民法施行法
法令番号: 法律第十一號
公布年月日: 明治31年6月21日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル民法施行法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十一年六月十五日
內閣總理大臣 侯爵 伊藤博文
海軍大臣 侯爵 西鄕從道
大藏大臣 伯爵 井上馨
內務大臣 子爵 芳川顯正
外務大臣 男爵 西德二郞
陸軍大臣 子爵 桂太郞
司法大臣 曾禰荒助
遞信大臣 文學博士 男爵 末松謙澄
農商務大臣 金子堅太郞
文部大臣 文學博士 外山正一
法律第十一號
民法施行法
第一章
通則
第二章
總則編ニ關スル規定
第三章
物權編ニ關スル規定
第四章
債權編ニ關スル規定
第五章
親族編ニ關スル規定
第六章
相續編ニ關スル規定
民法施行法
第一章 通則
第一條 民法施行前ニ生シタル事項ニ付テハ本法ニ別段ノ定アル場合ヲ除ク外民法ノ規定ヲ適用セス
第二條 民法ニ於テ破產ト稱スルハ民事ニ付テハ家資分散ヲ謂フ
第三條 身代限ノ處分ヲ受ケタル者ハ其債務ヲ完濟スルマテハ之ヲ破產者ト看做ス
第四條 證書ハ確定日附アルニ非サレハ第三者ニ對シ其作成ノ日ニ付キ完全ナル證據力ヲ有セス
第五條 證書ハ左ノ場合ニ限リ確定日附アルモノトス
一 公正證書ナルトキハ其日附ヲ以テ確定日附トス
二 登記所又ハ公證人役場ニ於テ私署證書ニ日附アル印章ヲ押捺シタルトキハ其印章ノ日附ヲ以テ確定日附トス
三 私署證書ノ署名者中ニ死亡シタル者アルトキハ其死亡ノ日ヨリ確定日附アルモノトス
四 確定日附アル證書中ニ私署證書ヲ引用シタルトキハ其證書ノ日附ヲ以テ引用シタル私署證書ノ確定日附トス
五 官廳又ハ公署ニ於テ私署證書ニ或事項ヲ記入シ之ニ日附ヲ記載シタルトキハ其日附ヲ以テ其證書ノ確定日附トス
第六條 私署證書ニ確定日附ヲ附スルコトヲ登記所又ハ公證人役場ニ請求スル者アルトキハ登記官吏又ハ公證人ハ確定日附簿ニ署名者ノ氏名又ハ其一人ノ氏名ニ外何名ト附記シタルモノ及ヒ件名ヲ記載シ其證書ニ登簿番號ヲ記入シ帳簿及ヒ證書ニ日附アル印章ヲ押捺シ且其印章ヲ以テ帳簿ト證書トニ割印ヲ爲スコトヲ要ス
證書カ數紙ヨリ成レル場合ニ於テハ前項ニ揭ケタル印章ヲ以テ每紙ノ綴目又ハ繼目ニ契印ヲ爲スコトヲ要ス
第七條 確定日附簿ニハ豫メ登簿番號ヲ印刷シ請求順ヲ以テ前條ノ規定ニ從ヒ記入ヲ爲スコトヲ要ス
確定日附簿ニハ地方裁判所長其紙數ヲ表紙ノ裏面ニ記載シ職氏名ヲ署シ職印ヲ押捺シ且職印ヲ以テ每紙ノ綴目ニ契印ヲ爲スコトヲ要ス
第八條 私署證書ニ確定日附ヲ附スルコトヲ登記所又ハ公證人役場ニ請求スル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ手數料ヲ納ムルコトヲ要ス
第九條 左ノ法令ハ民法施行ノ日ヨリ之ヲ廢止ス
一 明治五年第二百九十五號布吿
二 明治六年第二十一號布吿
三 同年第二十八號布吿
四 同年第四十號布吿
五 同年第百六十二號布吿
六 同年第百七十七號布吿
七 同年第二百十五號布吿代人規則
八 同年第二百五十二號布吿
九 同年第三百六號布吿動產不動產書入金穀貸借規則
十 同年第三百六十二號布吿出訴期限規則
十一 明治七年第二十七號布吿
十二 明治八年第六號布吿
十三 同年第六十三號布吿
十四 同年第百二號布吿金穀貸借請人證人辨償規則
十五 同年第百四十八號布吿建物書入質規則及ヒ建物賣買讓渡規則
十六 明治九年第七十五號布吿
十七 同年第九十九號布吿
十八 明治十年第五十號布吿
十九 明治十四年第七十三號布吿
二十 明治十七年第二十號布吿
二十一 明治二十三年法律第九十四號財產委棄法
二十二 同年勅令第二百十七號辨濟提供規則
明治六年第十八號布吿地所質入書入規則ハ第十一條ヲ除ク外民法施行ノ日ヨリ之ヲ廢止ス
第十條 民法中不動產上ノ權利ニ關スル規定ハ當分ノ內之ヲ沖繩縣ニ施行セス
第十一條 本法ハ民法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第二章 總則編ニ關スル規定
第十二條 民法施行前ニ民法第七條又ハ第十一條ニ揭ケタル原因ノ爲メニ後見人ヲ附シタル者ハ其施行ノ日ヨリ禁治產者又ハ準禁治產者ト看做ス
後見人ハ民法施行ノ日ヨリ一个月內ニ禁治產又ハ準禁治產ノ請求ヲ爲スコトヲ要ス
第十三條 後見人其他民法第七條ニ揭ケタル者カ民法施行ノ日ヨリ一个月內ニ禁治產又ハ準禁治產ノ請求ヲ爲ササリシトキハ其期間經過ノ後ハ前條第一項ノ規定ヲ適用セス
前項ノ期間內ニ禁治產又ハ準禁治產ノ請求アリタルモ裁判所ニ於テ之ヲ却下シタルトキハ抗吿期間經過ノ後、若シ抗吿アリタルトキハ最後ノ抗吿棄却ノ時ヨリ又訴ニ於テ禁治產又ハ準禁治產ノ宣吿ヲ取消シタルトキハ其判決確定ノ日ヨリ前條第一項ノ規定ヲ適用セス
第十四條 
刑法第十條第三號、第三十五條、第三十六條、刑法附則第四十一條、陸軍刑法第十八條第四號及ヒ海軍刑法第九條第四號、第二十二條ハ之ヲ削除ス
刑法第五十五條中「行政ノ處分ヲ以テ治產ノ禁ノ幾分ヲ免スルヿヲ得但」ノ二十三字及ヒ陸軍刑法第三十二條中「第三十五條第三十六條」ノ十字ハ之ヲ削除ス
第十五條 民法施行ノ日ニ於テ刑事禁治產者タル者ハ其施行ノ日ヨリ能力ヲ囘復ス
第十六條 民法施行前ヨリ刑事禁治產者ノ財產ヲ管理スル者ハ刑事禁治產者又ハ刑事禁治產者カ定メタル他ノ管理者カ其財產ヲ管理スルコトヲ得ルマテ管理ヲ繼續スルコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テ管理者ハ民法第百三條ニ定メタル權限ヲ有ス但刑事禁治產者カ別段ノ意思ヲ表示シタルトキハ此限ニ在ラス
第十七條 民法第二十五條乃至第二十九條ノ規定ハ民法施行前ニ住所又ハ居所ヲ去リタル者ニ付テモ亦之ヲ適用ス
民法施行前ヨリ不在者ノ財產ヲ管理スル者ハ其施行ノ日ヨリ民法ノ規定ニ從ヒテ其管理ヲ繼續ス
第十八條 民法第三十條及ヒ第三十一條ノ規定ハ民法施行前ヨリ生死分明ナラサル者ニモ亦之ヲ適用ス
民法施行前旣ニ民法第三十條ノ期間ヲ經過シタル者ニ付テハ直チニ失踪ノ宣吿ヲ爲スコトヲ得此場合ニ於テハ失踪者ハ民法ノ施行ト同時ニ死亡シタルモノト看做ス
第十九條 民法施行前ヨリ獨立ノ財產ヲ有スル社團又ハ財團ニシテ民法第三十四條ニ揭ケタル目的ヲ有スルモノハ之ヲ法人トス
前項ノ法人ノ代表者ハ民法第三十七條又ハ第三十九條ニ揭ケタル事項其他社員又ハ寄附者カ定メタル事項ヲ記載シタル書面ヲ作リ民法施行ノ日ヨリ三个月內ニ之ヲ主務官廳ニ差出タシ其認可ヲ請フコトヲ要ス此場合ニ於テ主務官廳ハ其書面カ民法其他ノ法令ニ反スルトキ又ハ公益ノ爲メ必要ト認ムルトキハ其變更ヲ命スルコトヲ要ス
前項ノ規定ニ從ヒテ認可ヲ得タル書面ハ定款又ハ寄附行爲ト同一ノ效力ヲ有ス
第二十條 法人ノ代表者カ前條第二項ノ規定ニ從ヒ主務官廳ノ認可ヲ得タルトキハ二週間內ニ各事務所ノ所在地ニ於テ左ノ事項ヲ登記スルコトヲ要ス
一 民法第四十六條第一項第一號乃至第三號及ヒ第五號乃至第八號ニ揭ケタル事項
二 主務官廳ノ認可ノ年月日
前項ノ期間ハ主務官廳ノ認可書ノ到達シタル時ヨリ之ヲ起算ス
第一項ノ規定ニ從ヒテ爲シタル登記ハ民法第四十六條第一項ニ定メタル登記ト同一ノモノト看做ス
第二十一條 第十九條第一項ノ法人カ財產目錄又ハ社員名簿ヲ備ヘサルトキハ民法施行ノ後遲滯ナク之ヲ作ルコトヲ要ス
第二十二條 法人ノ代表者カ前三條ノ規定ニ反シ認可ヲ受ケ、登記ヲ爲シ又ハ財產目錄若クハ社員名簿ヲ作ルコトヲ怠リタルトキハ五圓以上二百圓以下ノ過料ニ處セラル
第二十三條 第十九條第一項ノ法人カ其目的以外ノ事業ヲ爲シ又ハ認可ノ條件ニ違反シ其他公益ヲ害スヘキ行爲ヲ爲シタルトキハ主務官廳ハ其解散ヲ命スルコトヲ得
第二十四條 民法ノ規定ニ依リ法人ニ關シテ登記シタル事項ハ裁判所ニ於テ遲滯ナク之ヲ公吿スルコトヲ要ス
第二十五條 主務官廳カ正當ノ理由ナクシテ法人ノ設立許可ヲ取消シ又ハ其解散ヲ命シタルトキハ其法人ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第二十六條 法人ノ淸算人カ民法第七十九條及ヒ第八十一條第一項ノ規定ニ依リ爲スヘキ公吿ハ裁判所カ爲スヘキ登記事項ノ公吿ト同一ノ方法ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ要ス
第二十七條 剝奪公權者及ヒ停止公權者ハ法人ノ理事、監事又ハ淸算人タルコトヲ得ス
第二十八條 民法中法人ニ關スル規定ハ當分ノ內神社、寺院、祠宇及ヒ佛堂ニハ之ヲ適用セス
第二十九條 民法施行前ニ出訴期限ヲ經過シタル債權ハ時效ニ因リテ消滅シタルモノト看做ス
第三十條 民法施行前ニ出訴期限ヲ經過セサル債權ニ付テハ民法中時效ニ關スル規定ヲ適用ス
第三十一條 民法施行前ニ進行ヲ始メタル出訴期限カ民法ニ定メタル時效ノ期間ヨリ長キトキハ舊法ノ規定ニ從フ但其殘期カ民法施行ノ日ヨリ起算シ民法ニ定メタル時效ノ期間ヨリ長キトキハ其日ヨリ起算シテ民法ノ規定ヲ適用ス
第三十二條 前條但書ノ規定ハ舊法ニ出訴期限ナキ權利ニ之ヲ準用ス
第三十三條 前三條ノ場合ニ於テ民法中時效ノ中斷及ヒ停止ニ關スル規定ハ民法施行ノ日ヨリ之ヲ適用ス
第三十四條 第三十條乃至第三十二條ノ規定ハ時效期間ノ性質ヲ有セサル法定期間ニ之ヲ準用ス
第三章 物權編ニ關スル規定
第三十五條 慣習上物權ト認メタル權利ニシテ民法施行前ニ發生シタルモノト雖モ其施行ノ後ハ民法其他ノ法律ニ定ムルモノニ非サレハ物權タル效力ヲ有セス
第三十六條 民法ニ定メタル物權ハ民法施行前ニ發生シタルモノト雖モ其施行ノ日ヨリ民法ニ定メタル效力ヲ有ス
第三十七條 民法又ハ不動產登記法ノ規定ニ依リ登記スヘキ權利ハ從來登記ナクシテ第三者ニ對抗スルコトヲ得ヘカリシモノト雖モ民法施行ノ日ヨリ一年內ニ之ヲ登記スルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第三十八條 民法施行前ヨリ占有又ハ準占有ヲ爲ス者ニハ其施行ノ日ヨリ民法ノ規定ヲ適用ス
第三十九條 民法施行前ヨリ動產ヲ占有スル者カ民法第百九十二條ノ條件ヲ具備スルトキハ民法ノ施行ト同時ニ其動產ノ上ニ行使スル權利ヲ取得ス
第四十條 遺失物ハ明治九年第五十六號布吿遺失物取扱規則第二條ニ依リ榜示ヲ爲シタル後一年內ニ其所有者ノ知レサルトキハ民法施行前ニ其榜示ヲ爲シタルトキト雖モ拾得者其所有權ヲ取得ス但漂著物ニ付テハ明治八年第六十六號布吿內國船難破及漂流物取扱規則ノ規定ニ從フ
第四十一條 埋藏物ニ付テハ特別法ノ施行ニ至ルマテ遺失物ト同一ノ手續ニ依リテ公吿ヲ爲スコトヲ要ス
第四十二條 民法施行前ヨリ民法第二百四十二條乃至第二百四十六條ノ規定ニ依レハ所有權ヲ取得スヘカリシ狀況ニ在ル者ハ民法ノ施行ト同時ニ民法ノ規定ニ從ヒテ所有權ヲ取得ス但第三者カ正當ニ取得シタル權利ヲ妨ケス
第四十三條 共有者カ民法施行前ニ於テ五年ヲ超ユル期間內共有物ノ分割ヲ爲ササル契約ヲ爲シタルトキハ其契約ハ民法施行ノ日ヨリ五年ヲ超エサル範圍內ニ於テ其效力ヲ有ス
第四十四條 民法施行前ニ設定シタル地上權ニシテ存續期間ノ定ナキモノニ付キ當事者カ民法第二百六十八條第二項ノ請求ヲ爲シタルトキハ裁判所ハ設定ノ時ヨリ二十年以上民法施行ノ日ヨリ五十年以下ノ範圍內ニ於テ其存續期間ヲ定ム
地上權者カ民法施行前ヨリ有シタル建物又ハ竹木アルトキハ地上權ハ其建物ノ朽廢又ハ其竹木ノ伐採期ニ至ルマテ存續ス
地上權者カ前項ノ建物ニ修繕又ハ變更ヲ加ヘタルトキハ地上權ハ原建物ノ朽廢スヘカリシ時ニ於テ消滅ス
第四十五條 外國人又ハ外國法人ノ爲メニ設定シタル地上權ニハ條約又ハ命令ニ別段ノ定ナキ場合ニ限リ民法ノ規定ヲ適用ス
第四十六條 民法第二百七十五條及ヒ第二百七十六條ノ期間ハ民法施行前ヨリ同條ニ定メタル事實カ始マリタルトキト雖モ其始ヨリ之ヲ起算ス
第四十七條 民法施行前ニ設定シタル永小作權ハ其存續期間カ五十年ヨリ長キトキト雖モ其效力ヲ存ス但其期間カ民法施行ノ日ヨリ起算シテ五十年ヲ超ユルトキハ其日ヨリ起算シテ之ヲ五十年ニ短縮ス
民法施行前ニ期間ヲ定メスシテ設定シタル永小作權ノ存續期間ハ慣習ニ依リ五十年ヨリ短キ場合ヲ除ク外民法施行ノ日ヨリ五十年トス
第四十八條 民法ノ規定ニ從ヘハ民法施行前ヨリ先取特權ヲ有スヘカリシ債權者ハ其施行ノ日ヨリ先取特權ヲ有ス
第四十九條 民法第三百七十條ノ規定ハ民法施行前ニ抵當權ノ目的タル不動產ニ附加シタル物ニモ亦之ヲ適用ス
第五十條 民法第三百七十四條ノ規定ハ民法施行前ニ設定シタル抵當權ニモ亦之ヲ適用ス但民法施行ノ日ヨリ一年內ニ特別ノ登記ヲ爲シタル利息其他ノ定期金ニ付テハ元本ト同一ノ順位ヲ以テ抵當權ヲ行フコトヲ得
第五十一條 民事訴訟法第六百四十九條第二項及ヒ第三項ヲ改メテ左ノ三項トス
不動產ノ上ニ存スル一切ノ先取特權及ヒ抵當權ハ賣却ニ因リテ消滅ス
留置權カ不動產ノ上ニ存スル場合ニ於テハ競落人ハ其留置權ヲ以テ擔保スル債權ヲ辨濟スル責ニ任ス
質權カ不動產ノ上ニ存スル場合ニ於テハ競落人ハ其質權ヲ以テ擔保スル債權及ヒ質權者ニ對シテ優先權ヲ有スル者ノ債權ヲ辨濟スル責ニ任ス
第四章 債權編ニ關スル規定
第五十二條 
明治十年第六十六號布吿利息制限法第三條ハ之ヲ削除ス
第五十三條 民法施行前ヨリ債務ヲ負擔スル者カ其施行ノ後ニ至リ債務ヲ履行セサルトキハ民法ノ規定ニ從ヒ不履行ノ責ニ任ス
前項ノ規定ハ債權者カ債務ノ履行ヲ受クルコトヲ拒ミ又ハ之ヲ受クルコト能ハサル場合ニ之ヲ準用ス
第五十四條 
民事訴訟法第七百三十三條第一項ヲ左ノ如ク改ム
民法第四百十四條第二項及ヒ第三項ノ場合ニ於テハ第一審ノ受訴裁判所ハ申立ニ因リ民法ノ規定ニ從ヒテ決定ヲ爲ス
第五十五條 
民事訴訟法第七百三十四條ヲ左ノ如ク改ム
債務ノ性質カ强制履行ヲ許ス場合ニ於テ第一審ノ受訴裁判所ハ申立ニ因リ決定ヲ以テ相當ノ期間ヲ定メ債務者カ其期間內ニ履行ヲ爲ササルトキハ其遲延ノ期間ニ應シ一定ノ賠償ヲ爲スヘキコト又ハ直チニ損害ノ賠償ヲ爲スヘキコトヲ命スルコトヲ要ス
第五十六條 金錢ヲ目的トスル債務ヲ負擔シタル者カ民法施行前ヨリ其履行ヲ怠リタルトキハ損害賠償ノ額ハ其施行ノ日以後ハ民法第四百四條ニ定メタル利率ニ依リテ之ヲ定ム但民法第四百十九條第一項但書ノ適用ヲ妨ケス
第五十七條 指圖證券、無記名證券及ヒ民法第四百七十一條ニ揭ケタル證券ハ公示催吿ノ手續ニ依リテ之ヲ無效ト爲スコトヲ得
第五十八條 民法施行前ニ發生シタル債務ト雖モ相殺ニ因リテ之ヲ免ルルコトヲ得
雙方ノ債務カ民法施行前ヨリ互ニ相殺ヲ爲スニ適シタルトキハ相殺ノ意思表示ハ民法施行ノ日ニ遡リテ其效力ヲ生ス
第五十九條 民法第六百五條ノ規定ハ民法施行前ニ爲シタル不動產ノ賃貸借ニモ亦之ヲ適用ス
第六十條 第四十五條ノ規定ハ外國人又ハ外國法人ニ土地ヲ賃貸シタル場合ニ之ヲ準用ス
第六十一條 
刑法附則第五十四條乃至第六十條ハ之ヲ削除ス
第五章 親族編ニ關スル規定
第六十二條 民法施行ノ際家族タル者ハ民法ノ規定ニ依レハ家族タルコトヲ得サル者ト雖モ之ヲ家族トス
家族ハ民法施行ノ日ヨリ民法ノ規定ニ從ヒテ戶主權ニ服ス
第六十三條 民法ノ規定ニ依レハ父又ハ母ノ家ニ入ルヘキ者ト雖モ民法施行ノ際他家ニ在ル者ニハ其規定ヲ適用セス
第六十四條 民法施行前ニ隱居者又ハ家督相續人カ詐欺又ハ强迫ニ因リ隱居ヲ爲シ又ハ相續ヲ承認シタルトキハ民法第七百五十九條ノ規定ニ依リテ之ヲ取消スコトヲ得但第三十二條及ヒ第三十四條ノ適用ヲ妨ケス
民法第七百六十條ノ規定ハ民法施行前ニ家督相續人ノ債權者ト爲リタル者ニモ亦之ヲ適用ス
第六十五條 民法施行前ニ爲シタル婚姻又ハ養子緣組カ其當時ノ法律ニ依レハ無效ナルトキト雖モ民法ノ規定ニ依リ有效ナルヘキトキハ民法施行ノ日ヨリ有效トス
第六十六條 民法第七百六十七條第一項ノ期間ハ前婚カ民法施行前ニ解消シ又ハ取消サレタルトキト雖モ其解消又ハ取消ノ時ヨリ之ヲ起算ス
第六十七條 民法施行前ニ生シタル事實カ民法ニ依リ婚姻又ハ養子緣組ノ取消ノ原因タルヘキトキハ其婚姻又ハ養子緣組ハ之ヲ取消スコトヲ得但其事實カ旣ニ民法ニ定メタル期間ヲ經過シタルモノナルトキハ此限ニ在ラス
第六十八條 民法施行前ニ爲シタル婚姻又ハ養子緣組ト雖モ其施行ノ日ヨリ民法ニ定メタル效力ヲ生ス
第六十九條 民法施行前ニ婚姻ヲ爲シタル者カ夫婦ノ財產ニ付キ別段ノ契約ヲ爲ササリシトキハ其財產關係ハ民法施行ノ日ヨリ法定財產制ニ依ル
民法施行前ニ夫婦カ其財產ニ付キ契約ヲ爲シタルトキハ其契約ハ婚姻屆出ノ後ニ爲シタルモノト雖モ其效力ヲ存ス但其契約カ法定財產制ニ異ナルトキハ民法施行ノ日ヨリ六个月內ニ其登記ヲ爲スニ非サレハ之ヲ以テ夫婦ノ承繼人及ヒ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第七十條 民法施行前ニ生シタル事實カ民法ニ依リ離婚又ハ離緣ノ原因タルヘキトキハ夫婦又ハ養子緣組ノ當事者ノ一方ハ離婚又ハ離緣ノ訴ヲ提起スルコトヲ得
第六十七條但書ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第七十一條 嫡出ノ推定及ヒ否認ニ關スル民法ノ規定ハ民法施行前ニ懷胎シタル子ニモ亦之ヲ適用ス
第七十二條 子ハ民法施行ノ日ヨリ民法ノ規定ニ從ヒテ父又ハ母ノ親權ニ服ス
第七十三條 裁判所ハ民法施行前ニ生シタル事實ニ據リテ親權又ハ管理權ノ喪失ヲ宣吿スルコトヲ得
第七十四條 民法第九百條第一號ノ場合ニ於テ民法施行ノ際未成年者ノ後見人タル者アルトキハ其後見人ハ民法施行ノ日ヨリ民法ノ規定ニ從ヒテ其任務ヲ行フ
第七十五條 民法第九百條第一號ノ場合ニ於テ民法施行ノ際未成年者カ後見人ヲ有セサルトキハ民法ニ定メタル者其後見人ト爲ル
第七十六條 民法施行前ニ民法第七條又ハ第十一條ニ揭ケタル原因ノ爲メニ後見人ヲ附シタル者アル場合ニ於テ後見人其他民法第七條ニ揭ケタル者ノ請求ニ因リ禁治產ノ宣吿アリタルトキハ後見人ハ其宣吿ノ時ヨリ民法ノ規定ニ從ヒテ後見人ノ任務ヲ行ヒ準禁治產ノ宣吿アリタルトキハ保佐人ノ任務ヲ行フ
第七十七條 民法施行前ニ未成年又ハ民法第七條若クハ第十一條ニ揭ケタル原因ニ非サル事由ノ爲メニ選任シタル後見人ノ任務ハ民法施行ノ日ヨリ終了ス
未成年者ノ後見人又ハ民法第七條若クハ第十一條ニ揭ケタル原因ノ爲メニ選任シタル後見人カ民法第九百八條ニ該當スルトキ亦同シ
第七十八條 民法第九百三十七條及ヒ第九百四十條乃至第九百四十二條ノ規定ハ前條ノ場合ニ之ヲ準用ス
民法第九百三十八條ノ規定ハ前條第二項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第七十九條 第七十四條又ハ第七十六條ノ規定ニ依リテ後見人ノ任務ヲ行フ者ハ後見監督人ヲ選任セシムル爲メ遲滯ナク親族會ノ招集ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ要ス若シ之ニ違反シタルトキハ親族會ハ其後見人ヲ免黜スルコトヲ得
第八十條 第七十四條又ハ第七十六條ノ規定ニ依リテ後見人ノ任務ヲ行フ者ハ遲滯ナク被後見人ノ財產ヲ調査シ其目錄ヲ調製スルコトヲ要ス
民法第九百十七條第二項、第三項、第九百十八條及ヒ第九百十九條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第八十一條 民法第九百二十四條及ヒ第九百二十七條ノ規定ハ後見人カ第七十四條又ハ第七十六條ノ規定ニ依リテ其任務ヲ行フ場合ニ之ヲ準用ス
第八十二條 民法第九百三十條ノ規定ハ後見人カ民法施行前ニ被後見人ノ財產又ハ被後見人ニ對スル第三者ノ權利ヲ讓受ケタル場合ニモ亦之ヲ適用ス
第八十三條 後見人カ民法施行前ヨリ被後見人ノ財產ヲ賃借セルトキハ後見監督人ヲ選任セシムル爲メ招集シタル親族會ノ同意ヲ求ムルコトヲ要ス若シ親族會カ同意ヲ爲ササリシトキハ賃貸借ハ其效力ヲ失フ
第六章 相續編ニ關スル規定
第八十四條 民法施行前ニ民法第九百六十九條及ヒ第九百九十七條ニ揭ケタル行爲ヲ爲シタル者ト雖モ相續人タルコトヲ得ス
第八十五條 民法第九百七十四條及ヒ第九百九十五條ノ規定ハ相續人タルヘキ者カ民法施行前ニ死亡シ又ハ其相續權ヲ失ヒタル場合ニモ亦之ヲ適用ス
第八十六條 相續人廢除ノ原因タル事實カ民法施行前ニ生シタルトキト雖モ廢除ノ請求ヲ爲スコトヲ得
第八十七條 相續人廢除ノ取消ニ關スル民法ノ規定ハ其施行前ニ廢除シタル相續人ニモ亦之ヲ適用ス
第八十八條 家督相續人指定ノ取消ニ關スル民法ノ規定ハ其施行前ニ指定シタル家督相續人ニモ亦之ヲ適用ス
第八十九條 民法第九百八十九條ノ規定ハ民法施行前ニ前戶主ノ債權者ト爲リタル者ニモ亦之ヲ適用ス
第九十條 民法第千七條及ヒ第千八條ノ規定ハ民法施行前ニ爲シタル贈與ニモ亦之ヲ適用ス
第九十一條 相續ノ承認、抛棄及ヒ財產ノ分離ニ關スル民法ノ規定ハ其施行前ニ開始シタル相續ニハ之ヲ適用セス
第九十二條 相續人曠缺ノ場合ニ關スル民法ノ規定ハ其施行前ニ開始シタル相續ニ付テハ其施行ノ日ヨリ之ヲ適用ス
第九十三條 相續財產ノ管理人カ民法第千五十七條ノ規定ニ依リ爲スヘキ公吿ハ裁判所カ同法第千五十八條ノ規定ニ依リ爲スヘキ公吿ト同一ノ方法ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ要ス
第九十四條 遺言ノ成立及ヒ取消ニ付テハ其當時ノ法律ヲ適用シ其效力ニ付テハ遺言者ノ死亡ノ時ノ法律ヲ適用ス
第九十五條 民法第千百三十二條乃至第千百三十六條及ヒ第千百三十八條乃至第千百四十五條ノ規定ハ民法施行前ニ爲シタル贈與ニモ亦之ヲ適用ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル民法施行法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十一年六月十五日
内閣総理大臣 侯爵 伊藤博文
海軍大臣 侯爵 西郷従道
大蔵大臣 伯爵 井上馨
内務大臣 子爵 芳川顕正
外務大臣 男爵 西徳二郎
陸軍大臣 子爵 桂太郎
司法大臣 曽祢荒助
逓信大臣 文学博士 男爵 末松謙澄
農商務大臣 金子堅太郎
文部大臣 文学博士 外山正一
法律第十一号
民法施行法
第一章
通則
第二章
総則編ニ関スル規定
第三章
物権編ニ関スル規定
第四章
債権編ニ関スル規定
第五章
親族編ニ関スル規定
第六章
相続編ニ関スル規定
民法施行法
第一章 通則
第一条 民法施行前ニ生シタル事項ニ付テハ本法ニ別段ノ定アル場合ヲ除ク外民法ノ規定ヲ適用セス
第二条 民法ニ於テ破産ト称スルハ民事ニ付テハ家資分散ヲ謂フ
第三条 身代限ノ処分ヲ受ケタル者ハ其債務ヲ完済スルマテハ之ヲ破産者ト看做ス
第四条 証書ハ確定日附アルニ非サレハ第三者ニ対シ其作成ノ日ニ付キ完全ナル証拠力ヲ有セス
第五条 証書ハ左ノ場合ニ限リ確定日附アルモノトス
一 公正証書ナルトキハ其日附ヲ以テ確定日附トス
二 登記所又ハ公証人役場ニ於テ私署証書ニ日附アル印章ヲ押捺シタルトキハ其印章ノ日附ヲ以テ確定日附トス
三 私署証書ノ署名者中ニ死亡シタル者アルトキハ其死亡ノ日ヨリ確定日附アルモノトス
四 確定日附アル証書中ニ私署証書ヲ引用シタルトキハ其証書ノ日附ヲ以テ引用シタル私署証書ノ確定日附トス
五 官庁又ハ公署ニ於テ私署証書ニ或事項ヲ記入シ之ニ日附ヲ記載シタルトキハ其日附ヲ以テ其証書ノ確定日附トス
第六条 私署証書ニ確定日附ヲ附スルコトヲ登記所又ハ公証人役場ニ請求スル者アルトキハ登記官吏又ハ公証人ハ確定日附簿ニ署名者ノ氏名又ハ其一人ノ氏名ニ外何名ト附記シタルモノ及ヒ件名ヲ記載シ其証書ニ登簿番号ヲ記入シ帳簿及ヒ証書ニ日附アル印章ヲ押捺シ且其印章ヲ以テ帳簿ト証書トニ割印ヲ為スコトヲ要ス
証書カ数紙ヨリ成レル場合ニ於テハ前項ニ掲ケタル印章ヲ以テ毎紙ノ綴目又ハ継目ニ契印ヲ為スコトヲ要ス
第七条 確定日附簿ニハ予メ登簿番号ヲ印刷シ請求順ヲ以テ前条ノ規定ニ従ヒ記入ヲ為スコトヲ要ス
確定日附簿ニハ地方裁判所長其紙数ヲ表紙ノ裏面ニ記載シ職氏名ヲ署シ職印ヲ押捺シ且職印ヲ以テ毎紙ノ綴目ニ契印ヲ為スコトヲ要ス
第八条 私署証書ニ確定日附ヲ附スルコトヲ登記所又ハ公証人役場ニ請求スル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ手数料ヲ納ムルコトヲ要ス
第九条 左ノ法令ハ民法施行ノ日ヨリ之ヲ廃止ス
一 明治五年第二百九十五号布告
二 明治六年第二十一号布告
三 同年第二十八号布告
四 同年第四十号布告
五 同年第百六十二号布告
六 同年第百七十七号布告
七 同年第二百十五号布告代人規則
八 同年第二百五十二号布告
九 同年第三百六号布告動産不動産書入金穀貸借規則
十 同年第三百六十二号布告出訴期限規則
十一 明治七年第二十七号布告
十二 明治八年第六号布告
十三 同年第六十三号布告
十四 同年第百二号布告金穀貸借請人証人弁償規則
十五 同年第百四十八号布告建物書入質規則及ヒ建物売買譲渡規則
十六 明治九年第七十五号布告
十七 同年第九十九号布告
十八 明治十年第五十号布告
十九 明治十四年第七十三号布告
二十 明治十七年第二十号布告
二十一 明治二十三年法律第九十四号財産委棄法
二十二 同年勅令第二百十七号弁済提供規則
明治六年第十八号布告地所質入書入規則ハ第十一条ヲ除ク外民法施行ノ日ヨリ之ヲ廃止ス
第十条 民法中不動産上ノ権利ニ関スル規定ハ当分ノ内之ヲ沖縄県ニ施行セス
第十一条 本法ハ民法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第二章 総則編ニ関スル規定
第十二条 民法施行前ニ民法第七条又ハ第十一条ニ掲ケタル原因ノ為メニ後見人ヲ附シタル者ハ其施行ノ日ヨリ禁治産者又ハ準禁治産者ト看做ス
後見人ハ民法施行ノ日ヨリ一个月内ニ禁治産又ハ準禁治産ノ請求ヲ為スコトヲ要ス
第十三条 後見人其他民法第七条ニ掲ケタル者カ民法施行ノ日ヨリ一个月内ニ禁治産又ハ準禁治産ノ請求ヲ為ササリシトキハ其期間経過ノ後ハ前条第一項ノ規定ヲ適用セス
前項ノ期間内ニ禁治産又ハ準禁治産ノ請求アリタルモ裁判所ニ於テ之ヲ却下シタルトキハ抗告期間経過ノ後、若シ抗告アリタルトキハ最後ノ抗告棄却ノ時ヨリ又訴ニ於テ禁治産又ハ準禁治産ノ宣告ヲ取消シタルトキハ其判決確定ノ日ヨリ前条第一項ノ規定ヲ適用セス
第十四条 
刑法第十条第三号、第三十五条、第三十六条、刑法附則第四十一条、陸軍刑法第十八条第四号及ヒ海軍刑法第九条第四号、第二十二条ハ之ヲ削除ス
刑法第五十五条中「行政ノ処分ヲ以テ治産ノ禁ノ幾分ヲ免スルヿヲ得但」ノ二十三字及ヒ陸軍刑法第三十二条中「第三十五条第三十六条」ノ十字ハ之ヲ削除ス
第十五条 民法施行ノ日ニ於テ刑事禁治産者タル者ハ其施行ノ日ヨリ能力ヲ回復ス
第十六条 民法施行前ヨリ刑事禁治産者ノ財産ヲ管理スル者ハ刑事禁治産者又ハ刑事禁治産者カ定メタル他ノ管理者カ其財産ヲ管理スルコトヲ得ルマテ管理ヲ継続スルコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テ管理者ハ民法第百三条ニ定メタル権限ヲ有ス但刑事禁治産者カ別段ノ意思ヲ表示シタルトキハ此限ニ在ラス
第十七条 民法第二十五条乃至第二十九条ノ規定ハ民法施行前ニ住所又ハ居所ヲ去リタル者ニ付テモ亦之ヲ適用ス
民法施行前ヨリ不在者ノ財産ヲ管理スル者ハ其施行ノ日ヨリ民法ノ規定ニ従ヒテ其管理ヲ継続ス
第十八条 民法第三十条及ヒ第三十一条ノ規定ハ民法施行前ヨリ生死分明ナラサル者ニモ亦之ヲ適用ス
民法施行前既ニ民法第三十条ノ期間ヲ経過シタル者ニ付テハ直チニ失踪ノ宣告ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ失踪者ハ民法ノ施行ト同時ニ死亡シタルモノト看做ス
第十九条 民法施行前ヨリ独立ノ財産ヲ有スル社団又ハ財団ニシテ民法第三十四条ニ掲ケタル目的ヲ有スルモノハ之ヲ法人トス
前項ノ法人ノ代表者ハ民法第三十七条又ハ第三十九条ニ掲ケタル事項其他社員又ハ寄附者カ定メタル事項ヲ記載シタル書面ヲ作リ民法施行ノ日ヨリ三个月内ニ之ヲ主務官庁ニ差出タシ其認可ヲ請フコトヲ要ス此場合ニ於テ主務官庁ハ其書面カ民法其他ノ法令ニ反スルトキ又ハ公益ノ為メ必要ト認ムルトキハ其変更ヲ命スルコトヲ要ス
前項ノ規定ニ従ヒテ認可ヲ得タル書面ハ定款又ハ寄附行為ト同一ノ効力ヲ有ス
第二十条 法人ノ代表者カ前条第二項ノ規定ニ従ヒ主務官庁ノ認可ヲ得タルトキハ二週間内ニ各事務所ノ所在地ニ於テ左ノ事項ヲ登記スルコトヲ要ス
一 民法第四十六条第一項第一号乃至第三号及ヒ第五号乃至第八号ニ掲ケタル事項
二 主務官庁ノ認可ノ年月日
前項ノ期間ハ主務官庁ノ認可書ノ到達シタル時ヨリ之ヲ起算ス
第一項ノ規定ニ従ヒテ為シタル登記ハ民法第四十六条第一項ニ定メタル登記ト同一ノモノト看做ス
第二十一条 第十九条第一項ノ法人カ財産目録又ハ社員名簿ヲ備ヘサルトキハ民法施行ノ後遅滞ナク之ヲ作ルコトヲ要ス
第二十二条 法人ノ代表者カ前三条ノ規定ニ反シ認可ヲ受ケ、登記ヲ為シ又ハ財産目録若クハ社員名簿ヲ作ルコトヲ怠リタルトキハ五円以上二百円以下ノ過料ニ処セラル
第二十三条 第十九条第一項ノ法人カ其目的以外ノ事業ヲ為シ又ハ認可ノ条件ニ違反シ其他公益ヲ害スヘキ行為ヲ為シタルトキハ主務官庁ハ其解散ヲ命スルコトヲ得
第二十四条 民法ノ規定ニ依リ法人ニ関シテ登記シタル事項ハ裁判所ニ於テ遅滞ナク之ヲ公告スルコトヲ要ス
第二十五条 主務官庁カ正当ノ理由ナクシテ法人ノ設立許可ヲ取消シ又ハ其解散ヲ命シタルトキハ其法人ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第二十六条 法人ノ清算人カ民法第七十九条及ヒ第八十一条第一項ノ規定ニ依リ為スヘキ公告ハ裁判所カ為スヘキ登記事項ノ公告ト同一ノ方法ヲ以テ之ヲ為スコトヲ要ス
第二十七条 剥奪公権者及ヒ停止公権者ハ法人ノ理事、監事又ハ清算人タルコトヲ得ス
第二十八条 民法中法人ニ関スル規定ハ当分ノ内神社、寺院、祠宇及ヒ仏堂ニハ之ヲ適用セス
第二十九条 民法施行前ニ出訴期限ヲ経過シタル債権ハ時効ニ因リテ消滅シタルモノト看做ス
第三十条 民法施行前ニ出訴期限ヲ経過セサル債権ニ付テハ民法中時効ニ関スル規定ヲ適用ス
第三十一条 民法施行前ニ進行ヲ始メタル出訴期限カ民法ニ定メタル時効ノ期間ヨリ長キトキハ旧法ノ規定ニ従フ但其残期カ民法施行ノ日ヨリ起算シ民法ニ定メタル時効ノ期間ヨリ長キトキハ其日ヨリ起算シテ民法ノ規定ヲ適用ス
第三十二条 前条但書ノ規定ハ旧法ニ出訴期限ナキ権利ニ之ヲ準用ス
第三十三条 前三条ノ場合ニ於テ民法中時効ノ中断及ヒ停止ニ関スル規定ハ民法施行ノ日ヨリ之ヲ適用ス
第三十四条 第三十条乃至第三十二条ノ規定ハ時効期間ノ性質ヲ有セサル法定期間ニ之ヲ準用ス
第三章 物権編ニ関スル規定
第三十五条 慣習上物権ト認メタル権利ニシテ民法施行前ニ発生シタルモノト雖モ其施行ノ後ハ民法其他ノ法律ニ定ムルモノニ非サレハ物権タル効力ヲ有セス
第三十六条 民法ニ定メタル物権ハ民法施行前ニ発生シタルモノト雖モ其施行ノ日ヨリ民法ニ定メタル効力ヲ有ス
第三十七条 民法又ハ不動産登記法ノ規定ニ依リ登記スヘキ権利ハ従来登記ナクシテ第三者ニ対抗スルコトヲ得ヘカリシモノト雖モ民法施行ノ日ヨリ一年内ニ之ヲ登記スルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス
第三十八条 民法施行前ヨリ占有又ハ準占有ヲ為ス者ニハ其施行ノ日ヨリ民法ノ規定ヲ適用ス
第三十九条 民法施行前ヨリ動産ヲ占有スル者カ民法第百九十二条ノ条件ヲ具備スルトキハ民法ノ施行ト同時ニ其動産ノ上ニ行使スル権利ヲ取得ス
第四十条 遺失物ハ明治九年第五十六号布告遺失物取扱規則第二条ニ依リ榜示ヲ為シタル後一年内ニ其所有者ノ知レサルトキハ民法施行前ニ其榜示ヲ為シタルトキト雖モ拾得者其所有権ヲ取得ス但漂著物ニ付テハ明治八年第六十六号布告内国船難破及漂流物取扱規則ノ規定ニ従フ
第四十一条 埋蔵物ニ付テハ特別法ノ施行ニ至ルマテ遺失物ト同一ノ手続ニ依リテ公告ヲ為スコトヲ要ス
第四十二条 民法施行前ヨリ民法第二百四十二条乃至第二百四十六条ノ規定ニ依レハ所有権ヲ取得スヘカリシ状況ニ在ル者ハ民法ノ施行ト同時ニ民法ノ規定ニ従ヒテ所有権ヲ取得ス但第三者カ正当ニ取得シタル権利ヲ妨ケス
第四十三条 共有者カ民法施行前ニ於テ五年ヲ超ユル期間内共有物ノ分割ヲ為ササル契約ヲ為シタルトキハ其契約ハ民法施行ノ日ヨリ五年ヲ超エサル範囲内ニ於テ其効力ヲ有ス
第四十四条 民法施行前ニ設定シタル地上権ニシテ存続期間ノ定ナキモノニ付キ当事者カ民法第二百六十八条第二項ノ請求ヲ為シタルトキハ裁判所ハ設定ノ時ヨリ二十年以上民法施行ノ日ヨリ五十年以下ノ範囲内ニ於テ其存続期間ヲ定ム
地上権者カ民法施行前ヨリ有シタル建物又ハ竹木アルトキハ地上権ハ其建物ノ朽廃又ハ其竹木ノ伐採期ニ至ルマテ存続ス
地上権者カ前項ノ建物ニ修繕又ハ変更ヲ加ヘタルトキハ地上権ハ原建物ノ朽廃スヘカリシ時ニ於テ消滅ス
第四十五条 外国人又ハ外国法人ノ為メニ設定シタル地上権ニハ条約又ハ命令ニ別段ノ定ナキ場合ニ限リ民法ノ規定ヲ適用ス
第四十六条 民法第二百七十五条及ヒ第二百七十六条ノ期間ハ民法施行前ヨリ同条ニ定メタル事実カ始マリタルトキト雖モ其始ヨリ之ヲ起算ス
第四十七条 民法施行前ニ設定シタル永小作権ハ其存続期間カ五十年ヨリ長キトキト雖モ其効力ヲ存ス但其期間カ民法施行ノ日ヨリ起算シテ五十年ヲ超ユルトキハ其日ヨリ起算シテ之ヲ五十年ニ短縮ス
民法施行前ニ期間ヲ定メスシテ設定シタル永小作権ノ存続期間ハ慣習ニ依リ五十年ヨリ短キ場合ヲ除ク外民法施行ノ日ヨリ五十年トス
第四十八条 民法ノ規定ニ従ヘハ民法施行前ヨリ先取特権ヲ有スヘカリシ債権者ハ其施行ノ日ヨリ先取特権ヲ有ス
第四十九条 民法第三百七十条ノ規定ハ民法施行前ニ抵当権ノ目的タル不動産ニ附加シタル物ニモ亦之ヲ適用ス
第五十条 民法第三百七十四条ノ規定ハ民法施行前ニ設定シタル抵当権ニモ亦之ヲ適用ス但民法施行ノ日ヨリ一年内ニ特別ノ登記ヲ為シタル利息其他ノ定期金ニ付テハ元本ト同一ノ順位ヲ以テ抵当権ヲ行フコトヲ得
第五十一条 民事訴訟法第六百四十九条第二項及ヒ第三項ヲ改メテ左ノ三項トス
不動産ノ上ニ存スル一切ノ先取特権及ヒ抵当権ハ売却ニ因リテ消滅ス
留置権カ不動産ノ上ニ存スル場合ニ於テハ競落人ハ其留置権ヲ以テ担保スル債権ヲ弁済スル責ニ任ス
質権カ不動産ノ上ニ存スル場合ニ於テハ競落人ハ其質権ヲ以テ担保スル債権及ヒ質権者ニ対シテ優先権ヲ有スル者ノ債権ヲ弁済スル責ニ任ス
第四章 債権編ニ関スル規定
第五十二条 
明治十年第六十六号布告利息制限法第三条ハ之ヲ削除ス
第五十三条 民法施行前ヨリ債務ヲ負担スル者カ其施行ノ後ニ至リ債務ヲ履行セサルトキハ民法ノ規定ニ従ヒ不履行ノ責ニ任ス
前項ノ規定ハ債権者カ債務ノ履行ヲ受クルコトヲ拒ミ又ハ之ヲ受クルコト能ハサル場合ニ之ヲ準用ス
第五十四条 
民事訴訟法第七百三十三条第一項ヲ左ノ如ク改ム
民法第四百十四条第二項及ヒ第三項ノ場合ニ於テハ第一審ノ受訴裁判所ハ申立ニ因リ民法ノ規定ニ従ヒテ決定ヲ為ス
第五十五条 
民事訴訟法第七百三十四条ヲ左ノ如ク改ム
債務ノ性質カ強制履行ヲ許ス場合ニ於テ第一審ノ受訴裁判所ハ申立ニ因リ決定ヲ以テ相当ノ期間ヲ定メ債務者カ其期間内ニ履行ヲ為ササルトキハ其遅延ノ期間ニ応シ一定ノ賠償ヲ為スヘキコト又ハ直チニ損害ノ賠償ヲ為スヘキコトヲ命スルコトヲ要ス
第五十六条 金銭ヲ目的トスル債務ヲ負担シタル者カ民法施行前ヨリ其履行ヲ怠リタルトキハ損害賠償ノ額ハ其施行ノ日以後ハ民法第四百四条ニ定メタル利率ニ依リテ之ヲ定ム但民法第四百十九条第一項但書ノ適用ヲ妨ケス
第五十七条 指図証券、無記名証券及ヒ民法第四百七十一条ニ掲ケタル証券ハ公示催告ノ手続ニ依リテ之ヲ無効ト為スコトヲ得
第五十八条 民法施行前ニ発生シタル債務ト雖モ相殺ニ因リテ之ヲ免ルルコトヲ得
双方ノ債務カ民法施行前ヨリ互ニ相殺ヲ為スニ適シタルトキハ相殺ノ意思表示ハ民法施行ノ日ニ遡リテ其効力ヲ生ス
第五十九条 民法第六百五条ノ規定ハ民法施行前ニ為シタル不動産ノ賃貸借ニモ亦之ヲ適用ス
第六十条 第四十五条ノ規定ハ外国人又ハ外国法人ニ土地ヲ賃貸シタル場合ニ之ヲ準用ス
第六十一条 
刑法附則第五十四条乃至第六十条ハ之ヲ削除ス
第五章 親族編ニ関スル規定
第六十二条 民法施行ノ際家族タル者ハ民法ノ規定ニ依レハ家族タルコトヲ得サル者ト雖モ之ヲ家族トス
家族ハ民法施行ノ日ヨリ民法ノ規定ニ従ヒテ戸主権ニ服ス
第六十三条 民法ノ規定ニ依レハ父又ハ母ノ家ニ入ルヘキ者ト雖モ民法施行ノ際他家ニ在ル者ニハ其規定ヲ適用セス
第六十四条 民法施行前ニ隠居者又ハ家督相続人カ詐欺又ハ強迫ニ因リ隠居ヲ為シ又ハ相続ヲ承認シタルトキハ民法第七百五十九条ノ規定ニ依リテ之ヲ取消スコトヲ得但第三十二条及ヒ第三十四条ノ適用ヲ妨ケス
民法第七百六十条ノ規定ハ民法施行前ニ家督相続人ノ債権者ト為リタル者ニモ亦之ヲ適用ス
第六十五条 民法施行前ニ為シタル婚姻又ハ養子縁組カ其当時ノ法律ニ依レハ無効ナルトキト雖モ民法ノ規定ニ依リ有効ナルヘキトキハ民法施行ノ日ヨリ有効トス
第六十六条 民法第七百六十七条第一項ノ期間ハ前婚カ民法施行前ニ解消シ又ハ取消サレタルトキト雖モ其解消又ハ取消ノ時ヨリ之ヲ起算ス
第六十七条 民法施行前ニ生シタル事実カ民法ニ依リ婚姻又ハ養子縁組ノ取消ノ原因タルヘキトキハ其婚姻又ハ養子縁組ハ之ヲ取消スコトヲ得但其事実カ既ニ民法ニ定メタル期間ヲ経過シタルモノナルトキハ此限ニ在ラス
第六十八条 民法施行前ニ為シタル婚姻又ハ養子縁組ト雖モ其施行ノ日ヨリ民法ニ定メタル効力ヲ生ス
第六十九条 民法施行前ニ婚姻ヲ為シタル者カ夫婦ノ財産ニ付キ別段ノ契約ヲ為ササリシトキハ其財産関係ハ民法施行ノ日ヨリ法定財産制ニ依ル
民法施行前ニ夫婦カ其財産ニ付キ契約ヲ為シタルトキハ其契約ハ婚姻届出ノ後ニ為シタルモノト雖モ其効力ヲ存ス但其契約カ法定財産制ニ異ナルトキハ民法施行ノ日ヨリ六个月内ニ其登記ヲ為スニ非サレハ之ヲ以テ夫婦ノ承継人及ヒ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス
第七十条 民法施行前ニ生シタル事実カ民法ニ依リ離婚又ハ離縁ノ原因タルヘキトキハ夫婦又ハ養子縁組ノ当事者ノ一方ハ離婚又ハ離縁ノ訴ヲ提起スルコトヲ得
第六十七条但書ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第七十一条 嫡出ノ推定及ヒ否認ニ関スル民法ノ規定ハ民法施行前ニ懐胎シタル子ニモ亦之ヲ適用ス
第七十二条 子ハ民法施行ノ日ヨリ民法ノ規定ニ従ヒテ父又ハ母ノ親権ニ服ス
第七十三条 裁判所ハ民法施行前ニ生シタル事実ニ拠リテ親権又ハ管理権ノ喪失ヲ宣告スルコトヲ得
第七十四条 民法第九百条第一号ノ場合ニ於テ民法施行ノ際未成年者ノ後見人タル者アルトキハ其後見人ハ民法施行ノ日ヨリ民法ノ規定ニ従ヒテ其任務ヲ行フ
第七十五条 民法第九百条第一号ノ場合ニ於テ民法施行ノ際未成年者カ後見人ヲ有セサルトキハ民法ニ定メタル者其後見人ト為ル
第七十六条 民法施行前ニ民法第七条又ハ第十一条ニ掲ケタル原因ノ為メニ後見人ヲ附シタル者アル場合ニ於テ後見人其他民法第七条ニ掲ケタル者ノ請求ニ因リ禁治産ノ宣告アリタルトキハ後見人ハ其宣告ノ時ヨリ民法ノ規定ニ従ヒテ後見人ノ任務ヲ行ヒ準禁治産ノ宣告アリタルトキハ保佐人ノ任務ヲ行フ
第七十七条 民法施行前ニ未成年又ハ民法第七条若クハ第十一条ニ掲ケタル原因ニ非サル事由ノ為メニ選任シタル後見人ノ任務ハ民法施行ノ日ヨリ終了ス
未成年者ノ後見人又ハ民法第七条若クハ第十一条ニ掲ケタル原因ノ為メニ選任シタル後見人カ民法第九百八条ニ該当スルトキ亦同シ
第七十八条 民法第九百三十七条及ヒ第九百四十条乃至第九百四十二条ノ規定ハ前条ノ場合ニ之ヲ準用ス
民法第九百三十八条ノ規定ハ前条第二項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第七十九条 第七十四条又ハ第七十六条ノ規定ニ依リテ後見人ノ任務ヲ行フ者ハ後見監督人ヲ選任セシムル為メ遅滞ナク親族会ノ招集ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ要ス若シ之ニ違反シタルトキハ親族会ハ其後見人ヲ免黜スルコトヲ得
第八十条 第七十四条又ハ第七十六条ノ規定ニ依リテ後見人ノ任務ヲ行フ者ハ遅滞ナク被後見人ノ財産ヲ調査シ其目録ヲ調製スルコトヲ要ス
民法第九百十七条第二項、第三項、第九百十八条及ヒ第九百十九条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第八十一条 民法第九百二十四条及ヒ第九百二十七条ノ規定ハ後見人カ第七十四条又ハ第七十六条ノ規定ニ依リテ其任務ヲ行フ場合ニ之ヲ準用ス
第八十二条 民法第九百三十条ノ規定ハ後見人カ民法施行前ニ被後見人ノ財産又ハ被後見人ニ対スル第三者ノ権利ヲ譲受ケタル場合ニモ亦之ヲ適用ス
第八十三条 後見人カ民法施行前ヨリ被後見人ノ財産ヲ賃借セルトキハ後見監督人ヲ選任セシムル為メ招集シタル親族会ノ同意ヲ求ムルコトヲ要ス若シ親族会カ同意ヲ為ササリシトキハ賃貸借ハ其効力ヲ失フ
第六章 相続編ニ関スル規定
第八十四条 民法施行前ニ民法第九百六十九条及ヒ第九百九十七条ニ掲ケタル行為ヲ為シタル者ト雖モ相続人タルコトヲ得ス
第八十五条 民法第九百七十四条及ヒ第九百九十五条ノ規定ハ相続人タルヘキ者カ民法施行前ニ死亡シ又ハ其相続権ヲ失ヒタル場合ニモ亦之ヲ適用ス
第八十六条 相続人廃除ノ原因タル事実カ民法施行前ニ生シタルトキト雖モ廃除ノ請求ヲ為スコトヲ得
第八十七条 相続人廃除ノ取消ニ関スル民法ノ規定ハ其施行前ニ廃除シタル相続人ニモ亦之ヲ適用ス
第八十八条 家督相続人指定ノ取消ニ関スル民法ノ規定ハ其施行前ニ指定シタル家督相続人ニモ亦之ヲ適用ス
第八十九条 民法第九百八十九条ノ規定ハ民法施行前ニ前戸主ノ債権者ト為リタル者ニモ亦之ヲ適用ス
第九十条 民法第千七条及ヒ第千八条ノ規定ハ民法施行前ニ為シタル贈与ニモ亦之ヲ適用ス
第九十一条 相続ノ承認、抛棄及ヒ財産ノ分離ニ関スル民法ノ規定ハ其施行前ニ開始シタル相続ニハ之ヲ適用セス
第九十二条 相続人曠欠ノ場合ニ関スル民法ノ規定ハ其施行前ニ開始シタル相続ニ付テハ其施行ノ日ヨリ之ヲ適用ス
第九十三条 相続財産ノ管理人カ民法第千五十七条ノ規定ニ依リ為スヘキ公告ハ裁判所カ同法第千五十八条ノ規定ニ依リ為スヘキ公告ト同一ノ方法ヲ以テ之ヲ為スコトヲ要ス
第九十四条 遺言ノ成立及ヒ取消ニ付テハ其当時ノ法律ヲ適用シ其効力ニ付テハ遺言者ノ死亡ノ時ノ法律ヲ適用ス
第九十五条 民法第千百三十二条乃至第千百三十六条及ヒ第千百三十八条乃至第千百四十五条ノ規定ハ民法施行前ニ為シタル贈与ニモ亦之ヲ適用ス