退職積立金及退職手当法
法令番号: 法律第四十二號
公布年月日: 昭和11年6月3日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル退職積立金及退職手當法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十一年六月二日
內閣總理大臣 廣田弘毅
大藏大臣 馬場鍈一
內務大臣 潮惠之輔
遞信大臣 賴母木桂吉
商工大臣 小川鄕太郞
法律第四十二號
退職積立金及退職手當法
第一章 總則
第一條 本法ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル事業ニシテ常時五十人以上ノ勞働者ヲ使用スルモノニ之ヲ適用ス
一 工場法ノ適用ヲ受クル工場
二 鑛業法ノ適用ヲ受クル事業
主務大臣ハ事業ノ種類又ハ規模ヲ限リ本法ノ適用ヲ除外スルコトヲ得
第二條 本法ノ適用ヲ受クル事業ガ規模ノ縮少其ノ他ノ事由ニ因リ本法ノ適用ヲ受ケザルニ至リタル場合ニ於テ事業主其ノ旨ヲ行政官廳ニ屆出ヅル迄ハ前條ノ規定ニ拘ラズ仍本法ヲ適用ス
第三條 第一條第一項各號ノ事業ニシテ本法ノ適用ヲ受ケザルモノノ事業主退職積立金、退職手當積立金又ハ退職手當及之ガ支給ニ充ツル爲ノ準備積立金ニ關スル規程ヲ定メ行政官廳ノ許可ヲ受ケタルトキハ其ノ事業ニ第十一條、第十六條及第十七條中積立ノ率ニ關スル規定竝ニ第三十條第三項ノ規定ヲ除クノ外本法ヲ適用ス
前項ノ規定ニ依リ許可ヲ受ケタル規程ヲ廢止又ハ變更セントスルトキハ行政官廳ノ許可ヲ受クベシ
第四條 營業ノ讓渡其ノ他ノ事由ニ因リ事業ノ承繼アリタル場合ニ於テ勞働者ガ引續キ承繼人ニ使用セラルルトキハ其ノ勞働者ト從前ノ事業主トノ間ニ本法ニ依リテ生ジタル法律關係ハ承繼人ニ移轉ス
前項ノ場合ニ於テ積立金ノ承繼ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條 本法ノ適用ヲ受クル事業ニ使用セラルル勞働者ノ中左ニ揭グル者ニハ本法ヲ適用セズ但シ第一號若ハ第二號ニ該當スル者六月ヲ超エテ引續キ使用セラルルニ至リタルトキ又ハ第三號ニ該當スル者一年ヲ超エテ引續キ使用セラルルニ至リタルトキハ其ノ時ヨリ其ノ者ニ本法ヲ適用ス
一 六月以內ノ期間ヲ定メテ使用セラルル者
二 日日雇入レラルル者
三 季節的事業ニ使用セラルル者
前項第三號ノ季節的事業ノ範圍ハ主務大臣之ヲ定ム
第六條 賃金及標準賃金ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條 行政官廳ハ事業主ニ對シ本法ニ依ル積立金ノ積立若ハ運用、退職積立金ノ支拂又ハ退職手當ノ支給其ノ他本法ノ施行ニ關スル事項ニ付必要ナル檢査ヲ爲シ又ハ事業主ヲシテ報吿ヲ爲サシムルコトヲ得
第八條 本法ニ依リ事業主ノ積立ツベキ退職手當積立金及準備積立金ノ額ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ法人タル事業主ニ在リテハ事業年度、個人タル事業主ニ在リテハ曆年ニ於ケル勞働者ノ其ノ期間中ノ賃金ノ百分ノ七ニ相當スル額以下トス
第九條 本法ノ適用ヲ受クル事業ガ事業ノ廢止其ノ他ノ事由ニ因リ本法ノ適用ヲ受ケザルニ至リタル場合ニ於テ退職積立金支拂又ハ退職手當支給ノ完了ニ至ル迄ハ之ニ必要ナル限度ニ於テ仍本法ヲ適用ス
第十條 本法ハ政府ノ事業ニ之ヲ適用セズ
道府縣及市町村其ノ他之ニ準ズベキモノノ事業ニ關シテハ本法ノ適用ニ付勅令ヲ以テ別段ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第二章 退職積立金
第十一條 事業主ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ勞働者ノ賃金ノ中ヨリ其ノ百分ノ二ニ相當スル金額ヲ各勞働者ニ代リ其ノ名義ヲ以テ退職積立金トシテ積立ツベシ
災害其ノ他已ムヲ得ザル事由アルトキハ事業主ハ行政官廳ノ許可ヲ受ケ前項ノ規定ニ拘ラズ積立ヲ爲サズ又ハ減額シテ積立ツルコトヲ得
第十二條 勞働者退職(解雇及死亡ヲ含ム以下之ニ同ジ)其ノ他ノ事由ニ因リ本法ノ適用ヲ受ケザルニ至リタル場合ニ非ザレバ前條ノ退職積立金ノ支拂ヲ受クルコトヲ得ズ
第十三條 事業主豫メ確實ナル方法及利子ノ定率ヲ定メ行政官廳ノ許可ヲ受ケタル上勞働者ノ同意ヲ得タルトキハ其ノ勞働者ノ退職積立金ヲ運用スルコトヲ得
行政官廳ハ前項ノ許可ヲ爲ス場合ニ於テ必要ト認ムル額ノ國債ヲ供託スベキコトヲ命ズルコトヲ得
行政官廳必要アリト認ムルトキハ第一項ノ許可ヲ取消シ又ハ前項ノ國債ノ增額ヲ命ズルコトヲ得
勞働者ハ事業主ノ運用シタル退職積立金ニ關シ前二項ノ規定ニ依リ供託シタル國債ニ付他ノ債權者ニ先チテ辨濟ヲ受クルノ權利ヲ有ス
前項ノ權利ノ實行ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十四條 前條第一項ノ規定ニ依リ退職積立金ヲ運用シタル場合ニ於テ勞働者退職其ノ他ノ事由ニ因リ本法ノ適用ヲ受ケザルニ至リタルトキハ事業主ハ運用シタル金額ニ前條第一項ノ利子ヲ附シタルモノヲ退職積立金トシテ其ノ勞働者ニ支拂フベシ
第十五條 退職積立金ノ支拂ヲ受クルノ權利ハ之ヲ讓渡シ又ハ差押フルコトヲ得ズ
第三章 退職手當
第十六條 事業主ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ每年一囘以上一定ノ期間末ニ於ケル勞働者ノ其ノ期間中ノ賃金ノ百分ノ二ニ相當スル金額ヲ退職手當積立金トシテ遲滯ナク積立ツベシ
災害其ノ他已ムヲ得ザル事由アルトキハ事業主ハ行政官廳ノ許可ヲ受ケ前項ノ規定ニ拘ラズ積立ヲ爲サズ又ハ減額シテ積立ツルコトヲ得
第十七條 事業主ハ前條ノ退職手當積立金ノ外勅令ノ定ムル所ニ依リ每年一囘以上一定ノ期間末ニ於ケル勞働者ノ其ノ期間中ノ賃金ノ百分ノ三以內ニ於テ行政官廳ノ認可ヲ受ケタル金額ヲ退職手當積立金トシテ遲滯ナク積立ツベシ但シ行政官廳ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十八條 前二條ノ退職手當積立金ハ計算期每ニ其ノ期間中ノ賃金ニ比例シテ勞働者別ニ計算ヲ明ニスベシ但シ前條ノ退職手當積立金ニ限リ事業主豫メ行政官廳ノ許可ヲ受ケタルトキハ勤務年限、勤務狀態其ノ他ニ依リ異ル率ヲ以テ勞働者別ニ計算スルコトヲ得
第十九條 事業主ハ退職手當積立金ヨリ生ジタル利子(第二種所得稅又ハ資本利子稅ヲ課セラレタルトキハ之ヲ差引キタル金額)及第二十一條第一項ノ規定ニ依リ退職手當積立金ヲ運用シタル場合ニ於テハ同條同項ノ利子ヲ退職手當積立金トシテ遲滯ナク積立ツベシ
前項ノ場合ニ於テハ命令ノ定ムル所ニ依リ一定ノ計算期ニ於テ勞働者別ニ計算ヲ明ニスベシ
第二十條 退職手當積立金ノ積立ハ命令ノ定ムル所ニ依リ他ノ財產ト分別シテ左ノ方法ニ依リ之ヲ爲スベシ
一 郵便貯金
二 銀行ヘノ預金
三 金錢信託
四 登錄國債
第二十一條 事業主豫メ確實ナル方法及利子ノ定率ヲ定メ行政官廳ノ許可ヲ受ケタルトキハ退職手當積立金ヲ運用スルコトヲ得
第十三條第二項乃至第五項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十二條 本法ニ依リ退職手當積立金トシテ積立ツル金額ハ所得稅法、營業收益稅法及臨時利得稅法ノ適用ニ付テハ之ヲ總損金又ハ必要ノ經費ト看做ス
道府縣及市町村其ノ他之ニ準ズベキモノハ本法ニ依リ退職手當積立金トシテ積立ツル金額ヲ標準トシテ課稅スルコトヲ得ズ
第二十三條 退職手當積立金ノ拂戾又ハ償還ヲ受クルノ權利ハ之ヲ讓渡シ又ハ差押フルコトヲ得ズ但シ本法ニ依ル退職手當ヲ受クベキ者第二十四條第一項第一號ノ金額又ハ第二十六條第一項ノ特別手當ノ金額ニ付差押フルコトヲ妨ゲズ
第二十四條 勞働者退職其ノ他ノ事由ニ因リ本法ノ適用ヲ受ケザルニ至リタルトキハ事業主ハ左ノ各號ノ金額ヲ退職手當トシテ支給スベシ但シ命令ノ定ムル所ニ依リ特別ノ事由アル場合ニ於テハ其ノ全部又ハ一部ヲ支給セザルコトヲ得
一 第十八條、第十九條第二項及第二十八條第二項ノ規定ニ依リ其ノ勞働者ノ計算ニ屬スル金額
二 第十六條第一項ノ規定ニ依ル積立ノ最後ノ期間後ノ賃金ノ百分ノ二ニ相當スル金額
前項第一號ノ金額ハ退職手當積立金ノ中ヨリ之ヲ支給シ退職手當積立金ヲ以テ之ヲ支給スルコト能ハザルトキハ事業主ノ他ノ財產ヨリ之ヲ支給スベシ
第一項第二號ノ金額ハ退職手當積立金ノ中ヨリ之ヲ支給スルコトヲ得ズ
勞働者死亡シタル場合ニ於テハ退職手當ハ命令ノ定ムル所ニ依リ遺族又ハ勞働者ノ死亡當時其ノ收入ニ依リ生計ヲ維持シタル者ニ之ヲ支給スベシ
第二十五條 前條第一項但書ノ規定ニ依リテ支給スルコトヲ要セザル金額ヲ生ジタルトキハ事業主ハ第二十六條第一項ノ特別手當ニ充ツル爲ノ積立金(特別手當積立金)トシテ之ヲ保留スベシ
第二十六條 事業主事業ノ都合ニ依リ勞働者ヲ解雇シタルトキハ退職手當トシテ第二十四條第一項ノ金額ノ外特別手當積立金ノ存スル限度ニ於テ左ノ各號ノ一ニ達スル迄ノ金額(特別手當)ヲ加算シテ支給スベシ但シ命令ノ定ムル所ニ依リ特別ノ事由アル場合ニ於テハ加算スルコトヲ要セズ
一 勤續一年以上三年未滿ノ者ニ付テハ標準賃金二十日分ニ相當スル金額
二 勤續三年以上ノ者ニ付テハ標準賃金三十五日分ニ相當スル金額
特別手當ヲ受クベキ者二人以上アル場合ニ於テ特別手當積立金ガ前項各號ノ金額ヲ支給スルニ足ラザルトキハ其ノ支給ヲ受クベキ者ノ前項各號ノ金額ニ按分シ特別手當ノ金額ト爲スベシ
第二十四條第二項ノ規定ハ特別手當ノ支給ニ之ヲ準用ス
第二十七條 事業主行政官廳ノ許可ヲ受ケ特別手當積立金ノ限度ヲ定メタルトキハ其ノ限度ヲ超ユル金額ハ第十六條及第十七條ノ規定ニ依リ積立ツベキ金額ニ之ヲ充當スベシ
行政官廳必要アリト認ムルトキハ前項ノ許可ヲ取消シ又ハ變更スルコトヲ得
第二十八條 事業主ハ第十九條第二項ノ計算期ニ於テ退職手當積立金ノ缺損ヲ塡補シ餘剩ヲ積立ツベシ
前項ノ規定ニ依リ餘剩ヲ積立ツル場合ニ於テハ命令ノ定ムル所ニ依リ勞働者別ニ計算ヲ明ニスベシ
第二十九條 本法ニ依ル退職手當ヲ受クルノ權利ハ之ヲ讓渡シ又ハ差押フルコトヲ得ズ
第三十條 事業主退職手當及之ガ支給ニ充ツル爲ノ準備積立金ニ關スル規程ヲ定メ行政官廳ノ許可ヲ受ケタルトキハ第十六條及第十七條ニ規定スル退職手當積立金ノ積立ヲ爲サザルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ許可ヲ受ケタル規程ノ廢止又ハ變更ハ行政官廳ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
事業主ハ第一項ノ規定ニ依リ許可ヲ受ケタル場合ニ於テ勞働者退職其ノ他ノ事由ニ因リ本法ノ適用ヲ受ケザルニ至リタルトキハ少クトモ勤續一年ニ付標準賃金十二日分ニ相當スル退職手當(事業ノ都合ニ依ル解雇ノ場合ニ於テハ勤續一年以上三年未滿ノ者ニ付テハ標準賃金二十日分、勤續三年以上ノ者ニ付テハ標準賃金三十五日分ニ相當スル金額ヲ加算シタルモノ)ヲ支給スベシ此ノ場合ニ於テハ第二十四條第一項但書及第二十六條第一項但書ノ規定ヲ準用ス
第二十條乃至第二十三條及第二十八條第一項ノ規定ハ第一項ノ準備積立金ニ、第二十四條第四項、第二十九條及第三十一條ノ規定ハ第一項ノ退職手當ニ之ヲ準用ス
行政官廳必要アリト認ムルトキハ第一項ノ許可ヲ取消シ又ハ準備積立金ノ增額ヲ命ズルコトヲ得
第四章 退職金審査會
第三十一條 退職積立金ノ支拂又ハ退職手當ノ支給ニ關スル事項ニ付民事訴訟ヲ提起スルニハ退職金審査會ノ審査ヲ經ルコトヲ要ス
前項ノ審査ノ請求ハ時效ノ中斷ニ關シテハ裁判上ノ請求ト看做ス
第三十二條 退職金審査會ノ組織及審査ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五章 罰則
第三十三條 事業主第二十一條第一項(第三十條第四項又ハ第四十二條ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ許可ヲ受ケズシテ退職手當積立金又ハ準備積立金ヲ處分シタルトキハ一年以下ノ禁錮又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
事業主法人ナル場合ニ於テ前項ノ許可ヲ受ケザルニ拘ラズ其ノ理事、取締役其ノ他法人ノ業務ヲ執行スル役員退職手當積立金又ハ準備積立金ヲ處分シタルトキ其ノ者ニ付亦前項ニ同ジ
第三十四條 事業主左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第三條第二項、第十一條第一項、第十四條、第十六條第一項、第十七條、第十八條、第十九條、第二十條(第三十條第四項又ハ第四十二條ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)、第二十四條第一項第四項(第三十條第四項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)、第二十五條、第二十六條第一項、第二十七條第一項、第二十八條(第三十條第四項又ハ第四十二條ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)又ハ第四十一條第二項ノ規定ニ違反シタルトキ
二 第十三條第二項第三項(第二十一條第二項、第三十條第四項又ハ第四十二條ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)、第十七條又ハ第三十條第五項ノ規定ニ依ル命令ニ從ハザルトキ
三 第三條第一項、第三十條第一項又ハ第四十二條ノ規定ニ依リ許可ヲ受ケタル準備積立金ノ積立ヲ爲サザルトキ
四 第三十條第三項ノ規定ニ依リ支給スベキ退職手當トシテ勤續一年ニ付標準賃金十二日分以內ニ相當スル金額(事業ノ都合ニ依ル解雇ノ場合ニ於テハ勤續一年以上三年未滿ノ者ニ付テハ標準賃金二十日分以內、勤續三年以上ノ者ニ付テハ標準賃金三十五日分以內ニ相當スル金額ヲ加算シタルモノ)ヲ支給セザルトキ
第三十五條 第七條ノ規定ニ依ル檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ報吿ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シタル者ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十六條 事業主ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ニシテ其ノ業務ニ關シ本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第三十七條 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ事業主ニ適用スベキ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
附 則
第三十八條 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十九條 第十六條又ハ第十七條ノ規定ニ依ル本法適用後ノ最初ノ積立金ニ付テハ勅令ヲ以テ別段ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第四十條 勞働者第十六條ノ規定ニ依ル本法適用後ノ積立ノ最初ノ期間中ニ退職其ノ他ノ事由ニ因リ本法ノ適用ヲ受ケザルニ至リタル場合ニ於テハ第二十四條第一項第二號ノ金額ハ本法適用後ノ賃金ノ百分ノ二ニ相當スル金額トス
第四十一條 事業主及勞働者ノ出捐ニ係ル組合ガ本法施行ノ際現ニ退職手當ニ關スル規程ヲ有スル場合ニ於テ事業主行政官廳ノ許可ヲ受ケタルトキハ第十一條ニ規定スル退職積立金竝ニ第十六條及第十七條ニ規定スル退職手當積立金ノ積立ヲ爲サザルコトヲ得
前項ノ組合ガ勞働者退職其ノ他ノ事由ニ因リ本法ノ適用ヲ受ケザルニ至リタル場合ニ支給スベキ金額ヲ支給セザルトキハ事業主ハ組合ノ支給セザル金額ニ相當スル金額ヲ勞働者ニ支給スベシ
行政官廳必要アリト認ムルトキハ第一項ノ許可ヲ取消スコトヲ得
第四十二條 事業主本法施行ノ際現ニ使用スル勞働者ノ本法施行前ノ勤務ニ對スル退職手當及之ガ支給ニ充ツル爲ノ準備積立金ニ關スル規程ヲ定メ行政官廳ノ許可ヲ受ケタルトキハ第二十條乃至第二十三條及第二十八條第一項ノ規定ハ準備積立金ニ、第二十九條及第三十一條ノ規定ハ退職手當ニ之ヲ準用ス
第四十三條 本法ノ適用ヲ受クル事業ニ於ケル本法適用前ノ退職手當規程ハ本法ノ適用ニ依リ廢止又ハ變更セラルルコトナシ但シ本法適用後ノ勤務ニ對シ本法ニ依ル退職手當ヲ支給スル場合ニ於テハ從前ノ規程ニ依リ支給スベキ退職手當ハ其ノ差額ヲ支給スルヲ以テ足ル
第四十四條 
國稅徵收法第十六條ニ左ノ一項ヲ加フ
退職積立金及退職手當法ニ依ル退職手當積立金及準備積立金ニ付亦前項ニ同ジ
第四十五條 
郵便貯金法第四條ニ左ノ一號ヲ加フ
五 退職積立金及退職手當法ニ依ル積立金ノ預入金
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル退職積立金及退職手当法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十一年六月二日
内閣総理大臣 広田弘毅
大蔵大臣 馬場鍈一
内務大臣 潮恵之輔
逓信大臣 頼母木桂吉
商工大臣 小川郷太郎
法律第四十二号
退職積立金及退職手当法
第一章 総則
第一条 本法ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル事業ニシテ常時五十人以上ノ労働者ヲ使用スルモノニ之ヲ適用ス
一 工場法ノ適用ヲ受クル工場
二 鉱業法ノ適用ヲ受クル事業
主務大臣ハ事業ノ種類又ハ規模ヲ限リ本法ノ適用ヲ除外スルコトヲ得
第二条 本法ノ適用ヲ受クル事業ガ規模ノ縮少其ノ他ノ事由ニ因リ本法ノ適用ヲ受ケザルニ至リタル場合ニ於テ事業主其ノ旨ヲ行政官庁ニ届出ヅル迄ハ前条ノ規定ニ拘ラズ仍本法ヲ適用ス
第三条 第一条第一項各号ノ事業ニシテ本法ノ適用ヲ受ケザルモノノ事業主退職積立金、退職手当積立金又ハ退職手当及之ガ支給ニ充ツル為ノ準備積立金ニ関スル規程ヲ定メ行政官庁ノ許可ヲ受ケタルトキハ其ノ事業ニ第十一条、第十六条及第十七条中積立ノ率ニ関スル規定並ニ第三十条第三項ノ規定ヲ除クノ外本法ヲ適用ス
前項ノ規定ニ依リ許可ヲ受ケタル規程ヲ廃止又ハ変更セントスルトキハ行政官庁ノ許可ヲ受クベシ
第四条 営業ノ譲渡其ノ他ノ事由ニ因リ事業ノ承継アリタル場合ニ於テ労働者ガ引続キ承継人ニ使用セラルルトキハ其ノ労働者ト従前ノ事業主トノ間ニ本法ニ依リテ生ジタル法律関係ハ承継人ニ移転ス
前項ノ場合ニ於テ積立金ノ承継ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五条 本法ノ適用ヲ受クル事業ニ使用セラルル労働者ノ中左ニ掲グル者ニハ本法ヲ適用セズ但シ第一号若ハ第二号ニ該当スル者六月ヲ超エテ引続キ使用セラルルニ至リタルトキ又ハ第三号ニ該当スル者一年ヲ超エテ引続キ使用セラルルニ至リタルトキハ其ノ時ヨリ其ノ者ニ本法ヲ適用ス
一 六月以内ノ期間ヲ定メテ使用セラルル者
二 日日雇入レラルル者
三 季節的事業ニ使用セラルル者
前項第三号ノ季節的事業ノ範囲ハ主務大臣之ヲ定ム
第六条 賃金及標準賃金ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七条 行政官庁ハ事業主ニ対シ本法ニ依ル積立金ノ積立若ハ運用、退職積立金ノ支払又ハ退職手当ノ支給其ノ他本法ノ施行ニ関スル事項ニ付必要ナル検査ヲ為シ又ハ事業主ヲシテ報告ヲ為サシムルコトヲ得
第八条 本法ニ依リ事業主ノ積立ツベキ退職手当積立金及準備積立金ノ額ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ法人タル事業主ニ在リテハ事業年度、個人タル事業主ニ在リテハ暦年ニ於ケル労働者ノ其ノ期間中ノ賃金ノ百分ノ七ニ相当スル額以下トス
第九条 本法ノ適用ヲ受クル事業ガ事業ノ廃止其ノ他ノ事由ニ因リ本法ノ適用ヲ受ケザルニ至リタル場合ニ於テ退職積立金支払又ハ退職手当支給ノ完了ニ至ル迄ハ之ニ必要ナル限度ニ於テ仍本法ヲ適用ス
第十条 本法ハ政府ノ事業ニ之ヲ適用セズ
道府県及市町村其ノ他之ニ準ズベキモノノ事業ニ関シテハ本法ノ適用ニ付勅令ヲ以テ別段ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第二章 退職積立金
第十一条 事業主ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ労働者ノ賃金ノ中ヨリ其ノ百分ノ二ニ相当スル金額ヲ各労働者ニ代リ其ノ名義ヲ以テ退職積立金トシテ積立ツベシ
災害其ノ他已ムヲ得ザル事由アルトキハ事業主ハ行政官庁ノ許可ヲ受ケ前項ノ規定ニ拘ラズ積立ヲ為サズ又ハ減額シテ積立ツルコトヲ得
第十二条 労働者退職(解雇及死亡ヲ含ム以下之ニ同ジ)其ノ他ノ事由ニ因リ本法ノ適用ヲ受ケザルニ至リタル場合ニ非ザレバ前条ノ退職積立金ノ支払ヲ受クルコトヲ得ズ
第十三条 事業主予メ確実ナル方法及利子ノ定率ヲ定メ行政官庁ノ許可ヲ受ケタル上労働者ノ同意ヲ得タルトキハ其ノ労働者ノ退職積立金ヲ運用スルコトヲ得
行政官庁ハ前項ノ許可ヲ為ス場合ニ於テ必要ト認ムル額ノ国債ヲ供託スベキコトヲ命ズルコトヲ得
行政官庁必要アリト認ムルトキハ第一項ノ許可ヲ取消シ又ハ前項ノ国債ノ増額ヲ命ズルコトヲ得
労働者ハ事業主ノ運用シタル退職積立金ニ関シ前二項ノ規定ニ依リ供託シタル国債ニ付他ノ債権者ニ先チテ弁済ヲ受クルノ権利ヲ有ス
前項ノ権利ノ実行ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十四条 前条第一項ノ規定ニ依リ退職積立金ヲ運用シタル場合ニ於テ労働者退職其ノ他ノ事由ニ因リ本法ノ適用ヲ受ケザルニ至リタルトキハ事業主ハ運用シタル金額ニ前条第一項ノ利子ヲ附シタルモノヲ退職積立金トシテ其ノ労働者ニ支払フベシ
第十五条 退職積立金ノ支払ヲ受クルノ権利ハ之ヲ譲渡シ又ハ差押フルコトヲ得ズ
第三章 退職手当
第十六条 事業主ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ毎年一回以上一定ノ期間末ニ於ケル労働者ノ其ノ期間中ノ賃金ノ百分ノ二ニ相当スル金額ヲ退職手当積立金トシテ遅滞ナク積立ツベシ
災害其ノ他已ムヲ得ザル事由アルトキハ事業主ハ行政官庁ノ許可ヲ受ケ前項ノ規定ニ拘ラズ積立ヲ為サズ又ハ減額シテ積立ツルコトヲ得
第十七条 事業主ハ前条ノ退職手当積立金ノ外勅令ノ定ムル所ニ依リ毎年一回以上一定ノ期間末ニ於ケル労働者ノ其ノ期間中ノ賃金ノ百分ノ三以内ニ於テ行政官庁ノ認可ヲ受ケタル金額ヲ退職手当積立金トシテ遅滞ナク積立ツベシ但シ行政官庁ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十八条 前二条ノ退職手当積立金ハ計算期毎ニ其ノ期間中ノ賃金ニ比例シテ労働者別ニ計算ヲ明ニスベシ但シ前条ノ退職手当積立金ニ限リ事業主予メ行政官庁ノ許可ヲ受ケタルトキハ勤務年限、勤務状態其ノ他ニ依リ異ル率ヲ以テ労働者別ニ計算スルコトヲ得
第十九条 事業主ハ退職手当積立金ヨリ生ジタル利子(第二種所得税又ハ資本利子税ヲ課セラレタルトキハ之ヲ差引キタル金額)及第二十一条第一項ノ規定ニ依リ退職手当積立金ヲ運用シタル場合ニ於テハ同条同項ノ利子ヲ退職手当積立金トシテ遅滞ナク積立ツベシ
前項ノ場合ニ於テハ命令ノ定ムル所ニ依リ一定ノ計算期ニ於テ労働者別ニ計算ヲ明ニスベシ
第二十条 退職手当積立金ノ積立ハ命令ノ定ムル所ニ依リ他ノ財産ト分別シテ左ノ方法ニ依リ之ヲ為スベシ
一 郵便貯金
二 銀行ヘノ預金
三 金銭信託
四 登録国債
第二十一条 事業主予メ確実ナル方法及利子ノ定率ヲ定メ行政官庁ノ許可ヲ受ケタルトキハ退職手当積立金ヲ運用スルコトヲ得
第十三条第二項乃至第五項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十二条 本法ニ依リ退職手当積立金トシテ積立ツル金額ハ所得税法、営業収益税法及臨時利得税法ノ適用ニ付テハ之ヲ総損金又ハ必要ノ経費ト看做ス
道府県及市町村其ノ他之ニ準ズベキモノハ本法ニ依リ退職手当積立金トシテ積立ツル金額ヲ標準トシテ課税スルコトヲ得ズ
第二十三条 退職手当積立金ノ払戻又ハ償還ヲ受クルノ権利ハ之ヲ譲渡シ又ハ差押フルコトヲ得ズ但シ本法ニ依ル退職手当ヲ受クベキ者第二十四条第一項第一号ノ金額又ハ第二十六条第一項ノ特別手当ノ金額ニ付差押フルコトヲ妨ゲズ
第二十四条 労働者退職其ノ他ノ事由ニ因リ本法ノ適用ヲ受ケザルニ至リタルトキハ事業主ハ左ノ各号ノ金額ヲ退職手当トシテ支給スベシ但シ命令ノ定ムル所ニ依リ特別ノ事由アル場合ニ於テハ其ノ全部又ハ一部ヲ支給セザルコトヲ得
一 第十八条、第十九条第二項及第二十八条第二項ノ規定ニ依リ其ノ労働者ノ計算ニ属スル金額
二 第十六条第一項ノ規定ニ依ル積立ノ最後ノ期間後ノ賃金ノ百分ノ二ニ相当スル金額
前項第一号ノ金額ハ退職手当積立金ノ中ヨリ之ヲ支給シ退職手当積立金ヲ以テ之ヲ支給スルコト能ハザルトキハ事業主ノ他ノ財産ヨリ之ヲ支給スベシ
第一項第二号ノ金額ハ退職手当積立金ノ中ヨリ之ヲ支給スルコトヲ得ズ
労働者死亡シタル場合ニ於テハ退職手当ハ命令ノ定ムル所ニ依リ遺族又ハ労働者ノ死亡当時其ノ収入ニ依リ生計ヲ維持シタル者ニ之ヲ支給スベシ
第二十五条 前条第一項但書ノ規定ニ依リテ支給スルコトヲ要セザル金額ヲ生ジタルトキハ事業主ハ第二十六条第一項ノ特別手当ニ充ツル為ノ積立金(特別手当積立金)トシテ之ヲ保留スベシ
第二十六条 事業主事業ノ都合ニ依リ労働者ヲ解雇シタルトキハ退職手当トシテ第二十四条第一項ノ金額ノ外特別手当積立金ノ存スル限度ニ於テ左ノ各号ノ一ニ達スル迄ノ金額(特別手当)ヲ加算シテ支給スベシ但シ命令ノ定ムル所ニ依リ特別ノ事由アル場合ニ於テハ加算スルコトヲ要セズ
一 勤続一年以上三年未満ノ者ニ付テハ標準賃金二十日分ニ相当スル金額
二 勤続三年以上ノ者ニ付テハ標準賃金三十五日分ニ相当スル金額
特別手当ヲ受クベキ者二人以上アル場合ニ於テ特別手当積立金ガ前項各号ノ金額ヲ支給スルニ足ラザルトキハ其ノ支給ヲ受クベキ者ノ前項各号ノ金額ニ按分シ特別手当ノ金額ト為スベシ
第二十四条第二項ノ規定ハ特別手当ノ支給ニ之ヲ準用ス
第二十七条 事業主行政官庁ノ許可ヲ受ケ特別手当積立金ノ限度ヲ定メタルトキハ其ノ限度ヲ超ユル金額ハ第十六条及第十七条ノ規定ニ依リ積立ツベキ金額ニ之ヲ充当スベシ
行政官庁必要アリト認ムルトキハ前項ノ許可ヲ取消シ又ハ変更スルコトヲ得
第二十八条 事業主ハ第十九条第二項ノ計算期ニ於テ退職手当積立金ノ欠損ヲ填補シ余剰ヲ積立ツベシ
前項ノ規定ニ依リ余剰ヲ積立ツル場合ニ於テハ命令ノ定ムル所ニ依リ労働者別ニ計算ヲ明ニスベシ
第二十九条 本法ニ依ル退職手当ヲ受クルノ権利ハ之ヲ譲渡シ又ハ差押フルコトヲ得ズ
第三十条 事業主退職手当及之ガ支給ニ充ツル為ノ準備積立金ニ関スル規程ヲ定メ行政官庁ノ許可ヲ受ケタルトキハ第十六条及第十七条ニ規定スル退職手当積立金ノ積立ヲ為サザルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ許可ヲ受ケタル規程ノ廃止又ハ変更ハ行政官庁ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
事業主ハ第一項ノ規定ニ依リ許可ヲ受ケタル場合ニ於テ労働者退職其ノ他ノ事由ニ因リ本法ノ適用ヲ受ケザルニ至リタルトキハ少クトモ勤続一年ニ付標準賃金十二日分ニ相当スル退職手当(事業ノ都合ニ依ル解雇ノ場合ニ於テハ勤続一年以上三年未満ノ者ニ付テハ標準賃金二十日分、勤続三年以上ノ者ニ付テハ標準賃金三十五日分ニ相当スル金額ヲ加算シタルモノ)ヲ支給スベシ此ノ場合ニ於テハ第二十四条第一項但書及第二十六条第一項但書ノ規定ヲ準用ス
第二十条乃至第二十三条及第二十八条第一項ノ規定ハ第一項ノ準備積立金ニ、第二十四条第四項、第二十九条及第三十一条ノ規定ハ第一項ノ退職手当ニ之ヲ準用ス
行政官庁必要アリト認ムルトキハ第一項ノ許可ヲ取消シ又ハ準備積立金ノ増額ヲ命ズルコトヲ得
第四章 退職金審査会
第三十一条 退職積立金ノ支払又ハ退職手当ノ支給ニ関スル事項ニ付民事訴訟ヲ提起スルニハ退職金審査会ノ審査ヲ経ルコトヲ要ス
前項ノ審査ノ請求ハ時効ノ中断ニ関シテハ裁判上ノ請求ト看做ス
第三十二条 退職金審査会ノ組織及審査ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五章 罰則
第三十三条 事業主第二十一条第一項(第三十条第四項又ハ第四十二条ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ許可ヲ受ケズシテ退職手当積立金又ハ準備積立金ヲ処分シタルトキハ一年以下ノ禁錮又ハ三千円以下ノ罰金ニ処ス
事業主法人ナル場合ニ於テ前項ノ許可ヲ受ケザルニ拘ラズ其ノ理事、取締役其ノ他法人ノ業務ヲ執行スル役員退職手当積立金又ハ準備積立金ヲ処分シタルトキ其ノ者ニ付亦前項ニ同ジ
第三十四条 事業主左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ千円以下ノ罰金ニ処ス
一 第三条第二項、第十一条第一項、第十四条、第十六条第一項、第十七条、第十八条、第十九条、第二十条(第三十条第四項又ハ第四十二条ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)、第二十四条第一項第四項(第三十条第四項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)、第二十五条、第二十六条第一項、第二十七条第一項、第二十八条(第三十条第四項又ハ第四十二条ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)又ハ第四十一条第二項ノ規定ニ違反シタルトキ
二 第十三条第二項第三項(第二十一条第二項、第三十条第四項又ハ第四十二条ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)、第十七条又ハ第三十条第五項ノ規定ニ依ル命令ニ従ハザルトキ
三 第三条第一項、第三十条第一項又ハ第四十二条ノ規定ニ依リ許可ヲ受ケタル準備積立金ノ積立ヲ為サザルトキ
四 第三十条第三項ノ規定ニ依リ支給スベキ退職手当トシテ勤続一年ニ付標準賃金十二日分以内ニ相当スル金額(事業ノ都合ニ依ル解雇ノ場合ニ於テハ勤続一年以上三年未満ノ者ニ付テハ標準賃金二十日分以内、勤続三年以上ノ者ニ付テハ標準賃金三十五日分以内ニ相当スル金額ヲ加算シタルモノ)ヲ支給セザルトキ
第三十五条 第七条ノ規定ニ依ル検査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ報告ヲ為サズ若ハ虚偽ノ報告ヲ為シタル者ハ三百円以下ノ罰金ニ処ス
第三十六条 事業主ハ其ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ニシテ其ノ業務ニ関シ本法若ハ本法ニ基キテ発スル命令又ハ之ニ基キテ為ス処分ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ処罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第三十七条 本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依リ事業主ニ適用スベキ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
附 則
第三十八条 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十九条 第十六条又ハ第十七条ノ規定ニ依ル本法適用後ノ最初ノ積立金ニ付テハ勅令ヲ以テ別段ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第四十条 労働者第十六条ノ規定ニ依ル本法適用後ノ積立ノ最初ノ期間中ニ退職其ノ他ノ事由ニ因リ本法ノ適用ヲ受ケザルニ至リタル場合ニ於テハ第二十四条第一項第二号ノ金額ハ本法適用後ノ賃金ノ百分ノ二ニ相当スル金額トス
第四十一条 事業主及労働者ノ出捐ニ係ル組合ガ本法施行ノ際現ニ退職手当ニ関スル規程ヲ有スル場合ニ於テ事業主行政官庁ノ許可ヲ受ケタルトキハ第十一条ニ規定スル退職積立金並ニ第十六条及第十七条ニ規定スル退職手当積立金ノ積立ヲ為サザルコトヲ得
前項ノ組合ガ労働者退職其ノ他ノ事由ニ因リ本法ノ適用ヲ受ケザルニ至リタル場合ニ支給スベキ金額ヲ支給セザルトキハ事業主ハ組合ノ支給セザル金額ニ相当スル金額ヲ労働者ニ支給スベシ
行政官庁必要アリト認ムルトキハ第一項ノ許可ヲ取消スコトヲ得
第四十二条 事業主本法施行ノ際現ニ使用スル労働者ノ本法施行前ノ勤務ニ対スル退職手当及之ガ支給ニ充ツル為ノ準備積立金ニ関スル規程ヲ定メ行政官庁ノ許可ヲ受ケタルトキハ第二十条乃至第二十三条及第二十八条第一項ノ規定ハ準備積立金ニ、第二十九条及第三十一条ノ規定ハ退職手当ニ之ヲ準用ス
第四十三条 本法ノ適用ヲ受クル事業ニ於ケル本法適用前ノ退職手当規程ハ本法ノ適用ニ依リ廃止又ハ変更セラルルコトナシ但シ本法適用後ノ勤務ニ対シ本法ニ依ル退職手当ヲ支給スル場合ニ於テハ従前ノ規程ニ依リ支給スベキ退職手当ハ其ノ差額ヲ支給スルヲ以テ足ル
第四十四条 
国税徴収法第十六条ニ左ノ一項ヲ加フ
退職積立金及退職手当法ニ依ル退職手当積立金及準備積立金ニ付亦前項ニ同ジ
第四十五条 
郵便貯金法第四条ニ左ノ一号ヲ加フ
五 退職積立金及退職手当法ニ依ル積立金ノ預入金