警察法
法令番号: 法律第百六十二号
公布年月日: 昭和29年6月8日
法令の形式: 法律
警察法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十九年六月八日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百六十二号
警察法
警察法(昭和二十二年法律第百九十六号)の全部を改正する。
目次
第一章
総則(第一条―第三条)
第二章
国家公安委員会(第四条―第十四条)
第三章
警察庁
第一節
総則(第十五条―第十八条)
第二節
内部部局(第十九条―第二十六条)
第三節
附属機関(第二十七条―第二十九条)
第四節
地方機関(第三十条―第三十三条)
第五節
職員(第三十四条・第三十五条)
第四章
都道府県警察
第一節
総則(第三十六条・第三十七条)
第二節
都道府県公安委員会(第三十八条―第四十六条)
第三節
都道府県警察の組織(第四十七条―第五十八条)
第四節
都道府県警察相互間の関係(第五十九条―第六十一条)
第五章
警察職員(第六十二条―第七十条)
第六章
緊急事態の特別措置(第七十一条―第七十五条)
第七章
雑則(第七十六条―第七十九条)
附則
第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、個人の権利と自由を保護し、公共の安全と秩序を維持するため、民主的理念を基調とする警察の管理と運営を保障し、且つ、能率的にその任務を遂行するに足る警察の組織を定めることを目的とする。
(警察の責務)
第二条 警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。
2 警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、その責務の遂行に当つては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあつてはならない。
(服務の宣誓の内容)
第三条 この法律により警察の職務を行うすべての職員は、日本国憲法及び法律を擁護し、不偏不党且つ公平中正にその職務を遂行する旨の服務の宣誓を行うものとする。
第二章 国家公安委員会
(設置及び組織)
第四条 内閣総理大臣の所轄の下に、国家公安委員会を置く。
2 国家公安委員会は、委員長及び五人の委員をもつて組織する。
(任務及び権限)
第五条 国家公安委員会は、国の公安に係る警察運営をつかさどり、警察教養、警察通信、犯罪鑑識、犯罪統計及び警察装備に関する事項を統轄し、並びに警察行政に関する調整を行うことを任務とする。
2 国家公安委員会は、前項の任務を遂行するため、左に掲げる事務について、警察庁を管理する。
一 警察に関する諸制度の企画及び調査に関すること。
二 警察に関する国の予算に関すること。
三 左に掲げる事案で国の公安に係るものについての警察運営に関すること。
イ 民心に不安を生ずべき大規模な災害に係る事案
ロ 地方の静穏を害するおそれのある騒乱に係る事案
四 第七十一条の緊急事態に対処するための計画及びその実施に関すること。
五 皇宮警察に関すること。
六 警察教養施設の維持管理その他警察教養に関すること。
七 警察通信施設の維持管理その他警察通信に関すること。
八 犯罪鑑識施設の維持管理その他犯罪鑑識に関すること。
九 犯罪統計に関すること。
十 警察装備に関すること。
十一 警察職員の任用、勤務及び活動の基準に関すること。
十二 前号に掲げるものの外、警察行政に関する調整に関すること。
3 国家公安委員会は、都道府県公安委員会と常に緊密な連絡を保たなければならない。
(委員長)
第六条 委員長は、国務大臣をもつて充てる。
2 委員長は、会務を総理し、国家公安委員会を代表する。
3 国家公安委員会は、あらかじめ委員の互選により、委員長に故障がある場合において委員長を代理する者を定めておかなければならない。
(委員の任命)
第七条 委員は、任命前五年間に警察又は検察の職務を行う職業的公務員の前歴のない者のうちから、内閣総理大臣が両議院の同意を得て任命する。
2 委員の任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、前項の規定にかかわらず、同項に定める資格を有する者のうちから、委員を任命することができる。
3 前項の場合においては、任命後最初の国会で両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認を得られないときは、内閣総理大臣は、直ちにその委員を罷免しなければならない。
4 左の各号の一に該当する者は、委員となることができない。
一 禁治産者若しくは準禁治産者又は破産者で復権を得ない者
二 禁こ以上の刑に処せられた者
5 委員の任命については、そのうち三人以上が同一の政党に所属することとなつてはならない。
(委員の任期)
第八条 委員の任期は、五年とする。但し、補欠の委員は、前任者の残任期間在任する。
2 委員は、再任することができる。
(委員の失職及び罷免)
第九条 委員は、第七条第四項各号の一に該当するに至つた場合においては、その職を失うものとする。
2 内閣総理大臣は、委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認める場合又は委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認める場合においては、両議院の同意を得て、これを罷免することができる。
3 内閣総理大臣は、両議院の同意を得て、左に掲げる委員を罷免する。
一 委員のうち何人も所属していなかつた同一の政党に新たに三人以上の委員が所属するに至つた場合においては、これらの者のうち二人をこえる員数の委員
二 委員のうち一人がすでに所属している政党に新たに二人以上の委員が所属するに至つた場合においては、これらの者のうち一人をこえる員数の委員
4 内閣総理大臣は、委員のうち二人がすでに所属している政党に新たに所属するに至つた委員を直ちに罷免する。
5 第七条第三項及び前三項の場合を除く外、委員は、その意に反して罷免されることがない。
(委員の服務等)
第十条 国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第九十六条第一項、第九十七条、第九十八条第一項、第九十九条、第百条第一項及び第二項、第百三条第一項及び第三項並びに第百四条の規定は、委員の服務について準用する。この場合において、同法第九十七条中「人事院規則」とあるのは「総理府令」と、同法第百三条第三項中「前二項」とあるのは「第一項」と、同法同条同項中「人事院規則の定めるところにより、所轄庁の長の申出により人事院の承認」とあり、又は同法第百四条中「人事院及びその職員の所轄庁の長の許可」とあるのは「内閣総理大臣の承認」と読み替えるものとする。
2 委員は、国又は地方公共団体の常勤の職員と兼ねることができない。
3 委員は、政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。
4 委員の給与は、別に法律で定める。
(会議)
第十一条 国家公安委員会は、委員長が招集する。国家公安委員会は、委員長及び三人以上の委員の出席がなければ会議を開き、議決をすることができない。
2 国家公安委員会の議事は、出席委員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。
3 委員長に故障がある場合においては、第六条第三項に規定する委員長を代理する者は、前二項に規定する委員長の職務を行うものとし、これらの項に規定する会議又は議事の定足数の計算については、なお委員であるものとする。
(規則の制定)
第十二条 国家公安委員会は、その権限に属する事務に関し、法令の特別の委任に基いて、国家公安委員会規則を制定することができる。
(国家公安委員会の庶務)
第十三条 国家公安委員会の庶務は、警察庁において処理する。
(国家公安委員会の運営)
第十四条 この法律に定めるものの外、国家公安委員会の運営に関し必要な事項は、国家公安委員会が定める。
第三章 警察庁
第一節 総則
(設置)
第十五条 国家公安委員会に、警察庁を置く。
(長官)
第十六条 警察庁の長は、警察庁長官とし、国家公安委員会が内閣総理大臣の承認を得て、任免する。
2 警察庁長官(以下「長官」という。)は、国家公安委員会の管理に服し、警察庁の庁務を統括し、所部の職員を任免し、及びその服務についてこれを統督し、並びに警察庁の所掌事務について、都道府県警察を指揮監督する。
(権限)
第十七条 警察庁は、国家公安委員会の管理の下に、第五条第二項各号に掲げる事務をつかさどる。
(次長)
第十八条 警察庁に、次長一人を置く。
2 次長は、長官を助け、庁務を整理し、各部局及び機関の事務を監督する。
第二節 内部部局
(内部部局)
第十九条 警察庁に、長官官房及び左の四部を置く。
警務部
刑事部
警備部
通信部
(官房長及び部長)
第二十条 長官官房に官房長を、各部に部長を置く。
2 官房長又は部長は、命を受け、長官官房の事務又は部務を掌理する。
(長官官房の所掌事務)
第二十一条 長官官房においては、警察庁の所掌事務に関し、左に掲げる事務をつかさどる。
一 機密に関すること。
二 長官の官印及び庁印の管守に関すること。
三 公文書類の接受、発送、編集及び保存に関すること。
四 所管行政に関する企画、調査及び法令案の審査に関すること。
五 犯罪統計を除く警察統計に関すること。
六 広報に関すること。
七 予算、決算及び会計に関すること。
八 国有財産及び物品の管理及び処分に関すること。
九 会計の監査に関すること。
十 前各号に掲げるものの外、他の部又は機関の所掌に属しない事務に関すること。
(警務部の所掌事務)
第二十二条 警務部においては、警察庁の所掌事務に関し、左に掲げる事務をつかさどる。
一 警察職員の人事及び定員に関すること。
二 警察職員の福利厚生に関すること。
三 警察教養及び監察に関すること。
四 警察装備に関すること。
(刑事部の所掌事務)
第二十三条 刑事部においては、警察庁の所掌事務に関し、左に掲げる事務をつかさどる。
一 刑事警察に関すること。
二 犯罪の予防に関すること。
三 保安警察に関すること。
四 犯罪鑑識に関すること。
五 犯罪統計に関すること。
(警備部の所掌事務)
第二十四条 警備部においては、警察庁の所掌事務に関し、左に掲げる事務をつかさどる。
一 警衛及び警備警察に関すること。
二 警ら及び交通警察に関すること。
三 第七十一条の緊急事態に対処するための計画及びその実施に関すること。
(通信部の所掌事務)
第二十五条 通信部においては、警察庁の所掌事務に関し、警察通信に関する事務をつかさどる。
(課の設置及び所掌事務)
第二十六条 警察庁の課(室その他課に準ずるものを含む。)の設置及び所掌事務の範囲は、政令で定める。
第三節 附属機関
(警察大学校)
第二十七条 警察庁に、警察大学校を附置する。
2 警察大学校は、警察職員に対し、上級の幹部として必要な教育訓練を行い、警察に関する学術の研修をつかさどる。
3 警察大学校に、校長を置く。
4 警察大学校の位置及び内部組織は、総理府令で定める。
(科学捜査研究所)
第二十八条 警察庁に、科学捜査研究所を附置する。
2 科学捜査研究所は、科学捜査についての研究、調査及び実験並びにこれらを応用する鑑定及び検査をつかさどる。
3 科学捜査研究所に、所長を置く。
4 科学捜査研究所の位置及び内部組織は、総理府令で定める。
(皇宮警察本部)
第二十九条 警察庁に、皇宮警察本部を附置する。
2 皇宮警察本部は、天皇及び皇后、皇太子その他の皇族の護衛、皇居及び御所の警備その他の皇宮警察に関する事務をつかさどる。
3 皇宮警察本部に、本部長を置く。
4 皇宮警察本部に、皇宮警察学校を置き、皇宮警察の職員に対して必要な教育訓練を行う。
5 皇宮警察本部の位置及び内部組織は、総理府令で定める。
第四節 地方機関
(管区警察局の設置)
第三十条 警察庁に、その所掌事務のうち、第五条第二項第二号から第四号まで、第六号から第八号まで、第十一号及び第十二号に掲げるものを分掌させるため、地方機関として、管区警察局を置く。
2 管区警察局の名称、位置及び管轄区域は、左の表のとおりとする。但し、警察通信に関する事務については、東京都の区域は、関東管区警察局の管轄に属するものとする。
名称
位置
管轄区域
東北管区警察局
仙台市
青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県
関東管区警察局
東京都
茨城県 栃木県 群馬県 埼玉県 千葉県 神奈川県 新潟県 山梨県 長野県 静岡県
中部管区警察局
名古屋市
富山県 石川県 福井県 岐阜県 愛知県 三重県
近畿管区警察局
大阪市
滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県
中国管区警察局
広島市
鳥取県 島根県 岡山県 広島県 山口県
四国管区警察局
高松市
徳島県 香川県 愛媛県 高知県
九州管区警察局
福岡市
福岡県 佐賀県 長崎県 熊本県 大分県 宮崎県 鹿児島県
(管区警察局長等)
第三十一条 管区警察局に、局長を置く。
2 管区警察局長は、管区警察局の事務を統括し、及び所属の警察職員を指揮監督し、並びに長官の命を受け、管区警察局の所掌事務について、府県警察を指揮監督する。
3 管区警察局に、総務部、公安部及び通信部の三部を置き、部にそれぞれ部長を置く。
4 前項に定めるものの外、管区警察局の内部組織は、総理府令で定める。
(管区警察学校)
第三十二条 管区警察局に、管区警察学校を附置する。
2 管区警察学校は、警察職員に対し、幹部として必要な教育訓練その他所要の教育訓練を行う。
3 管区警察学校に、校長を置く。
4 管区警察学校の位置及び内部組織は、総理府令で定める。
(北海道地方警察通信部)
第三十三条 警察庁に、その所掌事務のうち、北海道の区域における第五条第二項第七号に掲げるものを分掌させるため、地方機関として、北海道地方警察通信部を置く。
2 北海道地方警察通信部に、部長を置く。
3 北海道地方警察通信部の位置及び内部組織は、総理府令で定める。
第五節 職員
(職員)
第三十四条 警察庁に、警察官、皇宮護衛官、事務官、技官その他所要の職員を置く。
2 皇宮護衛官は、皇宮警察本部に置く。
3 長官は警察官とし、警察庁の次長、官房長及び部長(通信部長を除く。)、管区警察局長その他政令で定める職は警察官をもつて、皇宮警察本部長は皇宮護衛官をもつて充てる。
4 警察庁に置かれる職員の任免、昇任、懲戒その他の人事管理に関する事項については、国家公務員法の定めるところによる。
(定員)
第三十五条 警察庁に置かれる職員の定員は、別に法律で定める。
2 警察庁に置かれる警察官及び皇宮護衛官の階級別定員は、総理府令で定める。
第四章 都道府県警察
第一節 総則
(設置及び責務)
第三十六条 都道府県に、都道府県警察を置く。
2 都道府県警察は、当該都道府県の区域につき、第二条の責務に任ずる。
(経費)
第三十七条 都道府県警察に要する左に掲げる経費で政令で定めるものは、国庫が支弁する。
一 警視正以上の階級にある警察官の俸給その他の給与、国家公務員共済組合負担金及び公務災害補償に要する経費
二 警察教養施設の維持管理及び警察学校における教育訓練に要する経費
三 警察通信施設の維持管理その他警察通信に要する経費
四 犯罪鑑識施設の維持管理その他犯罪鑑識に要する経費
五 犯罪統計に要する経費
六 警察用車両及び船舶並びに警備装備品の整備に要する経費
七 警衛及び警備に要する経費
八 国の公安に係る犯罪その他特殊の犯罪の捜査に要する経費
2 前項の規定により国庫が支弁することとなる経費を除き、都道府県警察に要する経費は、当該都道府県が支弁する。
3 都道府県の支弁に係る都道府県警察に要する経費については、予算の範囲内において、政令で定めるところにより、国がその一部を補助する。
第二節 都道府県公安委員会
(組織及び権限)
第三十八条 都道府県知事の所轄の下に、都道府県公安委員会を置く。
2 都道府県公安委員会は、都及び地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第百五十五条第二項の規定により指定する市(以下「指定市」という。)を包括する府県(以下「指定府県」という。)にあつては五人の委員、道及び指定府県以外の県にあつては三人の委員をもつて組織する。
3 都道府県公安委員会は、都道府県警察を管理する。
4 都道府県公安委員会は、その権限に属する事務に関し、法令又は条例の特別の委任に基いて、都道府県公安委員会規則を制定することができる。
5 都道府県公安委員会は、国家公安委員会及び他の都道府県公安委員会と常に緊密な連絡を保たなければならない。
(委員の任命)
第三十九条 委員は、当該都道府県の議会の議員の被選挙権を有する者で、任命前五年間に警察又は検察の職務を行う職業的公務員の前歴のないもののうちから、都道府県知事が都道府県の議会の同意を得て、任命する。但し、指定府県にあつては、その委員のうち二人は、当該指定市の議会の議員の被選挙権を有する者で、任命前五年間に警察又は検察の職務を行う職業的公務員の前歴のないもののうちから、当該指定市の市長がその市の議会の同意を得て推せんしたものについて、当該指定府県の知事が任命する。
2 左の各号の一に該当する者は、委員となることができない。
一 準禁治産者又は破産者で復権を得ない者
二 禁こ以上の刑に処せられた者
3 委員の任命については、そのうち二人以上(都及び指定府県にあつては三人以上)が同一の政党に所属することとなつてはならない。
(委員の任期)
第四十条 委員の任期は、三年とする。但し、補欠の委員は、前任者の残任期間在任する。
2 委員は、再任することができる。
(委員の失職及び罷免)
第四十一条 委員は、左の各号の一に該当する場合においては、その職を失うものとする。但し、当該都道府県の議会の議員の被選挙権を有する者でなくなつたことが住所を移したことに因る場合において、その住所が同一都道府県の区域内にあるときは、この限りでない。
一 第三十九条第二項各号の一に該当するに至つた場合
二 当該都道府県の議会の議員の被選挙権を有する者でなくなつた場合(第三十九条第一項但書に規定する委員については、当該指定市の議会の議員の被選挙権を有する者でなくなつた場合)
2 都道府県知事は、委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認める場合又は委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認める場合においては、当該都道府県の議会の同意を得て、これを罷免することができる。但し、第三十九条第一項但書に規定する委員の罷免については、指定府県の知事は、当該指定市の市長に対しその市の議会の同意を得ることを求めるものとし、その同意があつたときは、これを罷免することができる。
3 道府県(指定府県を除く。)知事は、委員のうち二人以上が同一の政党に所属するに至つた場合においては、これらの者のうち一人をこえる員数の委員を当該道府県の議会の同意を得て、罷免する。
4 都知事及び指定府県の知事は、委員のうち三人以上が同一の政党に所属するに至つた場合においては、第九条第三項各号の規定の例により、そのこえるに至つた員数の委員を、当該都及び指定府県の議会の同意を得て、罷免する。但し、新たに同一の政党に所属するに至つた委員のうちに第三十九条第一項但書に規定するものを含むときは、これらの委員のうち罷免すべきものは、くじで定める。
5 都道府県知事は、委員のうち一人(都及び指定府県にあつては二人)がすでに所属している政党に新たに所属するに至つた委員を直ちに罷免する。
6 前四項の場合を除く外、委員は、その意に反して罷免されることがない。
(委員の服務等)
第四十二条 地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)第三十条から第三十四条まで及び第三十八条第一項の規定は、委員の服務について準用する。但し、都道府県知事は、委員が同法第三十八条第一項に規定する地位を兼ね、又は同項に規定する行為をすることが委員の職務の遂行上支障があると認める場合の外は、同項に規定する許可を与えるものとする。
2 委員は、地方公共団体の議会の議員又は常勤の職員と兼ねることができない。
3 委員は、政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。
(委員長)
第四十三条 都道府県公安委員会に委員長を置き、委員が互選する。
2 委員長の任期は、一年とする。但し、再任することができる。
3 委員長は、会務を総理し、都道府県公安委員会を代表する。
(都道府県公安委員会の庶務)
第四十四条 都道府県公安委員会の庶務は、警視庁又は道府県警察本部において処理する。
(都道府県公安委員会の運営)
第四十五条 この法律に定めるものの外、都道府県公安委員会の運営に関し必要な事項は、都道府県公安委員会が定める。
(方面公安委員会)
第四十六条 第五十一条に規定する方面本部を管理する機関として、同条に規定する方面ごとに、方面公安委員会を置く。
2 第三十八条第二項及び第五項並びに第三十九条から前条までの道公安委員会及びその委員に関する規定は、方面公安委員会について準用する。この場合において、第三十八条第五項中「及び他の都道府県公安委員会」とあるのは、「並びに他の方面公安委員会及び都道府県公安委員会」と読み替えるものとする。
第三節 都道府県警察の組織
(警視庁及び道府県警察本部)
第四十七条 都警察の本部として警視庁を、道府県警察の本部として道府県警察本部を置く。
2 警視庁及び道府県警察本部は、それぞれ、都道府県公安委員会の管理の下に、都警察及び道府県警察の事務をつかさどる。
3 警視庁は特別区の区域内に、道府県警察本部は道府県庁所在地に置く。
4 警視庁及び道府県警察本部の内部組織は、政令で定める基準に従い、条例で定める。
(警視総監及び警察本部長)
第四十八条 都警察に警視総監を、道府県警察に道府県警察本部長を置く。
2 警視総監及び道府県警察本部長(以下「警察本部長」という。)は、それぞれ、都道府県公安委員会の管理に服し、警視庁及び道府県警察本部の事務を統括し、並びに都警察及び道府県警察の所属の警察職員を指揮監督する。
(警視総監の任免)
第四十九条 警視総監は、国家公安委員会が都公安委員会の同意を得た上内閣総理大臣の承認を得て、任免する。
2 都公安委員会は、国家公安委員会に対し、警視総監の懲戒又は罷免に関し必要な勧告をすることができる。
(警察本部長の任免)
第五十条 警察本部長は、国家公安委員会が道府県公安委員会の同意を得て、任免する。
2 道府県公安委員会は、国家公安委員会に対し、警察本部長の懲戒又は罷免に関し必要な勧告をすることができる。
(方面本部)
第五十一条 道の区域を五以内の方面に分ち、方面の区域内における警察の事務を処理させるため、方面ごとに方面本部を置く。
2 方面本部に、方面本部長を置く。
3 方面本部長は、方面公安委員会の管理に服し、方面本部の事務を統括し、及び道警察本部長の命を受け、方面本部の所属の警察職員を指揮監督する。
4 前条の規定は、方面本部長について準用する。
5 方面本部の数、名称、位置及び管轄区域は、国家公安委員会の意見を聞いて、条例で定める。
6 方面本部の内部組織は、政令で定める基準に従い、条例で定める。
(市警察部)
第五十二条 指定市の区域内における府県警察本部の事務を分掌させるため、当該指定市の区域に市警察部を置く。
2 市警察部に、部長を置く。
3 市警察部長は、市警察部の事務を統括し、及び府県警察本部長の命を受け、市警察部の所属の警察職員を指揮監督する。
(警察署等)
第五十三条 都道府県の区域を分ち、各地域を管轄する警察署を置く。
2 警察署に、署長を置く。
3 警察署長は、警視総監、警察本部長、方面本部長又は市警察部長の指揮監督を受け、その管轄区域内における警察の事務を処理し、所属の警察職員を指揮監督する。
4 警察署の名称、位置及び管轄区域は、政令で定める基準に従い、条例で定める。
5 警察署の下部機構として、派出所又は駐在所を置くことができる。
(府県警察学校等)
第五十四条 警視庁に警視庁警察学校を、府県警察本部に府県警察学校を附置する。
2 道警察本部に道警察学校を、方面本部に方面警察学校を附置する。
3 警視庁警察学校、府県警察学校及び方面警察学校は、警察職員に対し、新任者に対する教育訓練その他所要の教育訓練を行う。
4 道警察学校は、警察職員に対し、幹部として必要な教育訓練その他所要の教育訓練を行う。
(職員)
第五十五条 都道府県警察に、警察官、事務吏員、技術吏員その他所要の職員を置く。
2 警視総監、警察本部長、方面本部長、市警察部長及び警察署長は、警察官をもつて充てる。
3 第一項の職員のうち、警視総監、警察本部長及び方面本部長以外の警視正以上の階級にある警察官は、国家公安委員会が都道府県公安委員会の同意を得て、任免し、その他の職員は、警視総監又は警察本部長がそれぞれ都道府県公安委員会の意見を聞いて、任免する。
4 都道府県公安委員会は、警視総監、警察本部長及び方面本部長以外の警視正以上の階級にある警察官については国家公安委員会に対し、その他の職員については警視総監又は警察本部長に対し、それぞれその懲戒又は罷免に関し必要な勧告をすることができる。
(職員の人事管理)
第五十六条 都道府県警察の職員のうち、警視正以上の階級にある警察官(以下「地方警務官」という。)は、一般職の国家公務員とする。
2 前項の職員以外の都道府県警察の職員(以下「地方警察職員」という。)の任用及び給与、勤務時間その他の勤務条件、服務並びに公務災害補償に関して地方公務員法の規定により条例又は人事委員会規則で定めることとされている事項については、第三十四条第一項に規定する職員の例を基準として当該条例又は人事委員会規則を定めるものとする。
(職員の定員)
第五十七条 地方警務官の定員は、都道府県警察を通じて、政令で定め、その都道府県警察ごとの階級別定員は、総理府令で定める。
2 地方警察職員の定員(警察官については、階級別定員を含む。)は、条例で定める。この場合において、警察官の定員については、政令で定める基準に従わなければならない。
(組織の細目的事項)
第五十八条 本節に定めるものの外、都道府県警察の組織は、都道府県公安委員会規則で定める。
第四節 都道府県警察相互間の関係
(協力の義務)
第五十九条 都道府県警察は、相互に協力する義務を負う。
(援助の要求)
第六十条 都道府県公安委員会は、警察庁又は他の都道府県警察に対して援助の要求をすることができる。
2 前項の規定により都道府県公安委員会が他の都道府県警察に対して援助の要求をしようとするときは、あらかじめ(やむを得ない場合においては、事後に)必要な事項を警察庁に連絡しなければならない。
3 第一項の規定による援助の要求により派遣された警察庁又は都道府県警察の警察官は、援助の要求をした都道府県公安委員会の管理する都道府県警察の管轄区域内において、当該都道府県公安委員会の管理の下に、職権を行うことができる。
(管轄区域外における権限)
第六十一条 都道府県警察は、その管轄区域内における犯罪の鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕その他公安の維持に関連して必要がある限度においては、その管轄区域外にも、権限を及ぼすことができる。
2 前項の場合においては、都道府県警察は、その権限を及ぼす区域を管轄する他の都道府県警察と緊密な連絡を保たなければならない。
第五章 警察職員
(警察官の階級)
第六十二条 警察官(長官を除く。)の階級は、警視総監、警視監、警視長、警視正、警視、警部、警部補、巡査部長及び巡査とする。
(警察官の職務)
第六十三条 警察官は、上官の指揮監督を受け、警察の事務を執行する。
(警察官の職権行使)
第六十四条 都道府県警察の警察官は、この法律に特別の定がある場合を除く外、当該都道府県警察の管轄区域内において職権を行うものとする。
(現行犯人に関する職権行使)
第六十五条 警察官は、いかなる地域においても、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第二百十二条に規定する現行犯人の逮捕に関しては、警察官としての職権を行うことができる。
(移動警察に関する職権行使)
第六十六条 警察官は、二以上の都道府県警察の管轄区域にわたる交通機関における移動警察については、関係都道府県警察の協議により定められた当該関係都道府県警察の管轄区域内において、職権を行うことができる。
(小型武器の所持)
第六十七条 警察官は、その職務の遂行のため小型武器を所持することができる。
(被服の支給等)
第六十八条 国は、政令で定めるところにより、警察庁の警察官に対し、その職務遂行上必要な被服を支給し、及び装備品を貸与するものとする。
2 都道府県は、前項の政令に準じて条例で定めるところにより、都道府県警察の警察官に対し、その職務遂行上必要な被服を支給し、及び装備品を貸与するものとする。
(皇宮護衛官の階級等)
第六十九条 皇宮護衛官の階級は、皇宮警視監、皇宮警視長、皇宮警視正、皇宮警視、皇宮警部、皇宮警部補、皇宮巡査部長及び皇宮巡査とする。
2 皇宮護衛官は、上官の指揮監督を受け、皇宮警察の事務を執行する。
3 第六十七条及び前条第一項の規定は、皇宮護衛官について準用する。
(礼式等)
第七十条 警察職員の礼式、服制及び表彰に関し必要な事項は、国家公安委員会規則で定める。
第六章 緊急事態の特別措置
(布告)
第七十一条 内閣総理大臣は、大規模な災害又は騒乱その他の緊急事態に際して、治安の維持のため特に必要があると認めるときは、国家公安委員会の勧告に基き、全国又は一部の区域について緊急事態の布告を発することができる。
2 前項の布告には、その区域、事態の概要及び布告の効力を発する日時を記載しなければならない。
(内閣総理大臣の統制)
第七十二条 内閣総理大臣は、前条に規定する緊急事態の布告が発せられたときは、本章の定めるところに従い、一時的に警察を統制する。この場合においては、内閣総理大臣は、その緊急事態を収拾するため必要な限度において、長官を直接に指揮監督するものとする。
(長官の命令、指揮等)
第七十三条 第七十一条に規定する緊急事態の布告が発せられたときは、長官は布告に記載された区域(以下本条中「布告区域」という。)を管轄する都道府県警察の警視総監又は警察本部長に対し、管区警察局長は布告区域を管轄する府県警察の警察本部長に対し、必要な命令をし、又は指揮をするものとする。
2 第七十一条に規定する緊急事態の布告が発せられたときは、長官は、布告区域を管轄する都道府県警察以外の都道府県警察に対して、布告区域その他必要な区域に警察官を派遣することを命ずることができる。
3 第七十一条に規定する緊急事態の布告が発せられたときは、布告区域(前項の規定により布告区域以外の区域に派遣された場合においては、当該区域)に派遣された警察官は、当該区域内のいかなる地域においても職権を行うことができる。
(国会の承認及び布告の廃止)
第七十四条 内閣総理大臣は、第七十一条の規定により、緊急事態の布告を発した場合には、これを発した日から二十日以内に国会に付議して、その承認を求めなければならない。但し、国会が閉会中の場合又は衆議院が解散されている場合には、その後最初に召集される国会においてすみやかにその承認を求めなければならない。
2 内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があつたとき、国会が緊急事態の布告の廃止を議決したとき、又は当該布告の必要がなくなつたときは、すみやかに当該布告を廃止しなければならない。
(国家公安委員会の助言義務)
第七十五条 国家公安委員会は、内閣総理大臣に対し、本章に規定する内閣総理大臣の職権の行使について、常に必要な助言をしなければならない。
第七章 雑則
(検察官との関係)
第七十六条 都道府県公安委員会及び警察官と検察官との関係は、刑事訴訟法の定めるところによる。
2 国家公安委員会及び長官は、検事総長と常に緊密な連絡を保つものとする。
(恩給)
第七十七条 地方警察職員で左の各号に掲げるものは、恩給法(大正十二年法律第四十八号)第十九条に規定する公務員とみなして、同法の規定を準用する。この場合において、同法第十二条中「総理府恩給局長」とあるのは「都道府県知事」と、第十六条中「国庫」とあるのは「最終ニ之ニ俸給ヲ給シタル都道府県」と、第五十九条中「国庫」とあるのは「之ニ俸給ヲ給スル都道府県」と読み替えるものとする。
一 警部補、巡査部長又は巡査である警察官
二 警視又は警部である警察官
三 事務吏員又は技術吏員
2 前項の規定を適用する場合においては、同項第一号に掲げる職員は恩給法第二十三条に規定する警察監獄職員とみなし、同項第二号及び第三号に掲げる職員は同法第二十条第一項に規定する文官とみなす。
3 第一項各号に掲げる地方警察職員が引き続き恩給法第十九条に規定する公務員若しくは他の都道府県警察の同項各号に掲げる地方警察職員となつた場合又は同条に規定する公務員若しくは公務員とみなされる者が引き続き同項各号に掲げる地方警察職員となつた場合においては、恩給に関する法令の適用については、勤続とみなす。但し、同法第二十六条第二項の規定の準用を妨げない。
(国有財産等の無償使用等)
第七十八条 国は、国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)第二十二条(同法第十九条において準用する場合を含む。)及び財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第九条第一項の規定にかかわらず、警察教養施設、警察通信施設、犯罪鑑識施設その他都道府県警察の用に供する必要のある警察用の国有財産(国有財産法第二条第一項に規定する国有財産をいう。)及び国有の物品を当該都道府県警察に無償で使用させることができる。
2 警察庁又は都道府県警察は、連絡のため、相互に警察通信施設を使用することができる。
(政令への委任)
第七十九条 この法律に特別の定がある場合を除く外、この法律の実施のため必要な事項は、政令で定める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、昭和二十九年七月一日から施行する。但し、附則第三項、附則第六項及び附則第二十六項の規定は、公布の日から施行し、指定府県の府県公安委員会の委員及び市警察部に関する規定は、昭和三十年七月一日から施行する。
(従前の国家公安委員会及び都道府県公安委員会の廃止)
2 改正前の警察法(以下「旧法」という。)による国家公安委員会及び都道府県公安委員会は、この法律(前項但書に係る部分を除く。以下同じ。)の施行に伴い、廃止されるものとする。
(準備行為)
3 この法律の施行後最初に任命される国家公安委員会の委員及び都道府県公安委員会の委員並びに方面公安委員会の委員の選任のための手続その他この法律を施行するため必要な準備行為は、この法律の施行前においても行うことができる。
(最初の国家公安委員会の委員の任命)
4 この法律の施行後最初に任命される国家公安委員会の委員の任期は、五人のうち、一人は一年、一人は二年、一人は三年、一人は四年、一人は五年とする。
5 前項に規定する各委員の任期は、内閣総理大臣が定める。
6 この法律の施行後最初に任命される国家公安委員会の委員の任命について、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、第七条第一項の規定にかかわらず、同項に定める資格を有する者のうちから委員を任命することができる。この場合においては、その任命につき任命後最初の国会で両議院の事後の承認を得なければならないものとし、両議院の事後の承認を得られないときは、内閣総理大臣は、直ちにその委員を罷免しなければならない。
(最初の都道府県公安委員会の委員及び方面公安委員会の委員の任命)
7 この法律の施行後最初に任命される都道府県公安委員会の委員及び方面公安委員会の委員の任期は、その定数が三人の場合にあつては、一人は一年、一人は二年、一人は三年とし、その定数が五人の場合にあつては、一人は一年、二人は二年、二人は三年とする。この場合において、第三十九条第一項但書に規定する委員の任期は、二人のうち、一人は二年、一人は三年とする。
8 前項に規定する各委員の任期は、都道府県知事が定める。但し、第三十九条第一項但書に規定する委員の任期については、当該指定市の市長と協議して定める。
(従前の警察職員に関する経過規定)
9 この法律の施行の際、現に国家地方警察本部若しくはその附属機関又は警察管区本部(札幌警察管区本部を除く。)若しくはその附属機関の職員若しくは札幌警察管区本部の通信機関に所属する職員である者は、別に辞令を発せられない限り、それぞれこの法律による警察庁若しくはその附属機関又は管区警察局若しくはその附属機関若しくは北海道地方警察通信部の職員となるものとする。
10 この法律の施行の際、現に札幌警察管区本部(通信機関に所属する職員を除く。)、札幌管区警察学校、都道府県国家地方警察又はその都道府県の区域内に存する自治体警察の職員である者は、別に辞令を発せられない限り、当該都道府県に置かれる都道府県警察の職員となるものとする。この場合において、その都道府県警察の職員となるものの数が第五十七条の規定により政令又は条例で定められた定数をこえることとなるときは、そのこえる数の職員は、それぞれ、地方警察官又は地方警察職員の区分に応じ、政令又は政令で定める基準に従い条例で定めるところにより、定員外とすることができる。
(警察用財産の処理に関する経過規定)
11 この法律の施行の際現に警察の用にもつぱら供せられ、又は供せられる予定となつている財産のうち、国有の財産で都道府県警察が引き続き警察の用に供する必要のあるもの、市町村有の財産で警察庁若しくは都道府県警察が引き続き警察の用に供する必要のあるもの又は都有の財産で警察庁が引き続き警察の用に供する必要のあるものは、土地を除き、それぞれ、国と都道府県と、市町村と国若しくは都道府県と、又は都と国との間においてあらかじめ協議するところに基き、第三十七条第一項及び第二項に規定する経費の負担区分に従い、国から当該都道府県に、市町村から国若しくは当該都道府県に、又は都から国に譲渡するものとする。
12 この法律の施行の際現に警察の用にもつぱら供せられている国有又は地方公共団体所有の土地及びこの法律の施行の際現に国家地方警察又は自治体警察が他の機関と共用している国有又は地方公共団体所有の財産で、警察庁又は都道府県警察が引き続き警察の用に供する必要のあるものは、それぞれ、前項の例により、警察庁又は当該都道府県警察が使用することができるものとする。
13 前二項の規定による譲渡又は使用は、無償とする。但し、当該譲渡又は使用に係る財産に伴う負債がある場合その他政令で定める特別の事情がある場合においては、相互の協議により、当該負債を処理し、又は当該譲渡若しくは使用を有償とするため必要な措置を講ずることができる。
14 前三項の規定の適用について争があるときは、長官又は当該地方公共団体の長の申立に基き、政令で定めるところにより、内閣総理大臣が裁定する。
(給与に関する経過規定)
15 この法律の施行の際国家地方警察又は自治体警察の職員が地方警察職員となつた場合におけるその者が受けるべき俸給その他の給与は、当該都道府県の条例の定めるところによるものとし、その俸給月額がこの法律の施行前の日で政令で定める日現在におけるその者の俸給月額に達しないこととなる場合においては、その調整のため、都道府県は、政令で定める基準に従い条例で定めるところにより、手当を支給するものとする。
(休職、特別待命又は懲戒処分に関する経過規定)
16 この法律の施行の際引き続き警察職員となつた者で、現に従前の規定により休職を命ぜられ、若しくは特別待命を承認されているものの休職若しくは特別待命の承認又はこの法律の施行の際引き続き警察職員となつた者に対するこの法律の施行前の事案に係る懲戒処分に関しては、なお従前の例による。この場合において、この法律の施行後懲戒処分を行うこととなるときは、当該懲戒処分に係る者の任命権者が懲戒処分を行うものとする。
(不利益処分に関する経過規定)
17 この法律の施行前に警察職員に対し行われた不利益処分に関する説明書の交付、審査の請求、審査及び審査の結果執るべき措置に関しては、なお従前の例による。
(公務災害補償に関する経過規定)
18 警察職員に係る公務に因る災害に対する補償で、災害の原因である事故が発生した日又は診断によつて疾病の発生が確定した日が昭和二十九年六月三十日以前に係るものについて同年七月一日以降において実施すべきもの及びこれに対する審査は、その者がこの法律の施行後引き続き警察職員として在職する場合においては、同年七月一日以降当該警察職員に係る俸給その他の給与を負担すべき者が行うものとする。
19 この法律の施行前すでに退職し、又はこの法律の施行の際退職した警察職員に対しこの法律の施行の際行われている公務に因る災害に対する補償並びに当該警察職員に対する前項に規定する補償及びこれに対する審査は、なお従前の例による。
(退職手当に関する経過規定)
20 この法律の施行の際、国家地方警察の職員が引き続き地方警察職員となつた場合においては、その者に対しては、国家公務員等退職手当暫定措置法(昭和二十八年法律第百八十二号。以下「退職手当法」という。)の規定による退職手当は、支給しない。この場合において、都道府県は、その者が国家公務員として引き続き勤続した期間(その者の地方公務員としての在職期間であつて、退職手当を支給されないで国家公務員としての在職期間に引き続いたものを含む。)を当該都道府県警察の職員としての勤続期間に通算する措置を講ずるものとする。
21 この法律の施行の際、自治体警察の職員が引き続き地方警察職員となつた場合においては、その者に対しては、自治体警察を維持していた地方公共団体の退職手当に関する条例の規定にかかわらず、退職手当は、支給しないものとする。この場合において、都道府県は、その者が地方公務員として引き続き勤続した期間(その者の国家公務員としての在職期間であつて、退職手当を支給されないで地方公務員としての在職期間に引き続いたものを含む。)を当該都道府県警察の職員としての勤続期間に通算する措置を講ずるものとする。
22 この法律の施行の際、自治体警察の職員が引き続き国家公務員たる警察職員となつた場合においては、その者に対しては、自治体警察を維持していた地方公共団体の退職手当に関する条例の規定にかかわらず、退職手当は、支給しないものとする。この場合における退職手当法第七条第五項前段の規定の適用については、その者が地方公務員として引き続き勤続した期間には、退職手当を支給されないでこれに引き続いた国家公務員としての在職期間を含むものとする。
(恩給に関する経過規定)
23 この法律の施行前旧法附則第七条(旧法第五十三条において特別区の存する区域における自治体警察の職員に準用する場合を含む。以下同じ。)又は警察法の一部を改正する法律(昭和二十六年法律第二百三十三号)附則第四項の規定の適用を受けていた者の従前の規定による自治体警察の職員としての在職については、これらの規定は、なおその効力を有するものとする。
24 この法律の施行の際旧法附則第七条の規定の適用を受けていた者以外の自治体警察の職員で左の各号に掲げるものが引き続き恩給法第十九条に規定する公務員たる警察庁の職員若しくは都道府県警察の職員又は第七十七条第一項各号に掲げる地方警察職員となつた場合において、その者が自治体警察を維持していた地方公共団体の退職年金又は退職一時金に関する条例の規定による退職給付を受けなかつたときは、同法の規定の適用又は準用については、その者が自治体警察の職員として引き続き在職した期間同法第十九条に規定する公務員として在職していたものとみなす。
一 警部補、巡査部長又は巡査である警察吏員
二 警察長又は前号に掲げる者以外の警察吏員
三 専門家、技術者又は書記
25 前項の規定を適用する場合においては、同項第一号に掲げる職員としての在職は恩給法第二十三条に規定する警察監獄職員としての在職とみなし、同項第二号及び第三号に掲げる職員としての在職は同法第二十条第一項に規定する文官としての在職とみなす。
26 恩給法の一部を改正する法律(昭和二十八年法律第百五十五号。以下「改正法律」という。)の施行の際恩給法第十九条に規定する公務員又は公務員とみなされる者として在職した国家地方警察又は自治体警察の職員に対する改正法律附則第六条第二項の規定の適用については、同法同条同項中「八月」とあるのは、「一年」とする。
(共済組合に関する経過規定)
27 自治体警察の職員であつた者でこの法律の施行の際引き続き地方警察職員となるもののうち、国家公務員共済組合法(昭和二十三年法律第六十九号)に定める退職給付、廃疾給付及び遺族給付に関する規定の適用を受けることとなるものについては、その者が自治体警察を維持していた地方公共団体の退職年金又は退職一時金に関する条例の規定による退職給付を受けない場合に限り、その者が自治体警察に勤務した期間は、同法第八十六条第一項の組合員であつた期間とみなす。この場合において、当該地方公共団体の長(町村職員恩給組合にあつては、管理者)は、政令で定めるところにより、その者に係る同法第十六条第一項に規定する責任準備金に相当する金額を同法第二条第二項第一号に規定する組合に払い込むものとする。
(市警察の設置に伴う特例)
28 この法律の施行後一年間は、指定市に、市警察を置き、市警察は、当該指定市の区域につき、第二条の責務に任ずる。
29 この法律の施行後一年間は、指定府県の府県警察は、第三十六条第二項の規定にかかわらず、当該指定府県内の指定市の区域を除いた区域につき、第二条の責務に任ずる。
30 附則第二十八項の規定により指定市に置かれる市警察については、当該指定市をもつて一の県とみなし、指定府県以外の県の県警察に関する規定を適用する。
31 この法律の施行後一年間は、指定府県の府県公安委員会については、指定府県以外の県の県公安委員会に関する規定を適用する。
(政令への委任)
32 前各項に定めるものの外、この法律の施行に関し必要な経過措置(附則第二十八項から前項までの特例に関する経過措置を含む。)は、政令で定める。
内閣総理大臣 吉田茂