(民事訴訟法中改正法律)
法令番号: 法律第六十一號
公布年月日: 大正15年4月24日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル民事訴訟法中改正法律ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
攝政名
大正十五年四月二十四日
內閣總理大臣兼內務大臣 若槻禮次郞
陸軍大臣 宇垣一成
海軍大臣 財部彪
外務大臣 男爵 幣原喜重郞
文部大臣 岡田良平
鐵道大臣 仙石貢
大藏大臣 濱口雄幸
遞信大臣 安達謙藏
司法大臣 江木翼
農林大臣 早速整爾
商工大臣 片岡直溫
法律第六十一號
民事訴訟法中左ノ通改正ス
民事訴訟法目錄第一編乃至第五編ヲ左ノ如ク改ム
第一編
總則
第一章
裁判所
第一節
管轄
第二節
裁判所職員ノ除斥、忌避及囘避
第二章
當事者
第一節
當事者能力及訴訟能力
第二節
共同訴訟
第三節
訴訟參加
第四節
訴訟代理人及輔佐人
第三章
訴訟費用
第一節
訴訟費用ノ負擔
第二節
訴訟費用ノ擔保
第三節
訴訟上ノ救助
第四章
訴訟手續
第一節
口頭辯論
第二節
期日及期間
第三節
送達
第四節
裁判
第五節
訴訟手續ノ中斷及中止
第二編
第一審ノ訴訟手續
第一章
地方裁判所ノ訴訟手續
第一節
第二節
辯論ノ準備
第三節
證據
第一款
總則
第二款
證人訊問
第三款
鑑定
第四款
書證
第五款
檢證
第六款
當事者訊問
第七款
證據保全
第二章
區裁判所ノ訴訟手續
第三編
上訴
第一章
控訴
第二章
上告
第三章
抗告
第四編
再審
第五編
督促手續
民事訴訟法第一編乃至第五編ヲ左ノ如ク改ム
第一編 總則
第一章 裁判所
第一節 管轄
第一條 訴ハ被告ノ普通裁判籍所在地ノ裁判所ノ管轄ニ屬ス
第二條 人ノ普通裁判籍ハ住所ニ依リテ定ル
日本ニ住所ナキトキ又ハ住所ノ知レサルトキハ普通裁判籍ハ居所ニ依リ、居所ナキトキ又ハ居所ノ知レサルトキハ最後ノ住所ニ依リテ定ル
第三條 大使、公使其ノ他外國ニ在リテ治外法權ヲ享クル日本人カ前條ノ規定ニ依リ普通裁判籍ヲ有セサルトキハ其ノ者ノ普通裁判籍ハ東京市ニ在ルモノトス
第四條 法人其ノ他ノ社團又ハ財團ノ普通裁判籍ハ其ノ主タル事務所又ハ營業所ニ依リ、事務所又ハ營業所ナキトキハ主タル業務擔當者ノ住所ニ依リテ定ル
國ノ普通裁判籍ハ訴訟ニ付國ヲ代表スル官廳ノ所在地ニ依リテ定ル
第一項ノ規定ハ外國ノ社團又ハ財團ノ普通裁判籍ニ付テハ日本ニ於ケル事務所、營業所又ハ業務擔當者ニ之ヲ適用ス
第五條 財產權上ノ訴ハ義務履行地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第六條 寄留者ニ對スル財產權上ノ訴ハ寄留地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第七條 軍人、軍屬又ハ船員ニ對スル財產權上ノ訴ハ軍事用ノ廳舎ノ所在地又ハ艦船ノ本籍若ハ船籍ノ所在地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第八條 日本ニ住所ナキ者又ハ住所ノ知レサル者ニ對スル財產權上ノ訴ハ請求若ハ其ノ擔保ノ目的又ハ差押フルコトヲ得ヘキ被告ノ財產ノ所在地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第九條 事務所又ハ營業所ヲ有スル者ニ對スル訴ハ其ノ事務所又ハ營業所ニ於ケル業務ニ關スルモノニ限リ其ノ所在地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第十條 船舶又ハ航海ニ關シ船舶所有者其ノ他船舶ノ利用ヲ爲ス者ニ對スル訴ハ船籍ノ所在地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第十一條 船舶債權其ノ他船舶ヲ以テ擔保スル債權ニ基ク訴ハ船舶ノ所在地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第十二條 會社其ノ他ノ社團ヨリ社員ニ對スル訴又ハ社員ヨリ社員ニ對スル訴ハ社員タル資格ニ基クモノニ限リ會社其ノ他ノ社團ノ普通裁判籍所在地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
前項ノ規定ハ社團又ハ財團ヨリ役員ニ對スル訴及會社ヨリ發起人又ハ檢查役ニ對スル訴ニ之ヲ準用ス
第十三條 會社其ノ他ノ社團ノ債權者ヨリ社員ニ對スル訴ハ社員タル資格ニ基クモノニ限リ前條ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第十四條 第十二條及前條ノ規定ハ社團、財團、社員又ハ社團ノ債權者ヨリ社員、役員、發起人又ハ檢查役タリシ者ニ對スル訴及社員タリシ者ヨリ社員ニ對スル訴ニ之ヲ準用ス
第十五條 不法行爲ニ關スル訴ハ其ノ行爲アリタル地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
船舶ノ衝突其ノ他海上ノ事故ニ基ク損害賠償ノ訴ハ損害ヲ受ケタル船舶カ最初ニ到達シタル地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第十六條 海難救助ニ關スル訴ハ救助アリタル地又ハ救助セラレタル船舶カ最初ニ到達シタル地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第十七條 不動產ニ關スル訴ハ不動產所在地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第十八條 登記又ハ登錄ニ關スル訴ハ登記又ハ登錄ヲ爲スヘキ地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第十九條 相續權ニ關スル訴又ハ遺留分若ハ遺贈其ノ他死亡ニ因リテ效力ヲ生スヘキ行爲ニ關スル訴ハ相續開始ノ時ニ於ケル被相續人ノ普通裁判籍所在地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第二十條 相續債權其ノ他相續財產ノ負擔ニ關スル訴ニシテ前條ノ規定ニ該當セサルモノハ相續財產ノ全部又ハ一部カ前條ノ裁判所ノ管轄區域內ニ在ルトキニ限リ其ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第二十一條 一ノ訴ヲ以テ數個ノ請求ヲ爲ス場合ニ於テハ第一條乃至前條ノ規定ニ依リ一ノ請求ニ付管轄權ヲ有スル裁判所ニ其ノ訴ヲ提起スルコトヲ得
第二十二條 裁判所構成法ニ依リ管轄カ訴訟ノ目的ノ價額ニ依リテ定ルトキハ其ノ價額ハ訴ヲ以テ主張スル利益ニ依リテ之ヲ算定ス
前項ノ價額ヲ算定スルコト能ハサルトキハ其ノ價額ハ千圓ヲ超過スルモノト看做ス
第二十三條 一ノ訴ヲ以テ數個ノ請求ヲ爲ストキハ其ノ價額ヲ合算ス
果實、損害賠償、違約金又ハ費用ノ請求カ訴訟ノ附帶ノ目的ナルトキハ其ノ價額ハ之ヲ訴訟ノ目的ノ價額ニ算入セス
第二十四條 左ノ場合ニ於テハ關係アル裁判所ニ共通スル直近上級裁判所ハ申立ニ因リ決定ヲ以テ管轄裁判所ヲ定ム
一 管轄裁判所及裁判所構成法第十三條第二項ノ規定ニ依リテ之ニ代ルヘキ裁判所カ法律上又ハ事實上裁判權ヲ行フコト能ハサルトキ
二 裁判所ノ管轄區域明確ナラサル爲管轄裁判所カ定ラサルトキ
前項ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第二十五條 當事者ハ第一審ニ限リ合意ニ依リ管轄裁判所ヲ定ムルコトヲ得
前項ノ合意ハ一定ノ法律關係ニ基ク訴ニ關シ且書面ヲ以テ之ヲ爲スニ非サレハ其ノ效ナシ
第二十六條 被告カ第一審裁判所ニ於テ管轄違ノ抗辯ヲ提出セスシテ本案ニ付辯論ヲ爲シ又ハ準備手續ニ於テ申述ヲ爲シタルトキハ其ノ裁判所ハ管轄權ヲ有ス
第二十七條 第一條、第五條乃至第二十一條、第二十五條及前條ノ規定ハ訴ニ付專屬管轄ノ定アル場合ニハ之ヲ適用セス
第二十八條 裁判所ハ管轄ニ關スル事項ニ付職權ヲ以テ證據調ヲ爲スコトヲ得
第二十九條 裁判所ノ管轄ハ起訴ノ時ヲ標準トシテ之ヲ定ム
第三十條 裁判所ハ訴訟ノ全部又ハ一部カ其ノ管轄ニ屬セスト認ムルトキハ決定ヲ以テ之ヲ管轄裁判所ニ移送ス
第三十一條 裁判所ハ其ノ管轄ニ屬スル訴訟ニ付著キ損害又ハ遲滯ヲ避クル爲必要アリト認ムルトキハ其ノ專屬管轄ニ屬スルモノヲ除クノ外申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ訴訟ノ全部又ハ一部ヲ他ノ管轄裁判所ニ移送スルコトヲ得
第三十二條 移送ノ裁判ハ移送ヲ受ケタル裁判所ヲ覊束ス
移送ヲ受ケタル裁判所ハ更ニ事件ヲ他ノ裁判所ニ移送スルコトヲ得ス
第三十三條 移送ノ裁判ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
移送ノ申立ヲ却下シタル裁判ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第三十四條 移送ノ裁判確定シタルトキハ訴訟ハ初ヨリ移送ヲ受ケタル裁判所ニ繫屬シタルモノト看做ス
前項ノ場合ニ於テハ移送ノ裁判ヲ爲シタル裁判所ノ書記ハ其ノ裁判ノ正本ヲ訴訟記錄ニ添附シ移送ヲ受ケタル裁判所ノ書記ニ之ヲ送付スルコトヲ要ス
第二節 裁判所職員ノ除斥、忌避及囘避
第三十五條 判事ハ左ノ場合ニ於テハ法律上其ノ職務ノ執行ヨリ除斥セラル
一 判事又ハ其ノ妻若ハ妻タリシ者カ事件ノ當事者ナルトキ又ハ事件ニ付當事者ト共同權利者、共同義務者若ハ償還義務者タル關係ヲ有スルトキ
二 判事カ當事者ノ四親等內ノ血族若ハ三親等內ノ姻族ナルトキ又ハナリシトキ
三 判事カ當事者ノ後見人、後見監督人、保佐人又ハ戶主若ハ家族ナルトキ
四 判事カ事件ニ付證人又ハ鑑定人ト爲リタルトキ
五 判事カ事件ニ付當事者ノ代理人又ハ輔佐人ナルトキ又ハナリシトキ
六 判事カ事件ニ付仲裁判斷ニ關與シ又ハ不服ヲ申立テラレタル前審ノ裁判ニ關與シタルトキ但シ他ノ裁判所ノ囑託ニ因リ受託判事トシテ其ノ職務ヲ行フコトヲ妨ケス
第三十六條 除斥ノ原因アルトキハ裁判所ハ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ除斥ノ裁判ヲ爲ス
第三十七條 判事ニ付裁判ノ公正ヲ妨クヘキ事情アルトキハ當事者ハ之ヲ忌避スルコトヲ得
當事者カ判事ノ面前ニ於テ辯論ヲ爲シ又ハ準備手續ニ於テ申述ヲ爲シタルトキハ其ノ判事ヲ忌避スルコトヲ得ス但シ忌避ノ原因カ其ノ後ニ生シ又ハ當事者カ其ノ原因アルコトヲ知ラサリシトキハ此ノ限ニ在ラス
第三十八條 第三十六條又ハ前條ニ規定スル申立ハ其ノ原因ヲ開示シテ判事所屬ノ裁判所ニ之ヲ爲スコトヲ要ス
除斥又ハ忌避ノ原因ハ申立ヲ爲シタル日ヨリ三日內ニ之ヲ疏明スルコトヲ要ス前條第二項但書ノ事實亦同シ
第三十九條 合議裁判所ノ判事ノ除斥又ハ忌避ニ付テハ其ノ裁判所、區裁判所ノ判事ノ除斥又ハ忌避ニ付テハ其ノ裁判所ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所決定ヲ以テ裁判ヲ爲ス
第四十條 判事ハ其ノ除斥又ハ忌避ニ付裁判ニ關與スルコトヲ得ス但シ意見ヲ述フルコトヲ得
第四十一條 除斥又ハ忌避ヲ理由アリトスル決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス之ヲ理由ナシトスル決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第四十二條 除斥又ハ忌避ノ申立アリタルトキハ其ノ申立ニ付テノ裁判ノ確定ニ至ル迄訴訟手續ヲ停止スルコトヲ要ス但シ急速ヲ要スル行爲ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第四十三條 第三十五條及第三十七條第一項ノ場合ニ於テハ判事ハ監督權アル判事ノ許可ヲ得テ囘避スルコトヲ得
第四十四條 本節ノ規定ハ裁判所書記ニ之ヲ準用ス此ノ場合ニ於テハ裁判ハ書記所屬ノ裁判所之ヲ爲ス
第二章 當事者
第一節 當事者能力及訴訟能力
第四十五條 當事者能力、訴訟能力及訴訟無能力者ノ法定代理ハ本法ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外民法其ノ他ノ法令ニ從フ訴訟行爲ヲ爲スニ必要ナル授權亦同シ
第四十六條 法人ニ非サル社團又ハ財團ニシテ代表者又ハ管理人ノ定アルモノハ其ノ名ニ於テ訴ヘ又ハ訴ヘラルルコトヲ得
第四十七條 共同ノ利益ヲ有スル多數者ニシテ前條ノ規定ニ該當セサルモノハ其ノ中ヨリ總員ノ爲ニ原告若ハ被告ト爲ルヘキ一人若ハ數人ヲ選定シ又ハ之ヲ變更スルコトヲ得
訴訟ノ繫屬ノ後前項ノ規定ニ依リテ原告又ハ被告ト爲ルヘキ者ヲ定メタルトキハ他ノ當事者ハ當然訴訟ヨリ脫退ス
第四十八條 前條ノ規定ニ依リテ選定セラレタル當事者中死亡其ノ他ノ事由ニ因リ其ノ資格ヲ喪失シタル者アルトキハ他ノ當事者ニ於テ總員ノ爲ニ訴訟行爲ヲ爲スコトヲ得
第四十九條 未成年者及禁治產者ハ法定代理人ニ依リテノミ訴訟行爲ヲ爲スコトヲ得但シ未成年者カ獨立シテ法律行爲ヲ爲スコトヲ得ル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第五十條 準禁治產者、妻又ハ法定代理人カ相手方ノ提起シタル訴又ハ上訴ニ付訴訟行爲ヲ爲スニハ保佐人ノ同意、夫ノ許可又ハ親族會ノ同意其ノ他ノ授權ヲ要セス
準禁治產者、妻又ハ法定代理人カ訴、控訴若ハ上告ノ取下、和解、請求ノ抛棄若ハ認諾又ハ第七十二條ノ規定ニ依ル脫退ヲ爲スニハ常ニ特別ノ授權アルコトヲ要ス
第五十一條 外國人ハ其ノ本國法ニ依レハ訴訟能力ヲ有セサルトキト雖日本ノ法律ニ依レハ訴訟能力ヲ有スヘキトキハ之ヲ訴訟能力者ト看做ス
第五十二條 法定代理權又ハ訴訟行爲ヲ爲スニ必要ナル授權ハ書面ヲ以テ之ヲ證スルコトヲ要ス第四十七條ノ規定ニ依ル當事者ノ選定及變更亦同シ
前項ノ書面ハ訴訟記錄ニ之ヲ添附スルコトヲ要ス
第五十三條 訴訟能力、法定代理權又ハ訴訟行爲ヲ爲スニ必要ナル授權ノ欠缺アルトキハ裁判所ハ期間ヲ定メテ其ノ補正ヲ命シ若遲滯ノ爲損害ヲ生スル虞アルトキハ一時訴訟行爲ヲ爲サシムルコトヲ得
第五十四條 訴訟能力、法定代理權又ハ訴訟行爲ヲ爲スニ必要ナル授權ノ欠缺アル者カ爲シタル訴訟行爲ハ其ノ欠缺ナキニ至リタル當事者又ハ法定代理人ノ追認ニ因リ行爲ノ時ニ遡リテ其ノ效力ヲ生ス
第五十五條 第五十三條及前條ノ規定ハ第四十七條ノ規定ニ依ル當事者カ訴訟行爲ヲ爲ス場合ニ之ヲ準用ス
第五十六條 法定代理人ナキ場合又ハ法定代理人カ代理權ヲ行フコト能ハサル場合ニ於テ未成年者又ハ禁治產者ニ對シ訴訟行爲ヲ爲サムトスル者ハ遲滯ノ爲損害ヲ受クル虞アルコトヲ疏明シテ受訴裁判所ノ裁判長ニ特別代理人ノ選任ヲ申請スルコトヲ得
裁判所ハ何時ニテモ特別代理人ヲ改任スルコトヲ得
特別代理人カ訴訟行爲ヲ爲スニハ後見人ト同一ノ授權アルコトヲ要ス
特別代理人ノ選任及改任ノ命令ハ特別代理人ニモ之ヲ送達スルコトヲ要ス
第五十七條 法定代理權ノ消滅ハ本人又ハ代理人ヨリ之ヲ相手方ニ通知スルニ非サレハ其ノ效ナシ
前項ノ規定ハ第四十七條ノ規定ニ依ル當事者ノ變更ニ之ヲ準用ス
第五十八條 本法中法定代理及法定代理人ニ關スル規定ハ法人ノ代表者及法人ニ非スシテ其ノ名ニ於テ訴ヘ又ハ訴ヘラルルコトヲ得ル社團又ハ財團ノ代表者又ハ管理人ニ之ヲ準用ス
第二節 共同訴訟
第五十九條 訴訟ノ目的タル權利又ハ義務カ數人ニ付共通ナルトキ又ハ同一ノ事實上及法律上ノ原因ニ基クトキハ其ノ數人ハ共同訴訟人トシテ訴ヘ又ハ訴ヘラルルコトヲ得訴訟ノ目的タル權利又ハ義務カ同種ニシテ事實上及法律上同種ノ原因ニ基クトキ亦同シ
第六十條 他人間ノ訴訟ノ目的ノ全部又ハ一部ヲ自己ノ爲ニ請求スル者ハ其ノ訴訟ノ繫屬中當事者雙方ヲ共同被告トシ第一審ノ受訴裁判所ニ訴ヲ提起スルコトヲ得
第六十一條 共同訴訟人ノ一人ノ訴訟行爲又ハ之ニ對スル相手方ノ訴訟行爲及其ノ一人ニ付生シタル事項ハ他ノ共同訴訟人ニ影響ヲ及ホサス
第六十二條 訴訟ノ目的カ共同訴訟人ノ全員ニ付合一ニノミ確定スヘキ場合ニ於テハ其ノ一人ノ訴訟行爲ハ全員ノ利益ニ於テノミ其ノ效力ヲ生ス
共同訴訟人ノ一人ニ對スル相手方ノ訴訟行爲ハ全員ニ對シテ其ノ效力ヲ生ス
共同訴訟人ノ一人ニ付訴訟手續ノ中斷又ハ中止ノ原因アルトキハ其ノ中斷又ハ中止ハ全員ニ付其ノ效力ヲ生ス
第六十三條 第五十條第一項ノ規定ハ前條第一項ノ場合ニ於テ共同訴訟人ノ一人カ提起シタル上訴ニ付他ノ共同訴訟人ノ爲スヘキ訴訟行爲ニ之ヲ準用ス
第三節 訴訟參加
第六十四條 訴訟ノ結果ニ付利害關係ヲ有スル第三者ハ其ノ訴訟ノ繫屬中當事者ノ一方ヲ補助スル爲訴訟ニ參加スルコトヲ得
第六十五條 參加ノ申出ハ參加ノ趣旨及理由ヲ具シ參加ニ依リテ訴訟行爲ヲ爲スヘキ裁判所ニ之ヲ爲スコトヲ要ス
書面ニ依リテ參加ノ申出ヲ爲シタル場合ニ於テハ其ノ書面ハ之ヲ當事者雙方ニ送達スルコトヲ要ス
參加ノ申出ハ參加人トシテ爲シ得ル訴訟行爲ト共ニ之ヲ爲スコトヲ得
第六十六條 當事者カ參加ニ付異議ヲ述ヘタルトキハ參加ノ理由ハ之ヲ疏明スルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ裁判所ハ參加ノ許否ニ付決定ヲ以テ裁判ヲ爲ス
前項ノ裁判ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第六十七條 當事者カ參加ニ付異議ヲ述ヘスシテ辯論ヲ爲シ又ハ準備手續ニ於テ申述ヲ爲シタルトキハ異議ヲ述フル權利ヲ失フ
第六十八條 參加人ハ參加ニ付異議アル場合ニ於テモ參加ヲ許ササル裁判確定セサル間ハ訴訟行爲ヲ爲スコトヲ得
參加人ノ訴訟行爲ハ當事者カ之ヲ援用シタルトキハ參加ヲ許ササル裁判確定シタル場合ニ於テモ其ノ效力ヲ有ス
第六十九條 參加人ハ訴訟ニ付攻擊又ハ防禦ノ方法ノ提出、異議ノ申立、上訴ノ提起其ノ他一切ノ訴訟行爲ヲ爲スコトヲ得但シ參加ノ時ニ於ケル訴訟ノ程度ニ從ヒ爲スコトヲ得サルモノハ此ノ限ニ在ラス
參加人ノ訴訟行爲カ被參加人ノ訴訟行爲ト牴觸スルトキハ其ノ效力ヲ有セス
第七十條 前條ノ規定ニ依リテ參加人カ訴訟行爲ヲ爲スコトヲ得ス又ハ其ノ訴訟行爲カ效力ヲ有セサリシ場合、被參加人カ參加人ノ訴訟行爲ヲ妨ケタル場合及被參加人カ參加人ノ爲スコト能ハサル訴訟行爲ヲ故意又ハ過失ニ因リテ爲ササリシ場合ヲ除クノ外裁判ハ參加人ニ對シテモ其ノ效力ヲ有ス
第七十一條 訴訟ノ結果ニ因リテ權利ヲ害セラルヘキコトヲ主張スル第三者又ハ訴訟ノ目的ノ全部若ハ一部カ自己ノ權利ナルコトヲ主張スル第三者ハ當事者トシテ訴訟ニ參加スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ第六十二條及第六十五條ノ規定ヲ準用ス
第七十二條 前條ノ規定ニ依リ自己ノ權利ヲ主張スル爲訴訟ニ參加シタル者アル場合ニ於テハ參加前ノ原告又ハ被告ハ相手方ノ承諾ヲ得テ訴訟ヨリ脫退スルコトヲ得但シ判決ハ脫退シタル當事者ニ對シテモ其ノ效力ヲ有ス
第七十三條 訴訟ノ繫屬中其ノ訴訟ノ目的タル權利ノ全部又ハ一部ヲ讓受ケタルコトヲ主張シ第七十一條ノ規定ニ依リテ訴訟參加ヲ爲シタルトキハ其ノ參加ハ訴訟ノ繫屬ノ初ニ遡リテ時效ノ中斷又ハ法律上ノ期間遵守ノ效力ヲ生ス
第七十四條 訴訟ノ繫屬中第三者カ其ノ訴訟ノ目的タル債務ヲ承繼シタルトキハ裁判所ハ當事者ノ申立ニ因リ其ノ第三者ヲシテ訴訟ヲ引受ケシムルコトヲ得
裁判所ハ前項ノ規定ニ依リテ決定ヲ爲ス前當事者及第三者ヲ審訊スルコトヲ要ス
第七十二條ノ規定中脫退及判決ノ效力ニ關スルモノハ第一項ノ規定ニ依リテ訴訟ノ引受アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第七十五條 訴訟ノ目的カ當事者ノ一方及第三者ニ付合一ニノミ確定スヘキ場合ニ於テハ其ノ第三者ハ共同訴訟人トシテ訴訟ニ參加スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ第六十五條ノ規定ヲ準用ス
第七十六條 當事者ハ訴訟ノ繫屬中參加ヲ爲スコトヲ得ル第三者ニ其ノ訴訟ノ告知ヲ爲スコトヲ得
訴訟告知ヲ受ケタル者ハ更ニ訴訟告知ヲ爲スコトヲ得
第七十七條 訴訟告知ハ理由及訴訟ノ程度ヲ記載シタル書面ヲ裁判所ニ提出シテ之ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ書面ハ相手方ニモ之ヲ送達スルコトヲ要ス
第七十八條 訴訟告知ヲ受ケタル者カ參加セサリシ場合ニ於テモ第七十條ノ規定ノ適用ニ付テハ參加スルコトヲ得ヘカリシ時ニ參加シタルモノト看做ス
第四節 訴訟代理人及輔佐人
第七十九條 法令ニ依リテ裁判上ノ行爲ヲ爲スコトヲ得ル代理人ノ外辯護士ニ非サレハ訴訟代理人タルコトヲ得ス但シ區裁判所ニ於テハ許可ヲ得テ辯護士ニ非サル者ヲ訴訟代理人ト爲スコトヲ得
前項ノ許可ハ何時ニテモ之ヲ取消スコトヲ得
第八十條 訴訟代理人ノ權限ハ書面ヲ以テ之ヲ證スルコトヲ要ス
前項ノ書面カ私文書ナルトキハ裁判所ハ當該吏員ノ認證ヲ受クヘキ旨ヲ訴訟代理人ニ命スルコトヲ得
前二項ノ規定ハ當事者カ口頭ヲ以テ訴訟代理人ヲ選任シ裁判所書記カ調書ニ其ノ陳述ヲ記載シタル場合ニハ之ヲ適用セス
第八十一條 訴訟代理人ハ委任ヲ受ケタル事件ニ付反訴、參加、强制執行、假差押及假處分ニ關スル訴訟行爲ヲ爲シ且辨濟ヲ受領スルコトヲ得
左ニ揭クル事項ニ付テハ特別ノ委任ヲ受クルコトヲ要ス
一 反訴ノ提起
二 訴ノ取下、和解、請求ノ抛棄若ハ認諾又ハ第七十二條ノ規定ニ依ル脫退
三 控訴、上告又ハ其ノ取下
四 代理人ノ選任
訴訟代理權ハ之ヲ制限スルコトヲ得ス但シ辯護士ニ非サル訴訟代理人ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第八十二條 前條ノ規定ハ法令ニ依リテ裁判上ノ行爲ヲ爲スコトヲ得ル代理人ノ權限ヲ妨ケス
第八十三條 數人ノ訴訟代理人アルトキハ各自當事者ヲ代理ス
當事者カ前項ノ規定ニ異ル定ヲ爲スモ其ノ效力ヲ生セス
第八十四條 訴訟代理人ノ事實上ノ陳述ハ當事者カ直ニ之ヲ取消シ又ハ更正シタルトキハ其ノ效力ヲ生セス
第八十五條 訴訟代理權ハ當事者ノ死亡若ハ訴訟能力ノ喪失、當事者タル法人ノ合併ニ因ル消滅、當事者タル受託者ノ信託ノ任務終了又ハ法定代理人ノ死亡、訴訟能力ノ喪失若ハ代理權ノ消滅、變更ニ因リテ消滅セス
第八十六條 一定ノ資格ヲ有スル者ニシテ自己ノ名ヲ以テ他人ノ爲訴訟ノ當事者タルモノノ訴訟代理人ノ代理權ハ當事者ノ資格ノ喪失ニ因リテ消滅セス
前項ノ規定ハ第四十七條ノ規定ニ依リテ選定セラレタル當事者カ其ノ資格ヲ喪失シタル場合ニ之ヲ準用ス
第八十七條 第五十二條第二項、第五十三條、第五十四條及第五十七條ノ規定ハ訴訟代理ニ之ヲ準用ス
第八十八條 當事者又ハ訴訟代理人ハ裁判所ノ許可ヲ得テ輔佐人ト共ニ出頭スルコトヲ得此ノ許可ハ何時ニテモ之ヲ取消スコトヲ得
輔佐人ノ陳述ハ當事者又ハ訴訟代理人カ直ニ之ヲ取消シ又ハ更正セサルトキハ自ラ之ヲ爲シタルモノト看做ス
第三章 訴訟費用
第一節 訴訟費用ノ負擔
第八十九條 訴訟費用ハ敗訴ノ當事者ノ負擔トス
第九十條 裁判所ハ事情ニ從ヒ勝訴ノ當事者ヲシテ其ノ權利ノ伸張若ハ防禦ニ必要ナラサル行爲ニ因リテ生シタル訴訟費用又ハ訴訟ノ程度ニ於テ相手方ノ權利ノ伸張若ハ防禦ニ必要ナリシ行爲ニ因リテ生シタル訴訟費用ノ全部又ハ一部ヲ負擔セシムルコトヲ得
第九十一條 當事者カ適當ノ時期ニ攻擊若ハ防禦ノ方法ヲ提出セサル爲又ハ期日若ハ期間ノ懈怠其ノ他當事者ノ責ニ歸スヘキ事由ニ因リ訴訟ヲ遲滯セシメタルトキハ裁判所ハ之ヲシテ其ノ勝訴ノ場合ニ於テモ遲滯ニ因リテ生シタル訴訟費用ノ全部又ハ一部ヲ負擔セシムルコトヲ得
第九十二條 一部敗訴ノ場合ニ於テ各當事者ノ負擔スヘキ訴訟費用ハ裁判所ノ意見ヲ以テ之ヲ定ム但シ事情ニ從ヒ當事者ノ一方ヲシテ訴訟費用ノ全部ヲ負擔セシムルコトヲ得
第九十三條 共同訴訟人ハ平等ノ割合ヲ以テ訴訟費用ヲ負擔ス但シ裁判所ハ事情ニ從ヒ共同訴訟人ヲシテ連帶シテ訴訟費用ヲ負擔セシメ又ハ他ノ方法ニ依リ之ヲ負擔セシムルコトヲ得
裁判所ハ前項ノ規定ニ拘ラス權利ノ伸張又ハ防禦ニ必要ナラサル行爲ヲ爲シタル當事者ヲシテ其ノ行爲ニ因リテ生シタル費用ヲ負擔セシムルコトヲ得
第九十四條 第八十九條乃至前條ノ規定ハ當事者カ參加ニ付異議ヲ述ヘタル場合ニ於テハ其ノ異議ニ因リテ生シタル訴訟費用ノ參加人ト異議ヲ述ヘタル當事者トノ間ニ於ケル負擔ニ關シ之ヲ準用ス參加ニ因リテ生シタル訴訟費用ノ參加人ト相手方トノ間ニ於ケル負擔ニ付亦同シ
第九十五條 裁判所ハ事件ヲ完結スル裁判ニ於テ職權ヲ以テ其ノ審級ニ於ケル訴訟費用ノ全部ニ付裁判ヲ爲スコトヲ要ス但シ事情ニ從ヒ事件ノ一部又ハ中間ノ爭ニ關スル裁判ニ於テ其ノ費用ノ裁判ヲ爲スコトヲ得
第九十六條 上級裁判所カ本案ノ裁判ヲ變更スル場合ニ於テハ訴訟ノ總費用ニ付裁判ヲ爲スコトヲ要ス事件ノ差戾又ハ移送ヲ受ケタル裁判所カ其ノ事件ヲ完結スル裁判ヲ爲ス場合亦同シ
第九十七條 當事者カ裁判所ニ於テ和解ヲ爲シタル場合ニ於テ和解ノ費用及訴訟費用ノ負擔ニ付別段ノ定ヲ爲ササルトキハ其ノ費用ハ各自之ヲ負擔ス
第九十八條 法定代理人、訴訟代理人、裁判所書記又ハ執達吏カ故意又ハ重大ナル過失ニ因リテ無益ナル費用ヲ生セシメタルトキハ受訴裁判所ハ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ此等ノ者ニ對シ其ノ費用額ノ償還ヲ命スルコトヲ得
前項ノ規定ハ法定代理人又ハ訴訟代理人トシテ訴訟行爲ヲ爲シタル者カ其ノ代理權又ハ訴訟行爲ヲ爲スニ必要ナル授權アルコトヲ證明スルコト能ハス又ハ追認ヲ得サリシ場合ニ於テ其ノ訴訟行爲ニ因リテ生シタル訴訟費用ニ之ヲ準用ス
前二項ノ決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第九十九條 裁判所カ前條第二項ノ場合ニ於テ訴ヲ却下シタルトキハ訴訟費用ハ代理人トシテ訴訟行爲ヲ爲シタル者ノ負擔トス
第百條 裁判所カ訴訟費用ノ負擔ヲ定ムル裁判ニ於テ其ノ額ヲ定メサルトキハ第一審ノ受訴裁判所ハ其ノ裁判カ執行力ヲ生シタル後申立ニ因リ決定ヲ以テ之ヲ定ム
訴訟費用額ノ確定ヲ求ムル申立ヲ爲スニハ費用計算書及其ノ謄本竝費用額ノ疏明ニ必要ナル書面ヲ提出スルコトヲ要ス
第一項ノ決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第百一條 裁判所ハ訴訟費用額ヲ定ムル決定ヲ爲ス前相手方ニ費用計算書ノ謄本ヲ交付シ陳述ヲ爲スヘキ旨竝一定ノ期間內ニ費用計算書及費用額ノ疏明ニ必要ナル書面ヲ提出スヘキ旨ヲ催告スルコトヲ要ス
相手方カ期間內ニ前項ノ書面ヲ提出セサルトキハ裁判所ハ申立人ノ費用ノミニ付裁判ヲ爲スコトヲ得但シ相手方ノ費用額ノ確定ヲ求ムル申立ヲ妨ケス
第百二條 裁判所カ訴訟費用額ヲ定ムル裁判ヲ爲ス場合ニ於テハ前條第二項ノ場合ヲ除クノ外各當事者ノ負擔スヘキ費用ハ其ノ對當額ニ付相殺アリタルモノト看做ス
第百三條 第九十七條ノ場合ニ於テ當事者カ訴訟費用ノ負擔ヲ定メ其ノ額ヲ定メサルトキハ裁判所ハ申立ニ因リ決定ヲ以テ其ノ額ヲ定ムルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ第百條第二項第三項、第百一條及前條ノ規定ヲ準用ス
第百四條 前條ノ場合ヲ除クノ外訴訟カ裁判ニ因ラスシテ完結シタルトキハ裁判所ハ申立ニ因リ決定ヲ以テ訴訟費用ノ額ヲ定メ且其ノ負擔ヲ命スルコトヲ要ス參加又ハ之ニ付テノ異議ノ取下アリタルトキ亦同シ
第八十九條乃至第九十四條、第百條第二項第三項、第百一條及第百二條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第百五條 裁判所ハ裁判所書記ヲシテ訴訟費用額ノ計算ヲ爲サシムルコトヲ得
第百六條 費用ヲ要スル行爲ニ付テハ裁判所ハ當事者ヲシテ其ノ費用ヲ豫納セシムルコトヲ得
當事者カ裁判所ノ命ニ從ヒ費用ヲ豫納セサルトキハ裁判所ハ前項ノ行爲ヲ爲ササルコトヲ得
第二節 訴訟費用ノ擔保
第百七條 原告カ日本ニ住所、事務所及營業所ヲ有セサルトキハ裁判所ハ被告ノ申立ニ因リ訴訟費用ノ擔保ヲ供スヘキコトヲ原告ニ命スルコトヲ要ス擔保ニ不足ヲ生シタルトキ亦同シ
前項ノ規定ハ請求ノ一部ニ付爭ナキ場合ニ於テ其ノ額カ擔保ニ十分ナルトキハ之ヲ適用セス
第百八條 擔保ヲ供スヘキ事由アルコトヲ知リタル後被告カ本案ニ付辯論ヲ爲シ又ハ準備手續ニ於テ申述ヲ爲シタルトキハ擔保ノ申立ヲ爲スコトヲ得ス
第百九條 擔保ノ申立ヲ爲シタル被告ハ原告カ擔保ヲ供スル迄應訴ヲ拒ムコトヲ得
第百十條 裁判所ハ擔保ヲ供スヘキコトヲ命スル決定ニ於テ擔保額及擔保ヲ供スヘキ期間ヲ定ムルコトヲ要ス
擔保額ハ被告カ各審ニ於テ支出スヘキ費用ノ總額ヲ標準トシテ之ヲ定ム
第百十一條 擔保ノ申立ニ關スル裁判ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第百十二條 擔保ヲ供スルニハ金錢又ハ裁判所カ相當ト認ムル有價證券ヲ供託スルコトヲ要ス但シ當事者カ別段ノ契約ヲ爲シタルトキハ其ノ契約ニ依ル
第百十三條 被告ハ訴訟費用ニ付前條ノ規定ニ依リテ供託シタル金錢又ハ有價證券ノ上ニ質權者ト同一ノ權利ヲ有ス
第百十四條 原告カ擔保ヲ供スヘキ期間內ニ之ヲ供セサルトキハ裁判所ハ口頭辯論ヲ經スシテ判決ヲ以テ訴ヲ却下スルコトヲ得但シ判決前擔保ヲ供シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第百十五條 擔保ヲ供シタル者カ擔保ノ事由止ミタルコトヲ證明シタルトキハ裁判所ハ申立ニ因リ擔保取消ノ決定ヲ爲スコトヲ要ス
擔保ヲ供シタル者カ擔保取消ニ付擔保權利者ノ同意ヲ得タルコトヲ證明シタルトキ亦前項ニ同シ
訴訟ノ完結後裁判所カ擔保ヲ供シタル者ノ申立ニ因リ擔保權利者ニ對シ一定ノ期間內ニ其ノ權利ヲ行使スヘキ旨ヲ催告シ擔保權利者カ其ノ行使ヲ爲ササルトキハ擔保取消ニ付擔保權利者ノ同意アリタルモノト看做ス
第一項及第二項ノ規定ニ依ル決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第百十六條 裁判所ハ擔保ヲ供シタル者ノ申立ニ因リ決定ヲ以テ供託シタル擔保物ノ變換ヲ命スルコトヲ得
前項ノ規定ハ供託シタル擔保ヲ契約ニ因リテ他ノ擔保ニ變換スルコトヲ妨ケス
第百十七條 第百九條、第百十條第一項及第百十一條乃至前條ノ規定ハ他ノ法令ニ依リテ訴ノ提起ニ付供スヘキ擔保ニ之ヲ準用ス
第三節 訴訟上ノ救助
第百十八條 訴訟費用ヲ支拂フ資力ナキ者ニ對シテハ裁判所ハ申立ニ因リ訴訟上ノ救助ヲ與フルコトヲ得但シ勝訴ノ見込ナキニ非サルトキニ限ル
第百十九條 訴訟上ノ救助ハ各審ニ於テ之ヲ與フ
救助ノ事由ハ之ヲ疏明スルコトヲ要ス
第百二十條 訴訟上ノ救助ハ訴訟及强制執行ニ付左ノ效力ヲ生ス
一 裁判費用ノ支拂ノ猶豫
二 執達吏及裁判所ニ於テ附添ヲ命シタル辯護士ノ報酬及立替金ノ支拂ノ猶豫
三 訴訟費用ノ擔保ノ免除
第百二十一條 訴訟上ノ救助ハ之ヲ受ケタル者ノ爲ニノミ其ノ效力ヲ有ス
裁判所ハ訴訟ノ承繼人ニ對シ猶豫シタル費用ノ支拂ヲ命ス
第百二十二條 訴訟上ノ救助ヲ受ケタル者カ訴訟費用ノ支拂ヲ爲ス資力ヲ有スルコト判明シ又ハ之ヲ有スルニ至リタルトキハ訴訟記錄ノ存スル裁判所ハ利害關係人ノ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ何時ニテモ救助ヲ取消シ猶豫シタル訴訟費用ノ支拂ヲ命スルコトヲ得
第百二十三條 訴訟上ノ救助ヲ受ケタル者ニ支拂ヲ猶豫シタル費用ハ其ノ負擔ヲ命セラレタル相手方ヨリ直接ニ之ヲ取立ツルコトヲ得此ノ場合ニ於テ辯護士又ハ執達吏ハ訴訟上ノ救助ヲ受ケタル者ノ有スル債務名義ニ依リ報酬及立替金ニ付費用額ヲ定ムル申立及强制執行ヲ爲スコトヲ得
辯護士又ハ執達吏ハ報酬及立替金ニ付當事者ニ代リ第百三條又ハ第百四條ノ裁判ヲ求ムル申立ヲ爲スコトヲ得
第百二十四條 本節ニ規定スル裁判ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第四章 訴訟手續
第一節 口頭辯論
第百二十五條 當事者ハ訴訟ニ付裁判所ニ於テ口頭辯論ヲ爲スコトヲ要ス但シ決定ヲ以テ完結スヘキ事件ニ付テハ裁判所口頭辯論ヲ爲スヘキカ否ヲ定ム
前項但書ノ規定ニ依リテ口頭辯論ヲ爲ササル場合ニ於テハ裁判所ハ當事者ヲ審訊スルコトヲ得
前二項ノ規定ハ別段ノ規定アル場合ニハ之ヲ適用セス
第百二十六條 口頭辯論ハ裁判長之ヲ指揮ス
裁判長ハ發言ヲ許シ又ハ其ノ命ニ從ハサル者ニ發言ヲ禁スルコトヲ得
第百二十七條 裁判長ハ訴訟關係ヲ明瞭ナラシムル爲事實上及法律上ノ事項ニ關シ當事者ニ對シテ問ヲ發シ又ハ立證ヲ促スコトヲ得
陪席判事ハ裁判長ニ告ケテ前項ニ規定スル處置ヲ爲スコトヲ得
當事者ハ裁判長ニ對シ必要ナル發問ヲ求ムルコトヲ得
第百二十八條 裁判長ハ前條ノ規定ニ依リテ當事者ヲシテ釋明セシムヘキ事項ヲ指示シ口頭辯論期日前準備ヲ爲スヘキコトヲ命スルコトヲ得
第百二十九條 當事者カ辯論ノ指揮ニ關スル裁判長ノ命又ハ第百二十七條若ハ前條ノ規定ニ依ル裁判長若ハ陪席判事ノ處置ニ對シ異議ヲ述ヘタルトキハ裁判所決定ヲ以テ其ノ異議ニ付裁判ヲ爲ス
第百三十條 受命判事ヲシテ其ノ職務ヲ行ハシムヘキ場合ニ於テハ裁判長其ノ判事ヲ指定ス
裁判所ノ爲ス囑託ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外裁判長之ヲ爲ス
第百三十一條 裁判所ハ訴訟關係ヲ明瞭ナラシムル爲左ノ處分ヲ爲スコトヲ得
一 當事者本人又ハ其ノ法定代理人ノ出頭ヲ命スルコト
二 訴訟書類又ハ訴訟ニ於テ引用シタル文書其ノ他ノ物件ニシテ當事者ノ所持スルモノヲ提出セシムルコト
三 當事者又ハ第三者ノ提出シタル文書其ノ他ノ物件ヲ裁判所ニ留置クコト
四 檢證ヲ爲シ又ハ鑑定ヲ命スルコト
五 必要ナル調查ヲ囑託スルコト
前項ニ規定スル檢證、鑑定及調查ノ囑託ニ付テハ證據調ニ關スル規定ヲ準用ス
第百三十二條 裁判所ハ口頭辯論ノ制限、分離若ハ併合ヲ命シ又ハ其ノ命ヲ取消スコトヲ得
第百三十三條 裁判所ハ終結シタル口頭辯論ノ再開ヲ命スルコトヲ得
第百三十四條 辯論ニ與ル者カ日本語ニ通セサルトキ又ハ聾若ハ啞ナルトキハ通事ヲ立會ハシム但シ聾者又ハ啞者ニハ文字ヲ以テ問ヒ又ハ陳述ヲ爲サシムルコトヲ得
鑑定人ニ關スル規定ハ通事ニ之ヲ準用ス
第百三十五條 裁判所ハ訴訟關係ヲ明瞭ナラシムル爲必要ナル陳述ヲ爲スコト能ハサル當事者、代理人又ハ輔佐人ノ陳述ヲ禁シ辯論續行ノ爲新期日ヲ定ムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リテ陳述ヲ禁シタル場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ裁判所ハ辯護士ノ附添ヲ命スルコトヲ得
訴訟代理人ノ陳述ヲ禁シ又ハ辯護士ノ附添ヲ命シタルトキハ本人ニ其ノ旨ヲ通知スルコトヲ要ス
第百三十六條 裁判所ハ訴訟ノ如何ナル程度ニ在ルヲ問ハス和解ヲ試ミ又ハ受命判事若ハ受託判事ヲシテ之ヲ試ミシムルコトヲ得
裁判所又ハ受命判事若ハ受託判事ハ和解ノ爲當事者本人又ハ其ノ法定代理人ノ出頭ヲ命スルコトヲ得
第百三十七條 攻擊又ハ防禦ノ方法ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外口頭辯論ノ終結ニ至ル迄之ヲ提出スルコトヲ得
第百三十八條 原告又ハ被告カ最初ニ爲スヘキ口頭辯論ノ期日ニ出頭セス又ハ出頭スルモ本案ノ辯論ヲ爲ササルトキハ其ノ者ノ提出シタル訴狀、答辯書其ノ他ノ準備書面ニ記載シタル事項ハ之ヲ陳述シタルモノト看做シ出頭シタル相手方ニ辯論ヲ命スルコトヲ得
第百三十九條 當事者カ故意又ハ重大ナル過失ニ因リ時機ニ後レテ提出シタル攻擊又ハ防禦ノ方法ハ之カ爲訴訟ノ完結ヲ遲延セシムヘキモノト認メタルトキハ裁判所ハ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ却下ノ決定ヲ爲スコトヲ得
攻擊又ハ防禦ノ方法ニシテ其ノ趣旨明瞭ナラサルモノニ付當事者カ必要ナル釋明ヲ爲サス又ハ釋明ヲ爲スヘキ期日ニ出頭セサルトキ亦前項ニ同シ
第百四十條 當事者カ口頭辯論ニ於テ相手方ノ主張シタル事實ヲ明ニ爭ハサルトキハ其ノ事實ヲ自白シタルモノト看做ス但シ辯論ノ全趣旨ニ依リ其ノ事實ヲ爭ヒタルモノト認ムヘキ場合ハ此ノ限ニ在ラス
相手方ノ主張シタル事實ヲ知ラサル旨ノ陳述ヲ爲シタル者ハ其ノ事實ヲ爭ヒタルモノト推定ス
第百四十一條 當事者カ訴訟手續ニ關スル規定ノ違背ヲ知リ又ハ之ヲ知ルコトヲ得ヘカリシ場合ニ於テ遲滯ナク異議ヲ述ヘサルトキハ之ヲ述フル權利ヲ失フ但シ抛棄スルコトヲ得サルモノハ此ノ限ニ在ラス
第百四十二條 口頭辯論ニ付テハ裁判所書記期日每ニ調書ヲ作ルコトヲ要ス
第百四十三條 調書ニハ左ノ事項ヲ記載シ裁判長及裁判所書記之ニ署名捺印シ裁判長支障アルトキハ陪席判事其ノ席次ニ從ヒ順次之ニ代リテ署名捺印シ且其ノ事由ヲ記載スルコトヲ要ス但シ判事皆支障アルトキハ書記其ノ旨ヲ記載スルヲ以テ足ル
一 事件ノ表示
二 判事及裁判所書記ノ氏名
三 立會ヒタル檢事ノ氏名
四 出頭シタル當事者、代理人、輔佐人及通事竝闕席シタル當事者ノ氏名
五 辯論ノ場所及年月日
六 辯論ヲ公開シタルコト又ハ公開セサル場合ニ於テハ其ノ理由
第百四十四條 調書ニハ辯論ノ要領ヲ記載シ殊ニ左ノ事項ヲ明確ニスルコトヲ要ス
一 和解、認諾、抛棄、取下及自白
二 證人、鑑定人ノ宣誓及陳述
三 檢證ノ結果
四 裁判長ノ記載ヲ命シタル事項及當事者ノ請求ニ因リ記載ヲ許シタル事項
五 書面ニ作ラサル裁判
六 裁判ノ言渡
第百四十五條 調書ニハ書面、寫眞其ノ他裁判所ニ於テ適當ト認ムルモノヲ引用シ訴訟記錄ニ添附シテ之ヲ調書ノ一部ト爲スコトヲ得
第百四十六條 調書ノ記載ハ申立ニ因リ法廷ニ於テ關係人ニ之ヲ讀聞カセ又ハ閱覽セシメ且調書ニ其ノ旨ヲ記載スルコトヲ要ス
調書ノ記載ニ付關係人カ異議ヲ述ヘタルトキハ調書ニ其ノ趣旨ヲ記載スルコトヲ要ス
第百四十七條 口頭辯論ノ方式ニ關スル規定ノ遵守ハ調書ニ依リテノミ之ヲ證スルコトヲ得但シ調書カ滅失シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第百四十八條 裁判所必要アリト認ムルトキハ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ速記者ヲシテ口頭辯論ニ於ケル陳述ノ全部又ハ一部ヲ筆記セシムルコトヲ得
第百四十九條 第百四十二條乃至前條ノ規定ハ裁判所ノ審訊、受命判事又ハ受託判事ノ審問及證據調ニ之ヲ準用ス
第百五十條 申立其ノ他ノ申述ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
口頭ヲ以テ申述ヲ爲スニハ裁判所書記ノ面前ニ於テ陳述ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テハ書記調書ヲ作リ之ニ署名捺印スルコトヲ要ス
第百五十一條 當事者ハ訴訟記錄ノ閱覽若ハ謄寫又ハ其ノ正本、謄本、抄本若ハ訴訟ニ關スル事項ノ證明書ノ交付ヲ裁判所書記ニ請求スルコトヲ得利害關係ヲ疏明シタル第三者亦同シ
訴訟記錄ノ正本、謄本又ハ抄本ニハ其ノ正本、謄本又ハ抄本ナルコトヲ記載シ書記之ニ署名捺印シ且裁判所ノ印ヲ押捺スルコトヲ要ス
第二節 期日及期間
第百五十二條 期日ハ裁判長之ヲ定ム
受命判事又ハ受託判事ノ審問ノ期日ハ其ノ判事之ヲ定ム
期日ノ指定ハ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ之ヲ爲ス
口頭辯論ニ於ケル最初ノ期日ノ變更ハ顯著ナル事由ノ存セサルトキト雖當事者ノ合意アル場合ニ於テハ之ヲ許ス準備手續ニ於ケル最初ノ期日ノ變更亦同シ
第百五十三條 期日ハ已ムコトヲ得サル場合ニ限リ日曜日其ノ他ノ一般ノ休日ニ之ヲ定ムルコトヲ得
第百五十四條 期日ニ於ケル呼出ハ呼出狀ヲ送達シテ之ヲ爲ス但シ當該事件ニ付出頭シタル者ニ對シテハ期日ヲ告知スルヲ以テ足ル
第百五十五條 期日ハ事件ノ呼上ヲ以テ之ヲ開始ス
第百五十六條 期間ノ計算ハ民法ニ從フ
期間ノ末日カ日曜日其ノ他ノ一般ノ休日ニ當ルトキハ期間ハ其ノ翌日ヲ以テ滿了ス
第百五十七條 期間ヲ定ムル裁判ニ於テ始期ヲ定メサルトキハ其ノ期間ハ裁判カ效力ヲ生シタル時ヨリ進行ヲ始ム
第百五十八條 裁判所ハ法定期間又ハ其ノ定メタル期間ヲ伸長シ又ハ之ヲ短縮スルコトヲ得但シ不變期間ハ此ノ限ニ在ラス
不變期間ニ付テハ裁判所ハ遠隔ノ地ニ住所又ハ居所ヲ有スル者ノ爲附加期間ヲ定ムルコトヲ得
裁判長、受命判事又ハ受託判事ハ其ノ定メタル期間ヲ伸長シ又ハ之ヲ短縮スルコトヲ得
第百五十九條 當事者カ其ノ責ニ歸スヘカラサル事由ニ因リ不變期間ヲ遵守スルコト能ハサリシ場合ニ於テハ其ノ事由ノ止ミタル後一週間內ニ限リ懈怠シタル訴訟行爲ノ追完ヲ爲スコトヲ得此ノ期間ニ付テハ前條ノ規定ヲ適用セス
第三節 送達
第百六十條 送達ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外職權ヲ以テ之ヲ爲ス
第百六十一條 送達ニ關スル事務ハ裁判所書記之ヲ取扱フ
前項ノ事務ノ取扱ハ送達地ノ區裁判所ノ書記ニ之ヲ囑託スルコトヲ得
第百六十二條 送達ハ執達吏又ハ郵便ニ依リ之ヲ爲ス
郵便ニ依ル送達ニ在リテハ郵便集配人ヲ以テ送達ヲ爲ス吏員トス
第百六十三條 當該事件ニ付出頭シタル者ニ對シテハ裁判所書記自ラ送達ヲ爲スコトヲ得
第百六十四條 送達ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外送達ヲ受クヘキ者ニ送達スヘキ書類ノ謄本ヲ交付シテ之ヲ爲ス
送達スヘキ書類ノ提出ニ代ヘ調書ヲ作リタルトキハ其ノ調書ノ謄本又ハ抄本ヲ交付シテ送達ヲ爲ス
第百六十五條 訴訟無能力者ニ對スル送達ハ其ノ法定代理人ニ之ヲ爲ス
第百六十六條 數人カ共同シテ代理權ヲ行フヘキ場合ニ於テハ送達ハ其ノ一人ニ之ヲ爲スヲ以テ足ル
第百六十七條 軍事用ノ廳舎又ハ艦船ニ屬スル者ニ對スル送達ハ其ノ廳舎又ハ艦船ノ長ニ之ヲ爲ス
第百六十八條 在監者ニ對スル送達ハ監獄ノ長ニ之ヲ爲ス
第百六十九條 送達ハ之ヲ受クヘキ者ノ住所、居所、營業所又ハ事務所ニ於テ之ヲ爲ス但シ法定代理人ニ對スル送達ハ本人ノ營業所又ハ事務所ニ於テモ之ヲ爲スコトヲ得
送達ヲ受クヘキ者カ日本ニ住所、居所、營業所又ハ事務所ヲ有スルコト明ナラサルトキハ送達ハ其ノ者ニ出會ヒタル場所ニ於テ之ヲ爲スコトヲ得住所、居所、營業所又ハ事務所ヲ有スル者カ送達ヲ受クルコトヲ拒マサルトキ亦同シ
第百七十條 當事者、法定代理人又ハ訴訟代理人ハ受訴裁判所ノ所在地ニ住所、居所、營業所又ハ事務所ヲ有セサルトキハ其ノ裁判所ノ所在地ニ於テ送達ヲ受クヘキ場所及送達受取人ヲ定メ之ヲ屆出ツルコトヲ要ス
送達ヲ受クヘキ者カ前項ノ屆出ヲ爲ササルトキハ其ノ者ニ對シテ送達スヘキ書類ハ前條第一項ノ規定ニ依リ送達スヘキ場所ニ宛テ書留郵便ニ付シテ之ヲ發送スルコトヲ得
第一項ノ屆出ハ送達ヲ受クヘキ者カ受訴裁判所ノ所在地ニ住所、居所、營業所又ハ事務所ヲ有スル場合ニ於テモ亦之ヲ爲スコトヲ得
第百七十一條 送達ヲ爲スヘキ場所ニ於テ送達ヲ受クヘキ者ニ出會ハサルトキハ事務員、雇人又ハ同居者ニシテ事理ヲ辨識スルニ足ルヘキ知能ヲ具フル者ニ書類ヲ交付スルコトヲ得
前項ニ揭クル者其ノ他書類ノ交付ヲ受クヘキ者カ正當ノ事由ナクシテ之ヲ受クルコトヲ拒ミタルトキハ送達ヲ爲スヘキ場所ニ書類ヲ差置クコトヲ得
第百七十二條 前條ノ規定ニ依リテ送達ヲ爲スコト能ハサル場合ニ於テハ裁判所書記書類ヲ書留郵便ニ付シテ之ヲ發送スルコトヲ得
第百七十三條 第百七十條第二項又ハ前條ノ規定ニ依リテ書類ヲ郵便ニ付シテ發送シタル場合ニ於テハ其ノ發送ノ時ニ於テ送達アリタルモノト看做ス
第百七十四條 日曜日其ノ他ノ一般ノ休日又ハ日出前日沒後ニ於テ執達吏ニ依ル送達ヲ爲スニハ裁判長ノ許可アルコトヲ要ス
前項ノ許可アリタルトキハ裁判所書記ハ送達スヘキ書類ニ其ノ旨ヲ附記スルコトヲ要ス
前二項ノ規定ニ違背スル送達ハ書類ノ交付ヲ受クヘキ者カ之ヲ受取リタル場合ニ限リ其ノ效力ヲ有ス
第百七十五條 外國ニ於テ爲スヘキ送達ハ裁判長其ノ國ノ管轄官廳又ハ其ノ國ニ駐在スル日本ノ大使、公使若ハ領事ニ囑託シテ之ヲ爲ス
第百七十六條 出陣ノ軍隊若ハ外國駐在ノ軍隊ニ屬スル者又ハ役務ニ服スル艦船ノ乘組員ニ對スル送達ハ裁判長上班司令官廳ニ囑託シテ之ヲ爲ス
前項ノ送達ニ付テハ第百六十七條ノ規定ヲ準用ス
第百七十七條 送達ヲ爲シタル吏員ハ書面ヲ作リ送達ニ關スル事項ヲ記載シ之ヲ裁判所ニ提出スルコトヲ要ス
第百七十八條 當事者ノ住所、居所其ノ他送達ヲ爲スヘキ場所カ知レサル場合又ハ外國ニ於テ爲スヘキ送達ニ付第百七十五條ノ規定ニ依ルコト能ハス若ハ之ニ依ルモ其ノ效ナシト認ムヘキ場合ニ於テハ申立ニ因リ裁判長ノ許可ヲ得テ公示送達ヲ爲スコトヲ得
同一ノ當事者ニ對スル爾後ノ公示送達ハ職權ヲ以テ之ヲ爲ス
第百七十九條 公示送達ハ裁判所書記送達スヘキ書類ヲ保管シ何時ニテモ送達ヲ受クヘキ者ニ交付スヘキ旨ヲ裁判所ノ揭示場ニ揭示シテ之ヲ爲ス但シ呼出狀ノ送達ハ呼出狀ヲ揭示場ニ貼附シテ之ヲ爲ス
裁判所ハ公示送達アリタルコトヲ官報又ハ新聞紙ニ揭載スヘキコトヲ命スルコトヲ得但シ外國ニ於テ爲スヘキ送達ニ付テハ公示送達アリタルコトヲ郵便ニ付シテ通知スルコトヲ得
第百八十條 公示送達ハ前條第一項ノ規定ニ依ル揭示ヲ始メ又ハ貼附ヲ爲シタル日ヨリ二週間ヲ經過スルニ因リテ其ノ效力ヲ生ス但シ第百七十八條第二項ノ公示送達ハ揭示ヲ始メ又ハ貼附ヲ爲シタル日ノ翌日ニ於テ其ノ效力ヲ生ス
前項ノ期間ハ之ヲ短縮スルコトヲ得ス
第百八十一條 送達ニ關スル裁判長ノ權限ハ受命判事、受託判事及送達地ノ區裁判所ノ判事亦之ヲ有ス
第四節 裁判
第百八十二條 訴訟カ裁判ヲ爲スニ熟スルトキハ裁判所ハ終局判決ヲ爲ス
第百八十三條 訴訟ノ一部カ裁判ヲ爲スニ熟スルトキハ裁判所ハ其ノ一部ニ付終局判決ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ハ口頭辯論ノ併合ヲ命シタル數個ノ訴訟中其ノ一カ裁判ヲ爲スニ熟スル場合及本訴又ハ反訴カ裁判ヲ爲スニ熟スル場合ニ之ヲ準用ス
第百八十四條 獨立シタル攻擊又ハ防禦ノ方法其ノ他中間ノ爭ニ付裁判ヲ爲スニ熟スルトキハ裁判所ハ中間判決ヲ爲スコトヲ得請求ノ原因及數額ニ付爭アル場合ニ於テ其ノ原因ニ付亦同シ
第百八十五條 裁判所ハ判決ヲ爲スニ當リ其ノ爲シタル口頭辯論ノ全趣旨及證據調ノ結果ヲ斟酌シ自由ナル心證ニ依リ事實上ノ主張ヲ眞實ト認ムヘキカ否ヲ判斷ス
第百八十六條 裁判所ハ當事者ノ申立テサル事項ニ付判決ヲ爲スコトヲ得ス
第百八十七條 判決ハ其ノ基本タル口頭辯論ニ關與シタル判事之ヲ爲ス
判事ノ更迭アル場合ニ於テハ當事者ハ從前ノ口頭辯論ノ結果ヲ陳述スルコトヲ要ス
第百八十八條 判決ハ言渡ニ因リテ其ノ效力ヲ生ス
第百八十九條 判決ノ言渡ハ判決原本ニ基キ裁判長主文ヲ朗讀シテ之ヲ爲ス
裁判長ハ相當ト認ムルトキハ判決ノ理由ヲ朗讀シ又ハ口頭ヲ以テ其ノ要領ヲ告クルコトヲ得
第百九十條 判決ノ言渡ハ口頭辯論終結ノ日ヨリ二週間內ニ之ヲ爲ス但シ事件繁雜ナルトキ其ノ他特別ノ事情アルトキハ此ノ限ニ在ラス
判決ノ言渡ハ當事者カ在廷セサル場合ニ於テモ之ヲ爲スコトヲ得
第百九十一條 判決ニハ左ノ事項ヲ記載シ判決ヲ爲シタル判事之ニ署名捺印スルコトヲ要ス
一 主文
二 事實及爭點
三 理由
四 當事者及法定代理人
五 裁判所
事實及爭點ノ記載ハ口頭辯論ニ於ケル當事者ノ陳述ニ基キ要領ヲ摘示シテ之ヲ爲スコトヲ要ス
判事判決ニ署名捺印スルニ支障アルトキハ他ノ判事判決ニ其ノ事由ヲ記載シテ署名捺印スルコトヲ要ス
第百九十二條 判決ハ言渡後遲滯ナク之ヲ裁判所書記ニ交付シ書記ハ言渡及交付ノ日ヲ附記シ之ニ捺印スルコトヲ要ス
第百九十三條 判決ハ交付ヲ受ケタル日ヨリ二週間內ニ之ヲ當事者ニ送達スルコトヲ要ス
判決ノ送達ハ正本ヲ以テ之ヲ爲ス
第百九十四條 判決ニ違算、書損其ノ他之ニ類スル明白ナル誤謬アルトキハ裁判所ハ何時ニテモ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ更正決定ヲ爲スコトヲ得
更正決定ハ判決ノ原本及正本ニ之ヲ附記スルコトヲ要ス但シ正本ニ附記スルコト能ハサルトキハ決定ノ正本ヲ作リ之ヲ當事者ニ送達スルコトヲ要ス
更正決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得但シ判決ニ對シ適法ノ控訴アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第百九十五條 裁判所カ請求ノ一部ニ付裁判ヲ脫漏シタルトキハ訴訟ハ其ノ請求ノ部分ニ付仍裁判所ニ繫屬ス
訴訟費用ノ裁判ヲ脫漏シタル場合ニ於テハ裁判所ハ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ其ノ訴訟費用ニ付裁判ヲ爲ス此ノ場合ニ於テハ第百四條ノ規定ヲ準用ス
前項ノ規定ニ依ル訴訟費用ノ裁判ハ本案判決ニ對シ適法ノ控訴アリタルトキハ其ノ效力ヲ失フ此ノ場合ニ於テハ控訴裁判所ハ訴訟ノ總費用ニ付裁判ヲ爲ス
第百九十六條 財產權上ノ請求ニ關スル判決ニ付テハ裁判所ハ必要アリト認ムルトキハ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ擔保ヲ供シ又ハ供セスシテ假執行ヲ爲スコトヲ得ヘキコトヲ宣言スルコトヲ得
裁判所ハ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ擔保ヲ供シテ假執行ヲ免ルルコトヲ得ヘキコトヲ宣言スルコトヲ得
前二項ノ宣言ハ判決主文ニ之ヲ揭クルコトヲ要ス
第百九十七條 第百十二條、第百十三條、第百十五條及第百十六條ノ規定ハ前條ノ擔保ニ之ヲ準用ス
第百九十八條 假執行ノ宣言ハ其ノ宣言又ハ本案判決ヲ變更スル判決ノ言渡ニ因リ變更ノ限度ニ於テ其ノ效力ヲ失フ
本案判決ヲ變更スル場合ニ於テハ裁判所ハ被告ノ申立ニ因リ其ノ判決ニ於テ假執行ノ宣言ニ基キ被告カ給付シタルモノノ返還及假執行ニ因リ又ハ之ヲ免ルル爲被告ノ受ケタル損害ノ賠償ヲ原告ニ命スルコトヲ要ス
假執行ノ宣言ノミヲ變更シタルトキハ後ニ本案判決ヲ變更スル判決ニ付前項ノ規定ヲ適用ス
第百九十九條 確定判決ハ主文ニ包含スルモノニ限リ旣判力ヲ有ス
相殺ノ爲主張シタル請求ノ成立又ハ不成立ノ判斷ハ相殺ヲ以テ對抗シタル額ニ付旣判力ヲ有ス
第二百條 外國裁判所ノ確定判決ハ左ノ條件ヲ具備スル場合ニ限リ其ノ效力ヲ有ス
一 法令又ハ條約ニ於テ外國裁判所ノ裁判權ヲ否認セサルコト
二 敗訴ノ被告カ日本人ナル場合ニ於テ公示送達ニ依ラスシテ訴訟ノ開始ニ必要ナル呼出若ハ命令ノ送達ヲ受ケタルコト又ハ之ヲ受ケサルモ應訴シタルコト
三 外國裁判所ノ判決カ日本ニ於ケル公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反セサルコト
四 相互ノ保證アルコト
第二百一條 確定判決ハ當事者、口頭辯論終結後ノ承繼人又ハ其ノ者ノ爲請求ノ目的物ヲ所持スル者ニ對シテ其ノ效力ヲ有ス
他人ノ爲原告又ハ被告ト爲リタル者ニ對スル確定判決ハ其ノ他人ニ對シテモ效力ヲ有ス
前二項ノ規定ハ假執行ノ宣言ニ之ヲ準用ス
第二百二條 不適法ナル訴ニシテ其ノ欠缺カ補正スルコト能ハサルモノナル場合ニ於テハ口頭辯論ヲ經スシテ判決ヲ以テ之ヲ却下スルコトヲ得
第二百三條 和解又ハ請求ノ抛棄若ハ認諾ヲ調書ニ記載シタルトキハ其ノ記載ハ確定判決ト同一ノ效力ヲ有ス
第二百四條 決定及命令ハ相當ト認ムル方法ヲ以テ之ヲ告知スルニ因リテ其ノ效力ヲ生ス
裁判所書記ハ告知ノ方法、場所及年月日ヲ裁判ノ原本ニ附記シ之ニ捺印スルコトヲ要ス
第二百五條 訴訟ノ指揮ニ關スル決定及命令ハ何時ニテモ之ヲ取消スコトヲ得
第二百六條 裁判所書記ノ處分ニ對スル異議ニ付テハ其ノ書記所屬ノ裁判所決定ヲ以テ裁判ヲ爲ス
第二百七條 決定及命令ニハ其ノ性質ニ反セサル限リ判決ニ關スル規定ヲ準用ス
第五節 訴訟手續ノ中斷及中止
第二百八條 當事者カ死亡シタルトキハ訴訟手續ハ中斷ス此ノ場合ニ於テハ相續人、相續財產管理人其ノ他法令ニ依リ訴訟ヲ續行スヘキ者ハ訴訟手續ヲ受繼クコトヲ要ス
相續人ハ相續ノ抛棄ヲ爲スコトヲ得ル間ハ訴訟手續ヲ受繼クコトヲ得ス
第二百九條 當事者タル法人カ合併ニ因リテ消滅シタルトキハ訴訟手續ハ中斷ス此ノ場合ニ於テハ合併ニ因リテ設立シタル法人又ハ合併後存續スル法人ハ訴訟手續ヲ受繼クコトヲ要ス
前項ノ規定ハ合併ヲ以テ相手方ニ對抗スルコトヲ得サル場合ニハ之ヲ適用セス
第二百十條 當事者カ訴訟能力ヲ失ヒタルトキ又ハ其ノ法定代理人カ死亡シ若ハ代理權ヲ失ヒタルトキハ訴訟手續ハ中斷ス此ノ場合ニ於テハ法定代理人又ハ訴訟能力ヲ有スルニ至リタル當事者ハ訴訟手續ヲ受繼クコトヲ要ス
第二百十一條 受託者ノ信託ノ任務終了シタルトキハ訴訟手續ハ中斷ス此ノ場合ニ於テハ新受託者訴訟手續ヲ受繼クコトヲ要ス
第二百十二條 一定ノ資格ヲ有スル者カ自己ノ名ヲ以テ他人ノ爲訴訟ノ當事者タル場合ニ於テ其ノ資格ヲ喪失シタルトキハ訴訟手續ハ中斷ス此ノ場合ニ於テハ同一ノ資格ヲ有スル者訴訟手續ヲ受繼クコトヲ要ス當事者ノ死亡ニ因リ訴訟手續カ中斷シタル場合亦同シ
第四十七條ノ規定ニ依リテ原告又ハ被告ト爲ルヘキ者ヲ選定シタル訴訟ニ於テ其ノ選定セラレタル當事者ノ全員カ其ノ資格ヲ喪失シタルトキハ訴訟手續ハ中斷ス此ノ場合ニ於テハ選定ヲ爲シタル者ノ總員又ハ新ニ原告若ハ被告トシテ選定セラレタル者ハ訴訟手續ヲ受繼クコトヲ要ス
第二百十三條 第二百八條第一項、第二百九條第一項及第二百十條乃至前條ノ規定ハ訴訟代理人アル間ハ之ヲ適用セス
第二百十四條 當事者カ破產ノ宣告ヲ受ケタルトキハ破產財團ニ關スル訴訟手續ハ中斷ス此ノ場合ニ於テ破產法ニ依ル受繼アル迄ニ破產手續ノ解止アリタルトキハ破產者ハ當然訴訟手續ヲ受繼ス
第二百十五條 破產法ニ依リテ破產財團ニ關スル訴訟手續ノ受繼アリタル後破產手續ノ解止アリタルトキハ訴訟手續ハ中斷ス此ノ場合ニ於テハ破產者ハ訴訟手續ヲ受繼クコトヲ要ス
第二百十六條 訴訟手續ノ受繼ハ相手方ニ於テモ亦之ヲ爲スコトヲ得
第二百十七條 訴訟手續受繼ノ申立アリタルトキハ裁判所ハ之ヲ相手方ニ通知スルコトヲ要ス
第二百十八條 訴訟手續受繼ノ申立ハ裁判所職權ヲ以テ之ヲ調查シ理由ナシト認メタルトキハ決定ヲ以テ之ヲ却下スルコトヲ要ス
裁判ノ送達後中斷シタル訴訟手續ノ受繼ニ付テハ其ノ裁判ヲ爲シタル裁判所裁判ヲ爲スコトヲ要ス
第二百十九條 裁判所ハ當事者カ訴訟手續ノ受繼ヲ爲ササル場合ニ於テモ職權ヲ以テ其ノ續行ヲ命スルコトヲ得
第二百二十條 天災其ノ他ノ事故ニ因リテ裁判所カ職務ヲ行フコト能ハサルトキハ訴訟手續ハ其ノ事故ノ止ム迄中止ス
第二百二十一條 當事者カ不定期間ノ故障ニ因リ訴訟手續ヲ續行スルコト能ハサルトキハ裁判所ハ決定ヲ以テ其ノ中止ヲ命スルコトヲ得
裁判所ハ前項ノ決定ヲ取消スコトヲ得
第二百二十二條 判決ノ言渡ハ訴訟手續ノ中斷中ト雖之ヲ爲スコトヲ得
訴訟手續ノ中斷又ハ中止ハ期間ノ進行ヲ止メ訴訟手續ノ受繼ノ通知又ハ續行ノ時ヨリ更ニ全期間ノ進行ヲ始ム
第二編 第一審ノ訴訟手續
第一章 地方裁判所ノ訴訟手續
第一節 訴
第二百二十三條 訴ノ提起ハ訴狀ヲ裁判所ニ提出シテ之ヲ爲スコトヲ要ス
第二百二十四條 訴狀ニハ當事者、法定代理人竝請求ノ趣旨及原因ヲ記載スルコトヲ要ス
準備書面ニ關スル規定ハ訴狀ニ之ヲ準用ス
第二百二十五條 確認ノ訴ハ法律關係ヲ證スル書面ノ眞否ヲ確定スル爲ニモ之ヲ提起スルコトヲ得
第二百二十六條 將來ノ給付ヲ求ムル訴ハ豫メ其ノ請求ヲ爲ス必要アル場合ニ限リ之ヲ提起スルコトヲ得
第二百二十七條 數個ノ請求ハ同種ノ訴訟手續ニ依ル場合ニ限リ一ノ訴ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
第二百二十八條 訴狀カ第二百二十四條第一項ノ規定ニ違背スル場合ニ於テハ裁判長ハ相當ノ期間ヲ定メ其ノ期間內ニ欠缺ヲ補正スヘキコトヲ命スルコトヲ要ス法律ノ規定ニ從ヒ訴狀ニ印紙ヲ貼用セサル場合亦同シ
原告カ欠缺ノ補正ヲ爲ササルトキハ裁判長ハ命令ヲ以テ訴狀ヲ却下スルコトヲ要ス
前項ノ命令ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
抗告狀ニハ却下セラレタル訴狀ヲ添附スルコトヲ要ス
第二百二十九條 訴狀ハ之ヲ被告ニ送達スルコトヲ要ス
前條ノ規定ハ訴狀ノ送達ヲ爲スコト能ハサル場合ニ之ヲ準用ス
第二百三十條 訴ノ提起アリタルトキハ裁判長ハ口頭辯論ノ期日ヲ定メ當事者ヲ呼出スコトヲ要ス
第二百三十一條 裁判所ニ繫屬スル事件ニ付テハ當事者ハ更ニ訴ヲ提起スルコトヲ得ス
第二百三十二條 原告ハ請求ノ基礎ニ變更ナキ限リ口頭辯論ノ終結ニ至ル迄請求又ハ請求ノ原因ヲ變更スルコトヲ得但シ之ニ因リ著ク訴訟手續ヲ遲滯セシムヘキ場合ハ此ノ限ニ在ラス
請求ノ變更ハ書面ニ依リテ之ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ書面ハ之ヲ相手方ニ送達スルコトヲ要ス
第二百三十三條 裁判所カ請求又ハ請求ノ原因ノ變更ヲ不當ナリト認ムルトキハ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ其ノ變更ヲ許ササル旨ノ決定ヲ爲スコトヲ要ス
第二百三十四條 裁判カ訴訟ノ進行中ニ爭ト爲リタル法律關係ノ成立又ハ不成立ニ繫ルトキハ當事者ハ請求ヲ擴張シテ其ノ法律關係ノ確認ノ判決ヲ求ムルコトヲ得但シ其ノ確認ノ請求カ他ノ裁判所ノ管轄ニ專屬セサルトキニ限ル
前項ノ規定ニ依ル請求ノ擴張ハ書面ニ依リテ之ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ書面ハ之ヲ相手方ニ送達スルコトヲ要ス
第二百三十五條 時效ノ中斷又ハ法律上ノ期間遵守ノ爲必要ナル裁判上ノ請求ハ訴ヲ提起シタル時又ハ第二百三十二條第二項若ハ前條第二項ノ規定ニ依リ書面ヲ裁判所ニ提出シタル時ニ於テ其ノ效力ヲ生ス
第二百三十六條 訴ハ判決ノ確定ニ至ル迄其ノ全部又ハ一部ヲ取下クルコトヲ得但シ相手方カ本案ニ付準備書面ヲ提出シ、準備手續ニ於テ申述ヲ爲シ又ハ口頭辯論ヲ爲シタルトキハ訴ノ取下ニ付其ノ同意アルコトヲ要ス
訴ノ取下ハ書面ニ依リテ之ヲ爲スコトヲ要ス但シ口頭辯論ニ於テ又ハ準備手續中受命判事ノ面前ニ於テ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ妨ケス
訴狀送達ノ後ニ在リテハ取下ノ書面ハ之ヲ相手方ニ送達スルコトヲ要ス
第二百三十七條 訴訟ハ訴ノ取下アリタル部分ニ付テハ初ヨリ繫屬ナカリシモノト看做ス
本案ニ付終局判決アリタル後訴ヲ取下ケタル者ハ同一ノ訴ヲ提起スルコトヲ得ス
第二百三十八條 當事者雙方カ口頭辯論ノ期日ニ出頭セス又ハ辯論ヲ爲サスシテ退廷シタル場合ニ於テ三月內ニ期日指定ノ申立ヲ爲ササルトキハ訴ノ取下アリタルモノト看做ス
第二百三十九條 被告ハ口頭辯論ノ終結ニ至ル迄本訴ノ繫屬スル裁判所ニ反訴ヲ提起スルコトヲ得但シ其ノ目的タル請求カ他ノ裁判所ノ管轄ニ專屬セサルトキ及本訴ノ目的タル請求又ハ防禦ノ方法ト牽連スルトキニ限ル
第二百四十條 反訴ニ付テハ本訴ニ關スル規定ニ依ル
第二百四十一條 本訴ノ取下アリタルトキハ被告ハ原告ノ同意ヲ得スシテ反訴ヲ取下クルコトヲ得
第二節 辯論ノ準備
第二百四十二條 口頭辯論ハ書面ヲ以テ之ヲ準備スルコトヲ要ス
第二百四十三條 準備書面ハ之ニ記載シタル事項ニ付相手方カ準備ヲ爲スニ必要ナル期間ヲ存シ之ヲ裁判所ニ提出シ裁判所ハ之ヲ相手方ニ送達スルコトヲ要ス
裁判長ハ準備書面ヲ提出スヘキ期間ヲ定ムルコトヲ得
第二百四十四條 準備書面ニハ左ノ事項ヲ記載シ當事者又ハ代理人之ニ署名捺印スルコトヲ要ス
一 當事者ノ氏名、名稱又ハ商號、職業及住所
二 代理人ノ氏名、職業及住所
三 事件ノ表示
四 攻擊又ハ防禦ノ方法
五 相手方ノ請求及攻擊又ハ防禦ノ方法ニ對スル陳述
六 附屬書類ノ表示
七 年月日
八 裁判所ノ表示
第二百四十五條 當事者ノ所持スル文書ニシテ準備書面ニ引用シタルモノハ準備書面ノ各通ニ其ノ謄本ヲ添附スルコトヲ要ス
文書ノ一部ノミヲ必要トスルトキハ其ノ抄本ヲ添附シ文書カ大部ナルトキハ其ノ文書ヲ表示スルヲ以テ足ル
第二百四十六條 前條ノ文書ハ相手方ノ求ニ因リ其ノ原本ヲ閱覽セシムルコトヲ要ス
第二百四十七條 準備書面ニ記載セサル事實ハ相手方カ在廷セサルトキハ口頭辯論ニ於テ之ヲ主張スルコトヲ得ス
第二百四十八條 外國語ヲ以テ作リタル文書ニハ其ノ譯文ヲ添附スルコトヲ要ス
第二百四十九條 訴訟ニ付テハ受命判事ニ依リ口頭辯論ノ準備手續ヲ爲スコトヲ要ス但シ裁判所相當ト認ムルトキハ直ニ辯論ヲ命シ又ハ訴訟ノ一部若ハ或爭點ノミニ付準備手續ヲ命スルコトヲ得
第二百五十條 準備手續ニ於テハ調書ヲ作リ當事者ノ陳述ニ基キ第二百四十四條第四號及第五號ニ揭クル事項ヲ記載シ殊ニ證據ニ付テハ其ノ申出ヲ明確ニスルコトヲ要ス
受命判事相當ト認ムルトキハ準備書面ヲ以テ前項ノ陳述及調書ニ代フルコトヲ得
第二百五十一條 當事者ノ一方カ期日ニ出頭セサルトキハ前條ノ調書ノ謄本ヲ之ニ送達シ新期日ヲ定メ當事者雙方ヲ呼出スコトヲ得
第二百五十二條 受命判事ハ當事者ヲシテ準備書面ヲ提出セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ第二百四十三條ノ規定ヲ準用ス
第二百五十三條 當事者カ期日ニ出頭セス又ハ前條ノ規定ニ依リ受命判事ノ定メタル期間內ニ準備書面ヲ提出セサルトキハ受命判事ハ準備手續ヲ終結スルコトヲ得
第二百五十四條 當事者ハ口頭辯論ニ於テ準備手續ノ結果ヲ陳述スルコトヲ要ス
第二百五十五條 調書又ハ之ニ代ルヘキ準備書面ニ記載セサル事項ハ口頭辯論ニ於テ之ヲ主張スルコトヲ得ス但シ其ノ事項カ裁判所職權ヲ以テ調查スヘキモノナルトキ、著ク訴訟ヲ遲滯セシメサルトキ又ハ重大ナル過失ナクシテ準備手續ニ於テ之ヲ提出スルコト能ハサリシコトヲ疏明シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項但書ノ規定ハ第二百四十七條ノ規定ノ適用ヲ妨ケス
訴狀又ハ準備手續前ニ提出シタル準備書面ニ記載シタル事項ハ調書又ハ之ニ代ルヘキ準備書面ニ記載セサルモノト雖口頭辯論ニ於テ之ヲ主張スルコトヲ妨ケス
第二百五十六條 第百二十六條乃至第百二十九條、第百三十一條、第百三十三條乃至第百四十一條及第二百三十八條ノ規定ハ準備手續ニ之ヲ準用ス
第三節 證據
第一款 總則
第二百五十七條 裁判所ニ於テ當事者カ自白シタル事實及顯著ナル事實ハ之ヲ證スルコトヲ要セス
第二百五十八條 證據ノ申出ハ證スヘキ事實ヲ表示シテ之ヲ爲スコトヲ要ス
證據ノ申出ハ期日前ニ於テモ之ヲ爲スコトヲ得
第二百五十九條 當事者ノ申出テタル證據ニシテ裁判所ニ於テ不必要ト認ムルモノハ之ヲ取調フルコトヲ要セス
第二百六十條 證據調ニ付不定期間ノ障碍アルトキハ裁判所ハ證據調ヲ爲ササルコトヲ得
第二百六十一條 裁判所ハ當事者ノ申出テタル證據ニ依リテ心證ヲ得ルコト能ハサルトキ其ノ他必要アリト認ムルトキハ職權ヲ以テ證據調ヲ爲スコトヲ得
第二百六十二條 裁判所ハ必要ナル調查ヲ官廳若ハ公署、外國ノ官廳若ハ公署又ハ學校、商業會議所、取引所其ノ他ノ團體ニ囑託スルコトヲ得
第二百六十三條 證據調ハ當事者カ期日ニ出頭セサル場合ニ於テモ之ヲ爲スコトヲ得
第二百六十四條 外國ニ於テ爲スヘキ證據調ハ其ノ國ノ管轄官廳又ハ其ノ國ニ駐在スル日本ノ大使、公使若ハ領事ニ之ヲ囑託シテ爲スコトヲ要ス
外國ニ於テ爲シタル證據調ハ其ノ國ノ法律ニ違背スルモ本法ニ違背セサルトキハ其ノ效力ヲ有ス
第二百六十五條 裁判所ハ相當ト認ムルトキハ裁判所外ニ於テ證據調ヲ爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ部員ニ命シ又ハ區裁判所ニ囑託シテ證據調ヲ爲サシムルコトヲ得
受託判事カ他ノ區裁判所ニ於テ證據調ヲ爲スコトヲ相當ト認ムルトキハ更ニ證據調ノ囑託ヲ爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ旨ヲ受訴裁判所及當事者ニ通知スルコトヲ要ス
第二百六十六條 受託判事ハ證據調ニ關スル記錄ヲ受訴裁判所ニ送付スルコトヲ要ス
第二百六十七條 疏明ハ卽時ニ取調フルコトヲ得ヘキ證據ニ依リテ之ヲ爲スコトヲ要ス
裁判所ハ當事者若ハ法定代理人ヲシテ保證金ヲ供託セシメ又ハ其ノ主張ノ眞實ナルコトヲ宣誓セシメ之ヲ以テ疏明ニ代フルコトヲ得
第二百八十六條乃至第二百八十九條ノ規定ハ前項ノ宣誓ニ之ヲ準用ス
第二百六十八條 前條第二項ノ規定ニ依リテ保證金ノ供託ヲ爲シタル當事者又ハ法定代理人カ虛僞ノ申述ヲ爲シタルトキハ裁判所決定ヲ以テ保證金ヲ沒取ス
第二百六十九條 第二百六十七條第二項ノ規定ニ依リテ宣誓ヲ爲シタル當事者又ハ法定代理人カ虛僞ノ申述ヲ爲シタルトキハ宣誓ヲ爲サシメタル裁判所決定ヲ以テ五百圓以下ノ過料ニ處ス
第二百七十條 第二百六十八條及前條ノ決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第二款 證人訊問
第二百七十一條 裁判所ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外何人ト雖證人トシテ之ヲ訊問スルコトヲ得
第二百七十二條 官吏又ハ官吏タリシ者ヲ證人トシテ職務上ノ祕密ニ付訊問スル場合ニ於テハ裁判所ハ當該監督官廳ノ承認ヲ得ルコトヲ要ス
前項ノ規定ハ他ノ公務員ニ付之ヲ準用ス
第二百七十三條 國務大臣、宮內大臣、內大臣、樞密院議長、樞密院副議長、樞密顧問官、會計檢查院長、元帥、參謀總長、海軍軍令部長、敎育總監若ハ軍事參議官又ハ此等ノ職ニ在リタル者ヲ證人トシテ職務上ノ祕密ニ付訊問スル場合ニ於テハ裁判所ハ勅許ヲ得ルコトヲ要ス
第二百七十四條 貴族院若ハ衆議院ノ議員又ハ議員タリシ者ヲ證人トシテ職務上ノ祕密ニ付訊問スル場合ニ於テハ裁判所ハ其ノ院ノ承認ヲ得ルコトヲ要ス
第二百七十五條 證人訊問ノ申出ハ證人ヲ指定シテ之ヲ爲スコトヲ要ス
第二百七十六條 證人ノ呼出狀ニハ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス
一 當事者ノ表示
二 訊問事項ノ要領
三 出頭セサル場合ニ於ケル法律上ノ制裁
第二百七十七條 證人カ正當ノ事由ナクシテ出頭セサルトキハ裁判所ハ決定ヲ以テ之ニ因リテ生シタル訴訟費用ノ負擔ヲ命シ且五百圓以下ノ過料ニ處ス此ノ決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第二百七十八條 裁判所ハ正當ノ事由ナクシテ出頭セサル證人ノ勾引ヲ命スルコトヲ得
前項ノ勾引ニハ刑事訴訟法中勾引ニ關スル規定ヲ準用ス
第二百七十九條 左ノ場合ニ於テハ受命判事又ハ受託判事ヲシテ證人ノ訊問ヲ爲サシムルコトヲ得
一 證人カ受訴裁判所ニ出頭スル義務ナキトキ又ハ正當ノ事由ニ因リ出頭スルコト能ハサルトキ
二 證人カ受訴裁判所ニ出頭スルニ付不相當ノ費用又ハ時間ヲ要スルトキ
第二百八十條 證言カ證人又ハ左ニ揭クル者ノ刑事上ノ訴追又ハ處罰ヲ招ク虞アル事項ニ關スルトキハ證人ハ證言ヲ拒ムコトヲ得證言カ此等ノ者ノ恥辱ニ歸スヘキ事項ニ關スルトキ亦同シ
一 證人ノ配偶者、四親等內ノ血族若ハ三親等內ノ姻族又ハ證人ノ家ノ戶主但シ親族ニ付テハ親族關係カ止ミタル後亦同シ
二 證人ノ後見人又ハ證人ノ後見ヲ受クル者
三 證人カ主人トシテ仕フル者
第二百八十一條 左ノ場合ニ於テハ證人ハ證言ヲ拒ムコトヲ得
一 第二百七十二條乃至第二百七十四條ノ場合
二 醫師、齒科醫師、藥劑師、藥種商、產婆、辯護士、辨理士、辯護人、公證人、宗敎又ハ禱祀ノ職ニ在ル者又ハ此等ノ職ニ在リタル者カ職務上知リタル事實ニシテ默祕スヘキモノニ付訊問ヲ受クルトキ
三 技術又ハ職業ノ祕密ニ關スル事項ニ付訊問ヲ受クルトキ
前項ノ規定ハ證人カ默祕ノ義務ヲ免セラレタル場合ニハ之ヲ適用セス
第二百八十二條 證言拒絕ノ理由ハ之ヲ疏明スルコトヲ要ス
第二百八十三條 第二百八十一條第一項第一號ノ場合ヲ除クノ外證言拒絕ノ當否ニ付テハ受訴裁判所當事者ヲ審訊シテ裁判ヲ爲ス
證言拒絕ニ關スル裁判ニ對シテハ當事者及證人ハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第二百八十四條 證言拒絕ヲ理由ナシトスル裁判確定シタル後證人カ故ナク證言ヲ拒ムトキハ第二百七十七條ノ規定ヲ準用ス
第二百八十五條 裁判長ハ證人ヲシテ訊問前宣誓ヲ爲サシムルコトヲ要ス但シ特別ノ事由アルトキハ訊問後之ヲ爲サシムルコトヲ得
第二百八十六條 宣誓ハ起立シテ嚴肅ニ之ヲ行フコトヲ要ス
第二百八十七條 裁判長ハ宣誓前宣誓ノ趣旨ヲ諭示シ且僞證ノ罰ヲ警告スルコトヲ要ス
第二百八十八條 宣誓ハ證人ヲシテ宣誓書ヲ朗讀セシメ且之ニ署名捺印セシメテ之ヲ爲ス證人宣誓書ヲ朗讀スルコト能ハサルトキハ裁判長代リテ之ヲ朗讀ス
宣誓書ニハ良心ニ從ヒ眞實ヲ述ヘ何事ヲモ默祕セス又何事ヲモ附加セサルコトヲ誓フ旨ヲ記載スルコトヲ要ス
第二百八十九條 左ニ揭クル者ヲ證人トシテ訊問スルニハ宣誓ヲ爲サシムルコトヲ得ス
一 十六年未滿ノ者
二 宣誓ノ趣旨ヲ理解スルコト能ハサル者
第二百九十條 第二百八十條ノ規定ニ該當スル證人ニシテ證言拒絕ノ權利ヲ行ハサル者ヲ訊問スルニハ宣誓ヲ爲サシメサルコトヲ得
第二百九十一條 證人カ自己又ハ第二百八十條ニ揭クル者ニ著キ利害關係アル事項ニ付訊問ヲ受クルトキハ宣誓ヲ拒ムコトヲ得
第二百九十二條 宣誓ヲ爲サシメスシテ證人ヲ訊問シタルトキハ其ノ旨及事由ヲ調書ニ記載スルコトヲ要ス
第二百九十三條 第二百七十七條、第二百八十二條及第二百八十三條ノ規定ハ證人カ宣誓ヲ拒ム場合ニ之ヲ準用ス
第二百九十四條 裁判長ハ必要アリト認ムルトキハ證人相互ノ對質ヲ命スルコトヲ得
第二百九十五條 裁判長ハ必要アリト認ムルトキハ證人ヲシテ文字ノ手記其ノ他必要ナル行爲ヲ爲サシムルコトヲ得
第二百九十六條 裁判長ハ必要アリト認ムルトキハ後ニ訊問スヘキ證人ニ在廷ヲ許スコトヲ得
第二百九十七條 證人ハ書類ニ依リテ陳述ヲ爲スコトヲ得ス但シ裁判長ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第二百九十八條 陪席判事ハ裁判長ニ告ケ證人ニ對シテ問ヲ發スルコトヲ得
第二百九十九條 當事者ハ裁判長ニ對シ必要ナル發問ヲ求メ又ハ其ノ許可ヲ得テ問ヲ發スルコトヲ得
當事者ハ發問ノ許否ニ付異議ヲ述フルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ裁判所異議ニ付裁判ヲ爲ス
第三百條 受命判事又ハ受託判事カ證人訊問ヲ爲ス場合ニ於テハ裁判所及裁判長ノ職務ハ其ノ判事之ヲ行フ但シ前條第二項ノ規定ニ依ル異議ノ裁判ハ受訴裁判所之ヲ爲ス
第三款 鑑定
第三百一條 鑑定ニハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外前款ノ規定ヲ準用ス
第三百二條 鑑定ニ必要ナル學識經驗アル者ハ鑑定ヲ爲ス義務ヲ負フ
第二百八十條又ハ第二百九十一條ノ規定ニ依リテ證言又ハ宣誓ヲ拒ミ得ル者ト同一ノ地位ニ在ル者及第二百八十九條ニ揭クル者ハ鑑定人タルコトヲ得ス
第三百三條 鑑定人ハ之ヲ勾引スルコトヲ得ス
第三百四條 鑑定人ハ受訴裁判所、受命判事又ハ受託判事之ヲ指定ス
第三百五條 鑑定人ニ付誠實ニ鑑定ヲ爲スコトヲ妨クヘキ事情アルトキハ當事者ハ其ノ鑑定人カ鑑定事項ニ付陳述ヲ爲ス前之ヲ忌避スルコトヲ得陳述ヲ爲シタルトキト雖其ノ後ニ忌避ノ原因ヲ生シ又ハ當事者カ其ノ原因アルコトヲ知リタルトキ亦同シ
第三百六條 忌避ノ申立ハ受訴裁判所、受命判事又ハ受託判事ニ之ヲ爲スコトヲ要ス
忌避ノ事由ハ之ヲ疏明スルコトヲ要ス
忌避ヲ理由アリトスル決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス之ヲ理由ナシトスル決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第三百七條 宣誓書ニハ良心ニ從ヒ誠實ニ鑑定ヲ爲スコトヲ誓フ旨ヲ記載スルコトヲ要ス
第三百八條 裁判長ハ鑑定人ヲシテ書面又ハ口頭ヲ以テ共同ニテ又ハ各別ニ意見ヲ述ヘシムルコトヲ得
第三百九條 特別ノ學識經驗ニ依リテ知リ得タル事實ニ關スル訊問ニ付テハ證人訊問ニ關スル規定ニ依ル
第三百十條 裁判所必要アリト認ムルトキハ官廳若ハ公署、外國ノ官廳若ハ公署又ハ相當ノ設備アル法人ニ鑑定ヲ囑託スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ宣誓ニ關スル規定ヲ除クノ外本款ノ規定ヲ準用ス
前項ノ場合ニ於テ裁判所必要アリト認ムルトキハ官廳、公署又ハ法人ノ指定シタル者ヲシテ鑑定書ノ說明ヲ爲サシムルコトヲ得
第四款 書證
第三百十一條 書證ノ申出ハ文書ヲ提出シ又ハ之ヲ所持スル者ニ其ノ提出ヲ命セムコトヲ申立テ之ヲ爲スコトヲ要ス
第三百十二條 左ノ場合ニ於テハ文書ノ所持者ハ其ノ提出ヲ拒ムコトヲ得ス
一 當事者カ訴訟ニ於テ引用シタル文書ヲ自ラ所持スルトキ
二 擧證者カ文書ノ所持者ニ對シ其ノ引渡又ハ閱覽ヲ求ムルコトヲ得ルトキ
三 文書カ擧證者ノ利益ノ爲ニ作成セラレ又ハ擧證者ト文書ノ所持者トノ間ノ法律關係ニ付作成セラレタルトキ
第三百十三條 文書提出ノ申立ニハ左ノ事項ヲ明ニスルコトヲ要ス
一 文書ノ表示
二 文書ノ趣旨
三 文書ノ所持者
四 證スヘキ事實
五 文書提出ノ義務ノ原因
第三百十四條 裁判所カ文書提出ノ申立ヲ理由アリト認メタルトキハ決定ヲ以テ文書ノ所持者ニ對シ其ノ提出ヲ命ス
第三者ニ對シ文書ノ提出ヲ命スル場合ニ於テハ其ノ第三者ヲ審訊スルコトヲ要ス
第三百十五條 文書提出ノ申立ニ關スル決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第三百十六條 當事者カ文書提出ノ命ニ從ハサルトキハ裁判所ハ文書ニ關スル相手方ノ主張ヲ眞實ト認ムルコトヲ得
第三百十七條 當事者カ相手方ノ使用ヲ妨クル目的ヲ以テ提出ノ義務アル文書ヲ毀滅シ其ノ他之ヲ使用スルコト能ハサルニ至ラシメタルトキハ裁判所ハ其ノ文書ニ關スル相手方ノ主張ヲ眞實ト認ムルコトヲ得
第三百十八條 第三者カ文書提出ノ命ニ從ハサルトキハ裁判所ハ決定ヲ以テ五百圓以下ノ過料ニ處ス此ノ決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第三百十九條 書證ノ申出ハ第三百十一條ノ規定ニ拘ラス文書ノ所持者ニ其ノ文書ノ送付ヲ囑託セムコトヲ申立テ之ヲ爲スコトヲ得但シ當事者カ法令ニ依リテ文書ノ正本又ハ謄本ノ交付ヲ求ムルコトヲ得ル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第三百二十條 裁判所ハ必要アリト認ムルトキハ提出又ハ送付ニ係ル文書ヲ留置クコトヲ得
第三百二十一條 第二百六十五條ノ規定ニ依リテ受命判事又ハ受託判事ヲシテ文書ニ付證據調ヲ爲サシムル場合ニ於テハ裁判所ハ受命判事又ハ受託判事ノ調書ニ記載スヘキ事項ヲ定ムルコトヲ得
前項ノ調書ニハ文書ノ謄本又ハ抄本ヲ添附スルコトヲ要ス
第三百二十二條 文書ノ提出又ハ送付ハ原本、正本又ハ認證アル謄本ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ要ス
裁判所ハ前項ノ規定ニ拘ラス原本ノ提出ヲ命シ又ハ送付ヲ爲サシムルコトヲ得
裁判所ハ當事者ヲシテ其ノ引用シタル文書ノ謄本又ハ抄本ヲ提出セシムルコトヲ得
第三百二十三條 文書ハ其ノ方式及趣旨ニ依リ官吏其ノ他ノ公務員カ職務上作成シタルモノト認ムヘキトキハ之ヲ眞正ナル公文書ト推定ス
公文書ノ眞否ニ付疑アルトキハ裁判所ハ職權ヲ以テ當該官廳又ハ公署ニ問合ヲ爲スコトヲ得
第三百二十四條 前條ノ規定ハ外國ノ官廳又ハ公署ノ作成ニ係ルモノト認ムヘキ文書ニ之ヲ準用ス
第三百二十五條 私文書ハ其ノ眞正ナルコトヲ證スルコトヲ要ス
第三百二十六條 私文書ハ本人又ハ其ノ代理人ノ署名又ハ捺印アルトキハ之ヲ眞正ナルモノト推定ス
第三百二十七條 文書ノ眞否ハ筆跡又ハ印影ノ對照ニ依リテモ之ヲ證スルコトヲ得
第三百二十八條 第三百十一條、第三百十四條乃至第三百十七條及第三百十九條乃至第三百二十一條ノ規定ハ對照ノ用ニ供スヘキ筆跡又ハ印影ヲ具フル文書其ノ他ノ物件ノ提出又ハ送付ニ之ヲ準用ス
第三者カ正當ノ事由ナクシテ前項ノ規定ニ依ル提出ノ命ニ從ハサルトキハ裁判所ハ決定ヲ以テ五百圓以下ノ過料ニ處ス此ノ決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第三百二十九條 對照ニ適當ナル筆跡ナキトキハ裁判所ハ對照ノ用ニ供スヘキ文字ノ手記ヲ相手方ニ命スルコトヲ得
相手方カ正當ノ事由ナクシテ前項ノ規定ニ依ル裁判所ノ命ニ從ハサルトキハ裁判所ハ文書ノ眞否ニ關スル擧證者ノ主張ヲ眞實ト認ムルコトヲ得書樣ヲ變シテ手記シタルトキ亦同シ
第三百三十條 對照ノ用ニ供シタル書類ノ原本、謄本又ハ抄本ハ之ヲ調書ニ添附スルコトヲ要ス
第三百三十一條 當事者又ハ其ノ代理人カ故意又ハ重大ナル過失ニ因リ眞實ニ反シテ文書ノ眞正ヲ爭ヒタルトキハ裁判所決定ヲ以テ五百圓以下ノ過料ニ處ス此ノ決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ文書ノ眞正ヲ爭ヒタル當事者又ハ代理人カ訴訟ノ繫屬中其ノ眞正ナルコトヲ認メタルトキハ裁判所ハ事情ニ依リ前項ノ決定ヲ取消スコトヲ得
第三百三十二條 本款ノ規定ハ證徵ノ爲作リタル物件ニシテ文書ニ非サルモノニ之ヲ準用ス
第五款 檢證
第三百三十三條 檢證ノ申出ハ檢證ノ目的ヲ表示シテ之ヲ爲スコトヲ要ス
第三百三十四條 受命判事又ハ受託判事ハ檢證ヲ爲スニ當リ必要アリト認ムルトキハ鑑定ヲ命スルコトヲ得
第三百三十五條 第三百十一條、第三百十四條乃至第三百十七條及第三百十九條乃至第三百二十一條ノ規定ハ檢證ノ目的ノ提示又ハ送付ニ之ヲ準用ス
第三者カ正當ノ事由ナクシテ前項ノ規定ニ依ル提示ノ命ニ從ハサルトキハ裁判所ハ決定ヲ以テ五百圓以下ノ過料ニ處ス此ノ決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第六款 當事者訊問
第三百三十六條 裁判所カ證據調ニ依リテ心證ヲ得ルコト能ハサルトキハ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ當事者本人ヲ訊問スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ當事者ヲシテ宣誓ヲ爲サシムルコトヲ得
第三百三十七條 裁判長必要アリト認ムルトキハ當事者相互又ハ當事者ト證人トノ對質ヲ命スルコトヲ得
第三百三十八條 當事者カ正當ノ事由ナクシテ呼出ニ應セス又ハ宣誓若ハ陳述ヲ拒ミタルトキハ裁判所ハ訊問事項ニ關スル相手方ノ主張ヲ眞實ト認ムルコトヲ得
第三百三十九條 宣誓シタル當事者カ虛僞ノ陳述ヲ爲シタルトキハ裁判所決定ヲ以テ五百圓以下ノ過料ニ處ス此ノ決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第三百三十一條第二項ノ規定ハ前項ノ決定ニ之ヲ準用ス
第三百四十條 當事者ヲ訊問シタルトキハ其ノ陳述及宣誓ヲ爲サシメ又ハ爲サシメサルコトヲ調書ニ記載スルコトヲ要ス
第三百四十一條 第三百三十六條乃至前條ノ規定ハ訴訟ニ於テ當事者ヲ代表スル法定代理人ニ之ヲ準用ス但シ當事者本人ヲ訊問スルコトヲ妨ケス
第三百四十二條 第二百七十六條、第二百七十九條、第二百八十五條乃至第二百八十九條、第二百九十五條及第二百九十七條乃至第三百條ノ規定ハ本款ノ訊問ニ之ヲ準用ス
第七款 證據保全
第三百四十三條 裁判所ハ豫メ證據調ヲ爲スニ非サレハ其ノ證據ヲ使用スルニ困難ナル事情アリト認ムルトキハ申立ニ因リ本節ノ規定ニ從ヒ證據調ヲ爲スコトヲ得
第三百四十四條 證據保全ノ申立ハ訴訟ノ繫屬中ニ在リテハ其ノ證據ヲ使用スヘキ審級ノ裁判所ニ、其ノ提起前ニ在リテハ訊問ヲ受クヘキ者若ハ文書ヲ所持スル者ノ居所又ハ檢證物ノ所在地ヲ管轄スル區裁判所ニ之ヲ爲スコトヲ要ス
急迫ナル場合ニ於テハ訴ノ提起後ト雖前項ノ區裁判所ニ證據保全ノ申立ヲ爲スコトヲ得
第三百四十五條 證據保全ノ申立ニハ左ノ事項ヲ明ニスルコトヲ要ス
一 相手方ノ表示
二 證スヘキ事實
三 證據
四 證據保全ノ事由
證據保全ノ事由ハ之ヲ疏明スルコトヲ要ス
第三百四十六條 證據保全ノ申立ハ相手方ヲ指定スルコト能ハサル場合ニ於テモ之ヲ爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ裁判所ハ相手方ト爲ルヘキ者ノ爲ニ特別代理人ヲ選任スルコトヲ得
第三百四十七條 裁判所ハ必要アリト認ムルトキハ訴訟ノ繫屬中職權ヲ以テ證據保全ノ決定ヲ爲スコトヲ得
第三百四十八條 證據保全ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第三百四十九條 證據調ノ期日ニハ申立人及相手方ヲ呼出スコトヲ要ス但シ急速ヲ要スル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第三百五十條 證據保全ニ關スル記錄ハ本訴訟ノ記錄ノ存スル裁判所ニ之ヲ送付スルコトヲ要ス
第三百五十一條 證據保全ニ關スル費用ハ訴訟費用ノ一部トス
第二章 區裁判所ノ訴訟手續
第三百五十二條 區裁判所ノ訴訟手續ニハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外前章ノ規定ヲ準用ス
第三百五十三條 訴ハ口頭ヲ以テ之ヲ提起スルコトヲ得
第三百五十四條 當事者雙方ハ任意ニ裁判所ニ出頭シ訴訟ニ付口頭辯論ヲ爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ訴ノ提起ハ口頭ノ陳述ニ依リテ之ヲ爲ス
第三百五十五條 被告カ反訴ヲ以テ地方裁判所ノ管轄ニ屬スル請求ヲ爲シタル場合ニ於テ相手方ノ申立アルトキハ區裁判所ハ決定ヲ以テ本訴及反訴ヲ地方裁判所ニ移送スルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ第三十二條及第三十四條ノ規定ヲ準用ス
移送ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第三百五十六條 民事上ノ爭ニ付テハ當事者ハ請求ノ趣旨及原因竝爭ノ實情ヲ表示シテ相手方ノ普通裁判籍所在地ノ區裁判所ニ和解ノ申立ヲ爲スコトヲ得
和解調ヒタルトキハ之ヲ調書ニ記載スルコトヲ要ス
和解調ハサル場合ニ於テ裁判所ハ和解ノ期日ニ出頭シタル當事者雙方ノ申立アルトキハ直ニ訴訟ノ辯論ヲ命ス此ノ場合ニ於テハ和解ノ申立ヲ爲シタル者ハ其ノ申立ヲ爲シタル時ニ於テ訴ヲ提起シタルモノト看做シ和解ノ費用ハ之ヲ訴訟費用ノ一部トス
申立人又ハ相手方カ和解ノ期日ニ出頭セサルトキハ裁判所ハ和解調ハサルモノト看做スコトヲ得
第三百五十七條 口頭辯論ハ書面ヲ以テ之ヲ準備スルコトヲ要セス
相手方カ準備ヲ爲スニ非サレハ陳述ヲ爲スコト能ハスト認ムヘキ事項ハ前項ノ規定ニ拘ラス書面ヲ以テ之ヲ準備スルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ準備書面ノ提出ニ代ヘ口頭辯論前直接ニ相手方ニ其ノ事項ヲ通知スルコトヲ得
第二百四十七條ノ規定ハ前項ノ通知ヲ爲ササル場合ニ之ヲ準用ス
第三百五十八條 準備手續ニ關スル規定ハ區裁判所ノ訴訟手續ニ之ヲ適用セス
第三百五十九條 判決ニ事實及理由ヲ記載スルニハ請求ノ趣旨及原因ノ要旨、其ノ原因ノ有無竝請求ヲ排斥スル理由タル抗辯ノ要旨ヲ表示スルヲ以テ足ル
第三編 上訴
第一章 控訴
第三百六十條 控訴ハ第一審ノ終局判決ニ對シテ之ヲ爲スコトヲ得但シ當事者雙方共ニ控訴ヲ爲ササル旨ノ合意ヲ爲シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ合意ハ上告ヲ爲ス權利ヲ留保シテ之ヲ爲スコトヲ得
第二十五條第二項ノ規定ハ第一項ノ合意ニ之ヲ準用ス
第三百六十一條 訴訟費用ノ裁判ニ對シテハ獨立シテ控訴ヲ爲スコトヲ得ス
第三百六十二條 終局判決前ノ裁判ハ控訴裁判所ノ判斷ヲ受ク但シ不服ヲ申立ツルコトヲ得サル裁判及抗告ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトヲ得ル裁判ハ此ノ限ニ在ラス
第三百六十三條 控訴ハ控訴審ノ終局判決アル迄之ヲ取下クルコトヲ得
第二百三十六條第二項第三項、第二百三十七條第一項及第二百三十八條ノ規定ハ控訴ノ取下ニ之ヲ準用ス
第三百六十四條 控訴ヲ爲ス權利ハ之ヲ抛棄スルコトヲ得
第三百六十五條 控訴權ノ抛棄ハ控訴提起前ニ在リテハ第一審裁判所、控訴提起後ニ在リテハ控訴裁判所ニ對スル申述ニ依リテ之ヲ爲スコトヲ要ス
控訴提起後ノ控訴權ノ抛棄ハ控訴ノ取下ト共ニ之ヲ爲スコトヲ要ス
控訴權抛棄ノ書面ハ之ヲ相手方ニ送達スルコトヲ要ス
第三百六十六條 控訴ハ判決ノ送達アリタル日ヨリ二週間內ニ之ヲ提起スルコトヲ要ス但シ其ノ期間前提起シタル控訴ノ效力ヲ妨ケス
前項ノ期間ハ之ヲ不變期間トス
第三百六十七條 控訴ノ提起ハ控訴狀ヲ第一審裁判所又ハ控訴裁判所ニ提出シテ之ヲ爲スコトヲ要ス
控訴狀ニハ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス
一 當事者及法定代理人
二 第一審判決ノ表示及其ノ判決ニ對シ控訴ヲ爲ス旨
第三百六十八條 準備書面ニ關スル規定ハ控訴狀ニ之ヲ準用ス
第三百六十九條 第一審裁判所ニ控訴狀ノ提出アリタルトキハ裁判所書記ハ訴訟記錄ニ控訴狀ヲ添附シテ遲滯ナク之ヲ控訴裁判所ノ書記ニ送付スルコトヲ要ス
控訴裁判所ニ控訴狀ノ提出アリタルトキハ裁判所書記ハ遲滯ナク第一審裁判所ノ書記ニ訴訟記錄ノ送付ヲ求ムルコトヲ要ス
第三百七十條 第二百二十八條ノ規定ハ控訴狀カ第三百六十七條第二項ノ規定ニ違背スル場合、法律ノ規定ニ從ヒ控訴狀ニ印紙ヲ貼用セサル場合及控訴狀ノ送達ヲ爲スコト能ハサル場合ニ之ヲ準用ス
第三百七十一條 控訴狀ハ之ヲ被控訴人ニ送達スルコトヲ要ス
第三百七十二條 被控訴人ハ控訴權消滅ノ後ト雖口頭辯論ノ終結ニ至ル迄附帶控訴ヲ爲スコトヲ得
第三百七十三條 附帶控訴ハ控訴ノ取下アリタルトキ又ハ不適法トシテ控訴ノ棄却アリタルトキハ其ノ效力ヲ失フ但シ控訴ノ要件ヲ具備スルモノハ之ヲ獨立ノ控訴ト看做ス
第三百七十四條 附帶控訴ニ付テハ控訴ニ關スル規定ニ依ル
第三百七十五條 控訴裁判所ハ第一審ノ判決ニ付不服ノ申立ナキ部分ニ限リ申立ニ因リ決定ヲ以テ假執行ノ宣言ヲ爲スコトヲ得
第三百七十六條 假執行ニ關スル控訴審ノ裁判ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
前條ノ申立ヲ却下スル決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第三百七十七條 口頭辯論ハ當事者カ第一審ノ判決ノ變更ヲ求ムル限度ニ於テノミ之ヲ爲ス
當事者ハ第一審ニ於ケル口頭辯論ノ結果ヲ陳述スルコトヲ要ス
第三百七十八條 前編第一章ノ規定ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外控訴審ノ訴訟手續ニ之ヲ準用ス
第三百七十九條 第一審ニ於テ爲シタル訴訟行爲ハ控訴審ニ於テモ其ノ效力ヲ有ス
第三百八十條 第一審ニ於テ爲シタル準備手續ハ控訴審ニ於テモ其ノ效力ヲ有ス
第三百八十一條 控訴審ニ於テハ當事者ハ第一審裁判所カ管轄權ヲ有セサルコトヲ主張スルコトヲ得ス但シ專屬管轄ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第三百八十二條 反訴ハ相手方ノ同意アル場合ニ限リ之ヲ提起スルコトヲ得
相手方カ異議ヲ述ヘスシテ反訴ノ本案ニ付辯論ヲ爲シタルトキハ反訴ノ提起ニ同意シタルモノト看做ス
第三百八十三條 不適法ナル控訴ニシテ其ノ欠缺カ補正スルコト能ハサルモノナル場合ニ於テハ口頭辯論ヲ經スシテ判決ヲ以テ之ヲ却下スルコトヲ得
第三百八十四條 控訴裁判所ハ第一審判決ヲ相當トスルトキハ控訴ヲ棄却スルコトヲ要ス
判決カ其ノ理由ニ依レハ不當ナル場合ニ於テモ他ノ理由ニ依リテ正當ナルトキハ控訴ヲ棄却スルコトヲ要ス
第三百八十五條 第一審判決ノ變更ハ不服申立ノ限度ニ於テノミ之ヲ爲スコトヲ得
第三百八十六條 控訴裁判所ハ第一審判決ヲ不當トスルトキハ之ヲ取消スコトヲ要ス
第三百八十七條 第一審ノ判決ノ手續カ法律ニ違背シタルトキハ控訴裁判所ハ判決ヲ取消スコトヲ要ス
第三百八十八條 訴ヲ不適法トシテ却下シタル第一審判決ヲ取消ス場合ニ於テハ控訴裁判所ハ事件ヲ第一審裁判所ニ差戾スコトヲ要ス
第三百八十九條 前條ノ場合ノ外控訴裁判所カ第一審判決ヲ取消ス場合ニ於テ事件ニ付尙辯論ヲ爲ス必要アルトキハ之ヲ第一審裁判所ニ差戾スコトヲ得
第一審裁判所ニ於ケル訴訟手續カ法律ニ違背シタルコトヲ理由トシテ事件ヲ差戾ストキハ其ノ訴訟手續ハ之ニ因リテ取消サレタルモノト看做ス
第三百九十條 事件カ管轄違ナルコトヲ理由トシテ第一審判決ヲ取消ストキハ控訴裁判所ハ判決ヲ以テ事件ヲ管轄裁判所ニ移送スルコトヲ要ス
第三百九十一條 判決ニ事實及理由ヲ記載スルニハ第一審判決ヲ引用スルコトヲ得
第三百九十二條 訴訟完結シタル後上訴ノ提起ナクシテ上訴期間滿了シタルトキハ裁判所書記ハ判決又ハ第三百七十條ノ規定ニ依ル命令ノ正本ヲ訴訟記錄ニ添附シ之ヲ第一審裁判所ノ書記ニ送付スルコトヲ要ス
第二章 上告
第三百九十三條 上告ハ控訴審ノ終局判決ニ對シテ之ヲ爲スコトヲ得
第三百六十條第二項ノ場合ニ於テハ第一審判決ニ對シ直ニ上告ヲ爲スコトヲ得
第三百九十四條 上告ハ判決カ法令ニ違背シタルコトヲ理由トスルトキニ限リ之ヲ爲スコトヲ得
第三百九十五條 判決ハ左ノ場合ニ於テハ常ニ法令ニ違背シタルモノトス
一 法律ニ從ヒテ判決裁判所ヲ構成セサリシトキ
二 法律ニ依リ判決ニ關與スルコトヲ得サル判事カ判決ニ關與シタルトキ
三 專屬管轄ニ關スル規定ニ違背シタルトキ
四 法定代理權、訴訟代理權又ハ代理人カ訴訟行爲ヲ爲スニ必要ナル授權ノ欠缺アリタルトキ
五 口頭辯論公開ノ規定ニ違背シタルトキ
六 判決ニ理由ヲ附セス又ハ理由ニ齟齬アルトキ
前項第四號ノ規定ハ第五十四條又ハ第八十七條ノ規定ニ依ル追認アリタル場合ニハ之ヲ適用セス
第三百九十六條 前章ノ規定ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外上告及上告審ノ訴訟手續ニ之ヲ準用ス
第三百九十七條 上告裁判所ノ書記ハ原裁判所ノ書記ヨリ訴訟記錄ノ送付ヲ受ケタルトキハ遲滯ナク其ノ旨ヲ當事者ニ通知スルコトヲ要ス
第三百九十八條 上告狀ニ上告ノ理由ヲ記載セサルトキハ前條ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ三十日內ニ上告理由書ヲ提出スルコトヲ要ス
第三百九十九條 上告人カ前條ノ規定ニ違背シ上告理由書ヲ提出セサルトキハ上告裁判所ハ口頭辯論ヲ經スシテ判決ヲ以テ上告ヲ却下スルコトヲ得
第四百條 裁判長ハ相當ノ期間ヲ定メ答辯書ヲ提出スヘキコトヲ被上告人ニ命スルコトヲ得
第四百一條 上告裁判所カ上告狀、上告理由書、答辯書其ノ他ノ書類ニ依リ上告ヲ理由ナシト認ムルトキハ口頭辯論ヲ經スシテ判決ヲ以テ上告ヲ棄却スルコトヲ得
第四百二條 上告裁判所ハ上告理由ニ基キ不服ノ申立アリタル限度ニ於テノミ調查ヲ爲ス
第四百三條 原判決ニ於テ適法ニ確定シタル事實ハ上告裁判所ヲ覊束ス
第四百四條 第三百九十三條第二項ノ規定ニ依ル上告アリタル場合ニ於テハ上告裁判所ハ原判決ニ於ケル事實ノ確定カ法律ニ違背シタルコトヲ理由トシテ其ノ判決ヲ破毀スルコトヲ得ス
第四百五條 第四百二條乃至前條ノ規定ハ裁判所カ職權ヲ以テ調查スヘキ事項ニ之ヲ適用セス
第四百六條 上告裁判所ハ原判決ニ付不服ノ申立ナキ部分ニ限リ申立ニ因リ決定ヲ以テ假執行ノ宣言ヲ爲スコトヲ得
第四百七條 上告ヲ理由アリトスルトキハ上告裁判所ハ原判決ヲ破毀シ事件ヲ原裁判所ニ差戾シ又ハ同等ナル他ノ裁判所ニ移送スルコトヲ要ス
差戾又ハ移送ヲ受ケタル裁判所ハ新口頭辯論ニ基キ裁判ヲ爲スコトヲ要ス但シ上告裁判所カ破毀ノ理由ト爲シタル事實上及法律上ノ判斷ニ覊束セラル
原判決ニ關與シタル判事ハ前項ノ裁判ニ關與スルコトヲ得ス
第四百八條 左ノ場合ニ於テハ上告裁判所ハ事件ニ付裁判ヲ爲スコトヲ要ス
一 確定シタル事實ニ付法令ノ適用ヲ誤リタルコトヲ理由トシテ判決ヲ破毀スル場合ニ於テ事件カ其ノ事實ニ基キ裁判ヲ爲スニ熟スルトキ
二 事件カ通常裁判所ノ權限ニ屬セサルコトヲ理由トシテ判決ヲ破毀スルトキ
第四百九條 差戾又ハ移送ノ判決アリタルトキハ裁判所書記ハ其ノ判決ノ正本ヲ訴訟記錄ニ添附シ差戾又ハ移送ヲ受ケタル裁判所ノ書記ニ之ヲ送付スルコトヲ要ス
第三章 抗告
第四百十條 口頭辯論ヲ經スシテ訴訟手續ニ關スル申立ヲ却下シタル決定又ハ命令ニ對シテハ抗告ヲ爲スコトヲ得
第四百十一條 決定又ハ命令ヲ以テ裁判ヲ爲スコトヲ得サル事項ニ付決定又ハ命令ヲ爲シタルトキハ當事者ハ之ニ對シテ抗告ヲ爲スコトヲ得
第四百十二條 受命判事又ハ受託判事ノ裁判ニ對シ不服アル當事者ハ受訴裁判所ニ異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得但シ其ノ裁判カ受訴裁判所ノ裁判ナル場合ニ於テ之ニ對シ抗告ヲ爲シ得ルモノナルトキニ限ル
抗告ハ異議ニ付テノ裁判ニ對シテ之ヲ爲スコトヲ得
第一項ノ規定ハ大審院ニ繫屬スル事件ニ付受命判事又ハ受託判事ノ爲シタル裁判ニ之ヲ準用ス
第四百十三條 抗告裁判所ノ決定ニ對シテハ其ノ決定カ法令ニ違背シタルコトヲ理由トスル場合ニ限リ更ニ抗告ヲ爲スコトヲ得
第四百十四條 抗告及抗告裁判所ノ訴訟手續ニハ其ノ性質ニ反セサル限リ第一章ノ規定ヲ準用ス但シ前條ノ抗告及之ニ關スル訴訟手續ニハ前章ノ規定ヲ準用ス
第四百十五條 卽時抗告ハ裁判ノ告知アリタル日ヨリ一週間內ニ之ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ期間ハ之ヲ不變期間トス
第四百十六條 抗告ハ原裁判所又ハ抗告裁判所ニ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ要ス
抗告裁判所カ抗告ヲ受ケタル場合ニ於テ適當ト認ムルトキハ事件ヲ原裁判所ニ送付スルコトヲ得
第四百十七條 原裁判所カ抗告ヲ受ケ又ハ前條第二項ノ規定ニ依リ事件ノ送付ヲ受ケタル場合ニ於テ抗告ヲ理由アリト認ムルトキハ其ノ裁判ヲ更正スルコトヲ要ス
抗告ヲ理由ナシト認ムルトキハ意見ヲ附シ事件ヲ抗告裁判所ニ送付スルコトヲ要ス
第四百十八條 抗告ハ卽時抗告ニ限リ執行停止ノ效力ヲ有ス
抗告裁判所又ハ原裁判ヲ爲シタル裁判所若ハ判事ハ抗告ニ付決定アル迄原裁判ノ執行ヲ停止シ其ノ他必要ナル處分ヲ命スルコトヲ得
第四百十九條 抗告裁判所ハ抗告ニ付口頭辯論ヲ命セサル場合ニ於テハ抗告人其ノ他ノ利害關係人ヲ審訊スルコトヲ得
第四編 再審
第四百二十條 左ノ場合ニ於テハ確定ノ終局判決ニ對シ再審ノ訴ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトヲ得但シ當事者カ上訴ニ依リ其ノ事由ヲ主張シタルトキ又ハ之ヲ知リテ主張セサリシトキハ此ノ限ニ在ラス
一 法律ニ從ヒテ判決裁判所ヲ構成セサリシト
二 法律ニ依リ裁判ニ關與スルコトヲ得サル判事カ裁判ニ關與シタルトキ
三 法定代理權、訴訟代理權又ハ代理人カ訴訟行爲ヲ爲スニ必要ナル授權ノ欠缺アリタルトキ
四 裁判ニ關與シタル判事カ事件ニ付職務ニ關スル罪ヲ犯シタルトキ
五 刑事上罰スヘキ他人ノ行爲ニ因リ自白ヲ爲スニ至リタルトキ又ハ判決ニ影響ヲ及ホスヘキ攻擊若ハ防禦ノ方法ヲ提出スルコトヲ妨ケラレタルトキ
六 判決ノ證據ト爲リタル文書其ノ他ノ物件カ僞造又ハ變造セラレタルモノナリシトキ
七 證人、鑑定人、通事又ハ宣誓シタル當事者若ハ法定代理人ノ虛僞ノ陳述カ判決ノ證據ト爲リタルトキ
八 判決ノ基礎ト爲リタル民事若ハ刑事ノ判決其ノ他ノ裁判又ハ行政處分カ後ノ裁判又ハ行政處分ニ依リテ變更セラレタルトキ
九 判決ニ影響ヲ及ホスヘキ重要ナル事項ニ付判斷ヲ遺脫シタルトキ
十 不服ノ申立アル判決カ前ニ言渡サレタル確定判決ト牴觸スルトキ
前項第四號乃至七號ノ場合ニ於テハ罰スヘキ行爲ニ付有罪ノ判決若ハ過料ノ裁判確定シタルトキ又ハ證據欠缺外ノ理由ニ因リ有罪ノ確定判決若ハ過料ノ確定裁判ヲ得ルコト能ハサルトキニ限リ再審ノ訴ヲ提起スルコトヲ得
控訴審ニ於テ事件ニ付本案判決ヲ爲シタルトキハ第一審ノ判決ニ對シ再審ノ訴ヲ提起スルコトヲ得ス
第四百二十一條 判決ノ基本タル裁判ニ付前條ニ定メタル事由アルトキハ其ノ裁判ニ對シ獨立ノ不服ノ方法ヲ定メタル場合ニ於テモ其ノ事由ヲ以テ判決ニ對スル再審ノ理由ト爲スコトヲ得
第四百二十二條 再審ハ不服ノ申立アル判決ヲ爲シタル裁判所ノ專屬管轄トス
審級ヲ異ニスル裁判所カ同一事件ニ付爲シタル判決ニ對スル再審ノ訴ハ上級裁判所併セテ之ヲ管轄ス
第四百二十三條 再審ノ訴訟手續ニハ其ノ性質ニ反セサル限リ各審級ニ於ケル訴訟手續ニ關スル規定ヲ準用ス
第四百二十四條 再審ノ訴ハ當事者カ判決確定後再審ノ事由ヲ知リタル日ヨリ三十日內ニ之ヲ提起スルコトヲ要ス
前項ノ期間ハ之ヲ不變期間トス
判決確定後五年ヲ經過シタルトキハ再審ノ訴ハ之ヲ提起スルコトヲ得ス
再審ノ事由カ判決確定後ニ生シタルトキハ前項ノ期間ハ其ノ事由發生ノ日ヨリ之ヲ起算ス
第四百二十五條 前條ノ規定ハ代理權ノ欠缺及第四百二十條第一項第十號ニ揭クル事項ヲ理由トスル再審ノ訴ニハ之ヲ適用セス
第四百二十六條 訴狀ニハ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス
一 當事者及法定代理人
二 不服ノ申立アル判決ノ表示及其ノ判決ニ對シ再審ヲ求ムル旨
三 不服ノ理由
第四百二十七條 本案ノ辯論及裁判ハ不服ノ範圍內ニ於テノミ之ヲ爲スコトヲ得
不服ノ理由ハ之ヲ變更スルコトヲ得
第四百二十八條 再審ノ事由アル場合ニ於テモ判決ヲ正當トスルトキハ裁判所ハ再審ノ訴ヲ却下スルコトヲ要ス
第四百二十九條 卽時抗告ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトヲ得ル決定又ハ命令カ確定シタル場合ニ於テ第四百二十條第一項ニ揭クル事由アルトキハ確定判決ニ對スル第四百二十條乃至前條ノ規定ニ準シ再審ノ申立ヲ爲スコトヲ得
第五編 督促手續
第四百三十條 金錢其ノ他ノ代替物又ハ有價證券ノ一定ノ數量ノ給付ヲ目的トスル請求ニ付テハ裁判所ハ債權者ノ申立ニ因リ支拂命令ヲ發スルコトヲ得但シ日本ニ於テ公示送達ニ依ラスシテ其ノ命令ノ送達ヲ爲スコトヲ得ヘキ場合ニ限ル
第四百三十一條 督促手續ハ債務者ノ普通裁判籍所在地ノ區裁判所又ハ第九條ノ規定ニ依ル管轄區裁判所ノ專屬管轄トス
第四百三十二條 支拂命令ノ申立ニハ其ノ性質ニ反セサル限リ訴ニ關スル規定ヲ準用ス
第四百三十三條 支拂命令ノ申立カ第四百三十條若ハ管轄ニ關スル規定ニ違背スルトキ又ハ申立ノ趣旨ニ依リ請求ノ理由ナキコト明ナルトキハ其ノ申立ハ之ヲ却下スルコトヲ要ス請求ノ一部ニ付支拂命令ヲ發スルコトヲ得サルトキ其ノ一部ニ付亦同シ
申立却下ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第四百三十四條 支拂命令ハ債務者ヲ審訊セスシテ之ヲ發ス
債務者ハ支拂命令ニ對シ異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得
第四百三十五條 支拂命令ニハ當事者、法定代理人竝請求ノ趣旨及原因ヲ記載シ且債務者カ支拂命令送達ノ日ヨリ二週間內ニ異議ヲ申立テサルトキハ債權者ノ申立ニ因リ假執行ノ宣言ヲ爲スヘキ旨ヲ附記スルコトヲ要ス
第四百三十六條 支拂命令ハ之ヲ當事者ニ送達スルコトヲ要ス
第四百三十七條 債務者カ假執行ノ宣言前異議ヲ申立テタルトキハ支拂命令ハ其ノ異議ノ範圍內ニ於テ效力ヲ失フ
第四百三十八條 債務者カ支拂命令送達ノ日ヨリ二週間內ニ異議ヲ申立テサルトキハ裁判所ハ債權者ノ申立ニ因リ支拂命令ニ手續ノ費用額ヲ附記シ假執行ノ宣言ヲ爲スコトヲ要ス但シ其ノ宣言前異議ノ申立アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス
假執行ノ宣言ハ支拂命令ノ原本及正本ニ之ヲ記載シ其ノ正本ヲ當事者ニ送達スルコトヲ要ス
假執行ノ申立却下ノ決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第四百三十九條 債權者カ假執行ノ申立ヲ爲スコトヲ得ル時ヨリ三十日內ニ其ノ申立ヲ爲ササルトキハ支拂命令ハ其ノ效力ヲ失フ
第四百四十條 假執行ノ宣言ヲ附シタル支拂命令送達ノ日ヨリ二週間ヲ經過シタルトキハ債務者ハ其ノ支拂命令ニ對シ異議ヲ申立ツルコトヲ得ス
前項ノ期間ハ之ヲ不變期間トス
第四百四十一條 區裁判所カ異議ヲ不適法ト認ムルトキハ請求カ地方裁判所ノ管轄ニ屬スル場合ニ於テモ決定ヲ以テ其ノ異議ヲ却下スルコトヲ要ス此ノ決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第四百四十二條 支拂命令ニ對シ適法ナル異議ノ申立アリタルトキハ異議アル請求ニ付テハ其ノ目的ノ價額ニ從ヒ支拂命令ノ申立ノ時ニ於テ其ノ命令ヲ發シタル區裁判所又ハ其ノ區裁判所ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所ニ訴ノ提起アリタルモノト看做ス此ノ場合ニ於テハ督促手續ノ費用ハ之ヲ訴訟費用ノ一部トス
前項ノ規定ニ依リテ地方裁判所ニ訴ノ提起アリタルモノト看做サレタル場合ニ於テハ裁判所書記ハ遲滯ナク訴訟記錄ヲ地方裁判所ノ書記ニ送付スルコトヲ要ス
第四百四十三條 假執行ノ宣言ヲ附シタル支拂命令ニ對シ異議ノ申立ナキトキ又ハ異議却下ノ決定確定シタルトキハ支拂命令ハ確定判決ト同一ノ效力ヲ有ス
第四百四十四條乃至第四百九十六條 削除
第四百九十七條ノ二 判決カ其判決ニ表示シタル當事者以外ノ者ニ對シ效力ヲ有ス可キトキハ其者ニ對シ又ハ其者ノ爲メニモ之ヲ執行スルコトヲ得但第六十四條ノ規定ニ依ル參加人ニ付テハ此限ニ在ラス
前項ノ場合ニ於テ執行力アル正本ノ付與ニ付テハ第五百十九條乃至第五百二十一條ノ規定ヲ準用ス
第五百條中「原狀囘復又ハ」ヲ削ル
第五百一條乃至第五百十一條 削除
第五百十二條中「故障ヲ申立又ハ上訴ヲ起シタルトキ」ヲ「上訴ヲ提起シタルトキ又ハ假執行ノ宣言ヲ付シタル支拂命令ニ對シ異議ヲ申立テタルトキ」ニ改ム
第五百十三條ニ左ノ一項ヲ加フ
第百十二條、第百十三條、第百十五條及ヒ第百十六條ノ規定ハ第一項ノ規定ニ依ル保證ニ付キ之ヲ準用ス
第五百十四條中「第十七條」ヲ「第八條」ニ改ム
第五百十五條第二項中第二號ヲ左ノ如ク改メ第三號乃至第五號ヲ削ル
第二 外國判決カ第二百條ノ條件ヲ具備セサルトキ
第五百四十一條中「第百三十九條、第百四十條及ヒ第百四十五條乃至第百四十九條」ヲ「第百六十七條、第百六十八條、第百七十一條及ヒ第百七十二條」ニ改ム
第五百四十五條第二項中「其原因ヲ生シ且故障ヲ以テ之ヲ主張スルコトヲ得サルトキ」ヲ「其原因ヲ生シタルトキ」ニ改ム
第五百四十八條第三項ヲ左ノ如ク改ム
右裁判ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第五百五十條第三號ヲ左ノ如ク改ム
第三 執行ヲ免カルル爲メ擔保ヲ供シタルコトヲ證スル書面
第五百五十九條中第三號及第四號ヲ削リ第五號ヲ第三號トシ第二號ヲ左ノ如ク改ム
第二 假執行ノ宣言ヲ付シタル支拂命令
第五百六十條中「債務名義」ヲ「債務名義及ヒ訴訟上ノ和解竝ニ請求ノ抛棄又ハ認諾」ニ改ム
第五百六十一條中「執行命令」ヲ「假執行ノ宣言ヲ付シタル支拂命令」ニ改ム
第五百六十一條ノ二 過料ノ裁判ハ檢事ノ命令ヲ以テ之ヲ執行ス此命令ハ執行力アル債務名義ト同一ノ效力ヲ有ス
第五百六十二條中「第十七條」ヲ「第八條」ニ改ム
第五百九十五條 執行裁判所トシテハ債務者ノ普通裁判籍ヲ有スル地ノ區裁判所、此區裁判所ナキトキハ差押フヘキ債權ノ所在地ヲ管轄スル區裁判所管轄權ヲ有ス
差押フヘキ債權ハ第三債務者ノ普通裁判籍ノ所在地ニ在ルモノトス但物ノ引渡ヲ目的トスル債權及ヒ物上ノ擔保權ヲ有スル債權ハ其物ノ所在地ニ在ルモノトス
第六百七條中「第五百五條第二項ニ從ヒテ債務者ニ保證ヲ立テシメ又ハ供託ヲ爲サシメテ」ヲ「第百九十六條第二項ニ從ヒテ債務者ニ擔保ヲ供セシメテ」ニ改ム
第六百三十七條中「看做ス旨ノ闕席判決ヲ爲ス可シ」ヲ「看做ス」ニ改ム
第六百三十八條 第六百三十六條ノ判決ノ確定シタルコト又ハ前條ノ規定ニ從ヒ異議ヲ取下ケタルモノト看做サレタルコトノ證明アルトキハ配當裁判所ハ之ニ基キ支拂又ハ他ノ配當手續ヲ命ス
第六百四十一條中「第二十六條ノ規定ヲ適用ス」ヲ「各區裁判所管轄權ヲ有ス此場合ニ於テ裁判所必要アリト認ムルトキハ事件ヲ他ノ管轄區裁判所ニ移送スルコトヲ得」ニ改ム
第六百六十九條中「第百四十三條第三項」ヲ「第百七十條第二項及ヒ第百七十三條」ニ改ム
第六百七十七條中「第百二十九條乃至第百三十二條及ヒ第百三十四條」ヲ「第百四十二條乃至第百四十七條」ニ改ム
第六百八十一條中「取消ノ訴若クハ原狀囘復ノ訴」ヲ「再審ノ訴」ニ改ム
第七百五十六條ノ二 假處分ヲ取消ス判決ハ財產權上ノ請求ニ關セサルモノニ付テモ假執行ノ宣言ヲ爲スコトヲ得
第七百六十六條中「之ヲ爲シ其他法律ニ別段ノ規定ヲ設ケサルトキハ第百五十七條第三項ノ規定ニ從ヒテ」ヲ削リ同條ニ左ノ一項ヲ加フ
裁判所相當ト認ムルトキハ新聞紙ニ公告ス可キコトヲ命スルコトヲ得
第七百七十四條第二項第六號ヲ左ノ如ク改ム
第六 第四百二十條第四號乃至第八號ノ場合ニ於テ再審ノ訴ヲ許ス條件ノ存スルトキ
第七百七十六條中「第百二十條ノ條件ノ存セサルトキト雖モ」ヲ削ル
第八百一條第一項第六號ヲ左ノ如ク改ム
第六 第四百二十條第四號乃至第八號ノ場合ニ於テ再審ノ訴ヲ許ス條件ノ存スルトキ
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル民事訴訟法中改正法律ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
摂政名
大正十五年四月二十四日
内閣総理大臣兼内務大臣 若槻礼次郎
陸軍大臣 宇垣一成
海軍大臣 財部彪
外務大臣 男爵 幣原喜重郎
文部大臣 岡田良平
鉄道大臣 仙石貢
大蔵大臣 浜口雄幸
逓信大臣 安達謙蔵
司法大臣 江木翼
農林大臣 早速整爾
商工大臣 片岡直温
法律第六十一号
民事訴訟法中左ノ通改正ス
民事訴訟法目録第一編乃至第五編ヲ左ノ如ク改ム
第一編
総則
第一章
裁判所
第一節
管轄
第二節
裁判所職員ノ除斥、忌避及回避
第二章
当事者
第一節
当事者能力及訴訟能力
第二節
共同訴訟
第三節
訴訟参加
第四節
訴訟代理人及輔佐人
第三章
訴訟費用
第一節
訴訟費用ノ負担
第二節
訴訟費用ノ担保
第三節
訴訟上ノ救助
第四章
訴訟手続
第一節
口頭弁論
第二節
期日及期間
第三節
送達
第四節
裁判
第五節
訴訟手続ノ中断及中止
第二編
第一審ノ訴訟手続
第一章
地方裁判所ノ訴訟手続
第一節
第二節
弁論ノ準備
第三節
証拠
第一款
総則
第二款
証人訊問
第三款
鑑定
第四款
書証
第五款
検証
第六款
当事者訊問
第七款
証拠保全
第二章
区裁判所ノ訴訟手続
第三編
上訴
第一章
控訴
第二章
上告
第三章
抗告
第四編
再審
第五編
督促手続
民事訴訟法第一編乃至第五編ヲ左ノ如ク改ム
第一編 総則
第一章 裁判所
第一節 管轄
第一条 訴ハ被告ノ普通裁判籍所在地ノ裁判所ノ管轄ニ属ス
第二条 人ノ普通裁判籍ハ住所ニ依リテ定ル
日本ニ住所ナキトキ又ハ住所ノ知レサルトキハ普通裁判籍ハ居所ニ依リ、居所ナキトキ又ハ居所ノ知レサルトキハ最後ノ住所ニ依リテ定ル
第三条 大使、公使其ノ他外国ニ在リテ治外法権ヲ享クル日本人カ前条ノ規定ニ依リ普通裁判籍ヲ有セサルトキハ其ノ者ノ普通裁判籍ハ東京市ニ在ルモノトス
第四条 法人其ノ他ノ社団又ハ財団ノ普通裁判籍ハ其ノ主タル事務所又ハ営業所ニ依リ、事務所又ハ営業所ナキトキハ主タル業務担当者ノ住所ニ依リテ定ル
国ノ普通裁判籍ハ訴訟ニ付国ヲ代表スル官庁ノ所在地ニ依リテ定ル
第一項ノ規定ハ外国ノ社団又ハ財団ノ普通裁判籍ニ付テハ日本ニ於ケル事務所、営業所又ハ業務担当者ニ之ヲ適用ス
第五条 財産権上ノ訴ハ義務履行地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第六条 寄留者ニ対スル財産権上ノ訴ハ寄留地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第七条 軍人、軍属又ハ船員ニ対スル財産権上ノ訴ハ軍事用ノ庁舎ノ所在地又ハ艦船ノ本籍若ハ船籍ノ所在地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第八条 日本ニ住所ナキ者又ハ住所ノ知レサル者ニ対スル財産権上ノ訴ハ請求若ハ其ノ担保ノ目的又ハ差押フルコトヲ得ヘキ被告ノ財産ノ所在地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第九条 事務所又ハ営業所ヲ有スル者ニ対スル訴ハ其ノ事務所又ハ営業所ニ於ケル業務ニ関スルモノニ限リ其ノ所在地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第十条 船舶又ハ航海ニ関シ船舶所有者其ノ他船舶ノ利用ヲ為ス者ニ対スル訴ハ船籍ノ所在地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第十一条 船舶債権其ノ他船舶ヲ以テ担保スル債権ニ基ク訴ハ船舶ノ所在地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第十二条 会社其ノ他ノ社団ヨリ社員ニ対スル訴又ハ社員ヨリ社員ニ対スル訴ハ社員タル資格ニ基クモノニ限リ会社其ノ他ノ社団ノ普通裁判籍所在地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
前項ノ規定ハ社団又ハ財団ヨリ役員ニ対スル訴及会社ヨリ発起人又ハ検査役ニ対スル訴ニ之ヲ準用ス
第十三条 会社其ノ他ノ社団ノ債権者ヨリ社員ニ対スル訴ハ社員タル資格ニ基クモノニ限リ前条ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第十四条 第十二条及前条ノ規定ハ社団、財団、社員又ハ社団ノ債権者ヨリ社員、役員、発起人又ハ検査役タリシ者ニ対スル訴及社員タリシ者ヨリ社員ニ対スル訴ニ之ヲ準用ス
第十五条 不法行為ニ関スル訴ハ其ノ行為アリタル地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
船舶ノ衝突其ノ他海上ノ事故ニ基ク損害賠償ノ訴ハ損害ヲ受ケタル船舶カ最初ニ到達シタル地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第十六条 海難救助ニ関スル訴ハ救助アリタル地又ハ救助セラレタル船舶カ最初ニ到達シタル地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第十七条 不動産ニ関スル訴ハ不動産所在地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第十八条 登記又ハ登録ニ関スル訴ハ登記又ハ登録ヲ為スヘキ地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第十九条 相続権ニ関スル訴又ハ遺留分若ハ遺贈其ノ他死亡ニ因リテ効力ヲ生スヘキ行為ニ関スル訴ハ相続開始ノ時ニ於ケル被相続人ノ普通裁判籍所在地ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第二十条 相続債権其ノ他相続財産ノ負担ニ関スル訴ニシテ前条ノ規定ニ該当セサルモノハ相続財産ノ全部又ハ一部カ前条ノ裁判所ノ管轄区域内ニ在ルトキニ限リ其ノ裁判所ニ之ヲ提起スルコトヲ得
第二十一条 一ノ訴ヲ以テ数個ノ請求ヲ為ス場合ニ於テハ第一条乃至前条ノ規定ニ依リ一ノ請求ニ付管轄権ヲ有スル裁判所ニ其ノ訴ヲ提起スルコトヲ得
第二十二条 裁判所構成法ニ依リ管轄カ訴訟ノ目的ノ価額ニ依リテ定ルトキハ其ノ価額ハ訴ヲ以テ主張スル利益ニ依リテ之ヲ算定ス
前項ノ価額ヲ算定スルコト能ハサルトキハ其ノ価額ハ千円ヲ超過スルモノト看做ス
第二十三条 一ノ訴ヲ以テ数個ノ請求ヲ為ストキハ其ノ価額ヲ合算ス
果実、損害賠償、違約金又ハ費用ノ請求カ訴訟ノ附帯ノ目的ナルトキハ其ノ価額ハ之ヲ訴訟ノ目的ノ価額ニ算入セス
第二十四条 左ノ場合ニ於テハ関係アル裁判所ニ共通スル直近上級裁判所ハ申立ニ因リ決定ヲ以テ管轄裁判所ヲ定ム
一 管轄裁判所及裁判所構成法第十三条第二項ノ規定ニ依リテ之ニ代ルヘキ裁判所カ法律上又ハ事実上裁判権ヲ行フコト能ハサルトキ
二 裁判所ノ管轄区域明確ナラサル為管轄裁判所カ定ラサルトキ
前項ノ決定ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第二十五条 当事者ハ第一審ニ限リ合意ニ依リ管轄裁判所ヲ定ムルコトヲ得
前項ノ合意ハ一定ノ法律関係ニ基ク訴ニ関シ且書面ヲ以テ之ヲ為スニ非サレハ其ノ効ナシ
第二十六条 被告カ第一審裁判所ニ於テ管轄違ノ抗弁ヲ提出セスシテ本案ニ付弁論ヲ為シ又ハ準備手続ニ於テ申述ヲ為シタルトキハ其ノ裁判所ハ管轄権ヲ有ス
第二十七条 第一条、第五条乃至第二十一条、第二十五条及前条ノ規定ハ訴ニ付専属管轄ノ定アル場合ニハ之ヲ適用セス
第二十八条 裁判所ハ管轄ニ関スル事項ニ付職権ヲ以テ証拠調ヲ為スコトヲ得
第二十九条 裁判所ノ管轄ハ起訴ノ時ヲ標準トシテ之ヲ定ム
第三十条 裁判所ハ訴訟ノ全部又ハ一部カ其ノ管轄ニ属セスト認ムルトキハ決定ヲ以テ之ヲ管轄裁判所ニ移送ス
第三十一条 裁判所ハ其ノ管轄ニ属スル訴訟ニ付著キ損害又ハ遅滞ヲ避クル為必要アリト認ムルトキハ其ノ専属管轄ニ属スルモノヲ除クノ外申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ訴訟ノ全部又ハ一部ヲ他ノ管轄裁判所ニ移送スルコトヲ得
第三十二条 移送ノ裁判ハ移送ヲ受ケタル裁判所ヲ羈束ス
移送ヲ受ケタル裁判所ハ更ニ事件ヲ他ノ裁判所ニ移送スルコトヲ得ス
第三十三条 移送ノ裁判ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
移送ノ申立ヲ却下シタル裁判ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第三十四条 移送ノ裁判確定シタルトキハ訴訟ハ初ヨリ移送ヲ受ケタル裁判所ニ繋属シタルモノト看做ス
前項ノ場合ニ於テハ移送ノ裁判ヲ為シタル裁判所ノ書記ハ其ノ裁判ノ正本ヲ訴訟記録ニ添附シ移送ヲ受ケタル裁判所ノ書記ニ之ヲ送付スルコトヲ要ス
第二節 裁判所職員ノ除斥、忌避及回避
第三十五条 判事ハ左ノ場合ニ於テハ法律上其ノ職務ノ執行ヨリ除斥セラル
一 判事又ハ其ノ妻若ハ妻タリシ者カ事件ノ当事者ナルトキ又ハ事件ニ付当事者ト共同権利者、共同義務者若ハ償還義務者タル関係ヲ有スルトキ
二 判事カ当事者ノ四親等内ノ血族若ハ三親等内ノ姻族ナルトキ又ハナリシトキ
三 判事カ当事者ノ後見人、後見監督人、保佐人又ハ戸主若ハ家族ナルトキ
四 判事カ事件ニ付証人又ハ鑑定人ト為リタルトキ
五 判事カ事件ニ付当事者ノ代理人又ハ輔佐人ナルトキ又ハナリシトキ
六 判事カ事件ニ付仲裁判断ニ関与シ又ハ不服ヲ申立テラレタル前審ノ裁判ニ関与シタルトキ但シ他ノ裁判所ノ嘱託ニ因リ受託判事トシテ其ノ職務ヲ行フコトヲ妨ケス
第三十六条 除斥ノ原因アルトキハ裁判所ハ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ除斥ノ裁判ヲ為ス
第三十七条 判事ニ付裁判ノ公正ヲ妨クヘキ事情アルトキハ当事者ハ之ヲ忌避スルコトヲ得
当事者カ判事ノ面前ニ於テ弁論ヲ為シ又ハ準備手続ニ於テ申述ヲ為シタルトキハ其ノ判事ヲ忌避スルコトヲ得ス但シ忌避ノ原因カ其ノ後ニ生シ又ハ当事者カ其ノ原因アルコトヲ知ラサリシトキハ此ノ限ニ在ラス
第三十八条 第三十六条又ハ前条ニ規定スル申立ハ其ノ原因ヲ開示シテ判事所属ノ裁判所ニ之ヲ為スコトヲ要ス
除斥又ハ忌避ノ原因ハ申立ヲ為シタル日ヨリ三日内ニ之ヲ疏明スルコトヲ要ス前条第二項但書ノ事実亦同シ
第三十九条 合議裁判所ノ判事ノ除斥又ハ忌避ニ付テハ其ノ裁判所、区裁判所ノ判事ノ除斥又ハ忌避ニ付テハ其ノ裁判所ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所決定ヲ以テ裁判ヲ為ス
第四十条 判事ハ其ノ除斥又ハ忌避ニ付裁判ニ関与スルコトヲ得ス但シ意見ヲ述フルコトヲ得
第四十一条 除斥又ハ忌避ヲ理由アリトスル決定ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス之ヲ理由ナシトスル決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第四十二条 除斥又ハ忌避ノ申立アリタルトキハ其ノ申立ニ付テノ裁判ノ確定ニ至ル迄訴訟手続ヲ停止スルコトヲ要ス但シ急速ヲ要スル行為ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第四十三条 第三十五条及第三十七条第一項ノ場合ニ於テハ判事ハ監督権アル判事ノ許可ヲ得テ回避スルコトヲ得
第四十四条 本節ノ規定ハ裁判所書記ニ之ヲ準用ス此ノ場合ニ於テハ裁判ハ書記所属ノ裁判所之ヲ為ス
第二章 当事者
第一節 当事者能力及訴訟能力
第四十五条 当事者能力、訴訟能力及訴訟無能力者ノ法定代理ハ本法ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外民法其ノ他ノ法令ニ従フ訴訟行為ヲ為スニ必要ナル授権亦同シ
第四十六条 法人ニ非サル社団又ハ財団ニシテ代表者又ハ管理人ノ定アルモノハ其ノ名ニ於テ訴ヘ又ハ訴ヘラルルコトヲ得
第四十七条 共同ノ利益ヲ有スル多数者ニシテ前条ノ規定ニ該当セサルモノハ其ノ中ヨリ総員ノ為ニ原告若ハ被告ト為ルヘキ一人若ハ数人ヲ選定シ又ハ之ヲ変更スルコトヲ得
訴訟ノ繋属ノ後前項ノ規定ニ依リテ原告又ハ被告ト為ルヘキ者ヲ定メタルトキハ他ノ当事者ハ当然訴訟ヨリ脱退ス
第四十八条 前条ノ規定ニ依リテ選定セラレタル当事者中死亡其ノ他ノ事由ニ因リ其ノ資格ヲ喪失シタル者アルトキハ他ノ当事者ニ於テ総員ノ為ニ訴訟行為ヲ為スコトヲ得
第四十九条 未成年者及禁治産者ハ法定代理人ニ依リテノミ訴訟行為ヲ為スコトヲ得但シ未成年者カ独立シテ法律行為ヲ為スコトヲ得ル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第五十条 準禁治産者、妻又ハ法定代理人カ相手方ノ提起シタル訴又ハ上訴ニ付訴訟行為ヲ為スニハ保佐人ノ同意、夫ノ許可又ハ親族会ノ同意其ノ他ノ授権ヲ要セス
準禁治産者、妻又ハ法定代理人カ訴、控訴若ハ上告ノ取下、和解、請求ノ抛棄若ハ認諾又ハ第七十二条ノ規定ニ依ル脱退ヲ為スニハ常ニ特別ノ授権アルコトヲ要ス
第五十一条 外国人ハ其ノ本国法ニ依レハ訴訟能力ヲ有セサルトキト雖日本ノ法律ニ依レハ訴訟能力ヲ有スヘキトキハ之ヲ訴訟能力者ト看做ス
第五十二条 法定代理権又ハ訴訟行為ヲ為スニ必要ナル授権ハ書面ヲ以テ之ヲ証スルコトヲ要ス第四十七条ノ規定ニ依ル当事者ノ選定及変更亦同シ
前項ノ書面ハ訴訟記録ニ之ヲ添附スルコトヲ要ス
第五十三条 訴訟能力、法定代理権又ハ訴訟行為ヲ為スニ必要ナル授権ノ欠欠アルトキハ裁判所ハ期間ヲ定メテ其ノ補正ヲ命シ若遅滞ノ為損害ヲ生スル虞アルトキハ一時訴訟行為ヲ為サシムルコトヲ得
第五十四条 訴訟能力、法定代理権又ハ訴訟行為ヲ為スニ必要ナル授権ノ欠欠アル者カ為シタル訴訟行為ハ其ノ欠欠ナキニ至リタル当事者又ハ法定代理人ノ追認ニ因リ行為ノ時ニ遡リテ其ノ効力ヲ生ス
第五十五条 第五十三条及前条ノ規定ハ第四十七条ノ規定ニ依ル当事者カ訴訟行為ヲ為ス場合ニ之ヲ準用ス
第五十六条 法定代理人ナキ場合又ハ法定代理人カ代理権ヲ行フコト能ハサル場合ニ於テ未成年者又ハ禁治産者ニ対シ訴訟行為ヲ為サムトスル者ハ遅滞ノ為損害ヲ受クル虞アルコトヲ疏明シテ受訴裁判所ノ裁判長ニ特別代理人ノ選任ヲ申請スルコトヲ得
裁判所ハ何時ニテモ特別代理人ヲ改任スルコトヲ得
特別代理人カ訴訟行為ヲ為スニハ後見人ト同一ノ授権アルコトヲ要ス
特別代理人ノ選任及改任ノ命令ハ特別代理人ニモ之ヲ送達スルコトヲ要ス
第五十七条 法定代理権ノ消滅ハ本人又ハ代理人ヨリ之ヲ相手方ニ通知スルニ非サレハ其ノ効ナシ
前項ノ規定ハ第四十七条ノ規定ニ依ル当事者ノ変更ニ之ヲ準用ス
第五十八条 本法中法定代理及法定代理人ニ関スル規定ハ法人ノ代表者及法人ニ非スシテ其ノ名ニ於テ訴ヘ又ハ訴ヘラルルコトヲ得ル社団又ハ財団ノ代表者又ハ管理人ニ之ヲ準用ス
第二節 共同訴訟
第五十九条 訴訟ノ目的タル権利又ハ義務カ数人ニ付共通ナルトキ又ハ同一ノ事実上及法律上ノ原因ニ基クトキハ其ノ数人ハ共同訴訟人トシテ訴ヘ又ハ訴ヘラルルコトヲ得訴訟ノ目的タル権利又ハ義務カ同種ニシテ事実上及法律上同種ノ原因ニ基クトキ亦同シ
第六十条 他人間ノ訴訟ノ目的ノ全部又ハ一部ヲ自己ノ為ニ請求スル者ハ其ノ訴訟ノ繋属中当事者双方ヲ共同被告トシ第一審ノ受訴裁判所ニ訴ヲ提起スルコトヲ得
第六十一条 共同訴訟人ノ一人ノ訴訟行為又ハ之ニ対スル相手方ノ訴訟行為及其ノ一人ニ付生シタル事項ハ他ノ共同訴訟人ニ影響ヲ及ホサス
第六十二条 訴訟ノ目的カ共同訴訟人ノ全員ニ付合一ニノミ確定スヘキ場合ニ於テハ其ノ一人ノ訴訟行為ハ全員ノ利益ニ於テノミ其ノ効力ヲ生ス
共同訴訟人ノ一人ニ対スル相手方ノ訴訟行為ハ全員ニ対シテ其ノ効力ヲ生ス
共同訴訟人ノ一人ニ付訴訟手続ノ中断又ハ中止ノ原因アルトキハ其ノ中断又ハ中止ハ全員ニ付其ノ効力ヲ生ス
第六十三条 第五十条第一項ノ規定ハ前条第一項ノ場合ニ於テ共同訴訟人ノ一人カ提起シタル上訴ニ付他ノ共同訴訟人ノ為スヘキ訴訟行為ニ之ヲ準用ス
第三節 訴訟参加
第六十四条 訴訟ノ結果ニ付利害関係ヲ有スル第三者ハ其ノ訴訟ノ繋属中当事者ノ一方ヲ補助スル為訴訟ニ参加スルコトヲ得
第六十五条 参加ノ申出ハ参加ノ趣旨及理由ヲ具シ参加ニ依リテ訴訟行為ヲ為スヘキ裁判所ニ之ヲ為スコトヲ要ス
書面ニ依リテ参加ノ申出ヲ為シタル場合ニ於テハ其ノ書面ハ之ヲ当事者双方ニ送達スルコトヲ要ス
参加ノ申出ハ参加人トシテ為シ得ル訴訟行為ト共ニ之ヲ為スコトヲ得
第六十六条 当事者カ参加ニ付異議ヲ述ヘタルトキハ参加ノ理由ハ之ヲ疏明スルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ裁判所ハ参加ノ許否ニ付決定ヲ以テ裁判ヲ為ス
前項ノ裁判ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第六十七条 当事者カ参加ニ付異議ヲ述ヘスシテ弁論ヲ為シ又ハ準備手続ニ於テ申述ヲ為シタルトキハ異議ヲ述フル権利ヲ失フ
第六十八条 参加人ハ参加ニ付異議アル場合ニ於テモ参加ヲ許ササル裁判確定セサル間ハ訴訟行為ヲ為スコトヲ得
参加人ノ訴訟行為ハ当事者カ之ヲ援用シタルトキハ参加ヲ許ササル裁判確定シタル場合ニ於テモ其ノ効力ヲ有ス
第六十九条 参加人ハ訴訟ニ付攻撃又ハ防禦ノ方法ノ提出、異議ノ申立、上訴ノ提起其ノ他一切ノ訴訟行為ヲ為スコトヲ得但シ参加ノ時ニ於ケル訴訟ノ程度ニ従ヒ為スコトヲ得サルモノハ此ノ限ニ在ラス
参加人ノ訴訟行為カ被参加人ノ訴訟行為ト牴触スルトキハ其ノ効力ヲ有セス
第七十条 前条ノ規定ニ依リテ参加人カ訴訟行為ヲ為スコトヲ得ス又ハ其ノ訴訟行為カ効力ヲ有セサリシ場合、被参加人カ参加人ノ訴訟行為ヲ妨ケタル場合及被参加人カ参加人ノ為スコト能ハサル訴訟行為ヲ故意又ハ過失ニ因リテ為ササリシ場合ヲ除クノ外裁判ハ参加人ニ対シテモ其ノ効力ヲ有ス
第七十一条 訴訟ノ結果ニ因リテ権利ヲ害セラルヘキコトヲ主張スル第三者又ハ訴訟ノ目的ノ全部若ハ一部カ自己ノ権利ナルコトヲ主張スル第三者ハ当事者トシテ訴訟ニ参加スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ第六十二条及第六十五条ノ規定ヲ準用ス
第七十二条 前条ノ規定ニ依リ自己ノ権利ヲ主張スル為訴訟ニ参加シタル者アル場合ニ於テハ参加前ノ原告又ハ被告ハ相手方ノ承諾ヲ得テ訴訟ヨリ脱退スルコトヲ得但シ判決ハ脱退シタル当事者ニ対シテモ其ノ効力ヲ有ス
第七十三条 訴訟ノ繋属中其ノ訴訟ノ目的タル権利ノ全部又ハ一部ヲ譲受ケタルコトヲ主張シ第七十一条ノ規定ニ依リテ訴訟参加ヲ為シタルトキハ其ノ参加ハ訴訟ノ繋属ノ初ニ遡リテ時効ノ中断又ハ法律上ノ期間遵守ノ効力ヲ生ス
第七十四条 訴訟ノ繋属中第三者カ其ノ訴訟ノ目的タル債務ヲ承継シタルトキハ裁判所ハ当事者ノ申立ニ因リ其ノ第三者ヲシテ訴訟ヲ引受ケシムルコトヲ得
裁判所ハ前項ノ規定ニ依リテ決定ヲ為ス前当事者及第三者ヲ審訊スルコトヲ要ス
第七十二条ノ規定中脱退及判決ノ効力ニ関スルモノハ第一項ノ規定ニ依リテ訴訟ノ引受アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第七十五条 訴訟ノ目的カ当事者ノ一方及第三者ニ付合一ニノミ確定スヘキ場合ニ於テハ其ノ第三者ハ共同訴訟人トシテ訴訟ニ参加スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ第六十五条ノ規定ヲ準用ス
第七十六条 当事者ハ訴訟ノ繋属中参加ヲ為スコトヲ得ル第三者ニ其ノ訴訟ノ告知ヲ為スコトヲ得
訴訟告知ヲ受ケタル者ハ更ニ訴訟告知ヲ為スコトヲ得
第七十七条 訴訟告知ハ理由及訴訟ノ程度ヲ記載シタル書面ヲ裁判所ニ提出シテ之ヲ為スコトヲ要ス
前項ノ書面ハ相手方ニモ之ヲ送達スルコトヲ要ス
第七十八条 訴訟告知ヲ受ケタル者カ参加セサリシ場合ニ於テモ第七十条ノ規定ノ適用ニ付テハ参加スルコトヲ得ヘカリシ時ニ参加シタルモノト看做ス
第四節 訴訟代理人及輔佐人
第七十九条 法令ニ依リテ裁判上ノ行為ヲ為スコトヲ得ル代理人ノ外弁護士ニ非サレハ訴訟代理人タルコトヲ得ス但シ区裁判所ニ於テハ許可ヲ得テ弁護士ニ非サル者ヲ訴訟代理人ト為スコトヲ得
前項ノ許可ハ何時ニテモ之ヲ取消スコトヲ得
第八十条 訴訟代理人ノ権限ハ書面ヲ以テ之ヲ証スルコトヲ要ス
前項ノ書面カ私文書ナルトキハ裁判所ハ当該吏員ノ認証ヲ受クヘキ旨ヲ訴訟代理人ニ命スルコトヲ得
前二項ノ規定ハ当事者カ口頭ヲ以テ訴訟代理人ヲ選任シ裁判所書記カ調書ニ其ノ陳述ヲ記載シタル場合ニハ之ヲ適用セス
第八十一条 訴訟代理人ハ委任ヲ受ケタル事件ニ付反訴、参加、強制執行、仮差押及仮処分ニ関スル訴訟行為ヲ為シ且弁済ヲ受領スルコトヲ得
左ニ掲クル事項ニ付テハ特別ノ委任ヲ受クルコトヲ要ス
一 反訴ノ提起
二 訴ノ取下、和解、請求ノ抛棄若ハ認諾又ハ第七十二条ノ規定ニ依ル脱退
三 控訴、上告又ハ其ノ取下
四 代理人ノ選任
訴訟代理権ハ之ヲ制限スルコトヲ得ス但シ弁護士ニ非サル訴訟代理人ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第八十二条 前条ノ規定ハ法令ニ依リテ裁判上ノ行為ヲ為スコトヲ得ル代理人ノ権限ヲ妨ケス
第八十三条 数人ノ訴訟代理人アルトキハ各自当事者ヲ代理ス
当事者カ前項ノ規定ニ異ル定ヲ為スモ其ノ効力ヲ生セス
第八十四条 訴訟代理人ノ事実上ノ陳述ハ当事者カ直ニ之ヲ取消シ又ハ更正シタルトキハ其ノ効力ヲ生セス
第八十五条 訴訟代理権ハ当事者ノ死亡若ハ訴訟能力ノ喪失、当事者タル法人ノ合併ニ因ル消滅、当事者タル受託者ノ信託ノ任務終了又ハ法定代理人ノ死亡、訴訟能力ノ喪失若ハ代理権ノ消滅、変更ニ因リテ消滅セス
第八十六条 一定ノ資格ヲ有スル者ニシテ自己ノ名ヲ以テ他人ノ為訴訟ノ当事者タルモノノ訴訟代理人ノ代理権ハ当事者ノ資格ノ喪失ニ因リテ消滅セス
前項ノ規定ハ第四十七条ノ規定ニ依リテ選定セラレタル当事者カ其ノ資格ヲ喪失シタル場合ニ之ヲ準用ス
第八十七条 第五十二条第二項、第五十三条、第五十四条及第五十七条ノ規定ハ訴訟代理ニ之ヲ準用ス
第八十八条 当事者又ハ訴訟代理人ハ裁判所ノ許可ヲ得テ輔佐人ト共ニ出頭スルコトヲ得此ノ許可ハ何時ニテモ之ヲ取消スコトヲ得
輔佐人ノ陳述ハ当事者又ハ訴訟代理人カ直ニ之ヲ取消シ又ハ更正セサルトキハ自ラ之ヲ為シタルモノト看做ス
第三章 訴訟費用
第一節 訴訟費用ノ負担
第八十九条 訴訟費用ハ敗訴ノ当事者ノ負担トス
第九十条 裁判所ハ事情ニ従ヒ勝訴ノ当事者ヲシテ其ノ権利ノ伸張若ハ防禦ニ必要ナラサル行為ニ因リテ生シタル訴訟費用又ハ訴訟ノ程度ニ於テ相手方ノ権利ノ伸張若ハ防禦ニ必要ナリシ行為ニ因リテ生シタル訴訟費用ノ全部又ハ一部ヲ負担セシムルコトヲ得
第九十一条 当事者カ適当ノ時期ニ攻撃若ハ防禦ノ方法ヲ提出セサル為又ハ期日若ハ期間ノ懈怠其ノ他当事者ノ責ニ帰スヘキ事由ニ因リ訴訟ヲ遅滞セシメタルトキハ裁判所ハ之ヲシテ其ノ勝訴ノ場合ニ於テモ遅滞ニ因リテ生シタル訴訟費用ノ全部又ハ一部ヲ負担セシムルコトヲ得
第九十二条 一部敗訴ノ場合ニ於テ各当事者ノ負担スヘキ訴訟費用ハ裁判所ノ意見ヲ以テ之ヲ定ム但シ事情ニ従ヒ当事者ノ一方ヲシテ訴訟費用ノ全部ヲ負担セシムルコトヲ得
第九十三条 共同訴訟人ハ平等ノ割合ヲ以テ訴訟費用ヲ負担ス但シ裁判所ハ事情ニ従ヒ共同訴訟人ヲシテ連帯シテ訴訟費用ヲ負担セシメ又ハ他ノ方法ニ依リ之ヲ負担セシムルコトヲ得
裁判所ハ前項ノ規定ニ拘ラス権利ノ伸張又ハ防禦ニ必要ナラサル行為ヲ為シタル当事者ヲシテ其ノ行為ニ因リテ生シタル費用ヲ負担セシムルコトヲ得
第九十四条 第八十九条乃至前条ノ規定ハ当事者カ参加ニ付異議ヲ述ヘタル場合ニ於テハ其ノ異議ニ因リテ生シタル訴訟費用ノ参加人ト異議ヲ述ヘタル当事者トノ間ニ於ケル負担ニ関シ之ヲ準用ス参加ニ因リテ生シタル訴訟費用ノ参加人ト相手方トノ間ニ於ケル負担ニ付亦同シ
第九十五条 裁判所ハ事件ヲ完結スル裁判ニ於テ職権ヲ以テ其ノ審級ニ於ケル訴訟費用ノ全部ニ付裁判ヲ為スコトヲ要ス但シ事情ニ従ヒ事件ノ一部又ハ中間ノ争ニ関スル裁判ニ於テ其ノ費用ノ裁判ヲ為スコトヲ得
第九十六条 上級裁判所カ本案ノ裁判ヲ変更スル場合ニ於テハ訴訟ノ総費用ニ付裁判ヲ為スコトヲ要ス事件ノ差戻又ハ移送ヲ受ケタル裁判所カ其ノ事件ヲ完結スル裁判ヲ為ス場合亦同シ
第九十七条 当事者カ裁判所ニ於テ和解ヲ為シタル場合ニ於テ和解ノ費用及訴訟費用ノ負担ニ付別段ノ定ヲ為ササルトキハ其ノ費用ハ各自之ヲ負担ス
第九十八条 法定代理人、訴訟代理人、裁判所書記又ハ執達吏カ故意又ハ重大ナル過失ニ因リテ無益ナル費用ヲ生セシメタルトキハ受訴裁判所ハ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ此等ノ者ニ対シ其ノ費用額ノ償還ヲ命スルコトヲ得
前項ノ規定ハ法定代理人又ハ訴訟代理人トシテ訴訟行為ヲ為シタル者カ其ノ代理権又ハ訴訟行為ヲ為スニ必要ナル授権アルコトヲ証明スルコト能ハス又ハ追認ヲ得サリシ場合ニ於テ其ノ訴訟行為ニ因リテ生シタル訴訟費用ニ之ヲ準用ス
前二項ノ決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第九十九条 裁判所カ前条第二項ノ場合ニ於テ訴ヲ却下シタルトキハ訴訟費用ハ代理人トシテ訴訟行為ヲ為シタル者ノ負担トス
第百条 裁判所カ訴訟費用ノ負担ヲ定ムル裁判ニ於テ其ノ額ヲ定メサルトキハ第一審ノ受訴裁判所ハ其ノ裁判カ執行力ヲ生シタル後申立ニ因リ決定ヲ以テ之ヲ定ム
訴訟費用額ノ確定ヲ求ムル申立ヲ為スニハ費用計算書及其ノ謄本並費用額ノ疏明ニ必要ナル書面ヲ提出スルコトヲ要ス
第一項ノ決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第百一条 裁判所ハ訴訟費用額ヲ定ムル決定ヲ為ス前相手方ニ費用計算書ノ謄本ヲ交付シ陳述ヲ為スヘキ旨並一定ノ期間内ニ費用計算書及費用額ノ疏明ニ必要ナル書面ヲ提出スヘキ旨ヲ催告スルコトヲ要ス
相手方カ期間内ニ前項ノ書面ヲ提出セサルトキハ裁判所ハ申立人ノ費用ノミニ付裁判ヲ為スコトヲ得但シ相手方ノ費用額ノ確定ヲ求ムル申立ヲ妨ケス
第百二条 裁判所カ訴訟費用額ヲ定ムル裁判ヲ為ス場合ニ於テハ前条第二項ノ場合ヲ除クノ外各当事者ノ負担スヘキ費用ハ其ノ対当額ニ付相殺アリタルモノト看做ス
第百三条 第九十七条ノ場合ニ於テ当事者カ訴訟費用ノ負担ヲ定メ其ノ額ヲ定メサルトキハ裁判所ハ申立ニ因リ決定ヲ以テ其ノ額ヲ定ムルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ第百条第二項第三項、第百一条及前条ノ規定ヲ準用ス
第百四条 前条ノ場合ヲ除クノ外訴訟カ裁判ニ因ラスシテ完結シタルトキハ裁判所ハ申立ニ因リ決定ヲ以テ訴訟費用ノ額ヲ定メ且其ノ負担ヲ命スルコトヲ要ス参加又ハ之ニ付テノ異議ノ取下アリタルトキ亦同シ
第八十九条乃至第九十四条、第百条第二項第三項、第百一条及第百二条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第百五条 裁判所ハ裁判所書記ヲシテ訴訟費用額ノ計算ヲ為サシムルコトヲ得
第百六条 費用ヲ要スル行為ニ付テハ裁判所ハ当事者ヲシテ其ノ費用ヲ予納セシムルコトヲ得
当事者カ裁判所ノ命ニ従ヒ費用ヲ予納セサルトキハ裁判所ハ前項ノ行為ヲ為ササルコトヲ得
第二節 訴訟費用ノ担保
第百七条 原告カ日本ニ住所、事務所及営業所ヲ有セサルトキハ裁判所ハ被告ノ申立ニ因リ訴訟費用ノ担保ヲ供スヘキコトヲ原告ニ命スルコトヲ要ス担保ニ不足ヲ生シタルトキ亦同シ
前項ノ規定ハ請求ノ一部ニ付争ナキ場合ニ於テ其ノ額カ担保ニ十分ナルトキハ之ヲ適用セス
第百八条 担保ヲ供スヘキ事由アルコトヲ知リタル後被告カ本案ニ付弁論ヲ為シ又ハ準備手続ニ於テ申述ヲ為シタルトキハ担保ノ申立ヲ為スコトヲ得ス
第百九条 担保ノ申立ヲ為シタル被告ハ原告カ担保ヲ供スル迄応訴ヲ拒ムコトヲ得
第百十条 裁判所ハ担保ヲ供スヘキコトヲ命スル決定ニ於テ担保額及担保ヲ供スヘキ期間ヲ定ムルコトヲ要ス
担保額ハ被告カ各審ニ於テ支出スヘキ費用ノ総額ヲ標準トシテ之ヲ定ム
第百十一条 担保ノ申立ニ関スル裁判ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第百十二条 担保ヲ供スルニハ金銭又ハ裁判所カ相当ト認ムル有価証券ヲ供託スルコトヲ要ス但シ当事者カ別段ノ契約ヲ為シタルトキハ其ノ契約ニ依ル
第百十三条 被告ハ訴訟費用ニ付前条ノ規定ニ依リテ供託シタル金銭又ハ有価証券ノ上ニ質権者ト同一ノ権利ヲ有ス
第百十四条 原告カ担保ヲ供スヘキ期間内ニ之ヲ供セサルトキハ裁判所ハ口頭弁論ヲ経スシテ判決ヲ以テ訴ヲ却下スルコトヲ得但シ判決前担保ヲ供シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第百十五条 担保ヲ供シタル者カ担保ノ事由止ミタルコトヲ証明シタルトキハ裁判所ハ申立ニ因リ担保取消ノ決定ヲ為スコトヲ要ス
担保ヲ供シタル者カ担保取消ニ付担保権利者ノ同意ヲ得タルコトヲ証明シタルトキ亦前項ニ同シ
訴訟ノ完結後裁判所カ担保ヲ供シタル者ノ申立ニ因リ担保権利者ニ対シ一定ノ期間内ニ其ノ権利ヲ行使スヘキ旨ヲ催告シ担保権利者カ其ノ行使ヲ為ササルトキハ担保取消ニ付担保権利者ノ同意アリタルモノト看做ス
第一項及第二項ノ規定ニ依ル決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第百十六条 裁判所ハ担保ヲ供シタル者ノ申立ニ因リ決定ヲ以テ供託シタル担保物ノ変換ヲ命スルコトヲ得
前項ノ規定ハ供託シタル担保ヲ契約ニ因リテ他ノ担保ニ変換スルコトヲ妨ケス
第百十七条 第百九条、第百十条第一項及第百十一条乃至前条ノ規定ハ他ノ法令ニ依リテ訴ノ提起ニ付供スヘキ担保ニ之ヲ準用ス
第三節 訴訟上ノ救助
第百十八条 訴訟費用ヲ支払フ資力ナキ者ニ対シテハ裁判所ハ申立ニ因リ訴訟上ノ救助ヲ与フルコトヲ得但シ勝訴ノ見込ナキニ非サルトキニ限ル
第百十九条 訴訟上ノ救助ハ各審ニ於テ之ヲ与フ
救助ノ事由ハ之ヲ疏明スルコトヲ要ス
第百二十条 訴訟上ノ救助ハ訴訟及強制執行ニ付左ノ効力ヲ生ス
一 裁判費用ノ支払ノ猶予
二 執達吏及裁判所ニ於テ附添ヲ命シタル弁護士ノ報酬及立替金ノ支払ノ猶予
三 訴訟費用ノ担保ノ免除
第百二十一条 訴訟上ノ救助ハ之ヲ受ケタル者ノ為ニノミ其ノ効力ヲ有ス
裁判所ハ訴訟ノ承継人ニ対シ猶予シタル費用ノ支払ヲ命ス
第百二十二条 訴訟上ノ救助ヲ受ケタル者カ訴訟費用ノ支払ヲ為ス資力ヲ有スルコト判明シ又ハ之ヲ有スルニ至リタルトキハ訴訟記録ノ存スル裁判所ハ利害関係人ノ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ何時ニテモ救助ヲ取消シ猶予シタル訴訟費用ノ支払ヲ命スルコトヲ得
第百二十三条 訴訟上ノ救助ヲ受ケタル者ニ支払ヲ猶予シタル費用ハ其ノ負担ヲ命セラレタル相手方ヨリ直接ニ之ヲ取立ツルコトヲ得此ノ場合ニ於テ弁護士又ハ執達吏ハ訴訟上ノ救助ヲ受ケタル者ノ有スル債務名義ニ依リ報酬及立替金ニ付費用額ヲ定ムル申立及強制執行ヲ為スコトヲ得
弁護士又ハ執達吏ハ報酬及立替金ニ付当事者ニ代リ第百三条又ハ第百四条ノ裁判ヲ求ムル申立ヲ為スコトヲ得
第百二十四条 本節ニ規定スル裁判ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第四章 訴訟手続
第一節 口頭弁論
第百二十五条 当事者ハ訴訟ニ付裁判所ニ於テ口頭弁論ヲ為スコトヲ要ス但シ決定ヲ以テ完結スヘキ事件ニ付テハ裁判所口頭弁論ヲ為スヘキカ否ヲ定ム
前項但書ノ規定ニ依リテ口頭弁論ヲ為ササル場合ニ於テハ裁判所ハ当事者ヲ審訊スルコトヲ得
前二項ノ規定ハ別段ノ規定アル場合ニハ之ヲ適用セス
第百二十六条 口頭弁論ハ裁判長之ヲ指揮ス
裁判長ハ発言ヲ許シ又ハ其ノ命ニ従ハサル者ニ発言ヲ禁スルコトヲ得
第百二十七条 裁判長ハ訴訟関係ヲ明瞭ナラシムル為事実上及法律上ノ事項ニ関シ当事者ニ対シテ問ヲ発シ又ハ立証ヲ促スコトヲ得
陪席判事ハ裁判長ニ告ケテ前項ニ規定スル処置ヲ為スコトヲ得
当事者ハ裁判長ニ対シ必要ナル発問ヲ求ムルコトヲ得
第百二十八条 裁判長ハ前条ノ規定ニ依リテ当事者ヲシテ釈明セシムヘキ事項ヲ指示シ口頭弁論期日前準備ヲ為スヘキコトヲ命スルコトヲ得
第百二十九条 当事者カ弁論ノ指揮ニ関スル裁判長ノ命又ハ第百二十七条若ハ前条ノ規定ニ依ル裁判長若ハ陪席判事ノ処置ニ対シ異議ヲ述ヘタルトキハ裁判所決定ヲ以テ其ノ異議ニ付裁判ヲ為ス
第百三十条 受命判事ヲシテ其ノ職務ヲ行ハシムヘキ場合ニ於テハ裁判長其ノ判事ヲ指定ス
裁判所ノ為ス嘱託ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外裁判長之ヲ為ス
第百三十一条 裁判所ハ訴訟関係ヲ明瞭ナラシムル為左ノ処分ヲ為スコトヲ得
一 当事者本人又ハ其ノ法定代理人ノ出頭ヲ命スルコト
二 訴訟書類又ハ訴訟ニ於テ引用シタル文書其ノ他ノ物件ニシテ当事者ノ所持スルモノヲ提出セシムルコト
三 当事者又ハ第三者ノ提出シタル文書其ノ他ノ物件ヲ裁判所ニ留置クコト
四 検証ヲ為シ又ハ鑑定ヲ命スルコト
五 必要ナル調査ヲ嘱託スルコト
前項ニ規定スル検証、鑑定及調査ノ嘱託ニ付テハ証拠調ニ関スル規定ヲ準用ス
第百三十二条 裁判所ハ口頭弁論ノ制限、分離若ハ併合ヲ命シ又ハ其ノ命ヲ取消スコトヲ得
第百三十三条 裁判所ハ終結シタル口頭弁論ノ再開ヲ命スルコトヲ得
第百三十四条 弁論ニ与ル者カ日本語ニ通セサルトキ又ハ聾若ハ唖ナルトキハ通事ヲ立会ハシム但シ聾者又ハ唖者ニハ文字ヲ以テ問ヒ又ハ陳述ヲ為サシムルコトヲ得
鑑定人ニ関スル規定ハ通事ニ之ヲ準用ス
第百三十五条 裁判所ハ訴訟関係ヲ明瞭ナラシムル為必要ナル陳述ヲ為スコト能ハサル当事者、代理人又ハ輔佐人ノ陳述ヲ禁シ弁論続行ノ為新期日ヲ定ムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リテ陳述ヲ禁シタル場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ裁判所ハ弁護士ノ附添ヲ命スルコトヲ得
訴訟代理人ノ陳述ヲ禁シ又ハ弁護士ノ附添ヲ命シタルトキハ本人ニ其ノ旨ヲ通知スルコトヲ要ス
第百三十六条 裁判所ハ訴訟ノ如何ナル程度ニ在ルヲ問ハス和解ヲ試ミ又ハ受命判事若ハ受託判事ヲシテ之ヲ試ミシムルコトヲ得
裁判所又ハ受命判事若ハ受託判事ハ和解ノ為当事者本人又ハ其ノ法定代理人ノ出頭ヲ命スルコトヲ得
第百三十七条 攻撃又ハ防禦ノ方法ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外口頭弁論ノ終結ニ至ル迄之ヲ提出スルコトヲ得
第百三十八条 原告又ハ被告カ最初ニ為スヘキ口頭弁論ノ期日ニ出頭セス又ハ出頭スルモ本案ノ弁論ヲ為ササルトキハ其ノ者ノ提出シタル訴状、答弁書其ノ他ノ準備書面ニ記載シタル事項ハ之ヲ陳述シタルモノト看做シ出頭シタル相手方ニ弁論ヲ命スルコトヲ得
第百三十九条 当事者カ故意又ハ重大ナル過失ニ因リ時機ニ後レテ提出シタル攻撃又ハ防禦ノ方法ハ之カ為訴訟ノ完結ヲ遅延セシムヘキモノト認メタルトキハ裁判所ハ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ却下ノ決定ヲ為スコトヲ得
攻撃又ハ防禦ノ方法ニシテ其ノ趣旨明瞭ナラサルモノニ付当事者カ必要ナル釈明ヲ為サス又ハ釈明ヲ為スヘキ期日ニ出頭セサルトキ亦前項ニ同シ
第百四十条 当事者カ口頭弁論ニ於テ相手方ノ主張シタル事実ヲ明ニ争ハサルトキハ其ノ事実ヲ自白シタルモノト看做ス但シ弁論ノ全趣旨ニ依リ其ノ事実ヲ争ヒタルモノト認ムヘキ場合ハ此ノ限ニ在ラス
相手方ノ主張シタル事実ヲ知ラサル旨ノ陳述ヲ為シタル者ハ其ノ事実ヲ争ヒタルモノト推定ス
第百四十一条 当事者カ訴訟手続ニ関スル規定ノ違背ヲ知リ又ハ之ヲ知ルコトヲ得ヘカリシ場合ニ於テ遅滞ナク異議ヲ述ヘサルトキハ之ヲ述フル権利ヲ失フ但シ抛棄スルコトヲ得サルモノハ此ノ限ニ在ラス
第百四十二条 口頭弁論ニ付テハ裁判所書記期日毎ニ調書ヲ作ルコトヲ要ス
第百四十三条 調書ニハ左ノ事項ヲ記載シ裁判長及裁判所書記之ニ署名捺印シ裁判長支障アルトキハ陪席判事其ノ席次ニ従ヒ順次之ニ代リテ署名捺印シ且其ノ事由ヲ記載スルコトヲ要ス但シ判事皆支障アルトキハ書記其ノ旨ヲ記載スルヲ以テ足ル
一 事件ノ表示
二 判事及裁判所書記ノ氏名
三 立会ヒタル検事ノ氏名
四 出頭シタル当事者、代理人、輔佐人及通事並闕席シタル当事者ノ氏名
五 弁論ノ場所及年月日
六 弁論ヲ公開シタルコト又ハ公開セサル場合ニ於テハ其ノ理由
第百四十四条 調書ニハ弁論ノ要領ヲ記載シ殊ニ左ノ事項ヲ明確ニスルコトヲ要ス
一 和解、認諾、抛棄、取下及自白
二 証人、鑑定人ノ宣誓及陳述
三 検証ノ結果
四 裁判長ノ記載ヲ命シタル事項及当事者ノ請求ニ因リ記載ヲ許シタル事項
五 書面ニ作ラサル裁判
六 裁判ノ言渡
第百四十五条 調書ニハ書面、写真其ノ他裁判所ニ於テ適当ト認ムルモノヲ引用シ訴訟記録ニ添附シテ之ヲ調書ノ一部ト為スコトヲ得
第百四十六条 調書ノ記載ハ申立ニ因リ法廷ニ於テ関係人ニ之ヲ読聞カセ又ハ閲覧セシメ且調書ニ其ノ旨ヲ記載スルコトヲ要ス
調書ノ記載ニ付関係人カ異議ヲ述ヘタルトキハ調書ニ其ノ趣旨ヲ記載スルコトヲ要ス
第百四十七条 口頭弁論ノ方式ニ関スル規定ノ遵守ハ調書ニ依リテノミ之ヲ証スルコトヲ得但シ調書カ滅失シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第百四十八条 裁判所必要アリト認ムルトキハ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ速記者ヲシテ口頭弁論ニ於ケル陳述ノ全部又ハ一部ヲ筆記セシムルコトヲ得
第百四十九条 第百四十二条乃至前条ノ規定ハ裁判所ノ審訊、受命判事又ハ受託判事ノ審問及証拠調ニ之ヲ準用ス
第百五十条 申立其ノ他ノ申述ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
口頭ヲ以テ申述ヲ為スニハ裁判所書記ノ面前ニ於テ陳述ヲ為スコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テハ書記調書ヲ作リ之ニ署名捺印スルコトヲ要ス
第百五十一条 当事者ハ訴訟記録ノ閲覧若ハ謄写又ハ其ノ正本、謄本、抄本若ハ訴訟ニ関スル事項ノ証明書ノ交付ヲ裁判所書記ニ請求スルコトヲ得利害関係ヲ疏明シタル第三者亦同シ
訴訟記録ノ正本、謄本又ハ抄本ニハ其ノ正本、謄本又ハ抄本ナルコトヲ記載シ書記之ニ署名捺印シ且裁判所ノ印ヲ押捺スルコトヲ要ス
第二節 期日及期間
第百五十二条 期日ハ裁判長之ヲ定ム
受命判事又ハ受託判事ノ審問ノ期日ハ其ノ判事之ヲ定ム
期日ノ指定ハ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ之ヲ為ス
口頭弁論ニ於ケル最初ノ期日ノ変更ハ顕著ナル事由ノ存セサルトキト雖当事者ノ合意アル場合ニ於テハ之ヲ許ス準備手続ニ於ケル最初ノ期日ノ変更亦同シ
第百五十三条 期日ハ已ムコトヲ得サル場合ニ限リ日曜日其ノ他ノ一般ノ休日ニ之ヲ定ムルコトヲ得
第百五十四条 期日ニ於ケル呼出ハ呼出状ヲ送達シテ之ヲ為ス但シ当該事件ニ付出頭シタル者ニ対シテハ期日ヲ告知スルヲ以テ足ル
第百五十五条 期日ハ事件ノ呼上ヲ以テ之ヲ開始ス
第百五十六条 期間ノ計算ハ民法ニ従フ
期間ノ末日カ日曜日其ノ他ノ一般ノ休日ニ当ルトキハ期間ハ其ノ翌日ヲ以テ満了ス
第百五十七条 期間ヲ定ムル裁判ニ於テ始期ヲ定メサルトキハ其ノ期間ハ裁判カ効力ヲ生シタル時ヨリ進行ヲ始ム
第百五十八条 裁判所ハ法定期間又ハ其ノ定メタル期間ヲ伸長シ又ハ之ヲ短縮スルコトヲ得但シ不変期間ハ此ノ限ニ在ラス
不変期間ニ付テハ裁判所ハ遠隔ノ地ニ住所又ハ居所ヲ有スル者ノ為附加期間ヲ定ムルコトヲ得
裁判長、受命判事又ハ受託判事ハ其ノ定メタル期間ヲ伸長シ又ハ之ヲ短縮スルコトヲ得
第百五十九条 当事者カ其ノ責ニ帰スヘカラサル事由ニ因リ不変期間ヲ遵守スルコト能ハサリシ場合ニ於テハ其ノ事由ノ止ミタル後一週間内ニ限リ懈怠シタル訴訟行為ノ追完ヲ為スコトヲ得此ノ期間ニ付テハ前条ノ規定ヲ適用セス
第三節 送達
第百六十条 送達ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外職権ヲ以テ之ヲ為ス
第百六十一条 送達ニ関スル事務ハ裁判所書記之ヲ取扱フ
前項ノ事務ノ取扱ハ送達地ノ区裁判所ノ書記ニ之ヲ嘱託スルコトヲ得
第百六十二条 送達ハ執達吏又ハ郵便ニ依リ之ヲ為ス
郵便ニ依ル送達ニ在リテハ郵便集配人ヲ以テ送達ヲ為ス吏員トス
第百六十三条 当該事件ニ付出頭シタル者ニ対シテハ裁判所書記自ラ送達ヲ為スコトヲ得
第百六十四条 送達ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外送達ヲ受クヘキ者ニ送達スヘキ書類ノ謄本ヲ交付シテ之ヲ為ス
送達スヘキ書類ノ提出ニ代ヘ調書ヲ作リタルトキハ其ノ調書ノ謄本又ハ抄本ヲ交付シテ送達ヲ為ス
第百六十五条 訴訟無能力者ニ対スル送達ハ其ノ法定代理人ニ之ヲ為ス
第百六十六条 数人カ共同シテ代理権ヲ行フヘキ場合ニ於テハ送達ハ其ノ一人ニ之ヲ為スヲ以テ足ル
第百六十七条 軍事用ノ庁舎又ハ艦船ニ属スル者ニ対スル送達ハ其ノ庁舎又ハ艦船ノ長ニ之ヲ為ス
第百六十八条 在監者ニ対スル送達ハ監獄ノ長ニ之ヲ為ス
第百六十九条 送達ハ之ヲ受クヘキ者ノ住所、居所、営業所又ハ事務所ニ於テ之ヲ為ス但シ法定代理人ニ対スル送達ハ本人ノ営業所又ハ事務所ニ於テモ之ヲ為スコトヲ得
送達ヲ受クヘキ者カ日本ニ住所、居所、営業所又ハ事務所ヲ有スルコト明ナラサルトキハ送達ハ其ノ者ニ出会ヒタル場所ニ於テ之ヲ為スコトヲ得住所、居所、営業所又ハ事務所ヲ有スル者カ送達ヲ受クルコトヲ拒マサルトキ亦同シ
第百七十条 当事者、法定代理人又ハ訴訟代理人ハ受訴裁判所ノ所在地ニ住所、居所、営業所又ハ事務所ヲ有セサルトキハ其ノ裁判所ノ所在地ニ於テ送達ヲ受クヘキ場所及送達受取人ヲ定メ之ヲ届出ツルコトヲ要ス
送達ヲ受クヘキ者カ前項ノ届出ヲ為ササルトキハ其ノ者ニ対シテ送達スヘキ書類ハ前条第一項ノ規定ニ依リ送達スヘキ場所ニ宛テ書留郵便ニ付シテ之ヲ発送スルコトヲ得
第一項ノ届出ハ送達ヲ受クヘキ者カ受訴裁判所ノ所在地ニ住所、居所、営業所又ハ事務所ヲ有スル場合ニ於テモ亦之ヲ為スコトヲ得
第百七十一条 送達ヲ為スヘキ場所ニ於テ送達ヲ受クヘキ者ニ出会ハサルトキハ事務員、雇人又ハ同居者ニシテ事理ヲ弁識スルニ足ルヘキ知能ヲ具フル者ニ書類ヲ交付スルコトヲ得
前項ニ掲クル者其ノ他書類ノ交付ヲ受クヘキ者カ正当ノ事由ナクシテ之ヲ受クルコトヲ拒ミタルトキハ送達ヲ為スヘキ場所ニ書類ヲ差置クコトヲ得
第百七十二条 前条ノ規定ニ依リテ送達ヲ為スコト能ハサル場合ニ於テハ裁判所書記書類ヲ書留郵便ニ付シテ之ヲ発送スルコトヲ得
第百七十三条 第百七十条第二項又ハ前条ノ規定ニ依リテ書類ヲ郵便ニ付シテ発送シタル場合ニ於テハ其ノ発送ノ時ニ於テ送達アリタルモノト看做ス
第百七十四条 日曜日其ノ他ノ一般ノ休日又ハ日出前日没後ニ於テ執達吏ニ依ル送達ヲ為スニハ裁判長ノ許可アルコトヲ要ス
前項ノ許可アリタルトキハ裁判所書記ハ送達スヘキ書類ニ其ノ旨ヲ附記スルコトヲ要ス
前二項ノ規定ニ違背スル送達ハ書類ノ交付ヲ受クヘキ者カ之ヲ受取リタル場合ニ限リ其ノ効力ヲ有ス
第百七十五条 外国ニ於テ為スヘキ送達ハ裁判長其ノ国ノ管轄官庁又ハ其ノ国ニ駐在スル日本ノ大使、公使若ハ領事ニ嘱託シテ之ヲ為ス
第百七十六条 出陣ノ軍隊若ハ外国駐在ノ軍隊ニ属スル者又ハ役務ニ服スル艦船ノ乗組員ニ対スル送達ハ裁判長上班司令官庁ニ嘱託シテ之ヲ為ス
前項ノ送達ニ付テハ第百六十七条ノ規定ヲ準用ス
第百七十七条 送達ヲ為シタル吏員ハ書面ヲ作リ送達ニ関スル事項ヲ記載シ之ヲ裁判所ニ提出スルコトヲ要ス
第百七十八条 当事者ノ住所、居所其ノ他送達ヲ為スヘキ場所カ知レサル場合又ハ外国ニ於テ為スヘキ送達ニ付第百七十五条ノ規定ニ依ルコト能ハス若ハ之ニ依ルモ其ノ効ナシト認ムヘキ場合ニ於テハ申立ニ因リ裁判長ノ許可ヲ得テ公示送達ヲ為スコトヲ得
同一ノ当事者ニ対スル爾後ノ公示送達ハ職権ヲ以テ之ヲ為ス
第百七十九条 公示送達ハ裁判所書記送達スヘキ書類ヲ保管シ何時ニテモ送達ヲ受クヘキ者ニ交付スヘキ旨ヲ裁判所ノ掲示場ニ掲示シテ之ヲ為ス但シ呼出状ノ送達ハ呼出状ヲ掲示場ニ貼附シテ之ヲ為ス
裁判所ハ公示送達アリタルコトヲ官報又ハ新聞紙ニ掲載スヘキコトヲ命スルコトヲ得但シ外国ニ於テ為スヘキ送達ニ付テハ公示送達アリタルコトヲ郵便ニ付シテ通知スルコトヲ得
第百八十条 公示送達ハ前条第一項ノ規定ニ依ル掲示ヲ始メ又ハ貼附ヲ為シタル日ヨリ二週間ヲ経過スルニ因リテ其ノ効力ヲ生ス但シ第百七十八条第二項ノ公示送達ハ掲示ヲ始メ又ハ貼附ヲ為シタル日ノ翌日ニ於テ其ノ効力ヲ生ス
前項ノ期間ハ之ヲ短縮スルコトヲ得ス
第百八十一条 送達ニ関スル裁判長ノ権限ハ受命判事、受託判事及送達地ノ区裁判所ノ判事亦之ヲ有ス
第四節 裁判
第百八十二条 訴訟カ裁判ヲ為スニ熟スルトキハ裁判所ハ終局判決ヲ為ス
第百八十三条 訴訟ノ一部カ裁判ヲ為スニ熟スルトキハ裁判所ハ其ノ一部ニ付終局判決ヲ為スコトヲ得
前項ノ規定ハ口頭弁論ノ併合ヲ命シタル数個ノ訴訟中其ノ一カ裁判ヲ為スニ熟スル場合及本訴又ハ反訴カ裁判ヲ為スニ熟スル場合ニ之ヲ準用ス
第百八十四条 独立シタル攻撃又ハ防禦ノ方法其ノ他中間ノ争ニ付裁判ヲ為スニ熟スルトキハ裁判所ハ中間判決ヲ為スコトヲ得請求ノ原因及数額ニ付争アル場合ニ於テ其ノ原因ニ付亦同シ
第百八十五条 裁判所ハ判決ヲ為スニ当リ其ノ為シタル口頭弁論ノ全趣旨及証拠調ノ結果ヲ斟酌シ自由ナル心証ニ依リ事実上ノ主張ヲ真実ト認ムヘキカ否ヲ判断ス
第百八十六条 裁判所ハ当事者ノ申立テサル事項ニ付判決ヲ為スコトヲ得ス
第百八十七条 判決ハ其ノ基本タル口頭弁論ニ関与シタル判事之ヲ為ス
判事ノ更迭アル場合ニ於テハ当事者ハ従前ノ口頭弁論ノ結果ヲ陳述スルコトヲ要ス
第百八十八条 判決ハ言渡ニ因リテ其ノ効力ヲ生ス
第百八十九条 判決ノ言渡ハ判決原本ニ基キ裁判長主文ヲ朗読シテ之ヲ為ス
裁判長ハ相当ト認ムルトキハ判決ノ理由ヲ朗読シ又ハ口頭ヲ以テ其ノ要領ヲ告クルコトヲ得
第百九十条 判決ノ言渡ハ口頭弁論終結ノ日ヨリ二週間内ニ之ヲ為ス但シ事件繁雑ナルトキ其ノ他特別ノ事情アルトキハ此ノ限ニ在ラス
判決ノ言渡ハ当事者カ在廷セサル場合ニ於テモ之ヲ為スコトヲ得
第百九十一条 判決ニハ左ノ事項ヲ記載シ判決ヲ為シタル判事之ニ署名捺印スルコトヲ要ス
一 主文
二 事実及争点
三 理由
四 当事者及法定代理人
五 裁判所
事実及争点ノ記載ハ口頭弁論ニ於ケル当事者ノ陳述ニ基キ要領ヲ摘示シテ之ヲ為スコトヲ要ス
判事判決ニ署名捺印スルニ支障アルトキハ他ノ判事判決ニ其ノ事由ヲ記載シテ署名捺印スルコトヲ要ス
第百九十二条 判決ハ言渡後遅滞ナク之ヲ裁判所書記ニ交付シ書記ハ言渡及交付ノ日ヲ附記シ之ニ捺印スルコトヲ要ス
第百九十三条 判決ハ交付ヲ受ケタル日ヨリ二週間内ニ之ヲ当事者ニ送達スルコトヲ要ス
判決ノ送達ハ正本ヲ以テ之ヲ為ス
第百九十四条 判決ニ違算、書損其ノ他之ニ類スル明白ナル誤謬アルトキハ裁判所ハ何時ニテモ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ更正決定ヲ為スコトヲ得
更正決定ハ判決ノ原本及正本ニ之ヲ附記スルコトヲ要ス但シ正本ニ附記スルコト能ハサルトキハ決定ノ正本ヲ作リ之ヲ当事者ニ送達スルコトヲ要ス
更正決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得但シ判決ニ対シ適法ノ控訴アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第百九十五条 裁判所カ請求ノ一部ニ付裁判ヲ脱漏シタルトキハ訴訟ハ其ノ請求ノ部分ニ付仍裁判所ニ繋属ス
訴訟費用ノ裁判ヲ脱漏シタル場合ニ於テハ裁判所ハ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ其ノ訴訟費用ニ付裁判ヲ為ス此ノ場合ニ於テハ第百四条ノ規定ヲ準用ス
前項ノ規定ニ依ル訴訟費用ノ裁判ハ本案判決ニ対シ適法ノ控訴アリタルトキハ其ノ効力ヲ失フ此ノ場合ニ於テハ控訴裁判所ハ訴訟ノ総費用ニ付裁判ヲ為ス
第百九十六条 財産権上ノ請求ニ関スル判決ニ付テハ裁判所ハ必要アリト認ムルトキハ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ担保ヲ供シ又ハ供セスシテ仮執行ヲ為スコトヲ得ヘキコトヲ宣言スルコトヲ得
裁判所ハ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ担保ヲ供シテ仮執行ヲ免ルルコトヲ得ヘキコトヲ宣言スルコトヲ得
前二項ノ宣言ハ判決主文ニ之ヲ掲クルコトヲ要ス
第百九十七条 第百十二条、第百十三条、第百十五条及第百十六条ノ規定ハ前条ノ担保ニ之ヲ準用ス
第百九十八条 仮執行ノ宣言ハ其ノ宣言又ハ本案判決ヲ変更スル判決ノ言渡ニ因リ変更ノ限度ニ於テ其ノ効力ヲ失フ
本案判決ヲ変更スル場合ニ於テハ裁判所ハ被告ノ申立ニ因リ其ノ判決ニ於テ仮執行ノ宣言ニ基キ被告カ給付シタルモノノ返還及仮執行ニ因リ又ハ之ヲ免ルル為被告ノ受ケタル損害ノ賠償ヲ原告ニ命スルコトヲ要ス
仮執行ノ宣言ノミヲ変更シタルトキハ後ニ本案判決ヲ変更スル判決ニ付前項ノ規定ヲ適用ス
第百九十九条 確定判決ハ主文ニ包含スルモノニ限リ既判力ヲ有ス
相殺ノ為主張シタル請求ノ成立又ハ不成立ノ判断ハ相殺ヲ以テ対抗シタル額ニ付既判力ヲ有ス
第二百条 外国裁判所ノ確定判決ハ左ノ条件ヲ具備スル場合ニ限リ其ノ効力ヲ有ス
一 法令又ハ条約ニ於テ外国裁判所ノ裁判権ヲ否認セサルコト
二 敗訴ノ被告カ日本人ナル場合ニ於テ公示送達ニ依ラスシテ訴訟ノ開始ニ必要ナル呼出若ハ命令ノ送達ヲ受ケタルコト又ハ之ヲ受ケサルモ応訴シタルコト
三 外国裁判所ノ判決カ日本ニ於ケル公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反セサルコト
四 相互ノ保証アルコト
第二百一条 確定判決ハ当事者、口頭弁論終結後ノ承継人又ハ其ノ者ノ為請求ノ目的物ヲ所持スル者ニ対シテ其ノ効力ヲ有ス
他人ノ為原告又ハ被告ト為リタル者ニ対スル確定判決ハ其ノ他人ニ対シテモ効力ヲ有ス
前二項ノ規定ハ仮執行ノ宣言ニ之ヲ準用ス
第二百二条 不適法ナル訴ニシテ其ノ欠欠カ補正スルコト能ハサルモノナル場合ニ於テハ口頭弁論ヲ経スシテ判決ヲ以テ之ヲ却下スルコトヲ得
第二百三条 和解又ハ請求ノ抛棄若ハ認諾ヲ調書ニ記載シタルトキハ其ノ記載ハ確定判決ト同一ノ効力ヲ有ス
第二百四条 決定及命令ハ相当ト認ムル方法ヲ以テ之ヲ告知スルニ因リテ其ノ効力ヲ生ス
裁判所書記ハ告知ノ方法、場所及年月日ヲ裁判ノ原本ニ附記シ之ニ捺印スルコトヲ要ス
第二百五条 訴訟ノ指揮ニ関スル決定及命令ハ何時ニテモ之ヲ取消スコトヲ得
第二百六条 裁判所書記ノ処分ニ対スル異議ニ付テハ其ノ書記所属ノ裁判所決定ヲ以テ裁判ヲ為ス
第二百七条 決定及命令ニハ其ノ性質ニ反セサル限リ判決ニ関スル規定ヲ準用ス
第五節 訴訟手続ノ中断及中止
第二百八条 当事者カ死亡シタルトキハ訴訟手続ハ中断ス此ノ場合ニ於テハ相続人、相続財産管理人其ノ他法令ニ依リ訴訟ヲ続行スヘキ者ハ訴訟手続ヲ受継クコトヲ要ス
相続人ハ相続ノ抛棄ヲ為スコトヲ得ル間ハ訴訟手続ヲ受継クコトヲ得ス
第二百九条 当事者タル法人カ合併ニ因リテ消滅シタルトキハ訴訟手続ハ中断ス此ノ場合ニ於テハ合併ニ因リテ設立シタル法人又ハ合併後存続スル法人ハ訴訟手続ヲ受継クコトヲ要ス
前項ノ規定ハ合併ヲ以テ相手方ニ対抗スルコトヲ得サル場合ニハ之ヲ適用セス
第二百十条 当事者カ訴訟能力ヲ失ヒタルトキ又ハ其ノ法定代理人カ死亡シ若ハ代理権ヲ失ヒタルトキハ訴訟手続ハ中断ス此ノ場合ニ於テハ法定代理人又ハ訴訟能力ヲ有スルニ至リタル当事者ハ訴訟手続ヲ受継クコトヲ要ス
第二百十一条 受託者ノ信託ノ任務終了シタルトキハ訴訟手続ハ中断ス此ノ場合ニ於テハ新受託者訴訟手続ヲ受継クコトヲ要ス
第二百十二条 一定ノ資格ヲ有スル者カ自己ノ名ヲ以テ他人ノ為訴訟ノ当事者タル場合ニ於テ其ノ資格ヲ喪失シタルトキハ訴訟手続ハ中断ス此ノ場合ニ於テハ同一ノ資格ヲ有スル者訴訟手続ヲ受継クコトヲ要ス当事者ノ死亡ニ因リ訴訟手続カ中断シタル場合亦同シ
第四十七条ノ規定ニ依リテ原告又ハ被告ト為ルヘキ者ヲ選定シタル訴訟ニ於テ其ノ選定セラレタル当事者ノ全員カ其ノ資格ヲ喪失シタルトキハ訴訟手続ハ中断ス此ノ場合ニ於テハ選定ヲ為シタル者ノ総員又ハ新ニ原告若ハ被告トシテ選定セラレタル者ハ訴訟手続ヲ受継クコトヲ要ス
第二百十三条 第二百八条第一項、第二百九条第一項及第二百十条乃至前条ノ規定ハ訴訟代理人アル間ハ之ヲ適用セス
第二百十四条 当事者カ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキハ破産財団ニ関スル訴訟手続ハ中断ス此ノ場合ニ於テ破産法ニ依ル受継アル迄ニ破産手続ノ解止アリタルトキハ破産者ハ当然訴訟手続ヲ受継ス
第二百十五条 破産法ニ依リテ破産財団ニ関スル訴訟手続ノ受継アリタル後破産手続ノ解止アリタルトキハ訴訟手続ハ中断ス此ノ場合ニ於テハ破産者ハ訴訟手続ヲ受継クコトヲ要ス
第二百十六条 訴訟手続ノ受継ハ相手方ニ於テモ亦之ヲ為スコトヲ得
第二百十七条 訴訟手続受継ノ申立アリタルトキハ裁判所ハ之ヲ相手方ニ通知スルコトヲ要ス
第二百十八条 訴訟手続受継ノ申立ハ裁判所職権ヲ以テ之ヲ調査シ理由ナシト認メタルトキハ決定ヲ以テ之ヲ却下スルコトヲ要ス
裁判ノ送達後中断シタル訴訟手続ノ受継ニ付テハ其ノ裁判ヲ為シタル裁判所裁判ヲ為スコトヲ要ス
第二百十九条 裁判所ハ当事者カ訴訟手続ノ受継ヲ為ササル場合ニ於テモ職権ヲ以テ其ノ続行ヲ命スルコトヲ得
第二百二十条 天災其ノ他ノ事故ニ因リテ裁判所カ職務ヲ行フコト能ハサルトキハ訴訟手続ハ其ノ事故ノ止ム迄中止ス
第二百二十一条 当事者カ不定期間ノ故障ニ因リ訴訟手続ヲ続行スルコト能ハサルトキハ裁判所ハ決定ヲ以テ其ノ中止ヲ命スルコトヲ得
裁判所ハ前項ノ決定ヲ取消スコトヲ得
第二百二十二条 判決ノ言渡ハ訴訟手続ノ中断中ト雖之ヲ為スコトヲ得
訴訟手続ノ中断又ハ中止ハ期間ノ進行ヲ止メ訴訟手続ノ受継ノ通知又ハ続行ノ時ヨリ更ニ全期間ノ進行ヲ始ム
第二編 第一審ノ訴訟手続
第一章 地方裁判所ノ訴訟手続
第一節 訴
第二百二十三条 訴ノ提起ハ訴状ヲ裁判所ニ提出シテ之ヲ為スコトヲ要ス
第二百二十四条 訴状ニハ当事者、法定代理人並請求ノ趣旨及原因ヲ記載スルコトヲ要ス
準備書面ニ関スル規定ハ訴状ニ之ヲ準用ス
第二百二十五条 確認ノ訴ハ法律関係ヲ証スル書面ノ真否ヲ確定スル為ニモ之ヲ提起スルコトヲ得
第二百二十六条 将来ノ給付ヲ求ムル訴ハ予メ其ノ請求ヲ為ス必要アル場合ニ限リ之ヲ提起スルコトヲ得
第二百二十七条 数個ノ請求ハ同種ノ訴訟手続ニ依ル場合ニ限リ一ノ訴ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
第二百二十八条 訴状カ第二百二十四条第一項ノ規定ニ違背スル場合ニ於テハ裁判長ハ相当ノ期間ヲ定メ其ノ期間内ニ欠欠ヲ補正スヘキコトヲ命スルコトヲ要ス法律ノ規定ニ従ヒ訴状ニ印紙ヲ貼用セサル場合亦同シ
原告カ欠欠ノ補正ヲ為ササルトキハ裁判長ハ命令ヲ以テ訴状ヲ却下スルコトヲ要ス
前項ノ命令ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
抗告状ニハ却下セラレタル訴状ヲ添附スルコトヲ要ス
第二百二十九条 訴状ハ之ヲ被告ニ送達スルコトヲ要ス
前条ノ規定ハ訴状ノ送達ヲ為スコト能ハサル場合ニ之ヲ準用ス
第二百三十条 訴ノ提起アリタルトキハ裁判長ハ口頭弁論ノ期日ヲ定メ当事者ヲ呼出スコトヲ要ス
第二百三十一条 裁判所ニ繋属スル事件ニ付テハ当事者ハ更ニ訴ヲ提起スルコトヲ得ス
第二百三十二条 原告ハ請求ノ基礎ニ変更ナキ限リ口頭弁論ノ終結ニ至ル迄請求又ハ請求ノ原因ヲ変更スルコトヲ得但シ之ニ因リ著ク訴訟手続ヲ遅滞セシムヘキ場合ハ此ノ限ニ在ラス
請求ノ変更ハ書面ニ依リテ之ヲ為スコトヲ要ス
前項ノ書面ハ之ヲ相手方ニ送達スルコトヲ要ス
第二百三十三条 裁判所カ請求又ハ請求ノ原因ノ変更ヲ不当ナリト認ムルトキハ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ其ノ変更ヲ許ササル旨ノ決定ヲ為スコトヲ要ス
第二百三十四条 裁判カ訴訟ノ進行中ニ争ト為リタル法律関係ノ成立又ハ不成立ニ繋ルトキハ当事者ハ請求ヲ拡張シテ其ノ法律関係ノ確認ノ判決ヲ求ムルコトヲ得但シ其ノ確認ノ請求カ他ノ裁判所ノ管轄ニ専属セサルトキニ限ル
前項ノ規定ニ依ル請求ノ拡張ハ書面ニ依リテ之ヲ為スコトヲ要ス
前項ノ書面ハ之ヲ相手方ニ送達スルコトヲ要ス
第二百三十五条 時効ノ中断又ハ法律上ノ期間遵守ノ為必要ナル裁判上ノ請求ハ訴ヲ提起シタル時又ハ第二百三十二条第二項若ハ前条第二項ノ規定ニ依リ書面ヲ裁判所ニ提出シタル時ニ於テ其ノ効力ヲ生ス
第二百三十六条 訴ハ判決ノ確定ニ至ル迄其ノ全部又ハ一部ヲ取下クルコトヲ得但シ相手方カ本案ニ付準備書面ヲ提出シ、準備手続ニ於テ申述ヲ為シ又ハ口頭弁論ヲ為シタルトキハ訴ノ取下ニ付其ノ同意アルコトヲ要ス
訴ノ取下ハ書面ニ依リテ之ヲ為スコトヲ要ス但シ口頭弁論ニ於テ又ハ準備手続中受命判事ノ面前ニ於テ口頭ヲ以テ之ヲ為スコトヲ妨ケス
訴状送達ノ後ニ在リテハ取下ノ書面ハ之ヲ相手方ニ送達スルコトヲ要ス
第二百三十七条 訴訟ハ訴ノ取下アリタル部分ニ付テハ初ヨリ繋属ナカリシモノト看做ス
本案ニ付終局判決アリタル後訴ヲ取下ケタル者ハ同一ノ訴ヲ提起スルコトヲ得ス
第二百三十八条 当事者双方カ口頭弁論ノ期日ニ出頭セス又ハ弁論ヲ為サスシテ退廷シタル場合ニ於テ三月内ニ期日指定ノ申立ヲ為ササルトキハ訴ノ取下アリタルモノト看做ス
第二百三十九条 被告ハ口頭弁論ノ終結ニ至ル迄本訴ノ繋属スル裁判所ニ反訴ヲ提起スルコトヲ得但シ其ノ目的タル請求カ他ノ裁判所ノ管轄ニ専属セサルトキ及本訴ノ目的タル請求又ハ防禦ノ方法ト牽連スルトキニ限ル
第二百四十条 反訴ニ付テハ本訴ニ関スル規定ニ依ル
第二百四十一条 本訴ノ取下アリタルトキハ被告ハ原告ノ同意ヲ得スシテ反訴ヲ取下クルコトヲ得
第二節 弁論ノ準備
第二百四十二条 口頭弁論ハ書面ヲ以テ之ヲ準備スルコトヲ要ス
第二百四十三条 準備書面ハ之ニ記載シタル事項ニ付相手方カ準備ヲ為スニ必要ナル期間ヲ存シ之ヲ裁判所ニ提出シ裁判所ハ之ヲ相手方ニ送達スルコトヲ要ス
裁判長ハ準備書面ヲ提出スヘキ期間ヲ定ムルコトヲ得
第二百四十四条 準備書面ニハ左ノ事項ヲ記載シ当事者又ハ代理人之ニ署名捺印スルコトヲ要ス
一 当事者ノ氏名、名称又ハ商号、職業及住所
二 代理人ノ氏名、職業及住所
三 事件ノ表示
四 攻撃又ハ防禦ノ方法
五 相手方ノ請求及攻撃又ハ防禦ノ方法ニ対スル陳述
六 附属書類ノ表示
七 年月日
八 裁判所ノ表示
第二百四十五条 当事者ノ所持スル文書ニシテ準備書面ニ引用シタルモノハ準備書面ノ各通ニ其ノ謄本ヲ添附スルコトヲ要ス
文書ノ一部ノミヲ必要トスルトキハ其ノ抄本ヲ添附シ文書カ大部ナルトキハ其ノ文書ヲ表示スルヲ以テ足ル
第二百四十六条 前条ノ文書ハ相手方ノ求ニ因リ其ノ原本ヲ閲覧セシムルコトヲ要ス
第二百四十七条 準備書面ニ記載セサル事実ハ相手方カ在廷セサルトキハ口頭弁論ニ於テ之ヲ主張スルコトヲ得ス
第二百四十八条 外国語ヲ以テ作リタル文書ニハ其ノ訳文ヲ添附スルコトヲ要ス
第二百四十九条 訴訟ニ付テハ受命判事ニ依リ口頭弁論ノ準備手続ヲ為スコトヲ要ス但シ裁判所相当ト認ムルトキハ直ニ弁論ヲ命シ又ハ訴訟ノ一部若ハ或争点ノミニ付準備手続ヲ命スルコトヲ得
第二百五十条 準備手続ニ於テハ調書ヲ作リ当事者ノ陳述ニ基キ第二百四十四条第四号及第五号ニ掲クル事項ヲ記載シ殊ニ証拠ニ付テハ其ノ申出ヲ明確ニスルコトヲ要ス
受命判事相当ト認ムルトキハ準備書面ヲ以テ前項ノ陳述及調書ニ代フルコトヲ得
第二百五十一条 当事者ノ一方カ期日ニ出頭セサルトキハ前条ノ調書ノ謄本ヲ之ニ送達シ新期日ヲ定メ当事者双方ヲ呼出スコトヲ得
第二百五十二条 受命判事ハ当事者ヲシテ準備書面ヲ提出セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ第二百四十三条ノ規定ヲ準用ス
第二百五十三条 当事者カ期日ニ出頭セス又ハ前条ノ規定ニ依リ受命判事ノ定メタル期間内ニ準備書面ヲ提出セサルトキハ受命判事ハ準備手続ヲ終結スルコトヲ得
第二百五十四条 当事者ハ口頭弁論ニ於テ準備手続ノ結果ヲ陳述スルコトヲ要ス
第二百五十五条 調書又ハ之ニ代ルヘキ準備書面ニ記載セサル事項ハ口頭弁論ニ於テ之ヲ主張スルコトヲ得ス但シ其ノ事項カ裁判所職権ヲ以テ調査スヘキモノナルトキ、著ク訴訟ヲ遅滞セシメサルトキ又ハ重大ナル過失ナクシテ準備手続ニ於テ之ヲ提出スルコト能ハサリシコトヲ疏明シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項但書ノ規定ハ第二百四十七条ノ規定ノ適用ヲ妨ケス
訴状又ハ準備手続前ニ提出シタル準備書面ニ記載シタル事項ハ調書又ハ之ニ代ルヘキ準備書面ニ記載セサルモノト雖口頭弁論ニ於テ之ヲ主張スルコトヲ妨ケス
第二百五十六条 第百二十六条乃至第百二十九条、第百三十一条、第百三十三条乃至第百四十一条及第二百三十八条ノ規定ハ準備手続ニ之ヲ準用ス
第三節 証拠
第一款 総則
第二百五十七条 裁判所ニ於テ当事者カ自白シタル事実及顕著ナル事実ハ之ヲ証スルコトヲ要セス
第二百五十八条 証拠ノ申出ハ証スヘキ事実ヲ表示シテ之ヲ為スコトヲ要ス
証拠ノ申出ハ期日前ニ於テモ之ヲ為スコトヲ得
第二百五十九条 当事者ノ申出テタル証拠ニシテ裁判所ニ於テ不必要ト認ムルモノハ之ヲ取調フルコトヲ要セス
第二百六十条 証拠調ニ付不定期間ノ障碍アルトキハ裁判所ハ証拠調ヲ為ササルコトヲ得
第二百六十一条 裁判所ハ当事者ノ申出テタル証拠ニ依リテ心証ヲ得ルコト能ハサルトキ其ノ他必要アリト認ムルトキハ職権ヲ以テ証拠調ヲ為スコトヲ得
第二百六十二条 裁判所ハ必要ナル調査ヲ官庁若ハ公署、外国ノ官庁若ハ公署又ハ学校、商業会議所、取引所其ノ他ノ団体ニ嘱託スルコトヲ得
第二百六十三条 証拠調ハ当事者カ期日ニ出頭セサル場合ニ於テモ之ヲ為スコトヲ得
第二百六十四条 外国ニ於テ為スヘキ証拠調ハ其ノ国ノ管轄官庁又ハ其ノ国ニ駐在スル日本ノ大使、公使若ハ領事ニ之ヲ嘱託シテ為スコトヲ要ス
外国ニ於テ為シタル証拠調ハ其ノ国ノ法律ニ違背スルモ本法ニ違背セサルトキハ其ノ効力ヲ有ス
第二百六十五条 裁判所ハ相当ト認ムルトキハ裁判所外ニ於テ証拠調ヲ為スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ部員ニ命シ又ハ区裁判所ニ嘱託シテ証拠調ヲ為サシムルコトヲ得
受託判事カ他ノ区裁判所ニ於テ証拠調ヲ為スコトヲ相当ト認ムルトキハ更ニ証拠調ノ嘱託ヲ為スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ旨ヲ受訴裁判所及当事者ニ通知スルコトヲ要ス
第二百六十六条 受託判事ハ証拠調ニ関スル記録ヲ受訴裁判所ニ送付スルコトヲ要ス
第二百六十七条 疏明ハ即時ニ取調フルコトヲ得ヘキ証拠ニ依リテ之ヲ為スコトヲ要ス
裁判所ハ当事者若ハ法定代理人ヲシテ保証金ヲ供託セシメ又ハ其ノ主張ノ真実ナルコトヲ宣誓セシメ之ヲ以テ疏明ニ代フルコトヲ得
第二百八十六条乃至第二百八十九条ノ規定ハ前項ノ宣誓ニ之ヲ準用ス
第二百六十八条 前条第二項ノ規定ニ依リテ保証金ノ供託ヲ為シタル当事者又ハ法定代理人カ虚偽ノ申述ヲ為シタルトキハ裁判所決定ヲ以テ保証金ヲ没取ス
第二百六十九条 第二百六十七条第二項ノ規定ニ依リテ宣誓ヲ為シタル当事者又ハ法定代理人カ虚偽ノ申述ヲ為シタルトキハ宣誓ヲ為サシメタル裁判所決定ヲ以テ五百円以下ノ過料ニ処ス
第二百七十条 第二百六十八条及前条ノ決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第二款 証人訊問
第二百七十一条 裁判所ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外何人ト雖証人トシテ之ヲ訊問スルコトヲ得
第二百七十二条 官吏又ハ官吏タリシ者ヲ証人トシテ職務上ノ秘密ニ付訊問スル場合ニ於テハ裁判所ハ当該監督官庁ノ承認ヲ得ルコトヲ要ス
前項ノ規定ハ他ノ公務員ニ付之ヲ準用ス
第二百七十三条 国務大臣、宮内大臣、内大臣、枢密院議長、枢密院副議長、枢密顧問官、会計検査院長、元帥、参謀総長、海軍軍令部長、教育総監若ハ軍事参議官又ハ此等ノ職ニ在リタル者ヲ証人トシテ職務上ノ秘密ニ付訊問スル場合ニ於テハ裁判所ハ勅許ヲ得ルコトヲ要ス
第二百七十四条 貴族院若ハ衆議院ノ議員又ハ議員タリシ者ヲ証人トシテ職務上ノ秘密ニ付訊問スル場合ニ於テハ裁判所ハ其ノ院ノ承認ヲ得ルコトヲ要ス
第二百七十五条 証人訊問ノ申出ハ証人ヲ指定シテ之ヲ為スコトヲ要ス
第二百七十六条 証人ノ呼出状ニハ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス
一 当事者ノ表示
二 訊問事項ノ要領
三 出頭セサル場合ニ於ケル法律上ノ制裁
第二百七十七条 証人カ正当ノ事由ナクシテ出頭セサルトキハ裁判所ハ決定ヲ以テ之ニ因リテ生シタル訴訟費用ノ負担ヲ命シ且五百円以下ノ過料ニ処ス此ノ決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第二百七十八条 裁判所ハ正当ノ事由ナクシテ出頭セサル証人ノ勾引ヲ命スルコトヲ得
前項ノ勾引ニハ刑事訴訟法中勾引ニ関スル規定ヲ準用ス
第二百七十九条 左ノ場合ニ於テハ受命判事又ハ受託判事ヲシテ証人ノ訊問ヲ為サシムルコトヲ得
一 証人カ受訴裁判所ニ出頭スル義務ナキトキ又ハ正当ノ事由ニ因リ出頭スルコト能ハサルトキ
二 証人カ受訴裁判所ニ出頭スルニ付不相当ノ費用又ハ時間ヲ要スルトキ
第二百八十条 証言カ証人又ハ左ニ掲クル者ノ刑事上ノ訴追又ハ処罰ヲ招ク虞アル事項ニ関スルトキハ証人ハ証言ヲ拒ムコトヲ得証言カ此等ノ者ノ恥辱ニ帰スヘキ事項ニ関スルトキ亦同シ
一 証人ノ配偶者、四親等内ノ血族若ハ三親等内ノ姻族又ハ証人ノ家ノ戸主但シ親族ニ付テハ親族関係カ止ミタル後亦同シ
二 証人ノ後見人又ハ証人ノ後見ヲ受クル者
三 証人カ主人トシテ仕フル者
第二百八十一条 左ノ場合ニ於テハ証人ハ証言ヲ拒ムコトヲ得
一 第二百七十二条乃至第二百七十四条ノ場合
二 医師、歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士、弁護人、公証人、宗教又ハ禱祀ノ職ニ在ル者又ハ此等ノ職ニ在リタル者カ職務上知リタル事実ニシテ黙秘スヘキモノニ付訊問ヲ受クルトキ
三 技術又ハ職業ノ秘密ニ関スル事項ニ付訊問ヲ受クルトキ
前項ノ規定ハ証人カ黙秘ノ義務ヲ免セラレタル場合ニハ之ヲ適用セス
第二百八十二条 証言拒絶ノ理由ハ之ヲ疏明スルコトヲ要ス
第二百八十三条 第二百八十一条第一項第一号ノ場合ヲ除クノ外証言拒絶ノ当否ニ付テハ受訴裁判所当事者ヲ審訊シテ裁判ヲ為ス
証言拒絶ニ関スル裁判ニ対シテハ当事者及証人ハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第二百八十四条 証言拒絶ヲ理由ナシトスル裁判確定シタル後証人カ故ナク証言ヲ拒ムトキハ第二百七十七条ノ規定ヲ準用ス
第二百八十五条 裁判長ハ証人ヲシテ訊問前宣誓ヲ為サシムルコトヲ要ス但シ特別ノ事由アルトキハ訊問後之ヲ為サシムルコトヲ得
第二百八十六条 宣誓ハ起立シテ厳粛ニ之ヲ行フコトヲ要ス
第二百八十七条 裁判長ハ宣誓前宣誓ノ趣旨ヲ諭示シ且偽証ノ罰ヲ警告スルコトヲ要ス
第二百八十八条 宣誓ハ証人ヲシテ宣誓書ヲ朗読セシメ且之ニ署名捺印セシメテ之ヲ為ス証人宣誓書ヲ朗読スルコト能ハサルトキハ裁判長代リテ之ヲ朗読ス
宣誓書ニハ良心ニ従ヒ真実ヲ述ヘ何事ヲモ黙秘セス又何事ヲモ附加セサルコトヲ誓フ旨ヲ記載スルコトヲ要ス
第二百八十九条 左ニ掲クル者ヲ証人トシテ訊問スルニハ宣誓ヲ為サシムルコトヲ得ス
一 十六年未満ノ者
二 宣誓ノ趣旨ヲ理解スルコト能ハサル者
第二百九十条 第二百八十条ノ規定ニ該当スル証人ニシテ証言拒絶ノ権利ヲ行ハサル者ヲ訊問スルニハ宣誓ヲ為サシメサルコトヲ得
第二百九十一条 証人カ自己又ハ第二百八十条ニ掲クル者ニ著キ利害関係アル事項ニ付訊問ヲ受クルトキハ宣誓ヲ拒ムコトヲ得
第二百九十二条 宣誓ヲ為サシメスシテ証人ヲ訊問シタルトキハ其ノ旨及事由ヲ調書ニ記載スルコトヲ要ス
第二百九十三条 第二百七十七条、第二百八十二条及第二百八十三条ノ規定ハ証人カ宣誓ヲ拒ム場合ニ之ヲ準用ス
第二百九十四条 裁判長ハ必要アリト認ムルトキハ証人相互ノ対質ヲ命スルコトヲ得
第二百九十五条 裁判長ハ必要アリト認ムルトキハ証人ヲシテ文字ノ手記其ノ他必要ナル行為ヲ為サシムルコトヲ得
第二百九十六条 裁判長ハ必要アリト認ムルトキハ後ニ訊問スヘキ証人ニ在廷ヲ許スコトヲ得
第二百九十七条 証人ハ書類ニ依リテ陳述ヲ為スコトヲ得ス但シ裁判長ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第二百九十八条 陪席判事ハ裁判長ニ告ケ証人ニ対シテ問ヲ発スルコトヲ得
第二百九十九条 当事者ハ裁判長ニ対シ必要ナル発問ヲ求メ又ハ其ノ許可ヲ得テ問ヲ発スルコトヲ得
当事者ハ発問ノ許否ニ付異議ヲ述フルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ裁判所異議ニ付裁判ヲ為ス
第三百条 受命判事又ハ受託判事カ証人訊問ヲ為ス場合ニ於テハ裁判所及裁判長ノ職務ハ其ノ判事之ヲ行フ但シ前条第二項ノ規定ニ依ル異議ノ裁判ハ受訴裁判所之ヲ為ス
第三款 鑑定
第三百一条 鑑定ニハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外前款ノ規定ヲ準用ス
第三百二条 鑑定ニ必要ナル学識経験アル者ハ鑑定ヲ為ス義務ヲ負フ
第二百八十条又ハ第二百九十一条ノ規定ニ依リテ証言又ハ宣誓ヲ拒ミ得ル者ト同一ノ地位ニ在ル者及第二百八十九条ニ掲クル者ハ鑑定人タルコトヲ得ス
第三百三条 鑑定人ハ之ヲ勾引スルコトヲ得ス
第三百四条 鑑定人ハ受訴裁判所、受命判事又ハ受託判事之ヲ指定ス
第三百五条 鑑定人ニ付誠実ニ鑑定ヲ為スコトヲ妨クヘキ事情アルトキハ当事者ハ其ノ鑑定人カ鑑定事項ニ付陳述ヲ為ス前之ヲ忌避スルコトヲ得陳述ヲ為シタルトキト雖其ノ後ニ忌避ノ原因ヲ生シ又ハ当事者カ其ノ原因アルコトヲ知リタルトキ亦同シ
第三百六条 忌避ノ申立ハ受訴裁判所、受命判事又ハ受託判事ニ之ヲ為スコトヲ要ス
忌避ノ事由ハ之ヲ疏明スルコトヲ要ス
忌避ヲ理由アリトスル決定ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス之ヲ理由ナシトスル決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第三百七条 宣誓書ニハ良心ニ従ヒ誠実ニ鑑定ヲ為スコトヲ誓フ旨ヲ記載スルコトヲ要ス
第三百八条 裁判長ハ鑑定人ヲシテ書面又ハ口頭ヲ以テ共同ニテ又ハ各別ニ意見ヲ述ヘシムルコトヲ得
第三百九条 特別ノ学識経験ニ依リテ知リ得タル事実ニ関スル訊問ニ付テハ証人訊問ニ関スル規定ニ依ル
第三百十条 裁判所必要アリト認ムルトキハ官庁若ハ公署、外国ノ官庁若ハ公署又ハ相当ノ設備アル法人ニ鑑定ヲ嘱託スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ宣誓ニ関スル規定ヲ除クノ外本款ノ規定ヲ準用ス
前項ノ場合ニ於テ裁判所必要アリト認ムルトキハ官庁、公署又ハ法人ノ指定シタル者ヲシテ鑑定書ノ説明ヲ為サシムルコトヲ得
第四款 書証
第三百十一条 書証ノ申出ハ文書ヲ提出シ又ハ之ヲ所持スル者ニ其ノ提出ヲ命セムコトヲ申立テ之ヲ為スコトヲ要ス
第三百十二条 左ノ場合ニ於テハ文書ノ所持者ハ其ノ提出ヲ拒ムコトヲ得ス
一 当事者カ訴訟ニ於テ引用シタル文書ヲ自ラ所持スルトキ
二 挙証者カ文書ノ所持者ニ対シ其ノ引渡又ハ閲覧ヲ求ムルコトヲ得ルトキ
三 文書カ挙証者ノ利益ノ為ニ作成セラレ又ハ挙証者ト文書ノ所持者トノ間ノ法律関係ニ付作成セラレタルトキ
第三百十三条 文書提出ノ申立ニハ左ノ事項ヲ明ニスルコトヲ要ス
一 文書ノ表示
二 文書ノ趣旨
三 文書ノ所持者
四 証スヘキ事実
五 文書提出ノ義務ノ原因
第三百十四条 裁判所カ文書提出ノ申立ヲ理由アリト認メタルトキハ決定ヲ以テ文書ノ所持者ニ対シ其ノ提出ヲ命ス
第三者ニ対シ文書ノ提出ヲ命スル場合ニ於テハ其ノ第三者ヲ審訊スルコトヲ要ス
第三百十五条 文書提出ノ申立ニ関スル決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第三百十六条 当事者カ文書提出ノ命ニ従ハサルトキハ裁判所ハ文書ニ関スル相手方ノ主張ヲ真実ト認ムルコトヲ得
第三百十七条 当事者カ相手方ノ使用ヲ妨クル目的ヲ以テ提出ノ義務アル文書ヲ毀滅シ其ノ他之ヲ使用スルコト能ハサルニ至ラシメタルトキハ裁判所ハ其ノ文書ニ関スル相手方ノ主張ヲ真実ト認ムルコトヲ得
第三百十八条 第三者カ文書提出ノ命ニ従ハサルトキハ裁判所ハ決定ヲ以テ五百円以下ノ過料ニ処ス此ノ決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第三百十九条 書証ノ申出ハ第三百十一条ノ規定ニ拘ラス文書ノ所持者ニ其ノ文書ノ送付ヲ嘱託セムコトヲ申立テ之ヲ為スコトヲ得但シ当事者カ法令ニ依リテ文書ノ正本又ハ謄本ノ交付ヲ求ムルコトヲ得ル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第三百二十条 裁判所ハ必要アリト認ムルトキハ提出又ハ送付ニ係ル文書ヲ留置クコトヲ得
第三百二十一条 第二百六十五条ノ規定ニ依リテ受命判事又ハ受託判事ヲシテ文書ニ付証拠調ヲ為サシムル場合ニ於テハ裁判所ハ受命判事又ハ受託判事ノ調書ニ記載スヘキ事項ヲ定ムルコトヲ得
前項ノ調書ニハ文書ノ謄本又ハ抄本ヲ添附スルコトヲ要ス
第三百二十二条 文書ノ提出又ハ送付ハ原本、正本又ハ認証アル謄本ヲ以テ之ヲ為スコトヲ要ス
裁判所ハ前項ノ規定ニ拘ラス原本ノ提出ヲ命シ又ハ送付ヲ為サシムルコトヲ得
裁判所ハ当事者ヲシテ其ノ引用シタル文書ノ謄本又ハ抄本ヲ提出セシムルコトヲ得
第三百二十三条 文書ハ其ノ方式及趣旨ニ依リ官吏其ノ他ノ公務員カ職務上作成シタルモノト認ムヘキトキハ之ヲ真正ナル公文書ト推定ス
公文書ノ真否ニ付疑アルトキハ裁判所ハ職権ヲ以テ当該官庁又ハ公署ニ問合ヲ為スコトヲ得
第三百二十四条 前条ノ規定ハ外国ノ官庁又ハ公署ノ作成ニ係ルモノト認ムヘキ文書ニ之ヲ準用ス
第三百二十五条 私文書ハ其ノ真正ナルコトヲ証スルコトヲ要ス
第三百二十六条 私文書ハ本人又ハ其ノ代理人ノ署名又ハ捺印アルトキハ之ヲ真正ナルモノト推定ス
第三百二十七条 文書ノ真否ハ筆跡又ハ印影ノ対照ニ依リテモ之ヲ証スルコトヲ得
第三百二十八条 第三百十一条、第三百十四条乃至第三百十七条及第三百十九条乃至第三百二十一条ノ規定ハ対照ノ用ニ供スヘキ筆跡又ハ印影ヲ具フル文書其ノ他ノ物件ノ提出又ハ送付ニ之ヲ準用ス
第三者カ正当ノ事由ナクシテ前項ノ規定ニ依ル提出ノ命ニ従ハサルトキハ裁判所ハ決定ヲ以テ五百円以下ノ過料ニ処ス此ノ決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第三百二十九条 対照ニ適当ナル筆跡ナキトキハ裁判所ハ対照ノ用ニ供スヘキ文字ノ手記ヲ相手方ニ命スルコトヲ得
相手方カ正当ノ事由ナクシテ前項ノ規定ニ依ル裁判所ノ命ニ従ハサルトキハ裁判所ハ文書ノ真否ニ関スル挙証者ノ主張ヲ真実ト認ムルコトヲ得書様ヲ変シテ手記シタルトキ亦同シ
第三百三十条 対照ノ用ニ供シタル書類ノ原本、謄本又ハ抄本ハ之ヲ調書ニ添附スルコトヲ要ス
第三百三十一条 当事者又ハ其ノ代理人カ故意又ハ重大ナル過失ニ因リ真実ニ反シテ文書ノ真正ヲ争ヒタルトキハ裁判所決定ヲ以テ五百円以下ノ過料ニ処ス此ノ決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ文書ノ真正ヲ争ヒタル当事者又ハ代理人カ訴訟ノ繋属中其ノ真正ナルコトヲ認メタルトキハ裁判所ハ事情ニ依リ前項ノ決定ヲ取消スコトヲ得
第三百三十二条 本款ノ規定ハ証徴ノ為作リタル物件ニシテ文書ニ非サルモノニ之ヲ準用ス
第五款 検証
第三百三十三条 検証ノ申出ハ検証ノ目的ヲ表示シテ之ヲ為スコトヲ要ス
第三百三十四条 受命判事又ハ受託判事ハ検証ヲ為スニ当リ必要アリト認ムルトキハ鑑定ヲ命スルコトヲ得
第三百三十五条 第三百十一条、第三百十四条乃至第三百十七条及第三百十九条乃至第三百二十一条ノ規定ハ検証ノ目的ノ提示又ハ送付ニ之ヲ準用ス
第三者カ正当ノ事由ナクシテ前項ノ規定ニ依ル提示ノ命ニ従ハサルトキハ裁判所ハ決定ヲ以テ五百円以下ノ過料ニ処ス此ノ決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第六款 当事者訊問
第三百三十六条 裁判所カ証拠調ニ依リテ心証ヲ得ルコト能ハサルトキハ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ当事者本人ヲ訊問スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ当事者ヲシテ宣誓ヲ為サシムルコトヲ得
第三百三十七条 裁判長必要アリト認ムルトキハ当事者相互又ハ当事者ト証人トノ対質ヲ命スルコトヲ得
第三百三十八条 当事者カ正当ノ事由ナクシテ呼出ニ応セス又ハ宣誓若ハ陳述ヲ拒ミタルトキハ裁判所ハ訊問事項ニ関スル相手方ノ主張ヲ真実ト認ムルコトヲ得
第三百三十九条 宣誓シタル当事者カ虚偽ノ陳述ヲ為シタルトキハ裁判所決定ヲ以テ五百円以下ノ過料ニ処ス此ノ決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第三百三十一条第二項ノ規定ハ前項ノ決定ニ之ヲ準用ス
第三百四十条 当事者ヲ訊問シタルトキハ其ノ陳述及宣誓ヲ為サシメ又ハ為サシメサルコトヲ調書ニ記載スルコトヲ要ス
第三百四十一条 第三百三十六条乃至前条ノ規定ハ訴訟ニ於テ当事者ヲ代表スル法定代理人ニ之ヲ準用ス但シ当事者本人ヲ訊問スルコトヲ妨ケス
第三百四十二条 第二百七十六条、第二百七十九条、第二百八十五条乃至第二百八十九条、第二百九十五条及第二百九十七条乃至第三百条ノ規定ハ本款ノ訊問ニ之ヲ準用ス
第七款 証拠保全
第三百四十三条 裁判所ハ予メ証拠調ヲ為スニ非サレハ其ノ証拠ヲ使用スルニ困難ナル事情アリト認ムルトキハ申立ニ因リ本節ノ規定ニ従ヒ証拠調ヲ為スコトヲ得
第三百四十四条 証拠保全ノ申立ハ訴訟ノ繋属中ニ在リテハ其ノ証拠ヲ使用スヘキ審級ノ裁判所ニ、其ノ提起前ニ在リテハ訊問ヲ受クヘキ者若ハ文書ヲ所持スル者ノ居所又ハ検証物ノ所在地ヲ管轄スル区裁判所ニ之ヲ為スコトヲ要ス
急迫ナル場合ニ於テハ訴ノ提起後ト雖前項ノ区裁判所ニ証拠保全ノ申立ヲ為スコトヲ得
第三百四十五条 証拠保全ノ申立ニハ左ノ事項ヲ明ニスルコトヲ要ス
一 相手方ノ表示
二 証スヘキ事実
三 証拠
四 証拠保全ノ事由
証拠保全ノ事由ハ之ヲ疏明スルコトヲ要ス
第三百四十六条 証拠保全ノ申立ハ相手方ヲ指定スルコト能ハサル場合ニ於テモ之ヲ為スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ裁判所ハ相手方ト為ルヘキ者ノ為ニ特別代理人ヲ選任スルコトヲ得
第三百四十七条 裁判所ハ必要アリト認ムルトキハ訴訟ノ繋属中職権ヲ以テ証拠保全ノ決定ヲ為スコトヲ得
第三百四十八条 証拠保全ノ決定ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第三百四十九条 証拠調ノ期日ニハ申立人及相手方ヲ呼出スコトヲ要ス但シ急速ヲ要スル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第三百五十条 証拠保全ニ関スル記録ハ本訴訟ノ記録ノ存スル裁判所ニ之ヲ送付スルコトヲ要ス
第三百五十一条 証拠保全ニ関スル費用ハ訴訟費用ノ一部トス
第二章 区裁判所ノ訴訟手続
第三百五十二条 区裁判所ノ訴訟手続ニハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外前章ノ規定ヲ準用ス
第三百五十三条 訴ハ口頭ヲ以テ之ヲ提起スルコトヲ得
第三百五十四条 当事者双方ハ任意ニ裁判所ニ出頭シ訴訟ニ付口頭弁論ヲ為スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ訴ノ提起ハ口頭ノ陳述ニ依リテ之ヲ為ス
第三百五十五条 被告カ反訴ヲ以テ地方裁判所ノ管轄ニ属スル請求ヲ為シタル場合ニ於テ相手方ノ申立アルトキハ区裁判所ハ決定ヲ以テ本訴及反訴ヲ地方裁判所ニ移送スルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ第三十二条及第三十四条ノ規定ヲ準用ス
移送ノ決定ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第三百五十六条 民事上ノ争ニ付テハ当事者ハ請求ノ趣旨及原因並争ノ実情ヲ表示シテ相手方ノ普通裁判籍所在地ノ区裁判所ニ和解ノ申立ヲ為スコトヲ得
和解調ヒタルトキハ之ヲ調書ニ記載スルコトヲ要ス
和解調ハサル場合ニ於テ裁判所ハ和解ノ期日ニ出頭シタル当事者双方ノ申立アルトキハ直ニ訴訟ノ弁論ヲ命ス此ノ場合ニ於テハ和解ノ申立ヲ為シタル者ハ其ノ申立ヲ為シタル時ニ於テ訴ヲ提起シタルモノト看做シ和解ノ費用ハ之ヲ訴訟費用ノ一部トス
申立人又ハ相手方カ和解ノ期日ニ出頭セサルトキハ裁判所ハ和解調ハサルモノト看做スコトヲ得
第三百五十七条 口頭弁論ハ書面ヲ以テ之ヲ準備スルコトヲ要セス
相手方カ準備ヲ為スニ非サレハ陳述ヲ為スコト能ハスト認ムヘキ事項ハ前項ノ規定ニ拘ラス書面ヲ以テ之ヲ準備スルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ準備書面ノ提出ニ代ヘ口頭弁論前直接ニ相手方ニ其ノ事項ヲ通知スルコトヲ得
第二百四十七条ノ規定ハ前項ノ通知ヲ為ササル場合ニ之ヲ準用ス
第三百五十八条 準備手続ニ関スル規定ハ区裁判所ノ訴訟手続ニ之ヲ適用セス
第三百五十九条 判決ニ事実及理由ヲ記載スルニハ請求ノ趣旨及原因ノ要旨、其ノ原因ノ有無並請求ヲ排斥スル理由タル抗弁ノ要旨ヲ表示スルヲ以テ足ル
第三編 上訴
第一章 控訴
第三百六十条 控訴ハ第一審ノ終局判決ニ対シテ之ヲ為スコトヲ得但シ当事者双方共ニ控訴ヲ為ササル旨ノ合意ヲ為シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ合意ハ上告ヲ為ス権利ヲ留保シテ之ヲ為スコトヲ得
第二十五条第二項ノ規定ハ第一項ノ合意ニ之ヲ準用ス
第三百六十一条 訴訟費用ノ裁判ニ対シテハ独立シテ控訴ヲ為スコトヲ得ス
第三百六十二条 終局判決前ノ裁判ハ控訴裁判所ノ判断ヲ受ク但シ不服ヲ申立ツルコトヲ得サル裁判及抗告ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトヲ得ル裁判ハ此ノ限ニ在ラス
第三百六十三条 控訴ハ控訴審ノ終局判決アル迄之ヲ取下クルコトヲ得
第二百三十六条第二項第三項、第二百三十七条第一項及第二百三十八条ノ規定ハ控訴ノ取下ニ之ヲ準用ス
第三百六十四条 控訴ヲ為ス権利ハ之ヲ抛棄スルコトヲ得
第三百六十五条 控訴権ノ抛棄ハ控訴提起前ニ在リテハ第一審裁判所、控訴提起後ニ在リテハ控訴裁判所ニ対スル申述ニ依リテ之ヲ為スコトヲ要ス
控訴提起後ノ控訴権ノ抛棄ハ控訴ノ取下ト共ニ之ヲ為スコトヲ要ス
控訴権抛棄ノ書面ハ之ヲ相手方ニ送達スルコトヲ要ス
第三百六十六条 控訴ハ判決ノ送達アリタル日ヨリ二週間内ニ之ヲ提起スルコトヲ要ス但シ其ノ期間前提起シタル控訴ノ効力ヲ妨ケス
前項ノ期間ハ之ヲ不変期間トス
第三百六十七条 控訴ノ提起ハ控訴状ヲ第一審裁判所又ハ控訴裁判所ニ提出シテ之ヲ為スコトヲ要ス
控訴状ニハ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス
一 当事者及法定代理人
二 第一審判決ノ表示及其ノ判決ニ対シ控訴ヲ為ス旨
第三百六十八条 準備書面ニ関スル規定ハ控訴状ニ之ヲ準用ス
第三百六十九条 第一審裁判所ニ控訴状ノ提出アリタルトキハ裁判所書記ハ訴訟記録ニ控訴状ヲ添附シテ遅滞ナク之ヲ控訴裁判所ノ書記ニ送付スルコトヲ要ス
控訴裁判所ニ控訴状ノ提出アリタルトキハ裁判所書記ハ遅滞ナク第一審裁判所ノ書記ニ訴訟記録ノ送付ヲ求ムルコトヲ要ス
第三百七十条 第二百二十八条ノ規定ハ控訴状カ第三百六十七条第二項ノ規定ニ違背スル場合、法律ノ規定ニ従ヒ控訴状ニ印紙ヲ貼用セサル場合及控訴状ノ送達ヲ為スコト能ハサル場合ニ之ヲ準用ス
第三百七十一条 控訴状ハ之ヲ被控訴人ニ送達スルコトヲ要ス
第三百七十二条 被控訴人ハ控訴権消滅ノ後ト雖口頭弁論ノ終結ニ至ル迄附帯控訴ヲ為スコトヲ得
第三百七十三条 附帯控訴ハ控訴ノ取下アリタルトキ又ハ不適法トシテ控訴ノ棄却アリタルトキハ其ノ効力ヲ失フ但シ控訴ノ要件ヲ具備スルモノハ之ヲ独立ノ控訴ト看做ス
第三百七十四条 附帯控訴ニ付テハ控訴ニ関スル規定ニ依ル
第三百七十五条 控訴裁判所ハ第一審ノ判決ニ付不服ノ申立ナキ部分ニ限リ申立ニ因リ決定ヲ以テ仮執行ノ宣言ヲ為スコトヲ得
第三百七十六条 仮執行ニ関スル控訴審ノ裁判ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
前条ノ申立ヲ却下スル決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第三百七十七条 口頭弁論ハ当事者カ第一審ノ判決ノ変更ヲ求ムル限度ニ於テノミ之ヲ為ス
当事者ハ第一審ニ於ケル口頭弁論ノ結果ヲ陳述スルコトヲ要ス
第三百七十八条 前編第一章ノ規定ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外控訴審ノ訴訟手続ニ之ヲ準用ス
第三百七十九条 第一審ニ於テ為シタル訴訟行為ハ控訴審ニ於テモ其ノ効力ヲ有ス
第三百八十条 第一審ニ於テ為シタル準備手続ハ控訴審ニ於テモ其ノ効力ヲ有ス
第三百八十一条 控訴審ニ於テハ当事者ハ第一審裁判所カ管轄権ヲ有セサルコトヲ主張スルコトヲ得ス但シ専属管轄ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第三百八十二条 反訴ハ相手方ノ同意アル場合ニ限リ之ヲ提起スルコトヲ得
相手方カ異議ヲ述ヘスシテ反訴ノ本案ニ付弁論ヲ為シタルトキハ反訴ノ提起ニ同意シタルモノト看做ス
第三百八十三条 不適法ナル控訴ニシテ其ノ欠欠カ補正スルコト能ハサルモノナル場合ニ於テハ口頭弁論ヲ経スシテ判決ヲ以テ之ヲ却下スルコトヲ得
第三百八十四条 控訴裁判所ハ第一審判決ヲ相当トスルトキハ控訴ヲ棄却スルコトヲ要ス
判決カ其ノ理由ニ依レハ不当ナル場合ニ於テモ他ノ理由ニ依リテ正当ナルトキハ控訴ヲ棄却スルコトヲ要ス
第三百八十五条 第一審判決ノ変更ハ不服申立ノ限度ニ於テノミ之ヲ為スコトヲ得
第三百八十六条 控訴裁判所ハ第一審判決ヲ不当トスルトキハ之ヲ取消スコトヲ要ス
第三百八十七条 第一審ノ判決ノ手続カ法律ニ違背シタルトキハ控訴裁判所ハ判決ヲ取消スコトヲ要ス
第三百八十八条 訴ヲ不適法トシテ却下シタル第一審判決ヲ取消ス場合ニ於テハ控訴裁判所ハ事件ヲ第一審裁判所ニ差戻スコトヲ要ス
第三百八十九条 前条ノ場合ノ外控訴裁判所カ第一審判決ヲ取消ス場合ニ於テ事件ニ付尚弁論ヲ為ス必要アルトキハ之ヲ第一審裁判所ニ差戻スコトヲ得
第一審裁判所ニ於ケル訴訟手続カ法律ニ違背シタルコトヲ理由トシテ事件ヲ差戻ストキハ其ノ訴訟手続ハ之ニ因リテ取消サレタルモノト看做ス
第三百九十条 事件カ管轄違ナルコトヲ理由トシテ第一審判決ヲ取消ストキハ控訴裁判所ハ判決ヲ以テ事件ヲ管轄裁判所ニ移送スルコトヲ要ス
第三百九十一条 判決ニ事実及理由ヲ記載スルニハ第一審判決ヲ引用スルコトヲ得
第三百九十二条 訴訟完結シタル後上訴ノ提起ナクシテ上訴期間満了シタルトキハ裁判所書記ハ判決又ハ第三百七十条ノ規定ニ依ル命令ノ正本ヲ訴訟記録ニ添附シ之ヲ第一審裁判所ノ書記ニ送付スルコトヲ要ス
第二章 上告
第三百九十三条 上告ハ控訴審ノ終局判決ニ対シテ之ヲ為スコトヲ得
第三百六十条第二項ノ場合ニ於テハ第一審判決ニ対シ直ニ上告ヲ為スコトヲ得
第三百九十四条 上告ハ判決カ法令ニ違背シタルコトヲ理由トスルトキニ限リ之ヲ為スコトヲ得
第三百九十五条 判決ハ左ノ場合ニ於テハ常ニ法令ニ違背シタルモノトス
一 法律ニ従ヒテ判決裁判所ヲ構成セサリシトキ
二 法律ニ依リ判決ニ関与スルコトヲ得サル判事カ判決ニ関与シタルトキ
三 専属管轄ニ関スル規定ニ違背シタルトキ
四 法定代理権、訴訟代理権又ハ代理人カ訴訟行為ヲ為スニ必要ナル授権ノ欠欠アリタルトキ
五 口頭弁論公開ノ規定ニ違背シタルトキ
六 判決ニ理由ヲ附セス又ハ理由ニ齟齬アルトキ
前項第四号ノ規定ハ第五十四条又ハ第八十七条ノ規定ニ依ル追認アリタル場合ニハ之ヲ適用セス
第三百九十六条 前章ノ規定ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外上告及上告審ノ訴訟手続ニ之ヲ準用ス
第三百九十七条 上告裁判所ノ書記ハ原裁判所ノ書記ヨリ訴訟記録ノ送付ヲ受ケタルトキハ遅滞ナク其ノ旨ヲ当事者ニ通知スルコトヲ要ス
第三百九十八条 上告状ニ上告ノ理由ヲ記載セサルトキハ前条ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ三十日内ニ上告理由書ヲ提出スルコトヲ要ス
第三百九十九条 上告人カ前条ノ規定ニ違背シ上告理由書ヲ提出セサルトキハ上告裁判所ハ口頭弁論ヲ経スシテ判決ヲ以テ上告ヲ却下スルコトヲ得
第四百条 裁判長ハ相当ノ期間ヲ定メ答弁書ヲ提出スヘキコトヲ被上告人ニ命スルコトヲ得
第四百一条 上告裁判所カ上告状、上告理由書、答弁書其ノ他ノ書類ニ依リ上告ヲ理由ナシト認ムルトキハ口頭弁論ヲ経スシテ判決ヲ以テ上告ヲ棄却スルコトヲ得
第四百二条 上告裁判所ハ上告理由ニ基キ不服ノ申立アリタル限度ニ於テノミ調査ヲ為ス
第四百三条 原判決ニ於テ適法ニ確定シタル事実ハ上告裁判所ヲ羈束ス
第四百四条 第三百九十三条第二項ノ規定ニ依ル上告アリタル場合ニ於テハ上告裁判所ハ原判決ニ於ケル事実ノ確定カ法律ニ違背シタルコトヲ理由トシテ其ノ判決ヲ破毀スルコトヲ得ス
第四百五条 第四百二条乃至前条ノ規定ハ裁判所カ職権ヲ以テ調査スヘキ事項ニ之ヲ適用セス
第四百六条 上告裁判所ハ原判決ニ付不服ノ申立ナキ部分ニ限リ申立ニ因リ決定ヲ以テ仮執行ノ宣言ヲ為スコトヲ得
第四百七条 上告ヲ理由アリトスルトキハ上告裁判所ハ原判決ヲ破毀シ事件ヲ原裁判所ニ差戻シ又ハ同等ナル他ノ裁判所ニ移送スルコトヲ要ス
差戻又ハ移送ヲ受ケタル裁判所ハ新口頭弁論ニ基キ裁判ヲ為スコトヲ要ス但シ上告裁判所カ破毀ノ理由ト為シタル事実上及法律上ノ判断ニ羈束セラル
原判決ニ関与シタル判事ハ前項ノ裁判ニ関与スルコトヲ得ス
第四百八条 左ノ場合ニ於テハ上告裁判所ハ事件ニ付裁判ヲ為スコトヲ要ス
一 確定シタル事実ニ付法令ノ適用ヲ誤リタルコトヲ理由トシテ判決ヲ破毀スル場合ニ於テ事件カ其ノ事実ニ基キ裁判ヲ為スニ熟スルトキ
二 事件カ通常裁判所ノ権限ニ属セサルコトヲ理由トシテ判決ヲ破毀スルトキ
第四百九条 差戻又ハ移送ノ判決アリタルトキハ裁判所書記ハ其ノ判決ノ正本ヲ訴訟記録ニ添附シ差戻又ハ移送ヲ受ケタル裁判所ノ書記ニ之ヲ送付スルコトヲ要ス
第三章 抗告
第四百十条 口頭弁論ヲ経スシテ訴訟手続ニ関スル申立ヲ却下シタル決定又ハ命令ニ対シテハ抗告ヲ為スコトヲ得
第四百十一条 決定又ハ命令ヲ以テ裁判ヲ為スコトヲ得サル事項ニ付決定又ハ命令ヲ為シタルトキハ当事者ハ之ニ対シテ抗告ヲ為スコトヲ得
第四百十二条 受命判事又ハ受託判事ノ裁判ニ対シ不服アル当事者ハ受訴裁判所ニ異議ノ申立ヲ為スコトヲ得但シ其ノ裁判カ受訴裁判所ノ裁判ナル場合ニ於テ之ニ対シ抗告ヲ為シ得ルモノナルトキニ限ル
抗告ハ異議ニ付テノ裁判ニ対シテ之ヲ為スコトヲ得
第一項ノ規定ハ大審院ニ繋属スル事件ニ付受命判事又ハ受託判事ノ為シタル裁判ニ之ヲ準用ス
第四百十三条 抗告裁判所ノ決定ニ対シテハ其ノ決定カ法令ニ違背シタルコトヲ理由トスル場合ニ限リ更ニ抗告ヲ為スコトヲ得
第四百十四条 抗告及抗告裁判所ノ訴訟手続ニハ其ノ性質ニ反セサル限リ第一章ノ規定ヲ準用ス但シ前条ノ抗告及之ニ関スル訴訟手続ニハ前章ノ規定ヲ準用ス
第四百十五条 即時抗告ハ裁判ノ告知アリタル日ヨリ一週間内ニ之ヲ為スコトヲ要ス
前項ノ期間ハ之ヲ不変期間トス
第四百十六条 抗告ハ原裁判所又ハ抗告裁判所ニ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ為スコトヲ要ス
抗告裁判所カ抗告ヲ受ケタル場合ニ於テ適当ト認ムルトキハ事件ヲ原裁判所ニ送付スルコトヲ得
第四百十七条 原裁判所カ抗告ヲ受ケ又ハ前条第二項ノ規定ニ依リ事件ノ送付ヲ受ケタル場合ニ於テ抗告ヲ理由アリト認ムルトキハ其ノ裁判ヲ更正スルコトヲ要ス
抗告ヲ理由ナシト認ムルトキハ意見ヲ附シ事件ヲ抗告裁判所ニ送付スルコトヲ要ス
第四百十八条 抗告ハ即時抗告ニ限リ執行停止ノ効力ヲ有ス
抗告裁判所又ハ原裁判ヲ為シタル裁判所若ハ判事ハ抗告ニ付決定アル迄原裁判ノ執行ヲ停止シ其ノ他必要ナル処分ヲ命スルコトヲ得
第四百十九条 抗告裁判所ハ抗告ニ付口頭弁論ヲ命セサル場合ニ於テハ抗告人其ノ他ノ利害関係人ヲ審訊スルコトヲ得
第四編 再審
第四百二十条 左ノ場合ニ於テハ確定ノ終局判決ニ対シ再審ノ訴ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトヲ得但シ当事者カ上訴ニ依リ其ノ事由ヲ主張シタルトキ又ハ之ヲ知リテ主張セサリシトキハ此ノ限ニ在ラス
一 法律ニ従ヒテ判決裁判所ヲ構成セサリシト
二 法律ニ依リ裁判ニ関与スルコトヲ得サル判事カ裁判ニ関与シタルトキ
三 法定代理権、訴訟代理権又ハ代理人カ訴訟行為ヲ為スニ必要ナル授権ノ欠欠アリタルトキ
四 裁判ニ関与シタル判事カ事件ニ付職務ニ関スル罪ヲ犯シタルトキ
五 刑事上罰スヘキ他人ノ行為ニ因リ自白ヲ為スニ至リタルトキ又ハ判決ニ影響ヲ及ホスヘキ攻撃若ハ防禦ノ方法ヲ提出スルコトヲ妨ケラレタルトキ
六 判決ノ証拠ト為リタル文書其ノ他ノ物件カ偽造又ハ変造セラレタルモノナリシトキ
七 証人、鑑定人、通事又ハ宣誓シタル当事者若ハ法定代理人ノ虚偽ノ陳述カ判決ノ証拠ト為リタルトキ
八 判決ノ基礎ト為リタル民事若ハ刑事ノ判決其ノ他ノ裁判又ハ行政処分カ後ノ裁判又ハ行政処分ニ依リテ変更セラレタルトキ
九 判決ニ影響ヲ及ホスヘキ重要ナル事項ニ付判断ヲ遺脱シタルトキ
十 不服ノ申立アル判決カ前ニ言渡サレタル確定判決ト牴触スルトキ
前項第四号乃至七号ノ場合ニ於テハ罰スヘキ行為ニ付有罪ノ判決若ハ過料ノ裁判確定シタルトキ又ハ証拠欠欠外ノ理由ニ因リ有罪ノ確定判決若ハ過料ノ確定裁判ヲ得ルコト能ハサルトキニ限リ再審ノ訴ヲ提起スルコトヲ得
控訴審ニ於テ事件ニ付本案判決ヲ為シタルトキハ第一審ノ判決ニ対シ再審ノ訴ヲ提起スルコトヲ得ス
第四百二十一条 判決ノ基本タル裁判ニ付前条ニ定メタル事由アルトキハ其ノ裁判ニ対シ独立ノ不服ノ方法ヲ定メタル場合ニ於テモ其ノ事由ヲ以テ判決ニ対スル再審ノ理由ト為スコトヲ得
第四百二十二条 再審ハ不服ノ申立アル判決ヲ為シタル裁判所ノ専属管轄トス
審級ヲ異ニスル裁判所カ同一事件ニ付為シタル判決ニ対スル再審ノ訴ハ上級裁判所併セテ之ヲ管轄ス
第四百二十三条 再審ノ訴訟手続ニハ其ノ性質ニ反セサル限リ各審級ニ於ケル訴訟手続ニ関スル規定ヲ準用ス
第四百二十四条 再審ノ訴ハ当事者カ判決確定後再審ノ事由ヲ知リタル日ヨリ三十日内ニ之ヲ提起スルコトヲ要ス
前項ノ期間ハ之ヲ不変期間トス
判決確定後五年ヲ経過シタルトキハ再審ノ訴ハ之ヲ提起スルコトヲ得ス
再審ノ事由カ判決確定後ニ生シタルトキハ前項ノ期間ハ其ノ事由発生ノ日ヨリ之ヲ起算ス
第四百二十五条 前条ノ規定ハ代理権ノ欠欠及第四百二十条第一項第十号ニ掲クル事項ヲ理由トスル再審ノ訴ニハ之ヲ適用セス
第四百二十六条 訴状ニハ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス
一 当事者及法定代理人
二 不服ノ申立アル判決ノ表示及其ノ判決ニ対シ再審ヲ求ムル旨
三 不服ノ理由
第四百二十七条 本案ノ弁論及裁判ハ不服ノ範囲内ニ於テノミ之ヲ為スコトヲ得
不服ノ理由ハ之ヲ変更スルコトヲ得
第四百二十八条 再審ノ事由アル場合ニ於テモ判決ヲ正当トスルトキハ裁判所ハ再審ノ訴ヲ却下スルコトヲ要ス
第四百二十九条 即時抗告ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトヲ得ル決定又ハ命令カ確定シタル場合ニ於テ第四百二十条第一項ニ掲クル事由アルトキハ確定判決ニ対スル第四百二十条乃至前条ノ規定ニ準シ再審ノ申立ヲ為スコトヲ得
第五編 督促手続
第四百三十条 金銭其ノ他ノ代替物又ハ有価証券ノ一定ノ数量ノ給付ヲ目的トスル請求ニ付テハ裁判所ハ債権者ノ申立ニ因リ支払命令ヲ発スルコトヲ得但シ日本ニ於テ公示送達ニ依ラスシテ其ノ命令ノ送達ヲ為スコトヲ得ヘキ場合ニ限ル
第四百三十一条 督促手続ハ債務者ノ普通裁判籍所在地ノ区裁判所又ハ第九条ノ規定ニ依ル管轄区裁判所ノ専属管轄トス
第四百三十二条 支払命令ノ申立ニハ其ノ性質ニ反セサル限リ訴ニ関スル規定ヲ準用ス
第四百三十三条 支払命令ノ申立カ第四百三十条若ハ管轄ニ関スル規定ニ違背スルトキ又ハ申立ノ趣旨ニ依リ請求ノ理由ナキコト明ナルトキハ其ノ申立ハ之ヲ却下スルコトヲ要ス請求ノ一部ニ付支払命令ヲ発スルコトヲ得サルトキ其ノ一部ニ付亦同シ
申立却下ノ決定ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第四百三十四条 支払命令ハ債務者ヲ審訊セスシテ之ヲ発ス
債務者ハ支払命令ニ対シ異議ノ申立ヲ為スコトヲ得
第四百三十五条 支払命令ニハ当事者、法定代理人並請求ノ趣旨及原因ヲ記載シ且債務者カ支払命令送達ノ日ヨリ二週間内ニ異議ヲ申立テサルトキハ債権者ノ申立ニ因リ仮執行ノ宣言ヲ為スヘキ旨ヲ附記スルコトヲ要ス
第四百三十六条 支払命令ハ之ヲ当事者ニ送達スルコトヲ要ス
第四百三十七条 債務者カ仮執行ノ宣言前異議ヲ申立テタルトキハ支払命令ハ其ノ異議ノ範囲内ニ於テ効力ヲ失フ
第四百三十八条 債務者カ支払命令送達ノ日ヨリ二週間内ニ異議ヲ申立テサルトキハ裁判所ハ債権者ノ申立ニ因リ支払命令ニ手続ノ費用額ヲ附記シ仮執行ノ宣言ヲ為スコトヲ要ス但シ其ノ宣言前異議ノ申立アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス
仮執行ノ宣言ハ支払命令ノ原本及正本ニ之ヲ記載シ其ノ正本ヲ当事者ニ送達スルコトヲ要ス
仮執行ノ申立却下ノ決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第四百三十九条 債権者カ仮執行ノ申立ヲ為スコトヲ得ル時ヨリ三十日内ニ其ノ申立ヲ為ササルトキハ支払命令ハ其ノ効力ヲ失フ
第四百四十条 仮執行ノ宣言ヲ附シタル支払命令送達ノ日ヨリ二週間ヲ経過シタルトキハ債務者ハ其ノ支払命令ニ対シ異議ヲ申立ツルコトヲ得ス
前項ノ期間ハ之ヲ不変期間トス
第四百四十一条 区裁判所カ異議ヲ不適法ト認ムルトキハ請求カ地方裁判所ノ管轄ニ属スル場合ニ於テモ決定ヲ以テ其ノ異議ヲ却下スルコトヲ要ス此ノ決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第四百四十二条 支払命令ニ対シ適法ナル異議ノ申立アリタルトキハ異議アル請求ニ付テハ其ノ目的ノ価額ニ従ヒ支払命令ノ申立ノ時ニ於テ其ノ命令ヲ発シタル区裁判所又ハ其ノ区裁判所ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所ニ訴ノ提起アリタルモノト看做ス此ノ場合ニ於テハ督促手続ノ費用ハ之ヲ訴訟費用ノ一部トス
前項ノ規定ニ依リテ地方裁判所ニ訴ノ提起アリタルモノト看做サレタル場合ニ於テハ裁判所書記ハ遅滞ナク訴訟記録ヲ地方裁判所ノ書記ニ送付スルコトヲ要ス
第四百四十三条 仮執行ノ宣言ヲ附シタル支払命令ニ対シ異議ノ申立ナキトキ又ハ異議却下ノ決定確定シタルトキハ支払命令ハ確定判決ト同一ノ効力ヲ有ス
第四百四十四条乃至第四百九十六条 削除
第四百九十七条ノ二 判決カ其判決ニ表示シタル当事者以外ノ者ニ対シ効力ヲ有ス可キトキハ其者ニ対シ又ハ其者ノ為メニモ之ヲ執行スルコトヲ得但第六十四条ノ規定ニ依ル参加人ニ付テハ此限ニ在ラス
前項ノ場合ニ於テ執行力アル正本ノ付与ニ付テハ第五百十九条乃至第五百二十一条ノ規定ヲ準用ス
第五百条中「原状回復又ハ」ヲ削ル
第五百一条乃至第五百十一条 削除
第五百十二条中「故障ヲ申立又ハ上訴ヲ起シタルトキ」ヲ「上訴ヲ提起シタルトキ又ハ仮執行ノ宣言ヲ付シタル支払命令ニ対シ異議ヲ申立テタルトキ」ニ改ム
第五百十三条ニ左ノ一項ヲ加フ
第百十二条、第百十三条、第百十五条及ヒ第百十六条ノ規定ハ第一項ノ規定ニ依ル保証ニ付キ之ヲ準用ス
第五百十四条中「第十七条」ヲ「第八条」ニ改ム
第五百十五条第二項中第二号ヲ左ノ如ク改メ第三号乃至第五号ヲ削ル
第二 外国判決カ第二百条ノ条件ヲ具備セサルトキ
第五百四十一条中「第百三十九条、第百四十条及ヒ第百四十五条乃至第百四十九条」ヲ「第百六十七条、第百六十八条、第百七十一条及ヒ第百七十二条」ニ改ム
第五百四十五条第二項中「其原因ヲ生シ且故障ヲ以テ之ヲ主張スルコトヲ得サルトキ」ヲ「其原因ヲ生シタルトキ」ニ改ム
第五百四十八条第三項ヲ左ノ如ク改ム
右裁判ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第五百五十条第三号ヲ左ノ如ク改ム
第三 執行ヲ免カルル為メ担保ヲ供シタルコトヲ証スル書面
第五百五十九条中第三号及第四号ヲ削リ第五号ヲ第三号トシ第二号ヲ左ノ如ク改ム
第二 仮執行ノ宣言ヲ付シタル支払命令
第五百六十条中「債務名義」ヲ「債務名義及ヒ訴訟上ノ和解並ニ請求ノ抛棄又ハ認諾」ニ改ム
第五百六十一条中「執行命令」ヲ「仮執行ノ宣言ヲ付シタル支払命令」ニ改ム
第五百六十一条ノ二 過料ノ裁判ハ検事ノ命令ヲ以テ之ヲ執行ス此命令ハ執行力アル債務名義ト同一ノ効力ヲ有ス
第五百六十二条中「第十七条」ヲ「第八条」ニ改ム
第五百九十五条 執行裁判所トシテハ債務者ノ普通裁判籍ヲ有スル地ノ区裁判所、此区裁判所ナキトキハ差押フヘキ債権ノ所在地ヲ管轄スル区裁判所管轄権ヲ有ス
差押フヘキ債権ハ第三債務者ノ普通裁判籍ノ所在地ニ在ルモノトス但物ノ引渡ヲ目的トスル債権及ヒ物上ノ担保権ヲ有スル債権ハ其物ノ所在地ニ在ルモノトス
第六百七条中「第五百五条第二項ニ従ヒテ債務者ニ保証ヲ立テシメ又ハ供託ヲ為サシメテ」ヲ「第百九十六条第二項ニ従ヒテ債務者ニ担保ヲ供セシメテ」ニ改ム
第六百三十七条中「看做ス旨ノ闕席判決ヲ為ス可シ」ヲ「看做ス」ニ改ム
第六百三十八条 第六百三十六条ノ判決ノ確定シタルコト又ハ前条ノ規定ニ従ヒ異議ヲ取下ケタルモノト看做サレタルコトノ証明アルトキハ配当裁判所ハ之ニ基キ支払又ハ他ノ配当手続ヲ命ス
第六百四十一条中「第二十六条ノ規定ヲ適用ス」ヲ「各区裁判所管轄権ヲ有ス此場合ニ於テ裁判所必要アリト認ムルトキハ事件ヲ他ノ管轄区裁判所ニ移送スルコトヲ得」ニ改ム
第六百六十九条中「第百四十三条第三項」ヲ「第百七十条第二項及ヒ第百七十三条」ニ改ム
第六百七十七条中「第百二十九条乃至第百三十二条及ヒ第百三十四条」ヲ「第百四十二条乃至第百四十七条」ニ改ム
第六百八十一条中「取消ノ訴若クハ原状回復ノ訴」ヲ「再審ノ訴」ニ改ム
第七百五十六条ノ二 仮処分ヲ取消ス判決ハ財産権上ノ請求ニ関セサルモノニ付テモ仮執行ノ宣言ヲ為スコトヲ得
第七百六十六条中「之ヲ為シ其他法律ニ別段ノ規定ヲ設ケサルトキハ第百五十七条第三項ノ規定ニ従ヒテ」ヲ削リ同条ニ左ノ一項ヲ加フ
裁判所相当ト認ムルトキハ新聞紙ニ公告ス可キコトヲ命スルコトヲ得
第七百七十四条第二項第六号ヲ左ノ如ク改ム
第六 第四百二十条第四号乃至第八号ノ場合ニ於テ再審ノ訴ヲ許ス条件ノ存スルトキ
第七百七十六条中「第百二十条ノ条件ノ存セサルトキト雖モ」ヲ削ル
第八百一条第一項第六号ヲ左ノ如ク改ム
第六 第四百二十条第四号乃至第八号ノ場合ニ於テ再審ノ訴ヲ許ス条件ノ存スルトキ
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム