(国税徴収法中改正法律)
法令番号: 法律第三十六號
公布年月日: 明治35年3月29日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル國稅徵收法中改正法律ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十五年三月二十八日
內閣總理大臣 伯爵 桂太郞
大藏大臣 男爵 曾禰荒助
法律第三十六號
國稅徵收法中左ノ通改正ス
第四條ヲ左ノ如ク改ム
第四條ノ一 納稅人左ノ場合ニ該當スルトキハ未タ納期ノ到ラサルモ旣ニ納稅義務ノ確定シタル國稅ハ總テ之ヲ徵收スルコトヲ得
一 國稅ノ滯納ニ因リ滯納處分ヲ受クルトキ
二 府縣稅其ノ他ノ公課ノ滯納ニ因リ滯納處分ヲ受クルトキ
三 强制執行ヲ受クルトキ
四 破產ノ宣吿ヲ受ケタルトキ
五 競賣ノ開始アリタルトキ
六 法人カ解散ヲ爲シタルトキ
七 納稅人脫稅又ハ逋稅ヲ謀ルノ所爲アリト認ムルトキ
第四條ノ二 前條第二號乃至第五號ノ場合ニ於テ徵收スヘキ國稅ハ府縣稅其ノ他ノ公課ノ督促手數料及滯納處分費、强制執行費用、破產手續上ノ費用又ハ競賣費用ニ先チテ之ヲ徵收セス
督促手數料及滯納處分費ハ國稅其ノ他總テノ公課及債權ニ先チテ之ヲ徵收ス但シ第四條ノ一第二號乃至第五號ノ場合ニ於ケル府縣稅其ノ他ノ公課ノ督促手數料及滯納處分費、强制執行費用、破產手續上ノ費用又ハ競賣費用ニ先チテ之ヲ徵收セス
第四條ノ三 相續開始ノ場合ニ於テハ國稅、督促手數料及滯納處分費ハ相續財團又ハ相續人ヨリ之ヲ徵收ス但シ戶主ノ死亡以外ノ原因ニ依リ家督相續ノ開始アリタルトキハ被相續人ヨリモ之ヲ徵收スルコトヲ得
國籍喪失ニ因ル相續人又ハ限定承認ヲ爲シタル相續人ハ相續ニ因リテ得タル財產ヲ限度トシテ國稅、督促手數料及滯納處分費ヲ納付スルノ義務ヲ有ス
第四條ノ四 共有物、共同事業又ハ共同事業ニ因リ生シタル物件ニ係ル國稅、督促手數料及滯納處分費ハ納稅者連帶シテ其ノ義務ヲ負擔ス
第四條ノ五 同年ノ地租、營業稅、所得稅、醬油稅及同酒造年度ノ酒造稅ニシテ旣納ノ稅金過納ナルトキハ爾後ノ納期ニ於テ徵收スヘキ同一稅目ノ稅金ニ充ツルコトヲ得
第四條ノ六 納稅義務者納稅地ニ住所又ハ居所ヲ有セサルトキハ納稅ニ關スル事項ヲ處理セシムル爲納稅管理人ヲ定メ政府ニ申吿スヘシ其ノ納稅管理人ヲ變更シタルトキ亦同シ但シ他ノ法令ニ特別ノ規定アルモノハ各其ノ法令ニ依ル
第四條ノ七 納稅ノ吿知、督促及滯納處分ニ關スル書類ハ名宛人ノ住所又ハ居所ニ送達ス名宛人カ相續財團ニシテ財產管理人アルトキハ財產管理人ノ住所又ハ居所ニ送達ス
納稅管理人アルトキハ納稅ノ吿知及督促ニ關スル書類ニ限リ其ノ住所又ハ居所ニ送達ス
第四條ノ八 書類ノ送達ヲ受クヘキ者其ノ住所又ハ居所ニ於テ書類ノ受取ヲ拒ミタルトキ若ハ其ノ住所、居所共ニ不明ナルトキハ書類ノ要旨ヲ公吿シ公吿ノ初日ヨリ七日ヲ經過シタルトキハ書類ノ送達アリタルモノト看做ス
第九條ヲ第二章中ニ繰上ケ左ノ如ク改ム
第九條 國稅ノ納期限ヲ過キ其ノ稅金ヲ完納セサル者アルトキハ收稅官吏ハ期限ヲ指定シ之ヲ督促スヘシ但シ第四條ノ一ニ依リ國稅ノ徵收ヲ爲ストキハ此ノ限ニ在ラス
前項ニ依リ督促ヲ爲シタル場合ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ督促手數料ヲ徵收ス
第十條 左ノ場合ニ於テハ收稅官吏ハ納稅者ノ財產ヲ差押フヘシ
一 納稅者督促ヲ受ケ其ノ指定ノ期限マテニ督促手數料及稅金ヲ完納セサルトキ
二 第四條ノ一第一號及第七號ノ場合ニ於テ納稅者納期ノ到ラサル國稅納付ノ吿知ヲ受ケ稅金ヲ完納セサルトキ
第十二條、第十七條及第二十九條中「滯納處分費」ヲ「督促手數料、滯納處分費」ニ改ム
第十九條中「假差押」ノ下ニ「又ハ假處分」ヲ加フ
第二十二條 動產及有價證券ノ差押ハ收稅官吏占有シテ之ヲ爲ス但シ差押物件運搬ヲ爲スニ困難ナルトキハ市町村長、滯納者又ハ第三者ヲシテ保管ヲ爲サシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ封印其ノ他ノ方法ヲ以テ差押ヲ明白ニスヘシ
第二十三條ヲ第二十三條ノ一トシ第二項ヲ左ノ如ク改メ次ニ一條ヲ加フ
前項ノ通知ヲ爲シタルトキハ政府ハ督促手數料、滯納處分費及稅金額ヲ限度トシテ債權者ニ代位ス
第二十三條ノ二 不動產又ハ船舶ヲ差押ヘタルトキハ收稅官吏ハ差押ノ登記ヲ所轄登記所ニ囑託スヘシ其ノ抹消又ハ變更ノ登記ニ付テモ亦同シ
差押ノ爲不動產ヲ分割シタルトキハ收稅官吏ハ分割ノ登記ヲ所轄登記所ニ囑託スヘシ其ノ抹消又ハ變更ノ登記ニ付テモ亦同シ
第二十四條 差押ヘタル動產、有價證券、不動產及第二十三條ノ一ニ依リ收稅官吏カ第三債務者ヨリ給付ヲ受ケタル物件ハ通貨ヲ除クノ外公賣ニ付ス公賣ノ手續ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
公賣ニ付スルモ買受人ナキカ又ハ其ノ價格見積價格ニ達セサルトキハ其ノ見積價格ヲ以テ政府ニ買上クルコトヲ得
第二十七條 滯納處分費ハ財產ノ差押、保管、運搬、公賣ニ關スル費用及通信費トス
第二十八條 物件ノ賣却代金、差押ヘタル通貨及第二十三條ノ一ニ依リ第三債務者ヨリ給付ヲ受ケタル通貨ハ督促手數料、滯納處分費及稅金ニ充テ尙殘餘アルトキハ之ヲ滯納者ニ交付ス
賣却シタル物件質權、抵當權ノ目的物タルトキハ其ノ代金ヨリ先ツ督促手數料、滯納處分費及稅金ヲ控除シ次ニ其ノ債務額ニ充ツルマテヲ債權者ニ交付シ尙殘餘アルトキハ之ヲ滯納者ニ交付ス但シ第三條ニ揭ケタル質權、抵當權ノ目的タル物件ニ關シテハ其ノ代金ヨリ先ツ督促手數料、滯納處分費ヲ徵シ次ニ其ノ債務額ニ充ツルマテヲ債權者ニ交付シ次ニ稅金ヲ控除シ尙殘餘アルトキハ之ヲ滯納者ニ交付ス
第三十條 此ノ法律ニ依リ債權者又ハ滯納者ニ交付スヘキ金錢ハ之ヲ供託スルコトヲ得
第三十一條 滯納處分ヲ結了シ若ハ之ヲ中止シタルトキハ納稅義務及督促手數料、滯納處分費納付ノ義務ハ消滅ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル国税徴収法中改正法律ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十五年三月二十八日
内閣総理大臣 伯爵 桂太郎
大蔵大臣 男爵 曽祢荒助
法律第三十六号
国税徴収法中左ノ通改正ス
第四条ヲ左ノ如ク改ム
第四条ノ一 納税人左ノ場合ニ該当スルトキハ未タ納期ノ到ラサルモ既ニ納税義務ノ確定シタル国税ハ総テ之ヲ徴収スルコトヲ得
一 国税ノ滞納ニ因リ滞納処分ヲ受クルトキ
二 府県税其ノ他ノ公課ノ滞納ニ因リ滞納処分ヲ受クルトキ
三 強制執行ヲ受クルトキ
四 破産ノ宣告ヲ受ケタルトキ
五 競売ノ開始アリタルトキ
六 法人カ解散ヲ為シタルトキ
七 納税人脱税又ハ逋税ヲ謀ルノ所為アリト認ムルトキ
第四条ノ二 前条第二号乃至第五号ノ場合ニ於テ徴収スヘキ国税ハ府県税其ノ他ノ公課ノ督促手数料及滞納処分費、強制執行費用、破産手続上ノ費用又ハ競売費用ニ先チテ之ヲ徴収セス
督促手数料及滞納処分費ハ国税其ノ他総テノ公課及債権ニ先チテ之ヲ徴収ス但シ第四条ノ一第二号乃至第五号ノ場合ニ於ケル府県税其ノ他ノ公課ノ督促手数料及滞納処分費、強制執行費用、破産手続上ノ費用又ハ競売費用ニ先チテ之ヲ徴収セス
第四条ノ三 相続開始ノ場合ニ於テハ国税、督促手数料及滞納処分費ハ相続財団又ハ相続人ヨリ之ヲ徴収ス但シ戸主ノ死亡以外ノ原因ニ依リ家督相続ノ開始アリタルトキハ被相続人ヨリモ之ヲ徴収スルコトヲ得
国籍喪失ニ因ル相続人又ハ限定承認ヲ為シタル相続人ハ相続ニ因リテ得タル財産ヲ限度トシテ国税、督促手数料及滞納処分費ヲ納付スルノ義務ヲ有ス
第四条ノ四 共有物、共同事業又ハ共同事業ニ因リ生シタル物件ニ係ル国税、督促手数料及滞納処分費ハ納税者連帯シテ其ノ義務ヲ負担ス
第四条ノ五 同年ノ地租、営業税、所得税、醬油税及同酒造年度ノ酒造税ニシテ既納ノ税金過納ナルトキハ爾後ノ納期ニ於テ徴収スヘキ同一税目ノ税金ニ充ツルコトヲ得
第四条ノ六 納税義務者納税地ニ住所又ハ居所ヲ有セサルトキハ納税ニ関スル事項ヲ処理セシムル為納税管理人ヲ定メ政府ニ申告スヘシ其ノ納税管理人ヲ変更シタルトキ亦同シ但シ他ノ法令ニ特別ノ規定アルモノハ各其ノ法令ニ依ル
第四条ノ七 納税ノ告知、督促及滞納処分ニ関スル書類ハ名宛人ノ住所又ハ居所ニ送達ス名宛人カ相続財団ニシテ財産管理人アルトキハ財産管理人ノ住所又ハ居所ニ送達ス
納税管理人アルトキハ納税ノ告知及督促ニ関スル書類ニ限リ其ノ住所又ハ居所ニ送達ス
第四条ノ八 書類ノ送達ヲ受クヘキ者其ノ住所又ハ居所ニ於テ書類ノ受取ヲ拒ミタルトキ若ハ其ノ住所、居所共ニ不明ナルトキハ書類ノ要旨ヲ公告シ公告ノ初日ヨリ七日ヲ経過シタルトキハ書類ノ送達アリタルモノト看做ス
第九条ヲ第二章中ニ繰上ケ左ノ如ク改ム
第九条 国税ノ納期限ヲ過キ其ノ税金ヲ完納セサル者アルトキハ収税官吏ハ期限ヲ指定シ之ヲ督促スヘシ但シ第四条ノ一ニ依リ国税ノ徴収ヲ為ストキハ此ノ限ニ在ラス
前項ニ依リ督促ヲ為シタル場合ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ督促手数料ヲ徴収ス
第十条 左ノ場合ニ於テハ収税官吏ハ納税者ノ財産ヲ差押フヘシ
一 納税者督促ヲ受ケ其ノ指定ノ期限マテニ督促手数料及税金ヲ完納セサルトキ
二 第四条ノ一第一号及第七号ノ場合ニ於テ納税者納期ノ到ラサル国税納付ノ告知ヲ受ケ税金ヲ完納セサルトキ
第十二条、第十七条及第二十九条中「滞納処分費」ヲ「督促手数料、滞納処分費」ニ改ム
第十九条中「仮差押」ノ下ニ「又ハ仮処分」ヲ加フ
第二十二条 動産及有価証券ノ差押ハ収税官吏占有シテ之ヲ為ス但シ差押物件運搬ヲ為スニ困難ナルトキハ市町村長、滞納者又ハ第三者ヲシテ保管ヲ為サシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ封印其ノ他ノ方法ヲ以テ差押ヲ明白ニスヘシ
第二十三条ヲ第二十三条ノ一トシ第二項ヲ左ノ如ク改メ次ニ一条ヲ加フ
前項ノ通知ヲ為シタルトキハ政府ハ督促手数料、滞納処分費及税金額ヲ限度トシテ債権者ニ代位ス
第二十三条ノ二 不動産又ハ船舶ヲ差押ヘタルトキハ収税官吏ハ差押ノ登記ヲ所轄登記所ニ嘱託スヘシ其ノ抹消又ハ変更ノ登記ニ付テモ亦同シ
差押ノ為不動産ヲ分割シタルトキハ収税官吏ハ分割ノ登記ヲ所轄登記所ニ嘱託スヘシ其ノ抹消又ハ変更ノ登記ニ付テモ亦同シ
第二十四条 差押ヘタル動産、有価証券、不動産及第二十三条ノ一ニ依リ収税官吏カ第三債務者ヨリ給付ヲ受ケタル物件ハ通貨ヲ除クノ外公売ニ付ス公売ノ手続ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
公売ニ付スルモ買受人ナキカ又ハ其ノ価格見積価格ニ達セサルトキハ其ノ見積価格ヲ以テ政府ニ買上クルコトヲ得
第二十七条 滞納処分費ハ財産ノ差押、保管、運搬、公売ニ関スル費用及通信費トス
第二十八条 物件ノ売却代金、差押ヘタル通貨及第二十三条ノ一ニ依リ第三債務者ヨリ給付ヲ受ケタル通貨ハ督促手数料、滞納処分費及税金ニ充テ尚残余アルトキハ之ヲ滞納者ニ交付ス
売却シタル物件質権、抵当権ノ目的物タルトキハ其ノ代金ヨリ先ツ督促手数料、滞納処分費及税金ヲ控除シ次ニ其ノ債務額ニ充ツルマテヲ債権者ニ交付シ尚残余アルトキハ之ヲ滞納者ニ交付ス但シ第三条ニ掲ケタル質権、抵当権ノ目的タル物件ニ関シテハ其ノ代金ヨリ先ツ督促手数料、滞納処分費ヲ徴シ次ニ其ノ債務額ニ充ツルマテヲ債権者ニ交付シ次ニ税金ヲ控除シ尚残余アルトキハ之ヲ滞納者ニ交付ス
第三十条 此ノ法律ニ依リ債権者又ハ滞納者ニ交付スヘキ金銭ハ之ヲ供託スルコトヲ得
第三十一条 滞納処分ヲ結了シ若ハ之ヲ中止シタルトキハ納税義務及督促手数料、滞納処分費納付ノ義務ハ消滅ス