(保險契約)
第五條 簡易生命保險契約(以下「保險契約」という。)においては、國が保險契約者又は第三者の生死について保險金を支拂うことを約し、保險契約者が國に保險料を支拂うことを約するものとする。
(保險約款)
第六條 保險契約は、この法律に定めるものの外、左の事項を定めた簡易生命保險約款(以下「保險約款」という。)による。
五 保險料の拂込及びその拂込猶予期間並びに保險料の還付に関する事項
七 保險契約の変更及び解除、保險契約関係者の異動及び変更並びに被保險者の年齢の錯誤に関する事項
2 保險約款は、簡易生命保險郵便年金事業審議会の議を経て、郵政大臣が定める。
4 この法律及び保險約款は、郵便局に備えて、保險契約の申込をする者の閲覽に供しなければならない。
(保險契約者の制限)
第七條 年齢十年に満たない者を被保險者とする保險契約においては、保險契約者は、被保險者の父、母、祖父、祖母、兄又は姉でなければならない。
(第三者を被保險者とする契約)
第八條 第三者の死亡に因り保險金を支拂うことを定める保險契約をするには、その者の同意がなければならない。但し、その第三者が保險金受取人であるとき、又は年齢十年に満たない者であるときは、この限りでない。
(第三者を保險金受取人とする契約)
第九條 保險契約においては、第三者を保險金受取人とすることができる。この場合には、保險契約者は、國に対し保險料を支拂わなければならない。
(第三者の利益享受)
第十條 保險金受取人が第三者であるときは、その第三者は、当然保險契約の利益を受ける。
(保險金受取人の制限)
第十一條 被保險者の年齢が十年に満たない間は、保險契約者を保險金受取人とする。
(保險契約者又は保險金受取人の代表者)
第十二條 同一の保險契約につき保險契約者又は保險金受取人が数人あるときは、それらの者は、各代表者一人を定めなければならない。この場合には、その代表者は、当該保險契約につき、それぞれ他の保險契約者又は保險金受取人を代理するものとする。
2 前項の代表者が定まらないとき、又はその所在が不明であるときは、当該保險契約につき保險契約者の一人に対してした行爲は、他の者に対しても、その効力を有する。
(債務の連帶)
第十三條 同一の保險契約につき保險契約者が数人あるときは、当該保險契約に関する未拂保險料、貸付金その他國に弁済すべき債務は、連帶とする。
(保險の種類)
第十四條 簡易生命保險は、終身保險及び養老保險とする。
(終身保險)
第十五條 終身保險とは、被保險者が死亡したことに因り保險金の支拂をするものをいう。
(養老保險)
第十六條 養老保險とは、被保險者の生存中に保險期間が満了し、又はその期間の満了前に被保險者が死亡したことに因り保險金の支拂をするものをいう。
(保險金額)
第十七條 保險金額は、被保險者一人につき五万円をこえてはならない。
2 保險金額は、保險契約一件につき五千円以上でなければならない。但し、第四十六條の規定により、貸付金の弁済に代えて保險金額の減額をしたときは、この限りでない。
(積立金計算の方法)
第十九條 被保險者のために積み立てるべき金額は、前條の基礎によつて、純保險料式で計算する。但し、保險料拂済保險契約及び保險約款の定めるところにより廃疾に因る保險料拂込の免除を受けた保險契約以外の保險契約については、その効力発生後十年を経過しない間に限り、チルメル式で計算することができる。
2 前項但書に規定するチルメル式計算におけるチルメル控除額は、三箇月分の保險料に相当する額をこえない額とする。
(無診査及び面接)
第二十條 簡易生命保險では、被保險者の身体檢査を行わない。
2 保險契約の申込をしようとする者は、申込の際、被保險者となるべき者をして、郵便局の職員に面接させなければならない。
(告知義務違反に因る契約の解除)
第二十一條 保險契約の申込の当時、保險契約者又は被保險者が質問表に掲げる質問事項につき惡意又は重大な過失に因つて事実を告げず、又は眞実でない事を告げたときは、國は、保險契約の解除をすることができる。但し、國がその事実を知り、又は過失に因つてこれを知らなかつたときは、この限りでない。
2 前項の解除権は、國が解除の原因を知つた時から一箇月間これを行わないときは消滅する。保險契約が当該保險契約の効力発生の日から三年以上継続したときも、同樣とする。
(解除の効果)
第二十二條 前條の規定により國が保險契約の解除をしたときは、その解除は、將來に向かつてのみその効力を生ずる。
2 國は、被保險者が死亡した後保險契約の解除をした場合においても、保險金の支拂をする責に任ぜず、また、既に保險金の支拂をしたときは、その返還を請求することができる。但し、保險契約者において、被保險者の死亡の原因がその告げ又は告げなかつた事実に基かないことを証明したときは、この限りでない。
(解除の相手方)
第二十三條 第二十一條の規定による解除は、保險契約者若しくはその法定代理人を知ることができないとき、又はこれらの者の所在を知ることができないときは、保險金受取人に対する意思表示によつても、これをすることができる。
2 第二十一條第二項に規定する一箇月の期間は、保險契約者若しくはその法定代理人又は前項の場合における保險金受取人若しくはその法定代理人を知ることができないとき、又はこれらの者の所在を知ることができないときは、これらの者の所在が知れた時から起算する。
(契約の成立及び効力の発生)
第二十四條 保險契約は、その申込を承諾したときは、申込の日において成立したものとみなし、且つ、その日から効力を生ずる。
(保險証書及び標準約款)
第二十五條 保險契約の申込を承諾したときは、保險証書を作成し、これを保險契約者に交付する。
2 保險証書には、左の事項を記載することを要する。
六 被保險者が年齢十年に満たない者であるときは、被保險者と保險契約者との続柄
七 保險金受取人の指定があつたときは、その者の氏名又は名称
3 保險約款のうち左に掲げる事項(標準約款)及び保險金の支拂免責に関する事項は、保險証書に記載しなければならない。但し、保險証書に記載することに代え、これを記載した書面を保險証書に添附することを妨げない。
(詐欺に因る無効)
第二十六條 保險契約者又は被保險者の詐欺に因る保險契約は、無効とする。
(契約の無効)
第二十七條 國又は保險契約者が、保險契約の申込の当時、既に保險事故の生じたことを知つているときは、その保險契約は、無効とする。
(契約の失効)
第二十八條 保險契約者が保險料を拂い込まないで保險約款の定める拂込猶予期間を経過したときは、保險契約は、その効力を失う。
(保險料拂済保險契約)
第二十九條 保險契約者は、前條の規定にかかわらず、同條の拂込猶予期間経過後三箇月以内に限り、保險約款の定めるところにより、その保險契約を保險料拂済保險契約に変更することを請求することができる。
(保險契約者破産の場合における保險料の拂込)
第三十條 保險金受取人が第三者である場合において、保險契約者が破産の宣告を受けたときは、國は、保險金受取人に対して保險料の拂込を請求することができる。但し、保險金受取人がその権利を放棄したときは、この限りでない。
(保險金の倍額支拂)
第三十一條 被保險者が保險契約の効力発生後二年を経過した後において、不慮の事故その他不可抗力又は第三者の加害行爲に因つて身体の外部に生じた傷害を直接の原因として被害の日から二箇月以内に死亡したときは、保險金支拂の際、当該保險金の外、これと同額の保險金を支拂う。但し、当該保險契約につき復活のあつた場合において、復活の効力発生後一年を経過しないものは、この限りでない。
2 身体の外部に生じた傷害に因らない場合であつても、不慮の事故その他不可抗力又は第三者の加害行爲に因ることを保險契約者又は保險金受取人が証明したときは、前項と同樣とする。但し、疾病に因る死亡の場合は、この限りでない。
3 前二項の規定は、被保險者が左に掲げる事由に因つて死亡した場合においては、これを適用しない。
一 精神障害又はめいてい中に招いた事故に因つて死亡したとき。
(保險金の削減)
第三十二條 被保險者が保險契約の効力発生後二年を経過する前に災害又は傳染病予防法(明治三十年法律第三十六号)第一條第一項の傳染病に因らないで死亡したときは、保險約款の定めるところにより、保險金額の一部を支拂う。
(幼兒の場合の支拂保險金額)
第三十三條 被保險者が年齢六年に満たないで死亡したときは、保險約款の定めるところにより、保險金額の一部を支拂う。
2 前項の場合において、前條又は第四十四條の規定を適用するものにあつては、その支拂金額は、前項の規定により支拂うべき金額と前條又は第四十四條の規定により支拂うべき金額とのいずれか少いものとする。
(無指定の場合の保險金受取人)
第三十四條 保險契約者が保險金受取人を指定しないとき(保險契約者の指定した保險金受取人が死亡し更に保險金受取人を指定しない場合を含む。)は、左の者を保險金受取人とする。
一 保險期間の満了に因り保險金を支拂う場合にあつては、被保險者。但し、保險期間の満了後保險金を請求する前に被保險者が死亡した場合にあつては、被保險者の遺族
二 被保險者の死亡に因り保險金を支拂う場合にあつては、被保險者の遺族
2 前項の遺族は、被保險者の配偶者(届出がなくても事実上婚姻関係と同樣の事情にある者を含む。)、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹並びに被保險者の死亡当時被保險者の扶助によつて生計を維持していた者及び被保險者の生計を維持していた者とする。
3 胎兒たる子又は孫は、前項の規定の適用については、既に生まれたものとみなす。
4 前項の規定は、胎兒が死体で生まれたときは適用しない。
5 第二項に規定する遺族が数人あるときは、同項に掲げる順序により先順位にある者を保險金受取人とする。
6 遺族であつて故意に被保險者、先順位者又は同順位者たるべき者を殺したものは、保險金受取人となることができない。
(保險金支拂の免責)
第三十五條 左の場合には、國は、保險金を支拂う責に任じない。
一 被保險者が保險契約又はその復活の効力発生後二年を経過する前に自殺したとき。
二 保險金受取人が故意に被保險者を殺したとき。但し、その者が保險金の一部を受け取るべき場合には、國は、他の保險金受取人にその残額を支拂う。
(保險契約者の地位の任意承継)
第三十六條 保險契約者は、被保險者の同意を得て、第三者に保險契約に因る権利義務を承継させることができる。但し、被保險者が年齢十年に満たない者であるときは、被保險者の同意を要しない。
2 前項の承継は、國に通知しなければ、これをもつて國に対抗することができない。
(保險契約者の地位の法定承継)
第三十七條 保險契約者が死亡した場合において、その者に相続人がないときは、保險契約者の指定した保險金受取人(保險契約者が保險金受取人を指定しない場合又は保險契約者の指定した保險金受取人が死亡し更に保險金受取人を指定しない場合には被保險者)が、保險契約者の保險契約に因る権利義務を承継する。
2 被保險者が年齢十年に達する前に保險契約者が死亡した場合において、その相続人が第七條に規定する者でないときは、被保險者が、保險契約者の保險契約に因る権利義務を承継する。被保險者が年齢十年に達する前に保險契約者が第七條に規定する者でなくなつたときも、同樣とする。
(保險金受取人の指定又はその変更)
第三十八條 保險契約者は、保險金又は還付金の支拂の事由(第三十九條の規定により保險契約の変更に因る還付金を支拂う場合を除く。)が発生するまでは、保險金受取人を指定し、又はその指定を変更することができる。但し、保險契約者の指定した保險金受取人が第三者である場合において、保險契約者が指定の変更をしない旨の意思を國に対して表示したときは、この限りでない。
2 前項の指定又はその変更は、國に通知しなければ、これをもつて國に対抗することができない。
3 第一項の指定又はその変更をする場合には、第八條の規定を準用する。
(還付金の支拂)
第三十九條 保險契約の解除、失効若しくは変更又は保險金支拂の免責(第三十五條第二号の場合を除く。)の場合には、保險金受取人は、保險約款の定めるところにより、被保險者のために積み立てられた金額の百分の八十から九十八までに相当する額の範囲内において、還付金の支拂を請求することができる。
(復活の申込)
第四十條 第二十八條の場合には、保險契約者は、保險契約の失効後一年を経過する前に限り、その復活の申込をすることができる。
(復活の効力発生)
第四十一條 保險契約の復活は、その申込を承諾したときは、その申込の日から効力を生ずる。
2 前項の場合においては、保險証書に保險契約復活の旨を記載する。
(復活の効果)
第四十二條 保險契約が復活したときは、始めからその効力を失わなかつたものとみなす。
(準用規定)
第四十三條 保險契約の復活の場合には、第二十一條から第二十三條まで、第二十六條、第二十七條及び第四十八條の規定を準用する。
(復活した場合の保險金の削減)
第四十四條 被保險者が保險契約復活の効力発生後一年を経過する前に災害又は傳染病予防法第一條第一項の傳染病に因らないで死亡したときは、保險約款の定めるところにより、保險金額の一部を支拂う。
(契約の乘換)
第四十五條 保險契約の効力発生後二年を経過した一個又は数個の保險契約の被保險者(被保險者が数人ある場合にはそのうち一人)を被保險者とする新たな保險契約の申込をする者は、既に成立している保險契約を消滅させて、当該保險契約の被保險者のために積み立てられた金額と当該保險契約につき保險金支拂の事由が発生したとすれば第四十七條の規定により分配されるべき剩余金の額との合計額(当該保險契約に関し未拂保險料、貸付金その他國が弁済を受けるべき金額があるときは、これを差し引いた残額。以下第二項において同じ。)を新たな保險契約の保險料の全部又は一部に充てることを請求することができる。この場合において、既に成立している保險契約の保險契約者と新たな保險契約の申込をする者とが異なるときは、既に成立している保險契約の保險契約者の同意がなければならない。
2 前項の請求があつた場合において、新たな保險契約が効力を発生したときは、既に成立している保險契約は、その効力を失い、当該保險契約に関し國が有する未拂保險料、貸付金その他の債権は消滅し、同項の合計額は、保險約款の定めるところにより、新たな保險契約の保險料に充てられるものとする。
(貸付金の法定弁済)
第四十六條 國が保險約款の定めるところにより保險契約者に対して貸付をした場合において、保險契約者が貸付金の弁済をしないで弁済期後四年を経過したときは、國は、保險約款の定めるところにより、貸付金の弁済に代えて保險金額の減額をすることができる。
(剩余金の分配)
第四十七條 簡易生命保險事業の経営上剩余を生じたときは、保險約款の定めるところにより、保險金受取人にこれを分配する。
2 保險約款の定めるところにより保險料拂込の免除を受けた保險契約又は保險料拂済保險契約については、前項の規定により分配すべき金額は、保險約款の定めるところにより、その全部又は一部を減ずる。
3 第三十一條の規定により保險金を支拂う場合には、前二項の規定は適用しない。
(保險料の還付)
第四十八條 保險契約の全部又は一部が無効である場合において、保險契約者及び被保險者が善意で且つ重大な過失のないときは、保險契約者は保險料の全部又は一部の還付を請求することができる。
(讓渡禁止)
第四十九條 保險金、還付金又は剩余金を受け取るべき権利は、讓り渡すことができない。
(差押禁止)
第五十條 保險金又は還付金を受け取るべき権利は、差し押えることができない。
(控除支拂)
第五十一條 保險金、還付金、剩余金又は保險契約者若しくは保險金受取人に還付する保險料を支拂う場合において、当該保險契約に関し未拂保險料、貸付金その他國が弁済を受けるべき金額があるときは、支拂金額からこれを控除する。
(正規の支拂)
第五十二條 保險金、還付金、貸付金、剩余金又は保險契約者若しくは保險金受取人に還付する保險料をこの法律及び保險約款に定める手続によつて支拂つたときは、その支拂は、有効とする。
(保險約款改正の効力)
第五十三條 保險約款の改正は、既に存する保險契約に対してその効力を及ぼさない。
2 郵政大臣は、保險約款を改正する場合において、保險契約者、被保險者及び保險金受取人の全体の利益を保護するため特に必要があると認めるときは、前項の規定にかかわらず、既に存する保險契約についても、將來に向かつてその改正の効力が及ぶものとすることができる。但し、左に掲げる事項については、この限りでない。
(時効)
第五十四條 保險金、還付金及び剩余金の支拂義務並びに保險料の返還義務は、五年、保險料の拂込義務は一年を経過したときは、時効に因つて消滅する。