(目的)
第一条 この法律は、電気が供給されていないか又は充分に供給されていない農山漁村に電気を導入して、当該農山漁村における農林漁業の生産力の増大と農山漁家の生活文化の向上を図ることを目的とする。
(都道府県農山漁村電気導入計画)
第二条 都道府県知事は、電気が供給されていないか又は充分に供給されていないと認められる農山漁村について、当該農山漁村にある農業、林業又は漁業を営む者が組織する営利を目的としない法人で政令で定めるもの(以下「農林漁業団体」という。)で当該農山漁村に電気を導入する事業を行おうとする者の申請により、当該農山漁村に電気を導入するための電気導入計画を定め、これを農林大臣に提出しなければならない。
2 前項の電気導入計画には、左の事項を調査の上、省令の定めるところにより記載しなければならない。
二 当該農山漁村に電気を導入するための施設の建設計画
(全国農山漁村電気導入計画)
第三条 農林大臣は、前条の計画に基いて、通商産業大臣と協議の上、毎年度、全国農山漁村電気導入計画を定めなければならない。
(資金の貸付)
第四条 政府は、前条の計画を実施するため、農林漁業団体に対し、農林漁業資金融通法(昭和二十六年法律第百五号)の定めるところにより、当該農林漁業団体が主として自己又は組合員その他これを組織する者の用に供する電気を導入するために必要とする左の各号に掲げる資金を貸し付けるものとする。
一 発電施設(これに伴う送電変電配電設備を含む。以下同じ。)の造成、復旧又は取得に必要な資金
二 送電配電施設(変電受電設備を含む。以下同じ。)の造成、復旧又は取得に必要な資金
三 電気事業者(電気及びガスに関する臨時措置に関する法律(昭和二十七年法律第三百四十一号)の規定によりその例によるとされた公益事業令(昭和二十五年政令第三百四十三号)第二条第四号に規定するものをいう。以下同じ。)に対して負担する工事負担金
(国の補助)
第五条 国は、開拓地における農林漁業団体が必要とする前条各号に掲げる資金に対して都道府県が補助を行うに要する経費に対し、毎年度、予算の範囲内において、政令の定めるところにより、補助金を交付することができる。
(事業計画書の提出)
第六条 第四条の規定により資金の融通を受け又は前条の規定により補助金の交付を受けて発電施設又は送電配電施設を造成、復旧又は取得しようとする農林漁業団体は、省令の定めるところにより、左の各号に掲げる事項を記載した事業計画書を農林大臣に提出しなければならない。
四 当該施設の利用上必要となる電気の供給又は発生した電気の託送若しくは売買に関する事項
(農林大臣の指導)
第七条 農林大臣は、第四条の規定により資金の融通を受け、又は第五条の規定により補助金の交付を受けて発電施設又は送電配電施設を造成、復旧若しくは取得しようとする農林漁業団体に対し、当該施設の建設に関し、当該施設を造成、復旧又は取得したこれらの農林漁業団体に対しては当該施設の維持、管理又は利用に関し、政令の定めるところにより、必要な事項について指導しなければならない。
(都道府県その他の団体の指導)
第八条 農林大臣は、前条の指導の事務を、都道府県その他の法人で省令で定めるものに行わせることができる。
2 政府は、毎年度、予算の範囲内で、政令の定めるところにより、都道府県に対しては第二条第二項の調査を行うために必要な経費の一部を、前項の規定により同項の事務を行う者に対しては当該事務を行うために必要な経費の一部を補助することができる。
(電気事業者との協議等)
第九条 農林漁業団体で当該農山漁村に電気を導入する事業を行おうとする者は、その造成、復旧若しくは取得しようとする発電施設又は送電配電施設の利用上必要な電気の供給又は発生する電気の託送若しくは売買について、電気事業者に協議を求めることができる。
2 前項に規定する協議がととのわないとき又は協議することができないときは、当該農林漁業団体は、当該事業の公益性及び緊急性について農林大臣の認定を受けた上、政令の定めるところにより、通商産業大臣に裁定を求めることができる。但し、認定を受けた日から二箇月を経過したときは、この限りでない。
3 裁定は、公開による聴聞会を開いて当事者及び利害関係人の意見をきいて、前項の申請があつた日から百二十日以内になされなければならない。
4 通商産業大臣は、裁定にあたつては、左に掲げる基準によつてしなければならない。
一 電気の供給については、当該農林漁業団体が真に必要とする最低量をこえず、発生した電気の託送又は売買については、当該施設を維持するため真にやむを得ない程度をこえないこと。
二 電気事業者の電気の供給、設備、経理その他の事情を考慮し、一般需要者及び電気事業者に不当な負担を課さないこと。
5 裁定は、その申請の範囲をこえることができない。
6 通商産業大臣は、裁定の効力に期限を附することができる。
7 通商産業大臣は、裁定をしようとするときは、農林大臣に協議しなければならない。
8 第二項の裁定の通知が当事者になされたときは、裁定の定めるところにより、当事者間に協議がととのつたものとみなす。
9 裁定の後において、事情の変更その他新たな事由が生じたときは、当事者の一方は協議の内容の変更又は解除について、通商産業大臣に裁定を求めることができる。この場合においては、第三項から前項までの規定を準用する。
(対価等の不服の訴)
第十条 前条第二項若しくは第九項の裁定において定める電気の供給又は発生する電気の託送若しくは売買の対価又は料金の額に不服がある当事者は、同条第八項の通知を受けた日から九十日以内に訴をもつてその増減を請求することができる。
2 前項の訴においては、裁定の際の他の一方の当事者又はその承継人を被告とする。
(土地改良事業との調整)
第十一条 政府は、この法律の目的を達成するため、土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)の規定により施行される土地改良事業がかんがい排水施設(えん堤及び水路をいう。)を伴う場合において、当該土地改良事業と発電事業との調整、必要な資金の確保等発電水力の開発について、適切な措置を講じなければならない。
(電気及びガスに関する臨時措置に関する法律との関係)
第十二条 この法律は、電気及びガスに関する臨時措置に関する法律の適用を排除するものではない。