旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法
法令番号: 法律第二百五十六号
公布年月日: 昭和25年12月12日
法令の形式: 法律
旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十五年十二月十二日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第二百五十六号
旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法
目次
第一章
総則(第一條・第二條)
第二章
年金受給者のための特別措置(第三條―第七條)
第三章
連合会の業務(第八條―第十六條)
第四章
年金受給者等の権利の確認(第十七條―第二十一條)
第五章
雑則(第二十二條―第二十四條)
附則
第一章 総則
(目的)
第一條 この法律は、国家公務員共済組合法(昭和二十三年法律第六十九号。以下「共済組合法」という。)の規定による共済組合連合会(以下「連合会」という。)をして旧陸軍共済組合、旧海軍共済組合の権利義務を承継した財団法人共済協会(以下「共済協会」という。)及び外地関係共済組合からの年金受給者に対する年金支給の事務を統一的に処理させるとともに、現行の恩給及び共済組合法の規定による年金の額との権衡を考慮して、これらの年金受給者及び財団法人日本製鉄八幡共済組合(以下「日本製鉄八幡共済組合」という。)からの年金受給者のために、その年金額の改定その他特別の措置を講ずることを目的とする。
(外地関係共済組合の定義)
第二條 この法律において「外地関係共済組合」とは、もとの外地関係の政府職員の共済組合のうち年金給付を行つていたもので、左に掲げる命令の規定に基いて組織されたものをいう。
一 朝鮮総督府逓信官署共済組合令(昭和十六年勅令第三百五十七号)
二 朝鮮総督府交通局共済組合令(昭和十六年勅令第三百五十八号)
三 台湾総督府專売局共済組合令(大正十四年勅令第二百十四号)
四 台湾総督府営林共済組合令(昭和五年勅令第五十九号)
五 台湾総督府交通局逓信共済組合令(昭和十六年勅令第二百八十六号)
六 台湾総督府交通局鉄道共済組合令(昭和十六年勅令第二百八十七号)
第二章 年金受給者のための特別措置
(旧陸軍共済組合及び共済協会の権利義務の承継)
第三條 連合会は、この法律施行の日において、旧陸軍共済組合及び共済協会の権利義務を承継する。
2 連合会は、この法律施行の日において、旧陸軍共済組合が旧陸軍共済組合令(昭和十五年勅令第九百四十七号)に基く命令の規定により負担した、又は負担すべきであつた年金支給の義務で陸軍共済組合令及び海軍共済組合令廃止の件(昭和二十年勅令第六百八十八号)附則第二項の規定に基く主務大臣の措置により消滅したものを消滅しなかつたものとみなして、承継する。但し、当該主務大臣の措置に基き支給した一時金があるときは、当該一時金の限度において、連合会が承継した年金支給の義務(昭和二十六年一月以後の期間に係る年金支給の義務については、第六條の規定による改定後の年金支給の義務)は、履行されたものとみなす。
3 旧陸軍共済組合が前項に規定する主務大臣の措置により消滅した年金支給の義務に代るものとして負担した一時金支給の義務でこの法律施行の日までに履行されていないものは、その日において消滅したものとみなす。
(外地関係共済組合に係る年金の支給)
第四條 連合会は、外地関係共済組合のうち大蔵大臣の指定したものからの年金受給者に対し、当該指定の日以後当該共済組合が支給すべき年金を支給する。
2 前項の年金及び年金受給者のうちには、第二條各号に掲げる命令に基く命令の規定又は第五條第二項の規定により当該年金の支給の義務が消滅した場合において支給すべき一時金及び当該一時金の受給者を含むものとする。
3 第一項の規定により年金を支給すべき者は、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の規定の適用を受ける者で、且つ、本邦(本州、四国、九州及び北海道並びに大蔵省令で定めるその附属の島をいう。以下同じ。)内に住所又は居所を有する者に限る。
4 大蔵大臣は、外地関係共済組合について、その年金受給者の状況を調査し、その概況の明らかになつたものから第一項の指定をするものとする。
(前二條の年金の支給に関する調整)
第五條 連合会が第三條の規定により承継した義務に基き、及び前條第一項の規定により支給すべき年金のうち、共済組合法の規定による退職年金、廃疾年金又は遺族年金に相当するものの支給については、それぞれ同法の規定による退職年金、廃疾年金又は遺族年金の支給の例による。
2 連合会は、前項に規定する年金の支給の義務が消滅した場合において、当該年金を共済組合法の規定によるこれに相当する年金とみなした場合に同法の規定により一時金を支給すべき場合に該当することとなるときは、当該一時金の支給の例により、これに相当する一時金を支給する。
(年金額の改定)
第六條 連合会は、第三條の規定により承継した義務に基き、及び第四條第一項の規定により支給すべき年金の額を、昭和二十六年一月分以後、共済組合法の規定による退職年金、廃疾年金又は遺族年金に相当するものについては第一号に掲げる額に、公務に起因する疾病、負傷又は死亡を給付事由とするものについては第二号に掲げる額にそれぞれ改定する。
一 当該年金の算定の基準となつた俸給に対応する別表の仮定俸給を俸給とみなし、且つ、当該年金を共済組合法の規定によるこれに相当する退職年金、廃疾年金又は遺族年金とみなして同法の規定を適用して算定した額
二 当該年金の算定の基準となつた俸給に対応する別表の仮定俸給を俸給とみなし、且つ、それぞれ旧陸軍共済組合、共済協会又は外地関係共済組合が支給した当該年金に相当する年金の算定の例及び第三項の規定により算定した額
2 前項第一号の場合において、同号の年金のうちにその支給の條件又は額の算定の基準について共済組合法の規定による退職年金、廃疾年金又は遺族年金と異なるものがあるときは、当該年金は、大蔵大臣の定めるところにより、共済組合法の規定によるこれらの年金のうち当該條件又は基準の最も類似するものとみなして、同法の規定を適用する。
3 公務に起因する疾病、負傷又は死亡を給付事由とする年金については、その年金の額算定の際俸給月額に乘ずべき月数を労働基準法等の施行に伴う政府職員に係る給與の応急措置に関する法律(昭和二十二年法律第百六十七号)第二項の規定に基き大蔵大臣が定めた基準に従つて改定する。
(日本製鉄八幡共済組合に対する金額の交付)
第七條 国は、日本製鉄八幡共済組合が、当該共済組合からの年金受給者のうち、昭和九年一月三十一日以前に発生した給付事由に基き年金の支給を受ける者に対して支給する年金の額を前條の規定に準じて改定した場合には、当該共済組合に対し、その年金の額の改定に因り必要となる責任準備金の増額分に相当する金額を交付する。
2 前項に規定する年金の額の改定に因り必要となる責任準備金の増額分の計算については、大蔵大臣の定めるところによる。
3 第一項の金額は、日本製鉄八幡共済組合が同項に規定する年金の額の改定をした場合において、その請求に基き一時に交付するものとする。
第三章 連合会の業務
(業務)
第八條 連合会は、共済組合法の規定による業務の外、左に掲げる業務を行う。
一 第三條の規定により承継した義務に基き、年金及び一時金を支給し、その他その承継した債務の整理をすること。
二 第四條の規定による年金及び一時金を支給すること。
三 前二号の業務に附帶する業務
(定款の変更)
第九條 連合会は、この法律施行の後、遅滯なく、大蔵大臣の認可を受けて、前條の規定による業務を行うこととなつたのに伴い必要とされる定款の変更をしなければならない。
(会計)
第十條 連合会は、第八條の規定による業務に関する会計については、共済組合法の規定による業務に関する会計と区分して、これを経理しなければならない。
第十一條 国は、予算の定めるところにより、連合会に対し、第八條第一号及び第二号に規定する年金及び一時金の支給その他その承継した債務の履行に要する費用並びに同條に規定する業務の執行に要する費用に充てるため必要な金額を交付する。
2 前項の金額は、毎年度分を四分して、各四半期の期間中に当該四半期分を交付するものとする。
第十二條 連合会は、毎年度第八條の規定による業務に関する收支計算書を作成して、これを翌年度五月末日までに大蔵大臣に提出しなければならない。
2 連合会は、毎年度第八條の規定による業務に関する決算において剩余金を生じたときは、これを翌年度五月末日までに国庫に納付しなければならない。
3 連合会の第八條の規定による業務に関する会計についての細目的事項については、前二條及び前二項に定めるものを除く外、大蔵大臣が定める。
(監督)
第十三條 連合会の第八條の規定による業務の執行は、大蔵大臣が監督する。
2 連合会は、大蔵大臣の定める手続により、毎月末日現在における第八條の規定による業務に関する詳細な報告を大蔵大臣に提出しなければならない。
3 大蔵大臣は、毎年少くとも一回部下の職員をして連合会の第八條の規定による業務及び当該業務に関する会計について監査させるものとする。
(特定財産の国への帰属)
第十四條 連合会が第三條第一項の規定により承継した財産のうち連合会が第八條の規定による業務を執行するために必要でないと認めて大蔵大臣が指定したものは、その指定の日において、国に帰属するものとする。
(無料証明)
第十五條 連合会及び連合会から第八條第一号又は第二号に規定する年金又は一時金の支給を受けるべき者は、これらの年金又は一時金の支給に関し必要な範囲内において、国又は地方公共団体の権限のある機関に対し、無料で証明を求めることができる。
(非課税)
第十六條 連合会が支給する第八條第一号及び第二号に規定する年金及び一時金については、共済組合法の規定による退職年金及び退職一時金に相当する年金及び一時金を除く外、これを標準として、租税その他の公課を課さない。
2 連合会が支給する第八條第一号及び第二号に規定する年金及び一時金に関する証書及び帳簿には、印紙税を課さない。
3 連合会が第三條第一項の規定により承継した不動産の取得の登記については、登録税を課さない。
第四章 年金受給者等の権利の確認
(公告)
第十七條 連合会は、第三條の規定により旧陸軍共済組合及び共済協会の権利義務を承継した後、並びに第四條の規定により外地関係共済組合に係る年金及び一時金を支給すべきこととなつた後、遅滯なく、連合会から年金又は一時金の支給を受ける権利を有する者に対し、一定の期間内に証拠書類を添えて連合会に対し当該権利の確認を求めるための申出をすべき旨の公告をしなければならない。但し、その期間は、三月(連合会がその権利義務を承継し、又は第四條の規定により年金及び一時金を支給すべきこととなつた日現在において本邦にいない者については、本邦に帰還した日から三月)を下ることができない。
2 前項の規定による公告は、時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲げて少くとも三回以上しなければならない。但し、旧陸軍共済組合又は共済協会に係る年金又は一時金の支給を受ける権利を有する者に対する公告は、一回以上すれば足りる。
3 第一項の規定による公告には、同項の年金又は一時金の支給を受ける権利を有する者が同項の期間内に申出をしないときは、第十八條第一項の規定による権利の確認が得られないため第二十條の規定の適用を受けることがあるべき旨を附記しなければならない。
(権利の確認)
第十八條 連合会は、前條第一項の規定による公告に応じて権利の確認を求めるための申出をした者に対し、その提出した証拠書類その他連合会の調査した資料に基いて、その者が真正の権利者であるか否か並びにその者が真正の権利者である場合にはその年金又は一時金の種類及び額を確認しなければならない。
2 連合会は、前條第一項の規定による公告に応じて権利の確認を求めた者以外の者で同項の期間内に申出をしなかつたことについてやむを得ない事由があると認められるものについては、その者の申出に基き、前項の規定に準じてその者の権利を確認することができる。
(年金証書の交付)
第十九條 連合会は、前條の規定により引き続き年金の支給を受ける権利の確認をした者に対しては、当該年金に関する証書を作成して交付しなければならない。
2 連合会は、前條の規定による権利の確認を受けた者が旧陸軍共済組合、旧海軍共済組合、共済協会又は外地関係共済組合の発給に係る年金に関する証書を有するときは、これを返納させなければならない。
(年金又は一時金の受給権利者)
第二十條 連合会は、第十八條の規定による権利の確認を受けた者以外の者に対しては、第三條及び第四條の規定にかかわらず、年金又は一時金の支給の義務を負わない。
(細目)
第二十一條 第十八條の規定により権利の確認及び第十九條第一項の規定による年金に関する証書の作成、交付、書換、再交付等に関する細目的事項については、大蔵大臣が定める。
第五章 雑則
(事務の委任)
第二十二條 大蔵大臣は、第四條第四項の規定による外地関係共済組合に関する調査の事務を連合会に行わせることができる。
2 連合会は、前項の規定により委任された調査を行うため、第十七條の規定に準じて外地関係共済組合に係る年金又は一時金の支給を受ける権利を有する者に対し、当該権利の申出をすべき旨の公告をすることができる。この場合においては、当該公告には、当該公告が第三項の規定により第十七條第一項の規定による公告とみなされ、同條第三項に規定するところと同樣の結果となることがあるべき旨を附記しなければならない。
3 連合会が前項の公告をした場合において、当該公告の結果に基いて大蔵大臣が第四條第一項の指定をしたときは、連合会は、当該公告を第十七條第一項の規定による公告とみなして当該公告に応じて権利の申出をした者に対し第十八條第一項の規定による権利の確認をすることができる。
(時効の特例)
第二十三條 左に掲げる権利については、その時効は、他の法令の規定にかかわらず、昭和二十年八月十五日から第十七條第一項の規定による公告(前條第三項の規定により権利の確認をする場合には、同條第二項の規定による公告)に応じて権利の申出をすべき期間終了の日までは、進行しないものとする。
一 旧陸軍共済組合から年金又は一時金の支給を受ける権利。但し、一時金の支給を受ける権利については、昭和二十年八月十五日現在において本邦以外の地域にいた者の有する権利に限る。
二 昭和二十年八月十五日現在において本邦以外の地域にいた者が共済協会から年金又は一時金の支給を受ける権利
三 外地関係共済組合から年金の支給を受ける権利
2 前項各号に規定する年金のうちには、旧陸軍共済組合令、旧海軍共済組合令若しくは第二條各号に掲げる命令に基く命令の規定又は第五條第二項の規定により当該年金の支給の義務が消滅した場合において支給すべき一時金を含むものとする。
(退職年金とみなす場合)
第二十四條 連合会から共済組合法の規定による退職年金に相当する年金の支給を受ける者が、同法の規定による共済組合の組合員となつた場合には、同法第四十條の規定の適用については、その者の受ける年金は、同法の規定による退職年金とみなす。その者が日本国有鉄道法(昭和二十三年法律第二百五十六号)その他の法律において準用する共済組合法の規定による共済組合の組合員となつた場合にも、また同樣とする。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 将来外地関係共済組合に帰属することが確定的となつた資産のうち、連合会が第四條の規定により支給すべき年金及び一時金に係る責任準備金の金額に相当するものについては、別に法律で定めるところにより、連合会に帰属させるものとする。
3 連合会は、第三條第一項の規定により共済協会から承継した施設のうちに第八條の規定による業務以外の業務の用に供されるものがあるときは、当分の間、同條の規定による業務の外、引き続き当該施設を利用して当該業務を行うことができる。
4 第九條、第十條、第十二條第一項及び第三項並びに第十三條の規定は、連合会が前項の規定による業務を行う場合に準用する。この場合において、これらの規定中「前條の規定による業務」又は「第八條の規定による業務」とあるのは「附則第三項の規定による業務」と、第十二條第一項中「收支計算書」とあるのは「財産目録、貸借対照表及び損益計算書」と読み替えるものとする。
5 連合会が附則第三項の規定による業務を行う間は、第十四條中「第八條の規定による業務」とあるのは、「第八條及び附則第三項の規定による業務」と読み替えるものとする。
6 共済協会は、この法律施行の日に解散する。この場合においては、法人の解散及び清算に関する民法(明治二十九年法律第八十九号)及び非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)の規定は適用しない。
7 大蔵大臣は、共済協会が解散したときは、直ちに共済協会の事務所の所在地の登記所に、その解散の登記を嘱託しなければならない。
8 登記所は、前項の登記の嘱託を受けたときは、共済協会の解散の登記をし、その登記用紙を閉鎖しなければならない。
9 昭和二十六年一月一日において現に共済組合法の規定による共済組合の組合員である者に対し第二十四條の規定を適用する場合においては、同法第四十條第一項の規定にかかわらず、同月から当該年金の支給を停止するものとする。昭和二十六年一月一日において第二十四條後段に規定する共済組合の組合員である者についても、また同樣とする。
別表
年金の算定の基準となつた俸給
仮定俸給
円五〇
円三、八五〇
五五
四、一五〇
六〇
四、四五〇
六五
四、七五〇
七〇
五、〇五〇
七七
五、三五〇
八三
五、七〇〇
九〇
六、一〇〇
九七
六、五〇〇
一〇三
六、九〇〇
一一〇
七、三〇〇
一一七
七、五〇〇
一二五
八、一〇〇
一三三
八、七〇〇
一四二
九、三〇〇
一五〇
九、九〇〇
一五八
一〇、五〇〇
一六七
一一、一〇〇
一七五
一一、七〇〇
一八三
一二、五〇〇
一九二
一三、三〇〇
二〇〇
一四、二〇〇
二一七
一五、二〇〇
二三三
一六、二〇〇
二五〇
一七、二〇〇
二六七
一八、三〇〇
二八三
二〇、一〇〇
三〇〇
二一、五〇〇
三一七
二二、九〇〇
三三三
二五、〇〇〇
備考
一 年金の算定の基準となつた俸給が五〇円未満のときは、その俸給の七七倍に相当する金額(円位未満の端数は、切り捨てる。)を仮定俸給とし、俸給が三三三円をこえるときは、その俸給の七五・〇七倍に相当する金額(円位未満の端数は、切り捨てる。)を仮定俸給とする
二 年金の算定の基準となつた俸給が五〇円以上三三三円未満のときにその俸給相当額がこの表記載の額に合致しないものについては、その直近多額の俸給に対応する仮定俸給による
外務大臣 吉田茂
大蔵大臣 池田勇人
厚生大臣 黒川武雄
内閣総理大臣 吉田茂
旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十五年十二月十二日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第二百五十六号
旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
年金受給者のための特別措置(第三条―第七条)
第三章
連合会の業務(第八条―第十六条)
第四章
年金受給者等の権利の確認(第十七条―第二十一条)
第五章
雑則(第二十二条―第二十四条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、国家公務員共済組合法(昭和二十三年法律第六十九号。以下「共済組合法」という。)の規定による共済組合連合会(以下「連合会」という。)をして旧陸軍共済組合、旧海軍共済組合の権利義務を承継した財団法人共済協会(以下「共済協会」という。)及び外地関係共済組合からの年金受給者に対する年金支給の事務を統一的に処理させるとともに、現行の恩給及び共済組合法の規定による年金の額との権衡を考慮して、これらの年金受給者及び財団法人日本製鉄八幡共済組合(以下「日本製鉄八幡共済組合」という。)からの年金受給者のために、その年金額の改定その他特別の措置を講ずることを目的とする。
(外地関係共済組合の定義)
第二条 この法律において「外地関係共済組合」とは、もとの外地関係の政府職員の共済組合のうち年金給付を行つていたもので、左に掲げる命令の規定に基いて組織されたものをいう。
一 朝鮮総督府逓信官署共済組合令(昭和十六年勅令第三百五十七号)
二 朝鮮総督府交通局共済組合令(昭和十六年勅令第三百五十八号)
三 台湾総督府専売局共済組合令(大正十四年勅令第二百十四号)
四 台湾総督府営林共済組合令(昭和五年勅令第五十九号)
五 台湾総督府交通局逓信共済組合令(昭和十六年勅令第二百八十六号)
六 台湾総督府交通局鉄道共済組合令(昭和十六年勅令第二百八十七号)
第二章 年金受給者のための特別措置
(旧陸軍共済組合及び共済協会の権利義務の承継)
第三条 連合会は、この法律施行の日において、旧陸軍共済組合及び共済協会の権利義務を承継する。
2 連合会は、この法律施行の日において、旧陸軍共済組合が旧陸軍共済組合令(昭和十五年勅令第九百四十七号)に基く命令の規定により負担した、又は負担すべきであつた年金支給の義務で陸軍共済組合令及び海軍共済組合令廃止の件(昭和二十年勅令第六百八十八号)附則第二項の規定に基く主務大臣の措置により消滅したものを消滅しなかつたものとみなして、承継する。但し、当該主務大臣の措置に基き支給した一時金があるときは、当該一時金の限度において、連合会が承継した年金支給の義務(昭和二十六年一月以後の期間に係る年金支給の義務については、第六条の規定による改定後の年金支給の義務)は、履行されたものとみなす。
3 旧陸軍共済組合が前項に規定する主務大臣の措置により消滅した年金支給の義務に代るものとして負担した一時金支給の義務でこの法律施行の日までに履行されていないものは、その日において消滅したものとみなす。
(外地関係共済組合に係る年金の支給)
第四条 連合会は、外地関係共済組合のうち大蔵大臣の指定したものからの年金受給者に対し、当該指定の日以後当該共済組合が支給すべき年金を支給する。
2 前項の年金及び年金受給者のうちには、第二条各号に掲げる命令に基く命令の規定又は第五条第二項の規定により当該年金の支給の義務が消滅した場合において支給すべき一時金及び当該一時金の受給者を含むものとする。
3 第一項の規定により年金を支給すべき者は、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の規定の適用を受ける者で、且つ、本邦(本州、四国、九州及び北海道並びに大蔵省令で定めるその附属の島をいう。以下同じ。)内に住所又は居所を有する者に限る。
4 大蔵大臣は、外地関係共済組合について、その年金受給者の状況を調査し、その概況の明らかになつたものから第一項の指定をするものとする。
(前二条の年金の支給に関する調整)
第五条 連合会が第三条の規定により承継した義務に基き、及び前条第一項の規定により支給すべき年金のうち、共済組合法の規定による退職年金、廃疾年金又は遺族年金に相当するものの支給については、それぞれ同法の規定による退職年金、廃疾年金又は遺族年金の支給の例による。
2 連合会は、前項に規定する年金の支給の義務が消滅した場合において、当該年金を共済組合法の規定によるこれに相当する年金とみなした場合に同法の規定により一時金を支給すべき場合に該当することとなるときは、当該一時金の支給の例により、これに相当する一時金を支給する。
(年金額の改定)
第六条 連合会は、第三条の規定により承継した義務に基き、及び第四条第一項の規定により支給すべき年金の額を、昭和二十六年一月分以後、共済組合法の規定による退職年金、廃疾年金又は遺族年金に相当するものについては第一号に掲げる額に、公務に起因する疾病、負傷又は死亡を給付事由とするものについては第二号に掲げる額にそれぞれ改定する。
一 当該年金の算定の基準となつた俸給に対応する別表の仮定俸給を俸給とみなし、且つ、当該年金を共済組合法の規定によるこれに相当する退職年金、廃疾年金又は遺族年金とみなして同法の規定を適用して算定した額
二 当該年金の算定の基準となつた俸給に対応する別表の仮定俸給を俸給とみなし、且つ、それぞれ旧陸軍共済組合、共済協会又は外地関係共済組合が支給した当該年金に相当する年金の算定の例及び第三項の規定により算定した額
2 前項第一号の場合において、同号の年金のうちにその支給の条件又は額の算定の基準について共済組合法の規定による退職年金、廃疾年金又は遺族年金と異なるものがあるときは、当該年金は、大蔵大臣の定めるところにより、共済組合法の規定によるこれらの年金のうち当該条件又は基準の最も類似するものとみなして、同法の規定を適用する。
3 公務に起因する疾病、負傷又は死亡を給付事由とする年金については、その年金の額算定の際俸給月額に乗ずべき月数を労働基準法等の施行に伴う政府職員に係る給与の応急措置に関する法律(昭和二十二年法律第百六十七号)第二項の規定に基き大蔵大臣が定めた基準に従つて改定する。
(日本製鉄八幡共済組合に対する金額の交付)
第七条 国は、日本製鉄八幡共済組合が、当該共済組合からの年金受給者のうち、昭和九年一月三十一日以前に発生した給付事由に基き年金の支給を受ける者に対して支給する年金の額を前条の規定に準じて改定した場合には、当該共済組合に対し、その年金の額の改定に因り必要となる責任準備金の増額分に相当する金額を交付する。
2 前項に規定する年金の額の改定に因り必要となる責任準備金の増額分の計算については、大蔵大臣の定めるところによる。
3 第一項の金額は、日本製鉄八幡共済組合が同項に規定する年金の額の改定をした場合において、その請求に基き一時に交付するものとする。
第三章 連合会の業務
(業務)
第八条 連合会は、共済組合法の規定による業務の外、左に掲げる業務を行う。
一 第三条の規定により承継した義務に基き、年金及び一時金を支給し、その他その承継した債務の整理をすること。
二 第四条の規定による年金及び一時金を支給すること。
三 前二号の業務に附帯する業務
(定款の変更)
第九条 連合会は、この法律施行の後、遅滞なく、大蔵大臣の認可を受けて、前条の規定による業務を行うこととなつたのに伴い必要とされる定款の変更をしなければならない。
(会計)
第十条 連合会は、第八条の規定による業務に関する会計については、共済組合法の規定による業務に関する会計と区分して、これを経理しなければならない。
第十一条 国は、予算の定めるところにより、連合会に対し、第八条第一号及び第二号に規定する年金及び一時金の支給その他その承継した債務の履行に要する費用並びに同条に規定する業務の執行に要する費用に充てるため必要な金額を交付する。
2 前項の金額は、毎年度分を四分して、各四半期の期間中に当該四半期分を交付するものとする。
第十二条 連合会は、毎年度第八条の規定による業務に関する収支計算書を作成して、これを翌年度五月末日までに大蔵大臣に提出しなければならない。
2 連合会は、毎年度第八条の規定による業務に関する決算において剰余金を生じたときは、これを翌年度五月末日までに国庫に納付しなければならない。
3 連合会の第八条の規定による業務に関する会計についての細目的事項については、前二条及び前二項に定めるものを除く外、大蔵大臣が定める。
(監督)
第十三条 連合会の第八条の規定による業務の執行は、大蔵大臣が監督する。
2 連合会は、大蔵大臣の定める手続により、毎月末日現在における第八条の規定による業務に関する詳細な報告を大蔵大臣に提出しなければならない。
3 大蔵大臣は、毎年少くとも一回部下の職員をして連合会の第八条の規定による業務及び当該業務に関する会計について監査させるものとする。
(特定財産の国への帰属)
第十四条 連合会が第三条第一項の規定により承継した財産のうち連合会が第八条の規定による業務を執行するために必要でないと認めて大蔵大臣が指定したものは、その指定の日において、国に帰属するものとする。
(無料証明)
第十五条 連合会及び連合会から第八条第一号又は第二号に規定する年金又は一時金の支給を受けるべき者は、これらの年金又は一時金の支給に関し必要な範囲内において、国又は地方公共団体の権限のある機関に対し、無料で証明を求めることができる。
(非課税)
第十六条 連合会が支給する第八条第一号及び第二号に規定する年金及び一時金については、共済組合法の規定による退職年金及び退職一時金に相当する年金及び一時金を除く外、これを標準として、租税その他の公課を課さない。
2 連合会が支給する第八条第一号及び第二号に規定する年金及び一時金に関する証書及び帳簿には、印紙税を課さない。
3 連合会が第三条第一項の規定により承継した不動産の取得の登記については、登録税を課さない。
第四章 年金受給者等の権利の確認
(公告)
第十七条 連合会は、第三条の規定により旧陸軍共済組合及び共済協会の権利義務を承継した後、並びに第四条の規定により外地関係共済組合に係る年金及び一時金を支給すべきこととなつた後、遅滞なく、連合会から年金又は一時金の支給を受ける権利を有する者に対し、一定の期間内に証拠書類を添えて連合会に対し当該権利の確認を求めるための申出をすべき旨の公告をしなければならない。但し、その期間は、三月(連合会がその権利義務を承継し、又は第四条の規定により年金及び一時金を支給すべきこととなつた日現在において本邦にいない者については、本邦に帰還した日から三月)を下ることができない。
2 前項の規定による公告は、時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲げて少くとも三回以上しなければならない。但し、旧陸軍共済組合又は共済協会に係る年金又は一時金の支給を受ける権利を有する者に対する公告は、一回以上すれば足りる。
3 第一項の規定による公告には、同項の年金又は一時金の支給を受ける権利を有する者が同項の期間内に申出をしないときは、第十八条第一項の規定による権利の確認が得られないため第二十条の規定の適用を受けることがあるべき旨を附記しなければならない。
(権利の確認)
第十八条 連合会は、前条第一項の規定による公告に応じて権利の確認を求めるための申出をした者に対し、その提出した証拠書類その他連合会の調査した資料に基いて、その者が真正の権利者であるか否か並びにその者が真正の権利者である場合にはその年金又は一時金の種類及び額を確認しなければならない。
2 連合会は、前条第一項の規定による公告に応じて権利の確認を求めた者以外の者で同項の期間内に申出をしなかつたことについてやむを得ない事由があると認められるものについては、その者の申出に基き、前項の規定に準じてその者の権利を確認することができる。
(年金証書の交付)
第十九条 連合会は、前条の規定により引き続き年金の支給を受ける権利の確認をした者に対しては、当該年金に関する証書を作成して交付しなければならない。
2 連合会は、前条の規定による権利の確認を受けた者が旧陸軍共済組合、旧海軍共済組合、共済協会又は外地関係共済組合の発給に係る年金に関する証書を有するときは、これを返納させなければならない。
(年金又は一時金の受給権利者)
第二十条 連合会は、第十八条の規定による権利の確認を受けた者以外の者に対しては、第三条及び第四条の規定にかかわらず、年金又は一時金の支給の義務を負わない。
(細目)
第二十一条 第十八条の規定により権利の確認及び第十九条第一項の規定による年金に関する証書の作成、交付、書換、再交付等に関する細目的事項については、大蔵大臣が定める。
第五章 雑則
(事務の委任)
第二十二条 大蔵大臣は、第四条第四項の規定による外地関係共済組合に関する調査の事務を連合会に行わせることができる。
2 連合会は、前項の規定により委任された調査を行うため、第十七条の規定に準じて外地関係共済組合に係る年金又は一時金の支給を受ける権利を有する者に対し、当該権利の申出をすべき旨の公告をすることができる。この場合においては、当該公告には、当該公告が第三項の規定により第十七条第一項の規定による公告とみなされ、同条第三項に規定するところと同様の結果となることがあるべき旨を附記しなければならない。
3 連合会が前項の公告をした場合において、当該公告の結果に基いて大蔵大臣が第四条第一項の指定をしたときは、連合会は、当該公告を第十七条第一項の規定による公告とみなして当該公告に応じて権利の申出をした者に対し第十八条第一項の規定による権利の確認をすることができる。
(時効の特例)
第二十三条 左に掲げる権利については、その時効は、他の法令の規定にかかわらず、昭和二十年八月十五日から第十七条第一項の規定による公告(前条第三項の規定により権利の確認をする場合には、同条第二項の規定による公告)に応じて権利の申出をすべき期間終了の日までは、進行しないものとする。
一 旧陸軍共済組合から年金又は一時金の支給を受ける権利。但し、一時金の支給を受ける権利については、昭和二十年八月十五日現在において本邦以外の地域にいた者の有する権利に限る。
二 昭和二十年八月十五日現在において本邦以外の地域にいた者が共済協会から年金又は一時金の支給を受ける権利
三 外地関係共済組合から年金の支給を受ける権利
2 前項各号に規定する年金のうちには、旧陸軍共済組合令、旧海軍共済組合令若しくは第二条各号に掲げる命令に基く命令の規定又は第五条第二項の規定により当該年金の支給の義務が消滅した場合において支給すべき一時金を含むものとする。
(退職年金とみなす場合)
第二十四条 連合会から共済組合法の規定による退職年金に相当する年金の支給を受ける者が、同法の規定による共済組合の組合員となつた場合には、同法第四十条の規定の適用については、その者の受ける年金は、同法の規定による退職年金とみなす。その者が日本国有鉄道法(昭和二十三年法律第二百五十六号)その他の法律において準用する共済組合法の規定による共済組合の組合員となつた場合にも、また同様とする。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 将来外地関係共済組合に帰属することが確定的となつた資産のうち、連合会が第四条の規定により支給すべき年金及び一時金に係る責任準備金の金額に相当するものについては、別に法律で定めるところにより、連合会に帰属させるものとする。
3 連合会は、第三条第一項の規定により共済協会から承継した施設のうちに第八条の規定による業務以外の業務の用に供されるものがあるときは、当分の間、同条の規定による業務の外、引き続き当該施設を利用して当該業務を行うことができる。
4 第九条、第十条、第十二条第一項及び第三項並びに第十三条の規定は、連合会が前項の規定による業務を行う場合に準用する。この場合において、これらの規定中「前条の規定による業務」又は「第八条の規定による業務」とあるのは「附則第三項の規定による業務」と、第十二条第一項中「収支計算書」とあるのは「財産目録、貸借対照表及び損益計算書」と読み替えるものとする。
5 連合会が附則第三項の規定による業務を行う間は、第十四条中「第八条の規定による業務」とあるのは、「第八条及び附則第三項の規定による業務」と読み替えるものとする。
6 共済協会は、この法律施行の日に解散する。この場合においては、法人の解散及び清算に関する民法(明治二十九年法律第八十九号)及び非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)の規定は適用しない。
7 大蔵大臣は、共済協会が解散したときは、直ちに共済協会の事務所の所在地の登記所に、その解散の登記を嘱託しなければならない。
8 登記所は、前項の登記の嘱託を受けたときは、共済協会の解散の登記をし、その登記用紙を閉鎖しなければならない。
9 昭和二十六年一月一日において現に共済組合法の規定による共済組合の組合員である者に対し第二十四条の規定を適用する場合においては、同法第四十条第一項の規定にかかわらず、同月から当該年金の支給を停止するものとする。昭和二十六年一月一日において第二十四条後段に規定する共済組合の組合員である者についても、また同様とする。
別表
年金の算定の基準となつた俸給
仮定俸給
円五〇
円三、八五〇
五五
四、一五〇
六〇
四、四五〇
六五
四、七五〇
七〇
五、〇五〇
七七
五、三五〇
八三
五、七〇〇
九〇
六、一〇〇
九七
六、五〇〇
一〇三
六、九〇〇
一一〇
七、三〇〇
一一七
七、五〇〇
一二五
八、一〇〇
一三三
八、七〇〇
一四二
九、三〇〇
一五〇
九、九〇〇
一五八
一〇、五〇〇
一六七
一一、一〇〇
一七五
一一、七〇〇
一八三
一二、五〇〇
一九二
一三、三〇〇
二〇〇
一四、二〇〇
二一七
一五、二〇〇
二三三
一六、二〇〇
二五〇
一七、二〇〇
二六七
一八、三〇〇
二八三
二〇、一〇〇
三〇〇
二一、五〇〇
三一七
二二、九〇〇
三三三
二五、〇〇〇
備考
一 年金の算定の基準となつた俸給が五〇円未満のときは、その俸給の七七倍に相当する金額(円位未満の端数は、切り捨てる。)を仮定俸給とし、俸給が三三三円をこえるときは、その俸給の七五・〇七倍に相当する金額(円位未満の端数は、切り捨てる。)を仮定俸給とする
二 年金の算定の基準となつた俸給が五〇円以上三三三円未満のときにその俸給相当額がこの表記載の額に合致しないものについては、その直近多額の俸給に対応する仮定俸給による
外務大臣 吉田茂
大蔵大臣 池田勇人
厚生大臣 黒川武雄
内閣総理大臣 吉田茂