港湾運送事業法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第255号
公布年月日: 昭和28年8月28日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

港湾運送事業法制定後2年間の実績から改善を要する点が認められ、また木船運送法との調整が必要となったため、より健全な事業発達を図るべく改正を行う。主な改正点は、はしけ運送事業等の適用範囲拡張と木船運送法との調整、港湾指定基準の見直し、登録基準の明確化、運賃料金の公平な設定方式の導入、公益命令と損失補償規定の整備、施設の共同利用に関する独占禁止法の適用除外規定の新設である。これらは業者や行政庁の経験に基づく改善要望を踏まえ、政府の意見も参酌して提案されたものである。

参照した発言:
第16回国会 衆議院 運輸委員会 第22号

審議経過

第16回国会

衆議院
(昭和28年7月22日)
参議院
(昭和28年7月22日)
(昭和28年7月23日)
衆議院
(昭和28年7月25日)
(昭和28年7月27日)
(昭和28年7月28日)
(昭和28年7月28日)
参議院
(昭和28年7月29日)
(昭和28年7月30日)
衆議院
(昭和28年8月10日)
参議院
(昭和28年8月10日)
港湾運送事業法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和二十八年八月二十八日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第二百五十五号
港湾運送事業法の一部を改正する法律
港湾運送事業法(昭和二十六年法律第百六十一号)の一部を次のように改正する。
第二条第一項を次のように改める。
第二条 この法律で「港湾運送」とは、他人の需要に応じて行う行為であつて、左の各号の一に該当するもの(日本国有鉄道の経営する航路の船舶により運送される貨物に関するものを除く。)をいう。
一 荷主又は船舶運航事業者の委託を受け、船舶により運送された貨物の港湾における船舶からの受取若しくは荷主への引渡又は船舶により運送されるべき貨物の港湾における船舶への引渡若しくは荷主からの受取にあわせてこれらの行為に先行し又は後続する次号から第四号までに掲げる行為を一貫して行う行為
二 港湾においてする船舶への貨物の積込又は船舶からの貨物の取卸
三 港湾における貨物の船舶(総トン数百トン以上の鋼製船舶を除く。)又ははしけによる運送(海上運送法(昭和二十四年法律第百八十七号)に規定する旅客定期航路事業による貨物の運送その他運輸省令で定めるものを除く。)運輸省令で定める港湾と港湾又は場所との間(以下単に「指定区間」という。)における貨物のはしけによる運送又は港湾若しくは指定区間における引船によるはしけのえい航
四 港湾においてする、船舶若しくははしけにより運送された貨物の上屋その他の荷さばき場(貯木場を含む。以下単に「荷さばき場」という。)への搬入、船舶若しくははしけにより運送されるべき貨物の荷さばき場からの搬出、これらの貨物の荷さばき場における荷さばき若しくは保管又は貨物のはしけからの取卸若しくははしけへの積込
第二条第三項中「関税法(明治三十二年法律第六十一号)に規定する開港であつて、政令で指定するもの」を「政令で指定する港湾(その水域は、港域法(昭和二十三年法律第百七十五号)に定める区域をいい、これに接続する湖川の政令で定める区域を含む。)」に改める。
第三条第一号中「各号」を「第一号」に改める。
第七条第一項第四号を次のように改める。
四 事業に必要な労働者及び施設について運輸省令で定める要件を備えない者
第九条第四項但書及び第五項中「三十日」を「六十日」に改め、同条の次に次の一条を加える。
(運賃及び料金の変更勧告及び命令)
第九条の二 利害関係人は、港湾運送事業者の実施している運賃及び料金が、その設定の時期における物価、賃金その他の経済事情が著しく変動したために前条第四項各号の基準に適合しなくなつたと認めるときは、運輸大臣に対し、その理由を具して運賃及び料金の変更を港湾運送事業者に勧告すべきことを請求することができる。
2 運輸大臣は、前項の請求の理由が正当であると認めるとき、又は自ら港湾運送事業者の実施している運賃及び料金が前条第四項各号の基準に適合しなくなつたと認めるときは、当該港湾運送事業者に対し、その理由を示して、当該運賃及び料金を変更すべきことを勧告することができる。
3 前項の規定による勧告があつたときは、港湾運送事業者は、勧告のあつた日から三十日以内に、運輸大臣に対し、当該勧告を応諾するかしないか(応諾しない場合にはその理由を附して)を回答しなければならない。
4 運輸大臣は、港湾運送事業者が前項に規定する回答をしないときは、当該港湾運送事業者に対し、当該運賃及び料金を変更すべきことを命ずることができる。応諾しない旨の回答があつた場合において、運輸審議会が前条第四項本文に定める手続を経て提出する答申を得て、その応諾しない理由が正当でないと認めたときも、同様とする。
5 港湾運送事業者は、第三項の規定により勧告を応諾する旨を回答したときはその日から三十日以内に、又は前項の規定により命令を受けたときはその日から二十日以内に、当該運賃及び料金を変更する手続を行わなければならない。
第十条中「前条」を「第九条」に改める。
第十一条第四項但書及び第五項中「三十日」を「六十日」に改める。
第十六条中「港湾運送を引き受けた場合には、」を「その引き受けた港湾運送を行う場合には、運輸省令の定めるところにより、」に改める。
第十七条第一項中「各号」を「第一号、第三号又は第四号」に、同条第三項中「事業の施設で、運輸省令で定めるもの」を「事業の施設につき、運輸省令で定める事項」に改める。
第十八条を次のように改める。
(相続及び合併)
第十八条 港湾運送事業者が死亡し又は合併したときは、相続人(相続人が二人以上ある場合において、その協議により事業を引き続き営むべき相続人を選定したときは、その者)又は合併後存続する法人若しくは合併により設立された法人(以下「相続人等」という。)は、死亡又は合併の日から三十日以内にその旨を運輸大臣に届け出なければならない。
2 相続人等は、第四条の規定にかかわらず、当該港湾運送事業者が死亡し又は合併した日から六十日間は当該事業を引き続き営むことができる。その期間内に第五条の規定により登録を申請した場合において、その申請について登録をした旨又は登録を拒否する旨の通知を受ける日までも、同様とする。
3 相続人等が当該港湾運送事業者の死亡又は合併の日から六十日以内に登録を申請するときは、第八条の規定にかかわらず、手数料を納めることを要しない。
第十八条の次に次の二条を加える。
(公益命令)
第十八条の二 運輸大臣は、災害の救助その他公共の安全の維持のため必要な港湾運送であり、且つ、自発的に当該業務を行う者がない場合又は著しく不足する場合に限り、第十五条の規定にかかわらず、港湾運送事業者を指定して、左の各号に掲げる事項を命ずることができる。
一 運輸大臣の指定した貨物の取扱又は運送をすること。
二 貨物の取扱又は運送の方法又は順位を変更すること。
2 前項の規定による命令で次条の規定による損失の補償を伴うものは、これによつて必要となる補償金の総額が、国会の議決を経た予算の金額をこえない範囲内で、これをしなければならない。
(損失の補償)
第十八条の三 前条第一項の規定による命令を受けた者に対しては、その命令を受けたことによつて通常生ずべき損失(その命令を受けなかつたならば通常得らるべき利益が得られなかつたことによる損失を含む。)を補償する。
2 前項の補償の額は、運輸大臣がこれを決定する。
3 前二項に定めるものの外、損失の補償に関し必要な事項は、運輸省令で定める。
第十九条を次のように改める。
(私的独占禁止法の適用除外)
第十九条 港湾運送事業者が他の港湾運送事業者とする施設の共用に関する事項を内容とする協定、契約又は共同行為(以下「協定等」という。)については、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)の規定を適用しない。但し、不公正な取引方法を用いる場合又は一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に運賃及び料金を引き上げその他利用者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
第十九条の次に次の一条を加える。
(協定等の届出)
第十九条の二 港湾運送事業者は、前条の協定等をしたときは、運輸省令の定めるところにより、その旨を運輸大臣に届け出なければならない。協定等を変更したときも同様とする。
第二十一条第一号中「前条」を「第十八条第一項又は前条」に改める。
第二十二条第一項第二号中「第一号又は第三号」を「第一号、第三号又は第四号」に改め、同項に次の一号を加える。
三 港湾運送事業の登録を受けて正当な理由がなくて六箇月以内に事業を開始しないとき。
第二十四条第二号中「引船」を「引船その他の船舶」に改める。
第三十一条を次のように改める。
(運輸審議会への諮問)
第三十一条 運輸大臣は、第七条第一項の登録の拒否、第九条第四項(第三十三条の二第二項及び第三十三条の三第三項において準用する場合を含む。次条第一項において同じ。)、第九条の二第四項後段(第三十三条の二第二項及び第三十三条の三第三項において準用する場合を含む。次条第一項において同じ。)若しくは第十一条第四項(第三十三条の二第二項において準用する場合を含む。次条第一項において同じ。)の規定による運賃及び料金若しくは港湾運送約款の変更に係る事項、第十八条の二第一項若しくは第十八条の三第二項の規定(これらの規定を第三十三条の二第二項及び第三十三条の三第三項において準用する場合を含む。以下本条において同じ。)による命令若しくは補償の額の決定又は第二十二条第一項(第三十三条の三第三項において準用する場合を含む。)の規定による処分に関しては、運輸審議会にはかり、その決定を尊重して、処理しなければならない。但し、第十八条の二第一項の規定による命令をしようとする場合において、緊急やむを得ないときは、この限りでない。
第三十二条第一項中「第九条又は第十一条」を「第九条第四項、第九条の二第四項後段又は第十一条第四項」に改め、同条の次に次の一条を加える。
(はしけ等に関する表示)
第三十二条の二 港湾運送事業者は、港湾運送又は第三十三条の二第一項の運送に使用するはしけ又は船舶に、その氏名、名称、登録番号その他運輸省令で定める事項を見やすいように表示しなければならない。
第三十三条第二項中「引船」を「引船その他の船舶」に改め、同条の次に次の二条を加える。
(指定区間においてする木船運送の特例)
第三十三条の二 木船運送法(昭和二十七年法律第百五十一号)の規定は、一般港湾運送事業者又ははしけ運送事業の登録を受けた者(以下「はしけ運送事業者」という。)が当該事業の登録を受けた港湾を起点又は終点とする指定区間においてするはしけ以外の木製船舶による物品の運送(自己の引き受けた運送を他の者に下請をさせる場合を含み、一般港湾運送事業者については一般港湾運送事業に相当する事業の一部として行う場合に限る。)については、これを適用しない。一般港湾運送事業者又ははしけ運送事業者が死亡し又は合併した場合において、第十八条第二項の規定により引き続き事業を営む者についても、同様とする。
2 第九条から第十二条まで、第十四条、第十五条及び第十八条の二から第十九条の二までの規定は、前項の運送について準用する。この場合において、第十四条中「港湾運送事業」とあるのは「第三十三条の二第一項の運送」と読み替えるものとする。
(木船運送事業者の行う港湾運送の特例)
第三十三条の三 第四条の規定は、木船運送法の規定により木船運航業又は木船回漕業の登録を受けた者(以下「木船運送事業者」という。)が営むはしけ以外の木製船舶による貨物の港湾における運送(海上運送に直接に接続する運送であつて、港湾運送事業者から請け負つたものでないものを除く。)の事業については、適用しない。木船運送事業者が死亡し又は合併した場合において、木船運送法第十四条第三項の規定により引き続き事業を営む者についても、同様とする。
2 前項の事業を営む木船運送事業者は、その事業の開始の日から三十日以内に、運輸省令の定める手続により、運輸大臣にその旨を届け出なければならない。
3 第九条から第十条まで、第十二条、第十四条から第十六条まで、第十八条の二から第二十条まで、第二十二条及び第三十三条の規定は、木船運送事業者が営む第一項の事業について準用する。この場合において、これらの規定(第九条第一項及び第十九条を除く。)中「港湾運送事業者」及び第九条第一項中「港湾運送事業の登録を受けた者(以下「港湾運送事業者」という。)」とあるのは「第三十三条の三第一項の規定の適用を受ける木船運送事業者」と、第九条及び第九条の二中「当該港湾運送事業者」とあるのは「当該木船運送事業者」と、第十九条中「港湾運送事業者が他の港湾運送事業者とする」とあるのは「港湾運送事業者又は第三十三条の三第一項の規定の適用を受ける木船運送事業者が他の港湾運送事業者又は同条同項の規定の適用を受ける木船運送事業者と当該事業についてする」とそれぞれ読み替えるものとする。
第三十四条第二号中「第十四条」を「第十四条(第三十三条の二第二項及び第三十三条の三第三項において準用する場合を含む。)」に改める。
第三十五条第一号中「第九条第一項」を「第九条第一項(第三十三条の二第二項及び第三十三条の三第三項において準用する場合を含む。第三十七条第一号において同じ。)」に、「同条第三項」を「同条第三項(第三十三条の二第二項及び第三十三条の三第三項において準用する場合を含む。)」に、「同条第四項」を「同条第四項(第三十三条の二第二項及び第三十三条の三第三項において準用する場合を含む。)」に改め、同条第二号中「第十条」を「第十条(第三十三条の二第二項及び第三十三条の三第三項において準用する場合を含む。)」に改め、同条第三号中「第十一条第一項」を「第十一条第一項(第三十三条の二第二項において準用する場合を含む。第三十七条第一号において同じ。)」に、「同条第三項」を「同条第三項(第三十三条の二第二項において準用する場合を含む。)」に、「同条第四項」を「同条第四項(第三十三条の二第二項において準用する場合を含む。)」に改め、同条第四号中「第十六条」を「第十六条(第三十三条の三第三項において準用する場合を含む。)」に改め、同条第五号中「第二十二条第一項」を「第二十二条第一項(第三十三条の三第三項において準用する場合を含む。)」に改める。
第三十七条第一号中「又は第十二条」を「、第十二条(第三十三条の二第二項及び第三十三条の三第三項において準用する場合を含む。)又は第三十二条の二」に、「掲示」を「掲示若しくは表示」に改め、同条第二号中「第十八条第二項(第十九条第二項において準用する場合を含む。)又は第二十条」を「第十八条第一項、第十九条の二(第三十三条の二第二項及び第三十三条の三第三項において準用する場合を含む。)、第二十条(第三十三条の三第三項において準用する場合を含む。)又は第三十三条の三第二項」に改め、同条第三号中「第三十三条第一項」を「第三十三条第一項(第三十三条の三第三項において準用する場合を含む。)」に改め、同条第四号中「第三十三条第二項」を「第三十三条第二項(第三十三条の三第三項において準用する場合を含む。)」に改める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して三十日を経過した日から施行する。
(他の法律の改正)
2 木船運送法の一部を次のように改正する。
第二条第三項第四号中「関税法(明治三十二年法律第六十一号)に規定する開港」を「港湾運送事業法第二条第三項の規定により指定する港湾」に、同条第四項中「関税法に規定する開港」を「港湾運送事業法第二条第三項の規定により指定する港湾」に、同条第五項中「期間よう船を含む。」を「期間よう船を含み、主として港湾運送事業法に規定する港湾運送事業(同法第三十三条の二第一項の運送をする事業を含む。)の用に供せられる木船の貸渡を除く。」に改める。
3 海上運送法の一部を次のように改正する。
第二条第二項中「(海上運送に附随して貨物の船積又は陸揚のためはしけ又は引船により貨物の運ぱんをする事業をいう。)」を「(港湾運送事業法(昭和二十六年法律第百六十一号)に規定する港湾運送事業及び同法第二条第三項の規定により指定する港湾以外の港湾において同法に規定する港湾運送事業に相当する事業を営む事業をいう。)」に改める。
(経過規定)
4 この法律によりあらたに港湾運送事業とされた事業をこの法律施行の際現に営んでいる者は、この法律施行の日から六十日以内は、第四条の規定にかかわらず、当該事業を引き続き営むことができる。その期間内に第五条の規定により登録を申請した場合において、その申請について登録をした旨又は登録を拒否する旨の通知を受ける日までも、同様とする。
5 この法律施行の際現に第三十三条の三第一項の規定の適用を受ける事業を営んでいる木船運送事業者は、運輸省令の定める手続により、この法律施行の日から六十日以内に、運輸大臣にその旨を届け出なければならない。
内閣総理大臣 吉田茂
運輸大臣 石井光次耶