警察法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十二年十二月十七日
内閣総理大臣 片山哲
法律第百九十六号
警察法目次
第一章
総則
第二章
國家地方警察
第一節
國家公安委員会
第二節
國家公安委員会の事務部局
第三節
都道府縣公安委員会
第四節
都道府縣國家地方警察
第三章
自治体警察
第一節
総則
第二節
市町村公安委員会
第三節
市町村警察
第四節
特別区に関する特例
第四章
國家地方警察及び自治体警察並びに自治体警察相互間の関係
第五章
管轄区域外における権限行使
第六章
犯罪統計及び犯罪鑑識
第七章
國家非常事態の特別措置
第八章
雜則
附則
別表
警察法
國民のために人間の自由の理想を保障する日本國憲法の精神に從い、又、地方自治の眞義を推進する観点から、國会は、秩序を維持し、法令の執行を強化し、個人と社会の責任の自覚を通じて人間の尊嚴を最高度に確保し、個人の権利と自由を保護するために、國民に属する民主的権威の組織を確立する目的を以て、ここにこの警察法を制定する。
第一章 総則
第一條 警察は、國民の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の搜査、被疑者の逮捕及び公安の維持に当ることを以てその責務とする。
警察の活動は、嚴格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、いやしくも日本國憲法の保障する個人の自由及び権利の干渉にわたる等その権能を濫用することとなつてはならない。
第二條 この法律において行政管理とは、警察職員の人事及び警察の組織並びに予算に関する一切の事項に係るものをいう。
この法律において運営管理とは、左に掲げる事項に係るものをいう。
一 公共の秩序の維持
二 生命及び財産の保護
三 犯罪の予防及び鎭圧
四 犯罪の搜査及び被疑者の逮捕
五 交通の取締
六 逮捕状、勾留状の執行その他の裁判所、裁判官又は檢察官の命ずる事務で法律をもつて定めるもの
この法律にいう犯罪とは経済法令に関する違反を含むものであり、且つ、これに限定せられるものではない。
第三條 この法律に從うすべての職員の行う職務の宣誓は、日本國憲法及び法律を擁護し支持する義務に関する事項をその内容に含むべきものとする。
第二章 國家地方警察
第一節 國家公安委員会
第四條 内閣総理大臣の所轄の下に、國家公安委員会及び警察官の定員三万人を超えない國家地方警察隊を置く。その経費は、國庫の負担とする。
國家公安委員会は、左に掲げる事務を掌る。
一 警察通信施設(自治体警察の本部から管下の下部組織に通ずるものを除く。)の維持管理に関する事項 但し、國家地方警察及び他の自治体警察との連絡のために、自治体警察はこれを利用することができる。
二 犯罪鑑識施設の維持管理に関する事項
三 警察教養施設の維持管理に関する事項
四 その他國家地方警察の行政管理に関する事項
五 犯罪鑑識及び犯罪統計に関する事項
六 國家非常事態に対処するための警察の統合計画の立案及び実施に関する事項
七 皇宮警察の管理に関する事項並びに当該機関の要求のあつた場合において、東京都内における國会、内閣、各省(総理廳を含む。)、会計檢査院及び最高裁判所の使用する建物及び施設の警備に関する事項
第五條 國家公安委員会は、五人の委員を以て、これを組織する。
委員は、警察職員又は官公廳における職業的公務員(昭和二十年九月二日以後において公選され又は公選若しくは國会、その両院若しくはその一院又は地方議会の選挙若しくは議決によつて選任された者を除く。)の前歴のない者の中から、両議院の同意を経て、内閣総理大臣が、これを任命する。
委員の任命について、衆議院が同意して参議院が同意しない場合においては、日本國憲法第六十七條第二項の場合の例により、衆議院の同意を以て両議院の同意とする。
左の各号の一に該当する者は、委員となることができない。
一 禁治産者若しくは準禁治産者又は破産者で復権を得ない者
二 禁錮以上の刑に処せられた者
三 日本國憲法施行の日以後において、日本國憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壞することを主張する政党その他の團体を結成し、又はこれに加入した者
委員の任命については、その中の三人以上が、同一政党に属する者となることとなつてはならない。
第六條 國家公務員法第三章第七節の規定は、委員に、これを準用する。
委員は、政党その他の政治的團体の役員となることができない。
第七條 委員の任期は、五年とする。但し、補欠の委員は、前任者の残任期間在任する。
委員は、これを再任することができる。
第八條 委員は、第五條第四項各号の一に該当するに至つた場合においては、当然退職するものとする。
内閣総理大臣は、委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認める場合又は委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認める場合においては、両議院の同意を経て、これを罷免することができる。
内閣総理大臣は、両議院の同意を経て、左に掲げる委員を罷免する。
一 委員中何人も所属していなかつた同一の政党に新に三人以上の委員が所属するに至つた場合、これらの者の中二人を超える員数の委員
二 委員中一人が既に所属している政党に新に二人以上の委員が所属するに至つた場合、これらの者の中一人を超える員数の委員
第五條第三項の規定は、前二項の場合にこれを準用する。
内閣総理大臣は、委員中二人が既に所属している政党に新に所属した委員をただちに罷免する。
第二項、第三項及び前項の場合を除く外、委員はその意に反して罷免されることがない。
第九條 委員は、檢事総長の俸給に準ずる報酬を受ける。
第十條 國家公安委員会に委員長を置き、委員の互選により、これを選任する。委員長の任期は、一年とする。但し、これを再任することができる。
委員長は、國家公安委員会の会務を総理する。
第二節 國家公安委員会の事務部局
第十一條 國家公安委員会の権限に属する事項に関する事務を処理せしめるため、國家公安委員会に、その事務部局として國家地方警察本部を置く。
第十二條 國家地方警察本部に、長官を置く。
長官は、國家公務員法の規定に基き、國家公安委員会が、これを任命し、一定の事由により罷免する。
第十三條 長官は、國家公安委員会の指揮監督を受け、國家地方警察本部の部務を掌理する。
第十四條 國家地方警察本部に総務部、警務部及び刑事部を含む五以内の部を置く。
國家地方警察本部に警察大学校を附置する。
警察大学校は、國家地方警察の新任及び現任の警察職員及び要求のあつたときは自治体警察の新任及び現任の警察職員を訓練する。
第十五條 國家地方警察本部に、國家公安委員会の定めるところにより、次長一人、部長五人以内、警察官その他所要の所属職員及び機関を置く。
前項の職員は、國家公務員法の規定に基き、國家地方警察本部長官がこれを任命し、一定の事由により罷免する。
第十六條 全國を六警察管区に分ち、警察管区ごとに、國家地方警察の地方事務部局として警察管区本部を置き、國家地方警察本部の事務を分掌させる。
警察管区の区域及び名称並びに警察管区本部の位置及び名称は、別表による。
第十七條 警察管区本部に、國家公安委員会の定めるところにより、本部長、警察官その他所要の職員及び機関を置く。その組織は、國家地方警察本部の例による。
前項の職員は、國家公務員法の規定に基き、國家地方警察本部長官がこれを任命し、一定の事由により罷免する。
第十八條 警察管区本部長は、國家地方警察本部長官の指揮監督を受け警察管区本部の事務を処理し、その管轄区域内の都道府縣國家地方警察の行政的調整及びその均齊を図る。
警察管区本部長及び都道府縣公安委員会は、緊密な連絡を保ち、警察に関する事項について適当に協力する。
第十九條 各警察管区本部に管区警察学校を附置する。
管区警察学校は、國家地方警察の新任及び現任の警察職員及び要求のあつたときは自治体警察の新任及び現任の警察職員を訓練する。
管区警察学校及び警察大学校は、國家地方警察がこれを維持し運営する。
第三節 都道府縣公安委員会
第二十條 都道府縣知事の所轄の下に、都道府縣公安委員会を置く。
都道府縣公安委員会は、都道府縣國家地方警察の運営管理を行う。
第二十一條 都道府縣公安委員会は、三人の委員を以て、これを組織する。
委員は、その都道府縣の議会の議員の被選挙権を有する者で警察職員又は官公廳における職業的公務員(昭和二十年九月二日以後において公選され、又は公選若しくは國会、その両院若しくはその一院又は地方議会の選挙若しくは議決によつて選任せられた者を除く。)の前歴のない者の中から、都道府縣知事が、都道府縣の議会の同意を経て、これを任命する。
左の各号の一に該当する者は、委員となることができない。
一 破産者で復権を得ない者
二 禁錮以上の刑に処せられた者
三 日本國憲法施行の日以後において、日本國憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壞することを主張する政党その他の團体を結成し、又はこれに加入した者
委員の任命については、その中二人以上が、同一政党に属する者となることとなつてはならない。
第二十二條 委員は、都道府縣、特別区若しくは市町村の議会の議員又は有給吏員を兼ね、又は政党その他の政治的團体の役員となることができない。
前項の外、委員の服務に関する事項は、國家公務員法第三章第七節の規定に準じ、都道府縣規則で、これを定める。但し、同法第百三條及び第百四條に規定する制限は、都道府縣知事において委員の勤務に支障があると認める場合の外、これを行わないものとし、又委員の勤務については、都道府縣公安委員会でこれを定めるものとしなければならない。
第二十三條 委員の任期は、三年とする。但し、補欠の委員は、前任者の残任期間在任する。
委員は、これを再生することができる。
第二十四條 委員は、左の各号の一に該当する場合においては、当然退職するものとする。
一 第二十一條第三項各号の一に該当するに至つた場合
二 当該都道府縣の議会の議員の被選挙権を有する者でなくなつた場合
地方自治法第八十六條、第八十七條及び第八十八條第二項の規定は、委員解職の請求にこれを準用する。但し、同法第八十六條第一項中「その総数の三分の一以上の者」とあるのは「当該都道府縣國家地方警察の管轄区域内において選挙権を有する者の三分の一以上の者」と読み替えるものとする。
委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認める場合又は委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認める場合においては、都道府縣知事は、都道府縣の議会の同意を経て、これを罷免することができる。
委員の中、二人以上が同一政党に属することとなつた場合においては、これらの者の中、一人以外の者は、都道府縣知事が、都道府縣の議会の同意を経て、これを罷免する。但し、都道府縣知事は、委員中一人が既に所属している政党に新に所属するに至つた委員をただちに罷免する。
前二項の場合を除く外、委員はその意に反して罷免されることがない。
第二十五條 都道府縣は、委員に報酬を支給し、委員が職務を行うために要する費用の弁償をしなければならない。
前項の報酬及び費用については、地方自治法第二百三條第三項及び第二百六條の規定による。
第二十六條 都道府縣公安委員会に委員長を置き、委員の互選により、これを選任する。委員長の任期は、一年とする。但し、これを再任することができる。
委員長は、都道府縣公安委員会の会務を総理する。
第四節 都道府縣國家地方警察
第二十七條 都道府縣國家地方警察は、その都道府縣の区域(自治体警察の管轄に属する区域を除く。)内において第二條第二項に定める事務を行う。
第二十八條 各都府縣に、一の國家地方警察都府縣本部をその都府縣廳所在地に置く。北海道には、下部行政区劃により十四以内の國家地方警察の本部を置く。その本部の一は、北海道廳所在地に置く。
都道府縣國家地方警察の管轄に属する区域を警察区に分け、警察区毎に警察署を置く。
警察区の区域並びに警察署の位置、名称及び管轄区域は、國家地方警察がこれを定める。
警察署の下部機構として、派出所又は駐在所を置く。
第二十九條 都道府縣國家地方警察と市町村警察との連絡及び國家地方警察の所掌に属する警察通信施設の維持管理に当らしめるため、必要の地に都道府縣國家地方警察の支所を置く。
第三十條 都道府縣國家地方警察本部の長(以下都道府縣警察署長という。)は、國家公務員法の規定に基き、警察管区本部長が國家地方警察本部長官の同意を経てこれを任命し、一定の事由により罷免する。
第三十一條 都道府縣警察長は、都道府縣公安委員会の運営管理に服し、警察管区本部長の行政管理に服するものとする。
第三十二條 都道府縣警察長は、その都道府縣の区域内にある國家地方警察の所掌に属する警察通信施設を管理する。
第三十三條 都道府縣國家地方警察本部に所要の部課(犯罪鑑識及び犯罪統計に関する機構を含む。)を置く。
第三十四條 都道府縣國家地方警察に都道府縣警察学校を附置する。
都道府縣警察学校は、國家地方警察の新任及び現任の警察職員及び要求のあつたときは自治体警察の新任及び現任の警察職員を訓練する。
第三十五條 都道府縣國家地方警察に、警察長の外、警視、警部、警部補、巡査部長及び巡査たる警察官その他所要の職員を置く。
警察官の階級は、警察長、警視、警部、警部補、巡査部長及び巡査とする。
警察官は、上官の指揮監督を受け、警察の事務を掌る。
第三十六條 前條第一項に規定する職員は、國家公務員法の規定に基き、都道府縣警察長がこれを任命し、一定の事由により罷免する。但し、基礎的な警察訓練の過程を経ない者は、これを國家地方警察の勤務につけることができない。
警察官の宣誓、教育訓練、礼式及び服制について必要な事項は、國家公安委員会がこれを定める。
第三十七條 警察署長は、警視又は警部を以てこれにあてる。
警察署長は、都道府縣警察長の指揮監督を受け、その管轄区域内における警察事務を執行し、警察署の職員を指揮監督する。
第三十八條 支所長は、警部又は警部補を以てこれにあてる。
支所長は、都道府縣警察長の指揮監督を受け、第二十九條に規定する事務を執行し、支所の職員を指揮監督する。
第三十九條 都道府縣國家地方警察の機関及び職員に関する細目的事項は、國家公安委員会がこれを定める。
第三章 自治体警察
第一節 総則
第四十條 市及び人口五千以上の市街的町村(以下市町村という。)は、その区域内において警察を維持し、法律及び秩序の執行の責に任ずる。
前項に規定する市街的町村は、官報で最近に公示せられた人口に從い、政令を以てこれを告示する。
第四十一條 市町村警察は、第二條第二項に掲げた事項に関するすべての職務を行う。
第四十二條 自治体警察に要する経費は、当該市町村の負担とする。
第二節 市町村公安委員会
第四十三條 市町村長の所轄の下に市町村公安委員会を置き、その市町村の区域内における警察を管理せしめる。
第四十四條 市町村公安委員会の組織及び運営並びにその委員の資格、任命、兼職禁止、服務、任期、退職、罷免、報酬及び費用弁償については、第二十一條乃至第二十三條、第二十四條第一項、第三項乃至第五項、第二十五條及び第二十六條の規定を準用する。但し、地方自治法の規定による解職請求に基いて解職される場合においては、第二十四條第五項の規定にかかわらず、その職を失うものとする。なお第二十一條乃至第二十六條の規定中都道府縣とあるは市町村と、都道府縣知事とあるは、市町村長と、都道府縣規則とあるは、市町村規則と読み替えるものとする。
第三節 市町村警察
第四十五條 市町村は、一又は二以上の警察署を置く。
二以上の警察署を置く場合には、市町村警察の本部を置く。
警察署の位置、名称及び管轄区域並びに市町村警察本部の名称及び組織は、市町村公安委員会の意見を徴して市町村條例でこれを定める。
第四十六條 市町村警察に、警察長及びこの法律の規定に從い、有効に警察事務を行うに必要且つ適当な階級の警察吏員を置く。
前項の市町村警察吏員には、第三十五條第二項及び第三項の規定を準用する。
市町村警察吏員の定員は、地方的要求に應じてその市町村が條例でこれを決定するが、九万五千人を超えてはならない。但し、地方自治財政が確立するまでは、市町村の警察吏員の定員は、政令の定める基準によるものとする。この基準は、市町村の人口に應じ並びに有効な警察事務の執行及び警察の管理、監督に必要な警察吏員の階級に應じて定める。この基準は、又市町村の人口に應じ、有効に警察事務を行うに必要な專門家、技術者、書記及び雇傭人の数及び種類を明示する。九万五千人の全員の配分の調整は、地方自治財政が確立した後においては、國会の定める法律によつてのみ行う。
第四十七條 市町村警察長は、條例に從い、市町村公安委員会がこれを任命し、一定の事由により罷免する。
第四十八條 市町村警察長は、市町村公安委員会の定める規準によりその市町村警察職員を任命し、一定の事由により罷免する。市町村警察長は、これらの職員を指揮監督する。
第四十九條 警察署長は、警部補以上の警察吏員を以てこれに充てる。但し、市町村警察長がこれを兼ねることができる。
警察署長は、上司の指揮監督を受けて、管轄区域内における警察事務を執行し、部下の職員を指揮監督する。
第五十條 警察職員の任免、給與、服務その他の事項は、國家公務員法の精神に則り、市町村條例でこれを定める。但し、臨時的職員の外は基礎的な警察訓練の過程を経ない者は、これを市町村警察の勤務につけることができない。
市町村警察職員の宣誓、教育訓練、礼式及び服制は、第三十六條第二項の規定により國家公安委員会の定めるところに則り、市町村規則でこれを定める。但し、制服は、國家地方警察の制服と明確に区別されるものとする。
第四節 特別区に関する特例
第五十一條 特別区の存する区域においては、特別区が連合してその区域内における警察の責に任ずる。
第五十二條 前條の特別区には、都知事の所轄の下に市町村公安委員会に相当する特別区公安委員会を置き、その委員は、都知事が、都の議会の同意を経てこれを任命する。
第五十三條 前二條に規定するものの外、特別区の存する区域における自治体警察については、特別区の存する区域を以て一の市とみなし、市町村警察に関する規定を準用する。
第四章 國家地方警察及び自治体警察並びに自治体警察相互間の関係
第五十四條 市町村警察は、國家地方警察の運営管理又は行政管理に服することはない。これらの警察は、相互に協力する義務を負う。
第五十五條 國家地方警察の警察官は、市町村公安委員会から援助の要求があつた場合は当該市町村の区域において、援助の要求をした市町村公安委員会の運営管理の下に、その職権を行うことができる。
第五十六條 都道府縣警察長は、都道府縣内の市町村警察長と、緊密な連絡を保たなければならない。
第五章 管轄区域外における権限行使
第五十七條 國家地方警察及び市町村警察は、その都道府縣國家地方警察又は市町村警察の管轄に属する区域の境界外五百米以内の地域における犯罪については、その地域内においても職権を行う。
第五十八條 國家地方警察及び市町村警察は、その管轄区域(その境界外五百米以内の地域を含む。以下本條中これに同じ。)内に行われた犯罪行爲又はその管轄区域内に始まり、若しくはその管轄区域内に及んだ犯罪行爲の個々の場合について、その鎭圧、搜査又は被疑者の逮捕のため、その管轄区域外にも職権を及ぼすことができる。
第五十九條 國家地方警察が市町村の区域内に施設を維持する場合及び市町村がその区域外において施設を維持する場合においては、國家地方警察及び当該市町村警察は、相互にその施設について警察の職権を及ぼすものとする。
第六章 犯罪統計及び犯罪鑑識
第六十條 市町村警察長は、國家公安委員会の定める形式及び方法により、犯罪統計並びに証拠、写眞、指紋、被疑者及び被逮捕者の人相書及び手口からなる犯罪鑑識に関する事項を、都道府縣警察長を通じて國家地方警察本部長官に報告しなければならない。
第六十一條 國家地方警察本部及び都道府縣國家地方警察本部に、犯罪鑑識に関する施設を置く。
第七章 國家非常事態の特別措置
第六十二條 國家非常事態に際して、治安の維持のため特に必要があると認めるときは、内閣総理大臣は、國家公安委員会の勧告に基き、全國又は一部の区域について國家非常事態の布告を発することができる。
前項の布告には、その区域、事態の概要及び布告の効力を発する日時を記載しなければならない。
第六十三條 前條に規定する國家非常事態の布告が発せられたときは、この法律の定めるところに基き、内閣総理大臣によつて一時的に全警察の統制が行われる。この場合において國家地方警察本部長官又は警察管区本部長は、布告に記載した区域内の都道府縣警察長又は市町村警察長に対して必要な命令をなし、又は指揮をなすものとする。
第六十四條 内閣総理大臣は、國家非常事態の布告に記載した区域外の國家地方警察又は市町村警察に対して、警察官又は警察吏員の全部又は一部を、應援のため必要な区域に派遣することを命ずることができる。
前項の規定により、派遣された警察官及び警察吏員は、派遣の期間中派遣された区域においても職権を行うことができる。
第六十五條 第六十二條の規定により内閣総理大臣が発した國家非常事態の布告は、これを発した日から二十日以内に國会の承認を得なければならない。もしも衆議院が解散されているときは、日本國憲法第五十四條に規定する緊急集会による参議院の承認を求めなければならない。
前項に規定する期間内に、同項の規定により國家非常事態の布告が承認を得られないか、又は不承認の議決があつたときは、國家非常事態の布告は、將來にわたつてその効力を失う。
第六十六條 内閣総理大臣は、國家非常事態の布告を発した場合において、その必要がなくなつたと認めたときは、速かにその廃止の布告を発しなければならない。國会が命ずるときは、内閣総理大臣は、廃止の布告をしなければならない。
前項の廃止の布告その他本法に規定する内閣総理大臣の職権の行使については、國家公安委員会は、内閣総理大臣に対し、常に必要な助言をしなければならない。
第八章 雜則
第六十七條 都道府縣公安委員会、市町村公安委員会及び警察官又は警察吏員と檢察官との関係は、別に法律の定めるところによる。
國家公安委員会は、檢事総長と常に緊密な連絡を保つものとする。
第六十八條 都道府縣國家地方警察の管轄に属すべき区域と市町村警察の管轄に属すべき区域に変更を生じた場合、又は一若しくは二以上の市町村警察の管轄に属すべき区域が二以上の市町村警察の管轄に属すべき区域に分れ、又は一の市町村警察の区域となつた場合においては、その変更を要することとなつた日から五十日以内に、その管轄の変更による措置が完了されなければならない。
前項の措置が完了されるまでの間は、その区域においては從前の警察に関する管轄によるものとする。同項後段の場合においては、二以上の区域の市町村長が協議して又は一の市町村長が從前の市町村長の職務を行う。
附 則
第一條 この法律の施行の期日は、その成立の日から九十日を超えない期間内において、各規定について、政令で、これを定める。
第二條 この法律施行後最初に任命する國家公安委員の任期は、五人の内一人は一年、一人は二年、一人は三年、一人は四年、一人は五年とする。
前項に規定する各委員の任期は、当該委員会おいて、くじでこれを定める。
第三條 この法律施行後最初に任命する都道府縣公安委員、市町村公安委員の任期は、三人の中一人は一年、他の一人は二年、他の一人は三年とする。
前項に規定する各委員の任期は、各当該委員会において、くじでこれを定める。
第四條 國家公務員法は、この法律の適用に必要な範囲内においては、既に施行されたものとみなす。
前項の場合においては、國家公務員法による人事委員会の設置に至るまで、その職権は、同法附則第二條の例により、臨時人事委員会がこれを行う。
第五條 この法律施行後一年間は、任用候補者名簿がない場合その他特に必要がある場合においては、國家地方警察又は自治体警察の職員は、現在の法令により、夫々当該職員に相應する官吏又は吏員に必要な資格を有する者の中から、臨時に、これを任命することができる。
第六條 國家地方警察の警察官吏の任免、給與、服務その他必要な事項に関しては、警察官吏に関する人事委員会規則が定められ、若しくは第三十六條第二項の規定による國家公安委員会の定がなされるまでは、当分の間、なお從前の廳府縣警察官吏の例による。
第七條 この法律施行の際現に警視廳又は道府縣警察部に勤務する官吏が、引続き市町村警察の職員となつた場合には、これを從前の身分のまま勤続するものとみなし、当分の間、これに恩給法の規定を準用する。この者が市町村警察の職員より更に國家地方警察の職員になつた場合には、その市町村警察の職員としての在職期間は、これを公務員としての在職年に通算する。
この法律施行の際現に警視廳又は道府縣警察部に勤務する都道府縣の吏員が、引続き國家地方警察の職員となつた場合には、恩給法の適用については、その当該都道府縣の吏員としての在職期間は、これを公務員としての在職年に通算する。
第八條 市町村警察に要する費用は、地方自治財政が、確立される時まで、政令の定めるところにより國庫及び都道府縣がこれを負担する。
國家地方警察に要する費用は、前項のときまで國庫及び都道府縣の負担とする。
國庫と当該都道府縣の警察費の負担区分については、第一項のときまで從前の例による。
第九條 この法律施行の際又はこの法律施行後新たに市町村が警察の責に任ずることとなつた場合において、現に警察の用に供する國有財産及び都道府縣財産又は國及び都道府縣の所有に属する物品で國家地方警察に不必要なものは、市町村警察に必要な場合は、無償でこれを当該市町村に讓與するものとする。但し、これに伴う負債のあるときはその処分については相互の協議により、これを定める。
第十條 この法律施行の際警視廳又は道府縣警察部の管理に属する犯罪鑑識施設、警察通信施設及び教養施設は、國家地方警察がこれを維持管理する。但し、現在東京都港区愛宕町及び宮城内にある警視廳の訓練学校で將來東京都の特別区の警察え移管さるべきものを除く。
第十一條 町村の全部事務組合及び役場事務組合でこの法律施行の際現に存するものは、この法律の規定の適用については、これを一の町村とみなす。
第十二條 行政執行法第一條及び第二條の当該行政官廳は、第三十七條又は第四十九條の警察署長とし、同法第三條乃至第五條の当該行政官廳及び同法第六條の行政官廳は、第三十七條及び第四十九條の警察署長を含むものとする。
第十三條 第四十條第一項の規定により市町村がその区域内における警察の責に任ずるのは、各市町村について、この法律中の自治体警察に関する規定の適用により市町村公安委員会が成立し、必要な警察吏員が任命せられた日よりとする。但し、その期日は、この法律の成立後九十日を超えてはならない。
第十四條 前條の規定によりその区域内における警察の責に任ずる市町村ができた場合においては、この法律中の國家地方警察に関する規定が施行されるまでの間、警視廳又は道府縣警察部が國家地方警察としてその職務を行うものとする。
第十五條 地方自治法の一部を次のように改正する。
第十三條第二項中「選挙管理委員又は監査委員」を「選挙管理委員若しくは監査委員又は市町村公安委員会の委員」に改める。
第二十一條第二項中「警察官吏」を「警察官」に改め、「收税官吏」の下に「並びに普通地方公共團体における公安委員会の委員及び警察吏員」を加える。
第八十六條第一項及び第八十八條第二項中「選挙管理委員又は監査委員」を「選挙管理委員若しくは監査委員又は市町村公安委員会の委員」に改める。
第百二十一條中「及び監査委員」を「、監査委員及び市町村公安委員会の委員」に改める。
第百二十五條中「又は監査委員」を「若しくは監査委員又は当該市町村の公安委員会」に改める。
第百三十條第一項中「警察官吏」を「当該警察官又は警察吏員」に改める。
第百五十八條第一項中
警察部
一 警察に関する事項
を削る。
第百六十條第二項中「警察官吏」を「当該警察官若しくは警察吏員」に改める。
第百七十三條第一項中「、教育吏員及び警察吏員」を「及び教育吏員」に改め、同條第五項を削る。
第二百七十七條中「第百四十五條」を「第百二十一條、第百四十五條」に改める。
附則第一條但書を削る。
附則第四條中「(警視廳を除く。以下これに同じ。)」を削る。
附則第七條を次のように改める。
第七條 削除
第十六條 衆議院議員選挙法の一部を次のように改正する。
第九條中「及警察官吏」を「、警察官、都道府縣及市町村ノ公安委員会ノ委員並ニ警察吏員」に改める。
第四十條中「警察官吏」を「当該警察官又ハ警察吏員」に改める。
第四十一條中「及警察官吏」を「並ニ当該警察官及警察吏員」に改める。
第百十二條第二項及び第百十三條第二項中「警察官吏」を「都道府縣若ハ市町村ノ公安委員会ノ委員又ハ警察官若ハ警察吏員」に、「関係ノ都道府縣」を「関係区域」に改める。
第百二十一條第二項中「警察官吏」を「当該警察官及警察吏員」に改める。
第百二十四條中「警察官吏」を「当該警察官又ハ警察吏員」に改める。
第十七條 参議院議員選挙法の一部を次のように改正する。
第七條中「及び警察官吏」を「、警察官、都道府縣及び市町村公安委員会の委員並びに警察吏員」に改める。
第十八條 最高裁判所裁判官國民審査法の一部を次のように改正する。
第四十四條第二項中「警察官吏」を「都道府縣若しくは市町村公安委員会の委員又は警察官若しくは警察吏員」に、「関係の都道府縣」を「関係区域」に改める。
第十九條 他の法令中警察官に関する規定は、当該警察官及び警察吏員に関する規定とする。
(別表)
警察管区の区域
警察管区の名称
警察管区本部の位置
警察管区本部の名称
北海道
札幌警察管区
札幌市
札幌警察管本部
宮城縣 福島縣 岩手縣青森縣 山形縣 秋田縣
仙臺警察管区
仙臺市
仙臺警察管区本部
東京都 神奈川縣 新潟縣埼玉縣 群馬縣 千葉縣茨城縣 栃木縣 靜岡縣山梨縣 長野縣
東京警察管区
東京都
東京警察管区本部
大阪府 京都府 兵庫縣奈良縣 滋賀縣 和歌山縣愛知縣 三重縣 岐阜縣福井縣 石川縣 富山縣
大阪警察管区
大阪市
大阪警察管区本部
廣島縣 鳥取縣 島根縣岡山縣 山口縣 香川縣愛媛縣 徳島縣 高知縣
廣島警察管区
廣島市
廣島警察管区本部
福岡縣 佐賀縣 長崎縣熊本縣 大分縣 宮崎縣鹿兒島縣
福岡警察管区
福岡市
福岡警察管区本部
内務大臣 木村小左衞門
内閣総理大臣 片山哲
警察法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十二年十二月十七日
内閣総理大臣 片山哲
法律第百九十六号
警察法目次
第一章
総則
第二章
国家地方警察
第一節
国家公安委員会
第二節
国家公安委員会の事務部局
第三節
都道府県公安委員会
第四節
都道府県国家地方警察
第三章
自治体警察
第一節
総則
第二節
市町村公安委員会
第三節
市町村警察
第四節
特別区に関する特例
第四章
国家地方警察及び自治体警察並びに自治体警察相互間の関係
第五章
管轄区域外における権限行使
第六章
犯罪統計及び犯罪鑑識
第七章
国家非常事態の特別措置
第八章
雑則
附則
別表
警察法
国民のために人間の自由の理想を保障する日本国憲法の精神に従い、又、地方自治の真義を推進する観点から、国会は、秩序を維持し、法令の執行を強化し、個人と社会の責任の自覚を通じて人間の尊厳を最高度に確保し、個人の権利と自由を保護するために、国民に属する民主的権威の組織を確立する目的を以て、ここにこの警察法を制定する。
第一章 総則
第一条 警察は、国民の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の捜査、被疑者の逮捕及び公安の維持に当ることを以てその責務とする。
警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、いやしくも日本国憲法の保障する個人の自由及び権利の干渉にわたる等その権能を濫用することとなつてはならない。
第二条 この法律において行政管理とは、警察職員の人事及び警察の組織並びに予算に関する一切の事項に係るものをいう。
この法律において運営管理とは、左に掲げる事項に係るものをいう。
一 公共の秩序の維持
二 生命及び財産の保護
三 犯罪の予防及び鎮圧
四 犯罪の捜査及び被疑者の逮捕
五 交通の取締
六 逮捕状、勾留状の執行その他の裁判所、裁判官又は検察官の命ずる事務で法律をもつて定めるもの
この法律にいう犯罪とは経済法令に関する違反を含むものであり、且つ、これに限定せられるものではない。
第三条 この法律に従うすべての職員の行う職務の宣誓は、日本国憲法及び法律を擁護し支持する義務に関する事項をその内容に含むべきものとする。
第二章 国家地方警察
第一節 国家公安委員会
第四条 内閣総理大臣の所轄の下に、国家公安委員会及び警察官の定員三万人を超えない国家地方警察隊を置く。その経費は、国庫の負担とする。
国家公安委員会は、左に掲げる事務を掌る。
一 警察通信施設(自治体警察の本部から管下の下部組織に通ずるものを除く。)の維持管理に関する事項 但し、国家地方警察及び他の自治体警察との連絡のために、自治体警察はこれを利用することができる。
二 犯罪鑑識施設の維持管理に関する事項
三 警察教養施設の維持管理に関する事項
四 その他国家地方警察の行政管理に関する事項
五 犯罪鑑識及び犯罪統計に関する事項
六 国家非常事態に対処するための警察の統合計画の立案及び実施に関する事項
七 皇宮警察の管理に関する事項並びに当該機関の要求のあつた場合において、東京都内における国会、内閣、各省(総理庁を含む。)、会計検査院及び最高裁判所の使用する建物及び施設の警備に関する事項
第五条 国家公安委員会は、五人の委員を以て、これを組織する。
委員は、警察職員又は官公庁における職業的公務員(昭和二十年九月二日以後において公選され又は公選若しくは国会、その両院若しくはその一院又は地方議会の選挙若しくは議決によつて選任された者を除く。)の前歴のない者の中から、両議院の同意を経て、内閣総理大臣が、これを任命する。
委員の任命について、衆議院が同意して参議院が同意しない場合においては、日本国憲法第六十七条第二項の場合の例により、衆議院の同意を以て両議院の同意とする。
左の各号の一に該当する者は、委員となることができない。
一 禁治産者若しくは準禁治産者又は破産者で復権を得ない者
二 禁錮以上の刑に処せられた者
三 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者
委員の任命については、その中の三人以上が、同一政党に属する者となることとなつてはならない。
第六条 国家公務員法第三章第七節の規定は、委員に、これを準用する。
委員は、政党その他の政治的団体の役員となることができない。
第七条 委員の任期は、五年とする。但し、補欠の委員は、前任者の残任期間在任する。
委員は、これを再任することができる。
第八条 委員は、第五条第四項各号の一に該当するに至つた場合においては、当然退職するものとする。
内閣総理大臣は、委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認める場合又は委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認める場合においては、両議院の同意を経て、これを罷免することができる。
内閣総理大臣は、両議院の同意を経て、左に掲げる委員を罷免する。
一 委員中何人も所属していなかつた同一の政党に新に三人以上の委員が所属するに至つた場合、これらの者の中二人を超える員数の委員
二 委員中一人が既に所属している政党に新に二人以上の委員が所属するに至つた場合、これらの者の中一人を超える員数の委員
第五条第三項の規定は、前二項の場合にこれを準用する。
内閣総理大臣は、委員中二人が既に所属している政党に新に所属した委員をただちに罷免する。
第二項、第三項及び前項の場合を除く外、委員はその意に反して罷免されることがない。
第九条 委員は、検事総長の俸給に準ずる報酬を受ける。
第十条 国家公安委員会に委員長を置き、委員の互選により、これを選任する。委員長の任期は、一年とする。但し、これを再任することができる。
委員長は、国家公安委員会の会務を総理する。
第二節 国家公安委員会の事務部局
第十一条 国家公安委員会の権限に属する事項に関する事務を処理せしめるため、国家公安委員会に、その事務部局として国家地方警察本部を置く。
第十二条 国家地方警察本部に、長官を置く。
長官は、国家公務員法の規定に基き、国家公安委員会が、これを任命し、一定の事由により罷免する。
第十三条 長官は、国家公安委員会の指揮監督を受け、国家地方警察本部の部務を掌理する。
第十四条 国家地方警察本部に総務部、警務部及び刑事部を含む五以内の部を置く。
国家地方警察本部に警察大学校を附置する。
警察大学校は、国家地方警察の新任及び現任の警察職員及び要求のあつたときは自治体警察の新任及び現任の警察職員を訓練する。
第十五条 国家地方警察本部に、国家公安委員会の定めるところにより、次長一人、部長五人以内、警察官その他所要の所属職員及び機関を置く。
前項の職員は、国家公務員法の規定に基き、国家地方警察本部長官がこれを任命し、一定の事由により罷免する。
第十六条 全国を六警察管区に分ち、警察管区ごとに、国家地方警察の地方事務部局として警察管区本部を置き、国家地方警察本部の事務を分掌させる。
警察管区の区域及び名称並びに警察管区本部の位置及び名称は、別表による。
第十七条 警察管区本部に、国家公安委員会の定めるところにより、本部長、警察官その他所要の職員及び機関を置く。その組織は、国家地方警察本部の例による。
前項の職員は、国家公務員法の規定に基き、国家地方警察本部長官がこれを任命し、一定の事由により罷免する。
第十八条 警察管区本部長は、国家地方警察本部長官の指揮監督を受け警察管区本部の事務を処理し、その管轄区域内の都道府県国家地方警察の行政的調整及びその均斉を図る。
警察管区本部長及び都道府県公安委員会は、緊密な連絡を保ち、警察に関する事項について適当に協力する。
第十九条 各警察管区本部に管区警察学校を附置する。
管区警察学校は、国家地方警察の新任及び現任の警察職員及び要求のあつたときは自治体警察の新任及び現任の警察職員を訓練する。
管区警察学校及び警察大学校は、国家地方警察がこれを維持し運営する。
第三節 都道府県公安委員会
第二十条 都道府県知事の所轄の下に、都道府県公安委員会を置く。
都道府県公安委員会は、都道府県国家地方警察の運営管理を行う。
第二十一条 都道府県公安委員会は、三人の委員を以て、これを組織する。
委員は、その都道府県の議会の議員の被選挙権を有する者で警察職員又は官公庁における職業的公務員(昭和二十年九月二日以後において公選され、又は公選若しくは国会、その両院若しくはその一院又は地方議会の選挙若しくは議決によつて選任せられた者を除く。)の前歴のない者の中から、都道府県知事が、都道府県の議会の同意を経て、これを任命する。
左の各号の一に該当する者は、委員となることができない。
一 破産者で復権を得ない者
二 禁錮以上の刑に処せられた者
三 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者
委員の任命については、その中二人以上が、同一政党に属する者となることとなつてはならない。
第二十二条 委員は、都道府県、特別区若しくは市町村の議会の議員又は有給吏員を兼ね、又は政党その他の政治的団体の役員となることができない。
前項の外、委員の服務に関する事項は、国家公務員法第三章第七節の規定に準じ、都道府県規則で、これを定める。但し、同法第百三条及び第百四条に規定する制限は、都道府県知事において委員の勤務に支障があると認める場合の外、これを行わないものとし、又委員の勤務については、都道府県公安委員会でこれを定めるものとしなければならない。
第二十三条 委員の任期は、三年とする。但し、補欠の委員は、前任者の残任期間在任する。
委員は、これを再生することができる。
第二十四条 委員は、左の各号の一に該当する場合においては、当然退職するものとする。
一 第二十一条第三項各号の一に該当するに至つた場合
二 当該都道府県の議会の議員の被選挙権を有する者でなくなつた場合
地方自治法第八十六条、第八十七条及び第八十八条第二項の規定は、委員解職の請求にこれを準用する。但し、同法第八十六条第一項中「その総数の三分の一以上の者」とあるのは「当該都道府県国家地方警察の管轄区域内において選挙権を有する者の三分の一以上の者」と読み替えるものとする。
委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認める場合又は委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認める場合においては、都道府県知事は、都道府県の議会の同意を経て、これを罷免することができる。
委員の中、二人以上が同一政党に属することとなつた場合においては、これらの者の中、一人以外の者は、都道府県知事が、都道府県の議会の同意を経て、これを罷免する。但し、都道府県知事は、委員中一人が既に所属している政党に新に所属するに至つた委員をただちに罷免する。
前二項の場合を除く外、委員はその意に反して罷免されることがない。
第二十五条 都道府県は、委員に報酬を支給し、委員が職務を行うために要する費用の弁償をしなければならない。
前項の報酬及び費用については、地方自治法第二百三条第三項及び第二百六条の規定による。
第二十六条 都道府県公安委員会に委員長を置き、委員の互選により、これを選任する。委員長の任期は、一年とする。但し、これを再任することができる。
委員長は、都道府県公安委員会の会務を総理する。
第四節 都道府県国家地方警察
第二十七条 都道府県国家地方警察は、その都道府県の区域(自治体警察の管轄に属する区域を除く。)内において第二条第二項に定める事務を行う。
第二十八条 各都府県に、一の国家地方警察都府県本部をその都府県庁所在地に置く。北海道には、下部行政区画により十四以内の国家地方警察の本部を置く。その本部の一は、北海道庁所在地に置く。
都道府県国家地方警察の管轄に属する区域を警察区に分け、警察区毎に警察署を置く。
警察区の区域並びに警察署の位置、名称及び管轄区域は、国家地方警察がこれを定める。
警察署の下部機構として、派出所又は駐在所を置く。
第二十九条 都道府県国家地方警察と市町村警察との連絡及び国家地方警察の所掌に属する警察通信施設の維持管理に当らしめるため、必要の地に都道府県国家地方警察の支所を置く。
第三十条 都道府県国家地方警察本部の長(以下都道府県警察署長という。)は、国家公務員法の規定に基き、警察管区本部長が国家地方警察本部長官の同意を経てこれを任命し、一定の事由により罷免する。
第三十一条 都道府県警察長は、都道府県公安委員会の運営管理に服し、警察管区本部長の行政管理に服するものとする。
第三十二条 都道府県警察長は、その都道府県の区域内にある国家地方警察の所掌に属する警察通信施設を管理する。
第三十三条 都道府県国家地方警察本部に所要の部課(犯罪鑑識及び犯罪統計に関する機構を含む。)を置く。
第三十四条 都道府県国家地方警察に都道府県警察学校を附置する。
都道府県警察学校は、国家地方警察の新任及び現任の警察職員及び要求のあつたときは自治体警察の新任及び現任の警察職員を訓練する。
第三十五条 都道府県国家地方警察に、警察長の外、警視、警部、警部補、巡査部長及び巡査たる警察官その他所要の職員を置く。
警察官の階級は、警察長、警視、警部、警部補、巡査部長及び巡査とする。
警察官は、上官の指揮監督を受け、警察の事務を掌る。
第三十六条 前条第一項に規定する職員は、国家公務員法の規定に基き、都道府県警察長がこれを任命し、一定の事由により罷免する。但し、基礎的な警察訓練の過程を経ない者は、これを国家地方警察の勤務につけることができない。
警察官の宣誓、教育訓練、礼式及び服制について必要な事項は、国家公安委員会がこれを定める。
第三十七条 警察署長は、警視又は警部を以てこれにあてる。
警察署長は、都道府県警察長の指揮監督を受け、その管轄区域内における警察事務を執行し、警察署の職員を指揮監督する。
第三十八条 支所長は、警部又は警部補を以てこれにあてる。
支所長は、都道府県警察長の指揮監督を受け、第二十九条に規定する事務を執行し、支所の職員を指揮監督する。
第三十九条 都道府県国家地方警察の機関及び職員に関する細目的事項は、国家公安委員会がこれを定める。
第三章 自治体警察
第一節 総則
第四十条 市及び人口五千以上の市街的町村(以下市町村という。)は、その区域内において警察を維持し、法律及び秩序の執行の責に任ずる。
前項に規定する市街的町村は、官報で最近に公示せられた人口に従い、政令を以てこれを告示する。
第四十一条 市町村警察は、第二条第二項に掲げた事項に関するすべての職務を行う。
第四十二条 自治体警察に要する経費は、当該市町村の負担とする。
第二節 市町村公安委員会
第四十三条 市町村長の所轄の下に市町村公安委員会を置き、その市町村の区域内における警察を管理せしめる。
第四十四条 市町村公安委員会の組織及び運営並びにその委員の資格、任命、兼職禁止、服務、任期、退職、罷免、報酬及び費用弁償については、第二十一条乃至第二十三条、第二十四条第一項、第三項乃至第五項、第二十五条及び第二十六条の規定を準用する。但し、地方自治法の規定による解職請求に基いて解職される場合においては、第二十四条第五項の規定にかかわらず、その職を失うものとする。なお第二十一条乃至第二十六条の規定中都道府県とあるは市町村と、都道府県知事とあるは、市町村長と、都道府県規則とあるは、市町村規則と読み替えるものとする。
第三節 市町村警察
第四十五条 市町村は、一又は二以上の警察署を置く。
二以上の警察署を置く場合には、市町村警察の本部を置く。
警察署の位置、名称及び管轄区域並びに市町村警察本部の名称及び組織は、市町村公安委員会の意見を徴して市町村条例でこれを定める。
第四十六条 市町村警察に、警察長及びこの法律の規定に従い、有効に警察事務を行うに必要且つ適当な階級の警察吏員を置く。
前項の市町村警察吏員には、第三十五条第二項及び第三項の規定を準用する。
市町村警察吏員の定員は、地方的要求に応じてその市町村が条例でこれを決定するが、九万五千人を超えてはならない。但し、地方自治財政が確立するまでは、市町村の警察吏員の定員は、政令の定める基準によるものとする。この基準は、市町村の人口に応じ並びに有効な警察事務の執行及び警察の管理、監督に必要な警察吏員の階級に応じて定める。この基準は、又市町村の人口に応じ、有効に警察事務を行うに必要な専門家、技術者、書記及び雇傭人の数及び種類を明示する。九万五千人の全員の配分の調整は、地方自治財政が確立した後においては、国会の定める法律によつてのみ行う。
第四十七条 市町村警察長は、条例に従い、市町村公安委員会がこれを任命し、一定の事由により罷免する。
第四十八条 市町村警察長は、市町村公安委員会の定める規準によりその市町村警察職員を任命し、一定の事由により罷免する。市町村警察長は、これらの職員を指揮監督する。
第四十九条 警察署長は、警部補以上の警察吏員を以てこれに充てる。但し、市町村警察長がこれを兼ねることができる。
警察署長は、上司の指揮監督を受けて、管轄区域内における警察事務を執行し、部下の職員を指揮監督する。
第五十条 警察職員の任免、給与、服務その他の事項は、国家公務員法の精神に則り、市町村条例でこれを定める。但し、臨時的職員の外は基礎的な警察訓練の過程を経ない者は、これを市町村警察の勤務につけることができない。
市町村警察職員の宣誓、教育訓練、礼式及び服制は、第三十六条第二項の規定により国家公安委員会の定めるところに則り、市町村規則でこれを定める。但し、制服は、国家地方警察の制服と明確に区別されるものとする。
第四節 特別区に関する特例
第五十一条 特別区の存する区域においては、特別区が連合してその区域内における警察の責に任ずる。
第五十二条 前条の特別区には、都知事の所轄の下に市町村公安委員会に相当する特別区公安委員会を置き、その委員は、都知事が、都の議会の同意を経てこれを任命する。
第五十三条 前二条に規定するものの外、特別区の存する区域における自治体警察については、特別区の存する区域を以て一の市とみなし、市町村警察に関する規定を準用する。
第四章 国家地方警察及び自治体警察並びに自治体警察相互間の関係
第五十四条 市町村警察は、国家地方警察の運営管理又は行政管理に服することはない。これらの警察は、相互に協力する義務を負う。
第五十五条 国家地方警察の警察官は、市町村公安委員会から援助の要求があつた場合は当該市町村の区域において、援助の要求をした市町村公安委員会の運営管理の下に、その職権を行うことができる。
第五十六条 都道府県警察長は、都道府県内の市町村警察長と、緊密な連絡を保たなければならない。
第五章 管轄区域外における権限行使
第五十七条 国家地方警察及び市町村警察は、その都道府県国家地方警察又は市町村警察の管轄に属する区域の境界外五百米以内の地域における犯罪については、その地域内においても職権を行う。
第五十八条 国家地方警察及び市町村警察は、その管轄区域(その境界外五百米以内の地域を含む。以下本条中これに同じ。)内に行われた犯罪行為又はその管轄区域内に始まり、若しくはその管轄区域内に及んだ犯罪行為の個々の場合について、その鎮圧、捜査又は被疑者の逮捕のため、その管轄区域外にも職権を及ぼすことができる。
第五十九条 国家地方警察が市町村の区域内に施設を維持する場合及び市町村がその区域外において施設を維持する場合においては、国家地方警察及び当該市町村警察は、相互にその施設について警察の職権を及ぼすものとする。
第六章 犯罪統計及び犯罪鑑識
第六十条 市町村警察長は、国家公安委員会の定める形式及び方法により、犯罪統計並びに証拠、写真、指紋、被疑者及び被逮捕者の人相書及び手口からなる犯罪鑑識に関する事項を、都道府県警察長を通じて国家地方警察本部長官に報告しなければならない。
第六十一条 国家地方警察本部及び都道府県国家地方警察本部に、犯罪鑑識に関する施設を置く。
第七章 国家非常事態の特別措置
第六十二条 国家非常事態に際して、治安の維持のため特に必要があると認めるときは、内閣総理大臣は、国家公安委員会の勧告に基き、全国又は一部の区域について国家非常事態の布告を発することができる。
前項の布告には、その区域、事態の概要及び布告の効力を発する日時を記載しなければならない。
第六十三条 前条に規定する国家非常事態の布告が発せられたときは、この法律の定めるところに基き、内閣総理大臣によつて一時的に全警察の統制が行われる。この場合において国家地方警察本部長官又は警察管区本部長は、布告に記載した区域内の都道府県警察長又は市町村警察長に対して必要な命令をなし、又は指揮をなすものとする。
第六十四条 内閣総理大臣は、国家非常事態の布告に記載した区域外の国家地方警察又は市町村警察に対して、警察官又は警察吏員の全部又は一部を、応援のため必要な区域に派遣することを命ずることができる。
前項の規定により、派遣された警察官及び警察吏員は、派遣の期間中派遣された区域においても職権を行うことができる。
第六十五条 第六十二条の規定により内閣総理大臣が発した国家非常事態の布告は、これを発した日から二十日以内に国会の承認を得なければならない。もしも衆議院が解散されているときは、日本国憲法第五十四条に規定する緊急集会による参議院の承認を求めなければならない。
前項に規定する期間内に、同項の規定により国家非常事態の布告が承認を得られないか、又は不承認の議決があつたときは、国家非常事態の布告は、将来にわたつてその効力を失う。
第六十六条 内閣総理大臣は、国家非常事態の布告を発した場合において、その必要がなくなつたと認めたときは、速かにその廃止の布告を発しなければならない。国会が命ずるときは、内閣総理大臣は、廃止の布告をしなければならない。
前項の廃止の布告その他本法に規定する内閣総理大臣の職権の行使については、国家公安委員会は、内閣総理大臣に対し、常に必要な助言をしなければならない。
第八章 雑則
第六十七条 都道府県公安委員会、市町村公安委員会及び警察官又は警察吏員と検察官との関係は、別に法律の定めるところによる。
国家公安委員会は、検事総長と常に緊密な連絡を保つものとする。
第六十八条 都道府県国家地方警察の管轄に属すべき区域と市町村警察の管轄に属すべき区域に変更を生じた場合、又は一若しくは二以上の市町村警察の管轄に属すべき区域が二以上の市町村警察の管轄に属すべき区域に分れ、又は一の市町村警察の区域となつた場合においては、その変更を要することとなつた日から五十日以内に、その管轄の変更による措置が完了されなければならない。
前項の措置が完了されるまでの間は、その区域においては従前の警察に関する管轄によるものとする。同項後段の場合においては、二以上の区域の市町村長が協議して又は一の市町村長が従前の市町村長の職務を行う。
附 則
第一条 この法律の施行の期日は、その成立の日から九十日を超えない期間内において、各規定について、政令で、これを定める。
第二条 この法律施行後最初に任命する国家公安委員の任期は、五人の内一人は一年、一人は二年、一人は三年、一人は四年、一人は五年とする。
前項に規定する各委員の任期は、当該委員会おいて、くじでこれを定める。
第三条 この法律施行後最初に任命する都道府県公安委員、市町村公安委員の任期は、三人の中一人は一年、他の一人は二年、他の一人は三年とする。
前項に規定する各委員の任期は、各当該委員会において、くじでこれを定める。
第四条 国家公務員法は、この法律の適用に必要な範囲内においては、既に施行されたものとみなす。
前項の場合においては、国家公務員法による人事委員会の設置に至るまで、その職権は、同法附則第二条の例により、臨時人事委員会がこれを行う。
第五条 この法律施行後一年間は、任用候補者名簿がない場合その他特に必要がある場合においては、国家地方警察又は自治体警察の職員は、現在の法令により、夫々当該職員に相応する官吏又は吏員に必要な資格を有する者の中から、臨時に、これを任命することができる。
第六条 国家地方警察の警察官吏の任免、給与、服務その他必要な事項に関しては、警察官吏に関する人事委員会規則が定められ、若しくは第三十六条第二項の規定による国家公安委員会の定がなされるまでは、当分の間、なお従前の庁府県警察官吏の例による。
第七条 この法律施行の際現に警視庁又は道府県警察部に勤務する官吏が、引続き市町村警察の職員となつた場合には、これを従前の身分のまま勤続するものとみなし、当分の間、これに恩給法の規定を準用する。この者が市町村警察の職員より更に国家地方警察の職員になつた場合には、その市町村警察の職員としての在職期間は、これを公務員としての在職年に通算する。
この法律施行の際現に警視庁又は道府県警察部に勤務する都道府県の吏員が、引続き国家地方警察の職員となつた場合には、恩給法の適用については、その当該都道府県の吏員としての在職期間は、これを公務員としての在職年に通算する。
第八条 市町村警察に要する費用は、地方自治財政が、確立される時まで、政令の定めるところにより国庫及び都道府県がこれを負担する。
国家地方警察に要する費用は、前項のときまで国庫及び都道府県の負担とする。
国庫と当該都道府県の警察費の負担区分については、第一項のときまで従前の例による。
第九条 この法律施行の際又はこの法律施行後新たに市町村が警察の責に任ずることとなつた場合において、現に警察の用に供する国有財産及び都道府県財産又は国及び都道府県の所有に属する物品で国家地方警察に不必要なものは、市町村警察に必要な場合は、無償でこれを当該市町村に譲与するものとする。但し、これに伴う負債のあるときはその処分については相互の協議により、これを定める。
第十条 この法律施行の際警視庁又は道府県警察部の管理に属する犯罪鑑識施設、警察通信施設及び教養施設は、国家地方警察がこれを維持管理する。但し、現在東京都港区愛宕町及び宮城内にある警視庁の訓練学校で将来東京都の特別区の警察え移管さるべきものを除く。
第十一条 町村の全部事務組合及び役場事務組合でこの法律施行の際現に存するものは、この法律の規定の適用については、これを一の町村とみなす。
第十二条 行政執行法第一条及び第二条の当該行政官庁は、第三十七条又は第四十九条の警察署長とし、同法第三条乃至第五条の当該行政官庁及び同法第六条の行政官庁は、第三十七条及び第四十九条の警察署長を含むものとする。
第十三条 第四十条第一項の規定により市町村がその区域内における警察の責に任ずるのは、各市町村について、この法律中の自治体警察に関する規定の適用により市町村公安委員会が成立し、必要な警察吏員が任命せられた日よりとする。但し、その期日は、この法律の成立後九十日を超えてはならない。
第十四条 前条の規定によりその区域内における警察の責に任ずる市町村ができた場合においては、この法律中の国家地方警察に関する規定が施行されるまでの間、警視庁又は道府県警察部が国家地方警察としてその職務を行うものとする。
第十五条 地方自治法の一部を次のように改正する。
第十三条第二項中「選挙管理委員又は監査委員」を「選挙管理委員若しくは監査委員又は市町村公安委員会の委員」に改める。
第二十一条第二項中「警察官吏」を「警察官」に改め、「収税官吏」の下に「並びに普通地方公共団体における公安委員会の委員及び警察吏員」を加える。
第八十六条第一項及び第八十八条第二項中「選挙管理委員又は監査委員」を「選挙管理委員若しくは監査委員又は市町村公安委員会の委員」に改める。
第百二十一条中「及び監査委員」を「、監査委員及び市町村公安委員会の委員」に改める。
第百二十五条中「又は監査委員」を「若しくは監査委員又は当該市町村の公安委員会」に改める。
第百三十条第一項中「警察官吏」を「当該警察官又は警察吏員」に改める。
第百五十八条第一項中
警察部
一 警察に関する事項
を削る。
第百六十条第二項中「警察官吏」を「当該警察官若しくは警察吏員」に改める。
第百七十三条第一項中「、教育吏員及び警察吏員」を「及び教育吏員」に改め、同条第五項を削る。
第二百七十七条中「第百四十五条」を「第百二十一条、第百四十五条」に改める。
附則第一条但書を削る。
附則第四条中「(警視庁を除く。以下これに同じ。)」を削る。
附則第七条を次のように改める。
第七条 削除
第十六条 衆議院議員選挙法の一部を次のように改正する。
第九条中「及警察官吏」を「、警察官、都道府県及市町村ノ公安委員会ノ委員並ニ警察吏員」に改める。
第四十条中「警察官吏」を「当該警察官又ハ警察吏員」に改める。
第四十一条中「及警察官吏」を「並ニ当該警察官及警察吏員」に改める。
第百十二条第二項及び第百十三条第二項中「警察官吏」を「都道府県若ハ市町村ノ公安委員会ノ委員又ハ警察官若ハ警察吏員」に、「関係ノ都道府県」を「関係区域」に改める。
第百二十一条第二項中「警察官吏」を「当該警察官及警察吏員」に改める。
第百二十四条中「警察官吏」を「当該警察官又ハ警察吏員」に改める。
第十七条 参議院議員選挙法の一部を次のように改正する。
第七条中「及び警察官吏」を「、警察官、都道府県及び市町村公安委員会の委員並びに警察吏員」に改める。
第十八条 最高裁判所裁判官国民審査法の一部を次のように改正する。
第四十四条第二項中「警察官吏」を「都道府県若しくは市町村公安委員会の委員又は警察官若しくは警察吏員」に、「関係の都道府県」を「関係区域」に改める。
第十九条 他の法令中警察官に関する規定は、当該警察官及び警察吏員に関する規定とする。
(別表)
警察管区の区域
警察管区の名称
警察管区本部の位置
警察管区本部の名称
北海道
札幌警察管区
札幌市
札幌警察管本部
宮城県 福島県 岩手県青森県 山形県 秋田県
仙台警察管区
仙台市
仙台警察管区本部
東京都 神奈川県 新潟県埼玉県 群馬県 千葉県茨城県 栃木県 静岡県山梨県 長野県
東京警察管区
東京都
東京警察管区本部
大阪府 京都府 兵庫県奈良県 滋賀県 和歌山県愛知県 三重県 岐阜県福井県 石川県 富山県
大阪警察管区
大阪市
大阪警察管区本部
広島県 鳥取県 島根県岡山県 山口県 香川県愛媛県 徳島県 高知県
広島警察管区
広島市
広島警察管区本部
福岡県 佐賀県 長崎県熊本県 大分県 宮崎県鹿児島県
福岡警察管区
福岡市
福岡警察管区本部
内務大臣 木村小左衛門
内閣総理大臣 片山哲