第十六條 事業主ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ每年一囘以上一定ノ期間末ニ於ケル勞働者ノ其ノ期間中ノ賃金ノ百分ノ二ニ相當スル金額ヲ退職手當積立金トシテ遲滯ナク積立ツベシ
災害其ノ他已ムヲ得ザル事由アルトキハ事業主ハ行政官廳ノ許可ヲ受ケ前項ノ規定ニ拘ラズ積立ヲ爲サズ又ハ減額シテ積立ツルコトヲ得
第十七條 事業主ハ前條ノ退職手當積立金ノ外勅令ノ定ムル所ニ依リ每年一囘以上一定ノ期間末ニ於ケル勞働者ノ其ノ期間中ノ賃金ノ百分ノ三以內ニ於テ行政官廳ノ認可ヲ受ケタル金額ヲ退職手當積立金トシテ遲滯ナク積立ツベシ但シ行政官廳ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十八條 前二條ノ退職手當積立金ハ計算期每ニ其ノ期間中ノ賃金ニ比例シテ勞働者別ニ計算ヲ明ニスベシ但シ前條ノ退職手當積立金ニ限リ事業主豫メ行政官廳ノ許可ヲ受ケタルトキハ勤務年限、勤務狀態其ノ他ニ依リ異ル率ヲ以テ勞働者別ニ計算スルコトヲ得
第十九條 事業主ハ退職手當積立金ヨリ生ジタル利子(第二種所得稅又ハ資本利子稅ヲ課セラレタルトキハ之ヲ差引キタル金額)及第二十一條第一項ノ規定ニ依リ退職手當積立金ヲ運用シタル場合ニ於テハ同條同項ノ利子ヲ退職手當積立金トシテ遲滯ナク積立ツベシ
前項ノ場合ニ於テハ命令ノ定ムル所ニ依リ一定ノ計算期ニ於テ勞働者別ニ計算ヲ明ニスベシ
第二十條 退職手當積立金ノ積立ハ命令ノ定ムル所ニ依リ他ノ財產ト分別シテ左ノ方法ニ依リ之ヲ爲スベシ
第二十一條 事業主豫メ確實ナル方法及利子ノ定率ヲ定メ行政官廳ノ許可ヲ受ケタルトキハ退職手當積立金ヲ運用スルコトヲ得
第十三條第二項乃至第五項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十二條 本法ニ依リ退職手當積立金トシテ積立ツル金額ハ所得稅法、營業收益稅法及臨時利得稅法ノ適用ニ付テハ之ヲ總損金又ハ必要ノ經費ト看做ス
道府縣及市町村其ノ他之ニ準ズベキモノハ本法ニ依リ退職手當積立金トシテ積立ツル金額ヲ標準トシテ課稅スルコトヲ得ズ
第二十三條 退職手當積立金ノ拂戾又ハ償還ヲ受クルノ權利ハ之ヲ讓渡シ又ハ差押フルコトヲ得ズ但シ本法ニ依ル退職手當ヲ受クベキ者第二十四條第一項第一號ノ金額又ハ第二十六條第一項ノ特別手當ノ金額ニ付差押フルコトヲ妨ゲズ
第二十四條 勞働者退職其ノ他ノ事由ニ因リ本法ノ適用ヲ受ケザルニ至リタルトキハ事業主ハ左ノ各號ノ金額ヲ退職手當トシテ支給スベシ但シ命令ノ定ムル所ニ依リ特別ノ事由アル場合ニ於テハ其ノ全部又ハ一部ヲ支給セザルコトヲ得
一 第十八條、第十九條第二項及第二十八條第二項ノ規定ニ依リ其ノ勞働者ノ計算ニ屬スル金額
二 第十六條第一項ノ規定ニ依ル積立ノ最後ノ期間後ノ賃金ノ百分ノ二ニ相當スル金額
前項第一號ノ金額ハ退職手當積立金ノ中ヨリ之ヲ支給シ退職手當積立金ヲ以テ之ヲ支給スルコト能ハザルトキハ事業主ノ他ノ財產ヨリ之ヲ支給スベシ
第一項第二號ノ金額ハ退職手當積立金ノ中ヨリ之ヲ支給スルコトヲ得ズ
勞働者死亡シタル場合ニ於テハ退職手當ハ命令ノ定ムル所ニ依リ遺族又ハ勞働者ノ死亡當時其ノ收入ニ依リ生計ヲ維持シタル者ニ之ヲ支給スベシ
第二十五條 前條第一項但書ノ規定ニ依リテ支給スルコトヲ要セザル金額ヲ生ジタルトキハ事業主ハ第二十六條第一項ノ特別手當ニ充ツル爲ノ積立金(特別手當積立金)トシテ之ヲ保留スベシ
第二十六條 事業主事業ノ都合ニ依リ勞働者ヲ解雇シタルトキハ退職手當トシテ第二十四條第一項ノ金額ノ外特別手當積立金ノ存スル限度ニ於テ左ノ各號ノ一ニ達スル迄ノ金額(特別手當)ヲ加算シテ支給スベシ但シ命令ノ定ムル所ニ依リ特別ノ事由アル場合ニ於テハ加算スルコトヲ要セズ
一 勤續一年以上三年未滿ノ者ニ付テハ標準賃金二十日分ニ相當スル金額
二 勤續三年以上ノ者ニ付テハ標準賃金三十五日分ニ相當スル金額
特別手當ヲ受クベキ者二人以上アル場合ニ於テ特別手當積立金ガ前項各號ノ金額ヲ支給スルニ足ラザルトキハ其ノ支給ヲ受クベキ者ノ前項各號ノ金額ニ按分シ特別手當ノ金額ト爲スベシ
第二十四條第二項ノ規定ハ特別手當ノ支給ニ之ヲ準用ス
第二十七條 事業主行政官廳ノ許可ヲ受ケ特別手當積立金ノ限度ヲ定メタルトキハ其ノ限度ヲ超ユル金額ハ第十六條及第十七條ノ規定ニ依リ積立ツベキ金額ニ之ヲ充當スベシ
行政官廳必要アリト認ムルトキハ前項ノ許可ヲ取消シ又ハ變更スルコトヲ得
第二十八條 事業主ハ第十九條第二項ノ計算期ニ於テ退職手當積立金ノ缺損ヲ塡補シ餘剩ヲ積立ツベシ
前項ノ規定ニ依リ餘剩ヲ積立ツル場合ニ於テハ命令ノ定ムル所ニ依リ勞働者別ニ計算ヲ明ニスベシ
第二十九條 本法ニ依ル退職手當ヲ受クルノ權利ハ之ヲ讓渡シ又ハ差押フルコトヲ得ズ
第三十條 事業主退職手當及之ガ支給ニ充ツル爲ノ準備積立金ニ關スル規程ヲ定メ行政官廳ノ許可ヲ受ケタルトキハ第十六條及第十七條ニ規定スル退職手當積立金ノ積立ヲ爲サザルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ許可ヲ受ケタル規程ノ廢止又ハ變更ハ行政官廳ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
事業主ハ第一項ノ規定ニ依リ許可ヲ受ケタル場合ニ於テ勞働者退職其ノ他ノ事由ニ因リ本法ノ適用ヲ受ケザルニ至リタルトキハ少クトモ勤續一年ニ付標準賃金十二日分ニ相當スル退職手當(事業ノ都合ニ依ル解雇ノ場合ニ於テハ勤續一年以上三年未滿ノ者ニ付テハ標準賃金二十日分、勤續三年以上ノ者ニ付テハ標準賃金三十五日分ニ相當スル金額ヲ加算シタルモノ)ヲ支給スベシ此ノ場合ニ於テハ第二十四條第一項但書及第二十六條第一項但書ノ規定ヲ準用ス
第二十條乃至第二十三條及第二十八條第一項ノ規定ハ第一項ノ準備積立金ニ、第二十四條第四項、第二十九條及第三十一條ノ規定ハ第一項ノ退職手當ニ之ヲ準用ス
行政官廳必要アリト認ムルトキハ第一項ノ許可ヲ取消シ又ハ準備積立金ノ增額ヲ命ズルコトヲ得