国税収納金整理資金に関する法律
法令番号: 法律第36号
公布年月日: 昭和29年3月31日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

現行の租税制度では、過誤納や欠損繰りもどし等により還付する金額が多額に上るが、これらを国税収入として計上し歳入とすることは適当ではなく、実質的な国税収入を表す上でも合理性を欠く。また、還付金を歳出予算から支出することは財政会計制度の制約により円滑な事務処理を妨げ、納税思想に悪影響を及ぼす恐れがある。そこで、国税収入の経理合理化と還付事務の円滑化を図るため、国税収納金整理資金を設置し、国税収納金等を本資金で受け入れ、還付金を即時支払い可能とする。還付金を差し引いた額を歳入に組み入れ、資金の受払い計算書は会計検査院の検査を経て国会に提出する。

参照した発言:
第19回国会 衆議院 大蔵委員会 第15号

審議経過

第19回国会

衆議院
(昭和29年3月3日)
参議院
(昭和29年3月3日)
(昭和29年3月4日)
(昭和29年3月15日)
衆議院
(昭和29年3月23日)
(昭和29年3月24日)
(昭和29年3月25日)
(昭和29年3月26日)
(昭和29年3月27日)
(昭和29年3月27日)
参議院
(昭和29年3月28日)
(昭和29年3月29日)
衆議院
(昭和29年6月15日)
参議院
(昭和29年6月15日)
国税収納金整理資金に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和二十九年三月三十一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第三十六号
国税収納金整理資金に関する法律
(目的)
第一条 この法律は、国税収納金整理資金を設置し、国税収納金等をこの資金に受け入れ、過誤納金の還付金等は、この資金から支払い、その支払つた金額を除いた国税収納金等の額を国税収入その他の収入とすることによつて、国税収入に関する経理の合理化と過誤納金の還付金等の支払に関する事務処理の円滑化を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「国税収納金等」とは、現金(証券を以てする歳入納付に関する法律(大正五年法律第十号)により現金に代えて納付される証券を含む。)をもつて収納された国税、滞納処分費及び第三条の資金からする支払金の返納金をいう。
2 この法律において「過誤納金の還付金等」とは、過誤納に係る国税の還付金その他これに類する国税に関する支払金で政令で定めるもの及び過誤納に係る滞納処分費の還付金をいう。
3 この法律において「還付加算金」とは、法令の規定により過誤納金の還付金等に加算すべき金額をいう。
4 この法律において「償還金」とは、第十条に規定する国税資金支払命令官が振り出した小切手に係る償還金をいう。
(資金の設置)
第三条 この法律の目的を達成するため、国税収納金整理資金(以下「資金」という。)を設置する。
(資金の管理)
第四条 資金は、大蔵大臣が、法令で定めるところに従い、管理する。
(資金への受入)
第五条 国税収納金等は、その収納された時に、すべて資金に受け入れられるものとする。
(資金からの支払及び組入)
第六条 過誤納金の還付金等及び償還金は、この法律で定めるところにより、資金から支払うものとする。
2 資金に属する現金は、前項の規定により支払に充てるべき金額を除き、この法律で定めるところにより、一般会計又は交付税及び譲与税配付金特別会計(以下「特別会計」という。)の歳入に組み入れるものとする。
(資金の経理)
第七条 資金に属する現金の受入、支払及び組入は、歳入歳出外とする。
(国税収納命令官)
第八条 大蔵大臣は、国税収納金等となるべき国税、滞納処分費又は資金からする支払金の返納金(以下「国税等」という。)の徴収に関する事務を所属の職員に委任することができる。
2 大蔵大臣は、国税収納命令官(前項の規定により委任された職員をいう。以下同じ。)に事故がある場合(国税収納命令官が第四項の規定により指定された官職にある者である場合においては、その官職にある者が欠けた場合を含む。)において必要があるときは、所属の職員にその事務を代理させることができる。
3 大蔵大臣は、必要があるときは、所属の職員に国税収納命令官の事務の一部を分掌させることができる。
4 前三項の場合において、大蔵大臣は、大蔵省に置かれた官職を指定することにより、その官職にある者に当該事務を委任し、代理させ、又は分掌させることができる。
5 第二項の規定により国税収納命令官の事務を代理する職員は、代理国税収納命令官といい、第三項の規定により国税収納命令官の事務の一部を分掌する職員は、分任国税収納命令官という。
(国税等の徴収及び収納)
第九条 国税等は、法令で定めるところにより、徴収し、又は収納するものとする。
2 会計法(昭和二十二年法律第三十五号)第五条から第八条までの規定は、国税等の徴収又は収納について準用する。この場合において、これらの規定中「歳入」とあるのは「国税等」と、同法第五条及び第六条中「歳入徴収官」とあるのは「国税収納命令官」と読み替えるものとする。
(国税資金支払命令官)
第十条 大蔵大臣は、資金からする支払のための小切手の振出又は国庫金振替書の交付(以下「支払命令」という。)に関する事務を所属の職員に委任することができる。
2 大蔵大臣は、国税資金支払命令官(前項の規定により委任された職員をいう。以下同じ。)に事故がある場合(国税資金支払命令官が第三項において準用する第八条第四項の規定により指定された官職にある者である場合においては、その官職にある者が欠けた場合を含む。)において必要があるときは、所属の職員にその事務を代理させることができる。
3 第八条第四項の規定は、前二項の場合について準用する。
4 第二項の規定により国税資金支払命令官の事務を代理する職員は、代理国税資金支払命令官という。
(資金の支払計画等)
第十一条 大蔵大臣は、政令で定めるところにより、国税資金支払命令官ごとに、資金の支払計画を定め、これを国税資金支払命令官に示達しなければならない。
2 大蔵大臣は、前項の事務の一部を国税庁長官に行わせることができる。
3 国税資金支払命令官は、第一項の規定により示達された資金の支払計画に定める金額をこえて支払命令をしてはならない。
4 会計法第十六条、第二十一条第一項、第二十六条及び第二十八条の規定は、国税資金支払命令官がする支払命令について準用する。この場合において、同法第二十六条中「歳出の支出」とあるのは「支払命令」と、同法第二十八条中「支出官」とあるのは「国税資金支払命令官」と読み替えるものとする。
(還付加算金等の繰入)
第十二条 大蔵大臣又は特別会計を管理する内閣総理大臣は、政令で定めるところにより、還付加算金及び還付加算金に係る償還金を資金から支払わせるため、必要な金額を、一般会計又は特別会計からの歳出として資金に繰り入れることができる。
(郵政官署への委託払)
第十三条 大蔵大臣は、過誤納金の還付金等、還付加算金及び償還金の支払に関する事務の一部を郵政官署に取り扱わせることができる。
2 前項の規定による支払をする場合においては、大蔵大臣は、郵政官署を指定して、これにその支払を委託するとともに、その旨をその支払を受けるべき者に通知しなければならない。
3 大蔵大臣は、前項に規定する支払の委託(以下「支払委託」という。)に関する事務を所属の職員に委任することができる。
4 大蔵大臣は、国税資金支払委託官(前項の規定により委任された職員をいう。以下同じ。)に事故がある場合(国税資金支払委託官が第五項において準用する第八条第四項の規定により指定された官職にある者である場合においては、その官職にある者が欠けた場合を含む。)において必要があるときは、所属の職員にその事務を代理させることができる。
5 第八条第四項の規定は、前二項の場合について準用する。
6 第四項の規定により国税資金支払委託官の事務を代理する職員は、代理国税資金支払委託官という。
7 大蔵大臣は、政令で定めるところにより、国税資金支払委託官ごとに、支払委託をすることができる金額を定め、これを国税資金支払委託官に示達しなければならない。
8 大蔵大臣は、政令で定めるところにより、前項の事務の一部を所属の職員に行わせることができる。
9 国税資金支払委託官は、第七項の規定により示達された金額をこえて支払委託をしてはならない。
10 大蔵大臣は、第一項の規定による支払に必要な金額を郵政大臣の指定する出納官吏に交付することができる。
11 前各項に規定するものの外、第一項の規定による支払について必要な事項は、政令で定める。
(歳入への組入)
第十四条 大蔵大臣は、毎会計年度、政令で定めるところにより、当該年度の初日から翌年度の四月三十日までの期間内において資金に受け入れた国税収納金等(資金からする支払金の返納金で政令で定めるものを除く。)で当該年度に所属するものの額から当該年度において支払の決定をした過誤納金の還付金等の額を控除した額を、当該年度の一般会計又は特別会計の歳入に組み入れるものとする。
2 前項に規定する国税収納金等の所属する年度の区分については、政令で定める。
3 過誤納金の還付金等又は過誤納金の還付金等に係る償還金が、その支払の決定をした年度の翌年度以後において、時効の完成その他の事由に因り、その支払を要しなくなつたときは、その支払を要しなくなつた額に相当する金額は、政令で定めるところにより、資金から一般会計又は特別会計の歳入に組み入れるものとする。
(帳簿及び報告書等)
第十五条 国税収納命令官、国税資金支払命令官及び国税資金支払委託官は、政令で定めるところにより、帳簿を備え、且つ、報告書及び計算書を作製し、これを大蔵大臣又は会計検査院に送付しなければならない。
2 出納官吏、出納員及び日本銀行は、政令で定めるところにより、資金に属する現金でその出納したものについて、国税収納命令官又は国税資金支払命令官に報告しなければならない。
(国税収納金整理資金受払計算書)
第十六条 大蔵大臣は、毎会計年度、政令で定めるところにより、国税収納金整理資金受払計算書を作製しなければならない。
2 内閣は、前項の国税収納金整理資金受払計算書を、翌年度の十一月三十日までに会計検査院に送付し、その検査を受けなければならない。
3 内閣は、前項の規定により会計検査院の検査を経た国税収納金整理資金受払計算書を、一般会計の歳入歳出決算とともに、国会に提出しなければならない。
(職員の責任)
第十七条 国税資金支払命令官、代理国税資金支払命令官、国税資金支払委託官及び代理国税資金支払委託官並びにこれらの者からその補助者としてその事務の一部を処理することを命ぜられた職員の責任については、これらの職員を予算執行職員等の責任に関する法律(昭和二十五年法律第百七十二号)に規定する予算執行職員とみなし、これらの職員がする支払命令又は支払委託に関する行為を同法に規定する支出等の行為とみなして、同法を適用する。
(政令への委任)
第十八条 この法律に定めるものの外、この法律の施行について必要な事項は、政令で定める。
附 則
1 この法律は、昭和二十九年四月一日から施行する。
2 第二条第一項及び第二項並びに第八条第一項の規定の適用については、当分の間、国税に対する督促手数料及び延滞金は、滞納処分費とみなす。
3 国税収納金等、過誤納金の還付金等又は還付加算金で、この法律による改正前の会計法及びこれに基く命令の規定により昭和二十八年度所属の歳入金又は歳出金となるべきものについては、なお従前の例による。但し、昭和二十八年度の出納の完結の時までに収納され、又は支払われないものについては、この限りでない。
4 国税徴収法(明治三十年法律第二十一号)の一部を次のように改正する。
第三十一条ノ六第一項中「支出シ」を「支払決定ヲ為シ」に改め、「(第三十一条ノ七ニ依リ支払ヲ為ス場合ニ在リテハ政府ニ於テ其ノ支払フ旨ノ通知書ヲ納税義務者ニ発シタル日)」を削る。
第三十一条ノ七を削る。
5 証券を以てする歳入納付に関する法律の一部を次のように改正する。
第一条及び第四条中「租税其ノ他ノ」を「租税及」に改める。
6 所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第三十一条第三項、第三十六条第七項及び第五十四条第一項第二号中「支出」を「支払決定」に改める。
7 法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)の一部を次のように改正する。
第二十六条の四第六項、第二十六条の五第四項、第二十六条の八第四項及び第四十二条第一項第四号中「支出」を「支払決定」に改める。
8 会計法の一部を次のように改正する。
第三条及び第五条から第七条までの規定中「租税その他の」を削る。
9 印紙をもつてする歳入金納付に関する法律(昭和二十三年法律第百四十二号)の一部を次のように改正する。
第二条中「租税その他の」を「租税及び」に改める。
10 大蔵省設置法(昭和二十四年法律第百四十四号)の一部を次のように改正する。
第七条中第十七号を第十八号とし、第十二号から第十六号までを一号ずつ繰り下げ、第十一号の次に次の一号を加える。
十二 国税収納金整理資金を管理すること。
11 関税法(昭和二十九年法律第___号)の一部を次のように改正する。
第十三条第一項中「支払う日」を「支払決定をする日」に改める。
大蔵大臣 小笠原三九郎
内閣総理大臣 吉田茂