海上運送法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第74号
公布年月日: 昭和28年7月23日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

現在、海上運送法による旅客定期航路事業者の約96%が中小企業であり、一旦海難事故が発生した場合、遭難者及び遺族への賠償金・弔慰金は莫大な額となる。しかし、経営者の資産能力が薄弱なため、被害者が十分な賠償を受けられない事例が多く、また事業者が完全な賠償に応じれば事業継続が困難となる恐れがある。そこで、事故発生時に事業者が確実に賠償責任を果たし、旅客の利益を保護するとともに、事業の健全な運営を維持できるよう、運輸大臣が必要と認める場合には、旅客定期航路事業者に対して、旅客運送に関する損害賠償のための保険契約締結を命じることができるようにするものである。

参照した発言:
第16回国会 衆議院 運輸委員会 第3号

審議経過

第16回国会

衆議院
(昭和28年6月24日)
参議院
(昭和28年6月30日)
衆議院
(昭和28年7月1日)
(昭和28年7月6日)
(昭和28年7月7日)
参議院
(昭和28年7月13日)
(昭和28年7月14日)
(昭和28年7月15日)
(昭和28年7月17日)
衆議院
(昭和28年8月10日)
参議院
(昭和28年8月10日)
海上運送法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和二十八年七月二十三日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第七十四号
海上運送法の一部を改正する法律
海上運送法(昭和二十四年法律第百八十七号)の一部を次のように改正する。
第十九条の二、第十九条の三及び第十九条の四をそれぞれ第十九条の三、第十九条の四及び第十九条の五とし、第十九条の次に次の一条を加える。
(保険契約締結の命令)
第十九条の二 運輸大臣は、旅客定期航路事業を永続的に確保し、且つ、旅客の利益を保護するため必要があると認めるときは、運輸審議会にはかり、旅客定期航路事業者に対し、当該旅客定期航路事業者が旅客の運送に関し支払うことのある損害賠償のため保険契約を締結することを命ずることができる。
第二十条の二中「第十九条」を「第十九条の二」に改める。
第三十条第三号及び第三十条の三中「第十九条の三(第十九条の四において準用する場合を含む。)」を「第十九条の四(第十九条の五において準用する場合を含む。)」に改める。
第四十三条に次の但書を加える。
但し、総トン数五トン未満の船舶(ろかいのみをもつて運転し、又は主としてろかいをもつて運転する舟を除く。)のみをもつて営む旅客定期航路事業については、この限りでない。
第四十四条中「前条中」を「前条及び第四十五条の二中」に改める。
第四十五条の次に次の一条を加える。
(職権の委任)
第四十五条の二 この法律に規定する運輸大臣の職権で総トン数五トン未満の船舶のみをもつて営む旅客定期航路事業に関するもののうち省令で定めるものは、海運局長が行う。
2 この法律の規定中運輸審議会に関する部分は、海運局長が前項の規定により委任された運輸大臣の職権を行う場合には、適用しない。
第四十九条第一号中「第十九条の二」を「第十九条の三」に改める。
第四十九条第二号中「第十九条の三(第十九条の四において準用する場合を含む。)」を「第十九条の四(第十九条の五において準用する場合を含む。)」に改める。
附 則
(施行期日)
1 この法律中第十九条の二、第二十条の二、第三十条第三号、第三十条の三、第四十九条第一号及び第四十九条第二号の改正規定は、公布の日から施行し、その他の規定は、公布の日から九十日をこえない期間内において政令で定める日から施行する。
(経過規定)
2 この法律中第四十三条の改正規定施行の際現に改正後の同条の規定により新たに旅客定期航路事業となる事業を営んでいる者は、同条の改正規定の施行の日から六十日以内は、海上運送法第三条第一項の規定にかかわらず、当該事業を従前の例により引き続き営むことができる。その期間内に当該航路について旅客定期航路事業の免許を申請した場合において、その申請について免許をする旨又は免許をしない旨の通知を受けるまでの期間についても同様である。
3 運輸大臣が前項の申請を受けた日から百八十日以内に、当該申請について免許をする旨又は免許をしない旨の通知をしないときは、当該申請は、免許されたものとする。
(他の法律の改正)
4 船舶安全法(昭和八年法律第十一号)の一部を次のように改正する。
第二条第二項第一号を次のように改める。
一 総噸数五噸未満ノ船舶(旅客運送ノ用ニ供スルモノヲ除ク)
第五条の次に次の一条を加える。
第五条ノ二 前条ノ規定ニ拘ラズ総噸数五噸未満ノ船舶及第三十二条各号ニ掲グル船舶ニシテ旅客運送ノ用ニ供スルモノニ付テノ検査ハ主務大臣ニ於テ必要ト認ムル時ニ随時之ヲ行フモノトシ当該検査ノ方法及検査ニ基キ交付スル証書ソノ他ノ書類ニ関シテハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第七条中「第五条」の次に「、第五条ノ二」を加える。
第二十四条ノ二中「第十条第二項」を「第五条ノ二、第十条第二項」に改める。
第三十二条に次の但書を加える。
但シ旅客運送ノ用ニ供スルモノハ此ノ限ニ在ラズ
5 船舶職員法(昭和二十六年法律第百四十九号)の一部を次のように改正する。
第二条第一項第一号中「船舶」の下に「(旅客運送の用に供する船舶を除く。)」を加える。
別表第一の船舶の欄平水区域を航行区域とする汽船の項中
総トン数百トン未満のもの
船長
丙種航海士
機関長
丙種機関士
の前に
総トン数五トン未満のもの
船長
小型船舶操縦士
を加える。
別表第七の船舶の欄中「平水区域を航行区域とする汽船」を「平水区域を航行区域とする汽船(総トン数五トン未満であつて旅客運送の用に供するものを除く。)」に改める。
6 運輸大臣は、附則第五項施行の際、現に総トン数五トン未満の船舶であつて旅客運送の用に供するものにおいて、船長の職務を行つている者に対しては、その居住する市町村の長(特別区にあつては特別区の長)のその旨及び当該船舶が旅客運送の用に供するものであることの証明があつた場合に限り、昭和二十九年八月三十一日までのその者の申請により、試験を行わないで、小型船舶操縦士の資格についての免許を与えることができる。
運輸大臣 石井光次郎
内閣総理大臣 吉田茂