地方公営企業法
法令番号: 法律第二百九十二号
公布年月日: 昭和27年8月1日
法令の形式: 法律
地方公営企業法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十七年八月一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第二百九十二号
地方公営企業法
目次
第一章
総則(第一條―第六條)
第二章
組織(第七條―第十六條)
第三章
財務(第十七條―第三十五條)
第四章
職員の身分取扱(第三十六條―第三十九條)
第五章
雑則(第四十條・第四十一條)
附則
第一章 総則
(この法律の目的)
第一條 この法律は、地方公共団体の経営する企業の組織、財務及びこれに従事する職員の身分取扱その他企業の経営の根本基準を定め、地方自治の発達に資することを目的とする。
(この法律の適用を受ける企業の範囲)
第二條 この法律は、地方公共団体の経営する企業のうち左の上欄に掲げる事業(これらに附帯する事業を含む。)で、常時雇用される職員の数がそれぞれその下欄に掲げる数以上のもの(以下「地方公営企業」という。)に適用する。
水道事業
五十人
軌道事業
百人
自動車運送事業
百人
地方鉄道事業
百人
電気事業
三十人
ガス事業
三十人
2 地方公共団体は、政令で定める基準に従い、條例で定めるところにより、地方公共団体の経営する地方公営企業以外の企業に、この法律の規定の全部又は一部を適用することができる。
(経営の基本原則)
第三條 地方公営企業は、常に企業の経済性を発揮するとともに、その本来の目的である公共の福祉を増進するように運営されなければならない。
(経営の基本計画)
第四條 地方公共団体は、前條に定める基本原則に基き、議会の議決を経て地方公営企業の基本計画を定めるものとする。
(地方公営企業に関する法令等の制定及び施行)
第五條 地方公営企業に関する法令並びに條例、規則及びその他の規程は、すべて第三條に規定する基本原則に合致するものでなければならない。
(地方自治法等の特例)
第六條 この法律は、地方公営企業の経営に関して、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)並びに地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)及び地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)に対する特例を定めるものとする。
第二章 組織
(管理者の設置)
第七條 地方公営企業を経営する地方公共団体に、当該地方公共団体の長の指揮監督の下に地方公営企業の業務を執行させるため、第二條第一項の事業ごとに管理者を置く。但し、條例で定めるところにより、管理者を置かず、又は二以上の事業を通じて管理者一人を置くことができる。
2 管理者は、当該地方公共団体の吏員で、地方公営企業の経営に関し識見を有する者のうちから、地方公共団体の長が命ずる。この場合においては、管理者が地方自治法第百六十一條に規定する吏員であるときは、同法第百六十六條第二項において準用する同法第百四十一條第二項の規定中地方公共団体の常勤の職員との兼職に関する部分は、適用しない。
(管理者の地位及び権限)
第八條 管理者は、左に掲げる事項を除く外、地方公営企業の業務を執行し、当該業務の執行に関し当該地方公共団体を代表する。但し、法令に特別の定がある場合は、この限りでない。
一 予算を調製すること。
二 地方公共団体の議会の議決を経べき事件につきその議案を提出すること。
三 決算及び証書類を監査委員の審査及び議会の認定に付すること。
四 地方自治法第二百十四條並びに第二百二十三條第二項及び第三項の規定により過料を科すること。
2 前條第一項の但書の規定により管理者を置かない地方公共団体においては、管理者の権限は、当該地方公共団体の長が行う。
(管理者の担任する事務)
第九條 管理者は、前條の規定に基いて、地方公営企業の業務の執行に関し、おおむね左に掲げる事務を担任する。
一 その権限に属する事務を分掌させるため必要な分課を設けること。
二 職員の任免、給与、勤務時間その他の勤務條件、懲戒、研修及びその他の身分取扱に関する事項を掌理すること。
三 地方公営企業の基本計画に基いて事業計画を定めること。
四 予算の見積に関する書類を作成し、地方公共団体の長に送付すること。
五 予算の実施計画及び資金計画その他財政計画の参考となるべき事項に関する書類を作成し、地方公共団体の長に送付すること。
六 決算を作成し、地方公共団体の長に提出すること。
七 当該企業の用に供する資産を取得し、管理し、及び処分すること。
八 契約を結ぶこと。
九 料金その他の使用料又は手数料を徴収すること。
十 予算内の支出をするため一時の借入をすること。
十一 出納その他の会計事務を行うこと。
十二 証書及び公文書類を保管すること。
十三 その権限の範囲内において労働協約を結ぶこと。
十四 前各号に掲げるものを除く外、法令又は当該地方公共団体の條例若しくは規則によりその権限に属する事項
(企業管理規程)
第十條 管理者は、法令又は当該地方公共団体の條例若しくは規則又はその機関の定める規則に違反しない限りにおいて、業務に関し管理規程(以下「企業管理規程」という。)を制定することができる。
(就職及び在職の禁止)
第十一條 左の各号の一に該当する者は、管理者であることができない。
一 当該地方公営企業の業務に関し、当該地方公共団体に対し、物品の売買若しくは工事の請負をする者又は就任の日前一年以内において、これらの行為をしたことのある者
二 当該地方公営企業の業務に関し、当該地方公共団体に対し、物品の売買若しくは工事の請負をする法人若しくはこれらの行為をする者が当該物品の売買若しくは工事の請負に関して組織する団体の役員(名称のいかんにかかわらず、役員と同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。)又は就任の日前一年以内において、これらの者であつたもの
(転職の制限)
第十二條 管理者の職にある者は、左の各号の一に該当する場合を除く外、就任の日から三年を経過した後でなければ、その意に反して転職されることがない。但し、就任の日から六月以内において、その職に必要な適格性を欠くと認められるに至つた場合においては、この限りでない。
一 三月以上の休養を要する場合
二 その責に帰すべき重大な過失があつた場合
(代理及び委任)
第十三條 管理者に事故があるときは、企業管理規程で定める上席の職員がその職務を行う。
2 管理者は、その権限に属する事務の一部を第十五條の職員に委任し、又はこれにその職務の一部を臨時に代理させることができる。
(事務処理のための組織)
第十四條 地方公営企業を経営する地方公共団体に、管理者の権限に属する事務を処理させるため、條例で必要な組織を設ける。
(補助職員)
第十五條 管理者の権限に属する事務の執行を補助する職員は、管理者が任免する。但し、当該地方公共団体の規則で定める主要な職員を任免する場合においては、あらかじめ、当該地方公共団体の長の同意を得なければならない。
2 前項の職員は、管理者が指揮監督する。
(管理者と地方公共団体の長との関係)
第十六條 地方公共団体の長が管理者に対して行う指揮監督は、左の各号に掲げる事項に関して行うのを例とする。
一 地方公営企業の経営の基本計画に関すること。
二 地方公営企業の業務の執行に関する事項のうち、当該地方公共団体の住民の福祉に重大な影響があると認められるものに関すること。
三 管理者以外の機関の権限に属する事務の執行と地方公営企業の業務の執行との間における必要な調整に関すること。
第三章 財務
(特別会計)
第十七條 地方公営企業の経理は、第二條第一項に掲げる事業ごとに特別会計を設けて行い、その経費は、当該事業の経営に伴う収入をもつて充てなければならない。但し、同條同項に掲げる事業を二以上経営する地方公共団体においては、議会の議決を経て二以上の事業を通じて一の特別会計を設けることができる。
(一般会計又は他の特別会計からの繰入金)
第十八條 地方公共団体は、地方公営企業について災害の復旧その他特別の事由に因り必要がある場合においては、予算の定めるところにより、一般会計又は他の特別会計からの繰入金による収入をもつて当該企業の経費に充てることができる。
2 前項の規定による繰入金に相当する金額は、翌年度以降において、予算の定めるところにより、当該繰入金を繰り入れた一般会計又は他の特別会計に繰りもどさなければならない。但し、一般会計又は他の特別会計において支出すべきものを当該企業の特別会計において支出したことに因る繰入金その他特別の事由に因る繰入金については、議会の議決を経て、当該繰入金を繰り入れた一般会計又は他の特別会計に繰りもどさないことができる。
(事業年度)
第十九條 地方公営企業の事業年度は、地方公共団体の会計年度による。
(計理の方法)
第二十條 地方公営企業においては、その企業の経営成績を明らかにするため、収益及び費用をその発生の事実に基いて計理しなければならず、且つ、その企業の財政状態を明らかにするため、資産、資本及び負債の増減及び異動をその都度記録し、及び整理しなければならない。
2 前項の資産、資本及び負債については、政令で定めるところにより、その内容を明らかにしなければならない。
(料金)
第二十一條 地方公共団体は、地方公営企業の給付について料金を徴収することができる。
2 前項の料金は、公正妥当なものでなければならず、且つ、これを決定するに当つては、地方公営企業の収支の均衡を保持させるように適切な考慮が払われなければならない。
(企業債)
第二十二條 地方公共団体が、地方公営企業の建設、改良等に要する資金に充てるため起す地方債(以下「企業債」という。)については、行政庁の許可を必要としない。
(償還期限を定めない企業債)
第二十三條 地方公共団体は、企業債のうち、地方公営企業の建設に要する資金に充てるものについては、償還期限を定めないことができる。この場合においては、当該地方公営企業の毎事業年度における利益剰余金の状況に応じ、特別利息をつけることができる。
(予算)
第二十四條 地方公共団体の長は、当該地方公営企業の管理者が作成した予算の見積に基いて毎事業年度地方公営企業の予算を調製し、年度開始前に議会の議決を経なければならない。
2 業務量の増加に因り地方公営企業の業務のため直接必要な経費に不足を生じたときは、管理者は、当該業務量の増加に因り増加する収入に相当する金額を当該企業の業務のため直接必要な経費に使用することができる。この場合においては、遅滞なく、管理者は、当該地方公共団体の長にその旨を報告するものとし、報告を受けた地方公共団体の長は、次の会議においてその旨を議会に報告しなければならない。
(財政計画に関する書類)
第二十五條 地方公共団体の長は、地方公営企業の予算を議会に提出する場合においては、当該地方公営企業の管理者が作成した当該予算の実施計画、当該年度の事業計画及び資金計画その他財政計画の参考となるべき事項に関する書類をあわせて提出しなければならない。
(予算の繰越)
第二十六條 予算に定めた地方公営企業の建設又は改良に要する経費のうち、年度内に支払義務が生じなかつたものがある場合においては、管理者は、その額を翌年度に繰り越して使用することができる。この場合においては、管理者は、地方公共団体の長に繰越額の使用に関する計画について報告するものとし、報告を受けた地方公共団体の長は、次の会議においてその旨を議会に報告しなければならない。
(出納及び現金の保管)
第二十七條 地方公営企業の業務に係る出納は、管理者が行う。
2 管理者は、地方公営企業の業務に係る現金を政令で定める金融機関で当該地方公共団体の長が指定したものに預け入れて保管しなければならない。但し、管理者は、当該地方公共団体の長が定めた額を限度として現金を自ら保管することができる。
(企業出納員及び現金取扱員)
第二十八條 地方公営企業を経営する地方公共団体に、当該地方公営企業の業務に係る出納その他の会計事務をつかさどらせるため、企業出納員及び現金取扱員を置く。
2 企業出納員及び現金取扱員は、第十五條の職員のうちから、管理者が命ずる。
3 企業出納員は、管理者の命を受けて、出納その他の会計事務をつかさどる。
4 現金取扱員は、上司の命を受けて、企業管理規程で定めた額を限度として当該地方公営企業の業務に係る現金の出納に関する事務をつかさどる。
5 管理者は、その事務の一部を企業出納員に委任することができる。
(一時借入金)
第二十九條 管理者は、予算内の支出をするため、一時の借入をすることができる。
2 前項の規定による借入金は、当該事業年度内に償還しなければならない。但し、資金不足のため償還することができない場合においては、償還することができない金額を限度として、これを借り換えることができる。
3 前項但書の規定により借り換えた借入金は、一年以内に償還しなければならない。但し、借入金をもつてこれを償還するようなことをしてはならない。
(決算)
第三十條 管理者は、毎事業年度終了後二月以内に当該地方公営企業の決算を作成し、証書類、当該年度の事業報告書及び政令で定めるその他の書類をあわせて当該地方公共団体の長に提出しなければならない。
2 前項の規定による決算及び同項の規定によりあわせて提出すべき書類の提出を受けたときは、地方公共団体の長は、これらを監査委員の審査に付し、その意見をつけて、遅くとも当該事業年度終了後三月を経過した後において最初に招集される議会の認定に付さなければならない。
3 第一項の決算について作成すべき書類は、当該年度の予算の区分に従つて作成した決算報告書並びに損益計算書、剰余金計算書又は欠損金計算書、剰余金処分計算書又は欠損金処理計算書及び貸借対照表とし、その様式は、総理府令で定める。
4 地方公営企業について、地方自治法第二百四十四條第二項の規定による議会の指定があつたときは、第二項の規定に基く地方公共団体の長の決算及び第一項の規定によりあわせて提出すべき書類の議会への提出をもつて地方自治法第二百四十四條第二項の規定による普通地方公共団体の長の貸借対照表その他必要な書類の提出とみなす。
(計理状況の報告)
第三十一條 管理者は、毎月末日をもつて試算表その他当該企業の計理状況を明らかにするために必要な書類を作成し、翌月十日までに当該地方公共団体の長に提出しなければならない。
(剰余金の処分)
第三十二條 地方公営企業の決算上利益剰余金を生じた場合において、前事業年度から繰り越した欠損金があるときは、これをその補てんに充て、なお、残額があるときは、その残額の二十分の一を下らない金額を利益準備金として積み立てなければならない。
2 各事業年度において生じた資本剰余金は、資本準備金、再評価積立金その他の科目に積み立てなければならない。
3 第一項に規定するものの外、利益剰余金の処分については、別に予算に定があるものを除き、議会の議決を経て定めなければならない。
4 第一項の利益準備金は、企業債の償還その他條例で定める支出に充てる場合を除く外、処分することができない。
5 第二項の資本準備金及び再評価積立金は、政令で定める場合を除く外、処分することができない。
(資産の取得、管理及び処分)
第三十三條 地方公営企業の用に供する資産の取得、管理及び処分は、管理者が行う。但し、條例で定める重要な資産の取得及び処分は、当該地方公共団体の長の承認を受けなければならない。
(契約)
第三十四條 地方公共団体が地方公営企業の業務に関して売買、貸借、請負その他の契約を結ぶ場合においては、公告して一般競争入札の方法に準じて申込をさせ、最低若しくは最高の価額によつて申込をした者又は申込をした者であつて価額その他の條件について公正な協議がととのつた者とこれをしなければならない。但し、法令又は條例で定める場合においては、この限りでない。
(政令への委任)
第三十五條 この章に定めるものを除く外、地方公営企業の財務に関し必要な事項は、政令で定める。
第四章 職員の身分取扱
(企業職員の労働関係の特例)
第三十六條 第十五條の職員のうち、管理又は監督の地位にある者及び機密の事務を取り扱う者以外の者(以下「企業職員」という。)の身分取扱については、この法律に特別の定のあるものを除く外、地方公営企業労働関係法(昭和二十七年法律第二百八十九号)の定めるところによる。
(職階制)
第三十七條 企業職員については、職階制を実施することができる。
2 前項の職階制においては、企業職員の職を職務の種類及び複雑と責任の度に応じて分類整理しなければならない。
(給与)
第三十八條 企業職員の給与は、その職務と責任に応ずるものでなければならない。
2 企業職員の給与は、生計費並びに国及び地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定めなければならない。
3 企業職員の給与の種類及び基準は、條例で定める。
(地方公務員法の適用除外)
第三十九條 企業職員については、地方公務員法第五條、第八條(第一項第五号、第三項及び第四項の規定を除く。)、第二十三條から第二十六條まで、第三十六條、第三十七條、第三十九條第三項、第四十條第二項、第四十五條第二項から第四項まで、第四十六條から第五十六條まで及び第五十八條の規定は、適用しない。
第五章 雑則
(業務の状況の公表)
第四十條 管理者は、條例で定めるところにより、毎事業年度少くとも二回以上当該地方公営企業の業務の状況を説明する書類を当該地方公共団体の長に提出しなければならない。この場合においては、地方公共団体の長は、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(国と地方公営企業を経営する地方公共団体等との関係)
第四十一條 地方公営企業の経営に関し、地方公共団体相互の間で協議がととのわない場合において、関係地方公共団体の申出があるときは、政令で定めるところにより、内閣総理大臣又は都道府県知事は、必要なあつ旋若しくは調停をし、又は必要な勧告をすることができる。
附 則
(施行期日)
1 この法律の施行期日は、この法律公布の日から起算して六月をこえない範囲内で政令で定める。
(起債の特例)
2 企業債については、第二十二條の規定にかかわらず、当分の間、地方自治法第二百五十條の規定の適用があるものとする。
(資産の再評価)
3 地方公営企業の資産は、資産の適正な減価償却の基礎を確立するため、政令で定めるところにより、再評価しなければならない。
(政令への委任)
4 この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
(地方自治法の一部改正)
5 地方自治法の一部を次のように改正する。
第二條第三項第三号中「電車事業、自動車事業、」を「軌道事業、自動車運送事業、」に、「運輸事業」を「運送事業」に改め、同項第二十号中「使用料、」を「使用料(普通地方公共団体の経営する企業の徴収する料金を含む。以下同じ。)、」に改める。
第二百六十三條を次のように改める。
第二百六十三條 普通地方公共団体の経営する企業の組織及びこれに従事する職員の身分取扱並びに財務その他企業の経営に関する特例は、別に法律でこれを定める。
内閣総理大臣 吉田茂
大蔵大臣 池田勇人
厚生大臣 吉武恵市
運輸大臣 村上義一
労働大臣 吉武恵市
建設大臣 野田卯一
地方公営企業法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十七年八月一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第二百九十二号
地方公営企業法
目次
第一章
総則(第一条―第六条)
第二章
組織(第七条―第十六条)
第三章
財務(第十七条―第三十五条)
第四章
職員の身分取扱(第三十六条―第三十九条)
第五章
雑則(第四十条・第四十一条)
附則
第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、地方公共団体の経営する企業の組織、財務及びこれに従事する職員の身分取扱その他企業の経営の根本基準を定め、地方自治の発達に資することを目的とする。
(この法律の適用を受ける企業の範囲)
第二条 この法律は、地方公共団体の経営する企業のうち左の上欄に掲げる事業(これらに附帯する事業を含む。)で、常時雇用される職員の数がそれぞれその下欄に掲げる数以上のもの(以下「地方公営企業」という。)に適用する。
水道事業
五十人
軌道事業
百人
自動車運送事業
百人
地方鉄道事業
百人
電気事業
三十人
ガス事業
三十人
2 地方公共団体は、政令で定める基準に従い、条例で定めるところにより、地方公共団体の経営する地方公営企業以外の企業に、この法律の規定の全部又は一部を適用することができる。
(経営の基本原則)
第三条 地方公営企業は、常に企業の経済性を発揮するとともに、その本来の目的である公共の福祉を増進するように運営されなければならない。
(経営の基本計画)
第四条 地方公共団体は、前条に定める基本原則に基き、議会の議決を経て地方公営企業の基本計画を定めるものとする。
(地方公営企業に関する法令等の制定及び施行)
第五条 地方公営企業に関する法令並びに条例、規則及びその他の規程は、すべて第三条に規定する基本原則に合致するものでなければならない。
(地方自治法等の特例)
第六条 この法律は、地方公営企業の経営に関して、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)並びに地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)及び地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)に対する特例を定めるものとする。
第二章 組織
(管理者の設置)
第七条 地方公営企業を経営する地方公共団体に、当該地方公共団体の長の指揮監督の下に地方公営企業の業務を執行させるため、第二条第一項の事業ごとに管理者を置く。但し、条例で定めるところにより、管理者を置かず、又は二以上の事業を通じて管理者一人を置くことができる。
2 管理者は、当該地方公共団体の吏員で、地方公営企業の経営に関し識見を有する者のうちから、地方公共団体の長が命ずる。この場合においては、管理者が地方自治法第百六十一条に規定する吏員であるときは、同法第百六十六条第二項において準用する同法第百四十一条第二項の規定中地方公共団体の常勤の職員との兼職に関する部分は、適用しない。
(管理者の地位及び権限)
第八条 管理者は、左に掲げる事項を除く外、地方公営企業の業務を執行し、当該業務の執行に関し当該地方公共団体を代表する。但し、法令に特別の定がある場合は、この限りでない。
一 予算を調製すること。
二 地方公共団体の議会の議決を経べき事件につきその議案を提出すること。
三 決算及び証書類を監査委員の審査及び議会の認定に付すること。
四 地方自治法第二百十四条並びに第二百二十三条第二項及び第三項の規定により過料を科すること。
2 前条第一項の但書の規定により管理者を置かない地方公共団体においては、管理者の権限は、当該地方公共団体の長が行う。
(管理者の担任する事務)
第九条 管理者は、前条の規定に基いて、地方公営企業の業務の執行に関し、おおむね左に掲げる事務を担任する。
一 その権限に属する事務を分掌させるため必要な分課を設けること。
二 職員の任免、給与、勤務時間その他の勤務条件、懲戒、研修及びその他の身分取扱に関する事項を掌理すること。
三 地方公営企業の基本計画に基いて事業計画を定めること。
四 予算の見積に関する書類を作成し、地方公共団体の長に送付すること。
五 予算の実施計画及び資金計画その他財政計画の参考となるべき事項に関する書類を作成し、地方公共団体の長に送付すること。
六 決算を作成し、地方公共団体の長に提出すること。
七 当該企業の用に供する資産を取得し、管理し、及び処分すること。
八 契約を結ぶこと。
九 料金その他の使用料又は手数料を徴収すること。
十 予算内の支出をするため一時の借入をすること。
十一 出納その他の会計事務を行うこと。
十二 証書及び公文書類を保管すること。
十三 その権限の範囲内において労働協約を結ぶこと。
十四 前各号に掲げるものを除く外、法令又は当該地方公共団体の条例若しくは規則によりその権限に属する事項
(企業管理規程)
第十条 管理者は、法令又は当該地方公共団体の条例若しくは規則又はその機関の定める規則に違反しない限りにおいて、業務に関し管理規程(以下「企業管理規程」という。)を制定することができる。
(就職及び在職の禁止)
第十一条 左の各号の一に該当する者は、管理者であることができない。
一 当該地方公営企業の業務に関し、当該地方公共団体に対し、物品の売買若しくは工事の請負をする者又は就任の日前一年以内において、これらの行為をしたことのある者
二 当該地方公営企業の業務に関し、当該地方公共団体に対し、物品の売買若しくは工事の請負をする法人若しくはこれらの行為をする者が当該物品の売買若しくは工事の請負に関して組織する団体の役員(名称のいかんにかかわらず、役員と同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。)又は就任の日前一年以内において、これらの者であつたもの
(転職の制限)
第十二条 管理者の職にある者は、左の各号の一に該当する場合を除く外、就任の日から三年を経過した後でなければ、その意に反して転職されることがない。但し、就任の日から六月以内において、その職に必要な適格性を欠くと認められるに至つた場合においては、この限りでない。
一 三月以上の休養を要する場合
二 その責に帰すべき重大な過失があつた場合
(代理及び委任)
第十三条 管理者に事故があるときは、企業管理規程で定める上席の職員がその職務を行う。
2 管理者は、その権限に属する事務の一部を第十五条の職員に委任し、又はこれにその職務の一部を臨時に代理させることができる。
(事務処理のための組織)
第十四条 地方公営企業を経営する地方公共団体に、管理者の権限に属する事務を処理させるため、条例で必要な組織を設ける。
(補助職員)
第十五条 管理者の権限に属する事務の執行を補助する職員は、管理者が任免する。但し、当該地方公共団体の規則で定める主要な職員を任免する場合においては、あらかじめ、当該地方公共団体の長の同意を得なければならない。
2 前項の職員は、管理者が指揮監督する。
(管理者と地方公共団体の長との関係)
第十六条 地方公共団体の長が管理者に対して行う指揮監督は、左の各号に掲げる事項に関して行うのを例とする。
一 地方公営企業の経営の基本計画に関すること。
二 地方公営企業の業務の執行に関する事項のうち、当該地方公共団体の住民の福祉に重大な影響があると認められるものに関すること。
三 管理者以外の機関の権限に属する事務の執行と地方公営企業の業務の執行との間における必要な調整に関すること。
第三章 財務
(特別会計)
第十七条 地方公営企業の経理は、第二条第一項に掲げる事業ごとに特別会計を設けて行い、その経費は、当該事業の経営に伴う収入をもつて充てなければならない。但し、同条同項に掲げる事業を二以上経営する地方公共団体においては、議会の議決を経て二以上の事業を通じて一の特別会計を設けることができる。
(一般会計又は他の特別会計からの繰入金)
第十八条 地方公共団体は、地方公営企業について災害の復旧その他特別の事由に因り必要がある場合においては、予算の定めるところにより、一般会計又は他の特別会計からの繰入金による収入をもつて当該企業の経費に充てることができる。
2 前項の規定による繰入金に相当する金額は、翌年度以降において、予算の定めるところにより、当該繰入金を繰り入れた一般会計又は他の特別会計に繰りもどさなければならない。但し、一般会計又は他の特別会計において支出すべきものを当該企業の特別会計において支出したことに因る繰入金その他特別の事由に因る繰入金については、議会の議決を経て、当該繰入金を繰り入れた一般会計又は他の特別会計に繰りもどさないことができる。
(事業年度)
第十九条 地方公営企業の事業年度は、地方公共団体の会計年度による。
(計理の方法)
第二十条 地方公営企業においては、その企業の経営成績を明らかにするため、収益及び費用をその発生の事実に基いて計理しなければならず、且つ、その企業の財政状態を明らかにするため、資産、資本及び負債の増減及び異動をその都度記録し、及び整理しなければならない。
2 前項の資産、資本及び負債については、政令で定めるところにより、その内容を明らかにしなければならない。
(料金)
第二十一条 地方公共団体は、地方公営企業の給付について料金を徴収することができる。
2 前項の料金は、公正妥当なものでなければならず、且つ、これを決定するに当つては、地方公営企業の収支の均衡を保持させるように適切な考慮が払われなければならない。
(企業債)
第二十二条 地方公共団体が、地方公営企業の建設、改良等に要する資金に充てるため起す地方債(以下「企業債」という。)については、行政庁の許可を必要としない。
(償還期限を定めない企業債)
第二十三条 地方公共団体は、企業債のうち、地方公営企業の建設に要する資金に充てるものについては、償還期限を定めないことができる。この場合においては、当該地方公営企業の毎事業年度における利益剰余金の状況に応じ、特別利息をつけることができる。
(予算)
第二十四条 地方公共団体の長は、当該地方公営企業の管理者が作成した予算の見積に基いて毎事業年度地方公営企業の予算を調製し、年度開始前に議会の議決を経なければならない。
2 業務量の増加に因り地方公営企業の業務のため直接必要な経費に不足を生じたときは、管理者は、当該業務量の増加に因り増加する収入に相当する金額を当該企業の業務のため直接必要な経費に使用することができる。この場合においては、遅滞なく、管理者は、当該地方公共団体の長にその旨を報告するものとし、報告を受けた地方公共団体の長は、次の会議においてその旨を議会に報告しなければならない。
(財政計画に関する書類)
第二十五条 地方公共団体の長は、地方公営企業の予算を議会に提出する場合においては、当該地方公営企業の管理者が作成した当該予算の実施計画、当該年度の事業計画及び資金計画その他財政計画の参考となるべき事項に関する書類をあわせて提出しなければならない。
(予算の繰越)
第二十六条 予算に定めた地方公営企業の建設又は改良に要する経費のうち、年度内に支払義務が生じなかつたものがある場合においては、管理者は、その額を翌年度に繰り越して使用することができる。この場合においては、管理者は、地方公共団体の長に繰越額の使用に関する計画について報告するものとし、報告を受けた地方公共団体の長は、次の会議においてその旨を議会に報告しなければならない。
(出納及び現金の保管)
第二十七条 地方公営企業の業務に係る出納は、管理者が行う。
2 管理者は、地方公営企業の業務に係る現金を政令で定める金融機関で当該地方公共団体の長が指定したものに預け入れて保管しなければならない。但し、管理者は、当該地方公共団体の長が定めた額を限度として現金を自ら保管することができる。
(企業出納員及び現金取扱員)
第二十八条 地方公営企業を経営する地方公共団体に、当該地方公営企業の業務に係る出納その他の会計事務をつかさどらせるため、企業出納員及び現金取扱員を置く。
2 企業出納員及び現金取扱員は、第十五条の職員のうちから、管理者が命ずる。
3 企業出納員は、管理者の命を受けて、出納その他の会計事務をつかさどる。
4 現金取扱員は、上司の命を受けて、企業管理規程で定めた額を限度として当該地方公営企業の業務に係る現金の出納に関する事務をつかさどる。
5 管理者は、その事務の一部を企業出納員に委任することができる。
(一時借入金)
第二十九条 管理者は、予算内の支出をするため、一時の借入をすることができる。
2 前項の規定による借入金は、当該事業年度内に償還しなければならない。但し、資金不足のため償還することができない場合においては、償還することができない金額を限度として、これを借り換えることができる。
3 前項但書の規定により借り換えた借入金は、一年以内に償還しなければならない。但し、借入金をもつてこれを償還するようなことをしてはならない。
(決算)
第三十条 管理者は、毎事業年度終了後二月以内に当該地方公営企業の決算を作成し、証書類、当該年度の事業報告書及び政令で定めるその他の書類をあわせて当該地方公共団体の長に提出しなければならない。
2 前項の規定による決算及び同項の規定によりあわせて提出すべき書類の提出を受けたときは、地方公共団体の長は、これらを監査委員の審査に付し、その意見をつけて、遅くとも当該事業年度終了後三月を経過した後において最初に招集される議会の認定に付さなければならない。
3 第一項の決算について作成すべき書類は、当該年度の予算の区分に従つて作成した決算報告書並びに損益計算書、剰余金計算書又は欠損金計算書、剰余金処分計算書又は欠損金処理計算書及び貸借対照表とし、その様式は、総理府令で定める。
4 地方公営企業について、地方自治法第二百四十四条第二項の規定による議会の指定があつたときは、第二項の規定に基く地方公共団体の長の決算及び第一項の規定によりあわせて提出すべき書類の議会への提出をもつて地方自治法第二百四十四条第二項の規定による普通地方公共団体の長の貸借対照表その他必要な書類の提出とみなす。
(計理状況の報告)
第三十一条 管理者は、毎月末日をもつて試算表その他当該企業の計理状況を明らかにするために必要な書類を作成し、翌月十日までに当該地方公共団体の長に提出しなければならない。
(剰余金の処分)
第三十二条 地方公営企業の決算上利益剰余金を生じた場合において、前事業年度から繰り越した欠損金があるときは、これをその補てんに充て、なお、残額があるときは、その残額の二十分の一を下らない金額を利益準備金として積み立てなければならない。
2 各事業年度において生じた資本剰余金は、資本準備金、再評価積立金その他の科目に積み立てなければならない。
3 第一項に規定するものの外、利益剰余金の処分については、別に予算に定があるものを除き、議会の議決を経て定めなければならない。
4 第一項の利益準備金は、企業債の償還その他条例で定める支出に充てる場合を除く外、処分することができない。
5 第二項の資本準備金及び再評価積立金は、政令で定める場合を除く外、処分することができない。
(資産の取得、管理及び処分)
第三十三条 地方公営企業の用に供する資産の取得、管理及び処分は、管理者が行う。但し、条例で定める重要な資産の取得及び処分は、当該地方公共団体の長の承認を受けなければならない。
(契約)
第三十四条 地方公共団体が地方公営企業の業務に関して売買、貸借、請負その他の契約を結ぶ場合においては、公告して一般競争入札の方法に準じて申込をさせ、最低若しくは最高の価額によつて申込をした者又は申込をした者であつて価額その他の条件について公正な協議がととのつた者とこれをしなければならない。但し、法令又は条例で定める場合においては、この限りでない。
(政令への委任)
第三十五条 この章に定めるものを除く外、地方公営企業の財務に関し必要な事項は、政令で定める。
第四章 職員の身分取扱
(企業職員の労働関係の特例)
第三十六条 第十五条の職員のうち、管理又は監督の地位にある者及び機密の事務を取り扱う者以外の者(以下「企業職員」という。)の身分取扱については、この法律に特別の定のあるものを除く外、地方公営企業労働関係法(昭和二十七年法律第二百八十九号)の定めるところによる。
(職階制)
第三十七条 企業職員については、職階制を実施することができる。
2 前項の職階制においては、企業職員の職を職務の種類及び複雑と責任の度に応じて分類整理しなければならない。
(給与)
第三十八条 企業職員の給与は、その職務と責任に応ずるものでなければならない。
2 企業職員の給与は、生計費並びに国及び地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定めなければならない。
3 企業職員の給与の種類及び基準は、条例で定める。
(地方公務員法の適用除外)
第三十九条 企業職員については、地方公務員法第五条、第八条(第一項第五号、第三項及び第四項の規定を除く。)、第二十三条から第二十六条まで、第三十六条、第三十七条、第三十九条第三項、第四十条第二項、第四十五条第二項から第四項まで、第四十六条から第五十六条まで及び第五十八条の規定は、適用しない。
第五章 雑則
(業務の状況の公表)
第四十条 管理者は、条例で定めるところにより、毎事業年度少くとも二回以上当該地方公営企業の業務の状況を説明する書類を当該地方公共団体の長に提出しなければならない。この場合においては、地方公共団体の長は、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(国と地方公営企業を経営する地方公共団体等との関係)
第四十一条 地方公営企業の経営に関し、地方公共団体相互の間で協議がととのわない場合において、関係地方公共団体の申出があるときは、政令で定めるところにより、内閣総理大臣又は都道府県知事は、必要なあつ旋若しくは調停をし、又は必要な勧告をすることができる。
附 則
(施行期日)
1 この法律の施行期日は、この法律公布の日から起算して六月をこえない範囲内で政令で定める。
(起債の特例)
2 企業債については、第二十二条の規定にかかわらず、当分の間、地方自治法第二百五十条の規定の適用があるものとする。
(資産の再評価)
3 地方公営企業の資産は、資産の適正な減価償却の基礎を確立するため、政令で定めるところにより、再評価しなければならない。
(政令への委任)
4 この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
(地方自治法の一部改正)
5 地方自治法の一部を次のように改正する。
第二条第三項第三号中「電車事業、自動車事業、」を「軌道事業、自動車運送事業、」に、「運輸事業」を「運送事業」に改め、同項第二十号中「使用料、」を「使用料(普通地方公共団体の経営する企業の徴収する料金を含む。以下同じ。)、」に改める。
第二百六十三条を次のように改める。
第二百六十三条 普通地方公共団体の経営する企業の組織及びこれに従事する職員の身分取扱並びに財務その他企業の経営に関する特例は、別に法律でこれを定める。
内閣総理大臣 吉田茂
大蔵大臣 池田勇人
厚生大臣 吉武恵市
運輸大臣 村上義一
労働大臣 吉武恵市
建設大臣 野田卯一