海上運送法
法令番号: 法律第百八十七号
公布年月日: 昭和24年6月1日
法令の形式: 法律
海上運送法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十四年六月一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百八十七号
海上運送法
目次
第一章
総則(第一條・第二條)
第二章
船舶運航事業(第三條―第三十二條)
第三章
船舶貸渡業、海上運送取扱業、海運仲立業、海運代理店業、檢数業、鑑定業及び檢量業(第三十三條―第三十九條)
第四章
海上運送事業に使用する船舶の規格及び船級(第四十條・第四十一條)
第五章
雜則(第四十二條―第四十五條)
第六章
罰則(第四十六條―第五十條)
附則
第一章 総則
(この法律の目的)
第一條 この法律は、海上運送の秩序を維持し、海上運送事業の健全な発達を図り、もつて公共の福祉を増進することを目的とする。
(定義)
第二條 この法律において「海上運送事業」とは、船舶運航事業、船舶貸渡業、海上運送取扱業、海運仲立業、海運代理店業、檢数業、鑑定業及び檢量業をいう。
2 この法律において「船舶運航事業」とは、海上において船舶により人又は物の運送をする事業で港湾運送事業(海上運送に附随して貨物の船積又は陸揚のためはしけ又は引船により貨物の運ぱんをする事業をいう。)以外のものをいい、これを定期航路事業と不定期航路事業とに分ける。
3 この法律において「定期航路事業」とは、一定の航路に旅客船(十三人以上の旅客定員を有する船舶をいう。)を就航させて一定の日程表と賃率表とに從つて運送をする旨を公示して行う船舶運航事業をいい、「不定期航路事業」とは、その他の船舶運航事業をいう。
4 この法律において「船舶貸渡業」とは、船舶の貸渡(期間よう船を含む。以下同じ。)又は運航の委託をする事業をいう。
5 この法律において「海上運送取扱業」とは、自己の名をもつて海上における船舶による物品の運送(以下「物品海上運送」という。)の取次をする事業をいう。
6 この法律において「海運仲立業」とは、物品海上運送又は船舶の貸渡、賣買若しくは運航の委託の媒介をする事業をいう。
7 この法律において「海運代理店業」とは、船舶運航事業又は船舶貸渡業を営む者のために通常その事業に属する取引の代理をする事業をいう。
8 この法律において「檢数」とは、船積貨物の積込又は陸揚を行うに際し、その貨物の箇数の計算又は受渡の証明をすることをいい、「檢数業」とは、檢数をする事業をいい、「檢数人」とは、職業として檢数に從事する者をいう。
9 この法律において「鑑定」とは、船積貨物の積付に関する証明、調査及び鑑定をすることをいい、「鑑定業」とは、鑑定をする事業をいい、「鑑定人」とは、職業として鑑定に從事する者をいう。
10 この法律において「檢量」とは、船積貨物の積込又は陸揚を行うに際し、その貨物の容積又は重量の計算又は証明をすることをいい、「檢量業」とは、檢量をする事業をいい、「檢量人」とは、職業として檢量に從事する者をいう。
第二章 船舶運航事業
(事業の免許)
第三條 定期航路事業を営もうとする者は、航路ごとに、運輸大臣の免許を受けなければならない。
2 前項の免許を受けようとする者は、省令の定める手続により、事業計画を記載した申請書を運輸大臣に提出しなければならない。
3 第一項の免許には、條件を附することができる。
(免許基準)
第四條 運輸大臣は、定期航路事業を永続的に確保するために、前條の免許の申請が左に掲げる基準(第二十條の規定により補助金を受けることができるような定期航路事業について、第二号及び第五号を除く。)に適合するときは、これを免許しなければならない。
一 当該事業が免許されることによつて、当該航路における全供給輸送力が全輸送需要に対し著しく供給過剩にならないこと。
二 当該事業が供給する單位輸送力が当該航路における平均輸送需要量に対し著しく均衡を失しないものであること。
三 当該事業に使用する船舶及びけい留施設その他の輸送施設が当該航路における輸送需要の性質及び当該航路の自然的性質に適應したものであること。
四 当該事業が利用者の利便に適合する運航計画を有すること。
五 当該事業の経理的基礎が確実性を有すること。
六 当該事業を営む者の責任の範囲が明確であるような経営形態であること。
七 当該事業を営もうとする者が左に掲げる事由に該当しないこと。
イ 一年以上の懲役又は禁この刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなつた日から二年を経過しないこと。
ロ 定期航路事業の免許の取消を受け、その取消の日から二年を経過しないこと。
ハ 当該事業を営もうとする者が法人である場合において、その法人の役員がイ又はロに掲げる事由に該当すること。
(免許の決定)
第五條 運輸大臣は、第三條の免許の申請が、前條の基準に適合しているかどうかを決定しようとするときは、運輸審議会にはかり、その意見を聞かなければならない。
(公聽会)
第六條 運輸審議会は、前條の規定により附議された事項について決定をしようとするときは、あらかじめ期日及び場所を公示して、公聽会を開き、申請者及び利害関係人の意見を聞かなければならない。
(運航開始の義務)
第七條 定期航路事業の免許を受けた者は、運輸大臣の指定する期間内に当該事業計画に基き運航を開始しなければならない。
2 天災その他やむを得ない事由により、前項の期間内に運航を開始することができないときは、運輸大臣は、申請によりその期間を延長することができる。
(運賃及び料金の認可)
第八條 定期航路事業を営む者(以下「定期航路事業者」という。)は、旅客、手荷物及び小荷物の運賃及び料金については、省令の定める手続により、運輸大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同樣である。
2 運輸大臣は、前項の認可に関する処分をしようとするときは、運輸審議会にはからなければならない。
(運送約款の認可)
第九條 定期航路事業者は、省令の定める手続により、運送約款を定め、運輸大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同樣である。
2 運送約款においては、旅客、手荷物及び小荷物の運賃及び料金その他の運送條件並びに運送に関する事業者の責任に関する事項を定めなければならない。
(運賃及び料金等の公示)
第十條 定期航路事業者は、省令の定める方法により、第八條第一項の運賃及び料金並びに前條の運送約款を公示しなければならない。
(運航計画の変更)
第十一條 定期航路事業者がその運航計画を変更しようとするときは、省令の定める手続により、運輸大臣の認可を受けなければならない。
(運送の引受義務)
第十二條 定期航路事業者は、左の場合を除いて、旅客、手荷物及び小荷物の運送を拒絶してはならない。
一 当該運送が法令の規定、公の秩序又は善良の風俗に反するとき。
二 天災その他やむを得ない事由による運送上の支障があるとき。
三 当該運送が第九條の規定により認可を受けた運送約款に適合しないとき。
(運送の順序等)
第十三條 定期航路事業者は、旅客、手荷物及び小荷物を運送の申込の順序により、運送しなければならない。但し、第二十六條の規定による運輸大臣の命令があるときその他正当な事由があるときは、この限りでない。
2 定期航路事業者は、旅客、手荷物及び小荷物の運送をする場合において、特定の利用者に対し、不当な差別的取扱をしてはならない。
(事業計画に定める運航の確保)
第十四條 定期航路事業者は、天災その他やむを得ない事由のある場合の外、事業計画に定める運航を怠つてはならない。
2 運輸大臣は、定期航路事業者が前項の規定に違反すると認めるときは、当該定期航路事業者に対し、事業計画に從い運航すべきことを命ずることができる。
3 運輸大臣は、前項の命令をしようとするときは、当該定期航路事業者に対し、あらかじめ期日及び場所を指定して、聽聞をしなければならない。当該定期航路事業者は、聽聞の場所において、意見を述べ、及び証拠を提出することができる。
(事業の休廃止の許可)
第十五條 定期航路事業者は、その事業を休止し、又は廃止しようとするときは、省令の定める手続により、運輸大臣の許可を受けなければならない。
2 運輸大臣は、前項の許可に関する処分をしようとするときは、運輸審議会にはからなければならない。
3 第六條の規定は、前項の規定により附議された事項について運輸審議会が決定をしようとする場合に準用する。
(事業の停止及び免許の取消)
第十六條 運輸大臣は、定期航路事業者が左の各号の一に該当するときは、当該事業の停止を命じ、又は免許を取り消すことができる。
一 この法律又はこの法律に基く命令若しくは処分に違反したとき。
二 資産状態が不良となり、又は事業設備が不充分となつたため事業の経営が著しく困難になつたと認められるとき。
2 運輸大臣は、前項の処分をしようとするときは、運輸審議会にはかり、その意見を聞かなければならない。
3 第六條の規定は、前項の規定により附議された事項について運輸審議会が決定をしようとする場合に準用する。
(免許の失効)
第十七條 定期航路事業の免許は、第七條第一項の規定により運輸大臣の指定する期間内又は同條第二項の規定に基き延長された期間内に事業を開始しないときは、その効力を失う。
(事業の讓渡及び讓受の認可等)
第十八條 定期航路事業の讓渡及び讓受は、運輸大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
2 定期航路事業を経営する会社の合併及び解散は、運輸大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。但し、定期航路事業を経営する会社が定期航路事業を行わない会社を合併する場合は、この限りでない。
3 第一項の規定により認可を受けて定期航路事業を讓り受けた者又は前項の規定により認可を受けて定期航路事業を経営する会社が他の会社と合併した場合における合併後存続する会社若しくは合併により設立された会社は、免許に基く権利義務を承継する。
4 定期航路事業者が死亡した場合において、相続人が被相続人の行つていた定期航路事業を引き続き営もうとするときは、運輸大臣の認可を受けなければならない。
5 相続人は、前項の規定により被相続人の死亡後六十日以内に認可の申請をした場合においては、その認可があつた旨又はその認可をしない旨の通知を受けるまでは、第三條第一項の規定にかかわらず定期航路事業を営むことができる。
6 運輸大臣は、第一項、第二項又は第四項の認可に関する処分をしようとするときは、運輸審議会にはかり、その意見を聞かなければならない。
7 第六條の規定は、前項の規定により附議された事項について運輸審議会が決定をしようとする場合に準用する。
(サービスの改善に関する命令)
第十九條 運輸大臣は、定期航路事業者の事業について利用者の利便を阻害している事実があると認めるときは、運輸審議会にはかり、当該定期航路事業者に対し、左の各号に掲げる事項を命ずることができる。
一 旅客、手荷物及び小荷物の運賃及び料金その他の運送條件又は運送約款を変更すること。
二 運航計画を変更すること。
2 第六條の規定は、前項の規定により附議された事項について運輸審議会が決定をしようとする場合に準用する。
(補助金の交付)
第二十條 政府は、定期航路事業であつて当該航路の性質上経営が困難なものに対し、郵便物の運送等公益上必要な最少限度の運送を確保するため、毎年予算の範囲内で補助金を交付することができる。
2 前項の規定により補助金を受けている者の帳簿の整理及び保存その他会計の処理に関して必要な事項は、省令で定める。
(報告の徴收)
第二十一條 運輸大臣は、必要があると認めるときは、定期航路事業者に対し、省令の定める樣式により、その業務に関し報告を求めることができる。
2 定期航路事業者は、前項の報告を求められたときは、眞実且つ正確な報告をしなければならない。
(立入檢査)
第二十二條 運輸大臣は、この法律の施行を確保するため必要があると認めるときは、その職員に定期航路事業に使用する船舶、事業場その他の場所に臨んで、帳簿書類その他の物件に関し檢査をさせ、又は質問をさせることができる。
2 当該職員は、前項の規定により檢査又は質問をする場合には、その身分を示す証票を携帶し、定期航路事業者その他の関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
(不定期航路事業の届出)
第二十三條 不定期航路事業を営む者は、省令の定める手続により、その事業の開始の日から三十日以内に、運輸大臣にその旨を届け出なければならない。
第二十四條 不定期航路事業を営む者が、その事業を廃止したときは、省令の定める手続により、その事業を廃止した日から三十日以内に、運輸大臣にその旨を届け出なければならない。
(準用規定)
第二十五條 第二十一條の規定は、不定期航路事業に準用する。
(航海命令)
第二十六條 運輸大臣は、当該航海が災害の救助その他公共の安全の維持のため必要であり、且つ、自発的に当該航海を行う者がない場合又は著しく不足する場合に限り、船舶運航事業を営む者(以下「船舶運航事業者」という。)に対し航路、船舶又は運送すべき人若しくは物を指定して航海を命ずることができる。政令で定める重要物資の運送を確保するため必要であり、且つ、自発的に当該航海を行う者がない場合又は著しく不足する場合についても同樣である。
2 前項の規定による命令で次條の規定による損失の補償を伴うものは、これによつて必要となる補償金の総額が國会の議決を経た予算の金額をこえない範囲内でこれをしなければならない。
3 運輸大臣は、第一項の命令をしようとするときは、緊急やむを得ない場合を除くの外、運輸審議会にはかり、その意見を聞かなければならない。
(損失の補償)
第二十七條 前條の規定による命令により損失を受けた者に対しては、その損失を補償する。
2 前項の規定による補償の額は、当該船舶運航事業者がその航海を行つたことにより通常生ずべき損失及びその命令を受けなかつたならば通常得らるべき利益が得られなかつたことによる損失の額とする。
3 運輸大臣は、前項の補償の額を決定しようとするときは、運輸審議会にはかり、その意見を聞かなければならない。
4 前三項に定めるものの外、損失の補償に関し必要な事項は、省令で定める。
(私的独占禁止法及び事業者團体法の適用除外)
第二十八條 船舶運航事業者が他の船舶運航事業者とする運賃及び料金その他の運送條件、航路、配船並びに積取に関する事項を内容とする協定、契約又は共同行爲(以下「協定等」という。)であつて左の各号に該当する事項を内容としないものについては、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)及び事業者團体法(昭和二十三年法律第百九十一号)の規定を適用しない。但し、不公正な競爭方法を用いる場合又は一定の取引分野における競爭を実質的に制限することにより不当に運賃及び料金を引き上げることとなる場合は、この限りでない。
一 運賃のべもどし(荷主が一定期間内においてその荷物の全部又は一部の運送をもつぱら当該協定等に参加している船舶運航事業者にさせることを約束し、且つ、これを実行することを條件として右期間経過後当該荷主に対し、当該期間内に受け取つた運賃その他の料金の一部を返還することをいう。)により荷主を拘束すること。
二 競爭抑圧船(当該協定等に参加している船舶運航事業者が競爭を抑圧し、又は制限することを目的として当該協定等に参加していない船舶運航事業者の船舶を特定航路から排除するため当該航路に使用する船舶をいう。)を使用すること。
三 荷主が当該協定等に参加していない船舶運航事業者にその荷物の運送をさせたことを理由として、当該荷主に対し、その荷物の運送を拒絶し、制限し、その他差別的取扱をすること。
(運送に関する協定の届出)
第二十九條 船舶運航事業者は、前條の協定等をしようとするときは、あらかじめ運輸大臣に届け出なければならない。協定等を変更しようとする場合も同樣である。
(禁止行爲)
第三十條 船舶運航事業者は、左の各号に掲げる事項をしてはならない。
一 荷物の量の多寡によつて荷主と締結する契約につき不公正又は不当に差別的な取扱をし、又は荷物の積付の場所その他の施設、通常の條件における荷物の積込若しくは陸揚若しくは損害賠償の請求の調整及び解決について荷主に対して不公正又は不当に差別的な取扱をすること。
二 特定の人、地域又は運送の方法に対して、不当に優先的な取扱をし、若しくは利益を與え、又は不当に不利な取扱をし、若しくは不利益を與えること。
三 船舶運航事業者が加入を申し出た場合において他の加盟者と同等の條件で加入することを認めず、又は荷主若しくは港によつて、若しくは日本の輸出業者に対して外國の競爭者に比べ不当に差別的な運賃及び料金を設定し、その他不当な運賃及び料金を設定しようとする明示又は默示の貨客の運送に関する結合、協定又は申し合わせに参加すること。
(公正取引委員会の権限)
第三十一條 この法律の規定に基く運輸大臣の処分は、協定等が第二十八條各号若しくは前條各号に該当するかどうかについての公正取引委員会の認定を拘束し、又は公正取引委員会が当該協定等について私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反の疑があるという理由に基いて審判開始決定書を送付し、その他同法に基く権限を行使することを妨げるものと解釈してはならない。
(現に存する協定等)
第三十二條 この法律の規定は、この法律施行の日に現に存する協定等に適用する。
第三章 船舶貸渡業、海上運送取扱業、海運仲立業、海運代理店業、檢数業、鑑定業及び檢量業
(準用規定)
第三十三條 第二十一條、第二十三條及び第二十四條の規定は、船舶貸渡業、海上運送取扱業、海運仲立業、海運代理店業、檢数業、鑑定業及び檢量業に準用する。
(氏名の明示)
第三十四條 檢数業、鑑定業又は檢量業を営む者は、檢数、鑑定又は檢量(以下「檢数等」という。)の依頼を受けた場合には、当該檢数等に從事する者の氏名を依頼者及び関係人に告げなければならない。
(登録)
第三十五條 檢数人、鑑定人又は檢量人(以下「檢数人等」という)になろうとする者は、その者の住所を管轄する海運局の檢数人登録簿、鑑定人登録簿又は檢量人登録簿に、省令の定める手続により、登録を受けなければならない。
(欠格事由)
第三十六條 左の各号の一に該当する者は、檢数人等になることができない。
一 禁治産者又は準禁治産者
二 一年以上の懲役又は禁この刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなつた日から一年を経過しない者
三 第三十九條第二項の規定により登録のまつ消を受けた日から一年を経過しない者
(登録のまつ消)
第三十七條 海運局長は、檢数人等が左の各号の一に該当する場合には、その登録をまつ消しなければならない。
一 業務を廃止したとき。
二 死亡したとき。
三 前條各号の一に該当するに至つたとき。
(登録料の納付)
第三十八條 檢数人等の登録を受けようとする者は、登録料として千円を納めなければならない。
(禁止行爲)
第三十九條 檢数人等は、船積貨物について左の各号に該当する行爲をしてはならない。
一 箇数の不正な計算又は受渡の虚僞の証明
二 積付に関する虚僞の証明又は鑑定
三 容積又は重量の不正な計算
2 海運局長は、檢数人等が前項の規定に違反したときは、一年以内の期間を限り当該檢数人等の業務を停止し、又はその登録をまつ消することができる。
3 海運局長は、前項に規定する処分をしようとするときは、当該檢数人等に対し、あらかじめ期日及び場所を指定して、聽聞をしなければならない。当該檢数人等は、聽聞の場所において、意見を述べ、及び証拠を提出することができる。
第四章 海上運送事業に使用する船舶の規格及び船級
(船舶の規格)
第四十條 運輸大臣は、海上運送事業に使用する鋼製船舶についてその規格を定め、これを公示し、当該規格により船舶を建造することを奬励することができる。
(船級)
第四十一條 運輸大臣は、海上運送事業の健全な発達を図るため必要があると認めるときは、船舶の建造を注文しようとする者に対し、日本又は外國の船級協会の定める船級の登録を受けることのできる船舶を建造することができる。
第五章 雜則
(國、日本國有鉄道又は船舶運営会に関する規定)
第四十二條 この法律の規定は、國、日本國有鉄道又は船舶運営会が海上運送事業を営む場合には、適用しない。
2 運輸大臣が日本國有鉄道法(昭和二十三年法律第二百五十六号)第五十三條の規定により日本國有鉄道の連絡船航路の開始の認可に関する処分をする場合において、定期航路事業については、この法律第四條の規定の趣旨をもあわせ考慮して行わなければならない。
3 國において定期航路事業を営もうとするときは、当該官廳は、運輸大臣に協議しなければならない。
(五トン未満の船舶等に関する規定)
第四十三條 この法律の規定は、左に掲げる船舶のみをもつて営む海上運送事業には、適用しない。
一 総トン数五トン未満の船舶
二 ろかいのみをもつて運轉し、又は主としてろかいをもつて運轉する舟
(湖、沼又は河川において営む船舶運航の事業)
第四十四條 この法律の規定は、もつぱら湖、沼又は河川において営む船舶運航の事業に準用する。この場合において前條中「総トン数五トン未満の船舶」とあるのは「総トン数二十トン未満の船舶」と読み替えるものとする。
(訴願)
第四十五條 この法律に基いてした行政官廳の処分に不服がある者は、訴願をすることができる。
第六章 罰則
第四十六條 第二十六條第一項の規定による命令に從わない者は、六箇月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
第四十七條 第三條第一項の規定による免許を受けないで定期航路事業を営んだ者は、三十万円以下の罰金に処する。
第四十八條 左の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。
一 第八條第一項、第九條第一項、第十一條又は第十五條の規定により認可又は許可を受けなければならない事項を受けないでした者
二 第十條、第十二條、第十三條又は第三十四條の規定に違反した者
三 第三十五條の規定による登録を受けないで職業として檢数等に從事した者
四 第二十二條第一項の規定による檢査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対し陳述をせず、若しくは虚僞の陳述をした者
五 第二十一條(第二十五條及び第三十三條において準用する場合を含む。)の規定による報告をせず、又は虚僞の報告をした者
六 第二十九條の規定により届出をしなければならない事項をしないでした者
第四十九條 第二十三條又は第二十四條(第三十三條においてこれらの規定を準用する場合を含む。)の規定による届出をせず、又は虚僞の届出をした者は、一万円以下の過料に処する。
第五十條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者がその法人又は人の業務に関し、第四十六條から第四十八條までの違反行爲をしたときは、行爲者を罰する外、その法人又は人に対し、各本條の罰金刑を科する。
附 則
(施行期日)
1 この法律施行の期日は、公布の日から九十日をこえない期間内において、政令で定める。
(有効期間の特例)
2 この法律第二十六條第一項後段の規定は、この法律施行の日から二年を経過した日にその効力を失う。但し、そのときまでにした行爲に対する罰則の適用については、そのとき以後も、なおその効力を有する。
(他の法律の改廃)
3 臨時船舶管理法(昭和十二年法律第九十三号)の一部を次のように改正する。
第六條を次のように改める。
第六條 削除
第十五條第四号中「第六條又ハ」を削る。
4 事業者團体法の一部を次のように改正する。
第七條第二号の次に次の一号を加える。
二の二 海上運送法(昭和二十四年法律第百八十七号)第二十八條
5 運輸省設置法(昭和二十四年法律第百五十七号)の一部を次のように改正する。
第四條第一項第十五号の次に次の一号を加える。
十五の二 定期航路事業を免許し、助成し、及び定期航路事業の業務に関し、許可し、又は認可すること。
第四條第一項第十六号の次に次の二号を加える。
十六の二 船舶、船舶用機関及び船舶用品の製造及び修繕に関する技術の改善を助成すること。
十六の三 船舶の製造及び修繕の用に供する施設の新設、拡張及び移轉を許可すること。
第六條第一項第十一号の次に次の一号を加える。
十一の二 海上運送法(昭和二十四年法律第百八十七号)の規定により運輸審議会にはかることを要する事項
(経過規定)
6 この法律施行の際現に定期航路事業を営んでいる者は、この法律施行の日から六十日以内は、第三條第一項の規定にかかわらず、当該事業を引き続き営むことができる。その期間内に当該航路について定期航路事業の免許を申請した場合において、その申請について免許をする旨又は免許をしない旨の通知を受けるまでの期間についても同樣である。
7 運輸大臣が前項の申請を受けた日から百日以内に、当該申請について免許をする旨又は免許をしない旨の通知をしないときは、当該申請は、免許されたものとする。
8 この法律施行の際現に定期航路事業以外の海上運送事業を営んでいる者は、省令の定める手続により、この法律施行の日から六十日以内に、運輸大臣にその旨を届け出なければならない。
9 この法律施行の際現に職業として檢数等に從事している者は、この法律施行の日から六十日以内は、第三十五條の規定による登録を受けて檢数等に從事する者とみなす。
10 改正前の臨時船舶管理法に関する罰則の適用については、なお從前の例による。
運輸大臣 大屋晋三
内閣総理大臣 吉田茂
海上運送法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十四年六月一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百八十七号
海上運送法
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
船舶運航事業(第三条―第三十二条)
第三章
船舶貸渡業、海上運送取扱業、海運仲立業、海運代理店業、検数業、鑑定業及び検量業(第三十三条―第三十九条)
第四章
海上運送事業に使用する船舶の規格及び船級(第四十条・第四十一条)
第五章
雑則(第四十二条―第四十五条)
第六章
罰則(第四十六条―第五十条)
附則
第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、海上運送の秩序を維持し、海上運送事業の健全な発達を図り、もつて公共の福祉を増進することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「海上運送事業」とは、船舶運航事業、船舶貸渡業、海上運送取扱業、海運仲立業、海運代理店業、検数業、鑑定業及び検量業をいう。
2 この法律において「船舶運航事業」とは、海上において船舶により人又は物の運送をする事業で港湾運送事業(海上運送に附随して貨物の船積又は陸揚のためはしけ又は引船により貨物の運ぱんをする事業をいう。)以外のものをいい、これを定期航路事業と不定期航路事業とに分ける。
3 この法律において「定期航路事業」とは、一定の航路に旅客船(十三人以上の旅客定員を有する船舶をいう。)を就航させて一定の日程表と賃率表とに従つて運送をする旨を公示して行う船舶運航事業をいい、「不定期航路事業」とは、その他の船舶運航事業をいう。
4 この法律において「船舶貸渡業」とは、船舶の貸渡(期間よう船を含む。以下同じ。)又は運航の委託をする事業をいう。
5 この法律において「海上運送取扱業」とは、自己の名をもつて海上における船舶による物品の運送(以下「物品海上運送」という。)の取次をする事業をいう。
6 この法律において「海運仲立業」とは、物品海上運送又は船舶の貸渡、売買若しくは運航の委託の媒介をする事業をいう。
7 この法律において「海運代理店業」とは、船舶運航事業又は船舶貸渡業を営む者のために通常その事業に属する取引の代理をする事業をいう。
8 この法律において「検数」とは、船積貨物の積込又は陸揚を行うに際し、その貨物の箇数の計算又は受渡の証明をすることをいい、「検数業」とは、検数をする事業をいい、「検数人」とは、職業として検数に従事する者をいう。
9 この法律において「鑑定」とは、船積貨物の積付に関する証明、調査及び鑑定をすることをいい、「鑑定業」とは、鑑定をする事業をいい、「鑑定人」とは、職業として鑑定に従事する者をいう。
10 この法律において「検量」とは、船積貨物の積込又は陸揚を行うに際し、その貨物の容積又は重量の計算又は証明をすることをいい、「検量業」とは、検量をする事業をいい、「検量人」とは、職業として検量に従事する者をいう。
第二章 船舶運航事業
(事業の免許)
第三条 定期航路事業を営もうとする者は、航路ごとに、運輸大臣の免許を受けなければならない。
2 前項の免許を受けようとする者は、省令の定める手続により、事業計画を記載した申請書を運輸大臣に提出しなければならない。
3 第一項の免許には、条件を附することができる。
(免許基準)
第四条 運輸大臣は、定期航路事業を永続的に確保するために、前条の免許の申請が左に掲げる基準(第二十条の規定により補助金を受けることができるような定期航路事業について、第二号及び第五号を除く。)に適合するときは、これを免許しなければならない。
一 当該事業が免許されることによつて、当該航路における全供給輸送力が全輸送需要に対し著しく供給過剰にならないこと。
二 当該事業が供給する単位輸送力が当該航路における平均輸送需要量に対し著しく均衡を失しないものであること。
三 当該事業に使用する船舶及びけい留施設その他の輸送施設が当該航路における輸送需要の性質及び当該航路の自然的性質に適応したものであること。
四 当該事業が利用者の利便に適合する運航計画を有すること。
五 当該事業の経理的基礎が確実性を有すること。
六 当該事業を営む者の責任の範囲が明確であるような経営形態であること。
七 当該事業を営もうとする者が左に掲げる事由に該当しないこと。
イ 一年以上の懲役又は禁この刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなつた日から二年を経過しないこと。
ロ 定期航路事業の免許の取消を受け、その取消の日から二年を経過しないこと。
ハ 当該事業を営もうとする者が法人である場合において、その法人の役員がイ又はロに掲げる事由に該当すること。
(免許の決定)
第五条 運輸大臣は、第三条の免許の申請が、前条の基準に適合しているかどうかを決定しようとするときは、運輸審議会にはかり、その意見を聞かなければならない。
(公聴会)
第六条 運輸審議会は、前条の規定により附議された事項について決定をしようとするときは、あらかじめ期日及び場所を公示して、公聴会を開き、申請者及び利害関係人の意見を聞かなければならない。
(運航開始の義務)
第七条 定期航路事業の免許を受けた者は、運輸大臣の指定する期間内に当該事業計画に基き運航を開始しなければならない。
2 天災その他やむを得ない事由により、前項の期間内に運航を開始することができないときは、運輸大臣は、申請によりその期間を延長することができる。
(運賃及び料金の認可)
第八条 定期航路事業を営む者(以下「定期航路事業者」という。)は、旅客、手荷物及び小荷物の運賃及び料金については、省令の定める手続により、運輸大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同様である。
2 運輸大臣は、前項の認可に関する処分をしようとするときは、運輸審議会にはからなければならない。
(運送約款の認可)
第九条 定期航路事業者は、省令の定める手続により、運送約款を定め、運輸大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同様である。
2 運送約款においては、旅客、手荷物及び小荷物の運賃及び料金その他の運送条件並びに運送に関する事業者の責任に関する事項を定めなければならない。
(運賃及び料金等の公示)
第十条 定期航路事業者は、省令の定める方法により、第八条第一項の運賃及び料金並びに前条の運送約款を公示しなければならない。
(運航計画の変更)
第十一条 定期航路事業者がその運航計画を変更しようとするときは、省令の定める手続により、運輸大臣の認可を受けなければならない。
(運送の引受義務)
第十二条 定期航路事業者は、左の場合を除いて、旅客、手荷物及び小荷物の運送を拒絶してはならない。
一 当該運送が法令の規定、公の秩序又は善良の風俗に反するとき。
二 天災その他やむを得ない事由による運送上の支障があるとき。
三 当該運送が第九条の規定により認可を受けた運送約款に適合しないとき。
(運送の順序等)
第十三条 定期航路事業者は、旅客、手荷物及び小荷物を運送の申込の順序により、運送しなければならない。但し、第二十六条の規定による運輸大臣の命令があるときその他正当な事由があるときは、この限りでない。
2 定期航路事業者は、旅客、手荷物及び小荷物の運送をする場合において、特定の利用者に対し、不当な差別的取扱をしてはならない。
(事業計画に定める運航の確保)
第十四条 定期航路事業者は、天災その他やむを得ない事由のある場合の外、事業計画に定める運航を怠つてはならない。
2 運輸大臣は、定期航路事業者が前項の規定に違反すると認めるときは、当該定期航路事業者に対し、事業計画に従い運航すべきことを命ずることができる。
3 運輸大臣は、前項の命令をしようとするときは、当該定期航路事業者に対し、あらかじめ期日及び場所を指定して、聴聞をしなければならない。当該定期航路事業者は、聴聞の場所において、意見を述べ、及び証拠を提出することができる。
(事業の休廃止の許可)
第十五条 定期航路事業者は、その事業を休止し、又は廃止しようとするときは、省令の定める手続により、運輸大臣の許可を受けなければならない。
2 運輸大臣は、前項の許可に関する処分をしようとするときは、運輸審議会にはからなければならない。
3 第六条の規定は、前項の規定により附議された事項について運輸審議会が決定をしようとする場合に準用する。
(事業の停止及び免許の取消)
第十六条 運輸大臣は、定期航路事業者が左の各号の一に該当するときは、当該事業の停止を命じ、又は免許を取り消すことができる。
一 この法律又はこの法律に基く命令若しくは処分に違反したとき。
二 資産状態が不良となり、又は事業設備が不充分となつたため事業の経営が著しく困難になつたと認められるとき。
2 運輸大臣は、前項の処分をしようとするときは、運輸審議会にはかり、その意見を聞かなければならない。
3 第六条の規定は、前項の規定により附議された事項について運輸審議会が決定をしようとする場合に準用する。
(免許の失効)
第十七条 定期航路事業の免許は、第七条第一項の規定により運輸大臣の指定する期間内又は同条第二項の規定に基き延長された期間内に事業を開始しないときは、その効力を失う。
(事業の譲渡及び譲受の認可等)
第十八条 定期航路事業の譲渡及び譲受は、運輸大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
2 定期航路事業を経営する会社の合併及び解散は、運輸大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。但し、定期航路事業を経営する会社が定期航路事業を行わない会社を合併する場合は、この限りでない。
3 第一項の規定により認可を受けて定期航路事業を譲り受けた者又は前項の規定により認可を受けて定期航路事業を経営する会社が他の会社と合併した場合における合併後存続する会社若しくは合併により設立された会社は、免許に基く権利義務を承継する。
4 定期航路事業者が死亡した場合において、相続人が被相続人の行つていた定期航路事業を引き続き営もうとするときは、運輸大臣の認可を受けなければならない。
5 相続人は、前項の規定により被相続人の死亡後六十日以内に認可の申請をした場合においては、その認可があつた旨又はその認可をしない旨の通知を受けるまでは、第三条第一項の規定にかかわらず定期航路事業を営むことができる。
6 運輸大臣は、第一項、第二項又は第四項の認可に関する処分をしようとするときは、運輸審議会にはかり、その意見を聞かなければならない。
7 第六条の規定は、前項の規定により附議された事項について運輸審議会が決定をしようとする場合に準用する。
(サービスの改善に関する命令)
第十九条 運輸大臣は、定期航路事業者の事業について利用者の利便を阻害している事実があると認めるときは、運輸審議会にはかり、当該定期航路事業者に対し、左の各号に掲げる事項を命ずることができる。
一 旅客、手荷物及び小荷物の運賃及び料金その他の運送条件又は運送約款を変更すること。
二 運航計画を変更すること。
2 第六条の規定は、前項の規定により附議された事項について運輸審議会が決定をしようとする場合に準用する。
(補助金の交付)
第二十条 政府は、定期航路事業であつて当該航路の性質上経営が困難なものに対し、郵便物の運送等公益上必要な最少限度の運送を確保するため、毎年予算の範囲内で補助金を交付することができる。
2 前項の規定により補助金を受けている者の帳簿の整理及び保存その他会計の処理に関して必要な事項は、省令で定める。
(報告の徴収)
第二十一条 運輸大臣は、必要があると認めるときは、定期航路事業者に対し、省令の定める様式により、その業務に関し報告を求めることができる。
2 定期航路事業者は、前項の報告を求められたときは、真実且つ正確な報告をしなければならない。
(立入検査)
第二十二条 運輸大臣は、この法律の施行を確保するため必要があると認めるときは、その職員に定期航路事業に使用する船舶、事業場その他の場所に臨んで、帳簿書類その他の物件に関し検査をさせ、又は質問をさせることができる。
2 当該職員は、前項の規定により検査又は質問をする場合には、その身分を示す証票を携帯し、定期航路事業者その他の関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
(不定期航路事業の届出)
第二十三条 不定期航路事業を営む者は、省令の定める手続により、その事業の開始の日から三十日以内に、運輸大臣にその旨を届け出なければならない。
第二十四条 不定期航路事業を営む者が、その事業を廃止したときは、省令の定める手続により、その事業を廃止した日から三十日以内に、運輸大臣にその旨を届け出なければならない。
(準用規定)
第二十五条 第二十一条の規定は、不定期航路事業に準用する。
(航海命令)
第二十六条 運輸大臣は、当該航海が災害の救助その他公共の安全の維持のため必要であり、且つ、自発的に当該航海を行う者がない場合又は著しく不足する場合に限り、船舶運航事業を営む者(以下「船舶運航事業者」という。)に対し航路、船舶又は運送すべき人若しくは物を指定して航海を命ずることができる。政令で定める重要物資の運送を確保するため必要であり、且つ、自発的に当該航海を行う者がない場合又は著しく不足する場合についても同様である。
2 前項の規定による命令で次条の規定による損失の補償を伴うものは、これによつて必要となる補償金の総額が国会の議決を経た予算の金額をこえない範囲内でこれをしなければならない。
3 運輸大臣は、第一項の命令をしようとするときは、緊急やむを得ない場合を除くの外、運輸審議会にはかり、その意見を聞かなければならない。
(損失の補償)
第二十七条 前条の規定による命令により損失を受けた者に対しては、その損失を補償する。
2 前項の規定による補償の額は、当該船舶運航事業者がその航海を行つたことにより通常生ずべき損失及びその命令を受けなかつたならば通常得らるべき利益が得られなかつたことによる損失の額とする。
3 運輸大臣は、前項の補償の額を決定しようとするときは、運輸審議会にはかり、その意見を聞かなければならない。
4 前三項に定めるものの外、損失の補償に関し必要な事項は、省令で定める。
(私的独占禁止法及び事業者団体法の適用除外)
第二十八条 船舶運航事業者が他の船舶運航事業者とする運賃及び料金その他の運送条件、航路、配船並びに積取に関する事項を内容とする協定、契約又は共同行為(以下「協定等」という。)であつて左の各号に該当する事項を内容としないものについては、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)及び事業者団体法(昭和二十三年法律第百九十一号)の規定を適用しない。但し、不公正な競争方法を用いる場合又は一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に運賃及び料金を引き上げることとなる場合は、この限りでない。
一 運賃のべもどし(荷主が一定期間内においてその荷物の全部又は一部の運送をもつぱら当該協定等に参加している船舶運航事業者にさせることを約束し、且つ、これを実行することを条件として右期間経過後当該荷主に対し、当該期間内に受け取つた運賃その他の料金の一部を返還することをいう。)により荷主を拘束すること。
二 競争抑圧船(当該協定等に参加している船舶運航事業者が競争を抑圧し、又は制限することを目的として当該協定等に参加していない船舶運航事業者の船舶を特定航路から排除するため当該航路に使用する船舶をいう。)を使用すること。
三 荷主が当該協定等に参加していない船舶運航事業者にその荷物の運送をさせたことを理由として、当該荷主に対し、その荷物の運送を拒絶し、制限し、その他差別的取扱をすること。
(運送に関する協定の届出)
第二十九条 船舶運航事業者は、前条の協定等をしようとするときは、あらかじめ運輸大臣に届け出なければならない。協定等を変更しようとする場合も同様である。
(禁止行為)
第三十条 船舶運航事業者は、左の各号に掲げる事項をしてはならない。
一 荷物の量の多寡によつて荷主と締結する契約につき不公正又は不当に差別的な取扱をし、又は荷物の積付の場所その他の施設、通常の条件における荷物の積込若しくは陸揚若しくは損害賠償の請求の調整及び解決について荷主に対して不公正又は不当に差別的な取扱をすること。
二 特定の人、地域又は運送の方法に対して、不当に優先的な取扱をし、若しくは利益を与え、又は不当に不利な取扱をし、若しくは不利益を与えること。
三 船舶運航事業者が加入を申し出た場合において他の加盟者と同等の条件で加入することを認めず、又は荷主若しくは港によつて、若しくは日本の輸出業者に対して外国の競争者に比べ不当に差別的な運賃及び料金を設定し、その他不当な運賃及び料金を設定しようとする明示又は黙示の貨客の運送に関する結合、協定又は申し合わせに参加すること。
(公正取引委員会の権限)
第三十一条 この法律の規定に基く運輸大臣の処分は、協定等が第二十八条各号若しくは前条各号に該当するかどうかについての公正取引委員会の認定を拘束し、又は公正取引委員会が当該協定等について私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反の疑があるという理由に基いて審判開始決定書を送付し、その他同法に基く権限を行使することを妨げるものと解釈してはならない。
(現に存する協定等)
第三十二条 この法律の規定は、この法律施行の日に現に存する協定等に適用する。
第三章 船舶貸渡業、海上運送取扱業、海運仲立業、海運代理店業、検数業、鑑定業及び検量業
(準用規定)
第三十三条 第二十一条、第二十三条及び第二十四条の規定は、船舶貸渡業、海上運送取扱業、海運仲立業、海運代理店業、検数業、鑑定業及び検量業に準用する。
(氏名の明示)
第三十四条 検数業、鑑定業又は検量業を営む者は、検数、鑑定又は検量(以下「検数等」という。)の依頼を受けた場合には、当該検数等に従事する者の氏名を依頼者及び関係人に告げなければならない。
(登録)
第三十五条 検数人、鑑定人又は検量人(以下「検数人等」という)になろうとする者は、その者の住所を管轄する海運局の検数人登録簿、鑑定人登録簿又は検量人登録簿に、省令の定める手続により、登録を受けなければならない。
(欠格事由)
第三十六条 左の各号の一に該当する者は、検数人等になることができない。
一 禁治産者又は準禁治産者
二 一年以上の懲役又は禁この刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなつた日から一年を経過しない者
三 第三十九条第二項の規定により登録のまつ消を受けた日から一年を経過しない者
(登録のまつ消)
第三十七条 海運局長は、検数人等が左の各号の一に該当する場合には、その登録をまつ消しなければならない。
一 業務を廃止したとき。
二 死亡したとき。
三 前条各号の一に該当するに至つたとき。
(登録料の納付)
第三十八条 検数人等の登録を受けようとする者は、登録料として千円を納めなければならない。
(禁止行為)
第三十九条 検数人等は、船積貨物について左の各号に該当する行為をしてはならない。
一 箇数の不正な計算又は受渡の虚偽の証明
二 積付に関する虚偽の証明又は鑑定
三 容積又は重量の不正な計算
2 海運局長は、検数人等が前項の規定に違反したときは、一年以内の期間を限り当該検数人等の業務を停止し、又はその登録をまつ消することができる。
3 海運局長は、前項に規定する処分をしようとするときは、当該検数人等に対し、あらかじめ期日及び場所を指定して、聴聞をしなければならない。当該検数人等は、聴聞の場所において、意見を述べ、及び証拠を提出することができる。
第四章 海上運送事業に使用する船舶の規格及び船級
(船舶の規格)
第四十条 運輸大臣は、海上運送事業に使用する鋼製船舶についてその規格を定め、これを公示し、当該規格により船舶を建造することを奨励することができる。
(船級)
第四十一条 運輸大臣は、海上運送事業の健全な発達を図るため必要があると認めるときは、船舶の建造を注文しようとする者に対し、日本又は外国の船級協会の定める船級の登録を受けることのできる船舶を建造することができる。
第五章 雑則
(国、日本国有鉄道又は船舶運営会に関する規定)
第四十二条 この法律の規定は、国、日本国有鉄道又は船舶運営会が海上運送事業を営む場合には、適用しない。
2 運輸大臣が日本国有鉄道法(昭和二十三年法律第二百五十六号)第五十三条の規定により日本国有鉄道の連絡船航路の開始の認可に関する処分をする場合において、定期航路事業については、この法律第四条の規定の趣旨をもあわせ考慮して行わなければならない。
3 国において定期航路事業を営もうとするときは、当該官庁は、運輸大臣に協議しなければならない。
(五トン未満の船舶等に関する規定)
第四十三条 この法律の規定は、左に掲げる船舶のみをもつて営む海上運送事業には、適用しない。
一 総トン数五トン未満の船舶
二 ろかいのみをもつて運転し、又は主としてろかいをもつて運転する舟
(湖、沼又は河川において営む船舶運航の事業)
第四十四条 この法律の規定は、もつぱら湖、沼又は河川において営む船舶運航の事業に準用する。この場合において前条中「総トン数五トン未満の船舶」とあるのは「総トン数二十トン未満の船舶」と読み替えるものとする。
(訴願)
第四十五条 この法律に基いてした行政官庁の処分に不服がある者は、訴願をすることができる。
第六章 罰則
第四十六条 第二十六条第一項の規定による命令に従わない者は、六箇月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
第四十七条 第三条第一項の規定による免許を受けないで定期航路事業を営んだ者は、三十万円以下の罰金に処する。
第四十八条 左の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。
一 第八条第一項、第九条第一項、第十一条又は第十五条の規定により認可又は許可を受けなければならない事項を受けないでした者
二 第十条、第十二条、第十三条又は第三十四条の規定に違反した者
三 第三十五条の規定による登録を受けないで職業として検数等に従事した者
四 第二十二条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対し陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者
五 第二十一条(第二十五条及び第三十三条において準用する場合を含む。)の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
六 第二十九条の規定により届出をしなければならない事項をしないでした者
第四十九条 第二十三条又は第二十四条(第三十三条においてこれらの規定を準用する場合を含む。)の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、一万円以下の過料に処する。
第五十条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関し、第四十六条から第四十八条までの違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対し、各本条の罰金刑を科する。
附 則
(施行期日)
1 この法律施行の期日は、公布の日から九十日をこえない期間内において、政令で定める。
(有効期間の特例)
2 この法律第二十六条第一項後段の規定は、この法律施行の日から二年を経過した日にその効力を失う。但し、そのときまでにした行為に対する罰則の適用については、そのとき以後も、なおその効力を有する。
(他の法律の改廃)
3 臨時船舶管理法(昭和十二年法律第九十三号)の一部を次のように改正する。
第六条を次のように改める。
第六条 削除
第十五条第四号中「第六条又ハ」を削る。
4 事業者団体法の一部を次のように改正する。
第七条第二号の次に次の一号を加える。
二の二 海上運送法(昭和二十四年法律第百八十七号)第二十八条
5 運輸省設置法(昭和二十四年法律第百五十七号)の一部を次のように改正する。
第四条第一項第十五号の次に次の一号を加える。
十五の二 定期航路事業を免許し、助成し、及び定期航路事業の業務に関し、許可し、又は認可すること。
第四条第一項第十六号の次に次の二号を加える。
十六の二 船舶、船舶用機関及び船舶用品の製造及び修繕に関する技術の改善を助成すること。
十六の三 船舶の製造及び修繕の用に供する施設の新設、拡張及び移転を許可すること。
第六条第一項第十一号の次に次の一号を加える。
十一の二 海上運送法(昭和二十四年法律第百八十七号)の規定により運輸審議会にはかることを要する事項
(経過規定)
6 この法律施行の際現に定期航路事業を営んでいる者は、この法律施行の日から六十日以内は、第三条第一項の規定にかかわらず、当該事業を引き続き営むことができる。その期間内に当該航路について定期航路事業の免許を申請した場合において、その申請について免許をする旨又は免許をしない旨の通知を受けるまでの期間についても同様である。
7 運輸大臣が前項の申請を受けた日から百日以内に、当該申請について免許をする旨又は免許をしない旨の通知をしないときは、当該申請は、免許されたものとする。
8 この法律施行の際現に定期航路事業以外の海上運送事業を営んでいる者は、省令の定める手続により、この法律施行の日から六十日以内に、運輸大臣にその旨を届け出なければならない。
9 この法律施行の際現に職業として検数等に従事している者は、この法律施行の日から六十日以内は、第三十五条の規定による登録を受けて検数等に従事する者とみなす。
10 改正前の臨時船舶管理法に関する罰則の適用については、なお従前の例による。
運輸大臣 大屋晋三
内閣総理大臣 吉田茂