三人のときは、審査長の決するところによる。
(服務)
第百二十三条 委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。
2 委員は、在任中、政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。
3 常勤の委員は、在任中、内閣総理大臣の許可のある場合を除くほか、報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行なつてはならない。
(給与)
第百二十四条 委員の給与は、別に法律で定める。
(庶務)
第百二十五条 審査会の庶務は、環境庁企画調整局において処理する。
第二款 審査請求の手続
(利害関係人に対する審査請求書の副本の送付)
第百二十六条 審査会は、審査請求を受理したときは、審査請求書の副本を利害関係人に送付しなければならない。
(審理の期日及び場所)
第百二十七条 審査会は、審理の期日及び場所を定め、原処分をした行政庁、審査請求人及び参加人(以下この款において「当事者」という。)に通知しなければならない。
(審理の公開)
第百二十八条 審理は、公開して行なう。ただし、当事者の申立てがあつたときは、公開しないことができる。
(審理の指揮)
第百二十九条 審理の指揮は、審査長が行なう。
(意見の陳述等)
第百三十条 当事者及びその代理人は、審理の期日に出頭して意見を述べることができる。この場合において、当事者又はその代理人は、審査会の許可を得て、補佐人と共に出頭することができる。
(受診命令)
第百三十一条 審査会は、審理を行なうため特に必要があると認めるときは、審査請求人に対し、認定又は補償給付の支給に係る者について、審査会の指定する医師の診断を受けるべきことを命ずることができる。
(調書)
第百三十二条 審査会は、審理の期日における経過について、調書を作成しなければならない。
2 当事者及び利害関係人は、審査会の許可を得て、前項の調書を閲覧することができる。
(合議の非公開)
第百三十三条 審査会の合議は、公開しない。
(不服申立ての制限)
第百三十四条 この款の規定により審査会がした処分については、行政不服審査法による不服申立てをすることができない。
(総理府令への委任)
第百三十五条 この款に定めるもののほか、審査請求の手続に関し必要な事項は、総理府令で定める。
第七章 雑則
(認定を受けた者等に対する報告の徴収等)
第百三十六条 都道府県知事は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、認定又は補償給付を受け、又は受けようとする者に対し、報告又は文書その他の物件の提出を求めることができる。
(受診命令)
第百三十七条 都道府県知事は、認定又は補償給付の支給に関し必要があると認めるときは、認定又は補償給付を受け、又は受けようとする者に対し、その認定又は補償給付の支給に係る者について、当該都道府県知事の指定する医師の診断を受けるべきことを命ずることができる。
(補償給付の一時差止め)
第百三十八条 補償給付を受けることができる者が、第百三十六条の規定により報告又は文書その他の物件の提出を求められて、正当な理由がなくこれに従わず、若しくは虚偽の報告をし、若しくは虚偽の記載をした文書を提出し、又は正当な理由がなく前条の規定による命令に従わないときは、都道府県知事は、その者に対する補償給付を一時差し止めることができる。
(公害医療機関に対する報告の徴収等)
第百三十九条 都道府県知事は、療養の給付に関し必要があると認めるときは、公害医療機関に対し報告若しくは診療録その他の帳簿書類の提出若しくは提示を求め、公害医療機関の開設者若しくは管理者、医師、薬剤師その他の従業者に対して出頭を求め、又はその職員に、公害医療機関の施設に立ち入り、関係者に質問させ、若しくはその設備若しくは診療録、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2 第百二条第二項の規定は前項の規定による質問及び検査について、同条第三項の規定は前項の規定による権限について準用する。
3 公害医療機関が、第一項の規定により報告若しくは診療録その他の帳簿書類の提出若しくは提示を求められて、正当な理由がなくこれに従わず、若しくは虚偽の報告をし、又は公害医療機関の開設者若しくは管理者、医師、薬剤師その他の従業者が、同項の規定により出頭を求められて、正当な理由がなくこれに従わず、同項の規定による質問に対して、正当な理由がなく答弁せず、若しくは虚偽の答弁をし、若しくは同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したときは、都道府県知事は、当該公害医療機関に対する診療報酬の支払を一時差し止めることができる。
(診療を行なつた者等に対する報告の徴収等)
第百四十条 都道府県知事は、認定又は補償給付(療養の給付を除く。以下この項において同じ。)の支給に関し必要があると認めるときは、当該認定の申請に係る診断又は補償給付に関する診療、薬剤の支給若しくは手当を行なつた者又はこれを使用する者に対し、その行なつた診断又は診療、薬剤の支給若しくは手当につき、報告若しくは診療録、帳簿書類その他の物件の提示を求め、又はその職員に質問させることができる。
2 第百二条第二項の規定は前項の規定による質問について、同条第三項の規定は前項の規定による権限について準用する。
(ばい煙発生施設等設置者等に対する報告の徴収等)
第百四十一条 環境庁長官又は通商産業大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、ばい煙発生施設等設置者又は特定施設等設置者に対し、その業務に関し報告を求め、又はその職員に、ばい煙発生施設等設置者若しくは特定施設等設置者の工場若しくは事業場に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2 第百二条第二項の規定は前項の規定による検査について、同条第三項の規定は前項の規定による権限について準用する。
(期間の計算)
第百四十二条 この法律又はこの法律に基づく命令に規定する期間の計算については、別段の定めがある場合を除き、民法の期間に関する規定を準用する。
(戸籍事項の無料証明)
第百四十三条 市町村長(特別区の区長を含むものとし、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあつては、区長とする。)は、都道府県知事、第四条第三項の政令で定める市の長又は補償給付を受けることができる者に対し、条例で定めるところにより、認定を申請しようとする者、被認定者(死亡した者を含む。)、指定疾病にかかつていた者で認定を受けないで死亡したもの、補償給付を受けようとする者又は補償給付を受けていた者の戸籍に関し、無料で証明を行なうことができる。
(政令の制定とその経過措置)
第百四十四条 この法律に基づき政令を制定し、又は改廃する場合においては、その政令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置を定めることができる。
第八章 罰則
第百四十五条 第二十三条第三項、第四十五条第三項又は第百二十三条第一項の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
第百四十六条 次の各号の一に該当する者は、十万円以下の罰金に処する。
一 第九十一条の規定により文書その他の物件の提出を求められて、これに従わず、又は虚偽の記載をした文書を提出した者
二 第百三十六条の規定により報告又は文書その他の物件の提出を求められて、これに従わず、又は虚偽の報告をし、若しくは虚偽の記載をした文書を提出した者
三 第百四十条第一項の規定により報告若しくは診療録、帳簿書類その他の物件の提示を求められて、これに従わず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による質問に対して、答弁せず、若しくは虚偽の答弁をした者
第百四十七条 第百二条第一項の規定により報告を求められて、これに従わず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その違反行為をした協会又は受託者の役員又は職員は、五万円以下の罰金に処する。
2 第百四十一条第一項の規定により報告を求められて、これに従わず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、五万円以下の罰金に処する。
第百四十八条 第七十二条の規定に違反した者は、三万円以下の罰金に処する。
第百四十九条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第百四十六条第一号若しくは第三号、第百四十七条第二項又は前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の刑を科する。
第百五十条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした協会の役員は、三万円以下の過料に処する。
一 この法律の規定により環境庁長官及び通商産業大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。
二 第七十一条第一項の規定による政令に違反して登記することを怠つたとき。
三 第八十八条に規定する業務以外の業務を行なつたとき。
四 第九十八条の規定に違反して業務上の余裕金を運用したとき。
五 第百一条第二項の規定による環境庁長官及び通商産業大臣の命令に違反したとき。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一年をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第一章、第二章第七節、第五章、第百四十五条中第四十五条第三項に係る部分、第百四十六条第一号、第百四十七条第一項、第百四十九条、第百五十条、附則第三条、附則第四条第二項、附則第五条から附則第八条まで、附則第十九条、附則第二十条及び附則第二十五条から附則第二十七条までの規定は公布の日から起算して九月をこえない範囲内において政令で定める日から、附則第四条第一項、附則第三十条及び附則第三十一条の規定は公布の日から施行する。
(最初に徴収する汚染負荷量賦課金に関する特例)
第二条 この法律の施行後最初に徴収する汚染負荷量賦課金に関する第五十二条第一項及び第五十五条第一項の規定の適用については、第五十二条第一項に規定する年度は、同項の規定にかかわらず、この法律の施行の日に始まるものとする。
(協会の設立)
第三条 環境庁長官及び通商産業大臣は、協会の会長又は監事となるべき者を指名する。
2 前項の規定により指名された会長又は監事となるべき者は、協会の成立の時において、この法律の規定により、それぞれ会長又は監事に任命されたものとする。
第四条 環境庁長官及び通商産業大臣は、設立委員を命じて、協会の設立に関する事務を処理させる。
2 設立委員は、協会の設立の準備を完了したときは、その旨を環境庁長官及び通商産業大臣に届け出るとともに、その事務を前条第一項の規定により指名された会長となるべき者に引き継がなければならない。
第五条 附則第三条第一項の規定により指名された会長となるべき者は、前条第二項の規定による事務の引継ぎを受けたときは、遅滞なく、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。
2 協会は、設立の登記をすることによつて成立する。
(協会の設立に伴う経過措置)
第六条 第五章の規定の施行の際現に公害健康被害補償協会という名称を使用している者については、第七十二条の規定は、同章の規定の施行後六月間は、適用しない。
第七条 協会の最初の事業年度は、第九十二条の規定にかかわらず、その成立の日に始まり、昭和五十年三月三十一日に終わるものとする。
第八条 協会の最初の事業年度の予算、事業計画及び資金計画については、第九十三条中「当該事業年度の開始前に」とあるのは、「協会の成立後遅滞なく」とする。
(最初に任命される公害健康被害補償不服審査会の委員に関する特例)
第九条 この法律の施行後最初に任命される公害健康被害補償不服審査会の委員の任命について、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、第百十三条第二項及び第三項の規定の例による。
2 この法律の施行後最初に任命される公害健康被害補償不服審査会の委員の任期は、第百十四条第一項本文の規定にかかわらず、内閣総理大臣の指定するところにより、二人は一年、二人は二年、二人は三年とする。
(公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法の廃止)
第十条 公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法(昭和四十四年法律第九十号。以下「旧法」という。)は、廃止する。
(旧法の廃止に伴う経過措置)
第十一条 この法律の施行の際現に旧法第三条第一項の認定を受けている者は、政令で定めるところにより、この法律による認定を受けた者とみなす。
第十二条 この法律の施行の際現に旧法第三条第一項の認定の申請をしている者に対しては、従前の例によりその認定をすることができる。この場合においては、その認定を受けた者は、政令で定めるところにより、この法律による認定を受けた者とみなす。
第十三条 前二条の規定によりこの法律による認定を受けた者とみなされる者の指定疾病に係る第七条第一項の規定による認定の有効期間の始期は、この法律の施行の日とする。
第十四条 前条に規定する者に対して交付された旧法第三条第三項の公害医療手帳は、次項の規定により第四条第四項の公害医療手帳が交付されるまでの間に限り、同項の公害医療手帳とみなす。
2 都道府県知事は、この法律の施行後すみやかに、前条に規定する者に対し、第四条第四項の公害医療手帳を交付しなければならない。
第十五条 旧法第三条第一項の認定を受けた者及び附則第十二条の規定により旧法第三条第一項の規定の例による認定を受けた者についてのこの法律の施行前の医療又は介護に係る費用の支給に関しては、なお従前の例による。
第十六条 旧法第三条第一項の認定を受けた者が旧法第六条第一項に規定する保険医療機関等又は生活保護指定医療機関で医療を受けた場合における当該保険医療機関等又は生活保護指定医療機関に対する医療費の支払については、なお従前の例による。
第十七条 旧法第三条第一項の認定を受けた者が当該認定に係る疾病に関し損害賠償その他の給付を受けた場合における旧法の規定により支給された医療費、医療手当及び介護手当の額に相当する金額の返還に関しては、なお従前の例による。
2 前項においてなお従前の例によることとされる旧法第二十九条に基づく政令の規定により旧法第二十四条の規定による返還金の一部に相当する金額の納付を受けた公害防止事業団は、その額の金銭を、旧法第十六条第一項に規定する法人が存続する限りその法人に引き継ぐものとする。
第十八条 この法律の施行前にした行為及びこの法律の附則においてなお従前の例によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
第十九条 第二条第一項から第三項までの規定に基づき、旧法の規定により定められた指定地域及び当該指定地域に係る疾病を第二条第一項の第一種地域又は同条第二項の第二種地域及び当該地域に係る疾病として定める政令の立案をしようとするときは、同条第四項の規定は、適用しない。
(公害対策基本法の一部改正)
第二十条 公害対策基本法(昭和四十二年法律第百三十二号)の一部を次のように改正する。
第二十八条第一項中「八十人以内」を「九十人以内」に改め、同条第二項中「公害の防止」を「公害対策」に改める。
(下水道法の一部改正)
第二十一条 下水道法(昭和三十三年法律第七十九号)の一部を次のように改正する。
第十一条の二に次の一項を加える。
2 継続して下水を排除して公共下水道を使用しようとする水質汚濁防止法(昭和四十五年法律第百三十八号)第二条第二項に規定する特定施設の設置者(以下「特定施設設置者」という。)は、前項の規定により届出をする場合を除き、建設省令で定めるところにより、あらかじめ、使用開始の時期を公共下水道管理者に届け出なければならない。
第十二条の二中「定めるもの」の下に「及び継続して下水を排除して公共下水道を使用する特定施設設置者」を加える。
第十八条の次に次の一条を加える。
(汚濁原因者負担金)
第十八条の二 公共下水道管理者は、公害健康被害補償法(昭和四十八年法律第百十一号)第六十二条第一項の規定により特定賦課金を徴収された場合においては、政令で定めるところにより、当該特定賦課金に係る同法第六条に規定する指定疾病に影響を与える水質の汚濁の原因である物質を当該公共下水道に排除した特定施設設置者(過去の特定施設設置者を含む。)に当該特定賦課金の納付に要する費用の全部又は一部を負担させることができる。
第二十五条の十中「第八条」の下に「、第十一条の二、第十二条から第十三条まで」を加え、「第十八条」を「第十八条の二」に、「これらの規定」を「第七条、第八条、第十一条の二、第十二条の二、第十五条から第十八条まで、第二十一条から第二十三条まで及び第二十五条」に改め、「「流域下水道」と」の下に「、第十一条の二、第十二条第一項、第十三条第一項」を、「「流域下水道管理者」と」の下に「、第十二条中「公共下水道を」とあるのは「流域下水道を」と、同条中「公共下水道若しくは流域下水道」、「公共下水道からの放流水又は流域下水道」又は「公共下水道からの放流水若しくは流域下水道」とあり、第十三条第一項中「公共下水道若しくは流域下水道」又は「公共下水道からの放流水若しくは流域下水道」とあるのは「流域下水道」と、同項中「排水区域内の他人の土地又は建築物に立ち入り、排水設備、」とあるのは「他人の土地又は建築物に立ち入り、流域下水道に接続する排水施設又は」と、第十八条の二中「公共下水道」とあるのは「流域下水道又は当該流域下水道に係る流域関連公共下水道」と」を加える。
第三十九条の二中「公共下水道管理者」の下に「又は流域下水道管理者」を、「公共下水道」の下に「又は流域下水道」を、「使用する者」の下に「で政令で定めるもの及び継続して下水を排除して公共下水道又は流域下水道を使用する特定施設設置者」を加える。
第四十九条第一号中「第十一条の二」、同条第二号中「第十二条の二」及び同条第三号中「第十三条第一項」の下に「(第二十五条の十において準用する場合を含む。)」を加える。
(下水道法の一部改正に伴う経過措置)
第二十二条 この法律の施行の際現に継続して下水を排除して公共下水道又は流域下水道を使用している水質汚濁防止法第二条第二項に規定する特定施設の設置者(前条の規定による改正前の下水道法第十一条の二の規定により届出をした者及び届出をしなければならない者に該当する者を除く。)は、この法律の施行の日から起算して三十日以内に、その旨を公共下水道管理者又は流域下水道管理者に届け出なければならない。
2 前項の規定による届出をしなければならない者については、前条の規定による改正後の下水道法第十二条の二の規定は、この法律の施行の日から起算して三十日間は、適用しない。
3 第一項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、五万円以下の罰金に処する。
(地方自治法の一部改正)
第二十三条 地方自治法の一部を次のように改正する。
附則第六条の五第三号中「第十八条を」を「第十八条及び第十八条の二を」に改め、「損傷負担金」の下に「、汚濁原因者負担金」を加える。
(特別職の職員の給与に関する法律の一部改正)
第二十四条 特別職の職員の給与に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十二号)の一部を次のように改正する。
第一条第十二号の二の次に次の一号を加える。
十二の二の二 公害健康被害補償不服審査会の常勤の委員
第一条第十八号の二の次に次の一号を加える。
十八の二の二 公害健康被害補償不服審査会の非常勤の委員
別表第一官職名の欄中「労働保険審査会委員」を
労働保険審査委員会
公害健康被害補償不服審査会の常勤の委員
に改める。
(地方税法の一部改正)
第二十五条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第七十二条の五第一項第六号中「繊維工業構造改善事業協会」の下に「、公害健康被害補償協会」を加える。
(所得税法の一部改正)
第二十六条 所得税法(昭和四十年法律第三十三号)の一部を次のように改正する。
別表第一第一号の表中公営企業金融公庫の項の次に次のように加える。
公害健康被害補償協会
公害健康被害補償法(昭和四十八年法律第百十一号)
(法人税法の一部改正)
第二十七条 法人税法(昭和四十年法律第三十四号)の一部を次のように改正する。
別表第二第一号の表中高圧ガス保安協会の項の次に次のように加える。
公害健康被害補償協会
公害健康被害補償法(昭和四十八年法律第百十一号)
(社会保険診療報酬支払基金法の一部改正)
第二十八条 社会保険診療報酬支払基金法(昭和二十三年法律第百二十九号)の一部を次のように改正する。
第十三条第二項中「、結核予防法」を「又は結核予防法」に改め、「又は公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法(昭和四十四年法律第九十号)第六条第四項」及び「又は公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法第六条第五項」を削る。
(社会保険診療報酬支払基金法の一部改正に伴う経過措置)
第二十九条 この法律の施行前に行なわれた旧法第四条第一項各号の医療に係る旧法第六条第一項に規定する保険医療機関等又は生活保護指定医療機関に対する医療費の支払に関しては、前条の規定による改正後の社会保険診療報酬支払基金法第十三条第二項の規定にかかわらず、なお従前の例による。
(通商産業省設置法の一部改正)
第三十条 通商産業省設置法(昭和二十七年法律第二百七十五号)の一部を次のように改正する。
第九条の二第六号の次に次の一号を加える。
六の二 公害健康被害補償法(昭和四十八年法律第百十一号)の施行に関する事務で通商産業省の所掌に属するものを処理すること。
(環境庁設置法の一部改正)
第三十一条 環境庁設置法(昭和四十六年法律第八十八号)の一部を次のように改正する。
第四条中第二十六号を第二十六号の二とし、第二十五号の次に次の一号を加える。
二十六 公害健康被害補償法(昭和四十八年法律第百十一号)の施行に関する事務を処理すること。
第三十二条 環境庁設置法の一部を次のように改正する。
第四条第二十六号の二を削る。
第五条第三項中「並びに国立公害研究所及び公害研修所に関する事務」を「、国立公害研究所及び公害研修所に関する事務並びに公害健康被害補償不服審査会の庶務に関する事務」に改める。
第八条中「公害研修所」を
公害研修所
公害健康被害補償不服審査会
に改める。
第十条の次に次の一条を加える。
(公害健康被害補償不服審査会)
第十条の二 公害健康被害補償不服審査会に関しては、公害健康被害補償法の定めるところによる。
内閣総理大臣臨時代理 国務大臣 三木武夫
法務大臣 田中伊三次
大蔵大臣 愛知揆一
厚生大臣 斎藤邦吉
通商産業大臣 中曽根康弘
建設大臣臨時代理 国務大臣 江崎真澄
自治大臣 江崎真澄