(保険関係)
第四十九条 農水産業協同組合が農業協同組合法第十条第一項第二号又は水産業協同組合法第十一条第一項第二号若しくは第九十三条第一項第二号の事業を行なうときは、当該農水産業協同組合が貯金等に係る債務を負うことにより、各貯金者等ごとに一定の金額の範囲内において、当該貯金等の払戻しにつき、機構と当該農水産業協同組合及び貯金者等との間に保険関係が成立するものとする。
2 前項の保険関係においては、貯金等の額を保険金額とし、次に掲げるものを保険事故とする。
一 農水産業協同組合の貯金等の払戻しの停止(以下「第一種保険事故」という。)
二 農水産業協同組合の解散の議決に係る認可(農業協同組合にあつては、農業協同組合法第六十四条第四項に規定する解散の事由に係る認可を含む。以下同じ。)、破産の宣告、解散の命令又は同条第五項若しくは水産業協同組合法第六十八条第四項(同法第九十六条第五項において準用する場合を含む。)に規定する解散の事由の発生(以下「第二種保険事故」という。)
(保険料の納付)
第五十条 農水産業協同組合は、毎年、その年の六月三十日までに、機構に対し、主務省令で定める書類を提出して、保険料を納付しなければならない。
2 機構は、保険事故が発生したときは、前項の規定にかかわらず、定款で定めるところにより、当該保険事故に係る農水産業協同組合の保険料を免除することができる。
(保険料の額)
第五十一条 保険料の額は、各農水産業協同組合につき、当該保険料を納付すべき日の属する年の三月三十一日における貯金等(地方公共団体から受け入れた貯金その他の政令で定める貯金等を除く。)の額の合計額に、機構が委員会の議決を経て定める率(以下「保険料率」という。)を乗じて計算した金額とする。
2 保険料率は、長期的に保険料収入が保険金を償うように、かつ、特定の農水産業協同組合に対し差別的取扱いをしないように定められなければならない。
3 機構は、第四十二条第一項の規定による資金の借入れをした場合において、その借入金をすみやかに返済することが困難であると認められるときは、委員会の議決を経て、保険料率を変更するものとする。
4 機構は、保険料率を定め、又はこれを変更しようとするときは、主務大臣の認可を受けなければならない。
5 機構は、前項の認可を受けたときは、遅滞なく、その認可に係る保険料率を公告しなければならない。
(督促及び滞納処分)
第五十二条 機構は、保険料を滞納する農水産業協同組合がある場合には、督促状により、期限を指定して、これを督促することができる。
2 前項の督促状により指定する期限は、督促状を発する日から起算して十日以上を経過した日でなければならない。
3 機構は、第一項の規定による督促をした場合において、その督促を受けた農水産業協同組合が督促状で指定する期限までに滞納に係る保険料及びこれに係る次条第一項の延滞金を完納しないときは、当該農水産業協同組合の住所又は財産がある市町村(特別区を含む。以下同じ。)に対し、その徴収を請求することができる。
4 市町村は、前項の規定による請求を受けたときは、市町村税の滞納処分の例によつて、これを処分することができる。この場合においては、機構は、徴収金額の百分の四に相当する金額を当該市町村に交付しなければならない。
5 市町村が、第三項の規定による請求を受けた日から三十日以内にその処分に着手せず、又は九十日以内にこれを結了しないときは、機構は、主務大臣の認可を受け、国税滞納処分の例によつて、これを処分することができる。
(延滞金)
第五十三条 機構は、前条第一項の規定による督促をしたときは、保険料の額につき年十四・五パーセントの割合で、納付期限の翌日から保険料完納又は財産差押えの日の前日までの日数によつて計算した延滞金を徴収する。
2 前項の場合において、保険料の額の一部につき納付があつたときは、その納付の日以後の期間に係る延滞金の計算の基礎となる保険料の額は、その納付のあつた保険料の額を控除した額による。
(先取特権)
第五十四条 第五十二条第四項及び第五項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。
(保険金の支払)
第五十五条 機構は、保険事故が発生したときは、当該保険事故に係る貯金者等に対し、その請求に基づいて、保険金の支払をするものとする。ただし、第一種保険事故については、機構が第五十八条第一項の規定により保険金の支払をする旨の決定をすることを要件とする。
2 前項に規定する保険事故には、当該保険事故が発生した農水産業協同組合につき、その発生した後(同項ただし書の規定が適用される場合には、機構が同項ただし書の決定をした後)に当該保険事故に関連して他の保険事故が発生した場合における当該他の保険事故(以下「関連保険事故」という。)を含まないものとする。
3 第一項の請求は、第五十九条第一項又は第三項の規定により公告した支払期間内でなければ、することができない。ただし、その支払期間内に請求しなかつたことにつき災害その他やむを得ない事情があると機構が認めるときは、この限りでない。
(保険金の額)
第五十六条 保険金の額は、一の保険事故が発生した農水産業協同組合の各貯金者等につき、その発生した日において現にその者が当該農水産業協同組合に対して有する貯金等(地方公共団体から受け入れた貯金その他の政令で定める貯金等を除く。)に係る債権のうち元本の額(その額が同一人について二以上ある場合には、その合計額)で、前条第一項の請求があつたものに相当する金額とする。
2 保険事故に係る貯金者等が次の各号に該当する場合におけるその者の保険金の額は、前項の規定にかかわらず、同項の規定による金額から当該各号に掲げる額を控除した金額に相当する金額とする。
一 当該農水産業協同組合に対して債務を負つているとき。 その債務の額
二 当該農水産業協同組合に対して第三者のためにその貯金等の全部又は一部を担保に提供しているとき。 その担保に提供している貯金等の額
3 前二項の規定による保険金の額が政令で定める金額をこえるときは、その金額を当該保険金の額とする。
(保険事故の通知)
第五十七条 農水産業協同組合は、当該農水産業協同組合に係る保険事故が発生したときは、直ちに、その旨を機構に通知しなければならない。
2 機構は、前項の規定による通知を受けた場合において、当該通知に係る保険事故が第一種保険事故であるときは、直ちに、その旨を主務大臣(当該通知が都道府県知事の監督に係る農水産業協同組合に関するものであるときは、主務大臣及び当該都道府県知事)に通知しなければならない。
3 主務大臣又は都道府県知事は、次に掲げる場合には、直ちに、その旨を機構に通知しなければならない。
一 その監督に係る農水産業協同組合につき、解散の議決に係る認可をし、又は解散の命令をしたとき。
二 その監督に係る農水産業協同組合から農業協同組合法第六十四条第五項後段又は水産業協同組合法第六十八条第五項(同法第九十六条第五項において準用する場合を含む。)の規定による届出を受けたとき。
三 裁判所から破産法(大正十一年法律第七十一号)第百二十五条第一項の規定による通知を受けたとき。
(支払の決定)
第五十八条 機構は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に掲げる日から一月以内に、委員会の議決を経て、当該各号の保険事故につき保険金の支払をするかどうかを決定しなければならない。
一 第一種保険事故に関して前条第一項の規定による通知があつたとき。 その通知があつた日
二 前号に掲げる場合のほか、第一種保険事故が発生したことを機構が知つたとき。 その知つた日
2 機構は、前項の規定による決定をしたときは、直ちに、その決定に係る事項を主務大臣(当該決定が都道府県知事の監督に係る農水産業協同組合に関するものであるときは、主務大臣及び当該都道府県知事)に報告しなければならない。
(支払の公告等)
第五十九条 機構は、次に掲げる場合には、すみやかに、委員会の議決を経て保険金の支払期間、支払場所その他政令で定める事項を定め、これを公告しなければならない。
一 前条第一項の規定により第一種保険事故に係る保険金の支払をする旨の決定をしたとき。
二 第二種保険事故(関連保険事故を除く。以下同じ。)に関して第五十七条第一項又は第三項の規定による通知があつたとき。
三 前号に掲げる場合のほか、第二種保険事故が発生したことを機構が知つたとき。
2 機構は、前項の規定による公告をした後に当該農水産業協同組合が破産の宣告を受け、又は当該農水産業協同組合について和議開始の決定があつたときは、政令で定めるところにより、その公告した支払期間を変更することができる。
3 機構は、前項の規定により支払期間を変更したときは、遅滞なく、その変更に係る事項を公告しなければならない。
4 前条第二項の規定は、第一項に規定する事項を定めた場合及び第二項の規定により支払期間を変更した場合について準用する。
(債権の取得)
第六十条 機構は、保険金の支払をしたときは、その支払金額に応じ、貯金者等が農水産業協同組合に対して有する当該貯金等に係る債権(利息その他これに準ずるもので政令で定めるものを除く。)を取得する。
(政令への委任)
第六十一条 この法律に規定するもののほか、この章の規定による保険に関し必要な事項は、政令で定める。