第三十五條 慣習上物權ト認メタル權利ニシテ民法施行前ニ發生シタルモノト雖モ其施行ノ後ハ民法其他ノ法律ニ定ムルモノニ非サレハ物權タル效力ヲ有セス
第三十六條 民法ニ定メタル物權ハ民法施行前ニ發生シタルモノト雖モ其施行ノ日ヨリ民法ニ定メタル效力ヲ有ス
第三十七條 民法又ハ不動產登記法ノ規定ニ依リ登記スヘキ權利ハ從來登記ナクシテ第三者ニ對抗スルコトヲ得ヘカリシモノト雖モ民法施行ノ日ヨリ一年內ニ之ヲ登記スルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第三十八條 民法施行前ヨリ占有又ハ準占有ヲ爲ス者ニハ其施行ノ日ヨリ民法ノ規定ヲ適用ス
第三十九條 民法施行前ヨリ動產ヲ占有スル者カ民法第百九十二條ノ條件ヲ具備スルトキハ民法ノ施行ト同時ニ其動產ノ上ニ行使スル權利ヲ取得ス
第四十條 遺失物ハ明治九年第五十六號布吿遺失物取扱規則第二條ニ依リ榜示ヲ爲シタル後一年內ニ其所有者ノ知レサルトキハ民法施行前ニ其榜示ヲ爲シタルトキト雖モ拾得者其所有權ヲ取得ス但漂著物ニ付テハ明治八年第六十六號布吿內國船難破及漂流物取扱規則ノ規定ニ從フ
第四十一條 埋藏物ニ付テハ特別法ノ施行ニ至ルマテ遺失物ト同一ノ手續ニ依リテ公吿ヲ爲スコトヲ要ス
第四十二條 民法施行前ヨリ民法第二百四十二條乃至第二百四十六條ノ規定ニ依レハ所有權ヲ取得スヘカリシ狀況ニ在ル者ハ民法ノ施行ト同時ニ民法ノ規定ニ從ヒテ所有權ヲ取得ス但第三者カ正當ニ取得シタル權利ヲ妨ケス
第四十三條 共有者カ民法施行前ニ於テ五年ヲ超ユル期間內共有物ノ分割ヲ爲ササル契約ヲ爲シタルトキハ其契約ハ民法施行ノ日ヨリ五年ヲ超エサル範圍內ニ於テ其效力ヲ有ス
第四十四條 民法施行前ニ設定シタル地上權ニシテ存續期間ノ定ナキモノニ付キ當事者カ民法第二百六十八條第二項ノ請求ヲ爲シタルトキハ裁判所ハ設定ノ時ヨリ二十年以上民法施行ノ日ヨリ五十年以下ノ範圍內ニ於テ其存續期間ヲ定ム
地上權者カ民法施行前ヨリ有シタル建物又ハ竹木アルトキハ地上權ハ其建物ノ朽廢又ハ其竹木ノ伐採期ニ至ルマテ存續ス
地上權者カ前項ノ建物ニ修繕又ハ變更ヲ加ヘタルトキハ地上權ハ原建物ノ朽廢スヘカリシ時ニ於テ消滅ス
第四十五條 外國人又ハ外國法人ノ爲メニ設定シタル地上權ニハ條約又ハ命令ニ別段ノ定ナキ場合ニ限リ民法ノ規定ヲ適用ス
第四十六條 民法第二百七十五條及ヒ第二百七十六條ノ期間ハ民法施行前ヨリ同條ニ定メタル事實カ始マリタルトキト雖モ其始ヨリ之ヲ起算ス
第四十七條 民法施行前ニ設定シタル永小作權ハ其存續期間カ五十年ヨリ長キトキト雖モ其效力ヲ存ス但其期間カ民法施行ノ日ヨリ起算シテ五十年ヲ超ユルトキハ其日ヨリ起算シテ之ヲ五十年ニ短縮ス
民法施行前ニ期間ヲ定メスシテ設定シタル永小作權ノ存續期間ハ慣習ニ依リ五十年ヨリ短キ場合ヲ除ク外民法施行ノ日ヨリ五十年トス
第四十八條 民法ノ規定ニ從ヘハ民法施行前ヨリ先取特權ヲ有スヘカリシ債權者ハ其施行ノ日ヨリ先取特權ヲ有ス
第四十九條 民法第三百七十條ノ規定ハ民法施行前ニ抵當權ノ目的タル不動產ニ附加シタル物ニモ亦之ヲ適用ス
第五十條 民法第三百七十四條ノ規定ハ民法施行前ニ設定シタル抵當權ニモ亦之ヲ適用ス但民法施行ノ日ヨリ一年內ニ特別ノ登記ヲ爲シタル利息其他ノ定期金ニ付テハ元本ト同一ノ順位ヲ以テ抵當權ヲ行フコトヲ得
第五十一條 民事訴訟法第六百四十九條第二項及ヒ第三項ヲ改メテ左ノ三項トス
不動產ノ上ニ存スル一切ノ先取特權及ヒ抵當權ハ賣却ニ因リテ消滅ス
留置權カ不動產ノ上ニ存スル場合ニ於テハ競落人ハ其留置權ヲ以テ擔保スル債權ヲ辨濟スル責ニ任ス
質權カ不動產ノ上ニ存スル場合ニ於テハ競落人ハ其質權ヲ以テ擔保スル債權及ヒ質權者ニ對シテ優先權ヲ有スル者ノ債權ヲ辨濟スル責ニ任ス