海上運送法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第90号
公布年月日: 昭和30年7月25日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

現行の海上運送法では、旅客定期航路事業は免許制で厳重な監督規制下にあるが、不定期航路事業は届出制で自由な経営が認められている。しかし近年、不定期航路事業でも観光需要増加に伴い旅客運送が増加しており、利用者利益の保護や運送秩序維持の観点から規制が必要となっている。そこで、国内航路の旅客船による不定期航路事業に運輸大臣の許可制を導入し、運賃・運送約款等について旅客定期航路事業に準じた規制を設ける。また、交通事故の頻発を受け、旅客定期航路事業の免許基準に安全確保の要件を加え、安全関係法令違反への処分規定を整備する。

参照した発言:
第22回国会 参議院 運輸委員会 第7号

審議経過

第22回国会

参議院
(昭和30年5月19日)
(昭和30年5月27日)
衆議院
(昭和30年5月28日)
参議院
(昭和30年5月31日)
(昭和30年6月9日)
(昭和30年6月17日)
(昭和30年6月21日)
(昭和30年7月1日)
(昭和30年7月4日)
衆議院
(昭和30年7月13日)
(昭和30年7月18日)
(昭和30年7月19日)
(昭和30年7月25日)
海上運送法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和三十年七月二十五日
内閣総理大臣 鳩山一郎
法律第九十号
海上運送法の一部を改正する法律
海上運送法(昭和二十四年法律第百八十七号)の一部を次のように改正する。
目次中「第五章 雑則(第四十二条―第四十五条)」を「第五章 雑則(第四十二条―第四十五条の三)」に改める。
第二条第四項を次のように改める。
4 この法律において「旅客定期航路事業」とは、旅客船(十三人以上の旅客定員を有する船舶をいう。以下同じ。)により人の運送をする定期航路事業をいい、「貨物定期航路事業」とは、その他の定期航路事業をいう。
第三条の見出しを「(旅客定期航路事業の免許)」に改め、同条第一項中「航路」を「航路及び左に掲げる事業の種類」に改め、同項に次の二号を加える。
一 一般旅客定期航路事業(特定旅客定期航路事業以外の旅客定期航路事業)
二 特定旅客定期航路事業(特定の者の需要に応じ、特定の範囲の人の運送をする旅客定期航路事業)
第三条第三項を削る。
第四条を次のように改める。
(免許基準)
第四条 運輸大臣は、旅客定期航路事業の免許をしようとするときは、左の基準に適合するかどうかを審査して、これをしなければならない。
一 当該事業の開始によって当該航路に係る全供給輸送力が全輸送需要に対し著しく供給過剰にならないこと。
二 当該事業に使用する船舶、けい留施設その他の輸送施設が当該航路における輸送需要の性質及び当該航路の自然的性質に適応したものであること。
三 当該事業が利用者の利便に適合する運航計画を有すること。
四 当該事業を営む者の責任の範囲が明確であるような経営形態であること。
五 当該事業の経理的基礎が確実性を有すること。
六 当該事業の開始によつて港湾(河川を含む。)における船舶交通の安全に支障を生ずるおそれのないものであること。
第六条を削り、第五条を第六条とし、同条中「前条」を「前二条」に改め、第四条の次に次の一条を加える。
第五条 運輸大臣は、旅客定期航路事業の免許を受けようとする者が左の各号の一に該当する場合には、その免許をしてはならない。
一 一年以上の懲役又は禁この刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなつた日から二年を経過していない者であるとき。
二 旅客定期航路事業の免許又は第二十一条第一項に規定する旅客不定期航路事業の許可の取消を受け、その取消の日から二年を経過していない者であるとき。
三 法人である場合において、その法人の役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。)が前二号の一に該当するとき。
第十五条中第三項を削り、第二項を第四項とし、同項中「前項」を「第一項」に改め、第一項の次に次の二項を加える。
2 前項の事業の休止の許可は、一年をこえる期間についてすることができない。
3 前項の規定は、災害による港湾施設の損壊その他やむを得ない事由に基く休止については、適用しない。
第十六条第一項各号を次のように改める。
一 この法律若しくはこれに基く処分又は免許、許可若しくは認可に附した条件に違反したとき。
二 船舶安全法(昭和八年法律第十一号)又は船舶職員法(昭和二十六年法律第百四十九号)の規定に違反したとき。
三 正当な理由がないのに許可又は認可を受けた事項を実施しないとき。
四 第五条各号の一に該当することとなつたとき。
第十六条第三項を削る。
第十八条第二項及び第三項中「会社」を「法人」に改め、同条第七項を削る。
第十九条第二項を削る。
第十九条の五を第十九条の七とし、第十九条の四を第十九条の六とし、同条中「届け出なければならない。」の下に「賃率表を変更しようとするときも同様である。」を加え、第十九条の三を第十九条の五とし、同条第一項中「届け出なければならない。」の下に「届出をした事項を変更しようとするときも同様である。」を加え、第十九条の二の次に次の二条を加える。
(特定旅客定期航路事業の特則)
第十九条の三 第四条第三号から第五号までの規定は、特定旅客定期航路事業の免許については、適用しない。
2 第八条から第十条まで、第十二条から第十五条まで及び前二条の規定は、特定旅客定期航路事業については、適用しない。
3 特定旅客定期航路事業を営む者は、その事業を休止し、又は廃止したときは、省令の定める手続により、その日から三十日以内に、運輸大臣にその旨を届け出なければならない。
(対外旅客定期航路事業)
第十九条の四 第三条から前条までの規定は、本邦(本州、北海道、四国、九州及び省令の定めるその附属の島をいう。以下同じ。)の港と本邦以外の地域の港との間又は本邦以外の地域の各港間に航路を定めて行う旅客定期航路事業(以下「対外旅客定期航路事業」という。)については、適用しない。
2 対外旅客定期航路事業を営もうとする者は、省令の定める手続により、航路ごとに、その事業の開始の日の十日前までに、運輸大臣にその旨を届け出なければならない。
3 対外旅客定期航路事業を営む者は、旅客及び手荷物の運賃及び料金その他の運送条件並びに運送に関する事業者の責任に関する事項を定め、これを実施する前に、公示し、且つ、省令の定める手続により、運輸大臣に届け出なければならない。これらの事項を変更しようとするときも同様である。
4 対外旅客定期航路事業を営む者が、その事業を廃止したときは、省令の定める手続により、航路ごとに、廃止の日から三十日以内に、運輸大臣にその旨を届け出なければならない。
第二十条を次のように改める。
(不定期航路事業の届出)
第二十条 不定期航路事業(次条第一項に規定する旅客不定期航路事業を除く。)を営む者は、省令の定める手続により、その事業の開始の日から三十日以内に、運輸大臣にその旨を届け出なければならない。
2 前項の不定期航路事業を営む者が、その事業を廃止したときは、省令の定める手続により、その事業の廃止の日から三十日以内に、運輸大臣にその旨を届け出なければならない。
第二十条の二及び第二十三条から第二十五条までを削り、第二十一条を第二十四条とし、同条第一項中「定期航路事業を営む者(以下「定期航路事業者」という。)」を「船舶運航事業者」に改め、同条第二項中「定期航路事業者」を「船舶運航事業者」に改め、第二十二条を第二十五条とし、同条第一項中「定期航路事業」の下に「又は旅客不定期航路事業」を加え、同条第二項中「定期航路事業者」を「定期航路事業又は旅客不定期航路事業を営む者」に改め、第二十条の次に次の七条を加える。
(旅客不定期航路事業の許可)
第二十一条 一定の航路に旅客船を就航させて人の運送をする不定期航路事業(本邦の港と本邦以外の地域の港との間又は本邦以外の地域の各港間における人の運送をする不定期航路事業、特定の者の需要に応じ、特定の範囲の人の運送をする不定期航路事業及び省令の定めるところにより、短期間人の運送をする不定期航路事業を除く。以下「旅客不定期航路事業」という。)を営もうとする者は、航路ごとに、運輸大臣の許可を受けなければならない。
2 第三条第二項、第四条(第二号、第三号及び第五号に係るものを除く。)、第五条及び第六条の規定は、前項の許可について準用する。
(事業の廃止の届出)
第二十二条 旅客不定期航路事業を営む者(以下「旅客不定期航路事業者」という。)が、その事業を廃止したときは、省令の定める手続により、その事業の廃止の日から三十日以内に、運輸大臣にその旨を届け出なければならない。
(許可の取消)
第二十三条 運輸大臣は、旅客不定期航路事業者が正当な理由がないのに一年以上旅客の運送をしなかつたときは、当該事業の許可を取り消すことができる。
2 第十六条第二項の規定は、前項の取消について準用する。
(承継)
第二十三条の二 旅客不定期航路事業者について相続又は合併があつたときは、相続人(相続人が二人以上ある場合において、その協議により当該事業を承継すべき相続人を定めたときは、その者)又は合併後存続する法人若しくは合併により設立した法人は、旅客不定期航路事業者の地位を承継する。
2 前項の規定により旅客不定期航路事業者の地位を承継した者は、省令の定める手続により、承継のあつた日から三十日以内に、運輸大臣にその旨を届け出なければならない。
3 旅客不定期航路事業者について相続があつた場合において、第一項の相続人が被相続人の死亡後六十日以内に第二十一条第一項の規定による旅客不定期航路事業の許可の申請をしなければ、その期間経過後は、その者の承継に係る旅客不定期航路事業の許可は、その効力を失う。その者が許可の申請をした場合において、許可をする旨又は許可をしない旨の通知を受けた日以後についても同様である。
(解散の届出)
第二十三条の三 旅客不定期航路事業者たる法人が合併以外の事由により解散したときは、その清算人(解散が破産によるときは、破産管財人)は、省令の定める手続により、その日から三十日以内に、運輸大臣にその旨を届け出なければならない。
(準用規定)
第二十三条の四 第八条から第十一条まで、第十三条第二項、第十六条及び第十九条の二の規定は、旅客不定期航路事業について準用する。
(免許等の条件)
第二十三条の五 この章に規定する免許、許可又は認可には、条件を附し、及びこれを変更することができる。
2 前項の条件は、公共の利益を確保し、又は免許、許可若しくは認可に係る事項の確実な実施を図るため必要な最少限度のものに限り、且つ、船舶運航事業を営む者(以下「船舶運航事業者」という。)に不当な義務を課することとならないものでなければならない。
第二十六条第一項中「船舶運航事業を営む者(以下「船舶運航事業者」という。)」を「船舶運航事業者」に改め、後段を削る。
第三十条第三号中「第十九条の四」を「第十九条の六」に、「第十九条の五」を「第十九条の七」に改める。
第三十条の三中「定期航路事業者と通謀して」を「定期航路事業を営む者(以下「定期航路事業者」という。)と通謀して」に、「第十九条の四」を「第十九条の六」に、「第十九条の五」を「第十九条の七」に改める。
第三十三条中「第二十一条、第二十三条」を「第二十条」に改める。
第四十二条の見出しを「(国又は日本国有鉄道に関する規定)」に改め、同条第一項中「、日本国有鉄道又は商船管理委員会」を「又は日本国有鉄道」に改める。
第四十三条ただし書を次のように改める。
但し、旅客定期航路事業又は旅客不定期航路事業であつて、第二号に掲げる舟のみをもつて営むもの以外のものについては、この限りでない。
第四十四条中「及び第四十五条の二」を削る。
第四十四条の二の見出しを「(船舶の譲受の許可)」に改め、同条第一項中「又は借受」を削る。
第四十四条の三第三項を削る。
第四十五条の二第一項を次のように改める。
この法律に規定する運輸大臣の職権で政令で定めるものは、海運局長が行う。
第四十五条の二の次に次の一条を加える。
(聴聞)
第四十五条の三 海運局長は、その権限に属する左に掲げる事項について、必要があると認めるときは、利害関係人又は参考人の出頭を求めて聴聞することができる。
一 旅客定期航路事業の免許又は事業の停止若しくは免許の取消
二 旅客不定期航路事業の許可又は事業の停止若しくは許可の取消
2 海運局長は、その権限に属する前項各号に掲げる事項について利害関係人の申請があつたときは、利害関係人又は参考人の出頭を求めて聴聞しなければならない。
3 前二項の聴聞に際しては、利害関係人に対し、意見を述ベ、及び証拠を提出する機会が与えられなければならない。
第四十七条を次のように改める。
第四十七条 左の各号の一に該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第三条第一項の規定による免許を受けないで旅客定期航路事業を営んだ者
二 第二十一条第一項の規定による許可を受けないで旅客不定期航路事業を営んだ者
第四十八条第一号中「第九条第一項、第十一条」を「第九条第一項若しくは第十一条(第二十三条の四においてこれらの規定を準用する場合を含む。)」に改める。
第四十八条第二号の次に次の一号を加える。
二の二 第二十三条の四において準用する第十条又は第十三条第二項の規定に違反した者
第四十八条第四号中「第二十二条第一項」を「第二十五条第一項」に、同条第五号中「第二十一条(第二十五条及び第三十三条において準用する場合を含む。)」を「第二十四条(第三十三条において準用する場合を含む。)」に改める。
第四十九条第一号及び第二号を次のように改める。
一 第十九条の三第三項、第十九条の四第二項若しくは第四項、第十九条の五、第二十条(第三十三条において準用する場合を含む。)、第二十二条、第二十三条の二第二項又は第二十三条の三の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
二 第十九条の四第三項又は第十九条の六(第十九条の七において準用する場合を含む。)の規定による公示若しくは届出をせず、又は虚偽の届出をした者
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して九十日をこえない期間内において政令で定める日から施行する。
(他の法律の改正)
2 運輸省設置法(昭和二十四年法律第百五十七号)の一部を次のように改正する。
第四条第一項第十五号の二の次に次の一号を加える。
十五の二の二 旅客不定期航路事業を許可し、及び旅客不定期航路事業の業務に関し認可すること。
第六条第一項第三号中「旅客定期航路事業(対外定期航路事業を除く。)」を「旅客定期航路事業(対外旅客定期航路事業を除く。)及び旅客不定期航路事業」に改める。
第二十三条第一項第二号の次に次の一号を加える。
二の二 旅客不定期航路事業の許可又は認可に関すること。
第二十三条第一項第三号中「定期航路事業」の下に「及び旅客不定期航路事業」を加え、同項第五号中「、借受」を削る。
第四十条第一項第一号の次に次の一号を加える。
一の二 旅客不定期航路事業の許可又は認可に関すること。
第四十条第一項第二号中「定期航路事業」の下に「及び旅客不定期航路事業」を加え、同項第三号中「、借受」を削る。
3 港湾運送事業法(昭和二十六年法律第百六十一号)の一部を次のように改正する。
第二条第一項第三号中「海上運送法(昭和二十四年法律第百八十七号)に規定する旅客定期航路事業による貨物の運送」を「一定の航路に旅客船(十三人以上の旅客定員を有する船舶をいう。)を就航させて人の運送をする事業を営む者が当該航路に就航する当該旅客船により行う貨物の運送」に改める。
4 木船運送法(昭和二十七年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。
第二条第三項第二号中「旅客定期航路事業」の下に「及び旅客不定期航路事業」を加える。
第二十八条中「第二十三条、第二十四条」を「第二十条」に改める。
(経過規定)
5 この法律の施行前にした改正前の海上運送法の規定による旅客定期航路事業の免許及びその申請は、省令の定めるところにより、改正後の同法の規定により一般旅客定期航路事業又は特定旅客定期航路事業についてしたものとみなす。
6 この法律の施行の際現にこの法律の規定により旅客不定期航路事業となる事業を営んでいる者は、この法律の施行の日から六十日間は、改正後の海上運送法第二十一条第一項の規定にかかわらず、当該事業を引き続き営むことができる。その者が、その期間内に当該航路について旅客不定期航路事業の許可を申請した場合において、その申請について許可をする旨又は許可をしない旨の通知を受けるまでの期間についても同様である。
7 改正後の海上運送法第二十二条から第二十三条の四までの規定は、前項の者が同項の規定により引き続き当該事業を営む場合は、適用しない。
8 この法律の施行の際現にこの法律の規定により対外旅客定期航路事業となる事業を営んでいる者は、この法律の施行の日から六十日以内に、旅客及び手荷物の運賃及び料金その他の運送条件並びに運送に関する事業者の責任に関する事項について、これを公示し、かつ、省令の定める手続により、運輸大臣に届け出なければならない。
9 前項の規定に違反した者は、一万円以下の過料に処する。
運輸大臣 三木武夫
内閣総理大臣 鳩山一郎