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本データベースについて
国税徴収法
法令番号: 法律第二十一號
公布年月日: 明治30年3月29日
法令の形式: 法律
沿革
被改正法
リンク
改正:
明治35年3月29日 法律第36号
改正:
明治38年3月10日 法律第46号
改正:
明治44年3月27日 法律第37号
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大正3年3月28日 法律第12号
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昭和6年3月30日 法律第16号
改正:
昭和10年3月28日 法律第15号
改正:
昭和11年5月23日 法律第2号
改正:
昭和11年6月3日 法律第42号
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昭和13年4月6日 法律第75号
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昭和15年3月29日 法律第59号
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昭和16年2月25日 法律第6号
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昭和18年3月12日 法律第51号
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昭和19年2月16日 法律第21号
改正:
昭和21年8月30日 法律第14号
改正:
昭和22年3月31日 法律第29号
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昭和22年12月22日 法律第223号
改正:
昭和23年7月7日 法律第107号
改正:
昭和25年3月31日 法律第69号
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昭和26年3月31日 法律第78号
改正:
昭和26年11月30日 法律第274号
改正:
昭和27年3月31日 法律第61号
改正:
昭和27年7月31日 法律第268号
改正:
昭和28年7月20日 法律第66号
改正:
昭和28年7月31日 法律第98号
改正:
昭和28年8月1日 法律第163号
改正:
昭和29年3月31日 法律第35号
改正:
昭和29年3月31日 法律第36号
改正:
昭和29年5月15日 法律第97号
改正:
昭和30年6月30日 法律第39号
改正:
昭和32年3月31日 法律第28号
改正:
昭和33年4月30日 法律第106号
全改:
昭和34年4月20日 法律第147号
消滅:
(市町村ヲシテ国税ノ徴収ヲ為サシムルノ件)
廃止:
国税徴収法
廃止:
国税滞納処分法
廃止:
(北海道及町村制ヲ施行セサル島嶼ノ国税徴収ノ件)
国立国会図書館『官報』
国立国会図書館『法令全書』
国立公文書館『御署名原本』
日本法令索引
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル國稅徵收法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十年三月二十六日
內閣總理大臣兼大藏大臣 伯爵 松方正義
法律第二十一號
國稅徵收法
第一章 總則
第一條
國稅ノ徵收ハ關稅其ノ他別ニ法律ヲ以テ定ムルモノノ外總テ此ノ法律ニ依ル
第二條
國稅ノ徵收ハ總テノ他ノ公課及債權ニ先ツモノトス
第三條
納稅人ノ財產上ニ質權又ハ抵當權ヲ有スル者其ノ質權又ハ抵當權ノ設定カ國稅ノ納期限ヨリ一箇年前ニ在ルコトヲ公正證書ヲ以テ證明シタルトキハ該物件ノ價額ヲ限トシ其ノ債權ニ對シテ國稅ヲ先取セサルモノトス
第四條
納稅人國稅其ノ他ノ公課ノ滯納ニ因リ滯納處分ヲ受ケ又ハ他ノ債務ニ因リ强制執行若ハ破產ノ宣吿ヲ受ケタル場合ニ於テハ未タ納期ノ到ラサルモ旣ニ納稅義務ノ確定シタル國稅ハ總テ之ヲ徵收スルコトヲ得但シ納稅人タル會社カ解散ヲ爲シタルトキ亦同シ
納稅人他ノ公課ニ付滯納處分ヲ受ケタルニ因リ國稅ノ徵收ヲ爲ストキハ國稅ハ其ノ滯納處分費ニ對シテ先取セサルモノトス
第二章 徵收
第五條
市町村ハ其ノ市町村內ノ地租及勅令ヲ以テ命シタル國稅ヲ徵收シ其ノ稅金ヲ國庫ニ送付スルノ責任アルモノトス
前項地租徵收ノ費用ハ其ノ市町村ノ負擔トシ其ノ他ノ國稅ハ其ノ徵收金額ノ百分ノ四ヲ其ノ市町村ニ交付スヘシ
第六條
國稅ヲ徵收セムトスルトキハ收稅官吏又ハ市町村ハ納稅人ニ對シ其ノ納金額、納期日及納付場所ヲ指定シ之ヲ吿知スヘシ
第七條
納稅人非常ノ災害ニ罹リ政府ニ於テ其ノ被害調査ノ爲時日ヲ要スルトキハ其ノ間稅金ノ徵收ヲ爲ササルコトアルヘシ
第八條
市町村ハ避クヘカラサル災害ニ因リ旣收ノ稅金ヲ失ヒタルトキハ其ノ事實ヲ證明シ大藏大臣ニ稅金送付ノ責任ノ免除ヲ請フコトヲ得
前項ノ申出アリタルトキハ大藏大臣ハ其ノ事實ヲ審査シ其ノ免除ヲ爲スコトヲ得
第三章 滯納處分
第九條
國稅ノ納期限ヲ過キ其ノ稅金ヲ完納セサル者アルトキハ收稅官吏ハ期限ヲ指定シテ之ヲ督促スヘシ此ノ場合ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ督促手數料ヲ徵收ス
第十條
滯納者督促ヲ受ケ其ノ指定ノ期限內ニ督促手數料及稅金ヲ完納セサルトキハ其ノ財產ヲ差押フヘシ
第十一條
收稅官吏滯納處分ノ爲財產ノ差押ヲ爲ストキハ其ノ命令ヲ受ケタル官吏タルノ證票ヲ示スヘシ
第十二條
差押フヘキ財產ノ價格ニシテ滯納處分費及第三條ニ依リ控除スヘキ債務額ニ充テ殘餘ヲ得ル見込ナキトキハ滯納處分ノ執行ヲ止ム
第十三條
收稅官吏滯納者ノ財產ヲ差押フルニ當リ質權ノ設定セラレタル物件アルトキハ質權設定時期ノ如何ニ拘ラス其ノ質權者ハ質物ヲ收稅官吏ニ引渡スヘシ
第十四條
收稅官吏財產ノ差押ヲ爲シタル場合ニ於テ第三者其ノ財產ニ就キ所有權ヲ主張シ取戾ヲ請求セムトスルトキハ賣却決行ノ五日前マテニ所有者タルノ證憑ヲ具ヘテ收稅官吏ニ申出ヘシ
第十五條
滯納處分ヲ執行スルニ當リ滯納者財產ノ差押ヲ免ルル爲故意ニ其ノ財產ヲ讓渡シ讓受人其ノ情ヲ知リ讓受ケタル場合ニ於テ政府ハ其ノ行爲ノ取消ヲ求ムルコトヲ得
第十六條
左ニ揭クル物件ハ之ヲ差押フルコトヲ得ス
一
滯納者及其ノ同居ノ家族ノ生活上缺クヘカラサル衣服、寢具、家具及廚具
二
滯納者及其ノ同居家族ニ必要ナル一箇月間ノ食料及薪炭
三
實印其ノ他職業ニ必要ナル印
四
祭祀禮拜ニ必要ナリト認ムル物及石碑、墓地
五
系譜其ノ他滯納者ノ家ニ必要ナル日記書付類
六
職務上必要ナル制服、祭服、法衣
七
勳章其ノ他名譽ノ章票
八
滯納者及其ノ同居家族ノ修學上必要ナル書籍器具
九
發明又ハ著作ニ係ル物ニシテ未タ公ニセサルモノ
第十七條
左ニ揭クル物件ハ他ニ滯納處分費及稅金ヲ償フニ足ルヘキ物件ヲ提供スルトキハ滯納者ノ選擇ニ依リ差押ヲ爲ササルモノトス
一
農業ニ必要ナル器具、種子、肥料及牛馬竝其ノ飼料
二
職業ニ必要ナル器具及材料
第十八條
差押ノ效力ハ差押物ヨリ生スル天然及法定ノ果實ニ及フモノトス
第十九條
滯納處分ハ裁判上ノ假差押ノ爲ニ其ノ執行ヲ妨ケラルルコトナシ
第二十條
收稅官吏財產ノ差押ヲ爲ストキハ滯納者ノ家屋、倉庫及筐匣ヲ搜索シ又ハ閉鎖シタル戶扉、筐匣ヲ開カシメ若ハ自ラ之ヲ開クコトヲ得滯納者ノ財產ヲ占有スル第三者其ノ財產ノ引渡ヲ拒ミタルトキ亦同シ
第三者ノ家屋、倉庫及筐匣ニ滯納者ノ財產ヲ藏匿スルノ疑アルトキハ收稅官吏ハ前項ニ準シ處分スルコトヲ得
前二項ニ依リ家屋、倉庫又ハ筐匣ヲ搜索スルハ日出ヨリ日沒マテニ限ル
第二十一條
收稅官吏前條ノ處分ヲ爲ストキハ滯納者若ハ前條ニ揭ケタル第三者又ハ其ノ家族雇人ヲシテ立會ハシムヘシ若シ立會フヘキ者不在ナルトキ又ハ立會ニ應セサルトキハ成丁者二人以上又ハ市町村吏員市制町村制ヲ施行セサル地ニ在リテハ區戶長及其ノ附屬吏員若ハ警察官吏ヲ證人トシテ立會ハシムヘシ
第二十二條
通貨、地金銀、有價證券ヲ差押ヘタルトキハ收稅官吏之ヲ封印シテ其ノ地ノ市町村長市制町村制ヲ施行セサル地ニ在リテハ區戶長ニ保管セシムヘシ
前項ニ揭ケサル物件ヲ差押ヘタルトキハ收稅官吏封印シテ之ヲ保管スヘシ但シ不動產又ハ運搬ヲ爲スニ付困難ナル物件ヲ差押ヘタルトキハ其ノ保管ヲ滯納者又ハ第三者ニ命スルコトヲ得
第二十三條
債權ノ差押ヲ爲ストキハ收稅官吏ハ之ヲ債務者ニ通知スヘシ
債務者前項ノ通知ヲ受ケタルトキハ收稅官吏ニ對シテ滯納處分費及稅金額ヲ限トシ自己ノ債務ヲ支拂フノ義務ヲ有ス其ノ義務ノ消滅セサル前ニ滯納者ニ對シテ爲シタル支拂ハ無效トス
第二十四條
差押ヘタル有體動產及不動產ハ公賣ニ付ス公賣ノ手續ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
公賣ニ付スルモ買受望人ナキカ又ハ其ノ價額見積價格ニ達セサルトキハ其ノ見積價格ヲ以テ政府ニ買上ルコトアルヘシ
第二十五條
見積價格僅少ニシテ其ノ公賣費用ヲ償フニ足ラサル物件ハ隨意契約ヲ以テ之ヲ賣却スルコトヲ得
第二十六條
滯納者及賣却ヲ爲ス地方ノ稅務ニ關スル官吏、公吏、雇員ハ直接ト間接トヲ問ハス其ノ賣却物件ヲ買受クルコトヲ得ス
第二十七條
滯納處分費ハ督促手數料、財產ノ差押、保管、運搬及公賣ニ關スル費用、通信費及訴訟費用トス
滯納處分ヲ中止シタル場合ニ於テモ之ニ要シタル處分費用ハ仍之ヲ徵收ス
滯納處分費ハ國稅及第三條ノ債權ニ對シテモ之ヲ先取ス
第二十八條
差押物件ノ賣却代金及差押ヘタル通貨ハ處分費及稅金ニ充テ仍殘餘アルトキハ之ヲ滯納者ニ還付スヘシ
賣却シタル物件質入書入ト爲シタルモノナルトキハ其ノ代金ヨリ先ツ處分費及稅金ヲ控除シ次ニ其ノ負債金額ニ充ルマテヲ債主ニ交付シ仍殘餘アレハ之ヲ滯納者ニ還付スヘシ但シ第三條ニ揭ケタル質入書入ノ物件ニ關シテハ其ノ代金ヨリ先ツ滯納處分費ヲ徵シ次ニ其ノ負債金額ニ充ツルマテヲ債主ニ交付シ次ニ稅金ヲ控除シ仍殘餘アレハ之ヲ滯納者ニ還付スヘシ
第二十九條
會社ニ對シ滯納處分ヲ執行スル場合ニ於テ會社財產ヲ以テ滯納處分費及稅金ニ充テ仍不足アルトキハ無限責任社員ニ就キ之ヲ處分スルコトヲ得
第三十條
滯納處分ニ關スル書類ハ名宛人ノ住居又ハ事務所ニ送達スルモノトス
名宛人ノ住居又ハ事務所ニ於テ書類ノ受取ヲ拒ミタルトキ又ハ住居若ハ事務所不明ナルトキハ通知ノ趣旨ヲ公吿シ五日ヲ過クルトキハ其ノ書類ノ送達アリタルモノト看做ス
第三十一條
直接國稅滯納者ノ納稅義務ハ滯納處分ノ結了ヲ以テ終ル滯納處分ノ執行ヲ止メタルトキ亦同シ
間接國稅ニ付テハ滯納處分結了スルモ滯納處分費及稅金ノ完納ニ至ラサルトキハ納期限後一箇年間ハ隨時其ノ不足額ヲ徵收ス滯納處分ノ執行ヲ止メタルトキ亦同シ
第四章 罰則
第三十二條
滯納者又ハ滯納者ノ財產ヲ占有スル者其ノ財產ヲ藏匿脫漏シ又ハ虛僞ノ契約ヲ爲シタルトキハ一月以上二年以下ノ重禁錮ニ處ス
差押物件ノ保管者其ノ保管ニ係ル物件ヲ藏匿脫漏費消若ハ故意ニ毀損シタルトキ亦同シ
情ヲ知テ前二項ノ所爲ヲ幫助シ又ハ虛僞ノ契約ヲ承諾シタル者ハ各本刑ニ一等ヲ減ス
前各項ノ場合ニ於テ刑法ニ罰條アルモノハ本條ヲ適用セス
第五章 附則
第三十三條
此ノ法律ハ明治三十年七月一日ヨリ施行ス
沖繩縣及東京府管內小笠原島、伊豆七島ニハ當分之ヲ施行セス
市制町村制ヲ施行セサル地方ニ於テ本法中市町村ニ關スル條項ヲ適用スヘキ公共團體ハ勅令ヲ以テ之ヲ指定ス
北海道水產物營業人組合ハ本法ニ於テ市町村ニ準ス
第三十四條
明治二十二年法律第九號國稅徵收法、同年法律第三十二號國稅滯納處分法及同二十三年法律第四號ハ此ノ法律施行ノ日ヨリ廢止ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル国税徴収法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十年三月二十六日
内閣総理大臣兼大蔵大臣 伯爵 松方正義
法律第二十一号
国税徴収法
第一章 総則
第一条
国税ノ徴収ハ関税其ノ他別ニ法律ヲ以テ定ムルモノノ外総テ此ノ法律ニ依ル
第二条
国税ノ徴収ハ総テノ他ノ公課及債権ニ先ツモノトス
第三条
納税人ノ財産上ニ質権又ハ抵当権ヲ有スル者其ノ質権又ハ抵当権ノ設定カ国税ノ納期限ヨリ一箇年前ニ在ルコトヲ公正証書ヲ以テ証明シタルトキハ該物件ノ価額ヲ限トシ其ノ債権ニ対シテ国税ヲ先取セサルモノトス
第四条
納税人国税其ノ他ノ公課ノ滞納ニ因リ滞納処分ヲ受ケ又ハ他ノ債務ニ因リ強制執行若ハ破産ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ於テハ未タ納期ノ到ラサルモ既ニ納税義務ノ確定シタル国税ハ総テ之ヲ徴収スルコトヲ得但シ納税人タル会社カ解散ヲ為シタルトキ亦同シ
納税人他ノ公課ニ付滞納処分ヲ受ケタルニ因リ国税ノ徴収ヲ為ストキハ国税ハ其ノ滞納処分費ニ対シテ先取セサルモノトス
第二章 徴収
第五条
市町村ハ其ノ市町村内ノ地租及勅令ヲ以テ命シタル国税ヲ徴収シ其ノ税金ヲ国庫ニ送付スルノ責任アルモノトス
前項地租徴収ノ費用ハ其ノ市町村ノ負担トシ其ノ他ノ国税ハ其ノ徴収金額ノ百分ノ四ヲ其ノ市町村ニ交付スヘシ
第六条
国税ヲ徴収セムトスルトキハ収税官吏又ハ市町村ハ納税人ニ対シ其ノ納金額、納期日及納付場所ヲ指定シ之ヲ告知スヘシ
第七条
納税人非常ノ災害ニ罹リ政府ニ於テ其ノ被害調査ノ為時日ヲ要スルトキハ其ノ間税金ノ徴収ヲ為ササルコトアルヘシ
第八条
市町村ハ避クヘカラサル災害ニ因リ既収ノ税金ヲ失ヒタルトキハ其ノ事実ヲ証明シ大蔵大臣ニ税金送付ノ責任ノ免除ヲ請フコトヲ得
前項ノ申出アリタルトキハ大蔵大臣ハ其ノ事実ヲ審査シ其ノ免除ヲ為スコトヲ得
第三章 滞納処分
第九条
国税ノ納期限ヲ過キ其ノ税金ヲ完納セサル者アルトキハ収税官吏ハ期限ヲ指定シテ之ヲ督促スヘシ此ノ場合ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ督促手数料ヲ徴収ス
第十条
滞納者督促ヲ受ケ其ノ指定ノ期限内ニ督促手数料及税金ヲ完納セサルトキハ其ノ財産ヲ差押フヘシ
第十一条
収税官吏滞納処分ノ為財産ノ差押ヲ為ストキハ其ノ命令ヲ受ケタル官吏タルノ証票ヲ示スヘシ
第十二条
差押フヘキ財産ノ価格ニシテ滞納処分費及第三条ニ依リ控除スヘキ債務額ニ充テ残余ヲ得ル見込ナキトキハ滞納処分ノ執行ヲ止ム
第十三条
収税官吏滞納者ノ財産ヲ差押フルニ当リ質権ノ設定セラレタル物件アルトキハ質権設定時期ノ如何ニ拘ラス其ノ質権者ハ質物ヲ収税官吏ニ引渡スヘシ
第十四条
収税官吏財産ノ差押ヲ為シタル場合ニ於テ第三者其ノ財産ニ就キ所有権ヲ主張シ取戻ヲ請求セムトスルトキハ売却決行ノ五日前マテニ所有者タルノ証憑ヲ具ヘテ収税官吏ニ申出ヘシ
第十五条
滞納処分ヲ執行スルニ当リ滞納者財産ノ差押ヲ免ルル為故意ニ其ノ財産ヲ譲渡シ譲受人其ノ情ヲ知リ譲受ケタル場合ニ於テ政府ハ其ノ行為ノ取消ヲ求ムルコトヲ得
第十六条
左ニ掲クル物件ハ之ヲ差押フルコトヲ得ス
一
滞納者及其ノ同居ノ家族ノ生活上欠クヘカラサル衣服、寝具、家具及厨具
二
滞納者及其ノ同居家族ニ必要ナル一箇月間ノ食料及薪炭
三
実印其ノ他職業ニ必要ナル印
四
祭祀礼拝ニ必要ナリト認ムル物及石碑、墓地
五
系譜其ノ他滞納者ノ家ニ必要ナル日記書付類
六
職務上必要ナル制服、祭服、法衣
七
勲章其ノ他名誉ノ章票
八
滞納者及其ノ同居家族ノ修学上必要ナル書籍器具
九
発明又ハ著作ニ係ル物ニシテ未タ公ニセサルモノ
第十七条
左ニ掲クル物件ハ他ニ滞納処分費及税金ヲ償フニ足ルヘキ物件ヲ提供スルトキハ滞納者ノ選択ニ依リ差押ヲ為ササルモノトス
一
農業ニ必要ナル器具、種子、肥料及牛馬並其ノ飼料
二
職業ニ必要ナル器具及材料
第十八条
差押ノ効力ハ差押物ヨリ生スル天然及法定ノ果実ニ及フモノトス
第十九条
滞納処分ハ裁判上ノ仮差押ノ為ニ其ノ執行ヲ妨ケラルルコトナシ
第二十条
収税官吏財産ノ差押ヲ為ストキハ滞納者ノ家屋、倉庫及筐匣ヲ捜索シ又ハ閉鎖シタル戸扉、筐匣ヲ開カシメ若ハ自ラ之ヲ開クコトヲ得滞納者ノ財産ヲ占有スル第三者其ノ財産ノ引渡ヲ拒ミタルトキ亦同シ
第三者ノ家屋、倉庫及筐匣ニ滞納者ノ財産ヲ蔵匿スルノ疑アルトキハ収税官吏ハ前項ニ準シ処分スルコトヲ得
前二項ニ依リ家屋、倉庫又ハ筐匣ヲ捜索スルハ日出ヨリ日没マテニ限ル
第二十一条
収税官吏前条ノ処分ヲ為ストキハ滞納者若ハ前条ニ掲ケタル第三者又ハ其ノ家族雇人ヲシテ立会ハシムヘシ若シ立会フヘキ者不在ナルトキ又ハ立会ニ応セサルトキハ成丁者二人以上又ハ市町村吏員市制町村制ヲ施行セサル地ニ在リテハ区戸長及其ノ附属吏員若ハ警察官吏ヲ証人トシテ立会ハシムヘシ
第二十二条
通貨、地金銀、有価証券ヲ差押ヘタルトキハ収税官吏之ヲ封印シテ其ノ地ノ市町村長市制町村制ヲ施行セサル地ニ在リテハ区戸長ニ保管セシムヘシ
前項ニ掲ケサル物件ヲ差押ヘタルトキハ収税官吏封印シテ之ヲ保管スヘシ但シ不動産又ハ運搬ヲ為スニ付困難ナル物件ヲ差押ヘタルトキハ其ノ保管ヲ滞納者又ハ第三者ニ命スルコトヲ得
第二十三条
債権ノ差押ヲ為ストキハ収税官吏ハ之ヲ債務者ニ通知スヘシ
債務者前項ノ通知ヲ受ケタルトキハ収税官吏ニ対シテ滞納処分費及税金額ヲ限トシ自己ノ債務ヲ支払フノ義務ヲ有ス其ノ義務ノ消滅セサル前ニ滞納者ニ対シテ為シタル支払ハ無効トス
第二十四条
差押ヘタル有体動産及不動産ハ公売ニ付ス公売ノ手続ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
公売ニ付スルモ買受望人ナキカ又ハ其ノ価額見積価格ニ達セサルトキハ其ノ見積価格ヲ以テ政府ニ買上ルコトアルヘシ
第二十五条
見積価格僅少ニシテ其ノ公売費用ヲ償フニ足ラサル物件ハ随意契約ヲ以テ之ヲ売却スルコトヲ得
第二十六条
滞納者及売却ヲ為ス地方ノ税務ニ関スル官吏、公吏、雇員ハ直接ト間接トヲ問ハス其ノ売却物件ヲ買受クルコトヲ得ス
第二十七条
滞納処分費ハ督促手数料、財産ノ差押、保管、運搬及公売ニ関スル費用、通信費及訴訟費用トス
滞納処分ヲ中止シタル場合ニ於テモ之ニ要シタル処分費用ハ仍之ヲ徴収ス
滞納処分費ハ国税及第三条ノ債権ニ対シテモ之ヲ先取ス
第二十八条
差押物件ノ売却代金及差押ヘタル通貨ハ処分費及税金ニ充テ仍残余アルトキハ之ヲ滞納者ニ還付スヘシ
売却シタル物件質入書入ト為シタルモノナルトキハ其ノ代金ヨリ先ツ処分費及税金ヲ控除シ次ニ其ノ負債金額ニ充ルマテヲ債主ニ交付シ仍残余アレハ之ヲ滞納者ニ還付スヘシ但シ第三条ニ掲ケタル質入書入ノ物件ニ関シテハ其ノ代金ヨリ先ツ滞納処分費ヲ徴シ次ニ其ノ負債金額ニ充ツルマテヲ債主ニ交付シ次ニ税金ヲ控除シ仍残余アレハ之ヲ滞納者ニ還付スヘシ
第二十九条
会社ニ対シ滞納処分ヲ執行スル場合ニ於テ会社財産ヲ以テ滞納処分費及税金ニ充テ仍不足アルトキハ無限責任社員ニ就キ之ヲ処分スルコトヲ得
第三十条
滞納処分ニ関スル書類ハ名宛人ノ住居又ハ事務所ニ送達スルモノトス
名宛人ノ住居又ハ事務所ニ於テ書類ノ受取ヲ拒ミタルトキ又ハ住居若ハ事務所不明ナルトキハ通知ノ趣旨ヲ公告シ五日ヲ過クルトキハ其ノ書類ノ送達アリタルモノト看做ス
第三十一条
直接国税滞納者ノ納税義務ハ滞納処分ノ結了ヲ以テ終ル滞納処分ノ執行ヲ止メタルトキ亦同シ
間接国税ニ付テハ滞納処分結了スルモ滞納処分費及税金ノ完納ニ至ラサルトキハ納期限後一箇年間ハ随時其ノ不足額ヲ徴収ス滞納処分ノ執行ヲ止メタルトキ亦同シ
第四章 罰則
第三十二条
滞納者又ハ滞納者ノ財産ヲ占有スル者其ノ財産ヲ蔵匿脱漏シ又ハ虚偽ノ契約ヲ為シタルトキハ一月以上二年以下ノ重禁錮ニ処ス
差押物件ノ保管者其ノ保管ニ係ル物件ヲ蔵匿脱漏費消若ハ故意ニ毀損シタルトキ亦同シ
情ヲ知テ前二項ノ所為ヲ幫助シ又ハ虚偽ノ契約ヲ承諾シタル者ハ各本刑ニ一等ヲ減ス
前各項ノ場合ニ於テ刑法ニ罰条アルモノハ本条ヲ適用セス
第五章 附則
第三十三条
此ノ法律ハ明治三十年七月一日ヨリ施行ス
沖縄県及東京府管内小笠原島、伊豆七島ニハ当分之ヲ施行セス
市制町村制ヲ施行セサル地方ニ於テ本法中市町村ニ関スル条項ヲ適用スヘキ公共団体ハ勅令ヲ以テ之ヲ指定ス
北海道水産物営業人組合ハ本法ニ於テ市町村ニ準ス
第三十四条
明治二十二年法律第九号国税徴収法、同年法律第三十二号国税滞納処分法及同二十三年法律第四号ハ此ノ法律施行ノ日ヨリ廃止ス
本文
詳細・沿革