朕は、帝國議会の協賛を経た檢察廳法を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十二年四月十五日
内閣総理大臣 吉田茂
司法大臣 木村篤太郎
法律第六十一号
檢察廳法
第一條 檢察廳は、檢察官の行う事務を統括するところとする。
檢察廳は、最高檢察廳、高等檢察廳、地方檢察廳及び区檢察廳とする。
第二條 最高檢察廳は、最高裁判所に、高等檢察廳は、各高等裁判所に、地方檢察廳は、各地方裁判所に、区檢察廳は、各簡易裁判所に、それぞれ対應してこれを置く。
最高檢察廳の位置並びに最高檢察廳以外の檢察廳の名称及び位置は、政令でこれを定める。
司法大臣は、必要と認めるときは、高等裁判所又は地方裁判所の支部にそれぞれ対應して高等檢察廳又は地方檢察廳の支部を設け、当該檢察廳の事務の一部を取り扱わせることができる。
第三條 檢察官は、檢事総長、次長檢事、檢事長、檢事及び副檢事とする。
第四條 檢察官は、刑事について、公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求し、且つ、裁判所の執行を監督し、又、裁判所の権限に属するその他の事項についても職務上必要と認めるときは、裁判所に、通知を求め、又は意見を述べ、又、公益の代表者として他の法令がその権限に属させた事務を行う。
第五條 檢察官は、いずれかの檢察廳に属し、他の法令に特別の定のある場合を除いて、その属する檢察廳の対應する裁判所の管轄区域内において、その裁判所の管轄に属する事項について前條に規定する職務を行う。
第六條 檢察官は、いかなる犯罪についても搜査をすることができる。
檢察官と他の法令により搜査の職権を有する者との関係は、刑事訴訟法の定めるところによる。
第七條 檢事総長は、最高檢察廳の長として、廳務を掌理し、且つ、すべての檢察廳の職員を指揮監督する。
次長檢事は、最高檢察廳に属し、檢事総長を補佐し、又、檢事総長に事故のあるとき、又は檢事総長が欠けたときは、その職務を行う。
第八條 檢事長は、高等檢察廳の長として、廳務を掌理し、且つ、その廳並びにその廳の対應する裁判所の管轄区域内に在る地方檢察廳及び区檢察廳の職員を指揮監督する。
第九條 各地方檢察廳に檢事正各一人を置き、一級の檢事を以てこれに充てる。
檢事正は、廳務を掌理し、且つ、その廳及びその廳の対應する裁判所の管轄区域内に在る区檢察廳の職員を指揮監督する。
第十條 二人以上の檢事又は檢事及び副檢事の属する各区檢察廳に上席檢察官各一人を置き、檢事を以てこれに充てる。
上席檢察官の置かれた各区檢察廳においては、その廳の上席檢察官が、その他の各区檢察廳においては、その廳に属する檢事又は副檢事(副檢事が二人以上あるときは、檢事正の指定する副檢事)が廳務を掌理し、且つ、その廳の職員を指揮監督する。
第十一條 檢事総長、檢事長又は檢事正は、その指揮監督する檢察官に、第七條第一項、第八條又は第九條第二項に規定する事務の一部を取り扱わせることができる。
第十二條 檢事総長、檢事長又は檢事正は、その指揮監督する檢察官の事務を、自ら取り扱い、又はその指揮監督する他の檢察官に取り扱わせることができる。
第十三條 檢事総長及び次長檢事、檢事長若しくは檢事正に事故のあるとき、又は檢事総長及び次長檢事、檢事長若しくは檢事正が欠けたときは、その廳の他の檢察官が、司法大臣の定める順序により、臨時に檢事総長、檢事長又は檢事正の職務を行う。
区檢察廳の廳務を掌理する檢察官に事故のあるとき、又はその檢察官が欠けたときは、檢事正の指定する他の檢察官が、臨時にその職務を行う。
第十四條 司法大臣は、第四條及び第六條に規定する檢察官の事務に関し、檢察官を一般に指揮監督することができる。但し、個々の事件の取調又は処分については、檢事総長のみを指揮することができる。
第十五條 檢事総長、次長檢事及び各檢事長は一級とし、その任免は、天皇が、これを認証する。
檢事は、一級又は二級とし、副檢事は、二級とする。
一級の檢察官は、内閣が、二級の檢察官は、内閣総理大臣が、これを任免する。
第十六條 檢事長、檢事及び副檢事の職は、司法大臣が、これを補する。
副檢事は、区檢察廳の檢察官の職のみにこれを補するものとする。
第十七條 司法大臣は、高等檢察廳又は地方檢察廳の檢事の中から、高等檢察廳又は地方檢察廳の支部に勤務すべき者を命ずる。
第十八條 二級の檢察官の任命及び敍級は、左の資格の一を有する者に就いてこれを行う。
一 司法修習生の修習を終えた者
二 裁判官の職に在つた者
三 三年以上政令で定める大学において法律学の教授又は助教授の職に在つた者
副檢事は、前項の規定にかかわらず、左の各号の一に該当する者で副檢事選考委員会の選考を経たものの中からもこれを任命することができる。
一 高等試驗に合格した者
二 三年以上政令で定める二級官吏その他の公務員の職に在つた者
三年以上副檢事の職に在つて政令で定める考試を経た者は、第一項の規定にかかわらず、これを二級の檢事に任命及び敍級することができる。
副檢事選考委員会に関する規程は、政令でこれを定める。
第十九條 一級の檢察官の任命及び敍級は、左の資格の一を有する者に就いてこれを行う。
一 八年以上二級の檢事、判事補、簡易裁判所判事又は弁護士の職に在つた者
二 最高裁判所長官、最高裁判所判事、高等裁判所長官又は判事の職に在つた者
三 前條第一項第一号又は第三号の資格を得た後八年以上司法次官、少年審判官、最高裁判所事務総長若しくは裁判所調査官又は二級以上の司法事務官、司法教官、裁判所事務官若しくは司法研修所教官の職に在つた者
四 前條第一項第一号又は第三号の資格を有し一年以上一級官吏の職に在つた者
五 前條第一項の資格を有し一級の檢察官の職務に必要な学識経驗のある者で一級官吏選考委員会の選考を経たもの
前項第一号及び第三号に規定する各職の在職年数は、これを通算する。
前條第三項の規定により檢事に任命された者は、第一項第三号乃至第五号の規定の適用については、これを同條第一項第一号の資格を有する者とみなす。
第二十條 他の法律の定めるところにより一般の官吏に任命されることができない者の外、左の各号の一に該当する者は、これを檢察官に任命することができない。
一 禁錮以上の刑に処せられた者
二 彈劾裁判所の罷免の裁判を受けた者
第二十一條 檢察官の受ける俸給については、別に法律でこれを定める。
第二十二條 檢事総長は、年齢が六十五年に達した時に、その他の檢察官は年齢が六十三年に達した時に退官する。
第二十三條 檢察官が心身の故障その他の事由に因りその職務を執るに堪えないときは、檢察官適格審査委員会の議決を経てその官を免ずることができる。
檢察官適格審査委員会は、檢察官、裁判官及び弁護士の中から選任された委員を以てこれを組織する。
前二項に規定するものの外、檢察官適格審査委員会に関する事項は、政令でこれを定める。
第二十四條 檢事長、檢事又は副檢事が檢察廳の廃止その他の事由に因り剩員となつたときは、司法大臣は、その檢事長、檢事又は副檢事に俸給の半額を給して欠位を待たせることができる。
第二十五條 檢察官は、前三條の場合を除いては、その意思に反して、その官を失い、職務を停止され、又は俸給を減額されることはない。但し、懲戒処分による場合は、この限りでない。
第二十六條 最高檢察廳に檢事総長祕書官を置く。
檢事総長祕書官は、二級とする。
檢事総長祕書官は、檢事総長の命を受けて機密に関する事務を掌る。
第二十七條 檢察廳に檢察事務官を置く。
檢察事務官は、二級又は三級とする。
檢察事務官は、上官の命を受けて檢察廳の事務を掌り、又、檢察官を補佐し、又はその指揮を受けて搜査を行う。
第二十八條 檢察廳に檢察技官を置く。
檢察技官は、二級又は三級とする。
檢察技官は、檢察官の指揮を受けて技術を掌る。
第二十九條 檢察廳の職員の定員は、予算の範囲内において政令でこれを定める。
第三十條 司法大臣は、檢事総長若しくは檢事長又は檢事正にその廳又はその廳及びその廳の対應する裁判所の管轄区域内に在る区檢察廳の三級官吏の進退に関する権限を委任することができる。
檢事長又は檢事正は、その廳の檢察事務官及び檢察技官の中から、その廳の支部に勤務すべき者を命ずる。
第三十一條 檢察廳の職員は、他の檢察廳の職員と各自の取り扱うべき事務について互に必要な補助をする。
第三十二條 檢察廳の事務章程は、司法大臣が、これを定める。
附 則
第三十三條 この法律は、日本國憲法施行の日から、これを施行する。
第三十四條 この法律施行前、從前の檢事総長又は大審院檢事のした事件の受理その他の行爲は、これを檢事総長又は最高檢察廳の檢事のした事件の受理その他の行爲とみなし、從前の檢事長、控訴院檢事、從前の檢事正又は地方裁判所檢事若しくは区裁判所檢事のした事件の受理その他の行爲は、これをそれぞれ政令で定める檢事長、高等檢察廳の檢事、檢事正又は地方檢察廳の檢事のした事件の受理その他の行爲とみなす。
第三十五條 この法律施行前、從前の檢事総長又は大審院檢事にあててされた事件の送致その他の行爲は、これを檢事総長又は最高檢察廳の檢事にあててされた事件の送致その他の行爲とみなし、從前の檢事長、控訴院檢事、從前の檢事正又は地方裁判所檢事若しくは区裁判所檢事にあててされた事件の送致その他の行爲は、これをそれぞれ政令で定める檢事長、高等檢察廳の檢事、檢事正又は地方檢察廳の檢事にあててされた事件の送致その他の行爲とみなす。
第三十六條 司法大臣は、当分の間、檢察官が足りないため必要と認めるときは、区檢察廳の檢察事務官にその廳の檢察官の事務を取り扱わせることができる。
第三十七條 裁判所構成法による檢事たる資格を有する者は、第十八條及び第十九條の規定の適用については、その資格を得た時に司法修習生の修習を終えたものとみなす。この法律施行の際現に弁護士たる資格を有する者で弁護士の在職年数がこの法律施行後において三年に達する者についてその三年に達した時も同樣とする。
この法律施行前弁護士試補として一年六箇月以上の実務修習を終え考試を経た者は、前項の規定にかかわらず、その考試を経た時に司法修習生の修習を終えたものとみなす。
第三十八條 裁判所構成法による檢事若しくは判事の在職又は同法による檢事たる資格を有する者の司法省各局長、司法省調査部長、司法省調査官、司法書記官、司法研究所指導官、司法研究所事務官、司法省参事官、領事官、朝鮮総督府檢事、朝鮮総督府判事、台湾総督府法院檢察官、台湾総督府法院判官、関東法院檢察官、関東法院判官、南洋廳檢事若しくは南洋廳判事の在職は、第十九條第一項第一号の規定の適用については、これを二級の檢事の在職とみなす。
第三十九條 第十八條第二項第二号中二級官吏とあるのは、奏任文官を、第十九條第一項第四号中一級官吏とあるのは、勅任文官を含むものとする。
第四十條 この法律施行の際奏任の檢事で現に控訴院檢事又は地方裁判所檢事若しくは区裁判所檢事の職に在る者は、別に辞令を発せられないときは、檢事に任ぜられ、二級に敍せられ、且つ、それぞれ政令で定める高等檢察廳又は地方檢察廳の檢事に補せられたものとする。
第四十一條 この法律施行の際現に書記長若しくは裁判所書記の職に在つて檢事局に属する者又は檢察補佐官の職に在る者は、別に辞令を発せられないときは、現に受ける号俸を以て檢察事務官に任ぜられ、奏任又は二級の者は、二級に、判任又は三級の者は、三級に敍せられたものとする。
第四十二條 政令で特別の定をした場合を除いて、他の法律中「檢事」を「檢察官」に、「管轄裁判所ノ檢事」を「管轄裁判所ニ對應スル檢察廳ノ檢察官」に改める。
朕は、帝国議会の協賛を経た検察庁法を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十二年四月十五日
内閣総理大臣 吉田茂
司法大臣 木村篤太郎
法律第六十一号
検察庁法
第一条 検察庁は、検察官の行う事務を統括するところとする。
検察庁は、最高検察庁、高等検察庁、地方検察庁及び区検察庁とする。
第二条 最高検察庁は、最高裁判所に、高等検察庁は、各高等裁判所に、地方検察庁は、各地方裁判所に、区検察庁は、各簡易裁判所に、それぞれ対応してこれを置く。
最高検察庁の位置並びに最高検察庁以外の検察庁の名称及び位置は、政令でこれを定める。
司法大臣は、必要と認めるときは、高等裁判所又は地方裁判所の支部にそれぞれ対応して高等検察庁又は地方検察庁の支部を設け、当該検察庁の事務の一部を取り扱わせることができる。
第三条 検察官は、検事総長、次長検事、検事長、検事及び副検事とする。
第四条 検察官は、刑事について、公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求し、且つ、裁判所の執行を監督し、又、裁判所の権限に属するその他の事項についても職務上必要と認めるときは、裁判所に、通知を求め、又は意見を述べ、又、公益の代表者として他の法令がその権限に属させた事務を行う。
第五条 検察官は、いずれかの検察庁に属し、他の法令に特別の定のある場合を除いて、その属する検察庁の対応する裁判所の管轄区域内において、その裁判所の管轄に属する事項について前条に規定する職務を行う。
第六条 検察官は、いかなる犯罪についても捜査をすることができる。
検察官と他の法令により捜査の職権を有する者との関係は、刑事訴訟法の定めるところによる。
第七条 検事総長は、最高検察庁の長として、庁務を掌理し、且つ、すべての検察庁の職員を指揮監督する。
次長検事は、最高検察庁に属し、検事総長を補佐し、又、検事総長に事故のあるとき、又は検事総長が欠けたときは、その職務を行う。
第八条 検事長は、高等検察庁の長として、庁務を掌理し、且つ、その庁並びにその庁の対応する裁判所の管轄区域内に在る地方検察庁及び区検察庁の職員を指揮監督する。
第九条 各地方検察庁に検事正各一人を置き、一級の検事を以てこれに充てる。
検事正は、庁務を掌理し、且つ、その庁及びその庁の対応する裁判所の管轄区域内に在る区検察庁の職員を指揮監督する。
第十条 二人以上の検事又は検事及び副検事の属する各区検察庁に上席検察官各一人を置き、検事を以てこれに充てる。
上席検察官の置かれた各区検察庁においては、その庁の上席検察官が、その他の各区検察庁においては、その庁に属する検事又は副検事(副検事が二人以上あるときは、検事正の指定する副検事)が庁務を掌理し、且つ、その庁の職員を指揮監督する。
第十一条 検事総長、検事長又は検事正は、その指揮監督する検察官に、第七条第一項、第八条又は第九条第二項に規定する事務の一部を取り扱わせることができる。
第十二条 検事総長、検事長又は検事正は、その指揮監督する検察官の事務を、自ら取り扱い、又はその指揮監督する他の検察官に取り扱わせることができる。
第十三条 検事総長及び次長検事、検事長若しくは検事正に事故のあるとき、又は検事総長及び次長検事、検事長若しくは検事正が欠けたときは、その庁の他の検察官が、司法大臣の定める順序により、臨時に検事総長、検事長又は検事正の職務を行う。
区検察庁の庁務を掌理する検察官に事故のあるとき、又はその検察官が欠けたときは、検事正の指定する他の検察官が、臨時にその職務を行う。
第十四条 司法大臣は、第四条及び第六条に規定する検察官の事務に関し、検察官を一般に指揮監督することができる。但し、個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる。
第十五条 検事総長、次長検事及び各検事長は一級とし、その任免は、天皇が、これを認証する。
検事は、一級又は二級とし、副検事は、二級とする。
一級の検察官は、内閣が、二級の検察官は、内閣総理大臣が、これを任免する。
第十六条 検事長、検事及び副検事の職は、司法大臣が、これを補する。
副検事は、区検察庁の検察官の職のみにこれを補するものとする。
第十七条 司法大臣は、高等検察庁又は地方検察庁の検事の中から、高等検察庁又は地方検察庁の支部に勤務すべき者を命ずる。
第十八条 二級の検察官の任命及び叙級は、左の資格の一を有する者に就いてこれを行う。
一 司法修習生の修習を終えた者
二 裁判官の職に在つた者
三 三年以上政令で定める大学において法律学の教授又は助教授の職に在つた者
副検事は、前項の規定にかかわらず、左の各号の一に該当する者で副検事選考委員会の選考を経たものの中からもこれを任命することができる。
一 高等試験に合格した者
二 三年以上政令で定める二級官吏その他の公務員の職に在つた者
三年以上副検事の職に在つて政令で定める考試を経た者は、第一項の規定にかかわらず、これを二級の検事に任命及び叙級することができる。
副検事選考委員会に関する規程は、政令でこれを定める。
第十九条 一級の検察官の任命及び叙級は、左の資格の一を有する者に就いてこれを行う。
一 八年以上二級の検事、判事補、簡易裁判所判事又は弁護士の職に在つた者
二 最高裁判所長官、最高裁判所判事、高等裁判所長官又は判事の職に在つた者
三 前条第一項第一号又は第三号の資格を得た後八年以上司法次官、少年審判官、最高裁判所事務総長若しくは裁判所調査官又は二級以上の司法事務官、司法教官、裁判所事務官若しくは司法研修所教官の職に在つた者
四 前条第一項第一号又は第三号の資格を有し一年以上一級官吏の職に在つた者
五 前条第一項の資格を有し一級の検察官の職務に必要な学識経験のある者で一級官吏選考委員会の選考を経たもの
前項第一号及び第三号に規定する各職の在職年数は、これを通算する。
前条第三項の規定により検事に任命された者は、第一項第三号乃至第五号の規定の適用については、これを同条第一項第一号の資格を有する者とみなす。
第二十条 他の法律の定めるところにより一般の官吏に任命されることができない者の外、左の各号の一に該当する者は、これを検察官に任命することができない。
一 禁錮以上の刑に処せられた者
二 弾劾裁判所の罷免の裁判を受けた者
第二十一条 検察官の受ける俸給については、別に法律でこれを定める。
第二十二条 検事総長は、年齢が六十五年に達した時に、その他の検察官は年齢が六十三年に達した時に退官する。
第二十三条 検察官が心身の故障その他の事由に因りその職務を執るに堪えないときは、検察官適格審査委員会の議決を経てその官を免ずることができる。
検察官適格審査委員会は、検察官、裁判官及び弁護士の中から選任された委員を以てこれを組織する。
前二項に規定するものの外、検察官適格審査委員会に関する事項は、政令でこれを定める。
第二十四条 検事長、検事又は副検事が検察庁の廃止その他の事由に因り剰員となつたときは、司法大臣は、その検事長、検事又は副検事に俸給の半額を給して欠位を待たせることができる。
第二十五条 検察官は、前三条の場合を除いては、その意思に反して、その官を失い、職務を停止され、又は俸給を減額されることはない。但し、懲戒処分による場合は、この限りでない。
第二十六条 最高検察庁に検事総長秘書官を置く。
検事総長秘書官は、二級とする。
検事総長秘書官は、検事総長の命を受けて機密に関する事務を掌る。
第二十七条 検察庁に検察事務官を置く。
検察事務官は、二級又は三級とする。
検察事務官は、上官の命を受けて検察庁の事務を掌り、又、検察官を補佐し、又はその指揮を受けて捜査を行う。
第二十八条 検察庁に検察技官を置く。
検察技官は、二級又は三級とする。
検察技官は、検察官の指揮を受けて技術を掌る。
第二十九条 検察庁の職員の定員は、予算の範囲内において政令でこれを定める。
第三十条 司法大臣は、検事総長若しくは検事長又は検事正にその庁又はその庁及びその庁の対応する裁判所の管轄区域内に在る区検察庁の三級官吏の進退に関する権限を委任することができる。
検事長又は検事正は、その庁の検察事務官及び検察技官の中から、その庁の支部に勤務すべき者を命ずる。
第三十一条 検察庁の職員は、他の検察庁の職員と各自の取り扱うべき事務について互に必要な補助をする。
第三十二条 検察庁の事務章程は、司法大臣が、これを定める。
附 則
第三十三条 この法律は、日本国憲法施行の日から、これを施行する。
第三十四条 この法律施行前、従前の検事総長又は大審院検事のした事件の受理その他の行為は、これを検事総長又は最高検察庁の検事のした事件の受理その他の行為とみなし、従前の検事長、控訴院検事、従前の検事正又は地方裁判所検事若しくは区裁判所検事のした事件の受理その他の行為は、これをそれぞれ政令で定める検事長、高等検察庁の検事、検事正又は地方検察庁の検事のした事件の受理その他の行為とみなす。
第三十五条 この法律施行前、従前の検事総長又は大審院検事にあててされた事件の送致その他の行為は、これを検事総長又は最高検察庁の検事にあててされた事件の送致その他の行為とみなし、従前の検事長、控訴院検事、従前の検事正又は地方裁判所検事若しくは区裁判所検事にあててされた事件の送致その他の行為は、これをそれぞれ政令で定める検事長、高等検察庁の検事、検事正又は地方検察庁の検事にあててされた事件の送致その他の行為とみなす。
第三十六条 司法大臣は、当分の間、検察官が足りないため必要と認めるときは、区検察庁の検察事務官にその庁の検察官の事務を取り扱わせることができる。
第三十七条 裁判所構成法による検事たる資格を有する者は、第十八条及び第十九条の規定の適用については、その資格を得た時に司法修習生の修習を終えたものとみなす。この法律施行の際現に弁護士たる資格を有する者で弁護士の在職年数がこの法律施行後において三年に達する者についてその三年に達した時も同様とする。
この法律施行前弁護士試補として一年六箇月以上の実務修習を終え考試を経た者は、前項の規定にかかわらず、その考試を経た時に司法修習生の修習を終えたものとみなす。
第三十八条 裁判所構成法による検事若しくは判事の在職又は同法による検事たる資格を有する者の司法省各局長、司法省調査部長、司法省調査官、司法書記官、司法研究所指導官、司法研究所事務官、司法省参事官、領事官、朝鮮総督府検事、朝鮮総督府判事、台湾総督府法院検察官、台湾総督府法院判官、関東法院検察官、関東法院判官、南洋庁検事若しくは南洋庁判事の在職は、第十九条第一項第一号の規定の適用については、これを二級の検事の在職とみなす。
第三十九条 第十八条第二項第二号中二級官吏とあるのは、奏任文官を、第十九条第一項第四号中一級官吏とあるのは、勅任文官を含むものとする。
第四十条 この法律施行の際奏任の検事で現に控訴院検事又は地方裁判所検事若しくは区裁判所検事の職に在る者は、別に辞令を発せられないときは、検事に任ぜられ、二級に叙せられ、且つ、それぞれ政令で定める高等検察庁又は地方検察庁の検事に補せられたものとする。
第四十一条 この法律施行の際現に書記長若しくは裁判所書記の職に在つて検事局に属する者又は検察補佐官の職に在る者は、別に辞令を発せられないときは、現に受ける号俸を以て検察事務官に任ぜられ、奏任又は二級の者は、二級に、判任又は三級の者は、三級に叙せられたものとする。
第四十二条 政令で特別の定をした場合を除いて、他の法律中「検事」を「検察官」に、「管轄裁判所ノ検事」を「管轄裁判所ニ対応スル検察庁ノ検察官」に改める。