農水産業協同組合貯金保険法
法令番号: 法律第五十三号
公布年月日: 昭和48年7月16日
法令の形式: 法律
農水産業協同組合貯金保険法をここに公布する。
御名御璽
昭和四十八年七月十六日
内閣総理大臣 田中角榮
法律第五十三号
農水産業協同組合貯金保険法
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
農水産業協同組合貯金保険機構
第一節
総則(第三条―第八条)
第二節
設立(第九条―第十三条)
第三節
運営委員会(第十四条―第二十三条)
第四節
役員等(第二十四条―第三十三条)
第五節
業務(第三十四条―第三十七条)
第六節
財務及び会計(第三十八条―第四十四条)
第七節
監督(第四十五条・第四十六条)
第八節
補則(第四十七条・第四十八条)
第三章
貯金保険(第四十九条―第六十一条)
第四章
雑則(第六十二条・第六十三条)
第五章
罰則(第六十四条―第七十条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、農水産業協同組合の貯金者等の保護を図るため、農水産業協同組合の貯金等の払戻しにつき保険を行なう制度を確立し、もつて信用秩序の維持に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「農水産業協同組合」とは、次に掲げる者をいう。
一 農業協同組合法(昭和二十二年法律第百三十二号)第十条第一項第二号の事業を行なう農業協同組合
二 水産業協同組合法(昭和二十三年法律第二百四十二号)第十一条第一項第二号の事業を行なう漁業協同組合
三 水産業協同組合法第九十三条第一項第二号の事業を行なう水産加工業協同組合
2 この法律において「貯金等」とは、貯金及び定期積金をいう。
3 この法律において「貯金者等」とは、貯金等に係る債権者をいう。
第二章 農水産業協同組合貯金保険機構
第一節 総則
(法人格)
第三条 農水産業協同組合貯金保険機構(以下「機構」という。)は、法人とする。
(数)
第四条 機構は、一を限り、設立されるものとする。
(資本金)
第五条 機構の資本金は、その設立に際し、政府及び農林中央金庫その他の政府以外の者が出資する額の合計額とする。
2 機構は、必要があるときは、主務大臣の認可を受けて、その資本金を増加することができる。
3 農林中央金庫は、農林中央金庫法(大正十二年法律第四十二号)第十六条の規定にかかわらず、機構に出資することができる。
(名称)
第六条 機構は、その名称中に農水産業協同組合貯金保険機構という文字を用いなければならない。
2 機構でない者は、その名称中に農水産業協同組合貯金保険機構という文字を用いてはならない。
(登記)
第七条 機構は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(民法の準用)
第八条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条及び第五十条の規定は、機構について準用する。
第二節 設立
(発起人)
第九条 機構を設立するには、農業又は水産業及び金融に関して専門的な知識と経験を有する者七人以上が発起人となることを必要とする。
(定款の作成等)
第十条 発起人は、すみやかに、機構の定款を作成し、政府以外の者に対し機構に対する出資を募集しなければならない。
2 前項の定款には、次の事項を記載しなければならない。
一 目的
二 名称
三 事務所の所在地
四 資本金及び出資に関する事項
五 運営委員会に関する事項
六 役員に関する事項
七 業務及びその執行に関する事項
八 財務及び会計に関する事項
九 定款の変更に関する事項
十 公告の方法
(設立の認可)
第十一条 発起人は、前条第一項の募集が終わつたときは、すみやかに、定款を主務大臣に提出して、設立の認可を申請しなければならない。
(事務の引継ぎ)
第十二条 発起人は、前条の認可を受けたときは、遅滞なく、その事務を機構の理事長となるべき者に引き継がなければならない。
2 機構の理事長となるべき者は、前項の規定による事務の引継ぎを受けたときは、遅滞なく、政府及び出資の募集に応じた政府以外の者に対し、出資金の払込みを求めなければならない。
(設立の登記)
第十三条 機構の理事長となるべき者は、前条第二項の規定による出資金の払込みがあつたときは、遅滞なく、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。
2 機構は、設立の登記をすることにより成立する。
第三節 運営委員会
(設置)
第十四条 機構に、運営委員会(以下「委員会」という。)を置く。
(権限)
第十五条 次章に規定するもののほか、次に掲げる事項は、委員会の議決を経なければならない。
一 定款の変更
二 業務方法書の作成及び変更
三 予算及び資金計画
四 決算
五 その他委員会が特に必要と認める事項
(組織)
第十六条 委員会は、委員七人以内並びに機構の理事長及び理事をもつて組織する。
2 委員会に委員長一人を置き、機構の理事長をもつて充てる。
3 委員長は、委員会の会務を総理する。
4 委員会は、あらかじめ、委員及び機構の理事のうちから、委員長に事故がある場合に委員長の職務を代理する者を定めておかなければならない。
(委員の任命)
第十七条 委員は、農業又は水産業及び金融に関して専門的な知識と経験を有する者のうちから、機構の理事長が主務大臣の認可を受けて任命する。
(委員の任期)
第十八条 委員の任期は、一年とする。ただし、委員が欠けた場合における補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 委員は、再任されることができる。
(委員の解任)
第十九条 機構の理事長は、委員が次の各号の一に該当するに至つたときは、主務大臣の認可を受けて、その委員を解任することができる。
一 破産の宣告を受けたとき。
二 禁 錮以上の刑に処せられたとき。
三 心身の故障のため職務を執行することができないと認められるとき。
四 職務上の義務違反があるとき。
(委員の報酬)
第二十条 委員は、報酬を受けない。ただし、旅費その他職務の遂行に伴う実費を受けるものとする。
(議決の方法)
第二十一条 委員会は、委員長又は第十六条第四項に規定する委員長の職務を代理する者のほか、委員及び機構の理事のうち四人以上が出席しなければ、会議を開き、議決をすることができない。
2 委員会の議事は、出席した委員長、委員及び機構の理事の過半数をもつて決する。可否同数のときは、委員長が決する。
3 主務大臣が指名するその職員は、第一項の会議に出席し、意見を述べることができる。
(委員の秘密保持義務)
第二十二条 委員は、その職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。委員がその職を退いた後も、同様とする。
(委員の公務員たる性質)
第二十三条 委員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
第四節 役員等
(役員)
第二十四条 機構に、役員として理事長一人、理事一人及び監事一人を置く。
(役員の職務及び権限)
第二十五条 理事長は、機構を代表し、その業務を総理する。
2 理事は、機構を代表し、理事長の定めるところにより、理事長を補佐して機構の業務を掌理し、理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長が欠員のときはその職務を行なう。
3 監事は、機構の業務を監査する。
(役員の任命)
第二十六条 理事長及び監事は、主務大臣が任命する。
2 理事は、理事長が主務大臣の認可を受けて任命する。
(役員の任期)
第二十七条 理事長及び理事の任期は三年とし、監事の任期は二年とする。
2 役員は、再任されることができる。
(役員の欠格条項)
第二十八条 政府又は地方公共団体の職員(非常勤の者を除く。)は、役員となることができない。
(役員の解任)
第二十九条 主務大臣又は理事長は、それぞれその任命に係る役員が前条の規定に該当するに至つたときは、その役員を解任しなければならない。
2 主務大臣又は理事長は、それぞれその任命に係る役員が第十九条各号の一に該当するに至つたとき、その他役員たるに適しないと認めるときは、第二十六条の規定の例により、その役員を解任することができる。
(役員の兼職禁止)
第三十条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。ただし、主務大臣の承認を受けたときは、この限りでない。
(代表権の制限)
第三十一条 機構と理事長又は理事との利益が相反する事項については、これらの者は、代表権を有しない。この場合には、監事が機構を代表する。
(職員の任命)
第三十二条 機構の職員は、理事長が任命する。
(役員等の秘密保持義務等)
第三十三条 第二十二条及び第二十三条の規定は、役員及び職員について準用する。
第五節 業務
(業務の範囲)
第三十四条 機構は、第一条の目的を達成するため、次の業務を行なう。
一 次章の規定による保険
二 前号に掲げる業務に附帯する業務
(業務の委託)
第三十五条 機構は、主務大臣の認可を受けて、農水産業協同組合その他の金融機関に対し、その業務の一部を委託することができる。
2 農水産業協同組合その他の金融機関は、他の法律の規定にかかわらず、前項の規定による委託を受け、当該業務を行なうことができる。
3 第二十三条の規定は、第一項の規定による委託を受けた農水産業協同組合その他の金融機関の役員又は職員で、当該業務に従事するものについて準用する。
(業務方法書)
第三十六条 機構は、業務開始の際、業務方法書を作成し、主務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の業務方法書には、保険料に関する事項その他主務省令で定める事項を記載しなければならない。
(資料の提出の請求等)
第三十七条 機構は、その業務を行なうため必要があるときは、農水産業協同組合に対し、資料の提出を求めることができる。
2 前項の規定により資料の提出を求められた農水産業協同組合は、遅滞なく、これを提出しなければならない。
3 国又は都道府県は、機構がその業務を行なうため特に必要があると認めて要請をしたときは、機構に対し、資料を交付し、又はこれを閲覧させることができる。
第六節 財務及び会計
(事業年度)
第三十八条 機構の事業年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。
(予算等の認可)
第三十九条 機構は、毎事業年度、予算及び資金計画を作成し、当該事業年度の開始前に、主務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(財務諸表)
第四十条 機構は、毎事業年度、財産目録、貸借対照表及び損益計算書(以下「財務諸表」という。)を作成し、当該事業年度の終了後二月以内に主務大臣に提出しなければならない。
2 機構は、前項の規定により財務諸表を主務大臣に提出するときは、これに予算の区分に従い作成した当該事業年度の決算報告書並びに財務諸表及び決算報告書に関する監事の意見書を添附しなければならない。
(責任準備金の積立て)
第四十一条 機構は、主務省令で定めるところにより、毎事業年度末において、責任準備金を計算し、これを積み立てなければならない。
(借入金)
第四十二条 機構は、保険金の支払に関し必要があると認めるときは、政令で定める金額の範囲内において、主務大臣の認可を受けて、農林中央金庫又は日本銀行から資金の借入れをすることができる。
2 農林中央金庫及び日本銀行は、農林中央金庫にあつては農林中央金庫法第十六条の、日本銀行にあつては日本銀行法(昭和十七年法律第六十七号)第二十七条の規定にかかわらず、機構に対し、前項の資金の貸付けをすることができる。
(余裕金の運用)
第四十三条 機構は、次の方法によるほか、業務上の余裕金を運用してはならない。
一 国債その他主務大臣の指定する有価証券の保有
二 主務大臣の指定する金融機関への預金
三 その他主務省令で定める方法
(主務省令への委任)
第四十四条 この法律に規定するもののほか、機構の財務及び会計に関し必要な事項は、主務省令で定める。
第七節 監督
(監督)
第四十五条 機構は、主務大臣が監督する。
2 主務大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、機構に対し、その業務に関して監督上必要な命令をすることができる。
(報告及び検査)
第四十六条 主務大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、機構若しくは第三十五条第一項の規定による委託を受けた者(以下「受託者」という。)に対しその業務に関し報告をさせ、又はその職員に、機構若しくは受託者の事務所に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。ただし、受託者に対しては、当該受託業務の範囲内に限る。
2 前項の規定により職員が立入検査をする場合には、その身分を示す証明書を携帯し、関係人にこれを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第八節 補則
(定款の変更)
第四十七条 定款の変更は、主務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(解散)
第四十八条 機構は、解散した場合において、その債務を弁済してなお残余財産があるときは、これを各出資者に対し、その出資額を限度として分配するものとする。
2 前項に規定するもののほか、機構の解散については、別に法律で定める。
第三章 貯金保険
(保険関係)
第四十九条 農水産業協同組合が農業協同組合法第十条第一項第二号又は水産業協同組合法第十一条第一項第二号若しくは第九十三条第一項第二号の事業を行なうときは、当該農水産業協同組合が貯金等に係る債務を負うことにより、各貯金者等ごとに一定の金額の範囲内において、当該貯金等の払戻しにつき、機構と当該農水産業協同組合及び貯金者等との間に保険関係が成立するものとする。
2 前項の保険関係においては、貯金等の額を保険金額とし、次に掲げるものを保険事故とする。
一 農水産業協同組合の貯金等の払戻しの停止(以下「第一種保険事故」という。)
二 農水産業協同組合の解散の議決に係る認可(農業協同組合にあつては、農業協同組合法第六十四条第四項に規定する解散の事由に係る認可を含む。以下同じ。)、破産の宣告、解散の命令又は同条第五項若しくは水産業協同組合法第六十八条第四項(同法第九十六条第五項において準用する場合を含む。)に規定する解散の事由の発生(以下「第二種保険事故」という。)
(保険料の納付)
第五十条 農水産業協同組合は、毎年、その年の六月三十日までに、機構に対し、主務省令で定める書類を提出して、保険料を納付しなければならない。
2 機構は、保険事故が発生したときは、前項の規定にかかわらず、定款で定めるところにより、当該保険事故に係る農水産業協同組合の保険料を免除することができる。
(保険料の額)
第五十一条 保険料の額は、各農水産業協同組合につき、当該保険料を納付すべき日の属する年の三月三十一日における貯金等(地方公共団体から受け入れた貯金その他の政令で定める貯金等を除く。)の額の合計額に、機構が委員会の議決を経て定める率(以下「保険料率」という。)を乗じて計算した金額とする。
2 保険料率は、長期的に保険料収入が保険金を償うように、かつ、特定の農水産業協同組合に対し差別的取扱いをしないように定められなければならない。
3 機構は、第四十二条第一項の規定による資金の借入れをした場合において、その借入金をすみやかに返済することが困難であると認められるときは、委員会の議決を経て、保険料率を変更するものとする。
4 機構は、保険料率を定め、又はこれを変更しようとするときは、主務大臣の認可を受けなければならない。
5 機構は、前項の認可を受けたときは、遅滞なく、その認可に係る保険料率を公告しなければならない。
(督促及び滞納処分)
第五十二条 機構は、保険料を滞納する農水産業協同組合がある場合には、督促状により、期限を指定して、これを督促することができる。
2 前項の督促状により指定する期限は、督促状を発する日から起算して十日以上を経過した日でなければならない。
3 機構は、第一項の規定による督促をした場合において、その督促を受けた農水産業協同組合が督促状で指定する期限までに滞納に係る保険料及びこれに係る次条第一項の延滞金を完納しないときは、当該農水産業協同組合の住所又は財産がある市町村(特別区を含む。以下同じ。)に対し、その徴収を請求することができる。
4 市町村は、前項の規定による請求を受けたときは、市町村税の滞納処分の例によつて、これを処分することができる。この場合においては、機構は、徴収金額の百分の四に相当する金額を当該市町村に交付しなければならない。
5 市町村が、第三項の規定による請求を受けた日から三十日以内にその処分に着手せず、又は九十日以内にこれを結了しないときは、機構は、主務大臣の認可を受け、国税滞納処分の例によつて、これを処分することができる。
(延滞金)
第五十三条 機構は、前条第一項の規定による督促をしたときは、保険料の額につき年十四・五パーセントの割合で、納付期限の翌日から保険料完納又は財産差押えの日の前日までの日数によつて計算した延滞金を徴収する。
2 前項の場合において、保険料の額の一部につき納付があつたときは、その納付の日以後の期間に係る延滞金の計算の基礎となる保険料の額は、その納付のあつた保険料の額を控除した額による。
(先取特権)
第五十四条 第五十二条第四項及び第五項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。
(保険金の支払)
第五十五条 機構は、保険事故が発生したときは、当該保険事故に係る貯金者等に対し、その請求に基づいて、保険金の支払をするものとする。ただし、第一種保険事故については、機構が第五十八条第一項の規定により保険金の支払をする旨の決定をすることを要件とする。
2 前項に規定する保険事故には、当該保険事故が発生した農水産業協同組合につき、その発生した後(同項ただし書の規定が適用される場合には、機構が同項ただし書の決定をした後)に当該保険事故に関連して他の保険事故が発生した場合における当該他の保険事故(以下「関連保険事故」という。)を含まないものとする。
3 第一項の請求は、第五十九条第一項又は第三項の規定により公告した支払期間内でなければ、することができない。ただし、その支払期間内に請求しなかつたことにつき災害その他やむを得ない事情があると機構が認めるときは、この限りでない。
(保険金の額)
第五十六条 保険金の額は、一の保険事故が発生した農水産業協同組合の各貯金者等につき、その発生した日において現にその者が当該農水産業協同組合に対して有する貯金等(地方公共団体から受け入れた貯金その他の政令で定める貯金等を除く。)に係る債権のうち元本の額(その額が同一人について二以上ある場合には、その合計額)で、前条第一項の請求があつたものに相当する金額とする。
2 保険事故に係る貯金者等が次の各号に該当する場合におけるその者の保険金の額は、前項の規定にかかわらず、同項の規定による金額から当該各号に掲げる額を控除した金額に相当する金額とする。
一 当該農水産業協同組合に対して債務を負つているとき。 その債務の額
二 当該農水産業協同組合に対して第三者のためにその貯金等の全部又は一部を担保に提供しているとき。 その担保に提供している貯金等の額
3 前二項の規定による保険金の額が政令で定める金額をこえるときは、その金額を当該保険金の額とする。
(保険事故の通知)
第五十七条 農水産業協同組合は、当該農水産業協同組合に係る保険事故が発生したときは、直ちに、その旨を機構に通知しなければならない。
2 機構は、前項の規定による通知を受けた場合において、当該通知に係る保険事故が第一種保険事故であるときは、直ちに、その旨を主務大臣(当該通知が都道府県知事の監督に係る農水産業協同組合に関するものであるときは、主務大臣及び当該都道府県知事)に通知しなければならない。
3 主務大臣又は都道府県知事は、次に掲げる場合には、直ちに、その旨を機構に通知しなければならない。
一 その監督に係る農水産業協同組合につき、解散の議決に係る認可をし、又は解散の命令をしたとき。
二 その監督に係る農水産業協同組合から農業協同組合法第六十四条第五項後段又は水産業協同組合法第六十八条第五項(同法第九十六条第五項において準用する場合を含む。)の規定による届出を受けたとき。
三 裁判所から破産法(大正十一年法律第七十一号)第百二十五条第一項の規定による通知を受けたとき。
(支払の決定)
第五十八条 機構は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に掲げる日から一月以内に、委員会の議決を経て、当該各号の保険事故につき保険金の支払をするかどうかを決定しなければならない。
一 第一種保険事故に関して前条第一項の規定による通知があつたとき。 その通知があつた日
二 前号に掲げる場合のほか、第一種保険事故が発生したことを機構が知つたとき。 その知つた日
2 機構は、前項の規定による決定をしたときは、直ちに、その決定に係る事項を主務大臣(当該決定が都道府県知事の監督に係る農水産業協同組合に関するものであるときは、主務大臣及び当該都道府県知事)に報告しなければならない。
(支払の公告等)
第五十九条 機構は、次に掲げる場合には、すみやかに、委員会の議決を経て保険金の支払期間、支払場所その他政令で定める事項を定め、これを公告しなければならない。
一 前条第一項の規定により第一種保険事故に係る保険金の支払をする旨の決定をしたとき。
二 第二種保険事故(関連保険事故を除く。以下同じ。)に関して第五十七条第一項又は第三項の規定による通知があつたとき。
三 前号に掲げる場合のほか、第二種保険事故が発生したことを機構が知つたとき。
2 機構は、前項の規定による公告をした後に当該農水産業協同組合が破産の宣告を受け、又は当該農水産業協同組合について和議開始の決定があつたときは、政令で定めるところにより、その公告した支払期間を変更することができる。
3 機構は、前項の規定により支払期間を変更したときは、遅滞なく、その変更に係る事項を公告しなければならない。
4 前条第二項の規定は、第一項に規定する事項を定めた場合及び第二項の規定により支払期間を変更した場合について準用する。
(債権の取得)
第六十条 機構は、保険金の支払をしたときは、その支払金額に応じ、貯金者等が農水産業協同組合に対して有する当該貯金等に係る債権(利息その他これに準ずるもので政令で定めるものを除く。)を取得する。
(政令への委任)
第六十一条 この法律に規定するもののほか、この章の規定による保険に関し必要な事項は、政令で定める。
第四章 雑則
(農水産業協同組合に対する命令)
第六十二条 主務大臣又は都道府県知事は、農水産業協同組合が貯金等の払戻しの停止をし、又は停止をするおそれがあると認められる場合において、機構の業務の適正かつ円滑な実施を図るため特に必要があると認めるときは、当該農水産業協同組合に対し、その事態に対処してとるべき措置に関し必要な命令をすることができる。
(主務大臣)
第六十三条 この法律における主務大臣は、農林大臣及び大蔵大臣とする。
第五章 罰則
第六十四条 第二十二条(第三十三条において準用する場合を含む。)の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
第六十五条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした機構又は受託者の役員又は職員は、五万円以下の罰金に処する。
一 第四十六条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。
二 第五十八条第二項(第五十九条第四項において準用する場合を含む。)の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。
第六十六条 第三十七条第一項の規定による資料を提出せず、又は虚偽の資料を提出した者は、三万円以下の罰金に処する。
第六十七条 法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者が、その法人の業務に関し、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して同条の刑を科する。
第六十八条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした機構の役員は、三万円以下の過料に処する。
一 この法律により主務大臣の認可を受けなければならない場合において、その認可を受けなかつたとき。
二 第七条第一項の規定による政令に違反して登記することを怠つたとき。
三 第三十四条に規定する業務以外の業務を行なつたとき。
四 第四十条に規定する書類を提出せず、又は虚偽の書類を提出したとき。
五 第四十一条の規定に違反して責任準備金を計算せず、又はこれを積み立てなかつたとき。
六 第四十三条の規定に違反して業務上の余裕金を運用したとき。
七 第四十五条第二項の規定による主務大臣の命令に違反したとき。
第六十九条 第五十七条第一項の規定による通知をしなかつた場合には、その違反行為をした農水産業協同組合の役員は、三万円以下の過料に処する。
第七十条 第六条第二項の規定に違反した者及び第六十二条の規定による命令に従わなかつた農水産業協同組合の役員は、一万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。
(経過規定)
第二条 機構の成立の際現に保険事故が発生している農水産業協同組合その他これに準ずるものとして政令で定める農水産業協同組合については、この法律の規定は、適用しない。
2 前項に規定する農水産業協同組合のうち、機構の成立の後にその事業及び財産の状況が再び正常になつたと認められるもので、主務大臣が指定するものについては、その指定の日から、この法律の規定を適用する。
第三条 この法律の施行の際現にその名称中に農水産業協同組合貯金保険機構という文字を用いている者については、第六条第二項の規定は、この法律の施行後六月間は、適用しない。
第四条 機構の最初の事業年度は、第三十八条の規定にかかわらず、その成立の日に始まり、翌年三月三十一日に終わるものとする。
第五条 機構の最初の事業年度の予算及び資金計画については、第三十九条中「当該事業年度の開始前に」とあるのは、「機構の成立後遅滞なく」とする。
第六条 農水産業協同組合は、第五十条第一項の規定にかかわらず、機構の成立後一月以内に、機構の成立の日の属する年において納付すべき保険料を納付しなければならない。
2 前項の保険料の額については、第五十一条第一項中「当該保険料を納付すべき日の属する年」とあるのは「機構の成立の日の属する年(その成立の日が一月一日から三月三十一日までの間であるときは、その年の前年)」と、「計算した金額」とあるのは「計算した金額を十二で除し、これに機構の成立の日の属する月以後同日の属する年の十二月までの月数を乗じて得た金額」とする。
(関係法律の一部改正)
第七条 所得税法(昭和四十年法律第三十三号)の一部を次のように改正する。
別表第一第一号の表中農業信用保険協会の項の次に次のように加える。
農水産業協同組合貯金保険機構
農水産業協同組合貯金保険法(昭和四十八年法律第五十三号)
第八条 法人税法(昭和四十年法律第三十四号)の一部を次のように改正する。
別表第二第一号の表中農業信用保険協会の項の次に次のように加える。
農水産業協同組合貯金保険機構
農水産業協同組合貯金保険法(昭和四十八年法律第五十三号)
第九条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第七十二条の五第一項第四号中「預金保険機構」の下に「、農水産業協同組合貯金保険機構」を加える。
第十条 大蔵省設置法(昭和二十四年法律第百四十四号)の一部を次のように改正する。
第四条第四十号の二及び第十二条第一項第六号の八中「預金保険機構」の下に「及び農水産業協同組合貯金保険機構」を加える。
第十一条 農林省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。
第八条第一項第八号の次に次の一号を加える。
八の二 農水産業協同組合貯金保険機構の指導監督を行なうこと。
大蔵大臣 愛知揆一
農林大臣 櫻内義雄
内閣総理大臣 田中角榮
農水産業協同組合貯金保険法をここに公布する。
御名御璽
昭和四十八年七月十六日
内閣総理大臣 田中角栄
法律第五十三号
農水産業協同組合貯金保険法
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
農水産業協同組合貯金保険機構
第一節
総則(第三条―第八条)
第二節
設立(第九条―第十三条)
第三節
運営委員会(第十四条―第二十三条)
第四節
役員等(第二十四条―第三十三条)
第五節
業務(第三十四条―第三十七条)
第六節
財務及び会計(第三十八条―第四十四条)
第七節
監督(第四十五条・第四十六条)
第八節
補則(第四十七条・第四十八条)
第三章
貯金保険(第四十九条―第六十一条)
第四章
雑則(第六十二条・第六十三条)
第五章
罰則(第六十四条―第七十条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、農水産業協同組合の貯金者等の保護を図るため、農水産業協同組合の貯金等の払戻しにつき保険を行なう制度を確立し、もつて信用秩序の維持に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「農水産業協同組合」とは、次に掲げる者をいう。
一 農業協同組合法(昭和二十二年法律第百三十二号)第十条第一項第二号の事業を行なう農業協同組合
二 水産業協同組合法(昭和二十三年法律第二百四十二号)第十一条第一項第二号の事業を行なう漁業協同組合
三 水産業協同組合法第九十三条第一項第二号の事業を行なう水産加工業協同組合
2 この法律において「貯金等」とは、貯金及び定期積金をいう。
3 この法律において「貯金者等」とは、貯金等に係る債権者をいう。
第二章 農水産業協同組合貯金保険機構
第一節 総則
(法人格)
第三条 農水産業協同組合貯金保険機構(以下「機構」という。)は、法人とする。
(数)
第四条 機構は、一を限り、設立されるものとする。
(資本金)
第五条 機構の資本金は、その設立に際し、政府及び農林中央金庫その他の政府以外の者が出資する額の合計額とする。
2 機構は、必要があるときは、主務大臣の認可を受けて、その資本金を増加することができる。
3 農林中央金庫は、農林中央金庫法(大正十二年法律第四十二号)第十六条の規定にかかわらず、機構に出資することができる。
(名称)
第六条 機構は、その名称中に農水産業協同組合貯金保険機構という文字を用いなければならない。
2 機構でない者は、その名称中に農水産業協同組合貯金保険機構という文字を用いてはならない。
(登記)
第七条 機構は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(民法の準用)
第八条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条及び第五十条の規定は、機構について準用する。
第二節 設立
(発起人)
第九条 機構を設立するには、農業又は水産業及び金融に関して専門的な知識と経験を有する者七人以上が発起人となることを必要とする。
(定款の作成等)
第十条 発起人は、すみやかに、機構の定款を作成し、政府以外の者に対し機構に対する出資を募集しなければならない。
2 前項の定款には、次の事項を記載しなければならない。
一 目的
二 名称
三 事務所の所在地
四 資本金及び出資に関する事項
五 運営委員会に関する事項
六 役員に関する事項
七 業務及びその執行に関する事項
八 財務及び会計に関する事項
九 定款の変更に関する事項
十 公告の方法
(設立の認可)
第十一条 発起人は、前条第一項の募集が終わつたときは、すみやかに、定款を主務大臣に提出して、設立の認可を申請しなければならない。
(事務の引継ぎ)
第十二条 発起人は、前条の認可を受けたときは、遅滞なく、その事務を機構の理事長となるべき者に引き継がなければならない。
2 機構の理事長となるべき者は、前項の規定による事務の引継ぎを受けたときは、遅滞なく、政府及び出資の募集に応じた政府以外の者に対し、出資金の払込みを求めなければならない。
(設立の登記)
第十三条 機構の理事長となるべき者は、前条第二項の規定による出資金の払込みがあつたときは、遅滞なく、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。
2 機構は、設立の登記をすることにより成立する。
第三節 運営委員会
(設置)
第十四条 機構に、運営委員会(以下「委員会」という。)を置く。
(権限)
第十五条 次章に規定するもののほか、次に掲げる事項は、委員会の議決を経なければならない。
一 定款の変更
二 業務方法書の作成及び変更
三 予算及び資金計画
四 決算
五 その他委員会が特に必要と認める事項
(組織)
第十六条 委員会は、委員七人以内並びに機構の理事長及び理事をもつて組織する。
2 委員会に委員長一人を置き、機構の理事長をもつて充てる。
3 委員長は、委員会の会務を総理する。
4 委員会は、あらかじめ、委員及び機構の理事のうちから、委員長に事故がある場合に委員長の職務を代理する者を定めておかなければならない。
(委員の任命)
第十七条 委員は、農業又は水産業及び金融に関して専門的な知識と経験を有する者のうちから、機構の理事長が主務大臣の認可を受けて任命する。
(委員の任期)
第十八条 委員の任期は、一年とする。ただし、委員が欠けた場合における補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 委員は、再任されることができる。
(委員の解任)
第十九条 機構の理事長は、委員が次の各号の一に該当するに至つたときは、主務大臣の認可を受けて、その委員を解任することができる。
一 破産の宣告を受けたとき。
二 禁 錮以上の刑に処せられたとき。
三 心身の故障のため職務を執行することができないと認められるとき。
四 職務上の義務違反があるとき。
(委員の報酬)
第二十条 委員は、報酬を受けない。ただし、旅費その他職務の遂行に伴う実費を受けるものとする。
(議決の方法)
第二十一条 委員会は、委員長又は第十六条第四項に規定する委員長の職務を代理する者のほか、委員及び機構の理事のうち四人以上が出席しなければ、会議を開き、議決をすることができない。
2 委員会の議事は、出席した委員長、委員及び機構の理事の過半数をもつて決する。可否同数のときは、委員長が決する。
3 主務大臣が指名するその職員は、第一項の会議に出席し、意見を述べることができる。
(委員の秘密保持義務)
第二十二条 委員は、その職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。委員がその職を退いた後も、同様とする。
(委員の公務員たる性質)
第二十三条 委員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
第四節 役員等
(役員)
第二十四条 機構に、役員として理事長一人、理事一人及び監事一人を置く。
(役員の職務及び権限)
第二十五条 理事長は、機構を代表し、その業務を総理する。
2 理事は、機構を代表し、理事長の定めるところにより、理事長を補佐して機構の業務を掌理し、理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長が欠員のときはその職務を行なう。
3 監事は、機構の業務を監査する。
(役員の任命)
第二十六条 理事長及び監事は、主務大臣が任命する。
2 理事は、理事長が主務大臣の認可を受けて任命する。
(役員の任期)
第二十七条 理事長及び理事の任期は三年とし、監事の任期は二年とする。
2 役員は、再任されることができる。
(役員の欠格条項)
第二十八条 政府又は地方公共団体の職員(非常勤の者を除く。)は、役員となることができない。
(役員の解任)
第二十九条 主務大臣又は理事長は、それぞれその任命に係る役員が前条の規定に該当するに至つたときは、その役員を解任しなければならない。
2 主務大臣又は理事長は、それぞれその任命に係る役員が第十九条各号の一に該当するに至つたとき、その他役員たるに適しないと認めるときは、第二十六条の規定の例により、その役員を解任することができる。
(役員の兼職禁止)
第三十条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。ただし、主務大臣の承認を受けたときは、この限りでない。
(代表権の制限)
第三十一条 機構と理事長又は理事との利益が相反する事項については、これらの者は、代表権を有しない。この場合には、監事が機構を代表する。
(職員の任命)
第三十二条 機構の職員は、理事長が任命する。
(役員等の秘密保持義務等)
第三十三条 第二十二条及び第二十三条の規定は、役員及び職員について準用する。
第五節 業務
(業務の範囲)
第三十四条 機構は、第一条の目的を達成するため、次の業務を行なう。
一 次章の規定による保険
二 前号に掲げる業務に附帯する業務
(業務の委託)
第三十五条 機構は、主務大臣の認可を受けて、農水産業協同組合その他の金融機関に対し、その業務の一部を委託することができる。
2 農水産業協同組合その他の金融機関は、他の法律の規定にかかわらず、前項の規定による委託を受け、当該業務を行なうことができる。
3 第二十三条の規定は、第一項の規定による委託を受けた農水産業協同組合その他の金融機関の役員又は職員で、当該業務に従事するものについて準用する。
(業務方法書)
第三十六条 機構は、業務開始の際、業務方法書を作成し、主務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の業務方法書には、保険料に関する事項その他主務省令で定める事項を記載しなければならない。
(資料の提出の請求等)
第三十七条 機構は、その業務を行なうため必要があるときは、農水産業協同組合に対し、資料の提出を求めることができる。
2 前項の規定により資料の提出を求められた農水産業協同組合は、遅滞なく、これを提出しなければならない。
3 国又は都道府県は、機構がその業務を行なうため特に必要があると認めて要請をしたときは、機構に対し、資料を交付し、又はこれを閲覧させることができる。
第六節 財務及び会計
(事業年度)
第三十八条 機構の事業年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。
(予算等の認可)
第三十九条 機構は、毎事業年度、予算及び資金計画を作成し、当該事業年度の開始前に、主務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(財務諸表)
第四十条 機構は、毎事業年度、財産目録、貸借対照表及び損益計算書(以下「財務諸表」という。)を作成し、当該事業年度の終了後二月以内に主務大臣に提出しなければならない。
2 機構は、前項の規定により財務諸表を主務大臣に提出するときは、これに予算の区分に従い作成した当該事業年度の決算報告書並びに財務諸表及び決算報告書に関する監事の意見書を添附しなければならない。
(責任準備金の積立て)
第四十一条 機構は、主務省令で定めるところにより、毎事業年度末において、責任準備金を計算し、これを積み立てなければならない。
(借入金)
第四十二条 機構は、保険金の支払に関し必要があると認めるときは、政令で定める金額の範囲内において、主務大臣の認可を受けて、農林中央金庫又は日本銀行から資金の借入れをすることができる。
2 農林中央金庫及び日本銀行は、農林中央金庫にあつては農林中央金庫法第十六条の、日本銀行にあつては日本銀行法(昭和十七年法律第六十七号)第二十七条の規定にかかわらず、機構に対し、前項の資金の貸付けをすることができる。
(余裕金の運用)
第四十三条 機構は、次の方法によるほか、業務上の余裕金を運用してはならない。
一 国債その他主務大臣の指定する有価証券の保有
二 主務大臣の指定する金融機関への預金
三 その他主務省令で定める方法
(主務省令への委任)
第四十四条 この法律に規定するもののほか、機構の財務及び会計に関し必要な事項は、主務省令で定める。
第七節 監督
(監督)
第四十五条 機構は、主務大臣が監督する。
2 主務大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、機構に対し、その業務に関して監督上必要な命令をすることができる。
(報告及び検査)
第四十六条 主務大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、機構若しくは第三十五条第一項の規定による委託を受けた者(以下「受託者」という。)に対しその業務に関し報告をさせ、又はその職員に、機構若しくは受託者の事務所に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。ただし、受託者に対しては、当該受託業務の範囲内に限る。
2 前項の規定により職員が立入検査をする場合には、その身分を示す証明書を携帯し、関係人にこれを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第八節 補則
(定款の変更)
第四十七条 定款の変更は、主務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(解散)
第四十八条 機構は、解散した場合において、その債務を弁済してなお残余財産があるときは、これを各出資者に対し、その出資額を限度として分配するものとする。
2 前項に規定するもののほか、機構の解散については、別に法律で定める。
第三章 貯金保険
(保険関係)
第四十九条 農水産業協同組合が農業協同組合法第十条第一項第二号又は水産業協同組合法第十一条第一項第二号若しくは第九十三条第一項第二号の事業を行なうときは、当該農水産業協同組合が貯金等に係る債務を負うことにより、各貯金者等ごとに一定の金額の範囲内において、当該貯金等の払戻しにつき、機構と当該農水産業協同組合及び貯金者等との間に保険関係が成立するものとする。
2 前項の保険関係においては、貯金等の額を保険金額とし、次に掲げるものを保険事故とする。
一 農水産業協同組合の貯金等の払戻しの停止(以下「第一種保険事故」という。)
二 農水産業協同組合の解散の議決に係る認可(農業協同組合にあつては、農業協同組合法第六十四条第四項に規定する解散の事由に係る認可を含む。以下同じ。)、破産の宣告、解散の命令又は同条第五項若しくは水産業協同組合法第六十八条第四項(同法第九十六条第五項において準用する場合を含む。)に規定する解散の事由の発生(以下「第二種保険事故」という。)
(保険料の納付)
第五十条 農水産業協同組合は、毎年、その年の六月三十日までに、機構に対し、主務省令で定める書類を提出して、保険料を納付しなければならない。
2 機構は、保険事故が発生したときは、前項の規定にかかわらず、定款で定めるところにより、当該保険事故に係る農水産業協同組合の保険料を免除することができる。
(保険料の額)
第五十一条 保険料の額は、各農水産業協同組合につき、当該保険料を納付すべき日の属する年の三月三十一日における貯金等(地方公共団体から受け入れた貯金その他の政令で定める貯金等を除く。)の額の合計額に、機構が委員会の議決を経て定める率(以下「保険料率」という。)を乗じて計算した金額とする。
2 保険料率は、長期的に保険料収入が保険金を償うように、かつ、特定の農水産業協同組合に対し差別的取扱いをしないように定められなければならない。
3 機構は、第四十二条第一項の規定による資金の借入れをした場合において、その借入金をすみやかに返済することが困難であると認められるときは、委員会の議決を経て、保険料率を変更するものとする。
4 機構は、保険料率を定め、又はこれを変更しようとするときは、主務大臣の認可を受けなければならない。
5 機構は、前項の認可を受けたときは、遅滞なく、その認可に係る保険料率を公告しなければならない。
(督促及び滞納処分)
第五十二条 機構は、保険料を滞納する農水産業協同組合がある場合には、督促状により、期限を指定して、これを督促することができる。
2 前項の督促状により指定する期限は、督促状を発する日から起算して十日以上を経過した日でなければならない。
3 機構は、第一項の規定による督促をした場合において、その督促を受けた農水産業協同組合が督促状で指定する期限までに滞納に係る保険料及びこれに係る次条第一項の延滞金を完納しないときは、当該農水産業協同組合の住所又は財産がある市町村(特別区を含む。以下同じ。)に対し、その徴収を請求することができる。
4 市町村は、前項の規定による請求を受けたときは、市町村税の滞納処分の例によつて、これを処分することができる。この場合においては、機構は、徴収金額の百分の四に相当する金額を当該市町村に交付しなければならない。
5 市町村が、第三項の規定による請求を受けた日から三十日以内にその処分に着手せず、又は九十日以内にこれを結了しないときは、機構は、主務大臣の認可を受け、国税滞納処分の例によつて、これを処分することができる。
(延滞金)
第五十三条 機構は、前条第一項の規定による督促をしたときは、保険料の額につき年十四・五パーセントの割合で、納付期限の翌日から保険料完納又は財産差押えの日の前日までの日数によつて計算した延滞金を徴収する。
2 前項の場合において、保険料の額の一部につき納付があつたときは、その納付の日以後の期間に係る延滞金の計算の基礎となる保険料の額は、その納付のあつた保険料の額を控除した額による。
(先取特権)
第五十四条 第五十二条第四項及び第五項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。
(保険金の支払)
第五十五条 機構は、保険事故が発生したときは、当該保険事故に係る貯金者等に対し、その請求に基づいて、保険金の支払をするものとする。ただし、第一種保険事故については、機構が第五十八条第一項の規定により保険金の支払をする旨の決定をすることを要件とする。
2 前項に規定する保険事故には、当該保険事故が発生した農水産業協同組合につき、その発生した後(同項ただし書の規定が適用される場合には、機構が同項ただし書の決定をした後)に当該保険事故に関連して他の保険事故が発生した場合における当該他の保険事故(以下「関連保険事故」という。)を含まないものとする。
3 第一項の請求は、第五十九条第一項又は第三項の規定により公告した支払期間内でなければ、することができない。ただし、その支払期間内に請求しなかつたことにつき災害その他やむを得ない事情があると機構が認めるときは、この限りでない。
(保険金の額)
第五十六条 保険金の額は、一の保険事故が発生した農水産業協同組合の各貯金者等につき、その発生した日において現にその者が当該農水産業協同組合に対して有する貯金等(地方公共団体から受け入れた貯金その他の政令で定める貯金等を除く。)に係る債権のうち元本の額(その額が同一人について二以上ある場合には、その合計額)で、前条第一項の請求があつたものに相当する金額とする。
2 保険事故に係る貯金者等が次の各号に該当する場合におけるその者の保険金の額は、前項の規定にかかわらず、同項の規定による金額から当該各号に掲げる額を控除した金額に相当する金額とする。
一 当該農水産業協同組合に対して債務を負つているとき。 その債務の額
二 当該農水産業協同組合に対して第三者のためにその貯金等の全部又は一部を担保に提供しているとき。 その担保に提供している貯金等の額
3 前二項の規定による保険金の額が政令で定める金額をこえるときは、その金額を当該保険金の額とする。
(保険事故の通知)
第五十七条 農水産業協同組合は、当該農水産業協同組合に係る保険事故が発生したときは、直ちに、その旨を機構に通知しなければならない。
2 機構は、前項の規定による通知を受けた場合において、当該通知に係る保険事故が第一種保険事故であるときは、直ちに、その旨を主務大臣(当該通知が都道府県知事の監督に係る農水産業協同組合に関するものであるときは、主務大臣及び当該都道府県知事)に通知しなければならない。
3 主務大臣又は都道府県知事は、次に掲げる場合には、直ちに、その旨を機構に通知しなければならない。
一 その監督に係る農水産業協同組合につき、解散の議決に係る認可をし、又は解散の命令をしたとき。
二 その監督に係る農水産業協同組合から農業協同組合法第六十四条第五項後段又は水産業協同組合法第六十八条第五項(同法第九十六条第五項において準用する場合を含む。)の規定による届出を受けたとき。
三 裁判所から破産法(大正十一年法律第七十一号)第百二十五条第一項の規定による通知を受けたとき。
(支払の決定)
第五十八条 機構は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に掲げる日から一月以内に、委員会の議決を経て、当該各号の保険事故につき保険金の支払をするかどうかを決定しなければならない。
一 第一種保険事故に関して前条第一項の規定による通知があつたとき。 その通知があつた日
二 前号に掲げる場合のほか、第一種保険事故が発生したことを機構が知つたとき。 その知つた日
2 機構は、前項の規定による決定をしたときは、直ちに、その決定に係る事項を主務大臣(当該決定が都道府県知事の監督に係る農水産業協同組合に関するものであるときは、主務大臣及び当該都道府県知事)に報告しなければならない。
(支払の公告等)
第五十九条 機構は、次に掲げる場合には、すみやかに、委員会の議決を経て保険金の支払期間、支払場所その他政令で定める事項を定め、これを公告しなければならない。
一 前条第一項の規定により第一種保険事故に係る保険金の支払をする旨の決定をしたとき。
二 第二種保険事故(関連保険事故を除く。以下同じ。)に関して第五十七条第一項又は第三項の規定による通知があつたとき。
三 前号に掲げる場合のほか、第二種保険事故が発生したことを機構が知つたとき。
2 機構は、前項の規定による公告をした後に当該農水産業協同組合が破産の宣告を受け、又は当該農水産業協同組合について和議開始の決定があつたときは、政令で定めるところにより、その公告した支払期間を変更することができる。
3 機構は、前項の規定により支払期間を変更したときは、遅滞なく、その変更に係る事項を公告しなければならない。
4 前条第二項の規定は、第一項に規定する事項を定めた場合及び第二項の規定により支払期間を変更した場合について準用する。
(債権の取得)
第六十条 機構は、保険金の支払をしたときは、その支払金額に応じ、貯金者等が農水産業協同組合に対して有する当該貯金等に係る債権(利息その他これに準ずるもので政令で定めるものを除く。)を取得する。
(政令への委任)
第六十一条 この法律に規定するもののほか、この章の規定による保険に関し必要な事項は、政令で定める。
第四章 雑則
(農水産業協同組合に対する命令)
第六十二条 主務大臣又は都道府県知事は、農水産業協同組合が貯金等の払戻しの停止をし、又は停止をするおそれがあると認められる場合において、機構の業務の適正かつ円滑な実施を図るため特に必要があると認めるときは、当該農水産業協同組合に対し、その事態に対処してとるべき措置に関し必要な命令をすることができる。
(主務大臣)
第六十三条 この法律における主務大臣は、農林大臣及び大蔵大臣とする。
第五章 罰則
第六十四条 第二十二条(第三十三条において準用する場合を含む。)の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
第六十五条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした機構又は受託者の役員又は職員は、五万円以下の罰金に処する。
一 第四十六条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。
二 第五十八条第二項(第五十九条第四項において準用する場合を含む。)の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。
第六十六条 第三十七条第一項の規定による資料を提出せず、又は虚偽の資料を提出した者は、三万円以下の罰金に処する。
第六十七条 法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者が、その法人の業務に関し、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して同条の刑を科する。
第六十八条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした機構の役員は、三万円以下の過料に処する。
一 この法律により主務大臣の認可を受けなければならない場合において、その認可を受けなかつたとき。
二 第七条第一項の規定による政令に違反して登記することを怠つたとき。
三 第三十四条に規定する業務以外の業務を行なつたとき。
四 第四十条に規定する書類を提出せず、又は虚偽の書類を提出したとき。
五 第四十一条の規定に違反して責任準備金を計算せず、又はこれを積み立てなかつたとき。
六 第四十三条の規定に違反して業務上の余裕金を運用したとき。
七 第四十五条第二項の規定による主務大臣の命令に違反したとき。
第六十九条 第五十七条第一項の規定による通知をしなかつた場合には、その違反行為をした農水産業協同組合の役員は、三万円以下の過料に処する。
第七十条 第六条第二項の規定に違反した者及び第六十二条の規定による命令に従わなかつた農水産業協同組合の役員は、一万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。
(経過規定)
第二条 機構の成立の際現に保険事故が発生している農水産業協同組合その他これに準ずるものとして政令で定める農水産業協同組合については、この法律の規定は、適用しない。
2 前項に規定する農水産業協同組合のうち、機構の成立の後にその事業及び財産の状況が再び正常になつたと認められるもので、主務大臣が指定するものについては、その指定の日から、この法律の規定を適用する。
第三条 この法律の施行の際現にその名称中に農水産業協同組合貯金保険機構という文字を用いている者については、第六条第二項の規定は、この法律の施行後六月間は、適用しない。
第四条 機構の最初の事業年度は、第三十八条の規定にかかわらず、その成立の日に始まり、翌年三月三十一日に終わるものとする。
第五条 機構の最初の事業年度の予算及び資金計画については、第三十九条中「当該事業年度の開始前に」とあるのは、「機構の成立後遅滞なく」とする。
第六条 農水産業協同組合は、第五十条第一項の規定にかかわらず、機構の成立後一月以内に、機構の成立の日の属する年において納付すべき保険料を納付しなければならない。
2 前項の保険料の額については、第五十一条第一項中「当該保険料を納付すべき日の属する年」とあるのは「機構の成立の日の属する年(その成立の日が一月一日から三月三十一日までの間であるときは、その年の前年)」と、「計算した金額」とあるのは「計算した金額を十二で除し、これに機構の成立の日の属する月以後同日の属する年の十二月までの月数を乗じて得た金額」とする。
(関係法律の一部改正)
第七条 所得税法(昭和四十年法律第三十三号)の一部を次のように改正する。
別表第一第一号の表中農業信用保険協会の項の次に次のように加える。
農水産業協同組合貯金保険機構
農水産業協同組合貯金保険法(昭和四十八年法律第五十三号)
第八条 法人税法(昭和四十年法律第三十四号)の一部を次のように改正する。
別表第二第一号の表中農業信用保険協会の項の次に次のように加える。
農水産業協同組合貯金保険機構
農水産業協同組合貯金保険法(昭和四十八年法律第五十三号)
第九条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第七十二条の五第一項第四号中「預金保険機構」の下に「、農水産業協同組合貯金保険機構」を加える。
第十条 大蔵省設置法(昭和二十四年法律第百四十四号)の一部を次のように改正する。
第四条第四十号の二及び第十二条第一項第六号の八中「預金保険機構」の下に「及び農水産業協同組合貯金保険機構」を加える。
第十一条 農林省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。
第八条第一項第八号の次に次の一号を加える。
八の二 農水産業協同組合貯金保険機構の指導監督を行なうこと。
大蔵大臣 愛知揆一
農林大臣 桜内義雄
内閣総理大臣 田中角栄